説明

H形鋼の切削加工刃物

【課題】 従来のH形鋼における開先加工およびルートフェイス加工に用いられる加工刃物は、切削加工時に大きな衝撃と振動を生じ、このために切刃チップの激しい消耗と欠損を招いていた。さらに騒音なども大きく作業環境の面でも改善が求められていた。
【解決手段】 薄い円盤状台金12の外周部に、小さい配列ピッチで多数の切刃チップ13を取りつけた多刃刃物11を多数枚重ね合わせ、これによって円筒形状の切削周面をもつ第1の加工刃物Aを構成する。また薄い円盤状台金22の外周部に、小さい配列ピッチで多数の切刃チップa〜jを取りつけた多刃刃物21を多数枚重ね合わせ、これによって截頭円錐形状の切削周面をもつ第2の加工刃物Bを構成する。そして、これら第1の加工刃物Aと第2の加工刃物Bを同じ回転軸30に取りつけてH形鋼の切削加工を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H形鋼におけるフランジ部に開先加工およびルートフェイス加工を行なう切削加工刃物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高層ビル建築における鉄骨支口部の柱梁接合構造を、図16によって説明する。図において、100は柱材を構成する角鋼管 101、102は角鋼管100の上下両端に設けたダイヤフラム 103は梁材を構成するH形鋼 104、105はH形鋼103におけるフランジ 106は両フランジ104、105を連結したウェブ 107、108はフランジ104、105の端面部に形成した開先部 109、110はウェブ106を切り欠いて形成したスカラップ部 111、112はフランジ104、105とダイヤフラム101、102の突き合わせ部に配設した裏当金である。
【0003】
上記の支口構成においては、フランジ104、105の開先部107、108とダイヤフラム101、102さらにはウェブ106と角鋼管100の垂直平面の突き合わせ部とを全周溶接して柱梁の接合を完成するものであり、この溶接工法は、溶接線の集中をスカラップ部109、110によって逃がすことからスカラップ工法と呼ばれている。
【0004】
なお上記の鉄骨支口部を工場で予め製作する場合のブラケット構造においては、フランジ104、105の開先部107、108が図のように、何れも外側に向く傾斜面となっているが、長尺のH形鋼を梁材として直接現場で溶接する場合においては、下向き姿勢の作業を確保する点から、一方の開先部が内側を向く傾斜面となっているものもある。
【0005】
ところで、上記のH形鋼103におけるフランジ104、105に対して所要の開先加工を行ない、またウェブ106に対してスカラップ加工を行なう加工装置として、本出願人の提案に係る発明が公知である。(例えば特許文献1参照)。
【0006】
この従来の加工装置においては、図17に示すように、加工ヘッド200に第1〜第3の回転軸201〜203を配設し、第1の回転軸201に円筒形状の切削周面をもつ第1の加工刃物211を、第2の回転軸202にきのこの笠形状の切削周面をもつ第2の加工刃物212を、そして第3の回転軸203に截頭円錐形状の切削周面をもつ第3の加工刃物213をそれぞれ取りつけたものである。
【0007】
そして、上記の加工ヘッド200を所要の送り方向に移動することによって、図18に示すように、H形鋼103のフランジ104に対して開先加工を、ウェブ106に対してスカラップ加工を行なったものである。また上記の第1の加工刃物211は、他の加工刃物による切削加工に先立って、フランジ104を大きく削り込む、いわゆる追い込み加工を行なうものであり、同時にこの刃物は、フランジ104の切削端に一部の平坦面を残すルートフェイス加工を行なったものである。
【0008】
上記の開先、スカラップおよびルートフェイスの諸加工を行なうものの先行技術として、上記の他に、例えば特許文献2に係る発明が公知である。この従来の加工装置は、図19のように円筒形状の切削周面をもつ第1の加工刃物211と、きのこの笠形状の切削周面をもつ第2の加工刃物212とを一つの回転軸に集約して取りつけたものである。そして、この刃物構成によって加工ヘッドのコンパクト化と移動ストロークの短縮による加工能率の向上を図ったものである。
【0009】
なお、前述の円筒形状の切削周面をもつ加工刃物としては、例えば特許文献3に開示されるものが公知であり、また截頭円錐形状の切削周面をもつ加工刃物としては、例えば特許文献4に開示されるものが公知であり、きのこの笠形状の切削周面をもつ加工刃物としては、例えば特許文献5に開示されるものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−267210号
【特許文献2】特開昭59−30608号
【特許文献3】特公平3−43010号
【特許文献4】特開平6−262421号
【特許文献5】特開平10−296523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
H形鋼におけるフランジへの開先加工とルートフェイス加工に着目したとき、従来においては、特許文献1または特許文献2に記載した加工装置を使用し、これに特許文献3の円筒形状の加工刃物と特許文献4の截頭円錐形状の加工刃物を備えて対応したものである。
【0012】
上記のフランジへの切削加工は、加工量(切削断面積と長さ)が大きい割りに高速送りが要求される。しかしながら少数個の切刃チップを植設した加工刃物がこれを賄うには余りにも負担が大きく、このため、大きな衝撃と振動を生じ、切刃チップの消耗が激しく、さらは欠損を招くことが問題点として指摘された。また騒音なども大きく作業環境の面でも改善が求められていた。
【0013】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、衝撃や振動を軽減して刃先チップの激しい消耗や破損をなくし、また騒音の発生を抑えて作業環境を健全に維持することができ、さらには高速での切削加工作業を達成することができるH形鋼の切削加工刃物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明に係るH形鋼の切削加工刃物は、円筒形状の切削周面をもつ第1の加工刃物と、截頭円錐形状の切削周面をもつ第2の加工刃物と、きのこの笠形状の切削周面をもつ第3の加工刃物とを備え、これら第1〜第3の加工刃物によって、H形鋼におけるフランジに開先加工およびルートフェイス加工を、ウェブにスカラップ加工を行なう切削加工刃物において、上記した第1の加工刃物と第2の加工刃物とを、同じ回転軸線上に配設すると共に、少なくとも第2の加工刃物を、円盤状の台金と、この台金の外周部に取りつけた多数の切刃チップからなる多刃刃物の重ね合わせによって構成したことを特徴としたものである。
【0015】
また本発明の切削加工刃物は、請求項2において、第1の加工刃物を、円盤状の台金と、この台金の外周部に取りつけた多数の切刃チップからなる多刃刃物よって構成したことを特徴とするものである。
【0016】
また本発明の切削加工刃物は、請求項3において、切刃チップを、台金の外周部にロウ付け固定したしたことを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の切削加工刃物は、請求項4において、切刃チップを、台金の外周部に交換自在に設けたことを特徴とするものである。
【0018】
また本発明の切削加工刃物は、請求項5において、多刃刃物の重ね合わせ方向において、隣り合う切刃チップを回転方向においてズラして配設したことを特徴とするものである
【0019】
また本発明の切削加工刃物は、請求項6において、台金の厚さと切刃チップの幅を同等としたことを特徴とするものである。
【0020】
また本発明の切削加工刃物は、請求項7において、第1の加工刃物と第2の加工刃物を各別のアダプタ軸に装着し、これらアダプタ軸を回転軸に対して着脱できるように取りつけたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した課題解決手段によれば、従来に比較して遥かに多くの切刃チップを切削周面上に配設することができる。このため、一刃当りの切削負荷を軽減し、衝撃や振動の少ない切削加工を行なうことができる。よって切刃チップの激しい消耗や欠損、さらには騒音などの問題点を合理的に解決することができる。また切削能力の向上によって高能率の切削加工を行なうことができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るH形鋼の切削加工刃物の一実施例を示す縦断側面図である。
【図2】第1の加工刃物を構成する多刃刃物の正面図である。
【図3】同じく、切刃チップの形状を示す説明図である。
【図4】交換式の切刃チップを用いた刃物構成を示す正面図である。
【図5】同じく、側面図である。
【図6】別の交換式切刃チップを用いた刃物構成を示す説明図である。
【図7】台金の厚さと切刃チップの幅を同等とした刃物構成の説明図である。
【図8】同じく、切刃チップの配列状態を示す説明図である。
【図9】交換式の切刃チップの取りつけ状態を示す正面図である。
【図10】同じく、縦断側面図である。
【図11】分割式の切刃稜をもつ切刃チップの説明図である。
【図12】第2の切削加工刃物を構成する多刃刃物の正面図である。
【図13】第3の加工刃物の説明図である。
【図14】一実施例に係る切削加工刃物による加工状態の説明図である。
【図15】内開先に対応した切削加工刃物の説明図である。
【図16】柱梁接合構造を示す説明図である。
【図17】従来の開先加工装置の一部を示す縦断正面図である。
【図18】同じく、従来の加工装置によるH形鋼の加工状態を示す説明図である。
【図19】同じく、従来の加工装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る切削加工刃物の実施形態を図1〜図3および図12を参照して説明する。図において、Aは切削周面が円筒形状の第1の加工刃物 Bは切削周面が截頭円錐形状の第2の加工刃物である。 上記した第1の加工刃物Aにおける切削周面の直径は、第2の切削刃物Bにおける切削周面の最小径と同じになっている。
【0024】
第1の加工刃物Aは、薄い円盤状の台金12と、この台金12の外周に配列ピッチを小さくしてロウ付け固定した多数の切刃チップ13を構成要素とした多刃刃物11を多数枚(実施例では7枚)重ね合わせて構成する。14は台金12の中心に設けた取付穴(図2参照)である。
【0025】
上記の各多刃刃物11〜11の厚さ、幅、外形寸法および切刃チップ13の配列数などは同一であり、全ての切刃チップ13〜13の切刃稜が描く切削周面は、滑らかに連続した円筒形状である。
【0026】
なお前記の切刃チップ13の切幅は、市販のチップソーと同様に台金12の厚さより幅広(図3参照)としてあり、また各切刃チップ13は、重ね合わせ方向において隣接する台金の切屑ポケット15に対応して配置し、干渉を防止している。14aおよび14bは、取付穴14に回転位相差をもって設けた位置決めと回り止めを兼用したキー溝である。
【0027】
また第2の加工刃物Bは、薄い円盤状の台金22〜22と、この台金22〜22の外周に配列ピッチを小さくしてロウ付け固定した多数の切刃チップa〜jを構成要素とした多刃刃物21〜21を多数枚(実施例では10枚)重ね合わせて構成する。24は台金22の中心に設けた取付用穴(図12参照)である。
【0028】
上記の各多刃刃物21〜21の厚さ、刃幅は同じであるが外形寸法は順次に小さくしてあり、全ての切刃チップa〜jの切刃稜が描く切削周面は、滑らかに連続した截頭円錐形状である。
【0029】
なお前記の切刃チップa〜jの切幅は、市販のチップソーと同様に台金22の厚さより幅広としてあり、また各切刃チップa〜jは、重ね合わせ方向において隣接する台金の切屑ポケット25に対応して配置し、干渉を防止している。24aは、取付用穴24に設けた位置決めと回り止めを兼用したキー溝である。
【0030】
次に16は一端に固定鍔17を、他端に締付鍔18を備えた第1のアダプタ軸 このアダプタ軸16には、取付用穴14によって多数枚の多刃刃物11〜11を装着する。これら多刃刃物11は、締付鍔18に螺着した取付ネジ19によって固定され、第1の加工刃物Aを構成する。
【0031】
26は一端に固定フランジ27を、他端に締付鍔28を備えた中空状の第2のアダプタ軸 このアダプタ軸26には、取付用穴24によって多数枚の多刃刃物21〜21を装着する。これら多刃刃物21は、締付鍔28に螺着した取付ネジ29によって固定され、第2の加工刃物Bを構成する。
【0032】
30は開先加工装置(図示省略)の回転軸 31は回転軸30の先端に設けた取付軸である。この取付軸31には、第2のアダプタ軸26を介して第2の加工刃物Bを取りつける。またこの取付軸31には、第2のアダプタ軸26の中空穴26aを利用して第1のアダプタ軸16を嵌装し、このアダプタ軸16を介して第1の加工刃物Aを取りつける。
【0033】
32はワッシャー部材34を介して第1のアダプタ軸16を取付軸31に締め付け固定する固定ネジ この固定ネジ32は、同時に第2のアダプタ軸26を回転軸30の端部に締め付け固定するものであり、第1の加工刃物Aと第2の加工刃物Bを取りつけ固定する。なお、第1のアダプタ軸16と第2のアダプタ軸26は同径である。
【0034】
なお、上記の取付軸31に対する第1のアダプタ軸16および第2のアダプタ軸26にはキー部材による回り止め措置がされており、また第1のアダプタ軸16に対する第1の加工刃物A、および第2のアダプタ軸26に対する第2の加工刃Bには同様のキー部材(何れも図示省略)による回り止め措置がされている。
【0035】
以上のように構成した加工刃物によってH形鋼の切削加工を行なうときには、第1の加工刃物Aの切削周面と、第2の加工刃物Bの切削周面が図14のようにフランジ104の全体とウェブ106の一部に及ぶものであり、フランジ104に対して所要の開先加工とルートフェイス加工を行なうことができる。
【0036】
この切削加工時において、各加工刃物A、Bは細かなピッチで配列した多数の切刃チップ13〜13、a〜jを作用することができる。このため、切刃チップの一刃当たりの切削負荷を著しく軽減することができ、大きな振動や衝撃を生ずることなく円滑かつ軽快な切削加工を行なうことができる。そしてこの結果、切削能力の大幅な向上を図ることができ、高速送りでの加工作業を行なうことができるようになった。さらに切刃チップの欠損がなく耐久的に使用することができ、また騒音レベルも著しく低減することができた。
【0037】
なお、上記のフランジ104に対する切削加工は、大部分を第2の加工刃物Bが負担するものであって、第1の加工刃物Aの切削量は小さいものである。また、第1の加工刃物Aによるウェブ106の切削加工は、最小限に留めるべきでもある。従って、第1加工刃物Aを構成する多刃刃物11は、一枚で賄うこともできる。この場合において、第1の加工刃物Aは、市販のサイドカッターなどを採用することもできる。
【0038】
このようにして開先およびルートフェイス加工を行なわれたH形鋼は、きのこの笠形状の切削周面をもつ後続の第3の加工刃物によって、ウェブにスカラップ加工を施され、全ての切削加工を終了する。
【0039】
図13は、上記の第3の加工刃物の構成を示したものである。この加工刃物Cの場合においても、前述した第1の加工刃物Aおよび第2の加工刃物Bと同様に、薄い円盤状の台金41の外周面に多数の切刃チップ42を取りつけて多刃刃物40を構成する。そして、これら多刃刃物40を多数枚重ね合わせてきのこの笠形状の切削周面をもつ加工刃物を構成する。なお、この第3の加工刃物Cは、上記の構成のものに限られるものではない。
【0040】
なお前記した一実施例の第1の加工刃物Aおよび第2の加工刃物Bは、切刃チップの切れ味が低下したとき、或いは欠けが生じたときは、定法に従って刃先研磨を行なうものであり、このことによって再使用に供することができる。しかしながら、これらの刃物は、構成枚数が多いことから研磨作業に長時間が掛かり、かつ形状の特殊性も加わって熟練者の手間を必要とする。また度々の研磨によっては切削周面が変化することになり、加工精度維持の点からも好ましくない。
【0041】
上記のロウ付けチップの短所を解消するには、切刃チップを交換できるようにしたスローアウェイチップ方式の採用が好適である。
【0042】
このスローアウェイチップ方式は、第1の加工刃物Aおよび第2の加工刃物Bにおいて同様に実施することができる。これらの刃物構成を一方の第1の加工刃物Aに集約して説明する。(他方の第2の加工刃物Bについては、説明を省略する。)
【0043】
図4および図5において、53は台金52に設けた下受座 54は同じく立受座 51は切刃チップであり、このものは複数(実施例では二つ)の切刃稜を有しており、換向することによって何れの切刃稜をも切削位置に設定することができる。55は切刃チップ51を取りつけ固定する締付ネジである。なお上記の切刃稜の長さすなわち刃幅が大きいときには、その中央部に切屑分断用の溝56を設ける。
【0044】
図6は台金62の厚さが小さく、これに伴って切刃チップ61の幅が小さい場合の刃物構造を示したものである。63は台金62に設けた下受座 64は同じく立受座 65は下受座63と立受座64に対応して設けた弾性挟圧片である。切刃チップ61は、上記の受座63、64と挟圧片65によって保持された自己拘束タイプのものである。
【0045】
また以上に説明した各実施例においては、一般的な刃物がそうであるように台金の厚さに対して切刃チップの幅を大きく設定したものである。このため、隣り合う多刃刃物間において、一方の台金の切刃チップを隣接する他方の台金の切屑ポケット内に逃がさなければならないという制約があった。
【0046】
図7の実施例は、上記の切刃チップの干渉の問題を無くして切刃チップを自由位置に配置することができるようにしたものである。71は台金 72は切刃チップであり、両者の厚さと幅(w1、w2)は同等である。そして、このことによって、隣り合う切刃チップを同位置、或いは回転方向において若干ズラして配置することが可能となる。(図8参照)上記の構成によれば、切屑ポケット73を側方に連通することができ、切屑の排出性を良好にすることができる。
【0047】
上記した台金71の厚さと切刃チップ72の刃幅を同等に設定することは、ロウ付けチップとスローアウェイチップの別なく適用することができる。
【0048】
また上記の台金厚と刃幅が同じ切刃チップを使用したときには、図9および図10のように、この切刃チップ82を重ね方向において隣りに位置する台金81にネジ83で固定することができる。なお台金厚より刃幅が大きい場合においては、隣りの台金81に接する切刃チップ82の側面を平にするか、または台金81の側面に当接用の凹陥面を設けるようにすればよい。
【0049】
また図3に示す一実施例のように、一枚の台金12の周面方向に取りつけた多数の切刃チップ13は、全て同じ形の切刃稜をもっていたが、図11のように異なる切刃稜を持つものの組み合わせにすることもできる。このように、各切刃チップ13a〜13cを分割して当たらせることによって、さらに衝撃と振動を小さく抑えることができる。
【0050】
また図1に示す一実施例においては、第1のアダプタ軸16と第2のアダプタ軸26を各別に備えて、これらによって一つの回転軸30に第1の加工刃物Aと第2の加工刃物Bを取りつけたものである。しかし、アダプタ軸を一つとして、これに第1の加工刃物Aと第2の加工刃物Bの両方をまとめて取りつけることは設計上容易である。さらにアダプタ軸を用いずに、回転軸30に直接的に第1の加工刃物Aと第2の加工刃物Bを取りつけることもできる。
【0051】
また一実施例における第2の加工刃物Bは、多刃刃物として対称形状のものを用いることで、図15のように、第1および第2のアダプタ軸16,26に反転して取りつけることができる。このように構成したときは、H形鋼103におけるフランジ104に、切削面が内側に傾斜する内開先加工を行なうことができる。符号のBaは、反転した第2の加工刃物を示したものである。
【符号の説明】
【0052】
A 第1の加工刃物
B 第2の加工刃物
11 多刃刃物
12 台金
13 切刃チップ
14 取付用穴
15 切屑ポケット
16 第1のアダプタ軸
21 多刃刃物
22 台金
a〜j 切刃チップ
25 切屑ポケット
26 第2のアダプタ軸
30 回転軸
31 取付軸
32 固定ネジ
51 切刃チップ
52 台金
53 下受座
54 立受座
55 締付ネジ
61 切刃チップ
62 台金
63 下受座
64 立受座
65 弾性挟圧片
71 台金
72 切刃チップ
81 台金
82 切刃チップ
83 ネジ
103 H形鋼
104 フランジ
106 ウェブ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の切削周面をもつ第1の加工刃物と、截頭円錐形状の切削周面をもつ第2の加工刃物と、きのこの笠形状の切削周面をもつ第3の加工刃物とを備え、これら第1〜第3の加工刃物によって、H形鋼におけるフランジに開先加工およびルートフェイス加工を、ウェブにスカラップ加工を行なう切削加工刃物において、
上記した第1の加工刃物と第2の加工刃物とを、同じ回転軸線上に配設すると共に、少なくとも第2の加工刃物を、円盤状の台金と、この台金の外周部に取りつけた多数の切刃チップからなる多刃刃物の重ね合わせによって構成したことを特徴とするH形鋼の切削加工刃物。
【請求項2】
第1の加工刃物を、円盤状の台金と、この台金の外周部に取りつけた多数の切刃チップからなる多刃刃物によって構成したことを特徴とする請求項1のH形鋼の切削加工刃物。
【請求項3】
切刃チップを、台金の外周部にロウ付け固定したことを特徴とする請求項1または請求項2のH形鋼の切削加工刃物。
【請求項4】
切刃チップを、台金の外周部に交換自在に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のH形鋼の切削加工刃物。
【請求項5】
多刃刃物の重ね合わせ方向において、隣り合う切刃チップを回転方向においてズラして配設したことを特徴とする請求項1または請求項2のH形鋼の切削加工刃物。
【請求項6】
台金の厚さと切刃チップの幅を同等としたことを特徴とする請求項1または請求項2のH形鋼の切削加工刃物。
【請求項7】
第1の加工刃物と第2の加工刃物を各別のアダプタ軸に装着し、これらアダプタ軸を回転軸に対して着脱できるように取りつけたことを特徴とする請求項2のH形鋼の切削加工刃物。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−56058(P2012−56058A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203846(P2010−203846)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000190725)シンクス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】