説明

NDフィルタ、NDフィルタの製造方法、および光量絞り装置

【課題】基体の反りやクラック等の発生を抑制することが可能となるNDフィルタ、NDフィルタの製造方法、および光量絞り装置を提供する。
【解決手段】透過光量を調節するNDフィルタ11であって、該NDフィルタは樹脂による基体上に積層膜を備え、該基体に連続または不連状のリブ13が形成された構成とする。
このリブ13は、基体の一方の面に形成された凸部と、該凸部に対応させて前記基体の他方の面に形成された凹部によって構成することができる。
また、基体に塗布あるいは印刷により形成された凸部によって構成することができる。
また、NDフィルタの縁部を折り曲げて形成された凸部によって構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NDフィルタ、NDフィルタの製造方法、および光量絞り装置に関し、特にカメラ等の撮影装置や光学機器等に使用されるNDフィルタとそのNDフィルタを用いた絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器には、その光量調節のために絞り装置が組み込まれている。
そして、この絞り装置においては、通常、絞り羽根を用いて光量調節することが行われている。
しかし、特に、高輝度被写体に対しては、その絞り径が小さくなり過ぎると回折による解像力の劣化が生じる。
そのため、絞り径に制限を加え、それと同時に光量調節部材としてNeutral Density フィルタ(以下NDフィルタと略す)等を用いて通過光量を制限し、これにより画質の低下を防止している。
【0003】
具体的には、絞り羽根の一部に絞り羽根とは別部材であるNDフィルタを接着剤で装着するように構成することで、被写体が高輝度の時には絞り径を余り小さくなるまで絞り込まずに絞り開口を一定の大きさに維持する。そして、その代わりにNDフィルタを光軸上に位置させるようにして、通過光量を制限している。更には、このNDフィルタとして、その光量調節機能に勾配(以下、濃度勾配と呼ぶ)を有しているものを用い、このフィルタを光軸上で移動させることにより、更なる光量調節を行うこともある。
また、NDフィルタを絞り羽根に装着しないで、独立して光学的作用を持たせて構成した絞り装置も種々提案されている。
【0004】
上記したような光量調節装置における光量調節部材としてのNDフィルタには、現在、真空蒸着等により多層膜を形成したものが、一般的に用いられている。例えば、特許文献1に示されているように、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂フィルム上に、金属膜又は誘電体膜を真空蒸着等により多層成膜したものが用いられている。
また、基材としてガラスの代わりに樹脂を用いることで軽量化され、割れにくく、低コスト化されている。
また、成膜方法としては、例えば、特許文献2、3のように、写真印刷や樹脂フィルム中に光を吸収する染料や顔料を混ぜ、練り込んで作ることも可能であるが、蒸着法にて光吸収多層膜を形成して基板表面の反射を防止するようにしたものも提案されている。
また、特許文献4では、蒸着法にてNDフィルタを作製する際に熱収縮の影響を少なくするために、NDフィルタの方向と樹脂フィルムの延伸方向を規定したNDフィルタが提案されている。
【特許文献1】特開平10−133254号公報
【特許文献2】特開平5−173004号公報
【特許文献3】特開平10−96971号公報
【特許文献4】特開2005−017986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように蒸着法を用いてNDフィルタを成膜する際には、高い基板温度で成膜された後に冷却されることから基板に反りが発生し、このような反りのあるものを光量調整部材として使用した場合、画像劣化の原因となる。すなわち、蒸着法により樹脂基板(基体)上に多層膜を成膜する場合においては、基板と多層膜との密着性を上げるために、蒸着装置内に設置したハロゲンヒーターなどで基板が加熱される。
さらに、基板に堆積される蒸着物質の持つ熱や、蒸着材料を加熱する蒸着源からの輻射熱により基板温度が上昇する。
このように基板温度が高い状態で成膜された後に、蒸着装置から取り出されて、冷却される。
この冷却により基板は収縮するが、樹脂基板に対して金属や誘電体からなる多層膜では熱膨張率に差があるため、その収縮量が異なり基板に反りが発生してしまうこととなる。
この基板の反りは、光量調整部材として使用するためのサイズにカットした後においても、残留してしまう。
こうして得られたNDフィルタを絞り羽根に接着して光量調整部材として使用すると、特に絞り口径が大きい場合に反り量が大きく画像劣化の原因となる。
【0006】
また、樹脂基板は透過光の分散を少なくするために、100μm程度のごく薄い物が使用されている。
このため、撓みやすく切断や接着などの後工程での取り扱い時の作業性が悪く、屈曲が繰り返されることで蒸着膜にクラックを発生する。
さらに、近年では、撮像素子の感度の上昇に伴いNDフィルタの濃度を濃くして、光の透過率をさらに低下させる傾向にある。
この高濃度化するためには蒸着膜を厚くする必要があることから、基板温度のさらなる高温化を引き起こす。
以上のように、基板の熱による伸縮量はさらに大きくなるため、基板の反り量はより一層大きくなり、さらには、蒸着直後において蒸着膜にクラックやしわが発生することとなる。
なお、上記した特許文献4のものでは、NDフィルタの方向と樹脂フィルムの延伸方向を規定し、NDフィルタを作製する際に熱収縮の影響を少なくする配慮がなされている。
しかしながら、これは熱収縮による寸法ずれを抑制するものであり、上記した基板温度の変化に伴う基板の反りやクラック等に対して配慮したものではない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、基体の反りやクラック等の発生を抑制することが可能となるNDフィルタ、NDフィルタの製造方法、および光量絞り装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、つぎのように構成したNDフィルタ、NDフィルタの製造方法、および光量絞り装置を提供するものである。
すなわち、本発明のNDフィルタは、透過光量を調節するNDフィルタであって、該NDフィルタは樹脂による基体上に積層膜を備え、該基体に連続または不連状のリブが形成されていることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、前記リブが塑性加工により形成されていることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、前記塑性加工によるリブが、前記基体上に積層膜を形成する前に、前記基体に形成されることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、前記塑性加工によるリブが、前記基体の一方の面に形成された凸部と、該凸部に対応させて前記基体の他方の面に形成された凹部によって構成されていることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、前記リブが、前記基体に塗布あるいは印刷により形成された凸部によって構成されていることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、前記リブが、前記NDフィルタの縁部を折り曲げて形成された凸部によって構成されていることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタは、均一な透過率に設定された領域、あるいは透過率が連続的に変化する透過率勾配の領域を有し、前記透過率のうち最も低い透過率の領域における可視光透過率が、10%以下であることを特徴としている。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、つぎの(1)および(2)の工程を有することを特徴としている。
(1)樹脂による基体に、連続または不連状のリブを塑性加工によって形成する工程。
(2)前記リブの形成された基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、つぎの(1)および(2)の工程を有することを特徴としている。
(1)前記基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程。
(2)前記工程によって積層膜を形成した後、前記基体に塗布あるいは印刷によって凸部からなる連続または不連状のリブを形成する工程。
また、本発明のNDフィルタの製造方法は、透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、つぎの(1)〜(3)の工程を有することを特徴としている。
(1)前記基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程。
(2)前記工程によって積層膜を形成した後、NDフィルタを外形プレス抜きする工程。
(3)前記外形プレス抜きされたNDフィルタの縁部を折り曲げて、該NDフィルタに連続または不連状のリブを形成する工程。
また、本発明の光量絞り装置は、上記いずれかのNDフィルタまたは上記いずれかのNDフィルタの製造方法によって製造されたNDフィルタを備えた光量調節部材を備えた光量絞り装置をつぎのように構成したことを特徴としている。
この光量絞り装置は、前記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節される光量絞り装置であって、前記光量絞り装置の光束の透過しない領域に前記NDフィルタのリブが位置するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基体の反りやクラック等の発生を抑制することが可能となるNDフィルタ、NDフィルタの製造方法を実現することができる。
また、上記NDフィルタを備えた、画像劣化を抑制することが可能となる光量絞り装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態におけるNDフィルタについて、図を用いて従来のNDフィルタと対比しつつ説明する。
図1に、本実施形態におけるNDフィルタの模式図を示す。
また、図2に従来のNDフィルタの模式図を示す。
まず、従来のNDフィルタが光量絞り装置にどのような形態で用いられるかについて説明する。
図2において、21NDフィルタ、22は絞り羽根である。
図2に示すように、NDフィルタ21は光学系を通過する光量を制限するために絞り羽根22の一部に装着されている。
ここで、NDフィルタ基板としてガラスを用いないで樹脂フィルムを使用する主たる理由としては、前述したように樹脂フィルムはガラスに比べ薄くても割れにくく、光量絞り装置を薄くすることができ、軽くすることが可能となるからである。また、樹脂フィルムによるとコストダウンが可能となる。
【0011】
しかしながら、このような樹脂フィルムによるフィルタ基板上に、蒸着法によりNDフィルタを成膜する場合には、前述したように、高い基板温度で成膜された後に冷却されることから、基板に反りが発生することとなる。
そのため、本実施の形態では、基材である樹脂フィルムに連続状または不連状のリブを設けることによって、基板の反りやクラック等の発生の抑制を図るようにしたものである。
図1に示される本実施形態のNDフィルタでは、樹脂フィルムに連続状のリブが設けられたNDフィルタが絞り羽根に接着されたものが示されている。
図1において、11NDフィルタ、12は絞り羽根、13はリブ、14は接着剤である。
本実施の形態においては、上記したように、NDフィルタの作製に際し、樹脂フィルムにリブを設けるようにしているが、このリブの形成方法や形状は特に限定されるものではない。
例えば、図5(a)に示されるように、樹脂フィルムを加熱プレスし、樹脂フィルムに凹凸部によるリブを形成するようにしてもよい。
これにより、リブの形状が片面は凹形状、反対面は凸形状となり、蒸着時の熱による伸縮を吸収できる構造となり、伸縮による蒸着膜のクラックを防止することが可能となる。
また、図5(b)に示されるように、UV硬化樹脂を塗布あるいは印刷して円弧状の凸部によるリブを形成するようにしてもよい。
このように凸部を塗布や印刷により形成することで、リブの材質を選択することができ、また厚くしてより強固な凸部を形成することが可能となる。
また、凸部の形成時において、基体や蒸着膜に塑性変形などによる歪を与えないため、フィルタの平面度を改善することが可能となる。
また、図5(c)に示されるように、NDフィルタの最終形状にカットした後に、折り曲げ加工を行って凸部を形成するようにしてもよい。
【0012】
これによれば、凸部によるリブをNDフィルタの縁部を折り曲げて形成することができ、凸部の占めるスペース(体積)を最小にしつつ、基板の反りやクラック等の発生の抑制を図ることが可能となる。
【0013】
つぎに、このような本実施の形態のNDフィルタの使用形態について説明する。
図3に、上記本実施の形態におけるNDフィルタを用いた光量調節装置を組込んだ撮影装置の構成を示す。
図3において、36A,36B,36C,36Dは撮影光学系36を構成するレンズ、37は固体撮像素子、38はローパスフィルタである。
また、31から34は光量絞り装置、31はNDフィルタである。
また、32と33は対向的に移動する絞り羽根であり、2枚の絞り羽根により略菱形の開口が形成される。
NDフィルタは、通常、絞り羽根に接着されている。34は絞り羽根支持板である。
【0014】
つぎに、本実施の形態のNDフィルタにおいて、採り得る透過率パターンについて説明する。
図4(a)に、上記光量調節装置において羽根が互い違いに動作することにより開口部Cの大きさを制御している状態を示す。
図4(a)において、32、33は絞り駆動する羽根であり、この場合には、32の羽根にNDフィルタ31が接着剤により固定されており、33はNDフィルタが貼られていないもう片方の羽根である。
本実施の形態のNDフィルタでは、図4(b)〜(d)に示す様に、いくつかの透過率分布パターンを採ることができ、要求される仕様により使い分けられる。例えば、図4(b)では位置0〜X3まで同じ透過率とされている。
また、図4(c)では0〜X3に向かって段階的に透過率が変化している。
また、図4(d)では0〜X3に向かって連続的に透過率が変化している。このようなパターンは一般に用いられるものであり、フィルタ面内で透過率分布を形成するには蒸着マスクを用いて積層膜の積層数を変えたり、位置によって膜厚を変える方法がとられる。
【0015】
所定の透過率は、透明樹脂フィルムの片面または両面に多層の誘電体や金属膜を真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、スパッタ法などで成膜することにより得られ、例えば図7に示すような積層膜の膜構造を採ることができる。
透明樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、等が用いられる。あるいは、ポリエチレンナフタレートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、等が用いられる。
【0016】
つぎに、本実施の形態におけるNDフィルタを作製する方法の一例について説明する。
ここでは、図4(d)のような連続的に透過率が変化するNDフィルタを作製する方法、あるいは蒸着前に基材にリブを形成したケースにについて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(1)まず、リブを形成した基材に蒸着治具に設けられた基準ピンをはめ込むための基準穴部を設ける。
(2)基準穴部を図8に示す蒸着治具50の基準ピンに嵌め込んで、基材90を蒸着治具50に固定し、さらに蒸着パターン形成用マスク51をセットする。
(3)蒸着治具50を蒸着装置40にセットし図7の積層膜を蒸着する。
このとき必要な透過率は積層膜の膜厚で調整する。最表層の蒸着時には蒸着パターン形成用マスクを外して、1/4λ λ:540nmの条件で全面一定膜厚に成膜する。
(4)最表層の成膜が完了したら蒸着装置から取り出す。
取り出された状態は図9(a)の状態になる。
(5)NDフィルタを絞り羽根に固定する基準位置と濃度境界部の距離を確認して図9(b)のように外形プレス抜きを行う。
(6)プレス抜きされたNDフィルタを張り付け位置を確認しながら図1のように絞り羽根に接着する。
以上が、本実施の形態におけるNDフィルタの製造工程の概略である。
【0017】
本実施の形態のNDフィルタによれば、リブを設けない基材を用いて作製した従来例のNDフィルタと比べ、反り量を小さくすることができる。
また、本実施の形態のNDフィルタによれば、蒸着膜を厚く形成することができ、より高濃度のNDフィルタを作製する際にも、NDフィルタの反り量を少なくすることが可能となる。
例えば、可視光透過率が10%以下のフィルタを作成することができ、撮像機器の高画質化が可能となる。
特に、上記したように蒸着前にリブを図5(a)のように形成したものでは、蒸着膜を厚くして透過率を低くしても、しわやクラックの発生を抑えることが可能となる。
また、本実施の形態のNDフィルタを用いて光量絞り装置を作製し、その光量絞り装置を撮影装置に組み込むことで、高画質な撮影装置を提供することができる。例えば、本実施の形態のNDフィルタを撮影装置に組み込むに際しては、フィルタに形成されたリブ(凸部)は光束の透過しない領域に位置するように構成することで、リブ(凸部)による画像の乱れを防止することができる。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこのような実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1においては、樹脂フィルムを加熱プレスして図5(a)に示す凹凸形状のリブを形成した。
樹脂フィルムとしてはNDフィルタとして一般的に利用される厚み75μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)を使用した。
リブの形成は図6に示すプレス型を用いた。プレス型には凹凸形状のリブを形成するため、凸部を設けた上型61と凹部を設けた下型62からなり、凹凸の高さは0.3mmに加工してあるものを用いた。
リブの形成に際し、まずプレス型は100℃に加熱し、樹脂フィルム80をプレス型61、62の間にセット後、プレス型で挟み込み圧力をかける。
そして、プレス型を開き凸部が形成された樹脂フィルム80を取り出す。
こうして得られた樹脂フィルム80を基材90として、NDフィルタを作製した。
【0019】
本実施例においては最高濃度部の透過率が6.3%で連続的に透過率が変化するNDフィルタを以下の手順で作製した。
(1)まず、樹脂フィルムに凸部を設けた基材90に蒸着治具に設けられた基準ピンをはめ込むための基準穴部を設けた。
(2)基準穴部を蒸着治具50の基準ピンに嵌め込んで、基材90を蒸着治具に固定し、さらに蒸着パターン形成用マスク51をセットした。
(3)蒸着治具を蒸着装置40にセットし図7に示す9層構成の積層膜を蒸着した。このとき基板加熱温度は110℃に設定し、積層膜はAl23とTi23の交互層に最表層としてMgF2を成膜した。
このとき、最高濃度部の透過率が6.3%になるように各層の膜厚を設定した。また、最表層となるMgF2の蒸着時には蒸着パターン形成用マスクを外して、1λ/4 λ:540nmの条件で全面一定膜厚に成膜した。
(4)最表層の成膜が完了したら蒸着装置から取り出した。取り出された状態は図9(a)の状態になる。
(5)NDフィルタを絞り羽根に固定する基準位置を確認して、最終寸法に外形プレス抜きを行った。
また同様にして透過率が25.1%、12.6%、10%、3.2%と濃度を変えたNDフィルタを作製した。
【0020】
(比較例)
比較例として、基材90にリブを設けていない樹脂フィルムを使用し、実施例と同様の手順でNDフィルタを作製した。
こうして得られたNDフィルタを絞り羽根に接着し、その反り量を実施例1で得られたNDフィルタと比較した。
このとき作製したNDフィルタの寸法と測定方法を図10に示し、表1にNDフィルタの反り量の比較結果を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、基材に凹凸部によるリブを設けることによりNDフィルタの反り量が改善されている。
また、特に透過率10%以下で本実施例による効果が顕著に現れる。
さらに、比較例として作製したリブ無しのNDフィルタは透過率3.2%でクラックが発生したが、実施例1により作製したNDフィルタでは透過率3.2%でもクラックの発生は見られなかった。
【0023】
[実施例2]
実施例2においては、蒸着膜の形成後に紫外線硬化型アクリル系樹脂をディスペンサーを用いて塗布することにより、図5(b)の形状のリブを形成した。
なお本実施例においてはアクリル系樹脂を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂の他、セラミックや金属の厚膜ペーストなども使用可能である。
リブの形成方法も、塗布の他にスプレー、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などが利用できる。
【0024】
本実施例においては、NDフィルタを以下の手順で作製した。
(1)まず、樹脂フィルムに蒸着治具に設けられた基準ピンをはめ込むための基準穴部を設け基材90を作製した。
(2)基準穴部を蒸着治具50の基準ピンに嵌め込んで、基材90を蒸着治具に固定し、さらに蒸着パターン形成用マスク51をセットした。
(3)蒸着治具を蒸着装置40にセットし図7に示す9層構成の積層膜を蒸着した。その際、基板加熱温度は110℃に設定し、積層膜はAl23とTi23の交互層に最表層としてMgF2を成膜した。
このとき、最高濃度部の透過率が6.3%になるように各層の膜厚を設定した。また、最表層となるMgF2の蒸着時には蒸着パターン形成用マスクを外して、1λ/4 λ:540nmの条件で全面一定膜厚に成膜した。
(4)最表層の成膜が完了したら蒸着装置から取り出した。
(5)取り出した基材90の凸部を形成する位置に、紫外線硬化型アクリル樹脂をディスペンサーを用いて塗布した。
その後、所定の硬化条件にてUV照射を行いアクリル樹脂を硬化させた。このとき形成された凸部は幅0.7mm、高さ0.5mmであった。
(6)NDフィルタを絞り羽根に固定する基準位置を確認して、最終寸法に外形プレス抜きを行った。
【0025】
本実施例においては、基材と別部材によってリブを形成するので、凸部の厚みを厚くすることができ、より強固なリブを形成することが可能となる。
このようにして得られたNDフィルタを絞り羽根に接着し、その反り量を実施例1と比較したところ、表2に示すようにさらに小さくすることができた。
【0026】
【表2】

【0027】
以上の実施例1及び実施例2で作製したNDフィルタを、デジタルカメラの光量絞り装置の光量調整部材として使用したところ、リブ(凸部)の形成されていないNDフィルタを使用したものに比べ良好な画像が得られた。
また、基材となる樹脂フィルムは機械的強度を増すために一方向に延伸をかける1軸延伸加工や二方向に延伸をかける2軸延伸加工が施されることが多いが、このようなフィルムは加熱時、延伸方向の収縮が大きいので延伸方向に反り易い。
2軸延伸であれば一般的にはロール方向の延伸力が強く主延伸となり、主延伸の方向の方がその直交する方向より熱収縮が大きくなる。
よって本発明によるリブ形成の方向も延伸方向、2軸延伸であれば主延伸方向に近い方がより大きな効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態におけるNDフィルタの模式図。
【図2】従来例におけるNDフィルタの模式図。
【図3】本発明の実施の形態におけるNDフィルタを用いた光量調節装置を組込んだ撮影装置の構成を示す図。
【図4】本発明の実施の形態におけるNDフィルタの透過率パターンを説明する図。
【図5】本発明の実施の形態におけるNDフィルタに設けられるリブの構成例を示す図。
【図6】本発明の実施例1におけるNDフィルタにリブを形成する際に用いるプレス型を説明する図。
【図7】本発明の実施の形態におけるNDフィルタにおける積層膜の膜構造を示す図。
【図8】本発明の実施の形態及び実施例におけるNDフィルタを形成する際に用いられる蒸着装置および蒸着治具の概略図。
【図9】本発明の実施の形態及び実施例におけるNDフィルタの作製方法を説明する概略図。
【図10】本発明の実施例1と比較例におけるNDフィルタの反り量比較を説明する図。
【符号の説明】
【0029】
11:NDフィルタ
12:絞り羽根
13:リブ
14:接着剤
36:撮影光学系
36A,36B、36C、36D:レンズ
32、33:絞り羽根
34:絞り羽根支持板
37:固体撮像素子
38:ローパスフィルタ
40:蒸着装置
41:回転ドーム
42:蒸着源
50:蒸着治具
51:蒸着パターン形成用マスク
61、62:プレス型
80:樹脂フィルム
90:基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過光量を調節するNDフィルタであって、該NDフィルタは樹脂による基体上に積層膜を備え、該基体に連続または不連状のリブが形成されていることを特徴とするNDフィルタ。
【請求項2】
前記リブは、塑性加工により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタ。
【請求項3】
前記塑性加工によるリブは、前記基体上に積層膜を形成する前に、前記基体に形成されることを特徴とする請求項2に記載のNDフィルタ。
【請求項4】
前記塑性加工によるリブは、前記基体の一方の面に形成された凸部と、該凸部に対応させて前記基体の他方の面に形成された凹部によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のNDフィルタ。
【請求項5】
前記リブは、前記基体に塗布あるいは印刷により形成された凸部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタ。
【請求項6】
前記リブは、前記NDフィルタの縁部を折り曲げて形成された凸部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のNDフィルタ。
【請求項7】
前記NDフィルタは、均一な透過率に設定された領域、あるいは透過率が連続的に変化する透過率勾配の領域を有し、
前記透過率のうち最も低い透過率の領域における可視光透過率が、10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のNDフィルタ。
【請求項8】
透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、
樹脂による基体に、連続または不連状のリブを塑性加工によって形成する工程と、
前記リブの形成された基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
【請求項9】
透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、
前記基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程と、
前記工程によって積層膜を形成した後、前記基体に塗布あるいは印刷によって凸部からなる連続または不連状のリブを形成する工程と、
を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
【請求項10】
透過光量を調節するNDフィルタの製造方法であって、
前記基体上に、蒸着によって光吸収層と誘電体層からなる積層膜を形成する工程と、
前記工程によって積層膜を形成した後、NDフィルタを外形プレス抜きする工程と、
前記外形プレス抜きされたNDフィルタの縁部を折り曲げて、該NDフィルタに連続または不連状のリブを形成する工程と、
を有することを特徴とするNDフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のNDフィルタまたは請求項8〜10のいずれか1項に記載のNDフィルタの製造方法によって製造されたNDフィルタを備えた光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、
前記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節される光量絞り装置であって、
前記光量絞り装置の光束の透過しない領域に前記NDフィルタのリブが位置するように構成されていることを特徴とする光量絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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