説明

IL−7融合タンパク質

本発明は、インターロイキン-7(IL-7)融合タンパク質、それらの製造及び使用の方法に関する。これらの融合タンパク質は、IL-7へ直接又は間接に融合された免疫グロブリン部分を含み、野生型IL-7と比べ、生物学的特性及び医薬特性を改善するために特異的位置で改変されている。本発明のタンパク質は、免疫不全症に随伴した障害及び特にT-細胞欠損が関与する疾患を治療する上で特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、インターロイキン-7(IL-7)融合タンパク質、それらの生成及び使用の方法に関する。これらの融合タンパク質は、IL-7へ直接又は間接に融合された免疫グロブリン部分を含み、これは生物学的及び薬学的特性を改善するために、野生型IL-7と比べ特定の位置で改変されていた。本発明のタンパク質は、免疫不全症に随伴した障害、特にT-細胞欠損に関連する疾患の治療において、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
様々な障害及び療法が、免疫細胞の欠損に関連している。例えば、HIV感染症は、CD4+ T-細胞の喪失を生じる一方で、化学療法及び放射線療法などの療法は一般に、多種多様な血液細胞の喪失を生じる。疾患又は療法の結果として欠失されている免疫細胞の特定型を補給する特異的タンパク質製剤を提供する試みが成されている。例えば、癌の化学療法においては、赤血球を補給するためにエリスロポエチンが使用され、好中球を補給するために顆粒球コロニー-刺激因子(G-CSF)が使用され、並びに顆粒球及びマクロファージを補給するために顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が使用される。これらのタンパク質製剤は、有益であるが、比較的短い血清半減期を有し、その結果免疫細胞補給は不充分であることが多い。更には疾患又はある種の骨髄機能廃絶療法後の結果としてのこれらの細胞の喪失は、特に患者の健康を損なうことがわかっているにもかかわらず、現在T又はB-細胞の発達を特異的に刺激する特異的治療は、臨床使用において存在しない。従って延長された血清半減期を有する、特にリンパ球の、免疫系の刺激剤及び回復剤を開発する必要性が、当該技術分野において存在する。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明は、対応する野生型IL-7タンパク質と比べ、改善された生物学的特性を有する、インターロイキン-7(IL-7)融合タンパク質に関する。更に本発明は、特定の構造的特徴を有するIL-7融合タンパク質は、野生型組換えIL-7と比べ改善された生物学的特性を有するという知見を一部基にしている。
【0004】
従ってひとつの局面において、本発明は、IL-7融合タンパク質は、野生型IL-7と比較し、延長された-血清半減期又は免疫細胞の生存もしくは拡張の促進のような増加した生物学的活性を有する、免疫グロブリン(Ig)鎖を含む第一の部分及びインターロイキン-7(IL-7)を含む第二の部分を有する融合タンパク質を特徴としている。
【0005】
ひとつの態様において、本発明は、Ig鎖を含む第一の部分及びIL-7を含む第二の部分を有する融合タンパク質であって、前記IL-7の70及び91位のアミノ酸残基はグリコシル化され、IL-7の116位のアミノ酸残基はグリコシル化されていない融合タンパク質を特徴としている。本明細書を通して、IL-7のアミノ酸位置は、成熟型ヒトIL-7配列における対応する位置を意味する。ひとつの態様において、IL-7の116位のアミノ酸残基はアスパラギンである。別の態様において、IL-7の116位のアミノ酸残基は、グリコシル化部位として利用されないように改変される。ひとつの態様において、IL-7部分は、IL-7のCys2とCys92、Cys34とCys129、及びCys47とCys141の間のジスルフィド結合を含む。
【0006】
別の態様において、本発明は、Ig鎖を含む第一の部分及びIL-7を含む第二の部分を有する融合タンパク質であって、前記IL-7がIL-7のCys2とCys92、Cys34とCys129、及びCys47とCys141の間のジスルフィド結合を含む、前記融合タンパク質を含む。ひとつの態様において、IL-7の116位のアミノ酸残基はグリコシル化されていない。別の態様において、IL-7の116位のアミノ酸残基は、アスパラギンであるか、又はグリコシル化部位として利用されないように変更される。別の態様において、IL-7の70及び91位のアミノ酸残基はグリコシル化されている。
【0007】
Ig鎖は一般に、無傷の抗体又はFc領域のようなそれらの一部である。IL-7融合タンパク質のIg鎖は、任意の公知のIgアイソタイプに由来することができ、1個又は複数の定常ドメインの少なくとも一部を含むことができる。例えば、定常ドメインは、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域からなる群より選択することができる。ひとつの態様において、Ig部分は、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域を含む。Ig鎖は任意に、リンカーによりIL-7部分へ連結される。
【0008】
IgG1又はIgG2のような、単独の抗体アイソタイプのIg部分、及びハイブリッドIg部分が、本発明において可能である。例えばひとつの態様において、Ig部分は、ひとつのアイソタイプ(すなわちIgG2)由来のヒンジ領域及び別のアイソタイプ(すなわちIgG1)由来のCH領域を含む。IgG1のFc部分を含むIg鎖は、変異Asn297Gln及びTyr296Alaを含むように、有利に改変され得る。更にIgG2のFc部分を含むIg鎖は、変異Asn297Gln及びPhe296Alaを含むように、有利に改変され得る。
【0009】
先に説明されたIL-7融合タンパク質のIL-7部分は、IL-7部分の成熟部分を含むことができる。ひとつの態様において、このIL-7部分は更に、内部欠失などの欠失を含むことができる。ひとつの例において、IL-7は、配列番号:1のアミノ酸96〜114の18個のアミノ酸欠失を含むことができる。
別の態様において、本発明は、先に説明されたIL-7融合タンパク質をコードしている精製された核酸及びこれらの核酸を含む培養された宿主細胞を含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、前記核酸を宿主細胞において発現すること及び融合タンパク質を収集することを含む、IL-7融合タンパク質を製造する方法を含む。
別の局面において、本発明は、先に説明された融合タンパク質を含有する、医薬組成物などの組成物を含む。
別の局面において、本発明は、Fc-IL-7融合タンパク質を投与することにより患者を治療する方法を含む。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、野生型IL-7タンパク質と比べ、増強された生物学的活性を有するIL-7融合タンパク質を提供する。特に本発明は、免疫グロブリン(Ig)部分を含むIL-7融合タンパク質を提供する。これらのIg-IL-7融合タンパク質は、野生型IL-7タンパク質と比べ、延長された血清半減期のような、増強された生物学的活性を有し、このことは、これらをリンパ球欠損のような免疫細胞欠損に随伴した状態の治療における使用に適切なものとしている。
【0012】
本発明は更に、特定の構造的特徴を有するIL-7融合タンパク質は、増強された生物学的特性も有するという知見を一部基礎としている。哺乳動物IL-7のアミノ酸配列は周知であるが、例えば、いかにしてタンパク質がフォールディングするか及びその予想されるN-結合グリコシル化部位のその生物学的活性に対する作用などを含む、真核生物に由来したIL-7タンパク質の構造に関する情報は、依然良く定義されていない。例えばヒトIL-7タンパク質は、成熟型タンパク質の2、34、47、92、129、及び141位にシステインを、並びにアスパラギン(Asn)70、Asn91、及びAsn116の位置に3個の可能性のあるN-結合グリコシル化部位を有する。しかし真核生物の条件下で合成されたIL-7の正確な構造は、不明である。
【0013】
本発明は、特定の構造形及び増強された生物学的活性を有するIL-7融合タンパク質を含む。例えば、Cys2-Cys92、Cys34-Cys129及びCys47-141のジスルフィド結合パターンを有するIL-7融合タンパク質は、野生型組換えIL-7タンパク質よりもより大きいin vivo活性を有する。
【0014】
更に本発明は、IL-7の3個の可能性のあるN-結合グリコシル化部位の2個のみがグリコシル化されているIL-7融合タンパク質の形を提供する。特に、成熟型タンパク質のAsn70及びAsn91はグリコシル化されるが、IL-7 Asn116での予想されたN-結合グリコシル化部位は、グリコシル化されない。このようなIL-7融合タンパク質は、野生型組換えIL-7よりもより大きいin vivo活性を有する。
【0015】
本発明は、対応する未改変のIL-7融合タンパク質と比べIL-7部分が欠失を含み、かつ同等の活性を保持しているIL-7融合タンパク質も含む。例えば本発明は、IL-7部分が、配列VKGRKPAALGEAQPTKSL(配列番号:9)に対応する18個のアミノ酸内部欠失を含む、Ig-IL-7の形態を提供する。
【0016】
インターロイキン-7融合タンパク質
典型的には、IL-7タンパク質部分は、担体タンパク質へ融合される。ひとつの態様において、担体タンパク質は、融合タンパク質のN-末端へ配置され、及びIL-7タンパク質は、C-末端に配置される。別の態様において、IL-7融合タンパク質は、融合タンパク質のN-末端側へ配置され、及び担体タンパク質は、C-末端側に配置される。
【0017】
本明細書において、用語「インターロイキン-7」又は「IL-7」は、野生型成熟哺乳動物IL-7と実質的にアミノ酸配列同一性を有し、及び例えば標準のバイオアッセイもしくはIL-7受容体結合親和性アッセイにおいて実質的に同等の生物学的活性を有する、IL-7ポリペプチド並びにそれらの誘導体及びアナログを意味する。例えばIL-7は、下記のアミノ酸配列を有する、組換え又は非-組換えのポリペプチドのアミノ酸配列を意味する:i)IL-7ポリペプチドの未改変又は天然の対立遺伝子変種、ii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な断片、iii)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性なポリペプチドアナログ、又はiv)IL-7ポリペプチドの生物学的に活性な変種。本発明のIL-7ポリペプチドは、例えばヒト、ウシ又はヒツジなどの任意の種から得ることができる。IL-7の核酸配列及びアミノ酸配列は、当該技術分野において周知である。例えば、ヒトIL-7アミノ酸配列は、Genbank受託番号NM 000880(配列番号:1)を有し、図1に示され;マウスのIL-7アミノ酸配列は、Genbank受託番号NM 008371を有し;ラットのIL-7アミノ酸配列は、Genbank受託番号AF 367210を有し;ウシのIL-7アミノ酸配列は、Genbank受託番号NM 173924(配列番号:2)を有し、図2に示され;並びに、ヒツジのIL-7アミノ酸配列は、Genbank受託番号U10089(配列番号:3)を有し、図3に示されている。これらのポリペプチド種の各々のシグナル配列は、これらの図の各々において太字で示され、典型的にはIL-7部分が担体タンパク質のC-末端に融合されている場合は含まれていない。
【0018】
IL-7タンパク質の「変種」は、1個又は複数のアミノ酸が変更されたアミノ酸配列として定義される。この変種は、「保存的」変化を有することができ、ここで置換されたアミノ酸は、同様の構造的又は化学的特性を有し、例えばロイシンがイソロイシンで交換されている。より稀には、変種は、「非保存的」変化を有することができ、例えばグリシンがトリプトファンで交換されている。同様のわずかな変種は、アミノ酸欠失もしくは挿入、又はそれら両方も含むことができる。どの及びどのくらい多くのアミノ酸残基が、生物学的活性の除去を伴わずに、置換、挿入又は欠失されるかを決定する指針は、当該技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば分子モデリング又はアラインメント作製のソフトウェアを用いて認めることができる。本発明に含まれる変種IL-7タンパク質は、IL-7活性を保持するIL-7タンパク質を含む。付加、置換又は欠失も含むIL-7ポリペプチドも、そのタンパク質が実質的に同等の生物学的IL-7活性を保持する限りは、本発明に含まれる。例えば、IL-7タンパク質の完全長型と同等の生物学的活性を保持するIL-7短縮型は、本発明の範囲内に含まれる。IL-7タンパク質の活性は、下記実施例6に説明されたような、in vitro細胞増殖アッセイを用いて測定することができる。本発明のIL-7変種の活性は、野生型IL-7と比べ、生物学的活性の少なくとも10%、20%、40%、60%を維持するが、より好ましくは80%、90%、95%を、なお更に好ましくは99%を維持する。
【0019】
変種IL-7タンパク質は、野生型IL-7と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも多い配列同一性を有するポリペプチドも含む。ふたつのアミノ酸配列の又はふたつの核酸の同一性の割合を決定するために、これらの配列を、最適な比較を目的として並置する(例えば、ギャップを、第二のアミノ酸又は核酸配列との最適なアラインメントのために、第一のアミノ酸又は核酸配列の配列へ導入することができる)。ふたつの配列間の同一性の割合は、それらの配列により共有された同一の位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。ふたつの配列間の同一性の割合の決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。ふたつの配列比較に使用される数学的アルゴリズムの好ましい非-限定的例は、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、87:2264-68 (1990))、改変されたKarlin及びAltschulの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:5873-77(1993))である。このようなアルゴリズムは、AltschulらのNBLAST及びXBLASTプログラム(J. Mol. Biol.、215:403-10 (1990))に組込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラムにより、スコア=100、ワードレングス=12で行うことができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラムにより、スコア=50、ワードレングス=3で行うことができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschulらの論文(Nucleic Acids Research、25(17):3389-3402 (1997))に説明されたように使用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができる。
【0020】
本発明のFc-IL-7融合タンパク質のIL-7部分中の潜在的なT-細胞又はB-細胞エピトープを除去又は改変することができる。例証的に脱免疫された(deimmunized)IL-7部分は、米国特許仮出願「低下した免疫原性を伴うIL-7変種」(代理人整理番号LEX-035PR)に開示されており、これは米国特許商標局へ2004年12月9日に出願された。
【0021】
担体タンパク質
担体タンパク質は、IL-7タンパク質へ共有的に融合された任意の部分である。ひとつの態様において、担体タンパク質は、アルブミン、例えばヒト血清アルブミンである。別の態様において、担体タンパク質は、Ig重鎖などの免疫グロブリン(Ig)部分である。このIg鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMに由来することができる。本発明に従いIg部分は、無傷の抗体を形成し、及び体内の特異的標的部位へIL-7融合タンパク質を方向付けることができる。抗体標的化の使用を生じる融合タンパク質は、当該技術分野において公知である。別の態様において、担体Ig部分は更に、Ig軽鎖を含む。
【0022】
ひとつの態様において、Ig部分は、Fc領域を含む。本明細書において使用される「Fc部分」は、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリンの、定常領域由来のドメインで定常領域の断片、アナログ、変種、変異体又は誘導体を含むものを包含している。適切な免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、及び他のクラスを含む。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC-末端領域と相同な天然又は合成により生成されたポリペプチドと定義され、これはCH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はCH4ドメインを、個別に又はいずれかの組合せで含むことができる。本発明において、Fc部分は典型的には、少なくともCH2ドメインを含む。例えばFc部分は、ヒンジ-CH2-CH3を含む。あるいはFc部分は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメイン及び/又はCH4ドメインの全て又は一部を含むことができる。
【0023】
免疫グロブリンの定常領域は、Fc受容体(FcR)結合及び補体結合を含む多くの重要な抗体機能に関与する。重鎖定常領域には5種の主なクラスがあり、これはIgA、IgG、IgD、IgE、及びIgMに分類される。例えばIgGは、1、2、3及び4の4種のサブクラスに分類され、これらは各々、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4としても知られている。
【0024】
IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的なFcγ受容体(FcγR)の3種のクラス(すなわちFcγRI、FcγRII、及びFcγRIII)を含む細胞受容体の複数のクラスと相互作用する。IgGのFcγR受容体への結合に重要な配列は、CH2及びCH3ドメインに局在することが報告されている。抗体の血清半減期は、その抗体がFc受容体(FcR)へ結合する能力により影響を受ける。同様に免疫グロブリン融合タンパク質の血清半減期も、そのような受容体に結合する能力の影響を受ける(Gilliesら、Cancer Res.、59:2159-66 (1999))。IgG1と比べ、IgG2及びIgG4のCH2及びCH3ドメインは、生化学的に検出不可能であるか又は低下したFc受容体への結合親和性を有する。IgG2又はIgG4のCH2及びCH3ドメインを含む免疫グロブリン融合タンパク質は、IgG1のCH2及びCH3ドメインを含む対応する融合タンパク質と比べ、より長い血清半減期を有することが報告されている(米国特許第5,541,087号;Loら、Protein Engineering、11: 495-500 (1998))。従って本発明のある態様において、好ましいCH2及びCH3ドメインは、例えば、IgG2又はIgG4のような、低下した受容体結合親和性及びエフェクター機能を伴う、抗体アイソタイプに由来する。より好ましいCH2及びCH3ドメインは、IgG2に由来する。
【0025】
ヒンジ領域は通常、重鎖定常領域のCH1ドメインのC-末端に局在化される。IgGアイソタイプにおいて、ジスルフィド結合は典型的には、このヒンジ領域において生じ、最終の四量体抗体分子を形成することを可能にする。この領域は、プロリン、セリン及びトレオニンが多い。本発明に含まれる場合、ヒンジ領域は典型的には、ふたつのFc部分を連結するジスルフィド結合を形成するためにシステイン残基を含む天然の免疫グロブリン領域と少なくとも相同である。ヒト及びマウス免疫グロブリンのヒンジ領域の代表的配列は、当該技術分野において公知であり、Borrebaeck編集の「Antibody Engineering, A Practical Guide」(1992)、W. H. Freeman and Co.に認められる。本発明に適したヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、及び他の免疫グロブリンクラスに由来することができる。
【0026】
IgG1ヒンジ領域は、3個のシステインを有し、その2番目及び3番目は、免疫グロブリンの2本の重鎖の間のジスルフィド結合に関連している。これらの同じ2個のシステインは、Fc部分に有効かつ一貫したジスルフィド結合をもたらす。従って、本発明の好ましいヒンジ領域は、IgG1に由来し、より好ましくはヒトIgG1に由来し、ここで第一のシステインは、好ましくは別のアミノ酸、好ましくはセリンへ変異される。
【0027】
IgG2アイソタイプヒンジ領域は、組換えシステムにおける分泌時にオリゴマー化及び恐らく不正確なジスルフィド結合を促進する傾向がある4個のジスルフィド結合を有する。適切なヒンジ領域は、IgG2ヒンジに由来することができ;最初の2個のシステインは、各々好ましくは別のアミノ酸へ変異される。
IgG4のヒンジ領域は、非効率的に鎖内ジスルフィド結合を形成することがわかっている。しかし本発明に適したヒンジ領域は、IgG4ヒンジ領域に由来し、好ましくは重鎖-由来の部分の間のジスルフィド結合の正確な形成を増強する変異を含む(Angalら、Mol. Immunol.、30: 105-8 (1993))。
【0028】
本発明に従い、Fc部分は、異なる抗体アイソタイプに由来する、CH2及び/又はCH3及び/又はCH4ドメイン及びヒンジ領域、すなわちハイブリッドFc部分を含むことができる。例えばひとつの態様において、Fc部分は、IgG2又はIgG4に由来したCH2及び/又はCH3ドメイン並びにIgG1に由来した変異体ヒンジ領域を含む。本明細書において、Fcγ2(h)は、ヒンジがIgG1に由来し、及び残りの定常ドメインがIgG2に由来する態様を意味する。あるいは、別のIgGサブクラス由来の変異体ヒンジ領域は、ハイブリッドFc部分において使用される。例えば、ふたつの重鎖の間の効率的ジスルフィド結合を可能にするIgG4ヒンジの変異体型を使用することができる。変異体ヒンジは、最初の2個のシステインが各々別のアミノ酸に変異されているIgG2ヒンジに由来することもできる。このようなハイブリッドFc部分は、高-レベル発現を促進し、及びFc-IL-7融合タンパク質の正確な集成を改善する。そのようなハイブリッドFc部分の集成は、米国特許出願公開番号第2003-0044423号に開示されている。
【0029】
一部の態様において、Fc部分は、一般にFc融合タンパク質の血清半減期を延長するアミノ酸改変を含む。そのようなアミノ酸改変は、Fc受容体結合又は補体結合活性を実質的に減少又は排除する変異を含む。例えば免疫グロブリン重鎖のFc部分内のグリコシル化部位は、除去することができる。IgG1において、このグリコシル化部位は、アミノ酸配列Gln-Tyr-Asn-Ser(配列番号:30)内のAsn297である。別の免疫グロブリンアイソタイプにおいて、グリコシル化部位はIgG1のAsn297に相当している。例えばIgG2及びIgG4において、グリコシル化部位はアミノ酸配列Gln-Phe-Asn-Ser(配列番号:29)内のアスパラギンである。従ってIgG1のAsn297の変異は、IgG1由来のFc部分のグリコシル化部位を除去する。ひとつの態様において、Asn297は、Glnに置換される。別の態様において、アミノ酸配列Gln-Tyr-Asn-Ser(配列番号:30)内のチロシンは、アスパラギン変異から生じる可能性のある非-自己T-細胞エピトープを排除するように更に変異される。本明細書において、T-細胞エピトープとは、MHCクラスII分子と相互作用又は結合するタンパク質中のポリペプチド配列である。例えばIgG1重鎖内のアミノ酸配列Gln-Tyr-Asn-Ser(配列番号:30)は、Gln-Ala-Gln-Ser(配列番号:28)アミノ酸配列に置換され得る。同様にIgG2又はIgG4において、アミノ酸配列Gln-Phe-Asn-Ser(配列番号:29)内のアスパラギンの変異は、IgG2又はIgG4重鎖に由来するFc部分のグリコシル化部位を除去する。ひとつの態様において、アスパラギンはグルタミンに置換される。別の態様において、アミノ酸配列Gln-Phe-Asn-Ser(配列番号:29)内のフェニルアラニンは、アスパラギン変異から生じる可能性のある非-自己T-細胞エピトープを排除するように更に変異される。例えば、IgG2又はIgG4重鎖内のアミノ酸配列Gln-Phe-Asn-Ser(配列番号:29)は、Gln-Ala-Gln-Ser(配列番号:28)アミノ酸配列と交換することができる。
【0030】
Fc部分及び非-Fc部分の接合部近傍のアミノ酸の変更は、Fc融合タンパク質の血清半減期を劇的に増加することができることも観察される。(米国特許出願公開番号第2002-0147311号)。従って本発明のFc-IL-7又はIL-7-Fc融合タンパク質の接合部領域は、免疫グロブリン重鎖及びIL-7の天然の配列に対して、好ましくは接合点の約10個のアミノ酸内に位置する変更を含むことができる。これらのアミノ酸変更は、例えば、Fc部分のC-末端リシンの、アラニン又はロイシンのような疎水性アミノ酸への変更により、疎水性の増加を引き起こすことができる。更に本発明の別の態様において、Fc部分のC-末端リシン及び先行するグリシンが欠失される。
【0031】
別の態様において、Fc部分は、免疫グロブリン重鎖のFc部分のC-末端近傍のLeu-Ser-Leu-Serセグメントのアミノ酸変更を含む。Leu-Ser-Leu-Ser(配列番号:27)セグメントのアミノ酸置換は、可能性のある接合性のT-細胞エピトープを排除する。ひとつの態様において、Fc部分のC-末端近傍のLeu-Ser-Leu-Ser(配列番号:27)アミノ酸配列は、Ala-Thr-Ala-Thr(配列番号:26)アミノ酸配列に置換される。別の態様において、Leu-Ser-Leu-Ser(配列番号:27)セグメント内のアミノ酸は、グリシン又はプロリンなどの別のアミノ酸に置換される。IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又は他の免疫グロブリンクラス分子のC-末端近傍のLeu-Ser-Leu-Ser(配列番号:27)セグメントのアミノ酸置換に加え、接合性T-細胞エピトープの変更のための他の例証的修飾を生じる詳細な方法は、米国特許出願公開番号第2003-0166877号に開示されている。
【0032】
スペーサー
ひとつの態様において、スペーサー又はリンカーペプチドが、担体タンパク質とIL-7融合タンパク質の間に挿入される。例えばスペーサーが、Ig定常領域の最後のアミノ酸のすぐC-末端側に配置される。スペーサー又はリンカーペプチドは、好ましくは非-帯電の及びより好ましくは非-極性もしくは疎水性である。スペーサー又はリンカーペプチドの長さは、好ましくは1〜約100個のアミノ酸、より好ましくは1〜約50個のアミノ酸、又は1〜約25個のアミノ酸、更により好ましくは1〜約15個のアミノ酸、尚更に好ましくは10個未満のアミノ酸である。ひとつの態様において、スペーサーは、配列(G4S)nを含み、ここでnは5未満である。好ましい態様において、スペーサーは、配列G4SG4(配列番号:25)を含む。更に別の態様において、スペーサーは、N-連結されたグリコシル化部位として認識されるモチーフを含む。更に別の態様において、スペーサーは、位置に特異的な切断因子により認識されるモチーフを含む。本発明の別の態様において、担体タンパク質及びIL-7融合タンパク質は、合成スペーサー、例えばPNAスペーサー、すなわち好ましくは非-帯電の、より好ましくは非-極性又は疎水性のスペーサーにより分離される。
【0033】
IL-7融合タンパク質の作製
本発明の合成の有用な態様の非-限定的方法、更にはin vitro特性、薬物動態及び動物モデルにおけるin vivo活性を試験する有用なアッセイは、本明細書の実施例において説明される。
本発明のIL-7融合タンパク質は、当該技術分野において公知の組換え発現ベクターを用いて作製することができる。用語「発現ベクター」は、所望のIL-7融合タンパク質をコードするDNAを発現するために使用される複製可能なDNA構築物であって、(1)遺伝子発現において調節の役割を有する遺伝エレメント(複数)、例えば、プロモーター、オペレーター、又はエンハンサー、(2)(1)に機能的に連結された、mRNAへ転写され及びタンパク質へ翻訳される所望のIL-7融合タンパク質をコードしているDNA配列、および、(3)適切な転写及び翻訳の開始及び終結配列、の集合物を含む転写単位を含むDNA構築物を意味する。プロモーター及び他の調節エレメントの選択は一般に、意図された宿主細胞に応じて変動する。本発明の好ましい発現ベクターは、Loらの論文(Protein Engineering、11: 495 (1998))に説明された、PdCs-huFc発現ベクター由来のFc発現ベクターである。
【0034】
好ましい例において、IL-7融合タンパク質をコードしている核酸は、組換えDNA技法を用い、宿主細胞へトランスフェクションされる。本発明の状況において、外来DNAは、本発明のタンパク質をコードしている配列を含む。適切な宿主細胞は、原核細胞、酵母又はより高等な真核生物の細胞を含む。好ましい宿主細胞は、真核細胞である。
【0035】
この組換えIL-7融合タンパク質は、酵母宿主、好ましくはサッカロミセス種、例えばS.セレビシアエにおいて発現することができる。ピキア又はクルイベロミセスなどの他の属の酵母も使用することができる。酵母ベクターは一般に、酵母プラスミド由来の複製起点又は自律複製配列(ARS)、プロモーター、IL-7融合タンパク質をコードしているDNA、ポリアデニル化配列及び転写終結配列並びに選択遺伝子を含む。酵母ベクターに適したプロモーター配列は、メタロチオネイン、3-ホスホグリセレートキナーゼ、又は他の解糖系酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-4-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ及びグルコキナーゼのプロモーター類を含む。
【0036】
様々な哺乳動物又は昆虫細胞培養システムを使用し、組換えタンパク質を発現することができる。昆虫細胞におけるタンパク質生成のためのバキュロウイルスシステムは、当該技術分野において周知である。適切な哺乳動物宿主細胞株の例は、NS/0細胞、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、及びBHK細胞株を含む。追加の適切な哺乳動物宿主細胞は、CV-1細胞(ATCC CCL70)及びCOS-7細胞を含み、両方ともサル腎臓に由来する。別の適切なサル腎臓細胞株であるCV-1/EBNAは、CV-1細胞株の、エプスタイン-バーウイルス核抗原-1(EBNA-1)遺伝子による及びCMV調節配列を含むベクターによるトランスフェクションによりもたらされた(McMahanら、EMBO J.、10: 2821 (1991))。EBNA-1遺伝子は、EBV複製起点を含む発現ベクター、例えばHAV-EO又はpDC406のエピソーム複製を可能にする。
【0037】
哺乳動物発現ベクターは、複製起点、発現される遺伝子に連結された適切なプロモーター及びエンハンサー、並びに他の5'又は3'フランキング非転写配列、並びに5'又は3'非翻訳配列、例えば必要なリボソーム結合部位、ポリ-アデニル化部位、スプライシングドナー及びアクセプター部位、並びに転写終結配列などの、転写されないエレメントを含んでも良い。通常使用されるプロモーター及びエンハンサーは、ポリオーマ、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、及びヒトサイトメガロウイルスに由来する。SV40ウイルスゲノムに由来したDNA配列、例えばSV40起源の初期及び後期プロモーター、エンハンサー、スプライス部位、及びポリアデニル化部位を使用し、異種DNA配列の発現に必要な他の遺伝子エレメントを提供することができる。
【0038】
宿主細胞からのIL-7融合タンパク質の分泌に関して、発現ベクターは、シグナルペプチド又はリーダーペプチドをコードしているDNAを含む。本発明において、IL-7の未変性のシグナル配列をコードしているDNA、あるいは他のインターロイキン又は分泌されたIg分子からのシグナル配列のような、異種シグナル配列をコードしているDNAを使用することができる。
【0039】
本発明は、IL-7融合タンパク質をコードしているDNA配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を、発現を促進する条件下で培養することを含む、本発明の組換えタンパク質を製造する方法も提供する。その後所望のタンパク質は、培養培地から又は細胞抽出物から精製される。例えば、組換えタンパク質を培養培地へ分泌する発現システムからの上清は、最初に例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットなどの、市販のタンパク質濃縮フィルターを用い、濃縮することができる。濃縮工程後、この濃縮物を、当該技術分野において公知のように、適切な精製マトリックスへ加えることができる。例えばFc-IL-7融合タンパク質は、プロテインAに結合されたマトリックスを用いて簡便に捕獲される。
【0040】
「単離された」又は「精製された」IL-7融合タンパク質又はそれらの生物学的活性部分は、IL-7融合タンパク質が、細胞物質又はそのIL-7融合タンパク質が由来する細胞若しくは組織給源由来の他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、又は化学合成された場合には、化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、IL-7融合タンパク質が、それが単離されるか又は組換え的に生成された細胞の細胞成分から分離されているような、IL-7融合タンパク質の調製物を含む。ひとつの態様において、「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、非-IL-7融合タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも称される)を約30%(乾燥質量)未満、より好ましくは非-IL-7融合タンパク質を約20%未満、更に好ましくは非-IL-7融合タンパク質を約10%未満、最も好ましくは非-IL-7融合タンパク質を約5%未満有する、IL-7融合タンパク質の調製を含む。IL-7融合タンパク質又はそれらの生物学的活性部分が、組換え給源から精製される場合、好ましくは培養培地を実質的に含まない。すなわち培養培地は、このタンパク質調製物の量の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満である。
【0041】
用語「実質的に純粋なIg-IL-7融合タンパク質」は、Ig-IL-7融合タンパク質が、調製物中のタンパク質の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は99%を構成する調製物を意味する。ひとつの態様において、本発明は、Cys2とCys92、Cys34とCys129、及びCys47とCys141の間にジスルフィド結合パターンを有するIg-IL-7融合タンパク質の実質的に純粋な調製物を含む。別の態様において、本発明は、Asn116はグリコシル化されないが、Asn70及びAsn91はグリコシル化されるようなIg-IL-7融合タンパク質の実質的に純粋な調製物を特徴とする。
【0042】
Fc-IL-7タンパク質を使用する治療法
本発明のIL-7融合タンパク質は、例えば、免疫不全症の治療、及び事実上免疫抑制である疾患又は治療の後に生じる、免疫系の天然の再構成の促進において有用である。例えば、IL-7融合タンパク質を使用し、感染症病原体、免疫障害を治療し、及び特定の免疫細胞型の成長(増殖を含む)を増強することができる。更にこのIL-7融合タンパク質は、膀胱癌、肺癌、脳腫瘍、乳癌、皮膚癌、及び前立腺癌などの癌の治療において使用することができる。一例において、化学療法の1回又は複数回のサイクルを受けている患者の免疫細胞補給を補助するために、先に説明されたIL-7融合タンパク質により患者を治療することに有用である。あるいは、IL-7融合タンパク質は、養子T-細胞移植において有用である。例えばIL-7融合タンパク質は、移植されたT-細胞の増殖及び生存を促進するため、又は単離されたT-細胞集団をex vivoにおいて拡張するために、投与することができる。あるいは、先に説明されたIL-7融合タンパク質を、HIV患者、移植を受けている高齢患者、又は抑制された免疫系機能を伴う他の患者へ投与することも有用である。
【0043】
投与
本発明のIL-7融合タンパク質は、投与に適した医薬組成物へ組込むことができる。このような組成物は典型的には、IL-7融合タンパク質及び医薬として許容できる担体を含有する。本明細書において使用される言葉「医薬として許容できる担体」は、医薬投与に適合可能ないずれか及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬活性物質のためのこのような媒体及び物質の使用は、当該技術分野において周知である。
【0044】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合可能であるように製剤される。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜、及び直腸投与を含む。非経口、皮内、又は皮下適用のための液剤又は懸濁剤は、以下の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒のような、無菌の希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの、抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの、抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などの、キレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの、緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの、張性調節剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの、酸又は塩基により調節することができる。非経口用調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は反復投与用バイアル中に封入することができる。
【0045】
本発明のIL-7融合タンパク質を含有する医薬品は、濃度0.01〜100%(w/w)を有することができるが、この量は医薬品の剤形に応じて変動する。
投与量は、患者の体重、疾患の重症度、及び医師の判断に応じて変動する。しかし一般には注射の場合、約0.01〜約10mg/kg体重、好ましくは約0.02〜約2mg/kg、より好ましくは約0.5mg/kgの投与が妥当である。この投与量は、疾患の重症度及び医師の判断に応じ、1日1回又は複数回で投与される。
【0046】
本発明の組成物は、1種又は複数の他の治療薬、例えば血液細胞の補給に有用であることがわかっている分子と同時投与される場合に有用である。例えばこの分子は、赤血球の補給に使用されることがわかっているエリスロポエチン、好中球の補給に使用されるG-CSF、又は顆粒球及びマクロファージの補給に使用されるGM-CSFであってよい。
【0047】
実施例1.
ヒト(hu)Fc-IL-7及びhuFc-IL-7変種のクローニング
成熟型ヒトIL-7(すなわちそのN-末端シグナル配列を欠いている)をコードしている核酸を、各々、SmaI及びXhoI制限部位を組入れたフォワードプライマー及びリバースプライマーを使用する、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。増幅されたPCR産物は、pCRIIベクター(Invitrogen, カールスバッド, CA)にクローニングし、その配列を検証した。成熟型IL-7のアミノ酸配列は、配列番号:1として示した。SmaI/XhoI消化したIL-7断片は、同様に処理されたpdCs-huFc由来の発現ベクターへ移し、huFcとIL-7の間のキメラ配列を生じ、IL-7は、インフレームでFcのCH3部分をコードしている配列の直接下流に配置した(Loら、Protein Engineering、11: 495 (1998)参照)。
【0048】
一連の発現ベクターは、一般にIgのヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含むFc断片をコードし、かつFc領域の特異的変更を取込むように操作されているpdCs-huFcベクターからもたらされる。従って、IL-7断片がこれらのベクター間をシャトルすることにより、Fc骨格が異なる一連のhuFc-IL-7融合タンパク質が作出される。様々な骨格を作製するために、まず当該技術分野において公知の方法により適切な変異がFc配列へ導入される。pdCs-huFc由来のベクターのFc領域は、AflII制限部位及びSmaI制限部位に挟まれて位置しているので、適切に改変された骨格の核酸に、各々AflII及びSmaIの制限部位をそれぞれ組込んでいるプライマーを使用するPCRを施すことにより、得られるFcをコードしている核酸断片は、pdCs-huFc由来のベクター中へAflII-SmaI断片として置換することができる。AflII配列CTTAAGC(配列番号:24)は、GAGCCCAAA(配列番号:23)で始まるFc配列の上流にあり、これは図20に示されたようにヒンジ領域の始まりを表している。SmaI部位CCCGGGT(配列番号:17)は、図12の下線を付けた核酸により示されるように、CH3領域の末端側にあり、CH3領域の末端でのリシンからアラニン変異へのアラニン残基に先行するPro-Glyアミノ酸をコードしている。
【0049】
例えばIgG1サブクラス由来のヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを有するhuFcγ1-IL-7が構築される。Fc融合タンパク質の場合、IgGγ1ヒンジ領域は、加えて第一のシステインがセリンと置換している変異を含む。このコードされた融合タンパク質の配列は、図4(配列番号:4)に示され、他方配列番号:22の配列は、このベクターの成熟型huFcγ1骨格をコードしている。
【0050】
加えて、先に説明された方法に従い、Fc上のグリコシル化部位(IgGγ1のN297に相当)に加え、可能性のある免疫原性T-細胞エピトープを排除するために、YNのAQへのジペプチド変異を含むFcγ1-IL-7融合タンパク質を作製した。huFcγ1(YN>AQ)の成熟型Fc骨格配列は、配列番号:21に明らかにされている。チロシン及びアスパラギンの代わりのアラニン及びグリシンの置換は、まず重複PCR法によるFc骨格への変異の導入により実現した。2種の重複する相補的変異促進性プライマーを使用し、2種のPCR断片を作製し、これらを増幅の第二ラウンドにおいて鋳型として使用し、適切なコドン置換を含む単独の断片を作製した。センス方向の変異導入プライマーは、5'-AGCAGGCCCAGAG CACGTACCGTGTGGT-3'(変異に下線を付けた)(配列番号:36)であった。相補鎖は、5'-GTACGTGCTCTGGGCCTGCTCCTCCCGC-3'(配列番号:37)であった。フランキングフォワードプライマーは、5'-CTCTCTGCAGAGCCCAAATCT-3'(配列番号:38)であり、これもPstI部位を含む。アンチセンス方向で、フランキングリバースプライマーは、5'CAGGGTGTACACCTGTGGTTC-3'(配列番号:33)であり、これもBsrGI部位を含む。増幅後、この配列は、標準の方法を用いて検証し、BsrGI及びPstIによる制限切断した。次に、得られた断片でFc領域の非-変異体断片を置換した。
【0051】
先に説明された技術を用いてhuFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7も構築した。この融合タンパク質は、IgGγ1サブクラスに由来した変更されたヒンジ領域を含む一方で、CH2及びCH3ドメインは、IgGγ2サブクラスに由来した。さらに、Fc上のグリコシル化部位(IgGγ1のN297に相当)に加えて可能性のある免疫原性T-細胞エピトープを除去するために、FNからAQへのジペプチド変異を含めた。コードされた融合タンパク質の配列は図5(配列番号:5)に示した。成熟型Fc骨格huFcγ2(h)(FN>AQ)の配列は配列番号:19に示した。
【0052】
加えて、Fc部分とIL-7部分の間に可変性リンカー配列を含んだFc-IL-7融合タンパク質を作製した。例えば、配列GGGGSGGGGSGGGGS(リンカー1、配列番号:34)のリンカーポリペプチドを挿入した。huFcγ1(リンカー1)-IL-7を作製するために、配列5'-G GGT GCA GGG GGC GGG GGC AGC GGG GGC GGA GGA TCC GGC GGG GGC TC-3'(配列番号:18)の合成オリゴヌクレオチド二重鎖を、発現ベクターpdCs-huFc-IL-7の唯一のSmaI部位に、平滑末端連結により挿入し、その二重鎖の配向を検証した。フォワードプライマーは、SmaI部位に広がるコドン(C CCG GGT)(配列番号:17)によりコードされたアミノ酸残基Pro-Gly、及びCH3領域の結果としてのAla残基(コードされたリシンのアラニン置換の結果)が維持されるように設計した。コードされた融合タンパク質のアミノ酸配列は、図6(配列番号:6)に示している。
【0053】
配列GGGGSGGGG(リンカー2、配列番号:25)を持つより短いリンカーポリペプチドを含んだ、追加のFc-IL-7融合タンパク質を構築した。huFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7の作製のために、増幅されたPCR産物を適切なpdCs-Fc-IL-7鋳型プラスミド上で、プライマー対5'-CCCGGGCGCCGGCGGTGGAGGATCAGGTGGTGGCGGTGATTGTGATATTGAAGGTAAAGATG-3'(コードされたリンカー配列を含む、配列番号:15)及び5'-ATCATGTCTGGATCCCTCGA-3'(配列番号:14)から得、これをpCRIIベクター(Invitrogen, カールスバッド, CA)にクローニングし、その配列を検証した。次にリンカー2/IL-7をコードしているXmaI/XhoI消化された断片を、同様に処理したpdCs-huFc由来の発現ベクターに移した。このベクターを、配列番号:21の成熟型Fc骨格huFcγ1(YN>AQ)を含むように改変した。コードされた融合タンパク質のアミノ酸配列を、図7(配列番号:7)に示した。
【0054】
同様に、huFcγ1(YN>AQ,d)(リンカー2)-IL-7を、プライマー対5'-CCCGGGCGGTGGAGGATCAGGTGGTGGCGGTGATTGTGATATTGAAGGTAAAGATG-3'(配列番号:16)及び5'-ATCATGTCTGGATCCCTCGA-3'(配列番号:12)を用いて作製した。huFcγ1(YN>AQ,d)(リンカー2)-IL-7は、先行する融合タンパク質huFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7とは、融合タンパク質のFc部分の末端の2個のアミノ酸残基を欠いている点が異なる。特にFc部分は、配列...ATATPGA(配列番号:11)で終わるのではなく、配列....ATATP(配列番号:10)を末端としている。このコードされた融合タンパク質のアミノ酸配列は図8(配列番号:8)に示した。
【0055】
実施例2.
Fc-IL-7融合タンパク質のトランスフェクション(形質移入)及び発現
エレクトロポレーションを用い、先に説明されたIL-7融合タンパク質をコードしているDNAをマウス骨髄腫NS/0細胞株に導入した。エレクトロポレーションを行うために、NS/0細胞を、10%熱-失活したウシ胎仔血清、2mMグルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地において増殖させた。約5x106個細胞を、PBSで1度洗浄し、0.5ml PBS中に再懸濁した。その後huFcγ1-IL-7の直線状プラスミドDNAの10μgを、これらの細胞と共に、Gene Pulserキュベット(0.4cm電極間隙、BioRad)中で、氷上で10分間インキュベーションした。Gene Pulser(BioRad, ハーキュレス, CA)を用い、0.25V及び500μFに設定してエレクトロポレーションを行った。細胞を氷上で10分間回復させ、その後増殖培地中に再懸濁し、2個の96ウェルプレート上に播種した。
【0056】
100nMメトトレキセート(MTX)の存在下(トランスフェクションの2日後に増殖培地に添加)での増殖により安定してトランスフェクションされたクローンを選択した。これらの細胞に3日毎に2〜3回培地供給(fed)した。2〜3週間内にMTX-耐性クローンが出現した。クローンの上清を、抗-Fc抗体によるELISAによりアッセイし、IL-7融合タンパク質を高生産するクローンを同定した。高生産クローンを単離し、100nM MTXを含有する増殖培地において増殖した。典型的には、無血清増殖培地、例えばH-SFM又はCD培地(Life Technologies)を使用した。
【0057】
実施例3.
huFc-IL-7融合タンパク質の生化学分析
通常のSDS-PAGE分析を用い、融合タンパク質の完全性を評価した。huFc-IL-7変種であるhuFcγ1-IL-7、huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7、huFcγ1(リンカー1)-IL-7、huFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7及びhuFcγ1(YN>AQ,d)-IL-7の間の差異を調べた。NS/0細胞から発現されたhuFc-IL-7融合タンパク質を、それが分泌された組織培養培地からプロテインA Sepharoseビーズ(Repligen, ニードハム, MA)上に捕獲し、タンパク質試料緩衝液中でβ-メルカプトエタノールのような還元剤と共に又は無しで煮沸することにより溶離した。これらの試料を、SDS-PAGEにより分離し、タンパク質バンドをクマシー染色により視覚化した。SDS-PAGEによれば、試験したhuFc-IL-7融合タンパク質は実質的に1本のバンドとしてゲル上に現れたので、これらは一般に良く発現された。リンカーを含むhuFc-IL-7変種の試料においては切断された(clipped)ものを表しているであろう第二のバンドが特に減少することがわかった。
【0058】
精製されたhuFc-IL-7融合タンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によっても分析し、huFc-IL-7変種が凝集した程度を評価した。簡単に述べると、細胞培養物上清を、予め平衡としたファストフロー・プロテインA Sepharoseカラムに負荷し、このカラムを生理的緩衝液(100mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、中性pHなど)で十分に洗浄し、結合したタンパク質を、先と同じ塩緩衝液の、pH約2.5〜3で溶離した。画分は直ぐに中和した。
【0059】
試験した各融合タンパク質について、生成物の少なくとも50%、一般には65%より多くが単量体であることがわかった。本明細書において、「単量体」は非-凝集タンパク質を意味する。Fc部分を伴うタンパク質は、通常2本のポリペプチド鎖を含み(2個のFc部分が同じポリペプチドに存在しない限りは)「単位-二量体」と考えられるジスルフィド結合された複合体を通常形成することは理解される。「単量体」とは、このようなジスルフィド結合された種を排除することを意図するものではなく、単にそれらのタンパク質が凝集していないことを意味しているに過ぎない。事実上単量体huFc-IL-7融合タンパク質調製物(約98%)を得るために、Sepharose-プロテインA精製からの溶離物を分取SECカラム(Superdex)に装荷し、単量体ピーク画分を収集した。典型的には、回収されたタンパク質の濃度は、約1mg/mlであった。必要であるならば、この試料を、例えばスピン透析(例えば、VivaSpin)により分子量カットオフ値10〜30kDaで濃縮した。
【0060】
ジスルフィド結合
IL-7は、ジスルフィド結合を形成する6個のCys残基を、成熟型IL-7タンパク質配列の位置Cys2、Cys34、Cys47、Cys92、Cys129及びCys141に含む。この融合タンパク質のIL-7部分に存在するジスルフィド結合のパターンを決定することにより、huFcγ1-IL-7のフォールディングを評価した。簡単に述べると、huFcγ1-IL-7のペプチドマップをトリプシン処理した物質から作製し、特徴となるペプチド断片の存在について分析した。huFcγ1-IL-7タンパク質は、未変性型で又は還元及びアルキル化後のいずれかでトリプシン処理した。グリコシル化され得るペプチド断片を説明するために、未変性のタンパク質及び変性したタンパク質の試料を、更にPNGaseFで処理し、糖鎖を除去し、その後トリプシン消化した。ペプチド断片は、HPLCにより分画し、それらの質量を質量分析により決定した。
【0061】
Fcγ1-IL-7について、ジスルフィド結合Cys47-Cys141(“3-6”)を含むペプチド断片は、質量1447.6を有すると推定されたのに対し、ジスルフィド結合Cys2-Cys141(“1-6”)を含むペプチド断片は、質量1426.6を有すると推定された。同様にジスルフィド結合Cys34-Cys129(“2-5”)を含むペプチド断片は、質量2738.3を有すると推定された。実際、質量1447.6(“3-6”)及び2738.3(“2-5”)のペプチド断片が、試料がPNGaseFで処理されたかどうかに関わりなく、未変性のFc-IL-7タンパク質由来の試料において同定されたが、還元されたFc-IL-7由来の試料においては同定されなかった。逆に質量1426.6(“1-6”)のペプチド断片は、いずれの試料においても認められなかった。従ってFcγ1-IL-7は、ジスルフィド結合Cys47-Cys141及びCys34-Cys129は含むが、Cys2-Cys141は含んでいなかった。推定質量2439.2のペプチド断片は、Cys2-Cys92(“1-4”)を含む断片に相当し、これはPNGaseFで処理した未変性の融合タンパク質由来の試料においてのみ同定されたことが注目された。実際Cys92は、Asn91Cys92Thr93のトリペプチドモチーフ内に存在し、このことは、huFcγ1-IL-7においてAsn91がグリコシル化されることを示している。従ってhuFcγ1-IL-7において、ジスルフィド結合パターンは、Cys2-Cys92、Cys34-Cys129、及びCys47-Cys141と一致する。この実験は、Fc-IL-7鎖のジスルフィド結合の立体配置は、細菌により生成されリフォールディングされたIL-7について報告された実験的に決定された立体配置(Cosenzaら、J. B. C.、272: 32995 (1997))とは対照的であることを明らかにした。
【0062】
N-結合グリコシル化部位
ヒトIL-7は、成熟型IL-7タンパク質配列の位置Asn70、Asn91及びAsn116に、3個の可能性のあるグリコシル化部位を含む。huFcγ1-IL-7(還元/アルキル化された)のペプチドマップを、特徴となるペプチド断片の存在について分析した。グリコシル化されている場合、これらの特徴となる断片は、PNGaseFで処理された試料においてのみ明らかであろう。Asn70、Asn91、及びAsn116の未改変残基を含むトリプシン処理したペプチド断片について、各々、推定質量1489.7、1719.9及び718.3であった。
【0063】
実際、PNGaseFで処理された試料において質量1489.7及び1719.9のペプチド断片が同定されたが、未処理の試料においては存在せず、このことは、Asn70(配列...MNSTG...に含まれる)(配列番号:31)、及びAsn91(配列...LNCTG...に含まれる)(配列番号:32)は、実際グリコシル化されたことを示している。驚くべきことに、SLEENK(配列番号:35)に対応する質量718.3のトリプシン処理された断片がPNGaseFで処理した試料及び未処理の試料の両方で同定され、このことはAsn116はグリコシル化されないことを示している。ヒトIL-7配列...PTKSLEENKSLKE...(配列番号:13)(配列番号:1参照)中のAsn116は、N-結合グリコシル化部位であると予想されるので、このことは予想外であった。NKS推定グリコシル化部位は、ヒツジ及びウシに加え、ヒトにおいて保存されている。
【0064】
ジスルフィド結合パターン及びN-結合グリコシル化部位の分析を、Fcγ1-(リンカー1)-IL-7及びFcγ2h(FN>AQ)-IL-7の試料で繰返し、同様の結果を得た。
【0065】
実施例4.
ELISA手法
MTX-耐性クローンの上清及び他の被験試料中のタンパク質生成物の濃度を、以下に詳述した抗-huFc ELISAにより決定した。ELISAプレートを、PBS中5μg/mLのAffiniPureヤギ抗-ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Laboratories, ウェストグローブ, PA)のコートし、96-ウェルプレートで100μL/ウェルとした。コートしたプレートに蓋をし、4℃で一晩インキュベーションした。プレートを、PBS中の0.05%Tween(Tween 20)で4回洗浄し、PBS中の1%BSA/1%ヤギ血清200μL/ウェルでブロックした。ブロック用緩衝液を37℃で2時間インキュベーションした後、これらのプレートを、PBS中の0.05%Tween(Tween 20)で4回洗浄し、軽くはたいて乾燥した。被験試料を試料緩衝液(PBS中の1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%Tween)中で適宜希釈した。既知濃度のキメラ抗体(ヒトFcとの)を用いて標準曲線を作製した。標準曲線を作製するために試料緩衝液中で連続希釈を行い、125ng/mL〜3.9ng/mLの範囲の標準曲線を作製した。希釈した試料及び標準をプレートへ100μL/ウェルで添加し、このプレートを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートをPBS中の0.05%Tweenで8回洗浄した。各ウェルへ100μLの二次抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ-複合型抗-ヒトIgGを添加し、試料緩衝液で約1:120,000に希釈した。二次抗体の正確な希釈をHRP-複合型抗-ヒトIgGの各ロットについて決定した。37℃で2時間インキュベーションした後、プレートをPBS中の0.05%Tweenで8回洗浄した。
【0066】
基質溶液をプレートへ100μL/ウェルで添加した。この溶液は、30mgのOPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)、(1錠))を新たに添加した過酸化水素0.03%を含有する、0.025Mクエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液(pH5)15mLへ溶解することにより調製した。暗所で室温にて約30分間かけて発色させた。4N硫酸の100μL/ウェルの添加により反応を停止させた。このプレートを、490及び650nmの両方に設定され490nmのODから650nmのODを減算するようにプログラムされたプレートリーダーにより読み取った。
【0067】
huFc-IL-7融合タンパク質又は組換えヒトIL-7で処置した動物の血清試料中のヒトIL-7の濃度を本質的に先に説明されたようなELISAにより決定した。ヒトIL-7をマウス抗-ヒトIL-7抗体(R&D Systems, ミネアポリス, MN)により捕獲し、ヤギ抗-ヒトIL-7ビオチン抗体(R&D Systems, ミネアポリス, MN)により検出した。
【0068】
実施例5.
huFc-IL-7タンパク質の精製
Fc-含有する融合タンパク質の標準的精製を、Fcタンパク質部分のプロテインAへの親和性を基に行った。簡単に述べると、適切な融合タンパク質を発現するNS/O細胞を、組織培養培地において増殖し、発現されたタンパク質を含有する上清を収集し、予め平衡にしたパストフロー・プロテインA Sepharoseカラムに装荷した。その後カラムを緩衝液(100mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、中性pHなど)で十分に洗浄した。結合したタンパク質を、前述と同じ緩衝液で低pH(pH2.5〜3)で溶離し、画分を直ぐに中和した。
【0069】
非-凝集huFc-IL-7融合タンパク質調製物(約98%単量体)を得るために、前述の溶離液を分取SECカラム(Superdex)へ装荷し、単量性ピーク画分を収集した。典型的には、回収されたタンパク質の濃度は約0.5mg/ml〜2mg/mlであり、適切ならば、スピン透析(例えば、Viva Spin、分子量カットオフ値30kDa)により試料を濃縮した。
【0070】
実施例6.
huFc-IL-7タンパク質のin vitro活性
精製したhuFc-IL-7融合タンパク質のサイトカイン活性をin vitroで細胞増殖バイオアッセイにおいて決定した。ヒトPBMC(末梢血単核細胞)をPHA-Pにより活性化し、IL-7に反応する細胞を作出した。増殖を標準チミジン取込みアッセイで測定した。簡単に述べると、PBMCを最初に10μg/ml PHA-Pと共に5日間インキュベーションし、細胞を洗浄し、その後連続希釈したhuFc-IL-7融合タンパク質を補充した培地において合計48時間インキュベーションした。最後の12時間の間に、試料を0.3μCiの[メチル-3H]チミジン(Dupont-NEN-027)でパルスした。その後細胞を十分に洗浄し、ガラスフィルター上に収集して溶解した。DNAに取り込まれた3H-チミジンをシンチレーションカウンターで測定した。標準として、R&D Systems(ミネアポリス, MN)から得た、又は国立生物学的標準及びコントロール研究所(NIBSC)から得た野生型huIL-7タンパク質をアッセイした。
【0071】
huFc-IL-7融合タンパク質に関する細胞増殖のED50値は、標準技術に従い、用量-反応曲線をプロットし、半値反応を生じたタンパク質濃度を決定することにより得た。融合タンパク質huFcγ1-IL-7、huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7、及びhuFcγ1(リンカー1)-IL-7を評価した。これらの融合タンパク質のED50値は互いにほとんど類似しており、互いに3-倍の範囲内に収まった。従って、Fc部分におけるこれらの変更は、融合タンパク質のIL-7活性にほとんど影響を及ぼさないことがわかった。
【0072】
加えて、これらの融合タンパク質のED50値は、R&D Systemsから市販のhuIL-7について得られたED50値よりも約3〜10倍高いことがわかった。この市販の調製物は細菌において調製されており、グリコシル化されていないので、PNGaseFによる処理により酵素的に脱グリコシル化されたhuFcγ1-IL-7タンパク質を評価した。未処理形態のものと同様の活性を有することがわかった。理論に拘束されることを欲するものではないが、これらの融合タンパク質の活性が若干低下したのはIL-7部分のグリコシル化によるのではなく、IL-7部分の拘束されたN-末端から生じる立体効果によるものであろう。
【0073】
実施例7.
huFc-IL-7タンパク質の薬物動態
huFc-IL-7融合タンパク質及び組換えヒトIL-7(Peprotech, ロックヒル, NJ)の薬物動態(PK)プロファイルを評価し、その結果を図13に示した。huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7又は組換えヒトIL-7(50μg)の等モル量の単回皮下注射を、C57BL6/Jマウス群に投与した。血液試料を、注射時(すなわち、t=0分)、並びに注射後30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24、48、72、96、120及び144時間に、眼窩後方採血により得た。凝血を防ぐために、試料をヘパリンチューブに収集し、高速Eppendorf微量遠心機で12,500gにて4分間の遠心により細胞を除去した。PK値を、PK solutions 2.0(商標)ソフトウェアパッケージ(Summit Research Services, モントロース, CO)により計算した。
【0074】
投与されたIL-7濃度を、各時点でヒトIL-7に特異的なELISAにより、4つ組の血漿試料で決定した。huFc-IL-7及び組換えIL-7の薬物動態挙動は劇的に異なることがわかった。組換えヒトIL-7について、最大濃度(Cmax)は注射後2.0時間(Tmax)で23.5ng/mlであったのに対し、huFc-IL-7についてCmaxは注射後24時間で1588.7ng/mlであった。加えて、組換えヒトIL-7は、huFc-IL-7よりも迅速に吸収された(β相半減期0.9時間、対、12.4時間)のに対し、huFc-IL-7は、β相の間に循環から約9倍遅く排出された。従って、総薬物曝露の測定値としてのAUC(曲線下面積)に関して、huFc-IL-7を受け取るマウスは、組換えヒトIL-7を受け取ったマウスよりも、投与されたタンパク質に対し572倍より高く曝露された。これらのデータは、huFc-IL-7融合タンパク質の遊離の組換えヒトIL-7に対する、それらのPKに関する有意な改善を明らかにしている。更に静脈内注射によりマウスに投与されたhuFcγ1-IL-7及びhuFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7、huFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7、及びhuFcγ1(YN>AQ,d)(リンカー2)-IL-7などのhuFc-IL-7融合タンパク質のPKプロファイルは、互いに類似していることがわかった。
【0075】
実施例8.
骨髄(BM)移植後のリンパ球減少マウスにおけるhuFc-IL-7の効能
huFc-IL-7融合タンパク質の組換えヒトIL-7と比較した効能をin vivoにおいて評価した。例えば、huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7又は組換えヒトIL-7(Peprotech, ロックヒル, NJ)を、T-細胞-枯渇した骨髄(BM)の移植後のリンパ球減少したマウスへ投与し、免疫細胞集団の回復を評価した。
本質的に、BM移植前にレシピエントマウスを4時間間隔で線量600cGyの2回の全身照射により致命的に放射線照射し、PBS中に再懸濁したBM細胞をレシピエントマウスの尾静脈へ注入した。第5日から一定の間隔で、等モル量のhuFc-IL-7(7μg)又は組換えヒトIL-7(2.5μg)(Peprotech, ロックヒル, NJ)を、レシピエントマウスへ皮下投与した。実験期間中にわたり、レシピエントマウスの血液試料を採取し、試料中のリンパ球細胞の濃度を測定した。
【0076】
BM細胞移植のため、BM細胞は、BL/6.SJL(H2b, CD45.1)マウス(Jackson Labs, バーハーバー, ME)の大腿及び脛骨から無菌的に採取し、並びにMACS(登録商標)カラム(Miltenyi Biotec, アウバーン, CA)上で磁気標識されたT-細胞を除去することによりT-細胞を枯渇した。T-細胞枯渇の程度は、CD45、αβ-TCR(T-細胞)及び7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD, アポトーシス細胞)(Calbiochem, X)に対する蛍光標識した抗体によるFACS分析によりモニタリングした。レシピエントマウス1匹につき10x106個の生存(7-AAD-陰性)BM細胞(1%未満のT-細胞含有)を使用した。コンジェニックBM移植においてはB6(H2b, CD45.2)マウスをレシピエントマウス系統として使用し、アロジェニックBM移植においてはB6C3F1(H2b/k, CD45.2)マウスを選択した。
【0077】
リンパ球細胞の濃度(表1に示した)は、本質的にBrocklebank及びSparrowの論文(Brocklebank and Sparrow、Cytometry、46: 254 (2001))に説明されたように測定した。簡単に述べると、蛍光ビーズ(TruCOUNT(商標) Tubes, BD Biosciences, サンノゼ, CA)を、リンパ球-特異抗体の混合物を含有するPBSの40μlに溶解した。引き続き、抗-凝集血液10μlを添加し、混合し、暗所において室温で30分間インキュベーションした。赤血球をRed Blood Cell溶解液(BD Biosciences, サンノゼ, CA)450μl中で溶解し、試料をフローサイトメトリー(BD FACSCalibur(商標), BD Biosciences, サンノゼ, CA)で分析した。特定のリンパ球集団(例えば、B-細胞、T-細胞又は総白血球)の濃度を、リンパ球と蛍光ビーズの周囲に個別のゲートを作製し、各ゲート内の事象の数を読み取ることにより決定した。1μl当たりのゲートされたリンパ球の数は、ゲートされたリンパ球領域における事象の数をゲートされたビーズ領域における事象の数で除算することにより算出した。この数値に、試料容積を分母とする1個のTruCOUNT(商標)チューブ当たりのビーズ数(供給業者により提供される)の分数を掛け、最後に試料の希釈因子を掛けた。
【0078】
ひとつの実験において、先に特定された材料及び方法を用いて、リンパ球再構成をコンジェニックBM移植の設定において評価した。レシピエントマウスにhuFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7を用量7μg(125μg IL-7/kg体重)で投与し、リンパ球細胞を記載したように測定した。ドナーリンパ球をCD45.1陽性細胞として検出し、一方、レシピエントマウスの内在性リンパ球はCD45.2陽性細胞として検出した。リンパ球B-細胞及びT-細胞は、各々、B220及びCD3リンパ球マーカーを用いて同定した。49日目までに、ドナーリンパ球(CD45.1陽性細胞)は、レシピエントマウスを放射線照射していない対照マウスと同等のレベルに再集団化したのに対し、内在性リンパ球(CD45.2陽性細胞)は有意に拡張増殖しなかったことがわかった。加えてhuFc-IL-7融合タンパク質による処理は、有意な毒性を引き起こさなかった。これらの結果は、養子移入されたリンパ球集団の拡張における融合タンパク質の効能を明らかにしている。これらの結果を図16に示した。
【0079】
別の実験において、臨床の移植の状況をより良く模倣するアロジェニックBM移植モデルを用い、huFc-IL-7融合タンパク質と組換えヒトIL-7を比較し、結果を表1に示した。同じく、上述した方法及び材料を使用した。huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7及びヒトIL-7(125μg IL-7/kg体重と同等)を、移植後5日目から56日目まで、1日おき(q2d)又は週1回(q7d)投与した。PBS-処置したドナーマウス及びPBSで処置した放射線照射した骨髄レシピエントマウスを対照として使用した。
【0080】
融合タンパク質で処置したレシピエントマウスにおいて、ドナー-由来のB-細胞(CD45.1+, B220+, CD19+)をq2d又はq7dで投与した場合、各々、移植後14又は16日でベースラインレベル(ドナー対照マウスにおけるB-細胞の血液濃度と定義される)に達した。対照的に、組換えヒトIL-7で処置したレシピエントマウスにおいては、いずれの投与様式でも、効果はなかった;PBS-処置した及びヒトIL-7-処置したレシピエントマウスにおけるB-細胞数は、ベースラインレベルに到達するためにほぼ同じ時間、約28日間を必要とした。促進されたB-細胞再構成に加え、huFc-IL-7処置は、33日目までB-細胞の連続拡張増殖を促進し:q2dで投与されたhuFc-IL-7は、対照マウスと比べたB-細胞数の7倍の増加を生じたのに対し、q7d投与は2.5倍の増加を生じた。33日目以降、B-細胞数は減少したが、対照マウスよりも依然約2倍高かった。同じく33日目以降、投与されたIL-7タンパク質のレベルは血中で減少し、これは部分的にヒト融合タンパク質に対する中和抗体の形成に起因するであろう。図14は、組換えヒトIL-7及びhuFC-IL-7で処置、放射線照射、骨髄移植したマウスにおける、B-細胞再構成のこれらの結果を表している。
【0081】
同様の結果が、ドナー-由来のT-細胞(CD45.1+, CD3+, TCRαβ+)に関して認められた。huFc-IL-7融合タンパク質による処置は促進されたT-細胞再構成を生じたのに対し、組換えヒトIL-7による処置は生じなかった。最大T-細胞レベルに約49日目に到達した。しかしベースライン(すなわちドナーマウスにおけるT-細胞の血液濃度)を上回るT-細胞数はhuFc-IL-7融合タンパク質のq2d投与スケジュールでのみ到達し、対照マウスにおけるT-細胞数の約1.5倍に達した。図15は、組換えヒトIL-7及びhuFc-IL-7で処置された放射線照射した骨髄移植されたマウスにおけるT-細胞再構成のこれらの結果を表している。
【0082】
ある条件下でのレシピエントマウスにおける一過性の多数のドナーB-細胞及びT-細胞にも関わらず、実験マウスはいずれも実験の期間中死亡の徴候を示さなかった。55日目の内臓分析は、肝臓、腎臓、肺、脾臓、胸腺、リンパ節、胃、小腸、及び結腸において病理学的異常を示さなかった。従ってこのアロジェニック移植実験は、骨髄アブレーション・コンディショニング後のリンパ球再構成において、huFc-IL-7融合タンパク質がin vivoにおいて、組換えヒトIL-7よりも有意に優れていることを明らかにした。
【0083】
表1:huFc-IL-7融合タンパク質の免疫細胞再構成に対する効果







【0084】
I続き

【0085】













【0086】
II続き

【0087】













【0088】
III続き

【0089】
実施例9.
huFc-IL-7のリンパ球減少マウスのT-細胞移植に対する効能
huFc-IL-7融合タンパク質の効能をT-細胞移植モデルにおいても評価した。本質的に、T-細胞の均質(クローン性)集団を免疫欠損の放射線照射したマウスへ移植し、レシピエントマウスにhuFc-IL-7融合タンパク質を投与し、T-細胞再構成の程度、及び最終的にはT-細胞機能を評価した。
T-細胞の均質集団を得るために、脾細胞をP14 TCR-tg/RAGマウス(Charles River Laboratories, ウィルミントン, MA)から採取し、B-細胞を枯渇させた。加えて、これらのマウスの全てのT-細胞は、ウイルスエピトープ(LCMVのgp33)に特異的である、トランスジェニックT-細胞受容体(TCR)P14を発現している。
【0090】
脾細胞の単一細胞浮遊液を、移植前に650Rad(亜-致死線量)で4時間1回放射線照射されたRAG Cγ+免疫欠損マウス(Charles River Laboratories)の尾部へ静脈内注射した。2日目から1日おきに、レシピエントマウスに融合タンパク質huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7の7μgを投与した。レシピエントマウスの対照群はPBSを投与した。huFc-IL-7融合タンパク質又はPBSに反応したT-細胞再構成の程度は、フローサイトメトリーにより、血中のP14 T-細胞(CD8+Vβ8.1+Vα2+細胞)の存在を測定することにより決定した。
【0091】
35日目に、huFc-IL-7融合タンパク質を投与されたマウスは、対照マウス(2,000個細胞/μl)と比べ、T-細胞数の17-倍の増加(35,000個細胞/μl)を有したことがわかった。実際T-細胞再構成のレベルは、未処置のP14 TCRマウス(23,000個細胞/μl)において認められるレベルを上回った。加えて、これらのhuFc-IL-7-処置マウスにおいて、再構成されたT-細胞の有意な画分が細胞表面の IL-2Rα受容体サブユニットCD25をアップレギュレーションした。従って、huFc-IL-7融合タンパク質は移植されたT-細胞の拡張にのみ有用であるのではなく、加えて移入されたT-細胞をIL-2などのサイトカインに反応性であるように条件づけしたのであろう。
【0092】
実施例10.
免疫無防備状態の患者のためのhuFc-IL-7アジュバント療法
患者がhuFc-IL-7アジュバント療法から恩恵を受ける多くの臨床設定が想起されている。例えば、骨髄除去療法の後に免疫系を再構成するためアロジェニック造血幹細胞移植で治療されるリンパ芽球性又は骨髄性白血病などの悪性疾患を伴う小児患者のために、新規治療モダリティが開発されつつある。
【0093】
これらの患者のための可能性のあるドナープールを著しく増大するために、マッチした無関係のドナー又は1〜3個のHLA座ミスマッチを伴うハプロタイプが同一のドナーに由来するG-CSF動員された末梢血幹細胞(PBSC)は、移植物がT-細胞枯渇されていることを条件として、細胞供給源であり得ることがわかっている(Handgretingerら、Annals NY Acad. Sciences、938: 340-357 (2001)参照)。この枯渇は、急性の移植片-対-宿主の移植拒絶反応(GvHD)の発生を劇的に低下させる;しかし、低濃度のT-細胞のために、免疫再構成においては有意な遅れが存在すると考えられる。患者は、移植後少なくとも最初の6ヶ月はウイルス感染症の高いリスクにあり、T-細胞は、1年では通常レベルへ回復しなかった(Handgretingerら、Annals NY Acad. Sciences、938: 340-357 (2001);Langら、Blood、101: 1630-6 (2003))。その結果、これらの患者におけるT-細胞の及び他の免疫細胞の再集団化の速度を増加することは利点である。
【0094】
huFc-IL-7療法の恩恵のある患者には、リンパ芽球性白血病又は骨髄性白血病などの小児白血病の患者が含まれる。本疾患を有する小児は、まず化学療法剤ブスルファン又は化学療法と組合せた全身放射線照射のいずれかを基本とした骨髄除去コンディショニング療法を受けるであろう。例えば、患者の診断及び年齢に従い、患者は、全身の放射線照射(典型的には各2Gyで6回治療)、ウサギ抗-胸腺細胞グロブリン(10mg/kg/日を3日間)、エトポシド(40mg/kg)及びシクロホスファミド(120mg/kg)で治療される。
【0095】
移植のためのCD34陽性(pos)幹細胞を得るために、組織適合性(同種異系)ドナーの末梢血幹細胞(PBSC)をG-CSFの10μg/kg/日で6日間の投与により動員し、5及び6日目の白血球搬出により収集した。一般に約20x106/kg CD34 pos幹細胞が得られ、移植された。CD34 pos幹細胞は、SuperMACSシステム(磁気活性化された細胞選別, Miltenyi Biotec)における抗CD34抗体を使う陽性選択により、PBSCから精製し、溶離した。T-細胞枯渇は、典型的にはおよそ5対数倍、約10x103個細胞/kgまでであった。凝集塊及び他の細片はFACS選別により移植片から除去した。この細胞懸濁液を、中心静脈カテーテルにより患者へ注入した。場合により、移植片はハプロタイプが同一のNK細胞、DC、単球、更にはCD34neg幹細胞などの他の免疫細胞の精製された集団を含んでも良い。
【0096】
生着を評価するために、絶対好中球数を測定した。生着は、一旦好中球レベルが約50個細胞/μLを上回るよう維持された場合に成功と考えた。免疫細胞の再構成は、FACS分析により最初は毎週モニタリングし、一旦T-細胞回復が始まったら、3ヶ月毎にモニタリングした。
【0097】
免疫再構成を増強するために、患者を、huFc-IL-7融合タンパク質、例えばhuFcγ2h(FN>AQ)-IL-7又はhuFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7で処置した。移植後約3週間(又は生着が確立された後)に、患者に約1.5mg/m2の用量(又は、0.15mg/m2〜15mg/m2の範囲の用量)でhuFcγ2h(FN>AQ)-IL-7又はhuFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7を、T-細胞数が正常レベルの50%に達するまで6ヶ月〜12ヶ月間、毎週約2回皮下的に投与した。主要な移植後合併症のひとつであるウイルス感染症のリスクが低下したために、患者の予後は改善されたことがわかった。更にこの治療は、急性GvHDのリスクを有意に増加しないことがわかった。
【0098】
huFc-IL-7タンパク質の投与に加え、他の医薬品が予防のために最適に投与される。これらには、例えばアシクロビル、メトロニダゾール、フルカナゾール及びコ-トリモキサゾールが含まれる。最初の3ヶ月は、患者はG-CSFの投与のみならず免疫グロブリンの投与を受けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、ヒトIL-7のアミノ酸配列(配列番号:1)を示す。シグナル配列は、太字で示される。IL-7配列から欠失することができる18個のアミノ酸の並びも、太字及びイタリックで示されている。
【図2】図2は、ウシIL-7のアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。シグナル配列は、太字で示している。
【図3】図3は、ヒツジIL-7のアミノ酸配列(配列番号:3)を示す。シグナル配列は太字で示している。
【図4】図4は、成熟型ヒトFcγ1-IL-7のアミノ酸配列(配列番号:4)を示している。
【図5】図5は、成熟型ヒトFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7のアミノ酸配列(配列番号:5)を示している。
【図6】図6は、成熟型ヒトFcγ1(リンカー1)-IL-7のアミノ酸配列(配列番号:6)を示している。
【図7】図7は、成熟型ヒトFcγ1(YN>AQ)(リンカー2)-IL-7のアミノ酸配列(配列番号:7)を示している。
【図8】図8は、成熟型ヒトFcγ1(YN>AQ,d)(リンカー2)-IL-7のアミノ酸配列(配列番号:8)を示している。
【図9】図9は、ヒトFcγ1-IL-7のFc領域の核酸配列(配列番号:22)を示している。
【図10】図10は、ヒトFcγ1(YN>AQ)-IL-7のFc領域の核酸配列(配列番号:21)を示している。
【図11】図11は、ヒトFcγ2(h)-IL-7のFc領域の核酸配列(配列番号:20)を示している。
【図12】図12は、ヒトFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7のFc領域の核酸配列(配列番号:19)である。
【図13】図13は、実施例7の組換えヒトIL-7(白四角)及び融合タンパク質Fcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7(白菱形)の薬物動態プロファイルのグラフ表示である。投与されたIL-7融合タンパク質(ng/ml)の血清濃度を、経時的(時間)に測定した。
【図14】図14は、組換えヒトIL-7(白印)、ヒトFc-IL-7(黒印)又はPBS(X)により処置した、放射線照射及び骨髄移植したマウスにおけるB-細胞再構成のグラフ表示である。タンパク質は、1日おき(四角)又は週1回(三角)に投与した。破線は、ドナーマウスにおけるB-細胞濃度を示している。
【図15】図15は、組換えヒトIL-7(白印)、ヒトFc-IL-7(黒印)又はPBS(X)により処置した、放射線照射および骨髄移植したマウスにおけるT-細胞再構成のグラフ表示である。タンパク質は、1日おき(四角)又は週1回(三角)に投与した。破線は、ドナーマウスにおけるT-細胞濃度を示している。
【図16】図16は、huFcγ2(h)(FN>AQ)-IL-7で処置した(最初の2列)、及び未処置の対照(最終列)の放射線照射および骨髄移植したマウス由来の血液(上段)及び脾臓(下段)からの試料のリンパ球集団を表すドットプロットである。第一列は、再構成された内在性リンパ球(CD45.2+)を示し、第二列は、再構成されたドナーリンパ球(CD45.1+)を表している。T-リンパ球は、下右側象限に示されるCD3陽性細胞として検出された。B-リンパ球は、上左側象限に示されるB220陽性細胞として検出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直接又はリンカー分子を介して連結された、免疫グロブリン鎖及び野生型IL-7と比べ改変されたIL-7分子を含むIL-7融合タンパク質であって、前記IL-7の改変が:
(i)70及び91位のアミノ酸残基がグリコシル化され、及び116位のアミノ酸残基がグリコシル化されない;並びに/又は
(ii)IL-7部分内のCys2とCys92、Cys34とCys129、及びCys47とCys141の間にジスルフィド結合が存在する、ことである、
前記IL-7融合タンパク質。
【請求項2】
IL-7の70及び91位のアミノ酸残基がグリコシル化され、及びIL-7の116位のアミノ酸残基がグリコシル化されず、IL-7部分内のCys2とCys92、Cys34とCys129、及びCys47とCys141の間にジスルフィド結合が存在する、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項3】
116位のアミノ酸残基がアスパラギンである、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項4】
116位のアミノ酸残基がグリコシル化されていない、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項5】
116位のアミノ酸残基が、グリコシル化部位として利用されないように変更されている、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項6】
IL-7分子が欠失を含む、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項7】
短縮されたIL-7が、配列番号:1のアミノ酸96からアミノ酸114までの18個のアミノ酸欠失を含む、請求項6記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項8】
IL-7分子がヒトIL-7である、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項9】
IL-7が成熟IL-7である、請求項1記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項10】
免疫グロブリン鎖が少なくとも定常ドメインの一部を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項11】
定常ドメインが、CH1、CH2、及びCH3からなる群より選択される、請求項10記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項12】
定常ドメインがIgG1定常ドメインである、請求項10又は11記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項13】
IgG1定常ドメインのAsn297が改変されている、請求項12記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項14】
Asn297改変がAsn297Glnである、請求項13記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項15】
Tyr296の改変を更に含む、請求項13記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項16】
Tyr296改変がTyr296Alaである、請求項15記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項17】
定常ドメインがIgG2定常ドメインである、請求項10又は11記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項18】
IgG2鎖がIgG1ヒンジを含む、請求項17記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項19】
IgG2定常ドメインのAsn297が改変されている、請求項17又は18記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項20】
Asn297改変がAsn297Glnである、請求項19記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項21】
Phe296に改変を更に含む、請求項19記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項22】
Phe296改変がPhe296Alaである、請求項21記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項23】
融合タンパク質のIL-7 部分が、野生型IL-7と比べ増大した生物学的活性を有する、請求項1〜22のいずれか1項記載のIL-7融合タンパク質。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項記載のIL-7融合タンパク質をコードしている単離されたDNA分子。
【請求項25】
請求項24記載のDNAを含有する培養された宿主細胞。
【請求項26】
請求項24記載のDNAで宿主細胞を形質転換する工程、宿主細胞を培養する工程、並びにIL-7融合タンパク質を発現し及び収集する工程を含む、融合タンパク質の製造法。
【請求項27】
医薬として有効量の請求項1〜23のいずれか1項記載のIL-7融合タンパク質を、場合により医薬として許容できる担体、希釈剤又は賦形剤と共に含有する、免疫不全症又は癌を治療するのに適した医薬組成物。
【請求項28】
免疫不全症又は癌の治療用医薬品製造のための、請求項1〜23のいずれか1項記載のIL-7融合タンパク質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−502317(P2008−502317A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546044(P2006−546044)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014555
【国際公開番号】WO2005/063820
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】