説明

IGF−1活性を調節するペプチドおよびその応用

本発明は、IGF−1の活性を調節できるペプチド、該ペプチドを含有する医薬組成物、および、医薬およびインビトロの細胞増殖の調節用の物質としてのそれらの応用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGF−1のモジュレーターであるペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景:
無制御の細胞増殖として現れる癌の過程は、しばしば、全く同じ細胞における増殖因子および/または増殖因子受容体の過剰発現の反映である(Moyse et al. 1985, Cassoni et al. 2006, Hanahan et al. 2000)。
【0003】
ネットワークで作用する多数の因子が、細胞周期進行および細胞増殖を担う。特に、「増殖因子」と呼ばれるこれらの因子の一群は、S期への移行、そして、最終的には細胞分裂を刺激できるペプチドに代表される。これは、IGF(インシュリン様増殖因子)にも該当する(Pardee 1989, Cross et al. 1991)。
【0004】
IGF−1は、特に、成長ホルモン(GH)による刺激の後に合成され、内分泌ホルモンとして作用し、成長ホルモンそのものとみなされることもある(Laron, 2001)。また、傍分泌/自己分泌メカニズムに従って作用し、このホルモンは、それが成長を刺激する小児で重要な役割を果たし、一方、成人では同化作用を高める。
【0005】
このホルモンの特異的受容体(IGF−1R)は、多数の異なる細胞タイプで発現され、従って、いくつかの生物の組織は、IGF−1の作用に依存する:肝臓、腎臓、肺、筋肉、骨組織および軟骨、並びに、神経組織が挙げられる。さらに、IGF−1は、低い親和性でインシュリン受容体に結合できるのでインシュリンに似た作用を有し、神経細胞の発生を調節し、DNA合成を調節する。
【0006】
IGF−1の受容体への結合は、細胞の成長および増殖を刺激する細胞内シグナルを誘起する(Perona, 2006)。この活性のために、IGF−1は、強力なアポトーシス(プログラムされた細胞死)阻害因子であり、かつ、タンパク質合成の活性化因子である(Yanochko et al. 2006, Colon et al. 2007, Inoue et al. 2005)。最後に、ある種の条件では、IGF−1は、アポトーシス誘導因子および細胞増殖刺激因子のデュアルの役割を有し得る(Fu et al. 2007, Rabinovsky 2004 a)。
【0007】
IGFのシグナル伝達網は、腫瘍進行および転移に重要な役割を有し(Hofmann et al. 2005)、多くの実験的研究並びに疫学的研究は、高レベルのIGF−1および/またはその受容体と、癌性増殖のリスクの増加またはその確立自体との、有意な相関を立証している(Vella et al. 2001, Talapatra et al. 2001, Kucab et al. 2003, Kambhampati et al. 2005, Bjorndahl et al. 2005, Gennigens et al. 2006, Velcheti et al. 2006, Yanochko et al. 2006, Sisci et al. 2007, Samani et al. 2007)。一般に、発癌における、特に腫瘍進行の刺激におけるGH/IGF−1軸の役割は、従って、多くの疫学的研究、および、IGF−1の先天的欠損が癌の発生に対して防御すると思われることを示す最近の研究に示される通り、十分に確立されている(Sheva et al. 2007)。
【0008】
IGF活性を阻害する分子の臨床研究は、様々なタイプの癌におけるそれらの使用の利点、化学療法および照射と相乗作用するそれらの治療効果を示している(Min et al. 2005, Carmiraud et al. 2005, Chinnavian et al. 2006, Wu et al. 2006, Deutsch et al. 2005, Warshamana-Greene et al. 2005)。IGF−1は、成長ホルモンのメディエーターであるので、その産生は、上流の成長ホルモン(GH)で、ソマトスタチンにより遅延または阻害できる。
【0009】
視床下部で分泌されるソマトスタチン(成長ホルモン産生細胞放出阻害因子、または、SRIF)は、天然のGHRH(GH合成を刺激する神経ペプチド)のアンタゴニストである。特に、GHを阻害することにより、SRIFはIGF−1合成の阻害作用を有する。しかしながら、SRIFは末梢性の作用も有し、特に、例えば、胃腸および膵臓のホルモンの分泌を阻害する消化ホルモンとして作用する。
【0010】
SRIFおよびその合成類似体が、直接的または間接的メカニズムにより細胞増殖を阻害し、細胞死を引き起こす能力は、ヒトの医療において、様々なタイプの癌のいくつかの治療プロトコールで利用されている。さらに、SRIFは、血管新生を阻害でき、それは、腫瘍成長の間接的制御のための臨床的実務において潜在的に興味深いものである(Ferjoux et al. 2000)。実際に、腫瘍は栄養を新血管形成(血管新生)により得、細胞増殖を阻害するSRIFの類似体は、血管内皮増殖因子(VEGF)などの増殖因子の分泌に対する間接的阻害作用も有し、一方で、単球の走化性を低下させる(Dasgupta 2004, Garcia de la Torre et al. 2002)。
【0011】
しかしながら、SRIFの類似体の使用は、SRIF受容体を発現する癌でのみ可能である。従って、臨床的実務で使用されるSRIF類似体の効力は、神経内分泌、胃腸膵、脳、乳房、前立腺および肺の腫瘍の処置で明示的に立証されたのみである(Ferjoux et al. 2000)。さらに、SRIF受容体の発現のレベルおよびプロフィールは、癌腫ごとに非常に異なることに留意すべきである。
【0012】
「IGF系」の阻害剤であるソマトスタチン類似分子(Pawlikowski M. et al., 2004)は、既に提唱された。これらは、特に、BIM23A387、オクトレオチドおよびランレオチド(2個の8−merペプチド)である。これらの分子は、受容体またはそのリガンドの発現を調節し、様々なタイプの癌および先端巨大症の処置において興味深い候補である。他の例として、二重特異性合成リガンドBIM−23244(Rani C., 2004, Rani C., 2006, Pandit A., 2008)は、成長ホルモン分泌腺腫における成長ホルモンの分泌を阻害できる。
【発明の概要】
【0013】
発明の概要:
本発明者は、この度、IGF−1の作用を調節するための新規のペプチドを提案する。これらのペプチドは、以下の配列(I)の20個ないし24個のアミノ酸を含む:
−X−Phe−Trp−X−X−P(I)(配列番号1)
ここで:
−Pは、
Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号3)
Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号4)
Ser−Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号5)
の配列から選択される10個ないし12個のアミノ酸を含む配列を表し、
−Xは、リジン、アルギニンまたはヒスチジン残基であり;
−Xは、スレオニンまたはリジン残基であり;
−Xは、アスパラギン酸またはグルタミン酸残基であり;そして、
−Pは、
Val−Thr−Thr−Ser−Glu(配列番号6)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu(配列番号7)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu−Gly(配列番号8)
の配列から選択される5個ないし7個のアミノ酸を含む配列を表す。
【0014】
本発明は、また、1またはそれ以上の化学修飾により配列(I)から誘導されるタンパク質分解に抵抗性のペプチド、または、1またはそれ以上の保存的置換により配列(I)から誘導される実質的に相同のペプチドに関する。
【0015】
これらのペプチドは、インビトロで細胞増殖を調節するのに、好ましくは刺激するのに有用である。
本発明は、また、1種またはそれ以上の生理的に許容し得る補助剤と共に少なくとも1種のそのようなペプチドを有効成分として含む医薬組成物に関する。
本発明は、また、医薬品として使用するための、本明細書で定義するペプチドに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明:
定義:
用語「調節」は、本発明のペプチドのIGF−1機能の阻害および/または活性化の活性を表す。
「阻害」は、IGF−1の活性、活性化、機能および/または発現を低減する阻害および/または下方調節を含む、IGF−1合成および/またはIGF−1Rの発現に対する阻害作用を意味する。「活性化」は、IGF−1の活性、機能および/または発現の活性化および/または上方調節を含む、IGF−1合成および/またはIGF−1Rの発現を増強、刺激または活性化するいかなる作用も意味する。ペプチドの阻害および/または活性化作用は、IGF−1および/またはIGF−1Rの発現を測定することにより調べる。IGF−1および/またはIGF−1Rを発現する細胞培養を利用して、本発明のペプチドにより誘導される阻害および/または活性化を調べることも可能である。
【0017】
用語「患者」は、IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を調節する処置を必要としているオス、メス、成体および/または子供を含む、任意のヒトまたは非ヒト動物、好ましくは哺乳動物を表す。
【0018】
用語「処置」または「治療」は、疾患の治癒的処置および予防的処置の両方を含む。治癒的処置は、治癒をもたらす処置、または、疾患の症状またはそれが引き起こす苦痛を軽減、改善および/または除去、低減および/または安定化する処置と定義される。予防的処置は、疾患の予防をもたらす処置、および、疾患の発生またはその発症リスクを低減および/または遅延させる処置の両方を含む。
【0019】
「保存的置換」という表現は、ペプチドの全般的構造または機能の変化を伴わない、アミノ酸残基の他のものとの任意の置換を表す。保存的置換には、類似の特性を有するアミノ酸による置換(例えば、形状、極性、水素結合能、酸性度、塩基性度、疎水性など)が含まれるが、これらに限定されない。類似の特性を有するアミノ酸は、先行技術で周知である。例えば、アルギニン、ヒスチジンおよびリジンは、親水性塩基性アミノ酸であり、交換可能であり得る。同様に、疎水性アミノ酸のイソロイシンは、ロイシン、メチオニンまたはバリンで置き換えることができる。相互に置換できる親水性中性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリンおよびスレオニンが含まれる。「置換された」および「修飾された」により、本発明は、天然アミノ酸に対して変更または修飾されたアミノ酸を意味する。「実質的に相同な配列」という表現は、1個またはそれ以上の保存的置換を有する任意の配列を含む。
【0020】
従って、本発明に関して、保存的置換は、あるアミノ酸の、同様の特性を有する他のものによる置換として、先行技術で知られている。保存的置換の例を、下表1に示す:
表1. 保存的置換I
【表1】

【0021】
Lehninger, 1975 に記載の通り、保存的アミノ酸は、下表2に示す通りにグループ化できる:
表2. 保存的置換II
【表2】

【0022】
また他の保存的置換の選択肢を下表3に示す:
表3. 保存的置換III
【表3】

【0023】
ペプチドの製造:
本発明によるペプチドは、当分野で使用される全ての標準的なペプチド合成の技法、即ち、特に、化学合成または遺伝子組換えにより製造できる。好ましい実施態様では、ペプチドは、化学合成により得られる。より好ましくは、ペプチドは、必要な順序でのアミノ酸残基の連続的縮合により、または、以前に形成され既にいくつかのアミノ酸を含む断片上の残基を適切な順序で縮合することにより、または、以前に製造されたいくつかの断片の縮合により得られ、事前に、縮合中にペプチド結合に使用されるアミンおよびカルボキシル基を除くアミノ酸残基の全ての反応性官能基を保護するように注意し、特に、Merrifield の固相合成法による。
【0024】
ペプチドの特性:
本発明のペプチドは、IGF−1の作用を調節できる。これらのペプチドは、以下の配列(I):
−X−Phe−Trp−X−X−P(I)(配列番号1)
{ここで:
−Pは、
Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号3)
Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号4)
Ser−Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号5)
の配列から選択される10個ないし12個のアミノ酸を含む配列を表し、
−Xは、リジン、アルギニンまたはヒスチジン残基であり;
−Xは、スレオニンまたはリジン残基であり;
−Xは、アスパラギン酸またはグルタミン酸残基であり;そして、
−Pは、
Val−Thr−Thr−Ser−Glu(配列番号6)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu(配列番号7)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu−Gly(配列番号8)
の配列から選択される5個ないし7個のアミノ酸を含む配列を表す}
の20ないし24個のアミノ酸を含むか、またはこれらからなる。
【0025】
本発明は、また、1またはそれ以上の化学修飾により配列(I)から誘導されるタンパク質分解に抵抗性のペプチド、または、1またはそれ以上の保存的置換により配列(I)から誘導される実質的に相同のペプチドを含む。
【0026】
好ましくは、Xはリジン残基であり、Xはスレオニン残基であり、Xはアスパラギン酸残基である。
好ましい実施態様では、ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:
SNFGSRKFSYKAKFWTDVTTSELG(配列番号2)。
【0027】
好ましくは、Nおよび/またはC末端の位置は、タンパク質分解から保護されている。例えば、N末端はアセチルの形態であり得、かつ/または、C末端はアミド基の形態であり得る。本発明のペプチドに耐性を与えるいかなる修飾も企図されており、例えば、少なくとも1個のペプチド結合が修飾され、(CHNH)結合、(NHCO)結合、(CH−O)結合、(CH−S)結合、(CHCH)結合、(CO−CH)結合、(CHOH−CH)結合、(N−N)結合、アルケン−E結合または−CH=CH結合で置き換えられているペプチドである。
タンパク質分解に耐性であるために化学的に修飾された全てのペプチドは、本発明に含まれる。
例えば、P70と呼ばれる上記のペプチドは、アセチル−SNFGSRKFSYKAKFWTDVTTSELG−アミドの形態であり得る。
【0028】
本発明は、また、1またはそれ以上の保存的置換により配列(I)から誘導される実質的に相同のペプチドを包含する。2個のアミノ酸配列は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が、生物学的観点で類似する1個またはそれ以上の残基で置換されているとき、または、80%を超えるアミノ酸が同一であるとき、または、好ましくは、90%を超える残基が同一(機能的に同一)であるとき、「実質的に相同」または「実質的に類似」と呼ばれる。類似または相同の配列は、好ましくは、例えば、GCG "Pileup" プログラム (Genetics Computer Group, software manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin) または当業者に知られている任意の他のプログラム (BLAST、FASTA など) を使用する配列比較により同定される。
【0029】
本発明によると、ペプチドの全てのアミノ酸残基は、L型(左旋性(levogyral))に属する。しかしながら、配列(I)のアミノ酸のいずれでも、D型(右旋性(dextrogyral))をL体に置き換えることも包含する。特に、ペプチドがペプチダーゼに対してより耐性であるために、いくつかのアミノ酸(配列(I)の位置11ないし18に位置するアミノ酸、特に位置15のトリプトファン)がD型に属することが包含される。
【0030】
有利には、血漿中の半減期を延ばすために、そして、使用する治療用量を減らすために、ペプチドは、それらのC末端またはリジン残基により、1個またはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)分子、特に1500または4000MWのPEGに共有結合している。PEGの結合は、Abuchowski et al. (J. Biol. Chenu., 1977,252 : 3582-3586)に記載の通りである。本発明のさらなる態様では、ペプチドは、ミクロスフェアを形成する生物分解性ポリマーまたはコポリマー、例えば、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)に含まれる(US2007/0184015、SoonKap Hahn et alに記載の通り)。
【0031】
本発明のペプチドは、内在性(天然)ソマトスタチンまたは当分野で既知のペプチドと異なり、疎水性媒体中と同様に生理的媒体中で安定であるβ−ヘアピン分子構造を示す。有利なことに、媒体のいかなる条件も、このペプチド構造のαへリックスへの遷移を誘導できない。
【0032】
さらに、ヘアピン構造は、ペプチド配列の折り畳みにより形成される折り目において、SRIFにおいて受容体結合に主要なものと認識されている4個の連続するアミノ酸(Phe−Trp−Lys−Thr)のうち、2個のアミノ酸(Phe−Trp)を露出できる。この仮説に縛られるわけではないが、本発明者は、本発明のペプチド配列において、位置13のアミノ酸と位置17のアミノ酸との間の静電気的引力が、「折れ曲がり」型の構造を可能にし、ペプチド全体にβ型の構造をもたせると考える(VIIIβ型構造)。
【0033】
本発明で有用なペプチドは、二相性作用を示す。従って、使用する濃度に依存して、ペプチドは、IGF−1の産生およびその受容体(IGF−1R)の発現を活性化または阻害できる。インビトロで、これらの作用は、細胞増殖の刺激または阻害を導く。
【0034】
用量依存的なアゴニストまたはアンタゴニスト作用を示す生物学的分子の二相性作用は、他の分子について、そして様々な生物学的システムにおいて、周知である(酵素 [Gamage et al. 2003, He et al. 2003]、イオンチャネルおよび共輸送体(co-carriers)[Arias et al. 1996, Lombardi et al. 2001, Borst et al. 2002, Incerpi et al. 2003]、輸送体[Henry et al. 2002]、チロシンキナーゼ受容体 [Leiser et al. 1986, Schlessinger 1988]、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、神経伝達物質、ホルモンおよびケモカイン [Winding et al. 1993, Chidiac et al. 1996, Bronnikov et al. 1999, Cuthbert 2003, Hornigold et al. 2003, Griffin et al. 2003, Fuh et al. 1992, Talmadge 1998]、特に、GnRHおよびそのアナログ [Browning J.Y et al.1983, Ho M.N. et al.1997, Barbarino A et al.1982, Imai, A et al.1993, Kang, Sung K et al.2000 et 2001, Gruendker C et al. 2003, Leung P.C.K et al. 2003, Bhasin S. et al. 2008]に関して)。
【0035】
本明細書に記載のペプチドは、インビトロで、例えば、角膜実質細胞、軟骨細胞または肝実質細胞培養で、細胞増殖を刺激するのに、または、医学的興味のある組織の調製に有用である。
【0036】
これらの優れた特徴で、本明細書に記載のペプチドは、様々な適用に、インビトロおよびインビボで、特にヒトまたは獣医学において、有用である。
【0037】
本発明のペプチドは、
−IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を刺激するのに;
−または、IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を阻害するのに、
適する用量で使用できる。
【0038】
IGF−1の合成および/またはその受容体の発現の刺激は、様々な場合で望ましい:
−ペプチドを成長ホルモン代用薬として使用する場合。これらのペプチドは、先天性または後天性の内在性成長ホルモンまたはIGF−1の完全または部分的欠乏に伴う全ての治療適応症において、特に小児および成人の発育不全の処置において、特に有用である。他の治療的適用には、例えば、ターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群、慢性腎不全が含まれる。本発明のペプチドは、後天性免疫不全症候群(AIDS)または癌に伴う悪液性症状などの、筋肉量の増加が必要とされ得る障害に、特に有用である。ペプチドは、また、獣医学の分野でも、特にウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの飼育において、有用である。
−肥満症またはII型糖尿病などのメタボリックシンドロームの治療的処置において(特に、血液の脂質率を下げ、グルコース代謝を改善することによる)、そして、特に高齢または免疫抑制の対象において、免疫防御を刺激または回復するために、または、自己免疫疾患(I型糖尿病など)および/または神経変性疾患(多発性硬化症など)の処置のために。
−神経細胞の生存(抗アポトーシス作用)、分化または神経の発達、運動または感覚神経の再生、シナプス形成および再ミエリン化(remyelinization)を刺激するために。従って、IGF−1の産生を刺激することにより、本発明のペプチドは、神経形成を刺激するための神経栄養性物質として、かつ/または、神経保護物質として(特に虚血性発作において)使用される。
【0039】
IGF−1合成および/またはその受容体の発現の阻害は、以下の場合で特に望ましい:
−オクトレオチドおよびランレオチドが適用される障害のように、これらのペプチドをソマトスタチンの代替薬として使用する場合。所望の生物学的作用は、例えば、下垂体のGH分泌の阻害、胆汁分泌の阻害、膵臓および胃腸の外分泌および/または内分泌の阻害である。例えば、ソマトスタチンの代替薬として、ペプチドをアルツハイマー病の処置に使用する。
−先端巨大症の処置に、特に外科手術および/または放射線療法および他の薬物療法に不十分な応答をした患者において、または、これらの治療が適切ではない患者のために。処置の目標は、血清IGF−1レベルを正常化し、臨床徴候および症状を改善することである。
−癌の処置において、限定されるわけではないが、特に、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、下垂体腺腫または消化器系内分泌腺腫瘍の処置に。さらに、ペプチドを転移の処置に使用し得る(胃腸の転移を含む)。下痢および紅潮などの消化器系内分泌腺腫瘍に伴う症状を改善するための、阻害的用量での本発明のペプチドの使用も包含される。
【0040】
医薬組成物:
このペプチドは、全身的(非経腸、静脈内…)、経口、直腸、局所、経皮、皮下、肺内(Agu et al, 2001 参照)および鼻腔内経路を含む任意の好都合な経路により投与し得る。好ましい実施態様では、ペプチドを鼻腔内経路により投与する。
【0041】
インビトロで、IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を刺激するのに適する用量の例は約10−7Mの濃度の用量であり、IGF−1合成および/またはIGF−1受容体を阻害するのに適する用量の例は、少なくとも10−6Mの濃度の用量である。
対応するインビボでの用量は、所望の効果が達成されるように処置する症状に関して、当業者により選択される。
【0042】
IGF−1合成および/またはIGF−1受容体の発現をインビボで刺激するのに有効な容量は、典型的には、少なくとも1日100μg、好ましくは約10μgないし100μgの濃度を含む。IGF−1合成および/またはIGF−1受容体の発現をインビボで阻害するのに有効な用量は、典型的には、少なくとも1日300μg、好ましくは約300μgないし3mgの濃度を含む。好ましくは、有効な一日量は、約1mgないし3mg、さらにより好ましくは、約2mgないし3mgである。鼻腔内または肺内経路による投与には、または、徐放性製剤を使用する場合には、必要とされる刺激および/または阻害の用量は、10ないし100倍低いことができる。これらの投与は、長期間、好ましくは3ないし6ヶ月の期間にわたり、繰り返すことができる。
【0043】
本発明のさらなる態様と利点を以下の実験の部に開示し、本発明によるペプチドの生物学的活性を立証する。
以下の実施例および図で使用する本発明のペプチド配列(P70と名付けられた)は、以下のアミノ酸配列を含む:
アセチル−SNFGSRKFSYKAKFWTDVTTSELG−アミド(配列番号2)
これらの実施例は、例示と認識されるべきものであり、本願の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図の説明文
【図1】図1は、[H]チミジンのDNAへの取り込みに対するP70の効果を示すグラフである。
【図2】図2は、吸光度測定により評価したIGF−1Rの発現に対するP70の効果を示すグラフである。
【図3】図3は、免疫組織化学による、初代新生児マウス下顎軟骨細胞培養におけるIGF−1R発現に対するP70の効果を示す。
【図4】図4は、免疫組織化学による、初代新生児マウス下顎軟骨細胞培養におけるIGF−1合成に対するP70の効果を示す。
【図5】図5は、免疫組織化学による、初代新生児マウス下顎軟骨細胞培養におけるII型コラーゲンの産生に対するP70の効果を示す。
【図6】図6は、初代新生児マウス下顎軟骨細胞培養における軟骨形成プロセスに対するP70の効果を示す。矢印は、軟骨形成小結節を示す。
【実施例】
【0045】
実施例:
実施例1:細胞増殖に対する本発明のペプチドの効果
本発明のペプチドの生物学的効果を、新生児マウス下顎の軟骨細胞初代培養モデルで立証する。
ペプチドが細胞増殖を誘導する能力を評価するために、本発明者は、Kurz et al., 1997 の方法に従い、DNA複製中の[H]チミジンの取り込みを示す試験を実施した。この試験を、本発明者が使用するモデル、即ち、初代マウス胚性軟骨細胞培養に適合させた。
【0046】
マウス下顎骨関節突起(MCDC)の分離により得た軟骨細胞を、軟骨形成させる培養培地で培養し、特に、5x10細胞/mlを、1μCi[H]−チミジン/培地1ml(Amersham、コードTRA120、原液1mCi/ml、比活性5Ci/mmol)と共に、3時間、37℃で、DMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)中で、ウシ胎児血清(FCS)なしで、しかし、アスコルビン酸100μg/ml、塩化カルシウム1mmol/L、β−グリセロリン酸10mmol/Lおよび抗生物質を添加して、インキュベートした。[H]−チミジン5μlを添加した同じ培地を2分間添加し、負の対照として使用した。上清を除去し、pH7.0で緩衝化した塩水(PBS)で細胞を2回洗浄し、細胞を2回(5分間)メタノールで洗浄した。次いで、細胞を10%トリクロロ酢酸(TCA)の冷たい溶液で3回洗浄した。細胞をDDWで2回洗浄した後、細胞を0.3M NaOH200μlに15分間混ぜた。次いで、細胞を0.3M HCl200μlを含む中和したシンチレーション液3mlに移す。最後に、細胞を含むサンプルをボルテックスで混合し、ベータカウンターに1分間置いた。
【0047】
得られた結果(図1)は、ペプチドP70が、軟骨細胞の増殖に対して、最高濃度(10−6M)で、非処理対照(ペプチドまたは他の増殖因子なしでインキュベートした軟骨細胞)より53%高い刺激効果を有するが、この刺激効果は低濃度(10−7M)では観察されないことを示す。
【0048】
実施例2:IGF1合成およびIGF1受容体発現に対する本発明のペプチドの効果
本発明者は、培養物の軟骨細胞を利用して、IGF−1合成およびその受容体(IGF−1R)の発現に対するP70の効果を調べた。本発明者は、軟骨細胞を低濃度のペプチド(10−7M)とインキュベートすると、ペプチドがIGF−1産生およびその受容体(IGF−1R)の発現に重要な刺激効果を有することを示す(図2)。
逆に、高濃度(10−6M)では、ペプチドは実質的にIGF−1およびその受容体の産生を阻害する。
【0049】
5日目の初代軟骨細胞培養に免疫組織化学(IHC)を使用して(図3)、本発明者は、また、ペプチドP70がIGF−1受容体発現を10−6Mで阻害し(高濃度のペプチドで36.8%阻害)、一方、それは同じ受容体の発現を10−7Mで刺激する(低濃度のペプチドで23.8%上昇)ことを示す。さらに(図4)、P70は、IGF−1合成を10−6Mで阻害し(高濃度のペプチドで30%阻害)、IGF−1合成を10−7Mで刺激する(低濃度のペプチドで90%上昇)。
【0050】
実施例3:細胞分化に対する本発明のペプチドの効果
上記と同じプロトコールで得たマウス胚の軟骨細胞を、10−7MのペプチドP70濃度で培養し、インキュベートした。培養5日目に、本発明者は、免疫化学(特異的抗II型コラーゲン抗体で標識)により、ペプチドが、関節軟骨の産生に有用な細胞外マトリックスの主要成分であるII型コラーゲン産生を有意に刺激することを示す(図5)。実際に、非処理対照と比べて150%の増加が観察される。
【0051】
図6では、10−7Mの濃度のペプチドP70の効果を、非処置軟骨細胞と比較する(対照)。培養7日目に、ペプチドの存在下で、軟骨の小結節形成の加速が明確に観察される。軟骨小結節の発達(体積/培養物)は、85%早まる。
【0052】
結論
ペプチドP70は、二相性プロフィールを示す:
−低濃度(10−7M)で:
・それは、特に軟骨形成の第1段階を加速することにより、細胞分化を刺激する(図5−II型コラーゲンの発現、および、図6−軟骨形成を参照)
・それは、IGF−1産生およびIGF−1受容体発現(図2−吸光度、および、図3−免疫組織化学を参照)およびIGF−1合成(図4−免疫組織化学を参照)を刺激する。
−高濃度(10−6M)で:
・それは、細胞増殖(図1−トリチウム標識チミジンの取り込みを参照)を刺激する
・それは、IGF−1産生(図4−免疫組織化学を参照)およびIGF−1受容体発現(図2−吸光度、および、図3−免疫組織化学を参照)を阻害する
【0053】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列(I):
−X−Phe−Trp−X−X−P(I)(配列番号1)
{ここで:
−Pは、
Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号3)
Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号4)
Ser−Asn−Phe−Gly−Ser−Arg−Lys−Phe−Ser−Tyr−Lys−Ala(配列番号5)
の配列から選択される10個ないし12個のアミノ酸を含む配列を表し、
−Xは、リジン、アルギニンまたはヒスチジン残基であり;
−Xは、スレオニンまたはリジン残基であり;
−Xは、アスパラギン酸またはグルタミン酸残基であり;そして、
−Pは、
Val−Thr−Thr−Ser−Glu(配列番号6)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu(配列番号7)
Val−Thr−Thr−Ser−Glu−Leu−Gly(配列番号8)
の配列から選択される5個ないし7個のアミノ酸を含む配列を表す}
の20個ないし24個のアミノ酸を含むペプチド、
1またはそれ以上の化学修飾により配列(I)から誘導されるタンパク質分解に抵抗性のペプチド、または、1またはそれ以上の保存的置換により配列(I)から誘導される実質的に相同のペプチド。
【請求項2】
がリジン残基であり、Xがスレオニン残基であり、Xがアスパラギン酸残基である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列SNFGSRKFSYKAKFWTDVTTSELG(配列番号2)を含む、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤と共に、有効成分として請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項5】
インビトロで細胞増殖を調節するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチドの使用。
【請求項6】
医薬品としての請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を刺激するのに適する用量で使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項8】
100μg未満、好ましくは10μgないし100μg、より好ましくは10μgないし50μgの有効一日量でインビボで使用される、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
成長ホルモン代替薬として使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項10】
慢性腎不全、ターナー症候群またはプラダー・ウィリー症候群の処置において使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項11】
メタボリックシンドローム、自己免疫疾患および/または神経変性疾患の治療的処置において使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項12】
神経栄養および/または神経保護薬として使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項13】
IGF−1合成および/またはIGF−1受容体発現を阻害するのに適する用量で使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項14】
少なくとも300μg/日、好ましくは300μgないし3mg/日、より好ましくは1mgないし3mg、さらにより好ましくは2mgないし3mgの有効一日量でインビボで使用するための、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
ソマトスタチン代替薬として使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項16】
アルツハイマー病の処置において使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項17】
先端巨大症または癌の処置において使用するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項18】
転移の処置において使用するための、請求項17に記載のペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524713(P2012−524713A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500300(P2012−500300)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050490
【国際公開番号】WO2010/106294
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510035462)ウニヴェルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ 6) (4)
【Fターム(参考)】