説明

LH−RHアナログロイプロイドの経鼻投与

本発明は、ロイプロイド(leuprolide)とキトサンである生体接着性材料とを含む経鼻投与組成物を提供する。子宮内膜症、前立腺癌、性機能不全、月経前症候群、子宮平滑筋腫等のロイプロイド変調状態を患う哺乳動物にロイプロイドを投入する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵襲的でないロイプロイド(leuprolide)送達方法と、そのような送達方法のために調合される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容をここに参考文献として合体させる、2003年5月1日出願の米国仮特許出願第60/467,095号の優先権を主張するものである。
【0003】
発明の背景
黄体刺激ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)は、哺乳動物の下垂体前葉のある種の性腺刺激ホルモン細胞によって作り出される。FSHとLHは、生殖腺に作用し、ステロイドホルモン(ヒト女性のプロゲストロンエストラジオール、男性のテストステロン等)の産生を刺激し、オス及びメス哺乳動物の生殖体成熟を刺激する。正常な生殖発達のために必要であることに加えて、研究者によって、異常又は一貫性のないレベルのFSHおよび/又はLHは、生殖器官および/又は生殖サイクルに存在するホルモンレベルの不規則性に拘わる数多くの状態と疾患との関連性が指摘されている。
【0004】
LH及びFSHの産生は、ヒトの男性及び女性において、時に、黄体刺激ホルモン放出ホルモン(LH−RH)と呼ばれる、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によって調節される。LH−RHは、LHとFHSとの放出をもたらす唯一の神経ペプチドであると考えられている。自然発生LH−RHは、視床下部において、神経および/又は化学刺激に応答して生成され、下垂体門脈循環中に放出される。LH−RFは、下垂体、卵巣、乳房、精巣及び前立腺の細胞上に発現される性腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体(“GnRHR”)に結合し、それによって、ホスファチジルイノシトール−Caセカンドメッセンジャシステムを始動させることによってLH及びFHS産生を調節するものであると考えられている。
【0005】
種々の疾患の治療におけるLH−RH又はLH−RHアナログの治療用途が提案され、そして、いくつかのケースにおいて既に試みられている。LH−RHの合成アナログのなかに、ロイプロイド(leuprolide)又は酢酸ロイプロイド(leuprolide acetate)がある。ロイプロイドによる連続治療によって、患者においてFSHとLHの初期刺激が作り出され、その後、去勢又は閉経後の個人において測定されるものに類似のレベルへの生殖腺ホルモンの低下を伴いながら、これらのホルモンが抑制されるということが、臨床研究によって示されている。男性においては、ロイプロイド投与の正味の作用は、2〜4週間内でのテストステロンレベルの去勢レベルへの低下である。女性においては、卵胞ホルモンと男性ホルモンの両方の合成が抑制される。ロイプロイドによって促進されるこの低減又は抑制は、子宮内膜症、前立腺ガンを含む種々の疾患の治療に有効であることが示されている。
【0006】
しかしながら、患者に対して、ロイプロイドを、有効、許容可能かつ生物有効的に投与することには問題がある。ロイプロイドは、胃腸管の環境においては破壊されてしまうことから、経口投与することはできない。従って、ロイプロイドは、従来、静脈内、皮下又は筋肉内注射等の侵襲的な方法や、ロイプロイドを長時間かけて放出する装置の皮下挿入によって投与されてきた。しかし、侵襲的な方法による投与は、不便であり(多くの場合、毎日の注射および/又は頻繁な診療所への訪問を必要とする)、それに必要とされる機器のために高価であるかもしれず、更に、患者に対して、痛み、苦痛および/又はその注射又は挿入の部位における炎症や感染をもたらす可能性がある。これらの欠点によって、患者のコンプライアンスが減少し、医療コストが増大する可能性がある。従って、当該技術において、侵襲的でないロイプロイド送達方法と、そのような送達方法のために調合される組成物とが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該技術において、侵襲的でないロイプロイド送達方法と、そのような送達方法のために調合される組成物とが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロイプロイド(leuprolide)と、キトサンである生体接着性材料とを含む経鼻投与組成物を含む。この組成物は、更に、経鼻投与賦形剤等の投与賦形剤を含むことができる。本発明は、又、実質的に、キトサンと、ロイプロイドと、防腐剤と、経鼻投与賦形剤とから成る経鼻投与組成物も含む。
【0009】
本発明は、ロイプロイド変調状態を患う哺乳動物対象体にロイプロイドを投与する方法を含む。前記方法は、前記哺乳動物の鼻粘膜を本発明の前記組成物に接触させる工程を含む。
【0010】
更に、メス哺乳動物におけるエストロゲンの正味の産生と、オス哺乳動物におけるテストステロンの正味の産生を抑制する方法も提供される。これらの方法は、少なくとも14日間などの所定期間に渡って、前記哺乳動物の鼻粘膜を本発明の前記組成物に繰返し接触させる工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図面の簡単な説明
以上の要約及び本発明の下記の詳細説明は、貼付の図面を参照しながら読むことによってより良く理解されるであろう。本発明を図示する目的で、これらの図面には現時点において好適な実施例が図示されている。但し、本発明は、これらの図示されている厳密な構造及び装置構成に限定されるものではない。
【0012】
図面において、
図1は、対象体の血漿中のロイプロイド濃度(ナノグラム/ミリリットル)を経時的に図示している。静脈内、皮下、及び経鼻投与の濃度レベルが図示されている。経鼻投与は、本発明の組成物と方法とを使用して達成された。
【0013】
図2は、各投与ルートにおける最大血漿濃度(ナノグラム/ミリリットル)を図示している。
【0014】
図3は、各投与ルートにおける時間対の血漿濃度(ナノグラム/ミリリットル)の曲線下面積(AUC)を図示している。
【0015】
図4は、皮下投与及び鼻腔内投与されたロイプロイドの絶対生物学的利用能を、静脈内投与されたロイプロイドのパーセント値として、比較している。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物の粘膜表面、具体的には鼻粘膜、を介して哺乳動物にロイプロイドを投与するための組成物と方法を提供する。本発明の方法による投与後、前記ロイプロイド組成物は患者によって良好に許容され、患者のシステムによって良好に吸収されて、皮下投与後に患者に観察されるものに類似の血漿ロイプロイドレベルが得られる。更に、このロイプロイド送達方法は非侵襲的であるので、胃腸管での薬剤の分解の問題と、患者のコンプライアンスの減少の問題が回避される。
【0017】
本発明は、ロイプロイド送達組成物を含み、これが、本発明の前記方法の実施に使用される。この組成物は、少なくとも(i)ロイプロイドと(ii)キトサンとを含む。経鼻投与賦形剤等の適当な投与賦形剤を含ませることができる。
【0018】
本発明に使用される「ロイプロイド」は、酢酸ロイプロイドと、当該技術において知られている、又は開発される、その全ての誘導体及び塩を含む。更に、それらの一次配列の一部として、次の配列を有する9残基以上のポリペプチドも含まれる。
Xaa-His-Trp-Ser-Tyr-Xaa-Leu-Arg-Xaa [配列識別番号1]
ここで、位置1の“Xaa”が5−オキソ−プロリル残基である場合、位置6の“Xaa”は、D−ロイシル残基であり、位置9の“Xaa”はプロリル−N−エチルアミド残基である。酢酸ロイプロイド(化学名:5−オキソ−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−トリプトフィル−L−セリル−L−チロシル−D−ロイシル−L−ロイシル−L−アルギニル−N−エチル−L−プロリンアミド酢酸塩)が好適である。これは、米国、イリノイ州、レイク・フォレストのTAP Pharmaceutical Products, Inc.よりLUPRON(登録商標)又はLUPRON DEPOT(登録商標)の商品名で入手可能である(例えば、そのそれぞれの内示内容をここに参考文献として合体させる米国特許第4,897,256号及び第5,446,025号を参照)。
【0019】
前記組成物は、更にキトサンを含む。適当なキトサンは、非限定的に、すべてのポリグルコサミン、そしてN−アセチル基の一部が加水分解によって除去された(即ち、脱アセチル化キトサン)種々の分子量のグルコサミン物質のオリゴマーを含む、キチン又はポリ−N−アセチル−D−グルコサミンを含む全ての誘導体を含む。
【0020】
キトサン、キトサン誘導体、又はキトサンの塩(硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、又は酢酸塩)が含まれる。ここで、「キトサン誘導体」とは、キトサンの、アシルおよび/又はアルキル基と、好ましくはNH基ではなく、アシル基及び/又はアルキル基とOH基との結合によって形成される、エステル、エーテル、その他の誘導体を意味する。本発明に使用されるキトサン誘導体の具体例には、非限定的に、キトサンのO−アルキルエステルとキトサンのO−アシルエステルが含まれる。改変キトサン、特に、ポリエチレングリコールに共役結合されたもの、も本発明に使用されるキトサンとして含まれる。
【0021】
いかなるキトサンも使用可能ではあるが、選択されたキトサンが、少なくとも4,000ダルトン、好ましくは、約25,000ダルトンから約2,000,000ダルトン、最も好ましくは、約50,000〜約300,000ダルトンの分子量を有することが好適である。より小さな種々の分子量のキトサンを、キトサナーゼ(chitosanase)を使用したキトサンの酵素的分解又は、亜硝酸の添加、によって調製することができる。これらの手順は、共に周知であって、最近の刊行物(リ(Li)他、Plant Physiol. Biochem.、1995年、第33巻、p.599〜603; アラン(Allan)およびペイロン(Peyron)、Carbohydrate Research、第277巻、p.257〜272; デマール(Demard)およびカルティエ(Cartier)、Int. J. Biol. Macromol.、1989年、第11巻、p.297〜302)に記載されており、これらのそれぞれの内容をここに参考文献として合体させる。
【0022】
好ましくは、本発明の前記組成物及び方法に使用されるべく選択される前記キトサンは、水溶性である。それは、約40%以上、好ましくは約50%から約98%、より好ましくは、約70%から約90%の脱アセチル化によってキチンから作ることができる。本発明の方法と組成物とに使用可能な適当なキトサン含有製剤は、例えば、そのそれぞれの内容をここに参考文献として合体させる、米国特許第6,207,197号、第6,342,251号、第6,391,318号、第6,432,440号、第6,465,626号及び第6,534,065号に記載のものを含む。
【0023】
好適であるのは、ノルウェー、ドランメン(Drammen)のNovaMatrix, FMC BioPolymerから入手可能なPROTASAN(登録商標)の商品名で販売されているキトサンである。更に、その他の低及び中粘度のキトサンが、米国、メリーランド州のSeigagaku America Inc.、インド、ケララのMeronBiopolymers、米国バージニア州のVanson Ltd.、英国、アビンドン(Abingdon)のAMS Biotechnology Ltd.を含む、種々の発売元から得ることができる。本発明の方法の組成物に使用される適当なキトサン誘導体は、その開示をここに参考文献として合体させる、Roberts、Chitin Chemistry、MacMillan Press Ltd.(ロンドン)、1992年、に開示されているものを含む。
【0024】
前記組成物を調製する時、この組成物中に存在するロイプロイドの量は、該組成物がその治療に使用される病気、及び疾患、選択されるロイプロイドおよび/又は組成物全体の化学的性質、患者の病気、性別やその他の特徴、意図される投与計画、等を含む、当業者に周知の種々の要因に応じて異なったものとなるであろう。しかし、一般には、ロイプロイドの量は、組成物中に、約5mg/ml〜約50mg/ml、約10mg/ml〜約40mg/ml、又は約20mg/ml〜約35mg/mlの濃度で含まれることが好ましい。同様に、溶液中に存在するキトサンの量も変化可能である。キトサンに対するロイプロイドの比率(重量)が、約1部のキトサンに対して約10部のロイプロイド、約1部のキトサンに対して約5部のロイプロイド、又は約1部のキトサンに対して約2部のロイプロイド、である十分な量が好適である。
【0025】
前記ロイプロイド含有組成物は、この組成物を、哺乳動物の任意の粘膜表面(又は、非角質化上皮表面)、好ましくは、胃腸管の粘膜を除く、と接触させることによって投与される。そのような表面としては、鼻粘膜、膣粘膜、直腸粘膜、目、肺粘膜、が含まれる。最も好適であるのは鼻粘膜である。
【0026】
前記組成物に賦形剤を含ませることができる。前記組成物は、好ましくは、鼻経由(即ち、それを鼻粘膜に接触させることによって)で投与されるので、従って、それは経鼻投与賦形剤を含むことができる。この経鼻投与賦形剤は、そのような目的のために薬剤的な許容可能なものであればどのようなものであっても良く、又、粉末、液体又は半液体調製物、例えば、リニメント剤、ローション剤、水中油又は油中水エマルジョン、例えば、クリーム、軟膏又はペースト、及び、溶液又は懸濁液を含む任意の形態とすることができる。好適な経鼻投与賦形剤は、水、生理食塩水、及びその他の水溶液である。
【0027】
前記経鼻投与賦形剤が粉末形態である場合、前記組成物全体(ロイプロイドを含む)が、約0.2〜500マイクロメータの平均粒子を有することが望ましい。粉末状経鼻投与賦形剤は、例えば、糖、アミノ酸、セルロースポリマー、シクロデキストリン、及び固形ポリエチレングリコールを含むことができる。具体例は、ラクトース、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、グリシン、ロイシン、イソロイシン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0028】
そのような組成物は、鼻吸(snuff)、即ち、鼻の近くに保持された前記粉末の容器からの鼻の導管を通した急速な吸入、によって、経鼻投与することができる。或いは、前記粉末を微粒化して、鼻腔に投与することもできる。これは、例えば、患者の吸入(鼻吸)からのエネルギを利用して粉末をエアロゾル化し、鼻腔に送り込むようなタイプ、又は、その装置自身が、圧縮空気等を介した、エアロゾル化エネルギを提供するタイプの投与装置を使用することによって達成することができる。前者の装置の一例は、ドイツ、ラドルフツェル(Radolfzell)のPfeiffer GmbHによって製造されており、後者の一例は、フランス、Marly-le-RoiのValois SAから入手可能な“monopowder”である。
【0029】
当業者によって認識されるように、前記製剤の正確な特性と成分の量の組み合わせは、選択されるキトサンおよび/又はロイプロイドの化学的特性、その組成物が投与される患者の生理機能、投与量、その治療法が提供されている病気又は疾患、を含む多数の要因に応じて異なったものとなるであろう。しかし、前記製剤は、防腐剤(塩化ベンザルコニウム又はメチルヒドロキシ安息香酸)、非イオン系又はイオン系表面活性剤、抗生物質、抗炎剤、塩、ビタミン、着香剤 (サッカリンナトリウム等)、揮発油、緩衝剤、および/又は表面活性剤などの、その他の薬剤的に許容可能な添加物を含むことができる。好適な製剤は、ソルビタールを含まない。最終組成物は、必要であれば、公知のように、適当なpHに緩衝化することができる。
【0030】
いかなる添加物又は添加物の組み合わせも含ませることが可能であるが、前記組成物は、唯一の生体接着剤、キトサン、のみを含み、好ましくは、その他の生体接着剤(ゼラチン、寒天等)は含まないことが好ましい。キトサン分子上に存在する正の電荷とムチン(粘膜に存在する)の負に荷電されているシアル酸残基との相互作用によって、キトサンが高度に適切なものとなり、追加のその他の生体接着剤はこれらの相互作用の障害となりうるものであるという仮説が立てられている。同様の理由により、前記組成物から、追加の乳化剤を除外することが好適である。
【0031】
前記組成物は、所望の粘膜表面への塗布を達成するために、塗布器、装置、分配器を備えることができる。例えば、前記組成物が、経鼻投与用のものとされる場合、前記塗布器は、先端がスポンジ又はブラシ式の細棒(wand)、又は、微粒化又はエアロゾル化された噴霧を提供する、噴霧器又はミスト化装置又はその他の装置とすることができる。例えば、スプレー装置の使用が好ましい。噴霧装置は、単一(「単位」)投与又は複数投与式システム、例えば、ボトルと、ポンプと、アクチュエータとを備えるシステム、とすることができ、これらは、ドイツ、ラドルフツェル(Radolfzell)のPfeiffer GmbH、フランス、Marley-le-RoiのValois SA、米国、カリフォルニア州City of IndustryのSante GobainCalmar、そして米国ニュージャージー州、フランクリンレイクスのBecton, Dickinson and Companyを含む種々の発売元から入手可能である。米国特許第5,655,517号(ここにその内容を参考文献として合体させる)記載されているもののような静電噴霧装置も、本発明の組成物の鼻腔内投与用に適当である。前記組成物をその他の粘膜経由で投与するならば、前記塗布器は、例えば、座薬、点眼薬、タンポン、耳用注射器、又は定量噴霧式吸入器(metered dose inhaler)、等とすることができる。
【0032】
本発明の前記組成物は、それによって、効果的に治療、阻害、又は寛解されるべき、当該技術において知られている、又は、今後理解されるであろう、全ての病気、状態及び疾患(「ロイプロイド変調状態」)の治療のための、ロイプロイドの、経粘膜、より具体的には、経鼻投与、を達成するために使用することができる。そのような病気、状態及び疾患は、前立腺ガン、関節硬化症、性交不能、子宮内膜症、子宮類線維腫、思春期早発症、子宮平滑筋腫、性腺機能低下症、月経前症候群、乳がん、卵巣及び子宮ガンを含む。更に、テストステロンまたはエストロゲン産生の増加又は減少、又は生殖能力の制御、等の生殖療法(補助生殖)又はホルモンサイクルの調節も、本発明の前記ロイプロイド組成物及び方法を使用して達成することができる。
【0033】
本発明の方法と組成物は、家畜(ウシ、ブタ、羊)、馬、猫、犬、マウス、ラット、等のすべての哺乳動物器官に適用することができる。ヒトへの適用が好ましい。
【0034】
例えば、本発明の方法と組成物は、一定期間に渡って患者の鼻粘膜を一回又は複数回接触させることによって、前記ロイプロイド変調状態のうちの単数又は複数を患う哺乳動物(好ましくは、ヒト)にロイプロイドを投与する方法に使用することができる。前記期間は、1〜14日間、14日間以上、15〜28日間、又は、一ヶ月以上、とすることができる。前記方法は、オス哺乳動物のテストステロンの正味の産生の抑制を含む。そのような方法は、上にリストしたような期間に渡って、哺乳動物の鼻粘膜を、本発明の組成物と繰返し接触させる工程を含む。或いは、前記方法は、前記組成物を、所定期間に渡って、反復投与で投与することによって、メス哺乳動物の子宮内膜症を治療する、又は、メス哺乳動物のエストロゲンの正味の産生を抑制する方法とすることができる。
【実施例】
【0035】
例1
ロイプロイドの鼻腔内投与組成物を、下記の成分を組み合わせることによって調製した(表1):
【0036】
【表1】

【0037】
例2
ロイプロイドの鼻腔内投与組成物を、下記の成分を組み合わせることによって調製した(表2):
【0038】
【表2】

【0039】
例3
女性に対するロイプロイドの鼻腔内投与(IN)
下記の例において、本発明者等は、本発明の方法と組成物を使用したロイプロイドの鼻腔内(“IN”)投与を、従来技術の投与法(皮下(“SQ”)及び静脈内(“TV”))と比較しようとした。
【0040】
この実験の構成は、5通り、クロスオーバ、無作為化、部分的二重盲検、志願者治験であった。複数の女性に、1mgのロイプロイドをIVとSQで、そして、新規製剤として、INで、1mg(一回の噴霧)、2mg(一回の噴霧)、そして6mg(三回の噴霧)を、無作為化で投与した。そのそれぞれの日が少なくとも2日間の休薬期間よって分離された、5つの別々の日のそれぞれに単回投与(one dosing regimen)を行った。ロイプロイド測定用の血液を、留置カテーテルを介して、投与前に、そして、投与後24時間までに、18回にわたって採血した。血漿を分離し、ロイプロイド濃度を、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。この試験を通じて、対象体を、有害事象に関してモニタし、所与の鼻の検査を行った。
【0041】
15名の健常女性(中位年齢27歳)が安全評価に含まれた。重篤な有害事象は報告されなかったが、数人の対象体は、治験中のある時点、通常は、IN投与後、に鼻漏と味覚異常が認められた。これらの事象は軽微で一過性のものであった。前記治験を完了した12名の対象体において薬物動態を評価し、選択された値±SDが表3に図示されている。
【0042】
【表3】

【0043】
これらの結果が図1〜4のグラフに図示されている。図1は、時間プロットされた前記対象体のそれぞれのロイプロイドの血漿濃度(ng/ml)を図示している。図2は、各投与法によって達成された最大血漿濃度を示す棒グラフである。図3は、各投与法の経時的、濃度の曲線下面積(AUC)を図示している。図4は、前記投与法による、ロイプロイドの絶対生物学的利用能を、静脈内投与されたロイプロイドの生物学的利用能のパーセント値として、図示している。このように、本発明の鼻腔内投与されたロイプロイド組成物は良好に忍容化され、良好に吸収され、従来のSQ投与後に見られるものに近い血漿ロイプロイドレベルをもたらしたことが理解できる。
【0044】
当業者は、その広義の発明概念から逸脱することなく、ここに記載した実施例に対して改変を行うことが可能であることを理解するであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施例に限定されるものではなく、貼付のクレームに定義されている本発明の要旨及び範囲内における改変をカバーすることが意図されていると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】対象体の血漿中のロイプロイド濃度(ナノグラム/ミリリットル)を経時的に図示しており、静脈内、皮下、及び経鼻投与の濃度レベルが図示され、経鼻投与は本発明の組成物と方法とを使用して達成されたことを図示する図。
【図2】各投与ルートにおける最大血漿濃度(ナノグラム/ミリリットル)を図示する図。
【図3】各投与ルートにおける時間対の血漿濃度(ナノグラム/ミリリットル)時間変化曲線の曲線下面積(AUC)を図示する図。
【図4】皮下投与及び鼻腔内投与されたロイプロイドの絶対生物学的利用能を、静脈内投与されたロイプロイドのパーセント値として、比較している図。
【配列表】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻投与組成物であって、
(a)ロイプロイド(leuprolide)、及び
(b)キトサンである生体接着性材料、を含む組成物。
【請求項2】
経鼻投与賦形剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キトサンが、少なくとも4,000ダルトンの分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記キトサンが、グルタミン酸キトサンである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ロイプロイドが、酢酸ロイプロイドである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1を含む9以上のアミノ酸残基のポリペプチドである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合で含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合で含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
実質的に、キトサン、ロイプロイド、防腐剤、及び経鼻投与賦形剤とから成る経鼻投与組成物。
【請求項12】
ロイプロイド変調状態を患う哺乳動物にロイプロイドを投与する方法であって、前記哺乳動物の鼻粘膜を組成物に接触させる工程を含み、前記組成物がキトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドとを含む方法。
【請求項13】
前記組成物が、少なくとも4,000ダルトンの分子量のキトサンを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物における前記キトサンが、グルタミン酸キトサンである請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物における前記ロイプロイドが、酢酸ロイプロイドである請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物中に含まれる前記ロイプロイドが、配列識別番号1を含む9以上のアミノ酸残基のポリペプチドである請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物中に含まれる前記ロイプロイドが、配列識別番号1である請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、前記組成物中にキトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合で含まれる請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、前記組成物中にキトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合で含まれる請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、前記組成物中にキトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
前記哺乳動物が、ヒトである請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記ロイプロイド変調状態が、前立腺癌、子宮内膜症、性腺機能低下症、月経前症候群、子宮平滑筋腫、及び思春期早発症から成るグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項23】
メス哺乳動物におけるエストロゲンの正味の産生を抑制する方法であって、前記哺乳動物の鼻粘膜を所定期間に亘って組成物と繰返し接触させる工程を含み、前記組成物がキトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドとを含む方法。
【請求項24】
前記鼻粘膜が、少なくとも14日間である期間に亘って前記組成物と接触される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
オス哺乳動物におけるテストステロンの正味の産生を抑制する方法であって、前記哺乳動物の鼻粘膜を所定期間に亘って組成物と繰返し接触させる工程を含み、前記組成物がキトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドとを含む方法。
【請求項26】
前記鼻粘膜が、少なくとも14日間である期間に亘って前記組成物と接触される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
メス哺乳動物における子宮内膜症を治療する方法であって、前記哺乳動物の鼻粘膜を組成物に接触させる工程を含み、前記組成物がキトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドとを含む方法。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも4,000ダルトンの分子量を有するキトサンを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、グルタミン酸キトサンを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、酢酸ロイプロイドを含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合で含まれる請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合で含まれる請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物が、ヒトである請求項27に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻投与組成物であって、
(a)ロイプロイド(leuprolide)、及び
(b)キトサンである生体接着性材料、を含む組成物。
【請求項2】
経鼻投与賦形剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キトサンが、少なくとも4,000ダルトンの分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記キトサンが、グルタミン酸キトサンである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ロイプロイドが、酢酸ロイプロイドである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1を含む9以上のアミノ酸残基のポリペプチドである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、キトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
実質的に、キトサン、ロイプロイド、防腐剤、及び経鼻投与賦形剤とから成る経鼻投与組成物。
【請求項10】
ロイプロイド変調状態を患う哺乳動物に対する経鼻投与用薬物の製造における、キトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドの使用方法
【請求項11】
前記薬物が、少なくとも4,000ダルトンの分子量のキトサンを含む請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
前記キトサンが、グルタミン酸キトサンである請求項10に記載の使用方法。
【請求項13】
前記ロイプロイドが、酢酸ロイプロイドである請求項10に記載の使用方法。
【請求項14】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1を含む9以上のアミノ酸残基のポリペプチドである請求項10に記載の使用方法。
【請求項15】
前記ロイプロイドが、配列識別番号1で表される請求項10に記載の使用方法。
【請求項16】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、前記薬物中においてキトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項10に記載の使用方法
【請求項17】
前記哺乳動物が、ヒトである請求項10に記載の使用方法。
【請求項18】
前記ロイプロイド変調状態が、前立腺癌、子宮内膜症、性腺機能低下症、月経前症候群、子宮平滑筋腫、及び思春期早発症から成るグループから選択される請求項10に記載の使用方法。
【請求項19】
メス哺乳動物エストロゲンの正味の産生抑制用の薬物の製造における、キトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドの使用方法であって、前記薬物が前記哺乳動物の鼻粘膜を所定期間に亘って繰返し接触させるのに適したものである使用方法。
【請求項20】
前記鼻粘膜が、少なくとも14日間である期間に亘って前記薬物と接触される請求項19に記載の使用方法。
【請求項21】
オス哺乳動物テストステロンの正味の産生抑制用の薬物の製造における、キトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドの使用方法であって、前記薬物が前記哺乳動物の鼻粘膜を所定期間に亘って繰返し接触させるのに適したものである使用方法。
【請求項22】
前記鼻粘膜が、少なくとも14日間である期間に亘って前記薬物と接触される請求項21に記載の使用方法。
【請求項23】
メス哺乳動物子宮内膜症を治療するための鼻粘膜への投与用薬物の製造における、キトサンである生体接着性材料と治療的有効量のロイプロイドの使用方法
【請求項24】
前記薬物が、少なくとも4,000ダルトンの分子量を有するキトサンを含む請求項23に記載の使用方法。
【請求項25】
前記薬物が、グルタミン酸キトサンを含む請求項23に記載の使用方法。
【請求項26】
前記薬物が、酢酸ロイプロイドを含む請求項23に記載の使用方法。
【請求項27】
前記キトサンと前記ロイプロイドとが、前記薬物中においてキトサン約1重量部に対してロイプロイド約10重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約5重量部の割合、又はキトサン約1重量部に対してロイプロイド約2重量部の割合で含まれる請求項23に記載の使用方法。
【請求項28】
前記哺乳動物が、ヒトである請求項23に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525354(P2006−525354A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514192(P2006−514192)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013498
【国際公開番号】WO2004/098513
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505405881)アルキメデス・ディヴェロップメント・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ARCHIMEDES DEVELOPMENT LIMITED
【Fターム(参考)】