説明

OFDM広範囲周波数誤差補正装置及びその方法

【課題】 OFDM信号を復調する際に、安定的に周波数誤差を補正することが可能なOFDM広範囲周波数誤差補正装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、直交復調同期検波手段20によって、周波数発振器10が発振する周波数によりOFDM信号を直交復調することで復調信号を生成し、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30によって、復調信号における周波数帯域の次数の偏移により周波数誤差を検出し、復調信号誤差補正手段40aによって、復調信号の周波数誤差を補正した補正復調信号を生成し、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50によって、補正復調信号の位相のずれ量により、補正復調信号における周波数誤差を検出し、復調信号誤差補正手段40bによって、補正復調信号の周波数誤差を補正することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM信号を復調する際に用いられる検波搬送波の周波数と、周波数発振器が発振する発振周波数との誤差を補正するOFDM広範囲周波数誤差補正装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OFDM復調装置において、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を復調する場合、そのOFDM信号を同期検波するために、OFDM信号の搬送波(キャリア)の中心周波数に一致した検波搬送波を内部で発生させなければならない。この検波搬送波を内部で発生させる理由は、OFDM信号には、検波搬送波の周波数を同期させるための信号が含まれていないからである。なお、OFDM信号において、許容できる検波搬送波の周波数のずれ(周波数誤差)は、例えば、地上デジタル放送の規格であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting‐Terrestrial)のモード3の伝送モードでは、1Hzといわれている。
【0003】
そこで、従来、OFDM復調装置では、周波数誤差補正装置によって、OFDM信号のガードインターバル期間の信号を利用して、検波搬送波の周波数と周波数発振器が発振する周波数との差(以下、「周波数誤差」という)を検出し、VCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)を制御することで、検波搬送波の周波数の補正を行っている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
ここで、図8を参照して、従来の周波数誤差補正装置について説明する。図8は、従来の周波数誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
なお、OFDM信号において、ガードインターバル期間の信号は、1シンボル(有効シンボル)期間の時間(以下、「シンボル時間」という)遅れた信号をコピーしたものである。このため、ガードインターバル期間の信号の瞬時位相と、シンボル時間遅れた信号の瞬時位相の差(以下、「シンボル位相差」という)は、周波数誤差に比例する。具体的には、シンボル位相差Δθは、以下の(1)式に示すように、周波数誤差Δfと、シンボル期間の時間Tとの積に“2π”を乗じた角度(ラジアン)となる。
【0005】
Δθ=2πΔfT …(1)式
【0006】
従って、シンボル位相差を取得することができれば、周波数誤差を求めることができる。
また、OFDM信号の瞬時位相は、OFDM信号を直交2相同期検波することで得られる同相成分である実数軸信号(以下、「I信号」という)と、直交成分である虚数軸信号(以下、「Q信号」という)との比の逆正接である。
【0007】
そこで、周波数誤差補正装置1Bは、直交復調手段3によって、周波数発振器(電圧制御発振器)2が生成する検波搬送波により、入力されたOFDM信号を直交同期検波(直交2相同期検波)し、I信号とQ信号とする。
そして、周波数誤差補正装置1Bは、検波周波数誤差検出手段4によって、I信号とQ信号との比の逆正接を演算することで、ガードインターバル期間の信号の瞬時位相と、1シンボル期間遅れた信号の瞬時位相とを求め、その差をとることでシンボル位相差を算出する。
【0008】
さらに、周波数誤差補正装置1Bは、検波周波数誤差検出手段4によって、シンボル位相差を、シンボル期間の時間Tと“2π”との積の値により除算を行うことで周波数誤差を算出する(前記(1)式参照)。そして、周波数誤差補正装置1Bは、周波数発振器2によって、検波周波数誤差検出手段4で算出された周波数誤差により、生成する検波搬送波の周波数を制御する。
これによって、周波数誤差補正装置1Bは、OFDM信号を同期検波した信号を生成することができる。
【特許文献1】特開2001−136143号公報(段落0036〜0049、図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の周波数誤差補正装置では、シンボル位相差が“2π”よりも大きい場合、すなわち、周波数誤差が、シンボル期間の逆数(以下、「シンボル基本周波数」という;ISDB−Tのモード3では、992Hz)より大きい場合、そのシンボル位相差は、前記(1)式に示すような、位相“2π”の周期性をもっているため、“2π”の整数倍で除した余りの位相(角度)のみが観察されることになる。このため、従来の周波数誤差補正装置では、シンボル位相差が“2π”よりも大きくなった場合、周波数誤差を求めることができない。
【0010】
また、従来の周波数誤差補正装置では、シンボル位相差が“π”より大きく“2π”よりも小さい場合、シンボル位相差は負の値をとるため、その位相(角度)からは、前記同様に周波数誤差を求めることができない。
すなわち、従来の周波数誤差補正装置では、前記(1)式に示した関係から、周波数誤差を算出することができる範囲は、正負でシンボル基本周波数の1/2の範囲となる。
【0011】
このため、従来の周波数誤差補正装置では、シンボル位相差によっては、周波数誤差を誤検出してしまう場合がある。また、従来の周波数誤差補正装置では、算出された周波数誤差を周波数発振器に帰還させるループ回路を形成する方式をとることで、検波搬送波の周波数を制御しているため、目的となる周波数の検波搬送波を生成するために時間遅れが生じてしまう。
【0012】
このように、従来の周波数誤差補正装置では、周波数誤差の誤検出や電圧制御発振器の制御・応答の遅れに伴って、動作が不安定になってしまうという問題がある。なお、電圧制御発振器の制御・応答の遅れを解決するためには、周波数発振器の周波数精度を上げる必要があるが、周波数発振器のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、OFDM信号を復調する際に、周波数発振器の精度が低い場合であっても、周波数発振器が発振する周波数を制御することなく、周波数誤差を検出し、その周波数誤差がシンボル基本周波数の1/2より大きくなる場合であっても、安定的に周波数誤差を補正することが可能なOFDM広範囲周波数誤差補正装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置は、固有の周波数を発振する周波数発振器を備え、入力された直交周波数分割多重方式で変調されたOFDM信号を前記周波数に基づいて直交復調したときの周波数誤差を補正するOFDM広範囲周波数誤差補正装置であって、直交復調手段と、第一の周波数誤差検出手段と、第一の復調信号誤差補正手段と、第二の周波数誤差検出手段と、第二の復調信号誤差補正手段とを備える構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、直交復調手段によって、周波数発振器が発振する周波数に基づいて、OFDM信号を直交復調することで復調信号を生成する。なお、この復調信号には、周波数発振器で発生される検波搬送波の周波数と、OFDM信号の搬送波の中心周波数との誤差(周波数誤差)が含まれている。
【0016】
そのため、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第一の周波数誤差検出手段によって、直交復調手段で生成された復調信号を周波数領域変換(高速フーリエ変換等)することで得られるスペクトルにおける周波数帯域の次数の偏移を計測し、復調信号の周波数誤差を検出する。すなわち、第一の周波数誤差検出手段は、復調信号の周波数帯域の次数と、予め規格化されているOFDM信号の周波数帯域の次数との差異によって周波数誤差を求める。
【0017】
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第一の復調信号誤差補正手段によって、第一の周波数誤差検出手段で検出された周波数誤差に基づいて復調信号を補正し、補正復調信号を生成する。なお、第一の周波数誤差検出手段で検出された周波数誤差は周波数領域変換により離散的な値によって求められたものであるため、補正復調信号には誤差(残留誤差)が含まれている。
【0018】
そのため、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第二の周波数誤差検出手段によって、第一の復調信号誤差補正手段で生成された補正復調信号の位相のずれ量を計測し、補正復調信号の周波数誤差(残留誤差)を検出する。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第二の復調信号誤差補正手段によって、第二の周波数誤差検出手段で検出された周波数誤差に基づいて、補正復調信号をさらに補正する。
これによって、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、周波数発振器で発生される検波搬送波の周波数と、OFDM信号の搬送波の中心周波数との周波数誤差を補正し、同期検波された信号を生成することができる。
【0019】
また、請求項2に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置は、請求項1に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置において、前記第一又は第二の復調信号誤差補正手段は、それぞれの入力信号である前記直交復調手段で生成された復調信号又は前記第一の復調信号誤差補正手段で生成された補正復調信号に含まれるシンボルの実数軸成分であるI信号と虚数軸成分であるQ信号とをそれぞれ時間毎に補正することとした。
【0020】
かかる構成によれば、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第一の復調信号誤差補正手段において、直交復調手段で生成された復調信号に対して、シンボルの実数軸成分であるI信号と虚数軸成分であるQ信号とを時間毎に直接補正する。また、第二の復調信号誤差補正手段においても、第一の復調信号誤差補正手段で生成された補正復調信号に対して、I信号とQ信号とを時間毎に直接補正する。これによって、周波数発振器が発振する周波数を制御することなく周波数誤差の補正が可能になる。
【0021】
さらに、請求項3に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置は、請求項1又は請求項2に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置において、前記第一の周波数誤差検出手段が、周波数領域変換手段と、誤差次数計測手段と、次数・周波数変換手段とを備える構成とした。
【0022】
かかる構成によれば、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第一の周波数誤差検出手段における周波数領域変換手段によって、OFDM信号におけるシンボル期間より長い時間長を時間窓として、復調信号を周波数のスペクトルに変換する。例えば、周波数領域変換手段は、1シンボル期間の2のべき乗倍(例えば、2、4、8等の整数)の時間長を時間窓として、復調信号を高速フーリエ変換する。なお、時間窓を1シンボル期間の2のべき乗倍とするのは、高速フーリエ変換(FFT)を行うための条件であるからである。
【0023】
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、誤差次数計測手段によって、周波数領域変換手段で変換された周波数のスペクトルの帯域における上側波帯幅次数又は下側波帯幅次数に基づいて、復調信号の帯域と予め定められているOFDM信号の帯域との誤差を、復調信号における周波数誤差の次数として計測する。これによって、周波数誤差が、周波数の次数の差として求められる。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、次数・周波数変換手段によって、誤差次数計測手段で計測された次数を対応する周波数に変換する。これによって、復調信号における周波数誤差が求められる。
【0024】
また、請求項4に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置において、前記第二の周波数誤差検出手段が、シンボル長周波数領域変換手段と、SP信号位置検出手段と、SP信号角度検出手段と、角度・周波数変換手段とを備える構成とした。
【0025】
かかる構成によれば、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、第二の周波数誤差検出手段におけるシンボル長周波数領域変換手段によって、第一の復調信号誤差補正手段で補正された補正復調信号を、シンボル長(有効シンボル長)毎の時間窓で周波数領域変換(高速フーリエ変換)する。このように、シンボル毎に周波数領域変換することで、各シンボルの複素平面(シンボル信号配置図)上における位置を取得することが可能になる。一般に、どのシンボルがどの位置に対応するのかを判定することはできないが、OFDM信号におけるスキャッタードパイロット信号は、複素平面における実数軸上に配置される。
そこで、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、SP信号位置検出手段によって、シンボル長周波数領域変換手段で変換された周波数のスペクトルにおいて、スキャッタードパイロット信号の位置を検出する。
【0026】
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、SP信号角度検出手段によって、シンボル信号配置図の原点位置に対するスキャッタードパイロット信号の位置の回転角度(位相のずれ量)を検出する。これによって、第一の復調信号誤差補正手段で補正された補正復調信号における周波数誤差(残留誤差)が、回転角度として求められる。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置は、角度・周波数変換手段によって、SP信号角度検出手段で検出された回転角度を周波数に変換する。これによって、補正復調信号における周波数誤差が求められる。
【0027】
さらに、請求項5に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正方法は、固有の周波数を発振する周波数発振器を備えた周波数誤差補正装置において、入力された直交周波数分割多重方式で変調されたOFDM信号を前記周波数に基づいて直交復調したときの周波数誤差を補正するOFDM広範囲周波数誤差補正方法であって、直交復調ステップと、第一の周波数誤差検出ステップと、第一の復調信号誤差補正ステップと、第二の周波数誤差検出ステップと、第二の復調信号誤差補正ステップとを含む手順とした。
【0028】
この手順によれば、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、直交復調ステップによって、周波数発振器が発振する周波数に基づいて、OFDM信号を直交復調することで復調信号を生成する。なお、この復調信号には、周波数発振器で発生される検波搬送波の周波数と、OFDM信号の搬送波の中心周波数との誤差(周波数誤差)が含まれている。
【0029】
そのため、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、第一の周波数誤差検出ステップによって、直交復調ステップで生成された復調信号を周波数領域変換(高速フーリエ変換等)することで得られるスペクトルにおける周波数帯域の次数の偏移を計測し、復調信号の周波数誤差を検出する。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、第一の復調信号誤差補正ステップによって、第一の周波数誤差検出ステップで検出された周波数誤差に基づいて復調信号を補正し、補正復調信号を生成する。なお、第一の周波数誤差検出ステップで検出された周波数誤差は周波数領域変換により離散的な値によって求められたものであるため、補正復調信号には誤差(残留誤差)が含まれている。
【0030】
そのため、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、第二の周波数誤差検出ステップによって、第一の復調信号誤差補正ステップで生成された補正復調信号の位相のずれ量を計測し、補正復調信号の周波数誤差(残留誤差)を検出する。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、第二の復調信号誤差補正ステップによって、第二の周波数誤差検出ステップで検出された周波数誤差に基づいて、補正復調信号をさらに補正する。
これによって、OFDM広範囲周波数誤差補正方法は、周波数発振器で発生される検波搬送波の周波数と、OFDM信号の搬送波の中心周波数との周波数誤差を補正し、同期検波された信号を生成することができる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1又は請求項5に記載の発明によれば、OFDM信号を受信する際の同期検波に周波数誤差が含まれている場合であっても、最初に、周波数領域変換された周波数帯域の次数の偏移により、周波数誤差を補正するため、広範囲な周波数誤差であっても、±f0/2以内(f0は周波数領域変換を行った際の周波数間隔)に周波数誤差を補正することができる。また、本発明は、さらに、±f0/2以内の周波数誤差を、位相のずれ量に基づいて補正するため、精度よく周波数誤差を補正することができる。
これによって、本発明は、広範囲な周波数誤差に対して精度よく、かつ、安定して復調信号を周波数誤差の少ない信号に補正することができる。
【0032】
請求項2に記載の発明によれば、I信号とQ信号とをそれぞれ時間毎に直接補正するため、従来のような、周波数発振器が発振する周波数を制御するような帰還を伴う処理を行わない。このように、本発明は、帰還を伴わない開回路の制御で実現することができるので、閉回路制御で発生しやすい検波周波数の変動に伴う不安定な動作が生じない。また、このI信号及びQ信号の補正は演算により行うことができるので、補正による復調信号に対する雑音が増加することもなく、常に安定した同期検波の動作を実現することができる。
【0033】
請求項3に記載の発明によれば、シンボル期間より長い時間長を時間窓として、FFTし、周波数誤差を補正することで、その周波数誤差を、±f0/2以内(f0はFFTを行った時間窓で決まる周波数間隔)に縮小することができる。これによって、例えば、地上デジタル放送において、OFDM信号を受信する際に、従来では、約500Hzを超えた周波数誤差の補正を行うことができなかったが、本発明によれば、約1MHzの広範囲な周波数誤差を補正することが可能になる。
さらに、本発明によれば、周波数発振器の誤差の許容範囲を広げることができるので、周波数発振器に関する製造コストを低減させることができる。
【0034】
請求項4に記載の発明によれば、シンボル信号配置図の原点位置に対するスキャッタードパイロット信号の位置の回転角度(位相のずれ量)によって、直接周波数誤差を検出することができるため、精密な周波数誤差を検出することができ、また、精度の高い同期検波された信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[OFDM広範囲周波数誤差補正装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の構成について説明する。図1は、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、入力されたOFDM信号を復調する際に用いられる検波搬送波の周波数(検波周波数)と、周波数発振器が発振する発振周波数との誤差を補正し、同期検波された信号を生成するものである。ここでは、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、周波数発振器10と、直交復調同期検波手段20と、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30と、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50と、2つの復調信号誤差補正手段40(40a,40b)とを備えている。
【0036】
周波数発振器10は、固有の周波数を発振することで、同期検波用の検波搬送波を発生させるもので、例えば、電圧制御発振器である。この周波数発振器10で発生された検波搬送波は、直交復調同期検波手段20に出力される。なお、この周波数発振器10で発生される検波搬送波の周波数と、外部から入力されるOFDM信号の搬送波(キャリア)の中心周波数とは同一であることが好ましいが、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1においては、その必要はなく、その誤差(周波数誤差)は以降で説明する各手段で補正される。
【0037】
直交復調同期検波手段(直交復調手段)20は、周波数発振器10が発振する周波数に基づいて、入力されたOFDM信号を直交復調することで同期検波した復調信号を生成するものである。この直交復調同期検波手段20で生成された復調信号は、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30と、復調信号誤差補正手段40aとに出力される。
【0038】
具体的には、入力されたOFDM信号のI信号(実数軸信号)をI0、Q信号(虚数軸信号)をQ0、周波数誤差をΔf、時間をtとしたとき、直交復調同期検波手段20は、以下の(2)式により、入力されたOFDM信号を直交復調することで復調信号(Ie(実数軸信号)及びQe(虚数軸信号))を生成する。
【0039】
【数1】

【0040】
なお、本来の直交復調の目的は、入力されたOFDM信号のI信号(I0)及びQ信号(Q0)を得ることであるが、周波数誤差Δfが存在するため、前記(2)式に示すように、直交復調同期検波手段20で生成された復調信号(Ie及びQe)は、I0及びQ0とは異なる値となる。すなわち、周波数誤差Δfが判別できれば、以下の(3)式により、I信号(I0)及びQ信号(Q0)を得ることができる。
【0041】
【数2】

【0042】
そこで、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30と、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50と、2つの復調信号誤差補正手段40(40a,40b)とに基づいて、周波数誤差Δfの補正を行う。
【0043】
帯域幅周波数計測方式誤差検出手段(第一の周波数誤差検出手段)30は、直交復調同期検波手段20で生成された復調信号(Ie及びQe)を周波数領域変換し、その変換結果であるスペクトルにおける周波数帯域の次数の偏移に基づいて、復調信号の周波数誤差を検出するものである。この帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30で検出された復調信号の周波数誤差Δf1は、復調信号誤差補正手段40aに出力される。
【0044】
ここで、図4を参照して、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30が行う周波数誤差の検出手法の概要について説明する。図4は、周波数軸上におけるOFDM信号の帯域幅次数と、上側波帯幅次数と、下側波帯幅次数と、検波周波数における周波数誤差次数との関係を示す図である。ここで、次数とは、周波数領域に変換されたスペクトルにおける高調波の次数を示している。また、この次数は、検波周波数と同じ周波数のスペクトルの次数を“0”として、FFTを行った際の時間窓(FFTウィンドウ)で決まる周波数間隔単位で増減し、検波周波数より高い周波数のスペクトルの次数は正で、逆に検波周波数より低い周波数のスペクトルの次数は負となる。さらに、上側波帯幅次数は、検波周波数より高い側(上側)のスペクトルが展開する周波数幅を前記の周波数間隔単位で表した数値で、下側波帯幅次数は、検波周波数より低い側(下側)のスペクトルが展開する周波数幅を前記の周波数間隔単位で表した数値である。
【0045】
図4に示すように、理想となる検波周波数(基準時)が帯域の中心Cに等しい場合、すなわち、検波周波数動作値がBの中心と一致する場合には、その中心Cを境とした検波周波数の上側(高周波側;図中右側)の帯域幅の次数と、下側(低周波側;図中左側)の帯域幅の次数とは同じ次数になる。
【0046】
ここで、検波周波数に周波数誤差がある場合は、検波周波数の上側の帯域幅次数(上側波帯幅次数)nUと、下側の帯域幅次数(下側波帯幅次数)nLとが異なってくる。すなわち、次数nUと次数nBとの差が、周波数誤差の次数nに等しくなる。
そこで、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30(図1参照)は、上側波帯幅次数nUを計測し、OFDM信号の帯域幅の次数として規格で定まっている次数nBとの差を求めることで、動作時における周波数誤差の次数nを求め、その次数nを周波数に変換することで、周波数誤差を検出する。
【0047】
次に、図2を参照(適宜図1参照)して、図4で説明した周波数誤差を検出するための帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30の構成について説明する。図2は、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置における帯域幅周波数計測方式誤差検出手段の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30は、周波数領域変換手段31と、スペクトル帯域幅次数計測手段32と、次数・周波数変換手段33とを備えている。
【0048】
周波数領域変換手段31は、直交復調同期検波手段20で生成された復調信号(Ie及びQe)を、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)することで、周波数領域のスペクトルP(電力スペクトル)に変換するものである。この周波数領域変換手段31で変換されたスペクトルPは、スペクトル帯域幅次数計測手段32に出力される。
なお、この周波数領域変換手段31は、1シンボル期間の2のべき乗倍(例えば、2、4、8等の整数)の時間長を時間窓(FFTウィンドウ)として、復調信号を高速フーリエ変換する。
【0049】
スペクトル帯域幅次数計測手段(誤差次数計測手段)32は、周波数領域変換手段31で変換された周波数のスペクトルの帯域における上側波帯幅次数に基づいて、復調信号とOFDM信号との帯域の誤差を、復調信号における周波数誤差の次数として計測するものである。
すなわち、スペクトル帯域幅次数計測手段32は、図4に示したように、例えば、上側の帯域幅におけるスペクトルの本数を、次数(上側波帯幅次数)nUとして計測し、OFDM信号の帯域幅の次数として規格で定まっている次数nBとの差を求め、動作時における周波数誤差の次数nとして算出する。この周波数誤差の次数nは、次数・周波数変換手段33に出力される。
【0050】
なお、ここでは、スペクトル帯域幅次数計測手段32は、上側波帯幅次数に基づいて、周波数誤差の次数nを算出することとしているが、下側波帯幅次数nLを計測し、OFDM信号の帯域幅の次数として規格で定まっている次数nBとの差を求め、動作時における周波数誤差の次数nとして算出することとしてもよい。
【0051】
次数・周波数変換手段33は、スペクトル帯域幅次数計測手段32で計測された周波数誤差の次数を周波数に変換し、周波数誤差を算出するものである。
なお、周波数誤差をΔf1、周波数領域変換手段31でFFTを行った際の時間窓(FFTウィンドウ)で決まる周波数間隔をf0とすると、周波数誤差Δf1とその周波数誤差の次数nとは、以下の(4)式に示す関係を有している。
【0052】
Δf1=nf0 …(4)式
【0053】
そこで、次数・周波数変換手段33は、この(4)式により、周波数誤差Δf1を算出する。
なお、前記(4)式における次数nは整数値であり、FFTは離散的な値で処理を行っている。このため、周波数誤差Δf1は、FFTウィンドウで決まる周波数間隔f0の整数倍の値しか扱えない。すなわち、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30で検出される周波数誤差には、周波数間隔±f0/2以内の差異(残留誤差)が残ることになる。なお、この周波数誤差Δf1(残留誤差)は、FFTウィンドウの時間を長くすることで小さくなるが、実際にFFTウィンドウの時間を無限大にすることはできないため、完全になくすことはできない。
図1に戻って、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1の構成の説明を続ける。
【0054】
復調信号誤差補正手段(第一の周波数誤差検出手段)40aは、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30で検出された周波数誤差Δf1に基づいて、復調信号を補正し、補正復調信号を生成するものである。この復調信号誤差補正手段40aで生成された補正復調信号は、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50と、復調信号誤差補正手段40bとに出力される。
【0055】
この復調信号誤差補正手段40aは、直交復調同期検波手段20で生成された復調信号(Ie及びQe)と、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30で検出された周波数誤差Δf1とに基づいて、復調信号を補正する。この復調信号誤差補正手段40aは、前記(3)式と同様の演算により補正復調信号を生成する。すなわち、生成される補正復調信号のI信号をIe2、Q信号をQe2とすると、復調信号誤差補正手段40aは、以下の(5)式により補正復調信号を生成する。
【0056】
【数3】

【0057】
この復調信号誤差補正手段40aによって、周波数誤差は、±周波数間隔(f0)/2以内に縮小されることになる。なお、この周波数誤差については、後記するスキャッタードパイロット式誤差検出手段50と、復調信号誤差補正手段40bとにより補正が行われる。
【0058】
スキャッタードパイロット式誤差検出手段(第二の周波数誤差検出手段)50は、復調信号誤差補正手段40aで生成された補正復調信号の位相のずれ量である、スキャッタードパイロット信号のシンボル信号配置図(コンスタレーション)における回転角度に基づいて、補正復調信号の周波数誤差を検出するものである。このスキャッタードパイロット式誤差検出手段50で検出された補正復調信号の周波数誤差は、復調信号誤差補正手段40bに出力される。
【0059】
ここで、図5及び図6を参照(適宜図1参照)して、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50が行う周波数誤差の検出手法の概要について説明する。図5は、スキャッタードパイロット式誤差検出手段の機能を示す機能ブロック図である。図6は、スキャッタードパイロット信号の回転角度の変化状況を示すシンボル信号配置図である。
【0060】
図5に示すように、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50は、シンボル(シンボル番号#1、#2、#3、#4、#5…)毎に補正復調信号(Ie2及びQe2)を高速フーリエ変換(FFT)する。なお、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50は、図6に示すように、各シンボルのシンボル長(有効シンボル長)Tsを時間窓(FFTウィンドウ)としてFFTを行う。なお、この有効シンボル長Tsは、ISDB−Tのモード3では、1008μsである。
【0061】
そして、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50は、FFTされたスペクトルの中でスキャッタードパイロット信号を、シンボル信号配置図の複素平面上の位置として検出し、シンボル毎にその平均位置から、回転角度(SP信号角度θ1、θ2、θ3、θ4、θ5…)を検出する。
【0062】
なお、OFDM信号は、1シンボルあたり5617本(ISDB−Tのモード3の場合)のキャリア(複素値)であり、64QAM方式の変調方式の場合、図6に示すようにシンボル信号配置図上の64箇所の位置に各シンボルの複素値が配置される。また、スキャッタードパイロット信号は、OFDM信号の12周波数間隔毎に配置されているため、1シンボルのキャリアに対して約12分の1にあたる469本に出現する。また、スキャッタードパイロット信号は、シンボル信号配置図の実数軸上の0度方向と180度方向とに半分ずつに分かれて現れる(図6中、SP1、SP2)。そして、シンボル毎のキャリアは、周波数誤差が存在する場合、シンボル信号配置図の原点を中心として、全体として回転した位置に配置される。
そこで、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50は、シンボル毎のスキャッタードパイロット信号の回転角度(SP信号角度:θ1、θ2、θ3、θ4、θ5…)の差を、周波数に変換することで、周波数誤差Δf2を検出する。
【0063】
次に、図3を参照(適宜図1参照)して、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50の構成について説明する。図3は、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置におけるスキャッタードパイロット式誤差検出手段の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50は、シンボル長周波数領域変換手段51と、SP信号位置検出手段52と、SP信号角度検出手段53と、角度・周波数変換手段54とを備えている。
【0064】
シンボル長周波数領域変換手段51は、復調信号誤差補正手段40aで生成された補正復調信号(Ie2及びQe2)を、高速フーリエ変換(FFT)することで、周波数領域のスペクトルPに変換するものである。このシンボル長周波数領域変換手段51で変換されたスペクトルPは、SP信号位置検出手段52に出力される。
なお、このシンボル長周波数領域変換手段51は、シンボル(有効シンボル)長の時間長を時間窓(FFTウィンドウ)として、シンボル毎に補正復調信号を高速フーリエ変換する。
【0065】
SP信号位置検出手段52は、シンボル長周波数領域変換手段51で変換されたスペクトルの実数部の値と、虚数部の値とに基づいて、OFDM信号に含まれるスキャッタードパイロット信号の位置を検出するものである。このSP信号位置検出手段52で検出されたスキャッタードパイロット信号の位置(実数部の値、虚数部の値)は、SP信号角度検出手段53に出力される。
【0066】
このスキャッタードパイロット信号は、図6に示したように、シンボル信号配置図の実数軸上における0度方向と180度方向の位置とに現れる。しかし、検波周波数に周波数誤差がある場合、その周波数誤差に対応して、スキャッタードパイロット信号の位置は、シンボル信号配置図の原点を中心に回転する。そこで、以下のSP信号角度検出手段53によって、その回転角度を検出する。
【0067】
SP信号角度検出手段53は、SP信号位置検出手段52で検出されたスキャッタードパイロット信号の位置に基づいて、複素平面(シンボル信号配置図)上におけるスキャッタードパイロット信号の位置の回転角度(SP信号角度)をシンボル毎に検出するものである。このSP信号角度検出手段53で検出されたSP信号角度は、角度・周波数変換手段54に出力される。
【0068】
なお、スキャッタードパイロット信号は、実数軸上の0度方向と180度方向とに半分ずつ分かれて現れるが、それぞれは、雑音等の影響で若干ずれた位置に現れる。
そこで、SP信号角度検出手段53は、シンボル信号配置図の実数軸上の0度方向と180度方向とに現れるスキャッタードパイロット信号の位置をシンボル毎に平均化し、それぞれの平均位置に基づいて、スキャッタードパイロット信号の位置のSP信号角度を算出する。
なお、SP信号角度は、周波数誤差が正の場合は、シンボル番号が増加するに伴い増加し、逆に周波数誤差が負の場合は減少する。
【0069】
角度・周波数変換手段54は、SP信号角度検出手段53で検出されたSP信号角度を周波数に変換することで周波数誤差を算出するものである。ここで、シンボル毎のSP信号角度の差をΔθ、周波数誤差をΔf2、シンボル基本周波数をTとすると、前記(1)式と同様に、以下の(6)式の関係が成り立つ。
【0070】
Δθ=2πΔf2T …(6)式
【0071】
そこで、シンボル番号がm1番目のSP信号角度をθm1、シンボル番号がm2番目のSP信号角度をθm2とすると、以下の(7)式で周波数誤差Δf2を算出することができる。
【0072】
【数4】

【0073】
そして、角度・周波数変換手段54は、前記(7)式で算出した周波数誤差Δf2を復調信号誤差補正手段40bに出力する。
図1に戻って、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1の構成の説明を続ける。
【0074】
復調信号誤差補正手段(第二の周波数誤差検出手段)40bは、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50で検出された周波数誤差Δf2に基づいて、復調信号誤差補正手段40aで補正された補正復調信号をさらに補正し、周波数誤差を除去した復調信号(同期復調信号)を生成するものである。
この復調信号誤差補正手段40bは、復調信号誤差補正手段40aと同一のものであり、生成される同期復調信号は、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1に入力されるOFDM信号を同期検波した信号となる。
【0075】
以上説明したように、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1を構成することで、OFDM信号を同期検波する際に、例えば、地上デジタル放送において、従来では、約500Hzを超えた周波数誤差の補正を行うことができなかったが、約1MHzの広範囲に周波数誤差が発生しても、補正が可能になり、精度よく且つ安定して同期検波した復調信号を得ることができる。
【0076】
[OFDM広範囲周波数誤差補正装置の動作]
次に、図7を参照(構成については、適宜図1乃至図3参照)して、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の動作について説明する。図7は、本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の動作を示すフローチャートである。
【0077】
(直交復調ステップ)
まず、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、直交復調同期検波手段20によって、周波数発振器10が発振する周波数に基づいて、入力されたOFDM信号を直交復調することで同期検波した復調信号を生成する(ステップS1;前記(2)式参照)。しかし、周波数発振器10が発振する周波数は、OFDM信号を同期検波するための同期検波周波数に対して誤差を含んでいる。このため、生成された復調信号は、周波数誤差を含んだ信号となる。
そこで、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30と、復調信号誤差補正手段40aとによって、復調信号を高速フーリエ変換(FFT)する際の時間窓(FFTウィンドウ)で決まる周波数間隔の1/2以内に、復調信号の周波数誤差を補正する。
【0078】
(第一の周波数誤差検出ステップ)
すなわち、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30の周波数領域変換手段31によって、ステップS1で生成された復調信号(Ie及びQe)を、1シンボル期間の2のべき乗倍の時間長の時間窓で高速フーリエ変換(FFT)することで、周波数領域のスペクトルに変換する(ステップS2)。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、スペクトル帯域幅次数計測手段32によって、ステップS2で変換されたスペクトルにおいて、検波周波数のスペクトルの次数が、OFDM信号の帯域幅の次数に対して、どれだけずれているかを計測することで、周波数誤差の次数を計測する(ステップS3)。
【0079】
さらに、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、次数・周波数変換手段33によって、ステップS3で計測された周波数誤差の次数と、FFTウィンドウで決まる周波数間隔とを乗算することで、周波数誤差の次数を、周波数誤差に変換する(ステップS4;前記(4)式参照)。
これによって、帯域幅周波数計測方式誤差検出手段30において、復調信号における周波数誤差が検出されたことになる。
【0080】
(第一の復調信号誤差補正ステップ)
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、復調信号誤差補正手段40aによって、ステップS1で生成された復調信号に対して、第一の周波数誤差検出ステップ(ステップS1〜ステップS4)で検出された周波数誤差の補正を行い、補正復調信号を生成する(ステップS5;前記(5)式参照)。
【0081】
これによって、FFTウィンドウで決まる周波数間隔の1/2以内に周波数誤差が補正された補正復調信号が生成されたことになる。ただし、この段階においても、周波数間隔の1/2以内の誤差(残留誤差)が残っている。
そこで、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50と、復調信号誤差補正手段40bとによって、残留誤差分の補正を行う。
【0082】
(第二の周波数誤差検出ステップ)
すなわち、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50のシンボル長周波数領域変換手段51によって、有効シンボル長の時間長を時間窓(FFTウィンドウ)として、シンボル毎に補正復調信号を高速フーリエ変換する(ステップS6)。
【0083】
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、SP信号位置検出手段52によって、ステップS6で変換されたスペクトルの実数部の値と、虚数部の値とに基づいて、OFDM信号に含まれるスキャッタードパイロット信号の位置を検出する(ステップS7)。
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、SP信号角度検出手段53によって、ステップS7で検出されたスキャッタードパイロット信号の位置に基づいて、複素平面(シンボル信号配置図)上におけるスキャッタードパイロット信号の位置の回転角度(SP信号角度)をシンボル毎に検出する(ステップS8)。
【0084】
さらに、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、角度・周波数変換手段54によって、ステップS8で検出されたシンボル毎のSP信号角度の差を周波数(周波数誤差)に変換する(ステップS9;前記(7)式参照)。
これによって、スキャッタードパイロット式誤差検出手段50において、補正復調信号における周波数誤差(残留誤差)が検出されたことになる。
【0085】
(第二の復調信号誤差補正ステップ)
そして、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、復調信号誤差補正手段40bによって、ステップS5で生成された補正復調信号に対して、第二の周波数誤差検出ステップ(ステップS6〜ステップS9)で検出された周波数誤差の補正を行い、同期復調信号を生成する(ステップS10)。
以上の動作によって、OFDM広範囲周波数誤差補正装置1は、OFDM信号を同期検波するための誤差を持った同期検波周波数に基づく復調出力の周波数誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置における帯域幅周波数計測方式誤差検出手段の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置におけるスキャッタードパイロット式誤差検出手段の構成を示すブロック図である。
【図4】周波数軸上におけるOFDM信号の帯域幅次数と、上側波帯幅次数と、下側波帯幅次数と、検波周波数における周波数誤差次数との関係を示す図である。
【図5】スキャッタードパイロット式誤差検出手段の機能を示す機能ブロック図である。
【図6】スキャッタードパイロット信号の回転角度の変化状況を示すシンボル信号配置図である。
【図7】本発明に係るOFDM広範囲周波数誤差補正装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の周波数誤差補正装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0087】
1 OFDM広範囲周波数誤差補正装置
10 周波数発振器
20 直交復調同期検波手段(直交復調手段)
30 帯域幅周波数計測方式誤差検出手段(第一の周波数誤差検出手段)
31 周波数領域変換手段
32 スペクトル帯域幅次数計測手段(誤差次数計測手段)
33 次数・周波数変換手段
40a 復調信号誤差補正手段(第一の復調信号誤差補正手段)
40b 復調信号誤差補正手段(第二の復調信号誤差補正手段)
50 スキャッタードパイロット式誤差検出手段(第二の周波数誤差検出手段)
51 シンボル長周波数領域変換手段
52 SP信号位置検出手段
53 SP信号角度検出手段
54 角度・周波数変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の周波数を発振する周波数発振器を備え、入力された直交周波数分割多重方式で変調されたOFDM信号を前記周波数に基づいて直交復調したときの周波数誤差を補正するOFDM広範囲周波数誤差補正装置であって、
前記周波数発振器が発振する周波数に基づいて、前記OFDM信号を直交復調することで復調信号を生成する直交復調手段と、
この直交復調手段で生成された復調信号を周波数領域変換することで得られるスペクトルにおける周波数帯域の次数の偏移を計測し、前記復調信号の周波数誤差を検出する第一の周波数誤差検出手段と、
この第一の周波数誤差検出手段で検出された周波数誤差に基づいて、前記復調信号を補正し、補正復調信号を生成する第一の復調信号誤差補正手段と、
この第一の復調信号誤差補正手段で生成された補正復調信号の位相のずれ量を計測し、前記補正復調信号の周波数誤差を検出する第二の周波数誤差検出手段と、
この第二の周波数誤差検出手段で検出された周波数誤差に基づいて、前記補正復調信号を補正する第二の復調信号誤差補正手段と、
を備えていることを特徴とするOFDM広範囲周波数誤差補正装置。
【請求項2】
前記第一又は第二の復調信号誤差補正手段は、それぞれの入力信号である前記復調信号又は前記補正復調信号に含まれるシンボルの実数軸成分であるI信号と虚数軸成分であるQ信号とをそれぞれ時間毎に補正することを特徴とする請求項1に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置。
【請求項3】
前記第一の周波数誤差検出手段は、
前記OFDM信号におけるシンボル期間より長い時間長を時間窓として、前記復調信号を周波数のスペクトルに変換する周波数領域変換手段と、
この周波数領域変換手段で変換された周波数のスペクトルの帯域における上側波帯幅次数又は下側波帯幅次数に基づいて、前記復調信号と前記OFDM信号との帯域の誤差を、前記復調信号における周波数誤差の次数として計測する誤差次数計測手段と、
この誤差次数計測手段で計測された次数を周波数に変換し、前記復調信号における周波数誤差とする次数・周波数変換手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置。
【請求項4】
前記第二の周波数誤差検出手段は、
前記補正復調信号を、シンボル長毎の時間窓で周波数のスペクトルに変換するシンボル長周波数領域変換手段と、
このシンボル長周波数領域変換手段で変換された周波数のスペクトルにおいて、実数軸成分と虚数軸成分とをシンボル信号配置図で表したときのスキャッタードパイロット信号の位置を検出するSP信号位置検出手段と、
このSP信号位置検出手段で検出されたスキャッタードパイロット信号の位置に基づいて、前記シンボル信号配置図の原点位置に対する前記スキャッタードパイロット信号の位置の回転角度を検出するSP信号角度検出手段と、
このSP信号角度検出手段で検出された回転角度を、前記補正復調信号の周波数誤差に変換する角度・周波数変換手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のOFDM広範囲周波数誤差補正装置。
【請求項5】
固有の周波数を発振する周波数発振器を備えた周波数誤差補正装置において、入力された直交周波数分割多重方式で変調されたOFDM信号を前記周波数に基づいて直交復調したときの周波数誤差を補正するOFDM広範囲周波数誤差補正方法であって、
前記周波数発振器が発振する周波数に基づいて、前記OFDM信号を直交復調することで復調信号を生成する直交復調ステップと、
この直交復調ステップで生成された復調信号を周波数領域変換することで得られるスペクトルにおける周波数帯域の次数の偏移を計測し、前記復調信号の周波数誤差を検出する第一の周波数誤差検出ステップと、
この第一の周波数誤差検出ステップで検出された周波数誤差に基づいて、前記復調信号を補正し、補正復調信号を生成する第一の復調信号誤差補正ステップと、
この第一の復調信号誤差補正ステップで生成された補正復調信号の位相のずれ量を計測し、前記補正復調信号の周波数誤差を検出する第二の周波数誤差検出ステップと、
この第二の周波数誤差検出ステップで検出された周波数誤差に基づいて、前記補正復調信号を補正する第二の復調信号誤差補正ステップと、
を含んでいることを特徴とするOFDM広範囲周波数誤差補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−50110(P2006−50110A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226267(P2004−226267)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【出願人】(591164613)株式会社エヌエイチケイアイテック (39)
【Fターム(参考)】