説明

ICタグ

【課題】 耐久性があり、かつ、商品を使用する際の着心地を低下させず、かつ、容易に取りはずすことができず、かつ、比較的安価なICタグを提供する。
【解決手段】 送受信アンテナ基板と、電気的接続部を介して前記送受信アンテナ基板の表面に搭載された無線通信用ICチップとを備えたインレットにおいて、前記インレットの片面および/または反対面を、共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層、または、共重合ポリエステル樹脂のコーティング層を設けるかのいずれかの加工が施されていることを特徴とするICタグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品の識別が可能なICチップを搭載し、送受信アンテナ基板を保護する保護材を備えたICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品の識別する方法として、非接触型のICタグを非接触で検知して、該タグのICチップに記録された情報を読み取る技術の研究が盛んに行われている。商品を識別する方法としては、バーコードが一般に使われてきたが、そこに含ませることができる情報は多くても十数桁であるため、商品の種類を識別できても、ひとつひとつの商品を識別することは無理であった。それに対して、ICタグでは、それが数十桁に増えるためひとつひとつの商品を識別する可能性が高くなり、しかも、場合によっては、情報を書き換えることができるようになり、多彩な利用方法が期待されている。中でも、13.56MHz帯の電波を利用した電磁誘導方式のICタグ、UHF帯の電波を利用した電波方式のICタグなどは、非接触で商品を識別でき、電池が不要で、今後が期待されている。
【0003】
一方で、制服、ユニフォームや衣服などの衣料分野、特に、身分や地位を証明するような衣料品においては、防犯面から、それぞれの商品を識別する必要が高まっている。
【0004】
このような要求の中、衣料の襟や袖の部分に、ICタグを装着して情報を管理、または、管理エリアからの持ち出しがあった場合は、警報等を鳴らして警告する等、商品管理や防犯面でICタグが利用されるようになってきた。しかしながら、衣料は、販売のための陳列であれば問題はないが、服として身にまとった場合など外部からの応力や衝撃によりICタグが破損したり、更には洗濯によってICタグの脱落が生じたり、その取り扱いは難しかった。
【0005】
これらの製品で使用するためには、基材上のICチップ、送受信アンテナを破壊から保護する必要がある。具体的には、耐久性の面から、洗濯および脱水された際に受けるダメージに対してアンテナが折れないようにする必要があり、かつ、使用面から、布製品を使用する際の着心地を低下させないことが必要であり、かつ、防犯面から、容易にとりはずすことができず、流通面から、比較的安価に衣料に取り付け可能な低価格にする必要がある。
【0006】
特許文献1には、ボタン内部に、ICチップと通信用アンテナを埋め込み、クリーニング等における商品管理をICチップによっておこなう方法が開示されている。しかしながら、このような方法では、ボタンの大きさが非常に大きくなるばかりか、ボタンの種類が制限されてしまうためにデザイン性が大きく損なわれている。
【0007】
特許文献2には、インレットの両面に、一般的に柔軟な樹脂とされているウレタン樹脂をコーティングすることやウレタンフィルムを積層することが開示されている。しかしながら、ウレタンを長時間使用すると、汗などによって変色をおこし、不具合があった。
【0008】
特許文献3には、インレットの両面に織布や紙を重ね、糸でインレットの周囲を縫合したものを被着体に取り付ける方法が開示されている。しかしながら、繰り返し洗濯やクリーニングすると、インレットが被着体から外れるなど不具合があった。また、熱可塑性エラストマー樹脂など柔軟性樹脂によって、ICチップと通信用アンテナを覆い、それを袋に挿入し衣服などに取り付ける方法が知れている。しかしながら、洗濯やクリーニング中に袋が破れるなど不具合があるばかりか、一般に熱可塑性エラストマーは高価であり、しかも、加工費が非常に高くなるため、高コストなICタグになり、使用用途が制限されていた。また、セラミックなどに覆われたものを袋に挿入し衣服などに取り付ける方法が知られているが、洗濯またはクリーニング時に生地をいためるばかりか、使い心地が非常に損なわれていた。
【特許文献1】特開平9−61520号公報
【特許文献2】特開2005−56362号公報
【特許文献3】特開2002−42100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、耐久性があり、かつ、商品を使用する際の着心地を低下させず、かつ、容易に取りはずすことができず、かつ、比較的安価なICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の特性を有する共重合ポリエステルフィルム接着材料をインレットの両面に積層またはコーティングすることにより、耐久性があり、着心地が低下せず、取り外すと衣服の意味をなさず、しかも比較的安価なICタグが提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
【0012】
(1)送受信アンテナ基板と、電気的接続部を介して前記送受信アンテナ基板の表面に搭載された無線通信用ICチップとを備えたインレットにおいて、前記インレットの片面および/または反対面を、共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層、または、共重合ポリエステル樹脂のコーティング層を設けるかのいずれかの加工が施されていることを特徴とするICタグ。
(2)前記共重合ポリエステルフィルム接着材料が、数平均分子量が10000以上、融点が70℃〜150℃の共重合ポリエステルからなり、無機化合物の含有量が5質量%以下、厚さが25〜1500μmであることを特徴とする(1)のICタグ。
(3)前記共重合ポリエステル樹脂のコーティング層が、数平均分子量が10000以上、融点が70℃〜150℃の共重合ポリエステル樹脂を、厚さ25〜1500μmにコーティングした層であることを特徴とする(1)のICタグ。
(4)(1)〜(3)のICタグの製造方法。
(5)(1)〜(3)のICタグの装着方法。
(6)(5)の装着方法を用いてICタグを装着した衣服。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性があり、かつ、商品を使用する際の着心地を低下させず、かつ、容易に取りはずすことができず、かつ、比較的安価なICタグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明に使用するインレットは、市販されているインレットを使用することができる。具体的には、13.56MHzのインレットであれば、オムロン製V720S−D13P01、V720S−D13P02、V720S−D13P06、V720S−D52P03、V720S−D52P04、V730S−D13P01、V730S−D13P02、UHFのインレットであれば、オムロン製V750−D22M01−IM、V750−D22M02−IM、V750−D22M03−IM、V750−D22M04−IMなどを使用することができる。
【0016】
インレットとは、ベース基板上に、電気的接続部を介して前記送受信アンテナ基板の表面に搭載された無線通信用ICチップを備えたもののことである。
【0017】
インレットのベース基板は、樹脂、織布および紙などからなり、通常、プラスチックシートが使用されることが多い。特に、柔軟性と強度をあわせもつ、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に使われる。
【0018】
アンテナは、通常、ベース基板上にアルミナ箔や銅箔をエッチング加工して形成されることが多い。アンテナの長さは、通信距離やタグの大きさに応じて適宜設定されているが、使用用途から、4〜50mmのものが好適に使われる。
【0019】
ICチップは、製造および搭載の作業性を考慮して大きさが適宜設定されていることが多いが、本用途では、折り曲げや圧縮に対する強度を保つため、ICチップの大きさは0.5mm×0.5mm以下のものが好適である。
【0020】
次に、本発明で使用するインレットの両面にコーティングする共重合ポリエステルおよびインレットの両面に積層する共重合ポリエステルフィルム接着材料に使用する共重合ポリエステルについて説明する。
【0021】
共重合ポリエステルの数平均分子量は、10000以上であることが必要であり、15000以上であることが好ましい。分子量が10000未満であると、被着体への接着強力が低下し好ましくない。また、溶融粘度が低くなりすぎるために、製膜時にフィルムが破れやすくなり製膜が困難になるので好ましくない。
【0022】
共重合ポリエステルの融点(以下、Tmと略称する。)は、70〜150℃であることが必要であり、70〜120℃であることが好ましい。Tmが150℃よりも高いと、接着する際に温度を高く設定しなければならず、インレットの基材によく使われるポリエチレンテレフタレートフィルムが厚みによっては熱収縮して使用が限定されるので好ましくない。また、70℃よりも低いと、共重合ポリエステルをペレット化する際や、ポリエステルフィルム製膜時の操業性が損なわれることがあるので好ましくない。
【0023】
共重合ポリエステルのガラス転移点(以下、Tgと略称する。)は、−30〜20℃であることが好ましい。Tgが20℃を超えると、接着する際に温度を高く設定しなければならず、素材によっては、被着体が熱収縮するなどして使用できなくなるので好ましくない。また、Tgが−30℃未満であると、共重合ポリエステルをペレット化する際や、ポリエステルフィルム製膜時の操業性が損なわれることがあるので好ましくない。
【0024】
共重合ポリエステルの数平均分子量は、重合時間や解重合量を制御することにより、また、TmやTgは、共重合するモノマーの組み合わせを設定することにより、それぞれ上記範囲に調整することができる。
【0025】
次に、共重合ポリエスエルの組成について説明する。
【0026】
共重合ポリエステルは、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分の等モル量から構成された樹脂である。
【0027】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4′−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボンもしくはそのエステル形成性誘導体等を例示できる。
【0028】
これらのジカルボン酸成分のなかで、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0029】
グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3(4)、8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ(5.2.1.1/2.6)デカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0030】
これらのグリコール成分のなかで、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、1,4−シクロヘキサンジメタノールは汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0031】
上記共重合ポリエステルには、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移点の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として用いることができる。ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、m−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、o−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0032】
これらのヒドロキシカルボン酸のなかで、ε−カプロラクトンは汎用性があり好ましい。またこれらの比率は、共重合ポリエステルの融点やガラス転移点が本発明に規定する範囲に入るように選択される。
【0033】
共重合ポリエステルには、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として添加してもよい。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0034】
3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
【0035】
これらは必ずしも1種類で用いる必要はなく、樹脂に対し付与したい特性に応じて複数種以上混合して用いることが可能である。このとき、3官能以上のモノマーの割合としては、全カルボン酸成分または全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果が発現せず、5モル%を超える量を含有せしめた場合には、重合の際、ゲル化点を超えゲル化が問題になる場合がある。
【0036】
また、ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0037】
共重合ポリエステルは、前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法により重縮合させることにより製造することができる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を、不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進める方法を挙げることができる。
【0038】
エステル化反応および重縮合反応の際には、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、テトラブチルチタネ−トなどのチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどの金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を用いて重合をおこなう。その際の触媒使用量は、生成する樹脂に対し、通常0.5質量%以下で用いる。
【0039】
また、共重合ポリエステルに所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、多塩基酸成分や多価グリコール成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合をおこなう。
【0040】
次に、本発明の共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造方法について説明する。共重合ポリエステルフィルム接着材料は、上記の共重合ポリエスエルをインフレーション法、Tダイを用いた製膜方法、押し出しラミネート法など公知の製膜方法で製造することができる。
【0041】
インフレーション法としては、乾燥した共重合ポリエステルを押出機に投入し、溶融樹脂を円形ダイスからチューブ状に引き上げ、空冷しながら同時に風船状に膨らまして製膜、折り畳み、ニップロールで円筒状のフィルムを熱融着し、それを巻き取る方法や、円形ダイスより溶融樹脂を円筒状に冷却水の中を下方へ押出した後、折り畳み、ニップロールで円筒状のフィルムを熱融着し、それを捲き取る方法が挙げられる。
【0042】
なお、Tgが低い樹脂を使用する場合、フィルムを捲き取る際に、フィルム間に離型紙を挟んでおくと、捲き取ったあとのブロッキングを防ぐことができ、好ましい。
【0043】
Tダイを用いた製膜方法では、乾燥した共重合ポリエステルを押し出し機に投入し、熔融樹脂をTダイから押し出し、巻き取る方法などが挙げられる。
【0044】
なお、インフレーション法と同様、Tgが低い樹脂を使用する場合、フィルムを捲き取る際に、フィルム間に離型紙を挟んでおくと、捲き取ったあとのブロッキングを防ぐことができ、好ましい。
【0045】
押し出しラミネート法としては、乾燥した共重合ポリエステルを押し出し機に投入し、熔融樹脂をTダイから、支持フィルムに押し出す方法などが挙げられる。
【0046】
インフレーション法およびTダイを用いた製膜方法に使用する離型紙や、押し出しラミネート法に使用する支持フィルムは、樹脂と剥離するフィルムであれば任意に選択することができる。ただし、押し出しラミネートに支持フィルムとして使用する場合は、溶融する温度よりも、融点が高い支持フィルムを選択することが必要である。これらのフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面を離型処理した紙などが挙げられるが、ポリプロピレンフィルムが安価で融点が比較的高いので好ましい。
【0047】
いずれの製膜方法においても、押し出し機のスクリュー径は適宜選択され、ポリマー溶融温度は、Tm+100℃以下の温度範囲で適宜選択される。また、樹脂の吐出量は、冷却速度と吐出量のバランスで適宜選択する。
【0048】
なお、本発明に使用する共重合ポリエステルフィルム接着材料は、巻き取ったあと延伸してもよい。
【0049】
共重合ポリエステルフィルムの厚さは、500μm以下である必要である。
フィルム接着材料の厚さが500μmを超えると、製膜時に均整度が悪くなり、捲き姿が悪くなったり、皺が発生したりするなど、商品価値を損ねるため好ましくない。
【0050】
また、共重合ポリエステルフィルムをフィルム接着材料として用いる場合、複数枚を重ねて用いてもよい。ただし、必要以上に重ね合わせると、衣服に接着した後に柔軟性が損なわれ、違和感を感じるため好ましくない。共重合ポリエステルフィルム1枚当たりの厚みにもよるが、重ね合わせて用いる場合は、最終的なフィルム接着材料の厚みと、ICタグを衣服に装着した後の嵩張り感、風合いで適宜調整することができる。
【0051】
本発明の共重合ポリエステルフィルム接着材料は、無機化合物を含有してもよく、その含有量は5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。無機化合物を含有することでフィルム同士のブロッキングを抑制し、また滑りを良くすることで、フィルム接着材料の皺を減少させることができるだけでなく、前述した捲き取り時の融着を防止する効果もある。一方、無機化合物の含有量が5質量%を超えると、製膜が困難になることがあり、また得られるフィルム接着材料の物性、特にヒートシール強力などが著しく低下し、実用上問題となる場合があるので好ましくない。
【0052】
無機化合物としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、マイカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、クレー、ガラスビーズなどが例示される。中でもシリカ、炭酸マグネシウムは汎用性があり好ましい。無機化合物を添加する場合には、共重合ポリエステルと無機化合物とを2軸押出機にて溶融混練しコンパウンドしてあらかじめ作製されるマスターペレットを用いることが好適である。
【0053】
共重合ポリエステルフィルム接着材料をインレットの片面または両面に積層する場合は、両面に25〜1500μmの厚さで積層する必要があり、100μ〜1.0mmが好ましい。厚さが25μmよりも薄いと、クリーニング、洗濯などによって加えられる力によって、ICタグを保護することができないので好ましくない。1500μmよりも厚いと、衣服などの被着体に使用した際、違和感があるので、好ましくない。なお、共重合ポリエステルフィルムの厚さよりも、さらに厚く積層したい場合は、ポリエステルフィルム接着材料を数枚積層することができる。
【0054】
インレットの表面に共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層する方法は、適宜選択することができる。例えば、共重合ポリエステルのTm+100℃以下の温度で、公知のプレス機でプレスする方法や、アイロンでプレス方法などが挙げられる。
【0055】
次に、共重合ポリエステルをインレットの表面にコーティングする方法について説明する。
【0056】
コーティングする共重合ポリエステルは、上記の共重合ポリエステルを使用することができる。1回あたりコーティングする厚さは、500μm以下が好ましい。コーティングする厚さが500μmを超えると、コーティングの均整度が悪くなり、商品価値が損ねるため好ましくない。なお、厚くコーティングしたい場合は、共重合ポリエステルを数回コーティングし、重ね塗りすることができる。
【0057】
コーティングした共重合ポリエステルの全体の厚さは、25〜1500μmにする必要があり、100〜1000μmが好ましい。厚さが25μmよりも薄いと、クリーニング、洗濯などによって加えられる力によって、ICタグを保護することができないので好ましくない。1500μmよりも厚いと、ユニフォームや制服などの被着体に使用した際、違和感があるので、好ましくない。コーティングする方法としては、公知のホットメルトコーティング用の装置を用いてコーティングすることができる。その際の、ポリマー溶融温度は、ポリマーの熔融粘度によって、Tm+100℃以下の温度範囲で適宜選択される。
【0058】
ポリエステル樹脂をコーティングする方法としては、連続したインレットにコーティングして一つ一つに切り離してもよく、また、一つ一つのインレットに切り離してから共重合ポリエステル樹脂をコーティングしてもよい。本発明では、ICやアンテナ基板が熱にさらされる時間が短くなるので、連続したインレットにコーティングしてから一つ一つに切り離した方が好ましい。
【0059】
なお、インレットの加工方法は、インレットの両面に共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層する方法、インレットの両面に共重合ポリエステルをコーティングする方法、インレットの片面に共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層し、反対面には共重合ポリエステルをコーティングする方法、または、インレットの片面のみを共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層する方法、インレットの片面のみを共重合ポリエステルをコーティングする方法など、適宜選択することができるが、中でも、両面に共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層する方法、インレットの片面のみを共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層する方法の方が、ICやアンテナ基板が熱にさらされる時間が短くなるので好ましい。
【0060】
次に、ICタグを衣服に装着する方法について説明する。
【0061】
共重合ポリエステルフィルムを使用する場合には、一つ一つに切断したインレットの両面に共重合ポリエステルフィルムをはさんで、さらに、布地ではさみ、プレスまたはアイロンで加熱して接着固定する方法が挙げられる。また、インレットの両面に共重合ポリエステルをコーティングした場合には、連続したインレットにコーティングしたものを切り離し、そのあと、両面コートしたインレット一つ一つを布地ではさみ、プレスまたはアイロンで加熱して接着固定する方法が挙げられる。
【0062】
装着場所としては、衣服の襟の部分、裏地など、いずれの場所にでも装着できることができる。中でも、襟の部分に装着するのが、外力、外圧に対して、アンテナが切断しにくく、折れ曲がりにくいので好ましい。
【0063】
インレットの両面に、共重合ポリエステルフィルム接着剤を積層、または、共重合ポリエステルをコーティングしたものを衣服の間に接着することで、ICタグが衣服に完全に固定され、クリーニング、洗濯中に、ICタグが外れることがない。また、厚みが1500μmよりも薄いために、衣服に取り付けた場合、違和感がなく、また、ICタグを取り付けた場所を容易に見つけることができない。しかも、ICタグが、共重合ポリエステルによって周囲を囲われているため、共重合ポリエステルの柔軟性によって、クリーニング、洗濯などによって加えられる外力、外圧、ねじれに対して、アンテナが切断、折れ曲がることを防止することができる。また、衣服に完全に装着しているため、ICタグを取り付けた場所を見つけて、無理やりインレットを外した場合、衣服としての機能を果たすことができなくなるので、防犯面に優れている。
【実施例】
【0064】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。
(1)共重合ポリエステルの数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(2)共重合ポリエステルのTm、Tg
共重合ポリエステル10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7型)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、1stスキャンにおいての吸熱ピークの頂点温度をTmとし、2ndスキャンの昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をTgとした。
(3)共重合ポリエステルの組成
H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)により求めた。
(4)共重合ポリエステルフィルム接着材料の厚さおよび共重合ポリエステル樹脂の厚さ
HEIDENHAIN製厚み測定装置を用いて測定をおこなった。
(5)クリーニング試験
JIS L0217 401法に基づいて、ミネラルスピリットを使用して、100回繰り返した。
(6)接着強力
共重合ポリエステルフィルム材料を使用する場合、一つ一つのインレットの両面に、共重合ポリエステルフィルム材料を積層し、さらに、それをポリエステル65%、綿35%のユニフォームの襟部分にはさんだあと、任意の温度で、2kg/cm2の圧力をかけて30秒間熱圧縮した。
また、共重合ポリエステルをコーティングする場合は、インレットの片面に、共重合ポリエステルを任意の温度で溶融しコーティングし冷却した。そのあと、もう片方の面についても同様に、共重合ポリエステルをコーティングし冷却し、一つ一つのインレットを切り離した。
その後、インテスコ社製精密万能材料試験機2020型を用いて温度20℃湿度50%の雰囲気下で、引張速度50mm/分の接着強力を測定した。10N/20mm以上を合格(○)とし、10N/20mm未満を不合格(×)と判定した。
(7)ICタグの動作性
オムロン製RFID開発キットを用いて、読み込み、書き込みができるかを確認した。読み込みおよび書き込みが可能であった場合○、不可能であった場合×とした。
(8)連続使用した際の外観の変化
ユニフォームを8時間着用し1回洗濯することを100回繰り返して、外観の変化を観察した。
【0065】
(共重合ポリエステル樹脂の製造)
【0066】
製造例1
テレフタル酸997g(60モル部)、セバシン酸809g(40モル部)、エチレングリコール434g(70モル部)、ブタンジオール712g(79モル部)、ポリテトラメチレングリコール1000 100g(1モル部)からなる混合物を、攪拌しながら、オートクレーブ中240℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、240℃のまま、触媒としてテトラブチレンチタネート2.0gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応をおこなった。適当な粘度になるまで重縮合をおこない、樹脂をシート状に払い出した。シートを80℃で2時間ほど結晶化させた後、ダイスカッターを用いて3mm立方の角状の共重合ポリエステルAのペレットを得た。得られたペレットの最終樹脂組成と特性値を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
製造例2〜6
使用モノマー、仕込みモル部を変更し、上記製造例1と同様の操作を行って、共重合ポリエステル樹脂2〜共重合ポリエステル樹脂6を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂2〜6の最終樹脂組成と特性値を表1に示す。
【0069】
(共重合ポリエステルフィルム接着材料の製造)
【0070】
製造例7
共重合ポリエステルAのペレットを十分乾燥させ、さらに、共重合ポリエステルAのペレットを押出機に投入し、溶融した樹脂を、Tダイから離型フィルム(ポリプロピレンフィルム、東セロ社製、50μm)の上に押し出した。そのあと、フィルムを捲取機によって100m捲き取り、共重合ポリエステルフィルム接着材料(a)を得た。押出機のスクリュー径は65mm、ポリマー溶融温度は140℃、Tダイのリップは400mm、リップ間隙は1mm、捲き取りローラーはいずれも梨地加工のものであった。得られたフィルム接着材料(a)は、厚みが50μm、フィルム幅が250mmであった。得られたフィルムの使用樹脂、製膜方法および特性値を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
製造例8
共重合ポリエステルの種類およびポリマー溶融温度を変えた以外は製造例7と同様にして、フィルム接着材料(b)を作製した。得られたフィルムの使用樹脂、製膜方法および特性値を表2に示す。
【0073】
製造例9
十分乾燥させた共重合ポリエステルCのペレット99%と無機化合物(富士シリシア製サイロホービック702)1%を二軸押出機に投入し、十分に混練したあと、シート状に払い出した。シートを80℃で2時間ほど結晶化させた後、ダイスカッターを用いて3mm立方の角状の共重合ポリエステルCのコンパウンドペレットを得た。ポリマー溶融温度は155℃であった。
その後、ペレットを十分乾燥したあと、押出機に投入し、溶融した樹脂を円形ダイスから空気圧によって膨張させると同時にエアリングによる空冷をしながら、チューブ状のフィルムに成形し引き上げた。このチューブ状のフィルムをダイス上部に設置された一組のピンチロールによって引き取りをおこない、内面で熱融着させ、そのまま、上下に離型フィルム(ポリプロピレンフィルム、東セロ社製、50μm)を添えて、捲取機によって100m捲き取り、共重合ポリエステルフィルム接着材料(c)を得た。押出機のスクリュー径は65mm、ポリマー溶融温度は155℃、円形ダイスの直径は150mm、リップ間隙は4mmであった。得られたフィルム接着材料(c)は、厚みが250μm、フィルム幅が420mmであった。得られたフィルムの使用樹脂、製膜方法および特性値を表2に示す。
【0074】
製造例10
共重合ポリエステルの種類およびポリマー溶融温度を変えた以外は製造例7と同様にして、フィルム接着材料(d)を作製した。得られたフィルムの使用樹脂、製膜方法および特性値を表2に示す。
【0075】
製造例11
共重合ポリエステルの種類およびポリマー溶融温度を変えた以外は製造例7と同様にして、フィルム接着材料(e)を作製した。得られたフィルムの使用樹脂、製膜方法および特性値を表2に示す。
【0076】
製造例12
共重合ポリエステルの種類およびポリマー溶融温度を変えた以外は製造例7と同様にして、フィルム接着材料(f)を作製しようとしたが、ブロッキングが激しくフィルムを作製することができなかった。
【0077】
実施例1
オムロン製インレットV720S−D13P06の両面に、7cm×3cmの大きさに切り取った厚み30μmの共重合ポリエステルフィルム接着材料(a)を1枚を積層し、ポリエステル65%、綿35%からなるユニフォームの襟部分にはさみ、140℃で熱圧着して、ICタグを装着したユニフォームを製造した。ICタグを装着したユニフォームは、ICタグを装着する前のユニフォームに比べて外観の変化はなかった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。クリーニング試験をおこなったあと、ユニフォームの外観は、洗濯前のユニフォームとほぼ同等であった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例2
共重合ポリエステルフィルム接着材料(b)を6枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表3に示す。
【0080】
実施例3
共重合ポリエステルフィルム接着材料(c)を10枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表3に示す。
【0081】
実施例4
共重合ポリエステルフィルム接着材料(d)を3枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表3に示す。
【0082】
実施例5
共重合ポリエステルフィルム接着材料(a)を3枚と、共重合ポリエステルフィルム接着材料(b)を3枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表3に示す。
【0083】
比較例1、2
ICタグの構成を変えた以外は実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
比較例3
オムロン製インレットV720S−D13P06の両面に、7cm×3cmの大きさに切り取った厚み30μmの共重合ポリエステルフィルム接着材料(a)を6枚を積層し、ポリプロピレンフィルムにはさんで、150℃で熱圧着して、ICタグを作製した。そのあと、ポリプロピレンフィルムを剥がして、共重合ポリエステル樹脂で包まれたICタグを作製した。その後、ICタグのアンテナを切断しないように、ICタグのまわりを糸で縫製してユニフォームの襟部分に取り付けた。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0086】
比較例4
共重合ポリエステルフィルム接着材料(e)を4枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0087】
比較例5
共重合ポリエステルフィルム接着材料(b)を1枚用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0088】
比較例6
共重合ポリエステルフィルム接着材料(d)を6枚重ねて用いた以外は、実施例1と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0089】
実施例6
共重合ポリエステルAを140℃で溶融し、100枚連続したオムロン製インレットV720S−D13P06に、厚さ100μmになるようにコーティングし冷却した。十分に冷却した後、ブロッキングしなくなったことを確認してから、インレットの反対面にも同様に厚さ100μmになるようにコーティングして両面にコーティングしたインレットを作製した。そのあと、両面にコーティングしたインレットを、ポリエステル65%、綿35%からなるユニフォームの襟部分にはさみ、140℃で熱圧着して、ICタグを装着したユニフォームを製造した。ICタグを装着したユニフォームは、ICタグを装着する前のユニフォームに比べて外観の変化はなかった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。クリーニング試験をおこなったあと、ユニフォームの外観は、洗濯前のユニフォームとほぼ同等であった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表5に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
実施例7、比較例7、8
ICタグの構成を変えた以外は実施例6と同様にして、ICタグを装着したユニフォームを作製した。装着したICタグの構成およびクリーニング試験前のICタグの性能およびクリーニング試験後のICタグの性能、連続使用した際の装着部分の外観の変化を表4に示す。
【0092】
実施例1〜7のICタグを装着したユニフォームは、ICタグを装着する前のユニフォームに比べて外観の変化はなかった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。クリーニング試験をおこなったあと、ユニフォームの外観は、洗濯前のユニフォームとほぼ同等であった。また、使用した際の違和感はなく、ICタグは読み込み、書き込みが可能であり、かつ、装着部分の接着強力は10N/25mm以上あり合格であった。
【0093】
比較例1では、素材がポリウレタンのために、連続使用した際に、ポリウレタンの接着剤の部分から変色を生じていた。
【0094】
比較例2では、素材がポリオレフィンのために、接着力が低く、数回、クリーニング試験をおこなうと、ICタグが衣服から外れてしまった。
【0095】
比較例3では、ICタグを縫製したために、洗濯中に、ICタグが衣服から外れてしまった。
【0096】
比較例4では、共重合ポリエステル接着材料の融点が高かったために、熱圧着温度が200℃になり、熱圧着した際に、衣服が変色してしまった。
【0097】
比較例5、7では、共重合ポリエステル接着材料の厚みが薄かったために、接着力が弱く、しかも、数回、クリーニング試験をおこなうと、ICタグが衣服から外れてしまった。
【0098】
比較例6、8では、共重合ポリエステル接着材料の厚みが厚かったために、衣服に装着した際に違和感があった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信アンテナ基板と、電気的接続部を介して前記送受信アンテナ基板の表面に搭載された無線通信用ICチップとを備えたインレットにおいて、前記インレットの片面および/または反対面を、共重合ポリエステルフィルム接着材料を積層、または、共重合ポリエステル樹脂のコーティング層を設けるかのいずれかの加工が施されていることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記共重合ポリエステルフィルム接着材料が、数平均分子量が10000以上、融点が70℃〜150℃の共重合ポリエステルからなり、無機化合物の含有量が5質量%以下、厚さが25〜1500μmであることを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記共重合ポリエステル樹脂のコーティング層が、数平均分子量が10000以上、融点が70℃〜150℃の共重合ポリエステル樹脂を、厚さ25〜1500μmでコーティングした層であることを特徴とする請求項1記載のICタグ。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のICタグの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のICタグの装着方法。
【請求項6】
請求項5に記載の装着方法を用いてICタグを装着した衣服。


【公開番号】特開2009−245348(P2009−245348A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93504(P2008−93504)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】