説明

I−CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性を増強させる方法

I-CreIの19位のグリシン、54位のフェニルアラニン、87位のフェニルアラニン、79位のセリン、105位のバリン及び132位のイソロイシンからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の部位特異的突然変異を含む、I-CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性を増強させる方法、並びに興味対象のDNA標的を切断するメガヌクレアーゼを作製するため、ゲノム療法(遺伝子疾患の治療)及びゲノム工学(トランスジェニック動物、トランスジェニック植物及び組換え株化細胞の作製)における使用のためのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、I-CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性を増強させる方法、並びに興味対象のDNA標的を切断するメガヌクレアーゼを作製するため、ゲノム療法(遺伝子疾患の治療)及びゲノム工学(トランスジェニック動物、トランスジェニック植物及び組換え株化細胞の作製)における使用のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
相同組換えは、所定の遺伝子座を正確に工学的に操作する最適な様式である。相同遺伝子ターゲティングストラテジーは、内因性遺伝子をノックアウトするか(Capecchi, M. R., Science, 1989, 244, 1288〜1292; Smithies, O. Nat. Med., 2001, 7, 1083〜1086)、又は染色体内に外因性配列をノックインするために用いられている。これは、遺伝子修正のため、そして原則的に、単一遺伝子疾患に関連する変異の修正のためにも用いることができる。しかし、プロセスの低い効率(トランスフェクションされた細胞の10-6〜10-9)のために、この用途は実際には困難である。過去10年の間に、この収率を増進させるためにいくつかの方法が開発されてきた(De Semirら, J; Gene Med. 2003, 5, 625〜639; De Semir D.及びAran J., Gene Ther. 2002, 9, 683〜685; Sangiuoloら, BMC Med. Genet., 2002, 3, 8〜; Gonczら, Gene Ther., 2001, 8, 961〜965)。組換えの効率を増進させるための洗練されたストラテジーは、メガヌクレアーゼを用いて標的遺伝子座にDNA 二本鎖破断(break)をもたらすことである。
【0003】
野生では、メガヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼにより実質的に代表される。ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)は、数百のタンパク質ファミリーを含む天然のメガヌクレアーゼの広範なファミリーである(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774)。これらのタンパク質は、「ホーミング」とよばれるプロセスにより伝播される可動性遺伝要素によりコードされる。エンドヌクレアーゼは、可動性要素が存在しない同属の対立遺伝子を切断することにより、受容側遺伝子座に可動性DNAを重複させる相同組換え事象を刺激する。先駆的な研究は、生細胞内の独特の部位を切断するためにこれらを用いることができ、そのことにより、切断部位の近傍において遺伝子ターゲティングを1000倍以上増強できることを示している(Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜8106; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1996, 93, 5055〜5060; Puchtaら, Nucleic Acids Res., 1993, 21, 5034〜5040; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101; Cohen-Tannoudjiら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 1444〜1448; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜1973; Donohoら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 4070〜4078; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜277)。しかし、この技術の使用は、天然のメガヌクレアーゼのレパートリーにより制限される。よって、仕立てられた特異性を有するメガヌクレアーゼを作製することが熱心に行われており、いくつかの研究室は、天然のメガヌクレアーゼの特異性を変更することを試みている(Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜1664; 国際PCT出願WO 03/078619、WO 2004/031346、WO 2006/097784, WO 2006/097853.)。
【0004】
酵素の特性は、定方向進化又はインビトロ進化とも呼ばれる進化分子工学により改変でき(Arnold, F. H.及びJ.C. Moore, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol., 1997, 58, 1〜14; Rubingh, D. N., Curr. Opin. Biotechnol., 1997, 8, 417〜422)、いくつかの研究は、安定性(Giverら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1998, 95, 12809〜12813; Zhao, H及びF.H. Arnold, Protein. Eng., 1999, 12, 47〜53.)、活性(Taguchiら, Appl. Environ. Microbiol., 1998, 64, 492〜495)、基質特異性の変更(Yanoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1998, 95, 5511〜5515)、及び表面と正確に相互作用する能力(Egmondら, Adv. Exp. Med. Biol., 1996, 379, 219〜228)の最適化に成功したことを記載している。通常、定方向進化は、PCR (Cadwell R. C.及びG.F. Joyce, PCR Methods Applic., 1992, 2, 28〜33)及びDNAシャッフリング(Temmer, W. P., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 1994, 91, 10747〜10751)によるランダム突然変異誘発に多少は依存し、興味対象の変異型は、適合されたスクリーニングプロセスにより同定される。
【0005】
合理的な設計は、全く異なるストラテジーであり、これは、構造的特徴と構造/機能の関係についての深い理解に依拠する(Scruttonら, Nature, 1990, 343, 38〜43; Craikら, Science, 1985, 228, 291〜297)。エネルギー計算についての強力なソフトウェアの開発に伴うコンピュータ生物学の進展は、この種のアプローチに新たな推進力を与えている(Schueler-Furmanら, Science, 2005, 310, 638〜642)。コンピュータによる研究は、メガヌクレアーゼ(Chevalierら, Mol. Cell. 2002, 10, 895-905; Ashworthら, Nature, 2006, 441, 656〜659)を含む新規なタンパク質の設計に用いることができる。しかし、今日の多くのタンパク質工学研究は、しばしば半合理的とよばれるハイブリッドストラテジーに基づく(Chicaら, Curr. Opin. Biotechnol., 2005, 16, 378〜384)。これらの研究は、構造情報(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Santoro, S. W.及びP.G. Schultz, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2002, 99, 4185〜4190; Ruiら, J. Biol. Chem., 2004, 279, 46810〜46817)及び/又はコンピュータによる研究(Hayesら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2002, 99, 15926〜15931)に依拠し、取り扱うライブラリーの複雑さを劇的に低減させる。
【0006】
最近、2ステップストラテジーを用いて、LAGLIDADGメガヌクレアーゼの特性を仕立てることが行われ、これらの両方のステップは、半合理的アプローチに基づいた(図1)。第1ステップは、タンパク質のDNA結合ドメイン内の特定の残基に、局所的に突然変異を誘発し、スクリーニングにより特異性が変更された一連の変異型を同定することである(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853、WO 2007/049156)。第2ステップは、これらのタンパク質のモジュール性に依拠する。これは、局所的に工学的に改変された異なる変異型からの変異の組を、予測可能な特異性を有する全体的に工学改変されたタンパク質を創出するために組み立てるコンビナトリアルアプローチに基づく(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049156)。組み合わせられるサブドメインは、完全に独立した機能的単位ではないので、予測された活性を有する機能的タンパク質を見出すために、多くの異なる組み合わせをスクリーニングしなければならない。よって、この第2ステップも、半合理的アプローチと考えることができる。
【0007】
このストラテジーは、選択された標的に対する新しい特異性を有する新しいメガヌクレアーゼを作製するその能力を示すが、工学的に改変されたメガヌクレアーゼの切断活性は弱く、よって、この活性を増強させるためにさらなる工学的なステップが必要となり得る。多くの以前の研究が、ランダム突然変異誘発に基づく定方向進化がタンパク質特性の実質的な改良をもたらし得ることを示したが(Arnouldら, J. Mol. Biol., Epub, 10 May 2007)、このような実験は時間を浪費させ、大きな労働力を必要とする。つまり、天然又は工学的に改変されたメガヌクレアーゼの基質特性とは独立してその活性を改良する「ポータブル」な特定の突然変異の同定は、新規で効率的なメガヌクレアーゼを製造するために非常に役立つであろう。
【0008】
効率の問題に加えて、多くの用途、特に治療用途について、特異性は別の重要な特徴である。おそらくよりよい特異性のために、I-SceIホーミングエンドヌクレアーゼはZFPよりも毒性が低いことが示されているが(Alwinら, Mol. Ther., 2005, 12, 610〜617; Porteus M.H.及びBaltimore D., Science, 2003, 300, 763〜; Porteus M.H.及びCarroll D., Nat. Biotechnol., 2005, 23, 967〜973)、これは、非常に高い用量ではまだ有害であり得る(Goubleら, J. Gene Med., 2006, 8, 616〜622)。
今までのところ最も工学的に作製されているエンドヌクレアーゼ(ZFN及びHE)はヘテロ二量体であり、それぞれが標的の一方の半分に結合する2つの別々に工学的に改変された単量体を含む。ヘテロ二量体の形成は、同じ細胞内での2つの単量体の同時発現により得られる(Porteus H.M., Mol. Ther., 2006, 13, 438〜446; Smithら, Nucleic acids Res.,2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/097854及びWO 2007/049156)。しかし、これは、実際は、異なる標的を認識する2つのホモ二量体の形成に関連し(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175)、個別のホモ二量体は、時には、非常に高レベルの毒性をもたらし得る(Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175)。つまり、I-CreIのような単独LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼの広範な使用のためには、タンパク質が、工学的に作製されたヘテロ二量体に加えてホモ二量体も形成でき、オフサイト切断をもたらす可能性があるという事実が制限因子となっている(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; 国際PCT出願WO 2006/097853、WO 2006/097854、WO 2006/097784; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。
【0009】
この問題は、2つの単量体の単鎖分子への融合により理論的には達成され得る、機能的ホモ二量体の形成の抑制によってのみ解決できる(Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, 5978〜5990)。しかし、この種の設計は、比較的危険であり、不適切に折り畳まれたタンパク質をもたらし得る(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, 5978〜5990)。個別のホモ二量体の機能を損なうことが別の解決法であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、I-CreIホモ二量体メガヌクレアーゼに由来する工学的に作製された(engineered)メガヌクレアーゼの活性を増強できる特定の突然変異を開示する。さらに、これらの変異の1つであるG19S置換は、機能的ホモ二量体の形成を損なう。I-CreIに由来する工学的に作製されたタンパク質は、通常、別々に工学的に作製された2つの異なる単量体を含有するヘテロ二量体である。このようなヘテロ二量体は、標的細胞内での2つの異なる単量体の同時発現により得られる。これらの単量体もホモ二量体を形成できるので、実際には、細胞内には3つの分子種が存在し、そのうちの唯一有用なものがヘテロ二量体であるが、他の2つは付加的なオフサイト切断をもたらし得る。つまり、G19S変異は、タンパク質活性を改善するだけでなく、特異性も改善する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、本発明は、I-CreIの19位のグリシン(G19)、54位のフェニルアラニン(F54)、87位のフェニルアラニン(F87)、79位のセリン(S79)、105位のバリン(V105)及び132位のイソロイシン(I132)からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を部位特異的突然変異させることを含む、I-CreI由来メガヌクレアーゼ(元の(initial)メガヌクレアーゼ)の切断活性を増強させる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】LAGLIDADGファミリーからのホーミングエンドヌクレアーゼの構造と、それらを工学的に作製するためのコンビナトリアルアプローチを表す。
【図2】Rosa1標的配列及び誘導体を表す。
【図3】酵母レポーターベクターにおけるDNA標的のゲートウェイクローニングのためのプラスミドであるpCLS1055のマップを表す。
【図4】メガヌクレアーゼORFクローニング及び酵母における発現のためのLEU2をマーカーとして有するプラスミドであるpCLS0542のマップを表す。
【図5】I-CreI変異体によるrosa1.3 DNA標的の切断を示す。
【図6】I-CreIコンビナトリアル変異体によるrosa1.4標的の切断を示す。
【図7】メガヌクレアーゼORFクローニング及び酵母における発現のためのKanRをマーカーとして有するプラスミドであるpCLS1107のマップを表す。
【図8】ヘテロ二量体I-CreIコンビナトリアル変異体によるrosa1.2及びrosa1標的の切断を示す。
【図9】rosa1標的の切断を示す。
【図10】rosa1標的の切断を示す。
【図11】酵母におけるホモ二量体としての、実施例5においてrosa1.3パリンドローム標的に対してrosa1の効率的な切断を示す洗練された変異体のスクリーニングを示す。
【図12】標的のB2Mシリーズを表す。
【図13】コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図14】最適化された変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。
【図15】コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。
【図16】ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図17】最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。
【図18】ゲートウェイクローニング後の哺乳動物細胞でのメガヌクレアーゼの発現のためのプラスミドであるpCLS1069のマップを表す。
【図19】哺乳動物細胞のためのレポーターベクターにおけるDNA標的のゲートウェイクローニングのためのプラスミドであるpCLS1058のマップを表す。
【図20】哺乳動物細胞におけるレポーターシステムの設計を示す。
【図21】哺乳動物細胞におけるI-CreI N75の発現のためのプラスミドであるpCLS1088のマップを表す。
【図22】HprCH3 DNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼの切断効率を示す。
【図23】標的のRAG1.10シリーズを示す。
【図24】CHO細胞における染色体外アッセイでの、G19S変異体を有するか又は有さないM2及びM3 I-CreI変異体によるRAG1.10、RAG1.10.2及びRAG1.10.3標的の切断を示す。
【図25】CHO細胞における染色体外アッセイでモニターした、3つのRAG1.10標的に対する3つのRAG1.10ヘテロ二量体の活性を示す。
【図26】3つのXPC標的(C1、C3及びC4)に対する3つのXPC単鎖分子X2-L1-H33、SCX1及びSCX2の酵母スクリーニングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
- アミノ酸とは、天然又は合成アミノ酸の鏡像異性体及び立体異性体を含む天然又は合成アミノ酸のことをいう。
ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、例えばQはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
- 酸性アミノ酸とは、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)のことをいう。
- 塩基性アミノ酸とは、リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)のことをいう。
- 小さいアミノ酸とは、グリシン(G)及びアラニン(A)のことをいう。
- 芳香族アミノ酸とは、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)及びチロシン(Y)のことをいう。
【0014】
- ヌクレオチドは、次のように表す:1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いる:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0015】
- 「メガヌクレアーゼ」により、12〜45 bpの2本鎖DNA標的配列を有するエンドヌクレアーゼを意図する。該メガヌクレアーゼは、各ドメインが単量体上にある二量体酵素、又は単一ポリペプチド上に2つのドメインを含む単量体酵素のいずれかである。
- 「I-CreI」により、配列表内の配列番号1の配列に相当する配列SWISSPROT P05725又は配列表内の配列番号48の配列に相当するpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
【0016】
- 「メガヌクレアーゼ変異型」又は「変異型」により、野生型メガヌクレアーゼ(天然のメガヌクレアーゼ)のアミノ酸配列における少なくとも1つの残基の、別のアミノ酸での置き換えにより得られるメガヌクレアーゼを意図する。
- 「機能的変異型」により、DNA標的配列、好ましくは、親のメガヌクレアーゼにより切断されない新しい標的を切断できる変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列に接触するか、又は直接若しくは間接的に該DNA標的と相互作用する位置にてアミノ酸変動を有する。
- 「新規な特異性を有するメガヌクレアーゼ変異型」により、親のメガヌクレアーゼのものとは異なる切断標的のパターンを有する変異型を意図する。等価で、同様に用いられる用語「新規な特異性」「改変された特異性」「新規な切断特異性」「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことである。
【0017】
- 「メガヌクレアーゼドメイン」により、メガヌクレアーゼのDNA標的の一方の半分と相互作用し、かつDNA標的の他方の半分と相互作用する同じメガヌクレアーゼの他方のドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能的メガヌクレアーゼを形成できる領域を意図する。
- 「ドメイン」又は「コアドメイン」により、約100アミノ酸残基の配列に相当する、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼの特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みである「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。該ドメインは、DNA標的の一方の半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1β2β3β4)を含む。このドメインは、DNA標的の他方の半分と相互作用する別のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインと会合して、該DNA標的を切断できる機能エンドヌクレアーゼを形成できる。例えば、二量体ホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。
【0018】
- 「単鎖メガヌクレアーゼ」により、ペプチドスペーサーで連結された2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼドメイン又はコアドメインを含むメガヌクレアーゼを意図する。単鎖メガヌクレアーゼは、それぞれの親のメガヌクレアーゼ標的配列の1つの異なる半分を含むキメラDNA標的配列を切断できる。単鎖メガヌクレアーゼは、単鎖誘導体、単鎖メガヌクレアーゼ、単鎖メガヌクレアーゼ誘導体又はキメラメガヌクレアーゼとも命名される。
- 「I-CreI由来メガヌクレアーゼ」により、I-CreIの機能的変異型と、該変異型に由来する単鎖メガヌクレアーゼとの両方を意図する。
【0019】
- 「サブドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイト(half-site)の別個の部分と相互作用するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの領域を意図する。2つの異なるサブドメインは独立して挙動し、一方のサブドメインでの変異は、他方のサブドメインの結合及び切断特性を変更しない。よって、2つのサブドメインは、ホーミングエンドヌクレアーゼDNA標的ハーフサイトの別個の部分に結合する。
- 「ベータヘアピン」により、ループ又はターンにより接続されたLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインの逆平行ベータシートの2つの連続するベータ鎖(β1β2又はβ3β4)を意図する。
【0020】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの2本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位と、C1221ともよばれる配列5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号2; 図2)のような派生パリンドローム配列を含む。
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的部位」、「標的」、「部位」、「興味対象の部位」、「認識部位」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、I-CreIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型、又はI-CreIに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識されかつ切断される20〜24 bpの2本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、そこでメガヌクレアーゼにより2本鎖破断(切断)が誘導される独特のDNAの場所、好ましくはゲノムの場所のことをいう。DNA標的は、C1221について上で示したように、2本鎖ポリヌクレオチドの一方の鎖の5'から3'の配列により定義される。DNA標的の切断は、センス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれについて、+2位及び-2位のヌクレオチドで生じる。そうでないと記載しない限り、I-Cre Iメガヌクレアーゼ変異型によるDNA標的の切断が生じる位置は、DNA標的のセンス鎖上の切断部位に相当する。
【0021】
- 「DNA標的ハーフサイト」、「ハーフ切断部位」又は「ハーフサイト」により、それぞれのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の部分を意図する。
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、2つの親のメガヌクレアーゼ標的配列の異なる半分の融合を意図する。さらに、該標的の少なくとも一方の半分は、少なくとも2つの別個のサブドメインが結合するヌクレオチドの組み合わせ(組み合わせたDNA標的)を含み得る。
【0022】
- 「ベクター」により、それが連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を意図する。
- 「相同な」により、配列同士の間の相同組換えを導くのに充分な別の配列との同一性を有する、より具体的には少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得るそれぞれの配列中の位置の比較により決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基により占められる場合、その分子同士は、その位置において同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置での同一又は一致するヌクレオチドの数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を計算することができ、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部分として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む。
【0023】
- 「個体」は、哺乳動物、及びその他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語「哺乳動物」及び「哺乳類」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)、並びにその他、例えばウシ、ブタ、ウマを含む。
【0024】
- 「変異」により、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)又はポリペプチド配列内の1つ又は複数のヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を意図する。上記の変異は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。これは、ゲノム配列の構造又はコードされたmRNAの構造/安定性にも影響し得る。
- 「部位特異的突然変異」により、ランダム突然変異に対向して、ヌクレオチド配列における特定のヌクレオチド/コドンの変異を意図する。
【0025】
本発明による方法は、当該技術において公知であり、商業的に利用可能な、標準的な部位特異的突然変異誘発法に従って行われる。これは、上記で定義される変異位置を含むオーバーラップフラグメントを、公知のオーバーラップPCR技術により増幅することに行われるのが有利であり得る。
【0026】
本発明の方法により得ることができる改良されたメガヌクレアーゼの切断活性は、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Arnouldら, J. Mol. Biol., Epub 10 May 2007に記載されるもののような、いずれの公知のインビトロ又はインビボ切断アッセイにより測定できる。
【0027】
例えば、本発明の方法により得ることができる改良されたメガヌクレアーゼの切断活性は、酵母又は哺乳動物細胞における直列反復組換えアッセイ(direct repeat recombination assay)により、レポーターベクターを用いて、元のメガヌクレアーゼのものと比較することにより測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクターにクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮された非機能的コピー(直列反復)と、元のメガヌクレアーゼにより切断されるゲノムDNA標的配列とを、介在配列内に含む。メガヌクレアーゼの発現は、ゲノムDNA標的配列の切断をもたらす。この切断は、直列反復間の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子(例えばLacZ)をもたらし、その発現は、適切なアッセイにより監視できる。より強いシグナルが、元のメガヌクレアーゼと比較して、改良されたメガヌクレアーゼで観察される。
【0028】
或いは、ゲノムDNA標的に対する改良されたメガヌクレアーゼの活性は、哺乳動物細胞での染色体アッセイを用いて、同じゲノム遺伝子座において、I-CreIのI-CreI部位に対する活性と比較できる(Arnouldら, J. Mol. Biol., Epub 10 May 2007)。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施形態において:
- 19位のグリシンは、セリン(G19S)又はアラニン(G19A)に変更され、
- 54位のフェニルアラニンは、ロイシン(F54L)に変更され、
- 87位のフェニルアラニンは、ロイシン(F87L)に変更され、
- 79位のセリンは、グリシン(S79G)に変更され、
- 105位のバリンは、アラニン(V105A)に変更され、
- 132位のイソロイシンは、バリン(I132V)に変更される。
【0030】
本発明の方法の別の実施形態において、両方のI-CreI単量体が変異される。各単量体中の変異は、同じ又は異なることができる。
例えば、G19S又はF87L変異を一方の単量体に導入し、V105A又はI132V変異を他方の単量体に導入する。
【0031】
別の好ましい実施形態において、少なくとも2つの残基を同じ単量体中で変異させる。二重変異体は、単独変異体のそれぞれと比較してより高い切断活性を有する。例えば、一方の単量体が、V105A変異とI132V変異の両方を有する。
【0032】
上記の方法の別の好ましい実施形態において、上記の変異は、さらに、機能的ホモ二量体の形成を損なう。より好ましくは、上記の変異はG19S変異である。G19S変異を、ヘテロ二量体I-CreI変異型の2つの単量体の一方に導入することにより、切断活性が増強され、かつ切断特異性が増強されたメガヌクレアーゼが有利に得られる。
さらに、切断特異性をさらに増強させるために、他方の単量体は、機能的ホモ二量体の形成を損なうか、又はヘテロ二量体の形成に好ましい別の突然変異を有することができる。
【0033】
元のメガヌクレアーゼは、野生型I-CreI (配列番号1又は48)、又は配列番号48と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するI-CreI足場タンパク質、例えばI-CreI配列の2位へのアラニンの挿入と、置換D75Nと、C-末端(164位〜166位)でのAADの挿入とを有する配列番号3 (167アミノ酸)からなる足場に由来することができる。
【0034】
元のメガヌクレアーゼは、DNA標的配列と接触するか、又はDNA主鎖(backbone)若しくはヌクレオチド塩基と直接又は水分子を介して相互作用するアミノ酸残基の位置にて1つ又は複数の変異を含み得る。これらの残基は、当該技術において公知である(Juricaら, Molecular Cell., 1998, 2, 469〜476; Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。好ましくは、上記の変異は、メガヌクレアーゼの切断特異性を改変し、興味対象の遺伝子からのDNA標的を切断できる新規な特異性を有するメガヌクレアーゼをもたらす。より好ましくは、上記の変異は、以前に記載されたような(国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853及びWO 2007/049156; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)、DNA標的の±8〜10位のヌクレオチドに対する特異性を変更する、I-CreIアミノ酸配列の26位〜40位に位置するものに相当する第1機能的サブドメイン中の1つ又は複数のアミノ酸の置換、及び/又はDNA標的の±3〜5位のヌクレオチドに対する特異性を変更する、I-CreIアミノ酸配列の44位〜77位に位置するものに相当する第2機能的サブドメイン中の置換である。これらの置換は、有利には、I-CreIアミノ酸配列の26位、28位、30位、32位、33位、38位及び/又は40位、44位、68位、70位、75及び/又は77位に相当する。上記の置換は、元のアミノ酸の、A、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、Y、C、V、L及びWからなる群より選択されるアミノ酸での置き換えであり得る。n-4がtであるか又はn+4がaであるDNA標的を切断するために、上記の変異型は、有利には、44位にグルタミン(Q)を有する。n-4がaであるか又はn+4がtであるDNA標的を切断するために、上記の変異型は、44位にアラニン(A)又はアスパラギンを有し、n-9がgであるか又はn+9がcであるDNA標的を切断するために、上記の変異型は、有利には、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有する。
【0035】
元のメガヌクレアーゼは、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA標的配列を切断できるホモ二量体であり得る。
或いは、上記の元のメガヌクレアーゼは、2つの単量体からなるヘテロ二量体であって、それぞれの単量体がI-CreIの26位〜40位及び/又は44位〜77位に異なる変異を含むヘテロ二量体であり、上記のメガヌクレアーゼは、興味対象の非パリンドロームゲノムDNA標的配列を切断できる。
【0036】
ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、有利には、2つのI-CreI単量体間に分子間相互作用を作製する第1及び第2単量体の残基に対応する興味対象の少なくとも1対の変異を有する偏性(obligate)ヘテロ二量体変異型であり、ここで、上記の対の第1変異は第1単量体中にあり、上記の対の第2変異は第2単量体中にあり、上記の変異の対は各単量体からの機能的ホモ二量体の形成を妨げ、興味対象のゲノムDNA標的を切断できる機能的ヘテロ二量体の形成を可能にする。
【0037】
偏性ヘテロ二量体を形成するために、単量体は、第1及び第2単量体のそれぞれについて、以下の変異の対の少なくとも1つを有することが有利である:
a) 8位のグルタミン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び7位のリジンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも1つのアルギニンによる置換をさらに含み得る、
b) 61位のグルタミン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び96位のリジンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体);第1単量体は、7位及び96位のリジン残基の少なくとも1つのアルギニンによる置換をさらに含み得る、
c) 97位のロイシンの芳香族アミノ酸、好ましくはフェニルアラニンでの置換(第1単量体)、及び54位のフェニルアラニンの小さいアミノ酸、好ましくはグリシンでの置換(第2単量体);第1単量体は、54位のフェニルアラニンのトリプトファンによる置換をさらに含むことができ、第2単量体は、58位のロイシン又は57位のリジンのメチオニンによる置換をさらに含み得る、
d) 137位のアスパラギン酸の塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンでの置換(第1単量体)、及び51位のアルギニンの酸性アミノ酸、好ましくはグルタミン酸での置換(第2単量体)。
【0038】
例えば、第1単量体は変異D137Rを、第2単量体は変異R51Dを有し得る。或いは、第1単量体は、変異K7R、E8R、E61R、K96R及びL97F又はK7R、E8R、F54W、E61R、K96R及びL97Fを、第2単量体は、変異K7E、F54G、L58M及びK96E又はK7E、F54G、K57M及びK96Eを有し得る。
好ましくは、一方の単量体は、7位のリジン残基の酸性アミノ酸、好ましくはアスパラギン酸での置換を含み(K7E)、他方の単量体は、8位のグルタミン酸残基の塩基性アミノ酸、好ましくはリジンでの置換を含む(E8K)。
より好ましくは、一方の単量体がG19S変異及びK7E変異を含み、他方の単量体がE8K変異を含むか、又は一方の単量体がG19S変異及びE8K変異を含み、他方の単量体がK7E変異を含む。
【0039】
その他の置換を、リン酸主鎖に接触する位置、例えば最終C-末端ループ中に導入してもよい(137位〜143位; Prietoら, Nucleic Acids Res., Epub 2007年4月22日)。好ましくは、上記の残基は、上記のDNA切断部位の結合及び切断に関与する。より好ましくは、上記の残基は、I-CreIの138位、139位、142位又は143位にある。それぞれの変異が138位と139位の残基の対及び142位と143位の残基の対から選択される残基の異なる対の中にあることを条件として、2つの残基が1つの変異型の中で変異できる。導入される変異は、最終C-末端ループのアミノ酸の、I-CreI部位のリン酸主鎖との相互作用を改変する。好ましくは、138位又は139位の残基を疎水性アミノ酸により置換して、DNA切断部位のリン酸主鎖との水素結合の形成を回避する。例えば、138位の残基がアラニンにより置換されるか、又は139位の残基がメチオニンにより置換される。142位又は143位の残基を、有利には、小さいアミノ酸、例えばグリシンにより置換して、これらのアミノ酸残基の側鎖のサイズを低減させる。より好ましくは、最終C-末端ループ中の上記の置換は、I-CreI部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する変異型の特異性を改変する。
【0040】
さらに、その他の残基を、単量体の配列全体において変異させ得る。変異の例は、I-CreIアミノ酸配列を参照にして、以下の変異を含む:I24V、R70S、75位のアスパラギン酸の非荷電アミノ酸、好ましくはアスパラギン(D75N)又はバリン(D75V)での変異、及び単量体配列のC-末端半分での置換(I-CreIの80位〜163位)。
【0041】
さらに、1つ又は複数の残基を、単量体のNH2末端及び/又はCOOH末端にて挿入できる。例えば、メチオニン残基をNH2末端に導入するか、タグ(エピトープHA-タグ(YPYDVPDYA;配列番号49)若しくはS-タグ(KETAAAKFERQHMDS;配列番号50)若しくはポリヒスチジン配列)をNH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。上記のタグは、メガヌクレアーゼの検出及び/又は精製に有用である。NH2末端にタグを導入する場合、タグの配列は、変異型の最初のアミノ酸を置き換えるか(少なくとも最初のメチオニン、そして結局は変異型の2番目のアミノ酸;メチオニンで開始するタグ)、又は最初のアミノ酸(メチオニン)と2番目のアミノ酸の間若しくは変異型の最初のアミノ酸と3番目のアミノ酸との間に挿入され得る(メチオニンのないタグ)。
【0042】
変異型は、核局在化シグナル(NLS)も含み得る。上記のNLSは、該変異型を細胞の核内に輸送するために有用である。NLSの例は、KKKRK (配列番号51)である。NLSは、変異型の最初のメチオニンの直後又はN-末端タグの直後に挿入できる。
【0043】
本発明は、上記で定義される方法により得ることができるI-CreI由来メガヌクレアーゼ(改良されたメガヌクレアーゼ)であって、G19S、G19A、F54L、F87L、S79G、V105A及びI132Vからなる群より選択される変異を少なくとも含むが、以下:
- I-CreI G19A, K28A, Y33S, Q38R, S40K, R70S, D75N
- I-CreI G19A, K28A, Q38R, S40K, R70S, D75N, F87L
- I-CreI G19A, K28A, Y33S, Q38R, S40K, D69G, R70S, D75N
- I-CreI Y33R, S40Q, Q44A, R70H, D75N, F87L, I132T, V151A
- I-CreI Y33R, S40Q, Q44A, R70H, D75N, F87L, F94L, V125A, E157G, K160R,
- I-CreI Y33H, F54L, N86D, K100R, L104M, V105A, N136S, K159R
- I-CreI S32T, Y33H, Q44K, R68Y, R70S, I77R, Q92R, K96R, K107R, I132V, T140A, T143A
- I-CreI S32A, Y33H, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, I132V
- I-CreI N2I, S32G, Y33H, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, K96R, V105A
- I-CreI S32A, Y33H, F43L, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, V105A, K159R
- I-CreI G19S, N30Q, Y33G, Q38C, R68N, R70S, S72F, I77R
- I-CreI Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, F87L
- I-CreI N30Q, Y33G, Q38C, F54L, R68N, R70S, I77R
- I-CreI N30Q, Q31L, Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, P83Q, F87L
- I-CreI N30Q, Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, V105A
からなる群より選択されるI-CreI変異型を除くメガヌクレアーゼにも関する。
【0044】
本発明は、上記で定義される配列と少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95% (96%、97%、98%、99%)の同一性を有するI-CreI由来メガヌクレアーゼであって、元のメガヌクレアーゼ(I-CreI又は上記で定義されるI-CreI変異型)と比較して改良された切断活性を有するメガヌクレアーゼを含む。
【0045】
本発明は、I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼのそれぞれの単量体の会合により得られる2つのホモ二量体の少なくとも一方を実質的に含まないI-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼを作製する方法であって、I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼの2つの単量体を細胞内で同時発現させることを含み、2つの単量体の一方がG19S変異を含む方法にも関する。
上記の方法の有利な実施形態によると、他方の単量体は、機能的ホモ二量体の形成を損なうか、又はヘテロ二量体の形成に好ましく、それによりホモ二量体を実質的に含まないヘテロ二量体メガヌクレアーゼを生成する別の変異を有する。上記の方法により作製されるI-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、より特異的である。なぜなら、2つの単量体の会合により得られる2つのホモ二量体の少なくとも一方は機能的でないからである。さらに、上記のメガヌクレアーゼは、上記のように、G19変異の存在により、切断活性が増強される。
【0046】
本発明は、上記で定義される方法により得ることができる、I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼのそれぞれの単量体の会合により得られる2つのホモ二量体の少なくとも一方を実質的に含まないI-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼにも関する。
【0047】
本発明の主題は、上記で定義されるメガヌクレアーゼに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼ(融合タンパク質)でもある。単鎖メガヌクレアーゼは、2つのI-CreI単量体、2つのI-CreIコアドメイン(I-CreIの6位〜94位)、又はこれら両方の組み合わせを含み得る。好ましくは、2つの単量体/コアドメイン又はこれら両方の組み合わせは、ペプチドリンカーにより連結される。ペプチドリンカーの例は、配列番号52及び68である。
【0048】
本発明のメガヌクレアーゼは、上記で定義される改良されたメガヌクレアーゼ、ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ及び単鎖キメラ誘導体を含む。本発明のメガヌクレアーゼは、上記で定義される少なくとも1つのNLS及び/又は少なくとも1つのタグを含み得る。上記のNLS及び/又はタグは、第1及び/又は第2の単量体中に存在し得る。
【0049】
本発明の主題は、上記で定義されるメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。上記のポリヌクレオチドは、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体の変異型の1つの単量体、又は単鎖誘導体の2つのドメイン/単量体をコードし得る。
【0050】
本発明の主題は、本発明によるメガヌクレアーゼの発現のための組換えベクターでもある。組換えベクターは、上記で定義される変異型又は単鎖メガヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む。
好ましい実施形態において、上記のベクターは、それぞれがヘテロ二量体変異型の単量体の一方をコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含む。
【0051】
本発明において用い得るベクターは、限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、或いは染色体、非染色体、半合成又は合成の核酸からなり得る線状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製できるもの(エピソームベクター)及び/又は連結された核酸の発現を可能にするもの(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に知られ、商業的に入手可能である。
【0052】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, 第3版, B. N. Fieldsら編, Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
好ましいベクターは、レンチウイルスベクター、特に自己不活化レンチウイルスベクター(self inactivacting lentiviral vectors)を含む。
【0053】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;エス・セレビシエ(S. cerevisiae)についてTRP1;大腸菌(E. coli)においてテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0054】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型/単鎖誘導体をコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該メガヌクレアーゼの産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、変異型がヘテロ二量体である場合、各単量体をコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。適切なプロモーターは、組織特異的及び/又は誘導性プロモーターを含む。誘導性プロモーターの例は、重金属のレベルの増加により誘導される真核メタロチオネインプロモーター、イソプロピル-β-D-チオガラクト-ピラノシド(IPTG)に応答して誘導される原核lacZプロモーター、及び温度の増加により誘導される真核熱ショックプロモーターである。組織特異的プロモーターの例は、骨格筋クレアチンキナーゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、α-抗トリプシンプロテアーゼ、ヒトサーファクタント(SP)タンパク質A及びB、β-カゼイン及び酸性ホエータンパク質遺伝子である。
【0055】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるゲノムDNA標的切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティング構築物を含む。
或いは、メガヌクレアーゼをコードするベクターと、ターゲティング構築物を含むベクターとは、異なるベクターである。
より好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は:
a) 上記で定義されるゲノムDNA切断部位を取り囲む領域と相同性を有する配列と、
b) a)に記載の配列で挟まれた、導入される配列と
を含む。
【0056】
好ましくは、少なくとも50 bp、好ましくは100 bpを超える、より好ましくは200 bpを超える相同配列が用いられる。実際に、共有されるDNA相同性は、破断の部位の上流及び下流に接する領域に位置し、導入されるDNA配列は、2つの腕の間に位置するべきである。導入される配列は、ゲノム療法の目的のために興味対象の遺伝子における変異を修復する配列(遺伝子修正又は機能的遺伝子の回復)が好ましい。或いは、これは、特定の配列を改変するため、興味対象の内因性遺伝子を減弱又は活性化するため、興味対象の内因性遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は削除するため、興味対象部位に変異を導入するため、或いは外因性遺伝子又はその一部分を導入するために用いられる配列を含む、ある特定の様式で染色体DNAを変化させるために用いられるその他の任意の配列であり得る。
【0057】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターにより改変された原核又は真核の宿主細胞にも関する。
本発明は、その細胞の全て又は部分が上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターにより改変された非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞とは、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことである。
【0058】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができる19位に変異を有する改良されたメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子及びヒトXPC遺伝子のものとは異なる遺伝子座での分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0059】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができる54位又は105位に変異を有する改良されたメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、チャイニーズハムスターヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子及びヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子のものとは異なる遺伝子座での分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0060】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができる87位に変異を有する改良されたメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、ヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子、ヒトRAG2遺伝子及びヒトXPC遺伝子のものとは異なる遺伝子座での分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0061】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができる132位に変異を有する改良されたメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、チャイニーズハムスターヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、ヒトRAG2遺伝子及びヒトベータ-2-ミクログロブリン遺伝子のものとは異なる遺伝子座での分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0062】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができる79位に変異を有する改良されたメガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0063】
本発明の主題は、さらに、上記で定義される方法により得ることができるG19S変異を有するヘテロ二量体メガヌクレアーゼ、上記で定義される、好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチド、細胞、トランスジェニック植物、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子工学及び非治療目的でのインビボ又はインビトロのゲノム工学のための使用である。
【0064】
非治療目的は、例えば、(i) タンパク質産生のための細胞パッケージング系統における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(ii) 種の改良及び代謝工学のための農産植物における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(iii) 遺伝子改変農産植物におけるマーカーの除去のための標的組換え、(iv) 遺伝子改変微生物株におけるマーカーの除去のための標的組換え(例えば抗生物質産生のため)を含む。
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、DNA標的配列を含む興味対象部位において二本鎖破断を誘導し、DNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘導するためである。
【0065】
本発明によると、上記の二本鎖破断は、特定の配列を修復するため、特定の配列を改変するため、変異された遺伝子の代わりに機能的遺伝子を回復するため、興味対象の内因性遺伝子を減弱化又は活性化するため、興味対象部位に変異を導入するため、外因性遺伝子又はその一部分を導入するため、内因性遺伝子若しくはその一部分を不活性化又は検出するため、染色体腕を転座させるため、或いはDNAを修復されないままにして分解させるためである。
【0066】
本発明の主題は、上記で定義されるDNA標的を含むベクターを上記で定義されるメガヌクレアーゼと接触させることにより該ベクター上に位置する興味対象部位内で二本鎖核酸を破断させ、そのことにより該メガヌクレアーゼの切断部位を取り囲む配列と相同性を示す別のベクターとの相同組換えを誘発する工程を含むことを特徴とする遺伝子工学の方法でもある。
【0067】
本発明の主題は、以下の:1) 上記で定義されるメガヌクレアーゼの少なくとも1つのDNA標的を含むゲノム遺伝子座の二本鎖を、該標的を該メガヌクレアーゼと接触させることにより破断し;2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、標的遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた該遺伝子座に導入される配列を含むターゲティングDNA構築物との相同組換えに適切な条件下に維持する工程を含むことを特徴とするゲノム工学の方法でもある。
【0068】
本発明の主題は、以下の:1) 上記で定義されるメガヌクレアーゼの少なくとも1つのDNA標的を含むゲノム遺伝子座の二本鎖を、該切断部位を該メガヌクレアーゼと接触させることにより破断し;2) 該破断されたゲノム遺伝子座を、切断部位を取り囲む領域と相同性を有する染色体DNAとの相同組換えに適切な条件下に維持する工程を含むことを特徴とするゲノム工学の方法でもある。
【0069】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は上記で定義される好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチドの、必要とする個体における遺伝病の予防、改善又は治癒用の該個体に任意の手段により投与される医薬品の製造のための使用でもある。
【0070】
本発明の主題は、上記で定義されるメガヌクレアーゼを少なくとも含む組成物を、必要とする個体に任意の手段により投与する工程を含む、必要とする個体における遺伝病を予防、改善又は治癒する方法でもある。
この場合、上記で定義されるメガヌクレアーゼの使用は、(a) 個体の体組織に、該メガヌクレアーゼの少なくとも1つの認識及び切断部位を含む遺伝子の興味対象部位にて二本鎖切断を誘導し、(b) 該個体に、(1) 切断部位を取り囲む領域と相同性を有するDNAと(2) ターゲティングDNAと染色体DNAの間の組換えにより興味対象部位を修復するDNAとを含むターゲティングDNAを導入する工程を少なくとも含む。ターゲティングDNAは、興味対象部位へのターゲティングDNAの導入に適する条件下で個体に導入される。
【0071】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、個体へのメガヌクレアーゼの投与により全体として(in toto)、又は個体から回収され、改変後に個体に戻される体細胞への該メガヌクレアーゼの導入によりエクスビボで誘導される。
上記の使用の好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、上記で定義されるように、メガヌクレアーゼのゲノムDNA切断部位を取り囲む遺伝子の領域と相同性を有する配列で挟まれた遺伝子内の変異を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物と組み合わせる。変異を修復する配列は、正しい配列を有する遺伝子のフラグメント又はエキソンノックイン構築物のいずれかである。
【0072】
遺伝子を修正するために、遺伝子の切断は、変異の近傍、好ましくは変異から500 bp以内で生じる。ターゲティング構築物は、切断を修復するためのゲノムDNA切断部位に接する少なくとも200 bpの相同配列(最小修復マトリクス)を有し、変異を修復するための遺伝子の正しい配列を含む。結果として、遺伝子修正のためのターゲティング構築物は、最小修復マトリクスを含むか、又は最小修復マトリクスからなる。これは、好ましくは200 pb〜6000 pb、より好ましくは1000 pb〜2000 pbである。
【0073】
機能的遺伝子を回復するために、遺伝子の切断は変異の上流で生じる。好ましくは、上記の変異は、遺伝子の配列内で最初の既知の変異であり、そのことにより、遺伝子の全ての下流の変異が同時に修正される。ターゲティング構築物は、フレーム内で融合された(cDNAでのように)ゲノムDNA切断部位の下流にあって、3'における転写を停止するためのポリアデニル化部位を有するエキソンを含む。導入される配列(エキソンノックイン構築物)は、切断部位を取り囲むイントロン又はエキソンの配列で挟まれており、そのことにより、機能的タンパク質をコードできるmRNAへの工学的遺伝子(エキソンノックイン遺伝子)の転写を可能にする。例えば、エキソンノックイン構築物は、上流及び下流の配列により挟まれる。
【0074】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は上記で定義される好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つの派生ポリヌクレオチドの、必要とする個体におけるDNA媒介物(intermediate)を示す感染性因子により引き起こされる疾患の予防、改善又は治癒用の該個体に任意の手段により投与される医薬品の製造のための使用でもある。
【0075】
本発明の主題は、上記で定義される組成物を、必要とする個体に任意の手段により投与する工程を少なくとも含む、必要とする個体におけるDNA媒介物を示す感染性因子により引き起こされる疾患を予防、改善又は治癒する方法でもある。
【0076】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は上記で定義される好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つのポリヌクレオチドの、生物由来製品又は生物学的使用若しくは物体の消毒を意図する製品における、DNA媒介物を示す感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去のためのインビトロでの使用でもある。
【0077】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのメガヌクレアーゼ、又は好ましくは発現ベクターに含まれた1つ若しくは2つのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする組成物でもある。
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、上記で定義される標的遺伝子座と相同性を有する配列で挟まれた興味対象部位を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む。好ましくは、上記のターゲティングDNA構築物は、組換えベクターに含まれるか、又は本発明で定義されるようにメガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターに含まれる。
【0078】
本発明の主題は、DNA媒介物を示す感染性因子から製品又は物体を除染する方法であって、生物由来製品、生物学的使用を意図する製品又は物体を、上記で定義される組成物と、該感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去に充分な時間接触させる工程を少なくとも含む方法でもある。
特定の実施形態において、上記の感染性因子はウイルスである。例えば、上記のウイルスは、アデノウイルス(Ad11、Ad21)、ヘルペスウイルス(HSV、VZV、EBV、CMV、ヘルペスウイルス6、7又は8)、ヘパドナウイルス(HBV)、パポバウイルス(HPV)、ポックスウイルス又はレトロウイルス(HTLV、HIV)である。
【0079】
本発明の主題は、少なくともメガヌクレアーゼ又は該メガヌクレアーゼをコードする1つ若しくは2つの発現ベクターと、上記で定義されるターゲティング構築物を含むベクターとを含有する、遺伝病の予防又は治療における同時、別々又は逐次的な使用のための組み合わせ製剤としての製品でもある。
治療目的のために、メガヌクレアーゼと医薬的に許容される賦形剤とを、治療有効量で投与する。このような組み合わせは、投与される量が生理的に重要である場合は「治療有効量」で投与されるという。因子は、その存在が受容者の生理機能において検出可能な変化をもたらす場合に、生理的に重要である。本明細書の関係において、因子は、その存在が、標的にされた疾患の1つ又は複数の症状の重篤さを低減させ、損傷又は異常のゲノム修正をもたらす場合に、生理的に重要である。
【0080】
本発明における使用のある実施形態において、メガヌクレアーゼは、実質的に非免疫原性であり、すなわち、ほとんど又は全く有害免疫応答を生じない。この種の有害免疫応答を緩和又は除去するための多様な方法を本発明に従って用いることができる。
好ましい実施形態において、メガヌクレアーゼは、N-ホルミルメチオニンを実質的に含まない。
望ましくない免疫応答を回避する別の様式は、メガヌクレアーゼを、ポリエチレングリコール(「PEG」)又はポリプロピレングリコール(「PPG」) (好ましくは、500〜20,000ダルトンの平均分子量(MW)のもの)とコンジュゲートさせることである。例えばDavisら(US 4,179,337)により記載されるPEG又はPPGとのコンジュゲート形成は、抗ウイルス活性を有する、非免疫原性で、生理活性で、水溶性のエンドヌクレアーゼコンジュゲートを提供できる。ポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマーを用いる同様の方法は、Saiferら(US 5,006,333)に記載されている。
【0081】
メガヌクレアーゼは、ポリペプチドとして又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物/ベクターとして用いることができる。これは、細胞に、インビトロ、エクスビボ又はインビボで、特定の細胞の型に適する当該技術において公知の簡便な手段により、単独又は少なくとも適切なビヒクル若しくはキャリア及び/又はターゲティングDNAとの組み合わせで導入される。一旦細胞内に入ると、メガヌクレアーゼと存在するならばターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞質から核内の作用部位まで、細胞により移入又は移送される。
【0082】
メガヌクレアーゼ(ポリペプチド)は、有利には、リポソーム、ポリエチレンイミン(PEI)及び/又は膜移送ペプチド(membrane translocating peptides)と会合できる(Bonetta, The Scientist, 2002, 16, 38; Fordら, Gene Ther., 2001, 8, 1〜4 ; Wadia及びDowdy, Curr. Opin. Biotechnol., 2002, 13, 52〜56)。後者の場合、メガヌクレアーゼの配列は、膜移送ペプチドの配列と融合される(融合タンパク質)。
【0083】
ターゲティングDNA及び/又はメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むベクターは、細胞に、種々の方法により導入できる(例えば注入、直接摂取、発射衝撃、リポソーム、エレクトロポレーション)。メガヌクレアーゼは、発現ベクターを用いて、細胞内で安定的又は一過的に発現させ得る。真核細胞における発現の方法は、当該技術において公知である(Current Protocols in Human Genetics: 12章 「Vectors For Gene Therapy」及び13章「Delivery Systems for Gene Therapy」を参照)。所望により、組換えタンパク質中に、核局在化シグナルを組み込んで、核内でそれが発現されることを確実にすることが好ましい。
【0084】
I-CreI由来メガヌクレアーゼ(元のメガヌクレアーゼ)は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に以前に記載されたようにして興味対象のゲノムDNA標的配列を切断できる変異型を工学的に作製するための方法により得ることができ、該方法は、少なくとも以下の工程を含む:
(a) I-CreIの26位〜40位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第1機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第1シリーズを構築し、
(b) I-CreIの44位〜77位に位置するLAGLIDADGコアドメインの第2機能的サブドメイン内に少なくとも1つの置換を有するI-CreI変異型の第2シリーズを構築し、
(c) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の-10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(d) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の-5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
【0085】
(e) 工程(a)の第1シリーズから、(i) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(f) 工程(b)の第2シリーズから、(i) I-CreI部位の+3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列で置き換えられた変異I-CreI部位を切断できる変異型を選択及び/又はスクリーニングし、
(g) 工程(c)及び工程(d)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) +8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-10位〜-8位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(iv) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の-5位〜-3位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
【0086】
(h) 工程(e)及び工程(f)からの2つの変異型の26位〜40位及び44位〜77位の変異を、単一の変異型に組み合わせて、(i) +3位〜+5位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットと同一であり、(ii) -5位〜-3位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+3位〜+5位に存在するヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一であり、(iii) I-CreI部位の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位に存在するヌクレオチドトリプレットで置き換えられ、(iv) -10位〜-8位のヌクレオチドトリプレットが、ゲノム標的の+8位〜+10位のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列と同一である配列を切断する新規なホモ二量体I-CreI変異型を得て、
(i) 工程(g)及び(h)で得られた変異型を組み合わせて、ヘテロ二量体を形成し、
(j) 上記のゲノムDNA標的を切断できる工程(i)からのヘテロ二量体を選択及び/又はスクリーニングする。
【0087】
工程(a)及び(b)は、特に、DNA標的配列に接触するか、又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する別の位置にて、変異体の結合及び/又は切断特性を改善するための付加的な変異の導入を含んでよい。これらの工程は、国際PCT出願WO 2004/067736及びArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)に記載されるように、コンビナトリアルライブラリーを作製することにより行ってよい。
【0088】
工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736、Epinatら(Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962)、Chamesら(Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178)、及びArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)に記載されるような、インビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いて行うことができる。
好ましくは、工程(c)、(d)、(e)、(f)及び/又は(j)は、国際PCT出願WO 2004/067736、Epinatら(Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962)、Chamesら(Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178)、及びArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)に記載されるように、インビボで、変異型により作製された変異DNA標的配列内の2本鎖破断が、陽性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は陰性選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を、該DNA 2本鎖破断の組換え媒介修復により導く条件下で行われる。
【0089】
工程(g)及び(h)における変異の(分子内)組み合わせは、公知のオーバーラップPCR法に従って、2つのサブドメインのそれぞれを含むオーバーラップフラグメントを増幅することにより行ってよい。
上記で定義される19位、54位、79位、105位及び/又は132位の変異は、工程(g)又は工程(h)の組み合わせた変異型に対する定方向(directed)突然変異誘発により導入される。
【0090】
工程(i)における変異型の(分子間)組み合わせは、工程(g)からの1つの変異型を、工程(h)からの1つの変異型と同時発現させて、ヘテロ二量体の形成を可能にすることにより行われる。例えば、宿主細胞を、該変異型をコードする1つ又は2つの組換え発現ベクターで改変できる。次いで、国際PCT出願WO 2006/097854及びArnouldら(J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)に以前に記載されたようにして、細胞を、変異型の発現を可能にする条件下で培養することにより、宿主細胞内でヘテロ二量体が形成される。
【0091】
或いは、本発明のヘテロ二量体メガヌクレアーゼは、以下の改変を導入することにより、メガヌクレアーゼ変異型を工学的に作製する上記の方法に由来する方法により得ることができる:
- 工程(a)及び工程(b)を、2種の元の足場タンパク質に対して行う:G19S変異を有する第1のI-CreI足場(単量体A)と、変異G19Sを有さない第2のI-CreI足場(単量体B);この第2の足場は、上記で定義される機能的ホモ二量体の形成を損なう別の変異を有することができる、
- 工程(c)〜(f)の選択/スクリーニングを、(それぞれ単量体B又はAからの)対応する変異を有するI-CreI変異体を発現する宿主細胞内で、上記で定義される単量体A又はBの変異型のライブラリーを形質転換することにより行って、ヘテロ二量体の形成を可能にし、I-CreI部位の一方の半分が±3〜5位又は±8〜10位で改変され、他方の半分が改変されていない非パリンドロームDNA標的を用いることにより機能的ヘテロ二量体変異型を選択することにより行う。
【0092】
工程(g)及び(h)は、同じ単量体(A)又は(B)に由来する2つの変異型の変異を単独変異型に組み合わせることにより行われる。
工程(i)は、工程(g)で得られた単量体の1つ(A又はB)に由来する変異型を、工程(h)で得られた他の単量体に由来する変異型と組み合わせてヘテロ二量体を形成することにより行われる。
【0093】
本発明によるメガヌクレアーゼの使用及び該メガヌクレアーゼを用いる方法は、上記で定義される該メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物の使用も含む。
【0094】
本発明による使用及び方法の別の有利な実施形態によると、上記のメガヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物は、上記で定義されるターゲティングDNA構築物と会合する(associated with)。好ましくは、メガヌクレアーゼの単量体をコードする上記のベクターは、上記で定義されるターゲティングDNA構築物を含む。
【0095】
本発明で定義されるI-CreI由来メガヌクレアーゼの2つの単量体をコードするポリヌクレオチド配列は、当業者に知られる任意の方法により調製できる。例えば、これらは、cDNA鋳型から、特定のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅される。好ましくは、上記のcDNAのコドンは、所望の発現系における該タンパク質の発現に好ましいように選択される。
【0096】
興味対象のゲノム配列からのDNA標的を切断できるI-CreI由来単鎖メガヌクレアーゼは、当該技術において公知の方法により調製される(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。このような方法はいずれも、本発明において定義される単鎖メガヌクレアーゼの構築に用いることができる。
【0097】
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA及び遺伝子工学の技術により得て宿主細胞に導入できる。
【0098】
本発明において定義されるI-CreI由来メガヌクレアーゼは、上記で定義される2つのI-CreI単量体を、1つ若しくは2つの発現ベクターにより改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物中で、単量体の同時発現に適する条件下で同時発現させることにより生成され、ヘテロ二量体メガヌクレアーゼが、宿主細胞培養物又はトランスジェニック動物/植物から、任意の適切な手段により回収される。
本発明において定義される単鎖メガヌクレアーゼは、上記で定義される2つの単量体を含む融合タンパク質を、1つの発現ベクターで改変された宿主細胞又はトランスジェニック動物/植物中で、該融合タンパク質の発現に適する条件下で発現させることにより生成され、単鎖メガヌクレアーゼが、宿主細胞培養物又はトランスジェニック動物/植物から、任意の適切な手段により回収される。
【0099】
本発明の主題は、上記で定義される方法により得ることができる少なくとも1つのI-CreI由来メガヌクレアーゼの、別のメガヌクレアーゼを作製するための足場としての使用でもある。例えば、別の回の突然変異誘発及び選択/スクリーニングを、ホーミングエンドヌクレアーゼの新しい世代を作製する目的で単量体に対して行うことができる。
【0100】
本発明の実行は、そうでないと記載しない限り、当該技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に充分に説明されている。例えばCurrent Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, (Sambrookら, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編, 1984); Mullisら、米国特許第4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries及びS. J. Higgins編 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames及びS. J. Higgins編 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson及びM. Simon編, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ, 特に第154巻及び第155巻(Wuら編)並びに第185巻「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller及びM. P. Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編, Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, 第I〜IV巻(D. M. Weir及びC. C. Blackwell編, 1986); 並びにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0101】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性の増強方法を説明する実施例と添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の特徴をさらに含む。添付の図面において:
- 図1は、LAGLIDADGファミリーからのホーミングエンドヌクレアーゼの構造と、それらを工学的に作製するためのコンビナトリアルアプローチを表す。
A. DNA標的に結合したI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼの3次元構造。触媒コアは、DNA主溝の上にサドル形相互作用界面を形成する2つのαββαββα折り畳みで囲まれる。
B. I-CreI及び他のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼの特異性を工学的に改変するための2ステップアプローチ。新規なエンドヌクレアーゼの大きい集合を、元の足場の半合理的突然変異誘発と、局所的に特異性が変更された機能的変異型のスクリーニングとにより作製する。次いで、コンビナトリアルアプローチを用いて、これらの変異体を、完全に再設計された特異性を有するメガヌクレアーゼに組み立てる。ホモ二量体タンパク質(「ハーフメガヌクレアーゼ」)を、同じαββαββα折り畳み内の2組の変異の組み合わせにより創出し、このような2つの「ハーフメガヌクレアーゼ」の同時発現が、興味対象の標的を切断するヘテロ二量体の種(「カスタムメガヌクレアーゼ」)をもたらし得る。
【0102】
- 図2は、Rosa1標的配列及び誘導体を表す。10GGG_P、5GAT_P及び5TAT_Pは、以前に得られたI-CreI変異体により切断されることが見出された近縁の誘導体である。これらは、C1221 (I-CreI足場タンパク質により切断されるパリンドローム配列)とは、箱で囲んだモチーフが異なる。C1221、10GGG_P、5GAT_P及び5TAT_Pは、最初は24 bp配列で記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関連することを示唆する。しかし、±12位を括弧内に示す。rosa1は、8304位にてマウスROSA26遺伝子座に位置するDNA配列である。rosa1.2標的において、標的の中ほどのGTTC配列は、C1221で見出される塩基であるGTACで置き換えられる。rosa1.3は、rosa1.2の左部分に由来するパリンドローム配列であり、rosa1.4は、rosa1.2の右部分に由来するパリンドローム配列である。図に示すように、10GGG_P、5GAT_P及び5TAT_Pからの箱で囲んだモチーフは、rosa1シリーズの標的で見出される。
【0103】
- 図3は、酵母レポーターベクターにおけるDNA標的のゲートウェイクローニングのためのプラスミドであるpCLS1055のマップを表す。
- 図4は、メガヌクレアーゼORFクローニング及び酵母における発現のためのLEU2をマーカーとして有するプラスミドであるpCLS0542のマップを表す。
【0104】
- 図5は、I-CreI変異体によるrosa1.3 DNA標的の切断を示す。1次スクリーニングで見出された63個の陽性を、1枚の96ウェルプレート内で再配置し、2次スクリーニングで確認した(4重フォーマットで)。実施例1で選択した22個の変異体を丸で囲む。
- 図6は、I-CreIコンビナトリアル変異体によるrosa1.4標的の切断を示す。1次スクリーニングで見出された69個の陽性を、1枚の96ウェルプレート内で再配置し、2次スクリーニングで確認した(4重フォーマットで)。実施例2で選択した15個の変異体を丸で囲む。
【0105】
- 図7は、メガヌクレアーゼORFクローニング及び酵母における発現のためのKanRをマーカーとして有するプラスミドであるpCLS1107のマップを表す。
- 図8は、ヘテロ二量体I-CreIコンビナトリアル変異体によるrosa1.2及びrosa1標的の切断を示す。A. I-CreI変異体の組み合わせのrosa1.2標的を用いたスクリーニングの例。B. I-CreI変異体の同じ組み合わせのrosa1標的を用いたスクリーニング。B5、B6、D5、D6、F5、F6、H5及びH6:pCLS1107空のプラスミドDNAで形質転換された、rosa1.3を切断するI-CreI変異体を発現する酵母株。
【0106】
- 図9は、rosa1標的の切断を示す。rosa1.4を切断する一連のI-CreI変異体に無作為に突然変異を誘発し、rosa1.3を切断する変異体と同時発現させた。切断を、rosa1標的を用いて試験する。それぞれの4ドットクラスタにおいて、右の2つのドットは、2重での、rosa1を切断する元来のヘテロ二量体の1つに相当し、2つの左のドットは、変異されていないrosa1.3を切断するものと同時発現させた、同じ変異させたrosa1.4を切断するものに相当する(変異体m14、表III及びIVに記載される)。rosa1の改良された切断を示す2つの最適化された変異体を丸で囲み、これらは変異体m13とMO_1 (C10)、又はm13とMO_2 (E2)の同時発現に相当する。MO_1及びMO_2は、表Vにさらに記載される。
【0107】
- 図10は、rosa1標的の切断を示す。rosa1.3を切断する一連のI-CreI変異体に無作為に突然変異を誘発し、rosa1.4を切断する洗練された変異体と同時発現させた。切断は、rosa1標的を用いて試験する。rosa1の効率的な切断を示す変異体を丸で囲む。フィルタにおいて:
- B11は、ヘテロ二量体S19 V24 Y44 R68 S70 N75 V77 / E28 R33 R38 K40 A44 H68 Q70 A105 R107 A151 G153 E158に相当し;
- C9は、ヘテロ二量体S19 V24 Y44 R68 S70 Q75 I77 / E28 R33 R38 K40 A44 H68 Q70 A105 R107 A151 G153 E158に相当し;
- C11及びE8は、ヘテロ二量体 V24 Y44 S68 S70 R75 I77 A105 / E28 R33 R38 K40 A44 H68 Q70 A105 R107 A151 G153 E158に相当し、
- E6は、ヘテロ二量体V24 Y44 S68 S70 R75 I77 G79 / E28 R33 R38 K40 A44 H68 Q70 A105 R107 A151 G153 E158に相当する。
H10は陰性対照であり、H11及びH12は異なる強度の陽性対照である。rosa1.3標的を切断する変異体の改良の前後におけるrosa1標的に対するヘテロ二量体の活性を比較するために、各クラスタにおいて、右の2つの点は、実施例4に記載されるヘテロ二量体の1つに相当し、左の2つの点は、実施例5に記載されるような付加的な変異を有するヘテロ二量体に相当する。
【0108】
- 図11は、酵母におけるホモ二量体としての、実施例5においてrosa1.3パリンドローム標的に対してrosa1の効率的な切断を示す洗練された変異体のスクリーニングを示す(丸で囲む)。フィルタにおいて:
- B11はmO_1変異体に相当する(S19 V24 Y44 R68 S70 N75 V77)。C9はmO_2変異体に相当する(S19 V24 Y44 R68 S70 Q75 I77)。C11及びE8はmO_3変異体に相当し(V24 Y44 S68 S70 R75 I77 A105)、E6はmO_4変異体に相当する(V24 Y44 S68 S70 R75 I77 G79)。H10は陰性対照であり、H11及びH12は異なる強度の陽性対照である。各クラスタにおいて、右の2つの点は、rosa1.3標的に対してスクリーニングされた実施例6に記載されるホモ二量体の1つであり、左の2つの点は、陰性対照又は異なる強度の陽性対照である。
【0109】
- 図12は、標的のB2Mシリーズを表す。10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_Pは、以前に得られたI-CreI変異体により切断されることが見出された近縁の誘導体である。これらは、C1221 (I-CreI足場タンパク質により切断されるパリンドローム配列)とは、箱で囲んだモチーフが異なる。C1221、10GAA_P、10CTG_P、5TAG_P及び5TTT_Pは、最初は24 bp配列で記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関連することを示唆する。しかし、±12位を括弧内に示す。B2M11.2及びB2M11.3は、標的の一方の半分のミラー重複(mirror duplication)によりB2M11標的に由来する2つのパリンドローム配列である。B2M11.2及びB2M11.3標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に対して影響しないと考えられる場合に、これらの2つの標的は、次いで、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0110】
- 図13は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。この図は、B2M11.2標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の1次スクリーニングの例を示す。最初の上のフィルタにおいて、位置B3の陽性変異体の配列(丸で囲む)は、KNAHQS/AYSYKである(表VIIIと同じ命名法)。2番目のフィルタ(下)において、位置F7の陽性変異体の配列は、KNGHQS/AYSYKである。両方のパネルにおいて、H12は弱い陽性対照(c)に相当する。
【0111】
- 図14は、最適化された変異体によるB2M11.2標的の切断を示す。B2M11.2を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体は、2つの変異体KNAHQS/AYSYK及びKNGHQS/AYSYKのランダム突然変異誘発により得られる。切断を、B2M11.2標的を用いて試験する。B2M11.2を切断する変異体を丸で囲み、例えばB3は、32A33H 44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C (表IXと同じ命名法)に相当する。H12は陽性対照である。
- 図15は、コンビナトリアル変異体によるB2M11.3標的の切断を示す。この図は、B2M11.3標的を用いるI-CreIコンビナトリアル変異体の1次スクリーニングの例を示す。H10、H11及びH12はそれぞれ、陰性対照(C1)及び異なる強度の2つの陽性対照(C2及びC3)である。フィルタにおいて、位置G5 (丸)の陽性変異体の配列は、KQSGCS/QNSNRである(表Xと同じ命名法)。
【0112】
- 図16は、ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。この図は、B2M11標的を用いるI-CreI変異体の組み合わせのスクリーニングを示す。一連の陽性ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体は、列5において丸で囲む。これらは全て、表XIに列挙する32A33H44A68Y70S75Y77K132V /30Q33G38C68N70S75N77Rヘテロ二量体に相当する。
【0113】
- 図17は、最適化ヘテロ二量体コンビナトリアル変異体によるB2M11標的の切断を示す。B2M11.3を切断する一連のI-CreI N75最適化変異体を、B2M11.2を切断する変異体と同時発現させる。例えばG9は、30Q33G38C68N70S75N77R対32A33H44A68Y70S75Y77K2Y53R66Cのヘテロ二量体に相当する。切断は、B2M11標的を用いて試験する。同じヘテロ二量体の組み合わせを、各4ドットクラスタ内で2回(左の2つのドット)試験し、ドット(右上)は、32A33H44A68Y70S75Y77K2Y53R66C/30Q33G38C68N70S75N77R対照に相当する(B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発の前)。それぞれのクラスタからの4つ目のドットは、陰性対照(メガヌクレアーゼなし)、強い陽性対照(I-SceI標的とのI-SceI)、又は中程度の強度の陽性対照(ORFからコドン使用を変更して発現されるI-SceIタンパク質、これはこのアッセイにおいてI-SceI標的を用いてより低いシグナルをもたらす)のいずれかに相当する。
【0114】
- 図18は、ゲートウェイクローニング後の哺乳動物細胞でのメガヌクレアーゼの発現のためのプラスミドであるpCLS1069のマップを表す。
- 図19は、哺乳動物細胞のためのレポーターベクターにおけるDNA標的のゲートウェイクローニングのためのプラスミドであるpCLS1058のマップを表す。
【0115】
- 図20は、哺乳動物細胞におけるレポーターシステムの設計を示す。開始コドンの132bp下流にてI-SceI切断部位が割り込むピューロマイシン耐性遺伝子は、EFIαプロモーターの制御下にある(1)。導入遺伝子は、単一コピーでCHO-K1細胞で安定に発現される。メガヌクレアーゼ標的部位を、同じ染色体の関係において導入するために、修復マトリクスは、i) プロモーターレスハイグロマイシン耐性遺伝子、ii) 完全lacZ発現カセット、及びiii) 相同配列の2つの腕(1.1 kb及び2.3 kb)で構成される。いくつかの修復マトリクスは、lacZ遺伝子に割り込む認識部位によってのみ異なるように構築されている(2)。つまり、A1株化細胞、I-SceI株化細胞及びI-CreI株化細胞と非常によく似た株化細胞を作製した。lacZ修復マトリクス(長さ2kb)を、認識部位を切断するメガヌクレアーゼを発現するベクターとともに同時トランスフェクションするときに、機能的lacZ遺伝子が回復される(3)。メガヌクレアーゼにより誘発される組換えのレベルは、トランスフェクション後の青色のコロニー又は増殖巣(foci)の数から推断できる。
【0116】
- 図21は、哺乳動物細胞におけるI-CreI N75の発現のためのプラスミドであるpCLS1088のマップを表す。
- 図22は、HprCH3 DNA標的配列を切断するメガヌクレアーゼの切断効率を示す。LacZ遺伝子の修復頻度を、HprCH3染色体レポーターシステムを含有するCHO細胞のトランスフェクションの後に、修復マトリクスと、元の工学的に作製されたヘテロ二量体(HprCH3.3 / HprCH3.4)又はそれらのG19S誘導体(HprCH3.3 / HprCh3.4 G19S又はHprCH3.3 G19S / HprCh3.4)をコードする種々の量のメガヌクレアーゼ発現ベクターとを用いて検出する。
【0117】
- 図23は、標的のRAG1.10シリーズを示す。10GTT_P、10TGG_P、5CAG_P及び5GAG_Pは、以前に得られたI-CreI変異体により切断されることが見出された近縁の誘導体である。これらは、C1221 (I-CreI足場タンパク質により切断されるパリンドローム配列)とは、箱で囲んだモチーフが異なる。C1221、10GTT_P、10TGG_P、5CAG_P及び5GAG_Pは、最初は24 bp配列で記載されたが、構造データは、22 bpのみがタンパク質/DNA相互作用に関連することを示唆する。しかし、±12位を括弧内に示す。RAG1.10.2及びRAG1.10.3は、標的の一方の半分のミラー重複によりRAG1.10標的に由来する2つのパリンドローム配列である。RAG1.10.2及びRAG1.10.3標的の±11位、±7位及び±6位のヌクレオチドが切断に対して影響しないと考えられる場合に、これらの2つの標的は、次いで、I-CreI標的により切断されることが見出された10NNN及び5NNN標的の組み合わせとみなすことができる。全ての標的を、I-CreIにより切断されるパリンドローム配列であるC1221標的と整列させる。
【0118】
- 図24は、CHO細胞における染色体外アッセイでの、G19S変異体を有するか又は有さないM2及びM3 I-CreI変異体によるRAG1.10、RAG1.10.2及びRAG1.10.3標的の切断を示す。パリンドローム標的RAG1.10.2及びRAG1.10.3の切断をパネルAに示し、ヘテロ二量体メガヌクレアーゼによるRAG1.10切断をパネルBに示す。同じ実験におけるI-SceIによるI-SceI標的の切断を、陽性対照として示す。
- 図25は、CHO細胞における染色体外アッセイでモニターした、3つのRAG1.10標的に対する3つのRAG1.10ヘテロ二量体の活性を示す。バックグラウンドは、空の発現ベクターを用いた細胞のトランスフェクションに相当する。同じ実験におけるI-SceIによるS1234 I-SceI標的の切断は、陽性対照として示す。
【0119】
- 図26は、3つのXPC標的(C1、C3及びC4)に対する3つのXPC単鎖分子X2-L1-H33、SCX1及びSCX2の酵母スクリーニングを示す。SCX1はX2(K7E)-L1-H33(E8K,G19S)分子であり、SCX2はX2(E8K)-L1-H33(K7E,G19S)分子のことである。それぞれの4ドット酵母クラスタについて、左の2つのドットは実験結果であり、右の2つのドットは実験の質及び有効性を評価するための種々の内部対照である。
【実施例】
【0120】
実施例1:rosa1.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のrosa1標的の左部分に由来するrosa1.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図2)。この実施例に記載される標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチドのみで、後に接尾辞_Pを付して記載する。例えば、標的rosa1.3は、caacatgatgt_P; 配列番号9)とも記載される。
【0121】
rosa1.3標的は、5GAT_Pと、±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±7位、±9位、±10位及び±11位が同様であり、2つの配列は、±6位及び±8位のみが異なる。±6位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響しないであろうと仮定した。5GAT_P (caaaacgatgt_P; 配列番号5)を切断できる変異体は、Arnouldら, J Mol Biol. 2006; 355, 443〜458並びに国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853に記載されるように、I-CreI N75に対する24位、44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により以前に得られた。この実施例において、5GAT_P標的を切断する変異体がrosa1.3標的も切断できるかを調べた。
【0122】
1) 材料及び方法
特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いられるメガヌクレアーゼ変異型を作製する方法及び哺乳動物細胞又は酵母細胞における切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736; Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜2962; Chamesら, Nucleic Acids Res., 2005, 33, e178及びArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458に記載される。これらのアッセイは、機能的LacZレポーター遺伝子をもたらし、これは標準的な方法によりモニターできる。
【0123】
a) 標的ベクターの構築
標的は、以下のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列と接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドをProligoから得た:
5' tggcatacaagtttcaacatgatgtacatcatgttgacaatcgtctgtca 3'(配列番号11)。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて酵母レポーターベクター(pCLS1055, 図3)にクローニングした。酵母レポーターベクターで、エス・セレビシエFYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を形質転換した。
【0124】
b) I-CreI変異体
5GAT_Pを切断するI-CreI変異体を、I-CreIの24位、44位、68位、70位、75位及び77位が変異されたライブラリーにおいて、Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458、並びに国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853に以前に記載されたように同定した。これらをDNAベクター(pCLS0542, 図4)にクローニングし、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) FYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)で発現させた。
【0125】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配と酵母でのスクリーニング
スクリーニングを、以前に記載されたようにして行った(Arnouldら, J. Mol. Biol. 2006, 355, 443〜458)。交配は、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上に、低格子密度(low gridding density) (約4スポット/cm2)を用いてグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタに対して行って、それぞれの標的について異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固体寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、ガラクトース(2%)を炭素源として有する合成培地上に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0中の0.02 % X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mM β-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固体アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0126】
d) 変異体の配列決定
変異体を発現するプラスミドを回収するために、酵母DNAを標準的なプロトコルを用いて抽出し、大腸菌を形質転換するために用いた。変異体ORFの配列決定を、次いで、プラスミドに対してMILLEGEN SAにより行った。或いは、ORFを酵母DNAからPCRにより増幅し(Akadaら, Biotechniques, 2000, 28, 668〜670, 672, 674)、配列決定を、PCR生成物に対して直接、MILLEGEN SAにより行った。
【0127】
2) 結果
I-CreIの24位、44位、68位、70位、75位及び77位が変異されたライブラリーにおいて以前に同定された5GAT_P標的を切断するI-CreI変異体を、rosa1.3 DNA標的(caacatgatgt _P; 配列番号9)に対する切断についてスクリーニングした。合計で63個の陽性クローンが見出され、96ウェルプレートで再配置し、2次スクリーニングにより確認した(図5)。これらの陽性クローンのうち、22個(図5において丸で囲む)を選択した。これらの22個の陽性クローンを配列決定した。これらは、表Iに記載される18個の異なるタンパク質に相当することがわかった。
【0128】
【表1】

【0129】
実施例2:rosa1.4を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のrosa1標的の右部分に由来するrosa1.4 DNA標的配列を切断できることを示す(図2)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチドのみで、後に接尾辞_Pを付して記載する。例えば、rosa1.4は、tgggattatgt_P (配列番号10)とよばれる。
【0130】
rosa1.4標的は、5TAT_Pと±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位が、かつ10GGG_Pと±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位が同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響しないであろうと仮定した。5TAT_Pを切断できる変異体は、Arnouldら, J Mol. Biol., 2006; 355, 443〜458、並びに国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853に記載されるように、I-CreI N75に対する44位、68位、70位での突然変異誘発により以前に得られた。10GGG_P標的を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Research, 2006, 34, e149及び国際PCT出願WO 2007/049156に記載されるように、I-CreI N75に対する28位、30位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。
【0131】
両方の組のタンパク質を70位にて変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的サブドメインが存在することが仮定された。このことは、この位置が、標的の±8〜10の塩基に対する特異性にほとんど影響しないことを意味する。
よって、組み合わせた変異体がrosa1.4標的を切断できるかを確認するために、5TAT_P (caaaactatgt_P; 配列番号6)を切断するタンパク質からの44位、68位及び70位での変異を、10GGG_P (cgggacgtcgt_P; 配列番号4)を切断するタンパク質からの28、30、33、38及び40変異と組み合わせた。
【0132】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例1及び以下に記載されるとおりである:
コンビナトリアル変異体の構築
10GGG_P又は5TAT_Pを切断するI-CreI変異体は、10GGG_P又は5TAT_P標的についてそれぞれSmithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049156、並びにArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; 国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853で同定された。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を作製するために、I-CreIコード配列の5'末端(aa 1位〜43位)又は3'末端(39位〜167位)を増幅する別々のオーバーラップPCR反応を行った。5'及び3'末端の両方について、PCR増幅を、ベクター(pCLS0542, 図4)に特異的なプライマーGal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3' (配列番号12)又はGal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3' (配列番号13)と、アミノ酸39〜43についてのI-CreIコード配列に特異的なプライマーassF 5'-ctannnttgaccttt-3' (配列番号14)又はassR 5'-aaaggtcaannntag-3' (配列番号15) (ここで、nnnは残基40をコードする)を用いて行う。同じプライマー及び残基40について同じコード配列を用いて行った増幅反応により得られたPCRフラグメントをプールした。次いで、プライマーGal10FとassR又はassFとGal10Rを用いた反応により得られたPCRフラグメントのそれぞれのプールを、等モル比で混合した。最後に、2つのオーバーラップPCRフラグメントのそれぞれの最終プールおよそ25ngと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R. D.及びR.A. Woods, Methods Enzymol. 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。両方の群の変異を含有するインタクトなコード配列を、酵母におけるインビボ相同組換えにより作製する。
【0133】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75足場上で44位、68位及び70位での変異を、28、30、33、38及び40変異と結び付けることにより構築して、複雑さ(complexity)が2208のライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表IIに示す。このライブラリーで酵母を形質転換し、3456個のクローン(多様性の1.5倍)を、rosa1.4 DNA標的(tgggattatgt_P; 配列番号10)に対する切断についてスクリーニングした。合計で69個の陽性クローンが見出され、96ウェルプレートで再配置し、2次スクリーニングにより確認した(図6)。これらの陽性のうち、15個のクローン(図6において丸で囲む)を選択した。配列決定の後に、これらの15クローンは、rosa1.4 DNA標的を切断する8つの異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当することがわかった(表II)。
【0134】
【表2】

【0135】
実施例3:rosa1を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームrosa1由来標的(rosa1.3及びrosa1.4)のそれぞれを切断できるI-CreI変異体を、実施例1及び2で同定した。このような変異体の対(一方はrosa1.3を切断し、他方はrosa1.4を切断する)を、酵母において同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性分子種、すなわち2つのホモ二量体と1つのヘテロ二量体とが存在するはずである。形成されるはずのヘテロ二量体が非パリンドロームのrosa1及びrosa1.2 DNA標的を切断するかをアッセイした。
【0136】
1) 材料及び方法
a) カナマイシン耐性ベクターでの変異体のクローニング
酵母において2つのI-CreI変異体を同時発現させるために、rosa1.4配列を切断する変異体を、カナマイシン耐性遺伝子をマーカーとして有する酵母発現ベクター(pCLS1107, 図7)にサブクローニングした。変異体を、PCR反応により、pCLS0542及びpCLS1107に共通のプライマー:Gal10F 5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3' (配列番号12)及びGal10R 5'-acaaccttgattggagacttgacc-3' (配列番号13)を用いて増幅した。およそ25 ngのPCRフラグメントとDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にした25 ngのベクターDNA (pCLS1107)とを用いて酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。pCLS1107ベクターにサブクローニングされたrosa1.4標的を切断する変異体を含有するそれぞれの酵母株を、次いで、rosa1.4標的を発現する酵母と交配させてこれを確認した。プラスミドを発現する変異体を回収するために、酵母DNAを標準的なプロトコルを用いて抽出し、大腸菌を形質転換するのに用い、大腸菌DNAを調製した。
【0137】
b) 変異体同時発現
pCLS0542発現ベクター中のrosa1.3標的を切断する変異体を発現する酵母株を、pCLS1107発現ベクター中のrosa1.4標的を切断する変異体をコードするDNAを用いて形質転換した。形質転換体は、-L Glu + G418培地上で選択した。
【0138】
c) メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
交配は、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上に、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いてグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタに対して行って、それぞれの標的について異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固体寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、G418を加え、ガラクトース(2%)を炭素源として有する合成培地上に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0中の0.02 % X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mM β-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固体アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0139】
2) 結果
rosa1.3標的を切断する変異体(表Iに記載されるm1〜m18)と、rosa1.4標的を切断する8つの変異体(表IIに記載される)との同時発現は、全ての場合においてrosa1.2標的の効率的な切断をもたらした(スクリーニングの例を図8Aに示す)。全ての試験した組み合わせを、表IIIにまとめる。これらの組み合わせのほとんどは、rosa1.2配列とは+1位の1 bpのみが異なるrosa1天然標的も切断できる(図2)。図8Bに示すように、rosa1天然標的に対して観察されたシグナルは、rosa1.2標的に対して観察されたものと比較して弱い。rosa1 DNA標的を切断する組み合わせを、表IVに示す。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
実施例4:rosa1.4を切断するタンパク質のランダム突然変異誘発及びrosa1.3を切断するタンパク質との組み立てによる、rosa1を切断するメガヌクレアーゼの洗練
パリンドロームのrosa1.3及びrosa1.4標的を切断する変異体の組み立てによる、非パリンドロームのrosa1.2及びrosa1標的を切断できるI-CreI変異体。しかし、組み合わせは、rosa1.2を効率的に切断できたが、rosa1.2とは1位の1 bpのみが異なるrosa1を弱く切断した。rosa1に対して観察されたシグナルは充分でない。
【0143】
よって、rosa1を切断するタンパク質の組み合わせをランダムに突然変異誘発し、rosa1を効率的に切断する変異体をスクリーニングした。標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、4つの中央の塩基対(-2位〜2位)とI-CreIタンパク質との間に接触はない(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜316; Chevalierら, J. Mol. Biol. 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(83個の最後のアミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。ランダム突然変異誘発により、高い複雑さのライブラリーが得られ、試験される変異型ライブラリーの複雑さは、rosa1を切断するヘテロ二量体の2つの成分の一方のみに突然変異を誘発することにより制限される。
つまり、rosa1.4を切断するタンパク質に無作為に突然変異を誘発し、rosa1.3を切断するタンパク質と同時発現させたときにこれらがrosa1を効率的に切断できるかを試験した。
【0144】
1) 材料及び方法
a) ランダム突然変異誘発
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択された変異体のプールに対して、PCRにより、Mn2+又はdNTPの誘導体、例えば8-オキソ-dGTP及びdPTPを用いて、JBS dNTP-Mutageneisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして2ステップPCRプロセスで創出した。タンパク質全体に対するランダム突然変異誘発のために、用いたプライマーは:preATGCreFor 5'-gcataaattactatacttctatagacacgcaaacacaaatacacagcggcctt gccacc-3'; 配列番号16)及びICreIpostRev 5'-ggctcgaggagctcgtctagaggatcgctcgag ttatcagtcggccgc -3' (配列番号17)である。タンパク質のC-末端部分に対する突然変異誘発のために、用いたプライマーは、dNTP誘導体を用いてAA78a83For (5'-ttaagcgaaatcaagccg-3'; 配列番号18)及びICreIpostRevであった。タンパク質の残りは、高忠実度のtaqポリメラーゼを用い、dNTP誘導体を用いずに、プライマーpreATGCreFor及びAA78a83Rev (5'-cggcttgatttcgcttaa-3'; 配列番号19)を用いて増幅する。
【0145】
変異体のプールを、PCR反応により、pCLS0542 (図4)及びpCLS1107 (図7)に共通するこれらのプライマーを用いて増幅した。およそ75 ngのPCRフラグメントとDraIII及びNgoMIVでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS1107)を用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。I-CreI変異体についてのインタクトなコード配列のライブラリーを、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。陽性をもたらすクローンを、実施例1に記載されるようにして配列決定により確認した。
【0146】
b) rosa1標的を含有する酵母株でのロイシン発現ベクター中の変異体のクローニング
rosa1標的を酵母レポーターベクターpCLS1055 (図3)中に含有する酵母FYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、LEU2遺伝子をマーカーとして有するpCLS0542ベクター中のrosa1.3標的を切断する変異体で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。得られた酵母株を、実施例3に記載される交配アッセイのための標的として用いる。
【0147】
2) 結果
rosa1.4を切断する4つの変異体(ERRR / AHQ、ERRR / ARN、ERRK / AHQ及びERRK / VRA、表IVによる)をプールし、全てのタンパク質又はタンパク質のC-末端部分に対してランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した。4464個の形質転換されたクローンを、次いで、実施例1に記載されるものから選択された、(i) レポータープラスミド内にrosa1標的を含有し、(ii) rosa1.3標的を切断する変異型を発現する酵母株と交配させた。I-CreI V24 Y44 S68 S70 R75 I77 (すなわちVYSSRI)変異体、又はI-CreI V24 Y44 R68 S70 Q75 I77 (すなわちVYRSQI)変異体、又はI-CreI V24 Y44 R68 S70 Y75 T77 (すなわちVYRSYT)変異体(表Iを参照)を発現する3つのこのような株を用いた。2つのクローンは、このような酵母株と交配させたときに、同じ酵母株と突然変異誘発する前の変異体と比較してrosa1標的のよりよい切断を引き起こすことがわかった。結論として、2つのタンパク質が、VYSSRI、VYRSQI又はVYRSYTとヘテロ二量体を形成する場合に、効率的にrosa1を切断できた(表V及び図9)。興味深いことに、両方のタンパク質がA105及びR107残基を含有する。
【0148】
【表5】

【0149】
実施例5:rosa1.3を切断するタンパク質のランダム突然変異誘発及びrosa1.4を切断する洗練されたタンパク質との組み立てによる、rosa1を切断するメガヌクレアーゼの洗練
rosa1標的を切断できるI-CreI変異体を、rosa1.3を切断する変異体及びrosa1.4を切断する洗練された変異体の組み立てにより同定した。メガヌクレアーゼの活性を増大させるために、rosa1を切断するヘテロ二量体の第2成分にランダム突然変異を誘発した。この実施例において、rosa1.3を切断する変異体にランダム突然変異を誘発し、その後、実施例4で同定されたrosa1.4を切断する洗練された変異体との組み合わせでrosa1をより効率的に切断する変異体をスクリーニングした。
【0150】
1) 材料及び方法
実験手順は、NcoI及びEagIでの消化により線状にしたpCLS0542ベクター(図4)にPCR生成物をクローニングした以外は、実施例4に記載されるとおりである。
rosa1標的を含有する酵母株でのKanR発現ベクター中の変異体のクローニング
rosa1標的を酵母レポーターベクター(pCLS1055, 図3)中に含有する酵母FYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、pCLS1107ベクター中の、rosa1.4標的を切断するMO_1及びMO_2洗練変異体で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。変異体-標的酵母を、実施例3に記載される交配アッセイのための標的として用いる。
【0151】
2) 結果
rosa1.3を切断する4つの変異体の2つのプール(プール1: VYRSNI、VYYSYR、VYRSNV及びVYNSRIと、プール2: VYYSYR、VYSSRI、VYRSQI及びVYRSYT、表IVによる)に、全てのタンパク質又はタンパク質のC-末端部分に対してランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した。8928個の形質転換されたクローンを、(i) レポータープラスミド内にrosa1標的を含有し、(ii) rosa1.4標的を切断する変異型を発現する酵母株と交配させた。I-CreI E28 R33 R38 R40 A44 H68 Q70 N75 A105 R107 (すなわちMO_1)変異体、I-CreI E28 R33 R38 K40 A44 H68 Q70 N75 A105 R107 A151 G153 E158 (すなわちMO_2)変異体のいずれかを発現する2つのこのような株を用いた。5つのクローンは、このような酵母株と交配させたときに、同じ酵母株と突然変異誘発する前の変異体と比較してrosa1標的のよりよい切断を引き起こすことがわかった(図10)。配列決定の後に、これらは、4つのタンパク質に相当することがわかった。結論として、MO_1又はMO_2とヘテロ二量体を形成したときにrosa1を効率的に切断できる4つのタンパク質が同定された(表VI)。
【0152】
【表6】

【0153】
これらの4つの新しいタンパク質を、ホモ二量体でrosa1.3標的を切断するI-CreI変異体のプール(実施例1及び表Iに記載される)に対するランダム突然変異誘発により得た。興味深いことに、これらは、元のI-CreI変異体と比較して、それぞれ1つの単独アミノ酸変異だけを有する(G19S、V105A又はS79G) (表VII)。例えば、mO_2はm14とは単独G19S変異が異なる。同様に、実施例6に記載されるA105変異はこの実施例で再び見出されたが、今回は、いずれの他の変異と結びついていなかった。
【0154】
これらの3つのアミノ酸変異は、rosa1標的に対するヘテロ二量体の活性を増大させる(図10)。この効果は、G19S変異で特に著しい。G19S変異の導入による改良は、変異体m14のMO_1又はMO_2との酵母における同時発現(図9)及び変異体mO_2のMO_2との酵母における同時発現(図10)により形成されるヘテロ二量体の、rosa1標的に対する活性の比較により最もよく説明される。つまり、G19S変異は、それ自体により活性を増大させるのに充分なようである。
【0155】
【表7】

【0156】
実施例6:rosa1標的に対するヘテロ二量体の活性を増強させるG19S変異は、rosa1.3パリンドローム標的に対するホモ二量体の活性をなくす
酵母内で同時発現させてヘテロ二量体を形成したときにrosa1標的を効率的に切断できるI-CreI洗練変異体を、実施例5で同定した(図10)。実施例5は、ヘテロ二量体の一方の成分に加えられたG19S変異が、rosa1標的に対するそれらの活性を増大させることを示す(表VI、表VII、図9及び図10)。この実施例は、G19S変異が、パリンドロームrosa1.3標的に対するホモ二量体の活性をなくすことを示す。
【0157】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例1に記載されるとおりである。
【0158】
2) 結果
酵母で発現された実施例5に記載される洗練されたI-CreI変異体を、ここで、ホモ二量体で、パリンドロームrosa1.3標的に対してスクリーニングする(図11)。変異V105A又はS79Gを有する変異体mO_3及びmO_4は、ホモ二量体で、rosa1.3標的に対して活性である。これとは対照的に、G19S変異を有する変異体mO_1及びmO_2は、ホモ二量体で、rosa1.3パリンドローム標的に対して不活性である。
【0159】
rosa1.3標的を効率的に切断する(実施例1を参照)VYRSNV及びVYRSQI変異体は、mO_1及びm0_2とは、それぞれ、19位のGのみが異なるので、これらの結果は、G19S変異がホモ二量体タンパク質の活性を著しく損なうために充分であることを示す。これらの結果は、mO_1及びmO_2が他のタンパク質とヘテロ二量体を形成する場合のG19S位の効果と対照的であり、この場合、このことは活性の増大をもたらす(実施例5)。この活性の損失がホモ二量体形成、結合又は切断における欠陥に起因するかをこのステップにより決定することは不可能である。しかし、19位は触媒部位の部分であり(Chevalierら, Biochemistry, 2004, 43, 14015〜14026)、近接するAsp20とともに、Gly19は金属カチオン結合に関与し、このことは、切断工程に対する直接的な影響を示唆する。
【0160】
効率の問題に加えて、特異性は多くの使用、特に治療用途についての別の重要な特徴である。G19Sの置換を有するホモ二量体の活性をなくすか又は強く低減させるG19S変異の影響は、特異性を強く改良する。この変異は、このような置換を1つだけ有するヘテロ二量体における活性も増大させるので、この変異が、これらの特性が任意の又は少なくともいくつかのI-CreI由来メガヌクレアーゼに与えられ、この実施例に列挙されるものだけに与えられるのでないことを条件として、よりよい全体的な特性を有するメガヌクレアーゼを工学的に作製するための非常に貴重なツールであることが示されるだろう。
【0161】
実施例7:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11標的の左部分に由来するB2M11.2 DNA標的配列を切断できることを示す(図12)。
この実施例に記載される標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチドのみで、後に接尾辞_Pを付して記載する。例えば、標的B2M11.2は、tgaaattaggt_P (配列番号25)とも記載される。
B2M11.2は、5TAG_Pと±1位、±2位、±3位、±4位、±5位及び±7位が、かつ10GAA_Pと±1位、±2位、±7位、±8位、±9位及び±10位が同様である。±6位及び±11位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響しないであろうと仮定した。5TAG_P標的(caaaactaggt_P; 配列番号22)を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により以前に得られた(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458、並びに国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853)。10GAA_P標的(cgaaacgtcgt _P; 配列番号20)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Research, 2006, 34, e149に以前に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位での突然変異誘発により得られた。つまり、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.2標的の切断が可能になるだろう。
【0162】
よって、組み合わせた変異体が、B2M11.2標的を切断できるかを確認するために、5TAG_P (caaaactaggt_P; 配列番号22)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10GAA_P (cgaaacgtcgt_P; 配列番号20)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38及び40変異と組み合わせた。
【0163】
1) 材料及び方法
a) 標的ベクターの構築
標的は、実施例1に記載されるようにして、PROLIGOから得たゲートウェイクローニング配列と接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチド:5' tggcatacaagttttgttctcaggtacctgagaacaacaatcgtctgtca 3' (配列番号27)を用いてクローニングした。
【0164】
b) コンビナトリアル変異体の構築
10GAA_P又は5TAG_Pを切断するI-CreI変異体は、10GAA_P又は5TAG_P標的についてそれぞれSmithら, Nucleic Acids Res. 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049156、並びにArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; 国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853で同定された。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列は、実施例2に記載されるような別々のオーバーラップPCR反応により作製した。
【0165】
c) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
実験手順は、実施例1に記載されるとおりである。
d) 変異体の配列決定
実験手順は、実施例1に記載されるとおりである。
【0166】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場上で44位、68位、70位、75位及び77位での変異を28、30、33、38及び40変異と結びつけることにより構築して、複雑さが2014のライブラリーを得た。組み合わせの例を、表VIIIに示す。このライブラリーで酵母を形質転換し、4464個のクローン(多様性の2.2倍)を、B2M11.2 DNA標的(tgaaattaggt _P; 配列番号25)に対する切断についてスクリーニングした。2つの陽性クローンが、非常に低いレベルの活性で見出され、これは配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、2つの異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当することが見出された(表VIIIを参照)。陽性は、図13に示す。
【0167】
【表8】

【0168】
実施例8:B2M11.2を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発による、より高い効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11.2標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドロームの10GAA_P及び5TAG_P標的を切断する変異体の組み立てにより同定した(実施例7)。しかし、これらの組み合わせのうち2つのみがB2M11.2を切断でき、かつ効率は最小限であった。
よって、B2M11.2を切断する2つのタンパク質組み合わせにランダム突然変異を誘発し、よりよい効率でB2M11.2を切断する変異型をスクリーニングした。標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質中の1回目のコンビナトリアルアプローチに用いた残基の間(28, 30, 32, 33, 38及び40に対して44, 68, 70, 75及び77)には接触がない(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res. 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, Nat. Struct. Biol. 2001, 8, 312〜316, Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(83個の最後のアミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0169】
1) 材料及び方法
実験手順は、実施例5に記載されるとおりである。
【0170】
2) 結果
B2M11.2を切断する2つの変異体(I-CreI 32G33H44A68Y70S75Y77K及びI-CreI 32A33H44A68Y70S75Y77K、表VIIIの命名法によるとKNGHQS/AYSYK及びKNAHQS/AYSYKともよばれる)をプールし、ランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した。4464個の形質転換クローンを、次いで、レポータープラスミド内にB2M11.2標的を含有する酵母株と交配させた。32個のクローンが、このような酵母株と交配させたときにB2M11.2標的の切断を引き起こすことが見出され、これらは、少なくとも、14個の異なる新規なエンドヌクレアーゼに相当する(表IXを参照)。陽性の例を図14に示す。
【0171】
【表9】

【0172】
実施例9:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼの作製
この実施例は、I-CreI変異体が、パリンドローム形のB2M11.1標的の右部分に由来するB2M11.3 DNA標的配列を切断できることを示す(図12)。この実施例に記載される全ての標的配列は、22 bpのパリンドローム配列である。よって、これらを、最初の11ヌクレオチドのみで、後に接尾辞_Pを付して記載する。例えば、標的B2M11.3は、tctgactttgt_P; 配列番号26とよばれる。
【0173】
B2M11.3は、5TTT_Pと±1位、±2位、±3位、±4位、±5位、±6位及び±7位が、かつ10CTG_Pと±1位、±2位、±6位、±7位、±8位、±9位及び±10位が同様である。±11位は、結合及び切断活性に対してほとんど影響しないであろうと仮定した。5TTT_P標的(caaaactttgt_P; 配列番号23)を切断できる変異体は、I-CreI N75に対する44位、68位、70位、75位及び77位での突然変異誘発により、以前に得られた(Arnouldら, J. Mol. Biol. 2006, 355, 443〜458及び国際PCT出願WO 2006/097784、WO 2006/097853)。10CTG_P標的(cctgacgtcgt_P; 配列番号21)を切断できる変異体は、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149に記載されるように、I-CreI N75及びD75に対する28位、30位、32位、33位、38位、40位及び70位での突然変異誘発により得られた。つまり、このような変異体の対を組み合わせることにより、B2M11.3標的の切断が可能になる。
【0174】
両方の組のタンパク質を70位にて変異させる。しかし、2つの分離可能な機能的ドメインがI-CreI中に存在することが以前に証明された(Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149)。このことは、この位置が、標的の±10〜8位の塩基に対する特異性にほとんど影響しないことを意味する。よって、組み合わせた変異体がB2M11.3標的を切断できるかを確認するために、5TTT_P (caaaactttgt_P; 配列番号23)を切断するタンパク質からの44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、10CTG_P (cctgacgtcgt_P; 配列番号21)を切断するタンパク質からの28、30、32、33、38、40変異と組み合わせた。
【0175】
1) 材料及び方法
コンビナトリアル変異体の構築
10GAA_P又は5TAG_Pを切断するI-CreI変異体は、10GAA_P又は5TAG_P標的についてそれぞれ、Smithら, Nucleic Acids Res., 2006, 34, e149; 国際PCT出願WO 2007/049156、並びにArnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458; 国際PCT出願WO 2006/097784及びWO 2006/097853で同定された。両方のシリーズからの変異を含むI-CreI由来コード配列を、DraIII及びNgoMIVの消化により線状にした酵母発現ベクターpCLS1107 (KanR; 図7)でクローニングを行った以外は、実施例2に記載される別々のオーバーラップPCR反応により作製した。
【0176】
2) 結果
I-CreIコンビナトリアル変異体を、I-CreI N75又はD75足場上で44位、68位、70位、75位及び77位での変異を、28、30、33、38及び40変異と結び付けることにより構築して、複雑さが1600のライブラリーを得た。コンビナトリアル変異体の例を、表Xに示す。このライブラリーで酵母を形質転換し、3348個のクローン(多様性の2.1倍)を、B2M11.3 DNA標的(tctgactttgt_P; 配列番号26)に対する切断についてスクリーニングした。単独の陽性クローンが見出され、これは、配列決定及び2次スクリーニングによる確認の後に、新規なエンドヌクレアーゼに相当することが分かった(表Xを参照)。この陽性によるB2M11.3標的の切断を、図15に示す。
【0177】
【表10】

【0178】
実施例10:B2M11.2組み立てを切断するメガヌクレアーゼと、B2M11.3を切断するタンパク質との同時発現による、B2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11由来標的(B2M11.2及びB2M11.3)のそれぞれを切断できるI-CreI変異体を、実施例7、8及び9で同定した。このような変異体の対(一方はB2M11.2を切断し、他方はB2M11.3を切断する)を、酵母において同時発現させた。同時発現の際に、3つの活性分子種、すなわち2つのホモ二量体と1つのヘテロ二量体とが存在するはずである。形成されるはずのヘテロ二量体がB2M11標的を切断するかをアッセイした。
【0179】
1) 材料及び方法
a) pCLS0542、B2M11標的酵母での最適化変異体のクローニング
B2M11標的を酵母レポーターベクター(pCLS1055, 図3)中に含有する酵母FYBL2-7B株(MAT a, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202)を、LEU2遺伝子をマーカーとして有するpCLS0542ベクター(図4)にクローニングしたB2M11.2標的を切断する最適化変異体で、高効率LiAc形質転換プロトコルを用いて形質転換する。変異体−標的酵母を、カナマイシンをマーカーとして有するpCLS1107ベクター(図7)中の、B2M11.3を切断する変異体に対する実施例1及び3で記載される交配アッセイのための標的として用いる。
【0180】
b) メガヌクレアーゼ同時発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
実験手順は、実施例3に記載されるとおりである。
【0181】
2) 結果:
B2M11.2及びB2M11.3を切断する変異体の同時発現は、ほとんどの場合でB2M11標的の切断をもたらした(図16)。機能的組み合わせを表XIにまとめる。
【0182】
【表11】

【0183】
実施例11:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発及びB2M11.2を切断するタンパク質との同時発現による、より高い効率でB2M11を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11標的を切断できるI-CreI変異体を、パリンドロームのB2M11.2及びB2M11.3標的を切断する変異体の同時発現により同定した(実施例7、8、9及び10)。しかし、効率及びB2M11を切断できる陽性の組み合わせの数は最小限であった。
よって、B2M11.3を切断するタンパク質にランダム突然変異を誘発し、B2M11.2についての最適化変異体と組み合わせたときによりよい効率でB2M11を切断する変異型をスクリーニングした。標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質中の1回目のコンビナトリアルアプローチに用いた残基の間(28, 30, 32, 33, 38及び40に対して44, 68, 70, 75及び77)には接触がない(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res. 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, Nat. Struct. Biol. 2001, 8, 312〜316, Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(83個の最後のアミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0184】
1) 材料及び方法
ランダム突然変異誘発を、実施例4に記載されるようにして行う。変異体−標的酵母を調製し、実施例10に記載されるようにして交配アッセイのための標的として用いる。
【0185】
2) 結果
B2M11.3を切断する変異体(I-CreI 30Q33G38C68N70S75N77R、表XIの命名法によるとKQSGCS/QNSNRともよばれる)に、ランダム突然変異を誘発し、酵母を形質転換した。6696個の形質転換クローンを、次いで、実施例8で記載されるものから選択した(i) レポータープラスミド内にB2M11標的を含有し、(ii) B2M11.2標的を切断する最適化変異体を発現する酵母株と交配させた。I-CreI 32A33H44A68Y70S75Y77K/132V変異体、又はI-CreI 32G33H44A68Y70S75Y77K/2I96R105A変異体のいずれかを発現する2つのこのような株を用いた(表XIIを参照)。101個のクローンが、B2M11標的の切断を、このような酵母株と交配させたときに誘発することが見出された。対照実験において、これらのクローンはいずれも、KQSGCS/QNSNRタンパク質の同時発現なしではB2M11の切断を引き起こさなかったことがわかった。我々は、101個の陽性が、KQSGCS/QNSNRとヘテロ二量体を形成するときに、B2M11を切断できるタンパク質を含有すると結論付けた。このようなヘテロ二量体変異体の例を、表XIIに列挙する。このような陽性によるB2M11標的の切断の例を、図17に示す。
【0186】
【表12】

【0187】
いくつかの異なる変異は改良された変異体で見出され、そのうちのG19S及びV105A変異は以前に記載した。V105A変異はいずれのその他の付加的な変異とも関連せず、このことは、これがI-CreI 30Q33G38C68N70S77Rタンパク質の活性を改良するために充分であることを示した。実施例5において、V105A変異が、rosa1標的を切断する全く異なるヘテロ二量体の活性を改良するために充分であることが既に観察された。つまり、V105A変異は、異なるI-CreI誘導体の活性をそれ自体により増強することができる「ポータブル」モチーフのように挙動する。
【0188】
実施例12:B2M11.3を切断するメガヌクレアーゼのランダム突然変異誘発、B2M11.2を切断するタンパク質との同時発現及びCHO細胞でのスクリーニングによる、より高い効率でB2M11.2を切断するメガヌクレアーゼの作製
パリンドロームB2M11標的をよりよい効率で切断できるI-CreI変異体を、最適化された変異体又はパリンドロームB2M11.2及びB2M11.3標的を切断しない変異体の酵母での同時発現により同定した(実施例11)。しかし、哺乳動物細胞中で機能的であり、効率及び染色体外アッセイを用いて哺乳動物細胞内でB2M11を切断できる陽性組み合わせの数が酵母細胞とは異なり得るヘテロ二量体を得ることは非常に有用である。
よって、B2M11.2を切断する最良タンパク質を実施例11のように突然変異させ、B2M11.3についての最適化変異体と組み合わせたときに良好な効率でB2M11を切断する変異型をスクリーニングした。標的に結合したI-CreIタンパク質の構造によると、I-CreIタンパク質中の1回目のコンビナトリアルアプローチに用いた残基の間(28, 30, 32, 33, 38及び40に対して44, 68, 70, 75及び77)には接触がない(Chevalier, B. S.及びB.L. Stoddard, Nucleic Acids Res. 2001, 29, 3757〜3774; Chevalierら, Nat. Struct. Biol. 2001, 8, 312〜316, Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269)。よって、突然変異を誘発する位置の組を合理的に選択することは困難であり、突然変異誘発を、タンパク質のC-末端部分(83個の最後のアミノ酸)又はタンパク質全体に対して行った。
【0189】
1) 材料及び方法
a) ランダム突然変異誘発によるライブラリーの構築
ランダム突然変異誘発ライブラリーを、選択された変異体のプールに対して、PCRにより、Mn2+又はdNTPの誘導体、例えば8-オキソ-dGTP及びdPTPを用いて、JBS dNTP-Mutageneisキット中のJENA BIOSCIENCE GmbHからのプロトコルに記載されるようにして2ステップPCRプロセスで行った。用いたプライマーは、attB1-ICreIFor (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcgaaggagatagaaccatggccaataccaaatataacaaagagttcc-3'; 配列番号28)、及びattB2-ICreIRev (5'-ggggaccactttgtacaagaaagctgggtttagtcggcc gccggggaggatttcttcttctcgc-3'; 配列番号29)である。得られたPCR生成物を、インビトロで、INVITROGENからのCHO Gateway発現ベクターpCDNA6.2(pCLS1069, 図18)にクローニングした。並行して、ライブラリーのために用いた選択された変異体を同様にしてこのベクターにクローニングした。クローニングされた変異体及びライブラリーの陽性をもたらすクローンを、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0190】
b) CHOスクリーニングのためのベクター中のB2M11標的の構築
B2M11標的を、酵母標的ベクター(実施例1に記載されるような)から、プライマー:M1s (5'-aaaaagcaggctgattggcatacaagtt-3'; 配列番号30)及びM2s (5'-agaaagctgggtgattgacagacgattg-3'; 配列番号31)、その後、attB1adapbis (5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagca-3'; 配列番号32)及びattB2adapbis (5'- ggggaccactttgtacaagaaagct-3'; 配列番号33)を用いる2ステップPCRにより増幅した。プライマーはProligoからである。最後のPCRを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いて、CHOレポーターベクター(pCLS1058, 図19)にクローニングした。クローニングされた標的を、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0191】
c) 哺乳動物細胞での染色体外アッセイ
CHO細胞に、Polyfectトランスフェクション試薬を、供給業者のプロトコル(QIAGEN)に従ってトランスフェクションさせた。アッセイごとに、150 ngの標的ベクターを、それぞれ12.5 ngの2つの変異体の両方(12.5 ngのパリンドロームB2M11.2標的を切断する変異体と、12.5 ngのパリンドロームB2M11.3標的を切断する変異体)と同時トランスフェクションさせた。トランスフェクションの72時間後に、培養培地を除去し、150μlの溶解/視覚化バッファーを、β-ガラクトシダーゼ液体アッセイのために加えた(1リットルのバッファーは、以下のものを含有する:100 mlの溶解バッファー(Tris-HCl 10 mM pH 7.5、NaCl 150 mM、Triton X100 0.1%、BSA 0.1 mg/ml、プロテアーゼ阻害剤)、10 mlのMg 100×バッファー(MgCl2 100 mM、β-メルカプトエタノール35%)、110 ml ONPG 8 mg/ml及び780 mlのリン酸ナトリウム0.1M pH 7.5)。37℃でのインキュベーションの後に、光学密度を420 nmで測定した。全体のプロセスを、自動化されたVelocity11 BioCelプラットフォームで行う。
【0192】
2) 結果
B2M11.2 を切断する最適化変異体(I-CreI 32G33H44A68Y70S75Y77K/120G、32A33H44A68Y70S75Y77K/2Y53R66C、32G33H44A68Y70S75Y77K/2I96R105A及び32A33H44A68Y70S75Y77K/132V、表XIIに記載されるように)にランダム突然変異を誘発し、Gatewayベクター(図15)に形質転換した。1920個の形質転換クローンのDNAプラスミドを精製し、次いで、実施例11に記載されるものから選択された、CHO B2M11標的ベクター及びB2M11.3標的を切断する最適化変異型と同時トランスフェクションした。60個のクローンが、B2M11標的の切断を引き起こすことが見出された。
【0193】
対照実験において、これらのクローンはいずれも、B2M11.3標的を切断する最適化変異型との同時トランスフェクションなしでは、B2M11の切断を引き起さないことがわかった。よって、60個の陽性は、B2M11.3標的を切断する最適化変異型とヘテロ二量体を形成するときに、B2M11を切断できるタンパク質を含有すると結論付けた。このようなヘテロ二量体変異体の例を、ベータ-ガラクトシダーゼ活性の指標として観察された切断活性とともに、表XIIIに列挙する。ここでまた、G19S及びV105Aが、単独(V105A)又はその他の変異との組み合わせ(G19Sについて)で見出された。
【0194】
【表13】

【0195】
実施例13:グリシン-19のセリンでの置換をもたらす(G19S)部位特異的突然変異誘発による、HprCH3標的部位を切断するメガヌクレアーゼの洗練
G19S置換がI-CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性を増大する能力をさらに確認するために、この変異を、22 bp (非パリンドローム)標的配列HprCH3 (tcgagatgtcatgaaagagatgga; 配列番号34)を切断するヘテロ二量体HprCH3.3 (KNSHQS/QRRDI/42A43L) / HprCH3.4 (KNTHQS/RYSNN/72T)の2つのタンパク質のそれぞれに組み込んだ。HprCH3標的配列は、クリテキュラス・グリセウス(Criteculus griseus) (チャイニーズハムスター) HPRT遺伝子のエキソン3 (17位〜38位)に位置する。
【0196】
元来の及びG19S派生変異体の切断活性を評価するために、CHO細胞での染色体レポーター系を用いた(図20)。この系において、CMVプロモーターにより駆動される単一コピーLacZ 遺伝子に、HprCH3部位が介在し、よって、これは非機能的である。HprCH3.3 / HprCH3.4についてのCHO発現プラスミド及びLacZ修復プラスミドでの株化細胞のトランスフェクションが、相同組換えによる機能的LacZ遺伝子の回復を可能にする。2本鎖破断が相同組換えを誘導できることが以前に示されている。よって、LacZ遺伝子が修復される頻度は、ゲノムHprCH3標的部位の切断効率の指標である。
【0197】
1) 材料及び方法
a) 部位特異的突然変異誘発
G19S置換を、HprCH3.3及びHprCH3.4のコード配列に導入するために、I-CreIコード配列の5' 末端(残基1〜24)又は3'末端(14〜167残基)を増幅する2回の別々のオーバーラップPCR反応を行った。5'末端と3'末端の両方について、PCR増幅を、ベクターと相同性を有するプライマー:
CCM2For 5'-aagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaccatggccaatacca aatataacaaagagttcc-3' (配列番号35)又はCCMRev 5'-tctgatcgattcaagtcagtgtctctctag atagcgagtcggccgccggggaggatttcttcttctcgc -3': 配列番号36)、及び置換変異G19Sを含有するアミノ酸14〜24についてのI-CreIコード配列に特異的なプライマー:G19SF 5'-gccggctttgtggactctgacggtagcatcatc-3' (配列番号37)又はG19SR 5'-gatgatgctaccgtcagagtccacaaagccggc-3' (配列番号38)を用いて行う。
【0198】
得られたPCR生成物は、互いにそれぞれ33 bpの相同性を有する。その後、フラグメントを、2つのフラグメントのそれぞれの一定量とCCM2For及びCCMRevプライマーとを用いるPCRにより組み立てる。
【0199】
b) CHO発現ベクターでの変異体のクローニング
SacI-XbaIで消化したPCR生成物を、I-CreI N75コード配列を含有するCHOゲートウェイ発現ベクターpCDNA6.2 (INVITROGEN)であるプラスミドpCLS1088 (図21)の対応するSacI-XbaI部位にクローニングした。HprCH3.3-G19S又はHprCH3.4-G19Sコード配列のI-CreI N75コード配列についての置換を、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0200】
c) 哺乳動物細胞での染色体アッセイ
レポーター系を有するCHO株化細胞を、完全培地(2 mM L-グルタミン、ペニシリン(100 UI/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンフォテリシンB (Fongizone) (0.25μg/ml) (INVITROGEN-LIFE SCIENCE)及び10% FBS (SIGMA-ALDRICH CHIMIE)を補ったKaighnの改変F-12培地(F12-K))中、10cmディッシュあたり2×105細胞の密度で播種した。次の日に、細胞にPolyfectトランスフェクション試薬(QIAGEN)をトランスフェクションした。簡単に、2μgのlacz修復マトリクスベクターに、種々の量のメガヌクレアーゼ発現ベクターを同時トランスフェクションさせた。37℃にて72時間のインキュベーションの後に、細胞を0.5%グルタルアルデヒド中で4℃にて10分間固定し、0.02 % NP40を含む100 mMリン酸バッファーで2回洗浄し、以下の染色バッファーで染色した(10 mMリン酸バッファー、1 mM MgCl2、33 mM Kヘキサシアノ鉄(III)、33 mM Kヘキサシアノ鉄(II)、0.1% (v/v) X-Gal)。37℃で一晩のインキュベーションの後に、プレートを、光学顕微鏡の下で調べ、LacZ陽性細胞クローンの数を計数した。LacZ修復の頻度を、トランスフェクションされた細胞の数(5×105)で除し、トランスフェクション効率で修正したLacZ+増殖巣の数として表す。
【0201】
2) 結果
2つの元の変異体(HprCH3.3 / HprCH3.4)又は対応する元の変異体と組み合わせた2つのG19S派生変異体のうちの1つ(HprCH3.3 / HprCh3.4 G19S又はHprCH3.3 G19S / HprCh3.4)のいずれかを含有するヘテロ二量体の活性を、HprCH3標的を含有するCHO株化細胞での染色体アッセイを用いて試験した。この染色体アッセイは、最近の出版物の中に詳細に記載されている(Arnoulら, J. Mol. Biol. Epub May 10, 2007)。簡単に、単一コピー導入遺伝子を有するCHO株化細胞をまず創出した。導入遺伝子は、ヒトEF1αプロモーターをI-SceI切断部位の上流に含有する(図20、工程1)。第2に、I-SceIメガヌクレアーゼを用いてDSB誘導相同組換えをこの遺伝子座で引き起こし、新規なメガヌクレアーゼ切断部位を有する5.5 kbカセットを挿入した(図20、工程2)。このカセットは、CMVプロモーターにより駆動される非機能的LacZオープンリーディングフレームとプロモーターレスハイグロマイシンマーカー遺伝子とを含有する。LacZ遺伝子自体は、試験されるメガヌクレアーゼ切断部位(ここではrosa1切断部位)を含有する50 bp挿入断片により不活性化される。この株化細胞は、次に、rosa1標的を切断する工学的に作製されたI-CreI誘導体を用いて、DSB誘発遺伝子ターゲティング効率(LacZ修復)を評価するために用いることができる(図20、ステップ3)。
【0202】
この株化細胞は、修復マトリクスと、種々の量のメガヌクレアーゼを発現するベクターとを用いて同時トランスフェクションした。LacZ遺伝子の修復頻度は、元の工学的に作製されたヘテロ二量体(HprCH3.3 / HprCH3.4)の最大値2.0×10-3から、HprCH3.3-G19S派生変異体を用いた最大値1.15×10-2及びHprCH3.4-G19S派生変異体を用いた最大値1.2×10-2まで増大した(図22)。
【0203】
これらの知見により、G19S変異が、それ自体で、ヘテロ二量体の活性を、その単量体の一方のみで見出されるときに増強させ得ることが確認される。これらの結果により、単独G19S置換が、rosa1標的を切断する、完全に異なるヘテロ二量体の活性を増強させることを示した実施例5で得られた結果が確認される。さらに、G19Sは、他の変異との組み合わせであるが(実施例11及び12を参照)、B2M11標的に対する活性が増強されたいくつかのタンパク質でも見出された。つまり、G19S変異は、異なるI-CreI誘導体の活性をそれ自体により、又は他の変異との組み合わせで増強することができる「ポータブル」モチーフのように挙動する。
【0204】
しかし、HprCH3.3 G19S / HprCH3.4 G19Sヘテロ二量体が修復マトリクスで形質転換されたときに、LacZ+増殖巣は検出されず、このことは、6.0×10-6未満の組換え頻度を示す。これらの知見により、rosa1標的を切断するメガヌクレアーゼを用いて実施例6で観察されたこと、すなわち単独G19S置換が活性を増強させるが、ヘテロ二量体のそれぞれの単量体中のG19S置換は、活性の非常に強い減少をもたらすことが確認される。
【0205】
実施例14:単独G19S置換の導入によるRAG1.10 DNA配列を切断するメガヌクレアーゼの改良
I-CreI変異体のランダム突然変異誘発によるいくつかの最適化プロセスは、いくつかの改良された変異体が、19位のグリシンのセリン残基による置換を意味する同じ変異G19Sを有していたことを示している。この変異は、二重の機能を有する。なぜなら、これはヘテロ二量体の活性を改良するだけでなく、G19S変異を有するホモ二量体の活性もなくし、よって、I-CreI由来メガヌクレアーゼの特異性を増強させるからである(実施例5、6、11、12及び13を参照)。
よって、G19S変異を、RAG1.10.2標的を切断するKRSNQS/AYSDR変異体(以下、M2と記す)と、RAG1.10.3標的を切断するNNSSRR/YRSQV変異体(以下、M3と記す)とに導入した。これらの新しいタンパク質を、次いで、RAG1.10、RAG1.10.2及びRAG1.10.3標的(図23)に対して、哺乳動物細胞での染色体外及び染色体アッセイにより、実施例12及び13に記載されるようにして試験した。
【0206】
1) 材料及び方法
a) G19S変異の導入
2回のオーバーラップPCR反応を、2組のプライマーを用いて行った:第1のフラグメントについてGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号12)及びG19SRev (5'-gatgatgctaccgtcagagtccacaaagccggc-3'; 配列番号38)、並びに第2のフラグメントについてG19SFor (5'-gccggctttgtggactctgacggtagcatcatc-3'; 配列番号37)及びGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号13)。およそ25 ngのそれぞれのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R.D.及びR.A. Woods; Methods Enzymol. 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。G19S変異を含有するインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0207】
b) 変異体の配列決定
変異体を発現するプラスミドを回収するために、酵母DNAを標準的なプロトコルを用いて抽出し、大腸菌を形質転換するために用いた。変異体ORFの配列決定を、次いで、プラスミドに対してMILLEGEN SAにより行った。
【0208】
c) 哺乳動物発現ベクターへのRAG1.10 G19S変異体のクローニング
それぞれの変異体ORFを、PCRにより、プライマーCCM2For:
(5'-aagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaccatggccaataccaaatataacaaag agttcc-3'; 配列番号39)
及びCCMRevBis:
(5'-ctgctctagattagtcggccgccggggaggatttcttc-3'; 配列番号40)を用いて増幅した。
PCRフラグメントを、制限酵素SacI及びXbaIにより消化し、これもまたSacI及びXbaIにより消化されたベクターpCLS1088 (図21)にライゲーションした。得られたクローンを、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0209】
d) 染色体外アッセイのためのベクターへの異なるRAG1.10標的のクローニング
興味対象の標的を、次のようにしてクローニングした。ゲートウェイクローニング配列と接する標的配列に相当するオリゴヌクレオチドをProligoから得た。一本鎖オリゴヌクレオチドのPCR増幅により作製した二本鎖標的DNAを、Gatewayプロトコル(INVITROGEN)を用いてCHOレポーターベクター(pCLS1058、図19)にクローニングした。
【0210】
e) CHO細胞での染色体外アッセイ
実施例12を参照されたい。
f) CHO細胞での染色体アッセイ
実施例13を参照されたい。
【0211】
2) 結果
G19S変異を有するM2及びM3 I-CreI変異体(M2 G19S及びM3 G19S)の、それらのそれぞれの標的RAG1.10.2及びRAG1.10.3 (図23)に対する活性を、CHO細胞での染色体外アッセイを用いてモニターした。変異体を、純粋なホモ二量体の様式又はG19S変異を有するか又は有さない変異体との同時トランスフェクションのいずれかで試験し、このことにより、両方のヘテロ二量体M2/M2 G19S及びM3/M3 G19Sの、それらのそれぞれのRAG1.10.2及びRAG1.10.3標的に対する活性の検出が可能になった(図24A)。次いで、異なるヘテロ二量体M2/M3、M2 G19S/M3及びM2/M3 G19Sを、RAG1.10標的(図24B)に対して試験した。図23A及び23Bからわかるように、G19S変異の両方の態様が観察される。まず、この変異は、ホモ二量体(M2 G19S及びM3 G19S)の、それらのパリンドローム標的に対する活性をなくす。次に、M3変異体へのG19S変異の導入は、M3/M3 G19Sヘテロ二量体によるRAG1.10.3標的切断の活性を大きく増大させる。この効果は、M2変異体について実際に証明することはできない。なぜなら、これはこのアッセイにおいて飽和レベルでRAG1.10.2標的を常に切断するからである。同じことをRAG1.10標的についていうことができ、これは、M2/M3ヘテロ二量体並びにM2 G19S/M3及びM2/M3 G19Sヘテロ二量体により飽和レベルで切断される。
【0212】
これらの3つの最後のヘテロ二量体を、次いで、CHO細胞での染色体アッセイにおいて試験した。この用いた系は実施例13及び図20に記載されるが、この実施例では、RAG1.10切断部位をrosa1の代わりにレポーター株に導入し、それぞれのメガヌクレアーゼを発現する0.1μgのそれぞれのベクターを用いて細胞をトランスフェクションした。表XIVに、実験結果をまとめる。遺伝子ターゲティングの2倍を超える頻度の増大が、G19Sが2つの単量体の1つ(M2又はM3)に導入されたときに観察された。
【0213】
【表14】

【0214】
これらの結果により、G19S変異が、いくつかの完全に異なるヘテロ二量体I-CreI工学的誘導体の活性を増大させることができるポータブルモチーフであることを示す、実施例5、6、11、12及び13に記載されるデータが確認される。さらに、これらのことにより、この変異が、異なるメガヌクレアーゼを用いて実施例6及び13で既に観察されたように、機能的ホモ二量体の形成をなくすことも確認される。この効果は、各単量体中のG19S変異の存在のみによるものである。なぜなら、M3/M3 G19Sは機能的なだけでなく、M3/M3ホモ二量体よりもさらにより活性であるからである。まとめると、本明細書で示される種々の実施例は、I-CreI由来工学的メガヌクレアーゼの活性及び特異性を増大させることができるポーターブルモチーフとしてG19Sを規定する。
【0215】
実施例15:K7E、E8K及びG19S変異の導入におけるRAG1.10偏性ヘテロ二量体の作製
実施例6、13及び14は、G19S変異がヘテロ二量体活性を増大させるだけでなく、G19Sホモ二量体の活性をほぼ完全になくすことも示す。よって、これは、偏性ヘテロ二量体設計において用いるための選択できるツールである。実施例14で記載される2つのRAG1.10ヘテロ二量体(M2及びM3)をとり、K7E変異を、M2 G19S及びM3 G19S変異体に導入し、E8K変異をM2及びM3変異型に導入した。2つのヘテロ二量体M2 K7E,G19S / M3 E8K及びM2 E8K / M3 K7E,G19Sの活性を、次いで、3つのRAG1.10標的に対して、実施例12に記載されるCHO染色体外アッセイを用いてモニターした。
【0216】
1) 材料及び方法
a) K7E及びE8K変異の導入
I-CreI由来変異体M2及びM3は、pCLS1088哺乳動物発現ベクター(図21)に既にクローニングされている。それぞれの変異体を、M2及びM3変異体のDNAに対して行った2回のオーバーラップPCR反応を用いて導入した。K7E変異について、1回目のPCR反応を、プライマーCMVFor (5'-cgcaaatgggcggtaggcgtg-3'; 配列番号53)及びK7ERev (5'-gtacagcaggaactcttcgttatatttggtattgg-3'; 配列番号54)を用い、2回目の反応をプライマーK7EFor (5'-aataccaaatataacgaagagttcctgctgtacc-3'; 配列番号55)及びV5epitopeRev (5'-cgtagaatcgagaccgaggagagg-3'; 配列番号56)を用いて行った。2つのPCRフラグメントをゲル精製し、混合し、3回目の組み立てPCRを、CMVFor及びV5epitopeRevプライマーを用いて行った。得られたPCRフラグメントは、K7E変異を有するI-CreI変異体のオープンリーディングフレームを含有する。PCRフラグメントを、次いで精製し、制限酵素SacI及びXbaIで消化し、これもまたSacI及びXbaIで消化されたpCLS1088 (図21)にライゲーションした。得られたクローンM2 K7E又はM3 K7Eは、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0217】
E8K変異のM2及びM3変異体への導入は、全く同じプロトコルであるが、2つのプライマーE8KRev (5'- caggtacagcaggaactttttgttatatttgg-3'; 配列番号57)及びE8KFor (5'- accaaatataacaaaaagttcctgctgtacctgg-3'; 配列番号58)を用いて行った。
【0218】
b) G19S変異の導入
G19S変異は、DNA変異体に対して行った2回のオーバーラップPCR反応を用いて導入した。1回目のPCR反応は、プライマーCMVFor (5'-cgcaaatgggcggtaggcgtg-3'; 配列番号53)及びG19SRev (5'-gatgatgctaccgtcagagtccacaaagccggc-3'; 配列番号59)を用い、2回目の反応はプライマーG19SFor (5'-gccggctttgtggactctgacggtagcatcatc -3'; 配列番号60)及びV5epitopeRev (5'-cgtagaatcgagaccgaggagagg-3'; 配列番号56)を用いて行った。2つのPCRフラグメントをゲル精製し、混合し、3回目の組み立てPCRを、CMVFor及びV5epitopeRevプライマーを用いて行った。得られたPCRフラグメントは、G19S変異を有するI-CreI変異体のオープンリーディングフレームを含有する。PCRフラグメントを、次いで精製し、制限酵素SacI及びXbaIで消化し、これもまたSacI及びXbaIで消化されたpCLS1088にライゲーションした。得られたクローンM2 K7E, G19S及びM3 K7E,G19Sは、配列決定により確認した(MILLEGEN)。
【0219】
2) 結果
2つのヘテロ二量体M2 K7E,G19S / M3 E8K (Het1)及びM2 E8K / M3 K7E,G19S (Het2)の、3つのRAG1.10標的に対する活性を、元のM2 / M3ヘテロ二量体の活性と、以前に記載された(実施例12)染色体外アッセイを用いてCHO細胞において比較した。図25は、2つのヘテロ二量体Het1及びHet2が偏性ヘテロ二量体として挙動することを示す。なぜなら、ホモ二量体活性は、ほぼ検出できないレベルまで低減されているからである。さらに、Het1及びHet2は、RAG1.10標的に対して、元のM2 / M3ヘテロ二量体と同じ活性レベルを有する。K7E/E8K及びG19S変異は、よって、機能的ホモ二量体に対して、機能的ヘテロ二量体の形成に強く好ましいように用いることができる。
【0220】
実施例16:単鎖分子設計におけるK7E、E8K及びG19S変異の使用
メガヌクレアーゼ特異性を改良するためのG19S及びK7E/E8K変異の使用をさらに確実にするために、これらの変異を、ヒト色素性乾皮症(XPC)遺伝子で見出されるDNA配列であるC1標的(cgagatgtcacacagaggtacg; 配列番号61)を切断できる単鎖分子に導入した。C1標的を切断できるI-CreI由来変異体の工学的作製は、以前に記載されている(Arnouldら, J. Mol. Biol., Epub 10 May 2007; 国際PCT出願WO 2007/093836及びWO 2007/093918)。単鎖構築物はX2-L1-H33であり、ここで、X2はパリンドロームC4標的を切断できるI-CreI Y33H, Q38A, S40Q, Q44K, R68Q, R70S及びD75N由来変異体であり、H33はパリンドロームC3標的を切断するI-CreI Y33H変異体であり、L1は、X2変異体C-末端をH33変異体N-末端と連結する22アミノ酸リンカー(-AA(GGGGS)4-; 配列番号68)である。K7E/E8K及びG19S変異をXPC単鎖分子に導入して、2つの新しい単鎖分子SCX1及びSCX2を創出し、これらはそれぞれX2(K7E)-L1-H33(E8K,G19S)及びX2(E8K)-L1-H33(K7E,G19S)である。3つの単鎖分子の3つのXPC標的に対する活性は、以前に記載された酵母スクリーニングアッセイを用いてモニターした。
【0221】
1) 材料及び方法
a) XPC X2-L1-H33単鎖分子へのK7E、E8K及びG19S変異の導入
まず、G19S変異をX2-L1-H33分子に導入した。2回のオーバーラップPCR反応を、pCLS0542酵母発現ベクターにクローニングされた単鎖分子に対して行った。1回目のPCR反応はプライマー:Gal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号12)及びG19SRev60 (5'-gcaatgatggagccatcagaatccacaaatccagc-3'; 配列番号62)を用いて、並びに2回目のPCR反応は、プライマーG19SFor60 (5'-gctggatttgtggattctgatggctccatcattgc-3'; 配列番号63)及びGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号13)を用いて行った。およそ25 ngのそれぞれのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz R D及びWoods R A Transformation of yeast by lithium acetate/single-stranded carrier DNA/polyethylene glycol method. Methods Enzymol. 2002; 350:87〜96)を用いて形質転換した。G19S変異を含有するインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0222】
次の工程において、K7E及びE8K変異をX2-L2-H33(G19S)分子に、3回のオーバーラップ変異を行うことにより導入した。SCX1分子について、3回のPCR反応は、それぞれ:Gal10F及びK7ERev (5'-gtacagcaggaactcttcgttatatttggtattgg-3'; 配列番号54)、K7EFor (5'-aataccaaatataacgaagagttcctgctgtacc-3'; 配列番号55)及びE8KRevSC (5'-aagatacagcaggaactttttgttagagccacc-3'; 配列番号64)、E8KForSc (5'-ggtggctctaacaaaaagttcctgctgtatctt-3'; 配列番号65)及びGal10Rである3組のプライマーを用いる。SCX2分子について、3回のPCR反応は、それぞれ:Gal10F及びE8KRev (5'-caggtacagcaggaactttttgttatatttgg-3'; 配列番号57)、E8KFor (5'-accaaatataacaaaaagttcctgctgtacctgg-3'; 配列番号58)及びK7ERevSC (5'-aagatacagcaggaactcttcgttagagccacc-3' 配列番号66)、K7EForSc (5'-ggtggctctaacgaagagttcctgctgtatctt-3'; 配列番号67)及びGal10Rである3組のプライマーを用いる。両方の構築物について、およそ25ngのそれぞれのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz R D及びWoods R A Transformation of yeast by lithium acetate/single-stranded carrier DNA/polyethylene glycol method. Methods Enzymol. 2002; 350:87〜96)を用いて形質転換した。SCX1又はSCX2構築物についてインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0223】
b) メガヌクレアーゼを同時発現するクローンの交配及び酵母でのスクリーニング
交配は、コロニーグリッダー(QpixII, Genetix)を用いて行った。変異体を、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上に、低格子密度(約4スポット/cm2)を用いてグリッドした。2回目のグリッド手順を同じフィルタに対して行って、それぞれの標的について異なるレポーター保持酵母株からなる第2層をスポットした。メンブレンを固体寒天YPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配を可能にした。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、G418を加え、ガラクトース(1%)を炭素源として有する合成培地上に移し、37℃にて5日間インキュベートして、発現及び標的ベクターを有する二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0中の0.02 % X-Gal、0.1% SDS、6%ジメチルホルムアミド(DMF)、7mM β-メルカプトエタノール、1%アガロースを含む固体アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性をモニターした。結果をスキャンにより分析し、適切なソフトウェアを用いて定量を行った。
【0224】
2) 結果
図26は、3つの単鎖分子X2-L1-H33、SCX1及びSCX2の、酵母スクリーニングアッセイにおける3つのXPC標的に対する活性を示す。元の単鎖分子は、C1及びC3標的に対して強い切断活性を有するが、K7E/E8K及びG19S変異を導入してSCX1及びSCX2分子を作製することにより、C1標的に対する切断活性の増加、及びC3標的に対する切断活性の完全な喪失が進む。つまり、偏性ヘテロ二量体の設計における実施例15で記載された変異K7E/E8K及びG19Sは、単鎖分子に成功して導入され、興味対象のDNA標的に対するその切断活性に影響することなくその特異性を改良することもできる。
【0225】
実施例17:V105A及びI132V変異の単独又は組み合わせでの導入によるHBB5 DNA配列を切断するメガヌクレアーゼの改良
HBB5 DNA配列(5'-ttggtctccttaaacctgtcttga-3'; 配列番号69)は、ヘモグロビンβ鎖をコードするHBB遺伝子に属する。HBB5 DNA配列は、HBB遺伝子イントロン1の初めに位置する。HBB5 DNA標的を、2つのハーフパリンドロームの24bp DNA標的に分け、これらをHBB5.3 (5'-ttggtctcctgtacaggagaccaa-3'; 配列番号70)及びHBB5.4 (5'-tcaagacagggtaccctgtcttga-3'; 配列番号71)と呼んだ。実施例1及び2に充分に記載される半合理的コンビナトリアル手順により、HBB5.3標的を切断するI-CreI由来変異体を得ることができた。H3とよばれるこの変異体は、I-CreI野生型配列と比較して、以下の変異を有する:30S33H38R44K68Y70S77T。実施例4に示すようなランダム突然変異誘発により導かれる変異体最適化で行ったのと同じ手順を用いて、2つのI-CreI由来変異体を得て、これはHBB5.4標的を切断できる。H4a及びH4bと呼ばれる2つの変異体は、それぞれ、I-CreI野生型配列との比較で以下の変異を有する:19S32T44A70S75E77R80K96R及び24V43L44A70S75E77R80K87L96R。変異体H3と、H4a又はH4bのいずれかとの酵母同時発現により、次いで、ヘテロ二量体メガヌクレアーゼによるHBB5 DNA配列の切断が導かれた。
活性に対する複数の最適化変異の影響を評価するために、変異V105A及びI132VをH3変異体に、単独又は組み合わせのいずれかで導入した。得られた変異体を、次いで、2つのH4a及びH4bパートナーを用いて、HBB5.1標的に対する酵母組換えアッセイにおいて試験した。
【0226】
1) 材料及び方法
a) V105A変異の導入
2回のオーバーラップPCR反応を、H3変異体をコードするDNAに対して、2組のプライマーを用いて行った:最初のフラグメントについてGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号12)及びV105ARev (5'- ttcgataattttcagagccaggtttgcctgttt-3'; 配列番号72)、並びに2つ目のフラグメントについてV105AFor (5'- aaacaggcaaacctggctctgaaaattatcgaa-3'; 配列番号73)及びGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号13)。およそ25 ngのそれぞれのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R.D.及びR.A. Woods; Methods Enzymol. 2002, 350, 87-96)を用いて形質転換した。V105A変異を含有するインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。
【0227】
b) I132V変異の導入
2回のオーバーラップPCR反応を、H3変異をコードするDNAに対して、2組のプライマーを用いて行った:最初のフラグメントについてGal10F (5'-gcaactttagtgctgacacatacagg-3'; 配列番号12)及びI132VRev (5'-atcgttcagagctgcaacctgatccacccaggt-3'; 配列番号74)、並びに2つ目のフラグメントについてI132VFor (5'-acctgggtggatcaggttgcagctctgaacgat-3'; 配列番号75)及びGal10R (5'-acaaccttgattggagacttgacc-3'; 配列番号13)。およそ25 ngのそれぞれのPCRフラグメントと、NcoI及びEagIでの消化により線状にした75 ngのベクターDNA (pCLS0542)とを用いて、酵母サッカロミセス・セレビシエFYC2-6A株(MATα, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200)を、高効率LiAc形質転換プロトコル(Gietz, R.D.及びR.A. Woods; Methods Enzymol. 2002, 350, 87〜96)を用いて形質転換した。I132V変異を含有するインタクトなコード配列を、酵母でのインビボ相同組換えにより作製する。二重変異H3 V105 I132Vを、これらの同じPCR反応を、V105A変異を有するH3変異体をコードするDNAに対して行うことにより得た。
【0228】
c) 変異体の配列決定
変異体を発現するプラスミドを回収するために、酵母DNAを、標準的なプロトコルを用いて抽出し、大腸菌の形質転換に用いた。変異体ORFの配列決定を、次いで、プラスミドに対してMILLEGEN SAにより行った。
【0229】
2) 結果
3つのH3由来変異体(H3 V105A、H3 I132V及びH3 V105A I132V)を、酵母において、H4a又はH4bのいずれかと同時発現させ、HBB5標的の切断を、以前の実施例において既に記載した(実施例3を参照)酵母組換えアッセイを用いてモニターした。表XVに記載する値は、β-ガラクトシダーゼ活性と直接相関し、よって、ヘテロ二量体HBB5メガヌクレアーゼの切断活性と直接相関する。
【0230】
【表15】

【0231】
両方の場合において、H4a又はH4bのいずれかとともに用いて、H3変異体に導入した変異V105A又はI132Vは、HBB5標的に対する切断活性を増大させる。活性は、2つの変異を同時に導入するときにさらに増大し、このことは、これらが互いに独立して作用し得ることを示す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
I-CreIの19位のグリシン(G19)、54位のフェニルアラニン(F54)、87位のフェニルアラニン(F87)、79位のセリン(S79)、105位のバリン(V105)及び132位のイソロイシン(I132)からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を部位特異的突然変異させることを含むことを特徴とする、I-CreI由来メガヌクレアーゼの切断活性を増強させる方法。
【請求項2】
19位のグリシンがセリン(G19S)又はアラニン(G19A)に変更され、54位のフェニルアラニンがロイシン(F54L)に変更され、87位のフェニルアラニンがロイシン(F87L)に変更され、79位のセリンがグリシン(S79G)に変更され、105位のバリンがアラニン(V105A)に変更され、132位のイソロイシンがバリン(I132V)に変更される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
G19、F54、F87、S79、V105及びI132から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基が、I-CreI由来メガヌクレアーゼの同じ単量体中で変異される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
V105及びI132残基が、I-CreI由来メガヌクレアーゼの同じ単量体中で変異される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
I-CreI由来メガヌクレアーゼの両方の単量体が変異される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
一方の単量体がG19S又はF87L変異を有し、他方の単量体がV105A及びI132V変異の両方を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
I-CreI由来メガヌクレアーゼがヘテロ二量体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼが2つの単量体からなり、それぞれの単量体がI-CreIの26位〜40位及び/又は44位〜77位に異なる変異を含み、前記メガヌクレアーゼが興味対象の非パリンドロームゲノムDNA標的配列を切断できる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
I-CreI由来メガヌクレアーゼが、I-CreI 部位の±1〜2位、±6〜7位及び/又は±11〜12位のヌクレオチドに対する特異性を改変するI-CreIの137位〜143位での1つ又は複数の置換を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼの2つの単量体のうちの一方が、機能的ホモ二量体の形成を損なうG19S変異を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
他方の単量体が、機能的ホモ二量体の形成を損なうか又はヘテロ二量体の形成に好ましい別の変異を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼが偏性ヘテロ二量体であり、一方の単量体がD137R変異を含み、他方の単量体がR51D変異を含む請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼが偏性ヘテロ二量体であり、一方の単量体がK7E変異を含み、他方の単量体がE8K変異を含む請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法により得ることができるI-CreI由来メガヌクレアーゼであって、G19S、G19A、F54L、F87L、S79G、V105A及びI132Vからなる群より選択される変異を少なくとも含むメガヌクレアーゼ(但し:
- I-CreI G19A, K28A, Y33S, Q38R, S40K, R70S, D75N、
- I-CreI G19A, K28A, Q38R, S40K, R70S, D75N, F87L、
- I-CreI G19A, K28A, Y33S, Q38R, S40K, D69G, R70S, D75N、
- I-CreI Y33R, S40Q, Q44A, R70H, D75N, F87L, I132T, V151A、
- I-CreI Y33R, S40Q, Q44A, R70H, D75N, F87L, F94L, V125A, E157G, K160R、
- I-CreI Y33H, F54L, N86D, K100R, L104M, V105A, N136S, K159R、
- I-CreI S32T, Y33H, Q44K, R68Y, R70S, I77R, Q92R, K96R, K107R, I132V, T140A, T143A、
- I-CreI S32A, Y33H, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, I132V、
- I-CreI N2I, S32G, Y33H, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, K96R, V105A、
- I-CreI S32A, Y33H, F43L, Q44A, R68Y, R70S, D75Y, I77K, V105A, K159R、
- I-CreI G19S, N30Q, Y33G, Q38C, R68N, R70S, S72F, I77R、
- I-CreI Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, F87L、
- I-CreI N30Q, Y33G, Q38C, F54L, R68N, R70S, I77R、
- I-CreI N30Q, Q31L, Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, P83Q, F87L及び
- I-CreI N30Q, Y33G, Q38C, R68N, R70S, I77R, V105A
からなる群より選択されるI-CreI変異型を除く)。
【請求項15】
ヘテロ二量体である請求項14に記載のI-CreI由来メガヌクレアーゼ。
【請求項16】
請求項10又は11に記載の方法により得ることができる請求項15に記載のヘテロ二量体メガヌクレアーゼであって、G19S変異を有する単量体を含み、G19S変異を有する前記単量体の会合により得られるホモ二量体を実質的に有さないヘテロ二量体メガヌクレアーゼ。
【請求項17】
K7E変異を有する一方の単量体と、E8K変異を有する他方の単量体とを含む請求項15又は16に記載のヘテロ二量体メガヌクレアーゼ。
【請求項18】
タグ又は核局在化シグナルを有する少なくとも1つの単量体を含む請求項14〜17のいずれか1項に記載のI-CreI由来メガヌクレアーゼ。
【請求項19】
ペプチドリンカーで連結された請求項14〜18のいずれか1項に記載のI-CreI由来メガヌクレアーゼの第1及び第2単量体を含む単鎖メガヌクレアーゼ。
【請求項20】
請求項14〜18のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼの1つの単量体、又は請求項19に記載の単鎖メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
【請求項21】
請求項20に記載のポリヌクレオチドフラグメントの少なくとも1つを含む組換えベクター。
【請求項22】
2つのポリヌクレオチドフラグメントを含み、そのそれぞれが請求項14〜18のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼの2つの単量体の1つをコードし、前記フラグメントが、前記2つの単量体の生成を可能にする調節配列に機能可能に連結されている発現ベクター。
【請求項23】
請求項19に記載の単鎖メガヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントを含み、前記フラグメントが、前記単鎖メガヌクレアーゼの生成を可能にする調節配列に機能可能に連結されている発現ベクター。
【請求項24】
請求項8で定義されるゲノムDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を有する配列を含むターゲティングDNA構築物を含む請求項22又は23に記載のベクター。
【請求項25】
ターゲティングDNA構築物が、a) 請求項8で定義されるゲノムDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を有する配列と、b) a)の配列で挟まれた導入される配列とを含む請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含む非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項28】
請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメントを含むトランスジェニック植物。
【請求項29】
請求項14〜19のいずれか1項に記載のメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、或いは請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターを少なくとも含む医薬組成物。
【請求項30】
興味対象のゲノム部位と相同性を有する配列で挟まれた前記ゲノム部位を修復する配列を含むターゲティングDNA構築物をさらに含む請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の1つのメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクター、請求項26に記載の宿主細胞、請求項28に記載のトランスジェニック植物、請求項24に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物の、非治療目的での分子生物学、インビボ若しくはインビトロの遺伝子工学、及びインビボ若しくはインビトロのゲノム工学のための使用。
【請求項32】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の1つのメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターの、必要とする個体に任意の手段により投与されることを意図する、必要とする個体における遺伝病を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項33】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の1つのメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターの、必要とする個体に任意の手段により投与されることを意図する、必要とする個体におけるDNA媒介物を示す感染性因子により引き起こされる疾患を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項34】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の1つのメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターの、生物由来製品又は生物学的使用若しくは物体の消毒を意図する製品における、DNA媒介物を示す感染性因子の増殖阻害、不活性化又は消去のためのインビトロでの使用。
【請求項35】
前記感染性因子がウイルスである請求項33又は34に記載の使用。
【請求項36】
前記メガヌクレアーゼ、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳動物が、請求項24で定義されるターゲティングDNA構築物と会合する請求項31〜35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
請求項14〜19のいずれか1項に記載の1つのメガヌクレアーゼ、請求項20又は22で定義される1つ又は2つのポリヌクレオチドフラグメント、又は請求項21〜25のいずれか1項に記載のベクターの、他のメガヌクレアーゼを工学的に作製するための足場としての使用。
【請求項38】
I-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼのそれぞれの単量体の会合により得られる2つのホモ二量体の少なくとも1つを実質的に含まないI-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼを作製する方法であって、細胞内でI-CreI由来ヘテロ二量体メガヌクレアーゼの2つの単量体を同時発現させることを含み、前記2つの単量体の一方がG19S変異を含む方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2010−528649(P2010−528649A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510913(P2010−510913)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002524
【国際公開番号】WO2008/152524
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508245231)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】102 avenue Gaston Roussel,F−93235 Romainville Cedex,France
【Fターム(参考)】