説明

N,N,N’,N’−テトラキス(アミノ置換アリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法

【課題】 本願は、工業的に取り扱いが容易で、かつ安価に入手可能な原料、反応剤のみを用いて、大規模でも安全かつ効率よく製造することが可能なN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法を見出すことを課題とする。
【解決手段】 上記課題は、(a)ハロゲン化芳香族アミノ化合物を、RXで表わされる化合物と反応させることにより、N,N−置換アミノ芳香族化合物とする工程と、(b)該N,N−置換アミノ芳香族化合物を、第VIII族遷移金属触媒存在下、ジアミノ化合物と反応させる工程を順次行ってN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物を製造することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性色素化合物、特に近赤外吸収色素化合物の重要な原料となるN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近赤外吸収色素は、画像形成材料、赤外線感熱型記録材料、光記録素子、光学フィルム材料などに用いられる色素である。特に、N,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノフェニル)−p−フェニレンジアミンは、PDP(プラズマディスプレイ)用途に用いられる近赤外吸収色素の重要な原料化合物である。
【0003】
N,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノフェニル)−p−フェニレンジアミンは、従来、
1)芳香族ハロニトロ化合物とp−フェニレンジアミンをCu触媒存在下で反応させてN,N,N’,N’−テトラキス(ニトロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(ウルマン反応)とする工程、
2)ニトロ基を還元することによりN,N,N’,N’−テトラキス(アミノフェニル)−1,4−フェニレンジアミンとする工程、
3)ハロゲン化アルキルを用いてアミノ基をアルキル化する工程、
の3つの工程により製造されている(特許文献1−5)。
【特許文献1】US3637769
【特許文献2】US3251881
【特許文献3】特開平6−24146
【特許文献4】特許第2016508号
【特許文献5】特開2007−169218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記製造法の第1工程、および第2工程は、共に爆発性のあるニトロ化合物を高温で反応させる方法であるため工業的規模で実施するには安全性の面で問題がある。
【0005】
また、第2工程のニトロ基の還元方法としては、パラジウム触媒存在下、水素ガスを用いる方法や、鉄化合物存在下、ヒドラジンを用いる方法が知られている。しかし、前者の場合、水素ガスを用いるために、特殊設備が必要であり、後者の場合は、ヒドラジン自体に爆発性があり、工業的規模で大量に使用するには安全面で問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上に述べた従来法の問題を鑑み、工業的に取り扱いが容易で、かつ安価に入手可能な原料、反応剤のみを用いて、大規模でも安全かつ効率よく製造することが可能なN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法を鋭意検討した結果、本発明を開発するに至った。すなわち、
(a)一般式(1):
【0007】
【化6】

(式中、Arは炭素数6〜20の置換もしくは無置換の芳香族環を表わす。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表わす。)で表わされる芳香族アミノ化合物を、一般式(2):
RX (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表わす。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表わす。)で表わされる化合物と反応させることにより、一般式(3):
【0008】
【化7】

(式中、Ar、X、Rは前記に同じ。)で表わされるN,N−置換アミノ芳香族化合物とする工程、
(b)上記一般式(3)で表されるN,N−置換アミノ芳香族化合物を、第VIII族遷移金属触媒存在下、一般式(4);
【0009】
【化8】

(式中、Arは、炭素数6〜20の置換もしくは無置換の芳香族環を表わす。)
で表わされるジアミノ化合物と反応させる工程
を順次行うことを特徴とする一般式(5):
【0010】
【化9】

(式中、Ar、Ar、Rは前記に同じ。)で表わされるN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、前記一般式(5)で表わされる化合物を酸化する工程を含むことを特徴とする近赤外吸収色素化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる方法によれば、工業的に取り扱いが容易で、かつ安価に入手可能な原料および反応剤のみを用いて、近赤外吸収色素原料として有用なN,N,N’,N’−テトラキス(N,N-置換アミノアリール)−p−フェニレンジアミンを効率よく製造することが可能である。その結果、従来より安価に機能性色素化合物を製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳述する。
【0014】
まず、式(1):
【0015】
【化10】

で表わされる芳香族アミノ化合物と、式(2):
RX (2)
で表わされる化合物を反応させて、式(3):
【0016】
【化11】

で表わされるN,N−置換アミノ芳香族化合物を製造する方法について説明する。
【0017】
Arは、炭素数6〜20の置換または無置換の芳香族環を表わす。具体的には、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環などの単環芳香族、ナフタレン環、インドール環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環などの2環芳香族、フェナントレン環、アントラセン環、アクリジン環、カルバゾール環、フェナジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環などの3環芳香族、ナフタセン環などの4環芳香族等を挙げることができる。Ar上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基、水酸基、オキソ基、アミノ基などを挙げることができる。Arとしては、ベンゼン環が好ましい。
【0018】
式中、Xはハロゲン原子、またはスルホニルオキシ基を表わす。
【0019】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
スルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、フルオロスルホニルオキシ基などを挙げることができる。
【0021】
これらのうち、好ましいのはハロゲン原子であり、さらに好ましくは臭素原子、ヨウ素原子である。
【0022】
式(2)中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表わす。
【0023】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などを挙げることができる。
【0024】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基、4−ジメチルアミノ基、3−ジメチルアミノ基、2−ジメチルアミノ基等を挙げることができる。
【0025】
R上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基、水酸基、オキソ基、アミノ基などを挙げることができる。
【0026】
Rとして好ましいのはアルキル基であり、さらに好ましくはn−ブチル基である。
【0027】
式(2)中、Xとしては、Xと同様のものが挙げられる。
【0028】
化合物(2)の化合物(1)に対する理論量が2.0モル倍であるので、化合物(2)の使用量は、化合物(1)に対して2.0モル倍以上であれば特に制限は無いが、経済性を考慮すると2.0〜20.0モル倍、好ましくは2.0〜10.0モル倍である。
【0029】
本反応においては、副生する酸を中和するために塩基が使用される。
【0030】
塩基としては無機塩基、有機塩基のいずれを用いてもよい。無機塩基としては例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウムなどの酢酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムなどの炭酸水素塩、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどの硫酸塩、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素リチウムなどの硫酸水素塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
【0031】
有機塩基としては、通常3級アミンが用いられる。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジンを挙げることができる。
【0032】
これらの中で、好ましい塩基は無機塩基であり、さらに好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウムである。
【0033】
塩基の使用量は特に制限は無いが、好ましくは1.0〜20.0モル倍、さらに好ましくは2.0〜10.0モル倍である。
【0034】
反応に使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA),ヘキサメチルホスフォラストリアミド(HMPT)などのリン酸アミド系溶媒が挙げられる。これらの中で好ましいのは、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、リン酸アミド系溶媒である。なお、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0035】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常20〜150℃であり、このましくは20〜120℃である。
【0036】
反応時間は、反応温度や、使用される塩基および化合物(2)の使用量によっても異なるが、通常30分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0037】
本工程で生成した式(3)で表わされるN,N−置換アミノ芳香族化合物は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒を用いて抽出を行うことにより得ることができる。このようにして得られたN,N−置換アミノ芳香族化合物は、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。また、精製することなく次工程に供してもよい。
【0038】
次に、化合物(3)と化合物(4):
【0039】
【化12】

を反応させて、式(5):
【0040】
【化13】

で表わされるN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物を製造する工程について述べる。
【0041】
Arとしては、Arと同様のものが挙げられる。
【0042】
本工程は、第VIII族遷移金属触媒存在下で行われる。これら第VIII族に属する金属のうち好ましいのは、ニッケル,パラジウム,白金であり、さらに好ましくはパラジウムである。
【0043】
パラジウムの形態としてはパラジウム化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム4水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトネート(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)などの2価のパラジウム化合物、ビス(ジベンジリデン)パラジウム、トリス(ジベンジリデン)2パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデン)2パラジウムクロロホルム錯体などの0価パラジウム化合物を挙げることができる。
【0044】
パラジウム化合物の使用量は、特に制限されないが、化合物(3)に対して通常0.00001〜0.1モル倍、好ましくは0.0001〜0.05モル倍である。
【0045】
本工程においては、配位子として3級リン化合物を用いた場合、一般的に、高収率が達成される傾向にある。
【0046】
3級リン化合物としては、特に限定されないが、例えばトリフェニルホスフィン、トリオルトトリルホスフィン、ジフェニルホスフィノフェロセン、トリn−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−sec−ブチルホスフィン、トリtert−ブチルホスフィン、1、1‘−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)ペンタンなどを挙げることができる。また、このような3級リン化合物は既に金属触媒に配位した形態、すなわち金属錯体であってもよい。
【0047】
3級リン化合物の使用量は、パラジウム化合物のパラジウム1原子に対し、通常0.01〜20モル倍、好ましくは0.5〜10.0モル倍である。
【0048】
本反応においては、副生する酸を中和するために塩基が使用される。塩基としては無機塩基、有機塩基のいずれを用いてもよい。
【0049】
無機塩基としては例えば、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウムなどの酢酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムなどの炭酸水素塩、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどの硫酸塩、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素リチウムなどの硫酸水素塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのリン酸塩、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシリチウムなどのtert−ブトキシ塩などが挙げられる。
【0050】
有機塩基としては、通常3級アミンが用いられる。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジンを挙げることができる。
【0051】
好ましい塩基は無機塩基であり、さらに好ましくはtert−ブトキシ塩である。
【0052】
塩基の使用量は、化合物(3)に対する理論量が4.0モル倍であるため、化合物(3)に対して4.0モル倍以上であれば特に制限は無いが、好ましくは4.0〜40.0モル倍、さらに好ましくは4.0〜20.0モル倍である。
【0053】
反応に使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA),ヘキサメチルホスフォラストリアミド(HMPT)などのリン酸アミド系溶媒が挙げられる。これらの中で好ましいのは、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒であり、さらに好ましくは炭化水素系溶媒である。なお、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0054】
本反応は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。この際、常圧であっても加圧下であってもよい。
【0055】
これら、各化合物の添加順序は特に限定されず、各化合物を任意の順序で反応器に添加してよい。また、第3級リン化合物を使用する場合、パラジウム化合物と第3級リン化合物をあらかじめ混合し、その後その他の化合物を任意の順序で添加してもよい。
【0056】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常20〜250℃であり、このましくは20〜180℃である。
【0057】
反応時間は、反応温度、使用される第VIII族遷移金属触媒の使用量によっても異なるが、通常30分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0058】
本工程で生成した式(5)で表わされるN,N−置換アミノ芳香族化合物は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒から抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。
【0059】
かくして得られた化合物(5)は、酸化反応を行うことで、式(6):
【0060】
【化14】

または式(7):
【0061】
【化15】

で表わされる近赤外吸収色素化合物に変換される。ここで近赤外吸収色素化合物とは、近赤外領域の光を吸収する性質を有する化合物のことを言い、具体的には700〜1100nmの領域に極大吸収波長があり、そのモル吸光係数が数万から数10万あるもののことである。
【0062】
式(6)および(7)中、アニオンXとしては、特に限定されず、例えば過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド陰イオンなどが挙げられる。
【0063】
酸化する方法としては、例えばUS3637769、US3709830、US3251881、特開2003−55643、特開平5−98243等に公開された方法が挙げられる。例えば、式(5)で表わされる化合物をアセトン、アセトニトリル、メタノール等の有機溶媒中に溶解し、ここにAgXで表わされる化合物を添加することにより得られる。
【実施例】
【0064】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)N,N−ジブチルアミノ−4−クロロベンゼン
臭化n−ブチル48.5g、4−クロロアニリン15.0g、炭酸カリウム48.9g、NMP90mlからなる混合溶液を、100℃で25時間反応させた。反応終了後、水200ml、トルエン150mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。水相にトルエン70mlを加えて再抽出を行った。トルエン相合わせ、水洗(200ml)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを減圧留去した。残渣を減圧蒸留し、表題化合物を25.18g(89%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.94(t,6H,J=7.3Hz),1.28−1.38(m,4H),1.49−1.57(m,4H),3.22(t,4H,J=7.3Hz),6.53(d,2H,J=9.0Hz),7.10(d,2H,J=9.0Hz)
【0066】
(実施例2)N,N−ジブチルアミノ−4−ブロモベンゼン
臭化n−ブチル29.05g、4−ブロモアニリン7.3g、炭酸カリウム30.2g、DMF50mlからなる混合溶液を、80℃で24時間反応させた。反応終了後、水150ml、トルエン150mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。トルエン相を水洗(50ml×2)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を8.3g(69%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.94(t,6H,J=7.3Hz),1.28−1.37(m,4H),1.49−1.57(m,4H),3.22−3.27(m,4H),6.47−6.51(m,2H),7.22−7.26(m,2H)
【0067】
(実施例3)N,N−ジブチルアミノ−4−ブロモベンゼン
臭化n−ブチル4.12g、4−ブロモアニリン1.73g、炭酸カリウム4.14g、N−メチルピロリドン30mlからなる混合溶液を、100℃で48時間反応させた。反応終了後、水50ml、トルエン50mlを加え、反応生成物をトルエンで抽出した。トルエン相を水洗(50ml×2)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を2.64g(93%)得た。
【0068】
(実施例4)N,N−ジブチルアミノ−4−ヨードベンゼン
臭化n−ブチル18.84g、4−ヨードアニリン10.01g、炭酸カリウム13.91g、N−メチルピロリドン120mlからなる混合溶液を、100℃で48時間反応させた。反応終了後、水150ml、トルエン150mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。トルエン相を水洗(50ml×2)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを一部減圧留去した(74.84g)。ここに濃塩酸4.8gを加え、析出した固体をろ取した。固体をトルエン100ml、水100ml混合液に加え、水酸化ナトリウム水溶液にてpH=10.0に調整し、トルエン相を分離した。このトルエン相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を7.84g(52%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.93(t,6H,J=7.3Hz),1.28−1.35(m,4H),1.46−1.57(m,4H),3.22−3.27(m,4H),6.51(d,2H,J=8.8Hz),7.46(m,2H,J=8.8Hz)
【0069】
(実施例5)N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−フェニレンジアミン
1、4−フェニレンジアミン0.95mmol(0.103g)、実施例2で得られたN,N−ジブチルアミノ−4−ブロモベンゼン4.1mmol(1.152g)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.03mmol(16mg)、トリ(tert−ブチル)ホスフィン0.10mmol(21mg)、tert−ブトキシナトリウム4.42mmol(0.425g)、トルエン10ml混合溶液を窒素下、100℃で6時間反応させた。
【0070】
反応終了後、水20ml、トルエン10mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。トルエン相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を0.752g(86%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.94(t,24H,J=7.3Hz),1.29−1.38(m,16H),1.46−1.59(m,16H),3.22(br,16H),6.49−6.66(m,20H)
【0071】
(実施例6)N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−フェニレンジアミン
1、4−フェニレンジアミン0.5mmol(0.06g)、実施例4で得られたN,N−ジブチルアミノ−4−ヨードベンゼン2.2mmol(0.73g)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.022mmol(13mg)、1、1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン0.043mmol(21mg)、tert−ブトキシナトリウム5.8mmol(0.56g)、トルエン5ml混合溶液を窒素下、100℃で24時間反応させた。
【0072】
反応終了後、水10ml、トルエン10mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。トルエン相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を0.43g(91%)得た。
【0073】
(実施例7)N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−フェニレンジアミン
1、4−フェニレンジアミン1.0mmol(0.11g)、実施例1で得られたN,N−ジブチルアミノ−4−クロロベンゼン4.4mmol(1.06g)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.04mmol(23mg)、トリtert−ブチルホスフィン0.08mmol(17mg)、tert−ブトキシナトリウム5.6mmol(0.54g)、トルエン8ml混合溶液を窒素下、100℃で14時間反応させた。
【0074】
反応終了後、水10ml、トルエン10mlを加え、反応生成物をトルエン抽出した。トルエン相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、トルエンを減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにより単離精製し、表題化合物を0.28g(30%)得た。
【0075】
(実施例8)N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−ベンゾキノンビス(イモニウムパークロレート)
実施例5で得られたN,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−フェニレンジアミン0.25mmol(0.23g)/アセトン5ml溶液に、過塩素酸銀0.53mmol(0.11g)/アセトン5ml溶液を添加した。室温で1時間攪拌後、析出した金属銀をろ別した。母液を減圧留去し、表題化合物を黒色結晶として得た(0.280g)。
【0076】
(実施例9)N,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−ベンゾキノンビス(イモニウムヘキサフルオロアンチモン酸)
実施例5で得られたN,N,N’,N’−テトラキス(4−ジブチルアミノフェニル)−4−フェニレンジアミン0.25mmol(0.23g)/アセトン5ml溶液に、ヘキサフルオロアンチモン酸銀0.53mmol(0.19g)/アセトン5ml溶液を添加した。室温で1時間攪拌後、析出した金属銀をろ別した。母液を減圧留去し、表題化合物を黒色結晶として得た(0.33g)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1):
【化1】

(式中、Arは炭素数6〜20の置換または無置換の芳香族環を表わす。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表わす。)で表わされる芳香族アミノ化合物を、一般式(2):
RX (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表わす。Xはハロゲン原子またはスルホニルオキシ基を表わす。)で表わされる化合物と反応させることにより、一般式(3):
【化2】

(式中、Ar、X、Rは前記に同じ。)で表わされるN,N−置換アミノ芳香族化合物とする工程、
(b)上記一般式(3)で表されるN,N−置換アミノ芳香族化合物を、第VIII族遷移金属触媒存在下、一般式(4);
【化3】

(式中、Arは、炭素数6〜20の置換または無置換の芳香族環を表わす。)
で表わされるジアミノ化合物と反応させる工程
を順次行うことを特徴とする一般式(5):
【化4】

(式中、Ar、Ar、Rは前記に同じ。)で表わされるN,N,N’,N’−テトラキス(N,N−置換アミノアリール)ジアミノ芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
がハロゲン原子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
がハロゲン原子である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
第VIII族遷移金属触媒が、パラジウム触媒である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
Arがベンゼン環である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(3)で表わされる化合物と一般式(4)で表わされる化合物を反応させる工程において、3級リン化合物を用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
Rがアルキル基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
Rがn-ブチル基である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(4)で表わされる化合物が、1,4−フェニレンジアミンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造される前記一般式(5)で表わされる化合物を酸化することを特徴とする近赤外吸収色素化合物の製造方法。
【請求項11】
前記近赤外吸収色素化合物が、下記一般式(6):
【化5】

(式中、Ar、Ar、Rは前記に同じ。Xはアニオンを表わす。)で表わされる近赤外吸収色素化合物であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記近赤外吸収色素化合物が、下記一般式(7):
【化6】

(式中、Ar、Ar、R、Xは前記に同じ。)で表わされる近赤外吸収色素化合物であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−137894(P2009−137894A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316620(P2007−316620)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】