説明

Li交換ゼオライトを含有する吸着剤媒体

吸着剤媒体組成物は、完成媒体リチウム交換ゼオライトX(LiX)を有し、この完成媒体LiXは、このLiX中の合計陽イオン当量を基準に、96%〜83%の範囲の完成Li含有量を有する。この吸着剤媒体組成物は、水、完成媒体LiXのLi含有量よりも大きいプレ媒体産物Li含有量を有するLiX前駆体、およびもう1つの媒体成分物質、例えば繊維など、を含むスラリーから得る。当該媒体を製造するために使用する水は、2.2μジーメンス/cm〜150μジーメンス/cmの範囲の比伝導度を有する。完成媒体LiXは、完成媒体LiX中の交換可能な陽イオンの合計当量を基準に、0.05%〜3%の範囲の一価陽イオン(Na、K、Rb、Csおよびその組み合わせ)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は吸着システムに関する。特に、吸着システムにおいて使用するための吸着剤媒体(adsorbent media)である。
【背景技術】
【0002】
吸着システム、例えばHVACシステム、液体および気体の精製、溶媒およびガソリン蒸気の回収ならびに脱臭、収着冷却プロセス、特定のバルクガス分離等、では、時には吸着媒体を使用して、気相不純物、または気体混合物中のより強く吸着される主要な成分を除去する。吸着プロセスおよび収着冷却プロセスでは、典型的には、金属容器内に配置されたいくらかの吸着剤媒体が使用されており、これは自立していることもあれば、金属スクリーンまたは表面上に含有されていることもある。この吸着剤は、吸着に必要な条件範囲全体にわたり、吸着性成分を含有する流体または気体ストリームに接触している。
【0003】
循環吸着プロセスは、気体混合物の成分を分離するのに頻繁に用いられている。典型的には、循環吸着プロセスは、気体混合物の少なくとも1種類の気体状成分を、当該混合物の少なくとも1種類の他の成分を吸着するよりも強力に吸着する微粒子状吸着剤物質を詰めた1つ以上の吸着剤容器中で行われる。この吸着プロセスには一連の工程を繰り返し行うことが含まれ、その一続きごとの具体的工程は、行われている特定の循環吸着プロセスに依存する。
【0004】
いかなる循環吸着プロセスでも、吸着剤床が有する、所定の気体状成分を吸着する容量は有限である。したがって、吸着剤は、その吸着容量を回復させるための定期的な再生を要する。吸着剤の再生に伴う手順は、プロセスに応じて異なる。VSAプロセスでは、吸着剤は、その吸着容器中に真空を作り出し、それにより、吸着された成分をその吸着剤から脱着させることによって、少なくとも部分的に再生される。一方、PSAプロセスでは、吸着剤は、吸着工程に使用する圧力よりも低い圧力にて再生される。VSAプロセスにおいてもPSAプロセスにおいても、吸着工程は、その脱着または再生圧力よりも高い圧力にて行われる。
【0005】
従来の吸着媒体のいくつかは、例えば紙、金属箔、高分子フィルム等の、薄いシートまたは層と、例えばシリカゲル、活性アルミナ、活性炭及び分子ふるい(例えばゼオライトなど)の吸着剤物質とで構成される。これらの吸着剤シートまたは層は、従来のビーズ、押出物、または顆粒に比べ、比較的薄い。媒体がより薄ければ、気相または液相供給から吸着部位までの経路長はより短くなるので、これらの吸着剤を通っての物質移動は、ビーズまたは顆粒においてよりも速い。加えて、マクロ細孔径分布は、特に湿式堆積吸着剤含有紙(wet laid adsorbent-containing paper)では、典型的な吸着剤ビーズにおけるよりもおよそ1桁大きいことがある。この、より大きいマクロ細孔径によっても、当該媒体の物質移動は、ビーズまたは顆粒に比して増加する。
【0006】
リチウム含有分子ふるい、例えばLi含有ゼオライトX(LiX)など、は、空気分離プロセスにおいてしばしば用いられ、酸素(O)よりも窒素(N)を選択的に吸着する。リチウム(Li)は、他の、より大きい一価陽イオン(例えばNa、K、Cs等)または二価陽イオン(例えばMg、Ca、Ba等)と比べて、より高い電荷密度を有する。リチウムの、より高い電荷密度により、窒素分子中のN原子間の共有三重結合から生じる窒素の四重極モーメントとのその相互作用が増強される。したがって、例えば、LiXを用いた空気分離プロセスにおいては、NがLiXによって優先的に吸着され、また、その吸着工程の際に、豊富となったO生成物ストリームが産生される。
【0007】
一般的には、分子ふるい(すなわちゼオライト)は、プロトンもしくは例えばNaなどの一価陽イオン、例えばCaなどの二価陽イオン、または例えばLaなどの三価陽イオン、のいずれかを含有して、例えばSiO/Al骨格などのその骨格に対し、電荷のバランスを与える。したがって、例えばNなどの、より大きい極性または分極性の化合物に対するゼオライトの選択性を改善するためには、ゼオライトに、Li塩(例えばLiCl、LiNO、LiOH等)水溶液でのイオン交換(IEX)処理を行う。
【0008】
しかしながら、後に続く、このLi交換ゼオライトの処理において使用される水が例えばNa、CaおよびMgなどの陽イオンを含有する場合―これは多くの上水(water supplies)において典型的に観察される―には、これらの陽イオンは当該ゼオライト中のLiを優先的に置換するであろう。ひいては、これが、ゼオライトのLi含有量の低下の原因となり、その結果、その交換されたゼオライトの、例えば、Oに対するNについての収着選択性および容量を低下させる。例えば、LiXを用いて、例えばLiX含有紙などの、水性スラリー混合物からの吸着剤媒体を製造する場合に、この特定の問題に直面する。
【0009】
したがって、ゼオライトIEXの当業者は、例えばNa、CaおよびMgなどの競合する陽イオンにより生じるこの不都合なIEXの影響を回避するためには、脱イオン(deionized;「DI」)水または蒸留水を用いることが重要であると信じてきた(例えばUS6461412を参照のこと)。アメリカ化学会(American Chemical Society;「ACS」)規格(Reagent Chemicals, 8th Ed. 1993)―試薬(reagent chemicals)に対する標準についての主導機関(leading authority)―によると、DI水および蒸留水についての要件は厳密である。
【0010】
具体的には、次の分析的測定に一致するACS規格に基づくDI水または蒸留水の最大許容限界は次の通りである:
【0011】
【表1】

【0012】
しかしながら、ゼオライト含有吸着剤媒体、例えば、リチウムゼオライト含有紙などの紙媒体、の、より大きい規模での製造に典型的に必要な量での脱イオン水または蒸留水の製造は、負担が大きく、また、コストがかかる可能性がある。したがって、DI水または蒸留水のいずれかを唯一の水源として使用するという厳しい要件を回避するようなリチウム含有ゼオライト紙を湿式堆積(wet laying)するための改良されたプロセスが必要とされており、また、それに応じ、それにより製造される、改良されたゼオライト含有吸着剤媒体製品が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一局面によれば、第一媒体成分物質;完成Li含有量を有する完成媒体リチウム交換ゼオライトX(LiX)を含む少なくとも30重量パーセントの吸着剤組成物を有する第二媒体成分物質、を含む、吸着剤媒体組成物が提供され、ここで、
前記完成媒体LiXが、プレ媒体産物(pre-media production)Li含有量を有するLiX前駆体に由来し、
(a)前記完成媒体LiXのLi含有量が、前記LiX前駆体のLi含有量に比して減少しており、
(b)前記完成媒体LiXのLi含有量が、前記LiX中の合計陽イオン当量を基準に、96%〜83%の範囲であり、および
(c)前記吸着剤媒体組成物は、水、前記プレ媒体産物LiXおよび前記第一媒体成分物質を含むスラリー混合物から得られ、ここで、
(i)前記水が、2.2μジーメンス/cm〜150μジーメンス/cmの範囲の比伝導度(specific conductance)を有し、および
(ii)前記完成媒体LiXが、前記完成媒体LiX中の交換可能な陽イオンの合計当量を基準に、0.05%〜3%の範囲の一価陽イオン含有量を有し、ここで、前記一価陽イオンが、Na、K、Rb、Cs、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の通り、これまで、当業者は、プロセス水の中に存在する一価および二価の陽イオンが、Li含有ゼオライト中のLiを置換し、それにより、例えば、そのゼオライトの、Oに対するNについての収着選択性および容量が低下するであろうと信じてきた。以下の例にてより十分に記載しているように、驚いたことに、また、予想外に、出願人らは、特定の濃度の一価陽イオンも二価陽イオンも、吸着剤媒体、例えばLiX含有紙媒体など、の製造に使用するプロセス水の中に、その吸着剤媒体の収着選択性および容量を実質的に(materially)低下させることなく存在し得るということを見出した。プロセスに存在していてもよい一価陽イオンは、Na、K、Rb、Cs、およびその組み合わせからなる群より選択される1族(以前はIA族)のアルカリ金属である。プロセスに存在していてもよい二価陽イオンは、Mg、Ca、Sr、Baおよびその組み合わせからなる群より選択される2族(以前はIIA族)のアルカリ土類金属である。
【0015】
したがって、下記にてより十分に記載しているように、上述の陽イオンのうちの1種類以上を有し、かつ、2.2μジーメンス・cm−1(μS/cm)から150μS/cmと同程度の高さまでの範囲の比伝導度(specific conductance;「SC」)を有する非DI水(「NDISC水」)を、例えば、Li含有ゼオライト紙を湿式堆積するためのプロセスにおいて使用することができる。さらには、NDISC水を用いるプロセスにより作製した吸着剤媒体は、その吸着剤媒体の収着選択性および容量を、許容可能な性能限界内に維持しながら、0.01%から3%までの特定の一価陽イオンと、0.01%から15%までの、イオン交換当量に換算しての、特定の二価陽イオンとを有していてもよい。
【0016】
紙媒体の概要
吸着剤媒体の一例は、紙媒体(例えば、紙のシートまたは層)であるか、または、より具体的には、Li−X含有紙媒体である。紙媒体の作製後、紙媒体は、種々のオブジェクトの配列になるよう形成されてもよい。1つの例は、間に挟むスペーサー(inter-leaving spacers)を含有するらせん状にねじれた素子(spirally wound element)として、紙媒体の隣接層間の気体流を促進することである(例えばUS6,176,897を参照のこと)。2つ目の例は、回転の軸に平行な開放型通路(open-ended passages)により、それを通る気体流が可能となるならば、平らなおよび波形の吸着剤紙による交互に現れる層(alternating layers)を有する、多層媒体ホイールまたはモノリス(monolith)である(例えばUS5,685,897およびUS6,231,644を参照のこと)。3つ目の例は、紙媒体の、不規則または規則的なハニカム型構造への形成であり、これにより、このハニカム構造を形成するチャンバーを介した気体流が可能となる(例えばUS4,012,206を参照のこと)。当該吸着剤媒体は、当業者にとって自明の他の形態および形状になるよう形成してもよい。
【0017】
同様に、吸着剤媒体は、当業者に自明の様々な方法を用いて作製してもよい。製紙技術はゼオライト含有紙の作製のために頻繁に用いられる。したがって、以下、限定されない、説明目的のためにのみ、紙媒体、例えばLiX紙媒体など、を作製するためのプロセスを記載する。
【0018】
一般的には、紙媒体は、天然または合成繊維材料から調製される。この繊維材料を、吸着剤と混合し、湿式堆積させて、連続シートまたはハンドシートにすることができる。この湿式堆積は、水中に、繊維と、吸着剤と、典型的には1種類以上の結合剤成分とのスラリーを形成することにより達成される。そして、本発明のプロセスの場合には、NDISC水を使う。次いで、このスラリーを、例えば、ハンドシート型(handsheet mold)、実験室用抄紙機(laboratory paper machine)へと、または連続長網式抄紙機(continuous wire paper machine)のヘッドボックスへと、フォードリニアまたはツインワイア抄紙機上に吐出または堆積するために、移してもよい。当該吸着剤には、意図される用途に応じて、ゼオライトが、単独で、または、ことによるとシリカゲルもしくはアルミナとともに、含まれる。当該紙媒体を強化するために、他の添加剤も、そうしたものに、材料として含まれていてもよい。
【0019】
より詳細には、スラリーを、まず、混合容器―典型的には軟鋼、ステンレス鋼タンクまたはポリマーで裏打ちされた(polymer-lined)容器―内で、NDISC水、繊維および少なくとも1種類の前駆体ゼオライト粉末(例えばLiX粉末)、ならびに所望により結合剤物質を用いて形成する。NDISC水の使用により、完成紙媒体中のLiXのLi含有量の減少は、前駆体LiX中のLi含有量―紙媒体製造プロセスが開始される前―に比して、0.01%〜15%の範囲内に保たれることとなる。また、上述のように、いくらかのLi陽イオンは特定のパーセンテージの一価および二価の陽イオンにより、それぞれ、置換され得るが、NDISC水は、完成紙媒体のゼオライト(例えばLiX)中に十分なLi含有量を保持するので、(例えば、Oに対するNについての)その収着選択性および容量は許容可能な状態のままである。
【0020】
スラリー作製全般
通常、スラリーは、合成または天然のいずれかであり得る繊維を、NDISC水中に分散させることによって作製する。次いで、脱陽イオン化(decationization)、または、ゼオライト中のLi陽イオンのプロトンによる望まない置換を防止するために、少量のLiOHをこのスラリーへと添加して、1×10−2Mの濃度を得る。次いで、少なくとも1種類のゼオライトを含む吸着剤物質を、この繊維と希薄な水酸化リチウムとのスラリーに、粉末の形態で、または水とともに混合することによってのいずれかで、添加する。また、後に続くステージにおいて、所望により選択される結合剤、歩留向上剤(retention aid)および/または細孔充填剤(pore filling agent)をこのスラリー混合物に添加してもよい。
【0021】
繊維
吸着剤媒体、特に紙媒体、を作製するのに使用する繊維材料に関しては、任意の種類の繊維状物質を用いることができ、この繊維状物質をフィブリル化させて、その後、標準的な製紙プロセスにより吸着剤紙へと形成してもよい。本明細書で用いられるフィブリル化した繊維とは、末端が裂けて小繊維を形成している繊維シャフト、すなわち、その繊維シャフトよりもずっと自由な、細繊維またはフィラメント、を意味する。フィブリル化した繊維の例としては、天然繊維、例えば木材パルプまたはセルロース系繊維など、および合成繊維、ならびにその混合物が挙げられる。
【0022】
フィブリル化した、およびフィブリル化していない合成有機繊維の例としては、高密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリスチレン、脂肪族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、レーヨン(酢酸セルロース)、アクリル、アクリロニトリルホモポリマー、ハロゲン化モノマーによるコポリマー、スチレンコポリマー、およびポリマーの混合物(低密度ポリエチレンを含有するポリプロピレン、およびポリスチレンを含有する高密度ポリエチレン)、の群から選択される高分子繊維が挙げられる。
【0023】
紙媒体の作製においてしばしば用いられる、フィブリル化した、およびフィブリル化していない合成繊維としては、アラミドおよびアクリル繊維が挙げられる。ある種のアラミド繊維は、少なくとも85%の、2つの芳香環に直接的に結合したアミド(―CO―NH―)結合を有する、長鎖合成芳香族ポリアミドから形成される。イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I. du Pont de Nemours & Company)(デュポン社)から入手可能なアラミド繊維の1つの例は、ケブラー(登録商標)303である。フィブリル化したケブラー(登録商標)の形成においては、末端が裂けて小繊維となったケブラー(登録商標)繊維シャフトに高い剪断力を適用して樹木様構造を形成する。紙媒体の製造において、小繊維がからみ合うことにより、紙強度が高まり、また、吸着剤粒子を捕捉または確保するための面積の増加がもたらされる。ケブラー(登録商標)は、酸化性雰囲気中で450℃まで安定である。他の高温アラミド繊維、例えばノーメックス(NOMEX、登録商標)、トワロン(TWARON、登録商標)およびテイジンコーネックス(TEIJINCONEX、登録商標)など、は、デュポン社、AKZO Fibers社、およびテイジントワロン社から入手可能である。
【0024】
また、アクリル繊維、例えばSterling Fibers社からのCFF(登録商標)フィブリル化アクリル繊維など、を、単独で、またはアラミド繊維と組み合わせて、用いてもよい。
【0025】
フィブリル化していない無機繊維、例えばガラスまたは金属繊維および岩綿など、を、フィブリル化した有機繊維と組み合わせて用いてもよい。フィブリル化および非フィブリル化繊維の量は、100%までのフィブリル化繊維の使用を含む特定のニーズに合うよう調節することができる。
【0026】
フィブリル化した形態で繊維を入手することができない場合には、繊維は、繊維のスラリーを、ディスクリファイナーまたは他の高い剪断力の叩解機(refiner)へと移して、チョップドファイバーまたはシャフトの末端を裂いて、それ上に小繊維を生じさせることによりフィブリル化してもよい。加えて、メーカーから入手可能なフィブリル化シャフトをさらに叩解して、そのシャフト上のフィブリル化の度合いを増加させてもよく、その結果、からみ合いの度合いがより高くなり、それ故に、紙媒体がより強くなる。
【0027】
一般的には、当該シャフトまたはチョップドファイバーは、フィブリル化前には、1〜30mmの範囲、および典型的には3〜15mmの範囲、の長さで準備される。また、一般的には、当該シャフトまたはチョップドファイバーは、フィブリル化前には、1〜50ミクロン、および典型的には5〜25ミクロンの範囲の直径を有する。フィブリル化された形態においては、当該チョップドファイバーは、そこから伸びた、一般的には0.5〜28mmの範囲の長さおよび0.5〜40ミクロンの範囲の直径、ならびに、より典型的には1〜10mmの範囲の長さおよび1〜10ミクロンの範囲の直径を有する、小繊維を有する。
【0028】
ゼオライト
分子ふるいとしては、ゼオライト分子ふるいが挙げられる。ゼオライトは、微多孔性であり、かつ、頂点共有(corner-sharing)AlOおよびSiO四面体から形成される三次元の酸化物骨格を有する、結晶性アルミノケイ酸塩組成物である。天然に生じるゼオライトも合成ゼオライトも、当該媒体において用いることができる。しかしながら、当該吸着剤媒体を用いてN/O気体混合物からNを選択的に分離する場合には、1.0〜1.5の範囲のSiのAlに対する比を有する少なくとも1種類のLi含有ゼオライトX、LiX、が望ましい。しかしながら、意図される成分分離に応じて、他のゼオライトまたはこれらに限定されないが例えばアルミナ、シリカゲルもしくは活性炭などの吸着剤物質は、LiXであろうと別のゼオライトであろうと、当該ゼオライトと組み合わせることができる。
【0029】
他のゼオライトの、非限定的な例は、ゼオライトY、Aおよびベータである。フォージャサイト型Yゼオライトとしては、DDZ−70、Y−54、Y−74、Y−84、Y−85、スチーム焼成希土類交換Y−54、低セリウム希土類交換Y−84、低セリウム希土類交換ゼオライトLZ−210、が挙げられる。
【0030】
所望により選択される結合剤および歩留向上剤
繊維シャフトと小繊維とを共に結合させてマトリックスを形成することにより紙媒体強度を改善する目的で、および、吸着剤を、その繊維シャフトと小繊維とのマトリックス上またはその中に保持するために、紙媒体の一体性(integrity)を維持するのに適した例えば歩留向上剤および結合剤などの添加剤を当該スラリーに添加してもよい。アクリル繊維とともに使用するのに適していると分かっている結合剤としては、アクリルラテックス、デンプン、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル、微結晶性セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース、が挙げられる。
【0031】
スラリーの固形分の含有量、湿式堆積、スラリーの排出(Drainage)および紙形成
湿式堆積のために使用される最終スラリーは、0.5〜20%の固形分を含有していてもよいが、好ましくは2.5〜4%の固形分を含有する。紙媒体は、実験室用ハンドシート装置中でハンドシートを作製するか、またはフォードリニア抄紙機もしくは他のタイプの抄紙機を用いるかのいずれかにより形成することができる。
【0032】
ハンドシート型(handsheet mold)は、12×12インチの正方形のワイヤースクリーンを底部に有する頂部開放容器(open top vessel)からなり、この底部に紙シートを形成することができる。この容器は、紙をスクリーンから剥がすことができるように、スクリーンの真上に蝶番が付けられている。このスクリーンより下には、スタンドパイプおよびバルブに通じている漏斗がある。このバルブを開くと、水でいっぱいのこのスタンドパイプは空になり、スクリーンの上のパルプスラリー上に真空が引き寄せられる。これにより、このパルプ混合物がスクリーン上に堆積し、紙が形成される。この湿った紙は、通常、吸い取り紙で優しくプレスし、スクリーンから剥がす前にさらなる水分を除去する。次いで、これを取り外し、例えば、写真プリント乾燥機(photographic print drier)などの熱い金属表面上で乾燥させる。
【0033】
あるいは、実験室用ハンドシートは、半自動抄紙機、例えばTechpap社から入手可能なRetention Testerなど、を用いて製造してもよい。Retention Tester上で製造されたハンドシートは、円形であり、直径が7インチである。
【0034】
フォードリニア抄紙機はハンドシート装置と同じ原理を利用しているが、スラリーおよびそれに応じて形成される紙から水のほとんどを除去するために真空セクションを通過する動くワイヤー(スクリーンベルト)を提供することにより紙を連続的に製造する。紙は、ワイヤーから剥がされる前に、通常、湿式プレスセクション上を動いていくが、ここでは、多孔性ローラーが用いられてその紙からさらなる水分が圧搾されてもよい。当該ワイヤーは連続的に動くので、繊維の延伸を引き起こし得り、この延伸は、横方向におけるよりも高い引張強度を機械方向に与える。その後、この紙は、紙を乾燥させる一連の大直径スチーム加熱金属ローラー(缶(can)と呼ばれる)に通過させる。次いで、この紙を、所望により、カレンダリングしてもよく、または、高圧で2つ以上のスチールローラーの間でプレスして、キャリパー(caliper)を減少させ、かつ、紙密度を増加させてもよい。カレンダーロールまたはヒーター缶(heater can)を離れる紙は、その後、芯上に巻きつけられる。
【0035】
頻繁に完成紙料(furnish)(すなわちバッチ混合物)と記載される当該スラリー混合物の粘度は、容認できるほどに速い排出(drainage)速度と、高いスクリーン上保持率(通常、>80%)とを与えるよう調節する。バッチ添加剤、例えば結合剤および凝集剤(flocculant)など、は、典型的には、当該プロセスの種々のパートにて添加する。5〜15%のアクリル系エマルジョンを結合剤として使用することができるが、他の結合剤、例えば上述のものなどの他のものの中でも例えばデンプン、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル(PVA)など、を使用することができる。また、当該完成紙料中の吸着剤がリチウム交換ゼオライト(例えばLiX)である場合には、Liがより強い選択性の一価陽イオンによって置換される程度を減少させるのを助けるために、プロセス水中に存在する一価陽イオンの合計モルの5〜50倍を、LiOHとしてその水に添加する。好ましくは、当該LiはLiOHとして加える。しかしながら、このLiOHとともに、これらに限定されないが例えばLiCl、LiBr、LiSO、LiNOまたはLi−酢酸塩などの、他の形態のLi塩を、他の処理または調合条件に応じて用いてもよい。ただし、LiOHは、ゼオライトの脱陽イオン化を防止するべく、pHを9〜10の間に調節するのに十分な量で当該水に添加するものとする。
【0036】
当該紙媒体は、典型的には、比較的薄い多孔性の層に製造する。よって、引張強度は、特に当該紙媒体を波形の形状に形成することとなる場合には、当該紙媒体の重要な性質である。通常、最小引張強度が3〜4ポンド/インチ(525〜700N/m)の幅が望ましく、また、好ましくは、最も多くの波形化処理の応力に対する当該紙媒体の抵抗を改善するためには、7ポンド/インチ(1225N/m)よりも大きいことが望ましい。
【0037】
通常、当該吸着剤媒体は、実質的に均一な厚さを有し、0.1mm〜1.0mm(0.004〜0.04インチ)厚である。よって、当該媒体は吸着剤ビーズまたは顆粒の2分の1(1/2)から20分の1(1/20)までの厚さである。そのため、当該媒体はより短い拡散経路を提供し、これにより、当該媒体中への、および当該媒体から外への、比較的、より速い物質移動速度が可能となる。
【0038】
当該媒体は少なくとも30%(重量)の吸着剤を含む。しかしながら、実際の吸着剤含有量は当該媒体の厚さに依存する。例えば、当該媒体の最終厚さまたはキャリパー(caliper)が少なくとも0.375mm(0.15インチ)厚である場合には、当該吸着剤含有量は75〜80%(重量)程度の高さであり得る。好ましくは、当該媒体は1.0mm(0.04インチ)厚以下であり、かつ、60%(重量)より多い吸着剤を含有する。好ましくは、吸着剤の含有量は60〜85%(重量)の範囲である。
【0039】
加えて、当該吸着剤媒体の密度は実質的に均一である。当該吸着剤媒体、例えば紙媒体など、の密度および均一性は、これらに限定されるものではないが例えば、完成紙料の組成、湿式堆積条件、およびカレンダリング条件に依存する。好ましくは、当該吸着剤媒体の密度は0.5〜1.1g/cmの範囲である。
【0040】
吸着剤媒体を用いての吸着プロセス
本発明の吸着剤媒体は、気体混合物の他の成分よりもより強く吸着されるその気体混合物の或る成分が、その強く吸着される成分の吸着をもたらす条件下でその気体混合物を当該吸着剤媒体と接触させることにより他の成分から分離される吸着プロセスにおいて有利に使用される。好ましい吸着プロセスとしては、圧力スイング吸着(PSA)、真空スイング吸着(VSA)、温度スイング吸着(TSA)およびその組み合わせ、が挙げられる。
【0041】
当該吸着プロセスの吸着工程を行う温度は、例えば、分離されている特定の気体、使用されている特定の吸着剤、および吸着が行われる圧力など、多くの要因に依存する。通常、当該プロセスの吸着工程は、少なくとも−190℃の温度、好ましくは少なくとも−20℃の温度、および最も好ましくは少なくとも0℃の温度、で行う。当該プロセスの吸着工程を行う温度上限は、通常、400℃であり、この吸着工程は、好ましくは70℃以下の温度で行い、最も好ましくは50℃以下の温度で行う。
【0042】
本発明の当該プロセスの吸着工程は、気相温度スイング吸着および圧力スイング吸着プロセスの当業者に公知の圧力で行ってもよい。典型的には、当該吸着工程を行う最小絶対圧は、通常、0.7bara(絶対バール(bar absolute))、好ましくは0.8bara、および最も好ましくは0.9baraである。吸着は、50bara程度の高さかそれ以上の圧力で行ってもよいが、好ましくは絶対圧、および好ましくは20bara以下、および最も好ましくは10bar以下、で行う。
【0043】
当該吸着プロセスがPSAである場合には、再生工程中の圧力を、通常は0.1〜5baraの範囲の絶対圧まで、および好ましくは0.175〜2baraの範囲の絶対圧まで、および最も好ましくは0.2〜1.1baraの範囲の絶対圧まで、低下させる。
【0044】
上記に示したように、本発明の当該プロセスを用いて任意の2種類の気体を分離することができるが、但し、その気体のうちの1種類は、平衡条件下または非平衡条件下のいずれかで、すなわち、プロセスの動力学的レジーム(kinetic regime)において、本発明の吸着剤により、もう一方の気体よりも強く吸着されるものとする。当該プロセスは、酸素から窒素を分離すること、酸素から窒素およびアルゴンを分離すること、空気から二酸化炭素を分離すること、空気から一酸化二窒素を分離すること、ならびに、炭化水素の分離、例えば、アルカン、例えばエタン、プロパン等、からの、アルケン、例えばエチレン、プロピレン等、の分離、および、分岐鎖炭化水素からの直鎖炭化水素の分離、例えば、i−ブタンからのn−ブタンの分離、に特に適している。
【実施例】
【0045】
本発明の実施に関係する種々の局面を説明するか、またはその模擬実験をする、以下の実施例に関連して、本発明をさらに詳細に記載する。本発明の思想内に入る変更はすべて、特許請求された本発明の範囲内に包含されるよう意図されている。したがって、これらの実施例は、特許請求された本発明の特定の実施形態を限定するために提示されたものではなく、特許請求された本発明の特定の実施形態を限定なしに説明するためだけに提示されたものである。
【0046】
実施例1−吸着剤紙媒体の製造
吸着剤紙媒体試料は、測定および/または調節された比伝導度(伝導率(conductivity)と称することもある)を有する3Lの水に4.76mlの1.5MのLiOHを添加することにより作製する。比伝導度は、InLab(登録商標)740伝導率プローブを備えたメトラー・トレド社製セブンマルチ(商標)メーターを用いて測定した。この3Lの水は、水道水(伝導率280μS・cm−1、8ppmのNa、1.3ppmのK、13ppmのMg2+、37ppmのCa2+)を、U.S.Filter社製Service Deionization、I型混床(mixed bed type I)からの脱イオン水(伝導率0.4μS・cm−1、0.2ppmのNa、0.1ppmのK、0.01ppmのMg2+およびCa2+)と混合することにより調製した。
【0047】
以下の手順に従い、合計で4.8gの固形物を、このLiOH水に、表1に示す量で添加する。
アラミド繊維(帝人社からのトワロン(登録商標)アラミド1094)、所望により第二繊維(帝人社からのトワロン(登録商標)アラミド1099、帝人社からのトワロン(登録商標)Jet−Spun Fibrids、Engineered Fibers Technologies社からのVectran(登録商標)HSパルプおよびSterling Fibers社からのCFF(登録商標)114−3の中から)、およびLiXゼオライト粉末(UOP社製分子ふるい;1.0〜1.05のSi/Al比)を、当該LiOH水に添加する。この混合物を高い剪断力のブレンダーに入れ、1分間ブレンドする。次いで、このスラリーを、測定および/または調節された伝導率を有するもう1リットルの水とともに実験室用抄紙機の供給タンクへと移す。このスラリーを撹拌(440rpm)しながら、コロイド状シリカ(シグマアルドリッチ社によるLudox(登録商標)SM−30およびAS−40)を、全固形物重量の3%にて添加する。もう1分間の撹拌の後に、凝集剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社からのPercol(登録商標)175および292)を、完全凝集(complete flocculation)が達成されるまで滴下する。結果として生じる完成紙料をさらにもう1分間ホモジナイズし、次いで、抄紙機に流してシートを形成する。次いで、このシートをロールプレス中で脱水し、80〜140℃のシートドライヤーに15〜20分間入れる。
【0048】
【表2】

【0049】
これら試料のうちのいくつかについては、上記手順におけるいくつかのパラメータを変化させた。試料19は試料18に非常に類似しているが、この場合にのみ、1Lの水を添加し、LiOHはこの水に添加しなかった。試料21は、伝導率288μS/cmを有する都市水道水(municipal tap water)を用いて作製したスラリーへのLiClの添加以外は、試料22に類似し、一方、試料17も、水道水の代わりに0.42μS/cmの伝導率のDI水を用いるという違い、および、ゼオライトをスラリーにすでに添加した後にLiOHを添加するという違い以外は、試料22に類似していた。
【0050】
実施例2−吸着容量
吸着容量は重量測定天秤(gravimetric balance)(VTI社製MB−300 GHP)にて試験した。上記で調製した紙試料をカットして細条片(narrow strips)(0.5cm×4cm)にする。3〜4個の細条片を丸め、試料保持バスケットに装填する。その後、自動化された手順により、次の少数の工程が遂行される:1)1torr未満の圧力への排気、2)5°・分−1の速度での設定温度への加熱、3)20℃の試験温度へのヘリウム中での冷却、4)1torr未満の圧力への排気。この時点で、上記の工程1)〜4)により、ヘリウム、酸素および窒素の等温線を集め、互いから分離する。これらの等温線は、標的とする圧力における調査対象吸着質気体の連続的導入により測定する。重量変化は、平衡の判定基準―2回の連続した測定における変化が0.0010重量%未満―が満たされるまでモニタリングする。この判定基準がひとたび満たされると、データが記録され、当該手順は次の圧力点へと進められる。吸着は1から4000torrまで実行され、その後、脱着点が収集される。ヘリウム等温線から収集されたデータを浮力補正に使用するが、これは高圧で重要となり得る。
【0051】
いくつかの試料を上記工程2)の種々の設定温度―140〜350℃―にて活性化する。加えて、いくつかの試料を、ex situにて、空気充填オーブン中で、350℃へと加熱するが、これは、重量測定天秤にかけ(gravimetric balanced)かつ再活性化させたそこの中に入れる前である。
【0052】
下記表2中の最大N(Max N)および最大O(Max O)の値は、それぞれ、4000torrにて吸着されたNおよびOの重量%である。Max NとMax Oとの差がΔMaxである。ΔMaxは、Oの吸着を上回るN吸着への優先度を表すものであるため、当該空気分離プロセスにおける性能の尺度である。言い換えれば、試料の、より高いΔMax値は、その分離特性がより良いということを示す。
【0053】
【表3】

【0054】
表2の3〜7列目には、当該媒体の製造前および当該紙媒体が製造された後の両方における、そのゼオライト物質中の特定のイオンの量が記載されている。陽イオンの量は、そのゼオライト中の合計陽イオン交換当量の分率または比率として提示されている(これは、欠陥のない(defect-free)ゼオライト中のアルミニウムのモルに本質的に等しい)。したがって、対象となる各イオンに起因する合計陽イオン当量のパーセンテージは、100を乗じた、この表からの陽イオン当量の比率である。
【0055】
3列目(Li:Alゼオライト粉末)は、リチウム含有量を、開始LiXゼオライト粉末中の合計陽イオン当量の比率として記載したものであり、これは、0.98であり、すなわち、表2中に概説した各実験についての交換当量のパーセンテージに換算して98%である。
【0056】
4〜6列目(それぞれ、Li:Al媒体、Na:Al媒体、Ca×2:Al媒体)は、その紙媒体中に含有されるLiXゼオライト中の各陽イオンについての合計陽イオン当量の比率を記載したものである。例えば、試料1は、その組成が表の1行目に記載されており、0.958のLi:Al比、0.008のNa:Al比、0.033のCa×2:Al比(ここでは、Caは、その二価の電荷、ひいては、1モルのCa2+当たり2当量の陽イオン電荷、を説明するべく2を乗じている)を含有する。したがって、陽イオン当量のパーセンテージでは、この3つの陽イオンの比率は、Li、Na、およびCa2+について、それぞれ、95.8%、0.8%、および3.3%である。7列目(Li−Na−Ca×2陽イオンバランス媒体)は、総合計陽イオン組成または陽イオンバランスを、そのゼオライトの合計陽イオン交換当量の比率として提示したものである。この数字は1.00の近くであるべきであり、1.00の±10%の範囲内の量を、実験誤差内でバランスが取れていると考える。1.00よりも10%を超えて低い陽イオンバランス比は、少なくともわずかに脱陽イオン化されているか、またはそのゼオライト中の電荷の一部と釣り合うプロトン(H)を保有している。1.00よりも10%を超えて高い陽イオンバランス比は、典型的には、わずかに超過したCa2+を含有しており、この場合には、このCa2+は、CaOH陽イオンとして存在し、それにより、予想されるCa2+当たり2陽イオン当量の代わりに、CaOH陽イオン当たり1陽イオン交換当量と釣り合っているのみである。
【0057】
完成媒体LiXは、当該完成媒体LiX中の交換可能な陽イオンの合計当量を基準に、0.05%〜3%の範囲の一価陽イオンを有し、ここでは、その一価陽イオンは、Na、K、Rb、Cs、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0058】
完成媒体LiXは、当該完成媒体LiX中の合計陽イオン当量を基準に、0.05%〜15%の範囲の二価陽イオン含有量を有し、ここでは、その二価陽イオンは、Ca、Mg、Sr、Ba、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0059】
各試料についてのデータは、それぞれの紙媒体中のLiXゼオライトの重量パーセントへと正規化したΔMax値を得るべく、左側の列において正規化されており、また、ΔMaxnormと表されている。試料1〜16は、良好な吸着性能の指標である、≧4の正規化ΔMaxnorm値を有する。
【0060】
対照的に、試料17〜22は、比較的乏しい吸着性能を示す。表1中で説明したように、試料17〜22は、試料1〜16と比べて、より高いNa、より高いCa、および/またはより低いLi−Na−Ca/2陽イオンバランスを有する。例えば、試料17は、最も高いLi:Al比および最も高いLi−Na−Ca/2陽イオンバランスを有する。しかしながら、Na:Alも非常に高く、これにより、吸着性能はより乏しくなる。
【0061】
したがって、驚いたことに、また、予想外に、Na:Alの、ΔMaxnormへの損傷効果(detrimental effect)は、この実験的調査においては、Ca×2:Alよりも6〜7倍大きい。したがって、リチウム交換ゼオライトを含む吸着剤媒体(例えば、この調査において見られるような、LiXを含む紙媒体)の分離性能は、当該Liが、別の一価の1族の陽イオンよりむしろ、二価の2族の陽イオンによって置換されている場合に、Li置換の損傷効果に対し、より耐性を示すということを出願人らは見出した。
【0062】
好例の実施形態という観点から当該媒体を記載してきたが、当該媒体はこれらに限定されない。むしろ、添付の特許請求の範囲は、均等物(equivalents)の範囲(scope)および範囲(range)から逸脱することなく当業者がなすことができる他の変体および実施形態を含むよう広く解釈されるべきである。本開示は、本明細書において記載した、いかなる適合または変形をも包含するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一媒体成分物質;
完成Li含有量を有する完成媒体リチウム交換ゼオライトX(LiX)を含む少なくとも30重量パーセントの吸着剤組成物を有する第二媒体成分物質であって、前記完成媒体LiXが、プレ媒体産物Li含有量を有するLiX前駆体に由来するものである第二媒体成分物質;
を含む、吸着剤媒体組成物であって、
(a)前記完成媒体LiXのLi含有量が、前記LiX前駆体のLi含有量に比して減少しており、
(b)前記完成媒体LiXのLi含有量が、前記LiX中の合計陽イオン当量を基準に、96%〜83%の範囲であり、および
(c)前記吸着剤媒体組成物は、水、前記プレ媒体産物LiXおよび前記第一媒体成分物質を含むスラリー混合物から得られ、ここで、
(i)前記水が、2.2μジーメンス/cm〜150μジーメンス/cmの範囲の比伝導度を有し、;および
(ii)前記完成媒体LiXが、前記完成媒体LiX中の交換可能な陽イオンの合計当量を基準に、0.05%〜3%の範囲の一価陽イオン含有量を有し、ここで、前記一価陽イオンが、Na、K、Rb、Cs、およびその組み合わせからなる群より選択される、
吸着剤媒体組成物。
【請求項2】
前記完成媒体LiXが、前記完成媒体LiX中の合計陽イオン当量を基準に、0.05%〜15%の範囲の二価陽イオン含有量を有し、ここで、前記二価陽イオンはCa、Mg、Sr、Ba、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
前記完成媒体LiXが、前記完成媒体LiX中の交換可能な陽イオンの合計パーセントを基準に、0.05%〜3%の範囲の一価陽イオン含有量を有するようにするために、前記スラリー混合物を作製するのに使用する前記水が有する一価陽イオンの濃度および二価陽イオンの濃度が、それぞれ、前記水の中の一価陽イオンの合計モルが、元のゼオライト中の合計リチウム当量の3%以下であり、および、前記水の中の二価陽イオンの合計モルが、前記ゼオライト中の合計リチウム当量の15%以下である、請求項1に記載の媒体。
【請求項4】
前記第一媒体成分物質が、高分子繊維、無機繊維、天然繊維、炭素繊維およびその混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の媒体。
【請求項5】
前記ゼオライトXが1.0〜1.5のSi/Al比を有する、請求項1に記載の媒体。
【請求項6】
少なくとも60重量パーセントの吸着剤を含む、請求項1に記載の媒体。
【請求項7】
0.10mm〜1.00mmの、実質的に均一な厚さを有する、請求項1に記載の媒体。
【請求項8】
前記高分子繊維がパラ−アラミドである、請求項4に記載の媒体。
【請求項9】
前記スラリー混合物が、有機ラテックスおよび無機酸化物結合剤をさらに含む、請求項4に記載の媒体。
【請求項10】
少なくとも第一気体成分と第二気体成分とを有する気体混合物を分離するための方法であって、:
少なくとも請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の吸着剤媒体組成物を有する吸着ゾーン中へ、前記気体混合物を導入すること、および
前記少なくとも第二気体成分に比べて前記完成媒体LiXによって優先的に吸着されない前記少なくとも第一気体成分が豊富となった気体生成物ストリームを回収すること、
を含む方法。
【請求項11】
前記気体混合物が空気であり、かつ、前記少なくとも第一気体成分が酸素であり、かつ、前記少なくとも第二気体成分が窒素である、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512022(P2012−512022A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542151(P2011−542151)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/055566
【国際公開番号】WO2010/077392
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】