説明

ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ並びに癌およびウイルス感染の検出方法

【課題】癌やウイルス感染した細胞を検出するために有効な腫瘍マーカー及びこれを検出するために使用する前記腫瘍マーカーに特異的に反応するモノクローナル抗体及び該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び該モノクローナル抗体を使用した癌やウイルス感染した細胞の検出方法をを提供することを目的とする。
【解決手段】ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体:前記モノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ:前記モノクローナル抗体を使用し、癌又はウイルス感染した細胞由来のISG15タンパク質を検出することを特徴とする癌及びウイルス感染の検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ並びに癌およびウイルス感染の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の診断方法として、腫瘍マーカーと総称される物質を測定することが行われている。
腫瘍マーカーとしては、例えば、癌胎児性抗原(Carcinoembryonic Antigen、CEA)、α−フェトプロティン(AFP)等が知られている。
腫瘍マーカーは、必ずしも癌細胞のみで検出されるとは限らず、正常細胞においても検出されることがあり、優れた検出指標が求められている。
腫瘍マーカーを使用した癌の検出方法として、例えば肺非小細胞癌、食道癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌、胃癌、腎癌、大腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、膵癌、膀胱癌を、抗AKR1B10
モノクローナル抗体を用いた免疫学的手法で診断する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−189228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、癌やウイルス感染した細胞を検出するために有効な腫瘍マーカー及びこれを検出するために使用する前記腫瘍マーカーに特異的に反応するモノクローナル抗体及び該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び該モノクローナル抗体を使用した癌やウイルス感染した細胞の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果ISG15(interferon-stimulated gene 15)と称されるタンパク質を、癌やウイルス感染した細胞が産生していることを見出した。
さらに、前記ISG15は癌の腫瘍マーカーやウイルス感染した細胞のマーカーとして有効であることを見出し、前記ISG15に対する抗体を使用した免疫測定系を構築することにより、癌やウイルス感染した細胞の診断が可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、
(1)ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
(2)受託番号がFERM−AP20669であるハイブリドーマにより産生される、ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体である。
(3)前記モノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマである。
(4)受託番号がFERM−AP20669であるハイブリドーマである。
(5)前記モノクローナル抗体を使用し、癌又はウイルス感染した細胞由来のISG15タンパク質を検出することを特徴とする癌およびウイルス感染の検出方法である。
【発明の効果】
【0006】
癌及びウイルス感染した細胞の検出に有用なモノクローナル抗体及び該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを使用した検出方法により癌及びウイルス感染した細胞を簡便にかつ迅速に検出することが可能となる。
肝癌をはじめとしてある種の癌はウイルスの感染が原因となって発症することが知られており、細胞がウイルス感染した段階で感染の有無を発見できることは、早期の対応が可能となり予後の治療に大きく貢献すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で細胞腫瘍マーカーとして使用するISG15は、細胞に各種のウイルスが感染することで該細胞からインターフェロンα/βが誘導され、それらの作用で各種インターフェロン誘導タンパク質がさらに誘導されるが、それらインターフェロンによって誘導されるタンパク質の一つである。
このISG15は分子量が約15kDaで、その構造はユビキチンタンパク質が2個繋がったような構造になっており、ユビキチン様タンパク質の一つに数えられている。
このISG15は細胞内のタンパク質のターゲットタンパク質のリシン残基のεアミノ基にプロセシングにより生じたカルボキシル末端のグリシン残基を介してイソペプチド結合する。
しかしこのISG15が結合したタンパク質の運命、およびISG15の結合が持つ意味についてはいまだ明らかでない。
ただしこの結合がユビキチンの結合とは違いターゲットタンパク質をプロテアソームによる分解に導くことはないことが知られている。
このISG15のターゲットタンパク質への結合はユビキチンやユビキチン様タンパク質スモ等と同様にE1,E2,E3の3種の酵素が連続的に作用することによって触媒されると考えられている。
E1はE1Lタンパク質、E2はUbc8と知られているがE3についてはいまだ明らかになっていない。
【0008】
[免疫原の調製]
本発明のモノクローナル抗体の免疫原として前記ISG15を用意する。
前記ISG15のアミノ酸配列(配列番号1)、及び該アミノ酸配列をコードするcDNA(配列番号2)は、GenBankにおいてAY168648として公開されている。
従って、ISG15はこのアミノ酸配列を利用して、例えば、固相ペプチド合成法等の公知の方法で合成することができる。
また、cDNAを利用して、発現用プラスミドベクターに該遺伝子を組み込み、該プラスミドベクターにより大腸菌を形質転換して増殖した後、細胞を破壊し、タンパク質を精製する等の公知の遺伝子組換え手法により生産することができる。
【0009】
[免疫及び抗体産生細胞の採取]
前記免疫原から抗体産生細胞を得る方法は、公知の抗体産生細胞を得る方法が使用できる。
例えば、免疫原をウサギ、ラット、マウス等の哺乳動物の腹腔内等に適当量注入した後、数週間間隔で数回さらに注入を行い免疫を行う。
前記免疫した哺乳動物のリンパ節細胞、胸腺細胞、脾臓細胞等を取り出しこれらの組織を破壊し、PBS、RPMI−1640等の緩衝液又は動物細胞培養用培地で懸濁し遠心分離を行い抗体産生細胞を得ることができる。
本発明には免疫反応を高めるため、フロイント完全アジュバント等のアジュバントを使用することができる。
【0010】
[ハイブリドーマの作製]
前記抗体産生細胞とミエローマ細胞を公知の方法で細胞融合し、ハイブリドーマを作製することができる。
使用するミエローマ細胞は免疫動物と同種のものが好ましく薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できるものが好ましい。
このようなものとしては、例えば8−アザグアニン耐性株を挙げることができる。
本発明では、上記の性質を有するミエローマ細胞として市販品を使用することができる。
【0011】
前記抗体産生細胞とミエローマ細胞をRPMI-1640等の培地中で1:1〜20:1程度混合し、ポリエチレングリコール等の細胞融合促進剤を添加して融合反応を行いさらにミエローマ細胞に対応した選択培地で選択的に培養を行いハイブリドーマを得ることができる。
【0012】
[ハイブリドーマの選択]
前記ハイブリドーマから抗体を産生しているハイブリドーマの選択を行う。
選択方法は、公知の抗体産生ハイブリドーマの選択方法を使用することができ、例えば、酵素免疫測定法(ELISA法)等を使用することができる。
【0013】
[ハイブリドーマのクローニング]
前記抗体を産生しているハイブリドーマを限界希釈法等を使用してクローニングを行い、増殖が良好で抗体産生能が高いクローンを選択してハイブリドーマを樹立する。
本発明のハイブリドーマは、ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するものである。
本発明者は、前記の方法で得られたハイブリドーマのうち特に増殖が良好で抗体産生能が高いハイブリドーマを選択し、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、2005年(平成17年)9月28日 受託番号 FERM AP−20669として寄託している。
前記寄託したハイブリドーマは、サブクラスIgG1(κ)のモノクローナル抗体を産生するものである。
本発明のハイブリドーマは、前記の方法によりISG15タンパク質に対する抗体を産生するものであれば寄託したハイブリドーマに限定されるものではない。
【0014】
[モノクローナル抗体の調製]
確立したハイブリドーマを使用してモノクローナル抗体を得る方法は、公知の細胞培養法や腹水形成法を使用することができ、必要に応じて硫安塩析法、アフィニティクロマトグラフィー等を使用して精製を行うことができる。
【0015】
[ISG15タンパク質の検出方法および癌又はウイルス感染した細胞の検出方法]
前記調製により得られたモノクローナル抗体は、ISG15タンパク質の検出方法に使用することができる。
さらに、癌又はウイルス感染した細胞由来のISG15タンパク質の検出に使用することができるので、癌又はウイルス感染した細胞の検出に使用することができる。
本発明のモノクローナル抗体を使用したISG15タンパク質の検出方法は、公知の抗体を使用した免疫学的測定法であれば特に限定されない。
例えば、ELISA法、ウエスタンブロット法等を使用することができる。
本発明の検出方法の対象となる癌又はウイルス感染した細胞として、大腸癌、前立腺癌、腎癌等を挙げることができる。
被検対象としては、前記癌又はウイルス感染した細胞が産生するISG15タンパク質が含まれる可能性のあるサンプルであれば特に限定されず、例えば、臓器、組織、細胞、血液、尿、唾液等を挙げることができる。
【0016】
本発明のモノクローナル抗体は、前記癌又はウイルス感染した細胞の検出用キットとして、検出に必要な他の試薬等と共に検出用キットとすることができる。
【実施例】
【0017】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]組換えISG15タンパク質の作製
ISG15遺伝子を発現用プラスミドベクターに組み込み、組換えISG15タンパク質を作製した。
ヒト大腸癌細胞株(HT-29)より調製したcDNAを鋳型としてPCR反応によりISG15遺伝子DNA断片を得た。
このDNA断片を制限酵素で消化した発現ベクターpET15bにフレームを合わせて連結させ、pET15b+ISG15ベクターを得た。
pET15b+ISG15ベクターを大腸菌BL21に形質転換し形質転換菌を得た。
この大腸菌をLB培地中で対数増殖期まで増殖させた後、IPTGを添加し(終濃度0.2mM)、37℃でさらに3時間培養を続け、ISG15タンパク質の発現誘導を行なった。
遠心分離により培養液から集菌し、緩衝液に懸濁し、超音波破砕機により細胞を破砕した。
破砕液の遠心分離により組換えISG15タンパク質を分離しイオン交換クロマトグラフィーにより組換えISG15タンパク質を精製した。
この組換えISG15タンパク質を免疫原として免疫に用いた。
【0018】
[実施例2]マウスの免疫とハイブリドーマの作製
実施例1で得られた組換えISG15タンパク質を0.5mg/mlに調製し、等量のフロイント完全アジュバントと混合し乳化した。
この乳化液400μlをマウス腹腔内に注射した。
その後10日毎に等量のタンパク質を追加免疫し、最終免疫の3日後にマウスの脾臓を摘出した。
脾臓をRPMI1640培地中で断片化し、ピンセットで細胞を押し出し、遠心分離(1,000rpm、5分間)した後、上清を捨てた。
ペレットを0.17M塩化アンモニウム液で10分処理し赤血球を破壊し、RPMI1640培地で遠心洗浄して融合用脾細胞とした。
上記脾細胞とあらかじめ培養していたマウス骨髄腫細胞を細胞数が脾細胞:骨髄腫細胞=5:1になるように混合し、遠心分離(1,000rpm、5分)した。
上清を取り除きペレットをよく解きほぐした後、37℃で50%ポリエチレングリコール1500溶液を1ml滴下し、チューブを1分間回転させることで混合した。
次に、37℃に加温しておいたRPMI1640培地を1分毎に1mlずつ数回加えた後、RPMI1640培地を加えて全量を10mlとし遠心分離(1,000rpm、5分)後、上清を捨てペレットをよく解きほぐし、HAT培地を加えて全量を100mlとした。
この懸濁液を96ウェル培養用プレートに100μl/ウェルずつ分注し、COインキュベーター(CO濃度5%)中、37℃で約10日間培養した。
【0019】
[実施例3]ハイブリドーマの確立
抗ISG15抗体を産生しているハイブリドーマを選択するためにハイブリドーマ培養上清中に産生された抗体の有無を酵素免疫測定法(ELISA法)で測定し調べた。
96穴ELISAプレートの各ウェルに、組換えISG15タンパク質溶液(1μg/ml PBS)を100μlずつ分注し、4℃で一夜放置した。
0.1% Tween20/PBS(PBS−T)で3回洗浄した後、5%スキムミルク/PBSを200μl/ウェル分注し、室温で1時間放置した。
次に、ウェルに培養上清を100μlずつ加え、室温で1時間反応させた。
PBS−Tで3回洗浄した後、5%スキムミルク/PBS−Tで1,000倍希釈したパーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を100μlずつ加え、室温で1時間反応させた。
反応終了後、各ウェルを PBS−T で3回洗浄し、0.006%過酸化水素及び0.96mg/mlテトラメチルベンジジンを含む溶液100μlを各ウェルに加え、室温で30分間反応させた。反応後、各ウェルの655nmにおける吸光度を測定した。
その結果抗ISG15モノクローナル抗体の産生が認められたハイブリドーマを24穴プレートに移し、HT培地で培養した後、限界希釈法によりクローニングを行なった。
こうして得られたクローンの中から、増殖が良好で抗体産生能が高いクローンを選択し、抗ISG15モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを確立した。
得られたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは表1のとおりである。
モノクローナル抗体のサブクラス決定は、マウス・モノクローナル・アイソタイピング・キット(大日本製薬)を用いて、その説明書に従って行なった。
得られたモノクローナル抗体のうち特に増殖が良好で抗体産生能が高いクローンを抗体名を5G11として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、2005年9月28日に、受託番号 FERM AP−20669として寄託した。
【0020】
【表1】

【0021】
[実施例4]モノクローナル抗体の調製
13週齢のBALB/c系マウスにプリスタン0.5mlを腹腔内注射し、1週間飼育した。
上記実施例3で得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞5×106個を腹腔内移植した。
2週間後マウスから腹水を採取し、遠心分離で固形物を除去後、50%硫安で塩析した。
沈澱を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)に対して透析した。
この液を、あらかじめ0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したプロテインG−アガロースカラムに通した。
モノクローナル抗体はカラム内に保持されるので、カラムを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄しその他の成分を除いた。
モノクローナル抗体の溶出は、0.2Mグリシン(pH2.85)により行なった。溶出されたモノクローナル抗体は、PBSに対して透析して精製抗体液を得た。
【0022】
[実施例5]モノクローナル抗体の特異性測定
実施例1で調整した組換えISG15タンパク質とモノクローナル抗体の反応をウェスタンブロット法で測定した。
ポリアクリルアミドゲルのウェルに組換えタンパク質溶液をアプライしSDS−PAGEを行ない、分離したタンパク質をゲルからPVDF膜に転写した。
PVDF膜を5%スキムミルク/PBSに浸し、4℃で一夜放置しブロッキングした。
モノクローナル抗体:5%スキムミルク/PBS=1:1,000(w/v)の溶液をつくり、室温で1時間反応させ、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
パーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を5%スキムミルク/PBSで1,000倍に希釈し、室温で1時間反応させた後、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
ECL Western Blotting Detection System(アマシャム・バイオサイエンス社)を用い、プロトコールに従い化学発光法で検出した。
図1に示すとおり、モノクローナル抗体は組換えISG15タンパク質と強く反応したので、本発明のモノクローナル抗体がISG15に特異的に反応することが確認できた。
【0023】
[実施例6]モノクローナル抗体の活性測定
調製したモノクローナル抗体5G11と大腸癌細胞株HT−29、LS174T、SW480、SW620、前立腺癌細胞株LNCaPのISG15タンパク質との反応をウェスタンブロット法で測定した。
それぞれの細胞を培養フラスコ中でコンフルエントまで培養し回収し、PBSで3回洗浄した。遠心分離で得られた細胞ペレットをPBSに懸濁しSDS溶液を添加し溶解させることで、タンパク質溶液を得た。
また、HT−29の細胞培養上清についても測定を行なうため、細胞培養上清液およびその10倍濃縮液を調製した。
ポリアクリルアミドゲルのウェルにタンパク質溶液または細胞培養上清をアプライしSDS−PAGEを行ない、分離したタンパク質をゲルからPVDF膜に転写した。
PVDF膜を5%スキムミルク/PBSに浸し、4℃で一夜放置しブロッキングした。
モノクローナル抗体:5%スキムミルク/PBS=1:1,000(w/v)の溶液をつくり、室温で1時間反応させ、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
パーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を5%スキムミルク/PBSで1,000倍に希釈し、室温で1時間反応させた後、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
ECL Western Blotting Detection System(アマシャム・バイオサイエンス社)を用い、プロトコールに従い化学発光法で検出した。
図2〜図4に示すとおり、モノクローナル抗体5G11はすべての癌細胞株のISG15タンパク質と強く反応したが、3F11、3E8などはすべての細胞とは反応せずまたは反応が弱かった。
5G11は活性が高く、モノクローナル抗体として利用価値が高いと思われたが、その他の抗体は活性が低かったため検出用抗体の候補から除外した。よって、モノクローナル抗体5G11を寄託した。
図5に示すとおり、HT−29の細胞培養上清中のISG15タンパク質とモノクローナル抗体の反応が見られ、ISG15が細胞外へ分泌されることが確認された。
【0024】
[実施例7]腎癌検体からの検出
モノクローナル抗体5G11を用いて、ウェスタンブロット法により腎癌検体からISG15の検出を行なった。
腎癌患者3名から摘出した組織から癌部位とその周辺の正常部位を分け、TRIzol
reagent(インビトロジェン社)を用いプロトコールに従いタンパク質溶液を調製した。1レーン当たり全タンパク質量として20μgをアプライし、SDS−PAGEを行なった。泳動後、分離したタンパク質をゲルからPVDF膜に転写した。
PVDF膜を5%スキムミルク/PBSに浸し、4℃で一夜放置しブロッキングした。
モノクローナル抗体:5%スキムミルク/PBS=1:1,000(w/v)の溶液をつくり、室温で1時間反応させ、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
パーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を5%スキムミルク/PBSで1,000倍に希釈し、室温で1時間反応させた後、PBS−Tで洗浄した(10分、3回)。
ECL Western Blotting Detection System(アマシャム・バイオサイエンス社)を用い、プロトコールに従い化学発光法で検出した。
図6に示すとおり、抗ISG15モノクローナル抗体5G11と腎癌患者の癌部位およびその周辺の正常部位から調製したタンパク質溶液との反応測定において、患者3名とも癌部位のISG15と反応したが正常部位とは反応しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ウエスタンブロット法による本発明のモノクローナル抗体と組換えISG15との反応を示す写真である。
【図2】ウエスタンブロット法による本発明のモノクローナル抗体5G11と大腸癌細胞株HT−29、LS174T、SW480、SW620、前立腺癌細胞株LNCaPのISG15タンパク質との反応を示す写真である。
【図3】ウエスタンブロット法によるモノクローナル抗体3E8と大腸癌細胞株HT−29、LS174T、SW480、SW620、前立腺癌細胞株LNCaPのISG15タンパク質との反応を示す写真である。
【図4】ウエスタンブロット法によるモノクローナル抗体3F11と大腸癌細胞株HT−29、LS174T、SW480、SW620、前立腺癌細胞株LNCaPのISG15タンパク質との反応を示す写真である。
【図5】ウエスタンブロット法による本発明のモノクローナル抗体5G11と大腸癌細胞株HT−29培養上清中のISG15タンパク質との反応を示す写真である。
【図6】ウエスタンブロット法による本発明のモノクローナル抗体5G11と腎癌患者から摘出した組織のうち癌部とその周辺の正常部位のタンパク質との反応を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体。
【請求項2】
受託番号がFERM−AP20669であるハイブリドーマにより産生される、ISG15タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモノクローナル抗体を産生することを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項4】
受託番号がFERM−AP20669であるハイブリドーマ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のモノクローナル抗体を使用し、癌又はウイルス感染した細胞由来のISG15タンパク質を検出することを特徴とする癌およびウイルス感染の検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−106716(P2007−106716A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300675(P2005−300675)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】