説明

LED照明装置

【課題】
照明する物品に応じて、煩雑な操作を要さず簡易に色や光量を調節できる照明装置を提供すること。
【解決手段】
中心円領域と、集合レンズ部22を等間隔かつ離散的に配置した円環領域とを有し、LED11から放射された光は、集合レンズ部22から出射する総光量が、円環領域で集合レンズ部22を除く領域から出射する総光量の20倍以上であり、光学フィルタ3は、投影手段2の投影面と略同一形状の板状体であり、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域31が板状体の表面に離散的に形成され、かつ板状体の固定位置が投影手段に対して回転調整可能に構成され、フィルタ領域31の形状は、集合レンズ部22を覆うよう構成され、かつフィルタ領域31が隣接する集合レンズ部の中間に位置する場合には、フィルタ領域31が集合レンズ部22を覆う部分を最小化するよう構成されていることを特徴とするLED照明装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置に関し、特に、複数のLED(発光ダイオード)及び各LEDに対応した投影レンズを一体的に備えた投影手段と、該投影手段の投影面に配置される光学フィルタとを有するLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱電球や蛍光灯といった従来の照明装置に比べて消費電力が少なく、製品寿命も長いLED(発光ダイオード)が注目されており、LED照明装置として実用化が進められている。
【0003】
LED照明装置においても、照明装置に対する多様なニーズに応えることが必要であり、具体的には、スーパーマーケットやデパートなどの展示商品に合せて照明の色や光量、光束の拡がり(拡散状態)を調整することが求められる。しかも、商品毎に複数種類の照明装置を使い分けるのではなく、共通の照明装置で一部を交換・調整することで、容易に対応可能とすることが期待されている。
【0004】
LED照明装置としては、例えば特許文献1のようなものが挙げられる。特許文献1では、照明装置の光源に4個のLEDを使用し、そのLEDが発した光を制御するためのレンズを4個備えている。しかしながら、このようなLED照明装置においてその光の色や光量等を調整するには、用途に合わせてその都度フィルタを変更するか、LED自体を取り換える必要がある。
【0005】
そして、フィルタ等を使用することによりLEDの色を変えることのできる照明器具としては、例えば特許文献2に、基板に少なくとも一つのダイオードが取り付けられている発光ダイオード組立体と、該組立体の第一の位置及び第二の位置に対応する第一の蛍光体層及び第二の蛍光体層を備え、蛍光体層の位置を変えることによってLEDから出射される光の色を変える照明器具が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、LED素子が実装された基板と、各LEDに対応するレンズ部が一体に形成されたレンズ体と、該LEDと該レンズ部との間に配置されるフィルタとを用いて、光の色を変えることのできるLED照明器具が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3に記載の照明器具では、LEDから出射される光の色を、段階的又は離散的にしか変えることができず、微妙な色合いを表現することができない。また、光量や拡散状態まで調節することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−146841号公報
【特許文献2】特開2009−231227号公報
【特許文献3】特開2002−304903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述の問題を解消し、煩雑な操作を要さず、簡易に、しかも連続的に色、光量又は拡散状態を調整することのできるLED照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、複数のLEDと、該LED毎に対応する投影レンズを一体的に保持した投影手段と、該投影手段の投影面側に配置される光学フィルタとを有するLED照明装置において、該投影手段の投影面の形状が円形状の平坦面であり、該投影面は、中心円領域とそれを取り囲む円環領域とを有し、該円環領域には、2以上の所定数の投影レンズを近接配置した集合レンズ部を、等間隔かつ離散的に複数配置し、該円環領域の面積に対して該集合レンズ部の総面積が占める割合は、1/2〜1/4の範囲であり、該LEDから放射された光は、該集合レンズ部から出射する総光量が、該円環領域で該集合レンズ部を除く領域から出射する総光量の20倍以上であり、該光学フィルタは、該投影手段の投影面と略同一の形状の板状体であり、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が該板状体の表面に離散的に形成され、かつ該板状体の固定位置が該投影手段に対して回転調整可能に構成され、該フィルタ領域の形状は、該集合レンズ部を覆うよう構成され、かつ該フィルタ領域が隣接する集合レンズ部の中間に位置する場合には、該フィルタ領域が該集合レンズ部を覆う部分を最小化するよう構成されていることを特徴とするLED照明装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のLED照明装置において、該投影手段は、該中心円領域に複数の投影レンズを近接配置し、該光学フィルタの該中心円領域には、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が形成されていることを特徴とするLED照明装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のLED照明装置において、該板状体の他の表面には、該フィルタ領域に対応する領域以外の領域、又は全面に、色、光量又は拡散状態を調整する他のフィルタが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のLED照明装置において、該光学フィルタは、色を調整するフィルタであり、該板状体の表面に形成するフィルタと、該板状体の他の表面に形成する他のフィルタとは、透過波長特性が異なることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のLED照明装置において、該光学フィルタは、色又は光量を調整するフィルタであり、該投影手段の該投影面は、該円環領域で該集合レンズ部を除く領域は、拡散面とすることを特徴とするLED照明装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のLED照明装置において、該集合レンズ部に対応する前記所定数のLEDは、色温度が異なるLEDを組み合わせて用いることを特徴とするLED照明装置である。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段と該光学フィルタには、両者の位置関係を定めるための目盛と指示マークが、各々に形成されていることを特徴とするLED照明装置である。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段と該光学フィルタとの接触部分の少なくとも一部には、滑り止め加工が施されていることを特徴とするLED照明装置である。
【0018】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段は、該光学フィルタの外周に沿って突出した鏡筒部を有する一体型成形品であり、該光学フィルタは、該鏡筒内に嵌め込まれ、該鏡筒の内周部に係合するリング状弾性部材で該投影手段に固定されていることを特徴とするLED照明装置である。
【0019】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段及び該光学フィルタには、該LED側と装置外を連通する貫通孔が形成されていることを特徴とするLED照明装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明により、LED照明装置には、投影手段の投影面の形状が円形状の平坦面であり、該投影面は、中心円領域とそれを取り囲む円環領域とを有し、該円環領域には、2以上の所定数の投影レンズを近接配置した集合レンズ部を、等間隔かつ離散的に複数配置し、該円環領域の面積に対して該集合レンズ部の総面積が占める割合は、1/2〜1/4の範囲であり、該LEDから放射された光は、該集合レンズ部から出射する総光量が、該円環領域で該集合レンズ部を除く領域から出射する総光量の20倍以上であり、該光学フィルタは、該投影手段の投影面と略同一の形状の板状体であり、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が該板状体の表面に離散的に形成され、かつ該板状体の固定位置が該投影手段に対して回転調整可能に構成され、該フィルタ領域の形状は、該集合レンズ部を覆うよう構成され、かつ該フィルタ領域が隣接する集合レンズ部の中間に位置する場合には、該フィルタ領域が該集合レンズ部を覆う部分を最小化するよう構成されているため、煩雑な操作を要さず簡易に、しかも連続的に照明装置から放射される光の色、光量又は拡散状態を調整することができる。
【0021】
請求項2に係る発明により、LED照明装置該投影手段は、中心円領域に複数の投影レンズを近接配置し、光学フィルタの中心円領域には、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が形成されているため、フィルタで調整された照明光の光量を全体的に増加させ、光学フィルタの中心円領域にフィルタ領域を形成しない場合に比べて、LED照明装置から出射される光の演色性等を高くすることができる。
【0022】
請求項3に係る発明により、板状体の他の表面には、フィルタ領域に対応する領域以外の領域、又は全面に、色、光量又は拡散状態を調整する他のフィルタが形成されているため、板状体の両面を使用して異なる色、光量又は拡散状態を実現できるため、より多様な照明光の調整を可能にすることができる。また、異なるフィルタ隣接配置する際に、板状体の片面のみを使用する場合と比較し、フィルタの製造工程を簡略化することが可能となる。
【0023】
請求項4に係る発明により、光学フィルタは、色を調整するフィルタであり、板状体の表面に形成するフィルタと、該板状体の他の表面に形成する他のフィルタとは、透過波長特性が異なるため、照明光全体をLEDから放射された光とは異なる色調(色温度等)の範囲で変化させることが可能となる。
【0024】
請求項5に係る発明により、光学フィルタは、色又は光量を調整するフィルタであり、投影手段の投影面は、円環領域で集合レンズを除く領域は、拡散面とするため、LEDから放射された光が集合レンズ部以外を透過しても、当該拡散面で散乱されるため、集合レンズ部以外を透過して放射される光の光量を少なくしたり、集合レンズ部以外を透過する光を拡散し、照明状態が集合レンズ部を透過する光の影響を受け易くすることができる。
【0025】
請求項6に係る発明により、集合レンズ部に対応する所定数のLEDは、色温度が異なるLEDを組み合わせて用いるため、LEDから放射される全体の色温度が予め調整でき、さらに、フィルタの構成と相俟って、より多様な照明光を得ることが可能となる。
【0026】
請求項7に係る発明により、投影手段と光学フィルタには、両者の位置関係を定めるための目盛と指示マークが、各々に形成されているため、所望の色温度又は光量、あるいは拡散状態の光に、容易に調整することができる。
【0027】
請求項8に係る発明により、投影手段と光学フィルタとの接触部分の少なくとも一部には、滑り止め加工が施されているため、LED照明装置を、所定の色温度又は光量、あるいは拡散状態の光に設定した後に搬送等を行っても、光学フィルタと投影手段との相対的な位置がずれるのを防ぐことができる。
【0028】
請求項9に係る発明により、投影手段は、光学フィルタの外周に沿って突出した鏡筒部を有する一体型成形品であり、光学フィルタは、鏡筒内に嵌め込まれ、鏡筒の内周部に係合するリング状弾性部材で投影手段に固定されているため、光学フィルタと投影手段とを容易に一体化することが可能であり、光学フィルタを設けたLED照明装置を容易に提供することが可能となる。
【0029】
請求項10に係る発明により、投影手段及び光学フィルタには、LED側と装置外を連通する貫通孔が形成されているため、LEDを冷却した空気をLED照明装置外に容易に導出することが可能となり、LEDを効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係るLED照明装置の構成部品の分解図である。
【図2】本発明のLED照明装置に使用される投影手段の平面図である。
【図3】図2のA−A’の断面図である。
【図4】図2における投影手段を用いて、「中心円領域」と「円環領域」とを説明する図である。
【図5】本発明のLED照明装置に使用される光学フィルタの一例を説明する図である。
【図6】本発明のLED照明装置における、投影手段と光学フィルタとの配置関係を説明する図である。
【図7】光学フィルタを形成する板状体の両面にフィルタを形成する例を説明する図である。
【図8】光学フィルタに放射状のフィルタを形成する例を説明する図である。
【図9】光学フィルタに拡散状態を調整するフィルタを形成する例を説明する図である。
【図10】光学フィルタに、フィルタ領域に対応する領域以外の領域にフィルタを形成する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るLED照明装置について、好適例を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明のLED照明装置の一例を示す、構成部品の分解図である。図1のLED照明装置は、複数のLED(発光ダイオード)11を配置固定したLED設置基板1、投影レンズ21を有する投影手段2、光学フィルタ3、及び光学フィルタ3を投影手段2に固定するリング状弾性部材4から構成される。LED設置基板1にはLED11を駆動するための配線等が設けられるが、図面では省略されている。
【0032】
投影手段2は、図2に平面図を示しており、図3に図2における一点鎖線A−A’における断面図を示している。図3に示すように、LED(11)毎に対応する投影レンズ21が設けられている。投影レンズ21は、側面211の形状や投影面側の凹凸212など利用して、投影レンズの底面側の孔に収容したLED11から放射される光を、図3の上側方向に指向させるよう構成されている。
【0033】
本発明に使用される投影手段の特徴は、複数の投影レンズ21を一体的に保持するよう構成されていることである。特に、投影レンズ21の配置は、図2に一例を示すように、特徴的な配置をしている。図4に示すように、投影手段2の投影面の形状が円形状の平坦面であり、該投影面は、中心円領域C1とそれを取り囲む円環領域C2とに区分けされる。投影面の平坦さについては、後述するように光学フィルタを近接配置することが可能な程度に平坦であれば良く、若干の凹凸形状は十分に許容される。
【0034】
本発明において「中心円領域」の意味は、光学フィルタを後述すように回転させた際に、同心円領域で観察した時、色、光量又は拡散状態が変化しない部分(同心円領域)を意味し、図4のように必ずしも当該領域に投影レンズが配置されていることを必要としない。また、「円環領域」は、「中心円領域」を取り囲み、光学フィルタを回転させることで、フィルタと投影レンズ(投影レンズの集合した集合レンズ部と考えても良い)との位置関係で、当該環状領域で観察した時、色、光量又は拡散状態が変化する部分を意味する。
【0035】
LED照明装置では、大きな光量を確保するため、複数のLEDを使用する。このため、各LEDに対応する投影レンズ21も複数配置される。本発明では、円環領域においては、投影レンズ21を均一に分散させて配置するのではなく、図2及び4に示すように、2以上の所定数の投影レンズ21を近接配置した集合レンズ部22を、等間隔かつ離散的に複数配置している。一例として、図2及び図4では3つの投影レンズ21を一つの集合レンズ部22として、円環領域C2には、4つ配置している。
【0036】
投影手段2は、ガラス又は透明樹脂を射出成型することで、図2及び図3に示すような複雑な形状のものを、一体的に成形することが可能である。当然、複数の投影レンズを別々に成形し、レンズ保持手段に組み込んで一体化することも可能である。
【0037】
本発明に使用する投影手段2は、後述する光学フィルタと共働して色、光量又は拡散状態を調整することが可能となるように、円環領域C2においては、照明光が出射する部分と照明光が出射されない部分とを形成することが必要である。円環領域C2の全体の面積に対して、大半の照明光が出射する部分となる集合レンズ部22(より厳密には、投影レンズ21の投影面)の総面積が占める割合は、1/2〜1/4の範囲とすることが好ましい。
【0038】
図2又は図4に示すように、中心円領域C1と円環領域C2とに、同じ集合レンズ部22を近接して配置する場合は、集合レンズ部22の半径が投影面全体の半径の1/3となる。そして、円環領域C2に4つの集合レンズ部22を配置した場合には、集合レンズ部の面積の占める割合は円環領域の総面積の1/2に該当する。円環領域C2の総面積に対する、集合レンズ部の面積の占める割合が1/2を超えると、光学フィルタのフィルタ領域を、隣接する集合レンズ部の中間に位置させた場合に、フィルタ領域が集合レンズ部を覆う部分の面積が大きくなり過ぎてしまう。したがって、円環領域のLED及びフィルタ領域を有効活用するためには当該割合が1/2以下となることが必要である。また、当該割合が1/4より低い場合には、円環領域C2の面積を有効活用して集合レンズ部22が配置されず、大きな光量を得る際に不利となる。
【0039】
LED11から放射された光については、その大部分が集合レンズ部22(投影レンズ21)から出射する。本発明のLED照明装置では、円環領域C2において、集合レンズ部22のような照明光が出射する部分と、それ以外の部分とでは、光の放射量に格段の差があることが好ましい。このため、円環領域では、集合レンズ部全体から放出される総光量が、該集合レンズ部を除く領域から出射する総光量の20倍以上あることが好ましい。
【0040】
円環領域C2において集合レンズ部22が配置されていない領域は、図2及び図3に示すように、拡散面26とすることが好適である。拡散面26を設けることによって、集合レンズ部以外の部分を透過する余分な光が照明方向(集合レンズ部から出射する光と同じ方向)に出射することを抑制でき、光学フィルタによる色や光量を調整する際の妨げとなることを防止することが出来る。拡散面は、シボ加工やフロスト加工等によって形成できる。
【0041】
次に、本発明のLED照明装置に用いる光学フィルタ3は、図1又は図5に示すように、投影手段2の投影面と略同一の形状の板状体で構成されている。板状体の所定場所には、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域31(F1〜F2)が該板状体の表面に離散的に形成されている。フィルタ領域31には、着色フィルタ、遮光フィルタ(透過光量調整フィルタ)又は拡散フィルタを配置することが可能である。また、逆に、フィルタ領域31以外を着色、遮光(光量調整)又は拡散面とすることも可能である。
【0042】
本発明のLED照明装置に適用可能な各種のフィルタについて、図7乃至図10を用いて説明する。図7は、光学フィルタを構成する板状体32の両面に、フィルタ部分を形成したものである。図7(b)は、図7(a)の一点鎖線B−B’における断面図である。
【0043】
板状体32の表面(図7(b)の上側)には、離散的に形成された複数のフィルタ領域31が設けられている。板状体32の他の表面(図7(b)の下側)には、全面に一様なフィルタ部分34を形成している。フィルタ部分34(F3)は、光学フィルタ3を透過する照射光の全体の色調(色温度等)を決定し、フィルタ領域31(F2)は光学フィルタ3が回転することで、色調の変化に影響を与える。
【0044】
当然、フィルタ領域31とフィルタ部分34とに使用するフィルタの色は各々異なっている。一方のフィルタ部分34を全面にすることで、マスクパターンを形成・配置する工程を省略でき、製造工程の簡略化を図ることが可能である。なお、上述したフィルタは、色だけに限らず、光量や拡散状態を調整するものであっても良い。
【0045】
図8は、光学フィルタとして、放射状にパターン形成されたフィルタを用いた例を示す。調光に寄与しない中心円領域37と、その周囲にフィルタ領域35と非フィルタ領域36とを放射状に配置している。このような光学フィルタにより、フィルタ領域の配置パターンを単純化することができる。また、集合レンズ部の周辺から放射される光量が幾分多い場合には、図5や図7(a)のように集合レンズ部の形状に対応したフィルタ領域の形状よりも、色調の調整幅を広くすることが可能である。
【0046】
中心円領域37や非フィルタ領域36には、フィルタ部を設けないだけでなく、必要なフィルタを別途配置することも可能である。また、図8では、中心円領域37として、光学フィルタ3を回転しても、当該領域の色調等が変化しない部分を表示している。中心円領域37は、単色のフィルタを形成するだけでなく、円環領域の放射状パターンと同じ法やパターンで形成することも可能である。
【0047】
図9は、フィルタ領域で拡散状態を調整するため、微細な拡散レンズを多数配置したものを示す。図9(b)は図9(a)の一点鎖線C−C'の断面図であり、拡散面38には半球状の微小な拡散レンズが配置されている。拡散状態を調整する方法としては、微小な拡散レンズを配置する方法以外に、断面が鋸波形となるプリズム状態とすることも可能である。本発明における「拡散状態」は、光を拡げるだけでなく、特定方向に指向させるような場合も包含している。
【0048】
図10は、板状体32の表面に形成したフィルタ領域31に対して、板状体32の裏面に、当該フィルタ領域以外の領域に特定のフィルタ部(38,39)を形成したものである。図10(b)は、図10(a)の一点鎖線D−D’の断面図を示す。また、符号Oは、光学フィルタの中心点を示す。光学フィルタに、異なる色や、異なる光量、又は異なる拡散状態を備えたフィルタ領域を複数形成する場合には、板状体32の表面側と裏面側に分けて、別々のフィルタを形成することも可能である。
【0049】
光学フィルタ3は、投影手段2に対して回転調整可能に取り付けられている。一例として、図1に示すように、リング状弾性部材4を使用する場合には、投影手段2の鏡筒25にリング状弾性部材4が嵌め込まれる係合溝23を設け、鏡筒25内に光学フィルタ3を収容し、リング状弾性部材4を係合溝23に嵌め込むことで、投影手段2と光学フィルタとを一体化させることが可能となる。
【0050】
投影手段2と光学フィルタ3とは、リング状弾性部材4を外すことで、容易に分離ができ、投影手段2と光学フィルタ3との相対的位置関係を変化(回転調整)することで、照明光の色、光量又は拡散状態を容易に調整できる。ただし、一旦設定した状態は容易に変化しないようにするため、両者の接触部分の少なくとも一部には、滑り止め加工を施すことが好ましい。例えば、図2又は図3のように、投影手段2の投影面の一部に、シリコンゴムなどの弾性材料を用いた突起5を設け、当該突起に光学フィルタ3を押し当てるよう固定することで、両者の位置ズレを抑制することが可能となる。当然、滑り止め加工は光学フィルタ側に形成することも、又は投影手段と光学フィルタの両方に形成することも可能である。さらに、投影手段の投影面と光学フィルタとの密着性を高め、投影面の所定の位置から出た照明光が光学フィルタの所定位置を通過するようするため、投影面の表面は平坦であることが好ましい。
【0051】
また、投影手段2と光学フィルタ3との位置関係を簡単に識別できるようにするため、投影手段2と光学フィルタ3の各々に、目盛61(図5参照)と指示マーク6(図2参照)を設けることも可能である。当然目盛61には、数値等の文字を付加することも可能である。
【0052】
ところで、LED11は、駆動することで発熱する。このため、LED11を安定的に冷却することが必要である。高出力のLEDを用いる場合には、冷却ファンを使用する場合もあり、このような場合には、LEDを収容する投影手段2の一部にLED冷却風用の通気口24(図2参照)を設けている。そして、光学フィルタ3においても、LED冷却風用の通気口を確保するため、光学フィルタ3を構成する板状体の一部33を切り欠く処理などを施すことで、貫通孔を形成している。
【0053】
図6は、本発明のLED照明装置における光学フィルタの使用例を示した図である。図6(a)は光学フィルタ3のフィルタ部31と、集合レンズ部22の位置を完全に重ね合わせた場合の図である。この場合、円環領域のLEDから放射された光は100%、フィルタ部を透過して出射されることになる。一方、図6(b)は、光学フィルタの位置を図6(a)の位置から反時計方向に45度回転させた使用例を示しており、この場合は、円環領域のLEDから放射された光の大部分は、全てフィルタ部31が形成されていない領域を透過する。
【0054】
図6に示したLED照明装置においては、円環領域のフィルタ領域31を、隣接する集合レンズ部22の中間に位置させた場合でも、フィルタ領域の一部は円環領域の集合レンズ部を覆う構造になっているが、集合レンズ部の面積や、配置する集合レンズ部の個数を変更することにより、フィルタ領域が円環領域の集合レンズ部を覆う部分の面積の最小値を増減させることが可能である。例えば図6のLED照明装置において、より小さい投影レンズを用いる等集合レンズ部一つ一つの面積をより小さいものにしたり、集合レンズ部の面積は変えずとも集合レンズ部を配置する個数を3つ乃至は2つに減じたりすることで、フィルタ領域を、隣接する集合レンズ部の中間に位置させた場合に、フィルタ領域が円環領域の集合レンズ部を覆わない構造にすることも可能である。
【0055】
当然、これとは逆に、集合レンズ部の面積を大きくしたり、集合レンズ部を配置する個数を増やしたりすることで、フィルタ領域が円環領域の集合レンズ部を覆う面積の最小値を増加させることも可能である。ただし、いずれの場合にも、円環領域のLED及びフィルタ領域を有効活用したLED照明装置を提供するために、円環領域の面積に対して集合レンズ部の総面積が占める割合は、1/2〜1/4の範囲に設定することが好適である。
【0056】
そして、光学フィルタ3は、投影手段2に対して回転調整可能に配置されているため、光学フィルタ3を回転させて、図6(a)と図6(b)の間の任意の位置に配置することができる。光学フィルタが回転固定された位置に応じて、フィルタ領域が集合レンズ部を覆う部分の面積が定まり、従って円環領域のLEDから放射された光が集合レンズ部を透過して出射される量も定まるから、光学フィルタ3を投影手段2に対して回転させるだけで、所望の色、光量又は拡散状態の照明光を、簡易に得ることができる。
【0057】
なお、図6(a)、図6(b)いずれの場合においても、光学フィルタ3の配置角度に関わらず中心円領域においては、フィルタ領域が集合レンズ部を完全に覆っているため、中心円領域のLEDから放射された光は、100%集合レンズ部及び中心円領域のフィルタ領域を透過し、出射される。従って、円環領域のLEDから放射された光をフィルタによって調整したような場合でも、照明光の光量を全体的に増加させ、光学フィルタの中心円領域にフィルタ領域を形成しない場合に比べて、LED照明装置から出射される光の演色性を高くすることができる。
【0058】
ここで、単色のLEDのみ用いた実施例として、3700KのLEDのみを用いた場合の色温度の調整方法について説明する。本実施例においては、光学フィルタのフィルタ領域として青色フィルタ又はオレンジ色のフィルタを用いて、光学フィルタの非フィルタ部として、LEDからの光の色及び光量を変化させずそのまま透過させる透明フィルタを用いた場合を説明する。まず、光学フィルタに青色フィルタを用いた場合、フィルタ領域がレンズ集合部を全て覆う、図6(a)の状態ではLEDから放射される光は全て青色フィルタ領域を透過し、この出射光の色温度は5500K程度になる。また、フィルタ領域が集合レンズ部を覆う部分が最小となる、図6(b)の場合、中心円領域などLEDからの光は20%程度がフィルタ領域を通過することになり、4000K程度の出射光が得られる。そして、光学フィルタ3を回転させることによって、出射光の色温度を、4000Kと5500Kの間で連続的に変化させることができる。
【0059】
そして、光学フィルタのフィルタ領域にオレンジ色のフィルタを用いた場合は、図6(a)の場合2700K程度、図6(b)の場合3500K程度の出射光を得られるから、出射光の色温度を2700Kと3500Kの間で連続的に変化させることができる。
【0060】
また、単色のLEDのみではなく、複数の、色温度が異なるLEDを組み合わせ、一つの集合レンズ部を形成するような場合には、LEDから放射される光の全体の色温度を予め調整できる。さらに、上述した光学フィルタの回転機能及びフィルタリング機能を利用して、フィルタ領域によって所定の色温度のLEDからの光のみを透過させたり、遮光したりすることで、所望の色の出射光を容易に得ることができる。
【0061】
なお、複数の色温度のLEDを組み合わせる場合には、種々の色温度のLEDが使用可能であるが、一例としては、3000Kと4000KのLEDを組み合わせて使用し、オレンジ色のフィルタで約2700K〜3500Kの間で連続的に色温度を変化させたり、また青色のフィルタで約4000K〜5500Kの間で連続的に色温度を変化させることも可能である。
【0062】
以上、本発明の一例を図面を用いて説明したが、本発明の実施例は当然これらに限定されるものではなく、LEDの配置数や選択色温度、集合レンズのサイズや配置数等は、その使用の目的に応じて適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、照明装置で商品を照らす際にその目的に応じて、煩雑な操作を要さず、簡易に、しかも連続的に色、光量又は拡散状態を調整することのできるLED照明装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 LED設置基板
2 投影手段
3 光学フィルタ
4 リング状弾性部材
5 突起
6 指示マーク
11 LED
21 投影レンズ
22 集合レンズ部
23 係合溝
24 貫通孔
25 鏡筒
26 拡散面
31 フィルタ部
32 板状体
33 切欠き
61 目盛
211 側面
212 凹凸
C1 中心円領域
C2 円環領域
F1、F2 フィルタ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDと、該LED毎に対応する投影レンズを一体的に保持した投影手段と、該投影手段の投影面側に配置される光学フィルタとを有するLED照明装置において、
該投影手段の投影面の形状が円形状の平坦面であり、該投影面は、中心円領域とそれを取り囲む円環領域とを有し、
該円環領域には、2以上の所定数の投影レンズを近接配置した集合レンズ部を、等間隔かつ離散的に複数配置し、
該円環領域の面積に対して該集合レンズ部の総面積が占める割合は、1/2〜1/4の範囲であり、
該LEDから放射された光は、該集合レンズ部から出射する総光量が、該円環領域で該集合レンズ部を除く領域から出射する総光量の20倍以上であり、
該光学フィルタは、該投影手段の投影面と略同一の形状の板状体であり、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が該板状体の表面に離散的に形成され、かつ該板状体の固定位置が該投影手段に対して回転調整可能に構成され、
該フィルタ領域の形状は、該集合レンズ部を覆うよう構成され、かつ該フィルタ領域が隣接する集合レンズ部の中間に位置する場合には、該フィルタ領域が該集合レンズ部を覆う部分を最小化するよう構成されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED照明装置において、該投影手段は、該中心円領域に複数の投影レンズを近接配置し、該光学フィルタの該中心円領域には、色、光量又は拡散状態を調整するフィルタ領域が形成されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のLED照明装置において、該板状体の他の表面には、該フィルタ領域に対応する領域以外の領域、又は全面に、色、光量又は拡散状態を調整する他のフィルタが形成されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項4】
請求項3に記載のLED照明装置において、該光学フィルタは、色を調整するフィルタであり、該板状体の表面に形成するフィルタと、該板状体の他の表面に形成する他のフィルタとは、透過波長特性が異なることを特徴とするLED照明装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のLED照明装置において、該光学フィルタは、色又は光量を調整するフィルタであり、該投影手段の該投影面は、該円環領域で該集合レンズ部を除く領域は、拡散面とすることを特徴とするLED照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のLED照明装置において、該集合レンズ部に対応する前記所定数のLEDは、色温度が異なるLEDを組み合わせて用いることを特徴とするLED照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段と該光学フィルタには、両者の位置関係を定めるための目盛と指示マークが、各々に形成されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段と該光学フィルタとの接触部分の少なくとも一部には、滑り止め加工が施されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のLED照明装置において、該投影手段は、該光学フィルタの外周に沿って突出した鏡筒部を有する一体型成形品であり、該光学フィルタは、該鏡筒内に嵌め込まれ、該鏡筒の内周部に係合するリング状弾性部材で該投影手段に固定されていることを特徴とするLED照明装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のLED照明装置において、
該投影手段及び該光学フィルタには、該LED側と装置外を連通する貫通孔が形成されていることを特徴とするLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−234794(P2012−234794A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6591(P2012−6591)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(597094020)株式会社岡村電産 (2)
【Fターム(参考)】