説明

OFDM方式の受信装置

【課題】 移動体周辺の反射・回折波よりも強い電力の反射波が発生するような環境においても、継続して伝送可能なOFDM方式の受信装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係るOFDM方式の受信装置1は、OFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段13と、サンプリング信号と固定波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段21と、伝送シンボル期間において相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段22と、伝送シンボル期間において最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる相関値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段22と、ウィンドウ開始位置を用いてサンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段14,15とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM方式の受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部等において自動車等の移動体に設けられた送信装置から受信装置へ伝送信号を送信する場合、遮蔽による伝搬損を受けにくく、安定して高い電界強度が得られる高層ビルの屋上等の高い位置に受信装置を設置していた。
【0003】
しかしながら、このような伝送方式では、移動体周辺の建物による反射・回折波に加えて、遠方の突出した建物等による反射波が、受信装置に到来するため、受信装置は、送信装置を搭載した移動体との間の位置関係や反射波を生成する遠方の突出した建物等の障害物との間の位置関係に依存した遅延広がりを伴う伝送信号を受信し、シンボル間干渉が発生するという問題点があった。
【0004】
ここで、都市部における伝送の場合、伝搬テストの結果により、移動体周辺の建物による反射・回折波が最も電力が大きい「主波」となるケースが大部分であることが知られている。
【0005】
具体的には、図7(a)に示すように、受信装置が、主波に起因する相関ピーク値の時間位置にFFT(First Furie Transfer:高速フーリエ変換)ウィンドウ開始位置を設定した場合に、主波のシンボルjと反射波のシンボルiとによって、シンボル間干渉が発生するという問題点があった。
【0006】
この問題点を解決するために、FPU(Field Pickup Unit)等のOFDM(Orthogonal Frequency Devision Multiplexing:直交周波数分割多重)方式のデジタル無線伝送装置において、この遅延広がりをガードインターバル内に収容できるように設計することで、シンボル間干渉による伝送劣化を回避する方法が知られている(図7(b)参照)。
【0007】
ここで、ガードインターバル長は、OFDM方式の変調信号の各伝送シンボル期間に含まれているものであり、伝送信号波形の一部を巡回的に繰り返した冗長な期間であるため、大き過ぎると伝送効率の低下を招くので、伝搬路の遅延広がりに合わせて必要最小限にすべきで、伝搬テストによって得られた遅延広がりの統計値に基づいて設定されることが多い。
【0008】
また、都市部における伝送の場合、伝搬テストの結果により、図7(b)に示すように、主波に起因する相関ピーク値が、時間的に最も早い位置に存在し、その後、主波に起因する相関ピーク値よりも減衰した反射波に起因する相関ピーク値が存在することが知られている。
【0009】
従って、従来のOFDM方式の受信装置は、主波に起因する相関ピーク値の時間位置あたりにFFTウィンドウの開始位置を設定し、受信した伝送信号の遅延広がりによるシンボル間干渉を避ける方法が採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、実際のOFDM方式を用いた伝送においては、時々刻々、伝送信号の遅延プロファイルが変化し、送信装置と受信装置との位置関係及び受信装置と反射波を生成する遠方の突出した建物等の障害物との位置関係によって、図8に示すように、移動体周辺の建物による反射・回折波よりも強い電力の反射波が発生することもある。
【0011】
送信装置を搭載した移動体が、このような地点に達すると、遠方の建物による反射波が「主波」となるため、移動体周辺の建物による反射・回折波が「前ゴースト」となってしまうという問題点がある。
【0012】
すなわち、受信装置におけるFFTウィンドウ開始位置は、主波に起因する相関ピーク値あたりに設定されるので、図8に示すように、FFTウィンドウの後方で、シンボルiとシンボルj(ガードインターバルjに含まれるシンボル)との間でシンボル間干渉が発生し伝送品質が低下するという問題点がある。
【0013】
このように、従来のOFDM方式による伝送方法は、伝送可能エリアの最大化を目的としたものであるが、突出した建物による強い反射波が「主波」になる特異点においては、伝送断となり連続伝送ができなくなる問題点が内在していることが明らかになった。
【0014】
特に、近年の高層ビル建設ラッシュと相俟って、都市部における移動体に搭載された送信装置と受信装置との間の伝送時に強い反射波が発生するケースが増えており、従来のOFDM方式による伝送方法を、放送番組中継回線等の所要時間率の大きい回線に適用する場合に、特に対策が必要とされている。
【0015】
そこで、本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、移動体周辺の建物による反射・回折波よりも強い電力の反射波が発生するような環境においても、継続して伝送可能なOFDM方式の受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る特徴は、受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、前記サンプリング信号と固定信号波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、前記伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中からピーク値を検出するピーク検出手段と、前記伝送シンボル期間において、前記最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる前記ピーク値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備するOFDM方式の受信装置であることを要旨とする。
【0017】
かかる発明によれば、ウィンドウ開始位置設定手段が、伝送シンボル期間において相互相関値の最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となるピーク値の時間位置のうち最も早い時間位置(前ゴーストとなり得る可能性の高い相互相関値の時間位置)にウィンドウ開始位置を設定するため、前ゴーストによる影響を防ぐことができ、突出した建物が存在する都市部等においてもシンボル間干渉による伝送品質の低下を回避することができる。
【0018】
また、かかる発明によれば、ウィンドウ開始位置設定手段によって「最大値」と比較される対象が「ピーク値」のみであるため、当該比較処理の際に必要となるメモリやバッファ等の記憶装置の容量を減らすことができる。
【0019】
本発明に係る特徴は、受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、前記サンプリング信号と固定信号波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、検出された前記最大値及び前記相互相関値を用いて分散値を計算する分散計算手段と、前記最大値の時間位置から前記分散値だけ早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備するOFDM方式の受信装置であることを要旨とする。
【0020】
かかる発明によれば、ウィンドウ開始位置設定手段が、最大値及び相互相関値を用いて計算された分散値だけ最大値の時間位置から早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するため、山岳地帯等のように、ほぼ同レベルの複数の反射波が時間方向に数μsの幅を持って生成されるような環境においても、シンボル間干渉による伝送品質の低下を回避することができる。
【0021】
本発明に係る特徴は、受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、前記変調信号の各伝送シンボル期間にガードインターバルが含まれている場合、前記サンプリング信号と、該サンプリング信号を有効シンボル期間だけ遅延させた遅延サンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中からピーク値を検出するピーク値検出手段と、前記伝送シンボル期間において、前記最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる前記ピーク値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備するOFDM方式の受信装置であることを要旨とする。
【0022】
本発明に係る特徴は、受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、前記変調信号の各伝送シンボル期間にガードインターバルが含まれている場合、前記サンプリング信号と、該サンプリング信号を有効シンボル期間だけ遅延させた遅延サンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、検出された前記最大値及び前記相互相関値を用いて分散値を計算する分散計算手段と、前記最大値の時間位置から前記分散値だけ早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備するOFDM方式の受信装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、移動体周辺の建物による反射・回折波よりも強い電力の反射波が発生するような環境においても、継続して伝送可能なOFDM方式の受信装置1を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(本発明の一実施形態に係るOFDM方式の受信装置の構成)
本発明の一実施形態に係るOFDM方式の受信装置の構成について図1を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1は、アンテナ11と、受信高周波部12と、サンプリング部13と、離散フーリエ変換器14と、キャリア復調器15と、シンボル同期回路2とを具備している。また、シンボル同期回路2は、相互相関値計算回路21とウィンドウ位置制御回路22とサンプリング信号記憶エリア23とによって構成されている。
【0026】
本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1は、突出した建物が数多く存在する都市部のような、移動体周辺の建物による反射・回折波よりも強い電力の反射波が発生する環境において、移動体に搭載された送信装置と受信装置との間の伝送品質の劣化を回避する手段を提供するものである。
【0027】
アンテナ11は、受信高周波部12に接続されており、移動体に搭載された送信装置から送信された信号を受信して受信高周波部12に送信するものである。
【0028】
受信高周波部12は、アンテナ11とサンプリング部13とに接続されており、アンテナ11から受信した信号から、所定の周波数のOFDM方式の変調信号を抽出してサンプリング部13に送信するものである。
【0029】
サンプリング部13は、受信高周波部12と離散フーリエ変換器14と相互相関値計算回路21とに接続されており、受信高周波部12から受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段を構成する。サンプリング部13は、取得したサンプリング信号を離散フーリエ変換器14と相互相関値計算回路21とに送信する。
【0030】
相互相関値計算回路21は、サンプリング部13とウィンドウ位置制御回路22とサンプリング信号記憶エリア23とに接続されており、サンプリング部13から受信したサンプリング信号とサンプリング信号記憶エリア23に記憶されている固定信号波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する相関値計算手段を構成する。
【0031】
図2(a)に、所定期間(2つの伝送シンボル期間)において、相互相関値計算回路21が、サンプリング信号と固定信号波形のサンプリング信号との相互相関値を計算した結果を示す。
【0032】
ウィンドウ位置制御回路22は、相互相関値計算回路21と離散フーリエ変換器14とに接続されており、伝送シンボル期間において、相互相関値計算回路21によって計算された相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、当該伝送シンボル期間において最大値検出手段によって検出された最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる相互相関値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段とを構成する。
【0033】
図2(b)を参照して、ウィンドウ位置制御回路22によるFFT(First Furie Transfer:高速フーリエ変換)ウィンドウ開始位置の設定方法を説明する。
【0034】
ここで、シンボルiやシンボルjと記載されている期間を「有効シンボル期間」といい、ガードインターバルと有効シンボル期間とを併せた期間を「伝送シンボル期間」という。
【0035】
従来のOFDM方式の受信装置は、図2(b)に示すように、伝送シンボル期間において計算された相互相関値の最大値に対応する時間位置tにウィンドウ開始位置を設定していた。そのため、シンボルiを復調するためのウィンドウ位置の後部で、前ゴーストのガードインターバルjの影響によって、シンボル間干渉が発生するという問題点があった。
【0036】
一方、本実施形態に係る受信装置1のウィンドウ位置制御回路22は、図2(b)に示すように、伝送シンボル期間において計算された相互相関値の中から最大値を検出し、当該伝送シンボル期間において、最大値との比(DU比:Desire Undesire Ratio)が所定のDU比以下となる相互相関値、すなわち、最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる相互相関値の時間位置のうち最も早い時間位置tにウィンドウ開始位置を設定する。
【0037】
そのため、シンボルiを復調するためのウィンドウ位置の後部で、前ゴーストのガードインターバルjの影響によって、シンボル間干渉が発生するという問題点を解決することができる。ここで、所定のDU比は、キャリア(搬送波)の変調方式や誤り訂正方式によって決定される。
【0038】
また、ウィンドウ位置制御回路22は、相互相関値計算回路21により計算された相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、相互相関値計算回路21により計算された相互相関値の中からピーク値を検出するピーク値検出手段と、最大値検出手段により検出された最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となるピーク値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段とによって構成されていてもよい。
【0039】
すなわち、ウィンドウ位置制御回路22は、最大値と相互相関値計算回路21により計算された相互相関値との比較結果に基づいてウィンドウ開始位置を設定する代わりに、最大値とピーク値との比較結果に基づいてウィンドウ開始位置を設定してもよい。
【0040】
離散フーリエ変換器14は、サンプリング部13とウィンドウ位置制御回路22とに接続されており、ウィンドウ位置制御回路22により設定されたウィンドウ開始位置を用いて、サンプリング部13から受信したサンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行うものである。また、キャリア復調器15は、離散フーリエ変換器14に接続されており、離散フーリエ変換器14からのデータに基づいて、移動体に搭載された送信装置から送信された信号の復調処理を行うものである。本実施形態において、離散フーリエ変換器14及びキャリア復調器15が、復調手段を構成する。
【0041】
また、離散フーリエ変換器14は、FFTを用いて離散フーリエ変換を行ってもよい。
【0042】
(本実施形態に係るOFDM方式の受信装置の動作)
上記構成を有するOFDM方式の受信装置の動作について、図3を参照にして説明する。図3は、本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1において、都市部において、移動体に搭載された送信装置からの信号の受信処理を行う動作を示すフローチャートである。
【0043】
図3に示すように、ステップ301において、アンテナ11が、移動体に搭載された送信装置から送信された信号を受信して受信高周波部12に送信する。そして、受信高周波部12が、アンテナ11から受信した信号から、所定の周波数のOFDM方式の変調信号を抽出してサンプリング部13に送信する。
【0044】
ステップ302において、サンプリング部13が、受信高周波部12から受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得し、取得したサンプリング信号を離散フーリエ変換器14と相互相関値計算回路21とに送信する。
【0045】
ステップ303において、相互相関値計算回路21が、サンプリング部13から受信したサンプリング信号とサンプリング信号記憶エリア23に記憶されている固定波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する。
【0046】
ステップ304において、ウィンドウ位置制御回路22は、伝送シンボル期間において、相互相関値計算回路21によって計算された相互相関値の中から最大値を検出し、検出された最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる相互相関値の時間位置のうち最も早い時間位置tにウィンドウ開始位置を設定する。
【0047】
ステップ305において、離散フーリエ変換器14が、ウィンドウ位置制御回路22により設定されたウィンドウ開始位置を用いて、サンプリング部13から受信したサンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行う。
【0048】
ステップ306において、キャリア復調器15が、離散フーリエ変換器14からのデータに基づいて、移動体に搭載された送信装置から送信された信号の復調処理を行う。
【0049】
(本実施形態に係るOFDM方式の受信装置の作用・効果)
本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1によれば、ウィンドウ位置制御回路22が、伝送シンボル期間において相互相関値(又は、ピーク値)の最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる相互相関値の時間位置のうち最も早い時間位置tにウィンドウ開始位置を設定するため、前ゴーストによる影響を防ぐことができ、突出した建物が存在する都市部等においてもシンボル間干渉による伝送品質の低下を回避することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るOFDM方式の受信装置1によれば、ウィンドウ位置制御回路22によって「最大値」と比較される対象が「ピーク値」のみであるため、当該比較処理の際に必要となるメモリやバッファ等の記憶装置の容量を減らすことができる。
【0051】
(変更例1)
本発明の変更例1に係るOFDM方式の受信装置について、図4を参照して説明する。本変更例に係るOFDM方式の受信装置1は、ウィンドウ位置制御回路22の機能を除いて、上述の実施形態に係るOFDM方式の受信装置1と同一の機能を具備する。
【0052】
山岳地帯における遅延プロファイルは、都市部における遅延プロファイルとは異なり、ほぼ同等強度の反射波が、時間方向に数μsの幅をもって生成される傾向がある。このような環境において、上述の実施形態に係るOFDM方式の受信装置1を用いると、ピーク値の検出が困難であり、ピーク値を検出できたとしても演算時間や記憶領域が大きくなってしまうという問題点があった。
【0053】
本変更例に係るOFDM方式の受信装置1のウィンドウ位置制御回路は、このような山岳地帯において適用されることを想定するものであって、上述の相互相関値の広がりを検出する、すなわち、最大値及び上述の相互相関値を用いて分散値を計算する分散計算手段を具備し、図4に示すように、最大値の時間位置から分散値だけ早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定することによって、受信したOFDM方式の変調信号の遅延広がりをガードインターバル内に収容することを特徴としている。
【0054】
本変更例に係るOFDM方式の受信装置1によれば、ウィンドウ位置制御回路22が、最大値及び上述の相互相関値を用いて計算された分散値だけ最大値の時間位置から早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するため、山岳地帯等のように、ほぼ同レベルの複数の反射波が時間方向に数μsの幅を持って生成されるような環境においても、シンボル間干渉による伝送品質の低下を回避することができる。
【0055】
(変更例2)
本発明の変更例2に係るOFDM方式の受信装置について、図5を参照して説明する。本変更例に係るOFDM方式の受信装置1は、ウィンドウ位置制御回路22の機能を除いて、上述の実施形態に係るOFDM方式の受信装置1と同一の機能を具備する。
【0056】
本変更例に係るOFDM方式の受信装置1のウィンドウ位置制御回路22は、伝送シンボル期間において、相互相関値計算回路21により計算された相互相関値が閾値以上となる時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定する。
【0057】
本変更例に係るOFDM方式の受信装置1によれば、ウィンドウ位置制御回路22が、伝送シンボル期間において相互相関値が閾値以上となる時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するため、より詳細に前ゴーストとなり得る可能性の高い相関値の時間位置にウィンドウ開始位置を設定することが可能となる。
【0058】
(変更例3)
本発明の変更例3に係るOFDM方式の受信装置について、図6を参照して説明する。本変更例に係るOFDM方式の受信装置1は、図6に示すように、上述の実施形態及び変更例に係るOFDM方式の受信装置1のサンプリング信号記憶エリア23の代わりに、遅延回路24を設けたものである。
【0059】
遅延回路24は、サンプリング部13と相互相関値計算回路21とに接続されており、サンプリング部13から送信されたサンプル信号を有効シンボル期間だけ遅延させた遅延サンプリング信号を生成するものである。
【0060】
相互相関値計算回路21は、上述の実施形態や変更例のように、サンプリング信号と固定波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する代わりに、OFDM方式の変調信号の各伝送シンボル期間にガードインターバルが含まれている場合、サンプリング部13から送信されたサンプリング信号と遅延回路24によって生成された遅延サンプリング信号との相互相関値を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係るOFDM方式の受信装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るOFDM方式の受信装置のウィンドウ制御回路によるウィンドウ開始位置の設定方法を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るOFDM方式の受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一変更例に係るOFDM方式の受信装置のウィンドウ制御回路によるウィンドウ開始位置の設定方法を示す図である。
【図5】本発明の一変更例に係るOFDM方式の受信装置のウィンドウ制御回路によるウィンドウ開始位置の設定方法を示す図である。
【図6】本発明の一変更例に係るOFDM方式の受信装置の概略構成を示す図である。
【図7】従来技術に係るOFDM方式の受信装置のウィンドウ制御回路によるウィンドウ開始位置の設定方法を示す図である。
【図8】従来技術に係るOFDM方式の受信装置のウィンドウ制御回路によるウィンドウ開始位置の設定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…OFDM方式の受信装置
2…シンボル同期回路
11…アンテナ
12…受信高周波部
13…サンプリング部
14…離散フーリエ変換器
15…キャリア復調器
21…相互相関値計算回路
22…ウィンドウ位置制御回路
23…サンプリング信号記憶エリア
24…遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、
前記サンプリング信号と固定信号波形のサンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、
伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、
前記伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中からピーク値を検出するピーク検出手段と、
前記伝送シンボル期間において、前記最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる前記ピーク値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、
設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備することを特徴とするOFDM方式の受信装置。
【請求項2】
受信したOFDM方式の変調信号について所定の周期でサンプリングしてサンプリング信号を取得するサンプリング手段と、
前記変調信号の各伝送シンボル期間にガードインターバルが含まれている場合、前記サンプリング信号と、該サンプリング信号を有効シンボル期間だけ遅延させた遅延サンプリング信号との相互相関値を計算する相互相関値計算手段と、
伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中から最大値を検出する最大値検出手段と、
前記伝送シンボル期間において、前記相互相関値の中からピーク値を検出するピーク値検出手段と、
前記伝送シンボル期間において、前記最大値よりも所定値だけ低く設定された閾値以上となる前記相互相関値の時間位置のうち最も早い時間位置にウィンドウ開始位置を設定するウィンドウ開始位置設定手段と、
設定された前記ウィンドウ開始位置を用いて、前記サンプリング信号に対する離散フーリエ変換を行って復調処理を行う復調手段とを具備することを特徴とするOFDM方式の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−154295(P2008−154295A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68551(P2008−68551)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【分割の表示】特願2002−195182(P2002−195182)の分割
【原出願日】平成14年7月3日(2002.7.3)
【出願人】(000136468)株式会社フジテレビジョン (14)
【Fターム(参考)】