説明

LED演出照明システム

【課題】 LED照明器具の設置場所に関わらず、色バラツキを低コストで簡単に補正できるLED演出照明システムを提供する。
【解決手段】 赤、緑、青の3原色を混色して発光可能な1乃至複数のLED照明器具10の光出力を制御する光出力制御装置2は、演出モードと補正モードとを切り替えるモード切替部20と、補正モードにおいて、LED照明器具10の光出力を所望の色見とするために制御データが指示する3原色の各出力レベルを調整する補正レベル調整部22dと、演出モードにおいて、演出プログラムに基づく3原色の各出力レベルに、補正レベル調整部22dで調整した3原色の各出力レベルの比率を乗じた制御データを生成する制御データ生成部23と、制御データ生成部23で生成した制御データを各LED照明器具10に送信する制御データ送信部24とを備え、LED照明器具10と分離して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED演出照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外のビルの壁面、橋、観覧車や、屋内のアミューズメント施設等で、演出を目的として照明器具の光出力を制御する演出照明システムがある。この演出照明システムは、複数の照明器具の点灯、消灯、調光、色見等を、予め設定した演出プログラムに基づいて制御することで、演出効果を得るものである。
【0003】
一方、青色LED(発光ダイオード)が発明されてから、光の3原色である赤、緑、青の各LED素子を用いて、理論上フルカラーを表現できるようになった。それに伴いLED素子は、演出を目的とする照明器具にも使用されるようになり、従来、白熱灯、蛍光灯、ネオン灯等の光源で演出を行っていた市場でも広く使用されるようになってきた。そして、この市場が拡大するに伴い、高価だったLED素子のコストも下がり、制御対象となるLED照明器具の台数が多い大規模の演出が望まれるようになってきた。
【0004】
このLED素子の光出力は同色であっても個体毎に色バラつきがあるため、LED素子の色バラツキの度合を選別してLED照明器具に使用しているのであるが、この選別基準を厳しくして色バラツキの小さいLED素子のみで照明器具を構成するとコストがかかってしまう。したがって、照明器具のコストを考慮すると、LED素子の色バラツキはある程度、許容する必要がある。
【0005】
そこで、LED照明器具の色バラツキを補正するために様々な方法が提案されている。例えば、第1の従来例として、演出する上で問題となる色バラツキがある場合、複数のLED照明器具を色バラツキに応じたグループに分けて、グループ毎に色の設定を変えて個々の制御データを作成することで、全てのLED照明器具を同じ色見にする方法がある。
【0006】
また第2の従来例として、LED照明器具の光出力を光センサで検出し、光センサの検出結果をフィードバックして所望の色見となるようにLED照明器具を制御する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また第3の従来例として、混色された色温度が所定値となるように発光色の異なるLED素子毎に出力レベルを調整する設定手段を照明器具内に設けたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2003−510856号公報(段落番号[0015]〜[0024]、図1)
【特許文献2】特開2006−40872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記第1の従来例では、グループ毎に色の設定を変えて個々の制御データを作成するので、制御データの数が多くなってしまう。例えば、一回の演出で通常100パターン程度の制御データがあるが、互いに色見が違うLED照明器具のグループが4グループあった場合、計400パターン程度の制御データが必要になる。また、これらの制御データは、実際の演出を見ながら、周囲とのバランスや音楽に合わせて微調整が何度も行われるので、制御データのパターン数の増加は設定作業時間に大きな影響を与えることになる。したがって、制御データのパターン数が多い演出や、制御するLED照明器具が多い演出の場合、色バラツキを補正することは非常に大変な作業となる。
【0009】
また、上記第2の従来例では、光センサが必要であり、さらにはフィードバック制御を行うことから、コストが高くなるととともに構成が複雑となる。
【0010】
また、上記第3の従来例では、調光信号を受信するLED照明器具側でLED素子の出力レベルを調整するので、LED照明器具の設置場所まで行かなければならず、高所や危険箇所等に設置されたLED照明器具の色バラツキを補正することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、LED照明器具の設置場所に関わらず、色バラツキを低コストで簡単に補正できるLED演出照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、赤、緑、青の3原色を混色して発光可能な1乃至複数のLED照明器具に対して3原色の各出力を制御する制御データを出力して、各LED照明器具の光出力を制御する光出力制御装置をLED照明器具と分離して備え、光出力制御装置は、各LED照明器具の光出力による演出を行うために設定された演出プログラムに基づいて各LED照明器具に制御データを出力する演出モードと、各LED照明器具に出力する制御データを補正する補正モードとを切り替えるモード切替手段と、補正モードにおいて、LED照明器具の光出力を所望の色見とするために、制御データが指示する3原色の各出力レベルを調整するレベル調整手段と、補正モードにおいては、レベル調整手段で調整した3原色の各出力レベルに基づいた制御データを生成し、演出モードにおいては、演出プログラムに基づく3原色の各出力レベルに、レベル調整手段で調整した3原色の各出力レベルの比率を乗じた制御データを生成する制御データ生成手段と、制御データ生成手段で生成した制御データを各LED照明器具に送信する制御データ送信手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、演出プログラムに基づく3原色の各出力レベルに、レベル調整手段で調整した3原色の各出力レベルの比率を乗じた制御データによって、各LED照明器具の光出力を制御することで、低コストで簡単に色バラツキが補正される。さらに、光出力制御装置をLED照明器具と分離して備えることで、高所や危険箇所等に設置されたLED照明器具に対しても、色バラツキを補正することは容易となる。したがって、LED照明器具の設置場所に関わらず、色バラツキを低コストで簡単に補正できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明では、LED照明器具の設置場所に関わらず、色バラツキを低コストで簡単に補正できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態)
図1はLED演出照明システムの構成を示しており、本システムは、LED照明群1と光出力制御装置2とをケーブル3で接続して構成される。
【0017】
LED照明群1は、ケーブル3を介して光出力制御装置2とは分離して設けられた複数のLED照明器具10,10,...で構成され、光出力制御装置2からケーブル3を介して送信される制御データによって、各LED照明器具10の点灯、消灯、調光、色見等を各々制御することで演出が行われる。
【0018】
LED照明器具10は、図2に示すように、1乃至複数の赤色LED素子11r、1乃至複数の緑色LED素子11g、1乃至複数の青色LED素子11bと、商用電源を入力として赤色LED素子11r、緑色LED素子11g、青色LED素子11bへ点灯電力を各々供給するLED点灯部12r,12g,12bと、LED点灯部12r,12g,12bの各出力を制御する点灯制御部13とで構成される。そして、点灯制御部13は、ケーブル3を介して光出力制御装置2から送信される制御データに基づいて、LED点灯部12r,12g,12bが各LED素子11r,11g,11bに供給する点灯電力を各々制御し、LED照明器具10は赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色を混色してフルカラーで発光可能となる。
【0019】
光出力制御装置2は、図1に示すように、モード切替部20と、演出プログラム作成部21と、色バラツキ補正部22と、制御データ作成部23と、制御データ送信部24とを備える。上記各部の機能は、光出力制御装置2をCPUやメモリ、ハードディスク、モニタ画面等を具備するコンピュータ装置で構成し、専用のソフトウェア(本LED演出照明システムのプログラム)を実行することで実現している。
【0020】
モード切替部20は、各LED照明器具10の光出力による演出を行うために設定された演出プログラムに基づいて各LED照明器具10に制御データを出力する演出モードと、各LED照明器具10の色バラツキ補正のために制御データを補正する補正モードとを切り替える機能を有する。
【0021】
演出プログラム作成部21は、演出プログラムを作成する機能を有し、演出対象器具指定部21aと、演出タイプ指定部21bと、演出時間指定部21cとで構成される。演出プログラム作成時には、演出対象器具指定部21aで演出の1パターンに使用するLED照明器具10を選択し、演出タイプ指定部21bで色見、調光度合等の演出の種類(例えば、指定した開始色から指定した順番で色替えするレインボーや、指定した周期毎にランダムに色替えするランダム等)を選択し、さらには演出時間指定部21cで演出の1パターンの時間を設定することで、演出の1つのパターンが作成される。そして、このようなパターンを複数作成し、これら複数のパターンを組み合わせることで1つの演出プログラムとなる。
【0022】
そして、演出モードにおいて、制御データ作成部23は、各LED照明器具10の光出力を制御するために、演出プログラムに基づいて制御データを作成し、制御データ送信部24を介してLED照明器具10へ制御データを送信するのであるが、ある演出プログラムに基づいて赤、緑、青の各出力レベルLr1,Lg1,Lb1を指示する制御データを作成しても、LED照明器具10毎にLED素子の色バラツキがある場合、同じ演出プログラムであってもLED照明器具10によって色見が異なってしまう。そこで、本実施形態の光出力制御装置2は、演出モードにおいて、上記赤、緑、青の各出力レベルLr1,Lg1,Lb1に色バラツキ補正を施してから制御データを作成しており、以下、この色バラツキ補正について説明する。
【0023】
光出力制御装置2の色バラツキ補正部22は、補正対象器具指定部22aと、補正レベル調整部22dとで構成され、さらに補正対象器具指定部22aは、補正対象グループ指定部22b、グループ内器具追加削除部22cで構成される。そして、モード切替部20を補正モードに切り替えると、光出力制御装置2(コンピュータ装置)のモニタ画面上には、図3に示すような上記各部を操作する画面が表示される。
【0024】
まず、補正対象グループ指定部22bは、同じ色バラツキ補正を行うグループ(補正対象グループ)毎の補正状況が表示され、選択した補正対象グループが反転表示される。
【0025】
グループ内器具追加削除部22cには、LED照明群1の全てのLED照明器具10が、その配置にしたがって表示されており、補正対象グループ指定部22bで選択した補正対象グループに属するLED照明器具10が反転表示される。そして、同じ色バラツキを示すLED照明器具10が同一グループとなるように、当該補正対象グループに属するLED照明器具10の追加、削除を行う。
【0026】
次に、補正レベル調整部22dは、補正モードにおける赤、緑、青の各出力レベルLr2,Lg2,Lb2を連続的に変化させる赤レベル調整部Fr、緑レベル調整部Fg、青レベル調整部Fbを備えており、補正モード時の制御データ作成部23は、現在選択している補正対象グループに属するLED照明器具10に対して、赤色LED素子11r、緑色LED素子11g、青色LED素子11bの各出力レベルが、補正レベル調整部22dで調整した赤、緑、青の各出力レベルLr2,Lg2,Lb2となるように制御データを作成する。なお、初期状態では、各出力レベルLr2,Lg2,Lb2は100%(すなわち、白色)に設定されている。上記制御データは、制御データ送信部24を介して補正対象のLED照明器具10へ送信され、ユーザは、実際に点灯している補正対象のLED照明器具10の色見を確認しながら、所定の色(ここでは白色とする)が所望の色見となるように、赤レベル調整部Fr、緑レベル調整部Fg、青レベル調整部Fbで赤、緑、青の各出力レベルLr2,Lg2,Lb2を調整する。上記処理を補正対象グループ毎に行えば、全てのLED照明器具10において白色の色見が同一となる出力レベルLr2,Lg2,Lb2が補正対象グループ毎に設定される。
【0027】
そして、モード切替部20を演出モードに切り替えると、制御データ作成部23は、演出プログラムに基づく赤、緑、青の各出力レベルLr1,Lg1,Lb1に、補正レベル調整部22dで設定した赤、緑、青の各出力レベルLr2,Lg2,Lb2を乗じた出力レベルLr3[=Lr1×Lr2],Lg3[=Lg1×Lg2],Lb3[=Lb1×Lb2]を、補正対象グループ毎に算出し、該算出した出力レベルLr3,Lg3,Lb3を指示する制御データを、補正対象グループ毎に作成する。この制御データは、演出プログラムに基づく3原色の各出力レベルに、補正レベル調整部22dで調整した3原色の各出力レベルの比率を乗じた制御データであり、各補正対象グループに属するLED照明器具10の色バラツキを補正するデータとなる。そして、上記作成された制御データは、制御データ送信部24を介して各LED照明器具10へ補正対象グループ毎に出力され、各LED照明器具10は、自己宛の制御データに基づいて、赤、緑、青の各出力レベルがLr3,Lg3,Lb3となるように点灯制御され、色バラツキが補正される。
【0028】
上記実施形態では、白色が所望の色見となるように補正を行うことで、全てのLED照明器具10について白色の色見が統一される。しかし、ある企業のコーポレートカラーがオレンジ色であり、このオレンジ色の色見にはこだわるが、他の色の色見については厳密さが要求されない演出の場合、ユーザは、実際に点灯しているLED照明器具10の発するオレンジ色が所望の色見となるように、補正レベル調整部22dで赤、緑、青の各出力レベルLr2,Lg2,Lb3を調整すればよい。他の色についても同様である。なお、補正モードにおける各出力レベルLr2,Lg2,Lb2の初期値を任意に設定することで、補正モードにおける初期値の色を任意に設定できる。
【0029】
上記のように補正モードで色バラツキを補正すれば、演出モード時にLED照明器具10に送信される全ての制御データに対して補正がなされるので、制御データのパターン数が多い演出や、制御するLED照明器具10が多い演出であっても、色バラツキを簡単に補正できる。さらに、フィードバック制御を行わないので、低コストで構成も簡単にできる。さらに、高所や危険箇所等に設置されたLED照明器具10に対しても、LED照明器具10と分離して設けた光出力制御装置2によって色バラツキを補正することは容易となる。すなわち、本LED演出照明システムは、LED照明器具10の設置場所に関わらず、色バラツキを低コストで簡単に補正できるのである。
【0030】
さらには、従来に比べて色バラツキの補正作業が軽減されるので、演出プログラムの設定作業にかかる費用、時間を低減できる。したがって、色バラツキの補正作業にかけていた作業時間を純粋な演出作成にまわすことができ、例えば、よりエンターテイメント性の高い演出を実現できるようになる。
【0031】
なお、本実施形態では、赤、緑、青の各出力レベルを調整することで色バラツキの補正を行ったが、色相を補正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態のLED演出照明システムを示す構成図である。
【図2】同上のLED照明器具を示す構成図である。
【図3】同上の補正モード時の画面を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 LED照明群
10 LED照明器具
2 光出力制御装置
20 モード切替部
21 演出プログラム作成部
22 色バラツキ補正部
22a 補正対象器具指定部
22d 補正レベル調整部
23 制御データ作成部
24 制御データ送信部
3 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤、緑、青の3原色を混色して発光可能な1乃至複数のLED照明器具に対して3原色の各出力を制御する制御データを出力して、各LED照明器具の光出力を制御する光出力制御装置をLED照明器具と分離して備え、
光出力制御装置は、
各LED照明器具の光出力による演出を行うために設定された演出プログラムに基づいて各LED照明器具に制御データを出力する演出モードと、各LED照明器具に出力する制御データを補正する補正モードとを切り替えるモード切替手段と、
補正モードにおいて、LED照明器具の光出力を所望の色見とするために、制御データが指示する3原色の各出力レベルを調整するレベル調整手段と、
補正モードにおいては、レベル調整手段で調整した3原色の各出力レベルに基づいた制御データを生成し、演出モードにおいては、演出プログラムに基づく3原色の各出力レベルに、レベル調整手段で調整した3原色の各出力レベルの比率を乗じた制御データを生成する制御データ生成手段と、
制御データ生成手段で生成した制御データを各LED照明器具に送信する制御データ送信手段と
を備えることを特徴とするLED演出照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−294259(P2007−294259A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121319(P2006−121319)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】