説明

ICタグ

【課題】ICチップの拡大電極とアンテナとのショートを確実に防ぐことができるICタグの提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、シート状基材の合わせ面側にコイル状アンテナ及び平面状アンテナ端子が積層されたアンテナシートと、ICチップが搭載され、ICチップの平面状拡大電極が短冊状基材の合わせ面側に積層され、アンテナシートに重畳されるストラップと、アンテナシート及びストラップ間に充填される接着剤層とを備えるICタグであって、上記ストラップがコイル状アンテナと交差し、かつ拡大電極とアンテナ端子が合致するよう配設されており、上記アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に合わせ面側に突出する凸状部が形成され、この凸状部によりアンテナ端子と拡大電極とが直接接触することを特徴とするICタグである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグに関し、詳細にはストラップによりアンテナ端子とICチップの拡大電極が接続されている構造を有するICタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification) とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、この情報を外部のリーダー・ライターと非接触でデータの授受を行うことができる装置である。このようなICタグは、例えば、運送や流通、倉庫、工場工程管理、荷物の取り扱い等の分野で利用されている。
【0003】
かかるICタグとしては、基材上に形成された一対の端子を有するコイル状のアンテナと、ICチップとアンテナ及びICチップを電気的に接続するためのブリッジとが設けられたものが知られている。ブリッジとは、コイル状のアンテナの一対の端子とICチップの一対の電極とを接続している電導部材であり、コイル状のアンテナと交差するように配置されている(例えば、特開2007−157025号公報等)。このブリッジは、交差するアンテナとのショートを防ぐため、接続部である両端以外が合成樹脂の被覆等により電気的に遮断された構造を有している。
【0004】
上記のような従来のICタグに対し、基材へのICチップの搭載と、ブリッジ加工を一体に行うことができるストラップと呼ばれるものを用いるICタグが開発されつつある。ストラップは、ブリッジ機能を有する短冊状基材にICタグ及び一対のICチップの拡大電極が搭載された構造となっている。従って、ストラップの拡大電極をコイル状アンテナ両端の端子と接続されるように配置することにより、ICチップの搭載と、アンテナとICチップの電気的な接続を同時に行うことが可能となる。また、拡大電極を有するストラップは一定のサイズを有するため、微細なICチップを基材へ精度高く搭載することに比べて、容易に基材へ搭載することができるため、生産性が向上するというメリットも存在する。
【0005】
しかしながら、上記のようなストラップを有するICタグは、構造上以下のような不都合が存在する。ICチップの拡大電極を有するストラップにてアンテナ両端の端子間を接続すると、ストラップとアンテナとが交差する状態となり、ストラップの拡大電極とアンテナとが近接する状態で配置されることとなる。従って、ストラップを有するICタグはICチップの拡大電極とアンテナとの直接の接触、すなわちショートの可能性が高い構造を有しているという不都合が存在する。
【特許文献1】特開2007−157025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、ICチップとその拡大電極を備えたストラップとアンテナ端子とが確実に電気的接続され、かつ拡大電極とアンテナとのショートを確実に防ぐことができるICタグの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
シート状基材の合わせ面側にコイル状アンテナ及びその両端の一対の平面状アンテナ端子が積層されたアンテナシートと、
ICチップが搭載され、ICチップの左右両側から延出する一対の平面状拡大電極が短冊状基材の合わせ面側に積層され、かつアンテナシートに重畳されるストラップと、
アンテナシート及びストラップ間に充填される接着剤層と
を備えるICタグであって、
上記ストラップがコイル状アンテナと交差し、かつ一対の拡大電極と一対のアンテナ端子が合致するよう配設されており、
上記アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に合わせ面側に突出する凸状部が形成され、
この凸状部により一対のアンテナ端子と一対の拡大電極とが直接接触することを特徴とするICタグである。
【0008】
上記ICチップは、短冊状基材の合わせ面側に配設し、ICチップとアンテナシートとの間に接着剤層を設けるとよい。また、上記凸状部は、アンテナシート背面側からの押圧により形成するとよい。また、上記接着剤層は、ストラップよりも広い範囲に設けるとよい。さらには、上記アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に複数の凸状部を散点的に形成するとよい。
【0009】
なお、本発明において、「アンテナ端子領域」とは、アンテナシートのアンテナ端子及びその周辺部分をいい、「拡大電極領域」とは、ストラップの拡大電極及びその周辺部分をいう。また、「コイル状」とは、平面的に配設された渦巻き状を意味する。また、「シート状基材」は、生産途中では帯状の連続体であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のICタグによれば、アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に合わせ面側に突出する凸状部が形成されていることから、この凸状部が接点となり、アンテナ端子と拡大電極との電気的接続を確実にすることができる。また、当該ICタグによれば、この凸状部が形成されていることでストラップがアンテナシートに対し相対的に押し上げられ、接着剤層が厚くなることによりアンテナと拡大電極との接触を確実に防ぎ、つまり、拡大電極とアンテナとの接触によるショートを防ぐことができる。
【0011】
また、ICチップがストラップの短冊状基材の合わせ面側に配設され、ICチップとアンテナシートとの間に接着剤層が設けられているICタグによれば、ICチップがストラップの短冊状基材で被覆されているため、ICチップが外れにくくなり、さらに外部から付加される圧力、熱、曲げ等に対する耐久性が向上する。また、当該ICタグによれば、ICチップとアンテナシートとの間に接着材層が設けられていることから、アンテナシートとICチップとの接触を確実に防ぐことができるため、ICチップの破損を防ぐことができる。
【0012】
また、凸状部がシート状基材背面側から押圧することによって設けられているICタグによれば、シート状基材の表面に配設された剥離しやすいアンテナを保護しつつ凸状部が形成されているため、ICタグの製品歩留まりを向上することができる。
【0013】
さらに接着剤層がストラップよりも広い範囲に設けられているICタグによれば、ストラップとアンテナとの接触をより確実に防ぐことができるとともに、ストラップとアンテナシートとの接着性が高い構造とすることができる。
【0014】
また、アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に複数の凸状部が散点的に形成されているICタグによれば、アンテナ端子と拡大電極との電気的接続性がより確実になるとともに、散点的な複数の凸状部によりアンテナと拡大電極間がより広げられると共にこの間に流入する接着剤が増加するため、アンテナと拡大電極との接触をより確実に防ぐことができ、ショートを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るICタグを示す模式的平面図及びA−A線矢視部分断面図、図2(a)〜(f)は図1のICタグの製造工程を示す模式的部分断面図、図3は図1のICタグの製造装置を示す模式図、図4は図3の製造装置のプレスアンビル周辺を示す部分拡大図、図5は図1のICタグとは異なる実施形態に係るICタグを示す模式的部分断面図、図6は図1及び図5のICタグとは異なる実施形態に係るICタグを示す模式的部分断面図である。
【0016】
図1のICタグ1は、アンテナシート2と、ストラップ3と、接着剤層4とを備えている。
【0017】
アンテナシート2は、シート状基材5と、このシート状基材5の合わせ面側に積層されるコイル状アンテナ6及び一対のアンテナ端子7とを備えている。なお、このアンテナシート2におけるアンテナ端子7及びその周辺部分をアンテナ端子領域8とする。
【0018】
シート状基材5は、略長方形状のシート体である。このシート状基材5のサイズとしては、ICタグ1の使用用途等に応じて適宜設定することができるが、例えばICタグとして規格化され広く流通しているサイズである縦54mm、横85.6mmの大きさに設計されている。また、シート状基材5の厚さとしては、20μm以上100μm以下が好ましい。シート状基材5の厚さを上記範囲とすることにより、後述するアンテナシート2の背面からの押圧による凸状部9の形成を容易に行うことができる。
【0019】
シート状基材5の材質としては、一定の弾力性及び可塑性を有し、通信のための電波を妨げないものであれば特に限定されないが、加工性、携帯性、経済性等の観点から、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂が好ましい。
【0020】
コイル状アンテナ6は、シート状基材5の表面外周縁部に沿って渦巻き状かつ略等間隔に配設されている。コイル状アンテナ6の巻数は、通信に使用する電波の周波数、強度等によって適宜設定される。
【0021】
一対のアンテナ端子7は、コイル状アンテナ6の両端に配設されている。このアンテナ端子7は所定形の平面状に形成されている。一対のアンテナ端子7は、渦巻き状に配設されるコイル状アンテナ6の束の内側と外側に配設されるが、後述するストラップ3の配置を考慮し、シート状基材5の短辺中央の外部に一方のアンテナ端子7が配設され、コイル状アンテナ6を挟んでその内側に他方のアンテナ端子7が配設される。この際、外側に配設されるアンテナ端子7のスペースを確保するため、コイル状アンテナ6は、両アンテナ端子7が配設される側のシート状基材5の短辺中央において、シート状基材5の中心側に窪んだ平面形状(凹字状)を有する渦巻き状に配設される。さらには、当該コイル状アンテナ6は、後述するICチップ11を配置するスペースを確保するため、渦状に巻かれて配設されるコイル状アンテナ6の中心側に窪んだ部分の中央が広げられた状態で配設されている。
【0022】
上記コイル状アンテナ6及びアンテナ端子7の材料としては、電導性を有すれば特に限定されるものではなく、例えば銀、黒鉛、塩化銀、銅及びニッケル等を用いることができる。当該コイル状アンテナ6及びアンテナ端子7は、上記材料からなる伝導性インクを、シート状基材5の表面に所定の渦巻き状パターンに印刷することによって配設される。また、印刷以外にも、銅エッチング箔、ディスペンス、金属箔貼り付け、金属の直接蒸着、金属蒸着膜転写、導電高分子層形成などの方法によりコイル状アンテナ6及びアンテナ端子7を配設することができる。
【0023】
当該コイル状アンテナ6によれば、外部のリーダー・ライターからの電波を受信し、ICチップ11にて必要な処理が行われた後、処理結果をリーダー・ライターへ送信することができる。
【0024】
ストラップ3は、帯状の形状を有し、コイル状アンテナ6と交差する方向(一対のアンテナ端子7間に架設される方向)に配設され、アンテナシート2表面に重畳されている。また、ストラップ3は、短冊状基材10、ICチップ11及び一対の拡大電極12を備えている。
【0025】
短冊状基材10は、略長方形状のシート体である。短冊状基材10のサイズとしては、シート状基材5やコイル状アンテナ6の形状や大きさ等を考慮して適宜設定されるが、本実施例においては縦約3mm、横約5mmとされている。短冊状基材10の厚さとしては50μm以上250μm以下に設けられることが好ましい。短冊状基材10の厚さが上記範囲未満であれば、ICチップ11の保護が不十分となり、上記範囲を超えると、接着のための押圧の際の圧力が十分にかからないなど加工性が劣ってしまうなどの不都合が生じる。
【0026】
短冊状基材10の材質としては、合成樹脂や加工紙等が用いられ、特に、耐熱性、耐候性の優れたポリスルホン(PSF)、ポリカーボネート、ポリアリレート等のエンジニアリングプラスチックが好適に用いられる。また、短冊状基材10の素材としては、有色無色を問わないが、本実施例においては接着剤層4の視認性に優れる無色透明な材質を用いている。
【0027】
ICチップ11は、短冊状基材10の合わせ面側(裏面側)中央に搭載される。このように、ICチップ11が短冊状基材10の合わせ面側に配設されることで、ICチップ11が短冊状基材10で被覆され、その結果、ICチップ11が外れにくくなり、さらに外部から付加される圧力、熱、曲げ等に対する耐久性が向上する。
【0028】
ICチップ11の具体的構造は、その用途に応じて公知のものが適宜選択される。ICチップ11のサイズとしては、ICタグ1の用途等に対応した容量等によって異なるが、本実施例においては、一般的な大きさのものとして縦横約1mmの正方形状のサイズを有する。
【0029】
拡大電極12は、略正方形の平面状に形成されている。一対の拡大電極12は、ICチップ11の端子と電気的に接続されており、短冊状基材10の合わせ面側(ICチップ11が配設される面と同じ面側)に積層され、ICチップ11から短冊状基材10の長手方向かつ左右両方向に延出している。一対の拡大電極12は、アンテナシート2の一対のアンテナ端子7と合致する位置(接着剤層4を介して対面する位置)に配置される。
【0030】
拡大電極12の材料としては、電導性材料である銀、黒鉛、塩化銀、銅、ニッケル等を用いることができる。この拡大電極12は、伝導性インクの印刷、銅エッチング、ディスペンス、金属箔貼り付け、金属の直接蒸着、金属蒸着膜転写、導電高分子層形成等により形成することができる。
【0031】
接着剤層4は、重畳されるアンテナシート2とストラップ3との間に充填されている。接着剤層4は、絶縁性接着剤から形成されている。この絶縁性接着剤としては、例えば、ホットメルト系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、弾性接着剤、ウレタン系接着剤等を用いることができる。絶縁性接着剤の反応型としては、例えば湿気硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等の反応型の絶縁性接着剤を用いることができる。特に、湿気硬化型のホットメルト系接着剤が好適に用いられる。
【0032】
接着剤層4は、少なくともストラップ3の合わせ面全面に設けられており、ストラップ3よりも広い範囲に設けられるとよい。このように、接着剤層4をストラップ3より広く設けることにより、コイル状アンテナ6とストラップ3との間に確実に接着剤層4が存在するため、コイル状アンテナ6とストラップ3との電気的な遮断を確実に行うことができる。
【0033】
アンテナシート2のアンテナ端子領域8には、合わせ面側に突出する複数の凸状部9が散点的に配置されている。この複数の凸状部9は、略正方形格子パターンで配設されている。
【0034】
凸状部9の形状としては、突出方向の先端側に向かって断面積が縮小するドーム状が好ましく、先端が半球状の略円錐形が特に好ましい。凸状部9がこのような形状を有することにより、成型の際に、凸状部9上に設けられた接着剤層4の流出が確実かつ効果的に行われ、アンテナ端子7と拡大電極12を一層確実性高く接続できる。
【0035】
凸状部9のドット径としては、10μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下が特に好ましい。また、複数の凸状部9のドット間距離としては、0.3mm以上2mm以下が好ましく、0.6mm以上1.2mm以下が特に好ましい。なお、凸状部9の形状としては、略円錐状に限定されず、例えば畝状、十字状、櫛形状等、様々な形状の凸状形状を設けることができる。
【0036】
凸状部9は、同様の形状の凸状部を有するプレス型を用い、アンテナシート2背面側からの押圧により形成されている。このように形成された複数の凸状部9によれば、凸状部9上に設けられた接着剤層4が流出し、各アンテナ端子7がストラップ3に設けられた各拡大電極12と確実に接触し、ストラップ3とコイル状アンテナ6とが確実に電気的な接続がされている状態とすることができる。
【0037】
当該ICタグ1は、複数の凸状部9が接点となり、アンテナ端子7と拡大電極12との電気的接合を確実にすることができる。また、当該ICタグ1は、複数の凸状部9によりストラップ3とアンテナシート2の間隔が押し広げられることで隙間が生じ、この状態でストラップ3が支持されることとなる。この生じた隙間に接着剤層4が流入し、アンテナシート2のコイル状アンテナ6とストラップ3との間隔が接着剤層4を介して保持されることとなる結果、コイル状アンテナ6とストラップ3が備える拡大電極12との電気的な遮断を確実に行うことができる。すなわち当該ICタグ1におけるショートを確実に防ぐことができる。
【0038】
次に、図2に基づいて当該ICタグ1の製造方法について説明する。当該製造方法は、コイル状アンテナ6が配設されたシート状基材5における一対のアンテナ端子7間を含む表面に電気絶縁性を有する絶縁性接着剤からなる接着剤層4を設ける接着剤塗布工程(図2(a)及び(b))と、一対のアンテナ端子7と一対の拡大電極12とが接着剤層4を介して対面するように、接着剤層4の表面にストラップ3を配置するストラップ配置工程(図2(c)及び(d))と、アンテナシート2とストラップ3とを加圧して接着させると共に凸状部9を成型する加圧プレス工程(図2(e)及び(f))とから構成される。なお、図2(f)は図2(e)の二点鎖線部分の拡大図である。以下にこの内容について詳説する。
【0039】
接着剤塗布工程(図2(a)及び(b)参照)では、アンテナシート2の表面の一対のアンテナ端子7間を含む接着剤配設領域13に電気絶縁性を有する絶縁性接着剤を塗布する。
【0040】
接着剤配設領域13は、塗布された接着剤からなる接着剤層4の表面に配設するストラップ3を含有するように、ストラップ3よりも広い面積に略長方形状に設けられている。本実施例では、ストラップ3の面積に対して縦横約1mm拡張した範囲を接着剤配設領域13の面積としている。この絶縁性接着剤としては、前述したように熱可塑性であって、かつ湿気硬化型のホットメルト系接着剤が好適に用いられる。
【0041】
次に、ストラップ配置工程(図2(c)及び(d)参照)では、接着剤層4の表面にストラップ3を配置する。
【0042】
ストラップ3は、ICチップ11及び拡大電極12が設けられた面が裏面(接着剤層4と接する面)となる向きで配置される。また、シート状基材5表面に配設されたコイル状アンテナ6の両端に設けられた各アンテナ端子7と、ストラップ3に配設された各拡大電極12とが対面するように、接着剤層4の表面にストラップ3を配置する。接着剤配設領域13(図2(a)参照)は、ストラップ3よりも広い範囲に設けられているため、ストラップ3はその全面に渡って、接着剤層4と接する状態となる。
【0043】
次に、アンテナシート2とストラップ3とを加圧して接着させるとともに凸状部9を成型する加圧プレス工程(図2(e)及び(f)参照)を実施する。
【0044】
この工程に用いる一対のプレス型のうち、アンテナシート2と当接する第1プレス型表面14には、各アンテナ端子領域8に対面する位置に、ドット形状に形成された複数の凸形成部15を有する。当該凸形成部15により、アンテナ端子領域8に複数の凸状部9を設けることができる。
【0045】
凸形成部15のサイズとしては、アンテナ端子領域8に形成する凸状部9のサイズに応じて適宜設定される。本実施例では、アンテナ端子領域8に高さ及び直径が50μm、ピッチ間距離が1mmの凸状部9を形成できるように、高さ300μm、直径100μm、ピッチ間距離を1mmとした凸形成部15を第1プレス型表面14に複数設けている。
【0046】
また、第1プレス型表面14に設けられる凸形成部15の形状としては、本例のドット形状に代えて、畝状、十時状、櫛形状等、様々な形状の凸部を形成することができる。
【0047】
なお、凸形成部15は、突出方向の先端側に向かって断面積が縮小するように(ドーム状に)形成してあるとよい。凸形成部15がこのような形状を有することにより、アンテナ端子領域8に設けられる凸状部9も先端側に向かって断面積が縮小するような形状に成型することができる。
【0048】
ストラップ3側の第2プレス型表面16は後述するように超音波振動によって振動するように設定されており、略平坦状に形成されている。
【0049】
なお、一対のプレス型において、アンテナシート2の突出変形を容易にすると共に、接着剤層4の絶縁性接着剤の流動性を高めるために、その加圧表面を加熱するための加熱ヒーターを装備することもできる。
【0050】
このように構成された第1プレス型表面14と第2プレス型表面16との間に、接着剤層4の表面にストラップ3が配設されているアンテナシート2を挟み、一対のプレス型に一定圧力を作用させることによって、アンテナシート2とストラップ3とを加圧する。
【0051】
上記の加圧プレス工程によれば、アンテナシート2における各アンテナ端子7の一部を第1プレス型表面14の凸形成部15により突出変形させることができる。すなわち、第1プレス型表面14に設けた凸形成部15に対応して、アンテナシート2及び各アンテナ端子7に合わせ面側に突出したドット形状の凸状部9を形成することができる。従って、コイル状アンテナ6とストラップ3とは、このドット形状の凸状部9の頂部が接点となって直接接触し、この凸状部9の周辺部分では、ストラップ3が凸状部9によって押し上げられることにより、コイル状アンテナ6とストラップ3の間に隙間Sが形成されることとなる。
【0052】
このように、アンテナ端子領域8に合わせ面側に突出した複数の凸状部9が形成されることで、アンテナ端子7に設けられた凸状部9と拡大電極12との間の絶縁性接着剤が流出し、凸状部9が拡大電極12に当接され、アンテナ端子7と拡大電極12との電気的な接続を確実性高く実現できる。
【0053】
さらには、図2(f)に示すように凸状部9が形成されることで、コイル状アンテナ6とストラップ3との間が押し広げられ、隙間Sが形成される。この隙間Sに絶縁性接着剤が流入してくることにより接着剤層4を厚くすることができ、コイル状アンテナ6と拡大電極12との接触を確実に防ぐことができ、ICチップ11のショートを防ぐことができる。
【0054】
また、ストラップ3は、全面を接着剤層4を介してアンテナシート2と対面している。このため、ストラップ3は、その表面全体に渡ってアンテナシート2に強固に接着されることとなる。特に、上述のように、接着剤塗布工程における接着剤配設領域13は、ストラップ3全面を含み、ストラップ3より広く形成されているため、ストラップ3とアンテナシート2とを当接させて加圧すると、余剰の絶縁性接着剤がストラップ3の外周側面に回り込んで付着する。そのため、ストラップ3の表面だけでなく、ストラップ3の外周側面も接着剤層4となり、ストラップ3は非常に強固にアンテナシート2に接合される。
【0055】
さらに、絶縁性接着剤としてホットメルト系接着剤を使用しているため、第1プレス型表面14及び第2プレス型表面16によって加圧する際、加圧によって生じた熱によりアンテナ端子領域8における凸状部9と拡大電極12との間の接着剤層4の流動性を高めることができる。このため、アンテナ端子領域8における凸状部9と拡大電極12との間の絶縁性接着剤を確実性高く流出させ、両者間の電気的な接触を確実性高く実現できる。また、プレス型加圧表面に加熱ヒーターを装備することによっても同様の効果を得ることができる。
【0056】
またさらに、当該絶縁性接着剤として湿気硬化型のものを用いた場合、上記加圧プレス工程を実施した後の、作成したICタグ1の保管中等に、ストラップ3の接合状態を高めることができる。
【0057】
次に、ストラップ3をアンテナシート2に接合するためのストラップ接合装置21について、図3及び図4により説明する。なお、ストラップ3をアンテナシート2に接合する手順については、図2に示し上記したとおりである。ストラップ接合装置21は、第1ロール22、第2ロール23、第3ロール24、第4ロール25、接着剤塗布装置26、ストラップ搬送コンベア27、プレスアンビル28及び接合ヘッド29を主に備えている。
【0058】
第1ロール22は、帯状に連続したアンテナシート2を巻いた状態で保持し、回転することにより帯状に連続したアンテナシート2を搬出させるためのものである。第2ロール23は、搬出されてきた帯状に連続したアンテナシート2をその表面に接着剤を塗布するために支えると共に、回転により送り出すものである。第三ロール24は、接着剤が塗布された帯状に連続したアンテナシート2の表面にストラップ3を配置するためにアンテナシート2を支えると共に、ストラップ3が配置されたシート状基材5を回転により送り出すものである。第四ロール25は、ストラップ3が加圧により接着された帯状に連続したICタグ1を巻き取るものである。
【0059】
プレスアンビル28は、アンテナ端子7と拡大電極12とが対面する状態でストラップ3を配設した帯状に連続したアンテナシート2を保持し、圧着成型するための固定台となるものである。
【0060】
プレスアンビル28は、略円柱形状をなすローラー形状を有し、その軸を中心に回転可能に構成されている。プレスアンビル28は、ストラップ3が配置された帯状に連続したアンテナシート2を、外表面で保持するように構成される。
【0061】
プレスアンビル28の外周面には、アンテナシート2が保持される際の各アンテナ端子7に対面する位置に複数の凸形成部30が配設されている。この凸形成部30は、プレスアンビル28の外周全周に渡って配設されている。当該凸形成部30によって、アンテナシート2に配設されたコイル状アンテナ6のアンテナ端子7に複数の凸状部9を形成することができる。
【0062】
接合ヘッド29は、先端に超音波振動によって振動する加圧面31を有している。接合ヘッド29は、プレスアンビル28に対して法線方向の向きに固定配置され、加圧面31が、プレスアンビル28の各凸形成部30の突出表面がなす最外周表面に対して、所定の間隔を設けて対面する位置に配設される。加圧面31とプレスアンビル28との間隔は、設計されるICタグの厚さによって適宜調整される。この間隔で、ICタグが挟圧され、最終的なICタグの厚さとなる。
【0063】
当該接合ヘッド29がこの位置に固定配置されていることで、プレスアンビル28を回転させることによって、プレスアンビル28の外周面と接合ヘッド29の加圧面31間にストラップ3が配置されたアンテナシート2が挟み込まれ、押圧により両者を接着させることができる。
【0064】
上記接合ヘッド29の上記加圧面31により、ストラップ3の全面が等しい圧力で加圧されるため、ストラップを確実性高く接合できるとともに、複数の凸状部9を均等な形状に形成することができる。
【0065】
また、接合ヘッド29の加圧面31は、ストラップ3との摩擦を抑制するため、表面処理であるダイヤモンドコート処理が施されてもよい。これに代えて、加圧面31にテフロン(登録商標)コート等の表面処理を施すことや、タングステンカーバイトよりなる超硬チップを加圧面31の表面に配設することも有効である。あるいは、接合ヘッド29の先端に回転ローラを設け、その回転ローラの外周面を加圧面を加圧面とすることもよい。
【0066】
次に、ストラップ接合装置21を用いたICタグ1の作成手順についての説明をする。
【0067】
第1ロール22には、帯状に連続したアンテナシート2が巻かれている。この第1ロール22及びその他のロールが回転することにより帯状に連続したアンテナシート2が搬送される。この帯状に連続したアンテナシート2の表面には各アンテナシート2毎に所定の位置にコイル状アンテナ6が配設されている。アンテナシート2のアンテナパターン(コイル状アンテナ6及びアンテナ端子7)は、シート状基材にウェブ搬送の途中に設けた印刷機で印刷することによって設けてもよい。
【0068】
第1ロール22から搬送される帯状に連続したアンテナシート2は、第2ロール23に配送され、第2ロール23と対面する位置に配設された接着剤塗布装置26によって、接着剤配設領域13に絶縁性接着剤が塗布される。
【0069】
絶縁性接着剤が塗布された帯状に連続したアンテナシート2は、第3ロール24の位置に間で搬送された際、ストラップ搬送コンベア27から搬送されるストラップ3を所定の位置に配置される。この際、アンテナ端子7と拡大電極12とが接着剤層4を介して対面するように配置されることとなる。
【0070】
ストラップ3が配置されたアンテナシート2は、プレスアンビル28及び接合ヘッド29によって挟圧される。すなわち、ストラップ3が配置された帯状に連続したアンテナシート2が表面に保持されたプレスアンビル28が軸を中心に回転することによって、固定配置されている接合ヘッド29との間にストラップ3が配置された帯状に連続したアンテナシート2が挟み込まれることとなる。この際、プレスアンビル28と接合ヘッド29の先端の加圧面31は所定の間隔を有しているため、この厚さにまでストラップ3が配置されたアンテナシート2は加圧圧縮され、接着される。
【0071】
さらに、凸形成部30を有するプレスアンビル28と接合ヘッド29とを備える当該ストラップ接合装置21によれば、アンテナシート2上のコイル状アンテナ6の各アンテナ端子7の一部を突出変形させることにより、凸状部9を形成させることができる。凸状部9表面に設けられていた接着剤は、凸状部9頂部表面から流出し、アンテナ端子7とストラップ3の拡大電極12とは凸状部9を介して直接接触する状態となる。また、凸状部9が形成されることにより、凸状部9周囲のコイル状アンテナ6とICチップ11及び拡大電極12との隙間(図2(f)のS)が広げられた状態で保持され、その間に接着剤が流入することで接着剤層4が厚くなり、拡大電極12がコイル状アンテナ6と接触することによって生じ得るショートを確実に防ぐことができる。
【0072】
なお、接合ヘッド29の加圧面31は、プレスアンビル28の外周面に対応する湾曲凹曲面状を有していれるため、ストラップ3の全面を同時に加圧することができる。従って当該装置によれば、ストラップ3を均等に確実性高く接合でき、複数の凸状部9も均等に形成することができる。
【0073】
このように、プレスアンビル28と接合ヘッド29とによってストラップが接合され、かつアンテナ端子7に凸状部9が形成された帯状に連続したICタグは、第4ロール25によって巻き取られる。この後、連続状に連続したICタグは、それぞれ切断することによって個々のICタグとして完成される。
【0074】
図5のICタグ41は、アンテナシート2と、アンテナシート2の表面に重畳されるストラップ43と、アンテナシート2及びストラップ43間に充填される接着剤層4とを備えている。このICタグ41は、複数の凸状部42がストラップ43の拡大電極領域46に形成されている。拡大電極領域46とは、拡大電極44及びその周辺部分である。その他の構成は、上記図1のICタグ1と同様であるため同一番号を付して説明を省略する。
【0075】
当該ICタグ41は、ICタグ1の製造と同様にストラップ43を接着剤層4の表面に配設した後に、ストラップ43表面側から拡大電極領域46に複数の凸部を押圧することによって形成される。この凸部の押圧により、ストラップ43表面側から合わせ面側に向かって、短冊状基材45及び拡大電極44が突出変形し、拡大電極44に凸状部42が形成される。ストラップ接合装置を用いて製造する場合においては、接合ヘッドの加圧面側に凸形成部を設けることによって当該ICタグ41を製造することができる。
【0076】
当該ICタグ41においても、複数の凸状部42の形成により、コイル状アンテナ6と拡大電極44との間隔が広げられた状態で支持され、この間に接着剤層4が確実に流入することでコイル状アンテナ6と拡大電極44との直接の接触を防ぐことができる。すなわち当該ICタグ41によっても、拡大電極44とコイル状アンテナ6とのショートを確実に防ぐことができる。
【0077】
図6のICタグ51は、アンテナシート2と、アンテナシート2の表面に重畳されるストラップ52と、アンテナシート2及びストラップ52間に充填される接着剤層4とを備えている。このICタグ51は、ICチップ11をストラップ52の合わせ面側に配設するのではなく、ストラップ52の表面側(合わせ面と反対側、つまり外側)に配設されている。その他の構成は、上記図1のICタグ1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。
【0078】
拡大電極53は、短冊状基材10の表面側のICチップ11と接続し、ストラップ52を貫通し、合わせ面側に平面状に配設されている。
【0079】
当該ICタグ51においても、凸状部9により拡大電極53とアンテナ端子7との電気的接続が確実にされている。さらには、当該ICタグ51によれば、ICチップ11がストラップ52の表面側に配設されているため、ICチップ11がアンテナシートと接触するのを確実に防ぐことができる。
【0080】
なお、本発明のICタグは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に形成される凸状部は、散点的なものに限定されず、線状、十字状、V字状等のものでも可能であり、上記電気的接続性及び電気的安定性を向上させることができる。
【0081】
また、凸状部をシート基材側及びストラップの拡大電極側両面から設けた形状とすることもできる。このように両側から凸状部を設けることにより、接続端子通しの電気的な接続を確実にすることができると共に、拡大電極とアンテナとの間隔を広げて支持することができるため、拡大電極とアンテナとのショートを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明のICタグは、物理的及び電気的に確実な接続性を有する構造を備え、例えば、運送や流通、倉庫、工場工程管理、荷物の取り扱い等の分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るICタグを示す模式的平面図及びA−A線矢視部分断面図
【図2】(a)〜(f)は図1のICタグの製造工程を示す模式的部分断面図
【図3】図1のICタグの製造装置を示す模式図
【図4】図3の製造装置のプレスアンビル周辺を示す部分拡大図
【図5】図1のICタグとは異なる実施形態に係るICタグを示す模式的部分断面図
【図6】図1及び図5のICタグとは異なる実施形態に係るICタグを示す模式的部分断面図
【符号の説明】
【0084】
1 ICタグ
2 アンテナシート
3 ストラップ
4 接着剤層
5 シート状基材
6 コイル状アンテナ
7 アンテナ端子
8 アンテナ端子領域
9 凸状部
10 短冊状基材
11 ICチップ
12 拡大電極
13 接着剤配設領域
14 第1プレス型表面
15 凸形成部
16 第2プレス型表面
21 ストラップ接合装置
22 第1ロール
23 第2ロール
24 第3ロール
25 第4ロール
26 接着剤塗布装置
27 ストラップ搬送コンベア
28 プレスアンビル
29 接合ヘッド
30 凸形成部
31 加圧面
41 ICタグ
42 凸状部
43 ストラップ
44 拡大電極
45 短冊状基材
46 拡大電極領域
51 ICタグ
52 ストラップ
53 拡大電極
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の合わせ面側にコイル状アンテナ及びその両端の一対の平面状アンテナ端子が積層されたアンテナシートと、
ICチップが搭載され、ICチップの左右両側から延出する一対の平面状拡大電極が短冊状基材の合わせ面側に積層され、かつアンテナシートに重畳されるストラップと、
アンテナシート及びストラップ間に充填される接着剤層と
を備えるICタグであって、
上記ストラップがコイル状アンテナと交差し、かつ一対の拡大電極と一対のアンテナ端子が合致するよう配設されており、
上記アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に合わせ面側に突出する凸状部が形成され、
この凸状部により一対のアンテナ端子と一対の拡大電極とが直接接触することを特徴とするICタグ。
【請求項2】
上記ICチップが短冊状基材の合わせ面側に配設され、ICチップとアンテナシートとの間に接着剤層が設けられている請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
上記凸状部が、アンテナシート背面側からの押圧により形成されている請求項1又は請求項2に記載のICタグ。
【請求項4】
上記接着剤層が、ストラップよりも広い範囲に設けられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載のICタグ。
【請求項5】
上記アンテナシートのアンテナ端子領域又はストラップの拡大電極領域に、複数の凸状部が散点的に形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−128757(P2010−128757A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302261(P2008−302261)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(302031502)株式会社 ハリーズ (16)
【Fターム(参考)】