説明

HI−6ジメタンスルホネートの製造方法

本発明は、HI6ジメタンスルホネートの製造方法であって、O−保護ピリジンアルドキシム化合物がビス(メチルスルホノキシメチル)エーテルと適当な溶媒中で接触して中間体化合物を形成し、前記中間体化合物がイソニコチンアミドと接触してO−保護HI6生成物前駆体を形成し、前駆体を脱保護してHI6ジメタンスルホネートを形成することを含む製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHI−6の製造方法および製造中の新規中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
HI−6は有機リン系神経ガスに対するビスピリジニウムオキシム系の解毒剤である。HI−6は化学式I:
【化1】


を有する。ここでRは適当な対イオンである。適当な対イオンには塩化物およびメタンスルホネートを含む。
【0003】
対イオンとして塩化物を有するHI−6の化学名は(1−(((4−(アミノカルボニル)ピリジニオ)メトキシ)−メチル)−2−((ヒドロキシイミノ)メチル)ピリジニウムジクロリド一水和物(CAS34433−31−3)であり、長年有機リン系神経ガスに適した解毒剤として知られている。HI−6ジクロリド(2Cl)の公知の製造法には、ピリジン−2−アルドキシム(P2A)およびイソニコチンアミド(INA)のピリジニウム部分への四級化試薬として、ビス(クロロメチル)エーテルを利用する必要がある。反応は以下のように進行する:
【化2】

【0004】
HI−6を製造するこの従来法には、試薬であるビス(クロロメチル)エーテルがそれ自体高い毒性があるという不都合がある。神経毒に対する解毒剤として用いられる薬剤には、たとえ出発試薬から偶然に残存した量であっても、高有毒物質が存在しないことが好ましいだろう。たとえ最終生成物に発ガン性のビス(クロロメチル)エーテルが含まれていない事を保証することができたとしても、その製造や使用にかかわる作業員の健康を脅かす可能性があるので、製造工程においてこの化合物が使用されること自体が極めて好ましくない。
【0005】
他の解毒剤と認められたHI−6は、対イオンがメタンスルホネートであるHI−6、すなわちHI−6ジメタンスルホネート(DMS)である。いくつかの研究(例えば、Thiermann等の非特許文献1)にはHI−6 2Clと比べてHI−6DMSの好都合な特性が報告されている。HI−6DMSはHI−6 2Clからイオン交換クロマトグラフィー法により得ることができる:
【化3】

【0006】
しかし、HI−6DMSのこの製造経路にはまだ、高毒性のビス(クロロメチル)エーテルが合成中に使用されており、微量のこの物質が汚染物質としてHI−6DMSを含む最終製品である薬剤中に存在するかもしれない危険性を伴っており、あるいは製造工程で使用されたこの試薬が製造、保存、輸送または使用にかかわった人の健康に悪影響を及ぼす可能性があるという不都合がある。
【0007】
代わりの四級化試薬としてビス(メチルスルホノキシメチル)エーテル(BSME)を用いて、出発オキシムから直接HI−6DMSを導く代替経路が提案されている。Yang等は非特許文献2にこのような経路を提案しているが、生成物の収率は極めて低い。Hsiao等の特許文献1にも類似の問題ある。どちらの場合も、複数回の分別再結晶後のHI−6DMSの収率は11%(P2Aに対して)とされている。これらの先行技術の合成法は以下のようにまとめられる:
【化4】

【0008】
ここでピリジン−2−アルドキシム二量体とイソニコチンアミド二量体は不要な副生成物であり、不満足な高い比率で生成混合物中に存在する。これらの不要な副生成物はHI−6DMSと類似の溶解性を有しており、生成物から除くことが困難である。従ってこのような合成経路を用いて十分な純度のHI−6DMSを得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5130438号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】International Journal of Pharmaceutics,137(1996)167〜176
【非特許文献2】Bull.Korean Chem.Soc.2003 Vol.24、No.9、1368〜1370
【非特許文献3】Arzneimittel Forschung vol 27、1976、1273
【非特許文献4】Chemical Journal of Chinese Universities 1984, Vol 5、No.5、pp 683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、既述の先の経路の不都合のいくつかを克服または改善するHI−6の合成経路を提供することである。特に本発明の目的は、高毒性および/または発ガン性試薬を使用しないHI−6の製造方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、生成物の収率および/または純度が市販品として十分であり、先行技術と比較して改善されている、簡便な工業規模のHI−6の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、HI−6Rの製造方法、ここでRは適当な対イオンまたは1組の対イオンである、であって、O−保護ピリジンアルドキシム化合物が(R’−アルキル)エーテル、ここでR’は対イオンまたは1組の対イオンの1つに一致する、と接触して適当な溶媒中で中間体化合物を形成し、前記中間体化合物がイソニコチンアミドと接触してO−保護HI−6生成物前駆体を形成し、前駆体を脱保護してHI−6Rを形成することを含む製造方法が提供される。
【0013】
当然のことながらHI−6カチオンは二価であり、この場合Rは二価のアニオンまたは2つの一価のアニオンを含む必要がある。好ましくは、これは2つの一価のアニオンであり、各一価のアニオンはR’に対応し、(R’−アルキル)エーテルはこの場合ビス−(R’−アルキル)エーテルである。Rが二価のアニオンである場合、Rはこの場合R’と一致する。
【0014】
本方法はピリジンアルドキシムの四級化を経て進む。ピリジンアルドキシムはピリジン−2−アルドキシムであることが好ましい。従って本発明は、HI−6Rの製造方法であって(ここでRは適当な対イオンまたは1組の対イオンである)、O−保護ピリジン−2−アルドキシム化合物はビス(R’−アルキル)エーテル、ここでR’は対イオンまたは1組の対イオンの1つに一致する、と適当な溶媒中で四級化して中間体化合物を形成し、前記中間体化合物はイソニコチンアミドと接触しイソニコチンアミドを四級化してO−保護HI6生成物前駆体を形成し、前記O−保護HI−6を不要な不純物から分離し、O−保護HI6を脱保護してHI−6Rを形成することを含む製造方法を提供する。
【0015】
対イオンはメタンスルホネートであることが好ましい。
【0016】
アルキル基は短鎖アルキル(アルキレン)基、例えばC1〜4であることが好ましい。好ましくはメチル(メチレン)である。
【0017】
HagedornはすでにO−メチルピリジン−2−アルドキシムの四級化を非特許文献3に報告している。しかし、O−アルキル保護基は容易には外れない。O−ベンゾイルピリジン−2−アルドキシム誘導体のヨウ化メチルによる四級化などの、より外れやすい保護基を有する複数のO−置換化合物の四級化の試みがすでに非特許文献4中にZhou Xiruiにより開示されている。この研究では、O−ベンゾイルピリジン−2−アルドキシム誘導体は通常の四級化生成物を形成せず、むしろアルドキシム官能基のβ−脱離が起こり四級化した2−シアノピリジン誘導体を与えることが明らかになった。従って望ましいオキシム官能基は四級化の工程中に壊れた。
【化5】

【0018】
我々は複数のO−置換ピリジン−2−アルドキシム類を用意し、これらの誘導体の四級化が可能で、β−脱離がほとんど起こらないことを見出した。事実、多くの場合、Oの保護により四級化反応が大いに促進され、従来の非保護経路よりもとても高い収率で望ましい生成物が得られることが明らかとなった。さらにまたとても有益なことに、Oの保護によりこれらの中間体O−保護四級化化合物が新たな溶解特性を有し、そのおかげで不純物を簡便に除去でき、従って純度および収率が向上する。
【0019】
従って、本発明はHI6DMSの製造方法であって、O−保護ピリジンアルドキシム化合物がビス(メチルスルホノキシメチル)エーテル(BSME)と適当な溶媒中で接触して中間四級化化合物を形成し、前記中間体化合物がイソニコチンアミドと適当な溶媒中で接触しイソニコチンアミドを四級化してO−保護HI−6生成物前駆体を形成し、O−保護HI−6生成物前駆体から不要な不純物を分離し、前駆体を脱保護してHI−6DMSを形成すること、を含む製造方法を提供する。
【0020】
保護基は好ましくはエステル基、より好ましくはアセテート基である。
【0021】
O−保護ピリジンアルドキシムのBSMEとの四級化に適当な溶媒には:塩素化炭化水素類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシエタンなどのエーテル類が含まれる。
【0022】
イソニコチンアミドのO−保護中間体との四級化に適当な溶媒には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリジノンが含まれる。
【0023】
不純物を含む不要なイソニコチンアミドをO−保護HI−6生成物前駆体から、不要な不純物の沈殿/結晶化が起こるように、反応混合物を適当な溶媒混合物とすりつぶすことにより、分離する。そしてこれらをろ過により除くと、ろ液中にO−保護HI−6生成物前駆体が残る。このような工程に適当な溶媒には水性アルコール類(好ましくはメタノール、エタノール)、アセトンが含まれる。他の適当な溶媒は当業者にとって明らかであろう。
【0024】
保護生成物前駆体を、例えば前駆体を、保護基の脱離に適当な溶媒および/または試薬を含む脱保護剤と接触させることにより脱保護することができる。適当な脱保護剤には、プロトン性溶媒または不安定なプロトンを含む溶媒混合物、不安定なプロトンを含む溶媒混合物と4−ジメチルアミノピリジンなどのアシル化触媒の組み合わせが含まれる。このような脱保護剤の例としてはエタノールや水などの溶媒、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
本発明による一つの好ましい方法は下記式に従って進行する:
【化6】


ここでR''OHはアルコール性および/またはプロトン性溶媒またはこれらの2つ以上の混合物である。
【0026】
また保護HI−6生成物前駆体が本発明により提供される。前駆体は好ましくはエステル基で保護される。
【0027】
保護P2A類を用いたBSMEからHI−6DMSへのこの経路は、非保護P2Aの化学反応を超える複数の有利性を提供する。保護された経路により、スケールアップした工業生産がより容易にできるようになる。例えば非保護化合物の反応や実験室規模では、P2AのBSMEとの反応によりタール状のペーストおよび上清が生成し、工程中にこの上清を傾斜により除き、ペーストを利用する。このデカンテーションステップを製造規模で行うことは難しく、またこのようなペーストを撹拌したり、さらに試薬と混合することは難しい。都合のよいことに、保護基によって溶解特性が変わったことは、この経路中にペーストが生成せずデカンテーションステップが必要ではないことを意味する。これにより、処理が容易になる。
【0028】
この保護経路により、HI−6DMSの収率が大幅に上昇する。報告されている非保護経路からのHI−6DMSの収率は、複数回の分別再結晶化ステップの後、約10%である。我々は非保護経路が全く再現不可能であり、P2Aに対して等量モル以上のBSME(P2Aに対して2〜3モル当量)を用いた時に最良の結果が得られることを見出した。非保護経路を用いて得られた収率はいずれも10〜12%を超えることはなかった。保護経路は再現可能に、50〜60%の収率(P2AOAcに対して)で85〜95%純度の粗HI−6DMSを与えるだろう。この物質を再結晶して70〜80%の収率で純粋なHI6DMSとすることができ、全収率は再現可能に35〜42%の範囲(P2AOAcに対して)となる。
【0029】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を以下に下記の実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0031】
O−保護ピリジン−2−アルドキシム基質の合成
O−エチルピリジン−2−アルドキシム(P2AOEt)
【化7】


水酸化ナトリウム(33.5gの10%w/w水溶液、83.8mmol)に、上から撹拌しながら固形のP2A(10g、81.9mmol)をN雰囲気下加えた。トルエン(144g)、臭化テトラブチルアンモニウム(1.3g、4.1mmol)および臭化エチル(10.6g、97.5mmol)を加え二相とした。混合物をよく撹拌しながら80℃まで加熱した。3時間後、試料を採取しHPLCにより分析すると>90%の変換が起こっていることが明らかとなった。混合物を23℃まで冷却し、褐色の有機相を単離し、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧下(40mbar)除去し、7.44gの褐色油状物質を得た(収率60.5%)。H nmr分析から微量の臭化エチル、トルエンおよびP2Aが示された。この油状物質をさらに蒸留し(81℃、2mbar)、無色油状物質を得た;H NMR(CDCl、250MHz):δ1.35(t、3H、J=7.1Hz)、4.28(q、2H、J=7.1);7.25(m、1H);7.70(m、1H);7.80(m、1H);8.17(s、1H)、8.61(m、1H)ppm.13C NMR(CDCl、63MHz):δ14.61、70.36、120.99、123.85、136.43、148.89、149.68、151.88ppm.
【0032】
O−トリエチルシリルピリジン−2−アルドキシム(P2AOTES)
【化8】


容器に固形のP2A(2g、16.4mmol)をN雰囲気下加えた。無水塩化メチレン(MDC、10.6g)、トリエチルアミン(1.8g、17.9mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(4−DMAP、4mg、0.3mmol)を加え、混合物を撹拌した。MDC(10.6g)中のトリエチルシリルクロリド(2.5g、16.6mmol)をよく撹拌しながら滴下し、発熱に注意した(26〜31℃)。添加終了時に白色懸濁液となった。混合物を23℃で12時間撹拌後、MDC(106g)を加えた。さらに混合物を氷冷水(3×100g)で洗浄し、有機相を単離、MgSOで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧下除去して、3.24gの淡黄色油状物質を得た(収率83.7%);H NMR(CDCl、250MHz):δ0.83(q、6H、J=7.1Hz)、1.06(t、2H、J=7.1);7.25(m、1H);7.68(m、1H);7.88(m、1H);8.31(s、1H)、8.59(m、1H)ppm.13C NMR(CDCl、63MHz):δ4.33、6.64、120.57、123.88、136.34、149.42、152.36、154.23ppm.
【0033】
O−アセチルピリジン−2−アルドキシム(P2AOAc)
【化9】


14%w/wの無水酢酸(1moleq)のMDC溶液を、14%w/wのP2A(10g、81.9mmol)、トリエチルアミン(8.27g、81.9mmol)および触媒である4−DMAP(0.004g)のMDC溶液に室温でN雰囲気下ゆっくり加えた。反応混合物を14時間撹拌した後、混合物を氷水(150g)中で冷却し、有機相を氷水(150g)で洗浄、乾燥(MgSO)、ろ過し、溶媒を減圧下除去し12.2g(収率91%)の淡黄色透明油状物質を得、これをそのまま結晶化して白色固形物とした;H NMR(CDCl、250MHz)δ2.2(s、3H)、7.3(m、1H)、7.8(t、1H)、8.0(d、1H)、8.4(s、1H)、8.7(d、1H)ppm.13C NMR(CDCl、63MHz):δ19.54(OC(O)CH)、122.00、125.51、136.70、149.87、149.93、156.57、168.31ppm.
【0034】
四級化反応
O−エチルピリジン−2−アルドキシム(P2AOEt)のBSMEおよびイソニコチンアミドとの反応
【化10】


固形のBSME(1.4g、5.9mmol)を容器中に弱N気流下加えた。アセトニトリル(2.1g)を加え、その混合物を撹拌した。アセトニトリル(4.8g)中のP2AOEt(0.9g、5.9mmol)を23℃で加え、その混合物を22時間撹拌した。固形のイソニコチンアミド(0.69g、5.6mmol)を加え、混合物を5時間撹拌後、−20℃で4日間放置した。生成した不均一スラリーを23℃まで加温後、ろ過した。そしてろ過ケーク/ペーストをエタノール(15.8g)中で1時間撹拌、ろ過して乾燥固形物を得た。HPLCおよびH nmr分析により、これはイソニコチンアミド二量体のジメタンスルホネートであることがわかった。ろ液をあわせて溶媒を減圧下除去し、褐色油状物質を得、これをそのまま結晶化して1.4gの固形物を得た。H NMR(d−DMSO、250MHz):δ1.30(t、3H、OCHCH)、2.34(s、6H、OSOCH)、4.40(q、2H、OCHCH);6.24(s、2H、CHOCH)、6.39(s、2H、CHOCH)、7.25(m、1H);7.70(m、1H);7.80(m、1H);8.23(m、1H)、8.32(s、1H、NH)、8.52(m、3H)、8.75(m、3H、2xCH、1xNH)、9.25(m、1H)、9.36(m、2H)ppm.
【0035】
O−トリエチルシリルピリジン−2−アルドキシム(P2AOTES)の臭化ベンジルとの反応
【化11】


P2AOTES(0.12g、0.50mmol)のMDC/アセトニトリル(4g/3.5g)溶液に臭化ベンジル(0.17g、1.0mmol、2.0moleq.)を加えた。混合物を2日間還流し、不均一スラリーを得た。混合物をろ過し、ケークをアセトニトリル(2.5g)で洗浄し、空気流を用いて乾燥した。ケークをHPLCで分析すると>98%(面積)純度であった。H NMR(DO、250MHz):δ5.88(s、2H、CHPh)、7.14(m、2H)、7.34(m、3H);7.95(m、1H)、8.27(m、1H)、8.46(m、1H);8.5(s、1H);8.80(m、1H)ppm.13C NMR(DO、63MHz):δ61.64(CHPh)、127.16、127.45、128.00、129.41、129.46、132.43、141.99、145.94、146.00、147.14ppm.
【実施例1】
【0036】
HI−6DMSの調製
【化12】


BSME(2.89g)とアセトニトリル(11.3g)の溶液に、P2A(2.03g)の冷却(−20℃)テトラヒドロフラン(71.2g)溶液を窒素雰囲気下30分かけてゆっくり加えた。溶媒を2時間かけて一部留去し、アセトニトリル(11.3g)とテトラヒドロフラン(71.2g)を加えてガム状物質とした。上清を静かに移し、アセトニトリル(14ml)をガム状物質に加えた。イソニコチンアミド(1.2g)を加え、混合物を室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧下除去し、残渣をエタノール(49.5g)ですりつぶした。スラリーをろ過し、イソニコチンアミド二量体を除去した。ろ液を一晩撹拌した。固形物をろ過により集め、ケークをエタノールで洗浄し、HI−6DMSを得た(1.9g、HPLC面積法より90%、29%理論収率)。
【実施例2】
【0037】
HI−6DMSの調製
BSME(2.89g)とアセトニトリル(11.3g)の溶液にP2A(2.03g)のアセトニトリル(17.8g)溶液を窒素雰囲気下1.5時間かけてゆっくり加え、混合物を20時間撹拌した。イソニコチンアミド(1.2g)およびアセトニトリル(3.95g)を加え、混合物を室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧下除去し、残渣をエタノール(49.5g)ですりつぶした。スラリーをろ過し、「イソニコチンアミド二量体」を除去した。均質なろ液を一晩撹拌した。固形物をろ過により集め、ケークをエタノールで洗浄しHI6DMSを得た(2g、HPLC面積法より85%、30%理論収率)。粗HI−6DMSを水性エタノールから再結晶し、1.2gのHI−6DMSを得た(HPLC面積法より>98%)。これはP2AOAcからの全収率21%である。
【実施例3】
【0038】
HI−6DMSの調製
固形のBSME(20g、84.0mmol、1.2moleq.)を乾燥容器にN雰囲気下加え、P2AOAc(11.6g、70.0mmol、1.0moleq)のMDC/アセトニトリル(85.3g/9.2g)溶液を加えた。混合物を6時間撹拌後、ジメチルホルムアミド(25.8g)中のイソニコチンアミド(11.4g、93.3mmol)を加えた。混合物を17時間撹拌し続けた。エタノール(370g)を加え、混合物を約6時間撹拌した。生成したスラリーをろ過した。そして均質なろ液を容器中に入れ、脱保護が完了するまで撹拌した。そして生成したスラリーをろ過し、17.8g(P2AOAcを基準として53%の収率)のオフホワイトの粉末を得た(HPLC面積法で95%)。そして5gのこのケークを水性エタノール(44.4g)から再結晶して、3.9gの白色固形物を得た、HPLC(面積法で>99%);H NMR(DO、250MHz):δ2.67(s、6H)、6.22(s、2H);6.34(s、2H);8.03(m、1H);8.42(m、3H);8.60(m、2H)、8.98(d、1H);9.14(d、2H)ppm.13C NMR(DO、63MHz):δ38.48(OS(O)CH)、85.58、86.86、126.70、127.57、127.95、141.89、144.54、145.17、146.97、148.18、150.79、166.26(C(O)NH)ppm。Found:C、40.24;H、4.59;N、11.68.Calculated for C1622;C、40.16;H、4.63;N、11.71.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HI−6R、ここでRは適当な対イオンまたは1組の対イオンである、の製造方法であって、O−保護ピリジンアルドキシム化合物が(R’−アルキル)エーテル、ここでR’は対イオンまたは1組の対イオンの1つに一致する、と適当な溶媒中で接触して中間体化合物を形成し、前記中間体化合物がイソニコチンアミドと接触してO−保護HI−6生成物前駆体を形成し、前駆体を脱保護してHI−6Rを形成すること、を含む製造方法。
【請求項2】
Rが2つの一価のアニオンを含み、各一価のアニオンはR’に対応し、(R’−アルキル)エーテルがビス(R’−アルキル)エーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
O−保護ピリジンアルドキシム化合物が化学式:


ここでYは保護基である、を有する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
保護基がエステル基を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
保護基がアセテート基を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アルキル基が短鎖アルキル(アルキレン)基である、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
アルキル基がC1〜4アルキル(アルキレン)基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルキル基がメチル(メチレン)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R’がメタンスルホネートである、請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
O−保護ピリジンアルドキシム化合物がビス(メチルスルホノキシメチル)エーテルと適当な溶媒中で接触して中間体化合物を形成し、前記中間体化合物がイソニコチンアミドと接触してO−保護HI−6生成物前駆体を形成し、前駆体を脱保護してHI−6ジメタンスルホネートを形成すること、を含むHI−6ジメタンスルホネートの製造するための請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物がO−保護HI−6生成物前駆体を溶解することができる溶媒と接触し、不純物が沈殿し、不純物をろ過により除くことによりO−保護HI−6生成物前駆体を不純物から分離する、請求項1から10に記載の方法。
【請求項12】
不純物がイソニコチンアミド二量体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保護生成物前駆体が、前駆体が脱保護剤と接触することにより脱保護される、請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
脱保護剤が保護基の脱離に適当な溶媒および/または試薬を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前駆体が脱保護効果のある脱保護剤とすりつぶされる、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脱保護剤がアルコール性溶媒および/またはプロトン性溶媒を含む、請求項13から15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
溶媒がエタノールまたは水またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
下記式:


ここでR''OHはアルコール性および/またはプロトン性溶媒またはこれらの2つの以上の混合物である、に従って進行する、請求項1から17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
O−保護HI−6を含む保護HI−6生成物前駆体。
【請求項20】
エステル基によって保護された、請求項19に記載の前駆体。
【請求項21】
アセテート基によって保護された、請求項20に記載の前駆体。

【公表番号】特表2010−501539(P2010−501539A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525113(P2009−525113)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050503
【国際公開番号】WO2008/023205
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(502132634)フェニックス・ケミカルズ・リミテッド (9)
【Fターム(参考)】