説明

MRIによる神経発生の相関の画像法

本発明は、被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この6年において、神経発生は、CNSの生理学及び疾病の根底にある基礎的なプロセスとして現れてきた。Dr. Gageとその共同研究者は、ヒトの海馬の歯状回における神経発生を発見し、神経発生が制御可能であることを証明し、また、成体の海馬における機能的な神経発生を示した(Ray、Peterson et al. 1993; Palmer、Ray et al. 1995; Kempermann、Kuhn et al. 1997; Eriksson、Perfilieva et al. 1998; van Praag、Kempermann et al. 1999; van Praag、Schinder et al. 2002)。長く確立されたドグマとは反対に、それらの発見は、ヒトはその生涯を通して新しい神経細胞を産生することができるという、注目せずにいられないようなケースを構築てる。この研究は、ヒトのCNS及び末梢神経系の多くの疾病及び疾患のための、新しい治療の可能性への扉を開いた。
【0002】
多くの研究が、運動を海馬の神経発生に結び付けている。Kempermannらによる研究
(1998)は、老化したマウスの歯状回において神経発生が発生し続け、また、社会的相互作用、探索、及び肉体的活動を提供する豊かな環境(enriched environment)中で生きていることにより刺激され得ることを示した(Kempermann、Kuhn et al. 1998)。神経発生が年齢の増加とともに減少するにもかかわらず、豊かな環境による刺激は、神経細胞の生存及び分化を増大させることが示された。引き続く研究(van Praag、et al.1999)において、成体マウスにおける神経細胞の増殖、生存、及び分化を増大させることにおいて、ランニングは他の条件の範囲よりもより有効であることが示された。考慮された他の条件は、水迷路学習、つないだ状態での水泳(yoke swimming)、及び豊かな環境、並びに標準的なハウジング(standard housing)であった。
【0003】
神経細胞の可塑性及び自己修復の活動依存的調節(Kempermann and Gage 2000)は、脳損傷の治療における肉体的な治療の使用について動機づけする要因である。多くの損傷/疾病において、患者の肉体的状態のために、運動は早期には開始できないか又は全くできない。治療的処置の機能的な結果は予測が複雑であり、該疾病/損傷の特異性、家族及びコミュニティー源、診断の正確さを含む広い範囲の要因に依存する。神経学的な疾病又は損傷の初期から神経発生を誘導する現在の治療への補助は、それらの患者をより機能的にする結果を増強し得る。
【0004】
現在、化合物が神経発生を誘導するかどうかを決定するための唯一の方法は死後分析である。この必要条件は、化合物がヒトにおいて神経発生を誘導するかどうかの決定における明らかな禁制である。従って、神経発生のインビボ指標の開発は、潜在的な神経発生誘導薬のスクリーニング、確認、及び最適化のために重要な目的として浮かび上がっている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、DARPAによる米国政府助成金番号DAAD19-02-01-0267の下にサポートされてなされた。従って、米国政府は該当する発明に確かな権利を有する。
【0006】
本願を通して刊行物が参照される。実験の詳細I-IIIのための完全な引用、並びに、さらに関連した参照は、下記実験の詳細の第III項に直ちに発見される。実験の詳細IVに含まれる多くの引用参考文献は、その特定の項の最後に記載する。それらの刊行物の開示は、それによって本願に参照して援用され、ここに記載され請求された発明の時点での技術状態がより完全に開示される。
【0007】
[発明の概要]
本発明は、被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少する化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明は、被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を増大させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊(a volume of tissu)及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;(b) 前記薬剤を前記被検者に、それが該被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な様式で投与すること;(c) 増加を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増加を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び(d) 大脳血液量における神経発生特異的増加が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような増加は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を増加させることを示す;を提供する。
【0012】
本発明はさらに、薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;(b) 前記薬剤を、それが前記被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な方法で、前記被検者に投与すること;(c) 減少を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び(d) 大脳血液量における神経発生特異的減少が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような減少は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させることを示す;を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0013】
[定義]
本明細書において用いられる場合、以下の用語はそれぞれ、他に明確に提供しない限り以下に定義された意味を有する。
【0014】
本明細書において用いられる場合、薬剤の「投与」は、当該分野の技術者に既知の任意の種々の方法及び送達系を用いて達成又は実行できる。投与は例えば、静脈内、腹腔内、脳脊髄液経由、経口的、経鼻的、移植錠(implant)経由、経粘膜的、経皮的、筋肉内、及び皮下に行うことができる。
【0015】
次の送達系は、日常的に用いられる多くの薬学的担体を使用するものであって、インスタント組成物の投与のために想定される多くの態様の単なる代表である。
【0016】
注射用の薬物送達系は、溶液、懸濁液、ゲル、ミクロスフェア及び重合体の注射液を含み、溶解度改変剤(例えば、エタノール、プロピレングリコール及びスクロース)及び重合体(例えば、ポリカプリラクトン及びPLGA’s)のような賦形剤を含んでも良い。移植可能な系は、棒(rods)及びディスク(discs)を含み、PLGA及びポリカプリラクトンのような賦形剤を含むことができる。
【0017】
経口送達系は、錠剤及びカプセルを含む。それらは、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrilodone)、他のセルロース系材料及びスターチ)、希釈剤(例えば、ラクトース及び他の糖、スターチ、リン酸二カルシウム及びセルロース系材料)、崩壊剤(例えば、スターチ重合体及びセルロース材料)及び潤滑剤(例えば、ステアリン酸及びタルク)のような賦形剤を含んでよい。
【0018】
経粘膜送達系は、パッチ、錠剤、坐薬、膣坐薬、ゲル及びクリームを含み、可溶化剤及びエンハンサー(例えば、プロピレングリコール、胆汁酸塩及びアミノ酸)、及び他の溶媒(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル及び誘導体、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒアルロン酸のような親水性の重合体)のような賦形剤を含んでよい。
【0019】
経皮送達系は、例えば、水性の及び非水性のゲル、クリーム、多様なエマルジョン、ミクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性溶液及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素主成分(bases)及び粉末を含み、可溶化剤、浸透エンハンサー(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール及びアミノ酸)、及び親水性の重合体(例えば、ポリカルボフィル及びポリビニルピロリドン)のような賦形剤を含んでよい。一つの態様において、薬学的に許容される担体は、リポソーム又は経皮性のエンハンサーである。
【0020】
再構成可能な送達系のための溶液、懸濁液及び粉末は、懸濁剤(例えば、ガム、ザンタン(zanthans)、セルロース系材料及び糖)、湿潤剤(例えば、ソルビトール)、可溶化剤(例えば、エタノール、水、PEG及びプロピレングリコール)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、スパン、トゥイーン、及びセチルピリジン)、防腐剤及び抗酸化剤(例えば、パラベン、ビタミンE及びC、及びアスコルビン酸)、抗固化剤、コーティング剤、及びキレート剤(例えば、EDTA)のような媒介物(vehicles)を含む。
【0021】
ここで用いられる場合、「薬剤」は、これらに限定されないが、タンパク質、抗体、核酸、小分子、及びそれらの任意の組合せを含む、任意の化学的実体を意味する。
【0022】
ここで用いられる場合、「大脳血液量」は、(i) 大脳組織塊(a volume of cerebral tissue)に存在する血液の量、又は(ii) 大脳組織塊に存在する血液の量及び/又は大脳組織塊における代謝活性のいずれかと相関する定量的な値を意味する。
【0023】
ここで用いられる場合、「造影剤(contrast agent)」は、脳画像法に関して用いられる場合、血管内の増強をもたらす、被検者に投与可能な任意の物質を意味する。造影剤の例は、磁気共鳴画像において用いられる常磁性の物質(デオキシヘモグロビン又はガドリニウムのような)を含む。
【0024】
ここで用いられる場合、「予防的に有効な量」は、被検者の海馬の歯状回の神経発生における変化と関連する疾患の発症を抑制するのに十分な量を意味する。
【0025】
ここで用いられる場合、「被検者(subject)」は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、モルモット又はウサギのような任意の動物を意味する。
【0026】
ここで用いられる場合、「治療的有効量」は、被検者の海馬の歯状回の神経発生における変化と関連する疾患にかかっている被検者を治療するのに十分な量を意味する。
【0027】
ここで用いられる場合、「治療」は、疾患の進行の緩徐化、阻止又は逆転を意味する。
【0028】
[発明の態様]
本発明は、 被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法を提供する。
【0029】
一つの太陽において、該被検者はヒトである。他の態様において、該疾患はアルツハイマー病、外傷後ストレス症候群、加齢記憶喪失及びうつ病からなる群より選択される。一つの態様において、該疾患は加齢記憶喪失であり、被検者は65歳を超えている。他の態様において、該化合物はセロトニン選択性取込み阻害剤である。
【0030】
本発明は、被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法を提供する。
【0031】
一つの態様において、該被検者はヒトである。他の態様において、該疾患はアルツハイマー病、外傷後ストレス症候群、加齢記憶喪失及びうつ病からなる群より選択される。一つの態様において、該疾患は加齢記憶喪失であり、被検者は65歳を超えている。他の態様において、該化合物はセロトニン選択性取込み阻害剤である。
【0032】
本発明はさらに、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少する化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法を提供する。一つの態様において、該被検者はヒトである。他の態様において、該疾患は癲癇である。
【0033】
本発明はまた、被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法を提供する。一つの態様において、該被検者はヒトである。他の態様において、該疾患は癲癇である。
【0034】
本発明は、薬剤が哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を増大するかどうかを決定する方法であって、薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を増大させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊(a volume of tissu)及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;(b) 前記薬剤を前記被検者に、それが該被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な様式で投与すること;(c) 増加を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増加を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び(d) 大脳血液量における神経発生特異的増加が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような増加は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を増加させることを示す;を提供する。
【0035】
一つの態様において、大脳血液量の測定は、磁気共鳴画像を用いて行われる。他の態様において、大脳血液量は、1 mm3以下の組織量に関して測定され、及び大脳血液量の測定は、(a) 組織塊(volume of tissue)の第1の画像をインビボで取得する;(b) 該組織塊に造影剤を投与する;(c) 組織塊の第2の画像をインビボで取得する、ここで、該第2の画像は造影剤の投与から少なくとも4分後に取得する;及び(d) 第1及び第2の画像にもとすいて組織塊の大脳血液量を測定する;の工程を含む。一つの態様において、造影剤はガドリニウムを含む。他の態様において、組織塊に関する大脳血液量の測定は、(a) 第1の組織塊のインビボでの磁気共鳴画像を取得する;(b) 体重1kgあたり約1 mgより多く、体重1kgあたり約20 mgより少ない量のガドリニウム含有造影剤を被検者に腹腔内投与する;(c) 第2の組織塊のインビボでの磁気共鳴画像を取得する、ここで該第2の画像は、造影剤の投与から少なくとも約15分後、しかし多くとも約2時間後に取得する;及び(d) 第1及び第2の画像に基づいて、大脳血液量の量を測定する;の工程を含む方法によって行われる。一つの態様において、造影剤はガドリニウムペンテートである。他の態様において、被検者はマウス又はラットである。さらに他の態様において、薬剤はセロトニン選択性取込み阻害剤である。
【0036】
本発明はさらに、薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;(b) 前記薬剤を、それが前記被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な方法で、前記被検者に投与すること;(c) 減少を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び(d) 大脳血液量における神経発生特異的減少が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような減少は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させることを示す;を提供する。一つの態様において、大脳血液量の測定は、磁気共鳴画像法を用いて行われる。他の態様において、大脳血液量は、1 mm3以下の組織塊に関して前記大脳血液量が測定され、前記大脳血液量の測定が以下の工程を含む:(a) 前記組織塊の第1の画像をインビボで取得すること;(b) 前記組織塊に造影剤を投与すること;(c) 前記組織塊の第2の画像をインビボで取得すること、ここにおいて、前記第2の画像は、前記造影剤の投与後少なくとも4分で取得される;及び、(d) 前記第1及び第2の画像に基づいて前記組織塊の大脳血液量を決定すること。一つの態様において、造影剤はガドリニウムを含む。
【0037】
他の態様において、組織塊に関する大脳血液量の測定は、(a) 第1の組織塊の磁気共鳴画像をインビボで取得する;(b) 被検者に、ガドリニウム含有造影剤を体重1kgあたり約1 mgよりも大きい量で且つ体重1kgあたり約20 mgよりも小さい量で腹腔内投与する;(c) 第2の組織塊の磁気共鳴画像インビボで取得する、該第2の画像は、造影剤の投与から少なくとも約15分後、約2時間後以下で取得される;及び(d) 第1及び第2の画像に基づいて大脳血液量の量を測定する;の工程を含む方法によって行われる。一つの態様において、該造影剤はガドリニウムペンテートである。他の態様において、被検者はマウス又はラットである。
【0038】
[追加の態様]
以下の態様は、上記のガドリニウムベースに基づくMRI方法に関する。
さらなる態様において、ガドリニウム含有造影剤の量は体重1kgあたり約10 mgの量で投与される。他の態様において、第2の磁気共鳴画像は、ガドリニウム含有造影剤の投与後、約45分で取得される。
【0039】
本発明はまた、生理食塩水溶液を被検者に腹腔内投与する工程をさらに含む上記方法を提供し、該投与は工程(c)又は工程(d)の何れか一方の後に続く。
【0040】
一つの態様において、被検者はマウスであり、少なくとも約4 mlの生理食塩水溶液が投与される。他の態様において、被検者はマウスであり、約5 mlの生理食塩水溶液が投与される。さらに他の態様において、被検者はヒトの神経性疾患のための動物モデルである。
【0041】
本発明は、事前定義期間の間の哺乳類の被検者における大脳組織塊における血液の量(大脳血液量)の変化を測定する方法を提供する。該方法は、事前定義期間の間の複数の時点で大脳血液量を測定し、そのように測定した大脳血液量を比較し、事前定義期間の間の大脳血液量における変化を測定することを含み、ここで、各時点において、大脳血液量の測定は、上記方法に従って行われ、但し、事前定義機関の最終時点の他の各時点において、生理食塩水溶液は、工程(c)又は工程(d)の何れか一方の後に続いて被検者に腹腔内投与される。
【0042】
一つの態様において、事前定義期間は、一ヶ月以上である。他の態様において、事前定義期間は、6ヶ月以上である。さらに他の態様において、事前定義期間は1年以上である。さらなる態様において、事前定義期間は2年以上である。
【0043】
一つの態様において、事前定義期間の間の複数の時点の数は3以上である。他の態様において、事前定義期間の間の複数の時点の数は5以上である。
【0044】
さらに他の態様において、事前定義期間の間の複数の時点の数は10以上である。さらなる態様において、事前定義期間の間の複数の時点の数は20以上である。
【0045】
本発明は、以下の実験の詳細の項において説明される。この項は、発明の理解を助けるための説明であるが、請求の範囲で定義された発明に限定する意図はなく、どのような意味においてもそれに限定されるように解釈されるべきではない。
【0046】
実験の詳細I
背景及び意義
歯状回は、寿命を通して神経発生の能力を維持するという、まれで特別な脳領域である。歯状回が認知機能に関わるために、神経発生を刺激する能力は、睡眠欠乏によって起こる認知欠乏を防ぐための方法として利用され得る。げっ歯類における研究は、肉体的な運動が歯状回神経発生の強力な刺激薬であることを示唆している。現在、神経発生の実証は、動物の犠牲と脳切片での死後分析を行うことを必要としている。この要求は、ヒトにおいては明らかに禁制であり、運動がヒトの歯状回における神経発生を刺激するか否かが未だ不明のままであることの理由である。この制限を念頭において、神経発生と血管形成の間の密接した空間的及び時間的な連関に頼る、MRIアプローチが近年開発された。血管形成は、歯状回の小次元内であってもMRIによって測定できるパラメーター、大脳血液量(CBV)の増大をもたらす。
【0047】
予備的研究
大規模な疫学的な研究の一部として、66の被検者に、以下の質問にイエス/ノーで答える運動アンケートが施された:「先月、歩くために外出しましたか?」、及び、「先月、肉体的な調整のために肉体的な運動を行いましたか?」。それぞれ肯定的な回答は+1を割り当て、よって、被検者は、0〜2の範囲の合計スコアを有した。全ての被検者は、4つの海馬の小領域−嗅内皮質、歯状回、CA1及び鉤状回−から、CBVの推定のために用いられるMRIプロトコールにより画像化された(図1に示すように)。図1に示すように、相関分析は、歯状回から測定したCBVのみが、運動の自己申告と相関することを明らかにした。
【0048】
この結果が運動と歯状回CBVの間の関係を支持しているとはいえ、この研究は多くの重要な限界を有している。第一に、その質問は、それらの範囲が限られている。第二に、一般にアンケートは、自己申告に付き物の多くの主観的な誤りを伴う。第三に、CBVが単一の時点で測定され、また、運動の自己申告に伴う変動(covary)し得る他の多くの要因があり、従って、運動それ自体が歯状回CBVの原因となると結論付けることができない。それらの関係は、一月の間の運動量を実際に定量化し、運動前後のCBVの変化を探すことにより、最善の取り組みがされる。
【0049】
研究の方法及び設計
被検者
20〜45歳の20人の被検者を、コロンビア大学/ニューヨーク長老教会病院共同体から動員した。被検者は、座りがちの、習慣的な非運動者であり、アメリカ心臓協会(AHA)基準(男性VO2max<43、女性<37)による平均フィットネス以下に認定される。全ての被検者は非喫煙者である。被検者は、コロンビア長老教会メディカルセンターの至る所に投函されたちらしによって募集される。適格性を判定するための電話審査の後、被検者は、サイクルエルゴメータ上で増分(incremental)運動試験を行う。
【0050】
実験グループ
グループI:中程度の強度の運動:被検者は、一連の有酸素活動、例えば、定常のエルゴメータ上でのサイクリング、トレッドミル上でのランニング、ステアマスター(Stairmaster)上での登上、又は楕円トレーナー(elliptical trainer)の使用から選択することを容認される。運動プログラムは、被検者のフィットネスの査定に基づく。特に、被検者は、VO2max試験の間に得られた最大心拍数の55-65%に相当する心拍数でそれらの初期の運動を開始する。被検者は、その強度で2週間運動し、その後、12週間のトレーニングプログラムの残りの間、最大HRの65%で強度を維持する。この中程度の強度のトレーニングは、約8-10%のVO2maxの増大を誘導した。
【0051】
グループ2:高強度運動:再び、被検者は、12週間のプログラムの1週及び2週の間、それらの訓練が最大HRの55-65%である、一連の有酸素活動から選択することを容認される。3週目及び4週目に、強度を最大HRの65-75%にまで増大し、5〜12週目はその強度を最大HRの75%に増大する。この高強度のトレーニングプログラムは、約15%のVO2maxの増加を誘導する。
【0052】
何れのトレーニングプログラムも、12週間の長さである。各被検者について、運動が適切な強度レベルで行われていることを保証するためにトレーナーを利用することが可能である。トレーニングプログラムに対する忠実さは、毎週の記録によって、及び施設でのコンピュータ勤怠記録(attendance records)によって、及び、各トレーニングセッションの間に用いられたHRモニターからのデータによって実証される。被検者は、それらの進行をモニターする研究スタッフによって週間基準で連絡される。
【0053】
運動プログラムの完了後、被検者は、VO2max及びRRVの追跡試験に戻る。データ収集スタッフは、グループの割り当てを知らない。両方の条件において、全てのトレーニングセッションは、10〜15分のウォームアップ及びクールダウン及び30〜40分の激しい運動から成る。それらのセッションは、週4日実行される。トレーニングプログラムは、コロンビア医療学校キャンパスのプラスワンフィットネスセンターにおいて行われる。先の研究において、プラスワンのスタッフによる多大な(Superb)協力が得られる。
【0054】
質のコントロール及び忠実さを保証するため、被検者は、各トレーニングセッションの間、それらの活動の詳細な記録を徹底する。それらの記録は、運動トレーニングの日付と持続時間及び各トレーニングセッションの活動の情報を含む。全てのトレーニングセッションを通して、被検者は、該セッションの間中HRを記録する極性の心拍数モニターを装着する。それらのデータは、各セッション後にダウンロードされ、週基準で評価される。これは被検者の忠実さを補助し、トレーニング強度レベルの厳格な証拠資料を提供する。
【0055】
循環系の指標
有酸素能力:最大有酸素フィットネス(VO2max)は、Ergoline 800S 電気的ブレーキサイクルエルゴメータ(SensorMedics Corp.、Anaheim、CA)での段階的な運動試験によって測定される。各被検者は、30ワット(W)で2分の運動を始め、その仕事率(work rate)は、VO2max基準(RQ 1.1又は>、VO2の上昇を伴わない通気の上昇、最大年齢予測心拍数が到達する及び又は意志的な疲労)が到達するまで、2分毎に30 W、連続して上昇される。分間の通気は、FLO-1容量トランスデューサーモジュール(PHYSIO-DYNE Instrument Corp.、Quogue、NY)と連結した呼吸流量メーターによって測定される。呼気酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)の割合は、コンピューターシステム(MAX-1、PHYSIO-DYNE Instrument Corp.、Quogue、NY)と連結した 常磁性O2及び赤外CO2分析機器を用いて測定される。それらの分析機器は、既知の医用等級のガスに対して較正される。段階的な運動試験の間に達成される最も高いVO2値が、VO2maxとみなされる。同一の試験方法が、VO2maxにおける変化を測定するためのトレーニングプログラムの終了時に行われる。
【0056】
心臓自律神経調整:ECG、血圧、及び呼吸の連続的な測定は、座位及び仰臥位の両方で、10分の静止期間の間に記録される。ECG電極を右肩の左前側の腋窩線、10番目の肋間腔に配置し、及び、右下カドラント(quadrant)に配置する。アナログのECG信号は、National Instruments 16ビットA/D 変換ボードによって500 Hzでデジタル化され、マイクロコンピューターに送られる。ECG波形は、注文記載事象(custom-written event)検出ソフトウェアにより日常的に検出されるR波検出に供され、RR間系列(RR interval series)が得られる。R波の作成におけるエラーは、相互作用的に訂正される。
【0057】
仰臥位及び座位の両方について、10分の静止期間、平均RRI、及び次のRRVの指標が算出される:RR間隔(SDRR)の標準偏差、平方自乗平均逐次差(root mean squared successive difference)(rMSSD)、低頻度バンド(0.04-0.15 Hz (LF))及び高頻度バンド(0.15-0.50 Hz (HF))におけるスペクトルパワー。それらのシリーズのスペクトルは、DeBoer、Karamaker、及びStrackee (deBoer、1984)によって開示されたものに類似するフーリエ変換を計算するための、間隔(interval)方法を用いて、300秒時間(epochs)で算出される。フーリエ変換を計算する前に、RR間隔系列の平均が、該系列の各値から減算され、次いで、該系列が、ハニングウィンドウ(Hanning window)及びパワー(power)を用いて濾過される。即ち、分散(msec2中)、LF及びHF超のバンドが合計された。スペクトルのパワーの推定は、このフィルターによって生じる減弱を説明するために適合される。
【0058】
呼吸
胸部及び腹部の呼吸信号を、呼吸モニターで収集する。それらの信号は、呼吸数の分平均によって、分間(minutes)を生じる特異的に記載された(specially written)呼吸スコアリングプログラムに供される。
【0059】
MRI
全ての被検者は2回のMRIを受け、一回目はベースラインであり、二回目は運動期間の終了時のMRIである。
【0060】
MRIによるCBVマップの作成
2セットの、斜方の冠状の3D Tl-重みつき画像(TR = 20ms; TE = 6ms; flip angle = 25 degrees; in plane resolution = 0.86 mm X 0.86 mm; slice thickness = 4 mm)が取得される−Omniscanの標準投与量(0.1 mmol/kg)のIV投与の前に第1が取得され、その4分後に第2が取得される。切片は、海馬の長軸と直角をなして配向され、偵察Tl-重みつき球欠的(sagital)シリーズで確認される。被検者は、2つの画像の取得の間に動かないように注意することが要求される。
【0061】
取得された画像は、Dr. Smallの研究室に移され、イメージディスプレイ及び分析ソフトウェアパッケージ(MEDx Sensor Systems)を用いて、プロセシングが二重のプロセッサー(2.4 GHz Xeon)リナックス(登録商標)(RedHat7.3)ワークステーション上で行われる。被検者のグルーピングを知らない研究者が、全ての画像法の処理を行う。AIRプログラムを、画像の共記録に用いる。ラン(runs)の短い取得時間は、アルゴリズムの良好な一致を強める。二つの方法が、運動補正の良好な一致を評価するために、及び、特定の研究の承認と棄却のための基準として用いられる:第1に、Gnuプロットが補正後に用いられる。空間の何れかの方向で、スキャニング期間の間に1ピクセル次元よりも大きいシフトがある場合、その研究は棄却される。第2に、二つの運動補正画像が互いから減算される。大きい信号が残った画像において検出された場合、その研究は棄却される。予備的に行われた研究のうちの一つだけが、それらの良好な一致の基準に合わずに棄却される。
【0062】
造影前(pre-contrast)の画像は、造影後(post-contrast)の画像から減算され、矢状洞(sagittal sinus)におけるその差が記録される。減算された画像は、次いで、矢状洞(sagittal sinus)におけるその差で除法され、100を掛けられ、絶対CBVマップを与える。
【0063】
歯状回及び他の海馬の小領域の同定
一連の斜位の冠状の画像の中で、側方の膝状体の核の前側及び鉤の後側の切片が、海馬の形態学及び内部の構造の最適な可視化を与えることが一貫して見出される。この切片は、全ての研究に用いられる標準切片である。図1に示すように、海馬の外部の形態学がトレースされ、及び内部の形態学の単一のトレーシングが、海馬の溝及び内部の白い物質のトレースに続く。海馬体の4つの小領域のROIが、次いで、以下の解剖学上の基準に依存して同定される:a)嗅内皮質−側方及び下方の境界は側副溝を伴う;中央の境界は側頭葉の中央側面である;上方の境界は、海馬の溝及び鉤状回と嗅内皮質の間の灰色/白の差異である、b) 鉤状回−中央の境界は、海馬の溝の中央の範囲及び/又は海馬の水平方向の屈曲;下方の境界は、海馬傍回の下にある白い物質である;上方の境界は海馬の溝である:側方の境界は海馬の垂直方向の屈曲に対して中央の数ピクセルである、c) CA1小領域−中央の境界は、鉤状回ROI終わりの側方の2-3ピクセル、おおよそ海馬の垂直方向の屈曲の始まりであり、海馬の溝/白い物質の路の延長である;下方の境界は海馬傍回の下にある白い物質である;上方の境界は、海馬体の頂点(top)である、d) 歯状回−中央の境界は側頭葉の中央範囲である;下方の/側方の境界は、海馬の溝/白い物体の路である;上方の境界は海馬体の頂点であり、典型的には白板(alveus)が確認される。標準的なアトラスは、それらの原始的な目印を同定するために用いられる。
【0064】
データ分析
パラメーターの範囲が記録され、その多くが、運動の個々の分散の指標として用いることができる。統計学的な節減のために、当該分野で「金標準(gold-standards)」の一つと見なされているため、VO2maxが最初に用いられる。「CBV差異スコア」は第1のCBVから、それぞれの海馬の小領域から測定された最後のCBVを減算することにより得られる。全ての海馬の小領域が統合された生理的な回路の部分として相互接続されているために、多変量の段階的な直鎖回帰分析が行われ、ここで、VO2maxは、従属変数として含まれ、及び、4つのCBV差異スコア(各海馬の小領域から)は、独立変数として含まれる。個体群統計学の変数は、必要なときにモデル中に含まれる。多くの小領域がCBVにおいて運動に関連する上昇を実証しているにもかかわらず、歯状回CBVにおける上昇が、運動の指標と最も良く相関し得る。他のパラメーターの範囲が、運動における個体分散の指標として用いられるために探索される。
【0065】
実験の詳細II:生きているヒトの歯状回における神経発生の画像法
背景及び意義
科学的なドグマに対して、今では、神経発生が、選択された脳領域−最も著しくは歯状回、海馬の回路の主要な小領域−において、生涯にわたって連続するという明らかな証拠がある。さらに、運動又はセロトニン再取込み阻害剤のような、神経発生を確実に誘導する処置が同定されている。次に重要な工程は、神経発生が認知に影響するか否か、及びどのように影響するかを決定することである。現在、神経発生は、死後組織においてのみ検出可能であり、従って、神経発生と認知の間の関係は、非ヒト動物においてのみ達成することができる。現在のプロジェクトの目標は、生きているヒトの歯状回における神経発生を検出可能であり、及び、さらに定量化できる、画像法技術を開発することである。
【0066】
全ての画像法様式−CT、PET、SPECT、MRI−の中で、MRI(磁気共鳴画像法)のみが、歯状回の可視化のために十分な空間的分解能を有する。標識された新生神経細胞に対する細胞内造影剤に頼るMRIに基づく技術は、探索中である。侵襲性の投与を要求し、神経機能を妨げ得る、細胞内造影剤への依存は、動物モデルには適切であるが、生きているヒトにおける神経発生を検出するための選択肢ではない。
【0067】
神経形成は密接に血管形成と結びつき、それ故、歯状回における神経発生の誘導は、領域性の大脳血液量(CBV)を増大する。MRIが、ヒト、サル、及びマウスにおける歯状回におけるCBVの変化の検出及び定量のために用いることができることが示され、これは、完全に安全に達成できることが示された。このプロジェクトの主な目標は、それ故、MRIで測定されるCBVの変化が、神経発生を検出できるかどうかを判定することである。
【0068】
CBVは選択的には神経発生と関連せず、心拍出量及びシナプスの活性のような他の要因が、神経発生とは無関係に、領域性のCBVに影響する。運動が、それらの他の要因を調節すると予期されるために、CBVにおいて検出された変化が神経発生を反映するということを確信することがどのように可能であるかという疑問が残っている。その回答は、CBV変化の空間時間的なプロフィールにある:図2の上部パネルに示したように、そのCBVにおける影響が、後期のピークと持続する長い上昇である神経発生とは対照的に、CBVに影響する非神経発生要因は、運動期間の初期のピークと、運動期間の終わりの急速な散逸が予想される。
【0069】
さらにその上、非神経発生要因は、歯状回において並びに海馬体の他の小領域−嗅内皮質、CA3及びCA1亜領域、及び鉤状回において発生することが予期される。よって、図2の中央パネルに示したように、歯状回におけるCBV曲線が、非神経発生及び神経発生要因の両方を反映し、一方、他の海馬の小領域におけるCBV曲線が、神経発生要因のみを反映することが予期される。後者のCBV曲線を前者から減算することによって、図2の下方パネルに示したように、CBV曲線が神経発生のみを反映するように作成されることが期待される。
【0070】
神経形成はMRIにより非観血的に画像化され得る
図3に示すように、4つのグループのマウスが画像化される。全てのマウスは、0時点でBRDU注射を受け、及びそれらのベースラインMRIを受ける。各グループは、4つの実験操作;薬物と共に運動、薬物と共に見せかけの運動、プラセボと共に運動、及びプラセボと共に見せかけの運動:の一つを受ける。CBV曲線は、歯状回並びに他の海馬の小領域−CA3及びCA亜領域、鉤状回、及び嗅内皮質において確立される。他の海馬の小領域からの平均CBV曲線は、歯状回から作成されたCBV曲線から減算される。
【0071】
運動と組合せたときに、何れが最も神経発生を誘導するかを決定するための、一連の異なる化合物の試験
同じ実験を上記のように設計し、続いて4グループのマウスが画像化される。4グループの結果は、最も神経発生をもたらす薬物を決定するため、MANOVAモデルを用いて比較される。
【0072】
健康なヒトにおける、最大の神経性薬物の試験
上記に概要した実験グループ及び実験設計を、健康な40人のヒトを被検者として繰り返した(実験グループあたり10人の被検者)。
【0073】
実験の詳細III
概要
歯状回は、生涯を通して神経発生の能力を維持する特別な(privileged)脳領域である。神経発生を促進する薬物は、アルツハイマー病、外傷性脳傷害、発生障害、及び脳卒中を含む多くの疾病に対して、治療剤としての見込みを大いに保持している。画像法技術により神経発生の相関を安全に可視化する性能は、潜在的な神経発生誘導薬物をスクリーニング及び確認するために必要である。この目標に向かって、歯状回における神経発生の相関を可視化するためのMRIアプローチが研究される。このアプローチは、神経発生と血管形成との密接な空間的及び時間的な関連に基づいている。血管形成は、大脳血液量(CBV)の増大をもたらし、CBVは、ヒト、サル、及びげっ歯類の歯状回からMRIにより上手く画像化されるパラメーターである。予備的なデータは、ヒト及びマウスの歯状回におけるCBVが、神経発生の既知の行動性の変更因子である運動と選択的に関連することを示唆している。このプロジェクトの目的は、神経発生誘導薬物をラットに投与することにより、このMRIアプローチを確認することである。
【0074】
歯状回並びに神経発生を起こしていない隣接する海馬の小領域における薬物の効果を系統的にマッピングすることにより、神経発生に感応性であり特異的であるMRI変化のパターンが抽出される。一度ラットにおいて確認されれば、このMRIアプローチは、次いで、神経発生誘導薬物のスクリーニングと確認のために、ヒトに移すことができる。
【0075】
近年の科学的発見は、新しい脳神経細胞の誕生、増殖、及び発達のプロセスが、ヒトの生涯の全ての時期において継続可能であることを示している。この研究はこのプロセスを促進する新しい薬物を発見するためのアッセイを開発することを目的とする。それらの薬物は、脳卒中、外傷性脳傷害、脳腫瘍、発生障害、及びアルツハイマー病を含む神経性疾患及び疾病にかかっている患者のための新しい治療ストラテジーを提供する。
【0076】
近年まで、脳疾病及び傷害は、細胞の再生の可能性がない、神経細胞の永久の損失をもたらすとみなされていた。今では広範な証拠により、ある脳領域が、げっ歯類、非ヒト霊長類、及びヒトの成人期に新しい神経細胞を発生する能力を保持することが示唆されている。それらの発見は、治療、即ち、内在性の神経発生の薬理学的な誘導のための新しいアプローチを指し示す。その治療は、脳卒中/虚血、外傷性脳傷害、脳腫瘍、発生障害、及びアルツハイマー病を含む神経性疾病及び損傷に関連する。
【0077】
背景及び意義
この6年の間に、神経発生はCNS生理学及び疾病の根底にある基礎的なプロセスとして出現した。Dr. Fred Gageとその共同研究者は、ヒトの海馬の歯状回における神経発生を発見し、神経発生が調節可能であることを証明し、成体の海馬における機能的な神経発生を示した(Ray、Peterson et al. 1993; Palmer、Ray et al. 1995; Kempermann、Kuhn et al. 1997; Eriksson、Perfilieva et al. 1998; van Praag、Kempermann et al. 1999; van Praag、Schinder et al. 2002)。長く確立されてきたドグマに反して、それらの発見は、ヒトがその生涯を通して新しい神経細胞を産生できるという、注目せずにおれない事例を構築した。この研究は、ヒトのCNS及び末梢神経系の多くの疾病及び疾患のための新規の治療の可能性の扉を開いた。
【0078】
多くの研究が、運動と海馬の神経発生を結びつけている。Kempermannらによる研究(1998)は、老化したマウスの歯状回において神経発生が発生し続け、また、社会的相互作用、探索、及び肉体的活動を提供する豊かな環境中で生きていることにより刺激され得ることを示した(Kempermann、Kuhn et al. 1998)。神経発生が年齢の増加とともに減少するにもかかわらず、豊かな環境による刺激は、神経細胞の生存及び分化を増大させることが示された。引き続く研究(van Praag、et al.1999)において、成体マウスにおける神経細胞の増殖、生存、及び分化を増大させることにおいて、ランニングは他の条件の範囲よりもより有効であることが示された。考慮された他の条件は、水迷路学習、つないだ状態での水泳(yoke swimming)、及び豊かな環境、並びに標準的なハウジング(standard housing)であった。
【0079】
神経細胞の可塑性及び自己修復の活動依存的調節(Kempermann and Gage 2000)は、脳損傷の治療における肉体的な治療の使用について動機づけする要因である。多くの損傷/疾病において、患者の肉体的状態のために、運動は早期には開始できないか又は全くできない。治療的処置の機能的な結果は予測が複雑であり、該疾病/損傷の特異性、家族及びコミュニティー源、診断の正確さを含む広い範囲の要因に依存する。神経学的な疾病又は損傷の初期から神経発生を誘導する現在の治療への補助は、それらの患者をより機能的にする結果を増強し得る。
【0080】
現在、化合物が神経発生を誘導するかどうかを決定するための唯一の方法は死後分析である。この必要条件は、化合物がヒトにおいて神経発生を誘導するかどうかの決定における明らかな禁制である。従って、神経発生のインビボ指標の開発は、潜在的な神経発生誘導薬のスクリーニング、確認、及び最適化のために重要な目的として浮かび上がっている。この目的を念頭において、ここ数年の間に、Dr. Scott Smallの研究室では、生きた被検者における神経発生を可視化するための異なる画像化アプローチを探索してきた。
【0081】
一つのアプローチは、注射によって新しく分割した細胞中に取り込まれる、BrdUと類似したMRI感受性レポーター分子の使用である。それらのレポーター分子が原理的には開発できるとはいえ、予備的な分析は、このアプローチに関する多くの安全性の懸念を起こした。第一に、該レポーター分子は、血液脳関門及び細胞膜の二つの天然のバリアーを透過する必要がある。この第1の懸念を処理できたとしても、第2の懸念は、該レポーター分子は、恐らく好ましい信号対雑音比を達成するために高い濃度で蓄積することが必要であり、これは神経細胞の機能に有害な効果を有し得るということである。よって、MRI感応性の神経発生レポーター分子が動物モデルで成功し得たとしても、このアプローチは、安全性の懸念のためにヒトに移転する場合に問題となる。それらの懸念にもかかわらず、神経発生のマッピングのためのMRI感応性レポーター分子は、探索が続けられている。
【0082】
同時に、しかしながら、神経発生を可視化するための第2のアプローチが探索されており、これは、確認されればヒトでの研究に容易に移転される。このアプローチは、図5に要約したように、神経発生と血管形成の密接な空間的及び時間的結合に基づいている(Palmer、Willhoite et al. 2000; Louissaint、Rao et al. 2002)。血管形成は、領域性の大脳血液量(CBV)に相対的な増大をもたらし、CBVは、MRIで測定できるパラメーターである(Gonzalez、Fischman et al. 1995)。多くの研究が、CBVのMRI評価が、生きたげっ歯類における血管形成を検出可能であることを証明し(Lin、Sun et al. 2002; Dunn、Roche et al. 2003; Dunn、Roche et al. 2004; Jiang、Zhang et al. 2005)、実際に、多くの研究が、CBVのMRI測定が、海馬の機能障害及び脳損傷の全体的な測定に関連する変化を補足することができることを示している。この数年にわたって、ヒト、サル、及びマウスにおいて、歯状回を含む海馬の小領域におけるCBVが安全に測定できる、MRIに基づくプロトコールが開発された(Small、Wu et al. 2000; Small、Tsai et al. 2002)。
【0083】
血管内の造影剤の濃度を変化させることは、MRIによる領域性の大脳血液量(CBV)を推定するために用いられる典型的なアプローチである(上述したように、(Belliveau、Rosen et al. 1990; Kuppusamy、Lin et al. 1996; van Zijl、Eleff et al. 1998; Wu、Wong et al. 2003)。それらの性質に依存して、造影剤は、T1-重み付け又はT2-重み付けの信号強度の何れかに影響する。ガドリニウムの大量瞬時投与を注射し、T2*-重み付けした信号における動的な変化をある期間にわたって追跡することによって、Belliveauとその同僚は、CBVを測定するための第1のMRIアプローチを導入した(Belliveau、Rosen et al. 1990)。信号の振幅を時間に対してプロットすることによって、造影(contrast)の第1の通過(pass)の「曲線下面積」−特定の脳領域を通過した第1及び最も重い造影のフロー−を、領域のCBVを算出するために用いることができる。動的な感受性造影剤(DSC)MRIは、過渡的な第1の通過を補足するために高い時間的分解能が必要であるために、典型的には、エコー平面画像法によって行われる。この時間的な要求は、空間的な分解能を損ない、そしてDSCは、現在、個々の海馬の小領域を可視化できない。
【0084】
Haake、Lin及びその同僚は、CBVを高い空間的分解能でマップできる、代替のガドリニウムに基づくアプローチを導入した(Kuppusamy、Lin et al. 1996; Lin、Paczynski et al. 1997; Lin、Celik et al. 1999)。迅速な画像法による造影の第1の通過の後の急転(racing)の代わりに、CBV測定は、造影剤によって誘導される定常状態のT1-重み付け変化から作成される。動的測定と比較して、定常状態測定は、より高い空間的分解能を有するCBVマップを作成することができる。実際に、定常状態CBVアプローチは、要求されるmm未満の分解能を達成することができ、それ故、ヒト及びサルにおける個々の海馬の小領域を可視化できる(Small、Chawla et al. 2004)。
【0085】
ガドリニウム及び酸化鉄粒子の両方が、典型的には、信号強度におけるT2-重み付け変化に頼った、げっ歯類におけるCBVのマップのために用いられる(van Bruggen、Busch et al. 1998; Mandeville、Jenkins et al. 2001; Dunn、Roche et al. 2003; Dunn、Roche et al. 2004; Jiang、Zhang et al. 2005)。ガドリニウムに基づくアプローチの変形が、最近導入された。その新しいところは主に、ガドリニウムがIV注射よりむしろIP(腹腔内)を経て導入されるところであり、これは、より外傷が少なく、また、CBV変化が同じ動物で繰り返し安全にマップできるという可能性を増大させる。この実際的な相違から離れて、このアプローチは概念的には以前のアプローチとほとんど同一である。このIPアプローチは、ガドリニウム又は酸化鉄粒子の何れかのIV注射と量的に類似したCBVの推定を生じることが発見された。関連する研究で、Jiangら(Jiang、Zhang et al.、2005)は、ガドリニウムに応答したT2-重み付け信号変化に依拠するCBVをマップした(従って、上記のアプローチと極めて類似する)。それらは、このCBVマップが、神経細胞前駆体細胞を注入することによって誘導される神経発生と連関する血管形成の出現が、実際に検出可能であることを示す。
【0086】
次の節は、運動−神経発生の確立された誘導原―が、歯状回から選択的に測定されたCBVの不一致を説明することを示唆し、神経性の化合物がインビトロ組織学的アッセイを用いて同定可能であることを示す、予備的なデータを概説する。しかしながら、その不足は、運動又は薬理学的な薬剤を神経発生刺激剤として用いた、MRIによって測定されたCBVが、インビトロで測定された神経発生と直接的に相関することを示す系統的な分析である。
【0087】
この提案の全体的な目的は、MRIによって測定されたCBVが、神経発生と敏感に相関するというさらなる証拠を提供することである。他のアプローチが、神経発生のインビボでの指標として開発下にあるにも関わらず、CBVアプローチの重要な利点は、それがヒトに容易に移転できることである。げっ歯類におけるCBVマッピングのために開発されたアプローチは、ヒトで現在用いられるアプローチとほとんど同じである。このアプローチが、歯状回を含む、ヒトの海馬の個々の海馬の小領域におけるCBVをマップできることが示されている。このアプローチを用いれば、単一の時点の測定だけでなく、ある時間にわたって繰り返し測定する場合にもCBVマッピングは安全である。従って、長期的な実験が、薬物効率を評価するための潜在的に強力なアプローチである、薬物送達−個々の個体がそれら自身のコントロールとして作用する−の前後での画像化により実行されることができる。
【0088】
予備的な研究
神経性化合物の同定
多くの研究室による先駆的な研究が、成体の海馬の神経の幹細胞(NSC)及びその生存及び死(fate)の選択決定を制御する要因を同定している。それらの研究は、外来性の要因がインビトロでの神経発生のプロセスを制御できることを示している。NSC分化の時期と各時期を支配する要因を図6にまとめた。
【0089】
培養rNSCが、幹細胞の性質を維持しながら増殖するそれらの能力に基づいて、脳における神経発生のインビトロモデルとしてGageらによって確立された(Palmer、Ray et al. 1995)。自己更新及び分化する能力を含むそれらの性質は、全ての神経の系統:神経、乏突起膠細胞、及び星状細胞に入る。インビトロの結果は、培養rNSCsのインビボ移植を経て実証され、それらが完全な範囲の神経性の性質を保持することを実証した(Ray、Peterson et al. 1993; Song、Stevens et al. 2002; van Praag、Schinder et al. 2002; Hsieh、Aimone et al. 2004)。
【0090】
BrainCellの焦点は、会社の共設立者Dr. Gageによって開発された使用可能な技術に基づく、新しい神経発生に基づく治療の開発である。それらの技術及びツールは、CNS疾患の治療のための内在性神経発生を促進するための薬物候補のプロファイリングと選択を可能にする、神経発生プラットフォームのための基礎を形成する。
【0091】
CBV及び神経発生
ヒトにおけるCBVと運動
大規模な疫学的な研究の一部として、66の被検者に、以下の質問にイエス/ノーで答える運動アンケートが施された:「先月、歩くために外出しましたか?」、及び、「先月、肉体的な調整のために肉体的な運動を行いましたか?」。それぞれ肯定的な回答は+1を割り当て、よって、被検者は、0〜2の範囲の合計スコアを有した。全ての被検者は、4つの海馬の小領域−嗅内皮質、歯状回、CA1及び鉤状回−から、CBVの推定のために用いられるMRIプロトコールにより画像化された(図7)。このプロトコールは、Lin及びHaacke (Lin、Paczynski et al. 1997; Lin、Celik et al. 1999)によって最初に開発されたT1-重み付け技術の改変であった。ガドリニウムをIV注射によって投与し、CBV推定をT1-重み付け信号における定常状態変化に基づいて引き出した。該技術に対する改変は、海馬の小領域の視覚化のための最適化のためのものである。この方法は、非ヒト霊長類の画像化のために用いられている(Small、Chawla et al. 2004)。
【0092】
図7に示すように、相関分析は、測定された海馬の小領域が、歯状回から測定したCBVのみが、運動の自己報告と相関することを明らかにした。この結果が運動と歯状回CBVの間の関係を支持しているとはいえ、この研究は多くの重要な限界を有している。第一に、その質問はそれらの範囲及び正確さに限りがある。第二に、アンケートは一般に、自己報告に伴う多くの誤りを伴う。第三に、CBVが単一の時点で測定され、また、運動の自己報告に伴う変動し得る多くの他の要因があり、それによって、運動それ自体が歯状回CBVの原因となると結論付けることができない。それらの関係は、一月の間の運動量を実際に定量し、運動の前後のCBVの変化を求めることにより、最もよく解決される。この目的は、次の項に記載したマウスの実験を動機付けるものである。
【0093】
マウスにおける、領域性のCBVと神経発生の相関
予備的な研究において、個々の海馬の小領域(インビボでMRIにより測定された)におけるCBV変化の推定と、マウスにおける神経発生(インビトロで組織学的に測定された)の間の相関が評価された。実験設計の原理を図8に模式的に表す。
【0094】
以前に記したように、神経発生が血管形成と関連し、そして血管形成がCBVと関連するために、CBVが神経発生の感受性マーカーであるという仮説を立てることができる。しかしながら、CBVが非神経発生要因によって影響されるために、歯状回におけるCBV変化の直接的な測定は、神経発生に特異的であると仮定することはできない。
【0095】
CBV測定に特異性を課すための方法が、実験の予備的セットにおいて探索された。運動のような 神経発生の誘導原は、神経発生と非-神経発生メカニズムの両方を通して歯状回におけるCBVに影響する。結果的に、運動の前後のCBVの変化を測定する場合、観察される変化は神経発生要因及び非神経発生要因の複合性であろう。従って、問題は、観察されたCBVから神経発生の寄与のみを如何にして抽出するかである。
【0096】
予備的な研究は、以下の仮定を試験した:CBVにおける運動の非神経発生的影響は、神経発生能力を有さない隣接する海馬の小領域に表れる。この仮定が正しければ、即ち、他の領域における非神経発生効果が歯状回におけるものと等しければ、歯状回における神経発生単独CBV効果を推定するために、観察されたCBVからそれらを減算できる。
【0097】
明らかに、この仮定は真実ではなさそうであり、その上さらに、複数の海馬の小領域がこのアプローチにおいて最も有効であるというアプリオリを予測することができない。それ故、この仮説を試験するために、T2-重み付けアプローチを用いて種々の海馬の小領域においてCBVが推定される実験が設計された(図9)(Moreno、Hua et al. 2005)(付録に添付);また、複数の直線回帰分析(MLRA)が、最良の結果を得るための領域を決定するために用いられた。
【0098】
初期CBV推定が試験グループとコントロールグループの両方において行われた。試験グループについて一ヶ月の運動の後、CBV推定が両方のグループで繰り返された。この時点で、全てのマウスは屠殺され、BrdUラベリングを海馬の神経発生の定量のために用いた。
【0099】
CBV差異スコアは、初期の領域性CBV推定を一月の運動又は運動なしの後に見出されたものから減算することによって引き出された。その結果の幾つかを図10に示す。示した3つの海馬の小領域において、運動しなかったものと比べて運動したマウスにおいて、数値的なCBVスコアの上昇が認められた。コントロールグループがCBVスコアにおける減少を有するにもかかわらず、この減少は、統計学的に0と異ならなかった。多変量のANOVAを用いると、グループ間の差異が歯状回においてのみ発見された。
【0100】
歯状回の外側の海馬の小領域が、CBVにおける変化の神経発生特異的成分を抽出するために用いられ得るという開始仮定を試験するために、生データの複数の直線回帰分析(MLRA)が行われた。しかしながら、海馬の小領域が最も有用であり(任意に)、MLRAが選択肢の探索を許容するというアプリオリは知られなかった。その結果は、CBV差異スコアをCA1のために、該分析において共変として含めることは、歯状回CBVとBrDUラベリングの間の重要な相関をもたらすことを示した(図11の右側プロットに示される)。
【0101】
図11の左のグラフは、BrdU神経発生測定値と交差相関した歯状回におけるCBV差異(CBV運動 マイナスCBVコントロール)を示す。これは、運動によるもので神経発生から起こったものではないCBV における変化を考慮に入れていない。肯定的な傾向が観察されたが、しかしそれは、統計学的に有意でないことに留意されたい。右側のグラフは、同じ相関を示しているが、しかし、歯状回CBV差異は、CA1小領域について見出されたCBVの差異を減算することによって補正されている。この補正は、歯状回CBVの変化と神経発生の間の統計学的に有意な相関を与える。
【0102】
それらの予備的な結果は、1)神経発生の相関物としてCBVに特異性を課すことが可能であるという仮定を確証させる、及び2)何れの海馬の小領域が、CBVにおける変化を誘導する非神経発生運動の最もよい推定を与えるかの同定。
【0103】
探索設計及び方法
具体的な目的は:
1.ラットの歯状回における運動が誘導する神経発生と、MRIによって測定されたCBVにおける変化との間の相関の決定
2.既知のインビボでの神経性活性を有する化合物(バルプロ酸及びフルオキセチン)がCBVを増強するかどうかの決定。
【0104】
両方の目的について、該アプローチは、予備的な結果において提示されたものと類似した。海馬の小領域におけるCBVが、ラットのコントロールグループと試験グループの両方においてMRIで測定された。試験グループにおける神経形成は、運動によって又はバルプロ酸及びフルオキセチンによる処置によって刺激された。歯状回CBVにおいて神経発生が誘導した変化と、組織学的に測定された神経発生とを最もよく相関させる方法を決定するために、複数の直線回帰分析が行われた。実験方法の技術的な詳細は、以下の項で提供される。
【0105】
MRIによるCBV導関数
げっ歯類MRI研究室
研究室は、バードケージRFプローブ及び100 G/cmまでの遮蔽勾配システムを用いる、89 mm-bore 9.4 tesla vertical Bruker magnet (Oxford Instruments Ltd.、UK) を備えた、Bruker AVANCE 400WB スペクトロメータ(Bruker NMR、Inc., bilerica、MA)を保持する。穴の直径及びテスラ強度は、信号対雑音比の良好な、安定で極めて高い分解能の画像を与える。該センターはまた、解剖顕微鏡、外科的なツール、及び麻酔薬及び設備を含む外科室を収容する。
【0106】
生理学的なモニタリング
多くの生理学的なプロセスが、脳のMRI信号に、特に安静時の信号を測定する場合、影響を与えることができる。このため、研究室は、マウスが画像化される間の生理学的な測定の範囲を密接にモニターする、一連の生理学的なモニタリングデバイスを有する。O2及びCO2 は、マイクロカプノメーターによって連続的にモニターされる;心拍数及び脈拍数は、パルス酸素測定を用いて連続的にモニターされる。温度は、サーミスタを用いて連続的にモニターされる。EKG及び呼吸数は、必要な場合、磁気によって組立てられたデバイスによって記録される。
【0107】
麻酔
ラットの頭部はその場所に機械的に固定されるが、頭部の動きは麻酔によって最小化されねばならない;さらに、麻酔は、スキャナーによって誘導される恐怖と不安を減少させる。原理的には、何れの麻酔も脳生理学に影響し得るものであり、それ故、全ての麻酔剤がMRI信号に影響を与え得る;それ故、正しい薬剤(correct agent)を選択するために、ケアを行うことが必要である。イソフルランガス(鼻コーンによって、導入局面3 vol%及び維持1.5 vol%、1 L/min エアーフロー)を用いた。他の麻酔剤に勝るイソフルランの最も重要な利点は、イソフルランが大脳の血行力学的な変化を生じないか又は最小限で生じることである。CBVは、血行力学的な連関−酸素代謝と大脳の血液フローの間の生物物理学的な関係に依拠している。幾つかの麻酔は解放(uncoupling)を生じ、これは実験に荒廃的に影響することが明らかになった。この重大な考察を与えるために、T2信号に及ぼす種々の麻酔の影響が探索された。ケタミン/キシラジンにような他の麻酔の組合せはイソフルランと類似したプロフィールを有したが、最終的にイソフルランに決定された。
【0108】
データ取得
3つの偵察スキャンが配置のために最初に取得され、引き続くT2重み付け画像が、再現性の様式において標準的な解剖学的配向に沿って取得される。T2重み付け軸性画像は、TR/TEeff = 2000ms/80ms、緩和亢進(RARE)因子による迅速取得 = 16、FOV = 26 mm、取得マトリックス = 256 X 256、切片厚さ0.6 mm、切片ギャップ = 0.1 mm及びNEX 28、を用いて、多切片迅速スピンエコー(FSE)シークエンスにより取得される。面内の分解能は100 μmである。このシークエンスは、総計画像化時間60分の間、4回繰り返される。最初の15分はプレ-ガドリニウム画像に対応し、この後、1〜2分の遅延時間期間が、マウスが画像化される間、ipガドリニウム注射に先行する。注射は30秒持続する。全ての画像は、同じダイナミックレンジを用いて取得され、よって倍率変更のリスクはない。
【0109】
造影剤送達
血管内の造影剤が脳のCBVマップを作成するために必要である。異なる造影剤が、げっ歯類のCBVマッピングのために用いられた。現在までのほとんどの研究は、造影剤の送達のために静脈内注射に頼っている。IV送達は、げっ歯類では、高頻度の罹患率と時には死亡さえ伴い、問題となることが多いために、ある期間に繰り返しげっ歯類を画像化する長期的な研究に理想的には適していない。この懸念により動機づけされ、ガドリニウムを用いるIPプロトコールが造影剤として最適化された。このプロトコールは、最近刊行物に提示され、この提案を添付として供給する(Moreno、Hua et al. 2005)。
【0110】
濃度287-mg/ml、pH 5.5〜7.0のガドリニウム(ガドジアミド)滅菌水溶液が、OD 0.6 mmのカテーテルにより原液で注入され、これは、画像化前の腹腔内に置かれる。該カテーテルは、6.0絹縫合物質により固定される。一旦、初期画像が取得されたら(前造影剤)、ガドリニウムが10 mMol/Kgの投与量でIP注入される。画像化セッションが完了した後、なお麻酔科にあるげっ歯類は、通常の生理食塩水溶液の2 mlをゆっくりIP注入される。付録に記したように、これは、残存するガドリニウムを洗い流すために必要であることが見出された;これは、この手順なしで再画像化された動物は、低い造影剤対ノイズ比(CNR)を有するために、経験的に分かったことである。
【0111】
幾つかの投与量のIPガドリニウムが試験された。10 mMol以上は、有毒効果を有し(主に一過性の非定常な歩行、恐らく眩暈)及び5 mMolI以下は、デルタR2値が低い。時間経過曲線は、ガドリニウム注射と造影剤後画像化(45分)との適切な間隔を確認することを可能にする。
【0112】
画像化処理
データの再構築後、生の画像を、MEDxイメージ分析ソフトウェアパッケージ(センサーシステム)をロードされたLinux(登録商標)ベースのワークステーションに送った。被検者のグルーピングを知らない研究者が、全ての画像化処理を行った。
【0113】
CBVマップは、Liらによって最初に開発されたアプローチに従って作成された。第1に、ガドリニウム前後の画像が同時に記録された。第2に、ガドリニウム後画像は、ガドリニウム前画像から減算された。第3に、「信号変化スコア」は、100% 血液を含む領域において検出された。ヒトにおいては球欠洞がこの測定に用いられるが、ラットにおいては頸静脈がより容易に可視化され、この測定のために行われた。第4に、減算された画像が、頸静脈における変化スコアによって乗算され、CBVマップを与えた(Lin、Paczynski et al. 1997)。
【0114】
興味の領域(ROI)が、5つの海馬の小領域−嗅内皮質、歯状回、CA1及びCA3亜領域、及び鉤状回−の解剖学的マップから確認された。小領域の間の正確な境界ゾーンを確認することは、特別な組織学的染色が必要であり、当然ながらインビボ画像化の間には利用可能ではないことに留意されたい。小領域間の正確な境界域を定義する解剖学的な目印の欠如は、小領域の容積測定分析を妨げる;しかしながら、切片電気生理学におけるように、各小領域の一般的な位置を確認する解剖学的な目印の可視化によることができる。二つの目印が、海馬体−その外側の形態学及び海馬の溝の同定−の区分のために必要である。海馬体の外側の形態学は、T2及びT2*-重み付け画像化の両方において容易に可視化できる。海馬の溝は、成熟した生きた動物では典型的には閉じている;幸運にも、海馬内の長い静脈が海馬の溝のコースに従い、静脈は、T2及びT2*-重み付け画像において容易に可視化される。それらの画像は、海馬の溝の確認に用いられる。取得された軸方向の一連の切片の中で、それらの解剖学的目印が最も容易に可視化される、「シングルベスト切片」を上手く確認することが可能である。この切片は、典型的には、海馬体の中央体を通って取得される(図9に示すように)。一旦、解剖学的標識が同定されれば、標準的なマウスの脳アトラスが、それぞれの海馬の小領域におけるROIを引き出すために用いられる。ROIは、辺縁から離れるという目的のためにそれぞれの小領域の重心(centroid)中で引き出される。ROIは、海馬の小領域の左及び右の両方から引き出される。以前の研究では、ROI横断グループが、略同じサイズであることが発見されている。しかしながら、ROIサイズは、全身的な相違が観察された場合にモニターされ補正される。
【0115】
各海馬のROIからの平均CBVが測定される。最後に、「CBV差異スコア」が、CBV測定値が、運動後スキャンのCBV測定値からの神経性の刺激前スキャンから減算することによって算出される。それらのCBV差異スコアは、下記の「データ分析」節に記載したように、相関分析のための主要な変数として用いられる。
【0116】
神経性の刺激への曝露のプロトコール
オスのF344ラット、6-8週齢(150-250グラム)を個々に飼育した。動物を、コントロールグループと試験グループに分けた。コントロールグループは、標準的なケージで飼育した。2年間にわたり、合計で3つの試験グループがあった。各グループあたり最小で12匹の動物がおり、グループサイズの目標は、一般にグループあたり14であった。全てのラットは、処置の第1日(1日目)から開始して連続7日間、100 m/kg BrdUのIP注射を一日一回受けた。全てのラットは、1日目及び28日目に、CBVの測定のためにMRIにより分析された。28日目のMRI画像化の完了後、4% パラホルムアルデヒドを用いた経噴門的パーフュージョンにより屠殺した。動物の脳を、「死後分析」に記載したような神経細胞の増殖、生存、及び分化の死後分析に写した。
【0117】
運動試験グループ(試験グループ1)
第1の試験グループは、ホイールの使用がコンピュータでモニタリングされる、活動性車輪が備えられた活動性ケージ中で飼育された。
【0118】
薬物処置試験グループ2及び3
第2及び第3試験グループは、コントロール動物と同様に飼育されたが、MRI分析の間の28日間、既知の神経性化合物を処置された。MRI研究の完了後、動物を、安楽死させ、パーフュージョン固定された脳を取り出し、「死後分析」で記載したように分析するためにBrainCells Incへ送った。二つの化合物が、この目的のために提案された:バルプロ酸及びフルオキセチン。
【0119】
バルプロ酸(VPA;2-プロピルペンタン酸)は、癲癇の長期間の治療において確立された薬物である。VPAは最近、インビボで、成体の海馬の神経細胞前駆体細胞を、少なくとも部分的には神経性の転写因子ニューロDによって媒介されて、主に神経細胞に分化するのを誘導することが示された(Hao、Creson et al. 2004; Hsieh、Nakashima et al. 2004)。
【0120】
フルオキセチンは、その作用のメカニズムが海馬の神経発生に依存することが示されている抗うつ薬である(Santarelli、Saxe et al. 2003)。
【0121】
VPA処置(試験グループ2):成体のオスのフィッシャー344ラットは、28日間、1日2回の300 mg/kg VPAのIP注射(実験)又は生理食塩水(コントロール)を受けた。VPAはまた、試験グループの飲水(12 g/liter)中にも与えられた。動物は、上記のようにMRIで画像化された。
【0122】
フルオキセチン処置(試験グループ3):成体のオスのフィッシャー344ラットは、28日間、10 mg/kg フルオキセチン(実験)又は生理食塩水(コントロール)の経口胃管栄養法注射を毎日受けた。動物は、上記のようにMRIで画像化された。
【0123】
死後分析
神経発生(神経細胞の増殖、分化、及び生存)を評価するため、試験グループ及びコントロールグループの動物の脳を、特異的マーカーのために蛍光標識された細胞の定量分析を用いて分析した(van Praag、Kempermann et al. 1999)。
【0124】
屠殺後、脳の半分を、良く確立されたプロトコールを用いた組織学及び免疫組織化学により、分化及び細胞生存を評価するために用いた。データ分析は、BrainCellsが精通した標準的プロトコールに従って、立体解析学に基づく計数を用いて行われた。
【0125】
脳の残り半分は、海馬を単離するためにさらに解剖された。該組織は、細胞ストレーナーを用いて崩壊され、冷却した4%パラホルムアルデヒド中で穏やかに洗浄された。次いで、フローサイトメーターが、Ki67又はリン酸H3 Ser10をマーカーとして用いて増殖を評価するために用いられた。
【0126】
脳の半分を、分化及び生存の評価に用い、他の半分を増殖の調査に用いることにより、研究に必要な動物の数を制限し、実質的にコストを減じることが可能である(動物コスト及び化合物コストの両方)。
【0127】
FACS分析プロトコール
海馬の組織を取り出し、50 ml ファルコンチューブ上の予め濡らした細胞ストレーナー上に置き、穏やかに細かく切った。3 ccのシリンジプランジャーを用いて、該細胞を分散させた;フィルターは、全ての細胞を取るためにすすいだ。細胞を遠心分離に供し、10 ml FACS 緩衝液に再懸濁し、計数し、一定分量を、5 ml FACSチューブ中に移した(1-2 x 107 細胞)。容量を、氷冷FACS緩衝液で5mlにした。遠心分離し、上清を捨て、5 mlの氷冷FACS緩衝液に再懸濁し、遠心分離を繰り返し、最後に、細胞濃度が100μIあたり1-2 X 106 になるように、総容量が1 mlのFACS緩衝液に再懸濁した。各反応に、抗体又はプロピジウムヨウ化物(PI)を、総容量30μIで加えた(通常、1μg Ab/million 細胞)。非標識細胞を含む一つのチューブを含む、唯一のフルオロフォアを含むチューブを、FACSマシーンのセットアップに用いた。氷上で30分間静置した。2 mlの氷冷FACS緩衝液を加えた。遠心分離し、上清を注意深く捨て、次いで、400μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。直ちに分析に用いた。増殖アッセイのために、PIの存在下又は非存在下で、リン酸H3 Ser10又はKi67に対する何れかの抗体を用いた。
【0128】
組織学アッセイプロトコール
脳は一晩ポストフィックス(postfixed)され、次いで、リン酸で緩衝された30%スクロース中で平衡化された。自由に浮遊する40 nmのセクションを、凍結ミクロトームで集め、凍結保護物質中に貯蔵した。免疫組織化学を、後の項に記載されているように行った。
【0129】
免疫組織化学プロトコール
凍結保護された、冷凍脳の半分を、冠状に薄片に切り分けた。BrdU及びNeuN、神経細胞及びGFAPのような関心のあるタンパク質に対する抗体、星状細胞マーカーもまた、細胞分化の検出のために用いた。手短には、組織を洗浄し(0.01 M PBS)、内在性のペルオキシダーゼを1% H2O2でブロックし、PBS(0.01 M、pH 7.4、10% 通常ヤギ血清、0.5%トリton X-100)中、室温で2時間インキュベートした。次いで組織を一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。次いで組織をPBSですすぎ、続いて、ビオチン化した二次抗体と共にインキュベートした(1時間、室温)。さらに組織をPBSで洗浄し、アビジン-ビオチン複合キット溶液中、室温で1時間、インキュベートした。ストレプトアビジンに結合した種々のフルオロフォアを、可視化のために用いた。組織をPBSで洗浄し、dH2O中で簡単にすすぎ、連続的に脱水してカバーガラスをかぶせた。
【0130】
細胞計数及び不偏性の立体解析学プロトコール
これは、海馬の顆粒細胞層特有で、神経性のやや顆粒状領域を含む肺門縁(hilar margin)に沿った50 μmの辺縁に限定される。系統特異的表現型を表すBrdU細胞の割合は、共焦点顕微鏡を用いた、BrdUによる細胞表現型マーカーの共局在化をスコアすることによって測定された。分割パネル及びz軸分析を全ての計数のために用いた。全ての計数は、40x対物レンズ及び2の電気的ズームによる、マルチチャンネル立体配置を用いて行った。可能な場合、100以上のBrdU-陽性細胞が、動物当たり各マーカーについてスコアされた。各細胞は、その完全な「Z」次元において手動で調べられ、その核が系統特異的マーカーと明白に結合した細胞のみが陽性としてスコアされた。海馬の顆粒細胞層及びやや顆粒状の領域あたり、各特異的系統(乏突起膠細胞、星状細胞、神経細胞、その他)のBrdU標識細胞の合計数は、染色された組織を用いて測定された。過剰評価は、経験的に決定された、40 μm セクション以内の平均直径13 μmにより、核についてのアバクロンビエ(Abercrombie)方法 を用いて補正された。
【0131】
データ分析
CBVについて「MRIによるCBV誘導」と表題された項、及び組織学及びFACSについて「死後分析」と表題された項に記載したように、一旦データが取得されれば、そのデータは、グループ内分析及びグループ間分析を用いて、神経発生とCBVの間に統計学的に有意な相関があるかどうかを決定するために分析された。特に、該細胞の計数は、不偏性の立体解析学を用いて作成され、FACSは、MRIを用いて得られた信号変化スコアとクロス相関した。分析は、CBV変化間の関係(共変異としての信号変化スコア)、増殖、及び、グループ間のクロス相関におけるBrdU標識化細胞の系統特異的分化(例えば、増殖性細胞の合計数、BrdU標識細胞の合計数、二重標識神経細胞の合計数(神経発生)、二重標識乏突起膠細胞の合計数、二重標識星状細胞の合計数)を含む。予備的な結果に基づいて、海馬の他の領域の評価が、非神経性の原因対神経性の原因によるCBVにおける変化を説明するために拡大された。CA1が、CBVにおける神経発生誘導変化について特異的な情報を抽出するために用いられることができることを示すにもかかわらず、この領域が、神経発生の結果としてCBVにおける薬物誘導性増殖に適していることは確信されない。データ分析は、CBVにおける神経発生誘導変化と比較した、非神経発生の分析について、最適な海馬の領域を同定するために行われた。
【0132】
脊椎動物
説明
約100の成体のオスのフィッシャー・ラットを、これらの研究に用いた。動物は、研究の設計及び方法の項に概要したように、異なる処置プロトコールに供された(コントロール、自由に運動、バルプロ酸による処置、又はフルオキセチンによる処置)。開始時点及び処置の終了時点で、動物は、MRIによって分析された;MRI分析の完了時に、それらは屠殺された。動物の脳における神経形成は、フローサイトメーター、組織学的及び組織化学的方法によって評価された。
【0133】
理由
ラットは、それがCNS作用性(acting)薬物のスクリーニングに好ましい種であるために用いた。この提案に記載された遺伝的及び神経科学的な挙動に基づく評価を行うために入手可能な他の哺乳類の種が存在しないことを確証するために、Medlineをサーチした。加えて、ラットは、中枢神経系異常によるヒト疾病を含む、ヒト疾病を研究するための良好なモデルとして、多数の研究において示されている。動物の数は、CBVを神経発生と結びつける一連の複雑な関係を理解するために十分な分散を作成するために選択された。
【0134】
獣医学のケア
全ての動物作業は、動物ケア施設を指揮するDr. Dennis Kohn、D.V.M.、Ph.D.の監督の下に、コロンビア大学で行われた。動物は、NIH承認ガイドラインの下、12/12時間の光/闇周期で温度と光がコントロールされた環境中、水を与えられ、食餌され、及びカゴにいれられ、食物及び水を自由に提供された。動物は、何らかの徴候又は症状又は不快感について動物施設職員により毎日モニターされた。動物が体重の減少又は不安定の徴候を示し始めた場合、それらは研究室動物クリニック獣医師によって試験された。施設は、NIHガイドラインに従って定期的に視察された。
【0135】
手順
ラットは画像化される間、動きと心理学的な不安を減少させるために、イソフルランを受けた。ラットが画像化される間、それらの健康及び快適を維持するために、多大なケアが行われた。これは、人道主義的並びに科学的な目標の両方を満たす。多くの生理学的プロセスが、特に静止期の信号を測定する場合、脳のMRI信号に影響することができる。この理由のために、一連の生理学的なモニターデバイスが、マウスが画像化される間、最も生理学的な測定の密接したモニタリングを可能にするために購入された。02及びC02 は、マイクロカプノメーター(Columbus Instruments)で連続的にモニターされた;心拍数及び脈拍数は、脈拍酸素計測法(Model V33304、SergiVet)を用いて連続的にモニターされた。温度は、サーミスタ(YSI Precision Thermometer 4000A)を用いて連続的にモニターされた。必要な場合、EKG及び呼吸数は、磁気により構築されたデバイスに記録された。
【0136】
安楽死
ラットは、フェノバルビタールの過剰投与により安楽死させた。この方法は、米国獣医学医科協会の麻酔パネルの推奨と一致している。
【0137】
発明の背景及び実験の詳細I-IIIの参考文献
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【0138】
実験の詳細IV
海馬体は、別々のしかし結合した海馬の小領域(1)からなる回路である。海馬体を構成する複数の小領域の間で、歯状回(DG)は成体脳における神経発生を補助する唯一のものである(2-5)。肉体的な運動がげっ歯類の海馬における神経発生を刺激し(6、7)及び海馬に依存する認知を増強する(8、9)ことは、研究の範囲で確立されている。さらに、運動は、歯状回機能障害に関連するプロセス(13、14)である、加齢性記憶減退を寛解させる(7、10-12)ことが示されている。それにもかかわらず、運動がヒトにおける神経発生を刺激するかどうかは、未だに不明のままである。
【0139】
この問題を念頭において、神経発生のインビボ相関を提供し得る異なる画像化アプローチが探索された。新しく分割している細胞に結合するよう設計された放射性リガンドを画像化することは魅力的なアプローチであるとはいえ、PET(ポジトロン放出断層撮影)画像法は、本質的に分解能が低く、歯状回を可視化できない。さらに、放射性標識新生細胞は、潜在的に安全性の問題を導入する。これらの理由のために、MRI(磁気共鳴画像法)技術の使用が好ましい。これに関して、神経発生と血管形成の間の密接な連関(15,16)、及び、血管形成が新しい血管を徐々に生じるという事実(17,18)、最終的に領域性の大脳血液量(CBV)を増大させること(19-21)が印象的である。CBVがMRIにより測定できるために、海馬のCBVにおける領域的選択性の増加は、神経発生の相関の画像化を与え得ることが仮定された。
【0140】
この仮定は、運動するマウスにおいてまず試験され、平行するインビボ及びインビトロでの研究が行われることができる。CBVにおける長期的な変化の追跡の重要性のために、海馬のCBVマップが、ある期間にわたって、繰り返し、及び、安全に、作成できるように、新たに開発されたMRIアプローチ(22)が最適化された。一旦、マウスにおいて確認されれば、神経発生のインビボ相関が、運動しているヒトにおいて観察できるかどうかを決定するために試験が行われ、非ヒト霊長類(13)における海馬のCBVマップの作成の能力が以前に示されている、MRIアプローチ(23、24)が最適化された。
【0141】
方法
運動
マウス:46 C57BL/6マウス、7週齢、を用いた:23匹が運動、23匹が非運動動物。この実験マウスは、ランニングホイール(Lafayette Instrument Company)を備えたケージに置かれた。動物は、2週間随意的に走った。MRI画像は、次の時点で取得された:0週目(ベースライン)、2週目(運動が停止したとき)、4週目及び6週目。チミジン類似体ブロモデオキシウリジン(BrdU)マーカーを、実験の第2週の間の連続7日間(60 mg/kg/day)、腹腔内注入した。6週目に、施設のガイドラインに従って動物を麻酔し屠殺した。
【0142】
ヒト:被検者は、平均以下の有酸素のフィットネスのための基準AHA(American Heart Association)(男性VO2max<43、女性<37)を満たす人(39)が募集された。11人の登録した被検者は、コロンビア大学フィットネスセンターにて、12週間の運動トレーニングプロトコールに、週4回の頻度で従事した。各運動期間は、約1時間にわたった:5分のトレッドミル又は定置自転車での低強度ウォームアップ;5分のストレッチング;40分の有酸素トレーニング;10分のクールダウン及びストレッチング。40分の有酸素活動の間、被検者は、定常のエルゴメータ上でのサイクリング、トレッドミル上でのランニング、ステアマスター(Stairmaster)上での登上又は楕円の楕円トレーナー(elliptical trainer)の使用から選択することを許された。
【0143】
VO2max(酸素消費の最大容量)は、Ergoline 800S電気的制動サイクルエルゴメータ(SensorMedics Corp.、Anaheim、CA)上での段階的な運動試験によって測定した。各被検者は、30ワット(W)で2分間運動を開始し、及びその仕事率はVO2max基準(RQ 1.1又は>、VO2における同時上昇なしの通気における上昇、最大年齢予測心拍数が達成される、及び又は意志による疲労)が達成されるまで2分毎に30 Wずつ連続的に上昇した。分間の通気は、FLO-1容量トランスデューサーモジュール(PHYSIO-DYNE Instrument Corp.、Quogue、NY)に接続された呼吸流量メーターによって測定された。呼気酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)の割合は、コンピューターシステムに連結された常磁性のO2及び赤外CO2アナライザー(MAX-1、PHYSIO-DYNE Instrument Corp.、Quogue、NY)を用いて測定した。それらのアナライザーは、既知の医用等級のガスに対して較正した。最も高いVO2 値は、段階的な運動試験がVO2maxとみなされる間に達成された。
【0144】
インビボ画像化
マウス:マウスは、9.4 tesla Brukerスキャナー (AVANCBV 400WB スペクトロメータ、Bruker NMR、Inc., Billerica、MA)により、以前に記載したプロトコール(22)に従って画像化した。手短には、軸方向のT2-重み付け画像は、第1の配列により至適に取得された(TR/TEeff= 2000ms/70ms; 30mm-i.d. バードケージRFプローブ;遮蔽勾配系= 100G/cm; 弛緩増強を伴う迅速取得(RARE)要因=16; FOV=19.6mm; 取得マトリックス=256 x 256; 8切片;切片厚さ=0.6mm、切片ギャップ=0.1mm;NEX=28)。画像の5セットを連続的に取得し、それぞれ16分を必要とした。最初の2セットは、造影剤前であった。次いで、ガドジアミドを、画像化の前に、腹腔内においたカテーテルを通してI.P.注入した(13 mmol/kg)。残りの3セットは、造影剤後の画像に対応する。頭部の動きを防ぎ、不安を減少させるため、動物は鼻コーン経由でイソフルランガス(維持のため1.5 vol %、1L/min エアーフロー)で麻酔した。イソフルランは、それが大脳の血行力学的な変化を最小限に誘導するために選択された(40)。心拍数、呼吸数及びSaO2 のモニタリングは、全ての手順の間行われた。相対的CBVは、造影剤によって誘導された横行性弛緩率(transverse relaxation rate)(ΔR2) の変化としてマップされた。造影剤が均一な分散を達成したとき、CBVマップは、CBV ∞ ΔR2 = ln (Spre/Spost) / TEとして、定常状態T2-重み付け画像から測定できる:ここで、TE=有効エコー時間;Spre =造影剤投与前の信号;Spost = 造影剤が定常状態に達した後の信号である。造影剤の投与、心拍出量、及び全体的な血流のレベルにおける相違をコントロールするために、派生(derived)マップが、後側の大脳の静脈の最大4ピクセルの信号値に基準化された。4つの海馬の小領域:歯状回、CA3亜領域、CA1亜領域及び嗅内皮質の所在を同定するために、可視化された解剖学的目印が標準アトラスと共に用いられた(41)。基準化された各小領域からのCBV測定値は、グループデータ分析のために用
いられた。
【0145】
ヒト:被検者は、1.5 tesla scanner Philips Intera スキャナーにより画像化された。上述したように(13)、冠状のT1-重み付け画像(反復時間、20ms; エコー時間、6ms; フリップ角、25度; 面内分解能、0.86 mm x 86 mm; 切片厚さ、4mm)は、造影剤ガドリニウム(0.1mmol/kg)のi.v.投与の前及び4分後に、海馬の長軸に垂直に配向して取得された。造影剤前の画像と造影剤後の画像の間の相違は、領域性CBVマップにアクセスするために用いられた。造影剤投与、心拍出量、及び全体的な血流のレベルにおける相違をコントロールするために、信号強度における派生した相違が、矢状洞(sagittal sinus)の最大4ピクセルの信号値に基準化された(24)。各被験者について、造影剤前のスキャンは、海馬体の外側の形態学及び内部の構築物の最善の可視化を伴う切片を同定するために用いられた。可視化された解剖学的目印は、4つの小領域:歯状回、CA1亜領域、鉤状回及び嗅内皮質の一般的な場所を同定するために、標準的なアトラスと共に用いられた(13)。規準化された各小領域からのCBV測定値は、グループデータ分析のために用いられた。
【0146】
顕微鏡法
免疫組織化学:自由に浮遊する40-μmの冠状切片(coronal sections)を、BrdU標識の測定において用いた。DNA変性を、1時間、2N HCl、37℃でインキュベートすることによって行い、続いて、ホウ酸緩衝液(pH 8.5)中で洗浄した。洗浄後、切片を、内在性のペルオキシダーゼを除去するために、10% H202中で30分インキュベートした。0.2%トリトンX-100中の3% 正常ロバ血清によりブロッキングした後、切片を、モノクローナル抗BrdU (1:600; Roche)と共に4℃で一晩インキュベートした。次いで切片を室温(RT)で1時間、二次抗体(ビオチン化ロバ抗-マウス;Jackson Immuno Research Lab)と共にインキュベートし、続いて、アビジン-ビオチン複合体(Vector Laboratories)と共に増幅し、及びDAB (Sigma)により可視化した。二重免疫標識のために、自由に浮遊する切片を、異なる種において産生された、一次抗体、抗-BrdU(1:600;Roche)及び抗-NeuN(1:500;Chemicon)の混合物中で一晩インキュベートした。可視化のために、ヤギ中で産生された適切な二次抗体(1:300;分子プローブ)に接合したアレキサ蛍光(Alexa Fluor)を、室温で1時間用いた。ブロッキング血清及び一次及び二次抗体を、PBS中の0.2%トリトンX-100中に適用した。蛍光顕微鏡のための切片を、ベクタシェイルド(Vectashield)(Vector Lab)のスライド上に固定した。免疫標識の特異性の制御のために、一次抗体を取り除き、適切な正常血清で置換した。スライドを共焦点顕微鏡(Nikon E800, bioRad 2000)を用いて検視した。提示された画像は、チャンネル間のクロストークに対して用心して個々に(緑及び赤チャンネル)又は同時に収集された、6〜16の光学的セクション(工程 1mm)のスタックである。それらは、スプリット画像においてコントラスト及び輝度の変化なしで、Adobe Photoshop 7.0により処理された。
【0147】
BrdU標識の定量化:海馬の全域にわたって第6セクションの全てが、BrdU免疫組織化学のために処理された。10セクションが、各動物について用いられた。歯状回(顆粒細胞層及びそれから60 μm未満の距離で)における全てのBrdU標識細胞が、研究コードを知らない実験者によって光学顕微鏡の下で計数された。セクション当たりのBrdU標識細胞の合計数が測定され、歯状回当たりの細胞の合計数にするために、各動物から得られたセクションの数が掛けられた。
【0148】
認知試験
宣言的記憶を、健康な若い成体の間の記憶性能における可変性を上昇するために改善されたRey Auditory Verbal Learning Test(29)のバージョンを用いて測定した。20の無意味的又は音素的な関連単語を、3つの学習治験にわたって提示し、該試験管理者が単語リストを読み、被検者ができるだけ多くの単語を自由想起した。3つの学習治験の管理者は、直ちに、続いて、ディストラクターリスト(distracter list)の一つの学習治験を行い、次いで、初期リストの短時間遅延自由想起(short delayed free recall)を行った。90分の遅延期間の後、被検者は、初期一覧から自由に単語を想起するよう要求され、次いで、ディストラクターリストからの項目を自由に想起するよう要求された。24時間の遅延期間後、被検者は、電話で連絡され、初期リストから項目を自由に想起するよう要求され、次いで、ディストラクターリストから項目を自由に想起するよう要求された。彼らは次いで、強制選択(forced-choice)認識治験を行われ、彼らは、意味的(semantically)及び音素的な関連単語並びにディストラクター治験の単語のなかから、初期学習治験の20単語を同定するよう要求された。最後に、ソースメモリー(source memory)治験が行われ、被検者は、初期学習リスト及びディストラクターリストの単語のみを含むリストを読み、そして、各単語が何れのリストのものであるかを同定することを要求された。言語の学習試験の二つの形態が創作され、管理指令が均衡された。以前の研究におけるように(42)、単語は、初期学習治験の最初の治験において正しく想起され、3つの学習治験にわたって想起された単語の平均数、短時間の遅延(<5分)の後に正しく想起された、初期学習治験の単語の数、90分の遅延の後に正しく想起された、初期学習治験の単語の数、認知治験において正しく同定されたアイテムの数、及び、ソースメモリー治験において同定されたアイテムの正しい数、が測定された。
【0149】
結果
歯状回CBVにおける選択的な増加は運動誘導神経発生のインビボ相関を与える
実験プロトコールの設計(図12a)を、新しい血管の血管形成誘導出芽が異なる時期を通して進行し、期間にわたって徐々に形成することを観察することによってガイドした(18)。従って、マウスは、神経発生が最大増加に達する間の期間の2週間運動を許され、新生細胞のマーカーであるBrdU (ブロモ-デオキシウリジン)が、第2週の間に注入された。CBVにおける予想された遅延効果を補足するため、マウスをさらに4週間生かしておき、次いで屠殺しBrdU標識化処理した。海馬のCBVマップを、6週の実験の間、4回作成した:運動前ベースライン及び2週目、4週目、及び6週目。コントロールグループを並行して画像化し、続いて、運動なしの同一プロトコールを画像化した。海馬体は、嗅内皮質、歯状回、CA1及びCA3亜領域を含む複数の内部接続した小領域、及び鉤状回から構成される。CBV測定は、鉤状回を除く全ての海馬の小領域から確実に抽出された(図12c)。
【0150】
繰り返し測定ANOVAは、画像化データセットの分析に用いられた。グループX時間相互作用は、歯状回についてのみ見出され、運動が歯状回CBVにおける選択性増加と関連することを示した(F=5.0、p=0.034)。単純なコントラストによって示されるように、該効果は、2週目から4週目の、運動の休止の後、2週間で出現した最大増加によって引き出される(F=5.9、p=0.021)(図12b)。嗅内皮質は、統計学的有意は達成されなかったとはいえそのCBVが期間中にかなり上昇した唯一の他の海馬小領域であった。(図12b)。運動が潜在的に、代謝及び大脳の血流を上昇することによってCBVに影響するにもかかわらず、従来の研究(25、26)は、代謝における運動誘導性変化が、運動措置の後ではなくその最中に著しいと示している。従って、CBVの出現を伴う観察された空間時間的なプロフィールは、歯状回における運動誘導性血管形成(18)のモデルによりよく一致する(図12a)。
【0151】
以前の研究(6)と一致して、運動グループは、非-運動グループと比較して、より多くのBrdU標識化を有することが発見された(F=9.8; p=0.004)(図13a)。90%を超えるBrdU陽性細胞が、NeuN、神経細胞特異的マーカーについて共標識された(図13a)。神経発生とCBVとの関係を試験するために、BrdUを共変動として含む繰り返し測定モデルが再び用いられた。有意時間X BrdU相互作用が歯状回CBVについてのみ観察され(F=3.3、p=0.039)、主に2〜4週間の変化によって引き出された(F=8.8、p=0.006)。直接分析によって示されたように、この効果は、BrdUと2週目から4週目のCBVの変化の正の相関を反映する(ベータ=0.58、p=0.001)(図13b)。BrdUがANOVAにおいて共変動として含まれる場合、歯状回において観察される該グループX時間効果はもはや著しくなく、神経発生がCBVにおける運動効果を説明することが確認されている。歯状回CBVにおける変化とBrdUの間の関係の視覚的な検査(図13b)は、二次モデル対直線モデルがその関係をより特徴付けていることを示唆しており、これは、曲線推定分析によって確認された(直線モデル、R-二乗=0.34、p=0.001; 二次モデル、R-二乗=0.59、p<0.0001)。従って、歯状回CBVにおける変化とBrdUの間の関係は、CBVが運動によって上昇する場合に主に存在する(図13b)。
【0152】
運動しているヒトにおいて観察された歯状回CBVにおける選択的上昇
歯状回CBVが運動誘導性神経発生の相関を与えることが一旦確立されれば、この効果が運動しているヒトにおいて観察されるかどうかを試験することが興味をもたれる。ヒトの海馬体のCBVマップが、主要な海馬体を画像化するために特に仕立てられた、以前に報告されたMRIアプローチを用いて作成された(13)。研究に関与した11の被検者(平均年齢=33)が、3ヶ月の有酸素運動措置を完了し、海馬のCBVマップが運動前後で作成された。CBV値が、CA3小領域を除いた全ての海馬の小領域について確実に測定された(図14b)。実験動物と比較してヒトでは、日常生活の間に行われる肉体的な活動における個人差のコントロールは不可能である。それ故、運動前後で、運動の程度における個人の相違を定量化するために、運動関連有酸素フィットネスのゴールド標準基準(gold standard measure)であるVO2max(酸素消費の最大容量)を測定した(27、28)。認知性能は、改変されたレイ聴覚性言語(Rey Auditory Verbal)学習試験(RAVLT)(29)を用いて評価し、その設計は、異なる学習治験にわたって、また、遅延想起、認識、及びソースメモリーの間で、認識が試験されることを可能にするように設計された。10人の被検者が、運動後に認識評価され、そのうちの8人が運動前のベースラインで評価された。
【0153】
画像化データの分析に用いられる反復測定ANOVAは、歯状回が、期間中そのCBVが著しく増大した唯一の海馬の小領域であることを示した(F=12、p=0.006)(図14a)。マウスにおけるように、嗅内皮質は、期間中そのCBVがかなり増大した唯一の他の海馬の小領域であるが、統計学的有意は達成していない(F=4.3、p=0.064)(図14a)。グループとしては、VO2max値は期間中に著しく増大し(F=11.6; p=0.007)(図15a)、画像の変化が運動に直接関係し、単に再試験の効果によって起こったものではないことが確認され、歯状回CBVにおける個々の相違が、VO2maxにおける個々の変化に相関することが見出された(ベータ=0.662、p=0.027)(図15b)。重要なことに、CBVとVO2maxとの間の関係は、嗅内皮質を含む他の任意の海馬の小領域については観察されず (図15b)、運動が歯状回CBVに選択的な影響を有することが確認された。
【0154】
経験的に、個人は、運動後の治験学習が有意に良く行われ(F=7.0、p=0.027)、全ての治験学習(F=5.0、p=0.053)及び遅延想起(F=5.0、p=0.057)で改善する傾向を有した。遅延認識(F=0.19、p=0.67)又はソースメモリー(F=0.15、p=0.25)には影響がなかった(図15a)。認知改善が運動自体に関連することを試験するために、治験1学習における個々の変化が、VO2maxにおける個々の変化と相関することが見出された(ベータ=0.660、p=0.037)。しかしながら、10人の被検者のうち8人のみが、運動後の認知試験を完了したために、その分析は、運動後認知性能スコアを用いて繰り返された。再度、VO2maxにおける変化が、運動後治験1学習と排他的に関連することが見出された(ベータ=0.70、p=0.026)(図15b)。さらなる分析は、VO2maxにおける変化と認知との間の相関が、治験1学習に選択的であることを示し(図15b)、それによって、他の認知課題における上昇が明らかであるにも関わらず、この特別な能力は運動によって選択的に影響されることが確認された。
【0155】
最後に、認知とCBVの間の関係が検討された。全ての海馬の小領域の中で、治験1性能における改善と歯状回CBVにおける上昇との間の関係は、有意である傾向をとるということのみであった(ベータ=0.62、p=0.052)。運動前データがないために、CBVにおける変化と運動後認知を比較する全ての分析が繰り返され、運動後治験1学習と歯状回CBVの間の排他的な関係が見出された(ベータ=0.63、p=0.026)(図15b)。
【0156】
考察
それらの研究の結果は、歯状回CBVが運動誘導性神経発生の関連の画像化であり、この相関が運動しているヒトで表されることを示す。任意の画像化生物マーカーにより、神経発生のインビトロ測定がヒトにおいて現在不可能であることに抗して試験される。それにもかかわらず、運動が、ヒト及びマウスの両方の海馬のCBVにおいて著しく類似の効果を有することは、類似のメカニズムが根底にあることを示唆する。さらにその上、げっ歯類の研究は、個体が、神経発生のレベルと相関する運動の程度において相違し(30)、
並行するヒトの所見、個体がCBVのレベルと相関する運動の程度において相違することをもたらした。合わせると該発見は、マウスにおいてと同様に、運動がヒトにおける神経発生を刺激するという仮定のサポートを提供する。
【0157】
運動が、脳における多面的な効果を有し(31、32)、加齢認知減退を寛解し(7、10-12)、うつ病を改善する(33、34)ことが示されている。ヒト(14、35)、非-ヒト霊長類(13、36)、及びげっ歯類(13)における研究は、歯状回が海馬の小領域であり、特に再プロセスに対して脆弱であり、歯状回機能障害が認知老化に関連していることを示唆している(13、14)。ヒトが神経発生の運動誘導性相関を表すことを発見し、及び、確立された交雑種生物マーカーであるツールを最適化することによって、将来の研究は、正常及び老化した脳の両方における神経発生の機能的重要性により深い洞察を得ることができる。さらに、ここで提示された画像化ツールは、神経発生の潜在的な薬理学的モジュレーターを研究するために独自に適しており、うつ病の治療(37)又は加齢により我々の全てで起こり得る認知減退(7、38)の逆転におけるそれらの役割を試験する。
【0158】
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【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】ヒトにおける運動とCBV。画像化:トップの画像は、解剖学的目印が4海馬小領域内のROIを同定するために用いられた、造影剤前MRIである。中央の画像は、4海馬の小領域のROIを示す。何れのROIも、小領域間の境界領域を含まず、MRIによって確実に可視化することができなかった。グラフ:左上のグラフに示されるように、自己申告による運動の程度は歯状回のCBVにのみ相関した。
【図2】運動後の時間経過による大脳血液量(CBV)における変化をプロットしたチャート。
【図3】神経発生が、MRIにより非観血的に画像化できることを示す実験の設計。
【図4】化合物が運動と組み合わせたとき最もよく神経発生を誘導することを測定するための、一連の化合物の実験試験の設計。
【図5】神経発生と血管形成の関係。神経前駆細胞は、神経細胞への成熟をサポートするために必要な血管新生を刺激する、脳由来神経栄養性因子(BDNF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び線維芽細胞成長因子(FGF)のような種々の成長因子を放出する(Newton及びDuman 2004に概説)。
【図6】神経幹細胞分化の種々の段階及び成体神経幹細胞の結末の決定に関与するシグナリング分子。
【図7】運動及びヒトのCBV。画像:トップ画像は、解剖学的目印が4海馬小領域内の興味のある領域(ROI)を同定するために用いられた、造影剤前MRIである。中央の画像は、4海馬の小領域のROIを示す。何れのROIも、小領域間の境界領域を含まず、MRIによって確実に可視化することができなかった。底面の画像は、前述の方法によって得られたCBVマップである(Small、Chawla et al. 2004)。グラフ:左上のグラフに示されるように、自己申告による運動の程度は歯状回のCBVにのみ相関し、他の海馬の小領域のCBVには相関しなかった。
【図8】神経発生に特異的な歯状回CBVにおける変化を同定するための実験設計の原理。
【図9】CBVの非観血的な高分解能MRI分析は、マウスの海馬の小領域の同定のための解剖学的基準に厳密に拠っている。トップ:(左)海馬の領域の組織化学的同定:(右)左に同じ。調査された特定領域を表示するオーバーレイを有する。底:(左)トップ左で示された同じ領域の高分解能MRI;(右)底左の画像に同じ。CBVが測定された特定領域を示すオーバーレイを有する。
【図10】マウスのコントロールと運動グループの間の、海馬の小領域におけるCBV差異スコアの比較。
【図11】CBVにおける非-神経性効果についての補正なしの、歯状回のCBVにおいて測定された差異(CBV 差)と新生神経細胞(BrdU)の数の間の相関(左、相関係数=0.34;p=0.49)及びCBVにおける非神経性効果の補正後の相関(右、相関係数=0.81、p=0.012)。各ポイントは、最後のスキャンが行われた後に測定された単一の動物のCBV差異スコア及び歯状回におけるBrDU陽性細胞の合計数を表す。
【図12】運動しているマウスにおいて観察された歯状回CBVにおける選択的上昇。(a) 実験プロトコールは、神経発生(青い線)と新血管(赤い線)の遅延形成の間の連関に従って設計された。マウスは、2週間の運動を許され、BrdUが第2週の間毎日注射された(垂直方向の矢印)。マウスは4週間生かされ、次いで、死後分析のために処理された。ベースライン(0週)及びその後の2週間毎で、MRIが海馬の大脳血液量(CBV)マップを作成するために用いられた。(b) 運動は歯状回CBVにおいて選択性効果を有した。棒グラフは、6週間にわたる研究の、各海馬の小領域についての平均相対大脳血液量(rCBV)値を示す。運動グループ(黒い棒)及び非運動グループ(白い棒)。歯状回は、有意な運動効果を示す唯一の海馬の小領域であり、4週でCBVがピークである(左上のグラフ)、一方、嗅内皮質はCBVにおける有意でない上昇を示した。(c) 個体実験、左のパネルは、海馬体の外部形態及び内部構造を可視化する高分解能MRI切片を示す。中央のパネルは、海馬の小領域の区分け(parcellation)を示す(緑=嗅内皮質、赤=歯状回、CA3亜領域 暗青色、薄青=CA1亜領域)、及び右のパネルは、海馬のCBVマップを示す(暖色はより大きいCBVを示す)。
【図13】歯状回CBVにおける運動誘導性増加は神経発生と相関する。(a) 運動マウスは、非運動グループと比較してより多いBrdU標識を有することが発見された(左の棒グラフ)。共焦点顕微鏡観察によって示されるように、新生細胞の大多数はNeuN-陽性である(BrdU標識=赤、NeuN=緑、BrdU/NeuN二重標識=黄色)。(b) 有意に直鎖状の関係が、歯状回CBVにおける変化とBrdU標識の間に見出された(左のプロット)。二次関係はよりよくデータに一致する(右のプロット)。各プロットの垂直方向の点画された線は、減少(線の左)対運動による増加(線の右)に、x軸をCBV変化に分割する。
【図14】運動しているヒトにおいて観察された歯状回CBVにおける選択的上昇。 (a) 運動は、歯状回CBVにおいて選択性効果を有した。棒グラフは、各海馬の小領域についての平均相対大脳血液量(rCBV)値を示す。運動前(白い棒)及び運動後(黒い棒)。マウスにおいて、該歯状回は、有意な運動効果を示す唯一の海馬の小領域であり、一方、嗅内皮質はCBVにおける有意でない上昇を示した。 (b) 個体の実験において、左パネルは、海馬の体の外部形態及び内部構造を可視化する高分解能MRI切片を示し、中央パネルは、海馬の小領域(緑=嗅内皮質、赤=歯状回、青=CA1亜領域、黄色=鉤状回)の区分けを示し、右のパネルは海馬のCBVマップ(暖色はより大きいCBVを示す)。
【図15】歯状回CBVにおける運動誘導性上昇は、有酸素フィットネス及び認知と相関する。(a) VO2max、運動誘導性有酸素フィットネスの金標準測定は、運動後に増加した(左の棒グラフ)。経験に基づいて、運動は、新しい宣言的記憶の第1の治験学習において最も信頼できる効果を有する(右の棒グラフ)。 (b) VO2maxにおける運動誘導性変化は、歯状回(DG)CBVにおける変化と相関したが、嗅内皮質(EC)(左の散乱プロット)を含む他の海馬の小領域とは相関せず、運動誘導性効果の選択性を確証した。VO2maxにおける運動誘導性変化は、運動後治験1学習と相関したが、遅延認知を含む他の認知課題とは相関しながった(右の散乱プロット)。運動後治験1学習は、歯状回CBVにおける運動誘導性変化(DG CBV)と相関したが、嗅内皮質(EC CBV)を含む他の海馬の小領域における他の変化とは相関しなかった(右の散乱プロット)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法。
【請求項2】
前記被検者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が、アルツハイマー病、外傷後ストレス症候群、加齢記憶喪失及びうつ病からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患がアルツハイマー病である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患が外傷後ストレス症候群である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が加齢記憶喪失であり、前記被検者が65歳を超えている、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患がうつ病である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物がセロトニン選択性取込み阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を増大させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を増大させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法。
【請求項10】
前記被検者がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患が、アルツハイマー病、外傷後ストレス症候群、加齢記憶喪失及びうつ病からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患がアルツハイマー病である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が外傷後ストレス症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が加齢記憶喪失であり、前記被検者が65歳を超えている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患がうつ病である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物がセロトニン選択性取込み阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患にかかっている哺乳類の被検者を治療する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少する化合物の治療的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記被検者を治療することを含む方法。
【請求項18】
前記被検者がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患が癲癇である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
被検者の海馬の歯状回における神経発生の増大と関連する疾患の、哺乳類の被検者における発症を抑制する方法であって、前記被検者の海馬の歯状回における大脳血液量を減少させる化合物の予防的有効量を、それが被検者の海馬のCA1領域における大脳血液量を減少させるよりも大きい割合で、前記被検者に投与し、それによって前記疾患の発症を抑制することを含む方法。
【請求項21】
前記被検者がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が癲癇である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を増大させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:
(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊(a volume of tissu)及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;
(b) 前記薬剤を前記被検者に、それが該被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な様式で投与すること;
(c) 増加を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の増加を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び
(d) 大脳血液量における神経発生特異的増加が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような増加は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を増加させることを示す。
【請求項24】
大脳血液量の測定が磁気共鳴画像法を用いて行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1 mm3以下の組織塊に関して前記大脳血液量が測定され、前記大脳血液量の測定が以下の工程を含む、請求項24に記載の方法:
(a) 前記組織塊の第1の画像をインビボで取得すること;
(b) 前記組織塊に造影剤を投与すること;
(c) 前記組織塊の第2の画像をインビボで取得すること、ここで、前記第2の画像は、前記造影剤の投与後少なくとも4分で取得される;及び、
(d) 前記第1及び第2の画像に基づいて前記組織塊の大脳血液量を決定すること。
【請求項26】
前記造影剤がガドリニウムを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
組織塊に関しての前記大脳血液量の測定が、以下の工程を含む方法によって行われる、請求項24に記載の方法:
(a) 前記組織塊の第1の磁気共鳴画像をインビボで取得すること;
(b) 前記被検者に、ガドリニウム含有造影剤を、体重1kgあたり約1 mgより多く、体重1kgあたり約20 mgより少ない量で腹腔内投与すること;
(c) 前記組織塊の第2の磁気共鳴画像をインビボで取得すること、該第2の画像は、前記造影剤の投与後、少なくとも約15分で、多くとも約2時間後に取得される;及び、
(d) 前記第1及び第2の画像に基づいて、大脳血液量の量を決定すること。
【請求項28】
前記造影剤がガドリニウムペンテートである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被検者がマウスである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤がセロトニン選択性取込み阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
薬剤が、哺乳類の被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させるか否かを決定するための方法であって、以下を含む方法:
(a) 前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の、大脳血液量を測定すること;
(b) 前記薬剤を、それが前記被検者の海馬の歯状回及び海馬のCA1領域に侵入可能な方法で、前記被検者に投与すること;
(c) 減少を引き起こすことが知られている薬剤による、前記被検者の海馬の歯状回における神経発生の減少を検出することを可能にするのに十分な期間の後に、前記被検者の海馬の歯状回における組織塊及び前記被検者の海馬のCA1領域における組織塊の大脳血液量を測定すること;及び
(d) 大脳血液量における神経発生特異的減少が、前記被検者の海馬の歯状回において発生したかどうかを決定するために、工程(a)及び(c)において測定された大脳血液量を比較すること、そのような減少は、前記薬剤が前記被検者の海馬の歯状回における神経発生を減少させることを示す。
【請求項32】
大脳血液量の測定が磁気共鳴画像法を用いて行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
1 mm3以下の組織塊に関して前記大脳血液量が測定され、前記大脳血液量の測定が以下の工程を含む、請求項32に記載の方法:
(a) 前記組織塊の第1の画像をインビボで取得すること;
(b) 前記組織塊に造影剤を投与すること;
(c) 前記組織塊の第2の画像をインビボで取得すること、ここにおいて、前記第2の画像は、前記造影剤の投与後少なくとも4分で取得される;及び、
(d) 前記第1及び第2の画像に基づいて前記組織塊の大脳血液量を決定すること。
【請求項34】
前記造影剤がガドリニウムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、組織塊に関しての前記大脳血液量の測定が、以下の工程を含む方法によって行われる方法:
(a) 前記組織塊の第1の磁気共鳴画像をインビボで取得すること;
(b) 前記被検者に、ガドリニウム含有造影剤を、体重1kgあたり約1 mgより多く、体重1kgあたり約20 mgより少ない量で腹腔内投与すること;
(c) 前記組織塊の第2の磁気共鳴画像をインビボで取得すること、該第2の画像は、前記造影剤の投与後、少なくとも約15分で、多くとも約2時間後に取得される;及び、
(d) 前記第1及び第2の画像に基づいて大脳血液量の量を決定すること。
【請求項36】
前記造影剤がガドリニウムペンテートである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記被検者がマウスである、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−521403(P2009−521403A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541320(P2008−541320)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/044392
【国際公開番号】WO2008/020864
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(592104782)ザ・トラスティーズ・オブ・コランビア・ユニバーシティー・イン・ザ・シティー・オブ・ニューヨーク (21)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】