説明

LED照明の直流電源供給装置

【課題】LED照明装置の電力損失を最小限に抑える事ができ、電力効率を向上する事ができるLED照明装置の直流電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】直流電源装置から線路に直流電力を供給し、線路に接続された複数のLED照明装置4、5、nを駆動するLED照明の直流電源供給装置3において、直流電源装置3からの出力電流を監視して、直流電源装置3の出力電圧についてLED照明が必要とする最低限の電圧を供給するように制御することにより、LED照明の電力損失を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置の直流電源装置に関し、特に、LED照明装置の電力損失を、最小限に抑える事ができ、電力効率を向上する事ができるLED照明装置の直流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLED照明装置が直流電源装置に接続されている場合、LED照明装置の数や電流値、及び、線路の電圧降下から、計算で、直流電源装置の出力電圧を設定したり、設置後、現場で手動で出力電圧を調整していた。
【0003】
また、特許文献1にあるように、直流電源により、複数台の直流機器に対して、直流電力を供給するシステムにおいて、直流供給線路の、始端電圧と、終端電圧の平均値が、所定の設定値になるように、直流供給電圧を制御し、線路に接続される直流機器に印加される電圧を、直流機器が正常に動作可能な範囲に制御する直流電源システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−159652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直流機器がLED照明装置の様に定電流駆動される場合、LED照明装置に供給される直流電圧がLED素子の順方向電圧より高いと、直流電圧をLED素子の駆動電流で決められる順方向電圧にまで、LED照明装置で電圧降下させる必要があり、電力損失が発生し、電力利用効率が低下する。また、その損失で発熱する為、その放熱対策が必要になる。
【0006】
また、LED照明装置の順方向電圧は、LED素子によってバラツキがあり、最適な直流電圧値は、LED照明装置個々で異なる。
【0007】
また、線路の配線長や、接続されるLED照明装置の数により、線路の電圧降下は異なり、直流電源装置の最適な出力電圧は、設置場所により異なる。
【0008】
また、線路に多くのLED照明装置が接続されると、線路に流れる電流が大きくなり、電圧降下も大きくなる為、直流電源供給装置の出力電圧の設定が難しくなる。初期設定した固定出力電圧では、線路が長くなったり、LED照明装置の数が多くなると、遠端のLED照明装置の電圧が足らなくなる事になる。
【0009】
また、LED照明装置が調光された場合、消費電流が増減し、直流電源装置の最適な出力電圧は異なる事になる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、LED照明装置の電力損失を最小限に抑える事ができ、電力効率を向上する事ができるLED照明装置の直流電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のLED照明の直流電源供給装置は、直流電源装置から線路に直流電力を供給し、線路に接続された複数のLED照明装置を駆動するLED照明の直流電源供給装置において、当該直流電源装置からの出力電流を監視して、当該直流電源装置の出力電圧についてLED照明が必要とする最低限の電圧を供給するように制御することにより、LED照明の電力損失を軽減することを特徴とする。
【0012】
さらに本発明のLED照明の直流電源供給装置は、前記最低限の電圧は、出力電圧の増加に対する出力電流の値が増加しなくなる近辺の電圧であることを特徴とする。
さらに本発明のLED照明の直流電源供給装置は、前記最低限の電圧は、出力電圧を一定量ずつ変化させていき、これに対する電流値の変化を所定値と比較して判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、LED照明装置の直流電源装置において、LED照明装置の電力損失を、最小限に抑える事ができ、電力効率を向上する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態であるLED照明装置システムを示すブロック図である。
【図2】本発明における直流電源供給装置の出力電圧と出力電流の関係の一例を示す説明図である。
【図3】本発明における電圧制御部のシステム起動時の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明における電圧制御部の調光時の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1には、本発明によるLED照明システムの一実施形態であるブロック構成が示されている。太陽電池1からの電力は、電力制御ユニット3に入力され、DC/DC変換器31で電圧変換され、電力加算部33を通って、複数台のLED照明装置4〜nに電力供給される。
【0017】
電力制御ユニット3には商用電源2も接続されている。日照不足等で太陽電池の発電量が少ない場合や夜間時には、商用電源2からの電力が、AC/DC変換部32でDC電圧に変換され、電力加算部33で太陽電池1からの電力不足を補い、LED照明装置4〜nに供給される。
【0018】
LED照明装置4〜nに供給される電流は、電流測定部34で測定され、測定結果が電圧制御部35に出力される。電圧制御部35は、電流測定部34の測定結果を受けて、DC/DC変換器31及び、AC/DC変換部32の出力電圧を制御する。
【0019】
LED照明装置4〜nの構成は同じであるので、LED照明装置4について説明する。電力制御ユニット3からの電力を受け、定電流回路41は、LED素子が実装されたLEDユニット42を定電流で駆動する。LEDユニット42は、定電流値が変わることによって、LED素子の発光光度を変えることができる。定電流回路41が出力する定電流値は、調光制御部43によって制御される。ここで、調光は、LEDユニット42の電流値を変化させているが、PWM(Pulse Width Modulation)により、供給電力のON/OFFデューティーを変化させて行ってもよい。
【0020】
LED素子を駆動している定電流値は、信号として電圧制御部35に出力され、電圧制御に利用する事もできる。
【0021】
図2に電力制御ユニット3の出力電圧Vと出力電流Iの関係の一例を示す。
【0022】
電圧制御部35は、出力電流の増加が少なくなるVa、Vb、Vcのポイントで動作する様に、出力電圧を制御する。電圧制御部35により、出力電圧Vを上げていくと、出力電流Iは増加していく。しかし、出力電圧Vがある値(Va、Vb、Vc)以上となると、LED照明装置は、定電流駆動されているので、LED照明装置4〜nの消費電流の合計値(I=I4+I5…+In)でほぼ飽和して出力電流Iは増加しなくなる。これ以上電圧値を上げても、各LED照明装置4〜nでの電力損失となる。そのため、出力電圧Vの増加に対する出力電流Iの値が増加しなくなる(一定になる)箇所での出力電圧値(Va、Vb、Vc)となるように出力電圧を制御すればよい。また、LED照明装置4〜nの消費電流の合計値は、調光制御部43、53…n3により、LEDユニット42、52…n2の電流値が変わると、Ia、Ib、Icのように変化する。
【0023】
例えば、システム起動時は、出力電圧Vを0から増加させていくと、出力電流Iは増加していくが、Vbの値となると出力電流Iはこれ以上増加しない。このため、Vbの近辺となるように出力電圧を制御する。さらに、LED照明装置4〜nを明るくする調光を行った場合、Vcまで、出力電力を増加させても出力電流Iは増加していく。このため、出力電圧がVcの近辺となるように制御する。一方、LED照明装置4〜nを暗くする調光を行った場合、現在がVbやVcの出力電圧であったなら、Vaまで出力電圧を下げても、出力電流Iは変化せず、その分だけ電力の損失となる。このため出力電圧がVaの近辺となるように制御する。具体的な制御方法については図3及び図4で説明する。
【0024】
電力制御ユニット3の電圧制御部35の動作の一例が図3においてフローチャートで示されている。図3は、システム起動時の動作で、0Vから徐々にΔvずつ増加させていき、電圧制御部35は、ステップ11(「S11」と略す。以下同じ)で、出力電圧をΔvだけ増加させたとき、S12で、その時の出力電流値I(k)(kはデータ順序を示す)を読み込む。S13で、出力電圧を増加させる前の出力電流値I(k−1)と比較し、所定値αより増加していれば、LED照明装置4〜nが未だ電力を必要としていると判断し、S14で、測定した消費電流値I(k)を、比較値としてI(k−1)に移動し、S11からの動作を繰り返す。電流値の増加(I(k)−I(k−1))が、所定値α以下になると、電流値が飽和したと判断し、電圧増加を停止する。このように制御する事で、出力電圧を図2のVa〜Vcの近辺に設定する事ができる。なお、システム起動時において、設定電圧に上昇するのにかかる時間を考慮して、一定の初期電圧(例えば、10V〜20V程度の初期電圧)からΔvの増加をスタートさせてもよい。
【0025】
図4は、起動後、調光動作が行われた場合の、電圧制御部35の動作の一例を示すフローチャートである。調光は、調光制御部43、53、n3を制御して、各LEDユニット42、52、n2を調光することができる。なおこれらは、例えば、照明場所の照度を測定し、充分照度がある場所に、LED照明の照度を下げるように調光するなど、ばらばらに制御することもできる。調光した場合、対応する定電流回路41、51、n1の定電流値が変化して、その結果、図2のように、全体の電圧に対する電流値が変化する。このため、図4において、電圧制御部35は、S21で所定の間隔で出力電流Iを読み込み、S22で出力電流の変化が、所定値γより、大きいかを判定する。所定値γより大きい場合は、各LED照明装置4〜nの消費電流が、調光等で変化したと判断し、出力電圧Vを変化させるよう動作する。出力電流の変化が、所定値γより小さい場合は、LED照明装置4〜nに必要とされている消費電流に変化がなく、よって、現在の出力電圧Vを変化させる必要はないと判断し処理を終了する。
【0026】
S22で出力電流値が所定値γ以上であり、S23で電流値が増加している場合はS24に進み、電流値が減少している場合は、S29に進む。
【0027】
S24〜S27は、図3の起動時の動作と同様で、S25で電圧値をΔv増加させ、S26で出力電流を読み込み、S27で電流値の増加が所定値αより小さくなるまで、上記動作を繰り返す。このように動作する事で、図2において、出力電圧Vbで電力制御ユニット3が動作しており、LED照明装置4〜nが明るく調光され消費電流が増加した場合に、出力電圧をVbからVcに増加させるように動作する。LED照明装置4〜nには、必要最小限の電力が供給され、LED照明装置4〜nでの電力損失を最小限に抑える事ができる。
【0028】
S23で出力電流が減少した場合は、S30で出力電圧をΔvだけ減少させ、S31で出力電流を読み込み、S32で電流変化が所定値β以上になるまで、上記動作を繰り返す。
【0029】
上記の所定値αと所定値βは、図2において、Va、Vb、Vc等で電圧値が収束する様に、実験で設定をすることができる。このため、実験結果をふまえて別々に設定できるようにしてもよい。また、その結果、同等の値にすることもできる。
【0030】
このように動作する事で、図2において、出力電圧Vbで電力制御ユニット3が動作しており、LED照明装置4〜nが暗く調光され消費電流が減少した場合に、出力電圧をVbからVaに減少させるように動作する。LED照明装置4〜nには、必要最小限の電力が供給され、LED照明装置4〜nでの電力損失を最小限に抑える事ができる。
【0031】
なお、上記においては、出力電流の変化から出力電圧を変化させているが、調光制御部43、53…n3からの調光度合を示す信号により、出力電圧を可変するようにしてよい。
【0032】
以上のように本発明は、LED照明装置の電力損失を、最小限に抑える事ができ、電力効率を向上する事ができる。特に、LED照明装置が何十台と線路に接続されている商業ビルや店舗などで、多く照明装置が長時間にわたり点灯される場合に、個々のLED照明装置の電力削減効果が加算されるため電力削減の効果が大きい。また、最も遠端に設置されたLED照明装置が、直流電源装置から遠くに離れていたり、配線完了した後に、最も遠端に設置されたLED照明装置が、どれかわからなくなった場合でも、直流電源供給装置の出力電圧を自動で調整するので、手間を省く事ができる。また、設置場所により、直流電源装置の出力電圧の調整が不要になり、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0033】
1 太陽電池
2 商用電源
3 電力制御ユニット
31 DC/DC変換部
32 AC/DC変換部
34 電流測定部
35 電圧制御部
4、5…n LED照明装置
41 定電流回路
42 LEDユニット
43 調光制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置から線路に直流電力を供給し、線路に接続された複数のLED照明装置を駆動するLED照明の直流電源供給装置において、
当該直流電源装置からの出力電流を監視して、当該直流電源装置の出力電圧についてLED照明が必要とする最低限の電圧を供給するように制御することにより、LED照明の電力損失を軽減することを特徴とするLED照明の直流電源供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED照明の直流電源供給装置において、
前記最低限の電圧は、出力電圧の増加に対する出力電流の値が増加しなくなる近辺の電圧であることを特徴とするLED照明の直流電源供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のLED照明の直流電源供給装置において、
前記最低限の電圧は、出力電圧を一定量ずつ変化させていき、これに対する電流値の変化を所定値と比較して判断することを特徴とするLED照明の直流電源供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110890(P2013−110890A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255246(P2011−255246)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】