OFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法
【課題】OFDMが用いられる場合において、必要な処理量を抑制しつつ、PAPRを効果的に低減することができるOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法を提供する。
【解決手段】OFDM信号送信装置100は、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部113と、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号生成記憶部115と、準インパルス信号に対して、ピーク検出部113によって暫定送信信号中に検出されたピーク部分と、準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部117と、準インパルス信号処理部117によって定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号を暫定送信信号に加算する加算部119とを備える。
【解決手段】OFDM信号送信装置100は、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部113と、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号生成記憶部115と、準インパルス信号に対して、ピーク検出部113によって暫定送信信号中に検出されたピーク部分と、準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部117と、準インパルス信号処理部117によって定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号を暫定送信信号に加算する加算部119とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信または処理するOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重(OFDM)が用いられる無線通信システムでは、送信アンプの特性などに起因して、送信されるOFDM信号に含まれるサブキャリアの振幅値の平均と比較して非常に大きな振幅値を有するピーク部分が現れる問題、すなわち、ピーク電力対平均電力比(PAPR)が高くなる問題が発生することが知られている。
【0003】
このようなPAPRが高くなる問題を解決するため、ピーク部分のクリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法(例えば、特許文献1)や、ピークの振幅値が小さい部分信号系列を送信するPartial Transmit Sequence(PTS)法(例えば、特許文献2)が提案されている。
【非特許文献1】X. Li and L. J. Cimini,“Effects of clipping and filtering on the performance of OFDM”,IEEE Commun. Lett., vol.2, No.5, pp. 131-133,1998年5月
【非特許文献2】L. J and N. R. Sollenberger,“Peak-to-Average power ration reduction of an OFDM signal using partial transmit sequences”,IEEE Commun. Lett., vol.4, No.3, pp. 86-88,2000年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の方法には、次のような問題があった。具体的には、ピーク部分のクリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法では、フーリエ変換(FFT)及び逆フーリエ変換(IFFT)を複数回実行する必要がある。また、PTS法では、生成する部分信号系列数倍のIFFTを実行する必要がある。さらに、これらの部分系列信号を様々なパターンで合成し、ピーク部分を検出する必要がある。
【0005】
すなわち、上述した従来の方法では、PAPRを低減するために必要な処理量が増大するといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、OFDMが用いられる場合において、必要な処理量を抑制しつつ、PAPRを効果的に低減することができるOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号(OFDM信号S)を送信するOFDM信号送信装置(例えば、OFDM信号送信装置100)であって、暫定送信信号(OFDM信号S)に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分(ピーク部分P1)を検出するピーク検出部(ピーク検出部113)と、インパルス状の信号である準インパルス信号(準インパルス信号Ip)を出力する準インパルス信号出力部(例えば、準インパルス信号生成記憶部115)と、前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部(準インパルス信号処理部117)と、前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部(例えば、加算部119)とを備えることを要旨とする。
【0008】
このようなOFDM信号送信装置によれば、暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトが適用される。さらに、当該定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号が暫定送信信号に加算される。このため、当該ピーク部分を低減、つまり、PAPRを効果的に低減することができる。
【0009】
また、このようなOFDM信号送信装置によれば、クリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法などよりもフーリエ変換などに関する処理量を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、使用可能なサブキャリアを全て1+0iとして、前記サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された準インパルス信号のピーク部分以外の振幅のクリップ、或いは前記ピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、前記準インパルス信号に許可された条件を満たすように前記サブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、前記電力調整後のサブキャリア成分の逆フーリエ変換を実行する処理とを含む生成処理によって、前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0012】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された前記準インパルス信号に対して、前記準インパルス信号のピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された前記準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0013】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、前記生成処理を繰り返すことによって前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0014】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1乃至第5の特徴に係り、準インパルス信号処理部における定数倍は、複素定数による定数倍であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第7の特徴は、本発明の第6の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、I相成分にピーク成分を有する準インパルス信号と、Q相成分にピーク成分を有する準インパルス信号を生成し、前記準インパルス信号処理部及び前記加算部における処理は、前記I相成分及び前記Q相成分のピーク成分に対して個別に行われ、前記準インパルス信号における定数倍は、実定数による定数倍とすることを要旨とする。
【0016】
本発明の第8の特徴は、本発明の第7の特徴に係り、前記ピーク部分の振幅のクリッピング、及び前記ピーク部分のフィルタリングを実行することによって、前記ピーク部分を抑圧するピーク部分抑圧部(クリッピング・フィルタリング部120)をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
本発明の第9の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号の処理を実行する信号処理チップであって、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備えることを要旨とする。
【0018】
本発明の第10の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信方法であって、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するステップと、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力するステップと、前記準インパルス信号に対して、前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用するステップと、前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算するステップとを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特徴によれば、OFDMが用いられる場合において、必要な処理量を抑制しつつ、PAPRを効果的に低減することができるOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)作用・効果、及び(4)その他の実施形態について説明する。
【0021】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0022】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
(1)第1実施形態
本実施形態では、I相成分とQ相成分とを含むOFDM信号を一括して処理することによって、PAPRを低減するOFDM信号送信装置について説明する。
【0024】
(1.1)OFDM信号送信装置の構成
図1は、本実施形態に係るOFDM信号送信装置100の機能ブロック構成図である。なお、OFDM信号送信装置100は、信号処理チップとして提供される。
【0025】
OFDM信号送信装置100は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号Spを送信する。OFDM信号Spは、OFDM信号S(暫定送信信号)に含まれるピーク部分が低減されている。
【0026】
OFDM信号送信装置100は、シンボルマッピング部101、制御信号生成部103、サブキャリア割当部105、IFFT部109、ピーク低減処理部110及び割当制御部111を備える。
【0027】
また、ピーク低減処理部110は、ピーク検出部113、準インパルス信号生成記憶部115、準インパルス信号処理部117及び加算部119を備える。
【0028】
シンボルマッピング部101は、送信ビット列をOFDMシンボルにマッピングする。なお、シンボルマッピング部101では、QAMやPSKが変調方式として用いられる。
【0029】
制御信号生成部103は、サブキャリア割当部105において用いられる制御信号、例えば、無線フレーム内における無線リソースの割当情報(どの移動局宛のデータをどのOFDMシンボル及びサブキャリアで送信しているか)や、使用しているMCS情報(変調方式及び符号化率)を生成する。
【0030】
サブキャリア割当部105は、割当制御部111から出力された割当情報に基づき、制御信号生成部103から出力された制御信号に関するシンボル及びシンボルマッピング部101から出力されたデータ信号に関するシンボルをOFDMシンボル及びサブキャリアとして分割される無線リソースに割り当てる。
【0031】
IFFT部109は、サブキャリア割当部105によって割り当てられた各サブキャリアのOFDMシンボルを入力とし、当該OFDMシンボルに対応する時間信号を生成する。本実施形態では、I相成分とQ相成分との両成分が含まれるOFDM信号S(具体的には、図3参照)がピーク低減処理部110に出力される。
【0032】
ピーク低減処理部110は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに含まれるピーク部分を低減する処理を実行し、ピーク部分が低減されたOFDM信号Spを出力する。
【0033】
割当制御部111は、サブキャリア割当部105において用いられるサブキャリアの割当を制御する。
【0034】
具体的には、割当制御部111は、サブキャリア割当部105においてOFDMシンボル、サブキャリアとして分割された無線リソースを、ユーザデータなどのデータ伝送に用いるか、またはピーク低減処理に用いるかを決定する。割当制御部111は、ピーク低減処理に用いるサブキャリアをサブキャリア割当部105及び準インパルス信号生成記憶部115に通知する。
【0035】
(1.2)ピーク低減処理部110の機能ブロック構成
次に、ピーク低減処理部110の機能ブロック構成について説明する。上述したように、ピーク低減処理部110は、ピーク検出部113、準インパルス信号生成記憶部115、準インパルス信号処理部117及び加算部119を備える。
【0036】
ピーク検出部113は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出する。本実施形態では、ピーク検出部113は、I相成分とQ相成分を合成した振幅値(I2+Q2)0.5を計算し、所定の値よりも大きい振幅成分を持つ信号の振幅の大きさ、位相及び時間インデックスを出力する。
【0037】
準インパルス信号生成記憶部115は、OFDM信号Sに加算される準インパルス信号を生成する。
【0038】
本実施形態では、準インパルス信号生成記憶部115は、割当制御部111から通知されたピーク低減処理に用いるサブキャリアの振幅及び位相、つまり、I相成分とQ相成分とを、1+0i(実部(I相成分)+虚部(Q相成分))に設定する。
【0039】
さらに、準インパルス信号生成記憶部115は、当該サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、準インパルス信号を生成する。準インパルス信号生成記憶部115は、I相及びQ相が一括して処理された準インパルス信号を出力する。
【0040】
具体的には、図4に示すように、準インパルス信号生成記憶部115は、所定数のサブキャリアによって構成されるグループG1及びグループG2のうち、割当制御部111によってピーク低減処理に用いると決定されたグループG2に含まれるサブキャリアの振幅及び位相を1+0iに設定し、当該サブキャリアの逆フーリエ変換を実行する。なお、グループG1に含まれるサブキャリアは、データ伝送に用いられる。このため、本実施形態では、当該一部のサブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって得られるインパルス状の信号を準インパルス信号と呼ぶ。
【0041】
本実施形態では、準インパルス信号は、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリア(リソース)の条件に応じて、決定の都度、動的に作成される。
【0042】
また、図5は、当該サブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の「時間信号」(準インパルス信号)を示す。図5に示すように、当該サブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の時間信号には、所望のピーク部分P1、つまり、OFDM信号Sのピーク成分の抑圧に用いられるピーク部分に加え、不要なピーク部分P2及びピーク部分P3も発生する。
【0043】
準インパルス信号処理部117は、ピーク検出部113によって検出されたピーク部分の信号成分に基づいて、準インパルス信号Ip(図3参照)に対して、定数倍(本実施形態では、複素数)及びサイクリックシフトを実行し、当該処理が実行された準インパルス信号Ipを出力する。
【0044】
具体的には、準インパルス信号処理部117は、によって検出されたピーク部分をPとし、検出された時間インデックスをkとする。すなわち、(1式)のとおりとする。
【0045】
P=S(k) …(1式)
次いで、準インパルス信号処理部117は、ピーク検出部113から入力されたOFDMシンボルS(t)、及び準インパルス信号(ピークの振幅が1,位相は0に調整されているとする)を以下のとおりとする。
【0046】
S(t) t:0〜n−1
I(t) t:0〜n−1
さらに、準インパルス信号処理部117は、全ての準インパルス信号に対して、(2式)で示される値を乗算する。
【0047】
−|P−Ath|×exp(Arg(P)) …(2式)
ここで、Athは、ピーク低減目標値である。また、Arg(P)は、Pの位相である。また、準インパルス信号処理部117は、準インパルス信号をサイクリックシフトさせる。準インパルス信号処理部117で与えられるサイクリックシフト量はkであり、サイクリックシフト後の準インパルス信号は(3)式で示される(ただし、(2)式の乗算については、(3)式に反映していない)。
【0048】
I((t+k)mod n) …(3式)
準インパルス信号処理部117は、定数倍(複素数)及びサイクリックシフトを実行した準インパルス信号を加算部119に出力する。
【0049】
加算部119は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに対して、準インパルス信号処理部117から出力された準インパルス信号Ipを加算する(図3参照)。
【0050】
本実施形態では、加算部119は、I相成分及びQ相成分が一括して処理された準インパルス信号IpをOFDM信号Sに加算する。
【0051】
(1.3)OFDM信号送信装置の動作
次に、OFDM信号送信装置100の動作について説明する。具体的には、OFDM信号送信装置100が、準インパルス信号を用いてOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作について説明する。図2は、OFDM信号送信装置100がOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作フローを示す図である。
【0052】
図2に示すように、ステップS10において、OFDM信号送信装置100は、ピーク低減処理に用いるサブキャリアに対して1+0iを設定し、その他のサブキャリアに対して0+0iを設定する。OFDM信号送信装置100は、これらのデータ系列に対して逆フーリエ変換を実行することによって、準インパルス信号を生成する。
【0053】
ステップS20において、OFDM信号送信装置100は、OFDM信号Sに含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出する。なお、ステップS10とステップS20の処理は、並行して実行されてもよい。
【0054】
ステップS30において、OFDM信号送信装置100は、生成した準インパルス信号の振幅制御、位相回転処理及びサイクリックシフト処理を実行する。
【0055】
ステップS40において、OFDM信号送信装置100は、当該処理を実行した準インパルス信号IpをOFDM信号Sに加算する。
【0056】
(1.4)変更例
準インパルス信号生成記憶部115は、以下のように準インパルス信号を生成してもよい。或いは、準インパルス信号生成記憶部115は、以下のように生成された信号を記憶しておき、当該信号を用いるようにしてもよい。
【0057】
準インパルス信号生成記憶部115は、上述した方法によって生成した準インパルス信号に対して、所望のピーク部分のみを残し、その他の不要な部分の信号を抑圧するように振幅調整、位相回転及びサイクリックシフトを施した信号を、同じ(或いは異なる)準インパルス信号に対して加算することによって、インパルス信号に近い信号を生成する。
【0058】
図6は、図5に示した時間信号に適切な振幅調整、位相回転及びサイクリックシフトを施し、図5に示した時間信号に足し合わせることによって、所望のピーク部分(ピーク部分P1)以外の不要なピーク部分(ピーク部分P2,P3)を抑圧した後の時間信号を示す。
【0059】
また、準インパルス信号生成記憶部115は、暫定的に生成されたピーク準インパルス信号をよりインパルス状に近づける他の方法として、当該サブキャリアの時間信号のピーク部分(ピーク部分P1)以外の振幅を調整(1より小さい値を乗算する、或いは振幅が一定値以上である信号の振幅を一定値に設定する)し、フーリエ変換を実行する。そして、準インパルス信号生成記憶部115は、ピーク低減信号として使用できない周波数成分を0に設定し、再び逆フーリエ変換を実行してもよい。
【0060】
なお、準インパルス信号生成記憶部115は、当該ピーク部分以外の振幅を調整する場合、ピーク部分を定数倍(>1)してもよい。
【0061】
なお、準インパルス信号処理部117は、上述した振幅の調整、位相の回転及びサイクリックシフトの処理を繰り返してもよい。また、本実施形態では、準インパルス信号は、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリアの条件に応じて、決定の都度、動的に作成されるが、準インパルス信号は、想定される条件(例えば、選択サブキャリアの組合せ)に対応する系列を事前に作成し、作成した系列を記憶するようにしてもよい。
【0062】
例えば、図7に示すように、時間波形(a)と(b)を記憶しておくことによって、準インパルス信号の生成のためにIFFTを実行する必要がなくなる。
【0063】
さらに、所定のセグメントに分割された系列に対する複数の準インパルス信号が記憶されている場合、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリアが複数のセグメントに跨る場合、当該複数のセグメントに対する複数の準インパルス信号を足し合わせればよい。
【0064】
具体的には、図7に示したように時間波形を記憶しておいてもよいが、セグメント数が多い場合全てのセグメントの組み合わせは、2のセグメント数乗になる。このため、これら全ての時間波形を記憶しておくことは現実的ではない。
【0065】
例えば、図8に示すように、ケース3に示す時間波形に対応する波形は、図7に示した時間波形(a)と(b)とを合成することによって生成できる。すなわち、各セグメントのみを使用した場合の時間波形を記憶しておき、必要に応じて使用可能なセグメントに対応する時間波形を合成することによって、全てのパターンに対する準インパルス信号を生成することができる。
【0066】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、OFDM信号に含まれるI相成分とQ相成分とをそれぞれ別個に処理することによって、PAPRを低減するOFDM信号送信装置について説明する。また、以下、上述した第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
【0067】
図9は、本実施形態に係るOFDM信号送信装置100Aの機能ブロック構成図(一部)である。図9に示すようにOFDM信号送信装置100Aは、IFFT部109A及びピーク低減処理部110Aを備える。
【0068】
IFFT部109Aは、OFDM信号送信装置100のIFFT部109と同様にサブキャリアの逆フーリエ変換を実行する。つまり、IFFT部109Aは、IFFT部109と同様の処理を実行するが、OFDM信号SのI相成分とQ相成分とを分離して出力する。図7において、点線はI相成分を示し、実線はQ相成分を示す。
【0069】
ピーク低減処理部110Aは、I相成分及びQ相成分毎に独立して処理を実行する。I相成分の処理は、ピーク検出部113I、準インパルス信号生成記憶部115I、準インパルス信号処理部117I及び加算部119Iによって実行される。
【0070】
Q相成分の処理は、ピーク検出部113Q、準インパルス信号生成記憶部115Q、準インパルス信号処理部117Q及び加算部119Qによって実行される。
【0071】
準インパルス信号生成記憶部115I,155Qには、割当制御部111からサブキャリアの情報などが入力される。
【0072】
準インパルス信号生成記憶部115Iは、I相成分の+方向にピークが立っているインパルス状の信号を生成する。ただし、当該インパルス状の信号には、Q相成分も含まれる。これは、一部のサブキャリアのみしか使用していないため、一般にI相成分或いはQ相成分のみに0でない振幅成分を有する信号系列(準インパルス信号)を生成することができないためである。
【0073】
一方、準インパルス信号生成記憶部115Qは、Q相成分の+方向にピークが立っているインパルス状の信号を生成する。同様に当該インパルス状の信号には、I相成分も含まれる。
【0074】
準インパルス信号処理部117Iは、準インパルス信号生成記憶部115Iから出力された準インパルス信号のうち、I相成分を加算部119Iに出力し、Q相成分を加算部119Qに出力する。
【0075】
一方、準インパルス信号処理部117Qは、準インパルス信号生成記憶部115Qから出力された準インパルス信号のうち、Q相成分を加算部119Qに出力し、I相成分を加算部119Iに出力する。
【0076】
具体的には、準インパルス信号処理部117I,117Qは、I相成分及びQ相成分が独立して処理された準インパルス信号を出力する。具体的には、準インパルス信号処理部117I,117Qは、スカラー演算によって準インパルス信号の振幅調整を実行する。なお、スカラーの乗算では、複素数の乗算と比較して乗算回数が1/4になる。
【0077】
I相成分については、IFFT部109Aによって生成されたOFDM信号SのI相成分に対してピーク部分が検出される。検出されたピーク部分に関する情報は、準インパルス信号処理部117Iに入力される。
【0078】
準インパルス信号処理部117Iでは,入力されたピーク部分に関する情報に対応するピーク信号を抑制するように、準インパルス信号生成記憶部115Iから入力される準インパルス信号に対してサイクリックシフト及び振幅調整が実行される。当該処理が実行された後、準インパルス信号のI相成分を加算部119Iに出力する。また、準インパルス信号のQ相成分を加算部119Qに出力する。なお、Q相成分についても同様の処理が実行される。
【0079】
準インパルス信号処理部117I,117Qは、準インパルス信号生成記憶部115I,115Qによって生成された準インパルス信号のサイクリックシフト及び定数倍を実行する場合、正、負のどちらの値も用いることができる。また、当該定数の絶対値は、2の倍数とすることによって、FPGA/ASIC上において定数倍をビットシフトにより実行することが可能となる。本実施形態における全てのピーク低減処理を乗算を用いずに実行することができるため、ピーク低減に必要な処理部の回路規模を非常に小さく抑えることが可能となると考えられる。
【0080】
加算部119I,119Qは、I相成分及びQ相成分が独立して処理された準インパルス信号をOFDM信号に加算する。具体的には、加算部119Iは、IFFT部109Aから出力されたOFDM信号のI相成分に、I相成分の準インパルス信号を加算する。加算部119Qは、IFFT部109Aから出力されたOFDM信号のQ相成分に、Q相成分の準インパルス信号を加算する。
【0081】
(3)作用・効果
OFDM信号送信装置100(100A)によれば、OFDM信号S(暫定送信信号)中に検出されたピーク部分(例えば、ピーク部分P1)と、準インパルス信号Ip中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトが適用される。さらに、当該定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号Ipが暫定送信信号に加算される。このため、当該ピーク部分を低減、つまり、PAPRを効果的に低減することができる。
【0082】
また、OFDM信号送信装置100(100A)によれば、クリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法などよりもフーリエ変換などに関する処理量を抑制することができる。
【0083】
本実施形態では、ピーク低減処理に用いるサブキャリアの振幅及び位相が1+0iに設定され、逆フーリエ変換が実行される。このため、所定の周波数成分のみを持つ準インパルス信号を容易に生成することが可能となる。
【0084】
本実施形態では、準インパルス信号生成記憶部115では、準インパルス信号Ipのピーク部分以外の振幅のクリップ、或いはピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、準インパルス信号Ipに許可された条件を満たすようにサブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、サブキャリアの逆フーリエ変換を実行する処理とを含む生成処理が実行される。また、当該処理を定回数繰り返すことによって準インパルス信号Ipが生成される。
【0085】
また、準インパルス信号生成記憶部115では、準インパルス信号Ipのピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号Ipを生成する。このため、当該ピーク部分をさらに効果的に低減することができる。
【0086】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の第1及び第2実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0087】
例えば、上述した第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100には、ピーク部分の振幅のクリッピング、及びフィルタリングを実行する機能を追加してもよい。
【0088】
具体的には、図10(a)に示すように、OFDM信号送信装置100は、ピーク低減処理部110の後段に、従来と同様のクリッピング・フィルタリング部120を追加することができる。
【0089】
また、図10(b)に示すように、OFDM信号送信装置100には、ピークの振幅値が小さい部分信号系列を送信するPartial Transmit Sequence(PTS)を使用したOFDM信号生成部107を追加してもよい。
【0090】
さらに、上述した第1及び第2実施形態では、ピーク低減処理に用いるサブキャリアの時間信号のピーク部分以外の振幅が調整され、逆フーリエ変換が実行されたり、当該ピーク部分が定数倍されたりしていたが、当該処理は、必ずしも実行されなくても構わない。
【0091】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100の機能ブロック構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100がOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作フローを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号S及び準インパルス信号Ipの信号例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態においてピーク低減処理に用いるサブキャリアのグループと、当該サブキャリアの振幅の関係を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るサブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の時間信号を示す図である。
【図6】図5に示した時間信号に適切な位相の回転及びサイクリックシフトを施した信号を加算することによって、所望のピーク部分以外の不要なピーク部分を抑圧した後の時間信号を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る変更例に係る準インパルス信号の生成方法の説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る変更例に係る準インパルス信号の生成方法の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るOFDM信号送信装置100Aの機能ブロック構成図(一部)である。
【図10】本発明の変形例に係るOFDM信号送信装置の機能ブロック構成図(一部)である。
【符号の説明】
【0093】
100,100A…OFDM信号送信装置、101…シンボルマッピング部、103…制御信号生成部、105…サブキャリア割当部、107…OFDM信号生成部、109,109A…IFFT部、110,110A…ピーク低減処理部、111…割当制御部、113,113I,113Q…ピーク検出部、115,115I,115Q…準インパルス信号生成記憶部、117,117I,117Q…準インパルス信号処理部、119,119I,119Q…加算部、120…クリッピング・フィルタリング部、G1,G2…グループ、P1〜P3…ピーク部分、S,Sp…OFDM信号、I,Ip…準インパルス信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信または処理するOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重(OFDM)が用いられる無線通信システムでは、送信アンプの特性などに起因して、送信されるOFDM信号に含まれるサブキャリアの振幅値の平均と比較して非常に大きな振幅値を有するピーク部分が現れる問題、すなわち、ピーク電力対平均電力比(PAPR)が高くなる問題が発生することが知られている。
【0003】
このようなPAPRが高くなる問題を解決するため、ピーク部分のクリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法(例えば、特許文献1)や、ピークの振幅値が小さい部分信号系列を送信するPartial Transmit Sequence(PTS)法(例えば、特許文献2)が提案されている。
【非特許文献1】X. Li and L. J. Cimini,“Effects of clipping and filtering on the performance of OFDM”,IEEE Commun. Lett., vol.2, No.5, pp. 131-133,1998年5月
【非特許文献2】L. J and N. R. Sollenberger,“Peak-to-Average power ration reduction of an OFDM signal using partial transmit sequences”,IEEE Commun. Lett., vol.4, No.3, pp. 86-88,2000年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の方法には、次のような問題があった。具体的には、ピーク部分のクリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法では、フーリエ変換(FFT)及び逆フーリエ変換(IFFT)を複数回実行する必要がある。また、PTS法では、生成する部分信号系列数倍のIFFTを実行する必要がある。さらに、これらの部分系列信号を様々なパターンで合成し、ピーク部分を検出する必要がある。
【0005】
すなわち、上述した従来の方法では、PAPRを低減するために必要な処理量が増大するといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、OFDMが用いられる場合において、必要な処理量を抑制しつつ、PAPRを効果的に低減することができるOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号(OFDM信号S)を送信するOFDM信号送信装置(例えば、OFDM信号送信装置100)であって、暫定送信信号(OFDM信号S)に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分(ピーク部分P1)を検出するピーク検出部(ピーク検出部113)と、インパルス状の信号である準インパルス信号(準インパルス信号Ip)を出力する準インパルス信号出力部(例えば、準インパルス信号生成記憶部115)と、前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部(準インパルス信号処理部117)と、前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部(例えば、加算部119)とを備えることを要旨とする。
【0008】
このようなOFDM信号送信装置によれば、暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトが適用される。さらに、当該定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号が暫定送信信号に加算される。このため、当該ピーク部分を低減、つまり、PAPRを効果的に低減することができる。
【0009】
また、このようなOFDM信号送信装置によれば、クリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法などよりもフーリエ変換などに関する処理量を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、使用可能なサブキャリアを全て1+0iとして、前記サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された準インパルス信号のピーク部分以外の振幅のクリップ、或いは前記ピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、前記準インパルス信号に許可された条件を満たすように前記サブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、前記電力調整後のサブキャリア成分の逆フーリエ変換を実行する処理とを含む生成処理によって、前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0012】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された前記準インパルス信号に対して、前記準インパルス信号のピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された前記準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0013】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至第4の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、前記生成処理を繰り返すことによって前記準インパルス信号を生成することを要旨とする。
【0014】
本発明の第6の特徴は、本発明の第1乃至第5の特徴に係り、準インパルス信号処理部における定数倍は、複素定数による定数倍であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第7の特徴は、本発明の第6の特徴に係り、前記準インパルス信号出力部は、I相成分にピーク成分を有する準インパルス信号と、Q相成分にピーク成分を有する準インパルス信号を生成し、前記準インパルス信号処理部及び前記加算部における処理は、前記I相成分及び前記Q相成分のピーク成分に対して個別に行われ、前記準インパルス信号における定数倍は、実定数による定数倍とすることを要旨とする。
【0016】
本発明の第8の特徴は、本発明の第7の特徴に係り、前記ピーク部分の振幅のクリッピング、及び前記ピーク部分のフィルタリングを実行することによって、前記ピーク部分を抑圧するピーク部分抑圧部(クリッピング・フィルタリング部120)をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
本発明の第9の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号の処理を実行する信号処理チップであって、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備えることを要旨とする。
【0018】
本発明の第10の特徴は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信方法であって、暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するステップと、インパルス状の信号である準インパルス信号を出力するステップと、前記準インパルス信号に対して、前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用するステップと、前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算するステップとを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の特徴によれば、OFDMが用いられる場合において、必要な処理量を抑制しつつ、PAPRを効果的に低減することができるOFDM信号送信装置、信号処理チップ及びOFDM信号送信方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)作用・効果、及び(4)その他の実施形態について説明する。
【0021】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0022】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
(1)第1実施形態
本実施形態では、I相成分とQ相成分とを含むOFDM信号を一括して処理することによって、PAPRを低減するOFDM信号送信装置について説明する。
【0024】
(1.1)OFDM信号送信装置の構成
図1は、本実施形態に係るOFDM信号送信装置100の機能ブロック構成図である。なお、OFDM信号送信装置100は、信号処理チップとして提供される。
【0025】
OFDM信号送信装置100は、周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号Spを送信する。OFDM信号Spは、OFDM信号S(暫定送信信号)に含まれるピーク部分が低減されている。
【0026】
OFDM信号送信装置100は、シンボルマッピング部101、制御信号生成部103、サブキャリア割当部105、IFFT部109、ピーク低減処理部110及び割当制御部111を備える。
【0027】
また、ピーク低減処理部110は、ピーク検出部113、準インパルス信号生成記憶部115、準インパルス信号処理部117及び加算部119を備える。
【0028】
シンボルマッピング部101は、送信ビット列をOFDMシンボルにマッピングする。なお、シンボルマッピング部101では、QAMやPSKが変調方式として用いられる。
【0029】
制御信号生成部103は、サブキャリア割当部105において用いられる制御信号、例えば、無線フレーム内における無線リソースの割当情報(どの移動局宛のデータをどのOFDMシンボル及びサブキャリアで送信しているか)や、使用しているMCS情報(変調方式及び符号化率)を生成する。
【0030】
サブキャリア割当部105は、割当制御部111から出力された割当情報に基づき、制御信号生成部103から出力された制御信号に関するシンボル及びシンボルマッピング部101から出力されたデータ信号に関するシンボルをOFDMシンボル及びサブキャリアとして分割される無線リソースに割り当てる。
【0031】
IFFT部109は、サブキャリア割当部105によって割り当てられた各サブキャリアのOFDMシンボルを入力とし、当該OFDMシンボルに対応する時間信号を生成する。本実施形態では、I相成分とQ相成分との両成分が含まれるOFDM信号S(具体的には、図3参照)がピーク低減処理部110に出力される。
【0032】
ピーク低減処理部110は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに含まれるピーク部分を低減する処理を実行し、ピーク部分が低減されたOFDM信号Spを出力する。
【0033】
割当制御部111は、サブキャリア割当部105において用いられるサブキャリアの割当を制御する。
【0034】
具体的には、割当制御部111は、サブキャリア割当部105においてOFDMシンボル、サブキャリアとして分割された無線リソースを、ユーザデータなどのデータ伝送に用いるか、またはピーク低減処理に用いるかを決定する。割当制御部111は、ピーク低減処理に用いるサブキャリアをサブキャリア割当部105及び準インパルス信号生成記憶部115に通知する。
【0035】
(1.2)ピーク低減処理部110の機能ブロック構成
次に、ピーク低減処理部110の機能ブロック構成について説明する。上述したように、ピーク低減処理部110は、ピーク検出部113、準インパルス信号生成記憶部115、準インパルス信号処理部117及び加算部119を備える。
【0036】
ピーク検出部113は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出する。本実施形態では、ピーク検出部113は、I相成分とQ相成分を合成した振幅値(I2+Q2)0.5を計算し、所定の値よりも大きい振幅成分を持つ信号の振幅の大きさ、位相及び時間インデックスを出力する。
【0037】
準インパルス信号生成記憶部115は、OFDM信号Sに加算される準インパルス信号を生成する。
【0038】
本実施形態では、準インパルス信号生成記憶部115は、割当制御部111から通知されたピーク低減処理に用いるサブキャリアの振幅及び位相、つまり、I相成分とQ相成分とを、1+0i(実部(I相成分)+虚部(Q相成分))に設定する。
【0039】
さらに、準インパルス信号生成記憶部115は、当該サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、準インパルス信号を生成する。準インパルス信号生成記憶部115は、I相及びQ相が一括して処理された準インパルス信号を出力する。
【0040】
具体的には、図4に示すように、準インパルス信号生成記憶部115は、所定数のサブキャリアによって構成されるグループG1及びグループG2のうち、割当制御部111によってピーク低減処理に用いると決定されたグループG2に含まれるサブキャリアの振幅及び位相を1+0iに設定し、当該サブキャリアの逆フーリエ変換を実行する。なお、グループG1に含まれるサブキャリアは、データ伝送に用いられる。このため、本実施形態では、当該一部のサブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって得られるインパルス状の信号を準インパルス信号と呼ぶ。
【0041】
本実施形態では、準インパルス信号は、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリア(リソース)の条件に応じて、決定の都度、動的に作成される。
【0042】
また、図5は、当該サブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の「時間信号」(準インパルス信号)を示す。図5に示すように、当該サブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の時間信号には、所望のピーク部分P1、つまり、OFDM信号Sのピーク成分の抑圧に用いられるピーク部分に加え、不要なピーク部分P2及びピーク部分P3も発生する。
【0043】
準インパルス信号処理部117は、ピーク検出部113によって検出されたピーク部分の信号成分に基づいて、準インパルス信号Ip(図3参照)に対して、定数倍(本実施形態では、複素数)及びサイクリックシフトを実行し、当該処理が実行された準インパルス信号Ipを出力する。
【0044】
具体的には、準インパルス信号処理部117は、によって検出されたピーク部分をPとし、検出された時間インデックスをkとする。すなわち、(1式)のとおりとする。
【0045】
P=S(k) …(1式)
次いで、準インパルス信号処理部117は、ピーク検出部113から入力されたOFDMシンボルS(t)、及び準インパルス信号(ピークの振幅が1,位相は0に調整されているとする)を以下のとおりとする。
【0046】
S(t) t:0〜n−1
I(t) t:0〜n−1
さらに、準インパルス信号処理部117は、全ての準インパルス信号に対して、(2式)で示される値を乗算する。
【0047】
−|P−Ath|×exp(Arg(P)) …(2式)
ここで、Athは、ピーク低減目標値である。また、Arg(P)は、Pの位相である。また、準インパルス信号処理部117は、準インパルス信号をサイクリックシフトさせる。準インパルス信号処理部117で与えられるサイクリックシフト量はkであり、サイクリックシフト後の準インパルス信号は(3)式で示される(ただし、(2)式の乗算については、(3)式に反映していない)。
【0048】
I((t+k)mod n) …(3式)
準インパルス信号処理部117は、定数倍(複素数)及びサイクリックシフトを実行した準インパルス信号を加算部119に出力する。
【0049】
加算部119は、IFFT部109から出力されたOFDM信号Sに対して、準インパルス信号処理部117から出力された準インパルス信号Ipを加算する(図3参照)。
【0050】
本実施形態では、加算部119は、I相成分及びQ相成分が一括して処理された準インパルス信号IpをOFDM信号Sに加算する。
【0051】
(1.3)OFDM信号送信装置の動作
次に、OFDM信号送信装置100の動作について説明する。具体的には、OFDM信号送信装置100が、準インパルス信号を用いてOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作について説明する。図2は、OFDM信号送信装置100がOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作フローを示す図である。
【0052】
図2に示すように、ステップS10において、OFDM信号送信装置100は、ピーク低減処理に用いるサブキャリアに対して1+0iを設定し、その他のサブキャリアに対して0+0iを設定する。OFDM信号送信装置100は、これらのデータ系列に対して逆フーリエ変換を実行することによって、準インパルス信号を生成する。
【0053】
ステップS20において、OFDM信号送信装置100は、OFDM信号Sに含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出する。なお、ステップS10とステップS20の処理は、並行して実行されてもよい。
【0054】
ステップS30において、OFDM信号送信装置100は、生成した準インパルス信号の振幅制御、位相回転処理及びサイクリックシフト処理を実行する。
【0055】
ステップS40において、OFDM信号送信装置100は、当該処理を実行した準インパルス信号IpをOFDM信号Sに加算する。
【0056】
(1.4)変更例
準インパルス信号生成記憶部115は、以下のように準インパルス信号を生成してもよい。或いは、準インパルス信号生成記憶部115は、以下のように生成された信号を記憶しておき、当該信号を用いるようにしてもよい。
【0057】
準インパルス信号生成記憶部115は、上述した方法によって生成した準インパルス信号に対して、所望のピーク部分のみを残し、その他の不要な部分の信号を抑圧するように振幅調整、位相回転及びサイクリックシフトを施した信号を、同じ(或いは異なる)準インパルス信号に対して加算することによって、インパルス信号に近い信号を生成する。
【0058】
図6は、図5に示した時間信号に適切な振幅調整、位相回転及びサイクリックシフトを施し、図5に示した時間信号に足し合わせることによって、所望のピーク部分(ピーク部分P1)以外の不要なピーク部分(ピーク部分P2,P3)を抑圧した後の時間信号を示す。
【0059】
また、準インパルス信号生成記憶部115は、暫定的に生成されたピーク準インパルス信号をよりインパルス状に近づける他の方法として、当該サブキャリアの時間信号のピーク部分(ピーク部分P1)以外の振幅を調整(1より小さい値を乗算する、或いは振幅が一定値以上である信号の振幅を一定値に設定する)し、フーリエ変換を実行する。そして、準インパルス信号生成記憶部115は、ピーク低減信号として使用できない周波数成分を0に設定し、再び逆フーリエ変換を実行してもよい。
【0060】
なお、準インパルス信号生成記憶部115は、当該ピーク部分以外の振幅を調整する場合、ピーク部分を定数倍(>1)してもよい。
【0061】
なお、準インパルス信号処理部117は、上述した振幅の調整、位相の回転及びサイクリックシフトの処理を繰り返してもよい。また、本実施形態では、準インパルス信号は、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリアの条件に応じて、決定の都度、動的に作成されるが、準インパルス信号は、想定される条件(例えば、選択サブキャリアの組合せ)に対応する系列を事前に作成し、作成した系列を記憶するようにしてもよい。
【0062】
例えば、図7に示すように、時間波形(a)と(b)を記憶しておくことによって、準インパルス信号の生成のためにIFFTを実行する必要がなくなる。
【0063】
さらに、所定のセグメントに分割された系列に対する複数の準インパルス信号が記憶されている場合、ピーク低減処理に用いると決定されたサブキャリアが複数のセグメントに跨る場合、当該複数のセグメントに対する複数の準インパルス信号を足し合わせればよい。
【0064】
具体的には、図7に示したように時間波形を記憶しておいてもよいが、セグメント数が多い場合全てのセグメントの組み合わせは、2のセグメント数乗になる。このため、これら全ての時間波形を記憶しておくことは現実的ではない。
【0065】
例えば、図8に示すように、ケース3に示す時間波形に対応する波形は、図7に示した時間波形(a)と(b)とを合成することによって生成できる。すなわち、各セグメントのみを使用した場合の時間波形を記憶しておき、必要に応じて使用可能なセグメントに対応する時間波形を合成することによって、全てのパターンに対する準インパルス信号を生成することができる。
【0066】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、OFDM信号に含まれるI相成分とQ相成分とをそれぞれ別個に処理することによって、PAPRを低減するOFDM信号送信装置について説明する。また、以下、上述した第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
【0067】
図9は、本実施形態に係るOFDM信号送信装置100Aの機能ブロック構成図(一部)である。図9に示すようにOFDM信号送信装置100Aは、IFFT部109A及びピーク低減処理部110Aを備える。
【0068】
IFFT部109Aは、OFDM信号送信装置100のIFFT部109と同様にサブキャリアの逆フーリエ変換を実行する。つまり、IFFT部109Aは、IFFT部109と同様の処理を実行するが、OFDM信号SのI相成分とQ相成分とを分離して出力する。図7において、点線はI相成分を示し、実線はQ相成分を示す。
【0069】
ピーク低減処理部110Aは、I相成分及びQ相成分毎に独立して処理を実行する。I相成分の処理は、ピーク検出部113I、準インパルス信号生成記憶部115I、準インパルス信号処理部117I及び加算部119Iによって実行される。
【0070】
Q相成分の処理は、ピーク検出部113Q、準インパルス信号生成記憶部115Q、準インパルス信号処理部117Q及び加算部119Qによって実行される。
【0071】
準インパルス信号生成記憶部115I,155Qには、割当制御部111からサブキャリアの情報などが入力される。
【0072】
準インパルス信号生成記憶部115Iは、I相成分の+方向にピークが立っているインパルス状の信号を生成する。ただし、当該インパルス状の信号には、Q相成分も含まれる。これは、一部のサブキャリアのみしか使用していないため、一般にI相成分或いはQ相成分のみに0でない振幅成分を有する信号系列(準インパルス信号)を生成することができないためである。
【0073】
一方、準インパルス信号生成記憶部115Qは、Q相成分の+方向にピークが立っているインパルス状の信号を生成する。同様に当該インパルス状の信号には、I相成分も含まれる。
【0074】
準インパルス信号処理部117Iは、準インパルス信号生成記憶部115Iから出力された準インパルス信号のうち、I相成分を加算部119Iに出力し、Q相成分を加算部119Qに出力する。
【0075】
一方、準インパルス信号処理部117Qは、準インパルス信号生成記憶部115Qから出力された準インパルス信号のうち、Q相成分を加算部119Qに出力し、I相成分を加算部119Iに出力する。
【0076】
具体的には、準インパルス信号処理部117I,117Qは、I相成分及びQ相成分が独立して処理された準インパルス信号を出力する。具体的には、準インパルス信号処理部117I,117Qは、スカラー演算によって準インパルス信号の振幅調整を実行する。なお、スカラーの乗算では、複素数の乗算と比較して乗算回数が1/4になる。
【0077】
I相成分については、IFFT部109Aによって生成されたOFDM信号SのI相成分に対してピーク部分が検出される。検出されたピーク部分に関する情報は、準インパルス信号処理部117Iに入力される。
【0078】
準インパルス信号処理部117Iでは,入力されたピーク部分に関する情報に対応するピーク信号を抑制するように、準インパルス信号生成記憶部115Iから入力される準インパルス信号に対してサイクリックシフト及び振幅調整が実行される。当該処理が実行された後、準インパルス信号のI相成分を加算部119Iに出力する。また、準インパルス信号のQ相成分を加算部119Qに出力する。なお、Q相成分についても同様の処理が実行される。
【0079】
準インパルス信号処理部117I,117Qは、準インパルス信号生成記憶部115I,115Qによって生成された準インパルス信号のサイクリックシフト及び定数倍を実行する場合、正、負のどちらの値も用いることができる。また、当該定数の絶対値は、2の倍数とすることによって、FPGA/ASIC上において定数倍をビットシフトにより実行することが可能となる。本実施形態における全てのピーク低減処理を乗算を用いずに実行することができるため、ピーク低減に必要な処理部の回路規模を非常に小さく抑えることが可能となると考えられる。
【0080】
加算部119I,119Qは、I相成分及びQ相成分が独立して処理された準インパルス信号をOFDM信号に加算する。具体的には、加算部119Iは、IFFT部109Aから出力されたOFDM信号のI相成分に、I相成分の準インパルス信号を加算する。加算部119Qは、IFFT部109Aから出力されたOFDM信号のQ相成分に、Q相成分の準インパルス信号を加算する。
【0081】
(3)作用・効果
OFDM信号送信装置100(100A)によれば、OFDM信号S(暫定送信信号)中に検出されたピーク部分(例えば、ピーク部分P1)と、準インパルス信号Ip中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトが適用される。さらに、当該定数倍及びサイクリックシフトが適用された準インパルス信号Ipが暫定送信信号に加算される。このため、当該ピーク部分を低減、つまり、PAPRを効果的に低減することができる。
【0082】
また、OFDM信号送信装置100(100A)によれば、クリッピング及びフィルタリングを繰り返す方法などよりもフーリエ変換などに関する処理量を抑制することができる。
【0083】
本実施形態では、ピーク低減処理に用いるサブキャリアの振幅及び位相が1+0iに設定され、逆フーリエ変換が実行される。このため、所定の周波数成分のみを持つ準インパルス信号を容易に生成することが可能となる。
【0084】
本実施形態では、準インパルス信号生成記憶部115では、準インパルス信号Ipのピーク部分以外の振幅のクリップ、或いはピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、準インパルス信号Ipに許可された条件を満たすようにサブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、サブキャリアの逆フーリエ変換を実行する処理とを含む生成処理が実行される。また、当該処理を定回数繰り返すことによって準インパルス信号Ipが生成される。
【0085】
また、準インパルス信号生成記憶部115では、準インパルス信号Ipのピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号Ipを生成する。このため、当該ピーク部分をさらに効果的に低減することができる。
【0086】
(4)その他の実施形態
上述したように、本発明の第1及び第2実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0087】
例えば、上述した第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100には、ピーク部分の振幅のクリッピング、及びフィルタリングを実行する機能を追加してもよい。
【0088】
具体的には、図10(a)に示すように、OFDM信号送信装置100は、ピーク低減処理部110の後段に、従来と同様のクリッピング・フィルタリング部120を追加することができる。
【0089】
また、図10(b)に示すように、OFDM信号送信装置100には、ピークの振幅値が小さい部分信号系列を送信するPartial Transmit Sequence(PTS)を使用したOFDM信号生成部107を追加してもよい。
【0090】
さらに、上述した第1及び第2実施形態では、ピーク低減処理に用いるサブキャリアの時間信号のピーク部分以外の振幅が調整され、逆フーリエ変換が実行されたり、当該ピーク部分が定数倍されたりしていたが、当該処理は、必ずしも実行されなくても構わない。
【0091】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100の機能ブロック構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号送信装置100がOFDM信号のピーク部分を抑圧する動作フローを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るOFDM信号S及び準インパルス信号Ipの信号例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態においてピーク低減処理に用いるサブキャリアのグループと、当該サブキャリアの振幅の関係を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るサブキャリアの逆フーリエ変換が実行された後の時間信号を示す図である。
【図6】図5に示した時間信号に適切な位相の回転及びサイクリックシフトを施した信号を加算することによって、所望のピーク部分以外の不要なピーク部分を抑圧した後の時間信号を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る変更例に係る準インパルス信号の生成方法の説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る変更例に係る準インパルス信号の生成方法の説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るOFDM信号送信装置100Aの機能ブロック構成図(一部)である。
【図10】本発明の変形例に係るOFDM信号送信装置の機能ブロック構成図(一部)である。
【符号の説明】
【0093】
100,100A…OFDM信号送信装置、101…シンボルマッピング部、103…制御信号生成部、105…サブキャリア割当部、107…OFDM信号生成部、109,109A…IFFT部、110,110A…ピーク低減処理部、111…割当制御部、113,113I,113Q…ピーク検出部、115,115I,115Q…準インパルス信号生成記憶部、117,117I,117Q…準インパルス信号処理部、119,119I,119Q…加算部、120…クリッピング・フィルタリング部、G1,G2…グループ、P1〜P3…ピーク部分、S,Sp…OFDM信号、I,Ip…準インパルス信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信装置であって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、
前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、
前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備えるOFDM信号送信装置。
【請求項2】
前記準インパルス信号出力部は、使用可能なサブキャリアを全て1+0iとして、前記サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、前記準インパルス信号を生成する請求1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項3】
前記準インパルス信号出力部は、
暫定的に生成された準インパルス信号のピーク部分以外の振幅のクリップ、或いは前記ピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、
前記準インパルス信号に許可された条件を満たすように前記サブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、
前記電力調整後のサブキャリア成分の逆フーリエ変換を実行する処理と
を含む生成処理によって、前記準インパルス信号を生成する請求項1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項4】
前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された前記準インパルス信号に対して、前記準インパルス信号のピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された前記準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号を生成する請求項1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項5】
前記準インパルス信号出力部は、前記生成処理を繰り返すことによって前記準インパルス信号を生成する請求項1乃至4の何れか一項に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項6】
前記準インパルス信号処理部における定数倍は、複素定数による定数倍である請求項1乃至5の何れか一項に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項7】
前記準インパルス信号出力部は、I相成分にピーク成分を有する準インパルス信号と、Q相成分にピーク成分を有する準インパルス信号を生成し、
前記準インパルス信号処理部及び前記加算部における処理は、前記I相成分及び前記Q相成分のピーク成分に対して個別に行われ、
前記準インパルス信号における定数倍は、実定数による定数倍とする請求項6に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項8】
前記ピーク部分の振幅のクリッピング、及び前記ピーク部分のフィルタリングを実行することによって、前記ピーク部分を抑圧するピーク部分抑圧部をさらに備える請求項7に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項9】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号の処理を実行する信号処理チップであって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、
前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、
前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備える信号処理チップ。
【請求項10】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信方法であって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するステップと、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力するステップと、
前記準インパルス信号に対して、前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用するステップと、
前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算するステップと
を備えるOFDM信号送信方法。
【請求項1】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信装置であって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、
前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、
前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備えるOFDM信号送信装置。
【請求項2】
前記準インパルス信号出力部は、使用可能なサブキャリアを全て1+0iとして、前記サブキャリアの逆フーリエ変換を実行することによって、前記準インパルス信号を生成する請求1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項3】
前記準インパルス信号出力部は、
暫定的に生成された準インパルス信号のピーク部分以外の振幅のクリップ、或いは前記ピーク部分を定数倍した後フーリエ変換を実行する処理と、
前記準インパルス信号に許可された条件を満たすように前記サブキャリアのそれぞれの電力を調整する処理と、
前記電力調整後のサブキャリア成分の逆フーリエ変換を実行する処理と
を含む生成処理によって、前記準インパルス信号を生成する請求項1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項4】
前記準インパルス信号出力部は、暫定的に生成された前記準インパルス信号に対して、前記準インパルス信号のピーク部分以外の信号成分の振幅が小さくなるように、位相回転、巡回シフト及び定数倍を実行した信号に暫定的に生成された前記準インパルス信号を加算することによって、準インパルス信号を生成する請求項1に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項5】
前記準インパルス信号出力部は、前記生成処理を繰り返すことによって前記準インパルス信号を生成する請求項1乃至4の何れか一項に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項6】
前記準インパルス信号処理部における定数倍は、複素定数による定数倍である請求項1乃至5の何れか一項に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項7】
前記準インパルス信号出力部は、I相成分にピーク成分を有する準インパルス信号と、Q相成分にピーク成分を有する準インパルス信号を生成し、
前記準インパルス信号処理部及び前記加算部における処理は、前記I相成分及び前記Q相成分のピーク成分に対して個別に行われ、
前記準インパルス信号における定数倍は、実定数による定数倍とする請求項6に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項8】
前記ピーク部分の振幅のクリッピング、及び前記ピーク部分のフィルタリングを実行することによって、前記ピーク部分を抑圧するピーク部分抑圧部をさらに備える請求項7に記載のOFDM信号送信装置。
【請求項9】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号の処理を実行する信号処理チップであって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するピーク検出部と、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力する準インパルス信号出力部と、
前記準インパルス信号に対して、前記ピーク検出部によって前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用する準インパルス信号処理部と、
前記準インパルス信号処理部によって前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算する加算部と
を備える信号処理チップ。
【請求項10】
周波数が直交する複数のサブキャリアによって構成されるOFDM信号を送信するOFDM信号送信方法であって、
暫定送信信号に含まれ、振幅値が他の部分と比較して高いピーク部分を検出するステップと、
インパルス状の信号である準インパルス信号を出力するステップと、
前記準インパルス信号に対して、前記暫定送信信号中に検出された前記ピーク部分と、前記準インパルス信号中のピーク部分とが加算されることによって打ち消しあうように定数倍及びサイクリックシフトを適用するステップと、
前記定数倍及び前記サイクリックシフトが適用された前記準インパルス信号を前記暫定送信信号に加算するステップと
を備えるOFDM信号送信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−65385(P2009−65385A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230665(P2007−230665)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
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