説明

Gi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイ

本発明は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする薬学的に有効な化合物をスクリーニングおよび同定するための、選択された細胞において発現されるGi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づく信頼性がありかつ有効なインビトロアッセイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Gi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおける最も大きなスーパーファミリーの1つに該当する。それらは、多数の生理的障害および疾患に関与し、従って、薬剤および薬物発見のための重要な標的に該当する。現在開発中のすべての薬物のうち約60%がGPCRを標的にしている(非特許文献1)。
【0003】
GPCRは、それらの7つの貫通膜スパンニングドメインによって特徴付けられ、神経伝達物質、ホルモン、光および臭気物質のような多様な細胞外刺激物質によって活性化することができる。ヘテロ三量体Gタンパク質は、3つのサブユニット:αサブユニット(35kDa)ファミリー、βサブユニット(35〜36kDa)ファミリーおよびγ(6〜10kDa)サブユニットファミリーよりなる。アゴニスト結合は、グアノシン−5’−二リン酸(GDP)との交換におけるグアノシン−5’−三リン酸(GTP)のGαサブユニットへの会合を介する受容体の活性なコンホメーション適応およびGタンパク質の以後の活性化をもたらす(非特許文献2)。次いで、GαのGβγ二量体からの解離は、アデニリルシクラーゼ、イオンチャネルおよびホスホリパーゼのような下流のエフェクターのGαまたはGβγ二量体による活性化をもたらす。
【0004】
リガンド結合および機能アッセイを含むGPCRシグナリングプロセスにおける3つの主な工程の活用を含む多様なアレイの適用されたアッセイが利用可能である(検討については、非特許文献3)。これらの工程は、リガンドの受容体への結合、ヌクレオチド変化(GαサブユニットにおけるGDPのためのGTP)を生じる活性なコンホメーションにおける受容体のリガンド仲介安定化、および最後に、異なる細胞内セカンドメッセンジャー経路への以後の共役を含む。
【0005】
GPCRに共役するGタンパク質は、4つのファミリーGq、Gs、GiおよびG12/13を含み(検討については、非特許文献4)、そして特異的セカンドメッセンジャー経路への共役は、受容体および使用するアゴニストの性質のGタンパク質への指向に依存する(非特許文献5;非特許文献4)。
【0006】
Gq共役受容体の活性化は、イノシトール1,4,5−三リン酸(IP3)の作製を介するカルシウム貯蔵の放出を含むホスホリパーゼCの活性化をもたらす。この経路の機能アッセイは、主に細胞を基盤とするものであり、そしてカルシウムおよびIP3シグナルを活用する。
【0007】
GsおよびGi共役受容体の活性化は、アデニリルシクラーゼの活性化(Gs)または阻害(Gi)をもたらし、それぞれ細胞内cAMPレベルの増加または減少を生じる。蛍光または発光の読み取りを使用する多くの種類のアッセイ形式は、細胞内cAMPの測定に適用することができる(検討については、非特許文献6)。それらはGs共役受容体について良好な結果を提供する。
【0008】
それにもかかわらず、これらの技術を使用するGi共役受容体のための作動可能なアッセイを入手することは、さらなる課題である。Gi共役受容体によって誘導される効果の検出は、アデニリルシクラーゼを刺激し、そしてcAMPを産生するためのフォルスコリンによるプレ活性化を必要とし、そしてGi共役受容体に対するアゴニストの結合によって仲介されるcAMP産生の阻害が、フォルスコリンによる刺激の60%を超えることはほとんどない。さらに加えて、アデニリルシクラーゼ活性の優先的なフォルスコリン刺激の結果としてのGi受容体アゴニストによって仲介されるcAMP減少のアンタゴニストによる放出を測定することはなお、煩雑さを増大する(非特許文献3)。
【0009】
これらの制限を克服するための1つの方法は、キメラ(Gqi5)またはプロミスカス(promiscuous)なGタンパク質(G16/15)を使用することによって、Gi共役受容体の正常な薬理学的エフェクターをアデニリルシクラーゼからPLCβ経路に変換することである(非特許文献7)。しかし、非同族(non−cognate)なGタンパク質を使用すると、受容体/Gタンパク質相互作用の重要な改変を誘導し、それによってアッセイの関連性が減少することが示されている。
【0010】
cAMP濃度をアッセイするための他のアプローチとして、レポーター遺伝子アッセイが挙げられる(非特許文献8)。しかし、この場合、二次的事象(ここでは、レポーター遺伝子の活性化または阻害)を測定すると、スクリーニングにおいて偽陽性および陰性のヒットが生じ易い。
【0011】
クルンピンスキー(Krunpinski)らによる哺乳動物アデニリルシクラーゼの最初のクローニング(非特許文献9)後、哺乳動物アデニリルシクラーゼの少なくとも9つのアイソフォームがクローニングされている。配列類似性、およびGタンパク質、カルシウムおよびリン酸化による多様な調節を示す調節特性に基づいて、いくらかのアデニリルシクラーゼファミリーが同定されている(非特許文献10)。これらの細胞内モジュレーターは、アデニリルシクラーゼアイソザイムに多様な影響を及ぼす。従って、受容体の活性化におけるcAMP応答は、所定の細胞に存在する細胞性アデニリルシクラーゼアイソザイムプールに依存する。
【0012】
哺乳動物細胞系統は、発現される受容体タンパク質のフォールディングおよび翻訳後修飾に適応した細胞機構を有する。従って、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびヒト胎児腎(HEK)のような細胞系統は、薬物への開発が可能な化学実体をスクリーニングおよび同定するためのツールとして広範に使用されている。しかし、細胞系統において発現されるGPCRの共役特性の特異性は、しばしば、それらの生来の環境におけるほど有効ではない(非特許文献11)。さらに、シグナル伝達カスケードにおける各工程の結果は、細胞に存在する特定のアイソザイムプールの調節特性に依存する(非特許文献12)。
【0013】
哺乳動物細胞では、組織特異的に発現されるアデニリルシクラーゼの異なるアイソフォームが同定されている。GPCRのシグナル伝達経路において使用される哺乳動物細胞系統におけるアデニリルシクラーゼアイソフォームの役割を同定するための最初の研究は、1998年にバルガE.V.(Varga E.V.)らによって実施された。彼らは、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して、CHOおよびB12細胞中のアデニリルシクラーゼcDNAを増幅し、次いで同定および配列決定した。彼らは、CHO中のアデニリルシクラーゼアイソフォームVIおよびVIIならびにB12細胞中のアデニリルシクラーゼアイソフォームVIおよびIXを同定した(非特許文献12)。アデニリルシクラーゼアイソフォームII、III、VIおよびIXもまた、HEK−293細胞において報告された(非特許文献13)。
【0014】
Gsαによる活性化およびGiαによる阻害に対するアデニリルシクラーゼアイソフォームの感受性についてのトランスフェクション研究は、エフェクターレベルにおけるシグナリングの集積に関する貴重な情報を提供した(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。Gαサブユニットのうち少なくとも18の異なるサブタイプが同定されている。特に、アデニリルシクラーゼを阻害し、そしてイオンチャネルを調節するGi/oサブファミリーとして、Gi1、Gi2、Gi3、Go1、Go2、Go3、G、Gt1、Gt2およびGgustが挙げられる。
【0015】
注目すべきことに、Gαiは、すべてのアデニリルシクラーゼアイソフォームを阻害するのではないこと、およびアデニリルシクラーゼアイソフォームI、VおよびVIのみがGiファミリーに感受性であることが示された。
【0016】
別の情報は、cAMPに基づくGPCR細胞アッセイにおけるGi効果の測定に対する予め必要とされるフォルスコリン活性化の影響に関する。この分子は、cAMP形成のインビトロアクチベーターとして広範に使用されている。それは、広範な細胞系統において、ほとんどすべてのアデニリルシクラーゼアイソフォームを直接活性化し、そして環状AMPレベルを上昇させることが示されている(非特許文献17)。現在、アデニリルシクラーゼアイソフォームIXのみが、フォルスコリンによって刺激されないことが同定されている。
【0017】
上記のように、Gs共役受容体を研究するための有用なツールを提供するcAMP濃度の変化を測定するための多くの種類の技術が適用されている。しかし、直接アデニリルシクラーゼを活性化して、Giの効果を検出するフォルスコリンによるプレ活性化が必要であることから、Gi共役受容体をスクリーニングおよびプロファイリングするための妥当な稼動性のcAMP機能アッセイの開発が制限されている。アデニリルシクラーゼ応答性の独特な細胞および組織特異的パターンを説明する9つの主要な同定されたアデニリルシクラーゼアイソフォームの不均一な発現パターン、Giタンパク質による阻害に対する所定のアデニリルシクラーゼアイソフォームのみの感受性、ならびにGi効果を検出するために予め必要とされるフォルスコリン活性化に添加された有意な数のGPCR(非特許文献4)の複数のGタンパク質共役サブタイプはすべて、Gi共役受容体に専用の稼動性cAMP機能性スクリーニングアッセイの開発において遭遇する困難に有意に寄与する。
【0018】
選択的Gi共役受容体に専用の妥当な稼動性のcAMP機能性スクリーニングおよびプロファイリングアッセイの開発において遭遇する困難は、今日、これらの受容体のための新たな薬物候補の首尾良い同定における突破口を提示している。これらの制限の克服を可能にする方法の開発が、Gi共役受容体に対するヒット物およびリード物の同定に戦略上重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】ルンドストローム(Lundstrom)ら、Trends Biotechnol.,2005年、23,103−108
【非特許文献2】クリスチャンセン(Kristiansen,K.)、Phamacol Ther,2004年、103,21−81
【非特許文献3】グリースリー,P.J.(Greasley P.J.)およびヤンセン,F.P.(Jansen,F.P.)、Drug Discovery Today:Technologies、2005年、2,2,163−169
【非特許文献4】ウォン,S.K.−F.(Wong,S.K.−F.)、Neurosignals,2003年、12,1−12
【非特許文献5】アカム,E.C.(Akam,E.C.)ら、Br J Pharmacol.,2001年、132,4,950−8
【非特許文献6】ウィリアムズ,C.(Williams,C.)ら、Nat Rev Drug Discov.,2004年、3,2,125−35
【非特許文献7】ルイ,A.M.(Lui,A.M.)ら、J.Biomol.Screen,2003年、8,39−49
【非特許文献8】ケント,T.C(Kent,T.C)ら、Journal of Biomolecular Screening,2005年、10,5,437−446
【非特許文献9】クルンピンスキー(Krunpinski)ら、Science,244,1558−1564
【非特許文献10】スナハラ(Sunahara)ら、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,1996年、36,461−480
【非特許文献11】ケナスキン,T.(Kenaskin,T.)、Pharmacol.Rev.,1996年、48,413−463
【非特許文献12】バルガ,E.V.(Varga E.V.)ら、European Journal of Pharmacology,1998年、348,R1−R2
【非特許文献13】ヘレベオ,M.(Helleveo,M.)ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,1993年、192,311
【非特許文献14】スナハラ,R.K.(Sunahara,R.K.)ら、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.1996年、36,461−480
【非特許文献15】クーパー,D.M.(Cooper,D.M.)ら、Adv.Sec.Mess.Phosph.Res.,1998年、32,23−51
【非特許文献16】シモンズ,W.F(Simonds,W.F)、Trends Pharmacol Sci.,1999年、20,2,66−73.1999
【非特許文献17】シーモン,K.B.(Seamon,K.B.)ら、J Cyclic Nucleotide Res.,1981年、7,4,,201−24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、当該分野における上記の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、第1の局面では、本発明は、細胞において発現されるGi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイを使用して、試験化合物をスクリーニング、同定または選択するための方法であって、以下の工程:
(a)場合により、選択された細胞において、細胞内cAMPレベルのモジュレーションに関与するGαiおよびアデニリルシクラーゼアイソフォームを同定すること、
(b)前記選択された細胞において、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先させること、
(c)前記細胞と、フォルスコリンまたはNKH−477および試験化合物とを接触させること;次いで
(d)前記試験化合物と前記細胞とを接触させることにより生じるcAMPレベルを測定すること、
を含んでなる、上記方法を提供する。
【0022】
第2の局面では、本発明は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする試験化合物によるcAMPレベルのモジュレーションを測定するためのアッセイシステムまたはキットを提供し、前記アッセイシステムまたはキットは、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームを主に発現する細胞を含んでなる。
【0023】
別の局面では、本発明は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームおよびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの両方を発現する選択された細胞から操作された組換え細胞であって、ここで、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方が、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先される、上記組換え細胞を提供する。
【0024】
本発明は、Gi共役受容体の潜在的リガンドをスクリーニング、同定または選択するためのツールとして上記のように規定される組換え細胞の使用をさらに提供する。
【0025】
発明の説明
本発明のさらなる説明の前に、本明細書、実施例および特許請求の範囲において用いられる所定の用語を以下に規定する。
【0026】
定義
本明細書において使用する「DNA構築物」は、1つ以上のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有し、そしてコードされるタンパク質の発現を容易にし得るポリヌクレオチドに作動可能に連結された任意のプロモーター、転写開始、転写終結、または他のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを意味する。
【0027】
用語「異種DNA」、「異種核酸」または「外来DNA」は、それが存在するゲノムの部分としては天然に存在しないDNAに関する。一般的に、必ずしも必要ではないが、そのようなDNAは、それが発現される細胞によって通常は産生されないタンパク質をコードする。異種DNAは同じ種由来であり得るが、好適な実施態様では、それは異なる種由来である。本明細書では、それが発現される細胞に対して当業者が異種または外来性であると認識またはみなすであろうあらゆるDNAが、異種DNAという用語に包含される。
【0028】
本明細書において使用する用語「細胞」は、例えば、ハイブリドーマ細胞を含む哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞のような真核生物から誘導されるすべての正常な(天然の)および形質転換された細胞を指す。哺乳動物種の例として、霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ヒヒ)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット、ハムスター)および反芻動物(例えば、ウシ、ウマ)が挙げられる。哺乳動物細胞は、種(例えば、ヒト、げっ歯類)、組織供給源(脳、肝臓、肺、心臓、腎臓、皮膚、筋肉)および細胞の種類(例えば、上皮、内皮)に関するあらゆる認識された供給源から誘導され得る。さらに、組換え遺伝子を発現する形質転換された細胞は、本発明において使用され得る。
【0029】
本発明の方法の実践において使用すべき細胞は、初代細胞、二次細胞または不死化細胞(即ち、樹立された細胞系統)であってもよい。それらは、当業者に周知の技術によって調製してもよく、または免疫学的および微生物学的商業的供給源(例えば、American Type Culture Collection,Manassas、バージニア州)から購入してもよい。代替的にまたはさらに、例えば、アデニリルシクラーゼアイソフォーム、Gαiタンパク質または受容体を発現する遺伝子のような目的の遺伝子を含有するように、細胞を遺伝子操作してもよい。
【0030】
有用な哺乳動物細胞系統の非制限的例として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、チャイニーズハムスター肺(CHL)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、COS細胞、HeLa細胞、THP細胞系統、TAgジャーカット細胞、ハイブリドーマ細胞、癌腫細胞系統、肝細胞などのような動物およびヒト細胞系統が挙げられる。
【0031】
本明細書において使用する「安定的にトランスフェクトされた」は、宿主細胞のゲノム、例えば、宿主染色体への組込みによるか、または少なくとも2週間、好ましくは、4箇月を超えるエピソームトランスフェクションによる外因性DNAの細胞、もしくは細胞系統への導入および維持を意味する。
【0032】
本明細書において使用する「一過的にトランスフェクトされた」は、トランスフェクトされた外因性DNAが宿主細胞のゲノムに組み込まれていないことを意味する。
【0033】
siRNAを発現するDNA構築物は、標準的な技術を使用して、哺乳動物細胞に一過的にトランスフェクトすることができる。しかし、細胞がトランスフェクトされる能力には大きなばらつきがある。従って、異なるトランスフェクション試薬および細胞培養条件を、各細胞の種類について試験する必要がある。
【0034】
「細胞内cAMPレベルのモジュレーション」に関する用語「モジュレーション」は、その多様な文法的形態(例えば、「モジュレートされた」、「モジュレーション」、「モジュレートする」など)におけるモジュレーションを包含することが意図され、そして受容体の下流の1つ以上のシグナル伝達経路の誘導、刺激、増強、阻害を包含することが意図される。
【0035】
用語「不活化」または「不活化する」は、遺伝子の発現の全体的もしくは部分的のいずれかの阻害(ダウンレギュレーションもしくはノックダウンともいう)またはタンパク質の活性の全体的もしくは部分的のいずれかの阻害に関する。例えば、この用語は、機能性遺伝子産物の産生が防止または阻害されることを意味する。不活化は、例えば、遺伝子の欠失(ノックアウトともいう)、または発現が生じないような遺伝子を制御するプロモーターの変異、もしくは遺伝子産物が不活性であるようなコーディング配列の変異によってか、あるいは「RNAi」技術のいずれかによって、達成され得る。
【0036】
用語「RNAi」または「RNA干渉」技術は、サイレンスしようとするRNAに対して配列において相同である二本鎖RNA(dsRNA)によって仲介される遺伝子サイレンシングの転写後プロセスを指し、そして動物および植物細胞のような広範な真核細胞において観察される。細胞の種類に依存して、dsRNAは、標的RNAの配列特異的分解を誘導する21〜23ヌクレオチド(nt)の分子、いわゆる低分子干渉RNA(siRNA)にプロセスされ得る(シャープ(Sharp)、2001年)。さらに加えて、発現が不活化されるべき標的遺伝子に特異的なsiRNA、または細胞、特に、哺乳動物細胞におけるそのようなsiRNAの発現を可能にするベクターのトランスフェクションは、そのような特異的siRNAが、標的遺伝子の発現のダウンレギュレーションを誘導する場合の哺乳動物遺伝子研究における強力なツールであることが証明されている(エルバシール(Elbashir)ら、Nature.2001年5月24日;411(6836):494−8;「Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells」)。さらに加えて、RNAiは、治療用と、診断および標的の検証のために使用することができる(欧州特許第1144623号明細書;欧州特許第1214945号明細書;欧州特許第1352061号明細書;米国特許第5898031号明細書;米国特許第6107094号明細書)。
【0037】
本明細書において使用する用語「siRNA」は、インビトロで設計された、約23ヌクレオチド長以下、好ましくは、19〜23ヌクレオチド長の二本鎖の短鎖干渉RNA分子を意味する。科学文献には、siRNAが標的mRNAの配列特異的分解を仲介するものとして記載されている。
【0038】
本明細書において使用する用語「miRNA」は、ステムループRNA前駆体(プレ−miRNA)からプロセスされた内因性の15〜35ヌクレオチド、好ましくは、19〜30ヌクレオチド、最も好ましくは、21〜24ヌクレオチドの低分子RNAを意味する。miRNAは、2つの転写後機構:mRNA切断または翻訳抑制によって、遺伝子発現をダウンレギュレートすることができる。
【0039】
本明細書において使用する用語「ステムループ」は、相補的塩基配列を伴わない配列によって隔てられた2つの相補的塩基配列を含む一本鎖ポリヌクレオチドを意味し、相補的塩基配列は、対応するポリリボヌクレオチドにおいて重鎖構造の形成を可能にし、一本鎖ループ配列が2つのアニールした塩基配列に連結している。ステムループのステム部分を形成する相補的塩基配列は、少なくとも2、より好ましくは、少なくとも3塩基対の長さよりなる。ステム塩基対が第1および第3の配列の相補配列に対応する特定の実施態様では、第2の配列に相補するステム塩基対の1つ以上が、第1および第3の配列に相補する塩基対としての役割を兼ねることができる。これらの特別な環境下では、第2の配列のステム部分は、ただ1つの相補塩基対を含有するか、または相補塩基対を含有しないと考えられる。
【0040】
好適なステムループ配列は、tRNA、snRNA、rRNA、mtRNA、または構造RNA配列のようなRNA分子に存在することが当業者に既知のステムループ領域に基づく。当業者であれば、Mfold(M.ズッカー(M.Zuker)、D.H.マシューズ(D.H.Mathews)およびD.H.ターナー(D.H.Turner)Algorithms and Thermodynamics for RNA Secondary Structure Prediction:A Practical Guide In RNA Biochemistry and Biotechnology,11−43、J.バルシスゼウスキー(J.Barciszewski)およびB.F.C.クラーク(B.F.C.Clark)編、NATO ASI Series,Kluwer Academic Publishers,(1999年))、RNAstructure(マシューズ,D.H.(Mathews,D.H.);サビナ,J.(Sabina,J.);ズッカー,M.(Zuker,M.);およびターナー,D.H.(Turner,D.H.)、「expanded sequence dependence of thermodynamic parameters improves prediction of RNA secondary structures」、Journal of Molecular Biology,1999年、288,911−940)、Vienna RNA PackageのRNAfold(イボ・ホファッカー(Ivo Hofacker)、Institut fur theoretische Chemie,Wahringerstr.17,A−1090Wien、墺国)、Tinoco plot(チノコ,I.Jr.(Tinoco,I.Jr.)、ウーレンベック,O.C.(Uhlenbeck,O.C.)およびレバイン,M.D.(Levine,M.D.)(1971年)Nature230,363−367)、保存された二次構造を探索するConStruct(ラック,R.(Luck,R.)、スティガー,G(Steger,G.)およびリーズナー,D.(Riesner,D.)(1996年)、Thermodynamic prediction of conserved secondary structure:Application to RRE−element of HIV,tRNA−like element of CMV,and mRNA of prion protein.J.Mol.Biol.258,813−826;ならびにラック,R.(Luck,R.)、グラフ,S.(Graf,S.)およびスティガー,G.(Steger,G.)(1999年)、ConStruct:A tool for thermodynamic controlled prediction of conserved secondary structure.Nucleic Acids Res.21,4208−4217)、FOLDALIGN,(J.ゴロドキン(J.Gorodkin)、L.J.ヘイヤー(L.J.Heyer)およびG.D.ストルモ(G.D.Stormo).Nucleic Acids Research、第25巻、第18号、3724−3732頁、1997年a;ならびにJ.ゴロドキン(J.Gorodkin)、L.J.ヘイヤー(L.J.Heyer)、およびG.D.ストルモ(G.D.Stormo).ISMB5;120−123,1997年b)、ならびにRNAdraw(オーレ・マットズラ(Ole Matzura)およびアンダース・ウェンボルグ(Anders Wennborg)Computer Applications in the Biosciences(CABIOS)、第12巻、第3号、1996年、247−249)のような推定コンピュータモデリングプログラムを使用して、ステムループRNA構造を容易に同定することができる。
【0041】
本明細書において使用する用語「化合物」は、(例えば、「試験化合物」におけるように)外部から添加される試験化合物を含むように意図されている。試験化合物は、細胞と接触させてもよい。活性についてスクリーニングすることができる例示的化合物として、ペプチド、核酸、炭水化物、小さな有機分子および天然産物抽出物ライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。アゴニスト作用およびアンタゴニスト作用を有する化合物の両方とも、本発明においてスクリーニング、同定または選択することが意図される。
【0042】
本明細書において使用する用語「活性化合物」は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする薬学的に有効な化合物を指す。この用語はリガンドと均等である。
【0043】
用語「フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるアデニリルシクラーゼアイソフォーム」は、フォルスコリンまたはNKH−477によって潜在的に刺激され得るアデニリルシクラーゼアイソフォームを示す。
【0044】
本明細書において使用する用語「cAMP形成のインビトロアクチベーター」は、ほとんどすべてのアデニリルシクラーゼアイソフォームを直接活性化するフォルスコリン、およびフォルスコリン誘導体、特に、アデニリルシクラーゼアイソフォームVおよびVIの強力な選択的アクチベーターであるNKH−477とも称される塩酸コルホルシンダロパート(6−(3−ジメチルアミノプロピオニル)フォルスコリン塩酸塩を指す。
【0045】
本明細書において使用する用語「有効量」は、意図する目的を達成するのに十分であるモジュレーター化合物、または少なくとも1つのそのような化合物を含んでなる薬学的組成物の量を指す。例えば、意図する目的は、被験体の生物体全体または特定の組織におけるcAMP蓄積もしくはアデニリルシクラーゼ活性を阻害であってもよく、あるいは増大することであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】CHO細胞におけるGαiタンパク質を特徴付けるウエスタンブロットを示す。
【図2】配列番号10(ACVII_miR_173)の標的化された配列およびプラスミドに挿入されるべきmiRNA構築の例を示す。
【図3】CHO−K1細胞におけるアデニリルシクラーゼVIIの発現に対する異なるmiRNAの抑制効果を示すブロットを表す。
【図4】共焦点蛍光顕微鏡を使用することによって、アデニリルシクラーゼVIIの発現に対する異なるmiRNAの抑制効果を確認する。
【図5】アセチルコリンおよびキンピロール(quimpirole)によって誘導されるcAMPの測定を特徴付ける用量−反応曲線を示す。
【図6】2つの細胞系統(M4/CHOおよびM4/CHO/miRNA)においてフォルスコリンによって誘導されるcAMPの産生に対するオキソトレモリンの効果を説明する。
【図7】フォルスコリンまたはNKH−477によって誘導されるcAMPの産生の用量依存的シグナルを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする薬学的に有効な化合物をスクリーニングおよび同定するための、選択された細胞において発現されるGi共役受容体のための信頼性がありかつ有効なインビトロでのcAMPに基づくアッセイを提供する。
【0048】
上記のように、Gi共役受容体による細胞におけるcAMPレベルのモジュレーションの観察には、従来、フォルスコリン、アデニリルシクラーゼアイソザイムのアクチベーターによる細胞の前処置が必要である。活性化時のcAMP応答が特定の細胞または細胞系統に存在する細胞性アイソザイムに依存することを考慮すると、Gαi効果を検出するのに必要なフォルスコリン仲介アデニリルシクラーゼアイソフォーム刺激の非特異性は、Gi共役受容体のアゴニストによって仲介されるcAMP産生の効率的な阻害の欠如に有意に寄与し得る。結果として、得られるアゴニスト仲介阻害が、フォルスコリンによる刺激の60%を超えることはほとんどない。そのため、これは、受容体アゴニストによって仲介されるcAMP減少のアンタゴニストによる反転を測定することを困難にしている。
【0049】
本出願人は、cAMP形成のインビトロアクチベーターによって仲介されるcAMP産生のアゴニスト阻害を効率的に改善し、従って、Gi共役受容体を発現する特定の細胞におけるアゴニスト効果の反転(reversal)を介するアンタゴニスト活性の容易な定量化をうまく行うための1つの方法が、cAMP形成のインビトロアクチベーターによって刺激され、Gαiタンパク質に感受性であるアデニリルシクラーゼの影響を優先させることであることを示している。
【0050】
従って、得られるGi効果の検出は、Gαiファミリーに対して感受性な予め刺激されたアデニリルシクラーゼアイソフォーム活性のアゴニストとの相互作用によって誘導される特異的阻害に主に関連する。
【0051】
従って、第1の局面では、本発明は、細胞において発現されるGi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイを使用して、試験化合物をスクリーニング、同定または選択するための方法であって、以下の工程:
(a)場合により、選択された細胞において、細胞内cAMPレベルのモジュレーションに関与するGαiおよびアデニリルシクラーゼアイソフォームを同定すること、
(b)前記選択された細胞において、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の影響よりも優先させること、
(c)前記細胞と、フォルスコリンまたはNKH−477および試験化合物とを接触させること;次いで
(d)前記試験化合物と前記細胞とを接触させることにより生じるcAMPレベルを測定すること、
を含んでなる、上記方法を提供する。
【0052】
最も適切な細胞の選択は、細胞内cAMPレベルのモジュレーションに関与するGαiタンパク質およびアデニリルシクラーゼアイソフォームの両方の同定を含んでなる。実際に、異なるアデニリルシクラーゼアイソフォームの発現パターンは細胞または組織特異的であることが示されている。従って、アデニリルシクラーゼアイソフォームの発現に関して文献上データが得られていない細胞について、本発明における使用のために選択される特異的細胞種類において発現されるアデニリルシクラーゼアイソフォームの同定の第1の工程が実行されなければならない。
【0053】
現在まで、クローニングされた哺乳動物アデニリルシクラーゼのうち、アイソフォームIX以外のすべてについて、フォルスコリンによって刺激されることが同定されている。さらに加えて、NKH−477はアデニリルシクラーゼアイソフォームVおよびVIの強力な選択的アクチベーターであることが示されている。さらに、アデニリルシクラーゼI、VおよびVIのみが、Gαiファミリーに感受性である。
【0054】
適切な細胞系統の選択は、特定のアデニリルシクラーゼの有無によって影響される。選択された細胞は、フォルスコリンまたはNKH−477によって活性化され、そしてGαiタンパク質による阻害に感受性であることが示される少なくとも1つのアデニリルシクラーゼアイソフォームを発現すべきである。別の実施態様では、本発明の方法において使用される細胞は、フォルスコリンまたはNKH−477によって活性化され、そしてGαiタンパク質による阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームのみを含有し、フォルスコリンまたはNKH−477によって活性化され、そしてGαiタンパク質による阻害には非感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームは含有しない。
【0055】
本発明の実施態様は、内因性のGαiタンパク質およびアデニリルシクラーゼアイソフォームを発現する天然の細胞ならびに樹立された細胞系統よりなる群から細胞を選択することにある。
【0056】
本発明の別の実施態様では、樹立された細胞系統は、クローニングされたGαiタンパク質および/またはアデニリルシクラーゼアイソフォームを発現する。
【0057】
特定の実施態様では、宿主細胞は、哺乳動物細胞、酵母細胞、またはCHO、HEKもしくは昆虫SF9系統の中から選択される樹立された細胞系統の中から選択される真核細胞である。好適な実施態様では、宿主細胞はCHO−K1またはCHO−S系統である。
【0058】
好適な実施態様では、細胞は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でない、1〜4種、より好ましくは4種、より好ましくは3種、より好ましくは2種、および最も好ましくは1種を包含する一定数のアデニリルシクラーゼアイソフォームを発現する。
【0059】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームが、選択された細胞において発現される場合、当該分野に関する説明に記載の方法において遭遇する問題、即ち、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には非感受性であるアデニリルシクラーゼを含む多くのアデニリルシクラーゼのフォルスコリンまたはNKH−477による活性化の結果としてGi共役受容体によって仲介されるcAMP産生の阻害の乏しい誘導を克服するために、それらを不活化しなければならない。
【0060】
あるいは、選択された細胞は、Gαiタンパク質および/またはアデニリルシクラーゼアイソフォームが天然には発現されない細胞種類に対応し得る。この場合、上記のアイソフォームの所定のアイソフォームの外因性発現は、例えば、発現させるための目的の特異的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターの一過的または安定的なトランスフェクションによって、得ることができる。
【0061】
本発明の特定の実施態様では、工程b)は、フォルスコリンによって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の影響の方を、フォルスコリンによって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の影響よりも優先させることよりなる。
【0062】
別の特定の実施態様では、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の影響よりも優先させることは、選択された細胞とNKH−477とを接触することによって達成される。この実施態様では、工程c)は、前記細胞と試験化合物とを接触させることによって達成されるが、前記細胞とフォルスコリンとを接触させても達成されない。実際、上記のように、工程c)において達成される選択された細胞におけるcAMPの産生の刺激がもはや必要でないほど、NKH−477は特異的なアデニリルシクラーゼアイソフォームの強力な選択的アクチベーターであるため、NKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)は、工程b)において既に刺激されている。
【0063】
従って、選択された細胞とNKH−477とを接触させることによって工程b)が達成される場合、工程b)およびc)は、連続的または同時のいずれかで実施され得る。
【0064】
本出願人は、cAMP形成のインビトロアクチベーターとしてフォルスコリンの代わりに化合物NHK−477を使用すると、驚くべきことに、アデニリルシクラーゼアイソフォームVおよび/またはVIを発現する細胞において20%までのcAMPの産生の増加を生じることを示している。
【0065】
従って、特定の実施態様では、本発明の方法の工程b)は、NKH−477で特異的にアデニリルシクラーゼアイソフォームVおよび/またはVIを刺激することによって達成される。
【0066】
別の特定の実施態様では、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477に感受性であるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先させることは、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームを特異的に不活化することによって達成される。そのようなGαi非感受性アデニリルアイソフォームの不活化は、例えば、それらの触媒活性を特異的に阻害することによって、または好ましくはそれらの発現をダウンレギュレートすることによって、達成することができる。
【0067】
用語「フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームを特異的に不活化すること」は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの方を、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームよりも優先的に、そして優先的かつ排他的に不活化することを示す。
【0068】
本発明の方法では、細胞における遺伝子発現を改変する一方、細胞生存率に影響を及ぼすことなくそのような改変を行うように注意しなければならない。
【0069】
核酸分子は、当業者に公知の方法によって、場合により、複製、および/または哺乳動物細胞に組入れることができる構築物に挿入することができる。本発明の実践では、分子生物学、微生物学、および組み換えDNAにおける多くの従来の技術を使用することができる。そのような技術を周知であり、そして例えば、サンブルック(Sambrook)ら、1989年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;DNA Cloning:A Practical Approach、第Iおよび第II巻、1985年(D.N.グローバー(D.N.Glover)編);Oligonucleotide Synthesis,1984年、(M.L.ゲイト(M.L.Gait)編);Nucleic Acid Hybridization,1985年、(ヘイムズ(Hames)およびヒギンズ(Higgins));Transcription and Translation,1984年(ヘイムズ(Hames)およびヒギンズ(Higgins)編);Animal Cell Culture,1986年(R.I.フレッシュニー(R.I.Freshney)編);Immobilized Cells and Enzymes,1986年(IRL Press);バーバール(Perbal)、1984年、A Practical Guide to Molecular Cloning;the series,Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,1987年(J.H.ミラー(J.H.Miller)およびM.P.カルロス(M.P.Calos)編、Cold Spring Harbor Laboratory);ならびにMethods in Enzymology、第154巻および第155巻(それぞれ、ウー(Wu)およびグロスマン(Grossman)、ならびにウー(Wu)編)において詳細に説明されている。
【0070】
工程(b)は、多様な方法で達成することができる。例示的実施態様では、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477に感受性であるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先させることは、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害は感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム遺伝子の発現を増加することによって達成される。
【0071】
本発明のさらなる実施態様では、Gi共役受容体特異的経路を干渉することが同定される天然の細胞または樹立された細胞系統由来のすべての種類の遺伝子は、これらの特異的経路を優先させるためにアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。さらに、試験化合物に対する応答において目的のGi共役受容体を発現し、そしてGiに対するアデニリルシクラーゼアイソフォーム応答を増大することが疑わしい選択される細胞系統に存在しない外因性遺伝子を、アッセイを改善するために、発現させるか、あるいは選択された他の内因性の遺伝子またはsiRNAもしくはmiRNAを含む任意の種類のオリゴヌクレオチドと共に同時発現させることができる。
【0072】
所定のアゴニストが、Gタンパク質共役の促進によるG共役受容体状態のための高い親和性を実証することができることは周知のことである。多くの天然の受容体システムでは、そのような複合体の形成に利用可能なGタンパク質の量は制限されておらず、そして効果的なアゴニストによって、完全な受容体集団を高親和性の三元複合体に変換することができる(ケナニン,T.(Kenanin,T.)、TiPS,1997年、18,456−464)。しかし、例えば、哺乳動物細胞系統を含むいくつかのシステムでは、Giタンパク質サブタイプとして必要とされるGタンパク質の利用可能性が制限されている。一方、本発明に関して、フォルスコリンまたはNKH−477による同定された内因性アデニリルシクラーゼアイソフォームの予め必要とされる刺激は、Gαiによる阻害の程度を制限し得る(デッサウアー,C.,W.(Dessauer,C.,W.)、The Journal of Biological Chemistry,2002年、277,32,28823−28829)。一方、本発明に従えば、フォルスコリンもしくはNKH−477および/またはGαs刺激アデニリルシクラーゼのGαi阻害を強化するために、同じプラスミドにおいて特異的miRNAおよび特異的なGiサブタイプタンパク質を同時発現することが可能である樹立された安定な宿主細胞系統を開発することができる。これを例示するために、アデニリルシクラーゼVII特異的miRNAを安定的に発現するCHO−K1およびCHO−Sを使用して、好ましくは、同じプラスミドにおいて、特異的アデニリルシクラーゼアイソフォームVII miRNAおよび特異的なGαiタンパク質特異的サブタイプを同時発現することによって、特異的なGiタンパク質に共役するGPCRを発現する妥当かつ堅牢なcAMPに基づく細胞アッセイを開発することができる。
【0073】
本発明の1つの実施態様では、選択された細胞は、目的のGiタンパク質を内因的に発現する。なお他の実施態様では、細胞は、異種のGiタンパク質を発現するように操作される。両方の場合、宿主細胞の1つ以上の内因性遺伝子を不活化することが所望され得る。
【0074】
本発明の方法に従えば、Gαiタンパク質は、アデニリルシクラーゼを阻害し、Gi1、Gi2、Gi3、G01、G02、G03、G、Gt1、Gt2およびGgustを含むGi/0サブファミリーの中から選択される。
【0075】
本発明では、さまざまな真核宿主における発現のために、多くの周知のベクターを使用することができる。例えば、周知の哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトすることによって、Gαiタンパク質またはGi共役受容体を発現させてもよい。
【0076】
当業者は、所定のタンパク質の発現を同定するための多くの技術を自由に使用することができる。例えば、選択された細胞において発現されるアデニリルシクラーゼアイソフォームの同定は、PCR、好ましくは、縮重プライマーを使用するRT−PCR増幅によって実施することができる。あるいは、各アイソフォームに特異的な抗体を使用することによって、選択された細胞において、どのアデニリルシクラーゼアイソフォームが発現されるかを同定するために、ウエスタンブロット分析を使用することができる。
【0077】
これまでに同定された異なる種類のアデニリルシクラーゼは、共通の構造を共有している。それぞれ、大きな細胞質ループによって隔てられた6つの推定膜貫通領域よりなる2つのドメイン、ならびにカルボキシル末端において大きな細胞質ループを有する。アデニリルシクラーゼの異なるアイソフォームについては、タウシッグR(Taussig R)、ギルマンAG(Gilman AG)(1995年)Mammalian membrane−bound adenylyl cyclases.J Biol Chem 270およびスナハラRK(Sunahara RK)、デッサウアーCW(Dessauer CW)、ギルマンAG(Gilman AG)(1996年)Complexity and diversity of mammalian adenylyl cyclases.Annu Rev Pharmacol Toxicol36,461−80において検討される。
【0078】
一本鎖核酸、例えば、DNAまたはRNAオリゴもしくはポリヌクレオチドが相補性によって二本鎖複合体を形成する能力に基づいて、配列類似性を有する核酸の同定のための多様な方法が当該技術分野において公知である。特に、低いストリンジェンシー条件下で、例えば、アデニリルシクラーゼプローブによって二本鎖複合体を形成することが可能な特異的標的核酸の存在について、サンプルをスクリーニングしてもよい。本明細書において使用する「サンプル」として、ゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、組織由来の核酸分子抽出物、または細胞培養由来の核酸分子抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
複合体形成後、標的核酸分子は、当該技術分野において公知の方法によって単離される。方法にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素PCR(RT−PCR)が含まれ、ここで、サンプルDNAまたはcDNAの領域を増幅するために、標的核酸配列に特異的な2つのプローブが使用される。PCRはまた、単一のアデニリルシクラーゼプローブ、および既知の遺伝子反復配列に相補的な第2のオリゴヌクレオチドで実施してもよい。
【0080】
一般的に、ノーザンまたはサザンブロットにおいて使用される場合、アデニリルシクラーゼプローブは、検出マーカー、例えば、32P、35S、ビオチン、FITCなどで標識される。
【0081】
本発明において使用される核酸は、周知の細胞から直接単離してもよい。あるいは、テンプレートとして化学的に合成された鎖またはゲノム材料を使用して、本発明の核酸を生成するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を使用することができる。PCRに使用されるプライマーは、本明細書において提供する配列情報を使用して合成することができ、そして適切な新しい制限部位を導入するため、所望であれば、組み換え発現のための所定のベクターへの組み入れを容易にするために、さらに設計することができる。
【0082】
特定のmRNAに特異的である標的配列を同定するために、標的mRNA由来の複数の配列を選択することができる。標的mRNAに高い相同性を有する他のmRNAとの配列アラインメントが使用される。選択された細胞においてGαiまたはアデニリルシクラーゼアイソフォームを同定することが目的である場合、遺伝子相同技術を使用することができる。本発明の特定の場合では、Giタンパク質またはアデニリルシクラーゼアイソフォームの配列がGenbankから利用可能である。例えば、マウスアデニリルシクラーゼVI遺伝子(NM_007405)を使用して、CHO細胞中の相同ハムスター遺伝子を同定することができる。
【0083】
本発明は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの発現を、任意の種類のアプローチによってダウンレギュレートすることができる天然の細胞または樹立された細胞系統の使用を含んでなる。特に好適な細胞は、所定の遺伝子の発現をダウンレギュレートするために、RNAi技術を実行することができる細胞である。この技術は、マイクロRNA(miRNA)として適応されるRNAiの設計、選択、次いで、使用を含む。
【0084】
RNAiによる不活化は、不活化しようとする所定の標的遺伝子に特異的なsiRNAまたはmiRNAのような適応されるRNAiを一過的にトランスフェクトすることによってか、あるいはそのようなsiRNAまたはmiRNAをコードする発現ベクターを一過的もしくは安定的のいずれかでトランスフェクトするかのいずれかによって、入手してもよい。
【0085】
特定の実施態様では、miRNAの発現が所望される。miRNAの発現は、操作されたプレ−miRNA一次転写産物を含むDNAに基づくベクターによって入手し得る。設計されるポリヌクレオチド配列は、例えば、pSilencer4.1−CMV(Ambion)、pRc/RSV、pCMV5もしくはpRc/CMV2、pRNA−CMV3.1(GenScript Corporation)のような真核細胞ベクター、またはpRNA−U6.1(GenScript Corporation)もしくはpSilencer2.0−U6(Ambion)のようなU6プロモーター由来のベクター、またはpRNA−H1.1(GenScript Corporation)およびpSilencer3.0−H1(Ambion)のようなHiプロモーター由来のベクターにおける発現のために挿入することができる。
【0086】
本発明の特定の実施態様では、miRNAを発現するために設計されるポリヌクレオチドは、ノックダウン効率を大いに増加することが示されているヘアピン構築物に対するDrosha切断部位を含む(ボーデン(Boden)ら、2004年、シルバ(Silva)ら、2005年)。
【0087】
有利なことに、ヘアピンは、19〜22ntのdsRNAおよびヒトmiR30由来の19ntループよりなり得る。さらに加えて、本発明の別の実施態様では、ヘアピンのいずれかの側にmiR30ループおよび/または125ntのmiR30フランキング配列があると、miRNA適応を伴わない従来のshRNA設計と比較して、発現されるヘアピンのDroshaおよびDicerプロセシングが10倍を超えて増加する(シルバ(Silva)ら、2005年)。この技術については、実施例のセクションでさらに詳述する。
【0088】
所定の実施態様では、リガンドが不明な「オーファン受容体」に対して活性化合物を同定するための本明細書に記載の方法が使用される。
【0089】
本発明の特定の実施態様では、方法は、細胞において発現されるGi−共役受容体に関して、それらのアゴニストもしくはアンタゴニスト活性を確かめるための多数の試験化合物の迅速なスクリーニングまたはプロファイリングを可能にする。
【0090】
試験化合物は、本発明の方法の工程d)の結果に基づいて、スクリーニング、同定または選択される。具体的には、本発明の方法によってスクリーニング、同定または選択される試験化合物は、前記試験化合物の非存在下で本発明の方法に従って実施される測定に比べて、選択された細胞におけるcAMPレベルのモジュレーションを生じる化合物である。
【0091】
試験化合物は、細胞におけるシグナルをモジュレートするために前記試験化合物と相互作用する任意の受容体であり得る受容体タンパク質と相互作用することができる。例えば、標的受容体は細胞表面受容体であってもよい。本発明の方法は、以下のようなGi共役受容体をモジュレートする能力を潜在的に有する化合物の迅速かつ信頼性がある(rapid a reliable)同定を可能にするスクリーニング方法であることを理解すべきである:
[α]2−アドレナリン受容体、[α]2B−アドレナリン受容体、[β]2−アドレナリン受容体、m2AChR、m4AChR、D2ドーパミン受容体、D3ドーパミン受容体、D4ドーパミン受容体、A1アデノシン受容体、5−HT1a受容体、5−HT1b受容体、5HT1様受容体、5−HT1d受容体、5HT1d様受容体、5HT1dβ受容体、fMLP受容体、fMLP様受容体、ソマトスタチンSSTR1およびSSTR2、SSTR3、カナビノイド受容体(CB1/CB2)、C5aアナフィラトキシン受容体、インターロイキン8(IL−8)IL−8RA、IL−8RB、δオピオイド受容体、κオピオイド受容体、mip−1/RANTES受容体、ロドプシン、赤オプシン、緑オプシン、青オプシン、代謝型グルタミン酸mGluR1−6、ATP受容体、ニューロペプチドY受容体。
【0092】
特定の実施態様では、本発明は、上記の方法の工程を実行することによって、選択された細胞におけるGi共役受容体モジュレート活性を潜在的に有する試験化合物をスクリーニング、同定または選択するための方法を提供する。細胞外刺激を細胞内シグナル、即ち、機能的応答をもたらすcAMPレベルのモジュレーションに変換するために、すべてのGi共役受容体は、Giタンパク質に物理的に共役しなければならない。従って、本発明の方法において同定されるどの化合物がGi共役受容体のリガンドであるかをさらに決定することについては、二次干渉経路によって細胞のcAMPに対して作用するそれらの化合物を排除するために、さらなる特徴付けが必要であり得る。この特徴付けは、例えば、同定される試験化合物がどの受容体に結合するかを決定するために、既知のGi共役受容体に対する競合アッセイによって、達成することができる。
【0093】
本発明に従えば、スクリーニングまたはプロファイリングを、ハイスループット様式で実施することができる。
【0094】
本発明の方法の特定の実施態様では、Gi共役受容体に対する試験化合物の潜在的効果は、フォルスコリンまたはNKH−477によって処置された細胞のcAMPレベルと、試験化合物によって処置されたかもしくは処置されていない細胞のcAMPレベルとを比較することによって行われる。
【0095】
細胞内cAMPの測定は、当該分野において周知の検出アッセイによって達成してもよい。それらのうち、例えば、SPA(Amersham Biosciences)、FlashplatesおよびAlphaScreen(Perkin Elmer life and Analytical Sciences)、蛍光偏光(Perkin Elmer lifesciences,Amersham Biosciences)、DiscovereX/HitHunter、β−Gal EFC(DiscoverX/GE healthcare)、時間分解FRET(Cisbio International,Perkin Elmer Lifesciences)、Electrochemiluminescence(Meso Scale Discovery)、CatchPoint(Molecular Devices)ACTOne cAMPアッセイ(BD Biosciences)としてHTSに使用される最も一般的な自動化技術を使用することができる。
【0096】
前記アッセイは、例えば、サンドイッチアッセイを含むホモジニアスまたはヘテロジニアスアッセイであってもよい。
【0097】
本発明の別の実施態様では、試験化合物によって誘導される細胞内cAMPレベルモジュレーションの測定は、放射能、比色、蛍光または発光を使用する技術による細胞内cAMPレベルの変化の測定によって実施することができる。
【0098】
本発明の特定の実施態様では、選択された細胞が、マルチウェルアッセイプレートの複数のウェルに配置される。細胞は、例えば、条件下の試験化合物を伴うアッセイプレートのいくつかのウェルにおいて、平衡化を可能にするのに十分な時間、インキュベートされ得る。次いで、試験は、例えば、時間分解蛍光(TRF)技術および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術を組み合わせる標識アプローチによって読み取られる。FRETは、適切な供与および受容蛍光団との間の非放射性エネルギー移動を指す。
【0099】
蛍光読み取りの量は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする有効量の活性化合物によって誘導されるアデニリルシクラーゼ活性に比例する。
【0100】
本アッセイにおいて使用すべき細胞は、標準的な細胞培養技術に従って培養してもよい。例えば、細胞は、しばしば、滅菌環境の適切な容器中、37℃で、加湿された95%空気−5%CO2雰囲気を含有するインキュベーターにおいて増殖される。容器は、撹拌培養物を含有しても、または静置培養物を含有してもよい。多様な細胞培養培地には、ウシ胎児血清のような組成が明らかでない生物学的液体を含有する培地、ならびに293SFM無血清培地(Invitrogen Corp.,Carlsbad、カリフォルニア州)のような十分に組成が明らかである培地が含まれ得る。細胞培養技術は、当該技術分野において周知であり、そして多様な細胞の種類の培養について確立されたプロトコルが利用可能である(例えば、R.I.フレッシュニー(R.I.Freshney)、「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique」、第2版、1987年、Alan R.Liss,Inc.を参照のこと)。
【0101】
好適な実施態様では、本発明は、試験化合物をスクリーニング、選択または同定するための上記の方法においてアデニリルシクラーゼVII発現がノックダウンされるCHO−SまたはCHO−K1細胞を実装することを含んでなる。
【0102】
本発明のさらなる局面は、細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする試験化合物によるcAMPレベルのモジュレーションを測定するためのアッセイシステムまたはキットに関し、前記アッセイシステムまたはキットは、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームを主に発現する細胞を含んでなる。
【0103】
本明細書において使用する用語「主に発現する」は、上記のように、選択された細胞における、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームに対する、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームのより優勢な影響を示す。
【0104】
特定の実施態様では、本発明のアッセイシステムまたはキットは、フォルスコリンもしくはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの発現が、miRNAによる特異的標的化によって不活化されている細胞を含んでなる。
【0105】
本発明のアッセイシステムまたはキットは、その細胞と、フォルスコリンまたはNKH−477および試験化合物とを接触させ、次いで、前記接触から生じるcAMPのレベルを測定することによって実行される。
【0106】
特定の実施態様では、本発明は、アッセイシステムまたはキットを提供し、ここで、前記細胞は、i)特異的なGαiタンパク質、あるいはフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォームをコードする核酸配列(ii)およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームをコードするアデニリルシクラーゼ転写産物を標的化する特異的miRNAを安定的に同時発現する。
【0107】
別の特定の実施態様では、本発明のアッセイシステムまたはキットは、上記の組換え細胞を含んでなる。
【0108】
別の局面では、本発明は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームおよびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの両方を発現する選択された細胞から操作された組換え細胞であって、ここで、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方が、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先される、上記組換え細胞を提供する。
【0109】
特定の実施態様に従えば、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの発現は、本発明の組換え細胞においてアップレギュレートされる。
【0110】
別の特定の実施態様では、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームは、本発明の組換え細胞において、例えば、前記アイソフォームをコードする遺伝子の欠失またはRNAiによるダウンレギュレーションによって、不活化される。
【0111】
さらに、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの優先される影響の方を達成する異なる方法については、上記で説明した。
【0112】
本発明の組換え細胞の特定の実施態様では、前記組換え細胞は、前記細胞が操作される細胞において発現されるアデニリルシクラーゼアイソフォームに特異的な1つ以上のmiRNAをコードする少なくとも1つの組み換え発現ベクターで、好ましくは安定的にトランスフェクトされる。別の実施態様では、前記少なくとも1つ以上のmiRNAをコードする前記組み換え発現ベクターは、特異的なGαiタンパク質か、あるいはフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的なアデニリルシクラーゼアイソフォームをコードする1つ以上の核酸配列を含んでなる組み換え発現ベクターで同時トランスフェクトされる。
【0113】
本発明の組換え細胞においてトランスフェクトされる組み換え発現ベクターは、操作されたプレ−miRNA構造を含む適切な真核細胞発現ベクターであり得る。有利なことに、組み換え発現ベクターは、ヘアピン構築物においてDrosha切断部位をさらに含んでなり得る。ヘアピンステムは、好ましくは、標的遺伝子から誘導される21〜22ntのdsRNA(成熟miRNA)よりなり、そしてヘアピンループは、好適な実施態様では、19ntを含んでなり得る。
【0114】
本発明の特定の実施態様では、組換え細胞系統が操作され、これは、異種のGαiタンパク質、およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームをコードするアデニリルシクラーゼ転写産物を標的化する特異的miRNAを同時発現する。
【0115】
特定の実施態様では、本発明の組換え細胞は、(i)操作されたプレ−miRNA一次転写産物、およびii)前記組換え細胞において安定的に同時発現される特異的なGαiタンパク質、あるいはフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォームをコードする核酸配列を含んでなる組み換えDNAベクターで安定的に形質転換されている細胞である。
【0116】
特定の実施態様では、本発明の組換え細胞は、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォーム、およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームをコードするアデニリルシクラーゼ転写産物を標的化する特異的miRNAを同時発現するように操作されている細胞である。
【0117】
特定の実施態様では、組換え細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞系統である。
【0118】
本発明に従う組換え細胞は、Gi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイにおけるツールとして使用することができる。従って、本発明は、Gi共役受容体の潜在的リガンドをスクリーニング、同定または選択するためのツールとして上記のように規定される組換え細胞の使用をさらに提供する。
【0119】
CHO−K1またはCHO−S細胞の使用が特に好適である。これらの細胞は、European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Porton Down、UK受託番号85051005から入手可能である。HEK−293細胞は、受託番号85120602(ECACC)下で入手可能であり、そしてsf9細胞は、受託番号89070101(ECACC)下で入手可能である。
【0120】
これより本発明について概説するが、それは、本発明の所定の局面および実施態様の単なる例示の目的のために含まれ、本発明を制限することを意図しない以下の実施例を参考にすることによって、さらに容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0121】
実施例として、および本発明を例示するために、CHO細胞(CHO−K1およびCHO−S)を適切な細胞系統として選択して、Gi共役受容体のための堅牢かつ妥当なcAMPに基づく細胞アッセイを樹立した。これらの細胞系統の特徴付けにより、アデニリルシクラーゼアイソフォームVIおよびVIIのみがCHOにおいて発現されることが確認されている。既に記載のように、両方のアイソフォームともフォルスコリンによって活性化されるが、アデニリルシクラーゼアイソフォームVIのみがGαiに感受性であり、アデニリルシクラーゼアイソフォームVIIはGαsによって活性化される。
【0122】
アデニリルシクラーゼアイソフォームVIは、これらの細胞系統においてフォルスコリンによって刺激されるが、活性型Giタンパク質によって阻害されないアデニリルシクラーゼVIIをノックダウンするためにmiRNAを使用するアプローチに好ましいCHO細胞系統(CHO−K1またはCHO−S)において、優勢に発現される。
【0123】
本明細書において例示されるように、CHO細胞系統(CHO−K1およびCHO−S)におけるアデニリルシクラーゼVIIの発現のノックダウンのためのmiRNAの設計を実施した。CHO細胞におけるアデニリルシクラーゼVIIの発現を抑制するmiRNA構築物の同定を、培養したCHO−K1およびCHO−S細胞を、異なる1〜3のmiRNA構築物で同時に一過的にトランスフェクトし、そしてmiRNAでトランスフェクトした培養細胞における遺伝子発現(QPCR、ウエスタンブロット)およびフォルスコリンまたはNKH−477によって誘導されるcAMPの産生を測定することによって、実施した。適切なmiRNAの選択後、本発明者らは、アデニリルシクラーゼVIIの発現がmiRNAによって抑制される安定な細胞系統(CHO−K1およびCHO−S)を樹立することができた。
【0124】
本発明に従えば、Gi共役受容体特異的経路が、これらの特異的経路を干渉する細胞系統の1つ以上の同定される内因性遺伝子の発現のアップまたはダウンレギュレーションを介して優先される条件の確立は、細胞生存率に対して標的化された遺伝子のアップもしくはダウンレギュレーションの認められないかまたは制限される影響の制御を含む。
【0125】
CHO−K1およびCHO−S細胞系統について本明細書において例示されるように、アデニリルシクラーゼVIおよびVIIの相対量の特徴付けが決定されており、CHO細胞系統におけるアイソフォームVIの顕著な発現が示されている。これは、フォルスコリンによって刺激されるが、活性型Giタンパク質によっては阻害されないアデニリルシクラーゼVIIをノックダウンするためにsiRNAまたはmiRNAを使用するアプローチに好ましい。
【0126】
1.イムノブロットによるCHO細胞におけるGαiタンパク質の特徴付け
膜の調製およびウエスタンブロッティング。CHO−SおよびCHO−K1細胞を、PBS中、37℃で洗浄し、全容積で5mlのPBS、0.5mM EDTA、0.2M NaOHに回収した。細胞を、5分間、500g、4℃でペレット化し、そしてTris/HCl50mM、EGTA/Tris1mM、EDTA1mM、トリプシン10μg/mL、ロイペプチン1μg/mL、PMSF75μg/mL、ペプスタチン1μMを含有する3mLの緩衝液に再懸濁した。細胞を、−80℃で凍結し、37℃で融解し、そして26ゲージ針を介して10回通過させることにより破砕した。膜を、48000gで、20分間、4℃で遠心分離し、そして20mM Hepes/NaOH、150mM NaCl、トリプシン10μg/mL、ロイペプチン1μg/mL、PMSF75μg/mL、ペプスタチン1μMに再懸濁した。タンパク質を、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用するBio−Radタンパク質アッセイキットで定量した。サンプル(20〜40μgの膜タンパク質)を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4〜12%)によって分離し、PVDF膜に移し、そしてブロッキング試薬2%(製造者の推奨条件)(Amersham Biosciences製のECL Advanceキット、Little Chalfont,Buckinghamshire、英国)に1/1000希釈されたウサギポリクローナル抗−αi1、マウスモノクローナル抗−αi2またはウサギポリクローナル抗−αi3抗体(Santa Cruz)と共に4℃でO/Nインキュベートした。膜を、ブロッキング試薬2%(製造者の推奨条件)(Amersham Biosciences製のECL Advanceキット、Little Chalfont,Buckinghamshire、英国)に1/200000希釈された二次抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(BioRad)または抗マウスペルオキシダーゼコンジュゲート(BioRad)でプローブした。免疫反応性タンパク質を、Amersham Biosciences製のECL Advanceキット(Little Chalfont,Buckinghamshire、英国)で可視化した。
【0127】
結果を図1に示す。
【0128】
リアルタイムPCR。Tri−Reagent(Sigma)を使用して、培養したCHO−K1およびCHO−S細胞から全RNAを精製した。逆転写酵素のためのテンプレートとして全RNAを使用し、第1鎖cDNAを、製造者の指示に従って、RT−PCRキット(BD Bioscience Clontech)およびランダムヘキサマーを使用して、合成した。
【0129】
iQ5 Multicolor Real−Time PCR Detection System(Bio−Rad)においてMix Sybr Green(Bio−Rad)を使用して、リアルタイムPCRを実施した。
【0130】
リアルタイムPCRに使用されるプライマーは以下のとおりである:
Gαi1に対しMm_Gnai1 QT01058687 (Qiagen)
Gαi2に対しMm_Gnai2 QT00140469 (Qiagen)
Gαi3に対しMm_Gnai3 QT01062278 (Qiagen)
Gαoに対しMm_Gnao QT00171108 (Qiagen)
GAPDHに対しMm_Gapd QT00309099 (Qiagen)
【0131】
熱サイクル条件は、95℃で3分間の変性に続く、95℃で15秒間の変性工程、55℃で15秒間のアニーリング工程、および72℃で20秒間の伸長工程を含んでなる40サイクルよりなる。融解曲線解析を、60℃〜95℃の温度移行(ramp)からのデータコレクションによって実施した。
【0132】
結果
GAPDHを、PCRを正規化するための内部コントロール遺伝子として使用した。
【0133】
増幅が指数期にあるポイントとして閾値サイクル(Ct)を選択した。正規化されたCt(Ct目的の遺伝子−Ctコントロール遺伝子)値であるΔCtを使用して、遺伝子発現の相対量を決定した。
【0134】
CHO−K1またはCHO−S細胞以外ではGαi1増幅は認められなかったが、これはイムノブロットの結果に対応する。
【0135】
Gαi2、Gαi3およびGαo遺伝子発現を、CHO−K1およびCHO−S細胞におけるリアルタイムPCRによって検出した。表1は、Gαiタンパク質アイソフォームの発現の相対量を示す。
【0136】
【表1】

【0137】
2.縮重プライマーを使用するPCR増幅によるCHO細胞系統において発現されるアデニリルシクラーゼアイソザイムの同定
Tri−Reagent(Sigma)を使用して、培養CHO−K1およびCHO−S細胞から全RNAを精製した。逆転写酵素のためのテンプレートとして全RNAを使用し、第1鎖cDNAを、製造者の指示に従って、QRT−PCR SYBR Greenキット(Abgen)およびランダムヘキサマーを使用して、合成した。
【0138】
リチャードT.プレモント(Richard T.Premont)(Methods Enzymol.238,116−127)によって報告されるような9ファミリーのマウスアデニリルシクラーゼの保存領域と一致させることによって、縮重プライマー(配列番号1)を設計した。
【0139】
5’−CGGCAGCTCGAGAA(A/G)AT(A/C/T)AA(A/G)AC(I)AT(A/C/T)GG−3’
(配列番号1)
5’−CCGGGACTCGAGAC(A/G)TT(I)AC(I)GT(I)T(C/T)(I)CCCCA−3’
(配列番号2)
【0140】
Thermocycle Perkin−Elmer2400においてAdvantage−HF2PCRキット(BD Science)により、cDNAのPCR増幅を実施した。
【0141】
PCR増幅条件は、94℃で1分間の変性に続く、94℃で15秒間の変性工程、58℃で30秒間のアニーリング工程、および68℃で1分間の伸長工程を含んでなる40サイクルよりなる。サイクル反応の終了時に、68℃で7分間のさらなる伸長工程を実施した。
【0142】
PCR産物(約300bp)を低融解アガロースゲル電気泳動によって単離し、そしてGENECLEAN SPIN(Bio101)によって精製した。精製されたフラグメントをpCR2.1ベクターに連結し、そしてT/Aクローニングキット(Invitrogen)を使用して、4μlの連結混合物をTOP10コンピテント細胞に形質転換した。
【0143】
白色プラスミドクローンをMinipreps DNA精製システム(Eppendorf)で調製し、そしてEcoRI消化およびアガロースゲル電気泳動によりスクリーニングした。陽性のクローン、CHO−K1において14個のクローンおよびCHO−Sにおいて12個のクローンを、配列決定した。
【0144】
配列を、BLAST検索を使用して解析した。異なる2つの配列を、公開されているアデニリルシクラーゼに対して高い相同性で同定した。
【0145】
配列番号3および配列番号4の配列を、既知のアデニリルシクラーゼ配列と共に整列し、そしてDNASIS Software(Hitachi)により解析した。
【0146】
配列番号3の配列は、マウスアデニリルシクラーゼVI(NM_007405)の配列に89%(29/258bp)相同である。推定アミノ酸配列の相同性は99%(1/85aa)である。
【0147】
配列番号4の配列は、マウスアデニリルシクラーゼVII(NM_007406)の配列に90%(27/269bp)相同である。推定アミノ酸配列の相同性は95%(4/80aa)である。
【0148】
(配列番号3)
AGAAGATCAAAACGATAGGCAGCACCTACATGGCTGCCTCTGGGCTAAATGCCAGCACCTATGATCAGGTGGGCCGTTCCCACATCACTGCCCTGGCAGACTATGCCATGAGGCTCATGGAGCAGATGAAACATATCAACGAACACTCTTTCAACAATTTCCAGATGAAGATTGGACTGAACATGGGTCCAGTTGTGGCCGGTGTCATTGGGGCCCGGAAGCCACAGTATGACATCTGGGGCGACACCGTCAACGTCT
【0149】
(配列番号4)
GAGAAAATAAAAACGATCGGCAGCACCTATATGGCTGCAGCAGGGCTCAGCATCCCCTCAGGACACGAGAACCAGGATCTGGAGCGGCAGCATGCGCACATTGGTGTCTTGGTGGAGTTCAGCATGGCCCTGATGAGCAAGCTGGATGGCATCAACAGGCACTCCTTCAACTCTTTCCGCCTCCGAGTTGGCATAAACCATGGGCCTGTGATTGCTGGAGTGATTGGAGCACGAAAGCCTCAGTATGACATCTGGGGCGACACCGTCAAC
【0150】
表2は、CHO−K1およびCHO−S細胞におけるアデニリルシクラーゼアイソフォームの相対量を示す。
【0151】
【表2】

【0152】
結論
文献(エバV.バルガ(Eva V.Varga)ら、1998年.Euro J Pharmacol.348,R1−R2)において報告されるように、アデニリルシクラーゼの2つのアイソフォームは、CHO細胞系統(CHO−K1およびCHO−S)において発現される。
【0153】
CHO細胞系統におけるアイソフォームVIの優勢な発現は、フォルスコリンによって刺激されるが、活性型Giタンパク質によっては阻害されないアデニリルシクラーゼVIIをノックダウンするためにsiRNAを使用するアプローチが好ましく用いられうる。
【0154】
発現がCHO細胞において少ないアデニリルシクラーゼVIIを抑制しても、細胞の生理機能に影響を及ぼさないであろう。
【0155】
3.PCRによるCHO細胞系統において発現されるアデニリルシクラーゼVIIの増幅
siRNA(miRNA)構築のために、公開されているマウス(NM_007046)とラット(XM223666)アデニリルシクラーゼアイソフォームVII配列との間の相同性研究に従って、3つの組のプライマーを設計した。
【0156】
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの43〜805ntに対応するフラグメントの増幅のためのプライマーは、以下のとおりである(配列番号5および配列番号6)
センス:5’−ATGCCAGCCAAGGGGCGCTAC−3’(配列番号5)
アンチセンス:5’−AGATGCTGACATTCTGGTGC−3(配列番号6)
【0157】
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの628〜1618ntに対応するフラグメントの増幅のためのプライマーは、以下のとおりである(配列番号7および配列番号8)
センス:5’−CACAAGCACCAGCTGCAGGACGC−3’(配列番号7)
アンチセンス:5’−AGACTTGGAGCAGCAGGGCCT−3(配列番号8)
【0158】
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの1685〜2816ntに対応するフラグメントの増幅のためのプライマーは、以下のとおりである(配列番号9および配列番号10)
センス:5’−TGACGAGATGCTGTCAGCCAT−3’(配列番号9)
アンチセンス:5’−TGCCAATGGTCTTGATCTTCTCC−3’(配列番号10)
【0159】
Tri−Reagent(Sigma)を使用して、培養CHO−K1およびCHO−S細胞から全RNAを精製した。逆転写酵素のためのテンプレートとして全RNAを使用し、第1鎖cDNAを、製造者の指示に従って、QRT−PCR SYBR Greenキット(Abgen)およびランダムヘキサマーを使用して、合成した。
【0160】
cDNAのPCR増幅を、Thermocycle Perkin−Elmer2400においてPhusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Finnzymes)により、次のとおりに実施した:98℃で30秒間;98℃で10秒間、68℃で30秒間、72℃で45秒間の40サイクル;および72℃で10分間。
【0161】
PCR産物を低融解アガロースゲル電気泳動によって単離し、GENECLEAN SPIN(Bio101)によって精製した。精製したフラグメントについて、配列決定を行った。
【0162】
配列決定結果:
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの43〜805ntに対応するCHOアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIのPCRフラグメント
(配列番号11)
GGCCCCAACCAGGCAAAGCTCTATGAGAAGTACCGCCTCACCAGCCAGCATGGGCCACTGTTGCTCTTGCTCCTCCTGGTGGCTGTGGCCACCTGCATCGCACTCATCATCATCACCTTCAGCCATGAGGATCCCCCCAGACACCAGGCTATCCTGGGCACTGCGTTCTTCATGCTGACGCTGTTTGTGGCTCTCTATGTGCTGGTATATGTTGAGTGCCTGGTGCGGCGATGGCTGTGGGCCTTGGCTCTACTCACCTGGGCCTGCCTCATGATGCTCGGCTTTGTGCTGGTGTGGGACTCCTGGAAGAATGATGCCTGTGCGTGGGAGCAGGTGCCTTTCTTCCTGTTCATTGTCTTTGTGGTGTATGCATTACTGCCCCTCAGCACGAGGGCAGCCATCACAGTGGGGATGGTTTCCACTGTTTCCCACCTCCTGATGTTTGGAGCTGTGACAGGAGCCTTCAAGATGTCCGTGTCCGGAGCACAGCTGGCGCTGCAGCTCCTGGCCAATGCCATTATCCTCCTGGGTGGGAACTTCACGGGTGCCTTCCACAAGCACCAGCTGCAGGATGCTTCCCGGGACCTCTTCATCTACACAGTCAAGTGCATCCAGATCCGCCGGAAGCTGCGTGTGGAGAAGCGCCAGCAGGAGAACCTGCTGCTTTCGGTGCTCCCAGCTCACATATCCATGGGCATGAAGCTGGCCATCATTGAGCGCCTCAAAGAGGGTGGTGACCACCGCCACATGCCTGACAACAACT
【0163】
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの628〜1618ntに対応するCHOアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIのPCRフラグメント
(配列番号12)
CTCTTCATCTACACAGTCAAGTGCATCCAGATCCGCCGGAAGCTGCGTGTGGAGAAGCGCCAGCAGGAGAACCTGCTGCTTTCGGTGCTCCCAGCTCACATATCCATGGGCATGAAGCTGGCCATCATTGAGCGCCTCAAAGAGGGTGGTGACCACCGCCACATGCCTGACAACAACTTTCACAGCCTCTATGTCAAGCGGCACCAGAATGTCAGTATCTTGTATGCAGACATTGTGGGCTTCACACGGCTGGCCAGTGACTGCTCGCCCAAGGAGCTGGTGGTGGTACTCAACGAGCTGTTCGGGAAATTTGACCAGATTGCCAAGGCCAATGAGTGCATGCGGATCAAGATCCTGGGTGACTGCTACTACTGTGTGTCAGGCCTGCCTGTGTCGCTGCCCACCCATGCCCGCAACTGCGTGAAGATGGGTCTGGACATCTGTGAGGCCATTAAGCAGGTTCGTGAGGCCACAGGAGTGGACATCAGCATGCGTGTGGGTATCCACTCCGGGAATGTTCTGTGTGGGGTCATCGGGCTCCGCAAGTGGCAGTATGATGTGTGGTCCCATGATGTGTCCCTGGCCAACAGGATGGAGGCAGCTGGAGTCCCTGGCCGGGTGCACATCACAGAGGCGACACTGAACCACCTGGACAAGGCATACGAGGTGGAGGATGGGAACGGGCAGCAGCGTGACCCCTATCTGAAAGAGATGAACATCCGAACCTACCTGGTGATCGACCCCCGGAGCCAGCAGCCGCCTCCACCCAGCCATCACCTCCCCAAGCCCAAGGGGGATGCAACCCTGAAGATTCGGGCTTCAGTGCGTGTAACGCGCTATCTCGAGTCCTGGGGGGCAGCACGGCCCTTCGCACACCTCAACCACCGGGAGAGTGTGAGCAGCAGCGAGACCCCCAGTCCCACTGGACAGAGGCCAAAAGCCACTCCTCTGCGCCGACACCGTGCCATTGACAGGAGTACATCCCCCAAGGGGCGCTTGGAGGATGACTGTGATGACGAGATGCTCTCGGCCAT
【0164】
マウスアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIの1685〜2816に対応するCHOアデニリルシクラーゼアイソフォームVIIのPCRフラグメント
(配列番号13)
CCTGCTGCTCCAAGTCCGATGACTTCCACACCTTTGGTCCCATCTTCCTGGAGAAGGGCTTTGAGCGTGAGTATCGCCTGGTGCCTATCCCCCGGGCTCGCTACGACTTTGCCTGTGCCAGCCTTGTCTTCATCTGCATCCTGCTTGTCCACCTTCTTGTGATGCCCAGGATGGCCACTCTGGGCGTGTCCTTTGGACTGGTGGCCTGCCTGCTGGGGCTGGTGCTGAGTTTCTGCTTTGCTACTGAGTTCTCAAGGTGCTTTCCAGCCCGAGGTACACTCCAGGCCATCTCGGAGAGTGTGGAGACACAGCCCCtGCTCAGGCTATCCTTGGTTGTGCTGACTGTTGGTAGCCTACTGACTGTTGCCATCATCAACATGCCACTGATGCTTAGCCCAGGCCCAGAGTGGCCAGGAGGCAATGAGACAAGCTCGCTGGCTGCAAGGAATAGAGTTGGAATCCCGTGTGAGCTCCTCCTGTACTACACCTGCAGCTGCATCCTGGGCTTCATCTCGTGCTCCGTTTTCCTGCGGATGAGCCTGGAACTGAAGGCCCTGCTGCTGACAGTGGCCTTGGTGGCTTACCTGCTGCTCTTCAACCTCTCCCCCTGCTGGCATGTTCCAGGCAACAGCACTGAAACCAACAGTACACACAGGACACAAACACTCCTGCCTGCTGGACAAAGCACACCCAGCCACACCCTTGCTCTGGGGGCTCAGGTGACTGCCTCCTCCCCTGGCAGATGTTTAGAGAAAGATCTGAAGACCATGATCAACTTCTACCTGGTCCTGTTCTATGCCACCCTCATCTTGCTGTCTAGACAGATTGACTACTATTGCCGCTTGGATTGTCTGTGGAAGAAGAAGTTCAAGAAAGAGCATGAGGAGTTTGAAACAATGGAGAATGTGAACCGCCTCCTCCTGGAAAATGTTCTGCCAGCGCATGTGGCTGCCCACTTCATTGGCGACAAGGCGGCTGAGGACTGGTACCATCAGTCTTATGACTGTGTCTGTGTCATGTTTGCCTCGGTTCCGGACTTCAAAGTGTTCTACACTGAGTGCGATGTCAACAAAGAAGGGTTGGAGTGCCTTCGCCTGCTGAATGAGATCATTGCTGATTTtGACGAGCTGCT
【0165】
配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列を、既知のアデニリルシクラーゼ配列と共に整列し、そしてDNASIS Software(Hitachi)により解析し、そしてsiRNA(miRNA)設計のためのテンプレートとして使用した。
【0166】
4.miRNA設計
Invitrogen BLOCK−iT(商標)RNAi Designerを使用して、8つのmiRNA(配列番号14〜21)を合成し、そしてpcDNA6.2−GW/miRベクター(Invitrogen)にクローニングした。図2は、構築の例を示す。
【0167】
標的RNAの減少を例示するために、CHO−K1細胞を適切なベクターでトランスフェクトした。
【0168】
CHO−アデニリルシクラーゼアイソフォームVIIをノックダウンするためのmiRNA標的化配列(ACVII_miR_NNNで示す)は、以下のとおりである:
ACVII_miR_173:ACAACTTTCAGCCTCTATG(配列番号14)
ACVII_miR_220:TGGTGCTGTTTCTGCTTTG(配列番号15)
ACVII_miR_456:TGACAGGACTTCAAGATGT(配列番号16)
ACVII_miR_553:TATGATGTGGTCCCATGAT(配列番号17)
ACVII_miR_619:TTCCAGGCCAGCACTGAAA(配列番号18)
ACVII_miR_1071:AAAGAAGGTGGAGTGCCTT(配列番号19)
ACVII_miR_2102:TCCTCCTGCTACACCTGCA(配列番号20)
ACVII_miR_2260:AGCACTGACCAACAGTACA(配列番号21)
【0169】
5.CHO細胞におけるアデニリルシクラーゼVIIの発現を抑制するmiRNAの同定
トランスフェクション
CHO−K1細胞を、6ウェルプレートにおいて、1ウェルあたり500000個の細胞でプレート化した。プレート化の24時間後、細胞を、無血清DMEM培地で洗浄した。miRNA/脂質複合体を構築するためのmiRNAとLipofectamine2000との間の比は、1:2.5であった。トランスフェクションに使用されるmiRNAの量は、各構築物、およびBlock−iT Pol II miRNAiキット(invitrogen)から調製されるmiRNA陰性コントロールについて1ウェルあたり1.0μgであった。トランスフェクションの6時間後、培地を5%透析血清を伴うDMEMに変更した。48時間後、TriReagent(Sigma)を使用して、全RNAを調製した。RT−PCRキット(Clontech)により、cDNAを合成した。
【0170】
miRNAsによって処置した培養細胞においてアデニリルシクラーゼVIIメッセンジャーRNAを低了するための従来のポリメラーゼ連鎖反応の使用
図3は、CHO−K1細胞における一過的トランスフェクションの48時間後のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるアデニリルシクラーゼVIIの発現に対する異なるmiRNAの抑制効果、ならびにmiRNA173およびコントロールmiRNAによってトランスフェクトされるCHO−K1細胞の形態学を示す。
【0171】
図4は、共焦点蛍光顕微鏡を使用することによって、アデニリルシクラーゼVIIの発現に対する異なるmiRNAの抑制効果を確認する。
【0172】
結論:
1:miRNA173は、48時間の一過的トランスフェクション後、CHO−K1細胞におけるアデニリルシクラーゼVIIの90%を超える発現を阻害する。
2:miRNA173または陰性のmiRNAによって処置した細胞間の有意な形態学的差異は観察されていない。
【0173】
6.cAMPアッセイ
ヒトムスカリンM4またはヒトドーパミンD4.4受容体を安定的に発現したCHO−K1細胞に対するcAMP測定を、HTRF(均一時間分解蛍光)技術(CIS Bio、仏国)を介して実施した。これらのcAMPアッセイの原理は、モノクローナル抗cAMP−クリプテートコンジュゲートとの結合について、細胞から産生されるcAMPとcAMP−XL665コンジュゲートとの間の競合に基づく。細胞溶解および検出工程を同時に実施することができるように、HTRF(登録商標)コンジュゲートは、溶解緩衝液において調製される。
【0174】
細胞および化合物の調製。ヒトムスカリンM4またはヒトドーパミンD4.4受容体を安定的に発現するCHO−K1を、標準的な条件下で培養した。細胞をEDTAによって回収し、リン酸緩衝食塩水において1回洗浄し、そしてアッセイ緩衝液(0.1%グルコースおよび0.5mM IBMXを含有するHBSS)に再懸濁した。細胞を、黒色96ハーフウェルプレートに、10,000〜15,000個の細胞の細胞密度で分配した。30分間、室温または37℃でのインキュベーション後、フォルスコリン、次いで、アセチルコリンまたはキンピロール(quimpirole)を含有する等容積のアッセイ緩衝液を、細胞に添加した。30分間、室温または37℃でのインキュベーション後、上記のプロトコル後にcAMP検出を実施した。プレートを、1時間を超えて室温でインキュベートし、次いで、RUBYstar(BMG Labtechnologies)時間分解蛍光リーダー上で測定した。
【0175】
実験条件
細胞からのcAMPの形成を測定するために、細胞を回収し、そしてHBSS緩衝液で再懸濁した。多様な濃度の細胞を、96ウェルプレートにおいてプレート化した。アゴニスト(ドーパミンまたはエピネフリン)の系列希釈を添加し、そして10分間、室温で細胞と共にインキュベートした。フォルスコリンまたはNKH477を添加し、そしてプレートを37℃で10分間、インキュベートした。細胞誘導後、アッセイ試薬を、アッセイ手順において概説したとおりに添加した。
【0176】
D4−CHO K1細胞系統(CHO K1宿主細胞系統において安定的にトランスフェクトされたD4)では、0.7μMのNKH477およびフォルスコリンを、1μMのドーパミンを伴うかまたは伴わずに使用した。
【0177】
α2c−CHO S細胞系統(CHO S宿主細胞系統において安定的にトランスフェクトしたα2c)では、5μMのNKH477およびフォルスコリンと共に、10分間、37℃で、1μMのエピネフリンを伴わずにまたは伴って、インキュベートした。
【0178】
結果:
a)アセチルコリンまたはキンピロール(quimpirole)のEC50値を、図5に示すようなHillによる用量反応曲線から算出した。CHO−K1細胞を、30μMフォルスコリンの存在下で、0.01nM〜10μMの範囲の漸増濃度のアセチルコリンまたはキンピロール(quimpirole)に暴露した。
【0179】
b)2つの細胞系統(M4/CHOおよびM4/CHO/miRNA)においてフォルスコリンによって誘導されるcAMPの産生に対するオキソトレモリンの効果を比較するために、HTRF(Cisbio)によるcAMPの測定に基づく機能アッセイを実施した。
【0180】
図6は、フォルスコリンに応答する用量依存的シグナルを例示する。
【0181】
M4/CHO/miRNA細胞系統における1μMのオキソトレモリンによるフォルスコリン刺激cAMP産生の85%を超える阻害が得られた。フォルスコリン誘導cAMP産生に対するオキソトレモリンの阻害能力は、M4受容体を発現する野生型CHO細胞において示される結果と比較して、25〜30%増加する。
【0182】
c)D4.4、α2c H3およびD2S受容体を発現するCHO−K1細胞を、30μMフォルスコリンまたは10μM NKH−477の存在下で0.01nM〜10μMの範囲の漸増濃度のリガンド、それぞれ、ドーパミン、エピネフリン、ヒスタミンおよびドーパミンに暴露した。
【0183】
図7は、フォルスコリンまたはNKH−477に応答する用量依存的シグナルの差異を例示する。
【0184】
CHO−K1において安定的に発現されるD4.4受容体およびCHO−Sにおいて安定的に発現されるα2c受容体において、NKH477は、1μMのアゴニストにおけるフォルスコリンより大きなシグナルウインドウを付与する(フォルスコリンの代わりにNKH477を使用すると、cAMP産生阻害を20%まで増大した)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞において発現されるGi共役受容体によってモジュレートされるcAMPレベルに基づくインビトロアッセイを使用して、試験化合物をスクリーニング、同定または選択するための方法であって、以下の工程:
(a)場合により、選択された細胞において、細胞内cAMPレベルのモジュレーションに関与するGαiおよびアデニリルシクラーゼアイソフォームを同定すること、
(b)前記選択された細胞において、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の影響よりも優先させること、
(c)前記細胞と、フォルスコリンまたはNKH−477および試験化合物とを接触させること;次いで
(d)前記試験化合物と前記細胞とを接触させることにより生じるcAMPレベルを測定すること、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
工程b)が、前記細胞とNKH−477とを接触させることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の影響の方を、フォルスコリンまたはNKH−477に感受性であるが、Gαiによる阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の影響よりも優先させることが、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームを特異的に不活化することによって達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活化が、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiタンパク質による阻害には感受性でない前記アデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の発現をダウンレギュレートすることによって得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された細胞において発現される、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激されるが、Gαiによる阻害には感受性でない前記アデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)が、特異的RNAiによってダウンレギュレートされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特異的RNAiが特異的miRNAである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アデニリルシクラーゼVIIアイソフォームが、特異的miRNAを使用することによってノックダウンされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された細胞が、哺乳動物細胞もしくは酵母細胞、またはCHO系統、HEK系統もしくは昆虫SF9系統から選択される樹立された細胞系統から選択される真核細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記選択された細胞がCHO−K1またはCHO−S細胞系統である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試験化合物と前記細胞とを接触させることから生じるcAMPレベルの測定が、蛍光または発光としての読み取りを使用する技術によって実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞受容体の活性と特異的に相互作用し、そしてモジュレートする試験化合物によるcAMPレベルのモジュレーションを測定するためのアッセイシステムまたはキットであって、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiによる阻害に感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)を主に発現する細胞を含んでなる、アッセイシステムまたはキット。
【請求項12】
前記細胞が、i)特異的なGαiタンパク質、あるいはフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)をコードする核酸配列(ii)およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)をコードするアデニリルシクラーゼ転写産物を標的化する特異的miRNAを安定的に同時発現する、請求項11に記載のアッセイシステムまたはキット。
【請求項13】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の両方を発現する選択された細胞から操作された組換え細胞であって、ここで、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響の方が、フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームの影響よりも優先される、組換え細胞。
【請求項14】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiに感受性であるアデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)の発現がアップレギュレートされる、請求項13に記載の組換え細胞。
【請求項15】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)が不活化される、請求項14に記載の組換え細胞。
【請求項16】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォームをコードする遺伝子が欠失される、請求項15に記載の組換え細胞。
【請求項17】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiには感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)の発現がRNAiによってダウンレギュレートされる、請求項16に記載の組換え細胞。
【請求項18】
前記細胞が、(i)操作されたプレ−miRNA一次転写産物、およびii)前記組換え細胞において安定的に同時発現される特異的なGαiタンパク質、あるいはフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォームをコードする核酸配列を含んでなる組み換えDNAベクターで安定的に形質転換されている、請求項17に記載の組換え細胞。
【請求項19】
フォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害に感受性である特異的アデニリルシクラーゼアイソフォーム(A)、およびフォルスコリンまたはNKH−477によって刺激され、Gαiタンパク質による阻害には感受性でないアデニリルシクラーゼアイソフォーム(B)をコードするアデニリルシクラーゼ転写産物を標的化する特異的miRNAを同時発現するように操作されている、請求項18に記載の組換え細胞。
【請求項20】
哺乳動物細胞である、請求項13〜19のいずれか一項に記載の組換え細胞。
【請求項21】
CHO細胞系統である、請求項20に記載の組換え細胞。
【請求項22】
Gi共役受容体の潜在的リガンドをスクリーニング、同定または選択するためのツールとしての請求項13〜21のいずれか一項に記載の組換え細胞の使用。
【請求項23】
前記細胞は、請求項13〜21のいずれか一項において定義されるとおりである、請求項11または12に記載のアッセイシステムまたはキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−539363(P2009−539363A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513708(P2009−513708)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055682
【国際公開番号】WO2007/141341
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503196673)セレプ・ソシエテ・アノニム (3)
【氏名又は名称原語表記】CEREP SA
【Fターム(参考)】