説明

ICカード破壊装置

【課題】非接触ICカードに記憶された情報を読み取り不能にし、安心してカードを破棄することができるICカード破壊装置を提供する。
【解決手段】半導体装置を内蔵する非接触ICカード20を破壊するICカード破壊装置100は、ICカードに電磁波を放射する放射部6と、電磁波を放射する際に半導体装置の電気的特性の変化を検知する検知部8と、検知部8の出力に応じてICカード20の破壊の成否を判断する制御装置10とを備える。好ましくは、放射部6は、ICカード20の定格入力電力を超える電力を受電部に発生させる電磁波を放射する。検知部8は、電気的特性としてICカード20の高周波インピーダンスの変化を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金銭取引の記録や個人情報等を記憶したICカードを廃棄する際における、カードに記憶された情報を確実に破壊するICカード破壊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードの本格的な普及時期が到来しつつある。非接触ICカードは、カード内にICモジュールの他にコイル状のアンテナを内蔵しており、電波で電力供給と情報の授受を行なう。カード表面は、通常、樹脂で覆われており接触端子は設けられていない。電気的接点がないため、耐久性に優れ、読取装置のメンテナンスコストが低減できるという利点がある。このような非接触ICカードは、たとえば、社員証、交通カード、電子マネーカード等に用いられている。
【0003】
他方、近年しばしば個人情報の流出が社会的な問題となることがある。非接触ICカードについても、使用しなくなったカードを廃棄する際に、カードから個人情報が第三者に流出しないように措置を講ずる必要がある。
【0004】
特開2003−132307号公報(特許文献1)は、非接触ICカードを破壊して使用できないようにする非接触ICカード破壊装置を開示する。この非接触ICカード破壊装置は、非接触ICカードに内蔵するループアンテナまたは回路の一部を切断することによりカードを使用不能にするものであった。
【特許文献1】特開2003−132307号公報
【特許文献2】特開2003−157411号公報
【特許文献3】特開2004−141854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のICカード破壊方法ではICチップは破壊されず、アンテナ切断後でもほぼ完全な形で残る。したがって、このICチップに作為的にループアンテナを付加したり、若しくは回路を修復したりすれば再び通信が可能になり、カードに記録されたデータの破棄を保証出来ないという問題があった。
【0006】
これに対し、特開2003−157411号公報(特許文献2)は、カードの破棄時にカード内部のICを破壊する非接触型ICカードの破壊装置を開示する。この破壊装置は、非接触型ICカードがリーダ・ライタとの間で行なう電力伝送および情報通信に用いる搬送周波数と同じ周期の交番磁界によってカードのICを破壊に至らしめる強磁界発生部を備える。
【0007】
しかしながら、この非接触型ICカードの破壊装置は、強磁界をカードに放射した後、実際にカードのICが破壊されて読出し不能となっているか否か不明であり、個人情報等の流出を確実に防止するために改善の余地があった。
【0008】
この発明の目的は、非接触ICカードに記憶された情報を読み取り不能にし、カードの再生、複製や改ざんを防止でき、カード廃棄後に第三者に情報が漏洩することなく機密の保持が担保され、安心してカードを破棄することができるICカード破壊装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、要約すると、半導体装置を内蔵するICカードを破壊するICカード破壊装置であって、ICカードに電磁波を放射する放射部と、電磁波を放射する際に半導体装置の電気的特性の変化を検知する検知部と、検知部の出力に応じてICカードの破壊の成否を判断する制御装置とを備える。
【0010】
好ましくは、ICカードは、電磁波を受けて半導体装置に電力を供給する受電部をさらに内蔵する。放射部は、ICカードの定格入力電力を超える電力を受電部に発生させる電磁波を放射する。検知部は、電気的特性としてICカードの高周波インピーダンスの変化を検知する。
【0011】
より好ましくは、放射部は、ループコイルを含む。検知部は、ループコイルに供給する高周波電流を検知する電流検知部を含む。制御装置は、検知された高周波電流に基づいてICカードの高周波インピーダンスの変化の有無を判断する。
【0012】
好ましくは、ICカード破壊装置は、制御装置の出力に応じて、ICカードを挿入した後に破壊に成功した場合とICカードを破壊しなかった場合とで、排出方法を切換えるカード排出部をさらに備える。
【0013】
より好ましくは、カード排出部は、放射部がICカードに電磁波を放射する際にICカードの位置決めを行なう爪部を含む。爪部はICカードの破壊が成功した場合にICカードを開放して排出し、ICカードの破壊を行なわなかった場合にはカードを排出せずに保持する。
【0014】
この発明の他の局面に従うと、半導体装置と電磁波を受けて半導体装置に電力を供給する受電部とを内蔵するカードを破壊するICカード破壊装置であって、ICカードの定格入力電力を超える電力を受電部に発生させる複数の周波数の電磁波を放射する放射部と、放射部に対して周波数の切換えを指示する制御装置とを備える。
【0015】
好ましくは、ICカード破壊装置は、ICカードがICカード破壊装置にセットされたことを検知するカード検知部をさらに備える。制御装置は、カード検知部の出力に応じて複数の周波数の電磁波を順次放射するように放射部を制御する。
【0016】
好ましくは、放射部は、発振器と、発振器の出力を受ける増幅回路と、増幅回路の出力側の容量を調整するためのコンデンサと、コンデンサを増幅回路の出力側に結合するスイッチと、増幅回路の出力に応じて電流が流れるループコイルとを含む。制御装置は、スイッチの結合状態と非結合状態との切換えを行なう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ICチップを破壊されたICカードは、データの読み取りが不可能になり、第三者に情報が漏洩することなく機密の保持が担保され、安心してカードを破棄することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係るICカード破壊装置100の構成を示した回路図である。
図1を参照して、ICカード破壊装置100は、半導体装置(ICチップ)を内蔵するICカード20を破壊するものであり、ICカードに電磁波を放射する放射部6と、電磁波を放射する際に半導体装置の電気的特性の変化を検知する検知部8と、検知部8の出力に応じてICカード20の破壊の成否を判断する制御装置(Micro Processor Unit)10とを含む。制御装置10は、後に説明するように、破壊の成否に応じて異なる処理を行なう。放射部6は、ICカード20がリーダ・ライタとの間で行なう電力伝送および情報通信に用いる搬送周波数(たとえば13.56MHz)と同じ周期の交番磁界によってカードのICを破壊に至らしめる。
【0020】
ICカード破壊装置100は、さらに、電源スイッチ2と、電源装置4と、動作表示ランプ12と、電源ランプ14と、カード排出部15とを含む。カード排出部15は、後に図で説明するカード挿入口と、ソレノイド16と、ソレノイド16によって動く爪部とで構成される。電源装置4は、AC100Vの商用電源から電源電圧VCC1,VCC2を出力し、過負荷となったときに過電流が流れるのを防止する保護装置5を含む。
【0021】
図2は、ICカード20の構成を示す図である。
図2を参照して、ICカード20は、半導体装置112と、電磁波を受けて半導体装置に電力を供給する受電部であるコイル111と、コイル111および半導体装置112を密閉支持する樹脂製のカード基材110とを含む。
【0022】
再び図1を参照して、放射部6は、ICカード20の定格入力電力を超える電力をその受電部であるコイル111に発生させる電磁波を放射する。検知部8は、電気的特性としてICカード20の高周波インピーダンスの変化を検知する。
【0023】
放射部6は、PLLシンセサイザ22と、スイッチ24,32と、増幅回路26と、トランス27と、コンデンサ28,30と、ループコイル34とを含む。
【0024】
検知部8は、ループコイル34に供給する高周波電流を検知する電流検知部42と、電流検知部42の出力の振幅を検出する検波回路41と、検波回路41が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器40とを含む。
【0025】
検知部8は、さらに、ループコイル34に供給する高周波電圧を検知する電圧検知部38と、電圧検知部38の出力の振幅を検出する検波回路37と、検波回路37が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器36とを含む。A/D変換器36,40が出力するデジタル信号は、制御装置10に与えられる。
【0026】
制御装置10は、電流検知部42で検知された高周波電流に基づいてICカード20の高周波インピーダンスの変化の有無を判断し、ICカードに搭載されたICチップが破壊されたか否かを判断する。
【0027】
図3は、ICカード破壊装置の各要素の配置例を説明するための斜視図である。
図3では、ICカード破壊装置の内部について説明するために、筐体52の一部分が除去された状態が示される。
【0028】
筐体52の上部にはカード挿入口50が設けられ、ソレノイド16で動く爪部によってループコイル34の真横でカードが保持され、強磁界がカードに向けて放射される。ループコイル34の周辺には、制御装置10が搭載されたプリント配線基板54と電源装置4とが配置されている。そして、筐体52の底部には、破壊されたICカードを受けるカード受け箱56が設けられている。
【0029】
なお、電源装置4は、図1の電源電圧VCC1を発生させる装置と電源電圧VCC2を発生させる装置に分割して配置しても良い。
【0030】
筐体52の背面には、電源スイッチ2と、AC100Vの商用電源から電力供給を受けるためのプラグ58の配線出口とが設けられている。
【0031】
図4は、ループコイル34の側方から挿入された状態のカードを見た図である。
図1、図4を参照して、ICカード破壊装置100は、制御装置10の出力に応じて、ICカード20を挿入した後に破壊に成功した場合とICカードを破壊しなかった場合とで、排出方法を切換えるカード排出部15を構成するカード挿入口50、ソレノイド16、およびソレノイド16で動く爪部62をさらに含む。制御装置10は、カードの破壊の成否に応じて異なる処理としてカード排出方法の切換えを行なう。
【0032】
すなわち、電磁波放射時や電源OFF時には、爪部62は62Aで示す位置にある。そして、制御装置10は、破壊成功時には爪部62を62Bで示す位置に移動させてカードを排出し、破壊しなかった場合には爪部62を62Aで示す位置に停止させてカードを保持したまま排出しない。
【0033】
また、後に説明するように、制御装置10は、カードの破壊の成否に応じて異なる処理として、動作表示ランプ12の点灯方法を変化させる。すなわち、制御装置10は、カード非破壊時には、動作表示ランプ12を点滅させる。
【0034】
これらの異なる処理により、使用者は、カードの破壊が正常に終了したか否かを知ることができる。
【0035】
図5は、ソレノイド16および爪部62の形状を示した斜視図である。
図4、図5を参照して、爪部62は、放射部6がICカード20に電磁波を放射する際にICカード20の位置決めを行なう。爪部62はICカード20の破壊が成功した場合にICカード20を62Bの位置に示すように開放して排出し、ICカード20の破壊を行なわなかった場合には62Aの位置に示すようにカード20を排出せずに保持する。すなわち、ソレノイドの磁力をオン/オフさせることにより、内部の鉄片が吸引されたり解放されたりして爪部62を矢印A2で示す方向に動かす。解放されたICカード20は、自重で矢印A1に示す向きに落下する。
【0036】
図6は、カードの挿入を検知するセンサの形状を説明するための斜視図である。
図4、図6を参照して、スリットが設けられたカード検知センサ18が爪部62の上方かつカード20の側方に配置される。カード20が挿入され爪部62で保持された状態では、カード検知センサ18のスリットにちょうどカード20の一部が差し込まれる形になる。
【0037】
カード検知センサ18は、矢印A3に示す向きに光を放射する発光ダイオード等の発光素子と、その光を受光する光センサとを含む。カード20が挿入され保持されると、その光が遮られて光センサが光を検知しなくなる。これにより、カード20が挿入されていることを検知できる。なお、光に限らず他の近接センサ等を用いてカードの挿入を検知しても良い。
【0038】
再び図1、図3を参照して、ICカード破壊装置100の動作を説明する。PLLシンセサイザ22は制御装置10からの制御によって周波数を可変することが可能であり、高周波を発生する。この高周波はスイッチ24を経て増幅回路26によりカードを破壊するのに十分な電力に増幅される。増幅回路26の出力はトランス27の一次側を駆動する。トランス27の二次側の出力は、共振用コンデンサ28,30とループコイル34を含んで構成される直列共振回路に印加される。
【0039】
スイッチ32はコンデンサ30を共振回路に追加して共振周波数を補正するのに使用する。スイッチ32が導通するとコンデンサ30は共振回路に付加されない状態となり、スイッチ32が非導通状態となるとコンデンサ30は共振回路に付加される。
【0040】
カード挿入口50から挿入されたICカード20は、カード側面に設置されたループコイル34と電磁結合するように挿入経路が構成される。また、カードの経路に設けたカード検知センサ18によってICカード20が挿入されたことが検知される。
【0041】
制御装置10は、スイッチ24を導通させることによりループコイル34に高周波の印加を開始し、カード20に電磁波を照射する。同時に、制御装置10は、ループコイル34に供給する高周波の電圧と電流を電圧検知部38(電圧トランス)、検波回路37およびA/D変換器36ならびに電流検知部42(電流トランス)、検波回路41およびA/D変換器40によって計測して、カード20を含むループコイル34の負荷インピーダンスを監視する。
【0042】
この実施の形態は、他の局面では、半導体装置と電磁波を受けて半導体装置に電力を供給する受電部とを内蔵するカードを破壊するICカード破壊装置100であって、ICカードの定格入力電力を超える電力を受電部に発生させる複数の周波数の電磁波を放射する放射部6と、放射部6に対して周波数の切換えを指示する制御装置10とを含むものでもある。
【0043】
好ましくは、ICカード破壊装置100は、ICカード20がICカード破壊装置にセットされたことを検知するカード検知センサ18をさらに備える。制御装置10は、カード検知センサ18の出力に応じて複数の周波数の電磁波を順次放射するように放射部6を制御する。
【0044】
また、好ましくは、放射部6は、発振器であるPLLシンセサイザ22と、発振器の出力を受ける増幅回路26と、増幅回路26の出力側の容量を調整するためのコンデンサ30と、コンデンサ30を増幅回路26の出力側に結合するスイッチ32と、増幅回路26の出力に応じて電流が流れるループコイル34とを含み、制御装置10は、スイッチ32の結合状態と非結合状態との切換えを行なう。スイッチ32を開放するとコンデンサ30の容量が増幅回路26に結合される結合状態となり、スイッチ32を閉じるとコンデンサ30の容量が増幅回路26に非結合となる非結合状態になる。
【0045】
つまり、ICカード20の負荷容量の違いによる共振周波数のずれを考慮し、直列共振コンデンサの容量をスイッチ32で切換えてインピーダンスの整合を取りつつ高周波を複数回印加することにより、高周波が有効にカードに照射され、カードの破壊を効率よく行なえるように構成する。
【0046】
制御装置10は、電磁波の放射後にICカード20のインピーダンスが初期値よりも低くなった場合は図2のカード20内の半導体装置112が焼損してコイル111が短絡したものと判断し、電磁波の印加を停止してカードを排出する。
【0047】
一方、制御装置10は、インピーダンスの値に有意な変化がない場合は、挿入されているものが破壊された非接触ICカードではない異物であると判断し、電磁波の印加を停止してカードを排出せずに保持する。
【0048】
なお、電磁波の照射は連続的であっても、パルス状に断続的に繰り返すものであっても良い。
【0049】
図7は、制御装置10が実行するプログラムの制御構造を示したフローチャートである。
【0050】
図1、図7を参照して、まず処理が開始されると、ステップS1、S2において電源スイッチの投入に応じて残留カードの排出が行なわれる。ソレノイド16に通電されることにより、爪部62(ストッパ)が一旦図4の62Bに示す位置に保持され、カードが自重で落下する。カードの排出が終わると再びソレノイド16の通電が解除されバネ等による弾性力で爪部62が62Aに示す位置に戻る。そして制御装置10は、カードの挿入を待つ。
【0051】
図4に示すように、カード挿入口50から挿入されたICカードは、爪部62によって落下が阻止され、カード側面に近接させたループコイル34と密に電磁結合する位置に保持される。
【0052】
カードが通過する経路にはスリットが設けられたカード検知センサ18(インタラプタ)が設けられている。制御装置10は、カード検知センサ18の出力を受けて破壊対象となるカードが挿入されたことを検知する。
【0053】
カードが未挿入の間は、カードの検出待ち状態となる(ステップS3)。そして、カードが挿入されるとステップS4に処理が進み、制御装置10は、スイッチ24を導通させて、PLLシンセサイザ22の源発振信号を増幅回路26に伝達しループコイルに高周波の印加を開始する。ループコイル34からは通常のデータ書き込みよりも強力な電磁波がICカード20に照射される。電磁波の照射は連続的であっても、パルス状に断続的に繰り返すものであっても良い。同時に、制御装置10は、動作表示ランプ12を点灯して、破壊動作中であることを表示する。
【0054】
ステップS4では、制御装置10は、高周波の印加と同時に、ループコイルに供給する高周波の電圧と電流を計測してカードを含むループコイルの負荷インピーダンスを監視する。即ち、高周波電圧を高周波電流で除した値を負荷インピーダンスとする。
【0055】
ステップS5では、ステップS4で開始された電磁波の照射が一定時間行なわれたか否かを制御装置10が判断し、一定時間に達するまで電磁波の照射が継続される。
【0056】
ステップS5において一定時間が経過した場合には、処理はステップS6に進む。ステップS6では、制御装置10は、カードの負荷容量の違いによって生じる共振周波数のずれを考慮し、ループコイルと直列共振回路を構成する共振コンデンサの値を切換えて周波数をずらして電磁波の照射を続行する。カードの負荷容量によっては、反射が低減されカードに有効に電磁波が照射される。このように、共振周波数のバラツキに対応させて複数の周波数を印加することで、あまり大きくない電力でかつ短時間でカードを破壊できる。
【0057】
ステップS7では、ステップS6で共振周波数をずらした電磁波の照射が一定時間行なわれたか否かを制御装置10が判断し、一定時間に達するまで電磁波の照射が継続される。このときも、電磁波の照射は連続的であっても、パルス状に断続的に繰り返すものであっても良い。
【0058】
ステップS7において一定時間が経過した場合には、処理はステップS8に進む。ステップS8では、制御装置10は、スイッチ24を解放し、ループコイル34からの電磁波の照射を停止する。同時に、制御装置10は、動作表示ランプを消灯して電磁波の照射の停止を報知する。
【0059】
続いてステップS9において、制御装置10は、電磁波を照射している間に監視していた負荷インピーダンスにしきい値を超える変化が生じたか否かを判断する。負荷インピーダンスに変化があればカードを破壊できたものと判断し、ステップS10に処理が進み制御装置10は、ソレノイド16を駆動してストッパを解除してカード20を排出する。
【0060】
一方、ステップS9でインピーダンスの変化が検出されない場合には、破壊対象ではないカード(異物)または破壊できなかったICカード等であると考えられるので、ステップS11に処理が進み制御装置10はソレノイド16に通電せずにカードを保持したまま動作表示ランプ12を点滅させてカードの破壊が完了しなかったことを報知し、処理が終了する。
【0061】
この場合は、使用者は、それまでに破壊処理されたカードを一旦カード受け箱56から取り出した後に、電源スイッチ2を一旦切断して、(10秒程度経過してから)再投入することによってステップS2に処理が戻り当該カードを排出する。使用者は、このようにして破壊されなかったカードをそれまでの破壊済みのカードと区別することができる。
【0062】
次に、図7のステップS9のインピーダンス変化を判定する方法について詳細に説明する。
【0063】
出願人が行なった実験によれば、正常なカードに過大な電磁波を照射するとICチップはICカード内部で発生する過大電圧によって瞬時に破壊して短絡し、負荷のインピーダンスが下がり高周波電流が増大するので、カードが破壊したか否かを判断することが可能である。
【0064】
図8は、カードが破壊されない場合の検出電流および検出電圧の変化を示す図である。
図9は、カードが破壊された場合の検出電流および検出電圧の変化を示す図である。
【0065】
図8、図9は、ともに縦軸が電圧や電流の値をA/Dコンバータで取り込んだときのサンプル値を示し、横軸は時間を示す。図8に示されるように未破壊の状態では電流値が20未満、電圧値が100〜120の間で安定している。これに対し、図9の状態では電流値はピーク時では250を超え、電圧値も200位になっている。なお、図9では、電流値と電圧値が時間経過とともに減少しているのは、電源装置4に内蔵されている過電流から保護する保護装置5(または電圧を安定化する装置)の働きによる。時間が経過すると電圧については図8に示した場合と同様な値(100〜120の間)に落ち着いている。
【0066】
カードの破壊をインピーダンスの変化により検出する方法は、いくつか考えられるがいずれの方法を採用しても良い。たとえば、実際に電圧値を電流値で除してインピーダンスを算出してしきい値と比較しても良い。また制御装置10の処理能力が低い場合には、電流値のみで判断しても良い。また、最初にICカードの定格内の電力を供給する電磁波を照射しそのときのインピーダンスを求めてその値を制御装置に記憶しておき、その後定格を超える電磁波を照射した後のインピーダンスを求めて記憶した値と比較して所定量以上の変化が認められた場合にカードの破壊と判断しても良い。
【0067】
なお、本実施の形態では垂直にループコイルを設置し、コイルの上方からカードを挿入するようにして、排出時にはカードの自重で落下するように構成してあるが、他の例として、適当な駆動搬送手段(ゴムローラー、ベルト等)を使用してカードを移動・保持し、水平あるいは斜めにループコイルを設置しても良い。あるいは、トレイを使用してカードを出し入れしても良い。また、破壊できなかったカードを保持して排出しないようにする代わりに別の排出口から排出するようにしても良い。
【0068】
また好適には、ICチップが破壊処理されたICカードを更にカッターで裁断して、カード表面に印刷された文字、画像や、バーコード、磁気ストライプ、エンボス等の情報を破壊処理しても良い。
【0069】
さらには、本発明は非接触型のICカードを破壊する装置に好適に適用可能であるが、磁気等の接触読み取り媒体と複合されたカードであっても適用できる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態に係るICカード破壊装置100の構成を示した回路図である。
【図2】ICカード20の構成を示す図である。
【図3】ICカード破壊装置の各要素の配置例を説明するための斜視図である。
【図4】ループコイル34の側方から挿入された状態のカードを見た図である。
【図5】ソレノイド16および爪部62の形状を示した斜視図である。
【図6】カードの挿入を検知するセンサの形状を説明するための斜視図である。
【図7】制御装置10が実行するプログラムの制御構造を示したフローチャートである。
【図8】カードが破壊されない場合の検出電流および検出電圧の変化を示す図である。
【図9】カードが破壊された場合の検出電流および検出電圧の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
2 電源スイッチ、4 電源装置、5 保護装置、6 放射部、8 検知部、10 制御装置、12 動作表示ランプ、14 電源ランプ、15 カード排出部、16 ソレノイド、18 カード検知センサ、20 ICカード、22 PLLシンセサイザ、24,32 スイッチ、26 増幅回路、27 トランス、28,30 コンデンサ、34 ループコイル、36,40 A/D変換器、37,41 検波回路、38 電圧検知部、42 電流検知部、50 カード挿入口、52 筐体、54 プリント配線基板、56 カード受け箱、58 プラグ、62 爪部、100 カード破壊装置、110 カード基材、111 コイル、112 チップ、112 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を内蔵するICカードを破壊するICカード破壊装置であって、
前記ICカードに電磁波を放射する放射手段と、
前記電磁波を放射する際に前記半導体装置の電気的特性の変化を検知する検知手段と、
前記検知手段の出力に応じて前記ICカードの破壊の成否を判断する制御手段とを備える、ICカード破壊装置。
【請求項2】
前記ICカードは、電磁波を受けて前記半導体装置に電力を供給する受電手段をさらに内蔵し、
前記放射手段は、前記ICカードの定格入力電力を超える電力を前記受電手段に発生させる電磁波を放射し、
前記検知手段は、前記電気的特性として前記ICカードの高周波インピーダンスの変化を検知する、請求項1に記載のICカード破壊装置。
【請求項3】
前記放射手段は、
ループコイルを含み、
前記検知手段は、
前記ループコイルに供給する高周波電流を検知する電流検知手段を含み、
前記制御手段は、検知された前記高周波電流に基づいて前記ICカードの前記高周波インピーダンスの変化の有無を判断する、請求項2に記載のICカード破壊装置。
【請求項4】
前記制御手段の出力に応じて、前記ICカードを挿入した後に破壊に成功した場合と前記ICカードを破壊しなかった場合とで、排出方法を切換えるカード排出手段をさらに備える、請求項1に記載のICカード破壊装置。
【請求項5】
前記カード排出手段は、前記放射手段が前記ICカードに電磁波を放射する際に前記ICカードの位置決めを行なう爪部を含み、前記爪部は前記ICカードの破壊が成功した場合に前記ICカードを開放して排出し、前記ICカードの破壊を行なわなかった場合にはカードを排出せずに保持する、請求項4に記載のICカード破壊装置。
【請求項6】
半導体装置と電磁波を受けて前記半導体装置に電力を供給する受電手段とを内蔵するカードを破壊するICカード破壊装置であって、
前記ICカードの定格入力電力を超える電力を前記受電手段に発生させる複数の周波数の電磁波を放射する放射手段と、
前記放射手段に対して周波数の切換えを指示する制御手段とを備える、ICカード破壊装置。
【請求項7】
前記ICカードが前記ICカード破壊装置にセットされたことを検知するカード検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記カード検知手段の出力に応じて前記複数の周波数の電磁波を順次放射するように前記放射手段を制御する、請求項6に記載のICカード破壊装置。
【請求項8】
前記放射手段は、
発振器と、
前記発振器の出力を受ける増幅回路と、
前記増幅回路の出力側の容量を調整するためのコンデンサと、
前記コンデンサを前記増幅回路の出力側に結合するスイッチと、
前記増幅回路の出力に応じて電流が流れるループコイルとを含み、
前記制御手段は、前記スイッチの結合状態と非結合状態との切換えを行なう、請求項6または7に記載のICカード破壊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−3998(P2008−3998A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175132(P2006−175132)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(591218857)ミヨシ電子株式会社 (15)
【出願人】(390006921)ナカバヤシ株式会社 (58)
【Fターム(参考)】