Oリングの分離供給装置とその装置を用いたOリングの組付装置およびOリングの組付方法
【目的】 Oリングを一つずつ確実に分離して整列供給する。
【構成】 送りねじ13と下部ガイドロッド15側のガイドローラ22との間の外周面間距離LをOリングRの自由長状態での内径寸法に合わせる。送りねじ13を回転させるとともに送りねじに圧接している上部ガイドローラ14を同期回転させ、未整列のOリングRを順次送りねじ13のねじ溝17に嵌合させる。送りねじ13の螺進作用により推力が与えられるOリングRの下部にガイドローラ22で抵抗を与えて張力を加え、OリングR同士を前後に引き離してそのからまりをときほぐす。分離したOリングRは■〜■の順で前方に送り出される。
【構成】 送りねじ13と下部ガイドロッド15側のガイドローラ22との間の外周面間距離LをOリングRの自由長状態での内径寸法に合わせる。送りねじ13を回転させるとともに送りねじに圧接している上部ガイドローラ14を同期回転させ、未整列のOリングRを順次送りねじ13のねじ溝17に嵌合させる。送りねじ13の螺進作用により推力が与えられるOリングRの下部にガイドローラ22で抵抗を与えて張力を加え、OリングR同士を前後に引き離してそのからまりをときほぐす。分離したOリングRは
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一まとめにされたOリングを一つずつ分離して供給する装置と、その装置を用いてOリングを相手側部品に組み付ける装置、およびそのOリングを組み付ける方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のOリングの分離組付装置として図16に示す構造のものがある。図16では、マガジンシャフト101の小径軸部102に多数のOリングRを予め整列してセットしておき、そのマガジンシャフト101の下端を相手側部品103に嵌合させる一方、最下段のOリングR1とその上のOリングRとの間に爪部材104を挿入して最下段のOリングR1を分離させ、爪部材104を押し下げながらその最下段のOリングR1をテーパ部105に沿って徐々に拡径させることにより、最終的にはその最下段のOリングR1がOリング装着溝106に嵌合することになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の構造では、マガジンシャフト101上に多数のOリングRを積み重ねてストックするようにしているため、特に大径のOリングの場合には隣接する上下のOリングR,R同士がからまりやすく、爪部材104の挿入だけではそのからまりをときほぐすことができずに、そのまま二つ一組としてOリングRが組み付けられてしまうことになる。その結果、単にOリングRの誤組み付けが発生するだけでなく、Oリング切れや傷付き等が発生し、後工程でのトラブルの原因となって好ましくない。また、対象となるOリングRのサイズが異なればそれに応じてマガジンシャフト101を交換しなければならず、設備の汎用性の面で問題を残している。
【0004】本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、一まとめにされた未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給することができ、しかもそのOリングを相手側部品に確実に一つずつ組み付けることができるようにしたOリングの分離供給装置と組付装置および組付方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給する装置において、回転駆動手段によって回転駆動されるとともに外周面に螺旋状のねじ溝が形成され、かつその根元部側に未整列の多数のOリングが挿入されて、前記ねじ溝に嵌合したOリングを回転駆動に伴うねじの螺進作用によって前方に送り出す片持ち式の送りねじと、前記送りねじの上方に前半部が該送りねじの外周面に接触するようにその送りねじと平行に配置され、送りねじと同期回転することにより前記多数のOリングを一つずつ分離して送りねじのねじ溝に嵌合させる上部ガイドローラと、前記送りねじの下方に該送りねじとともにOリングの内周面に接触するようにその送りねじと平行に配置されるとともに、送りねじに対し接近離間可能であって、その送りねじにより前方に送り出されるOリングに張力を与えるための回転可能なガイドローラが長手方向に沿って複数個設けられている下部ガイドロッドとを備えていることを特徴としている。
【0006】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ねじ溝の深さをH、溝幅をW、Oリングの線径をDとしてとき、H≦D≦1.2HおよびW≦D≦1.2Wとなるように設定されていることを特徴としている。
【0007】請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の分離供給装置と、その分離供給装置の送りねじの先端から自重落下するOリングを受け取りステージで水平姿勢にて受け取った上でピッキングステージまで走行するスライドテーブルと、前記ピッキングステージにあるスライドテーブル上のOリングをアーム先端のハンドで把持した上で相手側部品にそのOリングを組み付ける組付ロボットとを備えていることを特徴としている。
【0008】請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記スライドテーブル上には、受け取りステージにて送りねじからOリングを受け取る際にその送りねじから自重落下する直前のOリングの下部を引っ掛ける係止爪が設けられていることを特徴としている。
【0009】請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加えて、前記組付ロボットのハンドは、一対のフィンガーが平行状態のままで接近離間して開閉動作する二指平行移動タイプのものであって、かつOリングの内周面の二箇所を前記フィンガーで外側に押し広げながら偏平リング状に変形させて内径把持方式で把持するものであることを特徴としている。
【0010】請求項6に記載の発明は、請求項5記載の組付装置によりOリングを相手側部品のリング溝に嵌合させて組み付ける方法であって、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて該フィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、Oリングをリング溝に嵌合させることを特徴としている。
【0011】
【作用】請求項1に記載の発明では、送りねじと下部ガイドロッドとに挿入された未整列の多数のOリングは、送りねじの上部側で上部ガイドローラで拘束されていることから、それらのOリングの上部側にねじの螺進作用による推力が与えられればOリングは1つずつねじ溝に嵌合して前方に送り出される。
【0012】その一方、Oリングの下部側では下部ガイドロッドのガイドローラがそのOリングの下部に引っ掛かって抵抗となるために、Oリングの下部は上部側よりも遅れ気味となってOリングに張力が加えられるものの、その張力がある程度高められるとOリングは下部ガイドロッドのガイドローラを乗り越える。このような動作を複数のガイドローラについて何回か繰り返すことにより、仮にOリング同士がからまり合っている場合でもそのからまりを確実にほぐしてOリングを一つずつ分離させることができる。そして、一つずつ分離したOリングはねじの螺進作用により送りねじの先端側まで順次送り出される。
【0013】請求項2に記載の発明では、送りねじのねじ溝の深さと溝幅およびOリングの線径との相互関係を特定の範囲に設定していることにより、Oリングを一つずつ確実にねじ溝に嵌合させることができ、Oリング切れ等を未然に防止できるようになる。
【0014】請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の分離供給装置に、その分離供給されたOリングを受け取るスライドテーブルと、そのスライドテーブル上のOリングをピックアップする組付ロボットを組み合わせたことにより、Oリングの分離供給から整送および相手側部品に対する組み付けまでの完全自動化を実現できるようになる。
【0015】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のスライドテーブルにOリングを引っ掛ける係止爪が設けられていることにより、スライドテーブル上でのOリングの位置精度および安定性が一段と向上することになる。
【0016】請求項5に記載の発明では、二指平行移動タイプのハンドによりOリングを偏平リング状に変形させて把持することにより、組付ロボットの自律動作によりOリングを相手側部品に容易に装着することができるようになる。
【0017】請求項6に記載の発明では、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて相互に接近させた上でフィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、組付ロボットの自律動作のみでOリングを確実に相手側部品のリング溝に装着することができ、装着不良やOリング切れさらには傷等のトラブルの発生を未然に防止できるようになる。
【0018】
【実施例】図2は本発明の一実施例を示す組付装置全体の平面説明図であって、大別して、Oリングの分離供給装置1と、Oリング搬送用のシャトルコンベヤ2、Oリングの組付ロボット3、およびOリングが装着される相手側部品4を搬送するためのワーク搬送コンベヤ5等から構成されている。なお、図2において、6は制御盤、7は操作盤である。
【0019】前記分離供給装置1は、分離供給装置P1と退避位置P2との間で旋回可能であって、後述するように退避位置P2にて一まとめにされた未整列の多数のOリングを受け取った上で、分離供給装置P1にてそれらのOリングを順次一つずつ分離して送り出す。
【0020】前記分離供給装置1から送り出されたOリングはシャトルコンベヤ2のスライドテーブル8の上に自重落下する。シャトルコンベヤ2のスライドテーブル8は、図3に示すようにOリングRの受け取りステージP3とピッキングステージP4との間でロッドレスシリンダ9の作動により往復移動するようになっており、上記のように受け取りステージP3にあるスライドテーブル8の上にOリングRが移載されるとスライドテーブル8はピッキングステージP4まで走行する。
【0021】そして、このピッキングステージP4にあるスライドテーブル8上のOリングRを図2の組付ロボット3のハンド10が把持して、図4に示すようにワーク搬送コンベヤ5上のワークテーブル11に固定されている相手側部品4のリング溝12に対してOリングRを装着することになる。
【0022】次に、前記分離供給装置1の詳細を図1,5に基づいて説明すると、この分離供給装置1は送りねじ13とこの送りねじ13の上下に互いに平行に配置された上部ガイドローラ14および下部ガイドロッド15を中心として構成されている。
【0023】前記送りねじ13はサーボモータ16により片持ち状態で回転駆動されるようになっていて、その外周面には所定のリードで角ねじ状のねじ溝17が螺旋状に形成されている。そして、OリングRの整列供給に先立って、一まとめにされた未整列の多数のOリングRがその送りねじ13の根元部側に挿入されるようになっている。
【0024】一方、前記上部ガイドローラ14は、その前半部の均一直径のストレート部18と根元部側の小径軸部19、およびそれらストレート部18と小径軸部19との間のテーパ部20とにより長尺な段付軸状のものとして形成されている。そして、この上部ガイドローラ14は送りねじ13に対して接近離間可能であると同時に回転可能であって、そのストレート部18の外周面を送りねじ13に圧接させることにより送りねじ13に同期して連れ回りする構造となっている。
【0025】また、前記下部ガイドロッド15は、ロッド本体21に対して回転可能な複数のガイドローラ22が長手方向に沿って所定のピッチで設けられていて、この下部ガイドロッド15もまた前記送りねじ13に対して接近離間可能な構造となっている。そして、前記下部ガイドロッド15は送りねじ13とともに多数のOリングRの内側領域に挿入されており、送りねじ13と下部ガイドロッド15のガイドローラ22がともにOリングRに内接するように、その送りねじ13とガイドローラ22との外周面間距離LがOリングRの自由長状態での内径寸法とほぼ等しくなるように設定されている。
【0026】前記組付ロボット5のアーム23先端に装着されたハンド10は図3,6,7に示すように二指平行移動タイプのものとして構成されていて、ボールねじ24の回転駆動によりガイドロッド25に案内されながら互いに接近離間して開閉動作する一対のフィンガー26を備えている。そして、前記ハンド10は、後述するように一対のフィンガー26でOリングRの内周面を把持面として外方に押し広げながら偏平リング状に変形させていわゆる内径把持方式でOリングRを把持することになる。
【0027】次に以上のように構成された装置の一連の動きについて説明する。
【0028】先ず、分離供給装置1を図2の退避位置P2に位置させた状態で、図1,5の上部ガイドローラ14を送りねじ13に対して上方に移動させるとともに、下部ガイドロッド15を送りねじ13に接近させるべく上方に移動させる。この状態で、予め一まとめにされた未整列の多数のOリングRを送りねじ13および下部ガイドロッド15に挿入してそれらの根元部側にセットする。その後、上部ガイドローラ14のストレート部18が送りねじ13に接触するまで上部ガイドローラ14を下降させる一方、送りねじ13とガイドローラ22との外周面距離L(図1)が対象となるOリングRの自由長状態での内径寸法となるように下部ガイドロッド15を下降させ、その上で分離供給装置1全体を図2の分離供給装置P1に戻す。
【0029】続いて、分離供給装置1の送りねじ13をサーボモータ16により回転駆動させると、この送りねじ13に接触している上部ガイドローラ14も同期回転する。そして、送りねじ13の螺進作用による推力を受けてOリングRが徐々に前方に送り出される一方、上部ガイドローラ14のテーパ部20による整列作用によりOリング同士の重なり合い等が解除されて一列に揃えられ、OリングRの上部側ではそのOリングRが一つずつ分離されて送りねじ13のねじ溝17に嵌合する。このねじ溝17に嵌合したOリングRはなおも送りねじ13の螺進作用によってそのねじ溝17に嵌合したままで前方に送り出される。
【0030】一方、上記のようにOリングRの上部側では送りねじ13によって推力が与えられるのに対して、OリングRの下部側では下部ガイドロッド15によっては推力が与えられないのでその下部側は上部側よりも遅れ気味となり、なおかつガイドローラ22が抵抗となってそのガイドローラ22にOリングRが引っ掛かることになる。
【0031】そして、OリングRの下部側がガイドローラ22に引っ掛かった状態でそのOリングRの上部側に推力が与えられると、OリングRには所定の張力が与えられて長楕円形に変形し、その張力がある程度まで高くなるとOリングRの下部側が初めてガイドローラ22を乗り越えることになる。これにより、例えば送りねじ13の螺進行方向において前後二つのOリングRがその上部側では分離しているにもかかわらずその下部側ではからまり合っている場合に、上記のように一方のOリングRの下部がガイドローラ22を乗り越えることによって両者のからまりが解消される。
【0032】これは、例えば二つのOリングRがからまり合っている場合に、それら二つのOリングRの上部をつまんで互いに逆方向に引っ張ると、そのからまり部位が徐々に下部側に移動して最終的にはそれら二つのOリングRのからまりがスムーズに解消されるという原理に基づく。
【0033】そして、上記のようにOリングRの下部がガイドローラ22を乗り越える際の動きは各ガイドローラ22ごとに何回か繰り返され、各OリングRが送りねじ13の先端に到達するまでには各OリングRは一つずつ確実に分離される。すなわち、特定の一つのOリングRの動きにだけ着目してみると、OリングRは図1に符号■〜■で示す手順で一つずつ確実に分離することになる。
【0034】そののち、送りねじ13の先端まで送られたOリングRは、図3のほか図8,9に示すようにシャトルコンベヤ2の受け取りステージP3で待機しているスライドテーブル8の上に自重落下して移載される。この時、スライドテーブル8上にOリングRが載置されたことを図2のセンサ27が検知すると、そのタイミングで送りねじ13の回転駆動すなわち分離供給装置1からのOリングRの供給が一旦停止する。
【0035】ここで、図8,9に示すように、スライドテーブル8には送りねじ13から送り出されるOリングRの下部に当接する係止爪28が引張コイルスプリング29で付勢された状態で立設されており、したがって送りねじ13によって直接推力が与えられるOリングRの上部側が先にスライドテーブル8上に自重落下する際に、上部側よりも遅れ気味となるOリングRの下部を係止爪28で引っ掛けることにより、そのスライドテーブル8上でのOリングRの位置精度の向上と安定化が図れることになる。
【0036】また、図10に示すように、線径Dが2mmのOリングRの分離供給を行うにあたり、本発明者が送りねじ13のねじ溝17の深さHと溝幅Wの寸法を種々変更して実験を行ったところ、表1に示すような結果を得た。表1から明らかなように、Oリング切れ等のトラブルを招くことなく一つずつ確実にOリングを分離するためには、線径Dと溝の深さHおよび溝幅Wの寸法関係としてH≦D≦1.2H , W≦D≦1.2Wに設定する必要があることが判明した。
【0037】
【表1】
【0038】図3のほか図8,9に示したように、受け取りステージP3にあるスライドテーブル8の上にOリングRが移載されると、スライドテーブル8は図3に示すようにその受け取りステージP3からピッキングステージP4に走行して停止する。スライドテーブル8がピッキングステージP4に位置決めされると、組付ロボット3のハンド10がそのスライドテーブル8上のOリングRを取りにゆく。この時、ワーク搬送コンベヤ5上の組付ステージP5には、図2,4に示すようにワークベース11に固定された相手側部品4が待機している。
【0039】そして、前記組付ロボット3は図3,9に示すようにスライドテーブル8上のOリングRの真上からハンド10を下降させ、それまで閉状態にあった一対のフィンガー26を開くことにより、OリングRを偏平リング状に変形させながら内径把持方式で把持する。この時、スライドテーブル8には図8,9に示すように逃げ溝30が形成されていることから、ハンド10によるOリングRの把持にあたってそのフィンガー26とスライドテーブル8とが干渉することはない。
【0040】前記ハンド10がOリングRを把持すると、組付ロボット3はそのハンド10を図2の組付ステージP5側に移動させて、相手側部品4に対するOリングRの組付作業を実行する。この組付作業は図11〜図1515に示す手順で行われる。
【0041】すなわち、図11,12の(A),(B)に示すようにハンド10を90度回転させた上で、そのハンド10に偏平リング状にて支持されているOリングRの下側の一辺部を相手側部品4のリング溝13の一部に引っ掛ける。そして、図13の(A),(B)に示すように、ハンド10を再度90度反転させた上でハンド10を相手側部品4の中心部上方位置まで移動させ、その位置から少しずつ一対のフィンガー26を閉じながら最初にOリングRを引っ掛けた部位と反対側までハンド10を移動させ、この反対側の位置までハンド10を移動した状態では図14のようになる。
【0042】この図14の状態になるのとほぼ同じタイミングで一対のフィンガー26が完全に閉じるようになっており、図15に示すようにハンド10を矢印a方向に回転させながらフィンガー26を相手側部品4とOリングRとの間から引き抜くことにより、OリングRがリング溝13に完全に嵌合してその組み付けが完了する。
【0043】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、送りねじのねじ溝に嵌合してその螺進作用により送り出されるOリングの上部を送りねじと同期回転する上部ガイドローラで拘束する一方、そのOリングの下部側では下部ガイドロッドのガイドローラにより抵抗を与えてOリング全体に張力をかけることによりOリング同士の分離作用を行わせるようにしたことにより、Oリングを一つずつ確実に分離して供給することができ、二つのOリングがからまり合ったままで供給してしまうこともなければ、Oリング切れや傷付き等のトラブルの発生を未然に防止でき、さらに送りねじと下部ガイドロッドとの間の距離を変化させることによりサイズの異なるOリングの分離供給にも対応することができ、設備の汎用性が高くなる。
【0044】また、請求項2に記載の発明のように、ねじ溝の深さと溝幅およびOリングの線径との相互の寸法関係を特定の範囲に設定することにより、Oリングを一つずつより確実にねじ溝に嵌合させることができるようになって、Oリング切れの発生を未然に防止できる。
【0045】請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の分離供給装置と、その分離供給されたOリングを受け取るスライドテーブルと、スライドテーブル上のOリングをピックアップして相手側部品に組み付ける組付ロボットとを組み合わせたことにより、Oリングの分離供給から整送および相手側部品に対する組み付け動作までの完全自動化を達成でき、二つのOリングがからまり合ったままで相手側部品に組み付けてしまう等の誤組付を確実に防止できる。
【0046】また、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載のスライドテーブルにOリングを引っ掛ける係止爪を設けることにより、スライドテーブル上でのOリングの位置精度が高くなるとともにその位置の安定性が向上するという効果がある。
【0047】請求項5に記載の発明によれば、組付ロボットのハンドとして二指平行移動タイプのものを採用して、一対のフィンガーにてOリングを偏平リング状に変形させながら内径把持方式で把持するようにしたことにより、ハンドの自律動作のみでスムーズにOリングを相手側部品に組み付けることができる。
【0048】請求項6に記載の発明によれば、ハンドの動きに併せて一対のフィンガーを閉動作させて、実質的に組付ロボットの自律動作のみでOリングを相手側部品に組み付けるものであるから、従来の方式と比べてOリングの装着不良やOリング切れさらには傷付き等のトラブルの発生を未然に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図で、図5の要部拡大図。
【図2】本発明の一実施例を示す組付装置全体の平面説明図。
【図3】図2のb方向矢視図。
【図4】図2に示すワークベースの拡大図。
【図5】分離供給装置の構成説明図。
【図6】図3に示すロボットハンドの右側面図。
【図7】図6の平面説明図。
【図8】図3の要部拡大図。
【図9】図8の右側面説明図。
【図10】送りねじのねじ溝の拡大図。
【図11】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図12】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図13】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図14】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図15】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図16】従来のOリングの分離組付装置の一例を示す作動説明図。
【符号の説明】
1…分離供給装置
3…組付ロボット
4…相手側部品
8…スライドテーブル
10…ハンド
12…リング溝
13…送りねじ
14…上部ガイドローラ
15…下部ガイドロッド
16…サーボモータ(回転駆動手段)
17…ねじ溝
22…ガイドローラ
23…アーム
26…フィンガー
P3…受け取りステージ
P4…ピッキングステージ
R…Oリング
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一まとめにされたOリングを一つずつ分離して供給する装置と、その装置を用いてOリングを相手側部品に組み付ける装置、およびそのOリングを組み付ける方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のOリングの分離組付装置として図16に示す構造のものがある。図16では、マガジンシャフト101の小径軸部102に多数のOリングRを予め整列してセットしておき、そのマガジンシャフト101の下端を相手側部品103に嵌合させる一方、最下段のOリングR1とその上のOリングRとの間に爪部材104を挿入して最下段のOリングR1を分離させ、爪部材104を押し下げながらその最下段のOリングR1をテーパ部105に沿って徐々に拡径させることにより、最終的にはその最下段のOリングR1がOリング装着溝106に嵌合することになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の構造では、マガジンシャフト101上に多数のOリングRを積み重ねてストックするようにしているため、特に大径のOリングの場合には隣接する上下のOリングR,R同士がからまりやすく、爪部材104の挿入だけではそのからまりをときほぐすことができずに、そのまま二つ一組としてOリングRが組み付けられてしまうことになる。その結果、単にOリングRの誤組み付けが発生するだけでなく、Oリング切れや傷付き等が発生し、後工程でのトラブルの原因となって好ましくない。また、対象となるOリングRのサイズが異なればそれに応じてマガジンシャフト101を交換しなければならず、設備の汎用性の面で問題を残している。
【0004】本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、一まとめにされた未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給することができ、しかもそのOリングを相手側部品に確実に一つずつ組み付けることができるようにしたOリングの分離供給装置と組付装置および組付方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給する装置において、回転駆動手段によって回転駆動されるとともに外周面に螺旋状のねじ溝が形成され、かつその根元部側に未整列の多数のOリングが挿入されて、前記ねじ溝に嵌合したOリングを回転駆動に伴うねじの螺進作用によって前方に送り出す片持ち式の送りねじと、前記送りねじの上方に前半部が該送りねじの外周面に接触するようにその送りねじと平行に配置され、送りねじと同期回転することにより前記多数のOリングを一つずつ分離して送りねじのねじ溝に嵌合させる上部ガイドローラと、前記送りねじの下方に該送りねじとともにOリングの内周面に接触するようにその送りねじと平行に配置されるとともに、送りねじに対し接近離間可能であって、その送りねじにより前方に送り出されるOリングに張力を与えるための回転可能なガイドローラが長手方向に沿って複数個設けられている下部ガイドロッドとを備えていることを特徴としている。
【0006】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ねじ溝の深さをH、溝幅をW、Oリングの線径をDとしてとき、H≦D≦1.2HおよびW≦D≦1.2Wとなるように設定されていることを特徴としている。
【0007】請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の分離供給装置と、その分離供給装置の送りねじの先端から自重落下するOリングを受け取りステージで水平姿勢にて受け取った上でピッキングステージまで走行するスライドテーブルと、前記ピッキングステージにあるスライドテーブル上のOリングをアーム先端のハンドで把持した上で相手側部品にそのOリングを組み付ける組付ロボットとを備えていることを特徴としている。
【0008】請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加えて、前記スライドテーブル上には、受け取りステージにて送りねじからOリングを受け取る際にその送りねじから自重落下する直前のOリングの下部を引っ掛ける係止爪が設けられていることを特徴としている。
【0009】請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の構成に加えて、前記組付ロボットのハンドは、一対のフィンガーが平行状態のままで接近離間して開閉動作する二指平行移動タイプのものであって、かつOリングの内周面の二箇所を前記フィンガーで外側に押し広げながら偏平リング状に変形させて内径把持方式で把持するものであることを特徴としている。
【0010】請求項6に記載の発明は、請求項5記載の組付装置によりOリングを相手側部品のリング溝に嵌合させて組み付ける方法であって、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて該フィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、Oリングをリング溝に嵌合させることを特徴としている。
【0011】
【作用】請求項1に記載の発明では、送りねじと下部ガイドロッドとに挿入された未整列の多数のOリングは、送りねじの上部側で上部ガイドローラで拘束されていることから、それらのOリングの上部側にねじの螺進作用による推力が与えられればOリングは1つずつねじ溝に嵌合して前方に送り出される。
【0012】その一方、Oリングの下部側では下部ガイドロッドのガイドローラがそのOリングの下部に引っ掛かって抵抗となるために、Oリングの下部は上部側よりも遅れ気味となってOリングに張力が加えられるものの、その張力がある程度高められるとOリングは下部ガイドロッドのガイドローラを乗り越える。このような動作を複数のガイドローラについて何回か繰り返すことにより、仮にOリング同士がからまり合っている場合でもそのからまりを確実にほぐしてOリングを一つずつ分離させることができる。そして、一つずつ分離したOリングはねじの螺進作用により送りねじの先端側まで順次送り出される。
【0013】請求項2に記載の発明では、送りねじのねじ溝の深さと溝幅およびOリングの線径との相互関係を特定の範囲に設定していることにより、Oリングを一つずつ確実にねじ溝に嵌合させることができ、Oリング切れ等を未然に防止できるようになる。
【0014】請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の分離供給装置に、その分離供給されたOリングを受け取るスライドテーブルと、そのスライドテーブル上のOリングをピックアップする組付ロボットを組み合わせたことにより、Oリングの分離供給から整送および相手側部品に対する組み付けまでの完全自動化を実現できるようになる。
【0015】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のスライドテーブルにOリングを引っ掛ける係止爪が設けられていることにより、スライドテーブル上でのOリングの位置精度および安定性が一段と向上することになる。
【0016】請求項5に記載の発明では、二指平行移動タイプのハンドによりOリングを偏平リング状に変形させて把持することにより、組付ロボットの自律動作によりOリングを相手側部品に容易に装着することができるようになる。
【0017】請求項6に記載の発明では、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて相互に接近させた上でフィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、組付ロボットの自律動作のみでOリングを確実に相手側部品のリング溝に装着することができ、装着不良やOリング切れさらには傷等のトラブルの発生を未然に防止できるようになる。
【0018】
【実施例】図2は本発明の一実施例を示す組付装置全体の平面説明図であって、大別して、Oリングの分離供給装置1と、Oリング搬送用のシャトルコンベヤ2、Oリングの組付ロボット3、およびOリングが装着される相手側部品4を搬送するためのワーク搬送コンベヤ5等から構成されている。なお、図2において、6は制御盤、7は操作盤である。
【0019】前記分離供給装置1は、分離供給装置P1と退避位置P2との間で旋回可能であって、後述するように退避位置P2にて一まとめにされた未整列の多数のOリングを受け取った上で、分離供給装置P1にてそれらのOリングを順次一つずつ分離して送り出す。
【0020】前記分離供給装置1から送り出されたOリングはシャトルコンベヤ2のスライドテーブル8の上に自重落下する。シャトルコンベヤ2のスライドテーブル8は、図3に示すようにOリングRの受け取りステージP3とピッキングステージP4との間でロッドレスシリンダ9の作動により往復移動するようになっており、上記のように受け取りステージP3にあるスライドテーブル8の上にOリングRが移載されるとスライドテーブル8はピッキングステージP4まで走行する。
【0021】そして、このピッキングステージP4にあるスライドテーブル8上のOリングRを図2の組付ロボット3のハンド10が把持して、図4に示すようにワーク搬送コンベヤ5上のワークテーブル11に固定されている相手側部品4のリング溝12に対してOリングRを装着することになる。
【0022】次に、前記分離供給装置1の詳細を図1,5に基づいて説明すると、この分離供給装置1は送りねじ13とこの送りねじ13の上下に互いに平行に配置された上部ガイドローラ14および下部ガイドロッド15を中心として構成されている。
【0023】前記送りねじ13はサーボモータ16により片持ち状態で回転駆動されるようになっていて、その外周面には所定のリードで角ねじ状のねじ溝17が螺旋状に形成されている。そして、OリングRの整列供給に先立って、一まとめにされた未整列の多数のOリングRがその送りねじ13の根元部側に挿入されるようになっている。
【0024】一方、前記上部ガイドローラ14は、その前半部の均一直径のストレート部18と根元部側の小径軸部19、およびそれらストレート部18と小径軸部19との間のテーパ部20とにより長尺な段付軸状のものとして形成されている。そして、この上部ガイドローラ14は送りねじ13に対して接近離間可能であると同時に回転可能であって、そのストレート部18の外周面を送りねじ13に圧接させることにより送りねじ13に同期して連れ回りする構造となっている。
【0025】また、前記下部ガイドロッド15は、ロッド本体21に対して回転可能な複数のガイドローラ22が長手方向に沿って所定のピッチで設けられていて、この下部ガイドロッド15もまた前記送りねじ13に対して接近離間可能な構造となっている。そして、前記下部ガイドロッド15は送りねじ13とともに多数のOリングRの内側領域に挿入されており、送りねじ13と下部ガイドロッド15のガイドローラ22がともにOリングRに内接するように、その送りねじ13とガイドローラ22との外周面間距離LがOリングRの自由長状態での内径寸法とほぼ等しくなるように設定されている。
【0026】前記組付ロボット5のアーム23先端に装着されたハンド10は図3,6,7に示すように二指平行移動タイプのものとして構成されていて、ボールねじ24の回転駆動によりガイドロッド25に案内されながら互いに接近離間して開閉動作する一対のフィンガー26を備えている。そして、前記ハンド10は、後述するように一対のフィンガー26でOリングRの内周面を把持面として外方に押し広げながら偏平リング状に変形させていわゆる内径把持方式でOリングRを把持することになる。
【0027】次に以上のように構成された装置の一連の動きについて説明する。
【0028】先ず、分離供給装置1を図2の退避位置P2に位置させた状態で、図1,5の上部ガイドローラ14を送りねじ13に対して上方に移動させるとともに、下部ガイドロッド15を送りねじ13に接近させるべく上方に移動させる。この状態で、予め一まとめにされた未整列の多数のOリングRを送りねじ13および下部ガイドロッド15に挿入してそれらの根元部側にセットする。その後、上部ガイドローラ14のストレート部18が送りねじ13に接触するまで上部ガイドローラ14を下降させる一方、送りねじ13とガイドローラ22との外周面距離L(図1)が対象となるOリングRの自由長状態での内径寸法となるように下部ガイドロッド15を下降させ、その上で分離供給装置1全体を図2の分離供給装置P1に戻す。
【0029】続いて、分離供給装置1の送りねじ13をサーボモータ16により回転駆動させると、この送りねじ13に接触している上部ガイドローラ14も同期回転する。そして、送りねじ13の螺進作用による推力を受けてOリングRが徐々に前方に送り出される一方、上部ガイドローラ14のテーパ部20による整列作用によりOリング同士の重なり合い等が解除されて一列に揃えられ、OリングRの上部側ではそのOリングRが一つずつ分離されて送りねじ13のねじ溝17に嵌合する。このねじ溝17に嵌合したOリングRはなおも送りねじ13の螺進作用によってそのねじ溝17に嵌合したままで前方に送り出される。
【0030】一方、上記のようにOリングRの上部側では送りねじ13によって推力が与えられるのに対して、OリングRの下部側では下部ガイドロッド15によっては推力が与えられないのでその下部側は上部側よりも遅れ気味となり、なおかつガイドローラ22が抵抗となってそのガイドローラ22にOリングRが引っ掛かることになる。
【0031】そして、OリングRの下部側がガイドローラ22に引っ掛かった状態でそのOリングRの上部側に推力が与えられると、OリングRには所定の張力が与えられて長楕円形に変形し、その張力がある程度まで高くなるとOリングRの下部側が初めてガイドローラ22を乗り越えることになる。これにより、例えば送りねじ13の螺進行方向において前後二つのOリングRがその上部側では分離しているにもかかわらずその下部側ではからまり合っている場合に、上記のように一方のOリングRの下部がガイドローラ22を乗り越えることによって両者のからまりが解消される。
【0032】これは、例えば二つのOリングRがからまり合っている場合に、それら二つのOリングRの上部をつまんで互いに逆方向に引っ張ると、そのからまり部位が徐々に下部側に移動して最終的にはそれら二つのOリングRのからまりがスムーズに解消されるという原理に基づく。
【0033】そして、上記のようにOリングRの下部がガイドローラ22を乗り越える際の動きは各ガイドローラ22ごとに何回か繰り返され、各OリングRが送りねじ13の先端に到達するまでには各OリングRは一つずつ確実に分離される。すなわち、特定の一つのOリングRの動きにだけ着目してみると、OリングRは図1に符号
【0034】そののち、送りねじ13の先端まで送られたOリングRは、図3のほか図8,9に示すようにシャトルコンベヤ2の受け取りステージP3で待機しているスライドテーブル8の上に自重落下して移載される。この時、スライドテーブル8上にOリングRが載置されたことを図2のセンサ27が検知すると、そのタイミングで送りねじ13の回転駆動すなわち分離供給装置1からのOリングRの供給が一旦停止する。
【0035】ここで、図8,9に示すように、スライドテーブル8には送りねじ13から送り出されるOリングRの下部に当接する係止爪28が引張コイルスプリング29で付勢された状態で立設されており、したがって送りねじ13によって直接推力が与えられるOリングRの上部側が先にスライドテーブル8上に自重落下する際に、上部側よりも遅れ気味となるOリングRの下部を係止爪28で引っ掛けることにより、そのスライドテーブル8上でのOリングRの位置精度の向上と安定化が図れることになる。
【0036】また、図10に示すように、線径Dが2mmのOリングRの分離供給を行うにあたり、本発明者が送りねじ13のねじ溝17の深さHと溝幅Wの寸法を種々変更して実験を行ったところ、表1に示すような結果を得た。表1から明らかなように、Oリング切れ等のトラブルを招くことなく一つずつ確実にOリングを分離するためには、線径Dと溝の深さHおよび溝幅Wの寸法関係としてH≦D≦1.2H , W≦D≦1.2Wに設定する必要があることが判明した。
【0037】
【表1】
【0038】図3のほか図8,9に示したように、受け取りステージP3にあるスライドテーブル8の上にOリングRが移載されると、スライドテーブル8は図3に示すようにその受け取りステージP3からピッキングステージP4に走行して停止する。スライドテーブル8がピッキングステージP4に位置決めされると、組付ロボット3のハンド10がそのスライドテーブル8上のOリングRを取りにゆく。この時、ワーク搬送コンベヤ5上の組付ステージP5には、図2,4に示すようにワークベース11に固定された相手側部品4が待機している。
【0039】そして、前記組付ロボット3は図3,9に示すようにスライドテーブル8上のOリングRの真上からハンド10を下降させ、それまで閉状態にあった一対のフィンガー26を開くことにより、OリングRを偏平リング状に変形させながら内径把持方式で把持する。この時、スライドテーブル8には図8,9に示すように逃げ溝30が形成されていることから、ハンド10によるOリングRの把持にあたってそのフィンガー26とスライドテーブル8とが干渉することはない。
【0040】前記ハンド10がOリングRを把持すると、組付ロボット3はそのハンド10を図2の組付ステージP5側に移動させて、相手側部品4に対するOリングRの組付作業を実行する。この組付作業は図11〜図1515に示す手順で行われる。
【0041】すなわち、図11,12の(A),(B)に示すようにハンド10を90度回転させた上で、そのハンド10に偏平リング状にて支持されているOリングRの下側の一辺部を相手側部品4のリング溝13の一部に引っ掛ける。そして、図13の(A),(B)に示すように、ハンド10を再度90度反転させた上でハンド10を相手側部品4の中心部上方位置まで移動させ、その位置から少しずつ一対のフィンガー26を閉じながら最初にOリングRを引っ掛けた部位と反対側までハンド10を移動させ、この反対側の位置までハンド10を移動した状態では図14のようになる。
【0042】この図14の状態になるのとほぼ同じタイミングで一対のフィンガー26が完全に閉じるようになっており、図15に示すようにハンド10を矢印a方向に回転させながらフィンガー26を相手側部品4とOリングRとの間から引き抜くことにより、OリングRがリング溝13に完全に嵌合してその組み付けが完了する。
【0043】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、送りねじのねじ溝に嵌合してその螺進作用により送り出されるOリングの上部を送りねじと同期回転する上部ガイドローラで拘束する一方、そのOリングの下部側では下部ガイドロッドのガイドローラにより抵抗を与えてOリング全体に張力をかけることによりOリング同士の分離作用を行わせるようにしたことにより、Oリングを一つずつ確実に分離して供給することができ、二つのOリングがからまり合ったままで供給してしまうこともなければ、Oリング切れや傷付き等のトラブルの発生を未然に防止でき、さらに送りねじと下部ガイドロッドとの間の距離を変化させることによりサイズの異なるOリングの分離供給にも対応することができ、設備の汎用性が高くなる。
【0044】また、請求項2に記載の発明のように、ねじ溝の深さと溝幅およびOリングの線径との相互の寸法関係を特定の範囲に設定することにより、Oリングを一つずつより確実にねじ溝に嵌合させることができるようになって、Oリング切れの発生を未然に防止できる。
【0045】請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の分離供給装置と、その分離供給されたOリングを受け取るスライドテーブルと、スライドテーブル上のOリングをピックアップして相手側部品に組み付ける組付ロボットとを組み合わせたことにより、Oリングの分離供給から整送および相手側部品に対する組み付け動作までの完全自動化を達成でき、二つのOリングがからまり合ったままで相手側部品に組み付けてしまう等の誤組付を確実に防止できる。
【0046】また、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載のスライドテーブルにOリングを引っ掛ける係止爪を設けることにより、スライドテーブル上でのOリングの位置精度が高くなるとともにその位置の安定性が向上するという効果がある。
【0047】請求項5に記載の発明によれば、組付ロボットのハンドとして二指平行移動タイプのものを採用して、一対のフィンガーにてOリングを偏平リング状に変形させながら内径把持方式で把持するようにしたことにより、ハンドの自律動作のみでスムーズにOリングを相手側部品に組み付けることができる。
【0048】請求項6に記載の発明によれば、ハンドの動きに併せて一対のフィンガーを閉動作させて、実質的に組付ロボットの自律動作のみでOリングを相手側部品に組み付けるものであるから、従来の方式と比べてOリングの装着不良やOリング切れさらには傷付き等のトラブルの発生を未然に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図で、図5の要部拡大図。
【図2】本発明の一実施例を示す組付装置全体の平面説明図。
【図3】図2のb方向矢視図。
【図4】図2に示すワークベースの拡大図。
【図5】分離供給装置の構成説明図。
【図6】図3に示すロボットハンドの右側面図。
【図7】図6の平面説明図。
【図8】図3の要部拡大図。
【図9】図8の右側面説明図。
【図10】送りねじのねじ溝の拡大図。
【図11】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図12】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図13】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図14】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図15】組付ロボットによるOリングの組付手順を示す工程説明図。
【図16】従来のOリングの分離組付装置の一例を示す作動説明図。
【符号の説明】
1…分離供給装置
3…組付ロボット
4…相手側部品
8…スライドテーブル
10…ハンド
12…リング溝
13…送りねじ
14…上部ガイドローラ
15…下部ガイドロッド
16…サーボモータ(回転駆動手段)
17…ねじ溝
22…ガイドローラ
23…アーム
26…フィンガー
P3…受け取りステージ
P4…ピッキングステージ
R…Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】 未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給する装置において、回転駆動手段によって回転駆動されるとともに外周面に螺旋状のねじ溝が形成され、かつその根元部側に未整列の多数のOリングが挿入されて、前記ねじ溝に嵌合したOリングを回転駆動に伴うねじの螺進作用によって前方に送り出す片持ち式の送りねじと、前記送りねじの上方に前半部が該送りねじの外周面に接触するようにその送りねじと平行に配置され、送りねじと同期回転することにより前記多数のOリングを一つずつ分離して送りねじのねじ溝に嵌合させる上部ガイドローラと、前記送りねじの下方に該送りねじとともにOリングの内周面に接触するようにその送りねじと平行に配置されるとともに、送りねじに対し接近離間可能であって、その送りねじにより前方に送り出されるOリングに張力を与えるための回転可能なガイドローラが長手方向に沿って複数個設けられている下部ガイドロッド、とを備えていることを特徴とするOリングの分離供給装置。
【請求項2】 前記ねじ溝の深さをH、溝幅をW、Oリングの線径をDとしてとき、H≦D≦1.2H ,W≦D≦1.2Wとなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のOリングの分離供給装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の分離供給装置と、その分離供給装置の送りねじの先端から自重落下するOリングを受け取りステージで水平姿勢にて受け取った上でピッキングステージまで走行するスライドテーブルと、前記ピッキングステージにあるスライドテーブル上のOリングをアーム先端のハンドで把持した上で相手側部品にそのOリングを組み付ける組付ロボット、とを備えていることを特徴とするOリングの組付装置。
【請求項4】 前記スライドテーブル上には、受け取りステージにて送りねじからOリングを受け取る際にその送りねじから自重落下する直前のOリングの下部を引っ掛ける係止爪が設けられていることを特徴とする請求項3記載のOリングの組付装置。
【請求項5】 前記組付ロボットのハンドは、一対のフィンガーが平行状態のままで接近離間して開閉動作する二指平行移動タイプのものであって、かつOリングの内周面の二箇所を前記フィンガーで外側に押し広げながら偏平リング状に変形させて内径把持方式で把持するものであることを特徴とする請求項3または4記載のOリングの組付装置。
【請求項6】 請求項5記載の組付装置によりOリングを相手側部品のリング溝に嵌合させて組み付ける方法であって、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて該フィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、Oリングをリング溝に嵌合させることを特徴とするOリングの組付方法。
【請求項1】 未整列の多数のOリングを一つずつ分離して整列供給する装置において、回転駆動手段によって回転駆動されるとともに外周面に螺旋状のねじ溝が形成され、かつその根元部側に未整列の多数のOリングが挿入されて、前記ねじ溝に嵌合したOリングを回転駆動に伴うねじの螺進作用によって前方に送り出す片持ち式の送りねじと、前記送りねじの上方に前半部が該送りねじの外周面に接触するようにその送りねじと平行に配置され、送りねじと同期回転することにより前記多数のOリングを一つずつ分離して送りねじのねじ溝に嵌合させる上部ガイドローラと、前記送りねじの下方に該送りねじとともにOリングの内周面に接触するようにその送りねじと平行に配置されるとともに、送りねじに対し接近離間可能であって、その送りねじにより前方に送り出されるOリングに張力を与えるための回転可能なガイドローラが長手方向に沿って複数個設けられている下部ガイドロッド、とを備えていることを特徴とするOリングの分離供給装置。
【請求項2】 前記ねじ溝の深さをH、溝幅をW、Oリングの線径をDとしてとき、H≦D≦1.2H ,W≦D≦1.2Wとなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のOリングの分離供給装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の分離供給装置と、その分離供給装置の送りねじの先端から自重落下するOリングを受け取りステージで水平姿勢にて受け取った上でピッキングステージまで走行するスライドテーブルと、前記ピッキングステージにあるスライドテーブル上のOリングをアーム先端のハンドで把持した上で相手側部品にそのOリングを組み付ける組付ロボット、とを備えていることを特徴とするOリングの組付装置。
【請求項4】 前記スライドテーブル上には、受け取りステージにて送りねじからOリングを受け取る際にその送りねじから自重落下する直前のOリングの下部を引っ掛ける係止爪が設けられていることを特徴とする請求項3記載のOリングの組付装置。
【請求項5】 前記組付ロボットのハンドは、一対のフィンガーが平行状態のままで接近離間して開閉動作する二指平行移動タイプのものであって、かつOリングの内周面の二箇所を前記フィンガーで外側に押し広げながら偏平リング状に変形させて内径把持方式で把持するものであることを特徴とする請求項3または4記載のOリングの組付装置。
【請求項6】 請求項5記載の組付装置によりOリングを相手側部品のリング溝に嵌合させて組み付ける方法であって、ハンドのフィンガーに偏平リング状に把持されているOリングの一辺部を相手側部品のリング溝の一部に引っ掛けた上で、ハンド全体を最初の引っ掛かり部とは反対側の位置まで移動させ、そのハンドの移動とともにフィンガーを徐々に閉動作させて該フィンガーを相手側部品とOリングとの間から抜き取ることにより、Oリングをリング溝に嵌合させることを特徴とするOリングの組付方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図7】
【図10】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図4】
【図6】
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【図10】
【図3】
【図5】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開平8−187624
【公開日】平成8年(1996)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−1666
【出願日】平成7年(1995)1月10日
【出願人】(595004366)株式会社ティ・ケー・エムエンジニアリング (1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【公開日】平成8年(1996)7月23日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)1月10日
【出願人】(595004366)株式会社ティ・ケー・エムエンジニアリング (1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
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