説明

HCMVウイルスに対して特異的な抗体を同定するための改良されたウェスタンブロット試験

【課題】ヒト血清中の抗−HCMV抗体を同定するための診断用ツールの提供。
【解決手段】診断用ツールは、2つのセクションを有する固体支持体から成り、セクション1は、所定のパターンを形成する個別のバンドに集中した精製ビリオンから得られた複数のHCMVタンパク質(vp)を担持しており、これらのバンドの1つはHCMVのpp150であり、セクション2は、対照となる組換え融合タンパク質を担持しており、少なくとも1つのバンドがpp150の少なくとも1つのエピトープを含む組換え融合タンパク質から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト血清中のヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に特異的な抗体を同定するための診断用ツールに関する。本発明は更に、上記の診断用ツールを利用して抗HCMV抗体を同定するための改良された形態のウェスタンブロット試験に関する。このような試験は、より高いレベルの信頼性を有しており、従って、酵素免疫検定法(EIA)のような慣用の技術を用いて行われた第一試験の結果の参照標準として血清学的対照に有利に使用でき、また、抗HCMV抗体検査に単独で使用できる。本発明は更に、上記の改良されたウェスタンブロット試験を用いてヒト血清中のサイトメガロウイルス特異的IgM及び/またはIgG及び/またはIgAを同定する方法に関する。本発明は最後に、上記の方法において、精製ビリオンから得られた他のウイルス抗原と共に使用される組換え融合タンパク質、及び、該タンパク質を発現するプラスミドに関する。
【背景技術】
【0002】
HCMVはヒトの遍在性感染物質である。HCMVは、健康な成人の体内で病原性となることは極めて少ないが、免疫の低下した人の体内では種々の障害に関与する。HCMVは更に、ヒトの先天性感染症の最も普遍的な原因であり、新生児の精神薄弱の原因として知られたダウン症候群に次いで二番目に多い母系感染症である(2)。
【0003】
HCMVを原因とする感染症の血清学的診断には一般に、種々のレベルまで精製されたウイルス自体または感染細胞の溶解液を抗原性物質として用いる酵素免疫検定法(EIA)が用いられている。このような試験を行うための種々のキット商品は現在も市場で入手できるが、これらのキットには参照すべき標準がない。そのため、キットによって与えられた結果が互いに一致しない場合が多い。例えば、幾つかのキットは極めて高い特異性を有しているが感度が十分でなく、また別の幾つかのキットは極めて高感度であるが特異性が十分でない(6)。従って総体的には、疑陽性や疑陰性などの応答が多数生じる。
【0004】
また、“ウェスタンブロット”法を用いて行われる血清学的分析はEIA試験に比べて費用も時間も掛かるが、特に最終結果の特異性に関してはEIA試験よりもはるかに信頼性が高いことが知られている。このような理由で、特にHIV感染については、EIA試験で感染を確定できなかった場合には、感染を確認するためにウェスタンブロット試験(しばしば“WB”と略称される)が常に使用されている。
【0005】
HCMVの血清学的検査に最も有効な抗原性物質は間違いなくウイルス自体である。従来のウェスタンブロット試験の手順では、感染細胞の培養物の精製によって得られたウイルスを変性用混合物に懸濁させ、その構造タンパク質を分取用ポリアクリルアミドゲルで分画する。このようにして得られた典型的なタンパク質パターンを固体支持体(通常はニトロセルロース)に転移させ、得られたスポット(“ブロット”)を順次に数ミリメートル幅の種々のストリップに細分する。次に、各ストリップを被検血清と共に用いてアッセイを行う。
【0006】
しかしながらWB試験に全く欠点がないとは言えない。第一に、最も高い免疫原性能力を有しており最も長期間の免疫学的応答を生じるHCMVウイルスの構造抗原は分子量150kDのポリペプチドである(ウイルス自体のUL32遺伝子によってコードされており、従ってppUL32と呼ぶ)が、通常はこのポリペプチドがポリアクリルアミドゲル中で、同じ分子量をもつHCMVウイルスの別の構造成分(UL86遺伝子によってコードされており、従ってppUL86と呼ぶ)と一緒に泳動する。後者のポリペプチドは比較的有効な免疫原性物質ではあるが、ヘルペスウイルス科の他のウイルスの相同タンパク質に共通の抗原エピトープを含むので“グループ抗原”として定義されており、従って特異性に乏しい。WB試験では150kDのバンドが唯一の反応性バンドであると判明するケースが比較的多いが、このような場合に、被検患者が特異的抗原pp150に対する直接抗体を有しているのか非特異的グループ抗原ppUL86に対する直接抗体を有しているのかを(少なくとも十分な程度に)判断することができないので、結局は結果を確定することができない〔11〕。
【0007】
第二に、ウイルスタンパク質(vp)から得られるブロットは非構造ウイルスタンパク質を含まない。しかしながら幾つかの非構造ウイルスタンパク質は極めて強力な免疫原性物質である。例えば、このようなタンパク質に対する直接抗体、特に、52kDのリンタンパク質(HCMVのゲノムのUL44遺伝子によってコードされている)に対する直接抗体が産生される。これらの抗体が存在し同時に主構造抗原pp150に対する弱い反応が存在するときは、これらの抗体の存在によって一次感染を血清学的に同定できる。
【0008】
従って、上述のような欠点がなく、特に、有利な参照標準(“至適参照標準(golden reference standard)”)を構成し得る十分な特異性及び感度を有している改良されたウェスタンブロット試験でヒト血清中のHCMV特異的抗体を同定するために使用できる診断用ツールを提供することが要望されている。更に、ヒト血清中のHCMV特異的IgMを同定するように改良されたウェスタンブロット試験を提供することが要望されている。
【0009】
また、ヒト血清中のHCMV特異的な免疫グロブリンIgM及び/またはIgG及び/またはIgAを同定するための、疑陽性または疑陰性となる結果さえも識別できる高い信頼性レベルを有する方法を提供することが要望されている。
【0010】
また、本発明を用いた試験及び本発明を用いたWB方法に使用するための組換えタンパク質材料を提供することが要望されている。
【0011】
最後に、このような組換えタンパク質材料、特にタンパク質CKSと融合する組換えタンパク質材料を発現させるために、原核性及び/または真核性の宿主生物に挿入できるプラスミドを提供することが要望されている。
【0012】
従って本発明によれば、ヒト血清中のHCMVに対する抗体を同定するための診断用ツールが提供される。本発明の診断用ツールは、精製ビリオンから得られた複数のウイルスタンパク質(vp)を担持する第一セクションをもつ固体支持体手段から成り、前記ウイルスタンパク質は対応するバンドに集中的に存在しており、これらのバンドは所定のパターンに従って互いから離間して固体支持体の第一セクションによって支持されており、前記バンドの1つは分子量約150kDを有する少なくとも1つのウイルスタンパク質によって形成されている。この診断用ツールの特徴は、
(i)前記固体支持体手段が、更に、所定のパターンに従って互いに離間した複数のバンドを含む第二セクションを有しており、この第二セクションの少なくとも1つの第一バンドが、ウイルスタンパク質pp150の少なくとも1つのエピトープに対応するアミノ酸配列を再現する第一領域と外因性タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分を再現する第二領域とから成り原核性または真核性の宿主生物中で発現され得る単一の組換えタンパク質(rp)を含んでおり、
(ii)第二セクションの少なくとも1つの第二バンドは、HCMVウイルスの第一の非構造タンパク質の少なくとも1つの免疫原性エピトープに対応するアミノ酸の配列を再現する第一領域と上記外因性タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分を再現する第二領域とから成る組換えタンパク質を含んでおり、
(iii)前記外因性タンパク質によって形成された少なくとも1つの対照バンドを含む、ことである。
【0013】
特に、第二セクションの上記第一バンドに含まれている上記組換えタンパク質は、ウイルスタンパク質pp150のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1006とaa1048との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸(F3)の配列を再現する上記第一領域と、上記ウイルスタンパク質pp150のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa595とaa614との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸(A1C2)の配列を再現する第三領域とから成る。これらの領域は上記の第一組換えタンパク質の内部で様々な相互的位置関係で配置され得る。
【0014】
更に、第二セクションの第二バンドはウイルスタンパク質pp52のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa202とaa434との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸(H10)の配列を再現する第一領域を有している組換えタンパク質を含んでいる。
【0015】
抗−HCMV IgMの検出に特に好適な本発明の1つの好ましい実施態様では、第二セクションが更に、Hμ鎖のアリコートを含む第二の対照バンドに加えて、少なくとも1つのバンドに配置された2つの追加の組換えタンパク質を含む。第一の追加組換えタンパク質は、ウイルスタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa540とaa601との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸の配列を再現する第一領域と、外因性タンパク質のアミノ酸の配列の少なくとも一部分を再現する少なくとも1つの第二領域とから成り、第二の追加組換えタンパク質は、ウイルスタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144とaa1233との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸の配列を再現する第一領域と、外因性タンパク質のアミノ酸の配列の少なくとも一部分を再現する少なくとも1つの第二領域とから成る。組換えタンパク質のこれらの領域は、各々の組換えタンパク質の内部で様々な相互的位置関係で配置され得る。
【0016】
上記の外因性タンパク質は好ましくはCKSであり、上記の領域の上記の組換えタンパク質は、タンパク質pp52、pp150及びp130の各々の完全アミノ酸配列を含む。ウイルスタンパク質の上記の配列はCKSのaa171位の直後の位置でCKSに組込まれている。
【0017】
このようにして、本発明の診断用ツールを用いて行われる改良されたウェスタンブロット試験は、市場で入手できる公知の試験のすべての欠点を解消し得る。一方では、ウイルスタンパク質pp150とタンパク質ベクターに結合したpp150の最も免疫原性の2つの配列から成る対応する組換え融合タンパク質とを固体支持体手段に同時に存在させることによって、150kDのバンドだけに対する直接応答の非特異性の問題が解決される。他方では、精製ビリオンに由来のウイルスタンパク質中で非構造ウイルスタンパク質が欠失しているという問題は、HCMVウイルスの非構造タンパク質のうちの最も強力な免疫原性エピトープを含む1つまたは複数の(特に追加の3つの)組換えタンパク質(ベクタータンパク質CKSに結合)、より特定的には、IgMの定量に最適なpp52の配列H10(aa202−aa434)、並びに、(UL57によってコードされる)p130のaa540−aa601の間の配列及びaa1144−aa1233の間の配列、をツールの第二セクションに挿入することによって解決される。
【0018】
従って、本発明の基本原理は、同一診断用ツール内部の2つのバンドセクションの組合せにあることが理解されよう。第一セクションを構成するバンドは精製ビリオンから従来の方法で得られる。第二セクションを構成するバンドは組換えタンパク質のみから形成される。これらの組換えタンパク質はその構造の内部に、2つのセクションの応答を交差照合(クロスチェック)する目的で適正に選択されたウイルスタンパク質の強力な抗原決定基を含む。このため、本発明の改良されたWB試験を“コンボWB”試験と呼ぶ。
【0019】
更に、疑陽性または疑陰性の応答を防止するために、組換えセクションに2つの対照バンドを挿入する。第一の対照バンドは、使用される全部の融合組換えタンパク質のベクタータンパク質として使用される同一タンパク質、この場合にはタンパク質CKSによって形成される。このバンドの陽性応答は、被検血清中に抗CKS抗体が存在し、恐らくはそのために疑陽性が生じたことを示す。また、μ鎖によって形成されるバンドの陰性応答は、試験中に操作ミスがあり、そのために疑陰性が生じたことを示す。
【0020】
本発明によれば更に、IgGまたはIgAの特異的同定を目的とするウェスタンブロット試験の容易な実施、及び、本文中で実施したIgM検査と同様の優れた結果の保証が、たとえその可能性が実験的手段によって未だ確認されていないにしても、上記の記載の応用によって可能であると考えられる。この目的のためには、例えば、p130の免疫原性配列から成る組換えタンパク質によって形成されるバンドを、CKSと必ず融合する適正に選択された別の組換えタンパク質、特にウイルスタンパク質gB(UL55遺伝子によって発現される)の部分またはウイルスタンパク質p28(UL99遺伝子によって発現される)の部分から成る組換えタンパク質によって置換するだけで十分であろう。この場合には明らかに、第二の対照バンドのクラスμのH鎖がクラスγまたはαのH鎖によって置換されるであろう。
【0021】
従ってより普遍的には、固体支持体の第二セクションは、構造的または非構造的なHCMVの第二タンパク質の少なくとも1つのエピトープに対応するアミノ酸の配列を再現する第一領域と外因性タンパク質のアミノ酸の配列の少なくとも1つの部分を再現する第二領域とを有する少なくとも1つの組換えタンパク質を含む少なくとも1つの第三バンドを支持している。このような構造的または非構造的な第二のウイルスタンパク質は、診断用ツールによって検出される抗体のクラス、特にIgM、IgGまたはIgAとの関連によって選択される。この場合、支持体のこの第二セクションは更に、ヒト免疫グロブリンクラスのHμ鎖、Hγ鎖及びHα鎖から成るグループから適正に選択されたH鎖のアリコートから成る第二の対照バンドを含む。
【0022】
固体支持体手段は一般には、ウイルスタンパク質(vp)及び組換えタンパク質(rp)が所定のパターンに従って典型的には吸着によって配置されたニトロセルロースのストリップまたはシートから構成される。
【0023】
上記パターンは例えば、典型的なポリアクリルアミドゲル電気泳動分画パターンに対応する。
【0024】
特にHCMVウイルス特異的IgMの同定に使用される本発明の診断用ツールの好ましい実施態様は、精製ビリオンから得られた少なくともウイルスタンパク質vp150、vp82、vp65、vp38及びvp28と、ウイルスタンパク質pp150及びpp52及び好ましくはpp130(または組換え手段によって得られた他の非構造タンパク質)の免疫原性領域を含み該領域がCKSに組込まれている複数の組換えタンパク質と、タンパク質CKS自体と、ヒト免疫グロブリンのHμ鎖とから成り、これらのタンパク質材料の全部が、ニトロセルロースから成る固体支持体に例えば吸着によって支持されている。
【0025】
別の特徴によれば本発明は、ヒト血清中のHCMV特異的IgM及び/またはIgG及び/またはIgAの同定方法に関する。この方法は以下の段階、即ち、
HCMVのビリオンを精製し、これらの精製ビリオンから少なくともウイルスタンパク質vp150、vp82、vp65、vp38及びvp28を単離する段階と、
好ましくは遺伝子操作の技術を用い、構造的または非構造的なウイルスタンパク質の免疫原性領域とこの生物中で発現され得る外因性タンパク質の少なくとも1つの領域とから成り宿主生物中で発現され得る組換えタンパク質であって、上記の構造的または非構造的なウイルスタンパク質の免疫原性領域の少なくとも1つがIgM及び/またはIgG及び/またはIgA特異的免疫応答を刺激する能力に基づいて選択されているような複数の組換えタンパク質を作製する段階と、
所定のパターンに従って互いに離間して位置決めされた上記のウイルスタンパク質と上記の組換えタンパク質とを固体支持体手段に配置する段階と、
上記外因性タンパク質とヒト免疫グロブリンのHμ鎖及び/またはHγ鎖及び/またはHα鎖のアリコートとを、同様に上記ウイルスタンパク質及び上記組換えタンパク質から離間しかつ互いに離間して固体支持体手段に配置する段階と、
上記のタンパク質と免疫グロブリンのH鎖とを含む固体支持体手段を、検査すべきヒト血清、及び、抗体検出用物質(例えばペルオキシダーゼまたはその他の標識酵素とのコンジュゲート)と共にインキュベートする段階と、
その後のウイルスタンパク質及び組換えタンパク質の反応を比較する段階とから成り、少なくとも1つのウイルスタンパク質及び少なくとも1つの組換えタンパク質が同時に被検血清と反応し外因性タンパク質が反応しないときにだけ試験が陽性であると判定し、免疫グロブリンのH鎖が反応しないときは再試験を行う。
【0026】
本発明は更に、pCMV−30及びpCMV−31と呼ばれる2つのプラスミドに関する。これらのプラスミドは原核性または真核性の宿主生物に挿入でき、それぞれが、HCMVウイルスのウイルスタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa540とaa601との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分をコードしているDNAの配列、及び、ウイルスタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144とaa1233との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分をコードしているDNAの配列を含む。これらの2つのプラスミドは、ブダペスト条約に規定された条項に従って、1996年5月29日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),Rockville,Maryland,USAに寄託され、それぞれアクセス番号ATCC98,065及び98,066として受託された。
【0027】
別の特徴によれば、本発明は更に、いずれも原核性または真核性の宿主生物に挿入可能な別の2つのプラスミドを含む。これらの2つのプラスミドは、ブダペスト条約に規定された条項に従って、1996年4月30日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),Rockville,Maryland,USAに寄託され、それぞれpCMV−1A(ATCCアクセス番号98,042)及びpCMV−5A(ATCCアクセス番号98,044)と命名されている。これらの2つのプラスミドは、タンパク質pp150の免疫原性配列A1C2F3及びCKSと融合したタンパク質pp52の配列H10を産生し得る。これらの配列は、国際特許出願WO96/01321に記載されている。該特許の記載内容全部が参照によって本発明に含まれるものとする。本発明はまた、プラスミドpCMV−1AまたはpCMV−5Aを含む組換え宿主生物を包含する。
【0028】
最後に本発明は、プラスミドpCMV−30、pCMV−31、pCMV−1AまたはpCMV−5Aのいずれか1つが挿入された宿主生物中で発現された組換えタンパク質から成りHCMV特異的抗体に結合できる組換えタンパク質材料を包含する。より特定的には本発明に包含されるタンパク質は、
(2)CKS(1−171aa)−p130(540−601aa)−T−R−CKS(171−260aa)
(3)CKS(1−171aa)−p130(1144−1233aa)−T−R−CKS(171−260aa)
である。
【0029】
式中、CKS(1−171aa)及びT−R−CKS(171−260aa)はそれぞれ、アミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1からaa171(両端を含む)までのタンパク質CKSの残基、及び、アミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa171からaa260(両端を含む)までのタンパク質CKSの残基を表す。T及びRはそれぞれトレオニン及びアルギニンを表す。p130(540−601aa)はアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa540からaa601(両端を含む)までのウイルスタンパク質p130の残基を表し、p130(1144−1233aa)はアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144からaa1233(両端を含む)までのウイルスタンパク質p130の残基を表す。
【0030】
また、HCMVの血清学的診断用診断試薬、及び、上記の組換えタンパク質材料、及び、血清学的方法によって抗−HCMV抗体の存在を同定するための上記の診断試薬を含む任意の診断用キットも本発明の範囲に包含される。
【0031】
本発明のその他の特徴及び利点は、幾つかの非限定実施例に関する添付図面に基づく以下の記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、プラスミドpCMV−5Aの構築を示す概略説明図である。
【図2A】図2Aは、DNA p130(540−601aa)及びp130(1144−1233aa)の配列を含むPCRフラグメントの作製を示す概略説明図である。
【図2B】図2BはプラスミドpCMV−30及びpCMV−31の構築を示す概略説明図である。
【図3】図3は血液ドナーから採取した500の血清サンプルで観察されたIgMの反応性を示す表1である。
【図4A−1】図4A及び4Bは臓器移植患者から採取した血清の経時試験(“追跡”)を要約した表2である(表2は図2−Aから始まり、図2−Bに続く)。
【図4A−2】図4A及び4Bは臓器移植患者から採取した血清の経時試験(“追跡”)を要約した表2である(表2は図2−Aから始まり、図2−Bに続く)。
【図4B−1】図4A及び4Bは臓器移植患者から採取した血清の経時試験(“追跡”)を要約した表2である(表2は図2−Aから始まり、図2−Bに続く)。
【図4B−2】図4A及び4Bは臓器移植患者から採取した血清の経時試験(“追跡”)を要約した表2である(表2は図2−Aから始まり、図2−Bに続く)。
【図5】図5は選択されたヒト血清のコンボWB試験に対する反応性を示す表3である。
【図6】図6は、本発明の試験に用いる試験ストリップを示す。図の右端の数値は変性条件下のポリペプチドの見掛け分子量を表す(vp=ウイルスタンパク質;rp=組換えタンパク質;μ=クラスMのヒト免疫グロブリンの精製μ鎖)。図の上端の番号は種々の血清サンプルを表し、1−3はIgG/IgM陽性(EIA)の妊娠女性;4及び5はIgG/IgM陽性(EIA)の腎移植レシピエント;6及び7はIgG陽性IgM陰性(EIA)の妊娠女性の血清サンプルである。
【図7】図7は図6と同様の試験ストリップを示す:一次感染した妊娠女性(ウイルスが胎児に感染)の経時試験(“追跡”):1はIgG及びIgMに陰性(neg.)の第一サンプル;2はIgG陰性、IgM陽性(pos.)の第二サンプル;3から5は、2週おきに継続的に採取したIgG及びIgMに陽性のサンプル;6はIgG及びIgMに陰性の第一サンプル;7はIgG陰性、IgM陽性の第二サンプル;8はIgG及びIgMに陽性の第三サンプル;9はIgG及びIgM陰性の第一サンプル;10から13は7カ月間継続的に採取したIgG及びIgM陽性のサンプル:ウイルス尿が検出された新生児:14はIgG陽性、IgM陰性の血清サンプル。
【図8】図8は、特異的抗−HCMV IgMを同定するための本発明の診断用ツールの概略説明図である。
【0033】
図8を参照すると、符号(1)はヒト血清中の特異的抗−HCMV IgMを同定するための診断用ツールを表す。ツールは、複数のバンドを担持する例えばニトロセルロースストリップの固体支持体手段(2)から成り、各バンドは、所定のパターンに従って配置された1つまたは複数のタンパク質から形成されている。より詳細には支持体ストリップ(2)は、2つのセクション(3)及び(4)から成る。第一セクション(3)はウイルスタンパク質によって形成され互いに(i),(i),(i),(i)の間隔を隔てる第一シリーズのバンド(5−a)(5−b)(5−c)(5−d)(5−e)を担持しており、第二セクション(4)は組換えタンパク質によって形成され互いに(e),(e)の間隔を隔てる第二シリーズのバンド(6)(6)(6)を担持している。第二セクション(4)は更に、2つの対照バンド(7)及び(8)を含む。バンド(5−a)(5−b)(5−c)(5−d)(5−e)は好ましくは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動分画によって精製され支持体ストリップ(2)に吸収されたビリオンから得られたHCMVのウイルスタンパク質vp28、vp38、vp65、vp82及びvp150からそれぞれ形成されている。従って、バンド(5−a)(5−b)(5−c)(5−d)(5−e)は典型的な電気泳動パターンに従って配置され、距離(i),(i),(i),(i)はそれぞれの分子量の差に比例している。勿論、ウイルスタンパク質を別の方法で採取し支持体に転移させてもよい。その場合には、距離(i),(i),(i),(i)は異なる値になり、バンドは別のパターンで配置されるであろう。バンド(6),(6),(6)は、例えば、遺伝子操作の技術を使用し外因性タンパク質CKSにウイルスタンパク質p130、pp52またはpp150の1つまたは複数の免疫原性領域を組込むことによって作製された組換えタンパク質から形成されている。第一の対照バンド(7)はタンパク質CKS自体から形成され、第二の対照バンド(8)はヒト免疫グロブリンのHμ鎖のアリコートを含んでいる。
【0034】
使用するときは、2つのセクション(3)及び(4)の各バンドを検査中の血清及び展開剤と共に試験する。バンドを形成するタンパク質を血清と共にインキュベーションした後、1つのバンドに対応するブロットの出現は、該バンドのタンパク質とIgMとが反応したことを表し、その結果として検査中の血清中に上記抗体が存在することを示す。2つのセクション(3)及び(4)の応答の交差照合(クロスチェック)を行うことによって、従来のWB試験で生じたような非特異的応答を防止し得る。更に、2つの対照バンド(7)及び(8)によって疑陽性または疑陰性の結果を識別することが可能である。即ち、タンパク質CKSによって形成されたバンド(7)の反応は、血清中に抗CKS抗体が存在し、その結果として疑陽性が生じる可能性があることを示している。逆に、μ鎖を含むバンド(8)が反応しない場合には、試験の進行に過誤があり、結果が疑陰性になったと推定できる。
【0035】
本発明によれば、以下により詳細に記載するような根拠に基づいて、第一セクション(3)の少なくとも1つのウイルスタンパク質及び第二セクション(4)の少なくとも1つの組換えタンパク質が検査中の血清と同時に反応するが、第一の対照バンド(7)を構成する外因性タンパク質は反応を示さず、第二の対照バンド(8)を形成するヒト免疫グロブリンのH鎖が反応しないときにだけ試験の結果が陽性であると判定される。
【0036】
組換えセクション(4)では1つまたは複数のバンドが反応性であるが、セクション(3)ではウイルスタンパク質vp82によって形成されるバンドだけが反応性であるときは試験の結果が不確定であると判定される。
【0037】
最後に、対照バンド(8)が反応しない場合、(ヒト免疫グロブリンのμ鎖は必ず反応する筈であるから)試験の進行に過誤があったことが確認されるので、再試験が必要である。
【0038】
本発明を更に十分に理解するために以下の非限定実施例によって本発明をより詳細に説明する。
【0039】
実施例1一般手順
1.材料及び入手先
制限酵素、T4ファージのリガーゼ、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIAP)、キナーゼポリヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントは、New England Biolabs,Inc.(Beverley,MA,USA)またはBoehringer Mannheim Corp.(Indianapolis)から入手した。DNアーゼI及びアプロチニンはBoehringer Mannheim Corp.から入手した。
【0040】
標準分子量のDNA及びタンパク質、Daiichiのプレフォームアクリルアミドゲル、セミドライ転移システム、対応するバッファは、Integrated Separation Systems,Inc.(Natick,MA,USA)から入手した。
【0041】
イソプロピル−β−チオガラクトシド(IPTG)、アクリルアミド、N′,N′−メチレン−ビス−アクリルアミド、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、4−クロロ、1−ナフトロ、染料クーマシー・ブルー(登録商標)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)はBio Read Laboratories(Richmond,CA,USA)から入手した。
【0042】
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)で標識した抗体は、Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.(Gaithersburg,MD,USA)から入手した。大腸菌細胞Epicurean Coli(登録商標)XL−1 Blue(recA1 endA1 gyrA96 thi−1 hsdR17 supE44 relE44 relA1 lac〔F′ proAB laclq ZΔM15 Tn(Tet)〕、DNA精製キット、RNA精製キット、cDNA合成キットZAP(登録商標)はStratagene Cloning Systems,Inc.(La Jolla,CA,USA)から入手した。
【0043】
GeneAmp(登録商標)試薬キット及びDNAポリメラーゼAmpliTaq(登録商標)は、Perkin−Elmer Cetus (Norwalk,CT,USA)から入手した。一般手順で使用したデオキシヌクレオチド三リン酸はGeneAmp(登録商標)キットから採用した。
【0044】
支持体付きのニトロセルロース膜は、Schleicher & Schull(Keene,NH,USA)から入手した。
【0045】
Sequenase(登録商標)及び7−デアザ−dGTPでDNAを配列決定するためのヌクレオチドキット及びDNAポリメラーゼSequenase(登録商標)のVersion 2.0は、U.S.Biochemical Corp.(Cleveland,OH,USA)から入手した。
【0046】
mRNAポリA+精製用キットは、Pharmacia LKB Biotechnology,Inc.(Piscataway,NJ.USA)から入手した。
【0047】
アンピシリンを含むルリアブイヨンのプレート(LBampプレート)はMicro Diagnostics,Inc.(Lombard,IL,USA)から入手した。
【0048】
OPTI−MEM培地、ウシ胎仔血清、燐酸塩緩衝生理食塩水、適当な大腸菌DH5a細胞(φ−F80dlacZDM15D(lacZYA−argF)U169 deorecA1 endA1 phohsdR17(rK−,mK+)supE44 1− thi−1 gyrA96 relA1)、及び、アガロースゲルultraPURE(登録商標)は、GIBCO BRL,Inc.(Grand Island,NY,USA)から入手した。
【0049】
バクトトリプトン、バクト酵母エキス、バクト寒天は、Difco Laboratories(Detroit,MI,USA)から入手した。
【0050】
NZY(登録商標)ブイヨンは、Becton Dickinson Microbiology Systems (Cockeysville,MD,USA)から購入した。
【0051】
サケ精子のDNA、リゾチーム、アンピシリン、N−ラウロイルサルコシン、チメロサール、バッファ、カゼインの酸加水分解物、トゥイーン20(登録商標)(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、ジエチルピロカーボネート(DEPC)、フェニルメチルスルホノフルオリド(PMSF)、ウシ血清アルブミン(BSA)、尿素、グリセロール、EDTA、デオキシコール酸ナトリウム及び無機塩は、Sigma Chemical Co.(Saint Louis,MO,USA)から入手した。
【0052】
過酸化水素(H2O2)はMallinkrodt(Paris,KY,USA)から入手し、メタノールはEM Science(G〔i〕bbstown,NJ,USA)から入手した。
【0053】
2.培地、バッファ及び遺伝試薬
“SUPERBROTH II”は、11.25g/リットルのトリプトンと22.5g/リットルの酵母エキスと11.4g/リットルの二塩基性リン酸カリウムと1.7g/リットルの一塩基性リン酸カリウムと10ml/リットルのグリセロールとを含有し、水酸化ナトリウムによってpH7.2に調整されている。
【0054】
“トリス生理食塩水バッファ”即ち“TBS”は、20mMのトリスと500mMのNaClとから成るpH7.5のバッファである。“トゥイーン20(登録商標)−トリス生理食塩水バッファ”即ち“TBST”は、TBSに0.05%のトゥイーン20(登録商標)を加えたバッファである。
【0055】
“膜ブロッキング溶液”は、1%のウシ血清アルブミン(BSA)と1%のカゼインの酸加水分解物と0.05%のトゥイーン20(登録商標)とを加えたTBSから成る。
【0056】
サンプル希釈バッファ“Rubazyme Sample Dilution Buffer”即ち“Rubazyme SDB”は、100mMのトリスと135mMのNaClと10mMのEDTAと0.2%のトゥイーン20(登録商標)と0.01%のチメロサールと4%のウシ胎仔血清とから成るpH7.5のバッファである。
【0057】
コンジュゲート希釈バッファ“Rubazyme Conjugate Dilution Buffer”は、100mMのトリスと135mMのNaClと0.01%のチメロサールと10%のウシ胎仔血清とから成るpH7.5のバッファである。
【0058】
“HRPO呈色溶液”は、0.06%の4−クロロ−1−ナフトロと0.02%のHと0.2%のメタノールとを含むTBSから成る。
【0059】
“SDS−PAGEローディングバッファ”は、2%のSDSと10%のグリセロールと5%のβ−メルカプトエタノールと0.1%のブロモフェノールブルーとを含む62mMのトリスから成るpH6.8のバッファである。
【0060】
“TEバッファ”は10mMのトリスと1mMのEDTAとから成るpH8.0のバッファである。
【0061】
“TEM溶解バッファ”は50mMのトリスと10mMのEDTAと20mMのMgClとから成るpH8.5のバッファである。
【0062】
“PTEバッファ”は50mMのトリスと10mMのEDTAとから成るpH8.5のバッファである。
【0063】
3.ウイルスの増殖及びcDNAの調製
5%のウシ胎仔血清を含む培地OPTI−MEM(登録商標)中で増殖させたヒト線維芽細胞で培養したHCMVウルイスの菌株AD169またはTowneのいずれを使用してもよい。HCMVのAD169菌株及びHCMVのゲノムはCheeら,Curr.Top.Microbiol.Immuno.,154:125(1990)及びBankierら,DNA Seq.2:1(1991)の著書に記載されている。これらの文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0064】
線維芽細胞をHCMV感染させ、6日後にこれらの細胞を収集し、遠心し、PBSで洗浄し、vetro−Teflon(登録商標)ホモジナイザーで均質混合した。Mocarskiら,Proc.Nat’l.Acad.Sci.,82:1266(1985)に記載の手順で完全ウイルスDNAを単離した。均質混合した細胞からRNA精製キット(Stratagene Cloning Systems)を用いて完全RNAを単離し、メッセンジャーRNA精製キット(Pharmacia Biotech)を用いてRNAポリA+を単離した。精製したウイルスmRNAからZAP−cDNA(登録商標)合成キットを用いてHCMVのcDNAを合成した。
【0065】
4.一般方法
DNAの酵素消化はいずれも製造業者の指示通りに行った。1マイクログラムのDNAあたり少なくとも5単位の酵素を使用し、DNAの完全消化に十分なインキュベーション時間で反応を進行させた。DNA及びRNAの種々の操作キットの使用、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNAの合成、及び、DNAの配列決定は、製造業者によって提供されたプロトコル通りに行った。大腸菌のプラスミドDNAの小規模または大規模の調製、λファージ感染大腸菌細胞のファージ溶解液からのDNAの調製、抗大腸菌抗体を吸着させるための大腸菌溶解物の調製、フェノール−クロロホルムによるDNAの抽出及び沈殿、アガロースゲルにおける制限の分析、アガロースゲル及びポリアクリルアミドゲルによるDNAフラグメントの精製、制限酵素消化によって生じたDNAの不完全3’端(カルボキシル末端)に対するDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントによる埋戻し及びT4ファージのリガーゼによるDNAフラグメントの結合、適当なTB1細胞(Fara d(lacproAB)rpsL φ−80dlacZDM15hsdR17)の調製は、製造業者によって提供されたプロトコル通りに行った(Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1989)。
【0066】
作製したプラスミドにPCR増幅によってクローニングさせるDNAフラグメントを、フェノール−クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させてから、制限酵素で消化した。PCR及びDNA配列決定に使用したオリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems社製のオリゴヌクレオチドシンセサイザー380 Bまたは394モデルを使用し、製造業者のプロトコルに従って合成した。
【0067】
5.ベクターの構築
前駆プラスミドpJO200,pEE1,pMB34及びpROSH10は、国際特許出願WO96/01321及びLandiniらの論文(4)に記載されている。
【0068】
実施例2pCMV−1A:CKS−A1C2F3−CKSの構築
プラスミドpJO200に由来のプラスミドpCMV−1Aは、HCMV−A1C2F3を含むDNAフラグメントをクローニングすることによって構築した。このDNAフラグメントは、国際特許出願WO96/01321及びLandinらの論文(4)に記載されているように、pMB34に含まれているDNA A1C2F3をpJO200のStuI部位でPCR増幅させることによって得られた。プラスミドpCMV−1Aはブダペスト条約に規定された条項に従って1996年4月30日にATCCに寄託され、ATCCアクセス番号ATCC98042で受託された。
【0069】
実施例3:pCMV−5A:CKS−H10−CKSの構築
プラスミドpJO200(図1)の誘導体であるプラスミドpCMV−5Aは、HCMV−H10を含むDNAフラグメントをクローニングすることによって構築した。このDNAフラグメントは、pROSH10に含まれているDNA H10をpJO200のStuI部位にPCR増幅することによって得られた。プラスミドpCMV−5Aはブダペスト条約に規定された条項に従って1996年4月30日にATCCに寄託され、ATCCアクセス番号ATCC98044で受託された。
【0070】
プラスミドDNA(pROSH10及びpJO200)の大規模精製は一般方法によって行った。プラスミドpJO200のDNAをStuI及びBamHIで消化し、ベクターの骨格をアガロースゲルで精製した。StuI/BamHI消化によってCKS遺伝子の3′端の一部分を除去し、“結合”反応後に再構築した。PCR増幅によって得られた2つのDNAフラグメントを三方向“結合”反応によってベクターの骨格にクローニングした。H10をDNAフラグメントStuI/M1uIとしてクローニングし、CKS遺伝子の残りの3′部分をDNAのM1uI/BamHIフラグメントとしてクローニングし、これによって完全なCKS遺伝子を再構築した。
【0071】
ppUL44のヌクレオチド604を起点としStuI部位を含むセンスプライマーと、ppUL44のヌクレオチド1299を起点としM1uI部位を含むアンチセンスプライマーとを合成し、これらのプライマーをプラスミドpROSH10を含むPCR反応混合物に加えた。PCRによる増幅後、反応混合物をStuI及びM1uIによって消化し、得られたH10を含む696bpのDNAフラグメントをアガロースゲルで精製した。pJO200のヌクレオチド640を起点とし(M1uI部位を含む)センスプライマーと、pJO200のヌクレオチド905を起点とするアンチセンスプライマーとを合成し、プラスミドpJO200を含むPCR反応混合物に加えた(ヌクレオチドの番号は前述のようにLadiniらによる国際特許出願WO96/01321の図12にpJO200として示されているDNAの配列に対応する)。PCRによる増幅後、反応混合物をM1uI及びBamHIによって消化し、得られたCKS遺伝子の3’部分を含む266bpのDNAフラグメントをゲルによって精製した。得られたこれらの精製DNAフラグメントを次に、pJO200/StuI/BamHIに16℃で一夜結合させた。翌日、結合混合物を形質転換のために適当なXL−1 Blue細胞に導入した。
【0072】
次に、形質転換物質を用いてDNAを小規模で調製し、pJO200のStuI部位に挿入されたH10の存在を分析した。プラスミドpCMV−5AはStuI部位に挿入されたH20を含んでいることが判明した。H10のDNA及びCKSの3’端の配列をDNA配列決定によって確認した。タンパク質rpCMV−5Aをコードする構築物CKS−H10−CKSのコーディング領域は、H10とCKSの3’端との間にM1uI部位を有する2つのアミノ酸(トレオニン及びアルギニン)のブリッジを含んでいることが判明した。更に次式で示すように、CKSのアミノ酸171は構築物中で複製されていた。
(1)CKS(1−171aa)−H10−T−R−CKS(171−260aa)
式中、T及びRはそれぞれ、ベクターに導入された合成部位PstI及びM1uIからコードされているトレオニン及びアルギニン残基を表す。
【0073】
実施例4
CKS−pUL57−CKSを発現するpEE1に基づくベクターの構築
2つの融合構築物CKS−pUL57−CKSを構築するための出発プラスミドとして、タンパク質CKSを発現するベクターpEE1を使用した。各構築物を得るために、プラスミドpEE1をStuI及びM1uIで消化し、ベクターの骨格を精製した。構造pEE1/StuI/M1uIは、PCR増幅によって作製され5’端(アミノ末端)にStuI部位をもち3’端(カルボキシル末端)にM1uI部位をもつpUL57遺伝子のフラグメントを受容し得る。StuI及びM1uIで消化後、pUL57遺伝子のフラグメントをPCRによって骨格pEE1/StuI/M1uIに“インフレーム”でクローニングした。これらのベクターによって発現される融合タンパク質CKS−PUL57−CKSは次式で示される。
CKS(1−171aa)−pUL57−T−R−CKS(171−260aa)
式中、T及びRはそれぞれ、ベクターに導入された合成部位PstI及びM1uIにコードされているトレオニン及びアルギニン残基である。
【0074】
操作1:pCMV−30:CKS−pUL57(540−601aa)−CKSの構築
HCMVのcDNAのアミノ酸540−601をコードするpUL57の領域のPCR増幅によって得られたHCMV−p130(540−601aa)を含むDNAフラグメントをpEE1にクローニングすることによってプラスミドpEE1の誘導体であるプラスミドpCMV−30(図2A及び2B)を構築した。使用されるDNAフラグメントは、pUL57のヌクレオチド1618−1803から成り、pUL57のヌクレオチド1及び3776はそれぞれ、既知のAD169の配列の追加フィラメントのヌクレオチド90281及び86506に対応する。プラスミドpCMV−30はブダペスト条約に規定された条項に従ってATCCに寄託され、アクセス番号ATCC98065として受託された。
【0075】
HCMVのcDNAを鋳型として用い、DNAフラグメントHCMV−p130(540−601aa)をPCR増幅反応によって2段階(“入れ子式(nested)”)で作製した。外側の入れ子の増幅反応のために、pUL57のヌクレオチド1379を起点とするセンスプライマーと、pUL57のヌクレオチド1933を起点とするアンチセンスプライマーとを合成した。次に、cDNAを含有する混合物に双方のプライマーを加えた。PCR増幅後、外側の入れ子の増幅混合物を内側の入れ子のPCR増幅反応の鋳型として使用した。内側の反応のために、pUL57のヌクレオチド1618を起点としStuI部位を含むセンスプライマーとpUL57のヌクレオチド1803を起点としPstI部位を含むアンチセンスプライマーとを合成した。次に外側入れ子反応で増幅されたDNAを含有する混合物に双方のプライマーを添加した。PCR増幅反応後、反応混合物をStuI及びPstIで消化し、p130(540−601aa)を含む186bpのフラグメントをアガロースゲルで精製した。
【0076】
一般方法を用い、プラスミドDNA(pEE1)を大規模で調製した。プラスミドpEE1をStuI及びM1uIで消化し、ベクターpEE1/StuI/M1uIの骨格をアガロースゲルで精製した。精製したDNAフラグメントHCMV−p130(540−601aa)StuI/PstIをベクターpEE1/StuI/M1uIに16℃で一夜結合させた。翌日、結合混合物を形質転換物質を用いて適当なXl−1 Blue細胞に挿入した。形質転換物質をプラスミドDNAから小規模で調製し、次いで、pEE1のStuI/M1uI部位に挿入されたDNAフラグメントHCMV−p130(540−601aa)の存在を分析した。プラスミドpCMV−30はpEE1のStuI/M1uI部位に局在するp130(540−601aa)を含むことが判明した。更に、DNA配列決定によってp130(540−601aa)のDNA配列を確認した。この融合構築物CKS−CMV−CKSは次式で示される。
(2)CKS(1−171aa)−p130(540−601aa)−T−R−CKS(171−260aa)
式中、T及びRはそれぞれ、ベクターに導入された合成部位PstI及びM1uIからコードされているトレオニン及びアルギニン残基を表す。
【0077】
操作2:pCMV−31:CKS−pUL57(1144−1233aa)−CKSの構築
アミノ酸1144−1233をコードするpUL57の領域のHCMVのcDNAからPCR増幅によって得られたHCMV−p130(1144−1233aa)を含むDNAフラグメントをpEE1にクローニングすることによってプラスミドpEE1の誘導体であるプラスミドpCMV−31(図2A及び2B)を構築した。使用したDNAフラグメントは、pUL57のヌクレオチド3430−3699から成る。pUL57のヌクレオチド1及び3776はそれぞれ、既知のAD169の配列の追加フィラメントのヌクレオチド90281及び86506に対応する。プラスミドpCMV−31はブダペスト条約に規定された条項に従ってATCCに寄託され、アクセス番号ATCC98066として受託された。
【0078】
HCMVのcDNAを鋳型として用い、DNAフラグメントHCMV−p130(1144−1233aa)をPCR増幅反応によって2段階(“入れ子式(nested)”)で作製した。外側の入れ子の増幅反応のために、pUL57のヌクレオチド3351を起点とするセンスプライマーと、pUL57のヌクレオチド3766を起点とするアンチセンスプライマーとを合成した。次に、cDNAを含有する混合物に双方のプライマーを加えた。PCR増幅後、外側の入れ子の増幅混合物を内側の入れ子のPCR増幅反応の鋳型として使用した。内側の反応のために、pUL57のヌクレオチド3430を起点としStuI部位を含むセンスプライマーとpUL57のヌクレオチド3699を起点としPstI部位を含むアンチセンスプライマーとを合成した。次に、外側入れ子反応で増幅されたDNAを含有する混合物に双方のプライマーを加えた。PCR増幅反応後、反応混合物をStuI及びPstIで消化し、p130(1144−1233aa)を含む270bpのフラグメントをアガロースゲルで精製した。
【0079】
一般方法によってプラスミドDNA(pEE1)を大規模で調製した。プラスミドpEE1をStuI及びM1uIで消化し、ベクターpEE1/StuI/M1uIの骨格をアガロースゲルで精製した。精製したDNAフラグメントHCMV−p130(1144−1233aa)StuI/M1uIをベクターpEE1/StuI/M1uIに16℃で一夜結合させた。翌日、結合混合物を形質転換によって適当なXL−1 Blue細胞に挿入した。形質転換物質からプラスミドDNAを小規模で調製し、次いで、pEE1のStuI/M1uI部位に挿入されたDNAフラグメントHCMV−p130(1144−1233aa)の存在を分析した。プラスミドpCMV−31がpEE1のStuI/M1uI部位に局在するp130(1144−1233aa)を実際に含むことが判明した。更に、DNA配列決定によってp130(1144−1233aa)のDNA配列を確認した。この融合構築物CKS−CMV−CKSは次式で示される。
(3)CKS(1−171aa)−p130(1144−1233aa)−T−R−CKS(171−260aa)
式中、T及びRはそれぞれ、ベクターに導入された合成部位PstI及びM1uIからコードされているトレオニン及びアルギニン残基を表す。
【0080】
実施例5HCMVの組換え抗原の産生及び精製
1.HCMVの遺伝子の発現
非融合タンパク質CKSを発現する細菌性対照菌株、並びに、実施例2〔rpCMV−1A(A1C2F3/ppUL32/pp150)〕、実施例3〔rpCMV−5A(H10/ppUL44/pp52)〕、実施例4〔rpCMV−30(pUL57/p130)及びrpCMV−31(pUL57/p130)〕のようなHCMVの融合タンパク質を発現する細菌性クローンの全部を、100μg/mlのアンピシリンを含む培地“SUPERBROTH II”で対数増殖期まで培養した。融合タンパク質CKS−HCMVの合成を、(9)に記載されているようにIPTGの添加によって誘発した。誘発の4時間後、細胞を遠心によって収集し、タンパク質の精製時点までペレットを−80℃で凍結した。
【0081】
2.非融合タンパク質CKS及び組換えタンパク質CKS−HMVの精製
不溶性の融合タンパク質CKS−HCMV(rpCMV−1A,rpCMV−5A,rpCMV−30,rpCMV−31)を、界面活性剤による一連の洗浄及び8Mの尿素中の可溶化(9)を順次行う溶菌処理によって精製した。細胞溶解後の可溶性タンパク質CKSを硫安沈殿及びDEAEクロマトグラフィーを順次用いて精製した。
【0082】
実施例6実験的試験−“コンボWB”
1.ヒト血清のサンプル
特に疑陽性に注目してコンボWBの特異性レベルを従来のEIAとの比較によって評価するために、採取血清群から無作為に選択した500のドナー血液の血清サンプルを試験した。
【0083】
コンボWB試験の感度を評価するために、種々の方法、特に2つの商業的EIA試験及び従来のWB試験による測定で抗−CMV IgM陽性を示したサンプルから100の血清を選択した。上記の3つの試験の全部で陽性を示したサンプルだけをこのグループに入れ、以後の試験に使用した。試験の感度を更に評価するために、別の2つのサンプルグループを選択した。1つのサンプルグループは、PCRによって多形核白血球(PMNL)中のHCMVが陽性を示した心移植レシピエント(HTR)から採取した85の血清から構成され、もう1つのサンプルグループは、尿からのウイルス単離またはIgGの血清変換によってHCMV感染が判明した妊娠女性から採取した38の血清から構成されていた。
【0084】
更に、コンボWB試験で測定したときのHCMVウイルスに対する免疫応答の出現及び発生の時間を決定するために、10人の移植レシピエントに関する経時試験(“追跡”)を行った。即ち、これらの移植レシピエントから合計74の血液サンプルを採取し、これらのサンプルの抗原血分析または従来のEIA及びコンボWBによる抗−CMV特異的IgMの検定を実施した。
【0085】
2.HCMVウイルスの一部分に対する感染のウイルス学的診断
2.1.ウイルスの単離
尿及び唾液からウイルスを単離するために“シェルバイアル(shell vial)”手順(1)を使用した。病原性物質を接種したヒト線維芽様細胞を接種後24〜48時間定着させ、遺伝子産物HCMV−IE1/IE2と反応するモノクローナル抗体(Bioline社製,Paris,FranceのE13)を用いた間接免疫蛍光(IIF)によって呈色させた。
【0086】
2.2.抗原血
PMNLを富化したPBL画分中のHCMV−pp65の存在を、Van der Bijiら(10)が発案しRevelloら(8)が修正した手順で、HCMV−pp65特異的モノクローナル抗体(Argene,Paris,Franceのクローン1C3)を用いた間接IIF試験で測定した。
【0087】
蛍光顕微鏡で観察し、細胞数200,000あたりのpp65陽性の細胞数をカウントすることによって結果を定量した。200,000個に1個の割合の陽性細胞は、結果を抗原血陽性と判定するために十分であった。
【0088】
3.HCMVウイルス感染症の血清学的診断
3.1.従来のEIA試験
市販のEIA抗−CMV/IgGキット(Behring AG,Marburg,Germany)を用い、Enzygnostのアルファ法によってHCMVウイルスに対して特異的なIgGの力価測定を行った。EIA用の全自動マイクロリーダー(Behring AG)を用いてマイクロプレートを読取った。Enzygnostの抗−CMV/IgMキット(Behring AG)を用いて抗−CMV IgMを評価した。製造業者から提供された指示に従って結果を解釈した。
【0089】
3.2.抗−CMV IgMを同定するための“コンボWB”試験
参考文献(3)に記載されている従来のWB技術を使用し、精製ビリオンの溶解液をポリアクリルアミドゲルで分画した。このようにして分離したポリペプチドを次に、それぞれの電気泳動プロフィルに従ってニトロセルロースシートに転移させた。ニトロセルロースシートの底面が組換えタンパク質に十分なスペースを与えるようにニトロセルロースシートの長さをゲルのほぼ2.5割増しの寸法にした。電気泳動によるウイルスタンパク質の転移後、ミニブロッターのチャンネルがポリアクリルアミドゲル上のタンパク質の泳動方向に垂直になる方向で各ブロットをミニブロッターにマウントした。3つの組換えタンパク質の懸濁液を小ウェルに滴下した。ベクタータンパク質に対する非特異的反応をチェックし、免疫複合体を正しく同定するために、ベクタータンパク質CKSとヒト免疫グロブリンのμ鎖をそれぞれ滴下した2つの対照チャンネルを設けた。次に、ミニブロッターを振動プラットホームに4℃で一夜維持することによって軽度に撹拌した。フィルターをTBSで簡単に洗浄し、次いでブロッキング溶液(TBS中の3%魚ゼラチン、1%BSA、5%脱脂粉乳、0.05%トゥイーン20)で飽和し室温で1時間インキュベートした。フィルターを幅3mmのストリップに裁断し、各ストリップが標品ウイルスタンパク質(上部)または組換えポリペプチド(下部)を含むようにし、従来のWBセクションと組換えバンドのセクションとの組合せを形成した。このように形成したニトロセルロースストリップを用いて、ヒト血清中のHCMV特異的IgMを検出する血清学的分析を行った。血清を、4%のウシ胎仔血清(SBF)、0.1%のトゥイーン20を含むTBSで1:50に希釈した。ペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヒト抗−μ鎖抗体(ヤギの抗−ヒトIgM)を、10%SBFを含むTBSで希釈した。
【0090】
3.3.IgMを同定するためのコンボWB試験の解釈アルゴリズム
ストリップのウイルスタンパク質を含むWBセクションは、タンパク質pp150,pp65,p55,p38,p28のいずれか1つがヒト血清に対して反応性を示したときだけ陽性であると判定される。ストリップの組換えセクションは、組換えウイルスタンパク質に対応するバンドの少なくとも1つが反応性を示したときに陽性であると判定される。即ち、試験の結果は以下のごとく判定される。
【0091】
−ストリップの従来のWBセクションで少なくとも1つのバンドが反応性を示し、同時に、組換えセクションで少なくとも1つのバンドが反応性を示すことが確認されたときに結果は陽性である。
【0092】
−ストリップの2つのセクションのうちの一方のセクションが完全に陰性のときは他方のセクションにいくつの反応性バンドが存在するかに関わりなく結果は陰性である。
【0093】
−ストリップのWBセクションのp82だけが陽性を示し、組換えセクションの1つまたは複数のバンドが陽性を示したときは結果は不確定であり、陰性であるか陽性であるか決められない。
【0094】
試験の有効性を確認するために、μ鎖の位置の陽性反応及びベクタータンパク質の位置の無反応が必要であった。
【0095】
3.4.抗−HCMV IgGまたはIgAを同定するためのコンボWB
上述のように作製したコンボWBストリップはまた、ヒト血清中のHCMVウイルス特異的IgG及びIgAを検査する血清学的試験でも使用され得る。4%のSBF及び0.1%のトゥイーン20を含むTBSで血清を1:100に希釈する。ペルオキシダーゼにコンジュゲートしたγ鎖及びα鎖のそれぞれに特異的な抗体(ヤギの抗−ヒトIgM)を、10%のSBFを含むTBSで希釈する。
【0096】
4.結果
4.4.コンボWB試験によるIgM特異的抗−HCMVの同定
HCMV特異的IgMに対するコンボWB試験の特異性を確認するために、血液ドナー及び健康な個人から採取した多数のサンプルを用い、従来のEIA試験と平行試験を実施した。米国で採取した300の血清と、イタリアで採取した200の血清とから成る合計500の血清を分析した。血清の約79%がIgG陽性であることが判明していた。IgM陽性は従来のEIA試験では0.2%、組合せ方法では1.8%であった。この分析の詳細を表1にまとめる。即ち、14の血清(2.8%)がvp150だけと反応し、3つの血清(0.6%)がvp82だけと反応し、少数の他の血清(0.4%以下)が1つまたは複数の他のウイルスタンパク質と反応したが、これらのうちで組換えタンパク質と反応するものはなかった。3つの血清(0.6%)が1つまたは複数の組換えタンパク質と反応したが、ウイルス反応との同時的反応は全く生じなかった。これらの2つの血清グループはいずれもIgM陰性であると判定される。9個の血清(1.8%)は少なくとも1つのウイルスタンパク質及び1つの組換え体と反応し、従って、IgM陽性であると判定される。更に、本発明の第二の試験のIgMに対する感度を測定するために、商業的EIA試験または従来のWB試験でHCMV特異的IgM陽性と判定された別の100の血清をコンボWBで分析した。これらの血清の100%がコンボWB試験でも同じく陽性であると判定された。試験の感度を更に評価するために、別の2つの血清グループを試験した。PMNL中のHCMVウイルスがPCR陽性であると判定されていた心移植患者から採取した85のサンプルから成る第一グループについて、市販のEIAキット及びコンボWBを用いてHCMV特異的IgMの存在を分析した。市販のキットでは39のサンプルが陽性であったが、コンボWBでは58のサンプルが陽性であった(表3)。最後に、妊娠女性の血清から採血時点の能動感染の存在に基づいて38の血清サンプルを選択した。これらの血清サンプルについて、EIA試験及びコンボWB試験で抗−HCMV IgMの存在を分析すると、前者の方法では22のサンプルが陽性であり、後者の試験では34のサンプルが陽性であった(表3参照)。コンボWB試験による血清サンプルの反応性のいくつかの例を図6及び図7に示す。血清は、急性感染の妊娠女性(図6、レーン1〜3)、感染の進行した妊娠女性(図6、レーン6及び7)、胎児へのウイルス感染が確認された一次感染の妊娠女性(図7)から採取した。
【0097】
急性感染の場合、コンボWBによって測定されるIgMの免疫応答の出現及び発生の時点を確認する目的で、更に10人の臓器移植レシピエントのグループを実験的分析に追加し、これらの被験者(合計74人)から採取した血清のサンプルの経時試験(“追跡”)を実施した。第一サンプルは、外科処置前の各レシピエントから採取し、以後2〜78日(両端値を含む)の間隔をおいて定期的にサンプルを採取した。血清を、抗原血試験、IgMに対する商業的EIA試験及びコンボWB試験によって平行試験した。表2に示すように、4つの場合(Arq,Fir,Fer及びBat)に、3つの方法が同等の感度を示し、全部の試験でこれらのサンプルが最初から陽性であると判定された。2つの場合(Fio及びBos)に、抗原血試験が最初に感染反応を示し、他の試験よりもそれぞれ14日及び9日早かった。1つの場合(Cup)に、コンボWBが最初に感染反応を示し、抗原血よりも19日早かった。1つの場合(Sab)に、抗原血及びコンボWBはEIAよりも1週間早く感染反応を示した。コンボWBにおけるこれらの血清の反応性の一例を図6のレーン4及び5に示す。
抗−CMV IgMの血清学的分析だけを考察すると、コンボWBは2つの場合(Sab,Cup)にEIA試験よりも早かった。別の2つの場合(Fio及びCic)には順序が逆であったが、残りの6つの場合にはEIA及びコンボWBが同時に陽性を示すことが知見された。
【0098】
4.2.コンボWB試験による抗−HCMV IgG及びIgAの同定
修正された形態のコンボWB試験をヒト血清サンプル中のHCMV特異的IgG及びIgAの同定に応用し得る。IgMの特異的検出に使用するストリップと本質的に同じ方法でニトロセルロースのストリップを作製するが、pUL57の一部分を発現する組換えタンパク質の代わりに、gB(UL55)及びp28(UL99)の部分を発現する組換えタンパク質を使用する。
【0099】
5.検討
WB技術の方法に基づく新規な血清学的試験方法が開発された。この新規な試験方法は天然型のウイルスタンパク質または組換え免疫原を抗原性物質として使用する。
即ち、標品ウイルス物質の明確な特異性または組換えによって産生された抗原の信頼性を有している診断用製品を作製するために、感染細胞に由来のウイルス産物と遺伝子操作の技術によって得られた組換え抗原とを組合せた。即ち、本発明の目的は、市販のHCMV抗原性物質に内部標準を付加することによって、明確な結果を確認できるようにし、同時に、特異的抗体が認識し得る標的ウイルスの種類を非構造ウイルス抗原によって拡大することである。本発明の別の目的は、組換えタンパク質に対するヒト血清の反応性の内部標準を与えるために、所定のHCMVの組換え抗原の混合物に構造ウイルス産物標品を組合せることである。実際に試験の結果は、試験自体から構成されるこの相互的内部対照の直接結果に基づいて解釈される。即ち、試験の双方の部で少なくとも1つの有意なバンドが陽性を示すときにだけ結果が陽性であると判定される。
【0100】
実験の結果は、本発明のコンボWB試験が、
(1)従来のEIA試験(Behring)よりも高感度であること、
(2)従来のWB試験よりも優れた特異性を有すること、
を示した。
【0101】
統計的には血液ドナーまたは健康な成人の集団から採取した血清サンプルのうちの平均0.3%〜1.1%がHCMV IgM陽性であると文献に記載されているので(7)、実験の結果は、コンボWBが従来のWBに比べて向上した特異性を保証することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCMVウイルスのタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144とaa1233との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分をコードするDNA配列から成ることを特徴とする原核性または真核性の宿主生物に挿入され得るプラスミド。
【請求項2】
ATCCアクセス番号98,066でATCCに寄託されたプラスミドpCMV−31の特性を有していることを特徴とする請求項1に記載のプラスミド。
【請求項3】
HCMVウイルスのウイルスタンパク質p130のアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144とaa1233との間(両端を含む)の配列の少なくとも一部分に対応するアミノ酸の配列を再現する第一領域と、タンパク質CKSのアミノ酸配列の少なくとも一部分を再現する少なくとも1つの第二領域とから成り、前記領域が前記組換えタンパク質の内部で様々な相互的位置関係で配置され得るような組換えタンパク質を産生し得る請求項1または2に記載のプラスミドを含む宿主生物。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載のプラスミドが挿入された宿主生物中で発現された組換えタンパク質から成ることを特徴とする抗−HCMV抗体に結合し得る組換えタンパク質材料。
【請求項5】
抗−HCMV IgMに結合し得る組換えタンパク質材料であって、以下の組換えタンパク質、即ち、
(3)CKS(1-171aa)−p130(1144-1233aa)−T−R−CKS(171-260aa)
〔式中、CKS(1-171aa)及びT−R−CKS(171-260aa)はそれぞれ、アミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1からaa171(両端を含む)までのタンパク質CKSの残基及びアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa171からaa260(両端を含む)までのタンパク質CKSの残基を表す。T及びRはそれぞれトレオニン及びアルギニンを表す。P130(1144-1233aa)はアミノ末端からカルボキシル末端の方向でaa1144からaa1233(両端を含む)までのウイルスタンパク質p130の残基を表す〕から成ることを特徴とする組換えタンパク質材料。
【請求項6】
請求項4または5に記載の組換えタンパク質材料を含むHCMV感染の血清学的診断に用いる診断試薬。
【請求項7】
請求項6に記載の少なくとも1種類の診断試薬を含むことを特徴とする抗−HCMV抗体の存在を血清学的手段によって判定するための診断用キット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A−1】
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【図4A−2】
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【図4B−1】
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【図4B−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−158251(P2010−158251A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49195(P2010−49195)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2008−238276(P2008−238276)の分割
【原出願日】平成9年8月7日(1997.8.7)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】