説明

HGFβ鎖とC−MET間の相互作用の調節

本発明は、特にc−metへのHGFβ鎖の結合を調節することにより、HGF/c−metシグナル伝達経路を調節するための方法及び組成物を提供する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連した出願)
本出願は、その開示を出典明示によりここに取り込む2003年6月6日出願の仮出願第60/476778号及び2003年12月23日出願の仮出願第60/532117号に基づく米国特許法第119条の優先権を主張して米国特許法施行規則第1.53(b)(1)条に基づき出願された非仮出願である。
【0002】
(技術分野)
本発明は一般に分子生物学及び成長因子調節の分野に関する。より詳細には、本発明はHGF/c−metシグナル伝達経路の調節物質(モジュレーター)及び該調節物質の用途に関する。
【0003】
(背景技術)
散乱因子(SF)としても知られている肝細胞増殖因子(HGF)はc−metプロトオンコジーンによってコードされているレセプターチロシンキナーゼ(Cooper等, 1984a & b)であるMetに対するリガンドである(Bottaro等, 1991)。Metに結合しているHGFは細胞内キナーゼドメインのリン酸化を誘導し、様々な細胞型において細胞成長、分化及び遊走を生じる細胞内経路の複合集団の活性化を生じる;幾つかの最近発刊された概説が包括的な概要を提供する(Birchmeier等, 2003;Trusolino及びComoglio, 2002;Maulik等, 2002)。胚発生及び組織再生におけるその基本的な重要性に加えて、HGF/Metシグナル伝達経路はまた浸潤腫瘍成長及び転移に関係しており、それ自体、興味ある治療標的(Birchmeier等, 2003;Trusolino及びComoglio, 2002;Danilkovitch-Miagkova及びZbar, 2002;Ma等, 2003)である。
【0004】
HGFはプラスミノーゲン関連成長因子ファミリーに属し、N末端フィンガードメイン(N)と4つのクリングル(K1−K4)ドメインを含む69kDaのα鎖と、Clan PA(S)/ファミリーS1由来のキモトリプシン様セリンプロテアーゼのプロテアーゼドメインに強い類似性を有している34kDaのβ鎖を含む(Nakamura等, 1989;Donate等, 1994;Rawlings等, 2002)。プラスミノーゲン及び他のセリンプロテアーゼチモーゲンと同様に、HGFは単鎖前駆体型(scHGF)として分泌される。scHGFはヘパリン硫酸プロテオグリカン、例えば細胞表面上又は細胞外マトリックス内のシンデカン-1(Derksen等, 2002)に結合する。ヘパリン硫酸プロテオグリカンがNドメインに結合し(Hartmann等, 1998)、それがまたK1に位置しているアミノ酸と共に高親和性のMet結合に寄与している(Lokker等, 1994)。scHGFは高親和性でMetに結合することができるが、レセプターを活性化させることができない(Lokker等, 1992;Hartmann等, 1992)。HGFシグナル伝達活性の獲得は、scHGFのArg494-Val495でのタンパク分解的切断(活性化)時に付随的であり、成熟HGFつまりジスルフィド結合α/βヘテロ二量体の生成を生じる(Lokker 等, 1992;Hartmann等, 1992;Naldini等, 1992)。HGFのプロテアーゼ様ドメイン(HGFβ鎖)は、Gln534[c57]及びTyr673[c195]を有する全てのセリンプロテーゼ(Perona及びCraik, 1995;Hedstrom, 2002)に見出される必要とされるAsp[c102]-His[c57]-Ser[c195](括弧での標準的なキモトリプシノーゲン番号付け)触媒三連構造を欠いているので、触媒的活性がない。
【0005】
HGF活性の調節におけるその重要性のため、このプロセスはHGF変換酵素とその対応する生理学的阻害剤によって密に制御されなければならない。scHGF活性化は、肝細胞増殖因子活性因子(HGFA)(Miyazawa等, 1993)、マトリプターゼ/MT-SP1(Takeuchi等 1999;Lin等, 1999)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(Naldini等, 1992)、第XIIa因子(Shimomura等, 1995)、第XIa因子(Peek等, 2002)及び血漿カリクレイン(Peek等, 2002)を含むキモトプシン様セリンプロテアーゼによってインビトロで媒介される。scHGFと同様に、これらのプロテアーゼは不活性な前駆体として産生される;その酵素活性はまた他の活性化プロテアーゼ及びKunitz及びセルピン型両方の阻害剤によって堅固に調節される。
【0006】
セリンプロテアーゼとその活性化プロセスは開示されている(Donate等, 1994)。セリンプロテアーゼでは、チモーゲンの活性化切断は適切に形成された活性部位を生じるいわゆる「活性化ドメイン」と基質/阻害剤相互作用領域のコンホメーション再構成をなす。活性化ドメインは[c140]-、[c180]-及び[c220]-ループと命名された表面暴露ループと新たに形成されたN末端の疎水性ポケットへの挿入を構成する(Huber及びBode, 1978)。相同リガンド/レセプター対マクロファージ刺激タンパク質(MSP)/Ronにおいて、セリンプロテアーゼ様MSPβ鎖はレセプター結合のために主要なエネルギーを提供する(Wang等, 1997;Miller及びLeonard, 1998)。これは、Metのための高親和性レセプター結合部位がHGFα鎖中に存在しているHGF/Met系とは逆である(Lokker等, 1994;Okigaki等, 1992)。
特許出願及び公報を含むここで引用した全ての文献はその全体を出典明示により取り込む。
【0007】
(発明の開示)
肝細胞増殖因子(HGF)はプラスミノーゲン関連成長因子で、発生、組織再生及び浸潤性腫瘍成長に関係しているそのレセプターチロシンキナーゼMet(ここではc−Met又はc−metとも称する)に結合する。HGFプロテアーゼ様β鎖の成功裏の発現と精製をここに記載するが、これによりc−Met活性化のメカニズムの明確な理解をもたらすHGF、特にHGFβ鎖のc−Metとの相互作用の性質の確定的な決定が可能になった。セリンプロテアーゼ様HGFβ鎖自体がMetに結合することがここで実験的に実証された。比較すると、HGFβのチモーゲン様形態は弱いMet結合性を有しており、プロセシングの際にコンホメーション変化から最適な相互作用が生じることを示唆している。細胞遊走、Metリン酸化、HGF依存性細胞増殖及びMet結合アッセイにおいて試験されたβ鎖変異体のパネルは、完全長HGF変異体の生物学的活性の低下は少なくとも部分的にはMetへのHGFβ鎖の結合性の低下によることを示した。機能的結合部位は、セリンプロテアーゼの基質-プロセシング部位と同様に、「活性化ドメイン」と「活性部位領域」を含む。データは、活性化(しかしチモーゲン様形態ではない)β鎖が最大/最適なc−met活性化を行わしめるように他のHGFβ鎖のような他の分子との最適な相互作用に必要とされる界面を含みうることを示している。ここに記載された変異体分析は、ある範囲の能力にわたって野生型HGF/c−met相互作用を阻害可能なHGF変異体の設計のベースを提供する。そのような変異体の例をここに記載する。これらの変異体はc−metへの結合に対して野生型HGFと競合可能であるが、c−met関連の生物学的機能を行わしめる能力の低下を示す。これは、HGF/c−met軸の完全な又は実質的な阻害が望まれない場合に特に有利である;これは、HGF及びc−metが正常な細胞及び組織では偏在性に発現されるので特に関心がある。これらの変異体はまたHGF/c−metの生物学的活性が完全にないのではなく低減していることが望まれる病理的症状を治療するための好適な治療剤として使用することもできる。本発明の方法と組成物は以下に更に詳細に記載するこれらの知見に一般に基づいている。HGFβ鎖とそのc−metとの相互作用はHGF/c−met経路の異常な又は望まれないシグナル伝達に関連する病理的症状に対する予防的及び/又は治療的アプローチを設計する際に大なる微調整の独特で有利な標的となりうることが示される。よって、本発明は、c−metへのHGFβ鎖の結合の調節を通してHGF/c−mert経路を調節することができる物質を同定し使用するため、またHGF/c−metシグナル伝達に関連する生物学的/生理学的活性の調節のための方法、組成物、キット及び製造品を提供する。
【0008】
従って、一態様では、本発明は、活性化された肝細胞増殖因子β鎖に選択的に結合する物質をスクリーニング(又は同定)する方法において、(以下に更に詳細に記載するように)活性化されたHGFβ鎖に対する候補物質の結合(i)を、参照HGFβ鎖に対する候補物質の結合(ii)と比較することを含み、ここで上記参照β鎖はc−metに特異的及び/又は実質的に結合することができず;よって参照HGFβに対するよりも活性化されたHGFβ鎖に対して大なる結合親和性を示す候補物質を、活性化されたHGFβ鎖に選択的に結合する物質として選択(又は同定)する方法を提供する。ある実施態様では、参照β鎖は単鎖HGFポリペプチド内に含まれる。ある実施態様では、参照β鎖はそのN末端においてHGFα鎖のC末端領域の一部に融合しており、C末端領域の494位(野生型ヒトHGFに対応)がアルギニン以外のアミノ酸(例えばグルタミン酸)である。ある実施態様では、HGFα鎖のC末端領域の部分がヒトHGFの残基479から494のアミノ酸配列を含み、そのアミノ酸からなり又はそのアミノ酸から本質的になる。
【0009】
他の態様では、本発明は、c−met活性化を阻止する物質をスクリーニングする方法において、c−metに(必ずしも必要ではないが好ましくは特異的に)結合し、c−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を阻止する物質をスクリーニングすることを含む方法を提供する。ある実施態様では、上記物質はc−metへの結合に対してHGFβ鎖と競合する。一実施態様では、上記物質は、野生型HGF(例えばヒト)β鎖、例えばアミノ酸残基495(Val)から728(Ser)を含むヒトβ鎖(例えばここに記載された野生型HGFβ鎖)に対して少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%の配列類似性又は同一性を有するアミノ酸配列を含み、そのアミノ酸からなり又はそのアミノ酸から本質的になる。物質がそのようなアミノ酸配列を含み、そのアミノ酸からなり又はそのアミノ酸から本質的になるある実施態様では、604位及び/又は561位はシステイン以外のアミノ酸である。これらの実施態様の幾つかにおいては、物質はHGFα鎖又はその一部との結合(共有結合又は非共有結合)を実質的に形成可能ではない。
【0010】
本発明のスクリーニング(又は同定)方法のある実施態様では、該方法は、天然に生じる形態又は変異体形態のHGFβ鎖の一部又は全部を含み、それからなり又はそれから本質的になる標的抗原に対しての候補物質の結合親和性を決定することを含む。そのような標的抗原は、少なくとも一の突然変異(特に該少なくとも一の突然変異がc−Metに結合するHGFβ鎖の能力に変化を生じさせるもの)を含むHGFβ鎖アミノ酸配列を含み、それからなり又はそれから本質的になる任意のポリペプチドを含みうる。ある実施態様では、ポリペプチドは、異種性ポリペプチド配列(例えばHGFα鎖の一部又は全部)に融合したHGFβ鎖アミノ酸(野生型か少なくとも一の突然変異を含む)を含み、それからなり又はそれから本質的になる。そのようなHGFβ鎖の例には、例えばチモーゲン様HGFβ鎖(例えば494位に突然変異)、HGFβ鎖(Cys604Ser)、及び「活性部位領域」突然変異体等、ここに記載されたものが含まれる。本発明は、(活性部位領域に突然変異を含む)β鎖における一又は複数の位置、例えば534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702に突然変異を有するHGF変異体を提供する。提供される他の変異体には、それをインビトロ又はインビボで活性化(例えば切断)できなくする突然変異をHGF内の位置に有するものが含まれる;そのような変異体の一つの例は424及び/又は494位に変異を含む。
【0011】
他の態様では、本発明は、HGFのそのレセプターに対する結合(例えば第一レセプター分子へのHGFの結合、及び/又は、レセプター二量体化のために第二レセプター分子に対する、例えばα鎖及びβ鎖の一方又は双方を通してのHGFの結合)を阻止するHGFレセプターアンタゴニストをスクリーニングする方法において、HGFβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の少なくとも1、2、3、4又は任意の数から全部までに結合する物質を選択することを含む方法を提供する。二又はそれ以上の残基の組合せはHGFβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の任意のものを含みうる。一実施態様では、その物質は残基673及び695の少なくとも1つ又は双方に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基692に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基692、及び(iii)残基534及び578の少なくとも1つ又は双方に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基534、578及び692の少なくとも1つ、2つ又は全てに結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673、695及び696の少なくとも1つ、2つ又は全て、及び(ii)残基534、578、692及び694の少なくとも1つ、両方又は任意の数から全てに結合する。一実施態様では、その物質は、534、673及び/又は692に突然変異があるならば上記β鎖はまた位置578、694、695及び696の少なくとも1つ、両方又は任意の数から全てに突然変異を含むHGFβ鎖に結合する。これらの分子のある実施態様では、活性化されたβ鎖は単鎖HGFの切断によって得られるβ鎖のコンホメーションを有する;そしてこれらの実施態様の幾つかでは、上記切断は単鎖HGFの残基494及び495で又はそれに隣接しており、例えば上記切断は単鎖HGFの残基494及び495の間で生じうる。一実施態様では、物質は残基673、693、694、695及び696の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基692及び702の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基534及び578の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基513、516、619及び699の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基673、693、694、695及び696からなる第一群、残基692及び702からなる第二群、残基534及び578からなる第三群及び残基513、516、619及び699からなる第四群からなる群から選択される二以上の残基に結合する。上記二以上の残基は同じ群又は4群の任意のものの組合せから選択することができる。ある実施態様では、物質は更に残基423、424、494及び/又は495に結合する。
【0012】
当業者には明らかなように、上に記載したものと一致するスクリーニングアッセイはまた第一のセットの候補調節物質を得るために機能的読み出しに基づいてスクリーニングする第一工程と、c−metに対するHGFβの結合を調節する第一のセットの候補調節物質の能力に基づいてスクリーニングするそれに続く第二工程を含みうる。機能的読み出しは、HGF/c−metシグナル伝達経路に関連した生物学的活性の知識に基づき、当業者に明らかであろう任意のものでありうる。これらの生物学的活性には、限定するものではないが、C-metリン酸化、C-metキナーゼの基質である細胞性分子のリン酸化、細胞成長(増殖、生存等々)、血管新生、細胞遊走、細胞形態形成等々が含まれる。
【0013】
一態様では、本発明は、HGF/c−metシグナル伝達経路を破壊するHGF/c−metアンタゴニストを提供する。例えば、本発明は活性化された肝細胞増殖因子β鎖に結合し、該活性化されたHGFβ鎖のc−metに対する特異的結合を阻害する分子を提供する。一実施態様では、β鎖の活性化形態の分子の結合親和性はチモーゲン型のβ鎖に対する分子の結合親和性よりも大きい。ある実施態様では、分子はβ鎖の活性部位/ドメインに結合する。ある実施態様では、上記活性部位はβ鎖の残基534、578、673、692、694、695及び/又は696の少なくとも1、2、3、4、5、6又は全てを含む。二以上の残基の組合せはHGFβ鎖の残基534、578、673、692、694、695及び/又は696の任意のものを含みうる。ある実施態様では、HGFβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の少なくとも1、2、3、4、又は任意の数から全てまでに結合する。二以上の残基の組合せはHGFβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の任意のものを含みうる。一実施態様では、その物質は残基673及び695の少なくとも1つ又は双方に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基692に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基692、及び(iii)残基534及び578の少なくとも1つ又は双方に結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673及び695の少なくとも1つ又は双方、及び(ii)残基534、578及び692の少なくとも1つ、2つ又は全てに結合する。他の実施態様では、その物質は(i)残基673、695及び696の少なくとも1つ、2つ又は全て、及び(ii)残基534、578、692及び694の少なくとも1つ、両方又は任意の数から全てに結合する。一実施態様では、その物質は、534、673及び/又は692に突然変異があるならば上記β鎖はまた位置578、694、695及び696の少なくとも1つ、両方又は任意の数から全てに突然変異を含むHGFβ鎖に結合する。一実施態様では、物質は残基673、693、694、695及び696の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基692及び702の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基534及び578の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基513、516、619及び699の少なくとも一に結合する。一実施態様では、物質は残基673、693、694、695及び696からなる第一群、残基692及び702からなる第二群、残基534及び578からなる第三群及び残基513、516、619及び699からなる第四群からなる群から選択される二以上の残基に結合する。上記二以上の残基は同じ群又は4群の任意のものの組合せから選択することができる。ある実施態様では、物質は更に残基423、424、494及び/又は495に結合する。これらの分子のある実施態様では、活性化されたβ鎖は単鎖HGFの切断によって得られるβ鎖のコンホメーションを有する;そしてこれらの実施態様の幾つかでは、上記切断は単鎖HGFの残基494及び495で又はそれに隣接しており、例えば上記切断は単鎖HGFの残基494及び495の間で生じうる。
【0014】
ある実施態様では、物質又は分子は小分子、ペプチド、抗体、抗体断片、アプタマー又はそれらの組合せであり又はそれらを含む。
一態様では、本発明は、例えばHGF/c−met活性のアンタゴニスト又はHGF生物学的活性(例えば細胞成長刺激活性)がなくはないが減少を示すHGF変異体等、HGF/c−met調節活性を有するHGF変異体を提供する。一実施態様では、本発明のアンタゴニストは野生型(インビボ)HGFの生物学的活性(そのような生物学的活性は限定するものではないが細胞増殖の刺激、細胞生存の向上、血管新生の促進、細胞遊走の誘導/促進を含む)を阻害可能である。一実施態様では、HGF変異体は細胞成長(限定するものではないが細胞増殖、細胞生存、血管新生、細胞遊走を含む)促進活性の低下をもたらす。一実施態様では、HGF変異体はチモーゲン様HGFβ鎖(例えば494位の変異)である。例えば、これらの変異体はそれをインビトロ又はインビボで活性化(例えば切断)できなくする変異をHGF内の位置に有するものを含み;そのような変異体の一例は424及び494位に突然変異を含む。一実施態様では、HGF変異体は単鎖HGF、例えば424及び/又は494位、及び/又は残基424及び/又は494に隣接した位置に変異を含むHGFである。一実施態様では、本発明のHGF変異体は更に604位に変異を含む(例えばHGFβ鎖Cys604Ser)。一実施態様では、本発明のHGF変異体は上述したような「活性部位領域」変異体である。一実施態様では、本発明は、534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702位のように、β鎖の一又は複数の位置に変異を有する(活性部位領域における変異を含む)HGF変異体を提供する。
【0015】
ある実施態様では、活性化されたβ鎖に対する本発明の物質又は分子の結合はHGFによるc−met活性化を阻害する。ある実施態様では、活性化されたβ鎖に対する上記物質又は分子の結合はHGFによって誘導される細胞成長(例えば細胞増殖、生存、血管新生、形態形成、遊走)を阻害する。ある実施態様では、活性化されたβ鎖に対する上記物質又は分子の結合はc−metレセプターの二量体化を阻害する。
ある実施態様では、本発明の物質又は分子はここに記載した本発明のスクリーニング又は同定方法によって得られる。
ある実施態様では、本発明の物質又は分子はペプチドを含んでなる。ある実施態様では、上記ペプチドは配列VDWVCFRDLGCDWELを含む。ある実施態様では、ペプチドは配列VDWVCFRDLGCDWELと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含む。この配列の変異体は当該分野で既知の方法、例えばコンビナトリアル突然変異誘発(例えばファージディスプレイによる)によって得ることができる。そのような変異体の特定の例には、限定するものではないが以下の表1に記載されたものが含まれる。ある実施態様では、これらのペプチドはその阻害及び/又は治療効果(例えば親和性の向上、薬物動態学的性質(例えば半減期、安定性、クリアランス速度)の改善、患者に対する毒性の低減を含む)を向上させる修飾を含む。そのような修飾には、例えばグリコシル化、ペグ化、非天然発生であるが機能的に等価なアミノ酸、結合基等々での置換を含む修飾が含まれる。好適な修飾は当該分野でよく知られており、更に必要に応じて実験的に決定することができる。
【0016】

【0017】
一実施態様では、本発明はc−metへの結合に対して肝細胞増殖因子β鎖と競合する物質又は分子であるHGF/c−metアンタゴニストを提供する。実施態様のあるものでは、上記分子はc−metレセプター多量体化(例えば二量体化)を阻害する。ある実施態様では、上記分子は他のβ鎖分子と相互作用する(例えば多量体化/二量体化)能力が減少した変異体(突然変異体)β鎖を含む。ある実施態様では、上記分子はHGFβ鎖の多量体化(例えば二量体化)を阻害する。ある実施態様では、上記分子は、c−metに結合するが低下したc−met活性化能(例えば、低下したc−metリン酸化、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)リン酸化、及び/又は低下したHGF/c−met依存性細胞遊走、細胞増殖、細胞生存、細胞形態形成等)を示す。一実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は695、696及び673位の一又は複数に突然変異を含む。一実施態様では、分子は695、696及び673位の一又は複数に突然変異を、また534、578、692及び694位の一又は複数に突然変異を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になる。二以上の残基の組み合わせはHGFβ鎖の残基534、578、673、692、694、695及び696の任意のものを含みうる。一実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は残基673及び695の少なくとも一又は両方に突然変異を含む。他の実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は残基673及び695の少なくとも一又は両方と(ii)残基692に突然変異を含む。他の実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は残基673及び695の少なくとも一又は両方と(ii)残基692と(iii)残基534及び578の少なくとも一又は両方に突然変異を含む。他の実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は残基673及び695の少なくとも一又は両方と(ii)残基534、578及び692の少なくとも一、二、又は全てに突然変異を含む。他の実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は残基673、695及び696の少なくとも一、二、又は全てと(ii)残基534、578、692及び694の少なくとも一、両方又は全てまでの任意の数に突然変異を含む。一実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖は突然変異を含み、534、673及び/又は692位に突然変異があるならば上記β鎖はまた578、694、695及び696位の少なくとも1つ、両方又は任意の数から全てまでに突然変異を含む。一実施態様では、分子はHGFβ鎖の少なくとも一部を含むポリペプチドを含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記β鎖はβ鎖の一又は複数の位置、例えば534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702位に突然変異を含む(活性部位領域の変異を含む)。一実施態様では、分子はHGFの少なくとも一部を含み、それからなり、又はそれから本質的になり、ここで、上記一部は、それをインビトロ又はインビボで活性化(切断)できなくするHGF内の一又は複数の位置に変異を含む;そのような一変異体の例は424及び/又は494位に変異を含む。これらの実施態様の幾つかでは、β鎖はHGFα鎖(又はその機能的均等物)の実質的に全てに(例えばジスルフィド結合によって)結合している。ある実施態様では、β鎖はHGFα鎖配列(又はその機能的均等物)に結合していない。他の物質又は分子は本発明のスクリーニング又は同定方法によって得ることができる。ある例では、物質又は分子は、ここに提供された情報に基づいて、例えば限定するものではないがHGFβ鎖(例えばプロテアーゼ様ドメインの残基)の活性化ドメイン、活性化領域、及び/又は特定の残基(例えば残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の一又は複数)を含む機能的に重要な残基と相互作用すると予想された小分子スカフォールド又はペプチド配列に基づいて設計された出発物質又は分子の反復を修飾する産物でありうる。
【0018】
野生型対応配列に対して一又は複数の位置が変異されている本発明の任意の分子では、突然変異は対応する野生型残基の機能的効果を低減又は削除する(ある場合には増大させる)任意の形態でありうる。突然変異は、当該分野で知られている任意の好適な形態、例えば置換、挿入、付加及び/又は欠失によって得ることができる(及び/又は実験的に決定することができる)。ある実施態様では、変異は非保存的置換を含む。好適な置換には、限定されるものではないが、ここに(特に実施例に)記載されたもの、例えばアラニン及びセリンのようなアミノ酸のものが含まれる。
一態様では、分子/物質(例えばここに記載されたHGF/c−met調節物質)は細胞傷害剤のような毒素に結合している。これらの分子/物質は、例えば放射線及び/又は化学療法剤のような添加剤/促進剤と組み合わせて処方又は投与することができる。
【0019】
本発明はまたHGF/c−metシグナル伝達軸の調節不全に関連する疾患状態を調節するのに有用な方法と組成物を提供する。よって、一態様では、本発明は、患者におけるc−met活性化を調節する方法において、本発明のHGF/c−met調節分子(例えばc−metに対する野生型(天然)HGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質)を患者に投与することを含み、c−met活性化が調節される方法を提供する。一実施態様では、上記分子はHGF/c−met活性を阻害するHGF/c−metアンタゴニストである。一実施態様では、上記アンタゴニストはc−metへのHGFβ鎖の特異的結合を阻害する。一実施態様では、上記分子はHGF/c−met活性を増大させるアゴニストである。一実施態様では、上記アゴニストはc−metに対するHGFβの特異的結合を増大させ又は増大させる効果を有している。一態様では、本発明は、患者におけるc−metの活性化に関連した病理的症状を治療する方法であって、本発明のc−metアンタゴニスト(例えばc−metに対する野生型(天然)HGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質)を患者に投与することを含み、c−met活性化が調節される方法を提供する。
【0020】
HGF/c−metシグナル伝達経路は、例えば細胞成長刺激(例えば細胞増殖、細胞生存、細胞遊走、細胞形態形成)及び血管新生を含む複数の生物学的及び生理学的機能に関与している。よって、他の態様では、本発明はc−met活性化細胞成長(例えば増殖及び/又は生存)を阻害する方法であって、本発明のc−metアンタゴニスト(例えばc−metに対する野生型(天然)HGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質)に細胞又は組織を接触させることを含み、それによってc−met活性化に関連する細胞増殖が阻害される方法を提供する。更に他の態様では、本発明は、血管新生を調節する方法であって、異常な血管新生に関連する細胞、組織、及び/又は患者に本発明のc−metアンタゴニスト(例えばc−metに対する野生型(天然)HGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質)を投与することを含み、それによって血管新生が調節される方法を提供する。
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明のc−metアンタゴニストの使用を提供する。c−metアンタゴニストは、抗体、抗体断片、小分子(例えば有機分子)、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)、核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチド)、アプタマー、又はそれらの組み合わせを含むここに記載の任意の形態であり得る。
【0021】
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の核酸の使用を提供する。
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の発現ベクターの使用を提供する。
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の宿主細胞の使用を提供する。
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明の製造品の使用を提供する。
一態様では、本発明は、癌、腫瘍、細胞増殖性疾患、免疫(例えば自己免疫)疾患及び/又は血管新生関連疾患のような疾患の治療的及び/又は予防的処置のための医薬の調製における本発明のキットの使用を提供する。
【0022】
一態様では、本発明は、c−met活性化細胞増殖を阻害する方法であって、本発明の有効量のc−metアンタゴニストに細胞又は組織を接触させることを含み、それによってc−met活性化に関連する細胞増殖が阻害される方法を提供する。
一態様では、本発明は、患者におけるc−met活性化の調節不全に関連する病理症状を治療する方法であって、本発明の有効量のc−metアンタゴニストを患者に投与することを含み、それによって上記症状が治療される方法を提供する。
一態様では、本発明は、c−met又は肝細胞増殖因子又は両方を発現する細胞の成長を阻害する方法であって、本発明のc−metアンタゴニストに上記細胞を接触させることを含み、それによって上記細胞の成長の阻害を生じさせる方法を提供する。一実施態様では、細胞には異なった細胞によって(例えばパラ分泌効果によって)発現されるHGFが接触させられる。
一態様では、本発明は、c−met又は肝細胞増殖因子又は両方を発現する細胞を含む癌性腫瘍を持つ哺乳動物を治療的に処置する方法であって、本発明のc−metアンタゴニストの有効量を上記哺乳動物に投与することを含み、それによって上記哺乳動物を効果的に治療する方法を提供する。一実施態様では、細胞には異なった細胞によって(例えばパラ分泌効果によって)発現されるHGFが接触させられる。
一態様では、本発明は、c−met又は肝細胞増殖因子又は両方の発現又は活性の増加に関連した細胞増殖性疾患を治療又は予防する方法であって、本発明のc−metアンタゴニストの有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含み、それによって上記細胞性増殖疾患を効果的に治療又は防止する方法を提供する。一実施態様では、上記増殖性疾患は癌である。
【0023】
一態様では、本発明は、細胞の成長がc−met又は肝細胞増殖因子又は両方の成長増強効果に少なくとも部分的に依存する細胞の成長を阻害する方法であって、本発明のc−metアンタゴニストの有効量に上記細胞を接触させることを含み、それによって上記細胞の成長を阻害する方法を提供する。一実施態様では、細胞には異なった細胞によって(例えばパラ分泌効果によって)発現されるHGFが接触させられる。
一態様では、本発明は、腫瘍の成長がc−met又は肝細胞増殖因子又は両方の成長増強効果に少なくとも部分的に依存する患者における腫瘍を治療的に処置する方法であって、本発明のc−metアンタゴニストの有効量に上記細胞を接触させることを含み、それによって上記腫瘍を効果的に治療する方法を提供する。一実施態様では、細胞には異なった細胞によって(例えばパラ分泌効果によって)発現されるHGFが接触させられる。
本発明の方法は任意の好適な病理的状態、例えばHGF/c−metシグナル伝達経路の調節不全に関連する細胞及び/又は組織に影響を及ぼしめるために使用することができる。一実施態様では、本発明の方法において標的とされる細胞は癌細胞である。例えば、癌細胞は、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、乳頭癌細胞(例えば甲状腺)、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、中枢神経系癌細胞、骨原性肉腫細胞、腎臓癌細胞、肝細胞癌細胞、膀胱癌細胞、胃癌細胞、頭部及び首部の扁平上皮癌、メラノーマ細胞及び白血病細胞からなる群から選択されるものでありうる。一実施態様では、本発明の方法において標的とされる細胞は過剰増殖及び/又は過形成性細胞である。一実施態様では、本発明の方法において標的とされる細胞は形成異常細胞である。更に他の実施態様では、本発明の方法において標的とされる細胞は転移性細胞である。
【0024】
本発明の方法は更なる治療工程を更に含みうる。例えば、一実施態様では、方法は標的細胞及び/又は組織(例えば癌細胞)が放射線治療又は化学療法剤に暴露される工程を更に含む。
ここに記載されるように、c−met活性化は、その調節不全が多くの病理的症状に至る重要な生物学的プロセスである。従って、本発明の方法の一実施態様では、標的とされる細胞(例えば癌細胞)は、同じ組織由来の正常細胞と比較してc−metの活性化が高められるものである。一実施態様では、本発明の方法は標的細胞の死を引き起こす。例えば、本発明のアンタゴニストとの接触はc−met経路を通してシグナル伝達する細胞の無能を生じ得、それが細胞死を生じる。
c−met活性化の調節不全は、例えばHGF(c−metの同族リガンド)及び又はc−met自体の過剰発現を含む多くの細胞変化から生じうる。従って、ある実施態様では、本発明の方法は、同じ組織由来の正常細胞と比較してc−met又は肝細胞増殖因子又は両方が上記細胞(例えば癌細胞)によってより豊富に発現される細胞を標的とすることを含む。c−met発現細胞は、様々な供給源からのHGFによって、つまり自己分泌又はパラ分泌形式で調節されうる。例えば、本発明の方法の一実施態様では、標的細胞に、(例えばパラ分泌効果を介して)異なった細胞に発現される肝細胞増殖因子が接触/結合する。上記異なった細胞は同じ又は異なった組織由来でありうる。一実施態様では、標的細胞に、(例えば自己分泌効果/ループを介して)標的細胞自身によって発現されるHGFが接触/結合する。
【0025】
一態様では、本発明は、正常を越えるレベル(例えば類似の治療条件下で同様の量の野生型HGFで得られる活性レベル未満)でHGF生物学的活性を奏することができるHGF変異体を患者に投与することを含む方法であって、HGF活性が最適以下(つまり野生型より少ない)レベルで所望され、それによって所望量のHGF生物学的活性が達成される方法を提供する。一実施態様では、上記HGF変異体は534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702位の一又は複数に変異を含む。一実施態様では、上記HGF変異体は、それをインビトロ又はインビボで活性化(例えば切断)することができないようにするHGF内の変異を含む;そのような変異体の一例は424及び/又は494位に変異を含む。この方法によって治療される好適な症状には、患者におけるHGF/c−met活性の異常に/望まれない低い生理学的レベルに関連し、治療剤によって誘導されるHGF/c−met活性の量を密接に調節する必要がある任意の病理的症状が含まれる。そのような症状の例には、限定されるものではないが、創傷治癒、心肥大、心筋梗塞、肢虚血、末梢動脈疾患等々が含まれる。
本発明のc−metアンタゴニストの任意のものを本発明の方法で使用することができる。例えば、本発明の方法のある実施態様では、c−metアンタゴニストは活性化HGFβ鎖(又はその機能的均等物)を含み、それからなり又はそれから本質的になる物質又は分子であり、ある実施態様では、HGFα鎖(又はその機能的均等物)にジスルフィド結合していない。ある実施態様では、物質又は分子は、活性化HGFβ鎖(又はその機能的均等物)を含み、それからなり又はそれから本質的になる物質又は分子であり、534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702位の一又は複数(ここに記載したものの任意の組み合わせを含む)に変異を含む。ある実施態様では、活性化β鎖は(例えばジスルフィド結合によって)HGFα鎖(又はその機能的均等物)の少なくとも一部に結合している。ある実施態様では、活性化β鎖はHGFα鎖(又はその機能的均等物)の実質的に全てに(例えばジスルフィド結合によって)結合している。ある実施態様では、活性化β鎖はHGFα鎖配列(又はその機能的均等物)に結合していない。
【0026】
本発明の方法のある実施態様では、物質又は分子は、小分子、ペプチド、抗体、抗体断片、アプタマー、又はそれらの組み合わせであるか又はそれを含む。
本発明の方法のある実施態様では、c−metアンタゴニストはペプチドを含み、それからなり又はそれから本質的になる物質又は分子であり、ある実施態様では、配列VDWVCFRDLGCDWELを含み、それからなり又はそれから本質的になる。ある実施態様では、ペプチドは、配列VDWVCFRDLGCDWELと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含み、それからなり又はそれから本質的になる。一実施態様では、この配列の変異体は上の表1に示したものの任意のものである。ある実施態様では、これらのペプチドはその阻害及び/又は治療効果(例えば向上した親和性、改善された薬物動態学的性質(例えば半減期、安定性、クリアランス速度)、患者に対する低減した毒性)を向上させる修飾を含む。そのような修飾には、例えば、グリコシル化、ペグ化、非天然発生であるが機能的に等価なアミノ酸、結合基等での置換が含まれる。好適な修飾は当該分野でよく知られており、更に必要に応じて実験的に決定することができる。
ある実施態様では、本発明の方法は本発のスクリーニング及び/又は同定方法の何れかによって得られた物質又は分子を利用する。
【0027】
本発明の方法及び組成物のある実施態様では、HGF/c−metシグナル伝達を阻害する物質/分子は活性化HGFβ鎖以外の細胞性分とc−metの間の結合相互作用を実質的に妨害しない。例えば、一実施態様では、物質/分子はc−metへのHGFα鎖の結合を実質的に妨害しない。
一態様では、本発明は、本発明の一又は複数の物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)及び担体を含有する組成物を提供する。一実施態様では、担体は薬学的に許容可能である。
一態様では、本発明は本発明の物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)をコードする核酸を提供する。一実施態様では、本発明の核酸は、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)であるか又はそれを含む物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)をコードする。一実施態様では、本発明の核酸は、抗体又はその断片であるか又はそれを含む物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)をコードする。
一態様では、本発明は本発明の核酸を含むベクターを提供する。
一態様では、本発明は本発明の核酸又はベクターを含む宿主細胞を提供する。ベクターは任意のタイプであり得、例えば発現ベクターのような組換えベクターである。様々な宿主細胞の任意のものを用いることができる。一実施態様では、宿主細胞が原核細胞、例えば大腸菌である。一実施態様では、宿主細胞は真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物細胞である。
【0028】
一態様では、本発明は、本発明の物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を製造する方法を提供する。例えば、本発明は、抗体(又はその断片)であるか又はそれを含むc−metアンタゴニストを製造する方法であって、上記抗体(又はその断片)をコードしている本発明の組換えベクターを適切な宿主細胞において発現させ、上記抗体を回収することを含む方法を提供する。他の例では、本発明は、ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)であるか又はそれを含む物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を製造する方法であって、上記ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)をコードしている本発明の組換えベクターを適切な宿主細胞において発現させ、上記ポリペプチド(例えばオリゴペプチド)を回収することを含む方法を提供する。
他の態様では、本発明は、容器;及び容器内に収容される組成物を含む製造品を提供し、ここでその組成物は本発明の一又は複数の物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を含む。一実施態様では、組成物は本発明の核酸を含む。一実施態様では、物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を含む組成物は、ある実施態様では薬学的に許容可能である担体を更に含有する。一実施態様では、本発明の製造品は患者に組成物(例えばアンタゴニスト)を投与するための指示書(インストラクション)を更に含む。
一態様では、本発明は、本発明の一又は複数の物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を含有する組成物を収容する第一容器と;バッファー(緩衝液)を収容する第二容器を具備するキットを提供する。一実施態様では、バッファーは薬学的に許容可能である。一実施態様では、物質/分子(例えばHGF/c−metアンタゴニスト)を含む組成物は、ある実施態様では薬学的に許容可能である担体を更に含有する。一実施態様では、キットは患者に組成物(例えばアンタゴニスト)を投与するための指示書(インストラクション)を更に含む。
【0029】
(発明を実施するための形態)
本発明はHGF/c−metシグナル伝達経路の阻害剤(特にc−metへのHGFβ鎖の結合の阻害剤)を同定するための方法、組成物、キット及び製造品、並びにそのような阻害剤の使用方法を提供する。
これらの方法、組成物、キット及び製造品の詳細をここに提供する。
【0030】
一般的方法
本発明の実施には、別段の記載がない限り、当業者の技量の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の一般的な技術を使用する。かかる技術は、例えば“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2版 (Sambrook等, 1989); “Oligonucleotide Synthesis” (M. J. Gait, ed., 1984); “Animal Cell Culture” (R. I. Freshney編, 1987); “Methods in Enzymology” (Academic Press, Inc.); “Current Protocols in Molecular Biology” (F. M. Ausubel等編, 1987,及び定期的に最新のもの); “PCR: The Polymerase Chain Reaction”, (Mullis等編, 1994); “A Practical Guide to Molecular Cloning” (Perbal Bernard V., 1988)のような文献に十分に記載されている。
【0031】
定義
ペプチド(例えばVDWVCFRDLGCDWEL)又はポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定のペプチド又はポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表Aに提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウスサンフランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、下記の図8に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0032】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なると認識されるであろう。
特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直ぐ上の段落に記載されるようにして得られる。
【0033】



























【0034】
ここで使用される「ベクター」という用語は、その他の核酸を、それが連結している場所へ輸送することのできる核酸分子を指す。一つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、付加的なDNAセグメントをライゲーションすることができる環状二重鎖DNAループを指す。他のタイプのベクターはファージベクターである。その他の型のベクターはウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムへライゲーションすることができる。所定のベクターは、それらが導入された宿主内において自己複製することができる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入によって宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主ゲノムと共に複製される。更に、所定のベクターは、それらが作用可能に連結している遺伝子の発現を方向づける。このようなベクターは、ここでは、「組換え発現ベクター」(あるいは単に「組換えベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技術で利用する発現ベクターは、しばしばプラスミドの形をとる。本明細書では、プラスミドが最も広く使用されているベクターの形態であるので、「プラスミド」及び「ベクター」は相互交換可能に使用することができる。
【0035】
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に、例えば標識との結合により、さらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤を含むもの(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体支持体に結合していてもよい。5'及び3'末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有するアミン又は有機キャップ基部分で置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み、これらには例えば2'-O-メチル-、2'-O-アリル、2'-フルオロ又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスファートがP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、「(O)NR(「アミダート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR'は独立して、H又は、エーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0036】
ここで使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
ここで用いられる「肝細胞増殖因子」又は「HGF」という用語は、特に又は文脈的に別段の記載をしない限り、HGF/c−metシグナル伝達経路を、そのようなプロセスが生じることを可能にする条件下で活性化させることができる任意の天然又は変異体(天然であろうと合成であろうと)HGFポリペプチドを意味する。「野生型HGF」という用語は一般に天然に生じるHGFタンパク質のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。「野生型HGF配列」という用語は一般に天然に生じるHGFに見出されるアミノ酸配列を意味する。
「活性化HGFβ鎖」又はその変異は、単鎖形態から2-鎖形態(つまりα及びβ鎖)への野生型HGFタンパク質の変換時に野生型HGFβ鎖によって採られるコンホメーションを有する任意のHGFβ鎖を意味し、上記変換は野生型HGFタンパク質の残基494と残基495の間の切断から少なくとも部分的に生じる。ある実施態様では、上記コンホメーションはβ鎖中のプロテアーゼ様ドメインの活性化ドメインのコンホメーションを特に意味する。ある実施態様では、上記コンホメーションは更に特定的にはβ鎖のプロテアーゼ様ドメインの活性部位領域のコンホメーションを意味する。一般に、上記コンホメーションの採用はここに記載されたように、c−met結合部位を明らかにする。
【0037】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換性をもって使用され、モノクローナル抗体(全長又は無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りにおいての二重特異性抗体)を含み、またある種の抗体断片(ここに更に詳細に記載)を含みうる。抗体はヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟でありうる。
「抗体断片」は、無傷の抗体に存在するときその部分に通常は不随する機能の少なくとも一つ、好ましくは殆ど又は全てを好ましくは保持している無傷の抗体の一部のみを含む。一実施態様では、抗体断片は無傷の抗体の抗原結合部位を含み、よって抗原に結合する能力を保持している。他の実施態様では、抗体断片、例えばFc領域を含むものは、無傷の抗体に存在するときFc領域に通常は不随する生物学的機能の少なくとも一つ、例えばFcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能及び補体結合を保持する。一実施態様では、抗体断片は、無傷の抗体に実質的に同様なインビボ半減期を有している一価抗体である。例えば、そのような抗体断片は断片にインビボ安定性を付与することができるFc配列に結合した抗原結合アームを含みうる。
ここで用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、即ち、集団を構成する個々の抗体が少量で存在する自然に起こりうる突然変異以外は同一であるものを意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。更に、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0038】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種から誘導された又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限りにおいてそれらの抗体の断片である「キメラ」抗体を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 [1984])。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの高頻度可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性及び容量を持つマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域に由来する残基で置換されている。幾つかの場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(FR)領域残基が対応する非ヒト残基で置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、ドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体の性能を更に精密にするために施される。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループの全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むであろう。更なる詳細については、Jones等, Nature 321: 522 -525 (1986);Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. struct. Biol. 2: 593 -596 (1992)を参照のこと。また次の概説論文とそこに引用されている文献を参照のこと:Vaswani及びHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995);Hurle及びGross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)。
【0039】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のものに相当する、及び/又はここに開示されたヒト抗体を製造する何れかの技術を使用して製造されたアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除く。
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較し、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめるその一又は複数のCDRsにおいて一又は複数の変化を有する抗体である。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はピコモルでさえの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該分野において知られている方法によって生産される。Marks等. Bio/Technology, 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載している。CDR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91: 3809-3813(1994);Schier 等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol., 155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol., 154(7):3310-9(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol., 226:889-896(1992)に記載されている。
「阻止」抗体又は「アンタゴニスト」抗体はそれが結合する抗原の生物学的活性を阻害又は低減させるものである(例えば活性化HGFβが結合するc−met上の活性化HGFβ鎖又は部位/エピトープ)。好適な阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は抗原の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。
ここで使用される「アゴニスト抗体」は、対象のポリペプチドの機能的活性の少なくとも一を模倣する抗体である(例えば抗体は活性化HGFβ鎖のc−met活性化機能の少なくとも一つを提供しうる)。
【0040】
「疾患」は本発明の物質/分子又は方法で治療することで恩恵を得るあらゆる症状のことである。これには、問題の疾患に哺乳動物を罹患させる素因になる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は病気が含まれる。ここで治療される疾患の非限定的な例は、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ悪性腫瘍;ニューロン、神経膠、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、ストロマ及び割腔の疾患;及び炎症、免疫性及び他の血管新生関連疾患が含まれる。
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。「癌」、「癌性」、「癌増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」という用語はここで意味するように互いに排除するものではない。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平癌腫、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝癌及び頭部及び頸部の癌の様々なタイプが含まれる。
【0041】
ここで使用される「治療」とは、治療されている個体又は細胞の自然の過程を変えることを試みる臨床的介入を意味し、予防か又は臨床的病理の過程の何れかで実施され得る。治療の所望の効果には、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、疾患のあらゆる直接的又は間接的病理的結果の消失、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の寛解(amelioration)又は緩和、及び寛解(remission)又は改善された予後が含まれる。ある実施態様では、本発明の抗体は疾患又は障害の発生を遅延させるために使用される。
「有効量」は、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な用量及び時間での有効な量を意味する。
本発明の物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療的有効量」は、
「治療的有効量」という用語は、疾患状態、年齢、性別、及び個体の体重、及び個体において所望の応答を生じさせるための物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力のような因子に応じて変化しうる。治療的有効量はまた物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストのあらゆる毒性又は有害な作用に治療的に恩恵のある効果が優るものである。「予防的に有効な量」は所望の予防結果を達成するのに必要な用量及び時間での有効量を意味する。典型的には、必ずしも必要ではないが、予防的用量は疾患の前又は疾患の初期段階で患者に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0042】
ここで用いられる「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞毒性剤が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0043】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商品名))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトセシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;クロランブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレアス(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETMパクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン(capecitabine);及び上述したものの薬学的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0044】
また上記の「化学療法剤」の定義に含まれるものには、腫瘍にホルモン作用を調節又は阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)であり、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTONトレミフェン;副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に付着細胞の増殖に結びつくシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-α、Ralf、及びH-Ras;リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;遺伝子治療ワクチン等のワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;及び上記のものの製薬的に許容される塩類、酸類又は誘導体を含む。
【0045】
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、成長がインビトロ又はインビボの何れかでHGF/c−met活性化に依存する細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、成長阻害剤は、S期にHGF/c−met依存性細胞の割合を有意に減少させるものでありうる。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤が含まれる。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。G1を停止させる薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題"Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs" Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標), Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
【0046】
ベクター構築
ここに記載されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を用いて得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は適切な供給源細胞から単離し配列決定することができる。抗体に対する供給源細胞はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞を含む。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチドシンセサイザー又はPCR技術を用いて合成することができる。一度入手したら、免疫グロブリンをコードする配列を宿主細胞において異種ポリヌクレオチドを複製し発現することができる組換えベクター中に挿入する。本発明の目的のために入手でき当該分野で知られている多数のベクターが使用できる。適当なベクターの選択は主としてベクターに挿入される核酸の大きさ及びベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、又は双方)とそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて様々な成分を含む。一般に、ベクター成分には、限定されるものではないが、複製開始点(特にベクターが原核細胞に挿入される場合)、選抜マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入片及び転写終結配列が含まれる。
【0047】
一般に、レプリコン及び宿主細胞と適合する種由来の制御配列を含むプラスミドベクターをこれらの宿主と共に用いる。通常、ベクターは複製部位、並びに形質転換細胞における表現型選択を提供し得るマーカー配列を有する。例えば、大腸菌は典型的には大腸菌種由来のプラスミドのpBR322を用いて形質転換する。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含み、従って、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、又は他の微生物のプラスミド又はバクテリオファージはまた内因性タンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含んでもよく、または含むよう改変してもよい。
また、レプリコンと宿主微生物と適合する制御配列とを含むファージベクターを形質転換ベクターとしてこれらの宿主と共に用いてもよい。例えば、λGEM.TM.-11などのバクテリオファージを組換えベクターの作製に利用してもよく、これを用いて大腸菌LE392などの感受性宿主細胞を形質転換することができる。
【0048】
当業者が確認できる特定の状況の必要性に従って、構成又は誘導プロモーターの何れかを本発明で使用することができる。種々の可能性ある宿主細胞によって認識される多数のプロモーターがよく知られている。制限酵素消化によって供給源DNA由来のプロモーターを除去し、単離したプロモーター配列を選択したベクターに挿入することで、選択したプロモーターをここに記載のポリペプチドをコードするシストロンDNAに機能しうる形で連結させることができる。天然のプロモーター配列と多数の異種プロモーターの双方を用いて標的遺伝子の増幅及び/又は発現に向けることができる。しかしながら、異種プロモーターが好ましく、これはそれらが一般に天然の標的ポリペプチドプロモーターと比べ、より大なる転写と高い収量の発現標的遺伝子を可能にするからである。
原核生物宿主との使用に適したプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかしながら、細菌において機能的な他のプロモーター(例えば、他の既知のバクテリア又はファージプロモーター)も同様に適している。そのヌクレオチド配列は公開されているので、当業者は、リンカー又はアダプターを用いてそれらを標的の軽鎖及び重鎖をコードするシストロンと連結させて任意の必要な制限部位を供給することができる(例えば、Siebenlist等, (1980) Cell, 20:269を参照)。
【0049】
ある実施態様では、組換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの膜を越えての移行を指示する分泌シグナル配列要素を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分であってよく、又はベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドの本来のシグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物の宿主細胞に対しては、シグナル配列を例えば、アルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物のシグナル配列で置換する。
ポリペプチドを発現させるのに好適な原核生物の宿主細胞としては、グラム陰性又はグラム陽性生物などの古細菌及び真正細菌が挙げられる。有用な細菌の例としてはエシェリキア属(例えば、大腸菌)、桿菌(例えば、枯草菌)、腸内細菌、シュードモナス種(例えば、緑膿菌)、ネズミチフス菌、セラチア・マルセスカンス、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌属、根粒菌、ビトレオスシラ(Vitreoscilla)、又はパラコッカス(Paracoccus)が挙げられる。好ましくは、グラム陰性細胞が使用される。好ましくは、宿主細胞は最少量のタンパク分解性酵素を分泌すべきであり、更なるプロテアーゼ阻害剤は細胞培養物中に望ましくは導入してもよい。
【0050】
ポリペプチド産生
宿主細胞を上述した発現ベクターで形質転換又は形質移入して誘導プロモーター用に適切に改変した一般的な栄養培地で培養し、形質転換体を選抜し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅する。
形質移入は、コード配列が実際に発現されようとされまいと、宿主細胞による発現ベクターの取り上げを意味する。数多くの形質移入法が当業者に知られており、例えばCaPO沈殿法及びエレクトロポレーションである。成功裏の形質移入は、一般に、このベクターの作用の任意の指標が宿主細胞内で生じる場合に認識される。
形質転換とはDNAが染色体外要素としてか又は染色体成分によってのいずれかで複製可能であるようにDNAを原核生物の宿主に導入することを意味する。形質転換は、用いる宿主細胞に応じて、かかる細胞に適当な標準的な技術を用いて行う。一般に、かなりの細胞壁障壁を含む細菌細胞には塩化カルシウムを用いるカルシウム処理を用いる。他の形質転換法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。用いられる更に別の技術はエレクトロポレーションである。
本発明のポリペプチドを生産するために用いられる原核細胞は、当該分野で既知で選択した宿主細胞の培養に好適な培地中で増殖させる。好適な培地の例としては必要な栄養素を補填したルリア・ブロス(LB)が挙げられる。好ましい実施形態では、発現ベクターを含有する原核細胞の増殖を選択的に可能にするために培地はまた発現ベクターの構成を基に選択した選択剤も含んでもよい。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖のためには、アンピシリンを培地に加える。
【0051】
炭素、窒素、及び無機リン酸供給源の他に、任意の必要なサプリメントも適当な濃度で単独で又は他のサプリメントもしくは窒素錯体供給源などの培地との混合物として取り入れて含めてもよい。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリスリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含んでもよい。
原核宿主細胞を好適な温度で培養する。大腸菌増殖には、例えば、好ましい温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃にわたり、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に依存して、約5から約9の範囲の任意のpHであってもよい。大腸菌には、pHは好ましくは約6.8から約7.4であり、より好ましくは約7.0である。
発現ベクターに誘導プロモーターを用いる場合には、タンパク質発現はプロモーターの活性化に好適な条件下で誘導される。例えば、転写の制御にPhoAプロモーターを用いる場合、形質転換された宿主細胞は誘導のためにリン酸制限培地で培養されうる。用いられるベクター構築物によっては、当該分野で周知のように、種々の他の誘導物質を用いてもよい。
【0052】
ここに記載したポリペプチドは宿主細胞のペリプラズムに分泌されそこから回収される。タンパク質回収は典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理又は溶解といった手段による微生物の破壊を伴う。細胞を破壊したら、細胞細片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって取り除くことができる。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによって更に精製してもよい。あるいは、タンパク質が培養培地に移行され、そこで単離する場合もある。細胞は産生されたタンパク質の更なる精製のために、細胞を培養物から取り除き、培養物上清を濾過し、濃縮することができる。発現されたポリペプチドは更に単離され、一般的に既知の方法、例えば免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEでのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;セファデックスG-75を使用するゲル濾過;マトリックスに固定した適切な抗原を使用するリガンドアフィニティ、疎水性アフィニティー樹脂及びウェスタンブロットアッセイを使用して更に単離、同定することができる。
原核宿主細胞の他に、真核宿主細胞系もまた当該分野で十分に確立されている。好適な宿主には哺乳動物細胞株、例えばCHO、及び昆虫細胞、例えば以下に記載のものが含まれる。
【0053】
ポリペプチド精製
生産されたポリペプチドを精製して、更なるアッセイ及び使用のために実質的に均質な調製物を得ることができる。当該分野で周知の標準的なタンパク質精製法を用いることができる。以下の手順は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどのカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及び例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過。
【0054】
発明の方法
本発明は、活性化HGFβが結合c−metに直接結合可能であり、そのような結合が適切な物質又は分子で阻害することができるという知見に基づいて様々な方法を提供する。
(ペプチド等を含む)様々な物質又は分子を治療剤として用いることができる。これらの物質又は分子を薬学的に有用な組成物を調製するために既知の方法に従って製剤することができ、その生成物は薬学的に許容可能な担体ビヒクルと混合されて組み合わされる。所望の純度を有する活性成分を、任意成分の生理学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、保存用の治療製剤が調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版、Osol, A.編(1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及びその他有機塩などのバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含むその他炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩類形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTM、又はPEGを含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に滅菌濾過膜を通した濾過によって即座に達成される。
【0055】
ここでの治療用組成物は一般に滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針による貫通可能なストッパーを持つ静脈内溶液バッグ又はバイアル中に配される。
投与経路は既知の方法、例えば静脈内注射又は注入、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼球内、動脈内又は病巣内経路、局所投与、又は徐放系による。
本発明の薬学的組成物の用量及び所望の薬剤濃度は、想定する特定の使用によって変化しうる。適当な用量の測定又は投与の経路は、一般的な医師の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効な用量の決定のための信頼性のある手引きとなる。有効な用量の異種間スケーリングは、Mordenti, J. 及び Chappell, W. "The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics", In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi等, 編集, Pergamon Press, New York 1989, pp.42-46に記載の原理に従って実施することができる。
本発明の物質又は分子のインビボ投与が用いられるとき、正常な用量は投与経路によって、一日当たり約10ng/kg哺乳動物体重から約100mg/kg哺乳動物体重又はそれより多く、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日と変わりうる。特定の用量及び運搬の方法に関する手引きは、文献に示される;例えば、米国特許第4657760号;第5206344号;又は第5225212号を参照。異なる製剤が異なる処置及び異なる疾患のために効果的であり、特定の器官又は組織を治療することを目的とする投与は他の器官又は組織への投与と異なる方法で送達する必要があることは予想される。
【0056】
物質又は分子の投与を必要とする疾患又は障害の治療に好適な放出特性を有する製剤で物質又は分子の徐放投与が望ましい場合、物質又は分子のマイクロカプセル化が考えられる。除放のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMNrgp120を用いて成功裏に行われている。Johnson等, Nat. Med. 2: 795-799 (1996);Yasuda等, Biomed. Ther. 27: 1221-1223 (1993);Hora等, Bio/Technology 8: 755-758 (1990);Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems", in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell及びNewman編 (Plenum Press: New York, 1995), pp. 439-462;WO97/03692;WO96/40072;WO96/07399;及び米国特許第5654010号。
これらのタンパク質の徐放製剤は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座に排除される。更に、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, "Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer": M. Chasin及び R. Langer (編), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp1-41。
【0057】
本発明はHGFβ鎖及びc−metの相互作用を妨害することによってHGF/c−metシグナル伝達を阻害するものを同定するために化合物をスクリーニングする方法を包含する。スクリーニングアッセイは、活性化(及び好ましくはチモーゲン様ではない)HGFβ鎖及び/又はc−met(c−metへの活性化HGFβ鎖の結合を阻害するc−met上の部位)に結合し又はこれと複合体を形成し、又は他の細胞性タンパク質との活性化HGFβ鎖の相互作用を妨害する化合物を同定するために設計される。そのようなスクリーニング法には、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングに受け入れられるアッセイが含まれ、それらを小分子薬剤候補を同定するのに特に好適にする。
アッセイは、当該分野で良好に特徴付けられているタンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、及び細胞ベースアッセイを含む様々な形式で実施することができる。
アンタゴニストのための全てのアッセイは、薬剤候補を、活性化HGFβ鎖とc−metの結合相互作用に関与するHGFβ鎖(又はその均等物)及び/又はc−met上の部位に、これらの二つの成分が相互作用するのに十分な条件と時間、接触させることを要求する点で共通する。
【0058】
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特定の実施態様では、候補物質又は分子が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面を物質/分子の溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべき物質/分子に特異的な固定化親和性分子、例えばモノクローナル抗体のような抗体を固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。元々の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0059】
候補化合物が活性化HGFβ鎖又はc−metと相互作用するが結合しない場合、そのポリペプチドとのその相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。更に、タンパク質-タンパク質相互作用は、Chevray及びNathans Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5789-5793 (1991)に開示されているようにして、Fields及び共同研究者等[Fields及びSong, Nature (London), 340: 245-246 (1989); Chien等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 9578-9582 (1991)]に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることによりモニターすることができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。前述の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKERTM)は、クローンテックから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に関与するタンパク質ドメインのマッピング、並びにこれらの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にもまた拡張することができる。
【0060】
活性化HGFβ鎖とc−metの相互作用を阻害する化合物は次のようにして試験することができる:通常は、活性化HGFβ鎖とc−met(又はc−met上に同族活性化HGFβ鎖結合部位を含むその均等物)を含む反応混合物を、2つの生成物が相互作用し結合するを許容する条件と時間にわたって調製する。試験化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物有り又は無しで実施する。更に、第3の反応混合物にプラシーボを添加してポジティブコントロールとしてもよい。混合物中に存在する試験化合物と活性化HGFβ鎖及び/又はc−met(又は上述したようなその均等物)との結合(複合体形成)は上記のようにしてモニターする。コントロール反応において複合体が形成され、試験化合物を含む反応混合物では形成されないことは、試験化合物が活性化HGFβ鎖とc−metの相互作用を妨害することを示す。
阻害剤(例えばアンタゴニスト)をアッセイするために、活性化HGFβ鎖を含む2-鎖HGFを、特定の活性についてスクリーニングされる化合物と共に細胞に添加することができ、2-鎖HGFの存在下での興味ある活性を阻害する化合物の能力が、その化合物が活性化HGFβ鎖に対するアンタゴニストでありうることを示唆しており、この性質は、活性化HGFβ鎖と結合し又は特異的に相互作用するがHGFα鎖(例えば2-鎖HGF又は単鎖HGFに見出される)とはしないその能力を決定することにより更に確認することができる。
【0061】
潜在的なアンタゴニストのより特定の例には、活性化HGFβ鎖及び/又はc−met上のその結合部位に結合する(アプタマーであってもよい)オリゴヌクレオチド、特に、限定するものではないが、ポリ及びモノクローナル抗体及び抗体断片、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、及びそのような抗体又は断片のキメラ又はヒト化型、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体が含まれる。あるいは、潜在的なアンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えばHGFβ鎖結合対を認識するが効果を付与せず、よって野生型HGFβ鎖の作用を競合的に阻害するHGFβ鎖の変異型でありうる。
潜在的なアンタゴニストには、HGFβ鎖の活性部位、c−met上の活性化HGFβ鎖の結合部位、又は活性化されたHGFβ鎖の他の関連した結合部位に結合し、活性化されたHGFβ鎖の正常な生物学的活性をブロックする小分子が含まれる。小分子の例には、限定されるものではないが、小ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶型ペプチド、及び合成非ペプチジル有機又は無機化合物が含まれる。
これらの小分子は上で検討したスクリーニング法の任意の一又は複数及び/又は当業者によく知られた任意の他のスクリーニング方法によって同定することができる。
【0062】
ここに記載されているように、本発明の物質/分子はペプチドでありうる。そのようなペプチドを得る方法は当該分野でよく知られており、好適な標的抗原へのバインダーのペプチドライブラリーのスクリーニングを含む。一実施態様では、好適な標的抗原はここに詳細に記載する活性化HGFβ鎖(又はc−metの結合部位を含むその部分)を含む。例えば、好適な標的抗原はここに記載したような活性化HGFβ鎖、又は2-鎖HGFポリペプチド(ここに記載したように活性化HGFβ鎖成分を含む)である。ある例では、所望の物質/分子が活性化HGFβ鎖に有意な程度で結合するがHGFα鎖及び/又はチモーゲン型HGFβ鎖には結合しないものである場合、候補バインダーはまたチモーゲン型のHGFβ鎖(つまり未活性化HGFβ鎖)(例えば単鎖HGFに対して)に対しての実質的な結合能を欠いていることでスクリーニングできる。ペプチドのライブラリーは当該分野でよく知られており、周知の方法に従って調製することもまたできる。例えばClark等の米国特許第6121416号を参照のこと。ファージコートタンパク質のような異種タンパク質成分に融合したペプチドのライブラリーは当該分野でよく知られており、例えば上掲のClark等に記載されている。一実施態様では、c−metに対する活性化HGFβ鎖の結合を阻止する能力を有するペプチドはアミノ酸配列VDWVCFRDLGCDWEL又はその変異体を含む。第一のペプチドバインダーの変異体は興味ある特性(例えば標的結合親和性の向上、薬物動態学の向上、毒性の低下、治療指標の改善等々)を得るためにペプチドの変異体をスクリーニングすることにより産生することができる。突然変異誘発法は当該分野でよく知られている。更に、走査突然変異誘発法(例えばアラニンスキャニングに基づくもの)はペプチド内の個々のアミノ酸残基の構造的及び/又は機能的重要性を評価するのに特に役に立ちうる。
【0063】
本発明の候補物質/分子、例えばアミノ酸配列VDWVCFRDLGCDWEL又はその変異体を含むペプチドの、HGF/c−metシグナル伝達及び/又は該シグナル伝達に関連する生物学的活性を調節する能力の定量は、当該分野において十分に確立されており、例えば上掲のOkigaki等;上掲のMatsumoto等;Date等, FEBS Let. (1997), 420:1-6;上掲のLokker等;上掲のHartmann等に記載されているような、インビトロ又はインビボアッセイにおいて物質/分子の調節能力を試験することによって実施することができる。
【0064】
抗活性化HGFβ鎖抗体
本発明は、更に抗活性化HGFβ鎖抗体の使用を含む方法を提供する。抗体の例には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロコンジュゲート抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗活性化HGFβ鎖抗体はポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫剤と、所望されればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫剤は、活性化HGFβ鎖(又はその一部)又はその融合タンパク質を含みうる。免疫剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0065】
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗活性化HGFβ鎖抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫剤により免疫化することで、免疫剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫剤は、典型的には活性化HGFβ鎖(又はその一部)又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。ついで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0066】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、活性化HGFβ鎖に対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード解析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[上掲のGoding]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
【0067】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4816567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質をさもなければ生成しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[上掲の米国特許第4816567号;Morrison等]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
【0068】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製には、またインビトロ法が適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成することができる。
抗体は活性化HGFβ鎖(又は均等物)に適切な/所望の親和性をもって結合する抗体又は抗体断片についてファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによってまた産生させることができる。そのような技術は、例えば米国特許第5750373号;第5780279号;第5821047号;第6040136号;第5427908号;第5580717号及びその中の文献に開示されているように、当該分野でよく知られている。
【0069】
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗活性化HGFβ鎖抗体は、更にヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖或いはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは殆ど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは殆ど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0070】
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリー[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77 (1985); Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;同第5661016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
また、抗体は、上記に記載のような既知の選択及び/又は突然変異誘発法を利用して親和的に成熟している。好ましい親和性成熟抗体は、5倍、より好ましくは10倍、更により好ましくは20又は30倍も成熟抗体の調製の元である出発抗体(一般的には、マウス、ヒト化又はヒト)より高い親和性を有する。
【0071】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合、結合特異性の一方は活性化HGFβ鎖及び/又はc−metのHGFβ鎖結合部位に対するものであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してであり得る。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内の一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0072】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
WO96/27011に記載された他の方法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0073】
二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'断片を直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0074】
また、組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な方法が既知である。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させた。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60 (1991)。
例示的な二重特異性抗体は、活性化HGFβ鎖上の二つの異なるエピトープ又は活性化HGFβ鎖上のエピトープ及び他のポリペプチド上のエピトープ(例えばc−met又はHGFα鎖)に結合しうる。
【0075】
5.ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、二つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4676980号]及びHIV感染の治療のために[WO91/00360;WO92/200373;EP03089]提案されている。これら抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0076】
6.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌の治療における抗体の効能を向上させることが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体-依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、二つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0077】
7.免疫コンジュゲート
また、本発明は、化学治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞毒性薬と抱合している抗体、あるいは放射性同位体(つまり、放射性コンジュゲート)を含む免疫複合体に関する。
このような免疫複合体の生成に有用な化学治療薬は上に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが含まれる。抗体及び細胞毒性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。WO94/11026を参照のこと。
他の実施形態では、腫瘍の予備標的化に使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に抱合されてもよく、抗体-レセプター結合体が患者に投与され、ついで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞毒性薬(例えば、放射性ヌクレオチド等)に抱合された「リガンド」(アビジン等)を投与する。
【0078】
8.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang等, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);及び米国特許第4485045号及び第4544545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学治療薬(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
【0079】
9.抗体の薬学的組成物
ここに開示したスクリーニングアッセイで同定された抗体並びに他の分子は、様々な疾患の治療のために、薬学的組成物の形態で投与することができる。
全抗体が阻害剤として使用される場合、内部移行抗体が好ましい。しかし、また、リポフェクション又はリポソームを使用して、それが所望される細胞中に本発明の物質/分子を送達することができる。抗体断片が使用される場合、最小の阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、活性化HGFβ鎖及び/又はc−met上のHGFβ鎖結合部位に結合し、及び/又は活性化HGFβ鎖とc−metの間の相互作用を妨害する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは化学的に合成し、及び/又は組換えDNA技術により生産することができる。Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7889-7893 (1993)を参照のこと。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に一つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、その機能を向上させる薬剤、例えば細胞毒性薬、サイトカイン又は成長阻害剤を含んでもよい。そのような分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性分子は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセルに、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0080】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフィア)等の分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-(-)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に亘って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
次は本発明の方法及び組成物の例である。上に与えた一般的な記載に照らして、様々な他の実施態様を実施することができることが理解される。
【実施例】
【0081】
材料と方法
材料
C末端Hisタグを含むMet ECD(Glu25からGln929)ドメインの成熟形態を、以下に記載の標準的なプロトコールを使用して、昆虫細胞において発現させ、Ni-NTA金属キレート及びゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した。Met-IgG融合タンパク質を過去に記載されているようにして得た(Mark等, 1992)。
HGFβタンパク質の発現と精製
培地中への生成物の分泌のためのシグナル配列を含むバキュロウイルス分泌ベクターpAcGP67(BD Biosciences, Pharmingen, San Diego, CA)を使用して昆虫細胞においてHGFβ鎖を発現させた。全ての構築物はカルボキシ末端にHisタグを含んでおり、Ni NTA金属キレート及びゲル濾過クロマトグラフィーによって均一になるまで(>95%純度)精製した。野生型HGFβに対して、残基Val495[c16]からSer728[c250]のHGFβ鎖をコードするcDNA断片をPCRによってクローニングして、Val495[c16]を分泌シグナル配列の直後に挿入した。部位特異的突然変異誘発を、オリゴヌクレオチド5’CCTAATTATGGATCCACAATTCCTG3’でQuikChangeTM(Stratagene, La Jolla, CA)を使用して実施し、プロテアーゼ様ドメインにおける暴露された不対Cysの潜在的な複雑化を避けるためにCys604[c128]からSer変異(HGFβ)を含むHGFβを作成した。HGFβ変異体Y513A[c36]、R516A[c39]、Q534A[c57]、D578A[c102]、Y619A[c143]、Y673A[c195]、V692A[c214]、P693D[c215]、G694E[c216]、R695A[c217]、G696A[c219]、I699A[c221a]及びR702A[c224]を(C604S変異を有する)HGFβ構築物中において上述のようにして作成した。HGFβ変異体C561S[c78](つまり、C561S:C604S)をまた遊離のシステインを削除するためにHGFβ構築物中において上述のようにして作成した。プロHGFβは残基Asn479からSer728のHGFをコードし、オリゴヌクレオチド5’CAAAACGAAACAATTGGAAGTTGTAAATGGGATTC3’を使用して作成したR494E変異を有する。システインはCys487とCys604の間において推定ジスルフィド形成を可能にするためにこの構築物では変更しなかった。アミノ酸位置の番号付けは次の通りである:全長HGF配列[キモトリプシノーゲン番号付け]。
【0082】
所望の挿入断片を含むバキュロウイルスベクターを、製造者(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)の指示書に従ってBaculogoldTM発現系を介してTNM-FH培地中プレート上のSpodoptera・frugiperda(Sf9)細胞中に形質移入した。2−4回のウイルス増殖後、10mlのウイルス原液を用いてTNM-FH培地中5x10細胞/mlの懸濁液中で1lのHigh・FiveTM細胞(Invitrogen, San Diego, CA)を感染させた。培養を72時間27℃でインキュベートした後、8000xgでの15分の遠心分離によって培養培地を収集した。細胞培養培地を4mlのNi-NTAアガロースカラム(Qiagen, Valencia, CA)に適用した。4カラム容量の50mMのTris・HCl,pH8.0、500mMのNaCl、5mMのイミダゾールで洗浄した後、HGFβタンパク質を、50mMのTris・HCl、pH8.0、500mMのNaCl、500mMのイミダゾールで溶出させた。溶出物をプールし、10mMのHEPES、pH7.2、150mMのNaCl、5mMのCaClで平衡化したSuperdexTM-200カラム(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)にかけた。タンパク質ピークを収集し、CentriprepTMYM-10(Millipore, Bedford, MA)を使用して濃縮した。画分をクーマシーブルーで染色した12%のSDS-PAGEによって分析した。全ての変異をDNA配列決定及び質量分析によって証明した。タンパク質濃度は定量アミノ酸分析によって決定した。N末端の配列決定により、プロHGFβ及びHGFβに対して存在している単一の正しいN末端が明らかになった。精製したタンパク質は、SDS-PAGEで正しい分子量を示した;観察された複数のバンドは異種グリコシル化によるものと思われ、配列から予想されたものよりも〜2kDa高い分子量を有する質量分析と一致している。
【0083】
全長HGFタンパク質の構築、発現及び精製
一過性トランスフェクション(Peek等, 2002)によってチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の1lの培養物において組換えタンパク質を産生させた。アミノ酸変化を部位特異的突然変異誘発によって導入し(Kunkel, 1985)、DNA配列決定によって証明した。発現培地(F-12/ダルベッコ変法イーグル培地)は1%(v/v)超低IgG仔ウシ血清(FBS)(Gibco, Grand Island, NY)を含んでいた。8日後に培地を収集し、FBSを補填して最終含量5−10%(v/v)を得た。37℃での2−3日の更なるインキュベーションにより、完全な単鎖HGF転換が達成された。この工程は、活性化切断部位(R494E)及びα鎖内のプロテアーゼ感受性部位(R424A)にアミノ酸変化を有する切断不可能単鎖形態のプロHGFの発現の場合には省略した(Peek等, 2002)。開示(Peek等, 2002)されているように変異体タンパク質を培地からHiTrap-SepharoseSPカチオン交換クロマトグラフィー(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ) によって精製した。還元条件下でSimply Blue Safestainでの染色によるSDS-PAGE(4−20%勾配ゲル)の検査の結果、全ての変異体HGFタンパク質は>95%純度であり、単鎖形態のままであったプロHGFを除いてα/βヘテロ二量体に完全に転換していた。各変異体のタンパク質濃度は定量アミノ酸分析によって決定した。
【0084】
表面プラズモン共鳴によるHGFβ及びMet結合親和性
Metに対するHGFβの結合親和性をBiacore3000機器(Biacore, Inc., Piscataway, NJ)を使用する表面プラズモン共鳴法によって定量した。製造者の指示書に従って、〜2000共鳴単位でアミンカップリングを用いてMetのECDドメインをCM5チップに固定した。12.5nMから100nMの範囲の10mM HEPES、pH7.2、150mMのNaCl、5mMのCaCl中での一連の濃度のHGFβ(つまり、C604S変異体)を20μl/分の流量で40秒間、注射した。結合したHGFβを10分間分解させた。適切なバックグラウンドの減算を実施した。結合(kon)及び解離(koff)速度定数を機器と共に提供されたグローバルフィッティングプログラムによって得た;koff/konの比は解離定数(K)を計算するために使用した。
【0085】
MetへのHGFβの結合及び競合結合ELISA
マイクロタイタープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を50mMの炭酸ナトリウムバッファー、pH9.6中2μg/mlのウサギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratory, West Grove, PA)で一晩4℃にて被覆した。HBSバッファー(50mMのHEPES、pH7.2、150mMのNaCl、5mMのCaCl及び0.1%のTween-20)中1%のBSAを用いてブロックした後、1μg/mlのMet-IgG融合タンパク質(Mark等, 1992)を加え、プレートを室温で穏やかに振とうしながら1時間インキュベートした。HBSバッファーでの洗浄後、HGFβタンパク質を1時間加えた。結合したHGFβを、抗His-HRP(Qiagen, Valencia, CA)を用い次にTMB/H基質(KPL, Gaithersburg, MD)を添加して検出した。反応を1MのHPOで停止させ、A450をMolecular Devices SpectraMax Plus384マイクロプレートリーダーで測定した。最大半量の結合(EC50)を生じる有効濃度はカレイダグラフを使用する4パラメーターフィット(Synergy Software, Reading, PA)によって定量した。
競合ELISAを展開するために、野生型HGFβを、室温で2時間20倍のモル過剰のビオチン-マレイミド(Pierce, Rockford, IL)を用いてビオチン化した。ビオチン化野生型HGFβを用い、HRP-ニュートラビジン(Pierce, Rockford, IL)を使用して検出する以外、プレートを上記のようにして処理した。競合アッセイは250nMのビオチン化野生型HGFβと示された様々な濃度のタンパク質(例えば未標識HGFβ変異体、HGF(つまり2-鎖)又はプロHGF(つまり単鎖型のHGF))の混合物を含んでいた。室温で1時間インキュベーションした後、プレートに結合したビオチン化野生型HGFβの量を上述のようにして測定したIC50値を4パラメーター式にデータをフィットさせることによって(カレイダグラフ, Synergy Software, Reading, PA)定量した。
【0086】
MetへのHGF変異体の結合
ビオチン化HGFを、シグマ免疫プローブビオチン化キット(Sigma, St. Louis, MO)を用いて調製した。マイクロタイタープレートを、上述のウサギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体被覆した。プレートをPBS0.05%(v/v)Tween-20で洗浄した後、室温で1時間PBS中0.5%(w/v)のBSA、0.05%のTween-20、pH7.4でのインキュベーションを行った。洗浄後、様々な濃度のHGF変異体、野生型HGFβと共に1nMのビオチン化HGF及び0.2nMのMet-IgG融合タンパク質(Mark等, 1992)をウェルに添加し2時間インキュベートした。洗浄後、結合したビオチン化HGFを、希釈した(1:3000)ストレプトアビジン西洋わさびペルオキシダーゼ結合体(Zymed, South San Francisco, CA)と、その後にSureBlue TMBペルオキシダーゼ基質と停止溶液TMB STOP (KPL, Gaithersburg, MD)を添加して検出した。上述のようにしてA450を測定しIC50値を定量した。相対的結合親和性をIC50(変異体)/IC50(野生型HGF)として表した。
【0087】
MetのHGF依存性リン酸化
キナーゼレセプター活性化アッセイ(KIRA)を次のようにして実施した。10%FBS(Sigma, St. Louis, MO)を含む成長培地(HamのF12/DMEM50:50(Gibco, Grand Island, NY)に先に維持しておいた肺癌A549細胞(CCL-185, ATCC, Manassas, VA)のコンフルエントな培養物をAccutase (ICN, Aurora, OH)を用いて剥がし、ウェル当たり50000細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。37℃で一晩インキュベーションした後、成長培地を取り除き、0.1%FBSを含む培地中で30から60分の間、血清不足にした。HGF又はHGF変異体によるMetリン酸化活性を、0.1%FBSを含む培地中に500から0.2ng/mlの段階希釈物を添加した後、10分、37℃でインキュベーションし、培地を除去し、1Xのプロテアーゼ阻害剤カクテルセットI(カタログ番号539131, Calbiochem, San Diego, CA)を補填した1Xの細胞溶解バッファー(カタログ番号9803, Cell Signaling Technologies, Beverly, MA)で細胞溶解を行って決定した。HGFβ鎖は5μg/mlで出発し同様にして実施した。HGFβ鎖によるHGF依存性Metリン酸化活性の阻害は、アッセイプレートに156から0.06nMの段階希釈物を添加した後、37℃で10分インキュベーションし、12.5、25又は50nMのHGFを添加し、更に37℃で10分インキュベーションし、培地を除去し上述のように細胞溶解させて、定量した。細胞溶解物を、Bio Veris M-Series機器(Bio Veris Corporation, Gaithersburg, MD)を使用する電気化学発光アッセイによってリン酸化Metについて分析した。抗ホスホチロシンmAb 4G10(Upstate, Lake Placid, MY)を製造者の指示書(Bio Veris)に従ってNHS-エステル化学法を介してBV-TAGで標識した。抗体Met ECDmAb1928(Genentech, South San Francisco, CA)を、ビオチン-X-NHS(Research Organics, Cleveland, OH)を使用してビオチン化した。BV-TAG標識4G10及びビオチン化抗Met mAbをアッセイバッファー(PBS、0.5%のTween-10、0.5%のBSA)で希釈し、カクテルを細胞溶解物に添加した。激しく振とうしながら1.5から2時間室温でインキュベートした後、ストレプトアビジン磁気ビーズ(Dynabeads, Bio Veris)を添加し、45分インキュベートした。結合した物質(抗Met抗体/Met/抗ホスホチロシン抗体)を外部から適用した磁石で捕捉した。洗浄工程の後、光源から発生された化学発光シグナルをBio Veris機器で相対的発光単位として測定した。各実験では、HGF変異体によって誘導されたMetリン酸化は2-鎖HGFで得られた最大シグナルの割合として表した。
【0088】
増殖アッセイ
BxPC3(ヒト膵臓腺癌;ECACC番号93120816)をEuropean Collection of Cell Cultures(CAMR Centre for Applied Microbiology and Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire (UK)から取得し、HGF依存性増殖アッセイにおいて使用した。細胞を、10%のFCS(Sigma F-6178, St. Louis, MO)、10mMのHEPES、2mMのグルタミン、1Xのペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen 15140-122, Carlsbad, CA)、100Xのペニシリン10000u/ml−ストレプトマイシン10000μg/ml)、及び250μg/mlのG418(Invitrogen 10131-035)を含むRPMI培地中で成長させた。細胞を連続してPBS、10mMのEDTAを含むPBSで洗浄した後、トリプシンを使用して除去した。細胞を血清含有培地に収集し、細胞密度を血球計数器を使用して定量した。50000−75000/mlの細胞をウェル当たり200μlで、内側の60ウェルのみを使用して白色底MTプレート(Cultur PlateTM 6005680 Packard/PerkinElmer, Boston, MA)中に播種し、24時間成長させた。培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄し、0.1%のBSA(SF-BSA)を含む200μlの無血清培地を細胞に添加し戻した。 細胞を更に24時間成長させた。培地を除去し、150μlのSF-BSAに入れた様々な試験HGFタンパク質(n=4)をウェルに添加した。2-鎖HGFを阻害アッセイのために最終1nMで使用した。コントロールはHGFの不存在下及び/又は試験HGFタンパク質の不存在下で実施した。
細胞を72時間成長させた後、CellTiter-Glo発光キット(Promega G7571, Madison, WI)を用いてアッセイを実施した。従った手順は、Promega Technical Bulletin TB288に記載されている。マイクロタイタープレートを、Tropix TR717マイクロプレートルミノメーター(Berthold 75323 Bad Wildbad, Germany)で読み取った。細胞増殖の刺激又は阻害の割合を適切なコントロールに対して正規化した。
【0089】
細胞遊走アッセイ
乳癌細胞MDA-MB-435(HTB-129, ATCC, Manassas, VA)を推奨された血清補填培地で培養した。10mMのEDTAを含むPBS中でコンフルエントな細胞を剥がし、無血清培地を用いて0.6−0.8x10細胞/mlの最終濃度になるまで希釈した。0.2mlのこの懸濁液(1.2−1.6x10全細胞)を、10μg/mlのラット尾部コラーゲンI型 (Upstate, Lake Placid, NY)を前もって被覆した24ウェルのトランスウェルプレート(8μmの孔径)(HTS MultiwellTM Insert System, Falcon, Franklin Lakes, NJ)の上方チャンバーに3組加えた。野生型HGF又はHGF変異体を、別段の記載がない限り、無血清培地中100ng/mlで下方チャンバーに加えた。HGFβ鎖はまた30μg/mlで試験した。13−14時間のインキュベーション後、膜の頂端側の細胞を取り除き、基底側に移動したものを4%のパラホルムアルデヒドに固定した後、0.5%のクリスタルバイオレット溶液で染色した。洗浄し空気乾燥させた後、細胞を10%酢酸に溶解させ、Molecular DevicesマイクロプレートリーダーでA560を測定した。HGF変異体の遊走誘発(pro-migratory)活性(遊走促進活性)は、HGFの不存在下での基底遊走を引いた後にHGFコントロールのパーセントとして表した。染色した細胞の写真を、Leitz顕微鏡(Leica Mikroskope & Systeme GmbH, Wetzlar, Germany)に接続したSpotデジタルカメラ(Diagnostics Instruments, Inc., Sterling Heights, MI)で撮った。画像はAdobe Photoshop 4.0.1 (Adobe Systems Inc., San Jose, CA)によって得た。
【0090】
結果
Metに対するHGFβの結合
Metに対するHGFβの結合を、Metの細胞外ドメイン(Met ECD)で誘導体化したCM5チップでの表面プラズモン共鳴法によって測定した共鳴単位の変化から評価した。その結果は、HGFβが、比較的速い結合(kon=1.18x10−1−1)及び解離速度定数(koff=0.0103s−1)(図1A)から計算した87nMのKでMet ECDに結合することを示している。同様な結果がc−met Semaドメインへの結合に対して得られ、そこでは27nMのKが計算された(データは示さず)。MetへのHGFβの結合はプレートELISAを使用する第二の独立の方法によってもまた確認した。固定化された抗Fc抗体に結合した適切に配向したMet-IgG融合体と共にビオチン化HGFβをインキュベーションし、HRP-ニュートラアビジンで検出した後、320±140nMのEC50値を決定した(n=6;データは示さず)。
単鎖HGFは二本鎖HGFに匹敵する親和性でMetに結合するがMetリン酸化を誘導しない(Lokker等, 1992; Hartmann等, 1992)ので、我々は、これは、β鎖の未切断型にMet結合部位が欠如しているためでありうるとの仮説を立てた。この仮説を試験するために、我々は、プロHGFβ、つまりHGFα鎖のC末端の16残基と単鎖形態が無傷のまま残ることを確保するための切断部位の変異(R494E)を含むHGFβのチモーゲン様形態を発現させ精製した。HGFβ及びプロHGFβのMetに対する結合を競合結合ELISAで定量したところ、それぞれ0.86±0.17及び11.6±1.8μMのIC50値が得られた(図1B)。13.5倍減少した結合は、チモーゲン様HGFβ上のMet結合部位は実際に存在するが、それは最適ではないことを示している。プロHGFβの結合親和性の消失はまた図5にまとめたデータに実証されている。確かに、他の実験の試みでは、チモーゲン様β鎖はc−Metへの結合に対して標識β鎖と競合する能力においてあまり効果的ではないことが見出され、このアッセイにおいてHGFβ鎖に対して見出された0.56μMの値よりも約75倍高い約41μMのIC50を有しており、チモーゲン様HGFβ鎖がc−Metに対して有意に低下した結合性を有している(データは示さず)ことを証明している。従って、様々な実験が、チモーゲン様β鎖(プロHGFβ)が最適以下のMetリガンドであることを確認している。
【0091】
HGFβによる活性の阻害
HGFβはMetに結合するが、Metリン酸化を誘導しない(図1C)。図1Cは、全長HGFの最適リン酸化活性を>1000倍超えた濃度においてさえ、HGFβは完全に不活性であったことを示している。同様に、MDA-MB-435細胞遊走アッセイでは、0.95μMまでの濃度でHGFβは効果がなかった。しかしながら、HGFβは濃度依存的な形でHGF依存性Metリン酸化を阻害する(図1D)。但し、使用された最も高い濃度では阻害は不完全であった。Metリン酸化の阻害はMet結合に対するHGFとの直接の競合と一致している。これに一致して、競合結合アッセイは、HGFβが、たとえかなり高い濃度(IC50=830±26nM;n=3)でも、Metへの全長HGFの結合を阻害する(図1E)。比較すると、全長野生型HGFはこのアッセイにおいて0.86±0.47nM(n=3)のIC50値を有していた。
【0092】
HGF及びHGFβにおける変異は細胞遊走及びMetリン酸化に影響する
β鎖中のMet結合部位を同定するために、我々は、ここでHGFの「活性化ドメイン」及び「活性化部位領域」と称するセリンプロテアーゼの活性化ドメイン及び活性部位に対応する領域における残基を体系的に変化させた。CHO細胞中でのHGF変異体の最初の発現は、変異体HGF I623Aによって実証された単鎖及び二本鎖HGF形態の混合物を生じた(図2A)。残留している未切断HGFの完全な転換は、収集した培養培地を5−10%の血清に数日間更に曝露することによって達成された(図2A)。カチオン交換クロマトグラフィーによる精製後のHGF I623Aの純度は全てのHGF変異体の代表例である(図2A)。
HGFにおいてβ鎖の残基を変異させた機能的な結果は、MDA-MB435細胞の遊走を刺激するHGF変異体の能力を定量することによって評価した。その結果は、3種のHGF変異体のR695A[c217]、G696A[c219]及びY673A[c195]は深刻に損傷され、野生型の活性の20%未満である一方、5種の変異体Q534A[c57]、D578A[c102]、V692A[c214]、P693A[c215]及びG694A[c219]は野生型の活性の20−60%を有していた(図2B)。9種の更なる変異体(R514A、P537A、Y619A、T620A、G621A、K649A、I699A、N701A及びR702A)は野生型の活性の60−80%を有していた。残りの21種の変異体は野生型の活性の>80%の活性を有しており、HGFと本質的に変わらないと考えられた。予想されたように、プロHGFは細胞遊走を刺激しなかった(図2B)。細胞遊走を促進するための1nMのR695A[c217]又はG696A[c219]の能力を図2Cに例示し、そこでは何れの変異体の存在下での遊走もHGFの不存在下での基底遊走に類似していることが示されている。
【0093】
細胞遊走における活性の低下がMetリン酸化に相関しているかどうかを調べるために、HGF変異体のサブセットをキナーゼレセプターアッセイ(KIRA)で調べた。野生型HGF及びHGF変異体に対して、0.63及び1.25nMの間の濃度で最大のMetリン酸化が観察された(図3)。変異体Y673A[c195]、R695A[c217]及びG696A[c219]によって達成される最大Metリン酸化は野生型の30%より少なく、遊走誘発活性が最小か又は存在しないことに一致している。変異体Q534A[c57]、D578A[c102]及びV692A[c214]は細胞遊走アッセイにおいて中間の活性(30−60%)を示した;それらはまた中間レベルのMetリン酸化を示し、野生型HGFの56%−83%を有する。細胞遊走活性の欠如に一致して、プロHGFはMetリン酸化活性を有していなかった(図3)。
【0094】
MetへのHGF及びHGFβ鎖の結合に対するβ鎖変異の効果
Met-IgG融合タンパク質に対する各変異体の親和性をHGF競合結合によって分析した。K649A[c173]及びY673A[c195](何れも約4倍弱い結合性)を除いて、全ての(>30)HGF変異体は、本質的に、0.36から2.25の範囲(図7)にあったそのIC50比(IC50mut/IC50WT)によって示して、二本鎖HGF(IC50=0.83±0.32nM;n=30)と同じ結合親和性を有していた。HGFY673A[c195]とプロHGFはHGFと比較してMet-IgGに対して約4倍弱い結合性を示した(図7)。[結合親和性測定の絶対値は実験毎に変わりうるが、野生型と比較した場合の結合能への特定の変異の効果は複数の実験間で再現性がある。]我々はまた10倍及び50倍高い濃度での選択された変異体の細胞遊走活性を調べた;遊走誘発活性の増加は観察されなかった(図8)。従って、HGF変異体の損傷した機能は、50倍までの濃度の増加が補償効果を示さなかったので、Metへの結合の低下によるものではない。
【0095】
MetへのHGF変異体の結合とHGF依存性細胞遊走又はMetリン酸化の何れかとの間の相関関係が少ないことは、MetとHGFα鎖間の比較的高い親和性のためであると思われ、これがβ鎖による親和性の低減を遮蔽しうる。従って、α鎖の効果をなくするためにHGFβ自体において選択した変異を作成した。HGFβ変異体Y513A[c36]、R516A[c39]、Q534A[c57]、D578A[c102]、Y619A[c143]、Y673A[c195]、V692A[c214]、P693D[c215]、G694E[c216]、R695A[c217]、G696A[c219]、I699A[c221a]及びR702A[c224]を、Met-IgGに結合するビオチン化HGFβを用いた競合ELISAで試験した。HGFβ変異体C561S[c78](C604S:C561S)を試験して遊離のシステインがない変異体における活性を評価した。精製中でのあらゆる潜在的な二量体化を避けるためにHGFβ C604S[c128]バックグラウンドにおいて変異体を作成したが、この変異はMet-IgGへの結合には効果を持たなかった。変異体の結合親和性をついで、IC50〜0.55±0.38μM(n=16)を有するHGFβに対して正規化した。結果を図5に示す。これらの選択されたサブセットを図4に模式的に示す。殆どの変異体はMetに対して低下した結合親和性を示し、幾つかの変異体−例えばR695A[c217]及びG696A[c219]−は全く結合に対して競合しなかった(図5参照)。我々は今HGFβの対応する変異体の結合の減少と、全長二本鎖HGF変異体の活性の減少の間に強い相関があることが分かる。(二本鎖全長HGF変異体におけるように)遊走活性に最も大きな消失があった幾つかの変異体(例えばR695A[c217]、G696A[c219]及びY673A[c195])はまた(HGFβ変異体におけるように)Met結合にも大きな消失があったことが見出された。逆に、遊走活性が少し減少した変異体(例えばY619A[c143]及びI699A[c221a])はMet結合に少しの(10倍未満)減少があった。図5。よって、このMet結合アッセイにおけるHGFα鎖の結合寄与の消失により、全長HGF変異体の遊走活性の低下がMetレセプターとのHGFβ鎖の結合相互作用が損なわれているためであることが明らかになった。
【0096】
HGFにおける変異は成長刺激活性の減少とHGF依存性細胞増殖の阻害の向上を生じる
図6Aに示されているように、HGFβ鎖の変異体はBxPC3細胞における増殖の活性化因子として活性が少ない。図6Aの変異体の例は成長刺激活性における広範囲の減少度合いを反映している。25ng/mlでのHGF WT活性は100ng/mlでの活性の83.6±13.0%(n=12)であったことに留意のこと。%活性は、HGF又はHGF変異体が存在する(100ng/ml又は25ng/ml)場合の増殖の量からHGFが存在しない場合の増殖の量を引いたものを意味する。SDは標準偏差であり、nは独立した定量の数である。
HGFβの変異体はまた野生型HGFが存在している場合に細胞増殖阻害剤として作用することができる(図6B)。図6Bでは、相対活性は増殖アッセイにおける相対活性を意味する。阻害%は幾つかの方法で計算することができ、その内の二つが図6Bに示される。活性%IはHGFなし(0%)及び25ng/mlのHGF WT(100%)に正規化された増殖の量を意味する。よって、HGF R695A又はHGF R424A:494EはそれぞれHGF依存性細胞増殖活性の79%又は63%を阻害する。活性%IIは5μg/mlのHGF R695A(0%)又はHGF R424:R494E(0%)及び25ng/ml HGF WT(100%)に正規化した増殖の量を意味する。よって、HGF R695A又はHGF R424A:494E HGFはHGF依存性細胞増殖活性の68%又は75%を阻害する。HGF WTは25ng/mlの2本鎖HGFであり;2本鎖R695A及び1本鎖R424A:494Eは5μg/mlであったことに留意のこと。
【0097】
c−MetへのHGFβ鎖の結合は単鎖プロHGFによって完了させることができない
我々のデータは、HGFβ鎖がまたc−Metに結合し、より詳細にはc−MetのSemaドメインに結合しうることを示している。HGFα鎖はまたc−Metに結合し、またSemaドメインにも結合しうる。我々は、これらの2種の鎖の結合部位がc−Met上で重なるかどうかに注意を向けた。結果は、無傷のα鎖とチモーゲン様β鎖を有する一本鎖プロHGFは図9に示した濃度でc-Met-IgGへの結合についてHGFβ鎖と競合しないことが示された。しかしながら、無傷のα鎖と活性化β鎖を有する二鎖HGFは19nMのIC50で競合せず、α鎖とβ鎖はc−Met上の異なった部位に結合するという結論を裏付けている(図9)。競合ELISAでのコントロール実験は、プロHGFが、二本鎖HGFに対する6nMのIC50値に類似して、12nMのIC50値でc-Met-IgGへのビオチン化二本鎖HGF結合と競合したことを示した(データは示さず)。
【0098】
検討
HGFは二本鎖HGFへの単鎖前駆体形態のタンパク分解性転換時に生物学的活性を獲得する(Naka等, 1992; Hartmann等, 1992; Lokker等, 1992; Naldini等 1992)。キモトリプシン様セリンプロテアーゼ(Perona及びCraik, 1995; Rawlings等, 2002; Donate等, 1994)、特にプラスミノーゲンとのHGFの構造類似性に基づき、我々は、この活性化プロセスはHGFβ鎖に生じる構造的変化に関連しているという仮説を立てた。ここに提供されるものは、「活性化」HGFβ鎖が、キモトリプシン様セリンプロテアーゼの基質/阻害剤結合部位に対応する領域に位置して区別できるMet結合部位を含んでいるという証拠である。
Metに対するHGF結合相互作用
精製したHGFβ鎖での結合実験により、HGFβの「活性化」型(Val495−Ser728)がその前駆体型のプロHGFβ(Asn479−Ser728)より約14倍高い親和性でMetに結合することが明らかにされ、Met結合部位の最適化が単鎖HGFのプロセシング時に付随するという見解と一致した。これは、Met結合部位が、scHGF切断の後にコンホメーション再編成を受けるHGF領域、つまり「活性化」ドメインを含むことを示唆している。確かに、「活性化ドメイン」にアミノ酸置換を有するHGF変異体の機能分析により、機能性Met結合部位の同定に至った。しかしながら、遊走促進活性は大きく失われているHGF変異体(Q534A、D578A、Y673A、V692A、P693A、G694A、R695A、G696A及びR702A)は、Y673A(4倍の消失)を除いて本質的に変わらないMetへの結合親和性を示したが、これはHGF親和性がHGFα鎖によって支配されているためである(Lokker等, 1994; Okigaki等, 1992)。これと一致して、50倍を超えてHGF変異体の濃度を増加させたときにも減少した活性は変わらないままであった(図8)。従って、HGF変異体の活性の低減はMet上のその特異的低親和性結合部位とのHGFβ鎖の乱された分子相互作用から生じていると解釈される。これを支持するものとして、我々は、HGFα鎖の結合への寄与を消去したアッセイにおいて、選択されたHGF変異体(2本鎖全長)の生物学的活性の低下が対応するHGFβ変異体のMet結合の低下とよく相関していることを見出した。例えば、HGFβ変異体R695A[c217]、G696A[c219]及びY673A[c195]は測定可能なMet結合を示さず、全長変異体のように生物学的機能が大きく損なわれたものと相関する。
【0099】
MetへのHGFβ結合の比較的低い親和性の結合部位のデータと一致して、固定化Met細胞外ドメインでの表面プラズモン共鳴実験はHGFβが約90nMのKでMetに結合したことを示している。K及びIC50値の間で観察される明らかな親和性の差は使用した異なったアッセイのためであり、例えば、より高いIC50値はMetへの結合に対して250nMのビオチン化HGFβと競合するのに必要なHGFβの高い濃度を反映している。
機能的Met結合部位は「触媒三連構造残基」Gln534[c57]、Asp578[c102]、Tyr673[c195]及び[c220]ループ(残基Val692、Gly694、Arg695及びGly696)上に中心を置いている。我々のAla置換の全てはGly696以外では主鎖コンホメーションの大きな変化を必要としない。ここで、50°/146°のファイ/プサイ角と非Gly残基の置換が[c220]ループにおけるコンホメーション変化を引き起こし、G696A変異体の活性の低下を生じる。合わせると、これらの残基は真のセリンプロテアーゼの基質プロセシング領域に顕著な類似性を有している。この知見は、Y673とV692をMet活性化の重要な残基と同定した以前の研究(Lokker等, 1992)と一致している。その研究においてHGF変異体Q534Hに対して測定された正常な活性は比較的近いアイソスターであるHisによるGlnの機能的な補償を反映している。
【0100】
[c220]ループの機能的重要性はキモトリプシン様セリンプロテアーゼのよく記述されたファミリーにおいて前例がある(Perona及びCraik, 1994; Hedstrom, 2002)。基質及び阻害剤の拡張された基準のコンホメーションは[c214−c218]からの主鎖相互作用を形成可能な残基を含む。この領域はまたトロンビン触媒活性のアロステリック調節物質として(Di Cera等, 1995)、またその阻害剤ヒルジンとの相互作用部位として(Stubbs及びBode, 1993)認識されている。また、HGF R695[c217]に対応する第VIIa因子及びトロンビンの残基は酵素触媒基質プロセシングに対して重要である(Tsiang等, 1995; Dickinson等, 1996)。更に、MSP中の対応する残基、R683[c217]はMSPβ鎖のそのレセプターRonとの高親和性相互作用において重要な役割を担っている(Danilkovitch等, 1999)。MSP R683[c217]はRonへの高親和性結合に関与していると提案されている5つの表面暴露アルギニン残基のクラスターの一部である(Miller及びLeonard, 1998)。R695[c217]及び場合によってはK649[c173]だけがHGFにおいて保存されているが、これらの残基は全てHGFβ鎖のMet結合領域内に位置しており、我々をMSPβ鎖上のRon結合部位が高度に相同であるとの考えに導いた。
HGF Ala変異体でのここに記載された結果は、Tyr673[c195]とVal692[c214]がそれぞれセリンに置き換えられた過去の研究(Lokker等, 1991)と一致している。二つの過去の報告(Lokker等, 1991; Matsumoto等, 1991)においてHGF変異体Q534H[c57]に対して測定した正常な生物学的活性は、比較的近いアイソスターであるHisによるGlnの機能的補償を反映している。しかし、我々の結果は、HGFβ鎖自体はMetに結合しないしMetに対するHGF結合を阻害もしないことを証明している過去の研究(Hartmann等, 1992; Matsumoto等, 1998)とは対照である。一例では、HGFβ鎖は我々のものとは異なっており、HGFのエラスターゼ切断から誘導した余分なα鎖残基を有しており、これはMet結合に悪影響を及ぼしうる。しかし、使用された濃度、アッセイの感度又はプロHGFプロセシングの度合いの何れかが不十分でこの低親和性部位への結合が観察されそうである(Matsumoto等, 1998)。HGFβ鎖はMetに結合することが報告されているが、α鎖由来のNK4断片が存在する場合のみである(Matsumoto等, 1998)。
【0101】
シグナル伝達メカニズム
原理的には、一HGF分子中に、一つは高親和性でもう一つは低親和性の二つのMet結合部位が存在することは、Ron:MSPの提案された2:1モデル(Miller及びLeonard, 1998)に類似の、Met:HGFシグナル伝達複合体の2:1モデルを支持している。関連したMSP/Ronリガンド/レセプター系では、シグナル伝達活性を欠くMSPの個々のα鎖及びβ鎖はRonに結合可能で、レセプター結合に対して完全長MSPと競合する(Danilkovitch等, 1999)。同じことがHGF/Met系でもしかりである。しかしながら、生化学的研究ではMet:HGFの2:1複合体は同定されていない(Gherardi等, 2003)。また、レセプター活性化のこのモデルは、一つのHGF分子がそのα鎖及びβ鎖を通して一つのMetレセプターに同時に結合することを防止するある種のまだ知られていない分子メカニズムを必要とする。
あるいは、HGFβ鎖は、HGF:Metの2:2の複合体を支持するMetとの直接の相互作用に関連したものを越えてレセプター活性化において重要な機能を有しているかも知れない。我々は、HGFβ鎖の単鎖「不活性化」型であるプロHGFβが、HGFβの「活性化」型の幾つかの突然変異体、つまりY673A、V692A及びR695A (例えば図5)よりMetにより堅固に結合することを見出した。重要なことに、三種の対応する完全長HGF変異体の全てが測定可能なレセプターリン酸価及び/又は遊走誘発活性を示すが、プロHGFは、HGFにより活性に対して必要とされるものよりも1000倍多い濃度でさえ示さない。この重要な差異はレセプター活性化におけるHGFβ鎖の更なる機能を我々に考えさせる。
【0102】
結論
結論として、ここに提供された結果は、HGFのβ鎖がMetとのこれまで未知の相互作用部位を含み、それはセリンプロテアーゼの「活性部位領域」に類似していることを示している。しかして、HGFは二価で、α鎖のNK1領域に高親和性のMET結合部位を有する。他の重要な相互作用は二本のHGFβ鎖、二本のHGFα鎖(Donate等, 1994) 間、及びMSP/Ron(Angeloni等, 2004)で見出されたように、二つのMet Semaドメイン間で生じうる。更に、ヘパリンはまたHGF/Metレセプター結合において重要な役割を担っている。HGFβ鎖上の区別できるMet結合部位の同定は癌のような疾患に対して治療的潜在性のある新しいクラスのMet阻害剤の設計に対して科学的で経験的な理論的根拠を提供する。
【0103】
一部の参考文献リスト
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【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1A】Metリン酸化アッセイにおけるHGFβ直接及び競合結合及び活性。Met(MetECD)の細胞外ドメインへの表面プラズモン共鳴によるHGFβの結合。MetECDは〜2000共鳴単位でCM5チップに捕捉された。HGFβは12.5nMから100nMの一連の濃度で注射された。矢印は会合及び分解相の発生を示している。データは1:1結合モデルを使用してグローバルフィットによって分析し、それからkon、koff及びK値を決定した。
【図1B】HGFβ/Met−IgG競合ELISA。Met-IgGをウサギ抗ヒトIgG Fcを被覆したプレート上に捕捉させ、250nMのマレイイミド結合ビオチン化野生型HGFβと一連の濃度の未標識HGFβ(●)及びプロHGFβ(■)を含む混合物と共にインキュベートした。プレートに結合したビオチン化野生型HGFβの量をニュートラアビジン-HRPによって検出した。それぞれ少なくとも3の独立した定量からのデータを正規化し、平均し、カレイダグラフを使用する4変数フィットに適合させ、それからIC50値を定量した;誤差バーは標準偏差を示している。
【図1C】A549細胞中におけるMetのHGF依存性リン酸化をHGF(▲)及びHGFβ(●)を使用して実施例に記載されたようにして実施した。
【図1D】MetのHGF依存性リン酸化の阻害を、HGFβの増加濃度の存在下でA549細胞を刺激するために0.5nM(◆)、0.25nM(▲)及び0.125nM(■)のHGFを使用して実施例に記載したように二通り実施した。
【図1E】完全長HGF/Met−IgG競合ELISA。これは1nMのNHS結合ビオチン化HGF及び一連の濃度の未標識HGF(○)及びHGFβ(●)を使用して(A)と同様にして実施した。それぞれ3回の独立した定量値からのデータを正規化し、平均し、上述のようにフィットさせた。
【図2A】HGF変異体によるHGF依存性細胞遊走。HGF変異体の代表的な純度。還元条件下でSDS-PAGEにより分析した全てのHGF変異体の純度をカチオン交換精製HGF I623Aについて示す。1%FBS(v/v)中でのCHOの発現による分泌された単鎖型の不完全な転換がレーン1に見られる。5%FBSへの更なる曝露により活性化プロセスが完了し、純粋な二本鎖HGF I623A(レーン2)を生じた。分子量マーカーはMx10として示す。
【図2B】1nMのHGF変異体の存在下でのトランスウェルアッセイにおけるMDA-MB435細胞の遊走。活性は1nMの野生型HGFに曝露したコントロール細胞の遊走パーセントとして表す;完全長HGF配列番号付け[キノトリプシノーゲン番号付け]を示す。値は4−8の独立の実験の平均値±SDを表す。
【図2C】野生型HGFの不存在下(a)、1nMの野生型HGF(b)、1nMのHGF R695A(c)及び1nMのHGF G696A(d)でのMDA-MB435細胞遊走の写真。
【図3】HGF変異体によるMetのHGF依存性リン酸化。A549細胞のMetのリン酸化は様々な濃度のHGF(●)、プロHGF(◆)、HGF Q534A(○)、HGF D578A(▲)、HGF Y673A(△)、HGF V692A(◇)、HGF R695A(□)及びHGF G696A(▼)を使用して実施例に記載されたようにして実施した。
【図4】HGFβ変異体のMet競合結合。HGFβ/Met-IgG競合ELISAを使用して野生型HGFβ(△)、HGFβ(●)及びHGFβ変異体Q534A[c57](○)、D578A[c102](▲)、Y619A[c143](◇)、R695A[c217](□)、G696A[c219](▼)及びI699A[c211a](◆)のMet結合性を評価した。データはカレイダグラフを使用する4変数フィットによって適合させた;代表的な個々の競合アッセイはn≧3である多重独立測定に対して示している。
【図5】HGFβ及び2-鎖HGFにおけるβ鎖の突然変異の効果。HGFβ/Met競合結合ELISAにおけるHGFβ変異体のMet競合結合データ及びMDA-MB-435細胞遊走アッセイにおける2-鎖HGF変異体の細胞遊走活性を示す。HGFβ鎖変異体は別段の説明をしない限り、C604Sバックグラウンドで作成した。
【図6】細胞増殖の刺激及び阻害に対するHGF変異の効果。(A)BxPC3細胞における(示された変異を有する)2-鎖HGF及び2-鎖HGF変異体によるHGF依存性細胞増殖。(B)HGFβ鎖(示された変異を有する)における2-鎖HGF変異体による、またBxPC3細胞における1本鎖HGFによるHGF依存性細胞増殖の阻害。
【図7】HGF/Met競合結合ELISAによって定量したMetに対するHGF変異体の相対的結合親和性。
【図8】異なった濃度におけるHGF変異体の遊走促進活性。
【図9】HGFβ鎖競合ELISAによって定量されたc−Met-IgGへの単鎖プロHGF及び二本鎖HGFの結合の分析。データはカレイダグラフを使用する4変数フィットによって適合され、二本鎖HGFに対するIC50が決定された。100nMまでの濃度では単鎖プロHGFはc−Met-IgGへの結合に対してHGFβ鎖と競合しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化された肝細胞増殖因子(HGF)β鎖に選択的に結合する物質をスクリーニング又は同定する方法において、
活性化されたHGFβ鎖に対する候補物質の結合(i)を、参照HGFβ鎖に対する候補物質の結合(ii)と比較することを含み、ここで上記参照β鎖はc−metに実質的に結合せず、
参照HGFβに対するよりも活性化されたHGFβ鎖に対して大なる結合親和性を示す候補物質を、活性化されたHGFβ鎖に選択的に結合する物質として選択する方法。
【請求項2】
参照β鎖が単鎖HGFポリペプチド内に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
参照β鎖がそのN末端においてHGFα鎖のC末端領域の一部に融合し、C末端領域の494位(野生型ヒトHGFに対応)がアルギニン以外のアミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
494位のアミノ酸がグルタミン酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
HGFのC末端領域の上記一部がヒトHGFの残基479から494のアミノ酸配列を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
c−met活性化を阻止する物質をスクリーニングする方法において、c−metに結合し、c−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を阻止する物質をスクリーニングすることを含む方法。
【請求項7】
上記物質がc−metへの結合に対してHGFβ鎖と競合する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
患者におけるc−met活性化を調節する方法において、c−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を調節する物質を患者に投与し、c−met活性化を調節することを含む方法。
【請求項9】
上記物質がc−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を阻止し、それによってc−met活性化が低減する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記物質がc−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を増大させ、それによってc−met活性化が増大する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
c−met活性化細胞増殖を阻害する方法において、c−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質に細胞又は組織を接触させることを含み、c−met活性化に関連する細胞増殖を阻害する方法。
【請求項12】
患者におけるc−met活性化に関連する病理的症状を治療する方法において、c−metに対するHGFβ鎖の特異的結合を阻害する物質を患者に投与し、c−met活性化を阻害する方法。
【請求項13】
物質が、HGFα鎖に結合したジスルフィドではない活性化されたHGFβ鎖である、請求項8ないし12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
物質が配列VDWVCFRDLGCDWELを含むペプチドである、請求項8ないし12の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
物質が請求項1ないし7に記載の方法の何れかによって得られる、請求項8ないし12の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
物質が小分子、ペプチド、抗体、抗体断片、アプタマー、又はそれらの混合物である、請求項1ないし15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
HGFのそのレセプターに対する結合を阻止するHGFレセプターアンタゴニストをスクリーニングする方法において、HGFβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の少なくとも一に結合する物質を選択することを含む方法。
【請求項18】
物質が少なくとも残基673及び695に結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
物質がまた残基534、578及び692の少なくとも一に結合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
活性化された肝細胞増殖因子β鎖に結合し上記活性化されたHGFβ鎖のc−metに対する特異的結合を阻害する分子。
【請求項21】
β鎖の活性化された形態に対する分子の結合親和性がチモーゲン形態のβ鎖に対する分子の結合親和性よりも大きい、請求項20に記載の分子。
【請求項22】
β鎖の活性部位に結合する、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項23】
上記活性部位がβ鎖の残基534、578、619、673、692、693、694、695、696、699及び/又は702の少なくとも一を含む、請求項22に記載の分子。
【請求項24】
活性化されたβ鎖は、単鎖HGFの切断によって得られたβ鎖のコンホメーションを有する、請求項22に記載の分子。
【請求項25】
上記切断が単鎖HGFの残基494と495で又は隣接して生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記切断が単鎖HGFの残基494と495間で生じる、請求項25に記載の分子。
【請求項27】
上記分子が小分子、抗体又はその断片、ペプチド、又はそれらの組み合わせである、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項28】
活性化されたβ鎖に対する上記分子の結合がHGFによるc−met活性化を阻害する、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項29】
活性化されたβ鎖に対する上記分子の結合がHGFにより誘導された細胞増殖を阻害する、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項30】
活性化されたβ鎖に対する上記分子の結合がc−metレセプターの二量体化を阻害する、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項31】
請求項1ないし5及び17ないし19の何れか一項に記載の方法によって得られる、請求項20ないし30の何れか一項に記載の分子。
【請求項32】
配列VDWVCFRDLGCDWELを含んでなるペプチドである、請求項20又は21に記載の分子。
【請求項33】
c−metへの結合について肝細胞増殖因子β鎖と競合する分子。
【請求項34】
上記分子が請求項6又は7に記載の方法によって得られる物質である、請求項33に記載の分子。
【請求項35】
上記分子がc−metレセプターの二量体化を阻害する、請求項33又は34に記載の分子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−526447(P2007−526447A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515232(P2006−515232)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/017901
【国際公開番号】WO2005/001486
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】