説明

N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドの製造方法

メタクリル酸無水物とイソプロピルアミンとを、場合によっては溶剤中で反応させることによって、簡単な方法で、高い純度および収率で、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを獲得するための新規方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを、メタクリル酸無水物とイソプロピルアミンを、場合によっては溶剤中で反応させることによって、簡単な方法で、高い純度及び収率で獲得することが可能な方法を記載する。アミドは反応中に沈澱し、かつ濾過によって単離することができる。他の生成物の部分は、副生成物として生じるメタクリル酸の中和によって濾液から沈澱させることができ、このようにしてさらに獲得することができる。代替的に、メタクリル酸は、その中に溶解された生成物から蒸留的に分離することができる。
【0002】
驚くべきことに教科書的知識とは対照的に、反応体の等モル量の反応の際に、ほとんどN−イソプロピルアンモニウムメタクリレートは形成されない。
【0003】
背景技術
リッター反応は、ニトリルと、カルベニウムイオンを形成することができる物質(例えば、強鉱酸の存在下での第三級または第二級アルコール)とからアミドを製造するために役立つ。このようにして、(メタ)アクリルニトリルおよびイソプロパノールからN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを製造することができる。DE 31 31 096は、この方法を記載している。後処理のために、溶剤として役立つ酸を中和しなければならず、これは多量の廃棄すべき塩を生じる。さらに生成物は、不純物、例えばメタクリルアミドを含有する。
【0004】
本発明の課題
発明の開示
置換された(メタ)アクリルアミドが、無水物(場合によっては溶剤中に装入されたもの)とアミンを、場合によっては冷却下で計量供給することによって、簡単な方法で得られる。
【0005】
供給終了後に、一般にすでに生じた生成物の一部分が晶出し、かつ場合によっては生成物溶液の冷却後に、沈澱をより完全なものとするために濾別する。収率を高めるために、母液中に含まれる(メタ)アクリル酸を中和することができ、これは、生成物をさらなる沈澱に導く。生成物形成は、ほぼ定量的に実施される。得られた置換された(メタ)アクリルアミドは、たいてい95%を上回る高い純度を示す。後処理のために、母液はN−イソプロピルメタクリルアミドとメタクリル酸とに蒸留的に分離することができる。モノマーの易重合性のために、これに関して熱的負荷を、例えば薄層蒸発器を使用することにより最小限にすることが合理的である。得られたモノマーの純度及び収率は、製造する際に、公知方法、例えばリッター反応による場合であるか、あるいはカルボン酸塩化物を原料として使用することによる場合よりも高い。
【0006】
出発材料
不飽和カルボン酸無水物
不飽和カルボン酸無水物として、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物又はイタコン酸無水物が考慮される。
【0007】
メタクリル酸無水物は、例えばEvonik Rohm GmbHにより市販されている。
【0008】
アミン
アミンとして、第1級アミンおよび第2級アミンを使用することができる。第1級アミンとしては、第1級の、場合によっては置換された脂肪族アミンを考慮することができ、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミンおよびベンジルアミンならびにアリルアミンである。
【0009】
さらに、第1級脂環式アミンを使用することができ、例えばシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミンおよびシクロヘキシルアミンである。
【0010】
第1級芳香族アミンとしては、アニリン、アミノトルエン異性体(この場合、これは単独でまたは混合物で)および、キシリジン異性体(この場合、これは単独でまたは混合物で)を使用することができる。これら化合物は、場合によっては1個又は複数個のハロゲンによって置換することができる。
【0011】
第2級脂肪族アミン、例えばジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミンおよびジオクチルアミンを同様に使用することができる。
【0012】
重合阻害剤
重合阻害剤はすでに知られている。したがって、例えば1,4−ジヒドロキシベンゼンを安定化のために添加することができる。しかしながらさらに他の置換されたジヒドロキシベンゼンを使用することができる。一般に、このような阻害剤は、一般式(I)
【化1】

[式中、
は水素、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、ハロゲン又はアリールを意味し、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert.ブチル、Cl、FまたはBrであり、
nは1〜4、特に1又は2の範囲の整数であり、
かつ、
は水素、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基又はアリールを意味し、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert.ブチルである]
で表すことができる。
【0013】
しかしながらさらに親化合物として1,4−ベンゾキノンを有する化合物を使用することができる。これらは、一般式(II)
【化2】

[式中、
は水素、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、ハロゲン又はアリールを意味し、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert.ブチル、Cl、FまたはBrであり、かつ、
nは1〜4、特に1又は2の範囲の整数である]
で記載することができる。
【0014】
同様に、一般式(III)
【化3】

[式中、
は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基、アリールまたはアルアルキル、1〜4価のアルコールとのプロピオン酸エステル、この場合、これはさらにヘテロ原子、例えばS、OおよびNを含有していてもよく、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert.ブチルを意味する]
のフェノールを使用する。
【0015】
他の有利な物質群は、一般式(IV)
【化4】

[式中、
R=式(V)
【化5】

(R=C2n+1であり、
その際、n=1または2である)]
のトリアジン誘導体をベースとする立体障害フェノールである。
【0016】
公知の阻害剤の他の群はアミン、特に立体障害アミンである。
【0017】
これに属するのは、特に、一般式(VI)
【化6】

[式中、
、R、RおよびRは独立して水素、ならびにそれぞれ40個まで、特に20個までの炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルカリール基、アルアルキル基を示し、その際、好ましくは基R、R、RおよびRの少なくとも1個が水素である]
により表すことが可能なフェニレンジアミンである。
【0018】
典型的なp−フェニレンジアミンは、基R、R、RおよびRが水素であるp−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’−アルキル−p−フェニレンジアミン、例えばN−フェニル−N’−メチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−エチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−プロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−n−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−tert.ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−n−ペンチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−n−ヘキシル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1−メチルヘキシル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,4−ジメチル−ペンチル)−p−フェニレンジアミン;N−フェニル−N’,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、例えばN−フェニル−N’,N’−ジメチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’,N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’,N’−ジ−n−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−メチル−N’−エチル−p−フェニレンジアミン;N,N−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、例えばN,N−ジメチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジエチル−p−フェニレンジアミン;N,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、例えばN,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン;N,N’−ジアリール−フェニレンジアミン、例えばN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’−トリアルキル−p−フェニレンジアミン、例えばN,N,N’−トリメチル−p−フェニレンジアミン、N,N,N’−トリエチル−p−フェニレンジアミン。
【0019】
さらに、フェナジン染料が他の好ましい群を形成する。これは特にインジュリンおよびニグロシンを含む。ニグロシンは、ニトロベンゼン、アニリンおよび塩酸アニリンと、金属鉄およびFeClsを一緒に加熱することにより生じる。これに関して、アルコール溶解性アニリン染料が好ましく、これは例えば5個のベンゼン核を含有していてもよく、例えばジアニリド−N,N−ジフェニルフェノサフラニンである。これらの物質は一般に知られており、かつ、商業的に得ることが可能である。
【0020】
特に有利には、1,4−ジヒドロキシベンゾール、4−メトキシフェノール、2,5−ジクロロ−3,6−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾール、2,6−ジ−tert.ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert.ブチルフェノール、2,2−ビス[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル−1−オキソプロポキシメチル)]1,3−プロパンジイルエステル、2,2’−チオジエチルビス−[3−(3,5−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert.−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル−2,2−メチレンビス−(4−メチル−6−tert.ブチル)フェノール、トリス−(4−tert.ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリス(3,5−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシ)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、tert.ブチル−3,5−ジヒドロキシベンゾールまたはジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)ならびに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシが使用され、その際、この中でさらに特に有利であるのはヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)である。
【0021】
前記阻害剤は商業的に入手可能である。
【0022】
エチレン性不飽和化合物のための基本的安定化の際に、前記化合物を単独でか、あるいは2種またはそれ以上の化合物の混合物の形で使用することができる。フェノール性化合物の場合には、重合に対する十分な効果を保証するために、反応混合物中における酸素の存在が必要不可欠である。この際、酸素源として空気を使用することは特に好ましい。
【0023】
溶剤
溶剤として、すべての不活性有機溶剤を使用することができ、例えば脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンまたは脂肪族炭化水素の混合物、例えば石油エーテル、リグロイン、デカリンまたはベンジンである。
【0024】
さらに、芳香族溶剤、例えばベンゼン、トルエンまたはキシレン異性体および前記化合物からなる混合物を使用することができる。
【0025】
さらに、酸素含有炭化水素を考慮することができ、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルまたはメチル−tert.ブチルエーテルである。さらに水を不活性有機溶剤として考慮することができ、それというのも、アミド製造の反応条件下で、(メタ)アクリル酸無水物の加水分解がほとんど生じないためである。
【0026】

実施例1:N−イソプロピルメタクリルアミドの製造
機械的撹拌機、滴加漏斗、空気供給管、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた2Lの5口丸型フラスコ中に、メタクリル酸無水物463g(3mol)、シクロヘキサン504g(6mol)および阻害剤として2,6−ジ(tert.ブチル)−4−メチルフェノール0.077g(反応体に対して120ppm)を装入し、かつ20℃を下回る温度で1.25時間内に、イソプロピルアミン177g(mol)を、攪拌しながら、かつ、ゆっくりと空気流を導入しながら計量供給する。この際、結晶が析出する。供給終了後に、懸濁液を4〜8℃に冷却し、かつさらに2.5時間に亘って撹拌して沈澱をより完全なものとする。引き続いて濾過し、かつ結晶を2回に亘ってその都度60gのシクロヘキサンで洗浄し、かつ空気で乾燥させる。収率:188g(49%)N−イソプロピルメタクリルアミド、純度:97.8%(ガスクロマトグラフによる測定)。
【0027】
母液は、含まれるメタクリル酸の中和のために、30%濃度の苛性ソーダ280gと混合し、その際、2相が形成される。室温で0.5時間に亘って攪拌し、その際、結晶性固体が沈澱する。懸濁液を、沈澱を完全なものにするために12時間に亘って5℃に置く。その後に濾過し、かつ濾過ケークを空気乾燥させる。
収率:165g(43%d.Th.)N−イソプロピルメタクリルアミド、純度:93.8%(ガスクロマトグラフによる測定)
【0028】
実施例2:N−ドデシルメタクリルアミドの製造
機械的攪拌機、滴加漏斗、空気導入管、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた1Lの5口丸型フラスコ中に、メタクリル酸無水物300g(1.95mol)ならびに阻害剤として2,6−ジ(tert.ブチル)−4−メチルフェノール0.06g(生成物に対して120ppm)ならびにヒドロキノンモノメチルエーテル0.03g(生成物に対して60ppm)ならびに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.003g(生成物に対して6ppm)を装入し、かつ1.3時間内に30〜35℃の温度で、溶融した(融点25〜28℃)N−ドデシルアミン361g(1.95mol)を攪拌しながら、かつ、ゆっくりと空気流を導入しながら計量供給する。供給終了後に、液体のわずかに粘性の回分を3時間に亘って40〜45℃で後攪拌し、かつ室温に冷却する。メタクリル酸の留去のために、反応容器に蒸留装置を取り付け、かつ、油ポンプによる真空(1mbar)中で3時間に亘って97℃の塔底温度に加熱し、その際、メタクリル酸(92%d.Th.)が得られる。蒸留残渣は、ガスクロマトグラフで測定した98%の純度を有する、N−ドデシルメタクリルアミド490g(99%d.Th.)から成る。
【0029】
実施例3:N−イソプロピルメタクリルアミドの製造
機械的攪拌機、滴加漏斗、空気導入管、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた1Lの4口丸型フラスコ中に、メタクリル酸無水物300g(1.95mol)ならびに阻害剤として2,6−ジ(tert.ブチル)−4−メチルフェノール0.06g(生成物に対して120ppm)ならびにヒドロキノンモノメチルエーテル0.03g(生成物に対して60ppm)ならびに4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.003g(生成物に対して6ppm)を装入し、かつ3時間内に最大30℃の温度で、イソプロピルアミン115g(1.95mol)を攪拌しながら計量供給する。供給後に、液体のわずかに粘性の回分を3時間に亘って40℃で後攪拌し、かつ室温に冷却する。沈澱した結晶を吸引し、かつシクロヘキサン157gで洗浄し、これを母液と一緒にする。最初の留分として、89℃の融点およびガスクロマトグラフで測定した99%の純度を有するN−イソプロピルメタクリルアミド114g(46%d.Th.)が得られる。母液を後処理するために、これをヴィグロウカラム(長さ10cm)を取り付けた実験室用薄層蒸発器 DS 25(NGW社, Wertheim)に装入し、かつ130℃の熱ジャケット温度および1mbarの圧力で、シクロヘキサンおよびメタクリル酸を蒸留する。蒸留残渣は、RTへの冷却の際に凝固し、かつガスクロマトグラフで測定された純度97%を有するN−イソプロピルメタクリルアミド(52%d.Th.)130gからなる。
【0030】
比較例1:メタクリル酸塩化物からのN−イソプロピルメタクリルアミドの製造
機械的攪拌機、滴加漏斗、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた1Lの4口丸型フラスコ中で、500g(1mol)の2N苛性ソーダ、59g(1mol)のイソプロピルアミンならびに阻害剤として2,4−ジメチル−6−(tert.ブチル)フェノールを装入し、かつ室温で、メタクリル酸無水物104g(1mol)を攪拌しながら計量供給する。供給終了後に、回分を1時間に亘って後攪拌し、再度水酸化ナトリウム10gを添加し、かつさらに30分に亘って撹拌する。沈澱した結晶を吸引し、かつ空気乾燥する。ガスクロマトグラフにより測定された90.7%の純度を有する、N−イソプロピルメタクリルアミド108g(85%d.Th.)108gが得られる。副生成物として、N−イソプロピルメタクリルアミドに対するメタクリル酸塩化物の付加生成物が9%得られる。
【0031】
比較例2:メタクリル酸塩化物からのN−イソプロピルメタクリルアミドの製造
機械的撹拌機、滴加漏斗、空気導入管、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた1lの4口丸型フラスコ中に、トルエン300mlならびにイソプロピルアミン118g(2mol)および阻害剤として2,6−ジ−(tert.ブチル)−4−メチルフェノール0.1gを装入し、かつ最大30℃でメタクリル酸塩化物104g(1mol)を攪拌および通気しながら、計量供給する。沈澱した生成物を吸引し、かつ乾燥させる。ガスクロマトグラフにより測定された82.4%の純度を有するN−イソプロピルメタクリルアミド65g(51%d.Th.)が得られる。副生成物として、N−イソプロピルメタクリルアミドにメタクリル酸塩化物が付加された生成物が1.3%およびメタクリル酸無水物が11%得られる。
【0032】
比較例3:100%濃度の硫酸中でのリッター反応によるメタクリルニトリルからのN−イソプロピルメタクリルアミドの製造
機械的攪拌機、滴加漏斗、空気導入管、内部温度センサおよび還流冷却器を備えた2lの4口丸型フラスコ中に、100%濃度の硫酸515g(5.25mol)を装入し、かつ2.5時間内にメタクリルニトリル168g(2.5mol)、イソプロパノール180g(3mol)および2,6−ジ(tert.ブチル)−4−メチルフェノール0.18gからなる混合物を、攪拌および通気しながら計量供給する。発熱反応は、冷却により22〜25℃の範囲に維持する。供給終了後に、30℃で1時間に亘って後反応させ、その後に60℃の温度に加熱し、かつ反応混合物をこの温度で1時間に亘って維持する。その後に室温に冷却し、かつ70分に亘って維持する。水750gを冷却しながら添加し、その結果、温度は上昇しない。回分を4lのフラスコ中に移し、かつさらに水925gを添加し、その際、固体材料が析出する。50%濃度の水酸化ナトリウム溶液(約815g)を用いて、混合物を120分内、最大30℃で中和する(pH=7)。18℃に冷却した後に、沈澱した生成物を吸引し、かつ4回に亘ってその都度320mlの冷水で洗浄する。得られた結晶スラリーを圧力乾燥する。N−イソプロピルメタクリルアミドの他に、42%の水および22%の硫酸ナトリウムを含有する生成物1136gが得られる。N−イソプロピルメタクリルアミドの部分は、ガスクロマトグラフによって測定された純度93.5%を示し、かつ5.9%のメタクリルアミドを含有する。
【0033】
本発明による化合物は、モノマーとしてポリマーおよびコポリマーの製造のために使用することができる。さらに、本発明によるモノマーはポリマーに重合することができるか、あるいは混合物の形で共重合することができ、これは、ガス水和物生成阻害剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸無水物を、不活性溶剤中でアミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項2】
不飽和カルボン酸無水物を、溶剤不含下でアミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項3】
アミド分離工程からの母液を中和して、さらなるアミドを沈澱させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、請求項1または2に記載の不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項4】
アミド分離工程からの母液から蒸留により(メタ)アクリル酸を取り除き、かつ残りのアミドを分離することを特徴とする、請求項1または2に記載の不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項5】
不飽和カルボン酸無水物を、不活性溶剤中で第1級アミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項6】
不飽和カルボン酸無水物を、不活性溶剤中で第2級アミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項7】
不飽和カルボン酸無水物を、溶剤不含下で第1級アミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項8】
不飽和カルボン酸無水物を、溶剤不含下で第2級アミンと反応させ、かつ生じるアミドを分離することを特徴とする、不飽和カルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項9】
メタクリル酸無水物を、溶剤中でイソプロピルアミンと反応させ、かつN−イソプロピルメタクリルアミドを単離することを特徴とする、N−イソプロピルメタクリルアミドを製造する方法。
【請求項10】
メタクリル酸無水物を、溶剤不含下でイソプロピルアミンと反応させ、かつN−イソプロピルメタクリルアミドを単離することを特徴とする、N−イソプロピルメタクリルアミドを製造する方法。
【請求項11】
ポリマーまたはコポリマーを製造するためのモノマーの使用。
【請求項12】
ガス水和物生成阻害剤として使用される、ポリマーまたはコポリマーを製造するためのモノマーの使用。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のモノマーを重合することによって得られる、ポリマーまたはコポリマー。

【公表番号】特表2012−512217(P2012−512217A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541268(P2011−541268)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065435
【国際公開番号】WO2010/072480
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】