説明

Lp−PLA2活性およびLp−PLA2活性阻害を検出する方法

本発明は、動物から得られた少なくとも1つの試料におけるLp−PLA2活性を測定する方法に関する。本発明は、Lp−PLA2阻害物質を投与された動物から得られた試料におけるLp−PLA2活性の阻害を測定する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行出願への相互参照)
本出願は、2004年4月16日出願の米国特許仮出願第60/563078号に基づく権利を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、動物から得られた組織試料中のリポタンパク質結合ホスホリパーゼA2(lipoprotein−associated phospholipase A2)(本明細書では「Lp−PLA2」)酵素活性およびその活性阻害を測定するための方法および物質に関する。
【背景技術】
【0003】
冠状動脈心疾患(本明細書では「CHD」)は、多くの工業国における主要な死亡原因である。アテローム硬化症は、コレステロールおよび脂質を含有するプラークが血液動脈中に進行的に蓄積する動脈硬化または動脈硬化の一形態である。この蓄積は、心臓病および冠状動脈疾患イベントが増加するリスクと関連している。動脈におけるプラークの蓄積は、内皮損傷によって引き起こされる免疫応答と関連している。最初に、平滑筋細胞の移動および蓄積を引き起こす免疫応答によって、単球由来のマクロファージが損傷部位に蓄積し、これが、マクロファージ、脂質、コレステロール、カルシウム塩、およびコラーゲンと結合して線維性プラークを形成する。そのような病変の成長によって、最終的には、動脈が遮断され、血流が制限されることがある。
【0004】
Lp−PLA2は、PAFアセチルヒドロラーゼとしても知られており、増大しているホスホリパーゼA2スーパーファミリーの分泌型、カルシウム非依存性メンバーの1つである(Tewら(1996年)、Arterioscler Thromb Vasc Biol、16(4):591−9;Tjoelkerら(1995年)、Nature 374(6522):549−53)。Lp−PLA2は、単球、マクロファージ、およびリンパ球によって産生され、ヒト血漿中で主としてLDL(約80%)に結合していることが判明している。この酵素は、別名では血小板活性化因子(本明細書では「PAF」)としても知られている1−O−アルキル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンのsn−2エステルを含めた極性リン脂質の切断を行う(Tjoelkerら(1995年)、Nature 374(6522):549−53)。
【0005】
改変されていない天然リポタンパク質と比較した場合に、酸化LDLが炎症誘発性の活性を有することが多くの観測によって明らかにされている。LDL酸化における最初期のイベントの1つは、酸化改変されたホスファチジルコリンの加水分解であり、これによってかなりの量のリゾホスファチジルコリン(本明細書では「リゾPC」)および酸化脂肪酸が生成する。この加水分解は、Lp−PLA2のみによって媒介される(すなわち、Lp−PLA2は、PAFをリゾホスファチジルコリン[本明細書では「リゾPC」]と酢酸とに加水分解する)(Stafforiniら(1997年)、J Biol. Chem.272、17895)。
【0006】
リゾPCは、炎症誘発性およびアテローム産生促進性の媒介因子であると推測されている。リゾPCは、比較的に高濃度で細胞傷害性であることに加えて、それより低い濃度でも単球およびT細胞走化性を刺激し、また、接着性分子および炎症性サイトカインの発現を誘導することがある。リゾPCは、酸化LDLの成分としても同定されているが、酸化LDLは、LDLの免疫原性に関与しており、この特性がアテローム硬化症の炎症性の性質にも寄与している可能性がある。さらに、リゾPCはマクロファージの増殖を促進し、様々な動脈床の内皮機能不全を誘発する。リゾPCと共に放出される酸化脂肪酸は単球走化性物質でもあり、細胞シグナル伝達などの他の生物活性にも関与している可能性がある。Lp−PLA2加水分解によるこれらの産物が両方とも循環単球の強力な走化性物質であるので、Lp−PLA2は、コレステロールエステルを搭載した細胞の、動脈への蓄積の原因となっており、これがアテローム硬化症の初期に関連した独特の「脂肪線条」を引き起こすと考えられている。
【0007】
Lp−PLA2は、スモールデンスLDLというアテローム産生性の強いリポタンパク質部分分画中に濃縮されていることが判明している。スモールデンスLDLは酸化改変を受けやすい。さらに、高脂血症、脳卒中、1型および2型糖尿病を患っている患者、ならびに閉経後の女性でも酵素レベルが高くなっている。そのように、Lp−PLA2の血漿レベルは、アテローム性動脈硬化の促進および心血管臨床イベントを発症する危険があると考えられている個体で上昇している傾向がある。したがって、Lp−PLA2酵素の阻害は、この脂肪条痕の蓄積を停止し(リゾホスファチジルコリン形成の阻害によって)、したがって、アテローム硬化症の治療に有用であると予測されるよう。
【0008】
Lp−PLA2阻害物質はLDLの酸化を阻害する。したがって、Lp−PLA2阻害物質は、この酵素活性に関連した脂質過酸化が関与する任意の障害、例えば、アテローム性動脈硬化や糖尿病などの状態に加えて、慢性関節リウマチ、脳卒中、心筋梗塞(Serebruanyら、Cardiology 90(2):127−30(1998年))、再潅流損傷、および急性慢性炎症などの他の状態への全般的適用性を有する可能性がある。加えて、Lp−PLA2は現在、冠状動脈心疾患(Blankenbergら、J Lipid Res.、2003年5月1日)および動脈硬化(TselepisおよびChapman、Atheroscler Suppl.、3(4):57−68(2002))のバイオマーカーとして研究されている。さらに、Lp−PLA2は以下の疾患で役割を有していることが示されている。すなわち、呼吸困難症候群(Grissomら、Crit Care Med.31(3):770−5(2003年));免疫グロブリンAネフロパシー(Yoonら、Clin Genet.62(2):128−34(2002年));大腿膝窩動脈バイパスの移植開存性(Unnoら、Surgery.132(1):66−71(2002年);経口炎症(McManusおよびPinckard、Grit Rev Oral Biol Med.11(2):240−58(2000年));気道炎症および反応性亢進(Hendersonら、J lmmunol.15;164(6):3360−7(2000年));HIVおよびエイズ(Khovidhunkitら、Metabolism.48(12):1524−31(1999年));喘息(Satohら、Am J Respir Crit Care Med.159(3):974−9(1999年));若年性関節リウマチ(Tselepisら、Arthritis Rheum.42(2):373−83(1999年));ヒト滲出性中耳炎(Tsujiら、ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec.60(1):25−9(1998年));統合失調症(Bellら、Biochem Biophys Res Commun29;241(3):630−59(1997年));壊死性腸炎の発症(Mugurumaら、Adv Exp Med Biol.407:379−82(1997年));および虚血腸管壊死(Pediatr Res.34(2):237−41(1993年))である。
【0009】
ヒト組織試料のLp−PLA2活性は、分光光度活性アッセイおよび蛍光発生活性アッセイ(Cayman Chemical Company社およびKarlan Research Products社)を用いて測定されている。Kosakaら、Clin Chem Acta 296(1−2):151−61(2000)およびKosakaら、Clin Chem Acta 312(1−2):179−83(2001)も参照のこと。例えば、Azwell社(大阪(日本))は、1−ミリストイル−2−(p−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンの合成と、ヒトPAF AH(Lp−PLA2)の血漿中および血清中活性測定用の比色分析基質としてのその使用を2000年に報告した。2002年、Azwell社は、この基質を利用し、かつ臨床化学アナライザーで使用するためにフォーマットされた研究使用限定のAuto PAF AFアッセイキットを上市した。これらの方法は、Lp−PLA2阻害物質がin vitroで組織試料に添加された場合に、Lp−PLA2活性の阻害を検出できるものでありうる。しかし、Auto PAF AHアッセイで提供されている方法は、Lp−PLA2阻害物質が組織試料収集前に動物に投与された場合には、Lp−PLA2活性の阻害を測定するのに十分な感度をもたない。
【0010】
阻害物質の存在下で、阻害物質が投与された動物から得られた組織試料中のLp−PLA2活性を測定するためには、活性プロトコールが必要である。したがって、Lp−PLA2阻害物質が投与された動物から得られた組織試料のLP−PLA2活性およびその阻害を測定する方法が大いに必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、少なくとも1つの組織試料における、Lp−PLA2酵素活性の阻害を測定する方法を提供し、この方法は、比色分析または蛍光定量用検出可能部分を含む、Lp−PLA2の基質を含む溶液を調製する工程と、前記少なくとも1つの組織試料を、調製工程の溶液と接触させる工程と、Lp−PLA2活性を検出する工程とを含み、前記組織試料は、Lp−PLA2阻害物質を投与された動物に由来する。
【0012】
本発明の別の態様では、動物から得られた組織試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法を提供し、この方法は、
a)110μLに対して0.66μLの比率で、200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウムをpH7.6で含む溶液と接触させた、90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンを含む溶液
を含む溶液110μLを、
動物から得られた25μLの組織試料の少なくとも1つ;
4、3、2、1、0.4、または0.2nmol/μL p−ニトロフェノールを含むメタノール溶液をそれぞれ含むp−ニトロフェノール標準溶液25μL;および、
ブランク用のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはddHO 25μL
と接触させる工程と、
b)Lp−PLA2活性を測定する工程と
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
用語解説
本明細書で使用される場合、「動物」には、Lp−PLA2、Lp−PLA2相同体、またはそれらのオーソログを含めた、Lp−PLA2活性を有する酵素を天然で産生できる任意のヒトもしくはヒト以外の哺乳動物または他の脊椎動物が含まれる。
【0014】
「臨床試験」は、ヒト臨床試験を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「Lp−PLA2酵素活性」には、Lp−PLA2のいかなる酵素活性も含まれるが、これらに限定されない。この活性には、Lp−PLA2酵素の基質結合、産物放出、および/またはリン脂質もしくは他の分子の加水分解が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合で相互に連結された2つ以上アミノ酸を含むいかなるペプチドまたはタンパク質も指す。「ポリペプチド」は、単鎖のもの、および長鎖のもの両方を指し、前者は通常、ペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと呼ばれ、後者は通常、タンパク質と呼ばれる。ポリペプチドは、遺伝子によってコードされている20種のアミノ酸以外のアミノ酸も含みうる。「ポリペプチド」には、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然の過程で修飾されたものも含まれるが、化学修飾技法によって修飾されたものも含まれる。そのような修飾については、基礎的な教科書、およびより詳細な研究書、さらには多数の研究論文に詳細に記載されており、それらは当業者に周知である。同じタイプの修飾が、所与のポリペプチドのいくつかの部位に、同程度または異なった程度で存在しうることが理解されよう。また、所与のポリペプチドが、多くのタイプの修飾を含むこともある。修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、アミノ酸末端、およびカルボキシル末端を含めた、ポリペプチドのいかなる箇所でも起こりうる。修飾には、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合化、ヘム部分の共有結合化、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合化、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合化、ホスファチジルイノシトールの共有結合化、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチン形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化反応、ヨウ化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマカルボキシ化、ヒドロキシル化、ADPリボシル化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化などの、タンパク質への転移RNA媒介型のアミノ酸付加、およびユビキチン結合が含まれる。例えば、「PROTEINS − STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES」、第2版、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company社、New York (1993年)、および「POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS」、B.C.Johnson編集、1〜12頁、Academic Press社、New York中の、Wold,F.、「Posttranslational Protein Modifications:Perspectives and Prospects」(1983年);Seifterら、Meth.Enzymol.182:626−646(1990年)、ならびに、Rattanら、「Protein Synthesis:Posttranslational Modifications and Aging」、Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992年)を参照のこと。ポリペプチドは、分岐のあるものでも、環状のものでもよく、環状のものは、分岐のあるものでもないものでもよい。環状、分岐、および環状分岐ポリペプチドは、天然の翻訳後プロセシングによって生じたものでも、完全に合成方法によって生成されたものでもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「濾過」または「フィルタリング」には、溶液からの任意の物質の除去が含まれるが、これに限定されず、濾紙、ワットマン紙、チーズクロス、または前記物質をその物理的および/または化学的特性に基づいて溶液から選択的に除去するカラムを通して、除去するべき物質を含有する溶液を通過させることを含んでもよい。濾過を介して物質を除去するのに使用できる物理的特性および化学的特性には、カラムに充填されている物質に結合する可能性の高い物質に伴ったイオン電荷、サイズ、重さ、極性、および/または化学部分が含まれうるが、これらに限定されない。濾過は、前記物質の、溶液からの除去を促進する、重力、真空、および/または遠心法の使用を含むことがある。
【0018】
本明細書で使用される場合、「シンチレーションカクテル」は、液体シンチレーション用の組織試料用の可溶化および均質的な懸濁液の維持を可能にする有機溶剤を通常含有する溶質および溶媒の混合物である。液体シンチレーションの過程では、ベータ線放出の捕捉を介した、試料中のベータ崩壊の検出が行われる。シンチレーションカクテル混合物は、ベータ線放出を捕捉し、それを光子放出に変換し、これを、シンチレーションカウンター内の光電増倍管チューブを介して検出できるように設計されている。数種類のシンチレーションカクテルが市販されている。シンチレーションカクテルの組成を改変することによって、試料に応じて、液体シンチレーションによる検出可能な測定に影響を与え、かつ/あるいは最適化できると理解されている。
【0019】
本明細書で使用される場合、「組織」には、血清、細胞溶解液、組織溶解物、尿、血漿、プラーク、単球、またはマクロファージ細胞が含まれる。これらの組織は、Lp−PLA2、Lp−PLA2相同体、またはそれらのオーソログを含めた、Lp−PLA2活性を有する酵素を天然に産生できるヒトもしくはヒト以外の哺乳動物または他の動物から得られたものでありうる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「比色分析または蛍光定量用検出可能」は、検出可能または測定可能なシグナルを産生できる化合物の一部である。そのようなシグナルは、限定されるものではないが、可視光の発光もしくは吸光、蛍光、燐光、または他の検出可能な量子によって測定可能なものでありうる。例えば、Lp−PLA2の基質は、Lp−PLA2切断部位でホスファチジルコリンに結合した比色分析部分を含むものでありうる。Lp−PLA2が比色分析部分をホスファチジルコリンから切断した際に、比色分析部分が可視光として検出可能なシグナルを発する。比色分析部分に結合するホスファチジルコリンの非限定的な一例が、1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンである。
【0021】
本明細書で使用される場合、Lp−PLA2「阻害物質」または「阻害」は、限定されるものではないが、酵素の基質結合、産物の放出、および/またはリン脂質もしくは他の分子の加水分解を含めた任意のLp−PLA2活性を低下または除去できるものを含めた、Lp−PLA2活性を低下または除去できるいかなる方法、技法、状態、または化合物も指す。Lp−PLA2活性の阻害は、阻害物質を投与された動物から得られた試料中で測定することができ、この投与は、in vivo投与であるものとする。別法では、試料を動物から得た後に阻害物質を試料に添加することがあり、この添加は、in vitro投与とされよう。
【0022】
本明細書で使用される場合、「低下させる」または「低減」は、Lp−PLA2酵素活性の低減または除去を指す。低下したLp−PLA2活性を測定する目的とするものの非限定ないくつかの例には、Lp−PLA2活性の阻害物質の存在下および非存在下で、同じ動物のLp−PLA2活性を測定することが含まれる。別法では、組換え発現され、かつ準精製または精製された標準酵素に対して、Lp−PLA2活性を測定することができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「含まない」または「本質的に含まない」とは、Lp−PLA2阻害物質を全く含有しない組織試料、またはLp−PLA2阻害物質の濃度が十分に低く、そのため、Lp−PLA2活性がその阻害物質によって阻害されない組織試料を意味する。例えば、阻害物質が、Lp−PLA2に関して決定されているその阻害物質の解離定数より低濃度で存在している場合、組織試料は、その阻害物質を本質的に含まないとすることができる。その動物が天然に産生しないLp−PLA2阻害物質を投与する前に、その動物から組織試料を得た場合には、その組織試料はLp−PLA2阻害物質を含まないとすることができる。その動物種におけるその阻害物質の薬物動力学プロフィールに基づいてクリアランスを確実なものにするのに十分な時間が経っているときに、組織試料を動物から得た場合にも、その組織試料は、Lp−PLA2阻害物質を含まない、あるいは本質的に含まないとすることができる。
【0024】
Lp−PLA2は、リン脂質の加水分解酵素であることが知られている。Lp−PLA2は、リン脂質をsn−2位置で切断して、リゾPCおよび酸化脂肪酸を産生することができる。PAFは、sn−2位置に2炭素のアシル基を有し、したがって、Lp−PLAによってPAFが加水分解された場合、この短いアシル基は、分子の残りの部分、すなわちリゾPCから、水溶性の酢酸として切断される。Lp−PLA2活性を測定するには、比色分析または蛍光定量用部分を有する基質を用いることができる。例えば、1−ミリストイル−2−(p−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンという基質は、sn−2位置でスクシニル鎖に結合している4−ニトロフェニル基を有するPAF類似体である。Lp−PLA2(PAF−AH)はこの基質のsn−2位置を加水分解して、4−ニトロフェニルコハク酸を産生する。この遊離は、分光光度法によって405nmでモニターすることができ、Lp−PLA2活性は吸光度の変化によって決定される。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明の方法は、組織試料中のLp−PLA2阻害物質濃度と、in vitroのLp−PLA2活性との間の相関関係を実証するものであることが示されている。さらに、本発明は、Lp−PLA2阻害物質で処理された動物から得られた組織試料中のLp−PLA2活性を経時的に測定する方法を提供する。これらのデータは、ヒトなどの動物から得られた、阻害物質の薬物動力学プロフィールと相関しているものでありうる。
【0027】
1−ミリストイル−2−(p−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンを基質として用いた、Lp−PLA2活性をモニターする比色分析アッセイが開発された。Lp−PLA2特異的な阻害物質を用いたin vitro薬物阻害研究によって、Lp−PLA2に対するこの基質の特異性が示された。しかし、Azwell社提供のAuto PAF AHアッセイは、ここで開発されたアッセイで用いたものと同じ基質および同じ緩衝条件であったにも関わらず、Lp−PLA2阻害薬をin vivoで受容したヒト対象における薬物阻害を検出しなかった。このアッセイにおけるin vitro薬物解離に寄与し、それによって、in vivoで薬物が結合した組織試料における薬物阻害を検出するアッセイを不可能にするものとして、アッセイ緩衝液との血漿のプレインキュベーション、血漿試料容量、基質濃度、およびR2A緩衝液の使用などの因子が同定されている。したがって、薬物感受性の新規の比色分析Lp−PLA2活性分析の開発では、これらの因子を修正した。in vivoで検出可能な薬物阻害を生成し、かつ適切なアッセイダイナミックレンジも提供するアッセイ条件が選択できるように、これらの因子の相互作用も研究した。この修正された薬物感受性アッセイは、Lp−PLA2阻害物質をin vivo投与されたヒト対象における薬物阻害の85〜95%を検出することができ、したがって、臨床現場で薬物有効性を評価するためのモニターを行うアッセイとして用いることができた。このアッセイは、100倍近くのダイナミックレンジも提供し、より広範囲のLp−PLA2活性を測定できるスクリーニングアッセイとしても潜在的に有用である。
【0028】
本発明の一態様では、少なくとも1つの組織試料における、Lp−PLA2酵素活性の阻害を測定する方法を提供し、この方法は、比色分析または蛍光定量用検出可能部分を含む、Lp−PLA2の基質を含む溶液を調製する工程と、前記少なくとも1つの組織試料を、調製工程の溶液と接触させる工程と、Lp−PLA2活性を検出する工程とを含み、組織試料は、Lp−PLA2阻害物質を投与された動物から得られる。これらの方法は、Lp−PLA2阻害物質を投与する前に動物から得られた組織試料、またはLp−PLA2阻害物質を含まない組織試料のLp−PLA2活性を比較することをさらに含むことがある。動物から得られた複数の試料におけるLp−PLA2活性の阻害は、前記Lp−PLA2阻害物質を投与した後の複数の時点で測定することができる。基質は、1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンでよく、約53μMから約1125μMの濃度で使用できる。−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンの濃度は、440μMである場合も、112μMである場合もある。
【0029】
本発明の一態様では、組織試料が血漿である場合があり、あるいは血清である場合もある。別の態様では、血漿が、調製工程の溶液で約3倍から9倍に希釈されている。Lp−PLA2活性は、試料中の光学濃度を測定することによって測定される場合がある。
【0030】
本発明の別の態様では、Lp−PLA2の基質を含む溶液が緩衝剤をさらに含み、基質を前記組織試料と接触させる前に、この緩衝剤を基質と共にインキュベートする。別の態様では、上記緩衝剤がクエン酸一水和物を含まない。別の態様では、基質濃度がほぼ前記基質のKmに維持される。前記基質のkmは、緩衝剤からクエン酸一水和物を除去することによって低下する可能性がある。基質が1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンである場合、基質濃度は、約440μMである場合も、約112μMである場合もある。
【0031】
本発明の別の態様では、血漿試料の容量が約15μLから約50μLであり、これが調製工程の溶液の容量約125μLから約170μLと混合される。別の態様では、血漿試料を調製工程の溶液と接触させる前に、反応のpHが少なくとも約7.5に維持される。
【0032】
本発明の別の実施形態では、動物から得られた組織試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法を提供し、この方法は、
a)110μLに対して0.66μLの比率で、200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウムをpH7.6で含む溶液と接触させた、90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンを含む溶液
を含む溶液110μLを、
動物から得られた25μLの組織試料の少なくとも1つ;
4、3、2、1、0.4、または0.2nmol/μL p−ニトロフェノールを含むメタノール溶液をそれぞれ含むp−ニトロフェノール標準溶液25μL;および、
ブランク用のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはddHO 25μL
と接触させる工程と、
b)Lp−PLA2活性を測定する工程と
を含む。
【0033】
一態様では、動物から得られた試料が血漿である。別の態様では、上記動物がヒトである。さらに別の態様では、組織試料を得る前に、Lp−PLA2の阻害物質を上記動物に投与する。前記組織試料を得る前に投与される前記Lp−PLA2阻害物質によるLp−PLA2酵素活性の阻害は、前記Lp−PLA2阻害物質を含まない組織試料のLp−PLA2活性を比較することによって測定される。
【0034】
本発明の別の実施形態では、動物から得られた組織試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法を提供し、この方法では、酵素活性が、
a)p−ニトロフェノール標準溶液の405nmの光学濃度(OD)値を、p−ニトロフェノール(nmol/ウェル)に対してプロットすることによって検量線を作成する工程と、
b)検量線の勾配(OD/nmol)を計算する工程と、
c)組織試料を含む溶液と、ブランクを含む溶液との両方における、3分と1分との間の吸光度変化(ΔOD3min−1min)を計算する工程と、
d)式、
Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=(ΔODsample−ΔODblank)÷勾配(OD/nmol)÷0.025ml÷2分
を用いて、Lp−PLA2活性を計算する工程と
によって決定される。
【0035】
本発明の別の実施形態では、動物から得られた組織試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法を提供し、この方法は、
a) 200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウムをpH7.6で含む溶液を調製する工程と、
b) 90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンを含む溶液を調製する工程と、
c) 100、75、50、25、10、および5nmol/μLのp−ニトロフェノールをメタノール中に含む保存液を調製する工程と、
d) 工程cの保存液40μLをメタノール960μLに希釈することによって、p−ニトロフェノール標準物質の使用液を調製する工程と、
e) 工程bの溶液と、工程aの溶液とを、0.66μL対110μLの比率で接触させて、アッセイ緩衝液を作製する工程と、
f) 120μLのアッセイ緩衝液を96ウェルV底プレートの各ウェルに添加する工程と、
g) 96ウェル平底プレートにおける2列の別々のウェルに、工程dのp−ニトロフェノールの各標準使用液25μLを添加する工程と、
h) 工程gの平底プレートにおけるp−ニトロフェノール標準物質を含有しないウェルに、動物から得られた組織試料を1ウェルあたり25μL添加する工程と、
i) ブランクとして用いるために、PBSまたはddHO 25μLを平底プレートの空のウェルに添加する工程と、
j) V底プレート中のアッセイ緩衝液110μLを平底アッセイプレートの各ウェルと接触させる工程と、
k) この平底アッセイプレートをプレートリーダーに配置し、405nmで測定する工程と、
l) 上記標準溶液の光学濃度(OD)値を、p−ニトロフェノール(nmol/ウェル)に対してプロットすることによって検量線を作成する工程と、
m) 検量線の勾配(OD/nmol)を計算する工程と、
n) 試験試料およびブランクの両方に関して、3分と1分との間の吸光度変化(ΔOD3min−1min)を計算する工程と、
o) 式、
Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=(ΔODsample−ΔODblank)÷勾配(OD/nmol)÷0.025ml÷2分
を用いて、Lp−PLA2活性を計算する工程と
を含む。
【0036】
吸光度変化の計算は、様々な間隔で行うことができ、これには、2分と0分との間、1分と0分との間、および約10分間の反応時間全体にわたって測定される約15秒間隔が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示する。これらの実施例は、添付されている特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定しない。
(実施例)
【0038】
別段の指定がない限り、すべての血漿試料が、ヒトから収集されたものであり、ヒト血漿である。別段の指定がない限り、以下の実施例の血漿試料は以下の通り収集した。EDTAを含有するチューブの中に血液を収集した。チューブを1730×gで10分間遠心した。血漿をホールピペットでチューブ内に移して、−80℃で保存した。
【0039】
Lp−PLA2阻害物質をin vitroで組織試料に添加した実験には、別段の指定がない限り、以下の手順を用いた。PBS中に9mg/mLの保存液を調製した。一連の使用希釈液を、90000、9000、6000、3000、1000、500、200、100、および0ng/mLの濃度となるようにPBS中に調製した。各使用希釈液1μLを、血漿または血清100μl毎に添加し、その後、37℃で1時間インキュベートした。血漿または血清中のLp−PLA2阻害物質の最終濃度は、900、90、60、30、10、5、2、1、および0ng/mLであった。
(実施例1)
【0040】
Auto PAF AHアッセイキット
Azwell社製(大阪(日本))のAuto PAF AHアッセイキットは、米国内では、Karlan Research Products Corporation社(Santa Rosa,CA)を介して購入できる。このアッセイをOlympus Au640臨床化学分析器で評価した。それをこの実施例1で記述する。
【0041】
材料
Azwell Auto PAF−AHアッセイキット:
R1:200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH7.6
R2A:20mMクエン酸一水和物、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH4.5
R2B:90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリン
【0042】
アッセイ手順
1. オリンパスAu640アナライザーに以下の表からアッセイパラメータを入力し、PAF AHアッセイプログラムを作成する。
試料容量:2μL
試薬1:240μL
試薬2:80μL
波長(主波長):410nm
波長(副波長):480nm
方法:速度
ポイント1(FST):14
ポイント1(LST):21
較正タイプ:MB
式:Y=AX+B
カウント:2
MBタイプ係数:11595
【0043】
2. 以下の試薬を調製する。
R1:Azwell Auto PAF AHアッセイキット中に供給されている通りにこの緩衝溶液を用いる。4℃で保存する。光から保護する。
R2:R2AおよびR2B(Azwell Auto PAF AHアッセイキット中に供給されている)を19:1の比率で混合することによって、R2使用液を調製する。4℃で保存する。光から保護する。
【0044】
3. 各血漿試料を30μL以上、2mLのSarstedtマイクロチューブ(Sarstedt Incorporation社、部品番号72.694.007)に分注する。短時間遠心して、血漿中の線維素塊/粒子を沈殿させる。
【0045】
4. 血漿試料を含有するSarstedtチューブを、測定器に適合している試料チューブ上に配置する。Au640分析器で血漿試料を分析する。PAF AHアッセイプログラムを選択した後、以下に示す分析手順が自動的に実施される。
試験試料(2μL)+R1(240μL)、37℃、5分間[0〜5分]
R2(80μL)を添加、37℃、5分間[5〜10分]
410nmおよび480nmで吸収度を測定[6〜8分間]
PAF AH活性(IU/L)を計算
【0046】
5. 各分析の品質対照として、Bio−Rad Lyphochek(登録商標)アッセイ済み化学対照レベル1およびレベル2(C−310−5およびC−315−5、Bio−Rad社、Hercules,CA)を含める。これら2種類の対照におけるLp−PLA2活性値は正常ヒト血漿Lp−PLA2の範囲内にある。
(実施例2)
【0047】
Lp−PLA2活性測定用の高スループット放射測定アッセイ
試料中のLp−PLA2活性を測定するための高スループット放射分析を開発した。このアッセイは国際公開第2005/001416号に十全に記載されている。高スループット活性放射測定アッセイの概要をこの実施例2に提供する。
【0048】
機器
シンチレーションカウンター TopCount(登録商標)マイクロプレートシンチレーションおよびルミネッセンスカウンター、Perkin−Elmer社(旧名Packard社)、CA
遠心分離機 Allegra 25Rベンチトップ遠心分離機、Beckman Coulter社、CA
プレートシェーカー Lab−Line Titerプレートシェーカー(VWR社カタログ番号57019−600)
オーブン Barnstead/Thermolyne社、シリーズ9000、温度領域10〜250℃(VWR社カタログ番号52205−065)
12チャネルピペッター ブランドTransferpette(登録商標)−12、BrandTech Scientific社、Essex,CT
【0049】
材料
ポリプロピレンプレート Costar*ブランド96ウェルプレート、ポリプロピレン未滅菌、ふた無し、Costar3365、Corning社、Corning,NY(VWR社カタログ番号29444−104)
PicoPlateプレート 溶媒耐性96ウェル白色マイクロプレート、Perkin Elmer Life Sciences社、Boston,MA(カタログ番号6005162)
【0050】
試薬
HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、Sigma Chemical社、St.Louis,MO(カタログ番号H9897100)
塩化ナトリウム、Sigma Chemical社、St.Louis,MO(カタログ番号S5150;5.0M)
EDTA、Sigma Chemical社、St.Louis,MO(カタログ番号E7889;0.5M)
H−血小板活性化因子、1−O−ヘキサデシル−[アセチル−H(N)]、(H−PAF)−NEN Life Science Products社、Roxbury,MA(カタログ番号NET−910、エタノール溶液として販売、通常0.1mCi/mL、250μCi)
C16−PAF、(1−ヘキサデシル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン):Avanti Polar Lipids社、Alabaster,AL(カタログ番号878110;5.0mg/mL)
MicroScint−20:Perkin Elmer Biosciences社、Boston,MA(カタログ番号6013621)
無脂肪酸ウシ血清アルブミン(BSA):Sigma Chemical社、St.Louis,MO(カタログ番号A0281;1.0グラム)
トリクロロ酢酸(TCA):Sigma Chemical社、St.Louis,MO(カタログ番号T9159)
【0051】
アッセイ緩衝液
100mM Hepes、pH7.4
150mM NaCl
5mM EDTA
室温で保存する。
【0052】
手順
1. H−PAF使用液(反応100回分)を調製する:
a) H−PAF(10μM=10.0Ci/mmolで0.1mCi/mL)480μLと、[C16]PAF(5.0mg/ml;MW:524)125.3μLとをチューブに分注する。
b) 混合して、フード内で空気乾燥させる。
c) 乾燥したペレットをアッセイ緩衝液12.0mlに再懸濁し、100μM PAF(すなわち、H−PAF 0.4μMと、無放射性[C16]PAF99.6μM)の使用液にする。
2. アッセイ緩衝液(総カウント用およびブランク用;n=8)または血漿試料5μLを96ウェルプレートに2つ組で分注する。
3. プレートを21℃で平衡化する。
4. H−PAF溶液100μLを各ウェルに添加し、混合して、プレートを21℃で5分間インキュベートする。
5. 氷冷BSA溶液(50mg/mL)50μLをすべてのウェルに添加し、混合して、プレートを冷蔵庫内で5分間インキュベートする。
6. 氷冷TCA溶液(56%)25μLを各ウェルに添加し、混合して、プレートを冷蔵庫内で15分間インキュベートする。
7. プレートを4℃、6000gで15分間遠心する。
8. 96ウェルポリスチレンプレートに上清45μLを分注する。
9. 6箇所の総カウントウェルにH−PAF使用液10μLを添加する。
10. MicroScint−20シンチレーションカクテル200μLを各ウェルに添加する。
11. プレートをプレートテープでカバーし、最大スピードで10分間ボルテックス混合する。
12. 濡らしたティッシュでプレートを拭き、汚れていない別のティッシュを用いて乾燥させることによって、プレートから静電気を除く。
13. TopCountシンチレーションカウンターでそれぞれ2分間カウントを行う。
14. Lp−PLA2活性を計算する:
Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=160×(CPM45μL−supe−CPMBlanks)/(CPM10μL−spiking−CPMBlanks
式中、CPM45μL−supeは各試料の平均カウントであり、
CPMBlanksはブランクの平均カウントであり、
CPM10μL−spikingは、総カウントの平均したカウントである。
(実施例3)
【0053】
Auto PAF AHアッセイと高スループット放射測定アッセイとの相関関係
実施例2で記載の高スループット放射測定アッセイを用いて、3箇所の臨床試験所で、健常ヒトボランティアから得た120の血漿試料からなるパネルにおけるLp−PLA2活性をアッセイした。同じ試料パネルを、実施例1に記載のAzwell社製Auto PAF AHアッセイを使用し、Olympus Au640分析器でアッセイした。
【0054】
同じ試料パネルに関して高スループット放射測定アッセイによって生成されたデータとの相関関係を得た。3箇所の臨床試験所における、Auto PAF AHアッセイ対、放射測定アッセイの相関係数(r)はそれぞれ0.96、0.94、および0.95であった。Auto PAF AHアッセイにおける2検体の試料間の平均CVは2.14%であった。
(実施例4)
【0055】
低スループット放射測定アッセイ
Lp−PLA2活性を測定できる低スループット放射測定アッセイを以下に示す。
【0056】
材料
シンチレーションバイアル Wheaton Omni Vials社、Millville,NJ(カタログ番号225402)
シンチレーション液 EcoLite(商標)、ICN社、Costa Mesa,CA(カタログ番号882475)
【0057】
機器
ベータ線カウンター Beckman液体シンチレーションカウンター、LS 5000TA、Beckman Instruments社、Fullerton,CA
水浴 Fisher Scientific社、Edison,NJ
微量遠心機 Jouan社、Winchester,VA、モデル番号A−14
【0058】
試薬
HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸) Sigma Chemical社、St.Louis、MO(カタログ番号H9136)
塩化ナトリウム Sigma Chemical社、St.Louis、MO(カタログ番号S7653)
クロロホルム Aldrich Chemical社、Milwaukee,WI(カタログ番号36,692−7)
メタノール Aldrich Chemical社、Milwaukee、WI(カタログ番号27,047−4)
H−血小板活性化因子、1−O−ヘキサデシル−[アセチル−H(N)]、(H−PAF) NEN Life Science Products社、Roxbury,MA(カタログ番号NET−910、エタノール溶液として販売、通常0.1mCi/mL)
C16−PAF、(1−ヘキサデシル−2−アセチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン) Avanti Polar Lipids社、Alabaster,AL(カタログ番号878110、5mg/mL CHCl溶液として販売)。
【0059】
アッセイ緩衝液
HEPES/NaCl緩衝液:50mM HEPES、150mM NaCl、37℃、pH7.4。
【0060】
アッセイ溶液
H−PAF使用液:5μCi(通常は販売会社によって供給される溶液50μL)のH−PAF保存液を、1.4mLのガラスバイアルにピペットで移す。340μg(5mg/mL溶液68μL)のC16−PAFを添加する。換気フード内における穏やかな窒素気流の下で乾燥するまで気化させる。HEPES/NaCl緩衝液1.3mLで再構成する。これによって、アッセイチューブ約62本分として十分な使用液が調製されるであろう。
【0061】
アッセイマスターミックス:15mLポリプロピレンチューブ内で、HEPES/NaCl緩衝液7.3mLと、H PAF使用液1.1mLとを混合する。血漿試料を添加した後、最終反応混合物中のPAF(無標識C16−PAF+H−PAF)最終濃度は50μMである(反応容量200μLに10nmolのPAFを含有する)。
【0062】
血漿中のLpPLA2活性の阻害を試験するために、以下の通りにアッセイを行った。
(1)HEPES/NaCl緩衝液110μL+Lp−PLA2阻害物質の適当な使用希釈液20μL+血漿試料50μLを、1.5mL微量遠心チューブに添加し、37℃で、15分間インキュベートした。
(2)3H−PAF使用液20μLを添加し、試料を37℃で30秒インキュベートした。
(3)CHCl/CHOH 600μLを添加して反応を終了させ、ここに記載のアッセイ手順によって処置を行った。
【0063】
アッセイ手順
1. 血漿試料を融解させ、温度平衡に至るまで37℃の水浴の中に置く。
2. アッセイマスターミックス150μLを1.5mLのポリプロピレンチューブに添加し、37℃の水浴の中に置く。温度平衡させるために5分間置く。
3. 緩衝液ブランク用に血漿試料50μLまたはHEPES/NaCl緩衝液50μL(すべての試料を2検体でアッセイする)を、アッセイマスターミックスを含有する適当なチューブに添加し、短時間ボルテックスし、37℃の水浴の中で30秒間インキュベートする。
4. CHCl/CHOH溶液600μLを添加することによって反応を停止させ、よくボルテックスする。
5. 遠心する直前に、試料再度、短時間ボルテックスする。微量遠心機内で、最高回転数で、2分間遠心することによって、有機物質相と水相とを分離する。
6. 上側の水相250μLを収集し、新規の1.5mLポリプロピレンチューブに移す。
7. CHCl 250μLを添加し、よくボルテックスする。
8. 微量遠心機内で、最高回転数で、1分間遠心することによって、有機物質相と水相とを分離する。
9. 上側の水相150μLを収集し7mLのシンチレーションバイアルに移す。
10. EcoLite(商標)または同等な液体シンチレーション液2mLを添加する。
11. cpm、計数効率、およびdpmを決定するように設定されているカウントプログラムを用いて、液体シンチレーション中の試料のカウントを行う。
12. 反応液中の総放射能を測定するために、アッセイマスターミックスの2検体150μLアリコートのカウントを行う。
【0064】
データの縮小および分析
Lp−PLA活性の計算には、cpm値またはdpm値のいずれを用いてもよい。試料、緩衝液ブランク、および総放射能バイアルにおける計数効率が同じ場合には、cpm値を用いることができる。計数効率の相違が観測された場合には、dpm値を用いるべきである。この報告におけるすべての結果に関して、活性計算にdpm値を用いた。生データからLpPLA活性(nmols/分/mLとして、報告される)を計算するには、式
((x−y)÷z)×40
を用い、式中、
x=血漿試料のcpm(またはdpm)×1.65(これは、各抽出における水相の全容量に関して補正する。この補正は、各抽出後に収集される水相が一部分のみなので必要である。)
y=緩衝液ブランクのcpm(またはdpm)×1.65(2検体測定の平均)である。
z=総放射能試料のcpm(またはdpm)を10で割ったものである(各反応チューブ内には10nmolのPAFが存在する)(2検体測定の平均)。
40=結果をnmol/分/mLに調整する係数である(各反応は30秒間であり、各反応で使用された血漿の容量は50μLである)。
(実施例5)
【0065】
Auto PAF AFアッセイおよび低スループット放射測定アッセイによって測定された、Lp−PLA2活性の阻害の比較
6人のヒト対象から、臨床試験中にLp−PLA2阻害物質をin vivoで薬物投与した後の様々な時点に血漿を収集した。下記に示す化学式Iを、対象#17および#18には120mg、対象#24および#25には180mg、そして、対象#21および#22には240mg投与した。対象#21および#25は別の日にプラセボを受容した。実施例4に記載の低スループット放射測定アッセイによってLp−PLA2活性を測定したところ、薬物処置を受けた6人の対象全員で>90%の阻害が観測された。しかし、実施例1に記載のAuto PAF AHアッセイによって測定した場合には、Lp−PLA2の阻害が明らかでなかった。Auto PAF AHアッセイは、in vivoでのLp−PLA2の薬物阻害に対して非感受性である。下記表1を参照のこと。
【0066】
【表1】

【0067】
Olympus Au640におけるAuto PAF AHアッセイの、測定間可変性および測定内可変性は、一貫して低く、2検体相互のCVは5%未満であった。この実験では、2検体相互の平均CVは、プラセボ試料では2%、そしてすべての薬物試料では3%であった。しかし、Auto PAF AHアッセイで測定されたLp−PLA2活性は、薬物対象およびプラセボ対象の両方で、経時的な変動を示した。同様に、プラセボ対象の放射測定活性値は、経時的に変動を示し、Auto PAF AHアッセイと比較して、%CVが高くなっていた。表2を参照のこと。観測された、プラセボ対象のLp−PLA2活性の可変性は、生物学的な可変性のようである。
【0068】
【表2】

【0069】
下記に化学式I、すなわち2−(2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル)−1 H−キノリン−4−1−イルN−(4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イルメチル)−アセトアミド酒石酸水素塩を示す。これは国際公開第02/30904号に記載されている。
【0070】
【化2】


(実施例6)
【0071】
Auto PAF AHアッセイおよび低スループット放射測定アッセイによって測定されたLp−PLA2活性阻害の比較
臨床試験中に第2のLp−PLA2阻害物質100mgを受容した8人の対象から得た血漿試料を評価した。この研究に使用されたLp−PLA2阻害物質、すなわち1−(N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)−N−(4(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)−アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5,6−トリメチレンピリミジン−4−オン酒石酸水素塩を下記に化学式IIとして示す。これは、国際公開第01/60805号に記載されている。
【0072】
【化3】

【0073】
これら8人の対象のうち4人は、別の日にプラセボを受容した。
【0074】
Lp−PLA2阻害物質のin vivo投与の低スループット放射測定アッセイを用いて、90%を超えるLp−PLA2活性の阻害が観測された。しかし、Auto PAF AHアッセイでは阻害が測定されなかった(表3を参照)。
【0075】
Auto PAF AHアッセイによって測定されたLp−PLA2活性値は、薬物対象およびプラセボ対象の両方で変動を示した。これは明らかに生物学的変動によるものである。
【0076】
【表3】


(実施例7)
【0077】
基質特異性試験
Azwell社(大阪(日本))製造の1−ミリストイル−2−(p−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリン基質を用いた、手動の比色分析Lp−PLA2活性アッセイを開発した。このアッセイは、Auto PAF AHアッセイに対応する、分光光度プレートリーダーに適合したマイクロタイタープレートバージョンである。このアッセイは、基質の物理学的特性を評価するのに用いた。ここにでは、基質の特異性に関するデータを示す。
【0078】
材料
R1:200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH7.6、4℃で保存する。
R2A:20mMクエン酸一水和物、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH4.5、
R2B:1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリン、90mM
p−ニトロフェノール:Sigma−Aldrich Chemical社、St.Louis、MO(カタログ番号1048−25G)
エタノール:Sigma−Aldrich Chemical社、St.Louis、MO(カタログ番号7023)
メタノール:VWR International社、West Chester,PA(カタログ番号EM−MX0482−6)
【0079】
試薬調製
R2:R2AおよびR2Bを10:1の比率で混合する。4℃で保存する。使用前に2週間より長い間保存しない。
p−ニトロフェノール標準物質:メタノール中に1M 4−ニトロフェノール溶液を調製する。100μL、75μL、50μL、25μL、10μL、5μLの1M溶液を1mLのメタノール中に希釈して、それぞれ、100、75、50、25、10、および5nmol/μL保存液を調製する。保存液100μLをメタノール900μLに希釈(1:10希釈)することによって、各標準物質の使用液を作製する。保存液および使用液の両方を4℃で保存する。
【0080】
アッセイ手順
1. プレートリーダー(SPECTRAmax(登録商標)PLUS384 UV/VISマイクロプレート分光光度計、Molecular Devices社、Sunnyvale,CA)の温度を21℃に設定する。
2. マルチチャンネルピペッターを用いて、96ウェル平底アッセイプレート(Costar 3595、Corning社、Corning,NY)の各ウェルにR1を120μL添加する。
3. 第1列および第2列の2つ組のウェルそれぞれに、p−ニトロフェノール標準物質使用液10μLを添加する。検量線を作成するのに、7種類の標準物質濃度、すなわち0、5、10、25、50、75、100nmol/ウェルを用いる。ウェル1Hおよび2Hをブランク対照用に残しておく。
4. 血漿5μLを各ウェルに個々に添加する。各試料を2検体で用いる。ウェル1Hおよび2Hに、血漿の代わりにddHO 5μLを添加することによって、ブランク対照を用意する。プレート内を手操作でよく混合する。
5. プレートを37℃で5分間インキュベートする。
6. プレートをプレートリーダー内、21℃で5分間冷却する。
7. プレートをプレートリーダーから取り出す。マルチチャンネルピペッターを用い、各添加の後でチップを交換し、各ウェルにR2を40μL添加する。R2添加を開始したときを記録する。
8. マルチチャンネルピペッターを用い、各添加の後でチップを交換し、各ウェルにエタノールを2μL添加する。この工程の目的は、ウェル中に生成した気泡をすべて取り除くことである。最初にR2を添加してから、工程#9でプレートを測定するまでの間の時間は4分間である。
9. 2分間隔で20分間、405nmでプレートを測定する。プレート測定の前に、2分間の自動混合が含まれる。
【0081】
活性計算
1. 0分および20分における7種類の標準物質の平均OD値(OD0minおよびOD20min)を、p−ニトロフェノール(nmol/ウェル)に対してプロットすることによって検量線を生成する。検量線の勾配を計算する。
2. 各ブランクウェルにおける2分と4分との間のΔOD値(OD4min−OD2min)を計算し、ブランクにおける2つのΔOD値を平均する。
3. 各試料ウェルについて、2分と4分との間のΔOD値を計算し、次いで、Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=(ΔODsample−ΔODblank)÷勾配(OD/nmol)÷0.005ml÷2分を計算する。
4. 2検体試料ウェルの平均活性値を計算する。
【0082】
結果
2種類のLp−PLA2阻害物質化合物、すなわち、実施例6に記載の化学式IIと、下記に示す化学式IIIとを用いることによって、Lp−PLA2に対する基質特異性をアッセイした。
【0083】
【化4】

【0084】
化学式III、すなわち、1−(N−(2−(ジエチルアミノ)エチル)−N−(4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ベンジル)アミノカルボニルメチル)−2−(4−フルオロベンジル)チオ−5−(1−メチルピラゾール−4−イルメチル)ピリミジン−4−オンは、国際公開第00/66567号に記載されている。
【0085】
4人の健康な患者から得た血漿試料を、様々な量の化学式IIIと共にin vitroでインキュベートした。阻害物質溶液を反応混合物に添加するために、100mM保存液をDMSO中に調製した。10mMから0.01nMまでの範囲の濃度が得られるよう、一連の1:10使用希釈液をDMSO中に調製した。各使用希釈液の1μLアリコートを各反応に添加した。Lp−PLA2阻害物質の最終濃度は、60000、6000、600、60、6、0.6、0.06、0.006、0.0006、0.00006、および0(nMにおける)であった。
【0086】
表4に示す通り、4種類の血漿すべてがLp−PLA2活性の低下を示した。4つの試料すべてで、化学式IIIによってもたらされた阻害が90%を超えた。放射測定活性アッセイで使用された、天然のLp−PLA2基質であるPAFに匹敵するものである。化学式IIも、同じ4つの血漿試料と共にin vitroでインキュベートされた際に、90%を超える、基質加水分解の阻害を示した。
【0087】
【表4】

【0088】
上記の実験で使用されたアッセイ緩衝剤は、界面活性剤を高濃度で含有する(7.5mM CHAPSおよび10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム)。アッセイから界面活性剤を除いた場合、化学式IIIは、血漿試料#10における加水分解活性の約65%を阻害したのみであった。平行実験において界面活性剤が添加された場合には、95%を超える阻害が得られた。したがって、この基質は、表5に示す通り、界面活性剤を含む緩衝液の存在下でアッセイされた場合にのみ、Lp−PLA2に特異的であると考えられる。
【0089】
【表5】


(実施例8)
【0090】
Lp−PLA2活性測定用の薬物感受性修正比色分析アッセイ
Auto PAF AHアッセイでは、血漿試料が約160倍に希釈され、基質はKmより高い濃度で使用される。基質の濃度がKmより高い場合には、Lp−PLA2に結合した薬物と基質が競合し、酵素からの薬物解離を促進するようである。例えば、Auto PAF AHアッセイで使用される基質濃度は1100μMであり、これはKmより5倍以上高い(酵素源として血漿を使用し、Auto PAF AHプロトコールによってアッセイした場合、Kmは約200μMである。実施例1を参照)。アッセイ反応開始前に血漿を、Auto PAF AHアッセイにおける緩衝剤R1と共にプレインキュベーションするのも、薬物解離を促進するようである。したがって、Auto PAF AHアッセイと比較して、大きな血漿試料容量と、低い基質濃度とを用いることによって、本発明のアッセイを修正した。さらに、基質を添加する前に、血漿をR1と共にプレインキュベーションする工程を除いた。さらに、緩衝液R2Aを除去することによって、反応速度が上昇し、次にこれによって、Auto PAF AHアッセイと比較して、さらに低い基質濃度およびさらに短いアッセイインキュベーション時間の使用が可能となった。薬物の解離は、アッセイインキュベーション時間中に起こる。
【0091】
材料
R1:200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH7.6、
R2B:90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリン
p−ニトロフェノール:Sigma−Aldrich Chemical社、St.Louis、MO(カタログ番号1048−25G)
【0092】
試薬調製
アッセイ緩衝剤:R1およびR2Bを110μLに対して0.66μLの比率で混合する。氷上または4℃で保存する。使用の直前に調製する。
p−ニトロフェノール標準物質:1M p−ニトロフェノール溶液をメタノール中に調製する。1M p−ニトロフェノール100、75、50、25、10、および5μLをメタノール1mLに希釈し、それぞれ、100、75、50、25、10、および5nmol/μL保存液を調製する。保存液40μLをメタノール960μLに希釈(1:25希釈)することによって、各標準物質の使用液を調製する。保存液および使用液を4℃で保存する。
【0093】
アッセイ手順
1. マルチチャンネルピペッターまたはロボットを用いて、アッセイ緩衝液120μLを96ウェルV底プレート(Costar 3897、Corning社、Corning,NY)の各ウェルに添加する。
2. 別の96ウェル平底プレート(Costar 9017、Corning社、Corning,NY)における第1列および第2列の2つ組のウェルに、p−ニトロフェノール標準物質使用液25μLを添加する。検量線を作成するのに、7種類の標準物質濃度、すなわち0,5,10,25,50,75,100nmol/ウェルを用いる。ブランク対照用にPBS 25μLをウェル1Hおよび2Hに添加する。
3. 線維素塊/粒子を沈殿させるために、血漿を短時間遠心する。p−ニトロフェノール標準物質を含有している、同じ平底プレートの第3〜12列に1ウェルあたり25μLの血漿を添加する。各試料を2検体で用いる。
4. マルチチャンネルピペッターまたはロボットを用いて、アッセイ緩衝液110μLをV底プレートから、血漿試料およびp−ニトロフェノール標準物質を含有している平底アッセイプレートに移す。Zymark RapidPlate(Caliper Life Sciences社、Hopkinton,MA)は、ウェルに気泡を発生させずに、この工程を行うことができる。R1の界面活性剤含有量が高いため、他の移動方法は気泡を発生させる可能性がある。気泡を除去するのに小容量のエタノールを用いることができる。
5. アッセイプレートを直ちにプレートリーダー(SPECTRAmax(登録商標)PLUS384 UV/VISマイクロプレート分光光度計、Molecular Devices社、Sunnyvale,CA)上に配置し、15秒間自動混合を行う。
6. 15秒間隔で10分間、室温、405nmでプレートを測定する。酵素反応開始(アッセイプレートへのアッセイ緩衝液の添加)から、最初の吸光度測定の完了までの時間は、1分間である。
このアッセイは室温で行うことができる。実験室内または実験室間で室温が変動する場合には、より厳密な温度調整が必要となることもある。
【0094】
活性計算
1. 0分および10分における7種類の標準物質の平均OD値(OD0minおよびOD10min)を、p−ニトロフェノール(nmol/ウェル)に対してプロットすることによって検量線を生成する。検量線の勾配を計算する。
2. 1分と3分との間における各ブランクウェルの値の変化(ΔOD)(OD3min−OD1min)を計算し、ブランクにおける2つのΔOD値を平均する。
3. 各試料ウェルに関して、1分と3分との間のΔOD値を計算し、次いで、Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=(ΔODsample−ΔODblank)÷勾配(OD/nmol)÷0.025ml÷2分を計算する。
4. 2検体試料ウェルの平均活性値を計算する。
(実施例9)
【0095】
Lp−PLA2阻害物質存在下におけるLp−PLA2活性の放射測定対、薬物感受性修正比色分析測定の比較
Lp−PLA2阻害物質を投与された健康ヒト対象から得た血漿試料のLp−PLA2活性を、実施例2に記載の高スループット放射測定アッセイおよび以下の小さな変更を伴った実施例8の方法を用いて測定した。使用されたウェルあたりの血漿容量は25μLであった。基質濃度は1125μMであった。また、2μLの基質溶液R2Bを40μLのR2Aに混合し、その後、95μLのR1をさらに混合して、アッセイ緩衝液を調製した。投与後の5つの時点(投与後0.5、1.0、6.0、48、および96時間)で血漿試料を収集した。表6に示す通り、各試料におけるLp−PLA2活性およびパーセント阻害を測定するのに、放射測定アッセイと比色分析アッセイとの両方を使用した。表6に示す通り、放射測定アッセイによって測定された、Lp−PLA2活性のパーセント阻害は、投与の1時間後に約94%のピーク阻害を示した。一方、薬物感受性の修正比色分析アッセイは、6時間後の時点で、活性の約64%を阻害するピーク阻害を示した。これらのデータは、Lp−PLA2阻害物質を投与された動物から得た試料におけるLp−PLA2活性の阻害を測定するのに、両方の方法が使用できることを実証するものである。投与の96時間後には、ヒトから得た血液試料は、Lp−PLA2阻害物質を本質的に含まないものとする。
【0096】
【表6】


(実施例10)
【0097】
Lp−PLA2阻害の臨床試験から得た血漿試料の試験
新規のLp−PLA2阻害物質である化学式I(実施例5を参照)の臨床試験に採用された4人のヒト対象は、異なった用量の薬物を受容した。対象#13、#36、#24、および#41の薬剤投与量は、それぞれ、80mg、120mg、180mg、および240mgであった。血漿は、薬物投与の0、0.5、1、および3時間後に収集した。これらの血漿試料のLp−PLA2活性を、実施例4に記載の低スループット放射測定アッセイ、実施例1に記載のAuto PAF AHアッセイ、および実施例8に記載の薬物感受性修正比色分析アッセイによってアッセイした。放射測定活性アッセイは、4人の対象すべてで、投与の3時間後にLp−PLA2活性が>90%阻害されたことを示したが、Auto PAF AHアッセイは薬物阻害を示さなかった。しかし、表7に示す通り、実施例8の薬物感受性修正比色分析アッセイは85〜90%の薬物阻害を示した。
【0098】
【表7】

【0099】
同様に、表8に示す通り、放射測定アッセイおよび薬物感受性の修正比色分析アッセイは両方とも、Lp−PLA2阻害物質を投与した後、Lp−PLA2活性への測定時間依存的な効果を示した。表8に示す通り、Auto PAF AHアッセイを用いた場合、Lp−PLA2活性への影響はほとんど観測されなかった。
【0100】
【表8】

【0101】
放射測定アッセイおよび薬物感受性の修正比色分析アッセイで生成された活性値は異なっているが、これらの16の臨床血漿試料における2つのアッセイ相互の相関関係はr=0.975である。したがって、本明細書に記載の、薬物感受性修正比色分析法は、Auto PAF AHアッセイと同じ基質を用いているにも関わらず、薬物で処置されたヒト対象における、Lp−PLA2のin vivo薬物阻害を検出する能力があることを実証しており、一方、Auto PAF AHアッセイはそれに失敗している。
(実施例11)
【0102】
Lp−PLA2阻害の臨床試験から得た追加の血漿試料の試験
化学式IのLp−PLA2阻害物質に関する臨床試験における10人の対象から血漿試料を収集した。対象#109、#114、#115、#142、および#145は化学式Iを50mg受容し、一方、対象#118、#119、#121、#123、および#124はこの化合物を120mg受容した。これらの血漿試料のLp−PLA2活性を、実施例4に記載の高スループット放射測定アッセイ、実施例1に記載のAuto PAF AHアッセイ、および実施例8に記載の薬物感受性修正比色分析アッセイによってアッセイした。一貫して、Auto PAF AHアッセイは、これらの試料におけるLp−PLA2活性の薬物阻害の測定に失敗しており、対象#123で検出された29%の阻害が最大のものであった。しかし、実施例8の薬物感受性修正比色分析アッセイは、すべての対象で放射測定アッセイに匹敵する薬物阻害を示した。表9に示す通り、放射測定アッセイおよび薬物感受性修正比色分析アッセイでの阻害値は、4つの時点(#114/12hr、#115/12hr、#142/0.5hr、および#142/12hr)を除いたすべて15%以内の一致を示した。
【0103】
【表9−1】


【表9−2】


【表9−3】

【0104】
この研究で分析された100の試料に関して、薬物感受性の修正比色分析アッセイと、放射測定アッセイとの間で、r=0.95の相関関係が得られた。Auto PAF AHアッセイは、これらの投薬試料では、放射測定アッセイとの相関関係が低かった(r=0.31)。
(実施例12)
【0105】
アッセイダイナミックレンジ
定量における測定器下限
0.67μLのR2Bを含有する110μLのR1に25μLのPBSを添加した。16の複製を調製し、マイクロタイタープレート全体からランダムに選ばれたウェル内に入れた。405nmの吸光度を測定し、複製間の標準偏差を計算した。標準偏差(6xSD)の6倍を、このマイクロタイタプレートリーダー(SPECTRAmax(登録商標)PLUS384 UV/VISマイクロプレート分光光度計、Molecular Devices社、Sunnyvale,CA)の定量の下限と定義した。1の複製から得られたODの平均測定値は0.0437であり、標準偏差は0.0009であった。このマイクロタイタプレートリーダーの定量の下限は、アッセイインキュベーション中における、OD単位6x0.0009すなわち0.0054の変化と定義された。
【0106】
p−ニトロフェノールの線形検出範囲
p−ニトロフェノールの系列希釈をメタノール中に調製した。各濃度について、25μLのp−ニトロフェノールを、マイクロタイタープレート中のR1(R2Bを含まない)110μLに添加した。405nmにおける吸光度は、0.05から125nmolまでのp−ニトロフェノールで線形であった(r=0.996)。しかし、0.05nmol p−ニトロフェノール試料のブランク補正した吸光度は0.00415しかなかった。これは、上記に定義したマイクロタイタプレートリーダーの定量の下限である0.0054 ODより低い。したがって、p−ニトロフェノールの線形検出範囲は、p−ニトロフェノールの1ウェルあたり0.1から125nmolまでの間に設定される。
【0107】
アッセイダイナミックレンジ
自家生成した組換型ヒトLp−PLA2タンパク質(hrLp−PLA2)と、ヒト血漿から自家精製したLp−PLA2タンパク質との両方を用いることによって、アッセイダイナミックレンジを定義した。
【0108】
hrLp−PLA2の系列希釈を作製し、各希釈hrLp−PLA2 25μLを薬物感受性の修正比色分析アッセイでアッセイした(データを表10に示す)。2番目に少ない量のhrLp−PLA2では、206ng/mLがアッセイされ、これは1.5nmol/分/mlの活性を示した。現行のアッセイ設定において、そのような活動レベルは、2分間の基質加水分解反応で0.075nmolのp−ニトロフェノールを生成するのみであろう。したがって、これは、最終生産物であるp−ニトロフェノールの線形検出範囲より低い。13200ng/mLを超えるhrLp−PLA2はプラトー活性を示した。412から13200ng/mLまでの間のhrLp−PLA2活性は、R値0.997の線形性を示した。したがって、さらに下の限界およびさらに上の限界も定義できるかもしれないが、このアッセイのダイナミックレンジは、4.4から397nmol/分/mLまでの間のようである(表10を参照)。
【0109】
【表10】

【0110】
血漿から精製されたhLp−PLA2の系列希釈も作製し、各希釈液25μLを薬物感受性の修正比色分析アッセイでアッセイした(データを表11に示す)。精製されたhLp−PLA2タンパク質の活性は、6.25から1200ng/mLまでの範囲にわたり、R値0.97の線形性を示した。したがって、精製されたhLp−PLA2を用いて評価したダイナミックレンジは、2.47から363.60nmol/分/mLまでの間のようである(表11を参照)。これは、hrLp−PLA2によって定義されたものに匹敵する。精製されたhLp−PLA2によって決定されたダイナミックレンジの上限が比較的に低いのは、精製された産物中に存在する干渉因子および/または精製工程の間に導入される干渉因子の結果であるかもしれない。これをさらに調査するには、そのような精製タンパク質の利用可能性が限定されていることが障害となっている。
【0111】
【表11】


(実施例13)
【0112】
基質の安定性
室温で120分間以上15分間毎に吸光度変化をモニターすることによって、修正アッセイ緩衝剤(110μL R1+0.67μL R2B+25μL PBS)中での基質の安定性を検査した。ゆるやかな基質分解を反映して、吸光度は、ゆっくりではあるが一貫して2時間超の間増大するが、吸収度の変化は、15分間あたりOD単位0.002にすぎなかった。したがって、基質分解は、修正されたアッセイ条件下では、2時間を超える時間、穏やかなようである。アッセイは、完了するのに10分間しかかからず、活性は、2分間の反応時間に基づいて計算されるので、基質分解による吸光度変化は微々たるものであり、ブランク補正することが可能である。
(実施例14)
【0113】
ヒト血漿を緩衝液R1とプレインキュベーションすることの、薬物感受性への影響
Auto PAF AHアッセイでは、血漿を緩衝剤R1と共に37℃で5分間プレインキュベートする。このプレインキュベーション工程は、Lp−PLA2に結合した薬物の解離を反応開始前に加速している可能性がある。解離の加速が起こるかどうか試験するため、ヒト対象(#10)から得た血漿試料を、様々な量のLp−PLA2阻害物質と共に37℃で1時間インキュベートした。化学式IIの薬物でin vitroで処置された血漿25μLを、その後、100μLのR1と共に、室温で様々な時間プレインキュベートし、その後、40μLのR2を添加して(最終基質濃度1100μM)、室温でアッセイを10分間行った。血漿をR1と共にプレインキュベーションすることによって、薬物阻害が低減し、これは、特に薬物濃度が低いときに顕著であった。表12に示す通り、最高レベルの薬物阻害は、R1とR2とが予め混合され、プレインキュベーションせずに直接血漿に添加された場合に得られた。室温の代わりに37℃で、R1中で血漿をプレインキュベーションすると、薬物阻害がさらに悪化する。
【0114】
【表12】


(実施例15)
【0115】
薬物感受性への基質濃度の影響
Auto PAF AFアッセイでは、基質濃度が1100μMであるが、これはKmより5倍以上高い(酵素源として血漿を使用し、Auto PAF AHプロトコールによってアッセイした場合、Km=200μMである)。基質濃度が高いと、Lp−PLA2への薬物結合と競合する可能性がある。この可能性を試験するため、Lp−PLA2の阻害物質である化学式IIでin vitroで処置されたヒト血漿試料25μLを、予め混合されていて、様々な量の基質を含有しているR1(100μL)およびR2(40μL)に添加した。直ちに、基質加水分解を、室温で10分間モニターした。基質濃度が低い程、より大きな薬物阻害を示す。基質を154μM以下で用いた場合には、加水分解速度が遅いことによって、薬物濃度が高くなるのに連れて、活性値が定量の下限に近づいた。したがって、薬物阻害レベルを維持しながら、迅速な基質加水分解を誘導するためには、表13に示す通り、基質濃度はKmより若干上に維持するべきである。
【0116】
【表13】


(実施例16)
【0117】
薬物感受性へのヒト血漿試料容量の影響
Auto PAF AFアッセイでは、血漿2μLが320μLの反応でアッセイされ、これは、160倍の血漿希釈係数に相当する。血漿希釈率が高いと、Lp−PLA2からの薬物解離を促進する可能性がある。したがって、Lp−PLA2阻害物質である化学式IIでin vitroで処置された血漿試料5から50μLを、様々な容量のR1と、40μLのR2とで希釈し、最終容量が165μLとなり、1100μMの基質を含有するように調製した直ちに、加水分解を室温で10分間モニターした。表14に示す通り、血漿試料容量が大きいほど、大きな薬物阻害が観測された。
【0118】
【表14】


(実施例17)
【0119】
薬物感受性への緩衝液2A欠失の影響
Auto PAF AFアッセイでは、基質保存液R2Bを緩衝液R2A(20mM クエン酸一水和物、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウム、pH4.5)に予め混合する。緩衝液R2Aは、基質安定化剤として作用する。基質は、R2A中に希釈された後、4℃で14日間安定に維持される。R2Aをアッセイから除いた際に、より速い加水分解速度が観測された。例えば、180nmolの基質(R2B 2μL)と、25μLまたは50μLいずれかの血漿とを用いて、比色分析アッセイを行った。さらに、試料は、0μLまたは40μLいずれかのR2Aを含有していた。R1ですべての反応液を125μlまたは165μLのいずれかに希釈した。緩衝剤成分を予め混合し、ヒト血漿を添加して、反応を開始させた。直ちに、基質加水分解を室温で10分間モニターした。Vmax(ミリOD/分)を計算し、異なった条件相互で比較した。表15に示す通り、血漿容量に関わりなく、R2Aを除いた際に、より高い加水分解速度が観測された。
【0120】
【表15】

【0121】
R2Aは、pHが4.5であり、他のアッセイ緩衝液成分と比較して低いので、R2Aの添加によってアッセイ反応液のpHが影響を受けたかどうか測定した。R1 110μL、0.66μL R2B、および血漿またはddH2Oのいずれか25μLを含有するアッセイ反応液のpHは、それぞれ7.52と7.53であった。これらのアッセイ試料に40μLのR2Aを添加した場合、pHがそれぞれ7.43と7.42に低下した。基質のLp−PLA2加水分解速度へのR2Aの影響は、おそらくpH関連の影響より大きいものである。
【0122】
アッセイからR2Aを除くことによって加水分解速度が増大した。それによって、さらに低い基質濃度およびさらに短いアッセイインキュベーション時間の使用が可能となるが、これらは両方とも薬物解離を低減する。実施例14に記載の通り、154μMの基質およびR2Aを用いて25μLの血漿を測定した際、Lp−PLA2の活性値が定量の下限に近づいた。化学式IIでin vitroで処置された血漿(対象#10)50μLと、R1およびR2Bのみを含有している(R2Aを含まない)アッセイ緩衝液75μLとを用いて、基質滴定実験を反復した。アッセイを、室温で10分間、405nmでモニターし、Vmaxおよび薬物阻害を計算した。65μMという低い基質濃度の場合でさえ、薬物が900ng/mLおよび9000ng/mLのときに加水分解活性が定量の下限を超えている(表16を参照)。したがって、修正された比色分析活性アッセイでは、R2Aを除き、さらに、より低い基質濃度を組み込んだ。
【0123】
【表16】

【0124】
以前の研究によって、25μLのヒト血漿と併用する基質濃度を2200μMから273μMに低下させた際により高い薬物阻害が得られたことを示した。しかし、50μLの血漿を用い、基質濃度を273μMから65μMに低下させた際には、薬物阻害への有意な影響が観測されなかった。これは、血漿容量が比較的大きく、基質レベルがこの範囲で低い場合には、基質による薬物解離の促進がないことを示している。
(実施例18)
【0125】
実験計画ソフトウェア
元のAuto PAF AFアッセイの薬物無感受性に寄与する個々の因子を同定した後に、個々の因子の相互作用を調査する実験を設計するため、そして、適切なダイナミックレンジで薬物阻害を検出するための最適な組合せを特定するために、JMPソフトウェア(実験計画、本明細書では「DOE」)を用いた。
【0126】
DOE実験#1
第1のDOE実験では、緩衝液R1容量(2レベル)、血漿容量(4レベル)、基質濃度(8レベル)、および薬物処置(2レベル)を含めた4つの因子に注目した。[示されている基質濃度のレベルは、別段の支持がない限り、各反応に添加される、予め混合されたR2B/R1のアリコートにおける基質濃度を指す。]変数の完全な要因の組合せでは、128のアッセイ反応が必要となるであろうが、D−最適計画は48の異なった組合せを示唆した。予め化学式IIとin vitro、37℃で1時間インキュベートした後、あるいはインキュベートせずに、単一血漿試料を用いて、これらの48の反応を2検体で行った。基質をR1中に直接希釈し、その後、血漿を添加して、室温で加水分解を開始させた。Vmaxおよび薬物阻害は、室温、405nmにおける5分間にわたる吸光度の測定値に基づいて計算した。
【0127】
JMPは、血漿15μLまたは25μLと、273μMから1100μMの基質含有するR1 110μLとの組合せが、90%以上の薬物阻害を示すであろうと予測した。この条件セットは、適度に大きなVmaxも生じるであろう。そのため、薬物による強度の処置を受けた血漿が定量の下限未満まで低下することもないであろう。この実験に含まれていた最も低い基質濃度は、R1 110μL中における65μMであったが、この濃度では、血漿25μLを用いた場合(最終基質濃度53μM)に、93.41%の薬物阻害が検出されると予測された。しかし、予測されたVmaxは、薬物で処置されなかった試料でも16.79という低い値であった。そのような条件は、その後に最適化には進まなかったが、低レベルかる狭い範囲のLp−PLA2活性を有する特定の試料セットをアッセイするのに使用できるかもしれない。
【0128】
DOE実験#2
第2のDOE実験では、その前のDOE実験によって同定された条件に注目した。この実験では、R1容量(1レベル)、血漿容量(2レベル)、基質濃度(4レベル)、および薬物処置(4レベル)を含めたすべての変数の完全な要因の組合せを設計した。32条件を2検体でアッセイした。アッセイプロトコールは第1のDOE実験と同一であった。[示されている基質濃度のレベルは、今度も、別段の支持がない限り、各反応に添加される、予め混合されたR2B/R1のアリコートにおける基質濃度を指す。]Prediction Profilerは、血漿25μLと、545μMの基質を含有するR1 110μLとによって、薬物処置されていない血漿で76ミリOD/分のVmaxが生じ、900ng/mLの薬物でin vitroで処置された血漿では95%近くの薬物阻害を示すであろうと予測した。したがって、薬物感受性の修正アッセイでは、血漿25μLと、545μMの基質を含有するR1 110μLとを用い、このアッセイでの最終基質濃度は440μMとなる。
【0129】
代替の条件セット(血漿15μL、および545μMの基質を含有するR1 110μL、このアッセイにおける最終基質濃度475μM)も同定した。この条件では、94%の薬物阻害と、薬物で処置されていない血漿におけるVmax=53ミリOD/分が示唆されている。
(実施例19)
【0130】
反応時間
Lp−PLA2阻害薬でin vivoで処置された単一の対象から得た4時点のヒト血漿試料のLp−PLA2活性を、基質440μMおよび血漿25μLを含有する、薬物感受性の修正比色分析アッセイ(実施例8に記載)によってアッセイした。同じ4つの血漿試料は、同じアッセイプロトコールではあるが、血漿50μLと基質154μMを用いたアッセイプロトコールによってもアッセイした(表17参照)。各反応について、最初の5分間の加水分解をモニターし、反応開始から1分、2分、3分、4分、または5分の時間間隔に基づいて、5つのVmax値を計算した。高度のLp−PLA2阻害(投与後1および3時間)に対応する試料は、血漿25μLおよび基質440μMを用いた場合、さらに長いアッセイ反応時間にわたって、さらに高いVmax値を示した。これは、薬物と基質との間の競合が比較的強いそのような条件下では薬物解離が起こりうることを示している。対照的に、さらに多くの血漿と、さらに少ない基質とを用いた場合(例えば、50μL血漿/154μM基質)には、投与後1および3時間の時点におけるVmax値がアッセイ反応時間に依存しない。しかし、薬物阻害がより低い試料(0および0.5時間)では、アッセイ反応時間が長い程、Vmax値が低下する傾向があり、特に、血漿容量が大きく、基質濃度が低い場合には、かなりの総基質量が高レベルのLp−PLA2活性によって消費されるので、その傾向が強い。したがって、アッセイ性能は、3つの属性に影響を与える少なくとも3つの因子によって影響を受ける。すなわち、
(1)血漿容量が大きく、インキュベーション時間が短く、かつ基質濃度が低いと、高レベルの薬物阻害の測定が促進され、
(2)血漿容量が小さく、インキュベーション時間が短く、かつ基質濃度が高いと、定量の上限の上昇が促進され、
(3)血漿量容量が大きく、インキュベーション時間が長く、かつ基質濃度が高いと、定量の下限の高感度化が促進される。
【0131】
血漿への基質の添加と、プレートリーダーでの最初の吸収度測定との間の時間を短縮するために、ロボット工学の実装が推奨されている。現行のプロトコールは、マイクロタイタープレート全体の反応を構築し、混合し、そして、プレート上で最初の反応を開始させた1分間後にプレートの測定を開始する。活性計算は、1分と3分とにマイクロタイタプレートリーダーで収集されるデータに基づいている。しかし、吸光度の測定値は、15秒間隔で10分間にわたって収集されるので、アッセイの目的および特定の試料セットに見られる活性範囲に応じて、さらに短い反応時間および/またはさらに早期の反応時間、あるいはさらに長い反応時間をLp−PLA2活性を計算するのに選ぶこともできるであろう。
【0132】
【表17】


(実施例20)
【0133】
その他のアッセイ試験
アッセイ間検証
10人の健康な(絶食していない)ヒト対象から得た血漿試料を用いてアッセイ内可変性を評価した。各対象から得た血漿の6つの複製を同じアッセイプレートでアッセイした。表18に示す通り、個々の対象のCVは2.57から9.14%の範囲に及び、平均のアッセイ内CVは5.36%であった。
【0134】
【表18】

【0135】
アッセイ間可変性
10人の健康な(絶食していない)ヒト対象から得た血漿試料を用いてアッセイ間可変性を評価した。これらの血漿試料は、異なった日に行われた3つの別々のアッセイでアッセイした。個々の血漿試料のアッセイ間CVは、1.90から23.78%の範囲にわたり、平均のアッセイ間CVは7.59%であった。表19に示す通り、対象#5181480(アッセイ間CV=23.78%)から得た血漿は、短時間の遠心後に、白色/混濁の外観を表した。これは、試料中の高い脂質含量を示す。
【0136】
【表19】

【0137】
操作者間可変性
10人の健康対象から得た血漿試料を用いて、操作者間可変性を評価した。これらの血漿試料は、異なった日に3人の異なった操作者によってアッセイされた。表20に示す通り、個々の血漿試料の操作者間CVは5.11から14.91%の範囲にわたり、平均の操作者間CVは8.32%であった。
【0138】
【表20】

【0139】
凍結融解の影響
血漿試料は通常、凍結され、その状態で保存される。反復して分析される場合、通常、試料は凍結/融解サイクルに曝される。10の血漿試料を4回の凍結/融解サイクルそれぞれの後に分析した。表20に示す通り、Lp−PLA2値における決定的な傾向は観察されなかった。これは、試料を4回凍結融解してもよいことを示す。
【0140】
【表21】


(実施例21)
【0141】
高度の薬物阻害およびアッセイダイナミックレンジ
基質440μMおよび血漿試料容量25μLは、それらが、適当なアッセイダイナミックレンジを維持しながら、高い検出可能なin vivo薬物阻害を示すので、現行の修正アッセイプロトコールに使用するのに選択した。しかし、基質濃度をさらに低減し、かつ/あるいはアッセイにおける血漿試料容量を増大させることによって、アッセイダイナミックレンジを犠牲にして、さらに高い測定可能なin vivo薬物阻害を検出することができた。臨床試験で化学式IIを9日間受容した5人のヒト対象から得た血漿試料を、10日目の異なった時点に収集した。試験0日目における各対象の投与前血漿試料も利用可能であった。このアッセイで、基質440μMと血漿25μLとを用いた場合、表22に示す通り、最大68%の薬物阻阻害が、4時間目の時点に対象N030で観測された。血漿容量25μLに維持しながら、基質濃度を112μMに低下させたところ、薬物阻害が76%に増大した。さらに、基質濃度を112μMに低下させ、かつ、血漿容量を45μLに増加させることによって、4時間目の時点における薬物阻害を79%まで増大させることが実現した。
【0142】
【表22】

【0143】
基質440μM/血漿25μL、および基質112μM/血漿45μLの両アッセイ条件を用いて、他の4人の対象から得た血漿試料を分析した。表23に示す通り、基質440μMおよび25μLの血漿によって検出された最大の薬物阻害は、これらの対象では68%から80%までの間であった。しかし、基質112μMおよび血漿45μLの使用によって、同じ対象でさらに測定可能な薬物阻害が改善され、最大の阻害が87%から98%までの間となった。基質112μM/血漿45μLでは、実施例12に記載した通り、Lp−PLA2活性の絶対値が有意に低下しており、薬物阻害が最も高い時点での活性絶対値は、p−ニトロフェノールの線形検出範囲の下限に近づいていた。例えば、対象N028の4時間目の時点での血漿は、1.31nmol/分/mLのLp−PLA活性を示した(表23を参照)。そのような活動レベルは、実施例8に記載の薬物感受性修正比色分析アッセイに基づくと、2分間のアッセイ時間中に0.12nmolのp−ニトロフェノールを生成するのみであろう。これは、p−ニトロフェノールの線形検出範囲の下限である0.1nmolよりわずかに多い程度である。
【0144】
【表23−1】

【表23−2】

【0145】
基質112μMおよび血漿45μLを用いた場合のアッセイダイナミックレンジを決定するため、系列希釈された組換型ヒトLp−PLA2タンパク質のLp−PLA2活性をアッセイした。4.88から312.50ng/mLの間のhrLp−PLA2の活性は、R値0.96の線形性を示した(表24を参照)。したがって、ダイナミックレンジは、2.71〜84.14nmol/分/mLのようである。実施例12でhrLp−PLAを用いて決定した、基質440μM、血漿25μLのダイナミックレンジである4.4から397nmol/分/mLと比較して、基質112μM/血漿45μLでは、定量化の下限を低下させてはいるが、限定的なアッセイ範囲しか提供できないであろう。したがって、低い基質濃度および大きな試料容量を有する条件は、高い測定可能なin vivo阻害が望まれる場合に使用できるであろうが、一方で、試験試料のLp−PLA2活性の範囲が制限されており、損なわれている場合さえありうる。そのような条件が適用できるであろう1例が、Lp−PLA2阻害薬に関する臨床試験であり、そのような臨床試験では、投薬後試験試料のほとんどが、薬物阻害の結果として低いLp−PLA2活性を示す。そのような条件を使用する場合には、アッセイダイナミックレンジを改善するために、活性計算により早期、かつより短時間の反応時間の使用を考慮することができる。
【0146】
【表24】

【0147】
hrLp−PLA2によって決定された2.71から84.14nmol/分/mLというアッセイダイナミックレンジは、反応開始後3分と1分との間の吸光度変化に基づいて計算されている。反応における1分と0分との間の吸光度変化を、同じデータからLp−PLA2活性を計算するのに使用した場合、ダイナミックレンジが、3.2から196.5nmol/分/mLに有意に改善された(表25を参照)。活性計算における反応時間を30秒に短縮することによって、さらにごくわずかな改善があった。
【0148】
【表25】


(実施例22)
【0149】
血清中のLp−PLa2活性およびそのin vitro薬物阻害の検出
血清中のLp−PLA2活性、および、特にその薬物阻害を測定する修正比色分析アッセイの有用性を評価するために10人の正常なドナーから収集した血清試料をアッセイした。表26で示す、これらの血清試料で測定されたLp−PLA2活性は、130から190nmol/分/mLまでの間にわたった。各試料の2検体の%CVは、ほとんどの場合5%未満であった。分析に利用可能な、一致した血漿試料は得られなかった。しかし、実施例10および11に記載した14人の対象から得た投与前血漿試料は、80〜200nmol/分/mLの範囲のLp−PLA2活性を示しており、これに匹敵するものである。
【0150】
【表26】

【0151】
Lp−PLA2阻害物質を投与されたヒト対象の血清試料を利用することができなかったので、2つの血清試料(BRH28861およびBRH28867)を、様々な用量のLp−PLA2阻害物質化学式IIでin vitroで前処置した。in vitroで用いられた用量域は、化学式IIの臨床試験中に薬物を受容したヒト対象における、そのような阻害物質のin vivo血漿濃度の範囲を含むものであった。薬物動力学データに基づいて、90ng/mLを、in vivo投与された際の化学式IIのピーク血漿中レベルとした。その後、これらのin vitroで薬物処置された血清試料のLp−PLA2活性を、修正比色分析アッセイによってアッセイした。表27は、90ng/mLの化学式IIを用いてin vitroで処置された際に、BRH28861およびBRH28867におけるLp−PLA2活性の阻害が、それぞれ88.25%および90.77%にまで達したことを示した。薬剤投与量をさらに900ng/mLレベルに増大させることによって、これら2つの血清試料における薬物阻害がさらに増強され、それぞれ97.71%および92.28%にまでなった。
【0152】
【表27】

【0153】
限定されるものではないが、特許および特許出願を含めた、本明細書に引用されたすべての出版物および参考文献を、個々の出版物または参考文献のそれぞれが明確かつ個別的に、参照により本明細書に、完全に記述されているものとして組み込まれていると示されているのと同じように、参照により全体として本明細書に組み込む。この出願が優先権を主張するいかなる特許出願も、出版物および参考文献に関して上述した通りに、参照によりその全体において本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの試料における、Lp−PLA2酵素活性の阻害を測定する方法であって、比色分析または蛍光定量用検出可能部分を含む、Lp−PLA2の基質を含む溶液を調製する工程と、前記少なくとも1つの試料を調製工程の溶液と接触させる工程と、Lp−PLA2活性を検出する工程とを含み、試料がLp−PLA2阻害物質を投与された動物からのものである方法。
【請求項2】
動物から得られた少なくとも1つの第2の試料におけるLp−PLA2活性を比較することをさらに含み、前記第2の試料が、前記Lp−PLA2阻害物質を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動物から得られた複数の試料中にあるLp−PLA2活性の阻害が、前記Lp−PLA2阻害物質を投与した後の複数の時点で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基質が1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンの濃度が約53μMから約1125μMである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンの濃度が約440μM以下である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンの濃度が約112μMである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
試料が血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試料が血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血漿が、前記調製工程の溶液で約3倍から約9倍に希釈されている、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
試料の光学濃度を測定することによって前記Lp−PLA2活性が測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Lp−PLA2の基質を含む溶液が緩衝剤をさらに含み、前記緩衝剤が、前記基質を前記試料と接触させる前に前記基質と共にインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記緩衝剤がクエン酸一水和物を含まない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基質濃度がほぼ前記基質のKmに維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血漿試料の容量が、調製工程の溶液容量約125μLから約170μL中約15μLから約50μLである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
試料を調製工程の溶液と接触させる前に、反応のpHが少なくとも約7.5に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
動物から得られた試料中のLp−PLA2酵素活性を測定する方法であって、
c)110μLに対して0.66μLの比率で、200mM HEPES、200mM NaCl、5mM EDTA、10mM CHAPS、10mM 1−ノナンスルホン酸ナトリウムをpH7.6で含む溶液と接触させた、90mM 1−ミリストリル−2−(4−ニトロフェニルスクシニル)ホスファチジルコリンを含む溶液
を含む溶液110μLを、
動物からの25μLの組織試料の少なくとも1つ;
4、3、2、1、0.4、または0.2nmol/μL p−ニトロフェノールを含むメタノール溶液をそれぞれ含むp−ニトロフェノール標準溶液25μL;および、
ブランク用のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはddHO 25μL
と接触させる工程と、
d)Lp−PLA2活性を測定する工程と
を含む方法。
【請求項18】
動物から得られた試料が血漿である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
動物から得られた試料が血清である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記動物がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記試料を得る前に、Lp−PLA2の阻害物質を前記動物に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記試料を得る前に投与される前記Lp−PLA2阻害物質によるLp−PLA2酵素活性の阻害が、前記Lp−PLA2阻害物質を含まない試料のLp−PLA2活性を比較することによって測定される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
e)p−ニトロフェノール標準溶液の405nmの光学濃度(OD)値を、p−ニトロフェノール(nmol/ウェル)に対してプロットすることによって検量線を作成する工程と、
f)検量線の勾配(OD/nmol)を計算する工程と、
g)組織試料を含む溶液と、ブランクを含む溶液との両方における、3分と1分との間の吸光度変化(ΔOD3min−1min)を計算する工程と、
h)次式:
Lp−PLA2活性(nmol/分/mL)=(ΔODsample−ΔODblank)÷勾配(OD/nmol)÷0.025ml÷2分
を用いて、Lp−PLA2活性を計算する工程と
をさらに含む、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2007−532141(P2007−532141A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508591(P2007−508591)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/012948
【国際公開番号】WO2005/113797
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】