説明

LED発光装置

【課題】LED発光装置はビルの側壁等の高所に設置されることがあるが、取り付け時又はメンテナンス時に固定用のネジが落下してしまい、通行人に怪我をさせる恐れがある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るLED発光装置100は、複数のLED1と、LEDを前面側に有するケース3と、ケース3を外部に固定するためのネジ切り部を有するネジ5と、を備える。ケース3はネジ5を前面側から挿入し背面側に貫通させるための挿入部4を有し、挿入部4はその内側にネジ切り部の外径よりも小さな第1内径を有する弾性部材7を有し、弾性部材7は挿入部4に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源としてLEDを用いたLED発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背面側からの作業スペースがない等の理由で、観測面となる前面側からネジを用いて外部に固定可能なLED発光装置が知られている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−161360号公報
【特許文献2】特開平06−188460号公報
【特許文献3】実開平05−47985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前面側からネジを用いてLED発光装置を固定する際には種々の問題が生じる。LED発光装置はビルの側壁等の高所に設置されることがあるが、取り付け時又はメンテナンス時に固定用のネジが落下してしまい、通行人に怪我をさせる恐れがある。また、雨天時にはネジを挿入するための貫通孔を介して本来防水すべき背面側に雨水が浸入する可能性もある。通常、背面側にはLED発光装置を制御する制御機器や電源等が収納されており、そこに雨水が浸入してしまうと、漏電等によりLED発光装置が誤作動する可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るLED発光装置は、複数のLEDと、LEDを前面側に有するケースと、ケースを外部に固定するためのネジ切り部を有するネジと、を備える。ケースはネジを前面側から挿入し背面側に貫通させるための挿入部を有し、挿入部はその内側にネジ切り部の外径よりも小さな第1内径を有する弾性部材を有し、弾性部材は挿入部に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】一実施形態に係るLED発光装置の分解図である。
【図2】一実施形態に係るLED発光装置の正面図である。
【図3】一実施形態に係るLED発光装置の側面図である。
【図4】一実施形態に係るLED発光装置におけるネジ近傍の構造を説明するための断面図である。
【図5】一実施形態に係るLED発光装置に用いるネジ及び弾性部材を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るLED発光装置を実施するための形態について説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の位置や大きさ等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0008】
本発明の一実施形態に係るLED発光装置100の分解図を図1に示す。図2はLED発光装置100を正面(前面)側から見た図であり、図3は図2のLED発光装置100を紙面の右側から見た側面図である。図4は、ネジ5の近傍構造を説明するための図2の一点鎖線A−Aにおける部分断面図である。また、図5は、ネジ5と弾性部材7との関係を説明するための模式図である。
【0009】
LED発光装置100は、複数のLED1(発光ダイオード)と、LED1を前面側に有するケース3と、ケース3を外部に固定するためのネジ切り部を有するネジ5と、を備える(図1乃至図4参照)。ケース3はネジ5を前面(正面)側から挿入し背面側に貫通させるための挿入部4を有し(図1及び図4参照)、挿入部4はその内側にネジ切り部の外径OD1よりも小さな第1内径ID1を有する弾性部材7を有する(図4及び図5参照)。さらに、弾性部材7は挿入部4に固定されている(図4参照)。
【0010】
これにより、LED発光装置100をビルの側壁等に取り付ける際やそのメンテナンス時に、意図せずにネジ5が挿入部4から外れるのを防ぐことができるので、作業場下の通行人に怪我させる恐れもない。つまり、弾性部材7を挿入部4に固定し且つ弾性部材7にネジ切り部OD1の外径よりも小さな内径ID1を設けることで、作業者がネジ5を外す際にネジ切り部が内径ID1の部分で一旦引っかかるようにすることができる。これにより、作業者は、取り付け時等にネジ5を挿入部4から完全に引き抜かずに作業を続けることができるので、作業効率を向上させることができる。また、ネジ5を挿入部4から完全に外す場合であっても、作業者が不注意によりネジ5を落下させる可能性を低下させることができる。以下、LED発光装置100を構成する主な部材について説明する。
【0011】
(LED1)
LED発光装置100は、光源として複数のLED1を備える。本実施形態では、LED1として表面実装タイプのものを用いたが、基板貫通タイプのものを用いることもできる。
【0012】
(基板2)
基板2は、LED1を実装するための所謂回路基板である。基板1の母材には、ガラスエポキシ等を採用することができるが、放熱性を考慮してアルミニウム等の熱伝導率の高い材料を含めることもできる。本実施形態では、基板2の背面側にLED1を駆動するための種々の電子部品(図示せず)が配置されている。
【0013】
基板2の表面側には防水部材(図示せず)を設けることができる。例えば、LED1が載置された基板2上の表面側に、LED1の隙間を埋めるように流動性のあるシリコーン樹脂を流し入れて硬化させることで防水部材とすることができる。コントラストを上げるため、防水部材は黒色などの暗色であることが好ましい。
【0014】
(ケース3及び挿入部4)
ケース3は、表面側でLED1が配置された基板1を支持するためのものである。ケース3は、ネジ5を前面側から挿入し外部と接続し固定するために、前面側と背面側とが貫通した挿入部4を有する。挿入部4は、最終的にはLED発光装置100を外部に固定するためにネジ5で締めつけられるので、ケース3と異なる部材から構成することが好ましい。具体的には、ケース3をポリカーボネート等の樹脂で形成し、挿入部4を黄銅等の金属で形成することができる。
【0015】
ケース3と挿入部4とを異なる材料で形成する場合、ケース3と挿入部4とは一体成型(インサート成型)されていることが好ましい。これにより、ケース3と挿入部4との間をより確実に防水することができる。つまり、一体成型によりケース3と挿入部4とを密着して構成することができるので、防水機能をより向上させることができる。
【0016】
(ネジ5)
ネジ5は、表面側から挿入部4に挿入し、ケース3をビル側壁等に固定するためのものである。典型的には、ビル側壁等に固定用板を設け、固定用板にネジ5を締めつけることにより、LED発光装置100を外部に固定することができる。図5に示すように、ネジ5は、表面側から、頭部、非ネジ切り部及びネジ切り部を有することができる。ネジ5の非ネジ切り部の外径OD2は、ネジ切り部の外径OD1よりも小さいことが好ましい。
【0017】
図5に示すように、ネジ5は、非ネジ切り部に挿入されたワッシャ6を備えることができる。ワッシャ6を設けることにより、ネジ5を締めつける際に、弾性部材7がネジ5の頭部との摩擦により変形することを抑制することができる。
【0018】
(弾性部材7)
弾性部材7は、例えば、シリコーン等からなるゴムからなり、少なくともその一部が挿入部4の孔の内側に固定されている。弾性部材7を挿入部4に固定する手段としては、例えば、接着剤による固定、一体成型による固定がある。また、挿入部4はネジ5を締めつけるためのものである一方、弾性部材7はネジ5の脱落を防止するためのものであるため、挿入部4と弾性部材7とは異なる材料で構成することが好ましい。
【0019】
図5に示すように、弾性部材7は、第1内径ID1よりも大きい第2内径ID2を前面側に有することができる。これにより、前面側からネジ5を挿入しやすくなるので作業効率を向上させることができる。つまり、弾性部材7はネジ5を挿入できるように実質的に円筒形状であり、前面側に第2内径ID2を備え背面側に第1内径ID1を備えるように構成することができる。特に、ネジ5の挿入方向において、第1内径ID1が占める領域を第2内径ID2が占める領域よりも小さくすることが好ましい。これにより、弾性部材7の内側にネジ5を通す際に、ネジ切り部と弾性部材7の第1内径ID1との摩擦によりネジ5が動きにくくなることを抑制できるので、作業効率を向上させることができる。
【0020】
図5に示すように、弾性部材7の第2内径ID2は非ネジ切り部の外径OD2よりも大きくすることができる。これにより、弾性部材7の内側にネジ5を通す際に、非ネジ切り部と弾性部材7の第2内径ID2との摩擦によりネジ5が動きにくくなることを抑制できるので、作業効率を向上させることができる。
【0021】
弾性部材7の一部は、挿入部4の表面側から突出するように構成することができる。この突出部分をネジ5の頭部で直接又は間接的に圧縮することで、ネジ5と弾性部材7とを密着させることができる。これにより、ネジ5と弾性部材7との間を防水することができる。
【0022】
弾性部材7の第1内径ID1は、ネジ5の動きを阻害しない程度に、非ネジ切り部における第2外径OD2よりも小さくすることができる。これにより弾性部材7の背面側でも防水機能を持たせることができる。
【0023】
挿入部4と弾性部材7とは一体成型されていることが好ましい。これにより、挿入部4と弾性部材7との間をより確実に防水することができる。
【0024】
ネジ5を締めつけていない状態で挿入部4の表面側から突出した弾性部材7は、内側から外側に向かって背面側に傾斜した傾斜部を有し、ワッシャ6はその内周が傾斜部に当接されるように構成することができる。これにより、ワッシャ6と弾性部材7との位置関係を安定させることができるので、より確実な防水機能が期待できる。
【0025】
(遮光部材8)
基板2の表面側には遮光部材8を設けることができる。遮光部8は太陽光等の外来光がLED1及びその近傍に照射することを抑制するものであり、これによりコントラストを向上させることができる。LED発光装置100では、ケース3の背面側からネジ(図示せず)を用いて遮光部材8を固定している。これにより、当該ネジが表面側に露出しないようにすることができるので、見た目に優れたLED発光装置とすることができる。
【0026】
(パッキン9)
ケース3の背面側にはパッキン9を設けることができる。ケース背面の外周部分にパッキン9を設けることで、ケース3と外部との間での防水を行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
100…LED発光装置
1…LED
2…基板
3…ケース
4…挿入部
5…ネジ
6…ワッシャ
7…弾性部材
8…遮光部
9…パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDと、前記LEDを前面側に有するケースと、前記ケースを外部に固定するためのネジ切り部を有するネジと、を備えるLED発光装置において、
前記ケースは、前記ネジを前面側から挿入し背面側に貫通させるための挿入部を有し、
前記挿入部は、その内側に、前記ネジ切り部の外径よりも小さな第1内径を有する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記挿入部に固定されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記第1内径よりも大きい第2内径を前面側に有することを特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記ネジは、頭部、非ネジ切り部及び前記ネジ切り部を前面側から順に有し、
前記弾性部材の第2内径は、前記非ネジ切り部の外径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記弾性部材の一部は、前記挿入部の表面側から突出し、
前記頭部が前記挿入部から突出した弾性部材を直接又は間接的に圧縮することで、前記ネジと前記弾性部材とが密着し得ることを特徴とする請求項3に記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記挿入部は、前記ケースと異なる部材からなると共に、前記ケースと一体成型されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のLED発光装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記挿入部と異なる部材からなると共に、前記挿入部と一体成型されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のLED発光装置。
【請求項7】
前記ネジは、前記非ネジ切り部に挿入されたワッシャを有し、
前記挿入部の表面側から突出した弾性部材は、内側から外側に向かって背面側に傾斜した傾斜部に有し、
前記ワッシャは、その内周が前記傾斜部に当接され得ることを特徴とする請求項3又は6に記載のLED発光装置。
【請求項8】
前記ケースは樹脂からなり、前記挿入部は金属からなることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のLED発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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