説明

LED照明光源及び照明装置

【課題】メラトニン抑制効率を高め、生体リズム調整等の生体作用を高めつつ、高色温度化に伴う発光効率低下と、環境負荷物質である水銀の使用に関する課題を解決する。また、超高色温度ランプの演色上の課題、すなわち、赤と緑の見え(彩度)の低下という弱点、をも解決するものである。
【解決手段】少なくとも1つのLEDチップ106を備え、相関色温度が7100[K]を超え20000[K]未満、Duvが−2.5から5の範囲にある光色を有し、平均演色評価数Raが80以上であるLED照明光源100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体のメラトニン分泌と抑制に関与する光刺激を放射するLED照明光源及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の体内に光生体リズム形成に寄与するメラノプシンが発見され、これを光刺激することでメラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を意図する照明光源を実現する技術が検討されつつある。
メラノプシンの分光吸収感度は可視光の短波長側に位置すると考えられており、これは、人間への光刺激によりメラトニン抑制効果を生じるのは可視光短波長側の光が効果的であるであるという旧来からの知見に整合するものである。
【0003】
このような、技術的背景を受け可視光短波長のスペクトルパワーが増強され、相関色温度が高く青白い高色温度な光色の照明光源が、メラトニン分泌を抑制し生体リズムの調整や生体の覚醒を意図する照明光源として実現されつつある。
さて、従来の生体のメラトニン分泌と抑制に関与する光刺激を放射する照明光源および照明装置に関しては、特許文献1の特表2005−529462、特許文献2の特表2004−508106、特許文献3の特開平6−314595などがある。
【0004】
特許文献1および2においては、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を意図する照明光源として、相関色温度6500[K]以上、平均演色評価数Raが65以上が開示されている。
それに先立つ特許文献3にも、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を意図する照明光源として、相関色温度6000[K]以上が開示されている。また、屋内(住宅・オフィスなど)での高色温度との光色切り替えの違和感を減じる点が論じられていることも鑑み、当然、平均演色性評価数は当該屋内照明の推奨値(例えば平均演色評価数Raが60以上)に近いものになることは一般論として当業者に容易に推定できる。
【0005】
しかしながら、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促す作用効果曲線に関して現在も諸説があり一義的に決定はしていない。
また、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を意図せずとも、可視光短波長側の発光が多く青白い光色で、相関色温度が高い光源、超高色温度で演色性が高い光源は存在する。
【0006】
これには、北天の晴天空を模擬した特許文献4の特開平4−284347の相関色温度9000〜13000[K]、平均演色評価数と特殊演色評価数が90台後半の広帯域発光形の蛍光ランプが知られている。
ただし、一般にベース照明として、全世界で最も広く使用されている蛍光ランプの場合、一般に青色発光の蛍光体は発光効率が低いことから超高色温度での発光効率が低下する。さらに広帯域発光形であれば、さらなる発光効率の低下は否めない。このため、発光効率の観点から、超高色温度領域でも発光効率の低下が少ない、あるいは発光効率の低下が起こらない光源デバイス、さらにはその発光スペクトルは、広帯域発光よりも狭帯域発光であることが望ましい。
【0007】
しかし、このようなことを可能にする光源デバイスがどのようなものであるか、さらには、その場合の発光スペクトルがどのようなものであるか不明であった。また、上記のメラトニン分泌抑制効果を生じしめた上で、実用上可能な相関色温度の範囲、あるいは黒体放射輻射からの位置関係を表す、Duv値の適当な範囲が不明であった。
ここでDuvとはJIS Z8725−1999で定義されるCIE 1960 UCS 色度座標で、相当する色温度を有する黒体軌跡からのu,vの値の偏差を1000倍し、黒体放射軌跡の下側にあるときは負号をつけた値として示される値のことである。
【0008】
一方、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促す作用効果曲線に関して現在も諸説があり一義的に決定はしておらず、これを照明光源として最適化する手段は現在のところ明確でない状況にある。しかし、この効果作用曲線(アクションスペクトル)の考え方は大きくは幾つかの考え方に分類可能であることを見出した。
第一は、最も基本的な受光物質となるメラノプシンの分光吸収特性で求めた比較的シンプルな効果作用関数の考え方である。第二は、最も実際的な各種スペクトルを人間に与えた時のメラトニンの抑制に対する効果作用を直接測定して求めた比較的複雑な効果作用関数の考え方である。特許文献1から3は何れか一方の効果作用関数の考えによっている。
【0009】
図1に代表的なメラノプシンの分光吸収の作用関数、メラトニン抑制の作用関数、標準比視感度曲線を示す。
メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促す作用効果曲線に関して、第一の考え方は、メラノプシンの分光吸収特性や受光細胞の分光感度を基にし、視物質テンプレートなどで近似される比較的単純な分光感度モデルである(例えば、図中のGALL:C(λ))。
【0010】
また、第二の考え方は、眼の錐体や桿体の分光感度との複合影響や、例えば眼球の瞳孔の絞りや水晶体、硝子体などの分光透過特性を考慮した眼光学的な影響をも含めたものや、生体内部での高次反応や、視神経やホルモン系まで含めた光スペクトル反応としての複雑な生体反応をトータルで捕らえたモデルで論じられることもある(例えば、図中のBrainard 、Thapan)。
【0011】
このように現在、技術的に検討途上にある状況から、高色温度でメラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を意図する照明光源としては、可視光短波長側の青色発光の増強が望ましいことをベースに、相関色温度を高めるのみであった。
よって、従来は、快適な視環境とメラトニン抑制効率の両最適を図るためには、どのような相関色温度や分光分布が望ましいか具体的に論じられてこなかった。発光効率や、さらには環境負荷物質削減の観点でどのような光源デバイスが望ましいかも論じられてこなかった。
【0012】
また、実際の照明応用に際し、高色温度化に伴う逆作用として生じる、演色性の低下に伴う視環境の悪化に関しては論じられることはなく、単純に平均演色評価数Raや特殊演色評価数Riの高い低いでは表せない、超高色温度独特の演色特性上の課題提起、および、その現象の論拠と改善手段は見出されてはいなかった。
さらに、光源デバイスとして提供された後、どのような照度や環境で使われるかは、まちまちという現実に鑑み、最も基本的な受光物質となるメラノプシンの分光吸収特性で求めた比較的シンプルな効果作用関数(以降、第一の効果作用関数)と、最も実際的な各種スペクトルを人間に与えた時のメラトニンの抑制に対する効果作用を直接測定などでトータルに求めた比較的複雑な効果作用関数(以降、第二の効果作用関数)に対し両最適を図るべきではあるが、この両方を最適化する考えもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2005−529462
【特許文献2】特表2004−508106
【特許文献3】特開平6−314595
【特許文献4】特開平4−284347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の実情に鑑み、JIS Z9112:1990やIEC 60081−1997で規定される常用蛍光ランプの光色の上限7100[K]を超えて、超高色温度LED照明光源を実現し、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促す作用効果を得るものであり、かつ、このような光源の演色特性上の弱点の本質を見出したことで、発光効率の低下を防ぎながら、これを改善し照明光源に供しようとするものである。
【0015】
現在、超高色温度蛍光ランプを実現しメラノプシン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促す作用効果を謳った光源には3波長域発光形に相当する分光分布を有する8000[K]と17000[K]の蛍光ランプが存在する。広帯域発光形よりも、発光効率の高い、3波長域発光形において、これらの蛍光ランプは実現されているが、その場合でも高色温度になるに従い、発光効率が低下するという課題が存在する。これは、高色温度になるに従い、相対的に発光効率の低い青色蛍光体の割合が増加するためである。一例として、典型的な3種蛍光体(BAM、LAP、YOX)を用いてシミュレーションした結果、JISにて昼白色と定義される5000蛍光ランプを100%とした場合、7100[K]では94.8%、8000[K]では93.1%、12000[K]では88.0%、17000[K]では84.9%、20000[K]では83.8%と、発光効率[lm/W]は低下する。
【0016】
さらに、蛍光ランプの場合には、環境負荷物質である水銀が含まれていることも課題として考えられる。
本発明は、メラトニン抑制効率を高め、生体リズム調整等の生体作用を高めつつ、上記の高色温度化に伴う発光効率低下と、環境負荷物質の使用に関する課題を解決する。
また、メラトニン抑制の効率を高めるべく高い相関色温度で青発光成分を増加させると、青白い光色となり、演色性が低下するという本質的な困難が存在し、演色性を向上させようとすると光源の発光効率が低下するという相反する回避しがたい課題が生じる。また、超高色温度領域では単純に平均演色評価数Ra(CRI)や特殊演色評価数Riを高めても実際の被照物の色の見え方の改善とは一致しないという課題が大きく現れる。
【0017】
本発明では超高色温度の光源の、演色性低下の本質は超高色温度光での赤色発光の不足に起因するものであることを見出した。しかし、赤の見えを改善するためには、単純に赤の発光スペクトルを増強するのではなく、赤の発光スペクトルのピーク位置と半値幅、及び、赤と補色関係にある、緑の発光スペクトルのピーク位置及び、半値幅が重要であることを見出した。
【0018】
ここで、超高色温度の光源の、演色性低下の本質の赤色発光の不足を改善するに当たり、従来のRaやRiの評価指標では、基準光源(基準の光)自体が相関色温度ごとに変化するため、この本質を捉えきれないことを見出した。
この際、従来に無い超高色温度における演色特性を、単純なRaやRiではなく、その色域まで含めて最適化することで、青空光のような超高色温度な照明を実現するものである。ここにおいて、単純には色域は自然物体に多い中彩度な物の見えを代表するRaの評価・計算に使用される色票だけではなく、意図的に鮮やかに見せたいも色の代表であるRiの評価・計算に使用される色票の色域も含め最適化する新たな評価法を開発した。これにより、中彩度な色の見えは改善されても、本来要求される高彩度な色の見えは改善されていないという従来見出されていなかった状態をさらに改善したものである。
【0019】
中彩度色の演色評価色票で構成された色域面積比Gaに加え、高彩度色の演色評価色票で構成された色域面積比Ga4(後述の新規開発指標)においても基準である色域面積100との大小を比較することで、基準の光(基準光)より好ましく鮮やかに演色するという効果を検証できるということを見出した。
超高色温度における、視環境評価の重要な点を以下のように明らかにした。
【0020】
図2は、各種相関色温度における平均演色評価数を算出するための色票であるR1からR8の色度を演色評価数の計算に用いられるU色度座標上に示したもので、その8種の色票で構成された色域を示している。
図の右方向は赤、左方向は緑、上方向は黄、下方向は青の彩度を示し、原点から離れるほど、その色票が鮮やかに色再現されていることを示す。
【0021】
基準光源(基準の光)が3200[K]の黄みが強い光色の場合は、基準光源自体に可視光短波長のスペクトルが少なく青と黄色方向の色の見え(彩度)が低下し、色域が上下方向に圧縮された形となっている。
また、基準光源(基準の光)が17000[K]の青白みの強い場合は、基準光源自体に可視光長波長のスペクトルが少なく赤と緑色方向の色の見え(彩度)が低下し、色域が左右方向に圧縮された形となっている。
【0022】
平均演色評価数Raや特殊演色評価数Riは、そもそも相当する相関色温度の基準光源に対して忠実な色再現を実現しているか否かを、その色差で数値評価するものであが、相関色温度ごとに評価基準である色の見えが異なるため、相関色温度の大きく異なる光源の色の見えは単純には比較評価ができない。
超高色温度においては、基準光源で照らされた評価色票自体の赤と緑色方向の見えの彩度が低下していることから、評価対象となる光源の相関色温度が高くなれば、実際の見えと異なりRaやRiの数値上は評価数値が高く評価される傾向を含んでしまうことを見出した。
【0023】
ここにおいてさらに、超高色温度における主観的に好ましいと判断される色域は、一般的な比較的相関色温度低い光源のごとく、色域が左右方向に広がり、赤と緑の見えの鮮やかさが増す形状であることを見出した。
特に、赤の特殊演色評価数R9は、超高色温度光源の場合、数値を維持するだけでは、実際の見え方は彩度が低下して、くすんで見える。超高色温度の青白い光色の下で赤の見えがくすむことが超高色温度光源独特の視環境の違和感に繋がっている。
【0024】
従来のR9を用いて表現するなら、より好適にはR9は相関色温度が高くなるほど、より高い値を有すことが好ましい。
従来、広く一般に使用されてきた3波長域発光形光源の場合に、CIE(国際照明員会)が定めた演色性ランクではとして演色性グループ2の平均演色評価数Raが80以上としている。常用蛍光ランプの光色の上限の相関色温度7100[K]を超えた光源を実現する場合も、平均演色評価数Raが80以上であることはもとより、赤の見えを示す特殊演色評価数R9の値が、常用蛍光ランプの光色の上限の6000〜7100[K]近傍の相関色温度で一般的に実現されている値の28〜46以上、四捨五入して50以上を確保することが、見え方の主観評価実験から最低限の要件であった。
【0025】
さらに主観評価からは、より有意に好ましく判断される値はR9が60以上、最適には80以上であることを見出した。
また、本発明において、より好適な実施例ではCIE(国際照明員会)の規定する演色性グループ1Aの平均演色評価数Raが90以上という演色ランクが非常に高い値とすることも可能となる。
【0026】
さらに好適には、後述の新たに設定した特殊演色評価数R9からR12で構成される色域面積比Ga4が95以上を示す。これは従来広く用いられてきた一般的な3波長域発光形蛍光ランプで単純に高色温度を実現した場合には達成し難い、ほぼ100に近い値であり、鮮やかな色彩も基準の光に近い色再現を示すことが可能となることを示すものである。
【0027】
また、色域面積比GaやGa4が基準の光の見えである100以上の値を示す場合、この時のRaやRiの数値は見かけ上、低下する状態を生じることがある。これは、RaやRiが、単純に相当する相関色温度の基準の光で、各評価色票が色度座標上で示す値との色差で評価されるからであり、より好ましく鮮やかに演色された場合も、単なる色ずれとして減点評価されるからである。本発明の好適な事例は、このような好ましい方向への演色の色ずれの結果の数値上の低下に対し、より正確な判断手法を見出すことにより達成されたものである。
【0028】
数値上は平均演色評価数Raや、赤の見えを表す特殊演色評価数R9が高い値を得られたとしても、メラトニン分泌を抑制し、生体リズムの調整や生体の覚醒を促すために超高色温度蛍光ランプを実現した場合、RaやRiの数値が高くても、実際の視環境では青白い光色の中で、赤や、その補色関係にある緑が色あせて見える不自然な照明となる場合があることがわかった。それゆえ、例えば、こういった照明では肌や唇が血の気ひいた演色を示し、顔色が青白い印象となったり、植物や花などの自然物の緑や赤の色みが抜けた色の褪せた印象となっていたのである。
【0029】
本発明においてはこれら、超高色温度ランプの演色上の課題、すなわち、赤と緑の見え(彩度)の低下という弱点、をも解決するものである。
メラトニン抑制の作用関数は、短波長域にピークを持つため、単純には、相関色温度を上げればメラトニン抑制作用を高めることが可能であることは以前より知られていた。しかし、相関色温度を上げれば上げるほど抑制作用が高まるのか、あるいは、ある色温度領域で抑制作用が飽和傾向を示すのか不明であった。また、メラトニン抑制の作用関数は複数のモデルが提案されているが、これらのモデル間の差異も不明であった。
【0030】
以下、これまで明らかにされていなかった、メラトニン抑制作用の相関色温度依存性、及び、各作用関数モデルの特徴、モデル間差異、を詳細に検証した。
図3及び図4に相関色温度とメラトニン抑制の作用関数A(λ)の関係を示す。図3は第一の作用関数G(C(λ))、図4は第二の作用関数B(Brainard)を各々の代表とした場合の比較結果である。ここで、光源種類の例としてCIE合成昼光と、従来、光源として最も幅広く使用されてきた蛍光ランプを挙げている。
【0031】
縦軸は光源の分光分布にメラトニン抑制の作用関数A(λ)を掛けたものを、光源の分光分布に比視感度曲線V(λ)を掛けたもので割った値でありA(λ)/V(λ)は単位光束あたりのメラトニン抑制効率に相当する。
図3及び図4から、広帯域発光形光源、狭帯域発光形光源ともに、およそ相関色温度が高まるに伴い作用関数の刺激割合が上昇する傾向が見える。
【0032】
このように、メラトニン抑制は可視光短波長成分が多くなれば強まるという特性は、各種メラトニン抑制の作用関数に個別には確認されることから、この効果を得るべく比較的高色温度な光源を実現する考えはあった。ただ、第一の作用関数の考えと第二の作用関数の考えに基づく各種の作用関数の分光感度特性は大きく異なれど、その結果が共通する傾向にあることは見出されていなかった。
【0033】
一般に第一の作用関数に類するものは、視物質の分光吸収により直接的に関連を持つので、比較的半値幅の狭いシンプルな曲線を描き、第二の作用関数に類するものは、生体内での複雑な作用反応をトータルに反映するので、比較的半値幅が広く複雑な曲線を描く。
また、本発明では、第一の作用関数の考えと第二の作用関数の考えを整理統合し、各種作用関数をシミュレーションしたところ、分光感度特性が大きく異なれども、その結果が共通する傾向にあることを見出した。図5に第一の作用関数Gと第二の作用関数Bとの相関を一例として示すが、この他の作用関数同士の相関も高いことを確認した。これは、各種作用関数の起源がメラノプシンの分光感度に基本的には相関するためと考えられる。
【0034】
また、第二の作用関数は特に400[nm]近傍の可視光極短波長近傍で誤差が大きいが、この近傍の誤差は演色計算や発光効率の感度端部でもあり計算結果には大きく影響しないことが解った。
本発明はこの知見の上で、さらに、本発明は従来にないアプローチとして、JISやIECで規定される常用蛍光ランプの光色の上限を超えて、超高色温度蛍光ランプを実現する場合の照明視環境としての演色性や光色の特性を同時に最適化を行っている。
【0035】
以上、本発明が解決した課題をまとめると、本発明は、メラトニン抑制効率を高め、生体リズム調整等の生体作用を高めつつ、従来、最も広く一般に用いられてきた蛍光ランプ特有の課題である、高色温度化に伴う発光効率低下と、環境負荷物質である水銀の使用に関する課題を解決するものである。
また、色度座標(U、V)上での色の見え方の詳細検討や、独自に定義した評価指数Ga4といった新しい演色性評価手法も取り入れつつ、超高色温度ランプの演色上の課題、すなわち、赤と緑の見え(彩度)の低下という弱点、をも解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記従来の課題を解決するため、本発明の手段を述べる。なお、Duvとは、JIS Z8725−1999で定義されるCIE 1960 UCS 色度座標で、相当する色温度を有する黒体軌跡からのu,vの値の偏差1000倍し、黒体放射軌跡の下側にあるときは負号をつけた値として示される値である。また、単位光束あたりのメラトニン抑制の作用関数効率は、ランプの放射スペクトルの分光パワーをメラトニン抑制の作用関数で重み付けした後に積分した作用関数効率と、CIE標準分光視感効率V(λ)で重み付けした後に積分した視感度効率との比率(作用関数効率/視感度効率)である。
【0037】
本発明の一態様に係るLED照明光源は、少なくとも1つのLEDチップを備え、相関色温度が7100[K]を超え20000[K]未満、Duvが−2.5から5の範囲にある光色を有し、平均演色評価数Raが80以上であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、単位光束あたりのメラトニン抑制の作用関数効率が1.0を超える構成であっても良い。
【0038】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、特殊演色評価指数R9が50以上である構成であっても良い。
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが505[nm]〜550[nm]の範囲にある緑色蛍光体と、Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを備える構成であっても良い。
【0039】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、Eu2+またはCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが530[nm]〜600[nm]の範囲にある黄色蛍光体と、Eu2+またはCe3+で付活され、青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを備える構成であっても良い。ここで、黄色蛍光体の発光ピークは緑色蛍光体の発光ピークと重なる場合もあるが、黄色蛍光体においては長波長側のすそ野が短波長側に比べて長く、緑色蛍光体に比較して、黄色〜オレンジ色〜赤色、の発光エネルギーが高い。そのため、蛍光体発光色としては黄色となり、前記緑色蛍光体とは明確に区別されるものである。
【0040】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、Eu2+またはCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが530[nm]〜600[nm]の範囲にある黄色蛍光体を備える構成であっても良い。
【0041】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記青色発光LEDチップの発光ピークは、ピークλが440[nm]〜470[nm]、半値幅が20[nm]〜30[nm]である構成であっても良い。
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記緑色蛍光体の発光ピークは、ピークλが505[nm]〜550[nm]、半値幅が60[nm]〜90[nm]である構成であっても良い。
【0042】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記赤色蛍光体の発光ピークは、ピークλが600[nm]〜650[nm]、半値幅が75[nm]〜95[nm]である構成であっても良い。
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、前記緑色蛍光体の発光ピークλ(G)と前記赤色蛍光体の発光ピークλ(R)との差、λ(R)―λ(B)が110[nm]〜120[nm]の範囲にある構成であっても良い。
【0043】
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、相関色温度が10000[K]を超え17000[K]未満の範囲にある光色を有する構成であっても良い。
また、本発明の一態様に係るLED照明光源は、相関色温度が11000[K]を超え13000[K]未満の範囲にある光色を有する構成であっても良い。
また、本発明の一態様に係る照明装置は、上記いずれかのLED照明光源を少なくとも1つ備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、メラトニン抑制効率を高め、生体リズム調整等の生体作用を高めつつ、従来、最も広く一般に用いられてきた蛍光ランプ特有の課題である、高色温度化に伴う発光効率低下と、環境負荷物質である水銀の使用に関する課題を解決するものである。
また、色度座標(U、V)上での色の見え方の詳細検討や、独自に定義した評価指数Ga4といった新しい演色性評価手法も取り入れつつ、超高色温度ランプの演色上の課題、すなわち、赤と緑の見え(彩度)の低下という弱点、をも解決するものである。これは、平均演色評価数の評価に用いられるR1〜R8までの中彩度色票で構成される色域面積比Ga以外に、新たに特殊演色評価数の評価に用いられるR9〜R12までの高彩度色票で構成される色域面積比Ga4を評価指数として構成したことから、このGa4を使用することで、高彩度な視対象物の評価をより適切に行うことが可能となったというものである。
【0045】
以下、本発明の各々の効果の効果を説明を行う。
まず、メラトニン抑制の作用について詳細に説明する。
図3及び図4は相関色温度とメラトニン抑制の作用関数A(λ)の関係を示したものである。縦軸は光源の分光分布にメラトニン抑制の作用関数A(λ)を掛けたものを、光源の分光分布に比視感度曲線V(λ)を掛けたもので割った値であり、単位光束あたりのメラトニン抑制効率に相当する。
【0046】
図3及び図4から広帯域発光形蛍光ランプ、狭帯域発光形蛍光ランプ、LED照明光源ともに、およそ相関色温度が高まるに伴い作用関数の刺激割合が上昇する傾向を示すことが見て取れる。
また、約8000[K]においては各種光源において、A(λ)/V(λ)がおおよそ1以上の値をとり、これ以上の相関色温度で効率よくメラトニン抑制効果を得ると考えられる。
【0047】
JISやIECで規定される常用蛍光ランプの光色の上限7100[K]を超えて、さらに、超高色温の照明光源を実現しようとした場合、メラトニン抑制は可視光短波長成分が多くなれば強まるという特性は、メラノプシン視物質吸収ベースの考え、メラトニン抑制の効果作用曲線ベースの考えなど、各々個別に考えられており非統一であった。本発明では各種メラトニン抑制の作用関数に共通に存在する相関性を見出し、個別の考えを統合してもその傾向は互いに相関・近似することを見出した。
【0048】
受光物質となるメラノプシンの分光吸収特性で求めた比較的シンプルな効果作用関数の考えである(a)の第一の作用関数、および、各種スペクトルを人間に与えた時のメラトニンの抑制に対する効果作用を直接測定して求めた比較的複雑な効果作用関数の考えである(b)の第二の作用関数、の両方でメラトニン抑制の各種作用関数A(λ)を検証した。
【0049】
図5に縦軸に各種光源ごとに第一の作用関数G(C(λ))、横軸に第二の作用関数B(Brainard)の値をとり、その相関を示す。
黒体放射、合成昼光、3波長域発光形蛍光ランプ、LED照明光源と光源の分光分布の基本形状は大きく異なれど、相関性が高い。また、他の作用関数の相関も同様の結果を示しており、より詳細に光源の分光分布の基本形状ごとに見ると、各々の結果は高い相関性とリニアリティを持っていることを見出した。
【0050】
また、図3及び図4からは、相関色温度約8000[K]以上になると一般に代表的な作用関数で構成したA(λ)/V(λ)が1以上になり、相関色温度が上がるにつれメラトニン抑制の作用は向上する様子が見えるが、この傾向は約20000[K]程度で飽和傾向にあることも示している。
ここにおいて、過剰な高色温度化は光色が極端に青白く不自然となり、さらに蛍光ランプの場合であれば、ランプ自体の発光効率も低下するというネガテイブな効果を生じてしまう。
【0051】
3波長域発光形に相当する狭帯域発光形蛍光ランプをベースにした場合、5000[K]近傍の通常の光色に対し、8000[K]で6.9%、13000[K]で12.1%、17000[K]で15.1%の発光効率の低下が生じ、過剰な高色温度化は発光効率の低下が大きいということを見出した(図11参照)。
高色温度化に対する蛍光ランプの発光効率の低下は、一般論として工業的には、昼白色N(F5000相当)に対し、昼光色 D(F6500相当)では約5%である。このことから、昼光色 D(F6500相当)より1ランク高色温度な蛍光ランプとして、約5%の発光効率低下を見込むことが可能である。発光効率の約5%低下から昼光色 D(F6500相当)より1ランク上の光色を逆算すると、約13000[K]近傍の相関色温度と推定できる。ここで約17000[K]近傍を想定すれば昼光色Dより、約10%の発光効率低下であり、D(F6500相当)より2ランク上の光色と逆算できる。
【0052】
これら高色温度を実現を実現する蛍光ランプの蛍光体やランプ構成の差異などを誤差要因として勘案すれば、蛍光ランプの場合、13000[K]と17000[K]の中間の約15000[K]が高色温度化に伴う発光効率低下の許容上限となる。
さてここで、特に相関色温度12000[K]を例に、演色評価の観点から3波長域発光形蛍光ランプに相当する狭帯域発光形光源をベースにした一般的な場合と、本発明のごとくピーク波長が440nm〜470nmの範囲の青色LEDチップに、青色光で励起されるピーク波長が505〜550nmである緑色蛍光体と、青色光で励起されるピーク波長が600nm〜650nmの範囲にある赤色蛍光体を組み合わせた場合を、図6及び図7に示した表を用いて比較説明する。
【0053】
図6は一般的3波長域発光形蛍光ランプとして蛍光体に、青発光蛍光体BAM、緑色蛍光体LAP、赤色蛍光体YOXを使用した場合である。他の一般的な事例としては青発光蛍光体に半値幅50[nm]以下のSCA蛍光体を使用する事例もあるが、ほぼ同一の値をとるため省略した。
図7は、本発明のごとく青色発光LEDチップ、Eu2+で付活された535nmに発光ピークを持つシリケート系緑色蛍光体、及びEu2+で付活された640nmに発光ピークを持つ赤色蛍光体を使用した場合である。
【0054】
図6及び図7の表においてはJIS Z8726−1990の計算手続きに沿って、前記表の各種演色評価指数が算出される。加えてGaはJIS Z8726−1990の「演色評価数による以外の演色性の評価方法」の色域面積比の計算手続きによって計算され、Ga4はGaと同様の計算手続きで計算される。通常GaはU色度座標上で、平均演色評価数を計算するR1〜R8で構成された中彩度な色票の色域面積比であるが、Ga4は新たに規定した特殊演色評価数、R9〜R12で構成された高彩度な色票の色域面積比である。
【0055】
これによって、従来は中彩度な色票の色域面積比だけが検討対象となっていたのに対し、高彩度な色票の色域面積比も検討に加えることが可能となった。このメリットは、計算対象となる高彩度色票が従来規格と整合しており、広く用いられてきた中彩度色票の色域面積比Gaの計算と整合性が取れることである。
特に鮮やかさが必要な、高彩度色票R9〜R12のRiに関しては、色域表現の補助指標がないため、Riが100を超えて高彩度に見えていても、Riの数値からだけでは評価数が低下しているという判断しかできず、鮮やかな色彩の鮮やかさを評価する指標が、より必要な状況にもかかわらず、この点に関してはサポートされていなかった。
【0056】
また、超高色温度領域において、常に、中彩度色の色域は改善されれば、高彩度色の色域も改善されるという状況にはないことを見出したことから、これに対し、従来の規格と整合性をとりつつ、最小限の計算手続きの変更にとどめた補助指標を構成した効果は大きく、特に超高色温度で低下するR9の色票の見え方をR9の数値だけに頼らず正確に判断可能となった。
【0057】
また、Mは演色の鮮やかさを示す値であり、非特許文献、Kenjiro Hashimoto et.al. : New Method for Specifying Color−Rendering Properties of Light Sources Based on Feeling of Contrast, Color research and application ,Vol.32 No.5 Octber P361(2007) の開示プロセスで導出できる。
【0058】
図6及び図7の表のPSは肌の見えの好ましさを示す値であり、非特許文献、橋本 健次郎 ほか:照明光下での日本人女性の肌色に対する好ましさの評価方法,照明学会誌 Vol.82 No.11 P895 (1998)(Kenjiro Hashimoto et.al.:Preference Index for Japanese Complexion Color under Illumination,Journal of the Illuminating Engineering Institute of Japan,Vol.82 No.11 P895 (1998))の開示プロセスで導出できる。
【0059】
また、図6及び図7の表のBr(Brainard)は第二の作用関数Bの代表を用いた単位光束当りの作用パワーであり、第二の作用関数の代表的な値である。Thは第二の作用関数に属する単位光束当りの作用パワーであり第二の作用関数のその他の値である。
図6及び図7の表のC(λ)は第一の作用関数Gを用いた単位光束当りの作用パワーであり第一の作用関数の代表的な値である。Z(λ)は第一の作用関数に対する参考の単位光束当りの作用パワーであり第一の作用関数に対するその他の参考値である。Z(λ)は感度ピークが、より短波長側よりで半値幅が狭い場合の非常に極端な事例であり可視光短波長(青)に感度の高い錐体視細胞の感度に近い極端な例としての参考である。
【0060】
図6の表の効率は40W形直管ラピッドスタートタイプ蛍光ランプのガラス直径32.5[mm]、長さ1198[mm]で実施した発光効率を示したものである。図7の表の効率は、直管蛍光ランプ形のLED照明光源で、青発光LEDと、青色光で励起されるピーク波長が505〜550nmである緑色蛍光体と、青色光で励起されるピーク波長が600nm〜650nmの範囲にある赤色蛍光体を組み合わせた場合の発光効率を示したものである。ただし、図6、図7で示す相対効率は、それぞれ同じ組み合わせで5000Kの場合の発光効率を100とした場合の、相対値(%)である。
【0061】
さて、Tc=12000[K] Duv=0の場合、図6の一般的な場合はRaが82、図7の本発明の場合はRaが88である。
また、第一の作用関数と第二の作用関数は相関するので、第二の作用関数のBrを代表値とすると、12000[K]、Duv=0において、一般的な場合は1.19、本発明の場合は1.22となり、前記A(λ)/V(λ)の単位光束当たりの作用パワーを高めながら平均演色性評価指数を同時向上していることが分かる。
【0062】
さらに、この時の赤の見え方を示す特殊演色評価数R9は一般的な場合はR9が42、本発明の場合はR9が87であり、本発明の構成により大幅な赤の見え方の改善が可能である。
次に、本発明の演色上の効果を詳細に説明する。
図8は相関色温度12000[K]、Duv=0において、基準光(基準の光)、比較例つまり一般的な構成(BAM、LAP、YOX蛍光体の組み合わせからなる蛍光ランプ)、実施例つまり本発明の構成(青色発光LEDと、Eu2+で付活された535nmに発光ピークを持つシリケート系緑色蛍光体、及びEu2+で付活された640nmに発光ピークを持つ赤色蛍光体の組み合わせ)のスペクトルの下で、平均演色評価数を算出するための色票であるR1からR8で構成された色域(図8(a))と、特殊演色評価数を算出するための色票であるR9からR12で構成された色域(図8(b))をU色度座標上に示したものである。
【0063】
平均演色評価数を算出するための中彩度色票であるR1からR8で構成された色域においては、一般的な構成の場合、相当する相関色温度の基準の光より図の左右方向が狭くなる、つまり、赤と緑の色票の見えの彩度が低下する。
また、本発明の構成の場合は、図の左右方向が広がり、基準の光により近い形状となる。特に、図8(b)のR9〜R12の色域に関しては、本発明の特徴がより一層顕著に現れる。比較例では左右方向が基準光に比べて顕著に狭くなっているのに比較し、実施例において左右方向、つまり赤と緑の見えが基準光にほぼ重なるレベルまで拡大できることがわかる。さらにまた、図8では比較例において黄の見えが緑側に偏っているが、この方向の色ずれは一般には好ましさが低く評価される方向である。例えば肌の見えが不健康に見え、好ましさが低下する。実施例ではこの偏りも緩和されていることがわかる。
【0064】
本発明においては従来のRaやRiの評価に単純に従ってRaやRiの数値が向上するが、上記の点で、本発明の解決する演色性の課題は単にRaやRiの数値を上げるのではなく、より高次の演色性の向上を達成するものである。
従来、JIS Z8726−1990には参考として、R1からR8の8種の中彩度色票で構成された色域を色域面積比Gaとして計算する手法が開示されていた。
【0065】
これによると、従来の一般的な構成ではGaは96であるのに対し、本発明のGaは98であり、基準の光のGa=100により近づき、より色域が広く鮮やかな色再現を実現している。
さらに顕著な特徴は、以下に述べるGa4を用いて示される。本発明においては、これと同様の計算手続きによってR9からR12の4種の高彩度色票で構成された色域面積比の値Ga4を構成することにより、超高色温度領域での赤の見え方の評価を行う手法を開発した。
【0066】
なお、ここにおいてGaと同じくW方向の情報は色域面積計算に使用しないが、これは計算方法(プロシジャー)の共通化の意味があり、Gaと同じく平面上の色相・彩度に係る色域面積とするためである。
また、Wの明度方向の色域面積の増減を計算に加えた場合、3次元的に、例えば、青が暗く、黄が明るく演色された場合などの色域面積の増加が算出されるが、Gaとの整合のため、平面上の色相・彩度に係る色域面積を捕らえ、このような差は誤差要因として取りの除く考えに立ったものである。
【0067】
これによると、従来の一般的な構成ではGa4は91であり基準の光のGa=100より色域が狭く、色票がくすんで見えるのに対し、本発明のGa4は105であり、基準の光のGa=100より色域が広く鮮やかな色再現を実現している。
一般に、色域面積比Gaで示される中彩度色の色域は改善できても、高彩度色の色域は改善しにくい傾向がある。本発明の構成においては特に超高色温度で赤の発光スペクトルのピーク位置と半値幅、及び赤と補色関係にある緑の発光スペクトルのピーク位置と半値幅を最適な範囲に規定することで、より鮮やかな赤と緑の見えを実現し、色域面積比Ga4の顕著な増加が可能であることを見出した。
【0068】
次に青色発光LEDチップ、Eu2+で付活された525nmに発光ピークを持つシリケート系緑色蛍光体、及びEu2+で付活された640nmに発光ピークを持つ赤色蛍光体を組み合わせた場合の効果について述べる。この組み合わせの場合に12000[K]でDuv=−2.5、0、2.5、5とした場合の各種演色評価指数を図9に示す。この図から、Duvが高いほど、RaやR9が上昇することがわかる。
【0069】
従来の3波長域発光形の蛍光ランプの場合、Duvが高まると発光効率は増加するがRaとRi(特にR9)が単純に低下する。
しかし、超高色温度で赤の発光スペクトルのピーク位置、及び赤と補色関係にある緑の発光スペクトルのピーク位置を最適な範囲に規定した本発明の構成をとるとDuvが高い領域でもRaが高く、端的にはDuvが高まるとRaは逆に向上する傾向が見える。
【0070】
また、R9も相関色温度が高まるほどDuvがプラス側で高い傾向を示し、さらには、他のRiにおいてR11の緑、R13の木の葉の緑、R15の日本人の肌などに、そのDuv変化に伴う特殊演色評価数の単純減少ではない挙動の差異が顕著に現れる。
一般に3波長域発光形に相当する域狭帯域発光形光源をベースに蛍光ランプを実現する場合は、RaやRiの値を高く確保するため、Duvがマイナス側に設定されるが、本発明の場合はDuvがプラス側で各種演色評価指数が高まるため、発光効率の増加と、RaやRiの向上との相乗効果を得られる。これは、8000[K]を超えるような高い相関色温度の天空光はDuvがプラス側であることと合せても、高い相関色温度の照明光源に好適な特性を示す。
【0071】
また、図10にこの場合のR1〜R8で構成された色域(a)と、R9〜R12で構成された色域(b)を(U,V)座標上に示す。
平均演色評価数を算出するための中彩度色票であるR1からR8で構成された色域においては、一般的な構成の場合、相当する相関色温度の基準の光より図の左右方向が狭くなる、つまり、赤と緑の色票の見えの彩度が低下する。
【0072】
本発明の構成の場合は、図の左右方向の広がりが、基準の光を超えるレベルにまで達する。特に、図10(b)のR9〜R12の色域に関しては、本発明の特徴がより一層顕著に現れる。比較例では左右方向が基準光に比べて顕著に狭くなっているのに比較し、実施例において左右方向、つまり赤の見えが基準光を大きく超えるレベルまで拡大できることがわかる。さらにまた、図10では比較例において黄の見えが緑側に偏っているが、この方向の色ずれは一般には好ましさが低く評価される方向である。例えば肌の見えが不健康に見え、好ましさが低下する。実施例ではこの偏りも緩和されていることがわかる。
【0073】
平均演色評価数Raや特殊演色評価数Riは、相当する相関色温度の基準の光による色再現を100とした場合、それより、どれだけ色ずれを起こしているかで減点される指標であるため、相当する相関色温度の基準の光により、鮮やかに好ましく色再現がなされていても数値上は減点表現されるが、本発明の構成では、12000[K]、Duv2.5でのR9が51という数字は基準の光での演色を超えて赤などが鮮やかに見えた結果の減点であることが分かる。
【0074】
本発明においては従来のRaやRiの評価に単純に従ってRaやRiの数値が向上するが、上記の点で、本発明の解決する演色性の課題は単にRaやRiの数値を上げるのではなく、より高次の演色性の向上を達成するものである。
従来の一般的な構成では、Duvがプラス側ではGaもGa4も100を超えることは困難である。しかし、本発明ではより自然界の高色温度の条件に近い、Duvがプラス側でGaやGa4が100近傍、または、100を超える特性を示しやすく、RaやRiの値以上に色鮮やかな演色が可能となっている。
【0075】
また、従来は同じ高い相関色温度の中でも従来はDuv方向(特にはDuvがプラス側)への挙動の変化が考慮されておらず、本発明においてはこの観点からも最適化を図ったものである。
本発明において、従来に無い評価観点と評価指標で、ひとたび、本発明のスペクトル最適を図った上で、最適化された青緑発光の追加を、従来のRaやRiの値の評価にひるがえって評価した場合、その内容は、色域の形状の変化から超高色温度で低下した色域が、赤と緑方向に拡大された特性となりDuvが高い領域でも良好な演色性を発揮する。
【0076】
しかし、従来、単にRaやRiを高めるという発明でDuvの変化を考慮しないものにおいては、色域が基準の光を超えた場合は、RaやRiが低下する、Duvが高いほどRaやRiが低下するという挙動として現れるため、このような効果を考慮してのスペクトル最適化は考慮できない。
さらには、従来の指標、RaやRiが高く、かつ、Gaも高い場合においても、鮮やかな赤がくすんで見えている場合があり、本発明においては、真に鮮やかに演色したい鮮やかな色票の色域の指標であるGa4を構成することで、鮮やかな色の見えも高めることが可能な構成を見出したものである。
【0077】
中彩度な色票で構成される色域面積比Gaよりも、鮮やかな色票で構成される色域面積比Ga4は、従来の3波長域発光形蛍光ランプでは向上しにくい傾向にあり、従来のGaだけではこの傾向をつかむ事は困難であった。
これは、鮮やかな色彩の分光反射率は分光スペクトルカーブの立ち上がりと立下りが急であり、これを、狭帯域発光光源で照明した場合、分光反射の高い領域にスペクトルがかかる、かからないの差が顕著に現れ、狭帯域発光光源のスペクトルの設定がより顕著に演色性に影響するためである。
【0078】
本発明は、この効果も勘案し、赤の発光スペクトルのピーク位置と半値幅、及び赤と補色関係にある緑の発光スペクトルのピーク位置と半値幅を最適な範囲に規定することでR1〜R8で構成される色域、R9〜R12で構成される色域、ないしは両方の色域において、相当する相関色温度の基準の光の色域と、同等あるいは同等以上に、緑方向(左側)、赤方向(右側)、ないしは両方の色域を拡大するという色再現上の特徴を発揮することが可能となる。
【0079】
GaとGa4がともに100を超えて大きいということは、RaやR9が小さくても、相当する相関色温度の基準の光による色再現を100を超えて、色鮮やかに好ましく再現された結果であることを示している。ただし、極端なGaやGa4の向上は色彩の色鮮やかさは増すが、色彩の忠実再現という観点からは過剰感を生じることとなり、必要十分な忠実演色を確保しつつRaやRiが高い範囲内においてGaやGa4を高めることが望ましい。
【0080】
加えて、さらに詳細には、単なる色域面積比の計算結果の数値の大小だけでなく、色域の形状に着目すれば、相当する相関色温度の基準の光の色域の形状に相似様である事は、各色みのバランスが取れていることを示し、さらには、より低い相関色温度の基準の光の形状のごとく左右方向に広く赤−緑方向に鮮やかに演色される傾向を示すことは、超高色温度化に伴う赤−緑方向の彩度低下を補う方向に、比較的低相関色温度の基準の光の様に好ましく効果演色されているということを示すものである。
【0081】
これは、相関色温度の高い青白い光色でも、比較的相関色温度の低い基準の光で照明されたように、自然な被照物の色の見えを示すことにもなり、高色温度な光色と照らされた物の演色を個別に適正に求めたことになる。
よって、本発明は光色が決まれば演色が決まるような単なる設計事項には当てはまらない。従来、RaやRiが単純に高い低いを検討し設計がなされていた場合に、配慮されなかった、これらの数値が低下しても色の見え方が向上したケースを正確に判断し、本発明がなされるものである。
【0082】
また、RaやRiは相当する基準光の色再現に近いかどうかを式差の大小で評価するがゆえに、基準光より鮮やかで良い演色を示しても。基準光の演色の評価点100より減点される。例えば基準光より色がくすんで好ましくない場合のRaやRi(R9〜R12)が90の場合と、基準光を超えて色が鮮やかで好ましくRaやRi(R9〜R12)が90の場合が存在するがこれを判断可能とした上で本発明がなされたものである。そもそもが、特殊な超高色温度領域の光色の演色特性で、単にRaやRiを高めるというようなことでは捕らえきれない演色特性の特異な事象を本発明は解決するものである。
【0083】
また、Duvがプラス側においても、特に赤と緑方向の色域を拡大し、GaやGa4が100近傍または、100を超えることを可能とした本発明の特徴を、従来のRaやRiに係るだけの説明として示しても、相関色温度を一定にDuvを変化させた場合について、一般的な構成の場合と、本発明の構成の場合を詳細に比較すると、本発明は従来と異なりDuvプラス側の場合に、RaやRiで表現される指数が向上するという従来に無い特徴がある。
【0084】
次に、本発明の発光効率についての効果を図11に基づいて詳細に説明する。
蛍光ランプの中で発光効率が高いタイプである、3波長域発光形に相当する狭帯域発光形光源をベースにした場合、5000蛍光ランプを100%とすると、7100では94.8%、8000では93.1%、12000では88.0%、17000では84.9%、20000では83.8%と、発光効率[lm/W]は低下する。このように、従来、最も広く使われてきた蛍光ランプにおいては、高色温度化に伴う発光効率の低下が避けられない大きな課題であった。さらに、蛍光ランプは原理的に、環境負荷物質である水銀の使用が避けられない、ということも大きな課題であった。
【0085】
本発明のごとく、LEDチップを用いると、この高色温度化に伴う発効効率の低下を回避できる、あるいは低下を少なくできることがわかった。
図11(a)に、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップと、Eu2+又はCe3+で付活され、青色光で励起されるピーク波長が505〜550nmである緑色蛍光体と、青色光で励起されるピーク波長が600nm〜650nmの範囲にある赤色蛍光体を組み合わせた場合の発光効率の一例を示したものである。ここでは5000[K]を100%とした場合の、相関色温度ごとの発光効率の相対変化を示す。
【0086】
また、図11(b)に、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップと、Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが530[nm]〜600[nm]の範囲にあるイットリウム系黄色蛍光体と、Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを備える構成において、5000[K]を100%とした場合の、相関色温度ごとの発光効率の相対変化の一例を示す。
【0087】
ここで合わせて(BAM、LAP、YOX)の3種蛍光体を用いた、従来の典型的な3波長域蛍光ランプの場合の効率変化も示す。
図11に示す通り、本発明のLED照明光源であれば高色温度化に伴う、発光効率の低下幅は、従来の蛍光ランプより顕著に少ない。
一般に、蛍光ランプであれば、高色温度化に従い、青色蛍光体の割合が増える。この場合に青色蛍光体は発光効率が低いため、発光効率は低下する。
【0088】
しかし、LED照明光源の場合は、青色発光を効率の高い青色LEDチップにてまかなっているため、高色温度化、即ち、青色発光が増加した場合でも発光効率の低下は少ない。
この理由は以下の通りである。
LED照明光源で用いられる蛍光体はLEDチップからの青色発光により励起され、いったん、蛍光体内部で他の波長へ変換され、黄や緑や赤の発光色を生じる。ここでエネルギー変換ロスが生じている。このため、LEDチップからの光を直接利用している青色光に対して、蛍光体から発光される黄や緑や赤の色は、エネルギー変換過程におけるロスのため、発光効率が低下することがわかる。また、LED照明光源では、青色光を他の蛍光体の励起光源として使用している。そのため、赤や緑の蛍光体が減ると、その分、吸収される青色光の量が減るため、より多量の青色光が取り出せる。
【0089】
すなわち、ここで、従来のJIS上限の7100[K]を超えるような、高色温度の照明光源の分野では、LED照明光源の優れた特徴をより効果的に発揮し得るということが新たに解明された。
また、LEDを可視光発光源として、あるいは、各種蛍光体の励起光源として用いているので、従来、最も広く使用されてきた蛍光ランプのように環境負荷物質である水銀を含まないという大きな効果もある。
【0090】
次に、各LED照明光源における、演色性評価結果について説明する。
まず、従来、最も広く照明光源として用いられてきた3波長域発光形蛍光ランプで、一般的な3種蛍光体である(青BAM、緑LAP、赤YOX)で超高色温度となる構成をとった場合の演色評価結果を図6に示す。前述のように10000[K]を越すような超高色温度の光源においては、青発光成分が増加するため、基準光そのものの赤の見え方が低下する。この課題を解決するためには、平均演色性評価指数Raに加えて、赤の見えをあらわすR9が重要である。見え方の主観評価の結果、好ましい見え方を実現するためには、Ra≧80、R9≧50、が最低要件であった。ここで示す3波長域発光形蛍光ランプの場合、Ra≧80は満たすが、R9≧50は満たさず、超高色温度領域の光源の弱点をカバーしたとはいえず、ここに課題があった。
【0091】
超高色温度化に伴う、発効効率を低下し、環境負荷物質である水銀を不使用とした上で、演色評価における課題が解決できれば、なお一層、好ましいLED照明光源が実現できる。
まず、青色発光LEDチップと、黄色蛍光体と、赤色蛍光体とを組み合わせた構成の場合の演色評価結果を図12に示す。
【0092】
この場合であれば、R9≧50を達成できず、演色評価の課題の一部は解決できなかった。ただし、この構成であれば超高色温度化に伴い発効効率の低下がほとんどないのが、大きな長所である。
この場合において、中彩度の色域(U、V)、高彩度の色域(U、V)を見ると、いずれも赤−緑方向の見え方、が基準光源に比較して大きく不足していることがわかる(図35(b)及び(c)参照)。そこで、赤や緑の見え方を補うために、ブロードな黄色発光蛍光体を用いるのではなく、それぞれの発光の蛍光体を個別に用いることを考えた。
【0093】
次に、青色発光LEDチップと、緑色蛍光体と、赤色蛍光体とを組み合わせた構成の場合の演色評価結果を図7に示す。
この場合であれば、Ra≧80、R9≧50を満たし、演色評価上の課題を解決できることがわかる。特に、超高色温度光源の弱点である赤の見え、R9は55〜95、と極めて高い値を実現できる。
【0094】
上記のいずれの構成も、Ra、R9以外に、Ga(中彩度色の色域面積比)、Ga4(高彩度色の色域面積比)、M(目立ち)、PS(肌の見えの好ましさ)、いずれも従来の3波長域発光形蛍光ランプよりも高い値をとり、好ましい演色性能を持つ。これらの指標について、以下に説明する。
次に、本発明の相関色温度について述べる。人間が日常生活の中で遭遇する自然な超高色温度光を考えた場合、青空の天空光が想定できる。太陽の直射光成分の相関色温度は約5500[K]近傍であることが知られており、快晴の天空光はこれより高い相関色温度となる。
【0095】
従来は天空光として北空昼光を高色温度光の代表と考えることが多くあったが、この場合、太陽と反対の太陽位置から距離が離れた天空(地球の北半球においては北空)においては最も天空光の相関色温度が高くなり、部分的には相関色温度が20000[K]を超えることがある。
ただし、太陽の直斜光成分が遮断された影の部分、例えば木陰、などに到達する天空光は部分的な高色温度が反映されることは少なく、全天空の広い範囲からの天空光の積分となり11000〜13000[K]となる。
【0096】
よって、晴天の日の木陰などで、生活の中で自然に出会う高色温度な光は前記のような値となり、実生活において許容度の高い超高色温度光源の好適な相関色温度のレンジをこれ相当であることを導出した。
本発明では、太陽の直射光成分と天空光の成分とを分離して考え、自然な高い相関色温度をとることで、青空の光のようなさわやかで自然な光色の抽出と設定が可能となった。また、指向性の高い太陽光直射成分と、拡散性の高い天空光成分を分離して考えるということは照明設計上のメリットもある。
【0097】
ここで、指向性の高い5500[K]近傍の太陽直射光を模擬する光源と、拡散性の高い本発明の超高色温度の光源を混光照明する照明設計を行えば、指向性が高く低い相関色温度の太陽直射光と拡散性が高く高い相関色温度の天空光とを個別にシミュレートし、より忠実な天空の光の再現が可能となるものである。
さらに昼光や天空光を詳細に分析すると以下のことが言える。
【0098】
非特許文献 関根 征士:晴天空光の分光分布と色度,照明学会誌 Vol.73 No.2 P.3(1989)(Seishi Sekine:Spectral Distributions of Clear Sky and Their Chromaticities,Journal of the Illuminating Engineering Institute of Japan,Vol.73 No.2 P.3(1989))には太陽光を除いた全天空光の測定結果が記載されている。 通常の晴れにおいて太陽からの直射光を除いた全天空からの光の積分は約8500[K]、非常に大気の澄んだ快晴においては約20000[K]である。
【0099】
広く、晴れの青空の天空光を模擬実現しようと考えると相関色温度が8500[K]以上と設定すれば良く、現実的な快晴天空光の上限を模擬しようとすれば相関色温度は20000[K]以下と設定すればよい。また、実測の天空光の色度は相関色温度が高い場合、黒体軌跡より緑み側でDuvはプラスであることが多い。
ここで相関色温度に対し、その逆数の百万倍はmired(micro reciprocal degree)と呼ばれ、その数値の間隔は主観的な光色の見えの差と一致すると言われており、約8500[K]は約118[mired]、約20000[K]は約50[mired]となる。いわゆる晴れた日の太陽からの直射光を除いた全天空からの光の積分はこの範囲にあると想定できる。また、一般的よく晴れた日の全天空の光の積分の中間的な値を代表させるべく、その中間の相関色温度を算出すると約84[mired]で、およそ12000[K]と算出できる。また、10[mired]の差は視覚的にはほぼ同一光色と知覚されることから、実用光源でこれを模擬する場合、12000[K]の+10[mired]は約10700[K]であり、12000[K]の−10[mired]は約13600[K]であることから、約11000〜13000[K]が中央値近傍と言える。
【0100】
また、天空光の分光分布に関しては基本的に太陽光の分光分布が強く反映されるため、CIEの合成昼光が実用上の近似として用いられることが多い。
非特許文献 岡田喜義:昼光標準確立調査委員会報告,照明学会誌 Vol.53 No.3 P.15(1970)(Okada Kiyoshi:Report of the Investigative Committee for Daylight Standard Establishment,Journal of the Illuminating Engineering Institute of Japan,Vol.53 No.3 P.15(1970))のごとく、8500[K]を超える高色温度では実測の天空光の色度はCIE合成昼光と同等かそれ以上のDuvをとることが多いと示されている。
【0101】
さらに、非特許文献 新編色彩科学ハンドブック,日本色彩学会編 5刷 P67(1985)の図にDuvの色度座標上の関係を追加し図13に示す。
CIEが定めたCIE昼光の元となった自然昼光の色度座標上の分布を見ると、およそDuvが10までに9割がたの実測データが含まれ、Duvが5程度がそもそものCIE合成昼光のとる値に近い中央値となる。
【0102】
ここでDuvがプラス側だけの分布に注目すれば、Duvが10でほとんどの実測データが含まれ、Duvが約5で過半数の実測データが包含される。
あまり、Duvが高いと青緑みの光色と知覚されるため、発光光色の違和感の観点からはDuvが7.5が実用上の上限である。
また、Duvが低い側に関してもDuvが0程度で9割がたの実測データが含まれ、特異な点を除けば−5程度でほぼ全ての実測データを含めることが出来る。
【0103】
ここでDuvがマイナス側だけの分布に注目すればDuvが約2.5で過半数の実測データが包含される。これらから、照明光源として窓が存在するような実環境に適用する好適な値の上限は10〜5となり、下限は−5〜−2.5、さらには0となる。
この他、実測を行っても昼光は超高色温度領域でCIE昼光軌跡を上回る値となる場合が多く、Duvが0の黒体放射軌跡は自然な天空光よりDuvが低く、本発明の光色は、天空光に色みを合わせた場合、Duvが0以上、より好適にはDuvが0を超えた値をとることが望ましい。
【0104】
また、3波長域発光形に相当する域狭帯域発光形光源をベースにした一般ランプはRaを高めるべくDuvが0より低く、−2.5以上の値をとることが多い。このため、従来の一般ランプとの整合をとるという意味では、−2.5以上が好ましい。
以上を総合して、青空光色の模擬、窓からの外光との適合性、従来の一般ランプとの整合性も考えた場合、最適なDuv範囲は2.5〜5となる。
【0105】
他方、相関色温度を実際の視環境の中で規定する要因としては、自発光表示装置との照明光との光色整合の観点がある。超高色温度光源をオフィスや住宅に用いる場合、そこで使用されるディスプレイモニタの白色点は11000[K]程度に設定されることが多く、これより過剰な高色温度照明の下ではモニタの白が黄ばんで見え、モニタ作業や映像観賞には適さなくなる実用上の課題を見出した。
【0106】
一般的にディスプレイモニタの白色点は周囲の照明環境の相関色温度より高い値に設定されており、従来の常用光源の光色では上記の事態が発生しないが、超高色温度領域を照明応用する場合には課題として浮上する。
実験的には約13000[K]までディスプレイモニタの黄ばみは知覚されなかったが、これを理論的に考察すると、10[mired](micro reciprocal degree )以内の差であれば光色の差は知覚されにくいという従来知見と合致し、照明光とモニタの白色点の差は、この場合11000[K]を中心に+10[mired]で10000[K]、−10[mired]で12500[K](端数四捨五入で13000[K])となるためである。
【0107】
またさらに、JISやIECの蛍光ランプの光色区分の最高色温度の色度規格である、昼光色やF6500より高色温度に光色範囲をmired間隔を用いて補外し本発明の光色の許容範囲を設定することも可能である。この場合、JISでは8000〜17000[K]、IECではF8774とF12655となる。
IECの規格から得られた数値を用い、単純には8774〜12655[K]の範囲をとることも可能であるが、F8774とF12655の各々の色度許容範囲を個別に設定すること、さらには、この両方の最大最小の相関色温度を本発明の相関色温度の範囲とすることも可能である。
【0108】
発明者は、主観評価実験から約10000〜14000[K]、より好適には11000〜13000[K]で昼光色とF6500とは明らかに1ランク高色温度に異なる光色区分と認識されるという心理評価を得ている。
加えて、他の生理的な効果として、非特許文献 金井隆志:高色温度照明が作業中の心理・生理機能に与える影響,千葉大学大学院自然科学研究科 修士論文(2000)によると、超高色温度の照明において別の効果も示唆されている。
【0109】
照明光の相関色温度毎の脳波測定の結果、自発誘発脳波であるα波の帯域率が3000[K]から9000[K]までは低下し、11000[K]以上の相関色温度となると増加に転じる傾向が現れる。また、事象関連電位であるCNVの初期成分値が9000[K]までは高く11000[K]からは低下に転ずる傾向が現れる。
α波指標は一般に人間のリラックス状態と関連しているとされるが、低色温度光ではリラックスし高色温度光ではその状態が緩和するという一般に認識される傾向を示すが、9000[K]から11000[K]の間の約10000[K]を境に再びリラックス側に振れる。
【0110】
また、CNV指標は一般に人間の注意集中や緊張と関連しているとされるが、低色温度光より高色温度光では注意集中や緊張が高まるという一般に認識される傾向を示すが、9000[K]から11000[K]の間の約10000[K]を境に再び注意集中や緊張の緩和方向に振れる。
両脳波指標はおよそ10000[K]を境に、高色温度化に伴い高まった脳活動のテンションが再び緩和側に振れると言う効果が示唆されている。この変極点を越え、より明確な脳は指標の変化が把握されるポイントは11000[K]であった。
【0111】
同時になされた心理評価では、「眠さ」「作業に対する集中」は10000[K]を超えても高まる傾向を示しており、脳波の指標とは異なる結果を生じている。脳波を指標とすれば生理的にはリラックスしているが、心理的には集中が高まるという状態をなっており、10000[K]を超える超高色温度では、過剰な緊張なく集中度が高まる光色得ることが出来ていることを示す個別の効果があること予想される。
【0112】
一般に、色純度の高い青い光色は人間をリラックスさせ鎮静化させる効果があると言われるが、10000[K]を超える超高色温度では青発光成分が強まるため、このような効果が現出し始めると想定されている。
発明者の心理実験においては、10000[K]を超えると青白い光色に心理的な爽快感を感じることを確認しており、一般的な3波長域発光形に相当する狭帯域発光形光源をベースにした蛍光ランプで相当の高い相関色温度を実現した場合より高演色性を実現可能な本発明において、このような効果を阻害する、超高色温度化に伴う可視環境の違和感を緩和することで、さらなる快適な環境を実現する効果もある。
【0113】
次に、本発明の発光ピークの半値幅について述べる。
現実のランプは理想的な発光帯域以外の、その他の発光帯域の発光も重畳されることから、各帯域の光刺激純度は低下するが、各々のスペクトルは一般的に狭帯域発光形光源に望まれる半値幅以下であれば本発明の効果がより好適に現れる。この点において、青色発光LEDチップの発光ピークは、ピークλが440[nm]〜470[nm]、半値幅が20[nm]〜30[nm]であることが好適である。緑色蛍光体の発光ピークは、ピークλが505[nm]〜550[nm]、半値幅が60[nm]〜90[nm]であることが好適である。赤色蛍光体の発光ピークは、ピークλが600[nm]〜650[nm]、半値幅が75[nm]〜95[nm]であることが好適である。
【0114】
図14から図22に、相関色温度が7100[K]、12000[K]又は20000[K]であり、Duv=0の場合を事例にう、発光ピークの半値幅を変化させた場合のシミュレーションを示す。
図14から図16は、青色発光LEDチップの発光ピークのピークλが440[nm]、半値幅が20[nm]であり、緑色蛍光体の発光ピークのピークλが505[nm]、半値幅が60[nm]であり、赤色蛍光体の発光ピークのピークλが600[nm]、半値幅が75[nm]の場合である。この場合の演色評価結果を図23に示す。
【0115】
図17から図19は、青色発光LEDチップの発光ピークのピークλが460[nm]、半値幅が30[nm]であり、緑色蛍光体の発光ピークのピークλが530[nm]、半値幅が65[nm]であり、赤色蛍光体の発光ピークのピークλが625[nm]、半値幅が80[nm]の場合である。この場合の演色評価結果を図24に示す。例えば、このパターンであれば、7100[K]、12000[K]、20000[K]のGa、Ga4のいずれもが100を超えた値をとっており、各色票の見えが基準光以上に鮮やかになることがわかる。この場合にRaは87〜91、R9は58〜67の値をとるが、これは鮮やかな方向に好ましく、見え方がずれているがゆえに、100より減じられているものである。すなわち、単純にRaやR9の数字のみをおいかけるのではなく、色度座標(U,V)上での色の見え方も詳細に検討することにより、初めて好ましい演色性能を達成することができた事例といえる。
【0116】
図20から図22は、青色発光LEDチップの発光ピークのピークλが470[nm]、半値幅が20[nm]であり、緑色蛍光体の発光ピークのピークλが550[nm]、半値幅が90[nm]であり、赤色蛍光体の発光ピークのピークλが650[nm]、半値幅が95[nm]の場合である。この場合の演色評価結果を図25に示す。
以上、超高色温度化に伴う発効効率の低下を抑制しつつ、演色性とメラノプシンの抑制効果を高めながら自然な光色を実現するために、本発明の範囲として上記の生理効果や演色上の効果を各々、好適、最適に組み合わせる多くの相関色温度やDuvの下限・上限の組み合わせの変更が可能である。
【0117】
例えば、相関色温度の下限を心理生理効果から設定し、相関色温度の上限を演色性の効果から設定するなどは任意であり、これら、組み合わせの変更は目的に応じて当業者に可能な事項である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】メラノプシンの分光吸収の作用関数、メラトニン抑制の作用関数、標準比視感度曲線を表すグラフ
【図2】色票R1からR8の色度をU色度座標上に示したグラフ
【図3】第一の作用関数G(C(λ))を代表とした場合における、相関色温度とメラトニン抑制の作用関数A(λ)の関係を示すグラフ
【図4】第二の作用関数B(Brainard)を代表とした場合における、相関色温度とメラトニン抑制の作用関数A(λ)の関係を示すグラフ
【図5】第一の作用関数Gと第二の作用関数Bとの相関を示すグラフ
【図6】一般的3波長域発光形蛍光ランプとして蛍光体に、青発光蛍光体BAM、緑色蛍光体LAP、赤色蛍光体YOXを使用した場合の結果を示す表
【図7】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、緑色蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図8】(a)および(b)は、それぞれ、相関色温度12000[K]、Duv=0において、基準光、一般的な構成、実施例についての色票R1からR8、および、R9からR12で構成された色域をU色度座標上に示したグラフ
【図9】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、緑色蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図10】(a)および(b)は、それぞれ、相関色温度12000[K]、Duv=0において、基準光、一般的な構成、実施例についての色票R1からR8、および、R9からR12で構成された色域をU色度座標上に示したグラフ
【図11】相関色温度と発光効率との関係を示すグラフ
【図12】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、黄発光蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図13】色度座標上にDuvの関係を示したグラフ
【図14】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度7100[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図15】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度12000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図16】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度20000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図17】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度7100[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図18】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度12000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図19】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度20000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図20】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度7100[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図21】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度12000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図22】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度20000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図23】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、緑色蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図24】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、緑色蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図25】本発明の実施形態における青色発光LEDチップ、緑色蛍光体、赤色蛍光体を使用した場合の結果を示す表
【図26】(a)および(b)は、それぞれ、本発明に係る実施形態の照明光源100を模式的に示す断面図
【図27】本発明の実施形態に係るLED照明光源100の分光分布を示すグラフ
【図28】(a)および(b)は、それぞれ、U色度座標上におけるR1〜R8からなる8色の色域、および、R9〜R12からなる4色の色域を示すグラフ
【図29】一般的な狭帯域発光形蛍光ランプに使用されるBAM、LAP、YOXの分光分布を示すグラフ
【図30】(a)および(b)は、それぞれ、U色度座標上における一般的な構成の蛍光ランプのR1〜R8からなる8色の色域、および、R9〜R12からなる4色の色域を示すグラフ
【図31】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度7100[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図32】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度12000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図33】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度20000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図34】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度7100[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図35】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度12000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図36】(a)から(c)は、それぞれ、相関色温度20000[K]における分光分布、色域R1〜R8、色域R9〜R12を示すグラフ
【図37】本発明に係る実施形態のLED照明光源200を模式的に示す一部切り欠き側面図
【図38】本発明に係る実施形態の照明装置300を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<実施形態1>
図26は、本実施形態の直管形の照明光源100を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るLED照明光源100は、直管形蛍光ランプの規格寸法に準じた形状を有する。なお、本願において直管形蛍光ランプとは、JIS C 7601に定義されている直管形蛍光ランプ(一般照明用)である。照明光源100は、直管形蛍光ランプの規格寸法に準じた形状を有するため、直管形蛍光ランプの代替品として既存の灯具に取り付けて使用することができる。
【0120】
本実施形態では、LED照明光源100から発せられる光は、相関色温度が7100[K]を超える高い色温度を有する。換言すると、本実施形態のLED照明光源100は、JIS Z9112:1990(またはIEC 60081−1997)にて規定される常用蛍光ランプの光色の上限7100[K]を超えてなる超高色温度を有するLED照明光源100である。
【0121】
LED照明光源100は、LEDモジュール101と、このLEDモジュール101が搭載された金属製の板状の基台102と、LEDモジュール101を覆う状態で基台102に取付けられた半円筒状の外囲器103と、基台102および外囲器103の長手方向の両端に、取り付けられた一対のG型口金104とを備えている。
LEDモジュール101は、板状の実装基板105と、この実装基板105に実装された複数のLEDチップ106と、複数のLEDチップ106を内包するように成形された蛍光体層107とを有している。これら複数のLEDチップ106は、実装基板105の長手方向にライン状に並べられ、かつ中央部から両端部に向かうにつれて配置間隔が狭くなるように配置されている。このように配置することによって、LEDモジュール101において、中央部に熱が集中するのを緩和している。
【0122】
基台102は、実装基板105が搭載された搭載面108を有している。基台102の長手方向の両端には、それぞれ半円柱状の突出部109が形成されている。
外囲器103は、周方向の両端部111を、基台102の搭載面108に形成された溝110に沿って嵌め込まれて固着されている。外囲器103は、長さ方向の両端に形成された半円筒状の鍔部112を有している。この外囲器103全体において、LEDモジュール101からの光を取り出すための透光性領域が形成されている。また、外囲器103には、光拡散を行うための処理が施されている。これにより、LED照明光源100において、LEDモジュール101から出射された光のムラを少なくすることができる。
【0123】
G型口金104は、絶縁材料からなる有底筒状の絶縁部113と、この絶縁部113を覆うように形成された有底筒状の金属製のキャップ114と、絶縁部113に圧入されて保持されている金属製の2本の口金ピン115とを有している。絶縁部113は、基台102の突出部109と外囲器103の鍔部112とで形成される円形の突状部分を覆うようにして嵌め込まれている。この絶縁部113の外側に、さらにキャップ114が嵌め込まれている。キャップ114には、2つの貫通孔が形成され、各貫通孔に口金ピン115が挿通されている。なお、キャップ114の口金ピン115が挿通されている部分には、絶縁材料が装着されていて、相互の絶縁が図られている。2本の口金ピン115は、絶縁部113およびキャップ114により、互いに平行に保持されている。
【0124】
このようなLED照明光源100を取り付ける照明器具では、照明器具に設けられた点灯回路(図示せず)が、外部の商用交流電源からの給電を受けて、LEDモジュール101を点灯させるための直流電力に変換するので、一対のG型口金104に設けられた合計4本の口金ピン115のうち、給電には2本あれば足りる。このため、残りの2本の口金ピン115は、専ら照明器具のソケットに装着する際の指示部材として機能させることになる。
【0125】
これにより、一対のG型口金104のうち一方の2本の口金ピン115にのみ、LEDモジュール101と電気的に接続されたリード線(図示せず)がそれぞれ半田付けで接合されている。
本実施形態のLEDチップ106は、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップである。また、本実施形態の蛍光体層107は、赤色発光希土類蛍光体と、緑色発光希土類蛍光体を含んでいる。本実施形態の構成において、赤色発光希土類蛍光体は、600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する蛍光体である。緑色発光希土類蛍光体は、505〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する蛍光体である。
【0126】
前記赤色蛍光体は、Eu2+で付活した窒化物系(窒化物または酸窒化物)の蛍光体あるいはEu2+で付活した硫化物蛍光体であり、例えば、MSi:Eu2+やM(Si,Al)(N,O):Eu2+などのニトリドシリケート系蛍光体、MAlSiN:Eu2+やMAlSi:Eu2+やMAl(Si,Al)(N,O):Eu2+などのニトリドアルミノシリケート系蛍光体、MS:Eu2+などのアルカリ土類金属硫化物蛍光体のいずれかである(但し、前記Mはアルカリ土類金属であり、Mg,Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも一つの元素を示す)。
【0127】
なお、これら赤色蛍光体の具体例としては、SrSi:Eu2+、Sr(Si,Al)(N,O):Eu2+、CaAlSiN:Eu2+、(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+、SrAlSi:Eu2+、SrSiAlON13:Eu2+、CaS:Eu2+などがあげられる。
前記緑色蛍光体は、Ce3+で付活した蛍光体、好ましくはCe3+で付活した酸化物蛍光体あるいはCe3+で付活したガーネット構造を有する蛍光体、または、Eu2+で付活した酸化物系あるいは窒化物系(窒化物または酸窒化物)の蛍光体、または、Eu2+で付活したチオガレート系の蛍光体であり、例えば、LnAl12:Ce3+、Ln(Al,Ga)12:Ce3+、MScSi12:Ce3+、MLnSiAl12:Ce3+などの一般式で表されるCe3+で付活されたガーネット構造を持つ蛍光体や、例えば、一般式MSc:Ce3+で示されるCe3+で付活されたスカンジウム化合物をベースとしてなる蛍光体や、例えば、一般式MSiO:Eu3+で示されるEu2+で付活されたアルカリ土類金属正珪酸塩蛍光体や、例えば、一般式MSi:Eu3+、M(Si,Al)(N,O):Eu3+、MSi12:Eu3+で示されるEu2+で付活された酸窒化物蛍光体や、例えば、一般式β−Si:Eu3+、β−(Si,Al)(N,O):Eu3+で示されるEu2+で付活されたβ−Si構造を持つ窒化物系(窒化物または酸窒化物)蛍光体や、例えば、一般式MGa:Eu3+で示されるEu2+で付活されたアルカリ土類金属チオガレート蛍光体のいずれかである(但し、前記Lnは希土類であり、例えば、Sc、Y、La、TbおよびGdから選ばれる少なくとも一つの元素、前記Mはアルカリ土類金属であり、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも一つの元素を示す)。
【0128】
なお、これら緑色蛍光体の具体例としては、YAl12:Ce3+、Y(Al,Ga)12:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、BaYSiAl12:Ce3+、CaSc:Ce3+、(Ba,Sr)SiO:Eu3+、SrSi:Eu3+、Sr(Si,Al)(N,O):Eu3+、BaSi12:Eu3+、β−Si:Eu3+、β−(Si,Al)(N,O):Eu3+、SrGa:Eu3+などが挙げられる。
【0129】
本実施形態のLED照明光源100は、メラノプシンを光刺激することによってメラトニン分泌を抑制する手段を備えており、そのメラトニン分泌抑制手段は、LEDチップ106及び蛍光体層107によって実現されている。メラトニン分泌抑制手段によるメラトニン抑制の作用については別途説明する。LEDチップ106を構成する青色発光LEDチップの発光ピーク及び蛍光体層107を構成する各蛍光体の発光ピークらの関係は図27を参照しながら後述する。
【0130】
次に、図27を参照しながら、本実施形態の照明光源100についてさらに説明を続ける。図27は、本実施形態の照明光源100の分光分布を示している。
図27において、符号11は600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体の発光ピーク、符号12は505〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する緑発光希土類蛍光体の発光ピーク、符号13は440〜470[nm]に主たるピーク波長を有する青発発光LEDチップの発光ピークである。
【0131】
本実施例においてはJIS Z8726−1990の計算手続きに沿って、下記の各種演色評価指数が算出され、色域面積比Ga4は前記JISの色域面積比Gaの計算の色票をR9からR12の四つに変更することによって計算される。
また、DuvはJIS Z8725−1999の計算手続きに沿って計算される値であり、CIE 1960 UCS 色度座標で、相当する色温度を有する黒体軌跡からのu,vの値の偏差1000倍し、黒体放射軌跡の下側にあるときは負号をつけた値として示される。これは、黒体軌跡からの位置関係を示し、相関色温度とDuvで光源の光色の色度が決定される。
相関色温度=12000[K]、Duv=0、
Ra=88、Ga=98、Ga4=105、
R9=87、R10=65、R11=86、R12=45、R13=92、R14=87、R15=93
図28(a)および(b)に、それぞれ、U色度座標上で、このときのR1〜R8で構成された8色の色域の様子と、R9〜R12で構成された4色の色域の様子を示す。
【0132】
平均演色評価数Raは、相当する相関色温度の基準光(基準の光)で色再現したR1〜R8の色票と、評価しようとする光源(実施例)のR1〜R8の色票との色ずれの平均値であるが、平均した後のRaが等しくとも、各々の色票の色ずれの傾向は詳細には異なる。
同じRaの値でも、より詳細には、相当する基準光の色再現と、図面上で図形の形が相似に近い方がより忠実性が高い。また基準光より色域が広い方が色鮮やかに見えより好ましい演色を示す。
【0133】
相当する相関色温度の基準光(基準の光)の色再現と一致した忠実演色の場合はR1〜R12の各演色評価数は100となるが、これよりくすんで見えても、鮮やかに好ましく見えても、R1〜R12の各演色評価数は低い値となり100を超えることは無い。
従来のRiの高低だけでは、高彩度色をより高彩度に演色する良好な事象も、Riで示される演色性が低下するという評価にしかなっていなかった。よって、従来のRaやRiを改善するという発明と本発明の好適な事例は異なる。
【0134】
GaやGa4は相当する相関色温度の基準の光の評価を100とし、それを超えて色域が拡大した場合は100以上の数値をとり基準の光より鮮やかに演色されたかどうかの指標となる。
また単純に、従来のGaだけで評価した場合は中彩度色の色票に頼った評価となり、本来、鮮やかに見せたい色彩の代表である高彩度色票のR9〜R12が本当に鮮やかに見えているかどうかは不明であり、Gaだけが改善されていても、Ga4が改善されていない事象が発生していた。
【0135】
これは、高彩度色票は高彩度であるが故、特定のスペクトル帯域の分光反射率の変化が急激で、狭帯域発光の照明光で照明された際に、分光反射が高い帯域に、照明光の狭い帯域に発光スペクトルがかかるか、かからないかの影響を大きく受けるためである。ゆえに、この指標を改善する分光分布を見出すことは困難であるが、本発明においては超高色温度において、メラトニン抑制効率を同時に高めるという律則の下でこれを見出した。
【0136】
すなわち、超高色温度帯域で演色改善を図るに際し、通常は不足する赤を補うべく赤スペクトルの補強を行うが、本発明は7100[K]しいては10000[K]を超える超高色温度で、赤の発光スペクトルのピーク位置と半値幅、及び、赤と補色関係にある緑の発光スペクトルのピーク位置と半値幅を最適な範囲に規定することで、R9が数値的に低下することはあれどもGa4で示される色域が高く保持されることを見出し、実質的に赤の見えが向上することを見出した。
【0137】
本発明の好適な場合では、色再現のひずみが少なく、GaもGa4も100以上に再現できており、R1〜R12の各演色評価数の低下は鮮やか方向に好ましく効果演色された結果と言うことがわかる。
また、超高色温度領域においては基準光自体が赤−緑方向の鮮やかさが低下し左右に圧縮された形となっているが、本発明では鮮やかに好ましく演色する方向はこれを改善する方向に左右に広がり、相対的により低い相関色温度、例えば、一般的には5700〜7100[K]程度の相関色温度の基準光の色域の形状が示す傾向に近く、色票が色度座標上に均等に分散して形状のひずみが少ない。このために、本発明は超高色温度にもかかわらず自然で好ましい色の見えを実現するものである。
【0138】
また、本発明のメラトニン抑制効率は相放射スペクトルの分光パワーをメラトニン抑制の作用関数A(λ)で重み付けした後に積分した値は図1のメラトニン抑制の作用関数で計算され、CIE標準分光視感効率V(λ)で重み付けした後に積分した値は図1のCIE標準分光視感効率で計算される。
本実施例における図27の分光分布から、
(作用関数効率/視感度効率)=
(視物質ベース:第一の作用関数G)の場合1.18
(直接測定ベース:第二の作用関数B)の場合1.22
さて、次に比較対象となる一般的な狭帯域発光形蛍光ランプに使用されるBAM、LAP、YOXの上記分光分布を図29に示す。
【0139】
図29において、11は605〜625[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体YOXのEu発光ピーク、12は540〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する緑発光希土類蛍光体LAPのTb発光ピーク、13は440〜460[nm]に主たる発光ピークを発する希土類元素持つ青発光希土類蛍光体BAMのEu発光ピークである。
【0140】
ここにおいては次の値が算出できる。
相関色温度=12000[K]、Duv=0、
Ra=82、Ga=96、Ga4=91、
R9=42、R10=46、R11=65、R12=59、R13=93、R14=71、R15=96
(作用関数効率/視感度効率)=
(視物質ベース:第一の作用関数)の場合1.19
(直接測定ベース:第二の作用関数)の場合1.19
ここで、図30にU色度座標上で、図29の分光分布の一般的な構成の蛍光ランプ(比較例)のR1〜R8で構成された色域の様子と、R9〜R12で構成された色域の様子を示す。これは、一般的な3波長域発光形蛍光ランプをベースとした超高色温度蛍光ランプを実現した場合の特徴であるが、赤−緑方向に彩度が低下し、各色域の左右が圧縮され縦長の形状になる超高色温度領域の傾向が強調されてしまう。このため、そもそも青白い光色の中で、さらに被照物の赤の見えの彩度が低下することで、視環境としての違和感が生じていることを見出した。
【0141】
また、特定の色相、例えば、R1〜R8で構成された色域の色度座標で、左上方のR3の黄みの色票の彩度が突出することで、色の見えのバランスが黄−青方向で縦長に大きくひずんでしまう。この時の色域の広がりは、より高色温度の基準光に近い形状になり、結果として、さらに超高色温度な光源のごとく被照物の黄みや青みが強調され、赤みや緑みがくすんでしまう特徴を強めてしてしまう傾向が生じる。
【0142】
黄みの系統の色が、黄緑みにシフトする傾向は、同じ量の色ずれでも、好ましさが低く評価される方向である。例えば、肌の見えが黄緑みに見え、高ビルビリン状態の不健康な肌の見えに演色される方向で好ましさが低下する。 また、肌のメラトニン色素の黄みも同じく黄緑みがかり不自然な見えとなる。本発明では、一般的な3波長域発光形蛍光ランプをベースとした超高色温度蛍光ランプを実現した場合の上記傾向を改善し、色みのバランスを整えることか可能となる。
【0143】
本発明では従来の評価指標であるR9の数値だけの観点から見ても、R9の値の改善が、一般的な3波長域発光形での超高色温度の実現よりも、知覚レベルで有意により好ましいと判断されるレベルの60以上、最適にはRaと同じく80以上とする相関色温度とDuvの範囲とすることが可能である。また、R9の改善と関連の深いGa4に関しても一般的な3波長域発光形での超高色温度の実現では困難な95以上の実現が可能となる。よって、本発明は従来と異なり、高いGaやGa4を確保した上でのRaやR9の向上や低下を示すものである。この際に、Gaが100以上、より好ましくはGa4も100以上とすれば、演色上の最良の実施形態となる。
【0144】
図28と図30を用い本発明の場合と一般的な3波長域発光形の場合の色域の分布を使用して、さらに色再現の様子を詳細に解説すると、本発明の場合の色域の形状が基準光(基準の光)の色域に対してひずみが少ないことが判る。図の上は黄色、下方は青に対応するが、一般的な3波長域発光形の弱点は黄色が黄緑側に色ずれして演色されることであり、色域の上部の左方向への突出として表現されているが本発明ではこれが大きく改善されている。
【0145】
黄色みの演色に関しては、黄緑側より黄赤側への色ずれが許容されやすいためこの改善は、各種黄色みの色票の各Riの数値上の改善よりも主観的に大きな改善効果を生ずる。例えば、肌の見えは黄緑みに見えるより、赤みに見えるほうが、同じ式差の色ずれでも血色が良く見え好ましく判断される。本発明を、肌色の見えを単純な基準光との演色との式差に基づく指標のR13やR15の高低だけで評価せず、肌の見えの好ましさの指標PSで評価した場合も、その改善効果が大きいことがわかる。
【0146】
図31から図33は、青発光LEDと、Eu2+で付活された535[nm]に発光ピークを持つシリケート系緑色蛍光体、及びEu2+で付活された640[nm]に発光ピークを持つ赤色蛍光体の組み合わせの場合にDuvが0の場合、各々、図31は7100[K]、図32は12000[K]、図33は20000[K]の相関色温度で分光分布と色域を示したものである。
【0147】
<実施形態2>
実施形態2のLED照明光源は、蛍光体層に含まれる蛍光体の種類が実施形態1のLED照明光源とは異なる。その他の構成については基本的に実施形態1のLED照明光源と同様である。したがって、上記相違点についてのみ説明し、その他の構成についての説明は省略する。
【0148】
本実施形態の蛍光体層は、赤色発光希土類蛍光体と、黄色発光蛍光体を含んでいる。本実施形態の構成において、赤色発光希土類蛍光体は、600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する蛍光体である。黄色発光希土類蛍光体は、530〜600[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心を有する蛍光体である。
【0149】
前記赤色蛍光体は、先に説明した、Eu2+で付活した窒化物系(窒化物または酸窒化物)の蛍光体あるいはEu2+で付活した硫化物蛍光体であり、例えば、MSi:Eu2+やM(Si,Al)(N,O):Eu2+などのニトリドシリケート系蛍光体、MAlSiN:Eu2+やMAlSi:Eu2+やMAl(Si,Al)(N,O):Eu2+などのニトリドアルミノシリケート系蛍光体、MS:Eu2+などのアルカリ土類金属硫化物蛍光体のいずれかである(但し、前記Mはアルカリ土類金属であり、Mg,Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも一つの元素を示す)。
【0150】
前記黄色蛍光体は、Ce3+で付活したガーネット構造を有する蛍光体、Ce3+で付活した炭窒化物系の蛍光体、Eu2+で付活した酸化物系あるいは窒化物系の蛍光体、Eu2+で付活した硫化物蛍光体、であり、例えば、LnAl12:Ce3+などの一般式で表されるCe3+で付活されたガーネット構造を持つ蛍光体や、例えば、一般式LnSiC:Eu3+で示されるCe3+で付活された炭窒化物蛍光体や、例えば、一般式MSiO:Eu3+で示されるEu2+で付活されたアルカリ土類金属正珪酸塩蛍光体や、例えば、一般式MSi:Eu3+、M(Si,Al)(N,O):Eu3+で示されるEu2+で付活された酸窒化物蛍光体や、例えば、一般式M−α−(Si,Al)12(N,O)16:Eu3+または一般式M−α−(Si,Al)1216:Eu3+示されるEu2+で付活されたα−SiAlON型の結晶構造を持つ窒化物系(窒化物または酸窒化物)蛍光体や、例えば、一般式MGa:Eu3+で示されるEu2+で付活されたアルカリ土類金属チオガレート蛍光体のいずれかである(但し、前記Lnは希土類であり、例えば、Sc、Y、La、TbおよびGdから選ばれる少なくとも一つの元素、前記Mはアルカリ土類金属であり、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも一つの元素を示す)。
なお、これら黄色蛍光体の具体例としては、(Y、Gd)Al12:Ce3+、YSiC:Ce3+、(Sr,Ba)SiO:Eu3+、CaSi:Eu3+、Ca(Si,Al)(N,O):Eu3+、Ca−α−SiAlON:Eu3+、CaGa:Eu3+などが挙げられる。
【0151】
本実施形態の組み合わせは、600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体、530〜600[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心を有する黄発光希土類蛍光体YAG、440〜470[nm]に主たる発光ピークを有する青色発光LEDチップを組み合わせたものである。
図34から図36は、前記組み合わせで、Duvが0の場合、各々、図34は7100[K]、図35は12000[K]、図36は20000[K]の相関色温度で分光分布と色域を示したものである。
【0152】
<実施形態3>
図37は、本発明の実施形態に係る電球形の照明装置の概略構成を示す一部切り欠き図である。本発明に実施形態に係る照明光源200は、白熱電球に模した外観形状を有している。一般照明用電球の規格寸法に準じた形状を有する。なお、本願において一般照明用電球とは、JIS C 7501に定義されている一般照明用電球である。照明光源100は、一般照明用電球の規格寸法に準じた形状を有するため、一般照明用電球の代替品として既存の灯具に取り付けて使用することができる。
【0153】
円筒状のケース201は、樹脂等の絶縁材料で形成されており、その一端にはE型口金202が設けられ、他端には円板状のヒートシンク203が設けられている。口金202とヒートシンク203で封塞されたケース201の内部空間には、点灯装置204が収容されている。ヒートシンク203のケース封塞面とは反対側の面にはLEDモジュール205が搭載されていると共に、LEDモジュール205を覆うグローブ206が取着されている。
【0154】
LEDモジュール205は、白色光源であり、基板207の表面に配線パターンが配設され、その配線パターンにLEDチップ208が実装され、そのLEDチップ208を樹脂成型部材209で内包して形成されたものである。樹脂成型部材209には、LEDチップ208から出射された光の波長を変換する蛍光体が含有されている。LEDチップ208の出射光の一部は樹脂成型部材209の通過中に波長変換され、波長変換されずにそのまま出射された光と混色して白色光となる。
【0155】
口金202が照明器具に装着されると、商用の交流電源から電力が供給される。供給された電力は点灯装置204を介してLEDモジュール205に送られる。
本実施形態のLEDチップ208は、ピーク波長が440〜470[nm]の範囲にある青色発光LEDチップである。また、本実施形態の蛍光体は、赤色発光希土類蛍光体と、緑色発光希土類蛍光体を含んでいる。本実施形態の構成において、赤色発光希土類蛍光体は、600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する蛍光体である。緑色発光希土類蛍光体は、505〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する蛍光体である。
【0156】
<実施の形態4>
本実施例では照明装置としての本発明の実施の形態を説明する。本実施においては、単一のLED照明光源ではなく、本発明のLEDチップ及び蛍光体を各種組み合わせで、個別に有するLED照明光源を混光照明する照明装置で実現可能である。
少なくとも600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体を有する赤色蛍光ランプ、505〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する緑発光希土類蛍光体を有する緑色蛍光ランプ、440〜470[nm]に主たる発光ピークを有するLEDチップを有する青色LED照明光源の混光することで、照明装置として本発明の効果が成り立つ。
【0157】
図38は、本発明に係る実施形態の照明装置300を模式的に示している。本実施形態の照明装置300は、光色の異なる3種類の照明光源、すなわち赤色蛍光ランプ301、緑色蛍光ランプ302、青色LED照明光源303が内部に収納された器具304と、その器具304の光取り出し用の開口を覆うように取り付けられた拡散透過板305とを備え、赤色蛍光ランプ301、緑色蛍光ランプ302、青色LED照明光源303を器具304の中で同時に点灯し、かつ、拡散透過板305で3色を混色することによって、白色光を発する。少なくとも600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体で赤色蛍光ランプ301を構成する。505〜550[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する緑発光希土類蛍光体で緑色蛍光ランプ302を構成する。440〜470[nm]に主たる発光ピークを有するLEDチップで青色LED照明光源303を構成する。
【0158】
以上の構成の混光照明においても照明装置として本発明の効果が成り立つ。
さらに、少なくとも600〜650[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する赤発光希土類蛍光体で構成される赤色蛍光ランプ、530〜600[nm]に主たる発光ピークを発する発光中心となる希土類元素を有する緑発光希土類蛍光体で構成される黄色蛍光ランプ、440〜470[nm]に主たる発光ピークを有するLEDチップで構成される青色LED照明光源の混光照明においても照明装置として本発明の効果が成り立つ。
【0159】
なお本実施例の、照明装置としての実施においては多様ランプの組み合わせが可能であり、各々のランプの調光で化変色と、メラトニン抑制効果の増減を図ることが可能となる。
<変形例>
以上、本発明に係るLED照明光源および照明装置を実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されない。
【0160】
LED照明光源は、LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、Eu2+またはCe3+で付活され、前記青色光で励起されるピーク波長が530[nm]〜600[nm]の範囲にある黄色蛍光体を備えるLED照明光源であっても良い。
【0161】
また、ピーク波長が440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色発光LEDチップと、ピーク波長が500[nm]〜530[nm]の範囲にある青緑発光LEDチップと、Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを組み合わせたLED照明光源であっても良い。
【0162】
また、ピーク波長が440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色発光LEDチップと、ピーク波長が500[nm]〜530[nm]の範囲にある青緑発光LEDチップと、ピーク波長が600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤発光LEDチップとを組み合わせたLED照明光源であっても良い。
実施例では特定のLED照明光源の分光分布を示したが、特に指定がない限り「有する」に類する構成要素表現は請求項を含む本明細書に示されたもの以外の他の構成要素またはステップの存在を排除するものではない。また、構成要素の単数表現をもって、同等の効果を得る構成要素の複数化での相当効果の実施による請求項からの逸脱を排除するものではない。
【0163】
各種測定の定義においては、一般的なLED照明光源の特性は定格点灯条件で示されることから本発明はそれに準拠して測定可能である。また、相関色温度とDuvに関してはランプライフ中の安定した実使用時の代表値とすればより現実的である。また、各種演色計算のスペクトルの値は一般に5[nm]ごとに与えられることから、本発明のスペクトル範囲は5[nm]以内の誤差を有する。
【0164】
また、明細書中には異なる従属項における手段が相互に示している事実があるので、これらの手段の組み合わせを有意に用いることは当業者には容易に類推できる。本発明は明細書から説明されたが、本発明の目的から逸脱することなくLED照明光源およびLED照明光源を用いた照明装置において様々な変形および変更が可能であり、その変形および変更は請求項の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のLED照明光源、および、照明装置は、高色温度領域の光色を有し、生体のメラトニン分泌と抑制に関与する光刺激を放射しつつ、照明光としての被照射物の演色を改善するので、学校照明、オフィス照明、病院照明やスタンド照明などの一般照明はもとより、光治療装置の照明光源としても有効である。
また、光色と演色の特性から、画像の白色点が一般のディスプレイモニタに近い特性とすることが可能で、看板照明、広告照明などに用いれば、白さが際立ち、被照射物はもとより、バックライトとして透過光色も鮮やかに見せることが可能である。
【0166】
さらには、晴天天空光に近い光色と色再現性を示すことから、擬似天空光としての使用や、高演色が要求される用途にも適する。加えて、白さが際立ち、色彩を鮮やかに演色する効果から店舗照明にも有用である。また、青発光領域に高い発光エネルギーを有する、超高色温度光源であるので、高い暗所視効率、及び薄明視効率をもつため、街路灯の用途にも有用である。
【符号の説明】
【0167】
106,208 LEDチップ
100,200 LED照明光源
300 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのLEDチップを備え、相関色温度が7100[K]を超え20000[K]未満、Duvが−2.5から5の範囲にある光色を有し、平均演色評価数Raが80以上であることを特徴とするLED照明光源。
【請求項2】
単位光束あたりのメラトニン抑制の作用関数効率が1.0を超えることを特徴とする請求項1記載のLED照明光源。
【請求項3】
特殊演色評価指数R9が50以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLED照明光源。
【請求項4】
前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、
Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが505[nm]〜550[nm]の範囲にある緑色蛍光体と、
Eu2+又はCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項5】
前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、
Eu2+またはCe3+で付活され、前記青色光で励起される、主たる発光ピークが530[nm]〜600[nm]の範囲にある黄色蛍光体と、
Eu2+またはCe3+で付活され、青色光で励起される、主たる発光ピークが600[nm]〜650[nm]の範囲にある赤色蛍光体とを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項6】
前記LEDチップとして、少なくとも、主たる発光ピークが440[nm]〜470[nm]の範囲にある青色光を出射する青色発光LEDチップを備え、さらに、
Eu2+またはCe3+で付活され、前記青色光で励起されるピーク波長が530[nm]〜600[nm]の範囲にある黄色蛍光体を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のLED照明光源。
【請求項7】
前記青色発光LEDチップの発光ピークは、ピークλが440[nm]〜470[nm]、半値幅が20[nm]〜30[nm]であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項8】
前記緑色蛍光体の発光ピークは、ピークλが505[nm]〜550[nm]、半値幅が60[nm]〜90[nm]であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項9】
前記赤色蛍光体の発光ピークは、ピークλが600[nm]〜650[nm]、半値幅が75[nm]〜95[nm]であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項10】
前記緑色蛍光体の発光ピークλ(G)と前記赤色蛍光体の発光ピークλ(R)との差、
λ(R)―λ(B)が110[nm]〜120[nm]の範囲にあることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項11】
相関色温度が10000[K]を超え17000[K]未満の範囲にある光色を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項12】
相関色温度が11000[K]を超え13000[K]未満の範囲にある光色を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のLED照明光源。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のLED照明光源を少なくとも1つ備えることを特徴とする照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2011−72388(P2011−72388A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224802(P2009−224802)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:社団法人照明学会全国大会委員会・実行委員会 刊行物名:平成21年度(第42回)照明学会全国大会 講演論文集発行年月日:平成21年8月26日
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】