説明

IN−SITUでのコークス除去

【課題】含水素燃料ガス等の部分的に酸化された反応生成物を生成しつつ、同時にin−situでコークスを除去する、空気等の酸化剤を用いたディーゼル等の炭化水素燃料の触媒部分酸化の方法を提供する。
【解決手段】この方法は、燃料リッチの供給比で、反応器へ、炭化水素燃料および酸化剤を供給する工程;部分的に酸化された反応生成物を生成するように、燃料リッチのサイクル時間の間、燃料および酸化剤を反応させる工程;反応器へ燃料リーンの供給を供するために、燃料の供給、酸化剤の供給、または両方の供給を変化させる工程;コークスの堆積を低減するのに十分な燃料リーンサイクル時間の間、燃料リーンの供給を維持し、他方で部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程;および、燃料リッチおよび燃料リーンの稼動サイクルの間を交互に行う工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒部分酸化方法を行う間でのin−situでのコークス除去の方法に関する。本明細書中で用いられる用語「コークス除去」は、反応器の触媒上、ならびにその反応器内の壁、表面、備品、および導管上に堆積したコークスを含む、触媒部分酸化方法において用いられる反応器内に堆積するコークスを低減および/または除去することをいうものとする。本明細書中で用いられる用語「コークスの浄化」および「デコーキング」は、同等の意味において用いられ、用語「コークス除去」と置き替え可能なものであるとする。
【0002】
本明細書中の以下で記載する触媒部分酸化方法とは、付加価値がもたらされた水素リッチなガス燃料を生成するために、炭化水素燃料を改質することにその有用性を見出すものである。
【背景技術】
【0003】
水素(H)(本明細書中においては、「二原子水素」ともいう)は石油ベースの炭化水素燃料の代替として著しく注目されているクリーンなエネルギー燃料である。例えば、燃料電池、内燃エンジン、水素エンジン、および水素添加エンジンにおいて将来可能となる応用のためのエネルギー源として、水素の利用研究が進められている。さらに、水素を応用するこうした利用研究は、例えば窒素酸化物(NO)や硫黄酸化物(SO)等の有害廃棄物ガスを浄化するための還元剤としても精力的に行われている。結果として、水素の製造についても様々な方法が検討されている。
【0004】
一般的な水素の製造方法においては、炭化水素、アルコール、および/または水等の含水素分子を、触媒改質反応、熱分解反応、または電気分解反応等を利用して分解し、こうしてできた水素原子を結合させて、より付加価値の高い利用可能な燃料である二原子水素を生成する。不都合なことに、熱分解反応は熱的に安定させることが困難であり、約1400℃よりも高い極端な温度を必要とする。電気分解反応もまた不都合なことに、高い電力消費量を必要とし、かつ反応速度が遅い。高まりつつある水素需要に対応するため、水素燃料を生成する触媒部分酸化改質方法が好ましく用いられる。触媒部分酸化改質方法は、有利にも、熱分解反応および電気分解反応に付随する問題を回避する。
【0005】
従来技術は、炭化水素燃料改質方法を、以下の化学反応式(1)から(3)によって示される3つの反応タイプに分けることを想定する。第1の方法は、「完全酸化」といわれる燃焼反応であり、ここで燃料と酸素との反応によって水蒸気と二酸化炭素とが生成される。このような反応は、過度の酸素中における燃料リーン状況下で生じる。

+(n+1/4m)O→1/2mHO+nCO 式(1)

燃料に対して酸素濃度がストイキ比未満である燃料リッチ状態に酸素が制限される場合、第2の方法が、不完全または部分的な燃料の酸化を通じて水素と一酸化炭素を生成する。

+1/2nO→1/2mH+nCO 式(2)

酸素濃度が実質的にゼロではないにせよ著しく低減された場合に典型的に生じる第3の方法では、水蒸気と燃料とが反応することを通じて水素が生成される(「水蒸気改質」ともいわれる)。

+nHO→(n+1/2m)H+nCO 式(3)

式(1)および式(2)によって規定される反応は発熱性であり、これに対して式(3)によって規定される反応は吸熱性である。式(2)は、触媒が不在であっても継続できるが、触媒が不在である方法の稼動温度は相対的に高い。触媒を用いる場合、稼動温度を下げることができ、反応生成物を反応平衡にて有利に生成することができる。本発明の触媒部分酸化方法は主に、式(2)に示す改質反応に関連し、ここで水素は、部分酸化触媒が存在する中での燃料リッチ条件下で燃料と酸化剤とが接触して形成される。
【0006】
部分酸化改質方法において用いる燃料としては、例えば、天然ガス、エタン、プロパン、ガソリン、軽油(ディーゼル燃料)、ならびにメタノールおよびエタノール等のアルコールが挙げられる。触媒部分酸化改質方法のための適切な反応器は、例えば特許文献1および特許文献2に開示された、筒型流通反応器を備える。
【0007】
部分酸化反応器内の燃料リッチ状況下での触媒部分酸化方法を稼動している間、反応器内部の触媒上ならびに壁、表面、備品、および導管上にコークスが堆積する。用語「コークス」は、本明細書において、石油系炭化水素またはその派生物の分解蒸留、精製、改質、および/または酸化から生じる任意の固形の炭素質の副産物のことをいうものとする。コークスの堆積の位置および量は、例えば反応器およびそれに付随する導管を介した反応物ならびに生成ガスの温度およびフローパターン等の多くのプロセス変数に依存する。さらに、コークスの堆積はプロセス稼動時間(操業時間)に応じて増加する傾向にある。任意の所与の操業時間におけるコークスの堆積の量は、測定が困難であり、実際には知られていない。コークスは反応器および触媒の稼動に対して極めて有害であり、コークスが取り除かれない場合、水素等の所望の部分的に酸化された生成物の収率を急速に低下させ得る。さらに、コークスの堆積は最終的には導管、ノズル、および開口部(オリフィス)を詰まらせてしまう可能性があり、また、反応器を介した水蒸気の流れを制限して、反応器の圧力を許容できない潜在的に危険なレベルにまで上昇させてしまう可能性もある。
【0008】
従来技術は触媒および反応器をデコーキングするための様々な方法を開示する。1つの方法では、特許文献3および特許文献4に示されるように、コークスは酸素含有ガスを用いたバーンオフサイクルにより取り除かれる。この方法は、数時間、当該方法を中断させる必要があり、この間にバーンオフサイクルが実施されることになる。こうした中断は極めて所望されないものであり、というのも、所望の部分的に酸化された生成物の収率排出量を実質的にゼロに低減するからである。
【0009】
特許文献5に示されるように、他の従来技術では、当該方法の反応器から、コークスが酸素下でバーンオフされる別個の再生反応器へと、コークス不活性化触媒を移送することを含む、関連のコークス除去方法を教示する。触媒を浄化した後、再生された触媒は当該方法の反応器へと戻される。再生反応器へ、および再生反応器から、固体の触媒を移送することに伴う複雑さおよび問題以外にも、本方法は、当該方法の反応器内のコークスの堆積を除去するものではない。
【0010】
コークス除去についてのさらなる別の方法は、特許文献6および特許文献7に開示されており、ここでコークスは、水蒸気または加圧された冷水を用いて、コークスが堆積した反応器を洗い流すことによって除去される。不都合なことに、本方法はまた、数日ではないにせよ数時間の間、当該方法を中断させる必要があるので、その結果として、部分的に酸化された生成物の収率のロスが生じることとなる。さらに、本方法はコークスの堆積の全てを除去するには十分に効果的ではない。
【0011】
当該方法を稼動している間でのin−situでのコークス除去といった従来技術の方法が教示されている。例えば、特許文献8は、燃料マニホルド内に加熱手段を配置し、ガスタービンエンジンをin−situでデコーキングするように、そのマニホルドの燃料運搬部材内でコークスをバーンオフさせることを開示している。特許文献9は、炭化水素の原料注入口と、対流部分および放射部分の重複部分との間に配置される複数のチューブバンクを備える水蒸気分解炉での操業中でのデコーキングのための方法であって、このデコーキングの方法が、炭化水素供給が複数の上記チューブの少なくとも1つへと流れるのを仕切る工程と、水蒸気のデコーキング用供給物を上記チューブに供給してコークス除去を実行する工程とを含む、デコーキングの方法を開示している。
【0012】
さらに別の方法では、特許文献10に示されるように、火焔分解反応器(ACR方法)におけるin−situでのデコーキングのための方法を開示している。このACR方法では、炭化水素燃料を酸素を利用して燃焼させ、熱媒体を生成するために、過熱した水蒸気と混合された燃焼生成物の流れを形成する。この熱媒体は集束した炭化水素原料の流れと接触し、そして一体となった混合物が反応領域へと供給され、ここで分解が生じる。定期的に炭化水素の流れが止められ、その間に、反応器の温度は約1250℃〜約1600℃に維持され、この反応器は、過熱した水蒸気を含んだ熱媒体によってデコーキングされる。
【0013】
より詳細には、特許文献11において、完全酸化モードにおける周期的なリーンでの稼動において炭素の堆積物を除去する工程であって、(i)この酸化期間がミリ秒のオーダーであり、かつ燃料リッチでの改質期間の約25%であるか、または(ii)酸化期間が秒のオーダーであり、かつ燃料リッチでの改質期間の約10%である、工程を開示している。これらの方法のいずれも、部分的に酸化された反応性生物の高く安定した収率を維持しつつ、効果的なコークス除去を提供していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,869,456号明細書
【特許文献2】米国特許第6,887,436号明細書
【特許文献3】米国特許第4,701,429号明細書
【特許文献4】米国特許第4,849,025号明細書
【特許文献5】米国特許第4,387,043号明細書
【特許文献6】米国特許第4,828,651号明細書
【特許文献7】米国特許第4,959,126号明細書
【特許文献8】国際公開第2006/074552号
【特許文献9】国際公開第2010/005633号
【特許文献10】米国特許第4,917,787号明細書
【特許文献11】米国特許出願第2009/0252661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述を鑑みて、本願の技術は、炭化水素燃料を改質して、部分的に酸化された反応生成物、好ましくは利用可能なガス状の水素燃料を形成するよう、触媒部分酸化方法を稼動する間にコークスを除去する改善された方法を提供することを課題とし、本願の技術によれば、これによる恩恵を受けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、in−situでコークスを除去する触媒部分酸化の方法であって、(a)炭化水素燃料を反応器に供給する工程と、(b)酸化剤を前記反応器に供給する工程であって、ここで前記炭化水素燃料と前記酸化剤とは燃料リッチの供給比である、工程と、(c)少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間、前記反応器内において前記炭化水素燃料および前記酸化剤を触媒と接触させる工程と、(d)炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リーンの供給比とするために、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、(e)コークスの堆積を低減させるのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、前記燃料リーンの供給比を維持し、他方で、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程と、(f)工程(a)および工程(b)のようにして燃料リッチの供給比とするように、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、工程(c)から工程(f)を繰り返す工程と、を含む方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法は、炭化水素燃料を部分的に酸化された反応生成物に変換、好ましくは、より付加価値の高い含水素燃料に変換、さらに好ましくは、気体の二原子水素、例えば合成ガス(「syngas」、すなわち一酸化炭素および水素の混合物)を含む燃料に変換するために、触媒部分酸化方法の稼動中に、触媒および反応器の内部からのin−situでのコークス除去を提供する。本発明の方法では、コークスの堆積は完全に除去されないにせよ低減可能であり、それにより、触媒が再生を必要とする前に、かつ反応器がメンテナンスを必要とする前に、稼動可能な操業時間が延びる。有利にも、所望の部分的に酸化された反応生成物の収率、最も好ましくは、二原子水素の収率は、実質的に一定のままであり、コークス除去を生じる工程によって著しく妨げられない。さらに有利なことに、本発明の好ましい実施形態は、部分的に酸化された生成物の約70モル%よりも高い安定した平均収率を達成する。本発明の方法は、独自の方法で燃料リッチおよび燃料リーンの供給モードを交互に稼動するが、この方法は平均すると燃料リッチで稼動し、これは、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を提供する。
【0018】
本発明はin−situでのコークスの除去を提供するゆえ、本発明はまた、従来のコークス除去の方法の不利点を回避する。従来の方法とは特に、別個のコークスのバーンオフのために、部分酸化方法を中断することによってデコーキングするか、または、別個の水蒸気改質方法または水によるフラッシング方法を介してデコーキングすることであり、こうした従来技術の手続きは実施するのに数時間を要するものであり、それゆえ、部分的に酸化された反応生成物の収率を著しく低下させるものである。
【0019】
記載を徹底するために、用語「実質的に一定の収率」、「平均収率」、「サイクル時間」、「燃料リッチ」、および「燃料リーン」は本明細書中以下で規定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の方法の一実施形態のための水素収率百分率対燃料オフ時間を示す図である。
【図2】本発明の方法の一実施形態のための水素収率百分率対時間(処理稼動時間)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、本発明は、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率、好ましくは、付加価値の高い含水素燃料の実質的に一定で高平均の収率、さらに好ましくは、二原子水素を含む燃料を提供するための、in−situでコークスを除去する触媒部分酸化の方法に関連する。従って、本方法は、(a)炭化水素燃料を反応器に供給する工程と、(b)酸化剤を前記反応器に供給する工程であって、ここで前記炭化水素燃料と前記酸化剤とは燃料リッチの供給比である、工程と、(c)少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間、前記反応器内において前記炭化水素燃料および前記酸化剤を触媒と接触させる工程と、(d)炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リーンの供給比とするために、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、(e)コークスの堆積を低減させるのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、前記燃料リーンの供給比を維持し、他方で、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程と、(f)工程(a)および工程(b)のようにして燃料リッチの供給比とするように、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、工程(c)から工程(f)を繰り返す工程と、を含む。
【0022】
本発明において、用語「燃料リッチ」とは、反応器への炭化水素燃料および酸化剤の供給を、1:1よりも大きい当量比にて供給することをいうものとする。これとは対照的に、用語「燃料リーン」とは、反応器への炭化水素燃料および酸化剤の供給を、1:1未満の当量比にて供給することをいうものとする。用語「当量比」とは、本明細書中においては、二酸化炭素および水への完全燃焼に必要とされる炭化水素燃料対酸化剤のモル比(「ストイキ比」)に対する、反応器へ供給される炭化水素燃料と酸化剤とのモル比として規定される。1:1の当量比は、本明細書中で上述した式(1)に規定されるように、COおよびHOの生成のためのストイキ比である。
【0023】
本発明において、用語「部分的に酸化された反応生成物の収率」とは、反応器の排出流において測定された、部分的に酸化された反応生成物、最も好ましくは二原子水素のモルであり、炭化水素燃料の形態で反応器へと供給される水素のモルで割られ、百分率で示される。任意の特定の規定された時間における部分的に酸化された反応生成物の収率は、本明細書中において、「瞬間的な(instantaneous)収率」と呼ばれてもよい。用語「部分的に酸化された反応生成物の平均収率」とは、稼動中の処理時間に亘って平均化された、部分的に酸化された反応生成物の収率として規定される。用語「稼動中の処理時間」とは、収率が測定されるときにその処理が稼動している総時間のことをいい、通常は、少なくとも約5分程度から、場合によっては数時間、数日、または数週間である。稼動中の処理時間は、本明細書中、以下で規定される、燃料リッチのサイクル時間、または燃料リーンのサイクル時間とは区別されるものである。
【0024】
用語「サイクル時間」とは、特定の動作の開始から終了までの1つの単位間隔のことをいい、この動作は、複数の単位間隔において周期的に反復(循環)される。用語「燃料リッチのサイクル時間」は、炭化水素燃料および酸化剤が、燃料リッチの供給比で、すなわち、1:1よりも大きい当量比で、反応器に供給される単位間隔のことを言う。用語「燃料リーンのサイクル時間」は、炭化水素燃料および酸化剤が、燃料リーンの供給比で、すなわち、1:1未満の当量比で、反応器に供給される単位間隔のことを言う。本方法において、燃料リッチおよび燃料リーンのサイクルは、稼動中の処理時間の間中、周期的に交互となる。
【0025】
本記載において与えられるべきさらなる定義に関して、「最大収率」は、本明細書において、処理稼動を開始した後に観察される、部分的に酸化された反応生成物の最も高い収率とする。最大収率は、処理の起動時の間に生じ得る収率の急上昇を除去するように、この処理が許容可能な安定した状態の稼動に到達した後に測定される。「最小収率」は、本明細書において、最大収率の後から測定時間までに観察される、部分的に酸化された反応生成物の最小収率とする。最大収率および最小収率は、制御された処理条件下、すなわち、実質的に同じ燃料および酸化剤の供給流量、実質的に同じ燃料リッチおよび燃料リーンのサイクル時間、同じ触媒、反応器の設計、ならびに他の動作パラメータの下で測定されかつ比較される。各々の事象において、用語「実質的に同じ」とは、関連する処理条件(例えばTmaxおよびTmin)が互いに±5%内にあることを意味する。
【0026】
最大収率と最小収率との間の百分率差(%Δ)は以下のように式(4)にて計算される。

%Δ=100×(最大収率−最小収率)÷(最大収率) 式(4)

用語「実質的に一定の収率」とは、処理用途および必要に応じて反応器の大きさに適切な期間を尺度にして、最大収率と最小収率との間が、約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3.5%未満、最も好ましくは約2.5%未満の百分率差(%Δ)であることをいう。例えば、約10時間まで稼動する処理において、適切な時間の測定は約60分であり、好ましくは、その処理の開始から最初の60分である。このような処理は、自動車における用途の燃料電池と共に使用することが適切な小型の燃料改質器に適用可能である。これらの例において、最大収率および最小収率の差は、有利には約10%未満であり、好ましくは、稼動の最初の60分の間で測定される。これとは対照的に、化学プラントにおいて用いるのにサイズ調整された燃料改質器は、安定した状態に達するのに数日かかる場合もあったり、数週間も稼動する場合があり、それゆえ、最大収率と最小収率とにおける百分率差を測定するための適切な時間は、約7日、好ましくは、可能であれば、処理開始から最初の7日としてよい。
【0027】
1つの好ましい実施形態において、本発明における方法は、(a)炭化水素燃料を反応器に供給する工程であって、前記炭化水素燃料はパルス状のオン−オフモードで供給される、工程と、(b)酸化剤を前記反応器に供給する工程であって、ここで前記炭化水素燃料と前記酸化剤とは燃料リッチの供給比である、工程と、(c)少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間、前記反応器内において前記炭化水素燃料および前記酸化剤を触媒と接触させる工程と、(d)炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リーンの供給比とするために、前記反応器への炭化水素燃料の供給量を低減させるか、またはその供給を停止し、他方で、前記反応器への酸化剤の供給量を維持する工程と、(e)コークスの堆積を低減させるのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、前記燃料リーンの供給比を維持し、他方で、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程と、(f)工程(a)および工程(b)のようにして、炭化水素燃料対酸化剤の比を、燃料リッチの供給比とするように、前記反応器への炭化水素燃料の供給量を増加させ、他方で前記反応器への酸化剤の供給量を維持する工程と、工程(c)から工程(f)を繰り返す工程と、を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態において、工程(a)から工程(f)の全ては、共に供給される(co−fed)水または水蒸気の不在下で行われる。
【0029】
1つの好ましい実施形態において、炭化水素燃料は、任意の留出燃料、より好ましくは軽油(ディーゼル燃料)を含む。好ましい酸化剤は空気を含む。好ましい触媒は、超短チャネル長メタルメッシュ基板(ultra−short−channel−length metal mesh substrate)を備えており、この基板は、当該基板上に堆積した1つ以上の貴金属を有する。本方法のこれらと他の好ましい態様は本明細書の以下で詳細に記載する。
【0030】
炭化水素燃料は、部分的に酸化された反応生成物、好ましくは含水素燃料ガス、さらに好ましくは、合成ガス等の二原子水素を含む燃料を生成するために、部分酸化改質反応に関与することができる任意の炭化水素を含む。当該技術分野において公知であるように、用語「炭化水素」とは、アルカン、芳香族、および環状芳香族を含む、炭素および水素から実質的になる有機化合物のことをいう。本発明において、前述の定義は、「アルコール」を含むように拡大され、アルコールは、炭素および水素を含むのみならず、1つ以上のヒドロキシル基(−OH)をも含み、各ヒドロキシル基は炭素原子に結合されることが当該技術分野において公知である。本発明の方法に適切である炭化水素燃料の、特定の限定を付さない例としては、例えば、ガソリン、軽油(ディーゼル燃料)、バイオディーゼル燃料、天然ガス、エタン、プロパン、およびアルコール、好ましくはC1−20アルコール、より好ましくはメタノールおよびエタノール、ならびに、前述の化合物の任意の混合物を含む、商用および軍用の留出燃料が挙げられる。これらの中でも軽油(ディーゼル燃料)が好ましい。
【0031】
本発明の方法において用いられる酸化剤は、炭化水素燃料に対して反応する1つ以上の酸素原子を提供することができる任意の化合物を含む。本発明は、本発明の効果が達成されるかぎり、酸化剤に関しては限定を付さない。酸化剤の適切な、非限定的な例としては、空気、酸素富化空気、実質的に純酸素、または、酸素および窒素を主成分として含む気体混合物を含み、後者の混合物は、酸素および窒素が各々、他のガス成分と比較してより高い濃度であることを意味する。他のガス成分としては、部分酸化方法において反応せず、また触媒の働きを抑制しないものが好ましく、かつ例えば、ヘリウム、アルゴン、および他の不活性ガスを挙げることができる。前述の例の中でもとりわけ、好ましい酸化剤は、酸素および窒素を主成分として含む空気または気体混合物からなる。
【0032】
本発明の燃料リッチの酸化工程(c)は、本明細書中で上記した式(2)に従って部分酸化が生じる、炭化水素燃料対酸化剤の供給比内で行われる。部分酸化を達成するために、炭化水素燃料対酸化剤の供給比は、燃料リッチの範囲内にあるべきであり、このことは、本明細書中、上述で規定した当量比が1:1よりも大きいことを意味する。好ましくは、燃料リッチでの稼動のための当量比は、約1.02:1から約10:1の範囲である。
【0033】
部分酸化が発熱性の処理であるので、この処理において発生した熱は、この処理自体、または別の下流の処理で効果的に吸収することができる。触媒反応器および特定の触媒の大きさおよび稼動温度、ならびに触媒の充填を考慮すると、所望の使用のために、この方法の工程(c)についての燃料リッチの要求を満たし、かつ反応で生じた発熱による熱を効果的に吸収する、炭化水素燃料対酸化剤のモル比を選択する方法を当業者は理解するものである。
【0034】
工程(c)の燃料リッチでの酸化は、約600℃〜約1100℃の範囲の稼動温度内、好ましくは約850℃〜約1050℃の範囲の稼動温度内で制御される。最大温度は、反応器、触媒、および基板材料の耐久性を向上するよう選択される。触媒反応器中の圧力は大気圧よりも低い圧力から大気圧よりも高い圧力までの範囲であってよく、およそ大気圧での稼動が好適であってよい。コーキングの程度は圧力に応じて様々であることに留意されたい。本明細書内で提供する記載に基づき、選択された稼動圧力にて所望の部分酸化およびデコーキングを達成するために、本発明の処理パラメータを適切に変える方法を当業者は理解するものである。
【0035】
本発明をさらに検討すると、反応器は、本発明の効果、特に、in−situでのコークス除去と共に触媒部分酸化が達成されるという条件で、任意の従来の構成および設計を有することができる。好ましい反応器の構成は流通反応器を備え、ここで触媒は、固定床にペレット状の固体として提供されるか、あるいは、触媒は、触媒コーティングされたモノリスの基板、または触媒コーティングされたMicrolith(登録商標)の基板として提供される。後者の基板は、スクリーン、メッシュ、またはフォームの形で提供されてもよい。当該技術分野において公知の他の金属またはセラミック担体もまた、適切な基板として考慮されてよい。1つ以上の任意の触媒または触媒成分が、触媒部分酸化が達成される限りで適切に用いられ、そうした適切な非限定的な例としては、貴金属、ならびにペロブスカイト等の固体酸化物の1つ以上の組合せが挙げられる。
【0036】
好ましい反応器の構成は、米国特許第5,051,241号、同6,746,657号;米国特許出願第2008/127553号、同2007/151154号;国際出願第WO2004−A2−060546に開示されており、上記の引用文献は参照することにより本明細書中に援用されるものとする。燃料の運搬に対してミリ秒のオーダーの反応時間を有するさらに好ましい反応器は米国特許出願第2009/0252661号A1に開示されており、この引用文献もまた参照することにより本明細書中に援用されるものとする。
【0037】
好ましくは、部分酸化触媒は、Microlith(登録商標)の基板として、メッシュの形で提供され、この上に、1つ以上の触媒金属が湿式化学的手順を通じて堆積される。好ましいMicrolith(登録商標)の触媒は、米国コネチカット州、ノースへブンに所在のPrecision Combustion, Inc.から商業的に利用可能であり、これは、1つ以上の超短チャネル長メタル金属成分を含み、最も好ましくは、メッシュ構成にて、その金属成分上に1つ以上の貴金属を有する。本発明において、用語「超短チャネル長」とは、約25ミクロン(μm)(0.001インチ)から約500μm(0.020インチ)の範囲のチャネル長のことをいう。貴金属としては、パラジウム、プラチナ、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、銀、および金が挙げられる。Microlith(登録商標)の超短チャネル長メタルメッシュ基板は、米国特許第5,051,241号、同6,156,444号、および同6,746,657号に開示されており、これら全ての引用文献は参照することにより本明細書中に援用される。
【0038】
本発明の方法において、酸化剤および炭化水素燃料は、独立した注入ノズルを介して供給され、このノズルの1つまたは両方は、数ミリ秒から数秒のオーダーで、オン−オフの切替をすることができる高速に作動するバルブであってよい。1つの好ましい実施形態においては、酸化剤は、連続したフローで注入ノズルを介して反応器へと供給され、他方で炭化水素燃料は、本明細書中、以下で記載する、燃料リッチ(燃料−オン)、および燃料リーン(燃料低減または燃料−オフ)のサイクル時間を可能とする高速で作動するバルブを介して、反応器へ供給される。必要に応じて、高速で作動するバルブは、パルス状のオンーオフモードにて、炭化水素燃料を搬送してよく、こうしたモードは、約3ミリ秒から約50ミリ秒(ms)程度の高速パルス状のオン−オフの燃料注入間隔を伴うものであり、この上により長い燃料リッチのサイクルが重複することとなる。適切な高速作動するバルブとしては、米国特許出願第2004/209205A1号に開示されているような噴射器が圧電ノズルと共に挙げられ、この文献は参照することにより本明細書に援用される。このような噴射器は通常、パルス状の流れまたは複数のパルス状の流れで、好ましくは、1つ以上のパルス状の液体の流れまたはパルス状の液滴で、燃料を供給する。
【0039】
炭化水素燃料がパルス状のオンーオフモードで搬送される場合、パルスのオン−オフサイクル(すなわち、燃料がパルス状にオンおよびオフされる総単位間隔)は、約3ミリ秒(ms)から約50msの範囲であり、これは、約20Hz(20秒−1)から約333Hz(333秒−1)の範囲のオンーオフのパルス周波数に対応する。パルス状のオン−オフサイクル間に燃料が供給される時間部分は、「デューティ比(duty ratio)」といい、有利にも、このデューティ比は、パルス状のオン−オフサイクルの約20%よりも高く、好ましくは約30%よりも高いパーセントから、約80未満、好ましくは約50%未満までの範囲である。上記より多少多いまたは少ないデューティ比も適切でよい。パルス状のオン−オフモードにて燃料の搬送を行った場合、そのサイクル(単位間隔)の間の、燃料の総モル数対供給された空気の総モル数の比は、その供給が燃料リッチであるのか、または燃料リーンであるのかを決定する。本方法の工程(c)については、その比は燃料リッチである必要がある。
【0040】
本発明の方法は、好ましくは、共に供給される水または水蒸気の不在下で行われる。水または水蒸気が本方法に対して共に供給される場合、炭化水素燃料は、水蒸気改質および水蒸気デコーキング反応が行われる。共に供給される水または水蒸気の不在下においてさえ、一部の炭化水素燃料は、完全酸化生成物(CO+HO)にまで酸化されてよい。それゆえ、一部の水が反応器に存在してもよい。しかしながら、とりわけ本発明の稼動条件下では、部分酸化が優勢であり、いかなる水蒸気改質も、最小限であるだけでなく、許容できるレベルにまでコークスの堆積を低減するか、またはコークスを共に除去するには不十分でもある。
【0041】
炭化水素燃料および酸化剤は、反応器の混合セクションにおいて混合されて、その後に触媒と接触する燃料リッチの燃料酸化物混合物を形成する。触媒は、通常、グロープラグを用いて、触媒を「点火」するのに十分な温度にまで加熱される。必要に応じて、酸化剤の流れおよび/または炭化水素燃料の流れは触媒の温度を上昇させるために予熱されうる。触媒が点火された後、部分酸化処理は、自立して維持されるものとなり、さらなる外部からの熱注入を必要としなくなりうる。
【0042】
触媒部分酸化は、少なくとも1つの触媒酸化生成物、好ましくは二原子水素を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間および他の処理条件の間、燃料リッチの供給モードにて行うことができる。有利にも、燃料リッチのサイクル時間はまた、コークスの堆積物の堆積を制限するように設計される。コークスの著しい堆積は、炭化水素燃料の供給が中断された場合の、処理温度の急上昇によることが明らかである。一般的な方法としては、燃料リッチのサイクル時間は約15秒より長く、炭化水素燃料の供給が中断された場合、約1050℃よりも高い温度を生成する時間未満の時間の間で、維持されることが好ましい。燃料リッチのサイクル時間は、約20秒(sec)から約20分(min)の範囲、好ましくは、約20秒から約10分、より好ましくは約20秒から約5分の範囲に維持されることがさらに好ましい。
【0043】
炭化水素燃料を改質した結果として、コークスは副産物として生成される。経時的に、コークスの堆積物は、本明細書の前述した問題を生み出す、反応器内の触媒上、ならびに内部表面、壁、備品、および導管上に堆積するものである。本発明の方法は、触媒部分酸化処理の稼動の間におけるin−situでのコークス除去を特徴とするものである。in−situでのコークスの除去は、部分的に酸化された反応生成物の瞬間的な収率を著しく妨げかつその平均的な収率を低下させてしまう酸素バーンオフまたは水蒸気のデコーキング工程が別個であるため、部分酸化処理の中断を回避する。したがって、本発明のin−situでのコークス除去の態様は、(d)炭化水素燃料対酸化剤の比を1:1未満の当量比を有する燃料リーンの供給比とするために、上記炭化水素燃料の供給量、または上記酸化剤の供給量、あるいは両方の供給量を変化させる工程と、(e)コークスの堆積を低減させるのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、上記反応器への上記燃料リーンの供給比を維持し、他方で、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程と、によって行われる。明らかに、反応器への燃料リーンの供給は、炭化水素燃料の供給を低減させることによって、または、酸化剤の供給を増加させることによって、あるいは、それらの両方の一部の適切な操作によって得られうるものであり、その結果、当量比は燃料リッチから燃料リーンへと遷移する。好ましい実施形態において、炭化水素燃料の供給量は、酸化剤の継続的な供給を維持している一方で、低減されるか、または完全に停止される。さらに好ましい実施形態において、炭化水素燃料の供給が停止され、すなわち中断され、他方で、反応器へ、燃料リーンの供給とするように、酸化剤の供給の継続を維持する。燃料リーンの供給条件下では、その当量比は0.1から、1:1未満の任意の値の範囲で変化してよい。
【0044】
好ましくは、燃料リーンのサイクル時間(コークス除去のサイクル時間)は、コークスの堆積を低減および/または除去するには十分に長い期間であり、かつ部分的に酸化される反応生成物の実質的に一定の収率を維持するには十分に短い時間である。実質的に一定の収率は、本明細書中、式(4)において規定されているように、最大収率と最小収率との間の百分率差(%Δ)を、本明細書で前述した適切な期間に亘って、約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約3.5%未満、最も好ましくは約2.5%未満に維持することが好ましい。酸素が反応器の排出流へと破過可能となる時間よりも短い燃料リーンのサイクル時間を維持することはさらに好ましい。しかしながら、酸素破過は検出するのが困難である場合があり、というのも、本方法の稼動温度においては、酸素は水素生成物と反応する傾向があるからである。炭化水素燃料がパルス状のオン−オフモードにて反応器へ供給される場合、燃料リーンのサイクル時間はこのパルス状のオン−オフサイクルよりも長いことが好ましい。有利には、燃料リーンのサイクル時間は、約5msよりも長く、好ましくは、約75msよりも長く、さらに好ましくは、約100msよりも長い。有利には、燃料リーンのサイクル時間は、約2000ms未満であり、好ましくは約1000ms未満であり、さらに好ましくは、約800ms未満である。
【0045】
燃料リーンのサイクル時間の間に用いられた他の処理条件は、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する一方で、コークスを除去するのにも十分なものである。コークス除去の間、反応器内の最低温度は、好ましくは約600℃より高く、より好ましくは850℃より高く、他方で、約1050℃を超過せず、好ましくは約1020℃を超過しないで維持される。
【0046】
燃料リーンのサイクル時間が完了した後、炭化水素燃料の供給、酸化剤の供給、または両方の供給が、工程(a)および工程(b)におけるように再開されて、反応器へ、燃料リッチの供給を行う。工程(d)において、炭化水素燃料が低減されるか、または停止された場合、次いで、燃料の供給は工程(a)に従って再開され、そして必要に応じて、所望のように、パルス状のオン−オフモードにて再開されてよい。燃料リッチの供給は、工程(c)に従って燃料リッチのサイクル時間の間、再度の燃料リッチの部分酸化のために維持され、次いで、その後、燃料リーンのサイクル時間の間、再度の工程(d)の燃料リーンの供給が続く等である。工程(a)から工程(f)は、本方法の間中、燃料リッチと燃料リーンとの各々の供給のサイクルの間で交互に行うことによって繰り返される。
【0047】
触媒部分酸化処理を中断または破棄することは所望されないので、コークスの堆積の程度を測定するために試験の間接的な方法を用いることができ、または本発明の方法による連続したコークスの除去を用いることができる。特に、部分的に酸化された反応生成物の収率は、処理の操業時間に応じて監視され、この処理の操業時間から、瞬間的な収率および平均的な収率が、本明細書中、上述で規定されたように取得される。概して、コークスの堆積は、以前の平均収率の測定と比較し、部分的に酸化された生成物の平均収率における低減について観察することから推測されるが、これに対して、コークスの低減は、以前の平均収率の測定と比較し、部分的に酸化された生成物の平均収率の増加またはその維持を観察することから推測される。平均収率は瞬間的な収率よりも、幾分良いものであり、というのも、後者はより長い燃料リーンのサイクル時間においては、特にさらに変化し得るものだからである。
【0048】
例えば、ガス・クロマトグラフィー(gc)またはgc質量分析法等の標準の分析方法を、反応器からの排出流中において、部分的に酸化された反応生成物、好ましくは二原子水素を識別し、かつ定量化するために用いることができる。最大収率、最小収率、および平均収率の決定において、処理の起動時または平衡化の間にとられたデータを排除することは有利である。平均収率の計算を不適切に歪めてしまいうる、起動時の間の収率のアウトプットが、急上昇とは言わないまでも、広範にばらつくことを、本方法が示すことは明らかとなっている。一般的な方法としては、起動時の期間は、最大収率へと至る時間としてみなすことができる。本開示で提供する実施例において示す応用については、稼動の少なくとも約12分から約15分の起動時の期間を経て、安定した状態での処理稼動を確立することができ、その後で、そうしたデータのポイントを、信頼できる収率測定を得るために用いた。
【0049】
本発明の方法は、炭化水素燃料の形で反応器へと供給される水素のモル量に基づいて、約50モル百分率より多い、好ましくは約60百分率より多い、より好ましくは約70モル百分率より多い、部分的に酸化された反応生成物、好ましくは二原子水素の平均収率を有利にも常に達成する。さらに、約100msより長く、約800ms未満の最も好ましい燃料リーンのサイクル時間において取得可能な、部分的に酸化された生成物の平均収率は、この範囲外の燃料リーンのサイクル時間において取得可能な平均収率よりも約3%または3%よりも高くなる傾向がある。
【0050】
さらなる有利な点として、約100msより長く、約800ms未満の燃料リーンのサイクル時間を用いる本発明の好ましい実施形態において、部分的に酸化された反応生成物の任意の時点での収率(瞬間的な収率)は、数分のオーダーでの短い時間フレームに亘って実質的に一定の挙動を示す。これらの好ましい実施形態において、最大収率および最小収率における百分率差は、有利にも、約3.0%未満、好ましくは約2.5%未満である。約1000msより長い燃料リーンのサイクル時間では、収率におけるばらつきはさらに顕著である。さらに有利なことに、本発明の好ましい実施形態において、部分的に酸化された反応生成物の平均収率は、少なくとも約1時間のオーダーでの、長い時間フレームに亘って実質的に一定であり、収率におけるばらつきは、最大収率と最小収率との間で1.5%未満の差を示す。
【実施例】
【0051】
以下の実施例を本発明の実例による説明として提供するが、そのような実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0052】
(実施例1(a−q))
触媒部分酸化反応器に、コネチカット州、ノースへブンのPrecision Combustion, Inc.から取得したMicrolith(登録商標)の触媒を用意した。この触媒は超短チャネル長メタルメッシュ基板を備え、この基板の上には貴金属の混合物が堆積されている。空気フロー(17slpm)および低硫黄のディーゼル燃料流(4.3g/分)を、3.3:1の燃料リッチでの当量比にて反応器に供給した。この燃料フローを、5msのパルス状のオン−オフサイクルの間、200Hzの周波数にてパルス状のモードにて稼動する高速に作動するバルブを介して供給し、この時間の間、37%のデューティサイクルで燃料を供給した。燃料フローおよび酸化剤フローを反応器の混合部分内で混合させ、グロープラグを用いて、触媒の温度を上昇させ、点火させた。この触媒部分酸化処理は稼動期間の間中、自発的に継続して水素および一酸化炭素の混合物を生成した。
【0053】
パルス状のモードでの燃料フローを30秒間、継続させ、その後、燃料フローを中断させて、当量比0:1の燃料リーンの供給とした。燃料リーンでの供給モードを、表1に示すように、5msから2000msの範囲の燃料リーンのサイクル時間の間、維持した。燃料リーンのサイクル間に、空気量を途切れなく継続的に反応器に供給した。燃料リーンのサイクル完了後、パルス状のモードでの燃料フローを再開させ、その結果としての燃料リッチでの供給を、30秒の燃料リッチのサイクル時間の間、維持した。その後、燃料リーンのサイクル時間の間、燃料フローを再び中断し、燃料リッチの供給とその後の燃料リーンの供給の処理を、稼動の期間(実行時間)の間、繰り返した。空気フローを稼動の間中、維持した。
【0054】
反応器からの排出流を、二原子水素の存在下で、ガスクロマトグラフィー(gc)により分析した。この処理の最高温度を測定した。二原子水素の収率を燃料リーンのサイクル時間に応じて測定し、これから、最大収率、最小収率、百分率差(%Δ)、および平均収率を記録または計算した。結果を表1および図1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から、処理温度は1050℃を超えていないことが了解される。さらに、表1および図1から、100msから1000msの燃料リーンのサイクル時間は、75.6%〜77.6%の範囲の二原子水素の最適な平均収率を提供したことが了解される。同様に、最大収率と最小収率とにおける百分率差は、75msより長くかつ1000ms未満の燃料リーンのサイクル時間にて、さらに小さくなる傾向にあった。
【0057】
表2は、実施例E−1(a)、E−1(e)、E−1(f)、E−1(g)、E−1(l)、およびE−1(o)について、プロセス操業時間に応じた水素の収率および燃料リーンのサイクル時間を表にしたものである。
【0058】
【表2−1】

【表2−2】

【0059】
表2中のデータを図2でグラフ化し、図2において、稼動時間の60分に至るまでの間で、燃料リーンのサイクル時間が100msから1000msの範囲である場合に、水素の収率は約3%分、高くなることが了解される。さらに、瞬間的な収率は、100ms、125ms、および450msにおける実施例について、その処理稼動の間中、実質的に均一である。より短いサイクル時間において、その収率は経時的にゆっくりと減少するが、「実質的に一定である」という大まかな定義内に残る。1000msのより長いサイクル時間においては、瞬間的な収率はばらつきを示すが、平均収率は実行時間の間中、実質的に均一である。上述とは対照的に、従来技術において記載されるように、コークスのバーンオフが別個であるために、数分または数時間の間、燃料が中断される場合、部分的に酸化された生成物の瞬間的な収率は、平均収率はゼロまで低下し、その平均収率に対して著しい悪影響を及ぼすであろう。
【0060】
燃料リーンのサイクル時間の間の実際の下限および上限は、燃料リッチのサイクル時間、オン−オフのパルスサイクルおよびあればデューティサイクル、処理温度および圧力、ならびに燃料流量および酸化剤流量を含む、選択された燃料および稼動条件に依存して様々であることが想定される。本明細書において与えられた方法から、ならびに選択された稼動条件について図1に示したグラフに類似する参照グラフを準備することによって、燃料リーンのサイクル時間についての下限および上限を、当業者は容易に決定することができる。
【0061】
本発明を詳細に記載していると同時に、本明細書で教示した特徴を示す他の構成が、in−situでのコークス除去と共に触媒部分酸化についての本方法に対しても本明細書中で熟慮されている。それゆえ、本発明の趣旨および範囲は、本明細書中において記載した好ましい実施形態の記載に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
in−situでコークスを除去する触媒部分酸化の方法であって、
(a)炭化水素燃料を反応器に供給する工程と、
(b)酸化剤を前記反応器に供給する工程であって、ここで前記炭化水素燃料と前記酸化剤とは燃料リッチの供給比である、工程と、
(c)少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間、前記反応器内において前記炭化水素燃料および前記酸化剤を触媒と接触させる工程と、
(d)炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リーンの供給比とするために、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、
(e)コークスの堆積を低減させるのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、前記燃料リーンの供給比を維持し、他方で、部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持する工程と、
(f)工程(a)および工程(b)のようにして燃料リッチの供給比とするように、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程と、
工程(c)から工程(f)を繰り返す工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記酸化剤は、空気、酸素富化空気、実質的に純酸素、または、酸素および窒素を主成分として含む気体混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素燃料は、ガソリン、軽油(ディーゼル燃料)、バイオディーゼル燃料、天然ガス、エタン、プロパン、およびアルコールからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)および工程(b)において、前記反応器に供給される炭化水素燃料対酸化剤の当量比は1:1より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素燃料は、パルス状のオン−オフサイクルで前記反応器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス状のオン−オフサイクルは、5ミリ秒から50ミリ秒の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パルス状のオン−オフサイクルの間に前記炭化水素燃料が前記反応器に供給される総時間であるデューティ比は、前記パルス状のオン−オフサイクルの20%から80%の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
燃料リッチのサイクル時間は、20秒よりも長く、前記炭化水素燃料の供給が中断される場合に1050℃よりも高い処理温度に上昇する時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)は、600℃より高く、かつ1100℃未満で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)において、前記炭化水素燃料の供給量が減少するかまたは供給が停止され、他方で、前記酸化剤の供給量は、前記反応器への燃料対酸化剤の比が燃料リーンの供給比となるように維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)において、前記酸化剤の供給量が増加され、他方で、前記炭化水素燃料の供給量は、前記反応器への燃料対酸化剤の比が燃料リーンの供給比となるように維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)において、前記炭化水素燃料および前記酸化剤は、1:1未満の当量比にて前記反応器に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記燃料リーンのサイクル時間は、5ミリ秒より長く、かつ部分的に酸化された反応生成物の最大収率と最小収率との間の百分率差が10%より多い減少となる時間より短い、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記燃料リーンのサイクル時間は、100msより長く、かつ1000ms未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)から工程(f)の全ては、共に供給される水または水蒸気の不在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒は、超短チャネル長メタルメッシュ基板を備えており、前記基板は、当該基板上に堆積した1つ以上の貴金属を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記炭化水素燃料はディーゼル燃料であり、前記酸化剤は空気である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に一定の収率とは、処理稼動の最初の60分の間で、部分的に酸化された反応生成物についての最大収率と最小収率との間での、10%未満の百分率差のことをいう、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
炭化水素燃料および酸化剤が反応器へと供給されて、少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な触媒部分酸化条件下で触媒と接触する、触媒部分酸化の方法であって、
(i)前記反応器への炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リッチの供給比とするために、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程、および、少なくとも1つの部分的に酸化された反応生成物を生成するのに十分な燃料リッチのサイクル時間の間、前記燃料リッチの供給比を維持する工程と、
(ii)前記反応器への炭化水素燃料対酸化剤の比を燃料リーンの供給比とするために、前記炭化水素燃料の供給量、前記酸化剤の供給量、または両方の供給量を変化させる工程、および、コークスの堆積を取り除き、かつ部分的に酸化された反応生成物の実質的に一定の収率を維持するのに十分な燃料リーンのサイクル時間の間、前記燃料リーンの供給比を維持する工程と、
(iii)前記方法の間中、工程(i)から工程(ii)を繰り返す工程と、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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