説明

HIVに対する中和性抗体および細胞障害性Tリンパ球を誘発する複合合成ペプチド構築物

【課題】複数の宿主においてTヘルパー応答、細胞毒性リンパ球応答及び中和性抗体を誘発するペプチドの提供。
【解決手段】HIVのエンベロープタンパクに由来する多重決定基Tヘルパーペプチド類を含んだペプチド構築物と、HIV-IIIBの主要中和性決定基に対応し、且つ優勢CTLエピトープを含むことが示されているHIV−1・gp160のV3ループ中のペプチド18を具備するポリペプチドであって、それぞれの応答が、広範な移植抗原ハプロタイプを提示する哺乳類種の複数の個体において生じる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願〕
本件出願は、1992年3月6日に出願された同時継続のアメリカ合衆国出願第07/847,311号の一部継続出願であり、この親出願は、1988年1月26日に出願されたアメリカ合衆国出願第07/148,692号の一部継続出願である。また、本件出願は、1991年8月29日に出願された同時継続のアメリカ合衆国出願第07/751,998号の一部継続出願である。これら全ての出願は、全体として本件出願の一部をなすべく、参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の背景〕
発明の分野
本発明は、共有結合的に結合したTヘルパー(Th)エピトープ、細胞障害性リンパ球(CTL)エピトープ、および感染性物質(特に寄生性またはウイルス性の病原)に対して中和性抗体応答(AbN)を誘発するエピトープを含んだペプチド類に関する。本発明の適用において特に焦点が当てられる例は、ヒト・免疫不全ウイルス(HIV)に対するものである。当該ペプチドは、広範な腫瘍組織適合性複合体(MHC)タイプを有する宿主において、これら三つの全ての応答を誘発する特徴を有している。
【0003】
本発明はまた、上記ペプチドを利用した、HIVに感染した個体における免疫機能の測定法方に向けられている。本発明は更に、上記ペプチドをワクチン組成物の一成分として、または単一の活性成分として用いた予防ワクチンまたは治療ワクチンに向けられている。
【0004】
関連技術の説明
自然感染の際に誘起されるHIV抗原に対する免疫応答は、ウイルス感染を規制(regulate)する反応と、免疫機能の一体性(integrity)に対して拮抗する反応との均衡かもしれない(1−3)。この均衡に対して有利または不利に影響する決定因子は、未だ定かではない。宿主の初期免疫応答は、免疫機能不全の増大を伴う進行性の衰弱性疾患に至る持続的HIV感染の経過に影響するように思える(4−7)。該ウイルスは、抑制エピトープ(suppressive epitopes)またはマスク糖鎖(masking carbohydrate)のような、免疫系を回避できる構造、クローン制限(clonal restriction)を含む構造(8−10)、或いはウイルスの感染性を高める抗体(11−16)または免疫不全に寄与する自己抗体もしくはT細胞(17−20)のような構造をを含んでいるかもしれない。
【0005】
HIVエンベロープの主要な中和性決定基(PND)は、第三超可変領域またはシステイン残基301および331の間のV3ループに位置する(21−23)。V3ループに対するより広範な中和性抗体も見出されているが(27)、当初ペプチド結合ELISAで調べたときには、この領域の抗体はその中和特性においてタイプ特異的であり、より交差反応性であることが示された(23−26)。合成ワクチの開発にとっては幸運なことに、このような抗体は、短いペプチドでの免疫感作によって発生させることができる(21,28,29)。細胞フリーの同族ウイルスによる攻撃に対するV3特異的抗体の防御効率が、チンパンジーにおける抗原投与研究で示されている(15,30,31)。また、極く最近においては、V3ループに特異的なマウス/ヒトIgG1キメラモノクローナル抗体をチンパンジーに受動移入することによって、ウイルス攻撃に対する防御が達成された(32)。この領域の内および外(しかし影響はある)におけるウイルスエンベロープタンパクの配列変化は、中和回避突然変異体および可能なCTL免疫回避突然変異体の両者において生じ、細胞の向性を変化させる(33−37)。
【0006】
感染個体において、HIV単離体における高度の遺伝子可変性がみられる(38−40)。所定の個体から単離されたHIVは、疾患の経過に亘って変化するように思える。免疫の圧力下では、ウイルスは感染の過程において、細胞変性(cytopathicity)、複製速度、および細胞向性のような発現型特性における相違を示すように見える。ウイルスが、感染の間に低レベルで連続的に複製し、また「真の潜伏」の状態を獲得しないことは、HIV−1が慢性の活性感染を達成し、また選択的な機構がウイルスの存続に重要な役割を果たすとの見解(33)を支持する。当該エンベロープタンパクのPNDをコードする多くの異なったV3領域が、抹消血液単核細胞(PBMC)由来のHIV単離体中に検出されており、このことは、陽性選別によってイン・ビボにおけるHIV・env遺伝子の著しい多様性が導かれることを示唆している(40)。にもかかわらず、PNDは、配列の多様な単離体によって生成される中和性抗体の標的となる保存されたエピトープを含んでおり、またPNDに由来する限定数のペプチド類が、たとえ力価が低く、おそらくは親和性が低くとも、多くの単離体を認識する中和性抗体を誘発できるとの証拠が存在する(24,25,41)。
【0007】
有効なワクチンのための基準は、安全であること、即ち、自己免疫またはウイルス増大反応を誘起しないことだけでなく、感染ポピュレーションにおいて優勢な全ての可能なHIV変種に対して、細胞性免疫応答および中和性抗体応答を誘発できることでなければならない。加えて、所定の個体のMHC分子は、全体としての種(species)によって認識される可能な抗原性決定基のサブセットのみと結合してこれを認識するであろうから、合成ペプチドワクチンはまた、殆どのHLAタイプのT細胞による認識を誘発するために充分な抗原決定基を組み込んでいなければならない。
【0008】
従って、我々は先の研究において、夫々がHIVエンベロープの6つの多重決定基Tヘルパー領域に対応する、20〜33残基の6種類の合成ペプチドを構築した(42)。クラスターペプチドと呼ばれるこれらのペプチドは、3または4のハプロタイプのマウスのT細胞を増殖することによって認識される、重なってはいるが異なるTヘルパーエピトープに亘っている。これらのクラスターペプチドは、組換えgp160(rgp160)で免疫感作されたマウス、並びにHIVに感染したヒトの抹消血液リンパ球において、T細胞応答を刺激する能力について試験された。マウスはまた、完全なgp160に応答したイン・ビトロでのT細胞の誘導について試験するために、当該クラスターペプチドで免疫感作された。クラスターペプチド3、4および6(表Iの配列を参照のこと)は、rgp160で免疫感作された、4つのMHCハプロタイプの全てのマウスに由来するT細胞を刺激した;また、マウスを当該クラスターペプチドで免疫感作すると、イン・ビトロで全エンベロープタンパクを認識することができるT細胞応答が誘発された。クラスターペプチド1は今回の研究においても用いられ、一つのマウス株でのみ強力に増殖を刺激した。これに対して、他の三つのマウス株は、当該ペプチドが作成された起源である多重決定基領域の成分を認識した。従って、全体は、その部分の総和よりも低い活性を有していた(42)。クラスターペプチド1、3、4および6は、HIV陽性でインフルエンザ陽性の抹消血液リンパ球において、夫々試験症例の64、73、52および58%で、顕著なIL−2応答を刺激した。多分、試験された患者は多数の異なったHIV副株に感染していたであろう事実にも拘わらず、このような高い応答が得られたことは注目に値する。クラスターペプチド1、3および4は、北アメリカおよびヨーロッパのHIV単離体の間で相対的に保存された配列を有しており、またクラスターペプチド6は、保存配列および可変配列の間の境界に亘って広がっていた(43)。
【0009】
成功するペプチドワクチンは、多くのHLAタイプのワクチン被接種者において、中和性抗体応答と共に、Tヘルパー(Th)および細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答を誘発できなければならない。主要組織適合性複合体(MHC)クラスI制限CTL(MHC class I-restricted CTL)は、ウイルス感染からの回復において中心的な役割を果たすように思える(81)。イン・ビトロでは、外因性リンホカイン類はCTL前駆体の成熟におけるT細胞の補助(T-cell help)を肩代わりできるけれども、Th−B細胞の共働と比較すると、イン・ビボでのCTLのプライミングにおけるThの役割は未だ少ししか理解されていない。CTL誘導におけるヘルパーの必要性については多くの証拠があるが(82−90)、補助(help)から独立したCTL誘導についての証拠も存在する(85,91−95)。更に、今日までの研究では、B細胞に関する同族補助(cognate help)におけるハプテンへのキャリアの連結に類似した、CTL決定基へのヘルパー抗原性決定基の共有結合的連結を要求する補助の必要性は示されていない。この証拠の欠如は、CTLの標的が全細胞であり、最近まで、免疫感作には全細胞(組織移植片)または生ウイルスが必要とされていたという事実に起因するのかもしれない。決定基連結の示唆に至り得る最も密接に関連した証拠は、拒絶反応を誘発するために、ヘルパー決定基およびCTL決定基は同じ皮膚移植片に存在しなければならないことを示すものであった。しかし、これを更に分子レベルにおいて発展させることはできなかった。今や、CTL誘発のためのペプチド免疫感作の可能性が示されており(96−100)、ヘルパーおよびCTLの両者の決定基を含むペプチドを用いて、この疑問の解明に取りかかるのが容易になっている。最近の証拠は、ヘルパー部位が有益であることを示しているが(90,101,102)、ヘルパー部位およびCTL部位を結合する必要があるか否かは不明である。実際に、未結合のヘルパーおよびCTLエピトープペプチドは、二つの研究においては有効であり(90,102)、他の研究においては試験されていない(101)。しかし、前者の研究においては、ヘルパーおよびCTL決定基ペプチドの混合物が、これら二つのペプチドを同じ微小環境に隔離する不完全フロイントアジュバントエマルジョン中に含有させた形での投与され、或いは多重免疫感作のための高投与量で与えられた。
【発明の開示】
【0010】
〔発明の概要〕
本発明は、病原により発現される抗原に対して広範な免疫応答を与えるペプチドに向けられている。当該抗原は、典型的にはウイルス性または寄生性の病原に由来する抗原である。ペプチド設計のための我々の基本方針は、夫々のクラスターペプチドを、クラスI分子と共同してCD8細胞障害性T細胞により認識される免疫優勢部位であることが先に同定されており、またHIV−III BエンベロープタンパクのV3ループまたは主要中和性決定領域内に存在する短い合成ペプチド(ペプチド18)に連結することである。
【0011】
広範なMHCタイプ(マウスのH−2遺伝子座、ヒトのHLA遺伝子座と等価)を有する宿主を、本発明のペプチドで免疫感作することによって、液性および細胞性の両方の成分を有する免疫応答がもたらされる。液性サイドでは、高力化の中和性抗体応答が観察される。細胞性免疫応答に関しては、細胞障害性Tリンパ球およびヘルパー細胞の両方が誘導される。
【0012】
使用するエピトープを適切に選択することによって、多くの病原株に対して広い特異性を有する応答が誘発される。これは、例えばHIVに見られるように、標的病原の株間で抗原構造に大きな多様性があるときに特に重要である。多くのHIV株に対して特異性の広い応答を生じるようにペプチドを設計する一つの方法は、同時継続のアメリカ合衆国特許出願07/760,530(その全体が参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0013】
従って、本発明の一つの目的は、広範囲のMHCタイプを発現する複数の宿主において、Tヘルパー応答、細胞毒性リンパ球応答および高力化の中和性抗体の全てを誘発するペプチドを提供することである。
【0014】
本発明のペプチドは、診断の目的においても有用である。例えば、実施例に開示した特定のペプチドは、HIVに感染した個体において、Tヘルパー細胞、細胞障害性Tリンパ球およびB細胞(B細胞前駆体および成熟血漿細胞の両方)の免疫機能を試験する種々の試験フォーマットで用いることができる。従って、ここに記載するペプチドを試薬に用いる診断方法および免疫機能試験を提供することもまた、本発明の目的である。
【0015】
本発明のペプチドで免疫感作された宿主において誘発される広範囲の免疫応答によって、予防的または治療的の何れであれ、寄生性またはウイルス性の感染、特にHIV−1感染に対するワクチンを提供することも、本発明の更なる目的である。
【0016】
本発明の更なる目的は、寄生性またはウイルス性の病原、特にHIV−1ウイルスに対して広範な免疫応答を誘発するような、哺乳類宿主を免疫化する方法を提供することである。
【0017】
本発明のペプチド類は、例えばアメリカ合衆国特許出願第751,997号に記載されているような多重決定基Tヘルパーエピトープを有するペプチド、例えばアメリカ合衆国特許出願第07/874,311号または第07/148,692号に記載されているような細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープ(好ましくは種々の標的ウイルス株と交差反応するCTLを誘発するもの)を有するペプチド、および中和性交代を誘発する決定基(主要な中和性決定基(PND))を有するペプチドの共有結合性リンケージを含んでいる。夫々の場合におけるエピトープ類は、広範な主要組織適合性複合体抗原(MHC)を有する宿主によって認識されることが示され得るエピトープ類である。このMHCは、ヒトではHLAとも称され、組織移植片が宿主によって受容されるかまたは拒絶されるかを部分的に決定する細胞表面タンパクである。MHCタンパクは、免疫応答の初期段階において、免疫系に対する抗原の提示に関与している。本発明のペプチド類が多くの異なったMHCまたはHLAタイプによって認識されるという事実から、それらのペプチド類は当該宿主ポピュレーションの大部分において有効であることが期待される。
【0018】
更に、本発明のペプチド類は、当該抗原に対する高力価の中和性抗体であって、その配列が該抗原に由来している抗体を誘発するという性質を示す。本発明のペプチドを用いたウイルス感染個体の免疫機能を評価する方法は、個体から単離して当該ペプチドと共にインキュベートした細胞の応答を測定するイン・ビトロ試験である。例えば、患者から取り出した抹消血液細胞を本発明のペプチドと共にインキュベートし、これに特異的に応答したサイトカイン類の放出を測定することによって、活性を評価することができる。測定すべき好ましいサイトカインはインターロイキン−2(IL−2)である。測定方法は、当該技術において公知の何れの技術であってもよく、例えば、インキュベートされた抹消血液細胞の培養上清中において、インターロイキン−2依存性細胞ラインの増殖を測定することである。或いは、IL−2(または他のサイトカイン類)のELISA試験を行うことができる(本明細書の一部として組み込まれる合衆国特許出願第07/751,998を参照のこと)。本発明のペプチドを用いた免疫化方法は極めて単純であり、例えば一以上の本発明のペプチドおよび薬学的に許容され得るキャリア溶液もしくはアジュバントを含む滅菌組成物を静脈注射すればよい。或いは、当該ペプチドは、同時継続のアメリカ合衆国特許出願第08/032,494号(その全体が参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているように、放射線照射された抗原提示細胞の表面に結合させて投与することができる。
【0019】
〔発明の詳細な説明〕
中和性応対応答を増強するための補助を提供する研究において、我々は、クラスターペプチドをPND内に含まれるペプチド18(P18)に直接連結した。P18は、HIV−1・III B・gp160のアミノ酸残基308−322からなっている[配列の番号付けは、Los Alamosデータベース(43)に従った。これは、我々が以前に用いたRatner et al.(42)の番号付けよりも7少ない]。P18はまた、免疫優勢な細胞障害性のT細胞部位を含んでいる(45,46)。P18領域に対して相同性であるgp160エンベロープタンパクの領域(III B以外の他のHIV株に由来するもの)が、同様の方法で用いられ得ることを理解すべきである。例えば、実施例III は、免疫原ペプチドにおけるCTLエピトープとして、MN株のP18領域を用いたときに得られた結果を示している。HIVの種々の株に由来するP18領域の代表的なペプチド類は、同時継続中のアメリカ合衆国特許出願第07/847,311号に記載されている。
【0020】
ハプテンペプチドの免疫原性は、Tヘルパー決定基に対する線形重合または結合によって増大することが示されている(47−49)。当該クラスターペプチドは、多重MHCハプロタイプにおける補助を提供するにちがいない。これらペプチドの幾つかで1回追加免役した直後に、幾つかのMHCタイプのマウスにおいて、著しく高い中和力価が得られた。我々は更に、ペプチド18に対する中和性抗体の詳細な特異性および親和性を調べた。このアプローチは、HIV感染の免疫予防および免疫治療に用いる合成ペプチドワクチンのためのペプチドの設計に用いることができる。
【0021】
以下に記載する実施例において用いた材料および方法の幾つかは、2以上の実施例において用いられる。これらの材料および方法につ、一般的な材料および方法として説明する。
【0022】
一般的な材料および方法
〈ペプチドの合成〉
クラスターペプチド/ペプチド−18構築物およびTヘルパー/ペプチド−18構築物は、表Iに示した配列(配列番号1〜6)に従い、t−boc化学を利用して、ペプチド自動合成機(No.430A ;アプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティー,CA)で合成した。ペプチドはHFを用いて樹脂から切り離され、サイズ排除クロマトグラフィー(P4バイオゲル;バイオラッド・ラボラトリーズ社、マウンテンビュー、CA)によって初期精製された。μボンダパック(μbondapack)逆相C18分析および調製用カラム(ウオーターズ・アソシエーツ社、ミッドフォード、MA)によって、単一ピークになるまで精製が行われた。ペプチド55−18は、環化してピログルタミン酸の形成をもたらすN末端のGlnを回避するために、N末端のエキストラAlaを用いて合成された。
【表1】

【0023】
個々のエピトープまたは多重決定基のエピトープを含むペプチドは、上記のようにこれらを共線形ペプチド(colinear peptide)として合成することによって、一緒に結合することができる。或いは、側鎖カルボン酸基およびアミノ基は、ペプチド結合の形成のために用いられ得る。側鎖を介したペプチドの結合によって、分枝構造を有する免疫原が提供される。第三の態様においては、ペプチドは非ペプチド結合によって連結され得る。ペプチドを結合するための幾つかの方法は、当該技術において周知である。このような一つの方法は、アメリカ合衆国特許第4,886,782号に記載されている。
【0024】
〈マウス〉
B10バックグラウンドでのH−2類遺伝子マウス(H-2 congenic mice)をジャクソン・ラボラトリーズ社(バーハーバー、ME)から購入し、またはバイオコン・インク社(BioCon Inc.,ロックウイル、MD)の我々のコロニーで繁殖させた。この研究で用いたマウスは8〜20週齢であった。
【0025】
〈ELISA〉
丸底の可撓性PVCマイクロタイタープレート(#3912 Falcon Labware、オックスフォード、ME)のウエルを、夫々10μMのペプチド18、置換されたペプチド18、クラスターペプチド3、クラスターペプチド6、0.2 μg/mlの組換えgp120(ABT、アドバンスト・バイオテクノロジー社、MA)または pH 9.6 の 0.1M炭酸緩衝液中の2μM鯨精液ミオグロビンの各100μlを用いて、4℃で一晩コーティングした。組換えgp120プレートを、0.2μg/mlのアフィニティー精製されたrgp120(ABT)を炭酸緩衝液中に含有させたもの100μlを用いてコーティングした。このプレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%BSAを用いて4℃で1〜1.5時間ブロック処理し、0.05%トウィーン20およびBSAを含有するPBS(PBSTB)で洗浄した。次に、100μlの被検血清を二つのウエルに添加し、4℃で1〜1.5時間インキュベートした。この被検血清は、1;100〜1:10,000のPBSTB中に10倍希釈した状態で試験された。次いで、自動プレート洗浄機(バイオラッド社、モデル1550)を用い、ウエルを200μlのPBSTBで10回洗浄し、1:7500でPBSTB中に希釈した100μlのアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG(プロメガ社、メジソン、WI)と共に4℃で1時間インキュベートした。10回洗浄した後、基質として100μlの1mg/mlパラニトロフェニルホスフェートを添加することによって結合抗体を検出した。405nmでの光学密度をELISAリーダーで読み取った。関連抗体でコートしたウエルでの405nmの光学密度から、無関係の鯨精液ミオグロビンでコートしたウエルでの405nmの光学密度を差し引いたものとして、特異的吸光度が測定された。ヤギ抗マウスμ鎖特異的抗体(シグマケミカル社、セントルイス、MO)に続いて、アルカリホスファターゼ結合抗ヤギを用いることにより、ペプチド18に特異的なIgMが検出された。ビオチン結合ラット抗マウスモノクローナル抗体として、LO−MG1−13(IgG1)およびLO−MG2a−3(IgG2a)(バイオソースインターナショナル社、ウエストレイク・ビレッジ、CA)を用いることにより、全IgG、並びにアイソタイプIgG1およびIgG2aが検出された。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ(シグマ・イムノケミカルズ社、セントルイス、MO)の添加に続いて、基質を添加し、プレートをELISAリーダーで読み取った。
【0026】
以下に、実施例により本発明を詳細に例示する。これらの実施例は本発明の好ましい態様として例証として提示されるものであり、如何なる形でも本発明の限定を意味するものではない。
【実施例】
【0027】
例I:HIV−1に対する高力価中和抗体を産生させるためのマウスの免疫感作
本発明のペプチドは、該ペプチドで哺乳類宿主の免疫感作をすることにより、標的抗原に対して高力価のAbNを産生させるために用いることができる。この例においては、HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp120の配列に由来するペプチドを用いて、マウス中で高力価のAbNを誘発させる。
【0028】
免疫感作
マウスを、フロイントの完全アジュバント(CFA)中に1:1でエマルジョン化した20ナノモルのそれぞれのペプチドの腹腔投与によって免疫感作した。21日目および31日目の時点で、免疫感作後の血液を眼窩後方からの採血(retroorbital bleed)により採取し、凝血させ、血清を除き、−20℃で冷凍した。1次免疫感作の21日後から31日後の間にも、抗体レベルはいまだに上昇し続けることが分かったので、31日目の血清での結果を報告する。1次免疫感作の36−52週後に、腹腔内へのCFA中の10ナノモルのペプチドにより選択されたグループの動物を追加免疫し、一般的に2次応答が最適になると知られている、10−11日後に採血された。
【0029】
HIV−1の中和アッセイ
CEM−SS細胞を用いての、伝染性の定量的マイクロアッセイを、すでに記載されている(52)ように行った。要約すれば、H9細胞の対数増殖期の培養によって得られた、最適に増殖した200シンシチウム形成単位(SFU)のHIV−1−IIIB株またはHIV−1MN株を含有し、かつ予め低温保存して力価測定された50μlの培養上清に対して、熱不活性化(56℃,30分)試験血清50μlの連続2倍希釈系列を混合し、この混合物を室温で30分間インキュベートした。その混合物を5×104細胞のDEAE−デキストラン処理されたCEM−SS細胞を含んでいる二重ウエル(duplicate wells)に加えて、37℃で1時間おいた後、ウイルスと抗体との混合物を除き、培地を取り換えて、完全培地のみで5日間(HIV−1−IIIBについて)、または4日間(HIV−1MNについて,それぞれのウイルス株にとって最適であることが確定している)、細胞を5%CO2の下に37℃で培養した。感染ウイルスの単位を、倒立顕微鏡の下での被感染細胞の、続いて起こるシンシチウム形成から定量した。逆数幾何(相乗)平均中和力価は、HIV−1の指摘された株に感染した対照CEM−SS/HIV−1感染細胞の90%超よりも多く(すなわちVn/Vo<0.1)においてHIV−1フォーカスの阻害が可能である血清希釈として表現された。このアッセイは、最初のインキュベーションにおいて細胞から遊離しているウイルスの中和を測定するものであって、感染ウイルスの計数についての読取りにすぎないような、シンシチウム形成の阻害を測定するものではない。CEM−SS細胞に対する、血清単独での細胞増殖抑制性または毒性は、試験された最高濃度においても観察されなかった。56℃での30分間の熱不活性化により、マウス血清の非特異的中和作用が除かれることもまた示されている(53)。
【0030】
蛍光による直接結合の定量
天然のgp120に対するペプチドに誘導された抗体の結合を評価するために、選択された中和血清および非中和血清の連続10倍希釈系列が、生存細胞免疫蛍光定量法(IFA)において、HIV−1−IIIBが豊富に感染した細胞の表面上に発現したウイルスgp120について試験された(52)。
【0031】
拮抗ELISA結合曲線
結合性試験は、無菌のポリプロピレン試験管内で、125μlの、1%卵アルブミンおよび0.05%トゥイーン20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)に含まれる異なる希釈度のp18(0−20μM)またはrgp120(0−160μM)と、125μlの、上記と同じバッファーに含まれる、抗体希釈度に対して吸光が直線領域にあることが確認されている一定希釈度の抗血清とを混合することにより実施された。穏やかに振盪しながら40℃で一夜インキュベーションをした後、100μlの量を拮抗抗原p18またはgp120のそれぞれでコートしたマイクロタイター・プレートの二重ウエル(duplicate wells)に加え、40℃で20分間インキュベートし、標準ELISAアッセイを行った。市販のソフトウエア・プログラム(バイオメタリックス社(Biometalics Ink.)製、プリンストン、ニュージャージー州)を用いて、吸光度に対する血清希釈度の対数の、パラメーターが4つのロジスティック関数を用いた結合曲線を作り、個々の血清の解離定数(Kd値)を算出し、決定した。
【0032】
P18置換ペプチドへの結合
中和血清および非中和血清の特異性を、プラスチック・マイクロタイター・ウエルにコートした15種類の置換されたp18ペプチド(37)への結合についての標準ELISAアッセイで試験した。
【0033】
合成された多決定基ペプチド(表I)は、「クラスターペプチド」と称し(特定構築物の名称としてPCLUSと略称する)、それぞれは、すでになされた研究(42,54,55)において同定された、一部重複しながらも異なっている、短くなったTヘルパー決定基の団塊を構成している。この研究で用いられた3種類のクラスターペプチド、PCLUS3、4、および6を選んだのは、これらがI−A分子およびI−E分子の両方、並びに多様性(multiple)HLAタイプのヒトにおけるのとも異なって(42,56,57)、マウスの4種の独立のMHCハプロタイプにおいて増幅反応(proliferative responses)を誘発する基準を充足したためである。PCLUS1はマウスのB10.BR株のみに強く認識され、さらに36個体のHIV血清陽性・インフルエンザ陽性ドナーのうちの23個体においてIL−2産生を刺激した。HP53ペプチド(ロス・アラモス(Los Alamos)のデータベース(43)のナンバリングでは827−841残基であり、これはラトナー(Ratner)(44)が以前に用いたもの(42,54,55)よりも7小さい)並びにHP55ペプチド(834−848残基)は以前に、それぞれAkkおよびAbbハプロタイプ並びにAkk、Abb、AddおよびAssハプロタイプのマウスにおけるHIV IIIBエンベロープ配列のTヘルパーエピトープとして同定されており、より長いPCLUSペプチドの中に含まれる。(EbおよびEsは、ここではそれぞれ、発現されたEβbα分子およびEβsα分子を指摘するために用いる。非多形性(nonpolymorphic)Eαは、純粋なH−2bおよびH−2sハプロタイプでは発現されないけれども、我々はEαを発現する組換え株を用いた。)HP53ペプチド(env TH4.1とも称する)もまた以前に、無症候性HIV−血清陽性ヒト患者の末梢血リンパ球におけるIL−2産生を誘発することが示された(57)。ペプチド18(308−322残基)は、主要中和決定基(PND)として知られているHIV−1−IIIBエンベロープの超可変V3ループ領域の範囲内に位置するB細胞エピトープであり、ヒトCTLにより認識されるのと同様(46)、マウスにおける主要免疫優性細胞傷害性T細胞エピトープである(45)。
【0034】
クラスターペプチドのカルボキシ末端でペプチド18を合成することにより、合成ペプチドワクチン構築物が調製された。ペプチド18のみで免疫感作されたマウスにおいてはペプチド18に特異的な抗体が検出されなかったのに対し、20ナノモルの上記の構築物によるマウスの免疫感作により、ペプチド18への特異性が高められた抗体が産生された(表II)。クラスターペプチド3−18は試験された4株すべてにおいて抗体反応を誘発したが、逆の極性の構築物、即ち、ヘルパー部位がP18に対しC末端側であったP18−クラスターペプチド3は、ペプチド18への抗体反応を有意に低いレベルで、しかもB10.HTT−株のみにおいてしか誘発しなかったので、Tヘルパー細胞およびB細胞のエピトープの向き(orientation)が、構築物の免疫原性にとって必須であることが立証された。
【表2】

【0035】
ほとんどの事例において我々の作成した構築物のTヘルパーペプチド成分は、以前の研究(54,58)でこれらT細胞エピトープが増幅反応を誘発した株において、ペプチド18特異的抗体産生を助ける働きをした。ペプチド53−18およびペプチド55−18の例では、AbbおよびAkkハプロタイプがペプチド53−18に反応し、Ass、AddおよびAbbハプロタイプがペプチド55−18に反応した(表II)。加えて、Assマウスはペプチド53−18に反応したが、Akkマウスは、P55への反応において増幅することが以前に示されていた(54)にもかかわらず、ペプチド55−18に対する抗P18抗体作ることができなかった。PCLUS1−18は、この研究で用いられた全4株のマウスにより認識されるTヘルパー細胞エピトープを包含し、B10.BR−株のみにおいて強力な抗体応答を誘発し、かつ他の二株、B10.D2およびB10.HTTにおいてわずかな抗体応答を誘発する。この事は驚くべきことではない、なぜなら、以前の我々の研究において(42)、クラスターペプチド1は単にその部分の総和ではなく、むしろ該クラスターペプチドよりも小さいその構成要素が増幅を誘発したいくつかの株において、増幅を誘発できなかったことが示されているからである。。大型のペプチドは、それ自体に折り重なってMHCもしくはT細胞レセプターとの相互作用を妨げるのかもしれないし、または構成要素のエピトープを破壊するような異なるプロセシングを受けるのかもしれない。PCLUS3−18、4−18、および6−18は、ELISAにより定量したときに、少なくとも1つの実験において試験されたマウス全株において強いペプチド18抗体応答を誘発した。これらの結果は、B細胞エピトープを免疫優性T細胞エピトープのクラスターのカルボキシ末端に連結することにより、ほとんどの場合において、個々のエピトープのプロセシングが利用され、且つ、誘発されたT細胞は特異的抗体の産生についてB細胞を助ける働きを為し得ることを示す。これらのクラスターペプチド−ペプチド−18構築物による単独免疫感作により高いレベルのP18特異的抗体が誘発され得るので、我々は、ウイルスの攻撃の代りとなるであろう追加免疫により、増強されたペプチド18特異的抗体を生じる特徴的な2次免疫反応を生起させ得るか否かを調べることを試みた(図1)。応答が2次免疫感作よりも遅い1次免疫感作の後の21日目および31日目に血清を得たが、抗体レベルは31日目においてもまだ上昇し続けた。それゆえ、我々は、パネルAにおいて、20ナノモルのPCLUS6−18で免疫感作され、免疫感作の31日後に採血された動物についての個体平均ペプチド18特異的吸光度を示し、これをパネルBの結果、即ち10ナノモルのPCLUS6−18で1次免疫感作の37週後および49週後に追加免疫されて、2次応答が通常はピークに達する11日後に採血された動物についての個体吸光度と比較した。追加免疫後に観察される抗体応答の増加は、2.5倍から12倍の間であった。
【0036】
ワクチンにおけるこれらの合成ペプチド構築物の有用性を評価するために、これらの構築物による単独免疫感作の後にペプチド18に対して誘発された抗体が、イン・ビトロでウイルスを中和することが可能かどうかを測定することが必要であった。対照CEM−SS/HIV IIIB感染細胞に比較して90%超も多くHIV IIIBの細胞遊離感染ユニットを阻害することが可能な逆数幾何(相乗)平均力価として現された中和活性が、特異的抗体による応答のあった株においてペプチド53−18、55−18およびPCLUS1−18で誘発された。しかしながら、抗体は、53−18で免疫された動物5個体の中の1個体のみ、並びに55−18で免疫された動物およびPCLUS1−18で免疫された動物の5個体の中の2個体のみにおいて中和作用があった(表II)。同群の中のほかの動物におけるELISAでの定量によって、ペプチド18特異的抗体が同レベルまたはより高いレベルであるにもかかわらず、このことが起きた。ペプチド18特異的抗体レベルの総和が中和とは相関性を有さないことの発見は、PCLUS4−18で免疫された動物における株間比較にまで及んだ。前採血された(prebleed)対照に比較すれば、ELISAではすべての株が有意なレベルでペプチド18に対する抗体の応答を示すが、試験された最低希釈度で中和抗体を産生したのはBALB/c株の動物4個体の中の1個体のみであった(表II)。特異的なペプチド18抗体の応答と中和活性との間の相関性の欠如は、PCLUS3−18で免疫された動物において特に明白である。ELISAで定量したところによれば、有意なレベルのペプチド18特異的抗体が、PCLUS3−18で免疫されたマウスのすべての株で誘発され、Assハプロタイプの動物が、この構築物への最強の抗体応答を示した。にもかかわらず、ELISAによれば抗体は低いレベルでありながら、H−2dハプロタイプの動物においてのみ、抗体は、イン・ビトロでウイルスを中和することが可能であった(動物10個体のうち9個体)。この発見から、B細胞エピトープ(ペプチド18)抗原による中和抗体のイン・ビボ誘発は、ヘルパーT細胞、または他のMHC結合調節因子の特異性のような補助のレベルに加えて、別の要因にも依存することが示唆される。
【0037】
PCLUS6−18は、ELISA定量によれば有意な抗体応答を誘発した全被験株において再現性をもって中和抗体を誘発した(表IIおよび表III)。BALB/c(42.2)およびB10.BR(32.0)において達した幾何(相乗)平均中和力価は、相同の(homologous)生ウイルスの攻撃からチンパンジーを防衛する上で十分であることが知られている、V3ループを作用対象とする中和活性のレベル(30)に相当する。PCLUS6−18での単独免疫感作の後の、各動物群についての2つの別の実験からの中和滴定のプロフィールを図2に示す。
【0038】
それぞれの動物は腹腔内に、0.1ml量で、CFA中にエマルジョン化(1:1)された20ナノモルの合成ペプチドを投与された。中和活性は、HIV−1 IIIB HX3株を用いて、マイクロカルチャー・シンシチウム形成アッセイにより定量され、Vn/Voで表現される(ここでVnは二重テストウエル(duplicate test wells)におけるシンシチウム形成単位(SFU)の平均値であり、Voは試験血清なしでインキュベートされた対照ウエルにおけるSFU値である)。それぞれの曲線は、一つの被験群のすべての動物の血清を含む前採血プール(prebleed pool)を除いて、個々のマウスの血清の連続2倍希釈系列を表す。2つの欄は、2つの別個の実験を表すものである。
【0039】
第1のパネルに示されるBALB/cマウス5個体の中の3個体が、試験された最大の希釈度であった64を超えて、90%中和力価を有したことは注目に値する。加えて、パネル3および4に示されるB10.BRマウス5個体の中の3個体が、64を超えて、中和力価を現した。クラスターペプチド6−18により免疫感作された全動物の半分より多く(22/40)において、1:64の希釈度での生ウイルスの50%中和が例証され、1例を除くすべてが、試験された希釈度の1つにおいてウイルスの50%を中和した。このB10.HTT株の動物番号6269の1個体は、ほとんど免疫感作されていないように思える群において、免疫応答が無視し得るものであった。1次免疫感作に反応したマウスに対して、最初の免疫感作の37週または49週後に、CFA中の同じ構築物で単回の追加免疫が為された。この単回追加免疫により、多くの動物では1:2048−1:4096まで、幾つかにおいては1:16,384まで90%中和が起こるという、中和抗体の注目すべき高力価が得られた(図3及び表IV)。単に2回の免疫感作(just two immunizations)の後の相同の(homologous)ウイルス株に対するこれらの中和力価は、我々がこれまで観察してきたいかなる免疫感作により誘導されたポリクローナル血清の最高力価(8,59)よりも、少なくとも4倍から8倍高い。さらに、時期の選択(the timing)から、1次免疫感作からの記憶が少なくとも11か月持続することが示される。さらに加えて、PCLUS6−18 IIIB(配列番号36)により追加免疫された4株の中の3株において、その血清は、とても低い力価であったが、HIV−1 MN株をもまた中和することができた(表IV)。H−2dハプロタイプのマウスで、単回の追加免疫後にHIV−1 IIIBに対する最高の中和力価が得られることもある(例えば1:16,384)が、これらの血清には、MN株に対する交差性中和活性を示したものはなかった。ある種の血清が高い中和活性を有し、同じ短配列に対して同様のELISA力価を持つ他の血清がそうでないのはなぜかを説明することを試みるために、我々は、それぞれのクラスターペプチド−ペプチド−18での免疫感作により産生された中和抗体および非中和抗体の親和性、アイソタイプ、精密な特異性および他の特性を比較した(表IIIにおいて要約されている)。全被験血清は、1種類の動物(B10.BR#9770)のものを除いて、90%阻害の基準によれば非中和的なものであっても、対照血清と比較しての50%阻害で評価することにより、希釈度によってはウイルスを中和し得ることになるということは重要であり、注意すべきである。このように、90%阻害では非中和的である血清であっても、中和血清の区別が分かり難くなるような低いレベルの中和抗体を有しているかもしれないので、特異性の差異を識別することはより困難になるであろう。
【表3−1】

【表3−2】

【表4】

【0040】
4欄の結果は、免疫蛍光によるHIV IIIB株感染細胞への直接結合を示す。中和力価とIFA力価との間には相関性はなかったが、クラスターペプチド6−18により免疫感作された動物由来の、シンシチウム形成アッセイにおいて90%までウイルスを中和することが可能である5血清のうちの3血清が、ウイルス感染細胞への結合を示した。PCLUS3−18,#6245で、およびPCLUS6−18,#6249で免疫感作されたマウスからの2つの中和血清は、IFAによれば感染細胞に結合できなかった。加えて、2つの非中和血清の1つである、PCLUS6−18で免疫感作されたマウス#9770からの血清は、シンシチウム形成アッセイにおける50%阻害のレベルではいかなる中和活性も存在しないにもかかわらず、ウイルス感染細胞への結合を示した。この小さな試料においては、我々は、IFAにより中和血清と非中和血清との間の差異を検出できなかった。
【0041】
クラスターペプチドにより免疫感作された動物からの血清を、ELISAアッセイでrgp120への結合について試験した。表IIIにおけるELISAアッセイから吸光度を比較するのは、同じ縦軸の中の値の間でのみ妥当であって、異なる縦軸の間では妥当でないことに注意しなくてはならない。というのは、それぞれのタイプのELISAに対して異なる試薬とアッセイ条件が用いられるからである。前採血された対照血清は結合しなかったが、試験された免疫血清はすべてrgp120に結合し、中和血清と非中和血清との間に見られた有意なレベルの差は存在しなかった。加えて、P18またはrgp120に結合したIgMのレベルにおいても血清の間に差異は見られなかった。小さな試料において、P18に対して誘発された抗体のアイソタイプは、IgG1であると決定された。被験血清に、アイソタイプIgG2aのいずれかの抗体を示すものはなかった。アイソタイプと中和活性との間には相関性は見られなかった。
【0042】
Tヘルパー部位に対して誘発された抗体は、引き続くウイルス感染においてもある役割を果たすかも知れないので、クラスターペプチド−ペプチド−18構築物により免疫感作された動物からの血清が、クラスターペプチドそれ自体への抗体を含むかどうかを確定することが重要である。さらに、もしもヘルパー部位に対する抗体が中和作用を有するならば、このことからペプチド18への結合と中和との間の相関性の欠如についての理由を説明できるであろう。我々は、クラスターペプチド3単独またはクラスターペプチド6によりコートされたプレートを用いて、ELISAによってこの可能性を試験した。被験動物血清には、PCLUS3への結合を示したものはなかった。それに対し、対照動物には抗クラスターペプチド6抗体を産生するものはなかったが、PCLUS6−18により免疫感作された動物はすべて、Tヘルパー部位に対して反応性を有する抗体を産生し、産生された抗体のレベルは、それらのペプチド18への反応に比例した。しかしながら、さらに後に考察されるように、gp41の細胞質内の尾部(intracytoplasmic tail)における位置およびMN株についての交差性中和作用の欠如(表III)からも、これらの血清の中和活性がクラスターペプチド6に対する抗体によるものであったということはありそうもない。このことから、この中和活性は、主として構築物のP18部分に対して向けられるのに違いない。
【0043】
中和能力における相違が、抗体の親和性における相違に起因するものである可能性が残されている。この可能性について試験するために、定量的感染性シンシチウムプラーク形成アッセイにおけるウイルス中和能力に基づいて選択された血清を、様々な濃度のペプチド18またはrgp120と混合し、溶液相平衡に達するようにした。拮抗剤(competitor)の希釈物を、それぞれの抗血清の10-3希釈物と溶液相平衡に達するように4℃で1夜インキュベーションを行った。次いで、ELISAアッセイにおいて、競合するペプチド18またはrgp120のそれぞれをコートしたプレート上で短時間のインキュベーションを行うことにより、遊離の抗体を定量した。50%最大競合(maximal competition)に必要な濃度(IC50)は、Kdの概算値として、結合曲線からそれぞれの被験血清について決定された。それぞれの実験を3回から4回反復し、代表的な結果を図4に示す。全被験血清の結合親和性(Binding avidities)(Kdの逆数)は、rgp120で試験した場合、ペプチド18で試験した場合よりも対数で2以上大きかった(すなわち、対数で2小さいIC50)(表III)。ペプチド18に対する中和血清および非中和血清の結合親和性は同等であり、rgp120に対する親和性における差異は決定的ではない。ひとつの事例においては、クラスターペプチド6−18により免疫感作された動物のB10.BR株マウスナンバー9772からの中和血清は、対応する非中和血清のBALB/c株ナンバー6251よりも、rgp120について5倍低い結合親和性を示した。それに対して、この同じ群のもう一つの中和血清であるB10.A(5R)マウスナンバー9777は、対応する非中和血清6251よりも1.4倍低い結合親和性しか示さなかった。結合曲線が予測されたほど急勾配でなかったという事実から、ペプチド18またはrgp120のいずれかに結合する抗体の集合体(the population)として、これらの血清は均質またはモノクローナルでなかったこと、並びに不均質性がこれらの結果に影響を及ぼしたかもしれないことが明らかになった。しかしながら、中和血清がしばしば非中和血清よりも低い親和性を有していたという事実から、中和作用は、ペプチドまたは組換えgp120に対する高い平均親和性とは相関性がないことが示唆される。
【0044】
特異性の精密な差異(fine specificity differences)が、ペプチド結合作用が同等の血清の中和作用における差異を説明し得ることの可能性を検討するために、我々は、HIV−1−RF配列から1残基がHIV−1−IIIB配列における残基に置き換った、アミノ酸1つが置換したペプチド(表V参照、配列番号8−23)を用いて、PCLUS3−18、およびPCLUS6−18により免疫感作された動物からの中和血清および非中和血清の結合におけるそれぞれの残基の効果を調べた(図5)。
【表5】

【0045】
ペプチド18のアミノ末端の置換もカルボキシ末端の置換も、PCLUS3−18またはPCLUS6−18により免疫感作された動物からの、中和血清(ベタ塗りの棒グラフにより表される)または非中和血清(白抜きの棒グラフにより表される)のいずれかによる結合には影響を及ぼさないらしい。実際のところ、位置番号11でバリンをチロシンに置換したときに、対照のペプチド18よりも結合が増強され、位置番号12、13、14、および15での置換でも同様に増強することが明らかとなった。ペプチド18配列PGRAFの、中央ループ領域において置換が為されたときは、両群の血清の結合は減衰した。この事は驚くべきことではない。なぜなら、配列GPGRが中和抗体に対する結合部位であり、極めて明瞭な形状のβ屈曲(β-turn)コンホメーションを保持することが示されているからである(60)。残基312においてグリシンをアラニンに置換(ペプチド18−5)しても結合に影響しないことは驚くべきことであった。残基313のプロリンをアラニンに置換(ペプチド18−6)しても、推定上の逆回転コンホメーションを破壊する点での効果にもかかわらず、結合性をさらに完全には無力化しなかったこともまた驚くべきことであった。最も興味深い置換は、置換位置番号8、アミノ酸残基315においてであった。中和血清は、非置換ペプチド18に対する結合よりも有意に劣るとしても、この残基においてアルギニンをアラニンに置換したペプチドに対する結合を保持したのに対し、非中和血清は、この置換ペプチドに対して結合しなくなった。我々は、追加の血清を用いて、さらに該中央ループ領域を試験した。実験の結果を図6に示す。クラスターペプチド3−18により免疫感作された動物からの中和血清および非中和血清はともに(図6A)、6、7、8および9の位置で為された置換については結合の減衰を示した。しかしながら、非中和血清は結合しなかったのに対し、中和血清は、位置番号8で置換されたペプチドに対して、わずかな程度の結合を保持した。同様に、下側のパネルにおいては、PCLUS6−18により免疫感作された動物からの中和血清および非中和血清も、6、7、8および9の位置で置換が為されたペプチドに対する結合において劇的な減衰を示した。しかしながらやはり、中和血清は、位置番号8でアルギニンに対してアラニンが置換されたペプチドに対して、より高いレベルの結合を保持した。もう一つの実験においては、同じ程度に多くの置換について試験されたのではなかったとはいえ、中和血清と非中和血清との間の、8の位置の効果における差異はさらに顕著であった。315残基でのアルギニンのアラニンへの置換は、それが中程度の結合を保持するのが中和血清であることから、置換による影響は不明瞭である。しかしながらこの結果を、位置6および位置7での置換の結合に対する効果は非中和血清よりも中和血清の方が僅かながら大きいことと結び付けることにより、中和血清はループの頂部により強く集中され、非中和血清は中央ループに隣接するカルボキシ側により強く集中されるのであろうことが示唆される。この様に、細部の特異性における微妙な違いから、同程度にペプチドおよびgp120への結合作用を有する血清の間の中和活性における差異が説明されるかもしれない。
【0046】
本研究は、多様性(multiple)HLAタイプにおいて免疫原性が増強された合成ペプチドワクチンを構築することを目的とした、中和性B細胞エピトープと免疫優性Tヘルパー部位のクラスターとを組み合わせることの有用性を証明する。本研究のために選ばれたTヘルパー部位は、HLAタイプの広範な系列(a broad array)を示すHIV感染患者からのヒトT細胞と同様に多様性(multiple)H−2タイプのマウスにより認識されることが以前に示されている、HIVエンベロープタンパク質gp160の多決定基領域を含む。我々の基本方針(strategy)は、それぞれのクラスターペプチドを、クラスI分子と共働してCD8細胞傷害性T細胞により認識される免疫優性部位であることが以前に同定され、且つV3ループ、すなわちHIV−IIIBエンベロープタンパク質の主要中和決定基領域の中に発見された、短い合成ペプチド(ペプチド18)に連結しようとするものであった。これら構築物、PCLUS3−18、PCLUS4−18、およびPCLUS6−18(表I)はすべて、1回の免疫感作後に、rgp120への結合が可能なペプチド18特異的な抗体を誘発した。これらの構築物の一つであるPCLUS6−18により免疫感作された、4つの異なるMHCハプロタイプを表すマウスからの抗体は、ウイルスを中和することが可能であった。PCLUS6−18により免疫感作された全株の動物の総和である35個体中の24個体(69%)において、1回の免疫感作後に誘発された抗体は、90%よりも高い比率で、相同性(homologous)ウイルスの感染性を阻害した。試験された株の中の3つにおいて、PCLUS6−18は、ELISAによればペプチド−18特異的反応を示す動物の80−90%で中和抗体を誘発した。興味深く、注意すべきことは、ある実験において2つのハプロタイプのマウスで達した逆数幾何(相乗)平均中和力価(H−2dにおいて42.2およびH−2kにおいて32.0)は、チンパンジーにおいて静脈投与でのウイルスの攻撃に対して防御することが知られているレベル(30)に近いレベルであった。この平均値は低い概算値である、というのは、それぞれの群の多くの動物は、試験された最高希釈度であった64よりも大きな中和力価を有していたからである。さらに、1回の追加免疫の結果、我々の経験においてほかのいかなる免疫感作のプロトコールで(8,59)見られたよりもはるかに高い、1:1000から1:16,000の90%中和力価が得られた。PCLUS3−18は、被験株すべてにおいてペプチド特異的抗体を誘発したが、しかしH−2dハプロタイプの動物においてのみ、これらの抗体は一貫して中和性であった(マウス10個体の9個体)。
【0047】
ELISAによるペプチド18またはrgp120のいずれかへの抗体の結合活性のレベルは、クラスターペプチド−ペプチド18構築物により誘発された抗体が中和性であるか否かを予見させるものではなかった。このことは、抗体応答の規模(magnitude)を増強するT細胞の補助のレベルに加えて、他の要因が該構築体への質的な反応に影響を及ぼすことが示唆される。ELISAによれば同等のペプチド18結合活性の血清の間で、中和活性に著しい差異が結果として現れる機構を調べるために、我々は、特異性、親和性および抗体のアイソタイプを比較した。興味深いことに、動物はペプチドで免疫感作されているにもかかわらず、ペプチド18特異的抗体を含む血清はすべて、エンベロープタンパク質rgp120に結合する抗体をもまた高いレベルで含有した。この発見から、ペプチド18の短い合成配列の好ましいコンホメーションは、ある程度まで、それより大きなエンベロープタンパク質における対応領域のコンホメーションによく似ていることが示唆される。PCLUS6−ペプチド18により免疫感作された動物からの5つの被験血清のうちの3つは、IFAアッセイにおいて天然のgp120を発現するウイルス感染細胞に結合したが、中和力価とIFAによる結合との間にはいかなる相関性も発見されなかった。さらに加えて、予想に反して、中和血清は、非中和血清よりもrgp120に対してわずかに低い結合親和性を示した。明らかに、gp120のV3ループへの結合の規模および親和性に加えて、他の要因が中和作用に影響を及ぼす。
【0048】
このことを研究するために、我々はアイソタイプおよび精密な特異性(fine specificity)における差異を調べた。アイソタイプの差異は無かった。中和血清および非中和血清はともに、ペプチド18の中央ループ領域(PGRAF)での置換物に対する結合の減衰を示したが、とは言えその結果は、ジャバヘリアン(Javaherian)ら(61)の経験に一致して、中和血清は該ループの頂部により強く集中し、非中和血清は該中央ループに隣接するカルボキシ側により強く集中することを示唆するものであった。
【0049】
この研究での結果は、Tヘルパー部位(即ちT1ペプチド残基421−436)を、SP10と称する長いペプチド(即ち、V3ループの範囲内に位置する残基296−314)に結合することにより合成ワクチンを作成した以前の研究結果と両立する(62,63)。この構築物により免疫感作された動物では、gp120エンベロープタンパク質への増幅反応も、異なる免疫感作の処方計画を用いた一連の免疫感作後の中和抗体もともに発現した。T1はPCLUS3の範囲内に含まれているが、多決定基領域を表さず、またSP10はペプチド18と一部重複するが、中央ループのカルボキシ末端に向かう8残基を欠いている。V3ループは、中和抗体を誘発するウイルスエンベロープ上の唯一の部位ではないが(64−67)、直鎖状(linear)ペプチド配列により定義されることができ、且つそれの細胞レセプターであるCD4分子に結合した後にそれに対する抗体がウイルスを中和し得る主要部位であるように思われる(24,61,68,69)。
【0050】
この領域の超可変性から、この配列のどの程度の数の変異体がワクチンに含まれなければならないかについての疑問が浮上する。北アメリカおよびヨーロッパの分離株からのウイルスのPCRでの研究から、比較的良く保存され、MNまたはSC分離株に極めてよく似たコンセンサス配列が存在することが示唆される(24)。北アメリカおよびヨーロッパにおける被感染患者についての別の独立した研究において、被験者の大多数は、V3ループのMN様変異体に反応する抗体を有することが示された(70,71)。該ループの比較的よく保存された部分のGPGRAFは、被験HIVの7分離株の4株を中和する抗体を誘発することが示されている(61)。分離株に特異的な中和は、一般にみられる。被感染患者における中和回避突然変異体の存在は、コンホメーション変化を導くループ外での配列変異と同様、V3ループ自体の内部での配列変異と関係があるかもしれない(33,72)。合成ペプチドワクチンが、多くの感染分離株に対して適切な立体構造上の特異性を有する中和抗体を産生させる、分岐した(divergent)V3ループペプチドを含む多様な(multiple)構築物を含んでいなくてはならないということは、ありそうなことである。
【0051】
本研究において、我々は、ワクチン接種の49週後までに停止されたPCLUS6−18での追加免疫による免疫感作が、ELISAによれば、最初の応答の2.5−10倍の大きさの応答を導くこともまた示した。抗体レベルにおけるこの上昇は、中和力価において、90%中和については1:1000から1:16,000に至るさらに高い上昇と相関し、また50%中和についてもさらに高い上昇と著しく相関する(図3および表IV)。MN分離株において低い力価滴定値の交差反応性もまた観察された。追加免疫後5か月の時点で、ELISAにより測定されたP18に対する抗体の力価は、高いプラトーの状態に止まっていた。
【0052】
重要な問題は、PCLUS3−18またはPCLUS6−18による免疫感作が、Tヘルパー部位それ自体を対象とした抗体を誘発するかどうかを測定することであった。タンパク質全体に対しての抗体は、分子の取り込みおよびT細胞への提示を昂進することがこれまで示されてきたことから、Tヘルパー部位に対しての抗体が、T細胞レセプターが抗原提示細胞により提示される部位を認識することを遮断することはありそうもない。また、例外が報告されては来たが(77,78)、T細胞エピトープに対する抗ペプチド抗体によるTヘルパー細胞への抗原の提示を遮断することは、通常は可能ではなかった(73−76)。我々は、クラスターペプチド6−18のTヘルパー領域に対して誘発される抗体があることを例証してはいたが、ワクチン接種36−52週後の1回の追加免疫に続いてこの構築物により免疫感作された動物において、反応の減衰を観察しなかった。もう一つの潜在的な関心事は、Fcレセプターおよび補体レセプターを媒介とした(16,79)、ウイルスの感染性についての抗体媒介性の抗体増強である。gp41のN末端部分に結合することが分かったものもあるが(11,79)、自然感染の間に、どの部位に対して昂進性抗体が誘発されるのか、現在は不明である。PCLUS3に含まれる領域に対する抗体は、感染性を増強しないように見えた。クラスターペプチド6はウイルスエンベロープタンパク質の細胞質内gp41領域の範囲内に位置しており、このことから、昂進性または中和性のいずれかではとてもありそうにない。結局、2つの理由から、中和活性の多くがヘルパークラスターペプチドに対して向けられていることはないであろうと我々は考える。第1に、PCLUS3−18構築物により免疫感作された動物からの中和血清において、我々は、ELISAによってはPCLUS3に対する抗体を検出できなかった。PCLUS6−18により免疫感作された動物において、PCLUS6に対する抗体がいくつか検出されたが、これらは、ウイルス粒子上には発現されないと考えられているgp41の細胞質内の尾部に対するものなので、ウイルスを中和できるとは考えにくい。第2に、PCLUS3またはPCLUS6のいずれかに対する抗体は、もし中和作用があれば、HIV−1のMN株にも交差中和作用を有すると考えられる。というのは、これらの領域は、中和抗体が一般的にタイプ特異的となるP18領域と比較すれば、相対的に良く保存されているからである。このように、交差中和作用の欠如(表III)から、中和作用は主にP18を対象とするものであり、ヘルパー部位を対象とするものではない。
【0053】
加えて、別の研究において、PCLUS3ペプチドの主要部分を表現するT1ペプチドに対する抗体は中和作用と関係がないことが分かった(80)。
【0054】
例II:HIV−1に対するCTLを誘発せしめるためのマウスの免疫
HIVは細胞から細胞への伝染によって広がり得るので、合成ペプチドワクチンを免疫療法の効果的な実施形態とするためには、ウイルス特異的なCTL応答を誘発せしめる能力が重要である。
【0055】
例Iに記述されるペプチドは、ThエピトープおよびPNDに加えてCTLエピトープを含む。このため、このペプチドを、マウスにおけるCTL活性の誘発についても試験した。
【0056】
ここで、我々は、我々が限定条件下においてヘルパーとCTLエピトープとの間の共有結合的結合の必要性を試験することを可能にする、エマルジョンを必要としないサポニンアジュバント、QS21(103)、を用いる単一の免疫で問題を処理する。また、我々は、クラスIIMHCにおいては異なるがCTL決定基を表わすH−2DdクラスI分子を共有する類遺伝子マウス系を用いることによって、ヘルパー活性のMHC結合を扱った。
【0057】
我々は、既に、HIVエンベロープタンパクgp160(42)由来の、多重決定領域に及ぶ免疫優性Thペプチドを取り巻く合成ペプチドの構築(54)を記述している。各々重複する決定基のクラスターからなる、これらの所謂クラスターペプチドが、多重MHC型のマウスおよびヒトにおいて、それぞれイン・ビトロT細胞増殖およびサイトカイン生成を誘発することが見出された(42)。この研究においては、3種類のクラスターペプチドを用いた:PCLUS3(421−444残基、KQIINMWQEVGKAMYAPPISGQIR、配列番号24)、PCLUS4(476−499残基、RDNWRSELYKYKVVKIEPLGVAPT、配列番号25)、およびPCLUS6(821−853残基、AVAEGTDRVIEVVQGAYRAIRHIPRRIRQGLER、配列番号26)である。ここで、HIV−1 IIIBナンバリングは、ロスアラモスデータベース(43)に従った(以前の刊行物(42)において用いたRatnerら(44)のものよりも7少ない)。
【0058】
多重MHC型において免疫原性であるペプチドワクチンを設計し、イン・ビボにおけるCTLプライミング(priming)の機構を調べるために、各々のクラスターペプチドを免疫優性CTL決定基、P18(45)(308−322残基、RIQRGPGRAFVTIGK、配列番号7)のN−末端で共に線状(co-linearly)に合成した。この決定基は、HLA型の広い列を発現するHIV−感染患者由来のヒトT細胞(46)に加えて、4種類の異なるMHC型のネズミCD8+CTL(104)によって認識されることが既に確認されている。P18ペプチドはgp160V3ループの一部およびgp160の主要中和決定(PND)領域に相当し(21−23)、また、クラスII MHC分子(I−Ad)によって、適当なMHC型のマウスにおいてヘルパーT細胞にも渡されている(105)。
【0059】
クラスターペプチド−ペプチド−18構築体は、t−boc化学を利用する自動ペプチド合成機(モデル430A;Applied Biosystems、Foster City、CA)で合成した(51)。このペプチドを、HFで樹脂から切り出し、最初にサイズ排除クロマトグラフィで精製した。μボンダパック(μbondapack)逆相C18カラム(Waters Associates,Milford,MA)上での逆相HPLCによって単一ピークまでの精製を達成した。8−20週齢のマウスを、QS21(15μg)と混合した各ペプチド20ナノモルを用いて、尾幹皮下で免疫した。このQS21は、シャボンの木Quillaja saponaria由来の高度に精製したサポニン画分であり、もっとも高いアジュバント活性を保持するが非毒性である(103)。単一免疫の2週間後、B10.S(9R)(H−2d)(図7A)、B10.A(5R)(H−2i5)(図7B)、またはB10.S(9R)(H−2t4)(図7C)マウス由来の免疫脾臓(24ウェル培養プレートにおいて、完全T細胞培地(10%FCS、2mM L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および5x10-5M2−MEを含有する、RPMI1640およびEHAA培地の1:1混合物)中、5x106/ml)を、0.1μMのP18および10%ConA上清含有培地(Rat T stim;Collaborative Research,Inc.,Bedford,MA)を用いてイン・ビトロで6日間再度剌激した。51Cr標識された標的を用いる6時間アッセイで、イン・ビトロ2次CTLの細胞溶解活性を以前記述した通りに測定した(104)。この線維芽細胞標的は、全gp160タンパクを内在的に発現するBALB/c.3T3形質導入体(H−2d、クラスI MHC+、クラスII MHC-)(細胞株15−12(参考文献(45))であった。同様の結果が、ネオマイシン耐性遺伝子(18neo細胞)のみを形質導入し、1μM P18でパルス(puls)した対照BALB/c 3T3細胞を用いて得られた(データは示さず)。gp160形質導入体およびペプチド−パルス18neo細胞の両者の対照として、特定のペプチドがない状態における非パルス18neo標的細胞を用いるバックグランド溶解は8%未満であった。イフェクターをペプチド−パルス標的と、示されたE:T比で共培養した。特異的51Cr放出の割合を、100x((実験による放出−自発的な放出)/(最大放出−自発的な放出))として算出した。最大放出は、5%トリトンX−100を添加することによって溶解した細胞の上清から決定した。自発的な放出は、イフェクター細胞を添加することなくインキュベートした標的細胞から決定した。このアッセイを、ウェル当り5000標的細胞を用いて、3回繰り返して行なった。
【0060】
このように、クラスII において異なるが、クラスID4分子を共有する3種類のハプロタイプのマウス、B10.D2(H−2d;Add)、B10.A(5R)(H−2i5;Abb/k)、およびB10.S(9R)(H−2t4;AsS/d)を、化合物ペプチド、PCLUS3−18,PCLUS4−18、もしくはPCLUS6−18を含有する精製サポニン、またはP18のみを用いて、尾幹皮下で一度免疫した。それらの免疫脾臓を、IL2の存在下において、イン・ビトロでP18を用いて再度剌激した際に、全gp160タンパクを内在的に発現する形質導入BALB/c3T3線維芽細胞標的(15−12と呼ばれる;参考文献(45))(図7)の両者は殺すことができるが、対照BALB/c 3T3線維芽細胞標的(18neoと呼ばれ、ネオマイシン耐性遺伝子のみが形質導入されている)は殺さないCTLが得られた。それらはまた、ペプチドP18でパルスされたgp160−陰性18neo細胞(図8参照)をも殺すことができ、これはこの殺害がP18残基に特異的であることを証明している。イン・ビボで化合物ペプチドによって感作したマウスは、7:1という低いイフェクター:標的(E:T)比で、P18パルス標的の他に15−12に対する強いCTL活性を生じ、60:1のE:T比で45−75%のレベルの特異的溶解に達した(図7A、B、C)。反対に、P18のみで免疫されたマウスは、60:1の最大E:T比でさえも最低限のCTL活性を示すのみであった。15−12標的殺害のE:T比曲線におけるシフトは、化合物ペプチドで感作したマウスにおける、イン・ビボにおいてP18のみで感作したマウスと比較して10倍を越える数のCTL溶解単位を示している。非免疫マウスまたはアジュバントもしくはペプチドのみで免疫したマウスもまた、CTLに到達せしめることができなかった。また、P18成分を持たないクラスターペプチドも特異的CTLを引き起こすことができなかった。QS21と混合したP18のみで免疫したマウスにおいてP18に対するCD8+CTL応答が著しく減少するか、もしくは存在しないという発見は、イン・ビボにおけるP18特異的CTLの誘発にCD4クラスIIに制限される助力が必要であり、この助力がクラスターTh決定基を有する化合物ペプチドを用いた免疫によって与えられる可能性を提示した。
【0061】
CTL決定基へのヘルパー決定基の共有結合的な結合がイン・ビボにおいてマウスにCTL応答を誘発せしめるために必要であるのか、あるいは、共有結合的に結合はしていないペプチドの混合物で十分であるのかどうかを試験するために、B10.D2またはB10.A(5R)マウスを化合物ペプチドPCLUS3−18もしくはPCLUS4−18の各々で、または遊離ペプチドPCLUS3もしくはPCLUS4およびP18の混合物で、またはP18単独で、QS21アジュバントに加えて免疫した(図8A−8D)。マウスを、PCLUS3−18もしくはPCLUS4−18の各々で、またはPCLUS3もしくはPCLUS4およびP18の混合物で、またはP18のみで、QS21アジュバントに加えて免疫した。免疫したマウスに由来する脾臓細胞を、0.1μM P18およびrIL12(10単位/ml、Genzyme、Cambridge、MA)で6日間再度剌激した。gp160形質導入株15−12(図8A、8B)または、P18でパルスされた(1μM 一晩)、neoのみが形質導入されている3T3線維芽細胞(図8C、8D)についてイフェクターの試験を行なった。ペプチドの非存在下における対照18neo線維芽細胞に対するバックグランド溶解は8%未満であった。3回繰り返したウェルのSEMでは、平均の7.2%未満であった。
【0062】
このように、イン・ビボにおいてこの発明によるペプチドで免疫された脾臓細胞をP18およびIL−2で再度剌激した。これは、(培養物中にTh細胞が存在しないので)イン・ビトロでのT細胞の助力における不足を補う。内在的にgp160を発現する形質導入された15−12線維芽細胞株、およびP18でパルスされた、もしくはペプチドでパルスされていない対照18neo線維芽細胞の両者について、細胞溶解活性を測定した。ペプチドが存在しない条件下では、対照標的に溶解は観察されなかった。驚いたことに、混合物もしくはP18のみで免疫されたマウスに由来する免疫脾臓細胞のCD8+CTL活性は、化合物ペプチドでの免疫が両株において強いCTL応答を引き出したのに対して、無視できるものであった(図8A−8D)。P18のみでパルスされた標的の溶解は、PCLUS3もしくはPCLUS4でパルスされた標的に対するCTL活性の欠如と共に、結合要求がP18決定基に特異的なCTL活性の誘導に適合することを示しており、そのため、化合物ペプチドによって誘発され、gp160−発現標的について観察されるいくかの他の活性によるものではない。これらの結果は、イン・ビボにおけるCTLの誘発に、化合物ペプチドPCLUS3−18およびおCLUS4−18中のCTL部位へのヘルパー部位としてのクラスターペプチドの共有結合的な結合が必要であることを示している。この発見は、3つの独立した実験において、一貫して再現可能であった。
【0063】
化合物ペプチドでの免疫がCD4+CTLを誘発するはずであるので、このペプチドによって誘発される特異的なCTLの表現型を決定した。図9Aは、15μg QS21中20ナノモルの化合物ペプチドで免疫されたB10.D2およびB10.A(5R)マウス由来のCTLを、抗−CD8モノタローナル抗体(3.155;ラットIgM)(114)および補足物(黒塗りの棒)または抗−CD4モノタローナル抗体(RL.174;ラットIgM)(113)および補足物(白抜きの棒)、または補足物のみ(図示せず)のいずれかで以前記述した通り(28)に処理し、標的として18neoでパルスされたP18に対して試験した場合の結果を示す。
【0064】
図9Aに示されるように、このCTLは通常のCD8+CD4-CTLである。また、標的がクラスIIではなくクラスI MHC分子のみを発現するので、このCTLはクラスIMHC分子によって制限されなければならない。この制限は、各H−2dクラスI分子で形質導入されたL−細胞を用いてDd分子にマップされた。
【0065】
反対に、PCLUS−18構築物によって誘発されるヘルパー細胞は、少なくとも免疫脾臓細胞のイン・ビトロ剌激における測定ではCD4+であった。例えば、B10.A(5R)マウスを20ナノモルのPCLUS4−18で免疫し、それらの脾臓細胞を、組換えIL−2(rIL−2、10U/ml)の存在下もしくは非存在下においてPCLUS4−18もしくはP18単独で6日間再度剌激する前に、抗−CD4(RL174、参考文献113)および補足物で、もしくはこれらなしで処理した。得られたイフェクター細胞を、標的としてのgp160−発現15−12BALB/c線維芽細胞株またはneoのみ形質導入した線維芽細胞(図示せず)について試験した(図9B)。neoのみ形質導入した対照標的については溶解は観察されなかった(4.2%未満)。3回繰り返したウェルのSEMは平均の7.3%未満であった。対照としての、IL−2の存在下における(P18に結合していない)PCLUS4単独は、いかなるCTL活性も誘発しなかった。P18単独ではないPCLUS4−18は、rIL−2の非存在下において、CTL活性の誘発を剌激して助力を置き換えた(図9B)。この結果は、PCLUS4−18ペプチドが、再剌激培養においてT細胞の助力を引き出すこと示唆した。これは、外部IL−2を不必要にする。CD4+細胞を排除することにより、IL−2の非存在下におけるCTL活性の誘発は妨げられるが、IL−2の存在下ではそのようなことはない(図9B)。このように、PCLUS4−18に対して免疫された細胞の培養物中に誘導され、PCLUS4−18で再度刺激されたヘルパー細胞は、CD4陽性であった。rIL−2の存在下、抗−CD4−処理細胞培養物中でのCTL活性の誘導は、この抗体および補足物での処理がCTL前駆体それ自体には影響を及ぼさないことを示している。したがって、CTL前駆体は、CTLイフェクター細胞(図9A)と同様に、CD4陰性である。
【0066】
このように、我々は、CTLを誘発するためには、イン・ビボにおけるヘルパー−CTL決定基結合が必要であることを示した。これは、CTLについては未だかつて示されたことはなく、イン・ビボにおける同系助力が永年広く認められているTh−B−細胞協力とは対照的である。この結果は、共有結合的な結合が強制されていない、ヘルパーとCTL抗原性ペプチドとの混合物を用いる最近の2つの研究(90、102)とは対照的であるように思われる。我々は、前者の研究(90)においては、アジュバントエマルジョン中のペプチドの隔離がそれらを一緒に微小油滴中に物理的に保護することを、そして後者の研究(102)においては、用いられるペプチドの多重高投与量が非結合混合物の本質的な不都合を解消し得ることを示唆することによって、これらの発見を一致させることができる。この説明は、イン・ビボにおいて拒絶応答を誘導するために同じ皮膚移植片上に存在するヘルパーおよびCTL決定基に対する要求(89)によって示される、同じ提示細胞上での近接もしくは提示に対する要求と一致する。この説明はまた、培養ウェルの境界において、クラスターペプチドとP18との混合物が、共有結合構築体にほぼ十分なIL−2を加えることなくCTL応答を引き出すに十分であるというイン・ビトロでの我々の発見に一致する。アジュバントエマルジョンを伴わない低い用量は、自然感染の事例をより密接に模倣し得る。最も強いCTL応答を誘発するペプチドは株の間で異なるので(図7A−7C)、化合物ペプチドによるCTL応答の増強は、イン・ビボにおける酵素的な分解に対するこのペプチドの耐性または感受性に及ぼすヘルパー部位の効果によっては簡単に説明することはできない。実際、クラスIIでは異なるが同じH−2DdクラスI分子を共有する類遺伝子性組換えマウス系の間の異なるペプチド構築体に対する反応性の再現性のある差異は、ヘルパーT細胞がクラスII MHCに制限され、クラスターペプチドが全てのクラスII分子によって均等に与えられるものではないことを意味する。さもなければ、クラスターペプチドを用いることにより、異なるMHC型のマウスの間で単一のヘルパー決定基によって引き出されるであろうものよりも広いヘルパー認識が可能となる(42)。
【0067】
化合物ペプチドによるイン・ビボにおけるCTLの誘発機構は、より長いペプチドが、CTL誘発に関連付けられる特化したクラスII−発現抗原提示細胞(APC)(100、106、107)によって、恐らくは注入部位もしくは排液リンパ節において、血清もしくは細胞外流体中でプロテアーゼによってペプチドが分解する前に取り込まれ、前記細胞がクラスIおよびクラスII MHCによってCTLおよびThエピトープの両者をそれぞれ提示するのであろう。この提示は、2種類のエピトープが異なるAPCによって独立に提示される他のものよりも効率的である。同じAPCによるより効率の高い提示は、それがヘルパーT細胞とCTL前駆体とを一緒に有し、少量の不安定なリンホカイン類をより効率的に送達するためであるか、あるいは、Gill およびLafferty(108)によって示唆されるように、APCがヘルパー細胞によって活性化し、その後順番に、CTLに対する提示抗原でより効力が高まるためであろう。前者の場合には、両細胞ヘの提示事象が時間的に近接するであろう。これに対して、後者の場合に時間的に離れてもよい。いずれの場合においても、同じAPCは2つの分離したAPCよりも効率的であり、したがって、結合した決定基は、一度イン・ビボに注入されると離散し得るものよりも効率的である。これは、特化したAPC発現クラスII MHCが、それぞれCTLおよびThへのクラスIおよびクラスII MHC両経路によって細胞外抗原を同時に提示するという最近の観察(107)、および前に引用した皮膚移植片実験(89)と一致する。QS21は、細胞膜を浸透し、細胞質に抗原を誘導する能力があってもよい。それは、この細胞質からMHCクラスI提示経路に入ることができる(103)。上記機構のいずれが保持されていても、同じAPCによる両細胞の刺激は助力の送達を容易にする。
【0068】
HIV−1感染のAIDSへの進行は、HIV−1特異サイトカイン応答におけるTh1からTh2優性へのシフトに相関するようである(109、110)。我々の研究所の以前の研究において、併発している吸血住虫感染によるP18に対するCTL応答の減少が、IL2を産生するTh1からTh2優性へとシフトすることに相関することが明らかであった(111)。Th1細胞は、Th2細胞がCTL産生を阻害するサイトカイン類を分泌するのに対して、CD4+クラスIIに制限される、CTL誘発の助力を提供するものと考えられている。したがって、HIV−1キャリアを免疫療法のために免疫することは、これらの化合物構築物が意図するように、Th1 CD4+細胞およびCTLの両者を追加免疫するのであれば、最も効率的である。
【0069】
P18−特異的中和抗体を誘発するための助力もまた、4種類の異なる表現型のマウスをクラスターペプチドを含むこれらの化合物構築体(例I)で単一免疫した後に観察された。ここに提示される免疫実験は実験動物において行なわれたものであるが、同じエピトープが1以上の組織適合性複合体(HLA)クラスIIもしくはクラスI分子を有するヒトヘルパーT細胞およびCTLによっても認識されるという事実は、同じアプローチをヒトの免疫に適用することが可能であることを示唆している。クラスター3および4は北米および欧州のHIV−1個体の間で比較的保存されている配列を有しており、クラスター6は保存された配列と可変配列の間の境界をまたいでいる(43)。
【0070】
クラスII MHC分子において相違する組換えマウスを用いる我々の現在の結果は、T−T協働およびCD4+クラスIIで制限されるイン・ビボにおけるCTL応答誘発の助力を容易にするために、Th決定基は単一ペプチド上のCTL決定基と共有結合的に結合すべきであることを示唆している。また、高力価のHIV−中和抗体を誘発することが既に示されている(上記例I)これらのクラスターペプチド−P18構築体は、多重MHC型の個人において、HIVに対する中和抗体の他にCTLを誘発する有用な免疫構築体である。
【0071】
例III:HIV−1変異体MNのP18ペプチドに結合したクラスターペプチドによって誘発された広い免疫応答
HIV−1ウイルスのV3ループの超可変性は、この領域内の特定のアミノ酸配列を指向するワクチンは個人が晒されうる広範囲の種類の株に対する防御を与えはしないという問題を提示する。株の変異の問題を解消するためのアプローチの1つは、各々異なる株の標的病原を指向する幾つかのペプチドの混合物を含む調製品で個人を免疫することである。HIV−1のさらなる株に対するこの発明のペプチドの効率を評価するために、HIV−1のMN株のV3ループに由来するP18ペプチドに結合した、一連のクラスターペプチドを調製した。
【0072】
これらのペプチドは、上記 General Methods に記述される通りに調製した。PCLUS−18MNペプチドは表 VIに提示されている(配列番号27−33)。
【表6】

【0073】
4種類の異なる表現型を表わす4種類の系統のマウス(例I参照、表II)を、例Iに記述される通りに完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したP18MN、PCLUS3−18MNもしくはPCLUS6−18MNペプチド20ナノモルを腹腔内投与して免疫した。7ないし8週間後、これらのマウスを第2の免疫、20ナノモルを再度腹腔内投与することで追加免疫し、HIV−1 MN株に対するAbN力価を決定した。この実験の結果を図10に示す。
【0074】
ペプチドPCLUS6−18MNおよびPCLUS6.1−18MNを比較する類似の実験において、これらのペプチドを用いる他は上述の通りにマウスを免疫した。この実験の結果を図11A−11Hに示す。
【0075】
これら2つの実験から、PCLUS3−18MN、PCLUS6−18およびPCLUS6.1−18MNは、PCLUS3−18MNがBALB/cマウスにおいては免疫応答を誘発しないことを除いて、試験した全ての系統のマウスにおいて、1:64を越える力価を有するAbNのレベルを誘発することが結論付けられる。このように、H−2d表現型はPCLUS−18MNペプチドには応答しない。
【0076】
PCLUS−18MNペプチドに対するCTL応答を、P18MNおよびPCLUS3−18MNペプチドを用いて調べた。以下のアジュバントの1種と1:1で乳化したペプチド20ナノモルを用いて、BALB/cマウスのグループの第1の免疫を行なった:ミョウバン、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS21(上記)、DOTAP(BoehringerMannheim Biochimica,カタログ番号1202 375;DOTAPは原形質膜を通して細胞内に巨大分子を導入するためのリポフェクション(lipofection)試薬である)およびC259/763(C259/763は、Lederle研究所のFredrick Durr博士によって提供された権利品である)。
【0077】
2ないし3週間後にこれらのマウスを10ナノモルのペプチドで追加免疫し、さらに2ないし3週間後に、1グループ当り2匹のマウスから脾臓を取り出し、上記例IIに記載される通りに、イン・ビトロで剌激した。6日後、これらの細胞を回収し、同じく例IIに記載されている通りに、通常の細胞毒性T細胞アッセイにおいて試験した。結果を図12A−12Bに示す。
【0078】
PCLUS6−18MNペプチドのCTL応答を誘発する能力を評価するためにさらなる実験を行なった。PCLUS3−18MNに対するCTLを誘発させるために上で用いた免疫と類似の免疫を用いた。この第2の事例では、P18MNおよびPCLUS6−18MNおよびPCLUS6.1−18MNに対する応答を比較した。しかしながら、20ナノモルのペプチドを用いて追加免疫を行ない、ペプチドP18およびIL−2(後者は非特異的な助力を得るためのものである)を用いるイン・ビトロ剌激の後、CTLの量について脾臓細胞のアッセイを行なった。この実験の結果を図13A−13Bに示す。
【0079】
CTL実験によって明瞭に示されるように、CTL応答の誘発において、PCLUS−18MNペプチドはP18MNペプチドよりも効率的である。CTL応答は、広い範囲の異なるMHC表現型を有するマウスにおいて生じる。さらに、CTL応答の生成におけるPCLUS−18MNペプチドのより優れた効率は、種々のアジュバント中において示し得る。
【0080】
V3ループの超可変性がこの領域に特異的な中和抗体およびCTLを誘発することを目的とするワクチンを設計する上での問題を引き起こすとしても、欧州および北米において最も一般的な株の代表である(24、71)HIV−1 MN単離体に由来するP18領域と同じ構成もまた、イン・ビボにおけるMN変異体に対するCTL応答を誘発し、中和抗体応答を引き出すことが見出されたことは励みになる。また、最近我々は、IIIB−gp160誘発ネズミ脾臓を1つの位置に脂肪族置換があるMN型ペプチド(112)で再剌激することにより、ウイルス株に関して広い特異性を有するCTLポピュレーションが生成しうることを見出した。
【0081】
上記の例によって示されるように、広い範囲のMHC表現型を示すホストにおける中和抗体およびCTLの両者の誘発のための十分な結合した助力を引き出すこの発明によるペプチドは、AIDSの予防または免疫治療のためのワクチン候補として考慮されるべきである。ここに提示されたアプローチ、すなわち、中和抗体に対するThエピトープ、CTLエピトープおよびPNDを構成するエピトープを共有結合的に結合させ、広い範囲のMHC型を有する複数のホストにおいてこれら全ての免疫応答の生起に効果的な単一の免疫原性ポリペプチドとすることは、他の病原に適用することが可能である。特に、このアプローチが他のウイルス性病原、例えば、これらに限定されるものではないが、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス、HTLV−I、ラビーウイルス等に対するワクチンの開発に適用可能であることが期待される。さらに、非ヒトホストを持つウイルス、例えば、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス等に対するワクチンもまた、この発明のアプローチを用いて生成することが可能である。
【0082】
例IV:マラリアサーカムスポロゾイト抗原に対する広い免疫応答の誘発
米国特許5,028,425には、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のサーカムスポロゾイト(circumsporozoite;CS)タンパクを指向する合成ワクチンが開示されている。このワタチンは、CS抗原由来のCTLエピトープを含むペプチド免疫原からなる。米国特許4,886,782には、AbNに結合するThエピトープからなるCSタンパクに対する第2の合成ワタチンが開示されている。これらの特許は、各々、参照することによって全体がここに組み込まれる。
【0083】
広い範囲のMHC型によって認識され、Th応答、CTL応答および高力価AbN応答を引き出すペプチドワクチンを作製するために、配列PSDKKIEQYLKKIKNSISCNP(NANP)5NAKPKDELDYENDIEKKICKMEKCS(配列番号35)を有するペプチドを上述の通りに合成する。このペプチドを、異なるMHC表現型(B10.D2,B10A(5R)およびB10.S(9R)系)のマウスに、例IIに記載される通りに投与する。AbNおよびCTL応答を、例IおよびIIにそれぞれ記載される通りに評価する。
【0084】
例V:ヒト患者における臨床試験
この発明によるペプチドは、予防もしくは治療ワクチンとしてヒト患者に投与することができる。最初に、安全性および最大耐量を評価するために、既にHIVに感染しているヒト患者において臨床試験を行なう。したがって、この例は、治療様式におけるワクチン形成の効率の予備的な証拠を提示する実験を記述する。
【0085】
この発明によるペプチドは、当該分野において周知の材料および方法を用いて、医薬組成物に処方することができる。例えば、このペプチドは、無菌の薬学的に許容し得る担体溶液、例えば、生理食塩水、および注入可能な調製品を調製するためのシリンジボトルに封入されたものと混合することができる。
【0086】
投与されるペプチドの投与量もまた、薬学分野において周知の方法によって決定することができる。投与される実際の投与量は、半減時間、種々の組織による隔離、投与経路等を含む様々な薬物動力学特性によって変化する。典型的には、ペプチド医薬は0.1ないし50μg/患者体重kgの範囲をとる量で投与される。
【0087】
ここで記述される臨床試験において、実験群は、年齢18−75の、CD4+細胞カウントが>600細胞/mlであるHIV感染患者からなる。試験に入る患者は、再生抗原(recall antigen)、例えば、参考文献57に記述されている、IL−2産生アッセイにおけるインフルエンザウイルス、に対する応答によって測定される、本来のT細胞免疫機能の証拠を提示すべきであるという要求が考慮される。患者は、試験の最初の4ヶ月間は、抗レトロウイルス治療から離れるべきである。試験に突入して3ヶ月目に入って、CD4+細胞カウントが500細胞/ml未満であり、それが1ヶ月間維持されるならば、標準抗レトロウイルス治療が患者に施される。
【0088】
Seppic Inc.(Fairfield,NJ)によるGMP標準で調製された処方で、モンタナイド(Montanide)ISA−51アジュバント中に含まれるペプチドPCLUS3−18およびPCLUS6.1−18を患者に皮下投与する。第0日にワクチンを投与し、第1、3、6、9および12ヶ月目に追加免疫する。以下の免疫群を作製する:
1.80μgPCLUS3-18
2.80μgPCLUS6.1-18
3.160μgPCLUS3-18
4.160μgPCLUS6.1-18
5.80μgPCLUS3-18+80μgPCLUS6.1-18
6.160μgPCLUS3-18+160μgPCLUS6.1-18
患者を、最初に群1および2に、次いで群3および4に、その後群5に、最後に群6に入れる。ペプチドのヒトへの投与に関して経験を得ることができるので、個々のペプチドの1種もしくは他のものの6ヶ月のレジメの後には、群1−4の患者は、PCLUS3−18とPCLUS6.1−18との組み合わせを受けられたほうがよい。
【0089】
個々の患者において、下記を含む種々の免疫系パラメータが監視される:
通常の化学的および血液学的パラメータ;
毒性学および日和見感染の試験;
リンパ球サブセット;
血清HIV p24抗原レベル;
ウイルス負荷の測定のために血清、血漿および細胞が定期的に凍結される;測定は、PCRをベースとするアッセイを含む、この技術分野の現状をなすアッセイによる;
ペプチドおよびHIV上の他の決定基に特異的な抗体の測定;
HIV中和抗体力価の決定;
マイトジェン、アロ抗原、通常の抗原(例えばインフルエンザ)およびHIV抗原に対する応答における、インターロイキン−2産生を含むサイトカイン産生;
HIV抗原に対するCTL活性の測定;
サイトカイン応答の試験に用いられるもの以外の抗原に対する免疫応答のための皮膚試験。
【0090】
これらのアッセイの各々の技術は、当該技術分野においては日常的なものである。
【0091】
例VI:診断アッセイにおけるこの発明のペプチドの使用
広範な免疫応答を引き出す免疫原としての有用性に加えて、この発明によるペプチドが診断様式で患者の抗体およびCTL機能のアッセイにも利用可能であることは、当該分野の熟練者にはもちろん明らかである。
【0092】
抗体アッセイ、とりわけELISA、RIA等の固相アッセイ、の基礎フォーマットは当該分野においては周知である。そのような固相アッセイにおいては、不溶性基板にこの発明によるペプチドを結合させ、このペプチドが結合している基板を、サンプル中に特異的な抗ペプチド抗体が存在する場合にはそれらがペプチドに結合し得るような条件下で、試験しようとするサンプルと接触させる。その後、当該分野において周知の種々の手段によって結合抗体を検出する。そのような検出方法の1つでは、例えば、IgGのFc領域に特異的な放射標識もしくは酵素標識二次抗体が用いられる。
【0093】
同様に、CTL応答の測定も周知である。CTL応答を測定する一方法は例IIに記載されている。したがって、患者由来の末梢血細胞をこの発明によるペプチド、およびMHC分子を発現する線維芽細胞系(それらの表面にはこの発明によるペプチドが提示される)を含む標的細胞ポピュレーションと共にインキュベートすることができる。標的細胞のペプチド特異的な溶解が、患者におけるCTL機能の尺度である。
【0094】
ここに記述された発明は、この発明の作製および実施に用いられる材料および方法の種々の変形を用い得ることは、当該分野の熟練者には明らかであろう。そのような変形は、以下に請求される発明の範囲に包含されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1A及び図1B:クラスターペプチド6〜18での免疫感作に続く、4つの異なったMHCハプロタイプのマウスのP18特異的な抗体応答。(a)20ナノモルのペプチドで免疫感作した31日後の一次抗体応答(21日でのレベルは低かった;結果の項を参照のこと)。(b)一次免疫の37日および49日後における、10ナノモルのペプチドの追加免疫に対する二次免疫応答。予出血プール(prebleed pool)を示す+を除き、記号は個体マウスに対応する。
【図2−1】図2A及び図2B:ペプチドPCLUS6−18での単一の免疫感作の31日後における、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。
【図2−2】図2C及び図2D:ペプチドPCLUS6−18での単一の免疫感作の31日後における、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。
【図2−3】図2E及び図2F:ペプチドPCLUS6−18での単一の免疫感作の31日後における、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。
【図2−4】図2G及び図2H:ペプチドPCLUS6−18での単一の免疫感作の31日後における、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。
【図3−1】図3A及び図3B:一次免疫から39〜42週後に10ナノモルのPCLUS6−18を用いて単一の追加免疫を行った10日後の、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。図2に夫々番号を付した血清について、Vn/Voが希釈逆数に対してプロットされている。動物番号および記号は、一次反応に関して図2で用いたものと対応するように表されている。なお、マウス株BALB/cに関する縦軸は他の株とは異なっており、他の株での終点は1:4096であるのに対して、BALB/cについての終点は1:32,768である。
【図3−2】図3C及び図3D:一次免疫から39〜42週後に10ナノモルのPCLUS6−18を用いて単一の追加免疫を行った10日後の、4つのマウス株のHIV−1・III B中和特性。図2に夫々番号を付した血清について、Vn/Voが希釈逆数に対してプロットされている。動物番号および記号は、一次反応に関して図2で用いたものと対応するように表されている。なお、マウス株BALB/cに関する縦軸は他の株とは異なっており、他の株での終点は1:4096であるのに対して、BALB/cについての終点は1:32,768である。
【図4】図4A及び図4B:ペプチドおよび全タンパクに対する抗体の親和性を試験するために、p18およびrgp120を拮抗剤に用いた拮抗結合曲線。黒塗りの記号は、試験された一つの希釈において>90%の中和活性を有する血清を表し、また白抜きの記号は試験した最低希釈において<90%の中和活性を有する血清を表す。データは、3〜4の実験の代表値である。
【図5】図5A及び図5B:PCLUS3−18(図5A)及びPCLUS6−18(図5B)で免疫感作されたマウスにおける、中和性血清 VS 非中和性血清の詳細な特異性。中和性血清(黒塗り棒)及び非中和性血清(白抜き棒)が、P18置換ペプチドでコーティングされたウエルでのELISA試験を用いて試験された。HIV−1・III B配列(RIQRGPGRAFVTIGK;配列番号7)の一つのアミノ酸を、HIV−1・RF(**TKGPGRVIYATGQ;配列番号8)の対応アミノ酸で置換した15のペプチドが、ウエルのコーティングに用いられた。二つの配列が同一であるときはAlaで置換された。これらのペプチドは、18−1から18−15と称され、二番目の番号が配列中における置換位置を示している。夫々の図における数字の下の文字は、P18/III B配列の対応位置において置換された、RF配列由来のアミノ酸(またはAla)を示す。星印は欠失を示す。血清は、希釈率1:1000で比較された。
【図6】図6A及び図6B:中央のV3ループ内で置換されたP18変種に対する結合。位置3−10で置換されたペプチド18変種(表Vに示すもの)が、マイクロタイターウエルのコーティングに用いられ、ELISA試験で血清の結合が試験された。夫々の図における数字の下の文字は、P18/III B配列の対応位置で置換された、RF配列由来のアミノ酸(またはAla)を示す。黒塗りの棒は中和性抗体を表し、白抜きの棒は非中和性血清を表す。縦軸(カラム)は置換されたペプチド vs P18に対する結合の、405nmでの平均吸光度の比率を表しており、このデータは、PCLUS3−18(図6A)またはPCLUS6−18(図6B)で免疫感作された動物から採取した個体血清(数字で指定した)について2回測定して得たものである。
【図7】図7A、図7B及び図7C:QS21アジュバント中の合成ペプチド(compoud peptides)を用いた免疫感作による、HIV−1エンベロープgp160特異的CTL活性の誘導。各実験において、15−12のトランスフェクトされた標的細胞が用いられた。即ち、図7Aは、B10.D2マウス由来のCTL;図7Bは、B10.A(5R)マウス;図7Cは、B10.S(9R)由来のCTLである。三つのウエルにおける平均の標準誤差(SEM)は、一貫して平均の8%未満であるから、明瞭さを重視して誤差を示すバーは省略してある。
【図8】図8A、図8B、図8C及び図8D:CTLのプライミングのための、ヘルパーとCTL決定基との間の結合に関する要件。B10.D2マウス(図8Aおよび8C)またはB10.A(5R)マウス(図8Bおよび8D)に由来するCTLを、標的としての15−12のトランスフェクト細胞と共にインキュベートし、P18+インターロイキン2を用いてイン・ビトロで再刺激し(図8Aおよび8B)、または標的としてのP18パルスされたBALB/c・3T3繊維芽細胞と共にインキュベートした(図8Cおよび8D)。
【図9】図9A及び図9B:合成ペプチド構築物での免疫感作によって誘導された、CTLエフェクター(図9A)およびヘルパーT細胞(図9B)の発現型。図9Bにおいて、免疫感作はPCLUS4−18を用いて行われた。
【図10−1】図10A及び図10B:PCLUS3−18MNで追加免役された血清(図10A−10D)およびPCLUS6−18MNで追加免疫された血清(図10E−10H)の、HIV中和活性を示している。
【図10−2】図10C及び図10D:PCLUS3−18MNで追加免役された血清(図10A−10D)およびPCLUS6−18MNで追加免疫された血清(図10E−10H)の、HIV中和活性を示している。
【図10−3】図10E及び図10F:PCLUS3−18MNで追加免役された血清(図10A−10D)およびPCLUS6−18MNで追加免疫された血清(図10E−10H)の、HIV中和活性を示している。
【図10−4】図10G及び図10H:PCLUS3−18MNで追加免役された血清(図10A−10D)およびPCLUS6−18MNで追加免疫された血清(図10E−10H)の、HIV中和活性を示している。
【図11−1】図11A及び図11B:PCLUS6−18MNで追加免役された血清(図11A−11H)およびPCLUS6.1−18MNで追加免疫された血清(図11E−11H)の、HIV中和活性を示している。
【図11−2】図11C及び図11D:PCLUS6−18MNで追加免役された血清(図11A−11H)およびPCLUS6.1−18MNで追加免疫された血清(図11E−11H)の、HIV中和活性を示している。
【図11−3】図11E及び図11F:PCLUS6−18MNで追加免役された血清(図11A−11H)およびPCLUS6.1−18MNで追加免疫された血清(図11E−11H)の、HIV中和活性を示している。
【図11−4】図11G及び図11H:PCLUS6−18MNで追加免役された血清(図11A−11H)およびPCLUS6.1−18MNで追加免疫された血清(図11E−11H)の、HIV中和活性を示している。
【図12】図12A及び図12B:種々のアジュバント中に含有されたP18−MNおよびPCLUS3−18MNでの免疫感作によって誘導されたCTL応答を示している。
【図13】図13A及び図13B:種々のアジュバント中に含有されたP18およびPCLUS6.1MNの2回の免疫感作に続く、CTL応答を示している。
【参考資料】
【0096】














【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離され精製されたポリペブチドであって、
(a)ヘルパーT細胞応答を誘発できるHIV gp160に由来するエピトープを有する第一のペプチドであって、広範な移植抗原ハプロタイプのT細胞を増殖することによって認識される、重なってはいるが異なるTヘルパーエピトープを含むクラスターペプチドである前記第一のペプチドと;
(b)HIV gp160 IIIB株のV3ループに由来し、アミノ酸308−322と、他のそれに類似するHIV株を含有するエピトープであって、細胞障害性T細胞応答を誘発できる該エピトープを有し、且つ、HIV gp160 IIIB株のV3ループに由来し、他のHIV株類似体のアミノ酸308−322を含有するエピトープであって、前記抗原に対する高力価の中和性抗体応答を誘発できる該エピトープを有する第二のペプチドとを具備し、
夫々の応答が、広範な移植抗原ハプロタイプを提示する哺乳類種の複数の個体において生じ、更に、前記ペプチドの夫々が他の両方のペプチドに対して隣接して結合し、第二及び第三のペプチドが第一のペプチドに対してカルボキシル側で連結しているポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペブチドであって、前記ペプチドの夫々が、線形に直列に結合されているポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリペプチドであって、前記ペプチド類は、ペプチド結合により共有結合的に連結され、分枝構造を形成しているポリペプチド。
【請求項4】
第一のペプチドが、配列番号24、配列番号25、配列番号26のペプチド、又は配列番号26のアミノ酸残基7−33からなるペプチドである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
中和性エピトープを含む前記ペプチドが、HIV−1 IIIB gp160(配列番号7)のアミノ酸残基308−322、または他のHIV株に由来するP18領域に対して相同性であるgp160エンベロープタンパクの領域からなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記P18領域がHIV−1 MN株(配列番号34)に由来する、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ヒトを除く哺乳類の対象において、細胞障害性T細胞応答および高力価の中和性抗体応答を含んだ、抗原に対する広い免疫応答を誘発するための方法であって、前記対象に対して、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の少なくとも一つのポリペプチドを投与することを具備した方法。
【請求項8】
ヒトを除く哺乳類の対象において、HIVに対する露出を診断し、または免疫機能を評価するための方法であって、
i)対象から得たサンプルを請求項1乃至6のいずれか1項のポリペプチドに接触させる工程と;
ii)前記ポリペプチドに対する免疫応答を測定する工程とを具備し、
前記免疫応答は、ヘルパーT細胞応答、細胞障害性T細胞応答および中和性抗体力価からなる群から選択される方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記の測定工程ii)は、インターロイキン−2の産生、T細胞増殖および抗体結合活性からなる群から選択される応答を試験することによって行われる方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−56893(P2006−56893A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238013(P2005−238013)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【分割の表示】特願平6−525624の分割
【原出願日】平成6年5月13日(1994.5.13)
【出願人】(505270979)アメリカ合衆国 (5)
【Fターム(参考)】