説明

ICカード運用システムおよびICカード運用方法およびそれに用いるICカード

【課題】ICカードの無効化、有効化等ICカードの内容変更を行う場合、従来は内容変更を実施する主体が単一であることに限定され、カード発行者側とカード利用者側との複数主体による内容変更は不可能であった。本発明はカード発行者側あるいはカード利用者側の何れからでもICカードの内容変更が可能な使い勝手の良いICカードおよびICカード運用システムの提供を目的とした。
【解決手段】ICカードに対するICカード有効化/無効化の内容変更処理主体を個別に判別し、現在の状態を設定した処理主体と新たに内容変更を実施する処理主体とを比較してこれら内容変更処理間の予め定められている優先度設定にしたがってICカード内容変更処理実施の可否を判断する機能をICカードに付与する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカードの有効化・無効化等のセキュリティを考慮した状態管理法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードが高機能化し、ICカードの使い勝手が向上して来た。しかし、一方ではこれらの機能を利用してICカードの不正使用の可能性も発生して来た。この対策として、例えば、下記特許文献1においては、ICカード発行者が管理するサーバに、ICカードのID等の識別情報およびICカードに対して実行すべき処理内容が記載されているホットリスト情報を、定められたタイミングあるいは内容に変更が生じた時点で登録しておく。この状態で、当該サーバにアクセスしてきたICカードに対しては、当該ICカードの無効化その他ホットリストで指定されている処理を実行する方法が開示されている。
また、下記非特許文献1においては、ICカードの無効化(ロック)/有効化(アンロック)の処理を利用者側からの操作で実行し得る方法、あるいは非特許文献2においては、ICカードを置き忘れあるいは紛失した場合、公衆電話等ICカードから離れた位置にあってもICカード発行者側のサーバで当該ICカードを無効化し、第三者の使用を不可能にする方法等が開示されている。
特許文献1に記載の方法においては、ICカードに対する処理の主体はカード発行者側のサーバ側に有り、非特許文献1および非特許文献2においては処理の主体はカード利用者側にある。
【特許文献1】特開2002−298096号公報
【非特許文献1】http//www.fmworld.net/product/phone/f900ic/?fmwfrom=phone_foma “iモードFeliCaの無断利用を防ぐ「ICカードロック機能」”
【非特許文献2】http//www.fmworld.net/product/phone/f900ic/?fmwfrom=phone_foma “どこかに置き忘れても安心の「遠隔ロック機能」”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のように、従来の開示されているICカードおよびICカード運用システムによれば、管理の主体はカード発行者側かカード利用者側かの単一の主体によるICカードの無効化/有効化の処理は可能であったが、複数主体(例えばICカード利用者とICカード発行者)によるそれぞれのICカードの無効化/有効化を両立させる運用は不可能であった。例えば、
1)ICカード利用者が、ICカード紛失等の事故への対策として通常は、サーバ等のICカード発行者システムに接続すること無くICカードの無効化を行っておき、ICカード利用時に上記無効化時と同様にカード発行者システムに接続すること無くカードの有効化を行うこと、
と言うICカードの不正使用対策と、
2)ICカード発行者が不正利用者の保有するカードに対して、カード発行者側のシステムに接続させて、当該ICカードの無効化を行うこと、
と言う不正使用対策との両運用を両立させることは、ICカード発行者が無効化したICカードをICカード利用者が有効化することが出来てしまうため、実際の運用には適用が不可能であった。
このため、本発明においては、複数主体に対してもICカードのセキュリティに配慮した状態管理を可能とし、柔軟で使い勝手の良いICカードおよびICカード運用システムを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明においては、ICカードに対するICカード有効化/無効化処理の処理主体を個別に判別し、ICカード自身が持つそれぞれの処理間の予め設定されている優先度設定にしたがってICカード有効化/無効化処理の可否を判断する機能をICカードに付加するようにしている。
すなわち、本発明の請求項1においては、ICカードと、前記ICカードを発行したカード発行者が有するカード発行者サーバと、ICカードが挿入される端末と、前記端末と前記カード発行者サーバとを結ぶ通信手段とでICカード運用システムを構成し、この運用システムは前記ICカードの有効化または無効化の状態を変化させる処理を複数の処理主体の何れで実行されるかを個別に特定する特定手段を有し、前記カード発行者サーバは、前記端末に搭載されているICカードの有効化または無効化の状態を変更する処理手段を有しているICカード運用システムについて規定している。
【0005】
請求項2においては、ICカードの有効化または無効化の状態を変化させる処理を複数の処理主体の何れかで行うICカード運用方法において、ICカードにより前記複数の処理主体の何れが前記状態変化の処理を行っているかを特定し、該処理主体が現在の状態を設定した処理主体との優先度を予め設定されている優先度情報に従って有効化または無効化の状態変化実行の可否を判断するICカード運用方法について規定している。
【0006】
請求項3においては、ICカードの有効化または無効化処理を複数の処理主体で実行が可能なICカードにおいて、該ICカードに対する有効化または無効化処理を行う前記複数の処理主体を個別に判別する手段と、前記複数の処理主体間の有効化または無効化を行う処理の優先度が記述された情報を記憶する記憶手段と、を少なくとも有しているICカードについて規定している。
【0007】
請求項4においては、請求項3に記載のICカードにおいて、前記複数の処理主体を個別に判別する手段は、前記複数の処理主体それぞれに異なるコマンドを使用し、該異なるコマンドの弁別手段を有したものであるICカードについて規定している。
【0008】
請求項5においては、請求項3に記載のICカードにおいて、前記複数の処理主体を個別に特定する特定手段は、前記複数の処理主体に同一のコマンドを使用し、且つ、前記複数の処理主体のそれぞれに対して異なるパラメータ付与しておき、該パラメータから前記複数の処理主体のそれぞれを特定する認識手段を有しているICカードについて規定している。
【発明の効果】
【0009】
本発明において、ICカードの状態変更を実行させる複数の処理主体を現在の状態および新しい状態それぞれに対して個別に判別可能としたことにより、カード利用者によるICカード無効化/有効化の処理と、カード発行者によるICカード無効化/有効化の処理とを両立させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図により説明する。
本発明においては、図1に示す構成による処理を行う複数のカード利用者を含むICカード運用システムとしている。すなわち、図1において、ICカード1を含む端末2は通信手段6を介してカード発行者サーバ4に接続されている。ICカード1にはICカードの有効化または無効化の状態変化をさせる複数の処理主体(例えば、カード発行者またはカード利用者)の内の何れであるかを特定する特定手段、およびICカードの有効または無効の状態を変更する処理手段を有している。
例えば、ICカード1はカード発行者3側のサーバ4によって有効化されているとする。この状態でカード発行者3が通信手段6を介してICカード1を無効化しようとした時、ICカード1は自分が保持する図2に示す優先度設定に従い無効化を許可する。この無効化されたICカード1に対してICカード利用者5が有効化を実行しようとすると、ICカード1は自分の保持する優先度設定(図2)に従い有効化は拒絶されることになる。
【0011】
図2は処理主体が処理主体の判別手段11により判別された結果に対して、有効化または無効化に対する処理の優先度設定の例を示したもので、これはICカード1内の優先度設定記憶手段12に記憶されている。この記憶内容からICカード1の状態変化処理の可否を状態変化処理の可否判断手段13により決定し、状態変化処理手段14によりICカード1の状態変化処理が実行される。
【0012】
図2(a)は無効化された状態にあるICカード1を有効化する場合の優先度設定の例を示すものである。この図2(a)においては、カード発行者3が無効化したICカード1に対しては、カード発行者3による有効化処理は可能であるが、ICカード利用者5は、自分が無効化したICカード1以外は有効化処理が不可能であることを示している。
図2(b)は有効化された状態にあるICカード1を無効化する場合の優先度設定の例を示すものである。この図2(b)においては、カード発行者3あるいはカード利用者5が有効化したICカード1の何れに対しても無効化処理は可能であることを示している。
すなわち、ICカード1の有効化に対しては現在の状態を設定した主体と、今回新たに有効化しようとする主体との関係はチェックされるが、無効化に関してはICカード1、カード発行者3の何れの側からも処理可能であり、したがって安全サイドに操作されるようにしている。
以下、図3により本発明における有効化/無効化の処理過程を図3に示す例により説明する。図3における例は図2における優先度設定に基づいて構成されたものである。ここで、有効化されているICカード1を無効化する過程と、無効化されているICカード1を有効化する過程とでは異なる処理であるため、処理過程をこれら二つに分けて説明する。
【0013】
まず、図3(a)は有効化されているICカード1を無効化する過程について示したものである。これは、図2(b)に対応する場合であり、処理はICカード1の現在の状態、すなわち有効化されている状態を設定した処理主体が、カード発行者、カード利用者およびこれら両者による場合のいずれであるかの確認が行われる(ステップ;S01)。この無効化処理を行う場合は、前記図2(b)に示したように、ICカード1を現在の状態(有効化された状態)に設定した処理主体と、次の状態(無効化)する処理主体との組み合わせについては特に優先度の高いものはなく、したがってこの場合はいずれの組み合わせに対しても無効化処理は実行される(ステップ;S02)。なお、カード発行者とカード利用者との両者により現在の状態(有効化)に設定する場合もあり、この場合においても無効化する際には特に優先度は問題にならない。
【0014】
次に、現在無効化された状態にあるICカード1を有効化する過程について図3(b)により説明する。この場合も現在の状態(無効化された状態)を設定する処理主体としてはカード発行者のみ、カード利用者のみおよびこれら両者による場合のいずれであるかを確認するところから始める(ステップ;S10)。
【0015】
まず、現在の状態(無効化)を設定した処理主体がカード発行者のみの場合、次の処理、すなわち有効化処理を行う処理主体がカード発行者のみかカード利用者のみかを特定する(ステップ;S11)。ここで、有効化する処理主体がカード発行者のみであれば図2(a)の優先度の状況から有効化は許可される(ステップ;S12)。また、この処理主体がカード利用者のみの場合は、有効化は不許可となる(ステップ;S13)。
【0016】
また、現在の状態を設定した処理主体がカード利用者のみの場合、これから有効化処理を行う処理主体を特定する(ステップ;S14)。カード発行者であっても、またカード利用者であってもこの場合は有効化が許可される(ステップ;S12)。
【0017】
現在の状態(無効化)を設定した処理主体がカード発行者およびカード利用者の両者による場合は、次の有効化の処理を実行する処理主体がカード発行者の場合は有効化が許可されるが、カード利用者の場合は不許可となる(ステップ;S15,S12,S13)。
【0018】
図2、図3の例では複数主体としてカード発行者とカード利用者の2者を考えたが、複数主体としては3者以上である可能性もあり(例えば、カード発行者、カード利用者、サービス提供者の3者)、本明細書記載の例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるICカード運用システムの構成図。
【図2】ICカードの状態変更における優先度比較図、(a)無効化の状態にあるカードに対する有効化処理優先度設定表、(b)有効化の状態にあるカードに対する無効化処理優先度設定表。
【図3】ICカード運用システムの処理の流れを示すフロー図(a)有効化の状態にあるICカードを無効化する過程の処理説明図、(b)無効化の状態にあるICカードを有効化する過程の処理説明図。
【符号の説明】
【0020】
1:ICカード 2:端末
3:カード発行者 4:サーバ
5:カード利用者 6:通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードと、前記ICカードを発行したカード発行者が有するカード発行者サーバと、ICカードを挿入可能な端末と、前記端末と前記カード発行者サーバとを結ぶ通信手段とを有するICカード運用システムにおいて、
前記ICカードの有効化または無効化の状態を変化させる処理を複数の処理主体の何れで実行されるかを個別に判別し、前記ICカードの持つそれぞれの処理間の予め設定されている優先度にしたがってICカードの有効化または無効化の可否を判断する判断手段を有し、
前記端末に挿入されているICカードの有効化または無効化の状態を変更する処理手段を有していることを特徴とするICカード運用システム。
【請求項2】
ICカードの有効化または無効化の状態を変化させる処理を複数の処理主体の何れかで行うICカード運用方法において、
ICカードにより前記複数の処理主体の何れが前記状態変化の処理を行っているかを特定し、該処理主体が現在の状態を設定した処理主体との優先度を予め設定されている優先度情報に従って有効化または無効化の状態変化実行の可否を判断することを特徴とするICカード運用方法。
【請求項3】
ICカードの有効化または無効化処理を複数の処理主体で実行が可能なICカードにおいて、
該ICカードに対する有効化または無効化処理を行う前記複数の処理主体を個別に特定する特定手段と、
前記複数の処理主体間の有効化または無効化を行う処理の優先度が記述された優先度情報を記憶する記憶手段と、
前記特定された処理主体によるICカードの状態変化に対して、前記記憶手段に記憶されている優先度情報に基づいて有効化または無効化の可否を判断する判断手段と
を少なくとも有していることを特徴とするICカード。
【請求項4】
請求項3に記載のICカードにおいて、
前記複数の処理主体を個別に特定する特定手段は、前記複数の処理主体それぞれに異なるコマンドを使用し、該異なるコマンドの弁別手段を有したものであることを特徴とするICカード。
【請求項5】
請求項3に記載のICカードにおいて、
前記複数の処理主体を個別に特定する特定手段は、前記複数の処理主体に同一のコマンドを使用し、且つ、前記複数の処理主体のそれぞれに対して異なるパラメータを該コマンド内に含ませておき、該パラメータから前記複数の処理主体のそれぞれを特定する認識手段を有していることを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−327027(P2006−327027A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153866(P2005−153866)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】