説明

Mycoplasmafermentans遺伝子、遺伝子産物およびそれらの酵素反応を用いた糖含有グリセロリン脂質の製造法

【課題】
M.faermentansの膜成分である糖含有グリセロリン脂質(GGPL)を大腸菌で発現させた酵素によって反応させて、製造する。
【解決手段】
M.faermentansのゲノム情報から可能性のある遺伝子mf1とmf3を選択して、クローニングして、コドンの組み合わせを大腸菌型に変換した。これらの改変遺伝子ををE.coliで発現させ、さらに細胞破砕物を調製して、基質を加えて酵素反応を行い、糖含有グリセロリン脂質を得ることに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mycoplasma fermentansの機能未知遺伝子とそれから発現される酵素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リウマチ性疾患は炎症、間接症状など多彩な臨床症状に基づいて分類された疾患群の総称である。しかし、病因が明らかとなっていないため、根治的な治療にはつながっていない。一方、Mycoplasma fermentansのもつ糖含有グリセロリン脂質が関節リウマチ患者の約40%の滑膜細胞に存在することが見出された。Mfermentansの糖含有グリセロリン脂質は、(Glycoglycerophospolipid(GGPL))はM. fermentansがもつ主要抗原の一つである。
GGPL類を用いることにより、病因の特定および病因特異的な治療が可能になるのではないかと考えられた。すなわちGGPL類を用いたワクチンによる治療、あるいは、抗GGPLを用いた血清診断などが考えられる。
【0003】
GGPLを得るにはM.fermentansの培養菌体からの抽出、あるいは化学合成法が考えられる。菌体からの抽出法は、本菌の培養がきわめて困難で、生育度が低く、高密な培養液を得ることができず、菌体量の確保が困難である。大量培養するには、不向きな微生物であり工業化は困難である。
【0004】
GGPLsは異なる構造の6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)および6’-O-(3’’-phosphocholine-2’’-amino-1’’phospho-1’’,3’’-propanediol)-a-D-glucopyranosyl-(1’3)-1,2-diacyl-2n-glycerol(GGPL−III)が松田ら(特許文献1)により単離されている。
【0005】
GGPL類の生産法として、抽出法、化学合成法(特許文献1)、酵素法の3法があげられる。抽出法は培養したM. fermentans菌体からGGPL類を抽出する方法であるが、マイコプラズマは栄養要求性が複雑であり、多くの菌体を得られないことから商業的生産法として不適である。化学合成法では、合成が多段階であること、光学異性体であることなどで、収率が低いなどの問題がある。酵素法は穏やかな条件で生産可能であること、反応が特異的でより高い収率が期待されるが、GGPL類合成酵素は未だ報告されていない。
【0006】
既報の化学合成法は合成ステップが多段階であること、さらに光学異性体の選択が必要で、収率がきわめて悪いという不利な点を抱えている。すなわち治療や予防目的にGGPLを使うための十分な量を確保するには、多大なコストが必要だという欠点があった。
【0007】
この改善策として、M.fermentansのゲノム解析を行い、GGPL類の生合成酵素を探索し、その遺伝子を大腸菌など培養が容易な微生物に遺伝子操作で遺伝子導入を行い、大腸菌を用いて、大腸菌にはないM.fermentansのGGPL類を生産する手段が考えられた。
そこで、本発明では、ゲノム解析から得られた情報を元にGGPL類の合成に関わると予想した遺伝子mf1およびmf3をそれぞれクローニングし、大腸菌用ベクターに導入して、それらの遺伝子産物としての酵素を大腸菌に作らせ、酵素法にてGGPL類を生産することを目指した。
【特許文献1】特許公開平7−304789
【非特許文献1】Kawahito Y, Ichinose S, Sano H, et al. (2008) Mycoplasmafermentans glycolipid-antigen as a pathogen of rheumatoid arthritis. BiochemBiophys Res Commun. 369:561-566
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、M.fermentansのゲノムにおいてGGPL類を生合成する酵素が判っていないことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、M.fermentansのゲノム解析で得たDNA配列情報から、GGPL類の生合成に必要と考えられる遺伝子を候補として、そのDNA配列を大腸菌型のコドンの組み合わせに遺伝子工学的に置換して、大腸菌に形質転換し、大腸菌おいて酵素発現を行い、その酵素活性を得ることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
もともとの微生物であるM.fermentansの培養では、高価な組成物を用いた培養液を用いても生育量が低いのでGGPL類を得るには、高いコストを要する。また化学合成法では、光学異性体でありGGPLを得るには、高いコストを要する。しかし、M.fermentans遺伝子を大腸菌で発現させて、それらの酵素を用いた反応法によってGGPL類をより安価に生産することができる。生産されたGGPL類は、ワクチン原料や検査薬原料および医療用製品の原料とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
M.fermentansの糖含有グリセロリン脂質を得るという目的を、その生合成遺伝子をクローニングしコドン改変を行い、大腸菌に導入して発現させた酵素を用いることによって、低コストで安定的に生産することを実現した。
【実施例1】
【0012】
mf1遺伝子の発現
(1)供試菌株、プラスミド、培地
ゲノムDNA供与菌として、Mycoplasma fermentans PG18株を使用した。発現ベクターおよび形質転換体の構築には、Escherichia coli TOP10とBL21−AI株をインビトロジェンより購入して使用した。クローニングベクターとしてpCR−BluntII−TOPO、発現ベクター構築にはpENTR/D−TOPOおよびpDEST14ベクター(いずれもインビトロジェン)を使用した。培養にはLB培地を用いて行った。形質転換体選択薬剤として、Kanamycinは50マイクロg/ml、Carbenicillinは50マイクロg/mlで使用した。

【0013】
(2)mf1遺伝子発現ベクターの構築
M. fermentans PG18株ゲノムを用いてmf1遺伝子を増幅した。用いた一組のプライマーの配列は、M1F(5‘−ATAATAAAAACTATGAATGA−3’)(配列表7)およびM1R (5’−CTATTTGTCATTTTTCTT−3’)(配列表8)とした。組成はプライマー各25pmol、それぞれ0.2mMのdNTP,1mM MgSO、酵素に添付の10x PCR用緩衝液5マイクロリットル、KOD plus(TOYOBO) 1.0 unit、全量を50マイクロリットルとした。増幅条件は94度2分を1サイクル、94度15秒55℃30秒68℃1分/1kbを25サイクル、68℃8分を1サイクルとした。アガロース電気泳動にて増幅が単一バンドであることを確認後、SUPREC−PCR (TaKaRa)で精製した。精製した増幅産物はZero Blunt TOPO PCRクローニングキットを用い、添付の説明書にしたがってクローニングした。クローニングの宿主としてEscherichia coli TOP10を用いた。培地はLB培地、抗生物質はカナマイシンを終濃度で50マイクロg/mlとなるように添加した。クローニング後プラスミド抽出を行い、クローニングした配列が目的のものと同じであることを確認した。
【0014】
マイコプラズマ属菌のゲノムにおいて、トリプトファンコドンとして用いられているTGAコドンは、他の生物において一般的には終止コドンである。そこで、TGAをTGGにコドン改変することで、一般的なトリプトファンコドンとした。コドン改変には、DpnI法を用いた。コドン改変プライマーとして、5組設計した。配列は以下の通りである。M1‐A147G‐F(5’−CACAATGGATTTATACCTTGGGATGATGATATTGATTTATTAATTTC−3’)(配列表9)、M1‐A147G‐R(5’−GAAATTAATAAATCAATATCATCATCCCAAGGTATAAATCCATTGTG−3’) (配列表10)、M1‐A228G‐F(5’−CAGAAATTTAATTGTAGACTGgGAAACAGGCAACAGC−3’) (配列表11)、M1‐A228G‐R(5’−GCTGTTGCCTGTTTCcCAGTCTACAATTAAATTTCTG−3’) (配列表12)、M1‐A420G‐F(5’−GATATTCAATGGGGAATGAAAATTGCTAAAGTTTTATTATTTTGG−3’) (配列表13)、M1‐A420G‐F(5’−CCAAAATAATAAAACTTTAGCAATTTTCATTCCCCATTGAATATC−3’)(配列表14)、M1‐A453G‐F(5’−GCTAAAGTTTTATTATTTTGGACAAGAATGTTTAAAAAACC−3’)(配列表15)、M1‐A453G‐R(5’−GGTTTTTTAAACATTCTTGTCCAAAATAATAAAACTTTAGC−3’)(配列表16)、M1‐A681G‐F(5’−CTATGGTCCAAATTGgAGAATTCCAAAAAAATACAAAATGTCTG−3’)(配列表17)、M1‐A681G‐R(5’−CAGACATTTTGTATTTTTTTGGAATTCTcCAATTTGGACCATAG−3’)(配列表18)。次に、発現ベクターを構築した。構築には、Gatewayシステム(インビトロジェン)を使用した。コドン改変したmf1遺伝子を導入したベクターpCRBluntII/mf1A‐Gから、プライマーM1ENT‐F(5’− CACCATAATAAAAACTATGAATGAAAAAC−3’)(配列表19)およびM1Rを用いて5‘末端にCACCの4塩基が付加したmf1断片を増幅した。アガロース電気泳動にて増幅が単一バンドであることを確認し、SUPREC PCR(TaKaRa)にて精製した。精製物をpENTR/D−TOPOにクローニングした。クローニングされた配列が目的のものであることを確認後、LR clonase(インビトロジェン)を用いてpDEST14に組換えた。構築した発現ベクターをpDEST14mf1wとした。
【0015】
(4)mf1発現の確認
Carbenicillinを含むLB培地でE.coli BL21−AI/pDEST14mf1wを培養した菌液を本培養液に5%接種した。30℃で培養し、OD600=0.4の時点でL−arabinoseを終濃度0.2%になるよう添加し、誘導処理を行った。誘導処理5時間後、培養液を4℃、7000xg、20分間遠心分離し、菌体を回収した。湿菌体の2倍重量の直径0.1mmのガラスビーズ、50mM Tris−HCl(pH8.0)を加え、懸濁した。マルチビーズショッカー(安井器械)を用いて破砕した。破砕液を4℃、15000xg、5分間遠心分離した上清を用いてSDS−PAGEを行った(図1)。誘導処理を行った試料にのみ、予想サイズと一致するバンドが確認された。
【0016】
(5)6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)の生成試験
大腸菌細胞破砕液を遠心分離した上清を粗酵素として、GGPL−I生成試験を行った。反応式は図2のごとく示される。反応液の組成は、10mM塩化マグネシウム、5mM Redeced glutathione、6mM アルファ‐グルコピラノシル‐(1‘‐3)‐1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロール、0.1mM CDP−cholineに粗酵素液を20マイクロリットル添加し、全量を100マイクロリットルとした。反応は37℃、16時間行った。反応後、クロロホルム:メタノール=2:1の溶液を400マイクロリットル添加し、反応停止およびGGPL−I抽出を行った。十分撹拌後、15000xg、5分間遠心分離を行い、クロロホルム/メタノール層を回収し、乾燥させた。
【0017】
(6)GGPL−I生成確認
生成の確認は質量分析にて行った。オートフレックスII TOF/TOF(ブルカーダルトニクス社)を用いた。乾燥試料をクロロホルム:メタノール=2:1溶液500マイクロリットルにて溶解し、さらにメタノールで100倍希釈した。マトリックス溶液は、2,5−dihydroxy−benzonic acid 0.0025gを990マイクロリットルのメタノールで溶解したDHB溶液にTFA−Na0.00125gを1mlのメタノールで溶解したTFA−Na溶液10マイクロリットルを加えて調製した。希釈した試料1マイクロリットルおよびマトリックス溶液1マイクロリットルを測定に供した。質量分析の結果、GGPL−Iに対応するピークが検出された(図3)。以上の結果より、mf1産物がGGPL−I生成反応を触媒することが分かった。

【実施例2】
【0018】
グリコシルトランスフェラーゼ発現ベクターの構築と発現
(1)供試菌株、使用したプラスミド、培地など
Mycoplasma fermentans PG−18より取得したゲノムDNAを使用した。Escherichia coli TOP10およびE.coli BL21−AIはインビトロジェンより購入した。E.coli TOP10は発現ベクターの構築に使用し、E.coli BL−21AIは酵素生産の宿主とした。大腸菌の培養にはLB培地を用いた。DNA断片の増幅にはKODplus(東洋紡)を用いた。発現ベクターは、Gatewayシステム(インビトロジェン)にて構築し、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit、pENTR/D/TOPOベクター、pDEST14ベクター、LRclonase(インビトロジェン)を使用した。いずれも添付の説明書に従って用いた。酵素遺伝子への点変異導入のため、DpnI(New England Bio)を用いた。塩基配列はABI PRISM3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いて解析した。CarbenicillinおよびKanamycinは50マイクロg/mlの濃度で適時使用した。
【0019】
(2)マイコプラズマ由来グリコシルトランスフェラーゼ発現ベクターの構築
M. fermentansPG−18ゲノムを鋳型とし、PCRによりグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子、mf3を増幅した。プライマーはM3F(配列表20)(5‘−ATGATATGAAAGTTTTTTGTAAAAAAGAAAGG−3’)、M3R(配列表21)(5’−TTATTTTTTATAATGTTCAATAATTTTTTGTATTT−3‘)を用いた。増幅断片をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン)を用いてクローニングし、pBluntIImf3を得た。マイコプラズマのゲノムでは、opalコドンTGAがトリプトファンコドンとして用いられているため、異種微生物を用いて発現させる際には、一般的なトリプトファンコドンであるTGGへと点変異を導入する必要がある。そこで、制限酵素DpnIを用いた部位特異的点変異導入法(非特許文献2)によりmf3に含まれる5ヶ所のTGAコドンをTGGへと点変異導入し、pBluntIImf3wを構築した。点変異導入には4組のプライマーを設計した(図4)。5点目は9番目の塩基のため、エントリークローン構築の際に用いるプライマーに変異点を設計して導入した。変異鎖伸長反応は、94℃5分1サイクル、94℃、55℃、68℃15サイクル、68℃1サイクルとした。エントリークローン構築のためプライマーM3_ENT_F(5‘−CACCATGATATGGAAGTTTTTTGTAAAAAAG−3’)およびM3Rを用い、pBluntIImf3wを鋳型として変異型mf3遺伝子、mf3wを増幅した。M3_ENT_Fプライマーの5’末端にはTOPOクローニングの際に必要となるCACCの配列が付与するように設計した。増幅したmf3wをpENTR/D−TOPO(インビトロジェン)へTOPO−cloningし、pENTRmf3wを得た。さらに、pENTRmf3wからpDEST14へLRclonase(インビトロジェン)を用いて組換え、pDEST14mf3wを構築した。
【非特許文献2】Sambook J, Russell W (2001) In vitro mutagenesis usingdouble-stranded DNA templates: selection of mutants with DpnI In: MolecularCloning, vol. 2. New York, Cold Spring Harbor, pp 13.19-13.25)
【0020】
形質転換
pDEST14mf3wをE.coli BL21−AIに形質転換し、形質転換体をE.coli BL21−AI/pDEST14mf3wを得た。
【0021】
Mf3の発現および発現確認
E.coli BL21−AI/pDEST14mf3wを培養し、OD600=0.4の時点でL−Arabinose(終濃度0.2%)を加え、発現誘導を行った。誘導後5時間の培養液を回収し、4℃、15000g、5分間遠心分離により菌体を得た。直径0.1mmのガラスビーズおよびTris−HCl緩衝液(50mM,pH7.0)を加えて懸濁し、マルチビーズショッカー(安井器械)にて破砕した。破砕液を4℃、15000g、5分間遠心分離し、上清を粗酵素とした。発現確認のため粗酵素を12%SDS−PAGEに供した。コントロールとして発現誘導を行っていない菌体から同様に調製した粗酵素液を用いた。

【0022】
(3)グリコシルトランスフェラーゼ活性の確認
基質として、1,2−ジパルミトイルグリセロールおよびUDP−glucoseを購入して使用した。反応はTris−HCl緩衝液(終濃度50mM、pH7.0)とdipalmitoylglycerol(終濃度0.5mM)、および、UDP−グルコース(終濃度0.5mM)を混合し、37℃で16時間反応を行った。反応液にクロロホルムおよびメタノールを2:1で混合した溶液を反応液の4倍量加え、脂質抽出を行った。4℃、15000g、5分間遠心分離を行い、有機溶媒層を回収して乾固したものを質量分析に供した。質量分析はオートフレックスII TOF/TOF(ブルカーダルトニクス)を用いた。マトリックス溶液は、DHB溶液990マイクロリットルとTFA−Na溶液10マイクロリットルを混合して用いた。DHB溶液は、2,5−dihydroxy−benzonic acid0.0025gを990μlのメタノールで溶解し、TFA−Na溶液はTFA−Na0.00125gを1mlのメタノールで溶解して調製した。
【0023】
(1)E.coli AI_pDEST14mf3wにおけるMf3の発現の検出
SDS−PAGEの結果、誘導処理した粗酵素にのみMf3予想サイズと同じ約44kDaのバンドが検出された。(図5)この結果より、E.coli BL21−AI/pDEST14mf3wにおいてMf3が発現していることが示唆された。
【0024】
(2)Mf3活性の測定
mf3w遺伝子産物Mf3の反応は、図6のごとく示される。反応試料の質量分析結果を図7に示した。誘導処理をした菌体から調製した粗酵素を用いた反応試料中にグルコピラノシルジアシルグリセロールに相当する753m/zのピークが検出された。一方、コントロール(誘導処理していない菌体から調整した粗酵素を用いた反応試料)には検出されなかった。以上のことから、Mf3はUDP−グルコースからジパルミトイルグリセロールへのグルコース転移活性を有することが分かった。

【実施例3】
【0025】
mf1w遺伝子産物大腸菌細胞破砕液上清そしてmf3w遺伝子産物を含んだ大腸菌細胞破砕液上清を同じ相の中で実施して、基質として、1,2−ジパルミトイルグリセロール、CDP-コリンおよびUDP−glucoseを使用し、糖含有グリセロリン脂質である6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)を37℃で16時間反応させた。予想される反応式は図7で示される。反応後の液を分析したところ、GGPL-1の生成を確認することができた(図8)。

【産業上の利用可能性】
【0026】
M.fermentansに特異的な膜成分である糖含有グリセロリン脂質を純度良く低コストで得ることができるので、ワクチン、検査試薬原料、抗マイコプラズマ抗体活性化薬など種々用途が開ける。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】大腸菌で発現したmf1w遺伝子産物を示す写真である。(実施例1)
【図2】mf1w遺伝子産物の反応式を示す図である。(実施例1)
【図3】質量分析によるGGLP-1生成の証拠を示すチャートである。(実施例1)
【図4】4種のプライマーの配列を示したもの。(実施例2)
【図5】大腸菌で発現したmf3w遺伝子産物を示す写真である。(実施例2)
【図6】mf3w遺伝子産物の反応式を示す図である。(実施例2)
【図7】質量分析によるGGLP-1生成の証拠を示すチャートである。(実施例2)
【図8】mf1wおよびmf3w遺伝子産物を同時に入れた反応系の図である。(実施例3)
【図9】mf1wおよびmf3w遺伝子産物を同時に入れた反応系でのGGPL-1生産の確認(実施例3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mycoplasma fermentans遺伝子mf1(配列1)を大腸菌用発現ベクターに導入し、その大腸菌を用いて遺伝子m1の遺伝子産物を発現させること、および遺伝子産物であるCholinephophotransferase活性を有する酵素。
【請求項2】
Mycoplasma fermentans遺伝子mf3(配列2)を大腸菌用発現ベクターに導入し、その大腸菌を用いて遺伝子mf3の遺伝子産物を発現させること、および遺伝子産物である、糖転移反応によりジアシルグリセロールに糖を付加し、グルコピラノシルジアシルグリセロールを生成する、マイコプラズマ由来の糖転移酵素。
【請求項3】
請求項1においてMycoplasma fermentansのmf1遺伝子の塩基配列のTGAをTGGにコドン改変した遺伝子mf1w(配列3)を大腸菌用発現ベクターに導入し、その大腸菌(FERM AP−21601)を用いて発現させる方法。
【請求項4】
請求項2においてMycoplasma fermentansのmf3遺伝子の塩基配列のTGAをTGGにコドン改変した遺伝子mf3w(配列4)を大腸菌用発現ベクターに導入し、その大腸菌(FERM AP−21600)を用いて発現させる方法。
【請求項5】
請求項1の遺伝子mf1遺伝子産物および請求項3のmf1w遺伝子産物であるCholinephophotransferase活性を有する酵素(配列5)を用いて、基質をアルファ‐グルコピラノシル‐(1‘‐3)‐1,2‐ジアシル‐sn‐グリセロールおよびCDP−cholineとし、反応物として糖含有グリセロリン脂質6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)を得る製造方法。
【請求項6】
請求項2の遺伝子mf3の遺伝子産物および請求項3のmf3w遺伝子産物であるである酵素(配列6)グリコシルトランスフェラーゼを用いて、基質として、1,2−ジパルミトイルグリセロールおよびUDP−glucoseを使用し、反応物として6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)を得る製造方法。
【請求項7】
請求項4の反応および請求項5の反応を同じ相の中で実施して、基質として、1,2−ジパルミトイルグリセロール、CDP-コリンおよびUDP−glucoseを使用し、糖含有グリセロリン脂質である6‘−O−phosphocholine−a−glucopyranosyl−(1’3)−1,2−diacylglycerol(GGPL−I)を得る製造法。


【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−63445(P2010−63445A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235783(P2008−235783)
【出願日】平成20年9月13日(2008.9.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月27日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2008年度(平成20年度)大会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月27日 社団法人日本生物工学会主催の「平成20年度日本生物工学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(503215963)有限会社A−HITBio (1)
【出願人】(593013074)
【Fターム(参考)】