説明

ICカード及び携帯可能電子情報機器

【課題】使用される状態を判断して提供する機能を切り換えることのできるICカード及び携帯可能電子情報機器を提供する。
【解決手段】複数の通信インターフェースを有するICカード2において、第1の通信インターフェース206を介して入力される情報に対応して、第2の通信インターフェース207を介して入力される情報の処理内容を変更するICカードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用される状態を判断して提供する機能を切り換えることのできるICカード及びICカードを備えた携帯可能電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、プラスチック板などで構成される筐体内に、メモリやCPUなどの機能を有したICモジュールが埋設されている。
このICカードは、CPU、ROM、RAM、EEPROMなどの制御素子を有するICを備えることにより様々な機能が実現可能となり、さらには偽造が難しいためセキュリティの面でも大きく向上している。このため、クレジットカード、その他の商取引の決済などに広く利用されている。
【0003】
ところで、クレジットカード、その他の商取引の電子マネーによる決済に用いられているICカードでは、盗難・紛失によってそのICカードに記憶された電子マネーが不正に使用されるケースが発生し得る。
携帯電話を例に取れば、SIM(Subscriber Identitiy Module)カードに電子決済の機能が装備されている場合には、携帯電話の盗難などによって同様の被害を被る恐れがある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の技術では、ICカードで使用できる限度額を所有者がその都度設定することができ、また、設定される限度額は前回の設定額よりも高くすることができないなどの機能を実現している。このため、ICカードが盗難にあった場合でも、その被害を少なくすることが可能である。
【0005】
また、携帯電話においてはリモートロック機能が設けられている。この機能は、例えば、携帯電話にあるパターンに従って電話をかけることでロックをかけることができるものである。これによって携帯電話を紛失等した場合でもその被害を少なくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−172247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、所有者が常日頃から限度額の設定に心掛けることが必要であり、ICカードが盗難にあった際、所有者が限度額を高額に設定してしまっていた場合は高額決済で悪用されてしまうリスクが残る。
また携帯電話を紛失した場合、携帯電話の電源がONとなっているときはリモートロック機能を利用することができるため悪用される危険を低下することができるが、電源がOFFのときはリモートロック機能を利用することができないためSIM中の電子決済機能を利用される恐れがある。
【0008】
このような問題を解決するための技術的課題として、正常な状態での使用と認められる場合には通常の機能を提供し、正常でない状態で使用される恐れがある場合には機能を制限することのできるICカードの実現が考えられる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、使用される状態を判断して提供する機能を切り換えることのできるICカード及びICカードを備えた携帯可能電子情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、複数の通信インターフェースを有するICカードにおいて、第1の通信インターフェースを介して入力される情報に対応して、第2の通信インターフェースを介して入力される情報の処理内容を変更するICカードである。
【0011】
また本発明は、上記記載の発明であるICカード備えた携帯可能電子情報機器である。
【発明の効果】
【0012】
この発明のICカード及びICカードを備えた電子情報機器によれば、使用される状態を判断して提供する機能を切り換えることができるため、ユーザの利便性あるいはセキュリティの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非接触ICカードアプリケーションサービスを行う携帯電話端末の概要を示す図。
【図2】USIMの構成と携帯電話端末との信号インターフェースを示すブロック図。
【図3】携帯電話端末と制御部に格納されているアプリケーションを示すブロック図。
【図4】セキュリティを向上させるための制御部の概略の動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
本発明の実施の形態では、ICカードを備えたPDA(Portable Digital Assistance)などの携帯可能電子情報機器を例とし、より具体的には携帯電話に組み込まれるICカードについて説明する。
【0015】
海外の多くの国は携帯電話システム方式としてGSM(Global System for Mobile communications)方式を採用している。GSM方式においては携帯電話機内にICカードの一種であるSIM(Subscriber Identitiy Module)カードが必須となっている。
日本では、GSMでなく、3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格を採用した携帯電話システムが立ちあがっている。3GPP規格でもSIMカードと同様なICカード、USIM(Universal Subscriber Identitiy Module)カードが必須となっている。
【0016】
GSMや3GPPで使用されているSIM、USIMは携帯電話端末内に挿入される。SIM、USIMには通信事業者の通信ネットワークに接続するのに必要な鍵情報、暗号アルゴリズム、各種ネットワークパラメータが記録されている。携帯電話端末はそれらの情報を通信事業者のOTA(Over The Air)サーバ、認証・管理サーバ等に送信し、これらのサーバと認証を行い、認証結果が正しければ、通信事業者の通信サービスを受けることが可能となる。
【0017】
さらにサードパーティによる様々なアプリケーションがSIM、USIMにダウンロードされる。このためSIM、USIMはユーザごとにカスタマイズされ、独自のものとなる。また近年、ユーザメモリが大容量化してきており、今までメモリデバイスに格納されていた電話帳、メール等の個人情報もよりセキュリティの高いSIM、USIMに格納されてきている。
【0018】
日本や海外においては、携帯電話端末内に非接触通信チップを実装し、非接触ICカードと同様な非接触モバイルペイメントが立ち上がっている。これまで非接触ICカードアプリケーションは携帯電話端末にSIM、USIMとは別のチップに実装されるケースが多かった。しかし、非接触通信チップとSIM、USIM間のインターフェースが標準化され、非接触ICカードアプリケーションはセキュリティとリムーバブルの観点よりSIM、USIMにインストールされるようになっている。
【0019】
図1は、非接触ICカードアプリケーションサービスを行う携帯電話端末の概要を示す図である。
携帯電話端末1に装備されたUSIM2は、非接触通信チップ(CLF:Contactless Front End)3と携帯電話端末(MPU)4とに接続されている。USIM2と携帯電話端末MPU4間のインターフェースは、携帯電話アプリ利用時のデータをハンドリングする。USIM2と非接触通信チップ3間のインターフェースは、非接触ICカードアプリケーション利用時のデータをハンドリングする。そして、非接触通信チップ3は、非接触通信アンテナ5を介して外部の非接触通信リーダライタ6との間の情報授受を制御する。
【0020】
ここで、携帯電話アプリ利用時のデータとは、例えば携帯の使用者が画面上で操作を入力した際にUSIM2との間で授受されるデータである。非接触ICカードアプリケーション利用時のデータとは、例えば電子決済に関してUSIM2との間で授受されるデータである。
【0021】
図2は、USIM2の構成と携帯電話端末1との信号インターフェースを示すブロック図である。
USIM2は、ROM201、RAM202、不揮発性メモリ203、制御部204及び入出力インターフェース部205を備えている。そして、入出力インターフェース部205には、IO部206とSWP部207が設けられている。
【0022】
制御部204は、演算、制御などを行い、USIM2を統括して制御する。ROM201は、読み出し専用メモリである。ROM201には、オペレーティングシステム(OS)などの基本ソフトウエア、アプリケーション及びデータが格納されている。RAM202は、制御部204の処理における作業領域として使用される。
【0023】
不揮発性メモリ203は、EEPROM、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性のメモリであり、通常ユーザのワークエリア、プログラムエリアなどとして使用されている。
【0024】
IO部206は、携帯電話端末MPU4から送信される携帯電話アプリ利用時のデータを受信して制御部204に出力する。SWP部207は、非接触通信チップCLF3から送信される非接触ICカードアプリケーション利用時のデータを受信して制御部204に出力する。
ここで、携帯電話アプリ利用時のデータの受信は、携帯電話端末1の電源がONのときに実行される。一方、非接触ICカードアプリケーション利用時のデータの受信は、携帯電話端末1の電源のON、OFFにいずれのときにも実行される。
【0025】
なお、IOは“Input Output”のことで、携帯の使用者が画面上で何かの操作をした際に、その操作コマンドの授受を携帯電話端末MPU4とUSIM2との間で実行するときの通信方式である(参照規格:ISO7816)。
また、SWPは“Single Wire Protocol”のことで、非接触通信チップCLF3とUSIM2との接触式の通信方式を意味している。即ち、非接触通信チップCLF3が外部端末から非接触通信でコマンドを受けた際、そのコマンドの授受を非接触通信チップCLF3とUSIM2との間で実行するときの通信方式である(参照規格:ETSI TS 102613)。
【0026】
図3は、携帯電話端末1と制御部204に格納されているアプリケーションを示すブロック図である。
【0027】
携帯電話端末MPU4には、操作入出力部401、USIM監視部402及び通信入出力部403が設けられている。操作入出力部401は、携帯電話端末1の使用者が画面上で何かの操作をした際、その操作データをUSIM2に送信する。USIM監視部402は、所定時間毎にUSIM2に対してアクセスを行い応答の有無を監視する。このUSIM監視部402の動作は、USIM2が抜かれていないことを確認するためのものである。通信入出力部403は、外部より所定の通信(例えばリモートロック)があったときにそのデータをUSIM2に送信する。
これらの各アプリケーションは携帯電話端末1の電源がONの状態にあるときに動作を実行し、USIM2とはIO部206を介してコマンド、データの授受を行う。
【0028】
制御部204には、コマンド解析部204a、タイマー処理部204b、モード切替部204c及びその他のアプリケーション204dが設けられている。コマンド解析部204aは、受信したコマンドを解析して、携帯電話端末MPU4または非接触通信チップ3のいずれから送信されたコマンドかを判断し、そのコマンドを処理するアプリケーションを起動する。タイマー処理部204bは、USIM2内のタイマーのセット・リセットを制御する。モード切替部204cは、携帯電話端末1の電源がON・OFFのいずれの状態にあるかを示すフラグを設定する。
【0029】
図4は、セキュリティを向上させるための制御部204の概略の動作を示すフロー図である。
【0030】
ステップS01において、USIM2がコマンドを受信すると、ステップS02において、コマンド解析部204aは、受信したコマンドを解析して、携帯電話端末MPU4または非接触通信チップ3のいずれから送信されたコマンドかを判断する。なお、IO部206とSWP部207が割り付けられているターミナル(不図示)の物理アドレスが異なることから、コマンドを受信したターミナルのアドレスによっていずれから送信されたかを判断しても良い。
【0031】
受信したコマンドが携帯電話端末MPU4から送信されたものであった場合、即ちIO通信方式のコマンドである場合、携帯電話端末1の電源はONであると判断される。このコマンドとしては、例えば、携帯電話アプリ利用時のコマンド、所定時間毎のUSIM監視コマンド、リモートロックのためのコマンドなどである。
【0032】
ステップS03において、タイマー処理部204bがUSIM2内に設けられたタイマーをリセットし、カウントを0からスタートする。従って、携帯電話端末MPU4からコマンドが入力される都度タイマーのカウント値が0にリセットされる。ステップS04において、モード切替部204cが、電源ONモードにフラグを切り替える。
【0033】
続いて、ステップS05において、受信したコマンドがリモートロックかどうかを調べる。ステップS05でYesの場合、即ち受信したコマンドがリモートロックの場合は、ステップS06において、USIM内の所定の機能をロックする。これによってUSIM中の電子決済機能を利用不可とする。
【0034】
ステップS05でNoの場合、即ち受信したコマンドがリモートロックでない場合は、ステップS07において、電源ON状態における電子決済時の処理内容は変更せずに維持する。例えば、使用者が決済額を設定している場合はその設定を維持する。そして、ステップS08において、受信コマンドに対応した所定のアプリケーションを起動する。
【0035】
一方、受信したコマンドが非接触通信チップ3から送信されたものであった場合、即ちSWP通信方式のコマンドである場合、携帯電話端末1の電源がON、OFFいずれの状態であるかは判別できない。そこで、ステップS11において、タイマーの時間が一定時間以上経過しているかどうかを調べる。
【0036】
ステップS11でNoの場合、即ちタイマーの時間がまだ一定時間経過していない場合、このときは、USIM監視部402が所定時間毎の動作を実行していると考えられる。即ち、携帯電話端末1は電源ON状態であると判断できる。従って、上述のステップS05以降の処理を実行する。
ステップS11でYesの場合、即ちタイマーの時間が既に一定時間以上経過している場合、このときは、携帯電話端末MPU4からIO通信方式のコマンドの送信が一定時間以上途絶えている、即ち、USIM監視部402が所定時間毎の動作を実行していない電源OFF状態と考えられる。そこで、ステップS12において、モード切替部204cが、電源OFFモードにフラグを切り替える。そして、ステップS13において、電源OFF状態における電子決済時の設定内容、例えば低額決済あるいは決済不可の設定を適用するように処理する。その後、ステップS08において、受信コマンドに対応した所定のアプリケーションを起動する。
【0037】
従来は、携帯電話端末の電源がOFFの場合はリモートロックができないため、盗難・紛失時において電源OFFであった場合は高額決済がされる恐れがあった。上述の実施の形態では、盗難・紛失時において、携帯電話端末1が電源ON状態の場合にはリモートロックにより決済を禁止し、電源OFF状態の場合には高額決済を不許可と制御することが可能である。このため、盗難・紛失時において被害を少なくすることができる。
【0038】
[第1の実施の形態のバリエーション]
第1の実施の形態では、携帯電話端末の電源がONかOFFかによって決済できる金額を制御した。第1の実施の形態のバリエーションでは、更に通信電波の受信が可能か否かによっても決済できる金額を制御する。
【0039】
これは第1の実施形態において、携帯電話端末の電源がONであったとしても通信電波の受信ができなければリモートロックを掛けることができないケースを解消する。
【0040】
このバリエーションの形態では、決済できる金額は次のように制御される。
(1)通信電波の受信不良時
(1−1)携帯電話端末の電源ON時:決済金額は低額な第1の金額に制限。
(1−1)携帯電話端末の電源OFF時:決済金額は低額な第2の金額に制限。
(2)通信電波の受信良好時
(2−1)携帯電話端末の電源ON時:高額決済を認める。
(2−1)携帯電話端末の電源OFF時:決済金額は低額な第2の金額に制限。
【0041】
この機能は、第1の実施の形態で説明した電源ON、OFFの判断に加え、通信入出力部403による通信状態の良否判断結果をコマンドとして制御部204が受信し、その良否判断結果を上述の処理に組み込むことで実現することができる。
【0042】
なお、上述の実施の形態では、携帯電話端末を用いているが、本発明は携帯電話に限定されず、PC(パーソナルコンピュータ)、PDA、携帯型ゲーム機などの携帯可能電子情報機器に幅広く適用することができる。
また本実施の形態の携帯電話端末では、USIMを用いているがSIMを用いても良い。
【0043】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0044】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…携帯電話端末、2…USIM、3…非接触通信チップ、4…携帯電話端末MPU、5…非接触通信アンテナ、6…非接触通信リーダライタ、201…ROM、202…RAM、203…不揮発性メモリ、204…制御部、205…入出力インターフェース、206…IO部、207…SWP部、204a…コマンド解析部、204b…タイマー処理部、204c…モード切替部、401…操作入力部、402…USIM監視部、403…通信入出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信インターフェースを有するICカードにおいて、
第1の通信インターフェースを介して入力される情報に対応して、第2の通信インターフェースを介して入力される情報の処理内容を変更すること
を特徴とするICカード。
【請求項2】
携帯可能電子情報機器に組み込まれてこの携帯可能電子情報機器との間で複数の通信インターフェースを介して情報の授受を行うICカードにおいて、
第1の通信インターフェースを介して入力される情報から、前記携帯可能電子情報機器の電源ON・OFF状態を判定し、この電源ON・OFF状態に対応して第2の通信インターフェースを介して入力される情報の処理内容を変更すること
を特徴とするICカード。
【請求項3】
外部機器との通信機能を有する携帯可能電子情報機器に組み込まれてこの携帯可能電子情報機器との間で複数の通信インターフェースを介して情報の授受を行うICカードにおいて、
第1の通信インターフェースを介して入力される情報から、前記携帯可能電子情報機器の電源ON・OFF状態と前記外部機器との通信可否とを判定し、この電源ON・OFF状態と前記外部機器との通信可否とに対応して第2の通信インターフェースを介して入力される情報の処理内容を変更すること
を特徴とするICカード。
【請求項4】
変更される前記第2の通信インターフェースを介して入力される情報の処理内容は、電子決済において取引が許容される金額の上限値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項5】
請求項1乃至4の内のいずれか1項に記載のICカードを備えたことを特徴とする携帯可能電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−14030(P2011−14030A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158988(P2009−158988)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】