説明

MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタ

所望の電力タップ比を有する非偏光薄膜ビームスプリッタを形成する方法。本方法は、基板上に基本屈折率を有する基層を形成する工程と、基層上に、相対的に高い屈折率及び低い屈折率をそれぞれ有する複数の交互層を配置する工程とを含む。高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれの厚みは、光ビームの偏光を実質的に無くすように選択される。本方法は、基板の選択されたエリアを除去する工程であって、基層及び複数の交互層の両方から構成される光路を形成する、除去する工程をさらに含み、その光路は光ビーム内の光のうちの選択された量を透過及び反射するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板上のコンピュータチップ速度のさらなる高速化に伴い、チップ間通信における通信ボトルネックが、より大きな問題になりつつある。
1つの有望な解決策は、光ファイバを用いて、高速コンピュータチップを相互接続することである。
しかしながら、大部分の回路基板は多数の層を含み、多くの場合に、1ミクロン未満の製造公差を必要とする。
光ファイバを物理的に配置し、それらのファイバをチップに接続することは、あまりにも精度が低く、且つ過度に時間がかかるため、回路基板製造工程において広く採用され得ない。
【0003】
光信号を回路基板内の種々の場所に、且つ回路基板間でルーティングすることが、相互接続をさらに著しく複雑にする可能性がある。
それゆえ、広帯域データ転送が必要とされているにもかかわらず、市場向きのチップ間光インターコネクトは、定義しにくいことがわかっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の特徴及び利点は、以下に記述され、添付の図面との関連で取り上げられるときに、一例として本発明の特徴を例示する、詳細な説明から明らかになる。
これらの図面が本発明の例示的な実施形態を示すにすぎず、その範囲を制限するものと解釈されるべきではないこと、及び本明細書において包括的に記述され、図示されるような本発明の構成要素は、多種多様の異なる構成において配置及び設計することができることは容易に理解されよう。
それにもかかわらず、添付の図面を用いることによって、本発明をさらに具体的に且つ詳細に記述及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】一般的な光導波路の応用例における従来のビームスプリッタの動作を示す図である。
【図2】本発明の1つの例示的な実施形態による、製造工程の中間ステップ後の、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを示す図である。
【図3】断面線A−Aに沿って見た、図2の実施形態の部分図である。
【図4】本発明の1つの例示的な実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを示す図である。
【図5】単一の光インターコネクトを備える光導波路と共に用いられる、図4の実施形態の応用形態を示す図である。
【図6】複数の光インターコネクトを備える光導波路と共に用いられる、図4の実施形態の応用形態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタの非偏光能力を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタの非偏光能力を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを形成するための方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の1つの例示的な実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを示す図である。
【図11】本発明の別の例示的な実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを示す図である。
【図12】本発明のさらに別の例示的な実施形態による、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は添付の図面を参照し、その図面は本明細書の一部を構成しており、その図面には、例示として、本発明が実施される場合がある例示的な実施形態が示される。
これらの例示的な実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするために十分に詳しく記述されるが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態が実現される場合があること、及び本発明に対して種々の変更を行なうことができることは理解されたい。
したがって、本発明の実施形態の以下のさらに詳細な説明は、特許請求されるような本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、例示するためだけに、すなわち、本発明の特徴及び特性を説明するために;本発明の最良の動作形態を記述するために;そして当業者が本発明を十分に実施できるようにするために提示される。
したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定められるべきである。
【0007】
本発明の以下の詳細な説明及び例示的な実施形態は、添付の図面を参照することによって最も深く理解されることになり、本発明の構成要素及び特徴は、図面全体を通じて数字によって指示される。
【0008】
回路基板上のコンピュータチップ間に光インターコネクトを構成するための1つの方法は、その回路基板上に形成される光導波路を使用することである。
リソグラフィ又は類似の工程を用いて回路基板上に導波路を形成することができるので、光導波路は、電子回路を相互接続するためのガラス製光ファイバよりも優れていることがある。
これらの相互接続システムにおいて用いられる導波路は、典型的には、ポリマー及び/又は誘電体のような概ね光学的に透明な材料を用いて回路基板上に形成される。
リソグラフィ又は類似の製造工程を用いて形成される光導波路は、回路基板上に実装されない他のタイプの基板上に形成され得る。
たとえば、1つ又は複数の光導波路を有するリボンケーブルを作るために、フレキシブル基板上に光導波路が形成される場合がある。
【0009】
このようにして光導波路を形成することによって、必要な物理的公差で構成され、最新の多層回路基板上で用いられるインターコネクトを提供することができる。
しかしながら、基板上導波路を形成するためにチップ及び回路基板製造時に用いられ得るポリマー、誘電体及び他の材料は、典型的には、ガラス製光ファイバよりも著しく損失がある。
実際には、基板上導波路における損失量が、光導波路インターコネクトの受け入れを制限する要因の1つであった。
導波路を構成するために用いられるポリマーはセンチメートル当たり0.1dBの損失を有する可能性がある。
対照的に、ガラスファイバの損失はキロメートル当たり約0.1dBである。
したがって、中実コアポリマー導波路は、ガラス製光ファイバにおける損失より何桁も大きな損失を有する可能性がある。
【0010】
さらに、中実コア導波路は、通常、それらの導波路が搬送するように設計される光の波長に概ね比例する寸法を有するように製造される。
たとえば、1000nm光を搬送するように構成される単一モード導波路は、0.5μm(500nm)〜8μmの最大寸法を有する場合がある一方、多モード導波路はわずかに大きな寸法を有する場合があり、そのコア領域の場合に概ね20μm〜60μmの寸法を有する。
それにもかかわらず、それらのサイズが極めて小さいために、回路基板上に形成される任意の光導波路を接続するのはコスト高且つ困難であることがあるので、これまで、大部分の一般的な応用例において、その使用が控えられてきた。
【0011】
損失の低い別のタイプの光導波路は、中空コア金属導波路である。
その導波路は、空心であり、囲壁上に高反射性コーティングを施された導波路である。
典型的には、その導波路は、円形、長方形又は楕円形の断面を有することができ、その寸法は概ね50〜1000□mである。
これらの導波路は概ね<0.05dB/cmの低い損失を有する。
低損失モードを励起するために、コリメーティングレンズを使用しなければならない。
これらの低損失モードは、概ねすれすれの入射角(grazing incidence angle)において導波路壁まで進行する光線を有する。
これらのモードの伝搬損失は、導波路の長さに沿って下流に伝搬するのに応じて光線が受けるはね返り又は反射の回数に依拠する。
【0012】
中空金属導波路を用いて導波される光ビームのスプリッティング及びタッピングは、達成するのが難しいことがある。
たとえば、既存のビームスプリッタ技術を小さな導波路と組み合わせる場合の1つの問題が図1に示される。
導波路2及び光タップ4の寸法が極めて小さいことに起因して、導波路内の光路の直径は、ビームスプリッタ6の厚み8と同程度の大きさになる可能性がある。
回路基板に実装される光バックプレーンが複数のドータカードに光学的に接続される場合に見られることがあるように、同じ光導波路に沿って複数の光タップが順次に追加され、全てのビームスプリッタが光ビームの向きを同じ方向に変更するように配向される場合には、この横方向の変位16、すなわちビームウォークオフは、さらに大きくなる可能性がある。
各光タップは、ビームが所望の伝送エリアから外れるまでさらに変位を追加し、それにより、導波路の側面との結合に起因して、著しい損失が生じる可能性がある。
【0013】
従来のビームスプリッタ技術に特有の別の問題は、ビームスプリッタが、その特性として、入力ビームの異なる偏光に対して異なる分割比(反射率及び透過率)を有する傾向があることである。
これは、平面内P成分及び直交するS成分のためのフレネル反射係数が、入射角への異なる依存性を有するという事実に起因する。
したがって、VCSELのような低コストの非偏光多モードレーザを用いる結果として、偏光によって引き起こされる強度雑音が生じる場合があり、その雑音は、変調されているレーザの偏光状態に依存する。
補償するために、非偏光多モードレーザの電力出力を倍にしなければならないか、又は適切に位置合わせされ、偏光された、コヒーレントな光ビームを生成する単一モードレーザを使用しなければならない。
いずれの代替形態も、複数の光導波路及び多数のレーザ光源を利用することがある光学システムの全体コストを著しく増加させる。
【0014】
さらに、光導波路2に沿って複数の光タップ4を用いるとき、光学デバイスの入射エネルギーと透過エネルギー(transmitted energy)との間の比としても知られている、ビームスプリッタ6の電力タップ比を制御することが好都合であることがある。
たとえば、導波路に沿った各光タップが同じ電力タップ比を有する場合には、後続のタップに入る光ビームの全体強度が、先行する光インターコネクトの分だけ比例して減少しているので、光バックプレーンに沿って動くのに応じて、反射される光ビームの強度は次第に小さくなるであろう。
光バックプレーンが複数のインターコネクト位置を有する場合、種々のタップ位置の電力タップ比を選択して、反射される光ビームの強度を釣り合わせることが有用であることがある。
【0015】
上記で特定された欠陥の結果として、他の導波路及び光学デバイスと相互接続するのが共により簡単であり、光導波路内の損失量を著しく低減することができる安価な光インターコネクトが必要とされることが認識されている。
また、同じ光路に沿って複数の光タップを設けることができるように構成され、光導波路の中心からの横方向に生じる変位を最小限に抑え、且つ光ビームのための実質的に非偏光の光路を提供するビームスプリッタを用いることによって、損失を最小限に抑え得ることもわかっている。
光インターコネクトを形成する方法が、光学デバイスの電力タップ比の正確な制御を提供できることもさらに認識されている。
【0016】
本発明は、光導波路に沿って2つ以上の光タップを設けることができるようにする、MEMSに基づく(「微小電子機械」)薄膜ビームスプリッタを形成するための方法及びシステムを説明する。
その方法は、低コストで、製造が容易である薄膜ビームスプリッタを提供し、そのビームスプリッタは非偏光であり、且つ特定の電力タップ比で構成され得、その電力タップ比は光導波路に沿ったタップ位置毎に選択される。
さらに、本発明の薄膜ビームスプリッタは非偏光でもあるので、よりコスト高な単一モードレーザではなく、低コストの多モードレーザを用いて光学システムを駆動することができる。
その薄膜ビームスプリッタは、従来のシステムに比べて、ビームウォークオフを大幅に低減するので、結果として形成される光学システムははるかに雑音が少なく、結果として、レーザ電力要件を緩和することによって、コストがさらに削減される。
【0017】
図2を参照すると、製造工程においていくつかのステップを完了した後の本発明の例示的な実施形態20が示される。
製造工程のこの時点において、基板22上に基層32が被着されており、その後、基層上にビームスプリッタコーティング34が被着されている。
基板は、理解され得るように、シリコン又はポリマーのような1つ又は複数の材料から構成され得る。
基層32は、或る屈折指数を有する光学的に透過性の材料から形成され、その屈折指数はさらに基本屈折率と定義され得る。
基層は任意の厚みで形成され得、その厚みによって、構造的な支持を与えることができ、且つ完成したビームスプリッタの光路に対して所望の光学特性を与えることができる。
例示的な実施形態では、基層の厚みを、概ね250nm、すなわち0.25μmにすることができる。
しかしながら、基層材料の屈折率がわかっており、且つ基層の厚みを正確に制御することができる限り、基層は、250nmよりかなり厚いか又は薄い厚みで形成され得る。
その上に基層が形成される基板22は、約200μmの厚みを有することができるが、薄膜メンブレイン(pellicle membrane)に対して十分な構造的支持を与え、且つビームスプリッタが光導波路内に収まるようにできる限り、200nmよりかなり厚いか又は薄い厚みで形成することもできる。
【0018】
基層32上に被着されるビームスプリッタコーティング34は図3においてさらに詳細に示されており、図3は、図2の実施形態から取り出した断面A−Aの拡大図である。
そのビームスプリッタコーティングは、低屈折率を有する層36及び高屈折率を有する層38から成る複数の交互層から構成され得る。
低屈折率層は1.3<n<1.8の屈折率範囲を有することができ、高屈折率層は1.8<n<3の屈折率範囲を有することができる。
【0019】
しかしながら、交互層のスタックから形成される以前の光学膜とは異なり、本発明の交互層の厚みは不均一であり、さらに、光の選択された波長の4分の1波長に等しい厚みを有する必要はない。
それとは反対に、低屈折率材料及び高屈折率材料から成る交互層は、光の波長の分数に等しくても、等しくなくてもよい厚みを有することができ、各交互層は、任意の隣接する層の厚みに実質的に等しくない厚みを有することができる。
【0020】
実験及び最適化の過程を通じて、低屈折率材料及び高屈折率材料の交互層は、選択された順序で、且つ特定の厚みで形成され、基層と共に用いられるときに、それらの層厚を組み合わせて光路が形成される。この光路は、非偏光であり、且つ指定された反射率を有する。
それぞれ11%及び42%の指定された反射率比を有する2つの光路の一例が表1に示される。
この選択過程は、大幅な変化を考慮に入れる。
たとえば、ビームスプリッタコーティング内の交互層の数は、大幅に、たとえば、1から20以上の層まで変更することができる。
さらに、基層32に隣接していずれの材料でも配置することができるので、高屈折率層及び低屈折率層の配列に対する所定の順序は存在しない。
いずれかの材料を、ビームスプリッタコーティングを形成するスタックの一番上に形成される最後の層とすることができる。
さらに、交互層の全数を、偶数、又は奇数にすることができる。
【0021】
上記の例では、2つの材料SiO及びTiOが用いられた。
代替的には、3つ以上の材料を用いて、個々の層毎の厚み公差を改善することができ、薄膜の全厚を薄くすることもできる。
【0022】
【表1】

【0023】
高屈折率層38は、1.8より大きい屈折率のような、相対的に高い屈折率を有する材料から形成され得る。
高屈折率層は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、セレン化亜鉛等のような材料から選択され得る。
【0024】
低屈折率層36は、1.8以下の屈折率のような、相対的に低い屈折率を有する材料から形成され得、二酸化シリコン、一酸化シリコン、酸化ハフニウム、フッ化マグネシウム等のような材料から選択され得る。
【0025】
基層32は、高屈折率、低屈折率のいずれかを有し、ビームスプリッタコーティングの交互層を組み合わせて所望の光学特性を有する光路を作り出す材料から形成され得ることは理解されよう。
たとえば、基層は、窒化シリコン若しくは二酸化シリコンのような誘電体材料、又はさらには実質的に透明なポリマーから構成することができる。
【0026】
基層32、並びに高屈折率及び低屈折率を有する複数の交互層、すなわちビームスプリッタコーティング34は、リソグラフィ又は類似の製造工程を用いて、基板22上に形成され得る。
基層及びビームスプリッタコーティングは、水平に張った状態において形成され得、薄膜の中心を周辺に向かって引っ張る正味予荷重力が層状構造内に与えられるようにする。
薄膜を張った状態にして予荷重をかけることは好都合であることがある。
水平に張った状態は、薄膜を光学的に平坦な形状から曲げるか又は撓ませる場合がある、任意の外部から加えられる圧縮力又は垂直力(sheer force)を直に相殺するように作用することができる。
引っ張り予荷重は、個々の層が波打つのを防ぐように作用することもできる。
【0027】
図4は、本発明の例示的な実施形態20による、MEMSを基にする薄膜ビームスプリッタを示す。
シリコン基板22の中心部分が、従来のリソグラフィ又は類似の工程を用いてエッチングされ、基層32の下面33を露出させる空洞26を形成している。
中心部分をエッチングして基層を露出させる結果として、基層32上に層を成すビームスプリッタコーティング34を含み、外周部の周囲を基板枠24によって支持される薄膜30を有する薄膜ビームスプリッタが生成される。
デバイスの下側にある空洞26によって、ビームスプリッタの中心領域を通る光路28を構成できるようになる。
【0028】
ビームスプリッタコーティング34の下層を成す基層32は、所望の屈折率を有するように選択され、構造的な支持を与え、且つデバイスの光路28の一部を形成するように構成される。
基層及びビームスプリッタコーティングの組み合わせは、大きな利点を提供する。
約250nm(0.250μm)の厚みを有する場合、基層は、ビームスプリッタコーティングの一部として設計されるほど十分に薄く、それにより、基層の下面33に反射防止(「AR」)コーティングを被着して、従来のビームスプリッタにとって共通の問題である「ゴースティング」を緩和するのを不要にする。
ARコーティングが存在しないことは、製造工程において1つのステップを不要にし、且つ光ビームがいずれの方向においても薄膜30を通り抜けられるようになるという点で好都合である。
したがって、図4の例示は、光が前(上)から後(下)に光路28を通り抜けることを示すが、本発明の構造によれば、後(下)から前(上)に、逆方向にも光が進行できるようになる。
【0029】
薄膜30及び支持用基板枠24を形成する個々の層の厚みは大きく変動することがあるが、1つの例示的な実施形態では、基板枠24は、約200μmのシリコン基板22の元の厚みを保持することができ、薄膜30の厚みは、ビームスプリッタコーティング34内の誘電体層の数及び厚みに応じて、約300nm(0.3μm)から約5000nm(5.0μm)まで変動することがあり、標準値は約2000nm(2.0μm)であることに留意されたい。
【0030】
薄膜ビームスプリッタの実施形態20を、単一の光インターコネクトを用いる光導波路に適用した適用形態40が図5に示される。
レーザ又はLEDのような光ビームのための光源50が、光導波路60の一端に配置される。
その光源は入射光ビーム52を生成し、その光ビームは、薄膜ビームスプリッタ20と接触するまで導波路の内部を下流に進行し、その接触点において、光のうちの所定の部分が、光インターコネクト70の中に反射光ビーム54として反射され、その光の一部が透過光ビーム56としてビームスプリッタの中を透過する。
入射する光エネルギーに対する反射される光エネルギーの比は、ビームスプリッタの反射率として既知であり、入射する光エネルギーに対する透過する光エネルギーの比は、ビームスプリッタの透過率として既知である。
透過率は電力タップ比としても既知である。
【0031】
本発明の1つの利点は、高反射率及び低反射率の材料の交互層を適切に選択し、それを自らの屈折率値を有する基層と組み合わせることを通じて、薄膜ビームスプリッタの電力タップ比を1%以内に正確に制御できることである。
本発明のこの態様が図7及び図8において提示されるグラフによって示されており、そのグラフでは、薄膜ビームスプリッタの反射率比がそれぞれ11%及び42%に設定される。
さらに、適切に選択する場合、非偏光薄膜ビームスプリッタは、光路に沿って、光ビームの電力のうちの1%〜99%のどの量でも反射するだけの十分な交互層を用いて構成され得る。
【0032】
図7及び図8には、薄膜ビームスプリッタ20からの反射光ビーム54も透過光ビーム56も入射ビームの偏光状態に実質的に依存しない本発明の態様も示される。
たとえば、図7において、11%の反射率比を有する本発明の1つの例示的な態様では、結果として、830nmから870nmの波長帯にわたって、P成分とS成分との間の反射値の差が1%未満になる。
図8において同様に示されるように、42%の全反射率比を有する本発明の1つの例示的な態様でも、830nmから870nmの波長帯にわたって、1%未満のP成分とS成分との間の反射値の差を生成する。
入射光ビーム52に含まれる全てのエネルギーを、光インターコネクトの下流に反射するために又は導波路に沿ってさらに透過するために利用することができるので、非偏光の光を反射及び透過できることは光導波路システムにとって好都合である。
これにより、光源50からの出力をさらに完全に、且つ効率的に利用できるようになり、それに応じて電力要件が緩和される。
また、偏光光源の要件も緩和される。
【0033】
図6は、MEMSに基づく薄膜ビームスプリッタの実施形態20を、複数の光インターコネクト70を用いる光導波路60に適用した適用形態40の例示である。
光導波路内に配置される各薄膜ビームスプリッタ20は類似の電力タップ比で形成され得、その場合、インターコネクトが光源50から離れて配置されるほど、反射光ビーム54が含むエネルギーが次第に少なくなる。
又は代替的には、各薄膜ビームスプリッタは、光エネルギーのうちの所望の量をそれぞれの各反射光ビーム54において各光インターコネクト70内に方向転換できるように選択される、所定の電力タップ比で形成され得る。
この能力は、光バックプレーンの或る距離だけ下流に配置される特定のドータカードに光エネルギーのうちの所望の量を配分すること等の、光学システムを設計する際の自由度を高めることができるようにする著しい利点を提供する。
【0034】
また図6には、本発明の薄膜ビームスプリッタ20によって引き起こされる光ビームの横方向の変位、すなわち「ウォークオフ」の量が限られることも示される。
各薄膜ビームスプリッタが極めて薄い2μmの膜である結果として、光ビームが光導波路を下流に進行するときに、光ビームの変位を無視できるようになる。
複数の光インターコネクトを通り抜けた後であっても、各透過光ビーム56は、元の入射光ビーム52と実質的に位置合わせされたままである。
従来のビームスプリッタで生じる可能性があるように、導波路の壁面又は側面境界に近いほど、透過光ビームの横方向への再配置が限られるので、反射損失が最小限に抑えられ、その結果として、光源50に関する電力要件がさらに緩和される。
【0035】
図9のフローチャートにおいて示されるように、別の実施形態は、所望の電力タップ比を有し光ビームに沿って複数の光インターコネクトを設けるための非偏光薄膜ビームスプリッタを形成する、方法80を提供する。
その方法は、基板上に基本屈折率を有する基層を形成する工程82を含む。
基層は、窒化シリコン又は二酸化シリコンのような誘電体材料から構成され得、約250nmの厚みを有することができる。
マイラのようなポリマー基層材料を用いることもできる。
【0036】
方法80は、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれの厚みを選択して、光ビームの偏光感度を実質的に無くすように、基層上にそれぞれ相対的に高い屈折率及び低い屈折率を有する複数の交互層を形成する工程84をさらに含む。
さらに、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれの厚みは、任意の直に隣接する層の厚みとは異なり得る。
【0037】
低屈折率層は、1.3よりも高く、且つ1.8以下である屈折指数を有することができる。
有望な候補材料は、二酸化シリコン、一酸化シリコン、酸化ハフニウム及びフッ化マグネシウムとすることができる。
高屈折率層は、1.8〜3.0の範囲の屈折指数を有することができる。
たとえば、有望な候補材料は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タンタル及びセレン化亜鉛等とすることができる。
【0038】
最後に、方法80は、光路が入射光ビーム内の光のうちの選択された量を透過及び反射するように構成されるように、基板の選択されたエリアを除去して、基層及び複数の交互層を含む光路を有する薄膜ビームスプリッタを形成する(86)ことも含む。
【0039】
本発明の別の例示的な実施形態100では、図10a及び図10bに示されるように、1つ又は複数のスルーホール124又はアパーチャを薄膜110内に形成することができる。
図10bは、断面線B−Bから見たような図10aのビームスプリッタの部分図であり、スルーホールが、ビームスプリッタコーティング114の前面120から、基層112の背面122までの連続的な開口部を提供することができ、それにより、膜110の前面(又は背面)に突き当たる入射光128の一部が、物理的な表面に接触することなく、スルーホールをそのまま通り抜けることができることを示す。
さらに、ビームスプリッタコーティング114を形成する、高屈折率及び低屈折率を有する複数の層を、ビームスプリッタコーティングと接触する実質的に全ての光が反射されるほど十分な反射率を有するように形成することができる。
したがって、実施形態100の薄膜110は、1つ又は複数のスルーホール124を通り抜けない実質的に全ての光を反射する。
代替的には、多層コーティングの代わりに、銀のような単一の金属層を、高反射率コーティングとして用いることができる。
これは、薄膜ビームスプリッタの製造の複雑度をさらに緩和するという利点を有する。
【0040】
スルーホール124を通り抜ける光ビームの部分は自由空間内を進行するので、小さなアパーチャ内でビームウォークオフ又は偏光作用が生じない。
さらに、スルーホールのサイズ及び数を制御することによって、反射率対透過率の度合いを正確に制御することができる。
図10aにおいて示されるように、スルーホールは、長円形又は楕円形を与えられることができ、その穴の長軸は入射光ビームと位置合わせされ、薄膜ビームスプリッタが導波路内に或る角度で配置されるときに、長円形の穴が、光源の視点から見たときに円形を成すようにする。
1つ又は複数のスルーホールを与えるとき、光源の視点から見たときに円形に見えることによって、薄膜ビームスプリッタの反射率及び透過率を計算するために用いられる式が簡単になり、また、透過される光ビームの形状及び位置もさらに良好に制御できるようになるので、これはさらに好都合である。
【0041】
複数のスルーホールを有する、図10a〜10cに示される実施形態に対する代替形態では、図11a〜図11cに示されるように、ビームスプリッタコーティング140及び基層142を貫通して形成される単一のアパーチャ134を有する薄膜ビームスプリッタ130が配置される場合がある。
そのアパーチャは楕円形の外形を有するように形成され得、その外形は、導波路内に或る角度で配置される場合、光源の視点から見たときに円形を成す。
透過される光138の量は、導波路の内部断面積全体に対するアパーチャの円形に見える面積の比に概ね等しいであろう。
このようにして、導波路モードに対する摂動を最小限に抑えることができる。
【0042】
図12a及び図12bに示されるような別の実施形態150では、光路に影響を与える場合があるようにコーティングを曲げるか、波打たせるか、又は別の態様で変形させるおそれのある、コーティング内の任意の残留応力を低減するために、ビームスプリッタコーティング164内にスロット172を形成することができる。
そのスロットは、薄膜160の上側表面から、ビームスプリッタコーティングの厚み全体を通り抜けて、基層162に達するまで延在することができるが、基層を貫通して延在しない。
さらに、スロットは、図に示されるように、薄膜の中央領域を完全に包囲する場合があるか、又は膜の外側部分に沿って部分的にのみ延在する場合があるか、又は膜の中央領域の周囲に必要に応じて配置される、複数の別個の、且つ離散したスロットに分けられる場合がある。
さらに、スロットは、正方形、長方形又は円形のような任意の形状を成すことが想定され、同じくリソグラフィ又は類似の製造技法を用いて形成され得る。
【0043】
上記の詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照しながら本発明を説明する。
しかしながら、添付の特許請求の範囲において記述されるような本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変形を行なうことができることは理解されよう。
詳細な説明及び添付の図面は、限定するものではなく、単なる例示と見なされるべきであり、もしあるなら、全てのそのような変更又は変形は、本明細書において説明され、記述されるような本発明の範囲に入ることが意図されている。
【0044】
さらに具体的には、本発明の説明のための例示的な実施形態が本明細書において説明されてきたが、本発明は、これらの実施形態には限定されず、これまでの詳細な説明に基づいて当業者によって理解されるような、変更、省略、組み合わせ(たとえば、種々の実施形態にわたる複数の態様の組み合わせ)、改変及び/又は修正を有するありとあらゆる実施形態を含む。
特許請求の範囲における制限は、特許請求の範囲において用いられる用語に基づいて広く解釈されるべきであり、これまでの詳細な説明において、又は出願の手続中に記述される例には制限されず、それらの例は非排他的であると見なされるべきである。
たとえば、本開示において、用語「好ましい」は非排他的であり、「好ましいが、限定はしない」を意味することが意図されている。
任意の方法又はプロセスクレームにおいて列挙されるに任意のステップは、任意の順序で実行される場合があり、特許請求の範囲において提示される順序には限定されない。
【符号の説明】
【0045】
2 導波路
4 光タップ
6 ビームスプリッタ
22 基板
24 基板枠
26 空洞
28 光路
30 薄膜
32 基層
34 ビームスプリッタコーティング
36 低屈折率層
38 高屈折率層
50 光源
52 入射光ビーム
54 反射光ビーム
56 透過光ビーム
60 光導波路
70 光インターコネクト
110 薄膜
112 基層
114 ビームスプリッタコーティング
124 スルーホール
128 入射光
130 薄膜ビームスプリッタ
134 アパーチャ
138 光
140 ビームスプリッタコーティング
142 基層
160 薄膜
162 基層
164 ビームスプリッタコーティング
172 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の電力タップ比を有し、光ビームに沿って複数のタップを設けるための非偏光薄膜ビームスプリッタを形成する方法であって、
基板上に基本屈折率を有する基層を形成することと、
前記基層上に相対的に高い屈折率及び低い屈折率をそれぞれ有する複数の交互層を形成することであって、前記高屈折率層及び前記低屈折率層のそれぞれの厚みは、前記光ビームに対する偏光感度を実質的に無くすように選択される、形成することと、
前記基板の選択されたエリアを除去することであって、前記基層及び前記複数の交互層を含む光路を形成し、該光路は、前記光ビーム内の光のうちの選択された量を透過及び反射するように構成される、除去することと
を含む方法。
【請求項2】
相対的に高い屈折率及び低い屈折率を有する複数の交互層を形成すること
をさらに含み、
前記高屈折率層及び前記低屈折率層のそれぞれの厚みは、隣接する層の厚みとは実質的に異なる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基層を形成すること
をさらに含み、
前記基層は誘電体材料から構成される
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
窒化シリコン、二酸化シリコン及び実質的に透明なポリマーから成るグループから選択される前記誘電体材料から成る基層を形成すること
をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
250nmに実質的に等しいか、又は250nm未満の厚みを有する基層を形成すること
をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
1.8より大きく、3.0より小さい屈折率を有する、前記高屈折率層のための材料を選択すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1.3より大きく、1.8以下の屈折率を有する、前記低屈折率層のための材料を選択すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の交互層を形成することは、
前記光路に沿って、前記光ビーム内の電力のうちの1パーセント〜99パーセントを反射するのに十分な交互層を有する前記非偏光薄膜ビームスプリッタを構成すること
をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光路内に所定のサイズを有する少なくとも1つのスルーホールを形成することであって、前記光ビームのうちの一部が、実質的に妨げられることなく該少なくとも1つのスルーホールを透過できるようにする、形成すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記光路が前記少なくとも1つのスルーホールを通ることができない実質的に全ての光を反射するのに十分な交互層を形成すること
をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基層上に単一の層を形成すること
をさらに含み
該単一の層は、
前記少なくとも1つのスルーホールを通り抜けることができない実質的に全ての光を反射する高反射率金属層
をさらに含む
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
或る角度で前記光路に突き当たる光ビームに対して実質的に円形に見えるように、楕円形の断面を有する前記少なくも1つのスルーホールをエッチングすること
をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の前記選択されたエリアを、該選択されたエリアをエッチングして前記基層の下面を露出させることによって、除去すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記光路内の前記複数の交互層の残留応力を緩和するために、前記複数の交互層内および前記光路の外周部の周囲にスロットをエッチングすること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記交互層を貫通して前記基層の上面まで前記スロットをエッチングすること
をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光路を平面的に張った状態で形成することであって、前記光路の撓み及び波打ちを大幅に低減する、形成すること
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
所望の電力タップ比を有し、光ビームに沿って複数のタップを設けるための非偏光薄膜ビームスプリッタであって、
シリコン基板に物理的に結合される、基本屈折率を有する基層であって、該シリコン基板は、中心部分を包囲する外枠部分をさらに含み、該中心部分は該基層の下面を露出させるために実質的に除去される、基層と、
前記基層上に配置されるビームスプリッタコーティングであって、該ビームスプリッタコーティングは、相対的に高い屈折率及び低い屈折率をそれぞれ有する複数の交互層をさらに含み、該交互層のそれぞれの厚みは、前記光ビームに対する偏光感度を実質的に無くすように選択される、ビームスプリッタコーティングと
を備え、
前記中心部分上の前記基層及び前記ビームスプリッタコーティングは、合わせて光路を構成し、
該光路は、前記光ビーム内の光のうちの選択された量を透過及び反射するように構成される
非偏光薄膜ビームスプリッタ。
【請求項18】
前記交互層のそれぞれの厚みは、隣接する層の厚みとは実質的に異なる
請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項19】
前記基層は、窒化シリコン、二酸化シリコン及び実質的に透明なポリマーから成るグループから選択される
請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項20】
1.8より大きく、3.0より小さい屈折率を有する、前記高屈折率層のための材料を選択すること
をさらに含む請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項21】
1.3より大きく、1.8以下の屈折率を有する、前記低屈折率層のための材料を選択することをさらに含む
請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項22】
前記光路内に形成される少なくとも1つのスルーホールであって、前記光ビームの一部が実質的に妨げられることなく該少なくとも1つのスルーホールを透過できるようにする、少なくとも1つのスルーホール
をさらに備える請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項23】
前記光路は、前記少なくとも1つのスルーホールを通ることができない実質的に全ての光を反射するだけの十分な交互層を含む
請求項22に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項24】
前記複数の交互層内に形成されるスロット
をさらに備え、
該スロットは、前記複数の交互層内の残留応力を緩和する、前記光路の周囲の外周部を形成する
請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。
【請求項25】
前記光路は、前記光路の撓み及び波打ちを無くすために平面的に張った状態において形成される
請求項17に記載の薄膜ビームスプリッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−511315(P2011−511315A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544950(P2010−544950)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052718
【国際公開番号】WO2009/096983
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】