説明

H因子結合タンパク質免疫原

本発明は、複数のH因子結合タンパク質を発現するか、または発現し得る病原性細菌株に対する免疫に関する。本発明の特定の態様は、複数のH因子結合タンパク質を発現する病原性細菌株に由来する少なくとも2つのH因子結合タンパク質を含むワクチン組成物を含む。ここで、上記2つのH因子結合タンパク質は、NMB1030およびNMB2091、NMB2091およびNMB1870、またはNMB1030およびNMB1870ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、複数のH因子結合タンパク質を発現するか、または発現し得る病原性細菌株に対する免疫に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
逆ワクチン学(reverse vaccinology)は、Rino Rappuoliらによって開発された細菌性病原体に対するワクチンの作製についての新たなパラダイムである。逆ワクチン学では、有望な抗原について目的の病原体のゲノムをスキャンし、その病原体に対して殺菌応答を生成できる抗原を同定し、次いで病原体の複数の菌株に渡ってどれが十分に保存されているかを同定することによって可能な抗原のリストをさらに狭めて、可能な限り完全な範囲を提供する。逆ワクチン学の最初の成功は、N.meningitidis血清型群Bに対する多成分組換えタンパク質ベースのワクチンの開発であった(M.Giulianiら、PNAS(2006) 103(29):10834−10839を参照)。複数の菌株に渡って最も広い可能な範囲を提供できる有望な候補の同定およびスクリーニングは、時間のかかる作業である。したがって、このような強力な候補の同定の改善された方法およびこのような強力な候補を含む多成分ワクチンが求められている。
【0003】
1つのこのような候補は、タンパク質「741」、「NMB1870」、「GNA1870」としても知られる髄膜炎菌H因子結合タンパク質(fHBP)である[参考文献:N6、N10(特許文献1)、N21]。このリポタンパク質は、すべての髄膜炎菌血清型群に渡って発現され、複数の髄膜炎菌株において見出された。NMB1870は、代替補体経路のインヒビターであるH因子のリガンドであることが同定された[参考文献:N22、N23]。fHBPは、補体媒介殺菌活性を有すると共に、H因子の細菌表面への結合を阻害して、ヒト補体による細菌の溶解しやすさを増大させる抗体を誘導することが示された[参考文献:N21]。rHBPは、ヒト血中、ヒト血清中、および抗菌ペプチドの存在下での細菌の生存にとって重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/57280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、様々な病原菌株に対して広く防御する、病原体に対する2つ以上のH因子結合ポリペプチドを含む改善された多成分ワクチンを提供することが本発明の目的である。
【0006】
H因子結合活性をアッセイすることによる広範な防御についての抗原候補のスクリーニングの方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
本発明の目的上、用語「H因子結合」は、H因子に結合する能力を指し、参考文献N22およびN23に記載されている方法および基準によって同定され、測定される。以下は、本発明のポリペプチドの組み合わせに使用され得る目的の様々な病原体由来の代表的なH因子結合タンパク質である。
【0008】
(NMB1870タンパク質)
血清型群BのNMB1870タンパク質は、参考文献N6(また、GenBankアクセッション番号GI:7227128も参照)に開示され、参考文献N10に「741」(配列番号2535および2536)として開示されている。GenBankアクセッション番号7379322.741を有する血清型群A(N5)の対応するタンパク質は、当然、リポタンパク質である。
【0009】
本発明に従って使用される場合、NMB1870タンパク質は、様々な形態をとり得る。NMB1870の好ましい形態は、参考文献N14〜N16に開示されているような切断改変体または欠失改変体である。具体的には、NMB1870のN末端は、ポリ−グリシン配列を含みそのポリ−グリシン配列まで欠失され得る(すなわち、菌株MC58の残基1〜72の欠失)。この欠失は、発現を亢進し得る。この欠失はまた、NMB1870の脂質化部位を除去する。
【0010】
好ましいNMB1870の配列は、配列番号1に対して50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上)の同一性を有する。これには、NMB1870改変体(例えば、対立遺伝子改変体、相同体、オーソログ、パラログ、変異体など)が含まれる。NMB1870の対立遺伝子形(allelic form)は、参考文献N16の配列番号1〜22および参考文献N19の配列番号1〜23で見られ得る。参考文献N20の配列番号1〜299は、さらなるNMB1870の配列を提供する。
【0011】
他の好ましいNMB1870の配列は、配列番号1の少なくともn個の連続したアミノ酸を含み、このnは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、または250以上)である。好ましい断片には、NMB1870のエピトープが含まれる。他の好ましい断片は、配列番号1のC末端および/またはN末端の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上)のアミノ酸が欠失している。
【0012】
タンパク質NMB1870は、抗髄膜炎菌抗体応答を誘導する非常に有効な抗原であり、すべての髄膜炎菌血清型群に渡って発現される。系統発生分析により、このタンパク質が2つの群に分けられ、分けられた群の一方は、合計3つの改変体にさらに分けられ(N21)、ある改変体に対して生成された血清は、同じ改変体群内で殺菌性であるが、この血清は、他の2つの改変体の一方を発現する菌株に対して活性がない、すなわち改変体内では交差防御が存在するが改変体間では交差防御が存在しないことが示されている。したがって、最大の菌株横断的効力を得るためには、好ましくは、組成物が、タンパク質NMB1870の2つ以上の改変体を含むべきである。
【0013】
(NMB2091タンパク質)
血清型群BのNMB2091タンパク質は、参考文献N6(また、GenBankアクセッション番号GI:7227353も参照)に開示され、参考文献N10に「936」(配列番号2883および2884)として開示されている。血清型群A(N5)の対応する遺伝子は、GenBankアクセッション番号7379093を有する。
【0014】
本発明に従って使用される場合、NMB2091タンパク質は、様々な形態をとり得る。NMB2091の好ましい形態は、参考文献N14〜N16に開示されているような切断改変体または欠失改変体である。具体的には、NMB2091のN末端リーダーペプチドが欠失されて(すなわち、菌株MC58(配列番号41)の残基1〜23の欠失)、NMB2091(NL)が得られ得る。
【0015】
好ましいNMB2091の配列は、配列番号41と50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上)の同一性を有する。これには、改変体(例えば、対立遺伝子改変体、相同体、オーソログ、パラログ、変異体など)が含まれる。
【0016】
他の好ましいNMB2091の配列は、配列番号41の少なくともn個の連続したアミノ酸を含み、このnは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、または250以上)である。好ましい断片には、NMB2091のエピトープが含まれる。他の好ましい断片は、配列番号41のC末端および/またはN末端の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上)のアミノ酸が欠失している。
【0017】
(NMB1030タンパク質)
血清型群BのNMB1030タンパク質は、参考文献N6(また、GenBankアクセッション番号GI:7226269も参照)に開示され、参考文献10に「953」(配列番号2917および2918)として開示されている。血清型群A(N5)の対応するタンパク質は、GenBankアクセッション番号7380108を有する。
【0018】
本発明に従って使用される場合、NMB1030タンパク質は、様々な形態をとり得る。NMB1030の好ましい形態は、参考文献N14〜N16に開示されているような切断改変体または欠失改変体である。具体的には、NMB1030のN末端リーダーペプチドが欠失されて(すなわち、菌株MC58(配列番号11)の残基1〜19の欠失)、NMB1030(NL)が得られ得る。
【0019】
好ましいNMB1030の配列は、配列番号11に対して50%以上(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、または99%以上)の同一性を有する。これには、NMB1030改変体(例えば、対立遺伝子改変体、相同体、オーソログ、パラログ、変異体など)が含まれる。NMB1030の対立遺伝子形は、参考文献N12の図19で見られ得る。
【0020】
他の好ましいNMB1030の配列は、配列番号11の少なくともn個の連続したアミノ酸を含み、このnは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、または250以上)である。好ましい断片には、NMB1030のエピトープが含まれる。他の好ましい断片は、配列番号11のC末端および/またはN末端の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上)のアミノ酸が欠失している。
【0021】
(NMB0667)
NMB0667(仮想タンパク質)は、GenBankアクセッション番号902778を有する。代表的なNMB0667は、相同体N.meningitidis血清群型AおよびC(配列番号53、55、および57)を有し、N.gonnhoroeae(配列番号59)に由来する配列番号51として提供される。
【0022】
(Neisseriaの参考文献)
【0023】
【化1】

(Por1A)
ポーリン(Por)は、Neisseria gonorrhoeaeの主要な外膜タンパク質であり、2つの主たる免疫化学クラス、Por1AおよびPor1B(J.Infect.Dis.1984、150:44−48)において存在する。Por1Aは、H因子の受容体分子であり、ハイブリッドPor1A/B分子を発現する菌株が使用されて、H因子結合部位がPor1Aのループ5に局在化された(J Exp Med.1998年8月 17;188(4):671−80)。代表的なPor1Aは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号99で提供される。
【0024】
(Omp100(Actinobacillus種))
Omp100(Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4の主要な外膜タンパク質)は、Yershinia enterocoliticaのYadAを含む多数の毒性因子に対して相同性を有する。Omp100は、A.actinomycetemcomitansの細胞表面にランダムに局在化し、H因子に結合する(Mol Microbiology 2003、50(4):1125−1139)。代表的なOmp100は、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号93で提供される。
【0025】
(補体制御因子獲得表面タンパク質(complement regulator−acquiring surface protein(CRASPS))(Borrelia種))
補体制御因子獲得表面タンパク質(CRASPS)は、H因子に結合することによってBorrelia種の血清耐性を向上させる(J Biol Chem 2004、279:2421−2429)。CRASP−1、CRASP−2、CRASP−3、CRASP−4、およびCRASP5は、高い親和性でH因子のショート・コンセンサス・リピート(SCR)ドメインに結合する。いくつかのCRASPのC末端は、この結合のために必要であることが示された(Mol Immunol 2006、43:31−44)。具体的には、BbCRASP−3のH因子結合部位は、このタンパク質のC末端の9個のアミノ酸配列、LEVLKKNLKに局在化した(Eur J Immunol 2203、33:697−707)。代表的なCRASPSは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号63および65で提供される。
【0026】
(OspE/F関連タンパク質(ERP)ファミリー(Borrelia種))
Erpタンパク質をコードする遺伝子は、すべてのライム病Borrelia種に存在する。Erpタンパク質は、細菌の外面に局在化し、哺乳動物感染に際し発現される(Microbiology 2001、147:821−830;J Mol Microbiol Biotechnol 2000、2:411−422)。OspE、p21/orf28、ErpA(BBL39)、ErpC、およびErpP(BBN38)を含む殆どのErpタンパク質は、H因子に結合する(Infection and Immunity 2002、70(2):491−497;Mol Immunol 2006、43:31−44)。これらのタンパク質は、一般に、それらのC末端によってH因子のSCR19〜20に結合する。代表的なerpsは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号97、73、75、および77で提供される。
【0027】
(FHBP19/FhbAおよびFHBP28)
2つのH因子結合タンパク質が、Borrelia hermsiiで同定された(J Clin Microbiol 2003、41:3905−3910;J Bacteriol 2004、186:2612−2618)。FHBP19/FhbAは、19kDaタンパク質であり、CRASPまたは他のスピロヘータH因子結合タンパク質に対して相同性を示していない。FHBP28は、28kDaタンパク質である。代表的なFhbAは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号85で提供される。
【0028】
(LfhA(Leptospira interrogans))
LeptospiraH因子結合タンパク質A(LfhA)が、H因子に結合するクローンについてのL.interrogansのλ発現ライブラリーのスクリーニングによって同定された(Infect Immun 2006、74:2659−2666)。組換えLfhAを用いたリガンド親和性ブロットアッセイにより、組換えLfhAのH因子に結合する能力が確認された。LfhAは、哺乳動物感染中に発現され、外膜および内膜に局在化する。代表的なLfhAは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号91で提供される。
【0029】
(Tuf(Pseudomonas種))
延長因子Tufが、H因子親和性マトリックスおよび質量分析を用いてH因子結合タンパク質としてPseudomonas aeruginosaから単離された(J Immunol 2007、179:2979−2988)。Tufは、P.aeruginosaの表面に局在化する。TufのH因子への結合は、H因子のSCRドメイン6〜7および19〜20によって媒介される。代表的なTufは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号105で提供される。
【0030】
(Bac(Streptococcus種))
Bacまたはβタンパク質は、B群streptococcusの表面タンパク質である。Bacは、変異分析および組換えタンパク質を用いた結合実験によってH因子に結合することが示された(J Biol Chem 2002、277:12642−12648)。Bacおよびヘパリンは、SCR13または20内でH因子への結合を競合し、BacのC末端も、結合に必要である(Mol Immunol 2006、43:31−44)。代表的なBacは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号61で提供される。
【0031】
(Fba(Streptococcus種))
Fbaは、H因子を含む補体活性のヒト制御因子に結合することが示されたA群streptococcusの最初の非M様タンパク質であった(Infect Immun 2002、70:6206−6214)。Teraoらは、Hep−2細胞の浸潤に関与するフィブロネクチン結合タンパク質と同じタンパク質を同定した(Mol Microbiol 2001、42:191−199)。コイルドコイルを含むと推定されたFbaのN末端領域は、H因子への結合に必要であり、H因子のFba結合部位は、SCR7に局在化した(Infec Immun 2003、71:7119−7128)。代表的なFbaは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号79で提供される。
【0032】
(Hic(Streptococcus種))
補体のH因子結合インヒビター(Hic)遺伝子は、3型pnuemococciのpspC遺伝子座の新規な表面タンパク質をコードする(J Biol Chem 2000、275:37257−37263)。Hicは、他のPspCタンパク質に対して全体として低い配列相同性を有する。HicのN末端ヘリックス領域(アミノ酸39〜261)は、HicのH因子への結合に必要である。H因子のSCR8〜11および12〜14も、結合に必要である。
【0033】
(M/emmタンパク質(Streptococcus種))
Streptococcus pyogenesのM+菌株とM−菌株との比較により、H因子がM+菌株の細胞表面に結合することが初めて実証された(PNAS 1988、85:1657−1661)。emm5、emm6、およびemm18間の特異的な結合が実証された。3つすべてがH因子のSCR7に結合する(Mol Immunol 2006、43:31−44)。代表的なMタンパク質相同体は、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号67、69、および71で提供される。
【0034】
(PspC(Streptococcus種))
PspCファミリーのメンバーは、C末端アンカーによって細胞表面に付着する。これらは、保存された37のアミノ酸リーダーペプチドおよびプロリンリッチ領域が続くN末端αヘリックスドメインを含む(Gene 2002、284:63−71)。PspCのH因子結合部位は、N末端αヘリックス領域(アミノ酸1〜225)にマップされ、H因子のPspC結合部位は、SCR13〜15にマップされた(Indian J Med Res 2004、119(Suppl,):66−73;Infect Immun 2002、70:5604−5611)。代表的なPspCは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号89および101で提供される。
【0035】
(Se18.9(Streptococcus equi))
Se18.9は、S.zooepidemicusではなくS.equiによって分泌される新規な表面結合タンパク質である(Vet Microbiol 2007、121:105−115)。Se18.9は、H因子に結合し、回復期血清および粘膜IgAに対して免疫反応性である。代表的なSe18.9は、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号103で提供される。
【0036】
(YadA(Yersinia種))
YadAは、Yersinia enterocoliticaの表面に原線維構造を形成する、47kDaサブユニットから形成される約200kDaのポリマーである(EMBO J 1985、4:1013−1018)。ウェスタンブロット分析により、YadAがH因子に結合することが実証された(Infect Immun 1993、61:3129−3136)。代表的なYadAは、すべての関連種における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号107で提供される。
【0037】
(Gmp1p(Candida albicans))
Gmp1pは、宿主補体制御因子に結合することが同定された最初の真菌タンパク質であった。CaGPM1pは、H因子の2つ領域、SCR6および7とSCR19および20に結合する表面タンパク質である(J Biol Chem 2007、282:37537−37544)。S.cerevisiae由来の代表的なCaGPM1pは、すべての真菌病原体における相同体を同定するためにも使用され得る配列番号87で提供される。
【0038】
(本発明と共に使用されるポリペプチド)
本発明は、
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つと同一(すなわち、100%の同一性)であるアミノ酸配列;
(b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の1つ以上に対して少なくともa%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の1つ以上の少なくともb個の連続したアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;
(d)(a)または(b)の配列と比較して、離れた位置または連続した位置であり得る、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10(またはそれ以上)の単一アミノ酸改変(欠失、挿入、置換)を有するアミノ酸配列;および/または
(e)ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いて、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つと整列させられた場合、N末端からC末端のx個のアミノ酸の各異動ウィンドウ(p個のアミノ酸まで延長されたアラインメントに対して、p>xの場合、p−x+1のようなウィンドウが存在するような)は、少なくともx・y個の同一の整列させられたアミノ酸を有し、xが20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され;yが0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され;x・yの値が整数でない場合は、その値が最も近い整数に切り上げられるアミノ酸配列、を含む2つ以上のポリペプチドの組み合わせを提供する(いずれの場合も異なる非相同配列から選択され、唯2つのポリペプチドの場合は、NMB1870とNMB1030、NMBl870とNMB2091、またはNMB1030とNMB2091ではない)。好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォルトパラメーター(例えば、ギャップオープニングペナルティー(Gap opening penalty)=10.0、およびギャップ伸長ペナルティー(Gap extension penalty)=0.5で、EBLOSUM62スコアリングマトリックス(scorig matrix)を使用)を用いるNeedleman−Wunschグローバルアラインメントアルゴリズム(1)である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージ(2)のneedleツールで好都合に実行される。
【0039】
これらのポリペプチドには、対立遺伝子改変体、多形型(polymorphic form)、相同体、オーソログ、パラログ、変異体などを含め、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の改変体が含まれる。
【0040】
aの値は、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%以上から選択され得る。
【0041】
bの値は、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、または250以上から選択され得る。好ましい断片には、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のエピトープが含まれる。他の好ましい断片は、好ましくは配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の少なくとも1つのエピトープを維持したまま、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のC末端の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上)のアミノ酸および/またはそのN末端の1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上)のアミノ酸が欠けている。他の断片は、例えば、シグナルペプチドの脱落、細胞質ドメインの脱落、膜貫通ドメインの脱落、細胞外ドメインの脱落など、1つ以上のタンパク質ドメインが脱落している。
【0042】
断片内のエピトープは、B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープであり得る。このようなエピトープは、実験的に同定され得(例えば、PEPSCAN(3、4)または同様の方法を用いて)、または予測され得る(例えば、Jameson−Wolf抗原指標(5)、マトリックスをベースにした手法(6)、MAPITOPE(7)、TEPITOPE(8、9)、神経回路網(10)、OptiMer&EpiMer(11、12)、ADEPT(13)、Tsites(14)、親水性(15)、抗原指標(16)、または参考文献17〜21などに開示された方法などを用いて)。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位によって認識され結合される抗原の一部であり、「抗原決定基」とも呼ばれ得る。
【0043】
これらの組み合わせに使用される本発明のポリペプチドには、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つと比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9など)のアミノ酸の置換、例えば、保存的な置換(すなわち、1つのアミノ酸の、関連した側鎖を有する別のアミノ酸での置換)などが含まれ得る。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般に、4つのファミリー:(1)酸性、すなわちアスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわちリジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわちアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性、すなわちグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分類される。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時にはまとめて芳香族アミノ酸として分類される。一般に、これらのファミリー内での単一アミノ酸の置換は、生物活性に大きな影響を与えない。
【0044】
ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つに対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9など)の単一アミノ酸の欠失を含み得る。同様に、ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つに対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9など)の挿入(例えば、それぞれが1、2、3、4、または5つのアミノ酸)を含み得る。
【0045】
群(c)内では、欠失または置換は、N末端および/またはC末端であっても、または2つの末端間であっても良い。したがって、切断は、欠失の一例である。切断は、N末端および/またはC末端における最大40(またはそれ以上)のアミノ酸の欠失を伴い得る。
【0046】
一般に、本発明のポリペプチドが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の完全な1つと同一でない配列を含む場合(例えば、このポリペプチドが、1つの完全な配列に対して100%未満の配列同一性でリストに載せられた配列を含む場合、またはこのポリペプチドが、1つの完全な配列の断片を含む場合)、好ましくは、このポリペプチドは、完全な配列番号の配列からなるポリペプチドを認識する抗体、すなわち前記配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107の1つ以上のエピトープに結合する抗体を誘導し得る。
【0047】
一実施形態では、本発明は、(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つに対して少なくともa%の同一性を有し;そして(b)前記配列番号の少なくともb個の連続したアミノ酸の断片を含む、アミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0048】
本発明のポリペプチドは、金属イオン、例えば、このポリペプチド鎖の1つ以上のアミノ酸が配位された金属イオンを含み得る。例えば、このポリペプチドは、1価、2価、または3価の金属カチオンを含み得る。2価のカチオンは、典型的には、例えば、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+などである。2価のカチオンは、好ましくはZn2+である。イオンは、HEAGHまたはHEVGHアミノ酸配列が配位され得る。
【0049】
本発明と共に使用されるポリペプチドは、様々な形態(例えば、天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、非脂質化、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体、多量体、微粒子、変性など)をとり得る。
【0050】
本発明と共に使用されるポリペプチドは、様々な手段(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)によって調製され得る。組換え的に発現されるタンパク質が好ましい。
【0051】
本発明と共に使用されるポリペプチドは、好ましくは、精製されたかまたは実質的に精製された形態、すなわち他のポリペプチドを実質的に含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に目的の病原体または宿主細胞のポリペプチドに由来する他のポリペプチドを実質的に含まない形態で提供され、一般に、少なくとも約50%(重量)純粋、通常は少なくとも約90%純粋であり、すなわち組成物の約50%未満、より好ましくは約10%未満(例えば、5%)が、他の発現されたポリペプチドからなる。したがって、組成物中の抗原は、分子が発現される生物全体から分離される。
【0052】
本発明と共に使用されるポリペプチドは、好ましくはH因子結合ポリペプチドである。
【0053】
用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。このポリマーは、線状でも分岐でもよく、修飾されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸によって中断され得る。この用語はまた、天然に修飾されたか、あるいは介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分との結合などによって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。また、例えば、1つ以上のアミノ酸の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)および当分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも含む。ポリペプチドは、1本鎖または結合鎖として生じ得る。
【0054】
本発明は、配列−P−Q−または−Q−P−を含むポリペプチドを提供し、この−P−は、上で定義したアミノ酸であり、−Q−は、上で定義した配列ではなく、すなわち本発明は、融合タンパク質を提供する。−P−のN末端コドンがATGではなく、このコドンがポリペプチドのN末端に存在しない場合は、Metではなくそのコドンに標準のアミノ酸として翻訳される。しかし、このコドンがポリペプチドのN末端にある場合は、Metとして翻訳される。−Q−部分の例には、限定されるものではないが、ヒスチジンタグ(すなわち、His、n=3、4、5、6、7、8、9、または10以上)、マルトース結合タンパク質、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)が含まれる。
【0055】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを含むオリゴマータンパク質も提供する。オリゴマーは、2量体、3量体、4量体などであり得る。オリゴマーは、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであり得る。オリゴマー中のポリペプチドは、共有結合または非共有結合され得る。
【0056】
本発明はまた、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、本発明の核酸で形質転換された宿主細胞を培養するステップを含む本発明のポリペプチドを作製するプロセスも提供する。次いで、このポリペプチドは、例えば、培養上清から精製され得る。
【0057】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードするプラスミドを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞の染色体は、H因子結合ポリペプチドの相同体を含んでも、このような相同体が存在しなくてもよく、いずれの場合も、本発明のポリペプチドは、プラスミドから発現され得る。プラスミドは、マーカーなどをコードする遺伝子を含み得る。適したプラスミドのこれらおよび他の詳細を以下に説明する。
【0058】
本発明のポリペプチドの発現は、ポリペプチドが由来する菌株で起こり得るが、本発明は、通常は、発現用に異種宿主を用いる。異種宿主は、原核生物(例えば、細菌)または真核生物であり得る。適した宿主には、限定されるものではないが、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが含まれる。
【0059】
本発明は、ポリペプチドの少なくとも一部を化学手段によって合成するステップを含む本発明のポリペプチドを作製するプロセスを提供する。
【0060】
(核酸)
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよびハイブリッドポリペプチドをコードする核酸も提供する。本発明はまた、本発明の1つ以上のポリペプチドまたはハイブリッドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0061】
本発明はまた、このようなヌクレオチド配列に対して配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。配列間の同一性は、好ましくは、上記したようにSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。このような核酸は、同じアミノ酸をコードする代替コドンを用いるものも含む。
【0062】
本発明はまた、これらの核酸にハイブリダイズできる核酸も提供する。ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行われ得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は、当分野で周知であり、公表されている(例えば、参考文献214の頁7.52)。適切な条件の例は(ストリンジェンシーが増加していく順に):25℃、37℃、50℃、55℃、および68℃のインキュベーション温度;10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSCおよび他の緩衝系を用いたそれらの同等物の緩衝液濃度(SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液);0%、25%、50%、および75%のホルムアミド濃度;5分〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれ以上の洗浄ステップ;1分、2分、または15分の洗浄インキュベーション時間;および6×SSC、1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄液を含む。ハイブリダイゼーション技術およびそれらの最適化は、当分野で周知である(例えば、参考文献22、23、214、216などを参照)。
【0063】
一部の実施形態では、低いストリンジェンシー条件下で、本発明の核酸を標的にハイブリダイズさせ;他の実施形態では、中程度のストリンジェンシー条件下で、本発明の核酸をハイブリダイズさせ;好ましい実施形態では、高いストリンジェンシー条件下で、本発明の核酸をハイブリダイズさせる。低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、50℃および10×SSCである。中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、55℃および1×SSCである。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の例示的なセットは、68℃および0.1×SSCである。
【0064】
本発明は、これらの配列に相補的な配列を含む核酸(例えば、アンチセンスまたはプロービング用、またはプライマーとしての使用のため)を含む。
【0065】
本発明の核酸は、ハイブリダイゼーション反応(例えば、ノーザンブロットまたはサザンブロット、または核酸マイクロアレイすなわち「遺伝子チップ」)および増幅反応(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)および他の核酸技術で使用され得る。
【0066】
本発明による核酸は、様々な形態(例えば、1本鎖、2本鎖、ベクター、プライマー、プローブ、標識など)をとり得る。本発明の核酸は、環状または分岐でも良いが、通常は線状である。特段の記載または必要がない限り、核酸を利用する本発明のどの実施形態も、2本鎖の形態、および2本鎖の形態を形成するそれぞれが相補的な2つの1本鎖の形態の両方を利用し得る。プライマーおよびプローブは、アンチセンス核酸であるため、通常は1本鎖である。
【0067】
本発明の核酸は、好ましくは、精製されたかまたは実質的に精製された形態、すなわち他の核酸を実質的に含まない(例えば、天然に存在する核酸を含まない)、特に目的の他の病原体または宿主細胞の核酸を実質的に含まない形態で提供され、一般に、少なくとも約50%(重量)純粋、通常は少なくとも約90%純粋である。
【0068】
本発明の核酸は、様々な方法、例えば、全体または部分的な化学合成(例えば、DNAのホスホラミダイト合成)によって、ヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を用いた長い核酸の消化によって、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー由来の短い核酸またはヌクレオチドの結合(例えば、リガーゼまたはポリメラーゼを用いた)などによって調製され得る。
【0069】
本発明の核酸は、固形支持体(例えば、ビーズ、プレート、フィルター、フィルム、スライド、マイクロアレイ支持体、樹脂など)に付着させられ得る。本発明の核酸は、例えば、放射性標識または蛍光標識、またはビオチン標識で標識され得る。これは、核酸が検出技術で使用される場合、例えば、核酸がプライマーまたはプローブである場合に特に有用である。
【0070】
用語「核酸」は、一般に、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を意味し、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらの類似体が含まれる。核酸には、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドが含まれる。また核酸には、例えば、修飾された骨格(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはホスホロチオエート)または修飾された塩基などを含むようなDNAまたはRNAの類似体も含まれる。したがって、本発明は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組換え核酸、分岐核酸、プラスミド、ベクター、プローブ、プライマーなどを含む。本発明の核酸がRNAの形態をとる場合は、本発明の核酸は、5’キャップを備えても備えなくても良い。
【0071】
本発明の核酸は、ベクターの一部、すなわち1つ以上の細胞型のトランスダクション/トランスフェクション用に設計された核酸構築物の一部であり得る。ベクターは、例えば、挿入されたヌクレオチドの単離、増殖、および複製用に設計された「クローニングベクター」、宿主細胞でのヌクレオチド配列の発現用に設計された「発現ベクター」、組換えウイルスまたはウイルス様粒子の生産をもたらすように設計された「ウイルスベクター」、またはベクターの2つ以上の型の特性を備える「シャトルベクター」であり得る。好ましいベクターは、上述したようにプラスミドである。「宿主細胞」には、外来性核酸のレシピエントであり得るか、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、天然、偶発的、または計画的な変異および/または変化によって元の親細胞に対して必ずしも完全に同一(形態学的に、または全DNA相補体において)ではないであろう。宿主細胞には、本発明の核酸でインビボまたはインビトロでトランスフェクトまたは感染させられた細胞が含まれる。
【0072】
核酸がDNAである場合は、RNA配列中の「U」は、DNA中の「T」に置き換えられることを理解されたい。同様に、核酸がRNAの場合は、DNA配列中の「T」は、RNA中の「U」に置き換えられることを理解されたい。
【0073】
用語「相補体」または「相補的」は、核酸に関連して使用される場合は、Watson−Crick塩基対合を指す。したがって、Cの相補体はGであり、Gの相補体はCであり、Aの相補体はT(またはU)であり、T(またはU)の相補体はAである。また、例えば、相補ピリミジン(CまたはT)に対して塩基、例えば、I(プリンのイノシン)を使用することも可能である。
【0074】
本発明の核酸は、例えば:ポリペプチドを作製するために;生物学的サンプル中の核酸の検出用のハイブリダイゼーションプローブとして;核酸の追加コピーを作製するために;リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために;1本鎖DNAプライマーまたはプローブとして;または3本鎖形成オリゴヌクレオチドとして、使用され得る。
【0075】
本発明は、本発明の核酸を作製するためのプロセスを提供し、この核酸は、一部または全体が化学手段を用いて合成される。
【0076】
本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)およびこのようなベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0077】
本発明による核酸の増幅は、定量的および/またはリアルタイムであり得る。
【0078】
本発明の特定の実施形態では、核酸は、好ましくは少なくとも7のヌクレオチドの長さである(例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300ヌクレオチド、またはそれよりも長い)。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、核酸は、好ましくは最大でも500ヌクレオチドの長さである(例えば、450、400、350、300、250、200、150、140、130、120、110、100、90、80、75、70、65、60、55、50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15ヌクレオチド、またはそれよりも短い)。
【0080】
本発明のプライマーおよびプローブ、ならびにハイブリダイゼーション用に使用される他の核酸は、好ましくは10〜30ヌクレオチドの長さである(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)。
【0081】
(免疫原性組成物および薬剤)
本発明のポリペプチドは、免疫原性組成物中の活性成分(免疫原)として有用であり、このような組成物は、ワクチンとして有用であり得る。本発明によるワクチンは、予防用(すなわち、感染を防止する)または治療用(すなわち、感染を処置する)のいずれかであり得るが、典型的には予防用である。
【0082】
免疫原性組成物は、薬学的に許容される。免疫原性組成物には、通常は、抗原に加えて成分が含まれ、例えば、これらの成分には、典型的には、1つ以上の薬学的担体(複数可)、賦形剤(複数可)、および/またはアジュバント(複数可)が含まれる。担体および賦形剤の詳細な議論は、参考文献211に記載されている。ワクチンアジュバントの詳細な議論は、参考文献24および25に記載されている。
【0083】
組成物は、一般に、水性形態で哺乳動物に投与される。しかし、投与前は、組成物は、非水性形態であっても良い。例えば、一部のワクチンは、水性形態で製造され、また、後に水性形態のまま充填され、流通させられ、投与されるが、他のワクチンは、製造中に凍結乾燥され、使用時に水性形態に再構成される。したがって、本発明の組成物は、凍結乾燥処方物のように乾燥させても良い。
【0084】
組成物は、チオマーサルまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含み得る。しかし、好ましくは、ワクチンは、水銀性物質を実質的に含まない(すなわち、5μg/ml未満)、例えば、チオマーサルフリーであるべきである。水銀を含まないワクチンがより好ましい。保存剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0085】
熱安定性を改善するために、組成物は、熱保護剤を含み得る。
【0086】
張度を調整するために、生理的塩、例えばナトリウム塩を含むのが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、塩化ナトリウムは、1〜20mg/ml、例えば、約10±2mg/ml NaClで存在しても良い。存在しても良い他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム脱水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0087】
組成物は、一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの容量オスモル濃度を有し、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲である。
【0088】
組成物は、1つ以上の緩衝液を含み得る。典型的な緩衝液には、リン酸緩衝液;トリス緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液(特に水酸化アルミニウムアジュバントと共に使用);またはクエン酸緩衝液が含まれる。緩衝液は、典型的には、5〜20mMの範囲で含められる。
【0089】
組成物のpHは、一般に、5.0〜8.1であり、より典型的には6.0〜8.0、例えば、6.5および7.5、または7.0〜7.8である。
【0090】
組成物は、好ましくは無菌である。組成物は、好ましくは発熱物質を含まず、例えば、1用量当たり<1EU(エンドトキシン単位、標準的な測定単位)、好ましくは1用量当たり<0.1EUを含む。組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0091】
組成物は、単回免疫化用の材料を含んでも、複数回免疫化用の材料を含んでも良い(すなわち、「複数回投与」キット)。複数回投与配合では、保存剤を含めることが好ましい。複数回投与組成物中に保存剤を含める代わりに(またはこれに加えて)、組成物は、材料の取り出し用の無菌アダプターを備えた容器内に含めても良い。
【0092】
ヒトワクチンは、典型的には、約0.5mlの投薬量で投与されるが、子供には半分の用量(すなわち、約0.25ml)を投与しても良い。
【0093】
本発明の免疫原性組成物は、1つ以上の免疫調節剤も含み得る。好ましくは、1つ以上の免疫調節剤は、1つ以上のアジュバントを含む。アジュバントは、さらに以下に説明するように、TH1アジュバントおよび/またはTH2アジュバントを含み得る。
【0094】
本発明の組成物中に使用され得るアジュバントには、限定されるものではないが、以下のものが含まれる。
【0095】
(A.無機物含有組成物)
本発明のアジュバントとしての使用に適した無機物含有組成物には、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩(またはこれらの混合物)が含まれる。カルシウム塩には、リン酸カルシウム(例えば、参考文献26に開示された「CAP」粒子)が含まれる。アルミニウム塩には、塩が任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)をとっている水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などが含まれる。これらの塩への吸着が好ましい。無機物含有組成物は、金属塩の粒子としても処方され得る(27)。
【0096】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして知られるアジュバントを使用しても良い。これらの名称は、いずれも存在する実際の化学化合物の正確な記載ではないため、慣習的であるが、利便のためだけに使用される(例えば、参考文献24の第9章を参照)。本発明は、一般にアジュバントとして使用される「水酸化物」アジュバントまたは「リン酸塩」アジュバントのいずれもを使用することができる。「水酸化アルミニウム」として知られるアジュバントは、典型的にはオキシ水酸化アルミニウム塩であり、オキシ水酸化アルミニウム塩は、通常は少なくとも部分的に結晶である。「リン酸アルミニウム」として知られるアジュバントは、典型的には、少量の硫酸塩も含む場合が多いヒドロキシリン酸アルミニウムである(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)。これらは、沈殿によって得てよく、そして沈殿中の反応条件および濃度が、塩におけるヒドロキシルへのリン酸塩の置換度に影響を与える。
【0097】
線維形態(例えば、透過電子顕微鏡写真で見られるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントの典型である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には約11、すなわちアジュバント自体が、生理的pHで正の表面電荷を有する。pH7.4で、Al+++ 1mg当たりタンパク質1.8〜2.6mgの吸着能が、水酸化アルミニウムアジュバントで報告されている。
【0098】
リン酸アルミニウムアジュバントは、一般に、0.3〜1.2、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.95±0.1のPO/Alモル比を有する。リン酸アルミニウムは、一般に非晶質であり、特にヒドロキシリン酸塩では非晶質である。典型的なアジュバントは、0.6mg Al+++/mlで含まれる、PO/Alモル比が0.84〜0.92の非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムである。リン酸アルミニウムは、一般に粒子状である(例えば、透過電子顕微鏡写真で見られるようにプレート様の形態)。この粒子の典型的な直径は、いかなる抗原吸着の後も0.5〜20μmの範囲(例えば、約5〜10μm)である。pH7.4で、Al+++ 1mg当たりタンパク質0.7〜1.5mgの吸着能が、リン酸アルミニウムアジュバントで報告されている。
【0099】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、ヒドロキシルのリン酸塩での置換度に逆相関し、この置換度は、沈殿による塩の調製に使用される反応条件および反応物の濃度によって異なり得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変化させることによって(リン酸が多い=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液などの緩衝液を添加することによって(PZCの塩基性が上昇)、変更される。本発明に従って使用されるリン酸アルミニウムは、一般に4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0100】
本発明の組成物を調製するために使用されるアルミニウム塩の懸濁物は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、またはトリス緩衝液)を含んで良いが、常に含む必要はない。懸濁物は、好ましくは無菌であり、発熱物質を含まない。懸濁物は、例えば、1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、より好ましくは約10mMの濃度で存在する遊離水性リン酸イオンを含み得る。懸濁物は、塩化ナトリウムも含み得る。
【0101】
本発明は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物を使用することができる。この場合、水酸化アルミニウムよりもリン酸アルミニウムの方が多く存在することができ、例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比である。
【0102】
患者に投与される組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは10mg/ml未満、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどである。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。最大で0.85mg/用量であるのが好ましい。
【0103】
(B.油乳剤)
本発明のアジュバントとして使用するのに適した油乳剤組成物には、スクアレン−水乳剤、例えば、MF59(参考文献24の第10章;参考文献28も参照)(マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を用いてサブミクロン粒子に処方された5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85)が含まれる。完全フロインドアジュバント(CFA)および不完全フロインドアジュバント(IFA)も使用され得る。
【0104】
様々な水中油型乳剤アジュバントが知られており、これらは、典型的には、少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤を含み、油(複数可)および界面活性剤(複数可)は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。乳剤中の油滴は、一般に5μm未満の直径であり、理想的にはサブミクロンの直径であり、これらの小さいサイズは、マイクロフルイダイザーで達成され、安定な乳剤を提供する。ろ過滅菌できるようにサイズが220nm未満の小滴が好ましい。
【0105】
乳剤は、動物(例えば、魚)の供給源または植物の供給源に由来するような油を含むことができる。植物油の供給源には、堅果、種、および穀物が含まれる。ピーナッツ油、大豆油、ヤシ油、およびオリーブ油は、最も入手しやすく、堅果油の例である。例えば、ホホバ豆から得られるホホバ油が使用され得る。種油には、ヒマワリ油、綿実油、ヒマワリ種子油、およびゴマ油などが含まれる。穀物群では、コーン油が、最も容易に入手可能であるが、他のシリアル穀物、例えば、コムギ、カラスムギ、ライムギ、コメ、テフ、およびライコムギなどの油も使用され得る。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、種油では自然に発生しないが、堅果油および種油に由来する適切な材料の加水分解、分離、およびエステル化によって調製され得る。哺乳動物乳由来の脂肪および油は、代謝可能であり、従って本発明の実施に使用され得る。動物の供給源由来の純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化、および他の手段の手順は、当分野で周知である。殆どの魚には、容易に回収され得る代謝可能な油が含まれている。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨ろうなどの鯨油は、本発明に使用され得るいくつかの魚油の例である。多数の分岐鎖油が、5−炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、一般にテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンとして知られる分岐不飽和テルペノイドを含み、これは、本発明に特に好ましい。スクアラン、スクアレンの飽和類似体も好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、商業的供給源から容易に入手可能であるか、または当分野で公知の方法によって得られ得る。他の好ましい油は、トコフェロールである(以下を参照)。油の混合物も使用され得る。
【0106】
界面活性剤は、そのHLB(親水/親油平衡)によって分類され得る。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、限定されるものではないが:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般にTweensと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、DOWFAXTM商用名として販売されており、例えば、線状EO/POブロックコポリマー;オクトキシノール、これは反復エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が様々であり得、オクトキシノール−9(Triton X−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に目的のものである;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えば、TergitolTMNPシリーズ;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として知られている)、例えば、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30);およびソルビタンエステル(一般にSPANとして知られている)、例えば、三オレイン酸ソルビタン(Span85)およびモノラウリン酸ソルビタン、を含む界面活性剤と共に使用され得る。非イオン性界面活性剤が好ましい。乳剤中に含めるのに好ましい界面活性剤は、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(三オレイン酸ソルビタン)、レシチン、およびTriton X−100である。
【0107】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween80/Span85混合物が使用され得る。ポリオキシエチレンソルビタンエステルの組み合わせ、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80)およびオクトキシノール、例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)も適している。別の有用な組み合わせには、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールが含まれる。
【0108】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は:ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween80)が0.01〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、またはTritonシリーズの他の界面活性剤)が0.001〜0.1%、特に0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)が0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、特に0.1〜1%または約0.5%である。
【0109】
好ましい乳剤アジュバントは、<1μm、例えば、≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nm、またはそれよりも小さい平均小滴サイズを有する。これらの小滴サイズは、マイクロフルイダイゼーションなどの技術によって好都合に達成され得る。
【0110】
本発明に有用な具体的な水中油型乳剤アジュバントには、限定されるものではないが、以下のものが含まれる。
【0111】
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロン乳剤。乳剤の容積組成は、約5%スクアレン、約0.5%ポリソルベート80、および約0.5%Span85であり得る。重量では、これらの比は、4.3%スクアレン、0.5%ポリソルベート80、および0.48%Span85となる。このアジュバントは、参考文献32の第10章および参考文献33の第12章に詳細に記載されているように、「MF59」(29〜31)として知られている。MF59乳剤には、クエン酸イオン、例えば、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液が有利に含まれる。
【0112】
・スクアレン、トコフェロール、およびTween80の乳剤。この乳剤は、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。乳剤は、Span85(例えば、1%で)および/またはレシチンも含み得る。これらの乳剤は、2〜10%スクアレン、2〜10%トコフェロール、および0.3〜3%Tween80を有し得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、≦1がより安定な乳剤を提供するため、≦1が好ましい。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容積比で存在し得る。1つのこのような乳剤は、Tween80をPBSに溶解して2%溶液を得、次いでこの溶液90mlを混合物(DL−α−トコフェロール5gおよびスクアレン5ml)と混合し、この混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製され得る。得られる乳剤は、例えば、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径のサブミクロン油滴を有し得る。
【0113】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えば、Triton X−100)の乳剤。この乳剤は、3d−MPL(以下を参照)も含み得る。乳剤は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0114】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えば、Triton X−100)、およびトコフェロール(例えば、α−コハク酸トコフェロール)を含む乳剤。この乳剤は、約75:11:10の質量比でこれら3つの成分(例えば、750μg/mlポリソルベート80、110μg/ml Triton X−100、および100μg/ml α−コハク酸トコフェロール)を含み得、これらの濃度は、抗原由来のこれらの成分の任意の寄与を含むべきである。この乳剤は、スクアレンも含み得る。乳剤はまた、3d−MPL(以下を参照)も含み得る。水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0115】
・スクアレン、ポリソルベート80、およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)の乳剤。この乳剤は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水で処方され得る。この乳剤は、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント(34)(0.05〜1%Thr−MDP、5%スクアレン、2.5%Pluronic L121、および0.2%ポリソルベート80)においてトレオニル−MDPと共に使用された。乳剤はまた、「AF」アジュバント(35)(5%スクアレン、1.25%Pluronic L121、および0.2%ポリソルベート80)においてのようにThr−MDPを用いずに使用しても良い。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0116】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタンまたは「Span80」)を含む乳剤。この乳剤は、好ましくは熱可逆性であり、および/または少なくとも90%(容積)の、サイズが200nm未満の油滴を有する(36)。乳剤は、アルジトール;凍結防止剤(例えば、糖、例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロース);および/またはアルキルポリグリコシドの1つ以上も含み得る。このような乳剤は、凍結乾燥され得る。
【0117】
・スクアレン、ポリオキサマー105、およびAbil−Careの乳剤(37)。アジュバントワクチン中のこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%スクアレン、4%ポリオキサマー105(プルロニックポリオール)、および2%Abil−Care85(Bis−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16 ジメチコーン;トリカプリルグリセリル/トリカプリン酸グリセリル)である。
【0118】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05%〜5%の非イオン性界面活性剤を有する乳剤。参考文献38に記載されているように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、およびカルジオリピンである。サブミクロン小滴サイズが有利である。
【0119】
・非代謝油(例えば、軽鉱油)および少なくとも1つの界面活性剤(例えば、レシチン、Tween80、またはSpan80)のサブミクロン水中油型乳剤。添加物、例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油結合体(例えば、グルクロン酸のカルボキシル基を介した脂肪族アミンのデサシルサポニン(desacylsaponin)への添加によって作製される、参考文献39に記載されているGPI−0100)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(dimethyidioctadecylammonium bomide)、および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンが含まれ得る。
【0120】
・サポニン(例えば、QuilAまたはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)が螺旋ミセル(helical micelle)として結合している乳剤(40)。
【0121】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含む乳剤(41)。
【0122】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含む乳剤(41)。
【0123】
一部の実施形態では、乳剤は、送達時に抗原と即席に混合され得るため、アジュバントと抗原は、使用時の最終処方に備えて、パッケージワクチンまたは分散ワクチンにおいて別個に維持され得る。他の実施形態では、乳剤は、製造中に抗原と混合されるため、この組成物は、液体アジュバントの形態でパッケージされる。抗原は、ワクチンが2つの液体の混合によって最終的に調製されるように、一般に水性形態である。混合される2つの液体の容積比は、様々であり得るが(例えば、5:1〜1:5)、一般に約1:1である。成分の濃度が、特定の乳剤の上記である場合、これらの濃度は、典型的には不希釈組成物用であるため、抗原液との混合後の濃度は低下する。
【0124】
組成物がトコフェロールを含む場合、α、β、γ、δ、ε、またはξトコフェロールのいずれもが使用され得るが、α−トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、いくつかの形態、例えば、異なる塩および/または異性体の形態をとり得る。塩には、有機塩、例えば、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩などが含まれる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールは共に使用され得る。トコフェロールは、ビタミンEが高齢患者群(例えば、60歳以上)における免疫応答に好ましい効果を有することが報告されたため、この患者群で使用されるワクチンに有利に含められる(42)。トコフェロールは、乳剤を安定させるのを助け得る抗酸化特性も有する(43)。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールであり、そしてこのトコフェロールの好ましい塩は、コハク酸塩である。コハク酸塩は、インビボでTNF関連リガンドと協働することが分かっている。
【0125】
(C.サポニン処方物(参考文献24の第22章))
サポニン処方物も、本発明のアジュバントとして使用され得る。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根、および花にも見られるステーロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種グループ(heterogeneous group)である。Quillaia saponaria Molina樹木の樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(サボンソウ(soap root))から商業的に得られ得る。サポニンアジュバント処方物には、精製処方物、例えば、QS21、および脂質処方物、例えば、ISCOMが含まれる。QS21は、StimulonTMとして市販されている。
【0126】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製された。これらの技術を用いて精製された特定の画分は、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cを含め、同定されている。好ましくは、サポニンは、QS21である。QS21の生産方法は、参考文献44に開示されている。サポニン処方物はまた、ステロール、例えば、コレステロールも含み得る(45)。
【0127】
サポニンとコレステロールの組み合わせは、免疫賦活性複合体(ISCOM)(参考文献24の第23章)と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用され得る。ISCOMは、典型的には、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンも含む。いずれの公知のサポニンも、ISCOMで使用され得る。好ましくは、ISCOMは、QuilA、QHA、およびQHCの1つ以上を含む。ISCOMは、さらに、参考文献45〜47に記載されている。任意選択で、ISCOMは、付加的な界面活性剤を含まなくても良い(48)。
【0128】
サポニンをベースとしたアジュバントの開発の概説は、参考文献49および50で見られ得る。
【0129】
(D.ビロゾームおよびウイルス様粒子)
ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)も、本発明のアジュバントとして使用され得る。これらの構造は、一般に、任意選択でリン脂質と組み合わせられるかまたは処方されるウイルス由来の1つ以上のタンパク質を含む。これらは、一般に非病原性で非複製性であり、一般に天然ウイルスのゲノムを一切含まない。ウイルスタンパク質は、組換え的に作製されるかまたはウイルス全体から単離され得る。ビロゾームまたはVLPに使用するのに適したこれらのウイルスタンパク質には、インフルエンザウイルスに由来するタンパク質(例えば、HAまたはNA)、B型肝炎ウイルスに由来するタンパク質(例えば、コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルスに由来するタンパク質、麻疹ウイルスに由来するタンパク質、シンドビスウイルスに由来するタンパク質、ロタウイルスに由来するタンパク質、口蹄疫ウイルスに由来するタンパク質、レトロウイルスに由来するタンパク質、ノーウォークウイルスに由来するタンパク質、ヒトパピローマウイルスに由来するタンパク質、HIVに由来するタンパク質、RNAファージに由来するタンパク質、Qβファージに由来するタンパク質(例えば、外被タンパク質)、GAファージに由来するタンパク質、frファージに由来するタンパク質、AP205ファージに由来するタンパク質、およびTyに由来するタンパク質(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1)が含まれる。VLPは、参考文献51〜56でさらに議論されている。ビロゾームは、例えば、参考文献57でさらに議論されている。
【0130】
(E.細菌誘導体または微生物誘導体)
本発明に使用するのに適したアジュバントには、細菌誘導体または微生物誘導体、例えば、腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫賦活オリゴヌクレオチド、ならびにADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体が含まれる。
【0131】
LPSの非毒性誘導体には、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が含まれる。3dMPLは、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAと4、5、または6アシル化鎖との混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態が、参考文献58に開示されている。このような3dMPLの「小粒子」は、0.22μMの膜に通して滅菌ろ過されるべく十分に小さい(58)。他の非毒性LPS誘導体には、モノホスホリルリピドA模倣体、例えば、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えば、RC−529が含まれる(59、60)。
【0132】
リピドA誘導体には、大腸菌由来リピドAの誘導体、例えば、OM−174が含まれる。OM−174は、例えば、参考文献61および62に記載されている。
【0133】
本発明のアジュバントとして使用するのに適した免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ(グアノシンにリン酸結合によって連結された非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列を含む。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む2本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドも、免疫賦活性であることが示されている。
【0134】
CpG’sは、ヌクレオチド修飾体/類似体、例えば、ホスホロチオエート修飾体を含み得、2本鎖または1本鎖であり得る。参考文献63、64、および65は、可能な類似体の置換、例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンでの置換を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献66〜71にさらに記載されている。
【0135】
CpG配列は、TLR9、例えば、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTに対して向けられ得る(72)。CpG配列、例えば、CpG−A ODNは、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得、またはCpG配列、例えば、CpG−B ODNは、B細胞応答の誘導により特異的であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献73〜75で議論されている。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。
【0136】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体の認識のためにアクセス可能であるように構築される。任意選択で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、それらの3’末端で付着されて「イムノマー(immunomer)」を形成し得る。例えば、参考文献72および76〜78を参照されたい。
【0137】
有用なCpGアジュバントは、ProMuneTM(Coley Pharmaceutical Group,Inc.)としても知られているCpG7909である。もう1つは、CpG1826である。代替として、またはCpG配列の使用に加えて、TpG配列が使用され得(79)、これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まなくても良い。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、ピリミジンリッチであり得る。例えば、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、2つ以上の連続したチミジンヌクレオチド(例えば、参考文献79に開示されているようなTTTT)を含み、および/またはチミジンが>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成物を有し得る。例えば、免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、2つ以上の連続したシトシンヌクレオチド(例えば、参考文献79に開示されているようなCCCC)を含み得、および/またはシトシンが>25%(例えば、>35%、>40%、>50%、>60%、>80%など)のヌクレオチド組成物を有し得る。これらのオリゴヌクレオチドは、非メチル化CpGモチーフを含まなくても良い。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、典型的には少なくとも20のヌクレオチドを含む。免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、100未満のヌクレオチドを含み得る。
【0138】
免疫賦活性オリゴヌクレオチドなどをベースにした特に有用なアジュバントは、IC−31TMとして知られている(80)。したがって、本発明に使用されるアジュバントは、(i)少なくとも1つ(より好ましくは複数)のCpIモチーフ(すなわち、シトシンがイノシンに連結されてジヌクレオチドを形成している)を含むオリゴヌクレオチド(例えば、15〜40のヌクレオチド)と、(ii)ポリカチオンポリマー、例えば、少なくとも1つ(より好ましくは複数)のLys−Arg−Lysトリペプチド配列(複数可)を含むオリゴペプチド(例えば、5〜20のアミノ酸)との混合物を含み得る。オリゴヌクレオチドは、26−mer配列5’−(IC)13−3’(配列番号96)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。ポリカチオンポリマーは、11−merアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号97)を含むペプチドであり得る。
【0139】
細菌ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体は、本発明のアジュバントとして使用され得る。好ましくは、このタンパク質は、大腸菌(大腸菌易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ菌(「CT」)、または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての解毒ADPリボシル化毒素の使用は、参考文献81に記載され、参考文献82には非経口アジュバントとして記載されている。毒素またはトキソイドは、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットを含むホロトキシンの形態である。好ましくは、Aサブユニットは、解毒変異を含み;好ましくは、Bサブユニットは変異されていない。好ましくは、アジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192などの解毒LT変異体である。ADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体、特にLT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、参考文献83〜90で見られ得る。有用なCT変異体は、CT−E29Hである(91)。アミノ酸置換の参考数値は、好ましくは、特に参照によりその全容が本明細書に組み入れられる参考文献92に記載されているADPリボシル化毒素のAサブユニットとBサブユニットのアラインメントに基づいている。
【0140】
(F.ヒト免疫調節因子)
本発明のアジュバントとして使用するのに適したヒト免疫調節因子には、サイトカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(93)など)(94)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が含まれる。好ましい免疫調節因子は、IL−12である。
【0141】
(G.生体接着物および粘膜接着物)
生体接着物および粘膜接着物も、本発明のアジュバントとして使用され得る。適した生体接着物には、エステル化ヒアルロン酸マイクロスフェア(95)または粘膜接着物、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖、およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体が含まれる。キトサンおよびその誘導体も、本発明のアジュバントとして作用され得る(96)。
【0142】
(H.微小粒子)
微小粒子も、本発明のアジュバントとして使用され得る。ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)と共に、生分解性かつ非毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微小粒子(すなわち、直径が約100nm〜約150μm、より好ましくは約200nm〜約30μm、最も好ましくは約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、任意選択で、負に帯電した表面(例えば、SDSを使用)または正に帯電した表面(例えば、陽イオン性界面活性剤、例えば、CTABを使用)を有するように処置される。
【0143】
(I.リポソーム(参考文献24の第13章および第14章))
アジュバントとして使用するのに適したリポソーム処方物の例が、参考文献97〜99に記載されている。
【0144】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明に使用するのに適したアジュバントには、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが含まれる(100)。このような処方物には、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(101)および少なくとも1つの追加の非イオン性界面活性剤、例えば、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(102)がさらに含まれる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0145】
(K.ホスファゼン)
ホスファゼン、例えば、参考文献103および104に記載されているようなポリ(ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン)(「PCPP」)が使用され得る。
【0146】
(L.ムラミルペプチド)
本発明のアジュバントとして使用するのに適したムラミルペプチドの例には、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が含まれる。
【0147】
(M.イミダゾキノロン化合物)
本発明のアジュバントとして使用するのに適したイミダゾキノロン化合物の例には、イミキモド(「R−837」)(105、106)、レシキモド(「R−848」)(107)、およびこれらの類似体;およびこれらの塩(例えば、塩酸塩)が含まれる。免疫賦活性イミダゾキノリンについてのさらなる詳細は、参考文献108〜112で見られ得る。
【0148】
(N.置換尿素)
アジュバントとして有用な置換尿素には、式I、II、またはIIIの化合物:
【0149】
【化2】

またはこれらの塩が含まれ、参考文献113に、例えば、「ER803058」、「ER803732」、「ER804053」、「ER804058」、「ER804059」、「ER804442」、「ER804680」、「ER804764」、「ER803022」、または「ER804057」として定義されている。例えば:
【0150】
【化3】

である。
【0151】
(O.さらなるアジュバント)
本発明と共に使用され得るさらなるアジュバントには以下のものが含まれる。
【0152】
・アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えば、RC−529(114、115)。
【0153】
・チオセミカルバゾン化合物、例えば、参考文献116に開示されているもの。活性化合物の処方、製造、およびスクリーニングの方法も、参考文献116に記載されている。チオセミカルバゾンは、ヒト末梢血単核細胞を刺激して、サイトカイン、例えば、TNF−αを産生させるのに特に有効である。
【0154】
・トリプタントリン化合物、例えば、参考文献117に開示されているもの。活性化合物の処方、製造、およびスクリーニングの方法も、参考文献117に記載されている。チオセミカルバゾンは、ヒト末梢血単核細胞を刺激して、サイトカイン、例えば、TNF−αを産生させるのに特に有効である。
【0155】
・ヌクレオシド類似体、例えば:(a)Isatorabine(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0156】
【化4】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)参考文献118から120に開示されている化合物。
【0157】
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン)(121)。
【0158】
・アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドライソキノリン(Tetrahydraisoquinoline)(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン(Benzocyclodione)化合物、アミノアザビニル(Aminoazavinyl)化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(Aminobenzimidazole quinolinone)(ABIQ)化合物(123、124)、ヒドラプタルアミド(Hydrapthalamide)化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナジリノン(Quinazilinone)化合物、ピロール化合物(125)、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラザロピリミジン(Pyrazalopyrimidine)化合物、およびベンザゾール化合物(126)を含む、参考文献122に開示されている化合物。
【0159】
・ホスフェート含有非環式骨格に連結された脂質を含む化合物、例えば、TLR4拮抗薬E5564(127、128)。
【0160】
・ポリオキシドニウム(polyoxidonium)ポリマー(129、130)または他のN−酸化ポリエチレン−ピペラジン誘導体。
【0161】
・メチルイノシン5’−モノホスフェート(「MIMP」)(131)。
【0162】
・ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物(132)、例えば、式:
【0163】
【化5】

を有する化合物(Rは、水素、線状または分岐、非置換または置換、飽和または不飽和アシル基、アルキル基(例えば、シクロアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、およびアリル基を含む群から選択される)、または薬学的に許容されるこれらの塩もしくは誘導体。例には、限定されるものではないが、カスアリン(casuarine)、カスアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カスアリン、7−エピ−カスアリン、3,7−ジエピ−カスアリンなどが含まれる。
【0164】
・CD1dリガンド、例えば、α−グリコシルセラミド(133〜140)(例えば、α−ガラクトシルセラミド)、フィトスフィンゴシン含有α−グリコシルセラミド、OCH、KRN7000((2S,3S,4R)−1−O−(α−D−ガラクトピラノシル)−2−(N−ヘキサコサノイルアミノ)−1,3,4−オクタデカントリオール)、CRONY−101、3’’−O−スルホ−ガラクトシルセラミドなど。
【0165】
・γイヌリン(14)またはその誘導体、例えば、アルガムリン(algammulin)。
【0166】
【化6】

(アジュバントの組み合わせ)
本発明はまた、上で同定した1つ以上のアジュバントの局面の組み合わせも含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物:(1)サポニンおよび水中油型乳剤(142);(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(143);(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(任意選択で、+ステロール)(144);(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型乳剤との組み合わせ(145);(6)サブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされたか、またはボルテックスされてそれより大きい粒径の乳剤にされた、10%スクアレン、0.4%Tween80TM、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAF;(7)2%スクアレン、0.2%Tween80、ならびにモノホスホリルリピド(monophosphorylipid)A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つ以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)を含むRibiTMアジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);および(8)1つ以上の無機塩(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性誘導体(例えば、3dMPL)が、本発明に使用され得る。
【0167】
免疫賦活剤として作用する他の物質は、参考文献24の第7章に開示されている。
【0168】
水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムのアジュバントの使用は、特に好ましく、抗原が、一般にこれらの塩に吸着される。リン酸カルシウムは、別の好ましいアジュバントである。他の好ましいアジュバントの組み合わせには、Th1アジュバントとTh2アジュバントの組み合わせ、例えば、CpGとミョウバンまたはレシキモドとミョウバンの組み合わせが含まれる。リン酸アルミニウムと3dMPLの組み合わせを使用しても良い。
【0169】
本発明の組成物は、細胞媒介免疫応答および体液性免疫応答の両方を誘導し得る。この免疫応答は、好ましくは、長期的に持続する(例えば、中和)抗体および肺炎球菌(pnuemococcus)への曝露に際し迅速に応答し得る細胞媒介免疫を誘導する。
【0170】
2種類のT細胞、CD4細胞およびCD8細胞は、一般に、細胞媒介免疫および体液性免疫を開始、および/または亢進するために必要であると考えられている。CD8T細胞は、CD8共受容体(co-receptor)を発現することができ、一般に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼ばれている。CD8T細胞は、MHCクラスI分子上に提示された抗原を認識でき、またはその抗原と相互作用することができる。
【0171】
CD4T細胞は、CD4共受容体を発現することができ、一般にヘルパーT細胞と呼ばれている。CD4T細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原ペプチドを認識することができる。MHCクラスII分子との相互作用に際し、CD4細胞は、因子、例えば、サイトカインを分泌することができる。これらの分泌されたサイトカインは、B細胞、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、および免疫応答に寄与する他の細胞を活性化させることができる。ヘルパーT細胞またはCD4+細胞は、機能的に異なる2つのサブセット:サイトカインおよびエフェクター機能が異なるTH1表現型およびTH2表現型にさらに分類され得る。
【0172】
活性化TH1細胞は、細胞性免疫(抗原特異的CTL産生の増加を含む)を亢進するため、細胞内感染に対する応答で特に有用である。活性化TH1細胞は、IL−2、IFN−γ、およびTNF−βの1つ以上を分泌し得る。TH1免疫応答は、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、およびCD8細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化させることによって局所炎症反応を引き起こし得る。TH1免疫応答はまた、B細胞およびT細胞の増殖をIL−12で刺激することによって免疫応答を拡大するように作用し得る。TH1刺激B細胞は、IgG2aを分泌し得る。
【0173】
活性化TH2細胞は、抗体の産生を促進するため、細胞外感染に対する応答で有用である。活性化TH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10の1つ以上を分泌し得る。TH2免疫応答は、将来の防御のためにIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞の産生を引き起こし得る。
【0174】
免疫応答の亢進には、TH1免疫応答の亢進およびTH2免疫応答の亢進の1つ以上が含まれ得る。
【0175】
TH1免疫応答には、CTLの増加、TH1免疫応答に関連した1つ以上のサイトカイン(例えば、IL−2、IFN−γ、およびTNF−β)の増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2a産生の増加の1つ以上が含まれ得る。好ましくは、TH1免疫応答の亢進には、IgG2a産生の増加が含まれる。
【0176】
TH1免疫応答は、TH1アジュバントを使用して誘導され得る。TH1アジュバントは、一般に、アジュバントを使用しない抗原の免疫と比較して、IgG2a産生レベルの増加を誘導する。本発明に使用するのに適したTH1アジュバントには、例えば、サポニン処方物、ビロゾームおよびウイルス様粒子、腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチドが含まれ得る。免疫賦活性オリゴヌクレオチド、例えば、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、本発明に使用するのに好ましいTH1アジュバントである。
【0177】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答に関連した1つ以上のサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10)の増加、またはIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞の産生の増加の1つ以上が含まれ得る。好ましくは、TH2免疫応答の亢進には、IgG1産生の増加が含まれる。
【0178】
TH2免疫応答は、TH2アジュバントを使用して誘導され得る。TH2アジュバントは、一般に、アジュバントを使用しない抗原の免疫と比較して、IgG1産生レベルの増加を誘導する。本発明に使用するのに適したTH2アジュバントには、例えば、無機物含有組成物、油乳剤、ならびにADPリボシル化毒素およびその解毒誘導体が含まれる。無機物含有組成物、例えば、アルミニウム塩は、本発明に使用するのに好ましいTH2アジュバントである。
【0179】
好ましくは、本発明は、TH1アジュバントとTH2アジュバントの組み合わせを含む組成物を含む。好ましくは、このような組成物は、TH1応答の亢進およびTH2応答の亢進、すなわちアジュバントを使用しない免疫と比較して、IgG1およびIgG2aの両方の産生の増加を誘導する。なおより好ましくは、TH1アジュバントとTH2アジュバントの組み合わせを含む組成物は、1つのアジュバントを使用した免疫と比較して(すなわち、TH1アジュバントのみを使用した免疫またはTH2アジュバントのみを使用した免疫と比較して)、TH1の免疫応答の亢進および/またはTH2の免疫応答の亢進を誘導する。
【0180】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、TH1応答の亢進およびTH2応答の亢進の一方または両方をもたらす。
【0181】
免疫応答の亢進は、全身免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、全身免疫応答の亢進および粘膜免疫応答の亢進の一方または両方をもたらす。好ましくは、粘膜免疫応答は、TH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答には、IgA産生の増加が含まれる。
【0182】
H因子結合タンパク質を発現する病原体は、多数の解剖学的位置に疾患を引き起こし得るため、本発明の組成物は、様々な形態で調製され得る。例えば、組成物は、液体溶液または懸濁物の注射剤として調製され得る。注射前の液体ビヒクルにおける溶液または懸濁物に適した固形にも調製され得る(例えば、凍結乾燥組成物またはスプレー凍結乾燥組成物)。組成物は、例えば、軟膏、クリーム、または粉末として局所投与用に調製され得る。組成物は、例えば、タブレットまたはカプセルとして、スプレーとして、またはシロップ(任意選択で風味付けされた)として経口投与用に調製され得る。組成物は、微粉またはスプレーを使用して、例えば、吸入剤として肺投与用に調製され得る。組成物は、座薬またはペッサリーとして調製され得る。組成物は、例えば、液滴として点鼻投与、点耳投与、または点眼投与用に調製され得る。組成物は、患者への投与の直前に組み合わせ組成物が再構成されるように設計されたキットの形態でもよい。このようなキットは、1つ以上の液体形態の抗原および1つ以上の凍結乾燥抗原を含み得る。
【0183】
組成物が、使用前に即席に調製されるものであり(例えば、成分が凍結乾燥形態で提示される)、キットとして提示される場合は、このキットは、2つのバイアルを含むか、または1つの充填済みシリンジおよび1つのバイアルを含む場合があり、シリンジの内容物は、注射の前にバイアルの内容物を再活性化するために使用される。
【0184】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的有効量の抗原(複数可)、および必要に応じて任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」は、単回投与または連続投与の一部としての、個体へのこの量の投与が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置される個体の健康状態および身体的状態、年齢、処置される個体の分類学的群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系の抗体を合成する能力、望まれる防御の程度、ワクチンの処方、処置する医師の医学的状態の評価、および他の適切な因子によって異なる。この量は、ルーチンの試験によって決定され得る比較的広い範囲に渡ると推定される。
【0185】
(処置方法およびワクチン投与)
本発明はまた、本発明の有効量の組成物を投与するステップを含む、哺乳動物において免疫応答を惹起する方法も提供する。免疫応答は、好ましくは防御であり、好ましくは抗体および/または細胞媒介免疫を伴う。この方法は、追加応答を惹起し得る。
【0186】
本発明はまた、薬剤として使用するための、例えば、哺乳動物における免疫応答の惹起に使用するための本発明のポリペプチドも提供する。
【0187】
本発明はまた、哺乳動物の免疫応答を惹起するための薬剤の製造における本発明のポリペプチドの使用も提供する。
【0188】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物が予め満たされた送達デバイスも提供する。
【0189】
これらの使用および方法によって哺乳動物における免疫応答を惹起することにより、哺乳動物が、すべての血清型、特に、A、B、C、W−135、およびYの血清型のN.meningitidis菌株を含む、H因子結合タンパク質を発現する病原体による感染から保護され得る。哺乳動物は、好ましくはヒトであるが、本明細書で取り扱われる病原体は広範な種に渡って問題であり得るため、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ネコ、またはイヌであり得る。ワクチンが予防用である場合は、ヒトは、好ましくは子供(例えば、幼児または乳児)または十代であり;ワクチンが治療用である場合は、ヒトは、好ましくは十代または成人である。子供用のワクチンは、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために成人にも投与して良い。
【0190】
治療処置の効力をチェックする1つの方法には、本発明の組成物の投与後の大腸菌感染のモニタリングが含まれる。予防処置の効力をチェックする1つの方法には、本発明の組成物の投与後のこの組成物中の抗原に対する全身免疫応答のモニタリング(例えば、IgG1およびIgG2aの産生レベルのモニタリング)および/または粘膜免疫応答のモニタリング(例えば、IgAの産生レベルのモニタリング)が含まれる。典型的には、抗原特異的血清抗体応答は、曝露前(pre-challenge)ではなく免疫化後に決定されるが、抗原特異的粘膜抗体応答は、免疫化後および曝露前に決定される。
【0191】
本発明の組成物の免疫原性を評価する別の方法では、免疫ブロットおよび/またはマイクロアレイによる患者の血清または粘膜分泌物のスクリーニングのために組換え的にタンパク質を発現させる。タンパク質と患者のサンプルとの間の陽性反応は、患者が問題のタンパク質に対して免疫応答を開始(mount)したことを示す。この方法はまた、免疫優勢抗原および/または抗原中のエピトープを同定するためにも使用され得る。
【0192】
ワクチン組成物の効力はまた、目的とする感染の病原体への適切な動物モデルの曝露(challenge)によってインビボで決定され得る。
【0193】
本発明の組成物は、一般に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔へ)、または経粘膜投与、例えば、直腸投与、経口投与(例えば、タブレット、スプレー)、膣投与、局所投与、経皮投与(transdermal)もしくは経皮投与(transcutaneous)、鼻腔投与、眼投与、耳投与、肺投与、または他の粘膜投与によって達成され得る。
【0194】
本発明は、全身免疫および/または粘膜免疫を誘導するため、好ましくは全身免疫および/または粘膜免疫の亢進を誘導するために使用され得る。
【0195】
好ましくは、全身免疫および/または粘膜免疫の亢進は、TH1免疫応答および/またはTH2免疫応答の亢進に反映される。好ましくは、免疫応答の亢進には、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの産生の上昇が含まれる。
【0196】
投薬は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールによるものであり得る。複数回投与は、一次免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールに使用され得る。複数回投与スケジュールでは、様々な用量が、同じかまたは異なる経路、例えば、一次は非経口および追加は粘膜、一次は粘膜および追加は非経口など、によって投与され得る。複数回投与は、典型的には、少なくとも1週間(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)離して投与される。
【0197】
本発明のワクチンは、子供および成人の両方を処置するために使用され得る。したがって、ヒト患者は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であり得る。ワクチンを受けるのに好ましい患者は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは≧65歳)、若年(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、軍人および兵士、妊婦、慢性疾患患者、または免疫不全患者である。しかし、ワクチンは、これらの群だけに適しているのではなく、より広く集団に使用され得る。
【0198】
本発明のワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、同じ診察中、または医療従事者もしくはワクチンセンターを訪問した際)、例えば、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合H.influenzaeb型ワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合ワクチン(例えば、4価A−C−W135−Yワクチン)、RSウイルスワクチンなどと実質的に同時に患者に投与され得る。
【0199】
(核酸免疫法)
上記した免疫原性組成物には、ポリペプチド抗原が含まれる。しかし、全ての場合において、ポリペプチド抗原は、核酸免疫法に基づいて組成物、方法、および使用を提供するために、これらのポリペプチドをコードする核酸(典型的にはDNA)によって置き換えられ得る。核酸免疫法は、現在高度に発展した分野である(例えば、参考文献146〜153などを参照)。
【0200】
免疫原をコードする核酸は、患者への送達後にインビボで発現され、次いで発現された免疫原が免疫系を刺激する。活性成分は、典型的には、(i)プロモーター;(ii)プロモーターに作動可能に連結された、免疫原をコードする配列;および任意選択で(iii)選択マーカーを含む核酸ベクターの形態をとる。好ましいベクターは、(iv)複製起点;および(v)(ii)に作動可能に連結された下流の転写終結因子をさらに含み得る。一般に、(i)および(v)は、真核生物性であり、(iii)および(iv)は、原核生物性である。
【0201】
好ましいプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のウイルスプロモーターである。ベクターは、プロモーターに加えて転写調節配列(例えば、エンハンサー)も含み得、この転写調節配列は、プロモーターと機能的に相互作用する。好ましいベクターは、前初期CMVエンハンサー/プロモーターを含み、より好ましいベクターは、CMVイントロンAも含む。プロモーターは、免疫原をコードする配列の発現がプロモーターの制御下となるように、免疫原をコードする下流の配列に作動可能に連結されている。
【0202】
マーカーが使用される場合、マーカーは、好ましくは微生物宿主内(例えば、原核生物内、細菌内、酵母内)で機能する。マーカーは、好ましくは原核生物選択マーカー(例えば、原核生物のプロモーターの制御下で転写される)である。便宜上、典型的なマーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。
【0203】
本発明のベクターは、好ましくは、自律複製エピソームベクターまたは染色体外ベクター、例えば、プラスミドである。
【0204】
本発明のベクターは、好ましくは複製起点を含む。この複製起点は、真核生物ではなく原核生物で活性であることが好ましい。
【0205】
したがって、好ましいベクターは、ベクター選択用の原核生物マーカー、原核生物の複製起点を含むが、免疫原をコードする配列の転写を駆動する真核生物のプロモーターは含まない。したがって、ベクターは、(a)原核生物宿主では、ポリペプチドが発現されずに増幅され選択されるが、(b)真核生物宿主では、増幅されずに発現される。この構成が、核酸免疫法ベクターにとって理想的である。
【0206】
本発明のベクターは、コード配列の下流の真核生物転写終結配列を含み得る。これは、転写レベルを亢進させることができる。コード配列が独自の真核生物転写終結配列を有さない場合は、本発明のベクターは、好ましくはポリアデニル化配列を含む。好ましいポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモン由来である。
【0207】
本発明のベクターは、複数のクローニング部位を含み得る。
【0208】
免疫原およびマーカーをコードする配列に加えて、ベクターは、第2の真核生物コード配列を含み得る。ベクターは、免疫原と同じ転写物からの第2の真核生物ポリペプチドの翻訳を可能にするために、前記第2の配列の上流のIRESも含み得る。別法では、免疫原コード配列は、IRESの下流でも良い。
【0209】
本発明のベクターは、非メチル化CpGモチーフ、例えば、2つの5’プリンおよび2つの3’ピリミジンが隣接した、グアノシンの前のシトシンを共通して有する非メチル化DNA配列を含み得る。それらの非メチル化形態では、これらのDNAモチーフは、いくつかの種類の免疫細胞の強力な刺激因子であることが実証された。
【0210】
ベクターは、目的とする方法で送達され得る。受容体媒介DNA送達技術が、例えば、参考文献154〜159に記載されている。核酸を含む治療組成物が、遺伝子治療プロトコルで、局所投与としてDNA約100ng〜約200mgの範囲で投与される。また、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgの濃度範囲のDNAも、遺伝子治療プロトコル中に使用され得る。因子、例えば、処置の方法(例えば、コードされた遺伝子産物のレベルの亢進または阻害のための)ならびに形質転換および発現の効力は、最終的な効力に必要な投薬量に影響を与える検討事項である。組織の広い面積にわたる高い発現が望ましい場合は、種々の隣接もしくは近接した組織部分への、投与の連続プロトコルまたはいくつかの投与において再投与される(re-administer)より多量のベクターまたは同量のベクターが、良好な治療結果を得るために必要であり得る。いずれの場合も、臨床試験でのルーチンの実験で、最適な治療効果についての特定の範囲を決定する。
【0211】
ベクターは、遺伝子送達ビヒクルを用いて送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源であり得る(参考文献160〜163を一般に参照)。
【0212】
望ましい核酸の送達用および望ましい細胞での発現用のウイルスベースのベクターは、当分野で周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルには、限定されるものではないが、組換えレトロウイルス(例えば、参考文献164〜174)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532);これらのウイルスのハイブリッドまたはキメラも使用され得る)、ポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニア、鶏痘、カナリア痘、改変ワクシニアアンカラなど)、アデノウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルス(AAV)ベクター(例えば、参考文献175〜180を参照)が挙げられる。死滅アデノウイルスに連結されたDNAの投与(181)も利用され得る。
【0213】
限定されるものではないが、死滅アデノウイルスに連結されたポリカチオン濃縮DNAまたは連結されていないポリカチオン濃縮DNA単独(例えば、181)、リガンド連結DNA(182)、真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、参考文献183〜187)、および核電荷の中和(nucleic charge neutralization)または細胞膜との融合を含め、非ウイルス送達ビヒクルおよび方法も利用され得る。裸DNAも利用され得る。例示的な裸DNAの導入方法が、参考文献188および189に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして機能し得るリポソーム(例えば、免疫リポソーム)が、参考文献190〜194に記載されている。さらなる方法は、参考文献195および196に記載されている。
【0214】
使用に適したさらなる非ウイルス送達には、機械送達系、例えば、参考文献196に記載されている手法が含まれる。さらに、コード配列およびこの発現産物が、光重合ヒドロゲル材料の堆積または電離放射線の使用によって送達され得る(例えば、参考文献197および198)。コード配列の送達に使用され得る遺伝子送達の他の慣習的な方法には、例えば、ハンドヘルド型遺伝子導入パーティクルガンの使用(199)または導入された遺伝子を活性化させるための電離放射線の使用(197および198)が含まれる。
【0215】
PLG{ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)}微粒子を使用するDNA送達は、特に好ましい方法であり、例えば、微粒子に吸着させることによって行われ、微粒子は、任意選択で、負に帯電した表面(例えば、SDSで処理)または正に帯電した表面(例えば、陽イオン性界面活性剤、例えば、CTABで処理)を有するように処理される。
【0216】
(免責事項)
一部の実施形態では、本発明は、NMB1870、NMB2091、およびNMB1030(または先の2つ)である複数のH因子結合ポリペプチドの使用を含まなくてもよい。このようなポリペプチドの組み合わせは、Neisseria感染に対する免疫化での使用について、少なくともWO04/032958に開示されている。
【0217】
しかし、他の実施形態では、WO04/032958のポリペプチドの組み合わせが含まれるが、例えば、新規な医療目的に対してまたはさらなる組み合わせにおいてである。例えば、本明細書に開示されているように、NMB0667はまた、H因子結合タンパク質であることが実証されているため、WO04/032958のポリペプチドの組み合わせとのさらなる組み合わせに使用され得る。
【0218】
一部の実施形態では、本発明は、関連菌株内の相同体である複数のH因子結合ポリペプチドの使用を含まなくてもよい。例として、関連Neisseria菌株由来のNMB1870である複数のH因子結合ポリペプチドの使用は、Neisseria感染に対する免疫化での使用について、少なくともWO2004/048404に開示されている。さらなる例として、関連菌株由来のMタンパク質である複数のH因子結合ポリペプチドの使用は、Neisseria感染に対する免疫化での使用について、少なくともWO2003/065973に開示されている。
【0219】
しかし、他の実施形態では、WO2004/048404およびWO2003/065973のポリペプチドの組み合わせが含まれるが、例えば、新規な医療目的に対してまたはさらなる組み合わせにおいてである。
【0220】
(抗体)
H因子結合タンパク質に対する抗体は、受動免疫法に使用され得る(200)。特定の実施形態では、組成物は、目的の病原生物に由来するか、またはNeisseria菌株(例えば、NMB1870、NMB2091、NMB1030、NMB0667、またはPor1Aに対する抗体)、Actinobacillus菌株(例えば、Omp100に対する抗体)、Borrelia菌株(例えば、CRASPS、ERP、FHBP19/FhbA、およびFHBP28に対する抗体)、Leptospira菌株(例えば、LfhAに対する抗体)、Pseudomonas菌株(例えば、Tuf)、Streptococcus菌株(例えば、Bac、Fba、Hic、Mタンパク質、PspC、またはSe18.9に対する抗体)、Yersinia菌株(例えば、YadAに対する抗体)、またはCandida菌株(例えば、Gmp1pに対する抗体)由来の少なくとも2つの異なるH因子結合タンパク質に対する抗体を含む。したがって、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107から選択されるポリペプチドに結合する抗体を提供する。
【0221】
本発明は、治療におけるこのような抗体または組成物の使用も提供する。本発明はまた、薬剤の製造におけるこのような抗体または組成物の使用も提供する。本発明はまた、本発明の有効量の抗体または組成物を投与するステップを含む哺乳動物を処置する方法も提供する。免疫原性組成物について上記したように、これらの方法および使用により、目的の病原体による感染から、またはNeisseria菌株、Actinobacillus菌株、Borrelia菌株、Leptospira菌株、Pseudomonas菌株、Streptococcus菌株、Yersinia菌株、もしくはCandida菌株から哺乳動物を保護することができる。
【0222】
用語「抗体」には、完全な免疫グロブリン分子、および抗原に結合できるその断片が含まれる。これらには、ハイブリッド(キメラ)抗体分子(201、202);F(ab’)2およびF(ab)断片ならびにFv分子;非共有結合へテロ二量体(203、204);1本鎖Fv分子(sFv)(205);二量体および三量体抗体断片構築物;ミニボディー(minibody)(206、207);ヒト化抗体分子(208〜210);およびこのような分子から得た任意の機能的な断片、ならびに慣習的ではないプロセス、例えば、ファージディスプレイによって得られる抗体が含まれる。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を得る方法は、当分野で周知である。ヒト化または完全ヒト抗体が好ましい。
【0223】
(総則)
本発明の実施には、特段の記載がない限り、当業者の技術範囲内の化学、生化学、分子生物学、免疫学、および薬理学の慣習的な方法を利用する。このような技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、参考文献211〜218などを参照されたい。
【0224】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、完全にXからなっても、または追加物、例えば、X+Yを含んでも良い。
【0225】
数値xについての用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0226】
本明細書では「GI」付番が使用される。GI番号または「Genlnfo Identifier」は、配列がNCBIのデータベースに加えられたときにNCBIによって処理された各配列記録に対して連続的に割り当てられる連続した数字である。GI番号は、配列記録のアクセッション番号とは全く異なる。配列が最新にされると(例えば、修正のため、またはさらなる注釈や情報を付け加えるため)、その配列には、新しいGI番号が付される。したがって、所定のGI番号が付けられた配列は、決して変わらない。
【0227】
2つのアミノ酸配列間のパーセント配列同一性について述べた場合は、整列させられたときに、2つの配列の比較においてアミノ酸が同じであるパーセントを意味する。このアラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当分野で公知のソフトウエアプログラム、例えば、参考文献219の節7.7.18に記載されているものを用いて決定され得る。好ましいアラインメントは、ギャップオープンペナルティーが12およびギャップ伸長ペナルティーが2で、BLOSUMマトリックスが62のアフィンギャップ検索を用いて、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献220に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】図1は、様々なNeisseria抗原に対するH因子の結合を示している。マイクロタイタープレートの各ウェルは、適用可能な抗原1μgでコートされた。結合は、総量100μl/ウェルで、1μg/ml(白色のバー)または10μg/ml(灰色のバー)のH因子を用いてアッセイされた。
【図2】図2は、1μg/ウェルの異なる抗原に対するH因子の結合の用量反応を示している。H因子の結合は、H因子の4つの濃度:0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、および10μg/mlで試験された。
【図3】図3は、1μg/ウェルのNMB1030に対するH因子の結合の経時変化(time-course)を示している。結合の経時変化は、H因子の2つの濃度:1μg/mlおよび10μg/mlでアッセイされた。H因子の結合は、30分、60分、90分、および120分に各濃度でアッセイされた。
【図4】図4および図5は、2つの異なる濃度のPTX3(H因子の天然の結合パートナー)を用いて、H因子に対する、PTX3と異なるNeisseria抗原との間の競合的結合の結果を示している。
【図5】図4および図5は、2つの異なる濃度のPTX3(H因子の天然の結合パートナー)を用いて、H因子に対する、PTX3と異なるNeisseria抗原との間の競合的結合の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0229】
(配列表の簡単な説明)
【0230】
【表1】

【0231】
【表2】

【0232】
【表3】

【0233】
【表4】

【0234】
【表5】

(本発明を実施するための様式)
WO04/032958に開示されているように、NMB1870、NMB1030、およびNMB2091は単独で、ワクチン組成物に有効な抗原であり、組み合わせると特に有効で、広範な保護を提供することが知られていた。NMB1870は、H因子結合タンパク質であることが知られていたが、NeisseriaにおけるNMB1030およびNMB2091の役割は知られていなかった。以下に記載するように、NMB1030およびNMB2091の両方が、NMB1870と同様にH因子に結合することが判明した。H因子結合タンパク質としてのNMB1030およびNMB2091のこの新規な特徴に基づいて、H因子結合タンパク質は単独で、ワクチン組成物として良好に作用するが、これらのH因子結合タンパク質は、組み合わせると予想外にかなり良好に作用して、関連菌株に対して幅広い効力を提供することが判明した。この効力は、WO04/032958で実証されているが、効力の根拠が、これらのタンパク質がH因子結合タンパク質であるという事実にあることは理解されていなかった。
【0235】
図1は、種々のN.meningitidis血清型群B抗原および1つのN.gonorrhoeae抗原を使用した結合アッセイを示している。予想通り、NMP1870は、ヒトH因子に対して顕著な結合の度合いを示している。予想外に、3つの追加の抗原:NMB1030、NMB0667、およびNMB2091も、ヒトH因子に対する結合性を示した。H因子のさらなるの濃度を使用して用量反応をアッセイし(図2)、そして新規に同定されたH因子結合タンパク質の1つ(NMB1030)への結合の経時変化をアッセイすることにより(図3)、結合活性が確認され、さらに明確になった。図2および図3は、NMB1870よりも親和性がやや低いが、NMB1030、NMB0667、およびNMB2091はH因子に結合することを裏付けている。
【0236】
競合的結合を、bPTX3(インビボでのH因子の天然の結合パートナーの1つ)の漸増量が添加される、結合を測定する同じアッセイを使用してアッセイした。図4および図5の両方から分かるように、漸増量のbPTX3が、H因子に対してNMB1870およびNMB0667の両方と結合を競合した。これは、NMB1870およびNMB0667は、H因子の同じ部位または重複部位に結合するが、NMB1030およびNMB2091は、H因子の異なる部位に結合することを示している。これはまた、本発明の複数のH因子結合タンパク質組成物における使用の効力は、H因子結合タンパク質がH因子の同様の部位に結合すること、またはH因子の結合に際して同じ効果を有することに依存しないことを示している。
【0237】
本発明は、ほんの一例として記載されたものであり、本発明の範囲および趣旨を維持したまま変更が可能であることを理解されたい。
【0238】
(参考文献(これらの内容は、その全容が本明細書に援用される))
【0239】
【数1】

【0240】
【数2】

【0241】
【数3】

【0242】
【数4】

【0243】
【数5】

【0244】
【数6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのH因子結合タンパク質を含む組成物であって、前記2つのH因子結合タンパク質が、NMB1030およびNMB2091、NMB2091およびNMB1870、またはNMB1030およびNMB1870ではない、組成物。
【請求項2】
NMB0677および第2のH因子結合タンパク質を含む組成物。
【請求項3】
アジュバントをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記H因子結合タンパク質が、Neisseriaタンパク質である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記H因子結合タンパク質が、Neisserial meningitidisタンパク質である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのH因子結合タンパク質が、
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つと同一であるアミノ酸配列;
(b)(a)と比較して1〜10の単一アミノ酸改変を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれか1つと少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(d)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれかの少なくとも10個の連続したアミノ酸の断片であるアミノ酸配列;または
(e)ペアワイズアラインメントアルゴリズムを用いて、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81−83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107のいずれかと整列させられた場合、N末端からC末端のx個のアミノ酸の各異動ウィンドウが、少なくともx・y個の同一の整列させられたアミノ酸を有し、xが30であり、yが0.75であるアミノ酸配列
を含むポリペプチドから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−502073(P2012−502073A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526417(P2011−526417)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006651
【国際公開番号】WO2010/028859
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511065635)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】