説明

ICチップ、ICカード、ICカード用端末システム及びICチップ用プログラム

【課題】優先度の高い命令を、効率よく迅速に実行することができるICチップ、ICカード、ICカード用端末システム及びICチップ用プログラムを提供する。
【解決手段】ICチップ(16)は、複数の命令の優先度を予め記憶する優先度記憶手段(15)を有し、複数の命令のうちの何れを実行するかを、各命令の優先度に基づいて選択する優先度選択手段(30)と、優先度選択手段(30)によって選択された命令を実行する命令実行手段(40)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入力されたコマンドを実行するICチップ、ICカード、ICカード用端末システム及びICチップ用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、金融、通信、交通等の分野を中心に、ICカードの普及が進んできており、それに伴いICカードのタスクやコマンドの処理などの迅速化の要望が高まっている(例えば、特許文献1)。特許文献1のICカードは、受信したコマンド(命令)に含まれた複数のタスク(処理)を効率よく行うために、各タスクに優先度をつけてICカード全体の処理の高効率化、迅速化を図っている。
このようなICカードは、端末に差し込んでコマンドやタスクを送受信する接触型ICカードと、リーダライタなどの端末にかざして非接触でコマンドやタスクを送受信する非接触型ICカードとに大別され、サービス内容に応じて使い分けられていた。
【0003】
昨今では、通信機能を有した携帯型ICカード端末機を使った決済サービスが提案され、実用されてきた。このような端末に求められるICカードには、通信サービス向けの接触型ICカード機能と、決済サービス向けの非接触型ICカード機能との両方が必要となる(マルチアプリケーションプラットフォーム)。そのために、ICカードには、少なくとも接触型・非接触型のためのI/Oポートがそれぞれに設けられ、それらのI/Oポートから受信する複数のコマンド(命令)を迅速に処理することが要求されている。
【0004】
一般的に、マルチアプリケーションプラットフォームを採用したICカードのOS(オペレーティングシステム)は、コマンドに対して逐次実行型であった。そのため、複数のI/Oポートを備えたICカードは、入力した複数のコマンド(命令)を、入力した順に実行しており、ある1つのI/Oポートから受信したコマンド(命令)を実行している間は、他のI/Oポートから受信したコマンドを実行することができなかった。
【0005】
買い物の料金支払いなどの決済コマンドを受信するI/Oポートと、電子メールの通信コマンドを受信するI/Oポートとを有した携帯通信端末機の例で説明すると、電子メールの受信中などの通信コマンドを実行中に、商品の決済を実施しようとすると、上述したように、通信サービスのコマンドが終了するまでは、決済のコマンドが実行されないので、商品の支払いなどが即座にできないなどの問題が生じていた。このように、コマンドの処理に制約がある場合などにおいて、コマンド処理のスケジューリングは大変重要となっている。
上述した特許文献1のICカードも、コマンドに含まれた複数のタスク(処理)を効率よく実行するだけであり、前述したような複数のI/Oポートが存在するようなときの、コマンドそのものの処理の効率化には、何ら対処がなされてなかった。
【特許文献1】特開2006−127361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、優先度の高い命令を、効率よく迅速に実行することができるICチップ、ICカード、ICカード用端末システム及びICチップ用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、複数の命令のうちの何れを実行するかを、各命令の優先度に基づいて選択する優先度選択手段(30)と、前記優先度選択手段(30)によって選択された命令を実行する命令実行手段(40)とを備えるICチップ(16)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のICチップ(16)において、前記複数の命令の優先度を予め記憶する優先度記憶手段(15)を備えることを特徴とするICチップ(16)である。
請求項3の発明は、請求項2に記載のICチップにおいて、前記優先度記憶手段(15)は、優先度の追加及び変更が可能であることを特徴とするICチップ。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のICチップ(16)において、前記優先度選択手段(30)に基づいて選択された命令の実行状態を管理する実行管理手段(41)を備えることを特徴とするICチップ(16)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のICチップ(16)において、複数の命令を当該ICチップ(16)に入力する複数の命令入力手段(12)を備え、前記優先度選択手段(30)は、前記命令入力手段(12)で入力した複数の命令の実行順序を決定することを特徴とするICチップ(10)である。
請求項6の発明は、請求項5に記載のICチップ(16)において、前記複数の命令入力手段(12)は、前記命令を接触して入力する接触入力手段(12−1)、及び、前記命令を非接触で入力する非接触入力手段(12−2)であることを特徴とするICチップ(16)である。
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載のICチップ(16)において、前記命令入力手段(12)から入力した前記複数の命令を保持する命令保持手段(20)を備えることを特徴とするICチップ(16)である。
請求項8の発明は、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のICチップ(16)において、前記命令実行手段(40)は、実行中の命令を中断する命令中断手段(42)と、前記命令中断手段(42)で中断した前記命令の、中断するまでの実行内容を保存する中断記憶手段(13)とを備えることを特徴とするICチップ(16)である。
請求項9の発明は、請求項8に記載のICチップ(16)において、前記命令実行手段(40)は、前記命令の実行中に、優先度の高い新たな命令が入力されたときは、前記命令中断手段(42)で実行中の前記命令を中断し、その中断するまでの実行内容を前記中断記憶手段(13)で保存して、前記新たな命令を優先的に実行することを特徴とするICチップ(16)である。
【0008】
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のICチップ(16)と、ICカード基体(17)とを備えるICカード(10)である。
【0009】
請求項11の発明は、請求項10に記載のICカード(10)と、前記複数の命令を発行し、前記ICカード(10)に出力する複数の命令発行手段(104)とを備えるICカード用端末システムである。
【0010】
請求項12の発明は、ICチップ(16)を、複数の命令のうちの何れを実行するかを、各命令の優先度に基づいて選択させる優先度選択手段(S203)と、前記優先度選択手段(S203)によって選択された命令を実行させる命令実行手段(205)として機能させるICチップ用プログラムである。
請求項13の発明は、請求項12に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記複数の命令の優先度を予め記憶する優先度記憶手段を備えることを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項14の発明は、請求項13に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記優先
度記憶手段は、優先度の追加及び変更が可能であることを特徴とするICチップ用プログラム。
請求項15の発明は、請求項12から請求項14までのいずれか1項に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記優先度選択手段(S203)に基づいて選択された命令の実行状態を管理する実行管理手段(S204)を備えることを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項16の発明は、請求項12から請求項15までのいずれか1項に記載のICチップ用プログラムにおいて、複数の命令を前記ICチップ(16)に入力する複数の命令入力手段(S201)を備え、前記優先度選択手段(S203)は、前記命令入力手段(S201)で入力した複数の命令の実行順序を決定することを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項17の発明は、請求項16に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記複数の命令入力手段(S201)は、接触端子を介して前記命令を入力する接触入力手段、及び、前記命令を非接触で入力する非接触入力手段を備えることを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項18の発明は、請求項16又は請求項17に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記命令入力手段(S201)から入力した前記複数の命令を保持する命令保持手段(S202)を備えることを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項19の発明は、請求項18又は請求項18に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記命令実行手段(S205)は、実行中の命令を中断する命令中断手段(S207)と、前記命令中断手段(S207)で中断した前記命令の、中断するまでの実行内容を保存させる中断記憶手段(S207)とを備えることを特徴とするICチップ用プログラムである。
請求項20の発明は、請求項19に記載のICチップ用プログラムにおいて、前記命令実行手段(S205)は、前記命令の実行中に、優先度の高い新たな命令が入力されたときは、前記命令中断手段(S207)で実行中の前記命令を中断し、その中断するまでの実行内容を前記中断記憶手段(S207)で保存して、前記新たな命令を優先的に実行(S205)することを特徴とするICチップ用プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)複数の命令を優先度に基づいて選択し、選択された命令を実行するので、効率よく迅速に命令を処理することができる。
(2)複数の命令の優先度を予め記憶しているので、記憶された優先度に基づいて、効率よく命令を選択することができる。
(3)優先度の追加及び変更が可能であるので、新たな命令の優先度を追加したり、命令の優先度を変更したりすることができる。
(4)優先度選択手段に基づいて選択された命令の実行を管理するので、各命令の処理待ち順序や、命令の実行状態を容易に把握することができる。
【0012】
(5)外部から複数の命令を入力し、その入力した複数の命令の実行順序を決定するので、優先度に応じて効率よく迅速に命令を実行することができる。
(6)複数の命令を、接触及び非接触で入力するので、命令を多種多様な方法で命令を入力することができる。
(7)入力した複数の命令を保持するので、実行前の命令を管理することができ、命令が実行されなかったなどの実行不良を防ぐことができる。
(8)実行中の命令を中断し、その命令の、中断するまでの実行内容を保存するので、中断した命令を、中断した時点から再び実行することができる。
(9)命令の実行中に、優先度の高い新たな命令が入力されたときは、実行中の命令を中断し、その中断するまでの実行内容を保存して、新たな命令を優先的に実行するので、優
先度の高い命令を常に最優先で実行することができ、また、新たな命令の実行後に、中断した命令を中断した時点から実行することができる。
【0013】
(10)ICカードは、ICチップ及びICカード基体を備えているので、多種多様の端末や装置に搭載するなど、ICチップの使用範囲を拡大することができる。
(11)ICカード用システムは、ICカードと、複数の命令を発行し、ICカードに出力する複数の命令発行手段とを備えているので、命令発行手段からICカードへと出力された複数の命令を、優先度を付けて実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、優先度の高い命令を、効率よく迅速に実行することができるICチップ、ICカード、ICカード用端末システム及びICチップ用プログラムを提供するという目的を、優先度に基づいて命令を選択する優先度選択手段と、選択された命令を実行する命令実行手段とをICチップに設けることにより実現する。
【実施例1】
【0015】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明によるICカード用端末システム機の実施例1を示す図である。図2は、携帯通信端末機に装着されたICカードの動作フローを示す図である。
【0016】
本実施例のICカード端末システムに用いられるICカード10は、図1に示すように、CPU11、I/Oポート12、RAM13、ROM14、EEPROM15、命令保持部20、優先度選択部30及び命令実行部40を有したICチップ16を、ICカード基体17に備えている。ICカード10は、携帯通信端末機100に装着され、携帯通信端末機100に設けられた電話などの通信機能や電子マネーシステムを使用するのに用いられる。具体的には、認証コマンドをICカード10で実行させることで、携帯通信端末機100の通信機能の使用可否の認証を確認したり、決済コマンドを実行させることで、電子マネーシステムの決済を実施したりすることができる。なお、各コマンド(命令)には、それぞれ、複数のタスク(処理)が含まれており、例えば、認証コマンドは、認証データの読み出しや、確認などのタスクが含まれている。
CPU11は、ICカード10の各部を統括制御する制御回路部である。
I/Oポート12は、携帯通信端末機100から複数のコマンドを入力し、各コマンドの実行結果を携帯通信端末機100に出力する入出力部であり、接触端子で入出力する接触式のI/Oポート(接触入力手段)12−1と、非接触で入出力するI/Oポート(非接触入力手段)12−2とを有している。本実施例では、後述の接触式命令通信部102から発行される認証コマンドが端末機I/Oポート104−1を介して、I/Oポート12−1に、また、非接触式命令通信部103から発行される決済コマンドが端末機I/Oポート104−2を介して、I/Oポート12−2に入力される。
【0017】
RAM13は、CPU11の処理の作業領域として使用される揮発性メモリであり、後述の命令実行部40で中断された中断命令内容などが保存される。
ROM14は、ICカード10のOS(オペレーティングシステム)などの基本ソフトウェアがインストールされた読み出し専用の不揮発性メモリである。本実施例では、OSだけでなく、認証コマンドを実行するアプリケーションA、及び、決済コマンドを実行するアプリケーションBもインストールされている。
EEPROM15は、書き換え自在な不揮発性メモリであり、後述の、命令保持部20のコマンドや、優先度選択部30の優先度リストなどが保存される。
【0018】
命令保持部20は、携帯通信端末機100からI/Oポート12−1及びI/Oポート12−2で入力した複数のコマンドを保持し、それを管理する回路であり、入力したコマ
ンドを、CPU11を介してEEPROM15に保存させる(命令保持手段)。
優先度選択部30は、命令保持部20で管理している優先度リストに基づいて、実行すべきコマンドを選択する回路である。なお、優先度リストは、使用されるコマンドの優先度を予め決定するために使用され、EEPROM15に保存されており(優先度記憶手段)、例えば、表1に示すようなリストである。また、本実施例では説明を明確にするために、認証コマンド及び決済コマンドの2種類のコマンドの例で説明するが、これに限定されるものではない。また、優先度リストの内容は、アプリケーションやコマンドの追加などにより、その内容を変更することができる。ここで、電子マネーシステムの決済は、あらゆる場面で即座に処理されるべきものであるので、表1に示すように、通信の認証コマンドよりも決済コマンドの優先度が高いものと設定される。
【0019】
【表1】

【0020】
命令実行部40は、実行管理部41及び命令中断部42を有し、優先度選択部30で選択されたコマンドを実行する回路である。
実行管理部41は、命令保持部20で管理されるコマンドすべての実行状況を管理する回路であり、例えば、表2に示すような実行管理表で管理されている。なお、表2に示す実行管理表は、「実行優先度」、「コマンド種類」、及び、「コマンドの状態」の3項目で構成されている。実行管理表の「実行優先度」は、表1の優先度リストに基づいて決定される実行順序を示し、「1」が最優先となる。また、「コマンド情報」は、コマンドを実行するアプリケーションの種類(A又はB)とコマンド名(認証コマンド又は決済コマンド)を示し、「コマンドの状態」は、コマンドの実行状態を示している。
【0021】
【表2】

【0022】
命令中断部42は、命令の実行中に優先度の高い新たな命令がICカード10に入力されたときに、その新たな命令を最優先で実行させるために、実行中の命令を中断させる回路である。中断された命令は、RAM13に保存される(中断記憶手段)。
【0023】
携帯通信端末機100は、端末機CPU101、接触式命令通信部(命令発行手段)102、非接触式命令通信部(命令発行手段)103及び端末機I/Oポート104を有した携帯式のICカード端末機である。
端末機CPU101は、携帯通信端末機100の各部を統合制御する制御回路である。
接触式命令通信部102は、携帯通信端末機100の通信機能の登録IDを確認する認証コマンドを、ICカード10に発行する通信部である。例えば、携帯通信端末機100の通信機能を使用するときに、認証コマンドを発行し、ICカード10により認証コマンドが実行され、確認されたら、携帯通信端末機100の通信機能を使用することができる。
【0024】
非接触式命令通信部103は、商品などの購入時の決済に使用される決済コマンドをI
Cカード10に発行する通信部である。非接触式命令通信部103は、近距離用(最大で1m程度)の送受信アンテナ103−1と受信データ処理部103−2を備え、送受信アンテナ103−1により非接触で後述のリーダライタ110から、決済コマンドを含んだ決済情報を電波として受信する。受信した電波から受信データ処理部103−2により決済コマンドを抽出し、ICカード10へと決済コマンドを入力させ、実行させる。なお、ICカード10における決済コマンドの実行結果は、非接触式命令通信部103を介してリーダライタ110へ送信することにより、即座に決済の結果を伝達することができる。
【0025】
端末機I/Oポート104は、接触式命令通信部102の認証コマンドをICカード10に出力し、そのコマンドの実行結果を入力する端末機I/Oポート104−1と、非接触式命令通信部103の決済コマンドをICカード10に出力し、そのコマンドの実行結果を入力する端末機I/Oポート104−2とを備える。
リーダライタ110は、商品購入時などの決済情報を非接触式命令通信部103に電波で送信し、また、ICカード10の決済処理の結果を非接触式命令通信部103から受信する装置である。なお、リーダライタ110は、小売店などの会計に設置されており、商品などの購入時に、携帯通信端末機100の送受信アンテナ103−1をリーダライタ110にかざすことにより、決済コマンドをICカード10に入力することができる。
【0026】
次に、携帯通信端末機100に装着されるICカード10の動作について説明する。
携帯通信端末機100は、図2に示すように、使用者により通信機能が使用されようとすると(S200)、ICカード10に記録されている認証コードを確認するために、接触式命令通信部102から認証コマンドを発行し、端末機I/Oポート104を介してICカード10へ出力する。
認証コマンドがICカード10に入力されたら(S201)、ICカード10は、入力された認証コマンドを命令保持部20によりEEPROM15に保存する(S202)。
続いて、ICカード10は、入力された認証コマンドの優先度を、表1の優先度リストに基づいて確認し(S203)、表2に示すように、実行管理部41の実行管理表に登録する(S204)。次に、登録された認証コマンドを、ROM14にインストールされたアプリケーションAで実行する(S205)。認証コマンドを実行することで、表3に示すように、実行管理表の「コマンドの状態」は「実行待ち」から「実行中」へと変わる。
【0027】
【表3】

【0028】
認証コマンドの実行中に、その認証コマンドよりも優先度の高い決済コマンドが、非接触式命令通信部103からI/Oポート12−2を介して入力されたとき(S206、Yes)は、ICカード10は、実行中の認証コマンドを中断し、中断までの実行内容をRAM13に保存する(S207)。次に、表4に示すように、実行管理部41により実行管理表の「コマンドの状態」の欄が、「実行中」から「実行中断」へと変更され、認証コマンドの「実行優先度」が「2」に更新され、また、「実行優先度」の「1」に、決済コマンドが新たに登録される(S204)。
なお、仮に、新たに入力されたコマンドが、認証コマンドよりも優先度が低い場合は(S206、No)、認証コマンドの実行は中断されることなく認証コマンドを終了させる(S208)。
【0029】
【表4】

【0030】
実行管理表の更新(S204)を終えたら、ICカード10は、決済コマンドをアプリケーションBにより実行する(S205)。決済コマンドが実行されることにより、表4の決済コマンドの「コマンドの状態」が、表5に示すように、「実行待ち」から「実行中」へと変化する。
【0031】
【表5】

【0032】
決済コマンドの実行中に、優先度の高い新たなコマンドが入力されずに(S206、No)、決済コマンドの実行が終了したら(S208)、次に処理すべきコマンドの有無を実行管理表で確認する(S209)。なお、決済コマンドの実行が終了した時点で、実行管理表は、表6に示すように、決済コマンドの項目が消去され、「実行優先度」の「1」に、中断されていた認証コマンドが繰り上げられるように更新される。
【0033】
【表6】

【0034】
表6の実行管理表に示すように、次に処理すべきコマンド(実行中断している認証コマンド)があるので(S209、Yes)、RAM13に保存した認証コマンドが中断されるまでの実行内容に基づいて、認証コマンドを再び実行させる(S205)。新たなコマンドの入力がなく(S206、No)、認証コマンドの実行を終了したら(S208)、次に処理すべきコマンドの有無を確認し(S209)、処理すべきコマンドが無かったら(S209、No)、コマンド処理を終了する(S210)。
【0035】
以上より、実施例1のICカードには以下のような効果がある。
(1)ICカード10は、複数のコマンドを優先度に基づいて選択し、選択されたコマンドを実行するので、効率よく迅速にコマンドを処理することができる。
(2)ICカード10は、複数のコマンドの優先度を優先度リストとして記憶しているので、記憶された優先度に基づいて、効率よくコマンドを選択することができる。
(3)ICカード10は、優先度リストの追加及び変更が可能であるので、アプリケーションの追加に伴う新たなコマンドの優先度を追加したり、既に登録されたコマンドの優先度を変更したりすることができる。
(4)ICカード10は、優先度に基づいて選択されたコマンドの実行を実行管理表で管
理するので、各コマンドの処理待ち順序や、コマンドの実行状態を容易に把握することができる。
(5)ICカード10は、外部から認証コマンド及び決済コマンドをI/Oポート12−1及びI/Oポート12−2で入力し、優先度選択部で入力した各コマンドの実行順序を決定するので、入力された各コマンドを、優先度に応じて効率よく迅速に実行することができる。
(6)認証コマンドを接触端子で入力するI/Oポート12−1、及び、決済コマンドを非接触で入力するI/Oポート12−2を備えているので、命令を多種多様な方法でコマンドを入力することができる。
【0036】
(7)ICカード10は、入力した複数のコマンドを保持するので、実行前の命令を管理することができ、命令が実行されなかったなどの実行不良を防ぐことができる。
(8)実行中の認証コマンドを中断し、そのコマンドの、中断するまでの実行内容を保存するので、中断した認証コマンドを、中断した時点から再び実行することができる。
(9)認証コマンドの実行中に、優先度の高い決済コマンドが入力されたときは、実行中の認証コマンドを中断し、その中断するまでの実行内容を保存して、決済コマンドを優先的に実行するので、優先度の決済コマンドを常に最優先で実行することができ、また、決済コマンドの実行後に、中断した認証コマンドを中断した時点から実行することができる。
(10)ICカード10は、ICチップ16及びICカード基体17を備えているので、多種多様の端末や装置に搭載するなど、ICチップ16の使用範囲を拡大することができる。
(11)携帯通信端末機100は、ICカード10と、接触式命令通信部102及び非接触式命令通信部103から発行される認証コマンド及び決済コマンドをICカード10に出力する端末機I/Oポート104とを備えているので、I/Oポート104からICカード10へと出力された各コマンドを、優先度を付けて処理することができる。
【実施例2】
【0037】
図3は、本発明によるICカード用端末システムの実施例2を示す図である。なお、実施例2の説明では、前述した実施例1と同様な機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に統一した符号を付して、重複する説明や図面を適宜省略する。
実施例2のICカード10−2の実施例1との相違点は、実施例1のICカード10の命令保持部20、優先度選択部30及び命令実行部40の代わりに、命令保持手順、優先度選択手順及び命令実行手順をICカード10−2に実行させるプログラムが、ROM14にインストールされ、CPU11により起動されることである。そのため、ICカード10−2は、図3に示すように、実施例1のICカード10の命令保持部20、優先度選択部30及び命令実行部40が省かれた形態となる。なお、ICカード10−2の動作は、実施例1のICカード10と同一である。
【0038】
以上より、実施例2のICカード10−2には、優先度に応じてコマンドを実行する動作をプログラムにより実現しているので、実施例1のような、演算回路を設ける必要がなく、プログラムをインストールすることで容易に使用することができる。
【0039】
(変形例)
以上、説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらの発明も均等の範囲内である。
各実施例では、接触式命令通信部102は、非接触式発行手段として携帯通信端末機100に内蔵された送受信アンテナ103−1によりリーダライタ110から決済コマンドを非接触で受信したが、ICカード10に送受信アンテナを設け、携帯通信端末機100を介さずに、直接、リーダライタ110から決済コマンドを非接触で受信させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明によるICカード用端末システムの実施例1を示す図である。
【図2】実施例1の携帯通信端末機に装着されたICカードの動作フローを示す図である。
【図3】本発明によるICカード用端末システムの実施例2を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ICカード
20 命令保持部
30 優先度選択手段
40 命令実行手段
41 実行管理部
42 命令中断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の命令のうちの何れを実行するかを、各命令の優先度に基づいて選択する優先度選択手段と、
前記優先度選択手段によって選択された命令を実行する命令実行手段と、
を備えるICチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のICチップにおいて、
前記複数の命令の優先度を予め記憶する優先度記憶手段を備えること、
を特徴とするICチップ。
【請求項3】
請求項2に記載のICチップにおいて、
前記優先度記憶手段は、優先度の追加及び変更が可能であること、
を特徴とするICチップ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のICチップにおいて、
前記優先度選択手段に基づいて選択された命令の実行状態を管理する実行管理手段を備えること、
を特徴とするICチップ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のICチップにおいて、
複数の命令を当該ICチップに入力する複数の命令入力手段を備え、
前記優先度選択手段は、前記命令入力手段で入力した複数の命令の実行順序を決定すること、
を特徴とするICチップ。
【請求項6】
請求項5に記載のICチップにおいて、
前記複数の命令入力手段は、接触端子を介して前記命令を入力する接触入力手段、及び、前記命令を非接触で入力する非接触入力手段であること、
を特徴とするICチップ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のICチップにおいて、
前記命令入力手段から入力した前記複数の命令を保持する命令保持手段を備えること、
を特徴とするICチップ。
【請求項8】
請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載のICチップにおいて、
前記命令実行手段は、実行中の命令を中断する命令中断手段と、
前記命令中断手段で中断した前記命令の、中断するまでの実行内容を保存する中断記憶手段とを備えること、
を特徴とするICチップ。
【請求項9】
請求項8に記載のICチップにおいて、
前記命令実行手段は、前記命令の実行中に、優先度の高い新たな命令が入力されたときは、前記命令中断手段で実行中の前記命令を中断し、その中断するまでの実行内容を前記中断記憶手段で保存して、前記新たな命令を優先的に実行すること、
を特徴とするICチップ。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のICチップと、
ICカード基体と、
を備えるICカード。
【請求項11】
請求項10に記載のICカードと、
前記複数の命令を発行し、前記ICカードに出力する複数の命令発行手段と、
を備えるICカード用端末システム。
【請求項12】
ICチップを、複数の命令のうちの何れを実行するかを、各命令の優先度に基づいて選択させる優先度選択手段と、
前記優先度選択手段によって選択された命令を実行させる命令実行手段、
として機能させるICチップ用プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記複数の命令の優先度を予め記憶する優先度記憶手段を備えること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記優先度記憶手段は、優先度の追加及び変更が可能であること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項15】
請求項12から請求項14までのいずれか1項に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記優先度選択手段に基づいて選択された命令の実行状態を管理する実行管理手段を備えること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項16】
請求項12から請求項15までのいずれか1項に記載のICチップ用プログラムにおいて、
複数の命令を前記ICチップに入力する複数の命令入力手段を備え、
前記優先度選択手段は、前記命令入力手段で入力した複数の命令の実行順序を決定すること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記複数の命令入力手段は、接触端子を介して前記命令を入力する接触入力手段、及び、前記命令を非接触で入力する非接触入力手段を備えること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記命令入力手段から入力した前記複数の命令を保持する命令保持手段を備えること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項19】
請求項16から請求項18までのいずれか1項に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記命令実行手段は、実行中の命令を中断する命令中断手段と、
前記命令中断手段で中断した前記命令の、中断するまでの実行内容を保存する中断記憶手段を備えること、
を特徴とするICチップ用プログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のICチップ用プログラムにおいて、
前記命令実行手段は、前記命令の実行中に、優先度の高い新たな命令が入力されたときは、前記命令中断手段で実行中の前記命令を中断し、その中断するまでの実行内容を前記
中断記憶手段で保存して、前記新たな命令を優先的に実行すること、
を特徴とするICチップ用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−102863(P2008−102863A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286786(P2006−286786)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】