説明

Gaのイオンを単離する方法とそのための装置

【課題】Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から、短時間に簡便に高濃度のGaのイオンを単離する方法、そのための装置、Ga標識化合物の製造方法およびGa標識化合物を製造するための装置の提供を目的とする。
【解決手段】Gaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液からGaのイオンを単離する方法は、前記混合液を、陰イオン交換樹脂に接触させて、前記GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンを前記陰イオン交換樹脂に吸着させ、前記吸着された陰イオン交換樹脂を、アルコールで洗浄し、前記洗浄された陰イオン交換樹脂を、水でまたは希酸水溶液洗浄してGaのイオンを溶出させ、Gaのイオンを含む水溶液を得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液からGaのイオンを単離する方法、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液からGaのイオンを単離するための装置、Ga標識化合物の製造方法およびGa標識化合物を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、医療の現場で陽電子放射断層撮像(以下、「PET」と呼ぶ)法等の分子イメージング技術がますます用いられている。このPET法は、哺乳類などの生体に短寿命放射核種を投与し、この放射核種から放出される陽電子から発生する消滅γ線を測定して、各断層における放射核種の分布を求める技術である。このPET法は、生体患部の診断などに用いられている。
【0003】
PET用の放射核種としては、例えば、11C、18F、15O、13N、76Br、68Gaなどが挙げられる。中でも、68Ga、すなわち、ガリウム−68が大きな利点を有するため、注目が集まっている。第1の利点としては、68Gaが、68Ge/68Gaジェネレーターから容易に入手可能であることが挙げられる。前記68Ge/68Gaジェネレーターは、カラムに充填された有機樹脂や無機材料に担持された68Geである。このジェネレーターに、所定の濃度の塩酸を通すことにより、ジェネレーター内で放射平衡に基づき生成した68GaCl3が溶出する。このような方法を用いるため、18Fほか前記核種生成に必要なサイクロトロンを準備する必要なしに、容易に68Gaを入手可能である。第2の利点としては、68Gaが金属であることが挙げられる。68Gaが金属であるため、キレート形成可能な化合物と容易に錯体を形成することができる。従って、キレート形成可能な化合物を予め準備しておけば、68Gaと即座に混合して短寿命放射核種を含む化合物をPETを用いる現場で簡便に調製することが可能である。一方、例えば18F等は、フッ化物イオンの溶液として入手可能であるが、通常、水素原子とこの18Fを置き換えた短寿命放射核を含む化合物として化学反応を経る必要がある。このような背景から、18Fの半減期は2時間であり、68Gaの68分より長いものの、それぞれの短寿命放射核種を含む化合物を入手するには、68Gaのほうが短時間で済むという利点がある。
【0004】
このようにPET用の短寿命核種として68Gaには大きな利点を有するが、前記68Ge/68Gaジェネレーターから得られた68Ga溶液(以下、「ミルキング溶液」と呼ぶ)には68Ge、68Zn、塩化水素、カラム担持層由来の物質等の無機物が不純物として含まれるため、PET用に68Gaを用いる前にこれらの無機物を除去することが必要であった。除去する方法としては、例えば、68Gaおよび68Ge等を陰イオン交換樹脂に吸着させるためミルキング溶液を4〜6Mの塩酸に調整し、その溶液を陰イオン交換樹脂と接触させ、68Ga、68Ge等の無機物を吸着させ、その陰イオン交換樹脂を、少量の脱イオン化水で洗浄して、68Gaを溶出させることにより、精製された68Ga溶液を得ることが知られていた(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。また、ミルキング溶液と陽イオン交換樹脂と接触させ、68Ga、68Ge等の無機物を吸着させ、その陽イオン交換樹脂を、低濃度の塩酸を含むアセトンで洗浄して68Gaを溶出させることにより、精製された68Ga溶液を得ることも知られていた(例えば、特許文献2および非特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、前者の陰イオン交換樹脂を用いる方法は、陰イオン交換樹脂に吸着した塩酸のため、少なからぬ量の脱イオン化水が必要であった。また、前者の陰イオン交換樹脂を用いる方法は、得られる精製68Ga溶液のpHが低いため、キレート形成可能な化合物を加えて反応させる前に、予め塩基を用いてpH3〜7程度まで調整する必要があった。このpH調整の際、溶液が塩基性になるとガリウムはキレート化を形成しにくい化学種を形成するため、塩基は少量頻回添加が必要であった。また、中和操作によって精製68Ga溶液の液量が増えることは避けられなかった。これらの結果、得られる精製68Ga溶液の濃度が低下し、ガリウムがキレート化を形成しにくい化学種を形成しやすくなるという問題があった。また、中和をすると溶液中の塩濃度が高くなる。得られた68Ga溶液とキレート形成化合物とを反応させ、最終的に短寿命放射核種を含む化合物を得るが、短時間でその化合物を調製するため、通常、できるだけ精製は行わずに生体投与用に調製する。そうすると、得られた化合物を含む溶液には、除去されていない高濃度の塩が含まれており、希釈なしにその溶液を投与するとマウスなどの小動物にとって致死的なレベルまでの負担がかかるという問題もあった。
【0006】
また、後者の陽イオン交換樹脂を用いる方法は、精製された68Ga溶液に多量のアセトンを含有する。このアセトンは、人体に有毒である。また、アセトンはその構造中にケトン基を有する。そうすると、得られた68Ga溶液とペプチド、蛋白質などのアミノ基を含むキレート形成化合物とを反応させ、最終的に短寿命放射核種を含む化合物を得る場合、アセトンが前記キレート形成化合物中のアミノ基と結合するという副次的な化学反応を起こし得る。さらに塩酸酸性下ではアセトン自身の重合体という副生成物も生成し得る。これらの理由から、精製された68Ga溶液からアセトンを完全に除去する工程が必須であった。しかしながら,68Gaの半減期は68分と短く、余分な工程が増えることは、PET用に最終的に必要な短寿命放射核種を含む化合物中の68Gaの含有量を著しく低下させるという問題があった。
【特許文献1】特表2006−526764号公報
【特許文献2】国際公開第2006/56395号パンフレット
【非特許文献1】I. Velikyanら、Bioconjugate Chem., 2004年、第15巻、p.554−560
【非特許文献2】F.W.E.Strelowら、Analytical Chemistry, 1971年、第43号、p.870−876
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から、短時間に簡便に高濃度のGaのイオンを単離する方法、そのための装置、Ga標識化合物の製造方法およびGa標識化合物を製造するための装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から前記Gaのイオンを単離する方法であって、
前記混合液を、陰イオン交換樹脂に接触させて、前記Gaのイオンおよび前記第4周期の元素のイオンを前記陰イオン交換樹脂に吸着させ、
前記吸着された陰イオン交換樹脂を、アルコールで洗浄して前記第4周期の元素のイオンを溶出させ、
前記アルコール洗浄された陰イオン交換樹脂を、水または希酸水溶液で洗浄して前記Gaのイオンを溶出させ、Gaのイオンを含む水溶液を得ることを含む。
【0009】
また、本発明は、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から前記Gaのイオンを単離するための装置であって、
陰イオン交換樹脂が充填された陰イオン交換樹脂カラムと、
アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、
水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、
単離された前記Gaのイオンを収集するためのユニットとを含む。
【0010】
また、本発明は、Ga標識化合物の製造方法であって、
Gaのイオンを含む水溶液を、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物と混合してGa標識化合物を得ることを含み、
前記Gaのイオンを含む水溶液が、本発明のGaイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液である。
【0011】
また、本発明は、Ga標識化合物を製造するための装置であって、
本発明のGaのイオンを単離するための装置と、
前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物とを反応させるための反応器とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から、短時間に簡便に高濃度のGaのイオンを単離する方法、そのための装置、Ga標識化合物の製造方法およびGa標識化合物を製造するための装置の提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、Gaの同位体としては、陽子数が同じ31で中性子数が異なるGa核種が挙げられる。Gaの同位体としては、具体的には、Gaの安定同位体と、放射性同位体とが挙げられる。前記Gaの安定同位体としては、69Gaおよび71Gaが挙げられる。また、前記Gaの放射性同位体としては、66Ga、67Ga、68Ga、70Gaおよび72Gaが挙げられる。本発明において、Gaの同位体としては、放射性同位体が好ましく、66Gaおよび68Gaがより好ましい。
【0014】
本発明において、前記Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液は、例えば、68Ge/68Gaジェネレーターから得られたミルキング溶液、加速器を用いた63Cu(α,n)66Ga、66Zn(p,n)66Ga、68Zn(p,3n)66Ga、natZn(p,x)66Gaおよび66Zn(d,n)67Ga、68Zn(p,2n)67Ga、natZn(p,x)67Ga等の原子核反応を行ったターゲット金属溶解液等が挙げられる。
【0015】
前記68Ge/68Gaジェネレーターとしては、当該分野において広く知られている(例えば、C.Loc’hら、J.Nucl.Med.1980年、第21巻、p.171−173参照)。前記ジェネレーターは、カラムに充填された、例えば有機樹脂または酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機金属酸化物に担持された68Geである。
【0016】
前記68Ge/68Gaジェネレーターから得られたミルキング溶液は、68GaCl3を含む溶液である。ミルキング溶液を得るには、このジェネレーターに、所定の濃度の塩酸を通し、ジェネレーター内で放射分解により遊離した68GaCl3を溶出させてもよい(この操作をミルキングと呼ぶ。)。前記塩酸の濃度は、前記カラムに充填された材料に応じて、適切な濃度を選択してもよい。具体的には、酸化チタンに担持された68Geがカラムに充填されている場合、例えば0.05〜0.2Mの塩酸、好ましくは0.09〜0.11Mの塩酸を通す。また、酸化スズに担持された68Geがカラムに充填されている場合、例えば0.5〜2Mの塩酸、好ましくは0.9〜1.1Mの塩酸を通す。
【0017】
また、本発明における前記第4周期の元素は、いわゆる不純物である。本発明において、前記第4周期の元素としては、周期表の第4周期の元素であり、Ga以外であれば限定されないが、例えば、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、As、Se、Br等が挙げられる。具体的には、前記68Ge/68Gaジェネレーターから得られたミルキング溶液である場合、前記第4周期の元素としては、GeやZnが挙げられる。なお、68Ge/68Gaジェネレーターのカラム担持層由来のTiの他、第3周期の元素であるAl、第5周期の元素であるSnも前記混合液に含まれてもよい。その他、前記原子核反応後のターゲット金属溶解液の場合、ターゲット元素であるCu、Znが挙げられる。さらに副反応で生じ得るその周辺元素も挙げられる。また、環境中に存在するFeも挙げられる。前記第4周期の元素は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0018】
本発明において、陰イオン交換樹脂としては、限定されないが、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。前記強塩基性陰イオン交換樹脂としては、OH-、Cl-、HCO3-の対イオンを有するものが挙げられ、HCO3-、OH-の対イオンを有するものが好ましい。
【0019】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、前記混合液を、陰イオン交換樹脂に接触させて、前記Gaのイオンおよび前記Gaを除く第4周期の元素のイオンを前記陰イオン交換樹脂に吸着させる工程は、例えば、前記陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、前記混合液を通過させることにより行うことができる。前記陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、前記混合液を通過させる場合には、前記混合液の通過速度(流速)を、例えば1〜5cc/分、好ましくは2〜3cc/分に調整する。また、前記混合液を前記陰イオン交換樹脂に接触させる工程は、例えば、0〜50℃、好ましくは15〜30℃で行うことができる。また、前記混合液を前記陰イオン交換樹脂に接触させる工程は、大気中、不活性ガス(アルゴン、窒素等)存在下等で行うことができ、不活性ガス存在下で行うのが好ましい。前記陰イオン交換樹脂の使用量は、前記混合液に含有されるGaのイオンを吸着するのに十分な陰イオン交換樹脂の量であれば、限定されない。なお、前記混合液中のGaを除く第4周期の元素のイオンは、前記陰イオン交換樹脂に全てまたは一部が吸着されてもよい。次のアルコールでの洗浄により、前記第4周期の元素のイオンは、前記陰イオン交換樹脂から溶出されるからである。
【0020】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、陰イオン交換樹脂に接触させる前に、前記混合液の塩酸濃度を2〜6M、好ましくは3〜5Mに調整する工程をさらに含むのが好ましい。前記塩酸濃度が、Gaイオンが前記陰イオン交換樹脂に吸着するのに適する酸性度だからである(例えば、「放射線概論」、飯田博美著、(株)通商産業研究社発行、2005年、第6版参照)。また、前記塩酸濃度であれば、Gaを除く第4周期の元素のイオンは、前記陰イオン交換樹脂への吸着の度合いが低い。従って、前記混合液の塩酸濃度を前記のように調節することにより、Gaを除く第4周期の元素のイオンを一部除去することが可能である。
【0021】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、前記吸着された陰イオン交換樹脂を、アルコールで洗浄する工程は、例えば、前記吸着された陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、アルコールを通過させることにより行うことができる。前記陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、前記アルコールを通過させる場合には、前記アルコールの通過速度(流速)を、例えば1〜5cc/分、好ましくは2〜3cc/分に調整する。また、前記アルコールで前記陰イオン交換樹脂を洗浄する工程は、例えば、0〜50℃、好ましくは15〜30℃で行うことができる。また、前記アルコールで前記陰イオン交換樹脂を洗浄する工程は、大気中、不活性ガス(アルゴン、窒素等)存在下等で行うことができ、不活性ガス存在下で行うのが好ましい。前記アルコールの使用量は、前記陰イオン交換樹脂に吸着されたGaを除く第4周期の元素のイオン等を溶出するのに十分な量であれば、限定されない。
【0022】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、前記アルコールは、例えば、炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状の低級アルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、2−メチルブタノール、n−ヘキサノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。前記アルコールとしては、炭素原子数1〜3の直鎖状または分岐状の低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノールおよびi−プロパノールがより好ましい。
【0023】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、前記洗浄された陰イオン交換樹脂を、水または希酸水溶液で洗浄してGaのイオンを溶出させ、Gaのイオンを含む水溶液を得る工程は、例えば、前記吸着された陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、水または希酸水溶液を通過させることにより行うことができる。前記陰イオン交換樹脂を充填させたカラムに、前記水または希酸水溶液を通過させる場合には、前記水または希酸水溶液の通過速度(流速)を、例えば0.1〜2cc/分、好ましくは0.5〜1cc/分に調整する。また、前記水でまたは希酸水溶液で前記陰イオン交換樹脂を洗浄する工程は、例えば、0〜50℃、好ましくは15〜30℃で行うことができる。また、前記水または希酸水溶液で前記陰イオン交換樹脂を洗浄する工程は、大気中、不活性ガス(アルゴン、窒素等)存在下等で行うことができ、不活性ガス存在下で行うのが好ましい。前記水または希酸水溶液の使用量は、前記陰イオン交換樹脂に吸着されたGaのイオンを溶出するのに十分な量であれば、限定されない。
【0024】
本発明のGaのイオンを単離する方法において、前記水は、例えば、脱イオン水、蒸留水、精製水、超精製水、例えばMilliQ水(ミリポア社製の超純水製造装置MilliQ(登録商標)を用いて精製した水)等が挙げられる。前記水としては、MilliQ水が好ましい。また、前記希酸水溶液は、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられ、好ましくは1M以下の塩酸、より好ましくは0.1〜0.5Mの塩酸等が挙げられる。Ga放射性同位体は、希酸溶液中でより安定であり、保存性が高くなるからである。
【0025】
本発明のGaのイオンを単離する方法は、水または希酸水溶液で陰イオン交換樹脂を洗浄してGaのイオンを溶出させる前に、アルコールで陰イオン交換樹脂を洗浄している。従って、本発明のGaのイオンを単離する方法は、従来の陰イオン交換樹脂を用いる方法に比べて、陰イオン交換樹脂に残留する塩酸が少ないため、より少量の水または希酸水溶液でもってGaのイオンを溶出させることが可能である。その結果、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、高濃度のGaのイオンの溶液を得ることができる。また、本発明のGaのイオンを単離する方法は、得られるGaのイオンの溶液のpHが過度に低くない。そのため、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、特に前記水を用いた操作の場合、塩基による中和は不要となり、少量の緩衝液を添加してpHを調整する程度で、Ga標識化合物を製造するための原料として使用するのに至適なpHに調整が可能である。その結果、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、短時間に高濃度のGaのイオンの水溶液を得ることができる。また、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、精製されたGaのイオンの溶液中に反応に有害な有機溶媒を含有しない。従って、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、Ga標識化合物を製造する前に有機溶媒を除去するという工程は不要である。従って、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、短時間で簡便に高濃度のGaのイオンの水溶液を得ることができる。
【0026】
本発明のGa標識化合物の製造方法は、前記のように、Gaのイオンを含む水溶液を、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物と混合してGa標識化合物を得ることを含み、前記Gaのイオンを含む水溶液が、請求項1に記載の単離方法により得られたGaのイオンを含む水溶液である。前記Ga標識化合物の製造方法において、前記Gaのイオンを含む水溶液中のGaのイオンが、66Gaおよび68Gaとからなる群から選択される1以上のGa放射性同位体のイオンを少なくとも含み、前記Ga標識化合物が、PET用Ga放射性同位体標識化合物であるのが好ましい。この場合、PET用Ga放射性同位体標識化合物が容易に製造できるからである。
【0027】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液に、少量の緩衝液を予め加える工程をさらに含んでもよい。前記Gaのイオンを含む水溶液のpHを反応に適するpHへ調整すれば、キレート形成化合物が前記Gaのイオンを含む水溶液中で安定に存在し、反応が促進されるからである。前記緩衝液は、特に制限されないが、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、PBS緩衝液、トリス塩酸緩衝液、EPPS緩衝液、PIPES緩衝液等である。
【0028】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合は、前記水溶液に前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物を加えても良いし、前記水溶液に前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物の溶液を加えても良い。混合の際に用いる溶媒としては、Gaのイオンと、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物とのキレート形成を妨げない溶媒であれば限定されないが、例えば、水、アセトニトリル、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0029】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合は、例えば、0〜100℃、好ましくは40〜90℃で行うことができる。また、前記混合工程は、大気中、不活性ガス(アルゴン、窒素等)存在下等で行うことができ、不活性ガス存在下で行うのが好ましい。
【0030】
本発明において、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物は、生理学的に許容される化合物であるのが好ましい。得られたGa標識化合物を、PET等において用いることができるからである。また、本発明において、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物は、放射標識錯体を用いる診断調査に必要とされる時間の間は安定であるGa放射性同位体標識化合物を形成するような化合物が好ましい。
【0031】
本発明において、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物とは、Gaのイオンとキレート形成する部位、例えば、酸素、窒素のような孤立電子対を有する元素を含む化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、ポリアザ大環状化合物、鎖状ポリアザポリカルボン酸またはそれらの誘導体等が挙げられる。前記ポリアザ大環状化合物としては、例えば、ポルフィリン、ペンタアザマクロ環状化合物、フタロシアニン、ヘム、DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸)、NOTA(1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N’,N’’−三酢酸)、TETA(1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸)等が挙げられる。前記鎖状ポリアザポリカルボン酸としては、例えばDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等が挙げられる。
【0032】
本発明において、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物は、前記のようなGaのイオンとキレート形成する部位のほかに、様々な置換基を含有してもよい。このような置換基としては、アミノ酸残基、ペプチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、アンチセンス、糖、タンパク質、リポタンパク質、抗体、抗体断片、糖ポリペプチド、炭水化物、分子量2000未満の有機小分子等が挙げられる。これらの置換基としては、標的とする分子と水素結合、イオン結合等の相互作用を起こしうる置換基が好ましい。
【0033】
本発明において、Ga標識化合物には、その塩も含む。Ga標識化合物の塩とは、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの無機塩基との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミン塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸塩、及びギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、酒石酸などの有機カルボン酸塩、及びメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸付加塩、及びアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩基性又は酸性アミノ酸といった塩基との塩又は酸付加塩が挙げられる。
【0034】
また、本発明において、Ga標識化合物及びその塩は、溶媒和物の形をとることもありうるが、これも本発明の範囲に含まれる。溶媒和物としては、好ましくは、水和物及びエタノール和物が挙げられる。
【0035】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合の後、さらに、Ga標識化合物の精製工程を含むのが好ましい。前記混合によりGa標識化合物が生成するが、生体に投与するにはその純度が高いほうが好ましいからである。前記精製は、例えば、固相抽出、HPLC精製等が挙げられる。前記固相抽出としては、例えば、ゲルろ過カラム、C18逆相カラム、シリカゲルカラム、アルミナカラム、無水硫酸ナトリウムカラム、けいそう土カラム等の使い捨て可能なカラムカートリッジを用いる抽出方法が挙げられる。前記固相抽出、HPLC精製等には、さらに凍結乾燥、溶媒除去(蒸留、加熱、ろ過等)等を行ってもよい。
【0036】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合の後、さらに、溶液を濃縮する工程を含んでもよい。前記混合によりGa標識化合物が生成するが、溶液中に含まれる前記Ga標識化合物の濃度が高いほうが、投与される生体への負荷が低くなるからである。
【0037】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合の後、さらに、生理食塩水等の製剤用液体を添加する工程を含んでもよい。このような製剤用液体を添加することにより、前記Ga標識化合物は、注射等の投与形態で即座に使用可能であるからである。
【0038】
本発明のGa標識化合物の製造方法において、本発明のGaのイオンを単離する方法により得られたGaのイオンを含む水溶液と、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物との混合の後、さらに、製剤用バイアルに注入する工程を含んでもよい。このような製剤用バイアルに注入することにより、前記Ga標識化合物は、注射用製剤として流通、保管することが可能だからである。
【0039】
また、前記のように、本発明は、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から前記Gaのイオンを単離するための装置であって、陰イオン交換樹脂が充填された陰イオン交換樹脂カラムと、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、単離された前記Gaのイオンを収集するためのユニットとを含む。
【0040】
前記Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液、および前記陰イオン交換樹脂については、前記のとおりである。
【0041】
本発明の前記Gaのイオンを単離するための装置の例について、図面に基づき説明する。図1に、本発明のGaのイオンを単離するための装置の基本的な構成の一例を示す。図示のように、この装置1は、陰イオン交換樹脂カラム6と、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、精製されたGaのイオンを収集するためのユニットと、流路10とを含む。流路10は、GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンを含む混合液を導入する流路である。前記アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットとしては、図中、アルコールタンク4と、流路2とを含む。このアルコールタンク4と陰イオン交換樹脂カラム6とは、流路2で連結されている。水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットとしては、図中、水または希酸水溶液タンク5と、流路3とを含む。この水または希酸水溶液タンク5と陰イオン交換樹脂カラム6とは、流路3で連結されている。単離されたGaのイオンを収集するためのユニットとしては、図中、流路7を含み、陰イオン交換樹脂カラム6から流路7が装置外に向けて導出されている。この流路7は、装置内のGaのイオン回収タンク(図示せず)に連結していてもよい。装置1は、さらに流路8を含み、陰イオン交換樹脂カラム6から流路8が装置外に向けて導出されている。この流路8は、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に連結していてもよい。
【0042】
この装置を用いたGaのイオンの精製は、例えば、つぎのようにして行われる。まず、流路10により、GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液が、陰イオン交換樹脂カラム6に導入され、前記混合液が前記カラム6中の陰イオン交換樹脂に接触される。これにより、前記混合液中の前記GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンとが、前記陰イオン交換樹脂に吸着される。吸着されなかった混合液中の溶媒および溶質(例えば、Gaを除く第4周期の元素のイオンの一部)は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、この陰イオン交換樹脂カラム6に、アルコールタンク4から流路2を経て、アルコールが供給される。これにより、前記吸着された陰イオン交換樹脂が、アルコールで洗浄され、Gaのイオン以外の元素が洗い流される。洗浄されたアルコール廃液は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、陰イオン交換樹脂カラム6に、水または希酸水溶液タンク5から流路3を経て、水または希酸水溶液が供給される。これにより、前記洗浄された陰イオン交換樹脂が、水または希酸水溶液で洗浄される。この洗浄により、陰イオン交換樹脂からGaのイオンが溶出され、そのGaのイオンを含む水溶液は流路7を経て装置内のGaのイオン回収タンク等に回収される。
【0043】
つぎに、図2に、本発明のGaのイオンを単離するための装置のその他の構成の一例を示す。この装置は、GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンを含む混合液が、68Ge/68Gaジェネレーターから得られる前記構成を具体化した装置である。なお、図2において、図1と同一部分には同一符号を付している。
【0044】
図示のように、前記の装置1と同様に、この装置20も、陰イオン交換樹脂カラム6と、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、精製されたGaのイオンを収集するためのユニットと、流路11とを含む。さらに、この装置20は、68Ge/68Gaジェネレーター12を含み、68Ge/68Gaジェネレーター12には、流路11が導入されている。68Ge/68Gaジェネレーター12と陰イオン交換樹脂カラム6は、流路10で連結され、流路10の途中にはポンプ13が配置されている。アルコールタンク4と陰イオン交換樹脂カラム6とを連結する流路2の途中には、ポンプ14が配置されている。また、水または希酸水溶液タンク5と陰イオン交換樹脂カラム6とを連結する流路3の途中には、ポンプ15が配置されている。
【0045】
この装置を用いたGaのイオンの精製は、例えば、つぎのようにして行われる。まず、流路11により、所定の濃度の塩酸が、68Ge/68Gaジェネレーター12に導入される。これにより、68Ge/68Gaジェネレーター12から、68GaとGaを除く第4周期の元素(主にGe、Znなど)のイオンとを含むミルキング溶液として溶出される。この溶液は、ポンプ13により加圧され、流路10を経て陰イオン交換樹脂カラム6に導入され、前記溶液が前記カラム6中の陰イオン交換樹脂に接触される。これにより、前記溶液中の前記68GaとGaを除く第4周期の元素のイオンとが、前記陰イオン交換樹脂に吸着される。吸着されなかった混合液中の溶媒および溶質(例えば、Gaを除く第4周期の元素のイオンの一部)は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、ポンプ14により加圧され、アルコールが、アルコールタンク4から流路2を経て、この陰イオン交換樹脂カラム6に供給される。これにより、前記吸着された陰イオン交換樹脂が、アルコールで洗浄される。洗浄されたアルコール廃液は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、ポンプ15により加圧され、水または希酸水溶液が、水または希酸水溶液タンク5から流路3を経て、この陰イオン交換樹脂カラム6に供給される。これにより、前記洗浄された陰イオン交換樹脂が、水または希酸水溶液で洗浄される。この洗浄により、陰イオン交換樹脂から68Gaが溶出され、その68Gaを含む水溶液は流路7を経て装置内のGaのイオン回収タンク等に回収される。
【0046】
また、本発明は、前記のように、Ga標識化合物を製造するための装置であって、本発明のGaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液からGaのイオンを単離するための装置と、前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物とを反応させるための反応器とを含む。
【0047】
前記Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液、および前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物については、前記のとおりである。
【0048】
本発明のGa標識化合物を製造するための装置は、前記装置が、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液を製造するユニットとをさらに含み、前記Gaのイオンを単離するための装置が、前記混合液を製造するユニットと、前記反応器との間に配置されるのが好ましい。このようなGa標識化合物を製造するための装置によれば、前記混合液から、精製次いで反応まで一気に行うことが可能となり、簡便であるからである。このようなGa標識化合物を製造するための装置においては、前記Ga標識化合物が、PET用Ga放射性同位体標識化合物であり、Gaの同位体が、66Gaおよび68Gaとからなる群から選択される1以上のGa放射性同位体であるのがより好ましい。このようなGa標識化合物を製造するための装置によれば、PET用Ga放射性同位体標識化合物を簡便に製造することが可能であるからである。後者の装置の場合、前記混合液を製造するユニットとしては、68Ge/68Gaジェネレーターを含むユニットが好ましい。
【0049】
本発明の前記Ga標識化合物を製造するための装置の例について、図面に基づき説明する。図3に、本発明のGa標識化合物を製造するための装置の基本的な構成の一例を示す。図3において、図1と同一部分には同一符号を付している。図示のように、本発明の装置30は、陰イオン交換樹脂カラム6と、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、精製されたGaのイオンを収集するためのユニットと、流路10と、反応器31とを含んでいる。反応器31と陰イオン交換樹脂カラム6とは、流路7で連結されている。反応器31は、攪拌装置、加熱装置、冷却装置など(図示せず)を含んでいてもよい。
【0050】
この装置を用いたGa標識化合物の製造は、例えば、つぎのようにして行われる。まず、流路10により、GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンを含む混合液が、陰イオン交換樹脂カラム6に導入され、前記混合液が前記カラム6中の陰イオン交換樹脂に接触される。これにより、前記混合液中の前記GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンとが、前記陰イオン交換樹脂に吸着される。吸着されなかった混合液中の溶媒および溶質(例えば、Gaを除く第4周期の元素のイオンの一部)は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、この陰イオン交換樹脂カラム6に、アルコールタンク4から流路2を経て、アルコールが供給される。これにより、前記吸着された陰イオン交換樹脂が、アルコールで洗浄される。洗浄されたアルコール廃液は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、陰イオン交換樹脂カラム6に、水または希酸水溶液タンク5から流路3を経て、水または希酸水溶液が供給される。これにより、前記洗浄された陰イオン交換樹脂が、水または希酸水溶液で洗浄される。この洗浄により、陰イオン交換樹脂からGaのイオンが溶出され、そのGaのイオンを含む水溶液は流路7を経て装置内反応器31に導入される。特に前記水を用いた操作の場合、前記水溶液が穏和な液性であることにより、反応器31に、予め、Gaのイオンとキレートを形成可能な化合物を導入しておくことが可能である。また、この場合、反応器31にGaのイオンを含む水溶液が導入されたと同時に混合が起こり、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物と、Gaのイオンとの間に、キレート形成が進行する。結果、キレート形成可能な化合物それぞれに適した反応時間を経て、Ga標識化合物が得られる。
【0051】
つぎに、図4に、本発明のGa標識化合物を製造するための装置のその他の構成の一例を示す。この装置は、GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンを含む混合液が、68Ge/68Gaジェネレーターから得られ、Ga標識化合物を精製する前記構成を具体化した装置である。なお、図4において、図2および3と同一部分には同一符号を付している。
【0052】
図示のように、前記の装置30と同様に、この装置40も、陰イオン交換樹脂カラム6と、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、精製されたGaのイオンを収集するためのユニットと、流路11とを含む。さらに、この装置40は、68Ge/68Gaジェネレーター12を含み、68Ge/68Gaジェネレーター12には、流路11が導入されている。68Ge/68Gaジェネレーター12と陰イオン交換樹脂カラム6は、流路10で連結され、流路10の途中にはポンプ13が配置されている。アルコールタンク4と陰イオン交換樹脂カラム6とを連結する流路2の途中には、ポンプ14が配置されている。また、水または希酸水溶液タンク5と陰イオン交換樹脂カラム6とを連結する流路3の途中には、ポンプ15が配置されている。さらに、装置40は、反応器31を含み、反応器31と陰イオン交換樹脂カラム6とは、流路7で連結されている。装置40は、さらに精製装置43、濃縮器47、製剤用液体タンク50およびバイアル53を含む。精製装置43と反応器31は、流路42で連結され、流路42の途中には、ポンプ41が配置されている。精製装置43は、さらに流路44を含み、精製装置43から流路44が装置外に向けて導出されている。精製装置43と濃縮器47とは、流路46で連結され、流路46の途中には、ポンプ45が配置されている。濃縮器47とバイアル53とは、流路49で連結され、流路49の途中には、ポンプ48が配置されている。製剤用液体タンク50と濃縮器47は、流路51で連結され、流路51の途中には、ポンプ52が配置されている。
【0053】
この装置を用いたGaのイオンの精製は、例えば、つぎのようにして行われる。まず、流路11により、所定の濃度の塩酸が、68Ge/68Gaジェネレーター12に導入される。これにより、68Ge/68Gaジェネレーター12から、68GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオン(主にGe、Znなど)とを含むミルキング溶液として溶出される。この溶液は、ポンプ13により加圧され、流路10を経て陰イオン交換樹脂カラム6に導入され、前記溶液が前記カラム6中の陰イオン交換樹脂に接触される。これにより、前記溶液中の前記68GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオンとが、前記陰イオン交換樹脂に吸着される。吸着されなかった混合液中の溶媒および溶質(例えば、Gaを除く第4周期の元素のイオンの一部)は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、ポンプ14により加圧され、アルコールが、アルコールタンク4から流路2を経て、この陰イオン交換樹脂カラム6に供給される。これにより、前記吸着された陰イオン交換樹脂が、アルコールで洗浄される。洗浄されたアルコール廃液は、流路8を経て、装置外へ排出するか、装置内の廃液回収タンク(図示せず)に回収される。つぎに、ポンプ15により加圧され、水または希酸水溶液が、水または希酸水溶液タンク5から流路3を経て、この陰イオン交換樹脂カラム6に供給される。これにより、前記洗浄された陰イオン交換樹脂が、水または希酸水溶液で洗浄される。この洗浄により、陰イオン交換樹脂から68Gaのイオンが溶出され、その68Gaのイオンを含む水溶液は流路7を経て装置内反応器31に導入される。反応器31に、予め、Gaのイオンとキレートを形成可能な化合物を導入しておいた場合、反応器31に68Gaのイオンを含む水溶液が導入されたと同時に混合が起こり、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物と、68Gaのイオンとの間に、キレート形成が進行して、68Ga標識化合物が得られる。反応後、反応器31中の反応混合物は、ポンプ41により加圧され、流路42を経て精製装置43に供給される。これにより、前記反応混合物は、精製装置43で精製される。精製されて精製装置43から導出された68Ga標識化合物を含む溶液は、ポンプ45により加圧され、流路46を経て濃縮器47に供給される。濃縮器47において濃縮された68Ga標識化合物を含む溶液は、次いで、ポンプ48により加圧され、流路49を経てバイアル53に供給される。この際、必要に応じて、ポンプ52により加圧されて、製剤用液体が、流路51を経て製剤用液体タンク50から濃縮器47に導入される。この製剤用液体により、濃縮器47において濃縮された68Ga標識化合物は洗い出され、バイアル53中に68Ga標識化合物の製剤用液体溶液が洗いこまれる。その結果、バイアル53中に68Ga標識化合物の製剤用液体溶液が調製される。
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によりなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
68Ge/68Gaジェネレーター12と、ポンプ13と、陰イオン交換樹脂カラム6と、ポンプ14とを、以下のようにして図5に示す構成の68Gaのイオンを精製するための装置を作製した。なお、図5において、図2と同一部分には同一符号を付している。68Ge/68Gaジェネレーター12としては、
IPL(Isotope Products Laboratories)社製の製品名「Gallium-68 Ionic Positron Generator(IGG099)、370MBq」(酸化スズカラムにGermanium-68を吸着させたもの、1M塩酸によるミルキング操作を用いて娘核種68Gaの溶出が保証されているジェネレーター)を用いた。陰イオン交換樹脂カラム6における陰イオン交換樹脂としては、MACHEREY-NAGEL社製の製品名「クロマフィックス(Chromafix 30-PS-HCO3)」(ポリスチレンゲル・アニオン交換充填剤、HCO3-型、45mg、FDG合成(18-精製)用として市販)を用いた。
【0056】
図示のように、前記の装置20と同様に、この装置60も、陰イオン交換樹脂カラム6と、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、精製された68Gaのイオンを収集するためのユニットと、流路11と、68Ge/68Gaジェネレーター12を含む。さらに、この装置60は、濃塩酸タンク64、流路65、ポンプ66、混合器67、ポンプ68、流路69を含む。濃塩酸タンク64と混合器67とは、流路65で連結されており、流路65の途中にはポンプ66が配置されている。また、混合器67と陰イオン交換樹脂6とは流路69で連結されており、流路69の途中にはポンプ68が配置されている。また、68Ge/68Gaジェネレーター12と混合器67とは、流路10で連結されており、流路10の途中にはポンプ13が配置されている。装置60において、アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、水を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットとしては、アルコールタンク4と、水タンク5と、流路61と、三方コック62と、ポンプ63とを含む。アルコールタンク4と、水タンク5とは、陰イオン交換樹脂カラム6と、Y字状の流路61で連結されており、流路61の分岐点には三方コック62が配置されている。さらに流路61の途中には、ポンプ63が配置されている。
【0057】
この装置60において、まず、68Ge/68Gaジェネレーター12に、流路11を通じて、1M塩酸(10.5ml)を供給した。これにより、68Ge/68Gaジェネレーター12から68GaのイオンとGaを除く第4周期の元素のイオン(主にGe、Znなど)を含むミルキング溶液(10.5mL)が、流路10を経て混合器67へ導出された。次に、混合器67へ、濃塩酸タンク64から、流路65を経てポンプ66により加圧されて濃塩酸(4mL)を供給して、混合器67中のミルキング溶液を、4M HClになるように調整した。この調整されたミルキング溶液(14.5mL)を、流路69を経てポンプ68により加圧して陰イオン交換樹脂カラム6に供給した。次に、陰イオン交換樹脂カラム6に、アルコールタンク4から流路61を経てポンプ63により加圧されてエタノール(3mL)を供給した。これにより、陰イオン交換樹脂をアルコールで洗浄した。次に、陰イオン交換樹脂カラム6に、水タンク5から流路61を経てポンプ63により加圧されてMilliQ水(0.8mL)を供給した。これにより、陰イオン交換樹脂から流路7を経て68Gaのイオンを含む水溶液(0.8mL弱)を得た。洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。なお、この実施例1の操作は、すべて、窒素雰囲気下に行った。
【実施例2】
【0058】
MilliQ水の量を0.4mLにした以外は、実施例1と同様にして行った。実施例2における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。
【実施例3】
【0059】
MilliQ水の量を0.2mLにした以外は、実施例1と同様にして行った。実施例3における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。
【実施例4】
【0060】
エタノールの代わりにメタノールを用いた以外は、実施例3と同様にして行った。実施例4における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。
【実施例5】
【0061】
エタノールの代わりにi−プロパノールを用いた以外は、実施例3と同様にして行った。実施例5における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。
【0062】
(比較例1)
エタノールの代わりに4N塩酸を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。比較例1における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。この比較例1は、I. Velikyanら、Bioconjugate Chem., 2004年、第15巻、p.554−560(非特許文献1)に記載の条件に対応する。なお、溶出液として用いた0.2mLのMilliQ水では、全く68Gaが得られなかったため0.8mLのMilliQ水を用いた。
【0063】
(比較例2)
エタノール等の洗浄を行わなかった以外は、実施例1と同様にして行った。比較例2における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。この比較例2は、特表2006−526764号公報(特許文献1)に記載の条件に対応する。なお、溶出液として用いた0.2mLのMilliQ水では、全く68Gaが得られなかったため0.8mLのMilliQ水を用いた。
【0064】
(比較例3)
エタノールの代わりにアセトニトリルを用いた以外は、実施例3と同様にして行った。比較例3における、洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた水溶液への68Gaのイオン溶出率(平均)(%)、水での溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液中の68Ge放射線量残量(平均)(Bq)および残量率(平均)(%)、得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHを、それぞれ表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%)を算出する際の68Ga放射線量は、BIODEX社製、Atomlab300 PET用ドーズキャリブレーターを用いて測定した。68GaのイオンおよびGaを除く第4周期の元素のイオンが吸着された際の陰イオン交換樹脂の放射線量(平均)に対し、洗浄後の陰イオン交換樹脂の放射線量(減衰補正値)の平均値を%で算出した。すなわち、下記の式を用いて算出した。
[数1]
(洗浄液での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残量率(平均)(%))=[(洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量(減衰補正値)の平均値)/(最初に68GaのイオンおよびGaを除く第4周期の元素のイオンが吸着された際の陰イオン交換樹脂の放射線量の平均値)]×100
【0067】
得られた68Gaのイオンを含む水溶液への溶出率(平均)(%)を算出する際の68Ga放射線量は、BIODEX社製、Atomlab300 PET用ドーズキャリブレーターを用いて測定した。68GaのイオンおよびGaを除く第4周期の元素のイオンが吸着された際の陰イオン交換樹脂の放射線量(平均)(%)を100%とし、得られた68Gaのイオンを含む水溶液への溶出放射線量(減衰補正値)の平均値を%で算出した。すなわち、下記の式を用いて算出した。
[数2]
(得られた68Gaのイオンを含む水溶液への溶出率(平均)(%))=[(得られた68Gaのイオンを含む水溶液の放射線量(減衰補正値)の平均値)/(洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量の平均値)]×100
【0068】
水での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残率(平均)(%)を算出する際、水での溶出後の陰イオン交換樹脂に残留する放射線量をBIODEX社製、Atomlab300 PET用ドーズキャリブレーターを用いて測定した。68GaのイオンおよびGaを除く第4周期の元素のイオンが吸着された際の陰イオン交換樹脂の放射線量(平均)(%)を100%とし、洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量(減衰補正値)の残量の平均値を%で算出した。すなわち、下記の式を用いて算出した。
[数3]
(水での洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量残率(平均)(%))=[(水で溶出後の陰イオン交換樹脂に残留する放射線量(減衰補正値)の平均値)/(洗浄後の陰イオン交換樹脂における放射線量の平均値)]×100
【0069】
また、得られた水溶液への68Ge混入量(平均)(Bq)、および混入率(平均)(%)として、前記得られた水溶液を68Ga放射線として完全に消失するとみなせる20半減期以上(2〜3日)保管し、SEIKO EG&G社製、GEM-20 ゲルマニウム半導体検出器を用いて68Ge放射線量を娘核種68Gaの511keVガンマ線として放射線量(Bq)を測定した。同様に保管したミルキング溶液そのままの68Ge放射線量(Bq)を測定し、得られた放射線量の平均値に対し、前記放射線量を元に放射線量残率(平均)(%)を算出した。すなわち、下記の式を用いて算出した。
[数4]
68Ge放射線量残量率(平均)(%))=[(得られた水溶液に混入する68Ge放射線量の平均値)/(ミルキング溶液における68Ge放射線量の平均値)]×100
【0070】
表1に示すように、実施例1〜5の結果から、本発明のGaのイオンを単離する方法によれば、溶出液量に対して、68Gaのイオン溶出後の陰イオン交換樹脂における放射線残率は低く、かつ、得られた68Gaのイオンを含む水溶液への68Gaのイオン溶出率は高いことが確認できた。また、68Ge混入量を比較例1に対して最大1/20程度まで減らすことが、比較例2に対して最大1/100程度まで減らすことが確認出来た。さらに、両者に対して得られた68Gaのイオンを含む水溶液のpHが1程度大きく、液量を考慮すると酸の量を最大1/40程度まで減らすことも確認できた。その結果、本発明のGaのイオンを単離する方法および、本発明のGaのイオンを単離するための装置によれば、得られたGaのイオンの溶液を中和することが不要であり、有機溶媒を除去することが不要であり、工程を省略することができ、従って、簡便に、短時間に高濃度かつ高純度のGaのイオンの溶液を得ることができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、PETを用いる医療現場において、医療従事者により68Ga標識化合物を製造する際に工程省略および品質安定化の点で有用である。
【0072】
本発明は、ミルキング溶液に含まれていた長半減期核種である68Geの混入量を検出誤差程度にまで減らせたことで、将来的に、68Gaの取り扱い制限が所謂PET核種(11C、13N、15O、18F)と同等に緩和されることが期待できる点で非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明のGaのイオンを単離するための装置の一例の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明のGaのイオンを単離するための装置の別の一例の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明のGa標識化合物を製造するための装置の一例の構成を示す図である。
【図4】図4は、本発明のGa標識化合物を製造するための装置の別の一例の構成を示す図である。
【図5】図5は、本発明のGaのイオンを単離するための装置のさらに別の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 Gaのイオンを単離するための装置
2 流路
3 流路
4 アルコールタンク
5 水または希酸水溶液タンク
6 陰イオン交換樹脂カラム
7 流路
8 流路
10 流路
11 流路
12 68Ge/68Gaジェネレーター
13〜15 ポンプ
20 Gaのイオンを単離するための装置
30 Ga標識化合物を製造するための装置
31 反応器
40 Ga標識化合物を製造するための装置
41 ポンプ
42 流路
43 精製装置
44 流路
45 ポンプ
46 流路
47 濃縮器
48 ポンプ
49 流路
50 製剤用液体タンク
51 流路
52 ポンプ
53 バイアル
60 68Gaを単離するための装置
61 流路
62 三方コック
63 ポンプ
64 濃塩酸タンク
65 流路
66 ポンプ
67 混合器
68 ポンプ
69 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から前記Gaのイオンを単離する方法であって、
前記混合液を、陰イオン交換樹脂に接触させて、前記Gaのイオンおよび前記第4周期の元素のイオンを前記陰イオン交換樹脂に吸着させ、
前記吸着された陰イオン交換樹脂を、アルコールで洗浄して前記第4周期の元素のイオンを溶出させ、
前記アルコール洗浄された陰イオン交換樹脂を、水または希酸水溶液で洗浄して前記Gaのイオンを溶出させ、Gaのイオンを含む水溶液を得ることを含む方法。
【請求項2】
陰イオン交換樹脂に接触させる前に、前記混合液の酸濃度を2〜6Mに調整する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合液が、68Ge/68Gaジェネレーターから得られたミルキング溶液である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液から前記Gaのイオンを単離するための装置であって、
陰イオン交換樹脂が充填された陰イオン交換樹脂カラムと、
アルコールを前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、
水または希酸水溶液を前記イオン交換樹脂カラムに供給するためのユニットと、
単離された前記Gaのイオンを収集するためのユニットとを含む装置。
【請求項5】
Ga標識化合物の製造方法であって、
Gaのイオンを含む水溶液を、Gaのイオンとキレート形成可能な化合物と混合してGa標識化合物を得ることを含み、
前記Gaのイオンを含む水溶液が、請求項1に記載の単離方法により得られたGaのイオンを含む水溶液である方法。
【請求項6】
請求項5に記載のGa標識化合物の製造方法であって、
前記Gaのイオンを含む水溶液中のGaのイオンが、66Gaおよび68Gaとからなる群から選択される1以上のGa放射性同位体のイオンを少なくとも含み、
前記Ga標識化合物が、陽電子放射断層撮像用Ga放射性同位体標識化合物である方法。
【請求項7】
Ga標識化合物を製造するための装置であって、
請求項4に記載のGaのイオンを単離するための装置と、
前記Gaのイオンとキレート形成可能な化合物とを反応させるための反応器とを含む装置。
【請求項8】
請求項7に記載のGa標識化合物を製造するための装置であって、
前記装置が、Gaの同位体から選択される1以上のGaのイオンと、Gaを除く第4周期の元素のイオンとを含む混合液を製造するユニットとをさらに含み、
前記Gaのイオンを単離するための装置が、前記混合液を製造するユニットと、前記反応器との間に配置される装置。
【請求項9】
請求項8に記載のGa標識化合物を製造するための装置であって、
前記Ga標識化合物が、陽電子放射断層撮像用Ga放射性同位体標識化合物であり、Gaの同位体が、66Gaおよび68Gaとからなる群から選択される1以上のGa放射性同位体である装置。
【請求項10】
請求項9に記載のGa標識化合物を製造するための装置であって、
前記混合液を製造するユニットが、68Ge/68Gaジェネレーターを含むユニットである装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229201(P2009−229201A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74153(P2008−74153)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、「創薬候補物質探索拠点」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】