説明

P−セレクチンに対する抗体及びその利用

【課題】 新規P−セレクチンに対する抗体の提供。
【解決手段】 本発明は、競合阻害アッセイにより測定される通り、P−セレクチンに対する、ATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌される抗体の結合を阻害する新規のブロッキングP−セレクチン抗体を用いての、炎症及びその他の病理症状を処置するための組成物及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
本発明は炎症及びその他の細胞間接着により媒介される病理学的症状を処置するための組成物及び方法に関する。特に、本発明は、細胞間接着にかかわる細胞表層レセプターP−セレクチン(CD62、顆粒膜タンパク質−140 〔GMP-140 〕/血小板活性化−依存性顆粒外膜〔PADGEM〕/LECCAM-3)上の機能性エピトープと反応する新規のイムノグロブリンを用いての細胞接着の阻害に関する。
【0002】
GMP-140としても知られる特定された細胞表層レセプターP−セレクチンは血管内皮細胞及び血小板による様々な循環細胞の認識にかかわっている。P−セレクチンはレクチン様ドメイン、表皮成長因子に相同性な領域及び補体調節タンパク質に相同性な領域を有する表層糖タンパク質である(McEver Blood Cells 16:73-83 〔1990〕を参照のこと)。
【0003】
P−セレクチンの構造は2種のその他の血管細胞表層レセプター、内皮白血球接着分子(ELAM−1)及びリンパ球ホーミングレセプター(LHR) に類似する。この語「セレクチン」はこの一般クラスのレセプターに関して提唱されており、その理由はそのレクチン−様ドメイン及びその接着機能の選択的性質にある。
【0004】
これらの細胞表層レセプターは様々な細胞上で発現される。P−セレクチンは様々な刺激に応答して血小板及び内皮細胞の表層上に存在し、そこでそれらは血小板白血球と内皮白血球との相互作用を媒介する。ELAM−1は内皮細胞上のみで発現され、そして LHRは末梢リンパ節の内皮小静脈中の様々な白血球上で発現される。
【0005】
炎症におけるセレクチンの役割は、その作用を阻害することのできる化合物が抗炎症剤として有用でありうることを示唆する。P−セレクチンに対する抗体が報告されている(例えば、米国特許第 4,783,330号; PCT出願 No.US90/06101 ; PCT出願 No.FR90/00565 及びMcEverら、J.Biol.Chem. 259:9799-9804 〔1984〕を参照のこと)。更に、P−セレクチンに対する抗体はScripps Institute, La Jolla, Calfornia及びKeystone Colloquim(1992年1月16日開催)でのプレゼンテーションにおいて述べられている。
【0006】
P−セレクチンは内皮細胞及び血小板上で発現される。P−セレクチン媒介型接着を阻止するこのような一定の抗体はCa++依存性である。
【0007】
P−セレクチンは内皮細胞上及び血小板上で発現される。P−セレクチンの発現は誘発性であり、そして活性化されていない内皮細胞又は血小板上では発現されない。P−セレクチンはde novo合成を必要とせず、なぜならそれは血小板及び内皮細胞の両者における分泌顆粒(又は Weibel-Palade体)の中に貯蔵されているからである。従って、トロンビン、ヒスタミンもしくはフォールボールエステル又はその他の体液因子によるいづれかの細胞タイプの活性化の数分以内で、P−セレクチンは細胞の表層へと迅速に再分布され、そこでそれらは好中球、単球及びその他の細胞に接着しうる。
【0008】
P−セレクチンはLeX を高親和性リガンドとして認識する証拠がある(Larsenら、 Cell 63:467-474 〔1990〕)。更なる実験が行われており、 SleX 含有オリゴ糖が、LeX よりもP−セレクチン媒介型接着の有効なインヒビターであることが示されている(Polleyら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 88:6224-6228 〔1991〕)。これらの実験はインビトロでのP−セレクチンのリガンド特異性の一定の理解を供する。P−セレクチンが好中球、単球及び一定の癌細胞に結合することを示すいくつかの報告がある(Bevilacquaら、Proc. Natl.Acad.Sci. USA 84:9238-9242 〔1987〕;Gengら、Nature 343:757-760 〔1990〕;Larsenら、 Cell 63:467-474 〔1990〕;及びPolleyら、前掲)。しかしながら、インビボでの白血球漸増におけるP−セレクチンの正確な役割についての情報はほとんどない。
【0009】
従って、従来技術の抗−P−セレクチン抗体の治療的プロフィール、即ち、それらがインビボで有効であるか否か、及びどの病気の処置においてそれらを使用できるかは明らかでない。従来技術は、P−セレクチンに対する抗体を用いての炎症疾患の有効な処置を示す証拠に欠いている。
【0010】
発明の概要
本発明は競合阻害アッセイにより測定した、P−セレクチンに対する、ATCC寄託番号HB 11041で表示されている細胞系により分泌される抗体の結合を完全に阻害するブロッキングP−セレクチン抗体を提供する。本発明のブロッキングP−セレクチン抗体はCa++の非存在下でP−セレクチンに好適に結合する。
【0011】
本発明はまた薬理組成物を提供し、これは、このような薬理組成物を用いて炎症疾患を処置するための方法において上記した抗体を含んで成る。急性肺障害及び虚血性再灌流障害が、より詳しく説明する通り、本発明によって処置できる炎症性及び血栓性疾患の例である。
【0012】
好適な態様の説明
本発明はP−セレクチンが関与する炎症及びその他の疾患を阻害するための組成物及び方法に関する。特に、本発明はインビボでの細胞のセレクチン媒介型接着を阻害する能力を有するイムノグロブリンを提供する。本発明のイムノグロブリンはP−セレクチン上の機能性エピトープに選択的に結合し、そして血管内皮に対する白血球の接着を効果的に阻止する。本発明はまたこのようなイムノグロブリンの診断及び治療的用途を供する。
【0013】
「ブロッキングP−セレクチン抗体」は、本発明の抗P−セレクチンイムノグロブリンを意味し、これはインビボで、活性化血小板及び/又は活性化血管内皮に対する好中球の結合を阻害する。ブロッキングP−セレクチン抗体は、様々なイムノグロブリン分子の製造及び操作に関する当業者に有用な数多くの技術を利用しながら改質するのに適当である。ブロッキングP−セレクチン抗体はイムノグロブリン遺伝子により実質的にエンコード化される1又は数種のポリペプチドより成るタンパク質である。認識されているイムノグロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、エプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに莫大な数のイムノグロブリン可変領域遺伝子が含まれる。イムノグロブリンの形態の所見については、Fundamental Immunology、第2版 W.E.Paul編、Raven Press NY〔1989〕;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.85:5879-5883 〔1988〕;Birdら、 Science 242:423-426 〔1988〕及びHunkapiller and Hood, Nature 323:15-16 〔1986〕を参照のこと。
【0014】
本明細書で用いている「イムノグロブリン」、「抗体」又は「抗体ペプチド」は、本発明のブロッキングP−セレクチン抗体が結合するP−セレクチンの機能性エピトープに結合する、抗体、モノクローナル抗体、全イムノグロブリン、又はイムノグロブリン分子の抗体もしくは任意の機能性フラグメントを意味する。かかるペプチドの例には、完全抗体分子、抗体フラグメント、例えば Fab,F(ab′)2、相補性決定領域(CDR) 、VL (軽鎖可変領域)、VH (重鎖可変領域)、及びそれらの任意の組合せ、又は抗体ペプチドの任意のその他の機能性部分が含まれる。
【0015】
F(ab′)2フラグメントは重鎖定常領域のC末端部分を欠き、そして約 110kDの分子量を有する。これは2つの抗原結合部位と、ヒンジ領域の中の鎖間ジスルフィド結合を保持しているが、しかし完全 IgG分子のエフェクター機能を有さない。F(ab′)2フラグメントはペプシンによる、 Harlow and Lane, Antibodies:A LaboratoryManual, Cold Spring Harbor Pubs., N.Y.〔1988〕に記載の如きの標準方法を用いてpH 3.0〜3.5 でのタンパク質分解消化によって IgG分子から獲得できうる。
【0016】
Fabフラグメントは軽鎖を含んで成り、それにジスルフィド結合によって重鎖のN−末端領域が結合している。これは約50kDの分子量を有し、そして一の抗原結合部位を含む。 Fabフラグメントは、限定還元によってF(ab′)2フラグメントから、又は還元剤の存在下でのパパインによる消化によって完全抗体から獲得できうる(HarlowとLane、前掲を参照のこと)。
【0017】
様々なイムノグロブリン分子の製造及び操作に関する当業者にとって有用な数多くの技術が、本発明において使用する抗体を製造するのに容易に適用されうる。P−セレクチンに結合する抗体は様々な手段によって製造できうる。非ヒトモノクローナル抗体、例えばネズミ、ウサギ、ウマ等のそれが公知であり、そして例えば動物を、P−セレクチン含有細胞を含む調製品(例えばトロンビン活性型血小板)又は単離済みP−セレクチン分子で免疫することによって達成できうる。免疫動物から得た抗体産生細胞を不死化させ、次いでスクリーンにかけるか、又はP−セレクチンに結合する抗体の産生についてまずスクリーンにかけ、次いで不死化させる。モノクローナル抗体の製造の一般的な手順の所見については、HarlowとLane、前掲を参照のこと。
【0018】
イムノグロブリンのそれほど好適ではない形態が当業者に公知の方法によって製造されうる。その例は、実質的に単一特異性抗体集団を産生するポリクローナル血清のクロマトグラフィー精製である。
【0019】
本発明における使用にとって好適なモノクローナル抗体は、ブタペスト条約のもとでアメリカン タイプ カルチャー コレクション Rockville, Maryland(ATCC) に承認番号HB 11041で寄託されているハイブリドーマ細胞系の中で産生される。このモノクローナル抗体の製造は下記の例1の中に記載されている。
【0020】
ヒト抗原に対するヒトモノクローナル抗体の発生も当業界に知られる。かかるヒトモノクローナル抗体の発生は慣用の技術では困難でありうる。従って、Huseら、 Science 246:1275-1281 〔1989〕に概略されている一般プロトコールに従い、ヒトB細胞由来の DNAライブラリーのスクリーニングによって、ブロッキングP−セレクチンヒトモノクローナル抗体(又はその一部)をエンコードするDNA配列を単離することが所望されうる。所望の特異性の抗体(又は結合性フラグメント)をエンコードする配列を次にクローンし、そして増幅させる。他方、非ヒト抗体の抗原結合性領域、例えばF(ab′)2又は超可変領域を、組換 DNA技術によりフレームワーク領域内のヒト定常領域(Fc)に移して実質的にヒト分子を作ることができる。かかる方法は当業界に知られ、そして以下に説明する。
【0021】
従って、本発明は合成又は組換ブロッキングP−セレクチン抗体も提供し、これにはキメライムノグロブリン、ヒト化抗体もしくはハイブリド抗体、又は任意のそれらの誘導体が含まれる。キメラ抗体は典型的にはキメラ DNAの産物であり、このキメラ DNAは複数の哺乳動物種由来の遺伝材料を含む組換 DNAである。
【0022】
「キメライムノグロブリン」又は「キメラ抗体」は、そのペプチドの一部が本発明のブロッキングP−セレクチン抗体又は第一遺伝子起源に由来するペプチドの中の対応の配列に由来する又はそれと相同性のアミノ酸配列を有し、一方、この鎖の残りのセグメントが別の遺伝子起源の対応の配列に相同性であるような抗体又は抗体ペプチドを意味する。例えば、キメラのブロッキングP−セレクチン抗体ペプチドは、ネズミ可変領域とヒト定常領域とを有する抗体重鎖を含んで成りうる。これら2つの遺伝子起源は典型的に2つの種を包括しているが、しかし時折り一種由来の異なる起源を包括しうる。
【0023】
キメラのブロッキングP−セレクチン抗体又はペプチドは典型的には組換分子及び/又は細胞技術を利用して製造される。典型的には、キメラ抗体は、一の哺乳動物種に由来する抗体の可変領域を擬態する軽鎖と重鎖の両方の可変領域を有し、一方、その定常領域は第二の別の哺乳動物種に由来の抗体における配列に相同性である。かかる抗体の製造方法は公知であり、そして例えば米国第4,816,397号、EP公報第 173,494号及び第 239,400号に記載され、これらは引用することで本明細書に組入れる。
【0024】
ところで、キメライムノグロブリンの定義はこの例に限定されない。キメラ抗体は重鎖又は軽鎖のいづれか又は両者が、別々の起源の抗体の中の配列を擬態する配列の組合せより構成されている任意の抗体であり、これらの起源が別々のクラスである、抗原応答が異なる、又は起源の種が異なるに関係なく、そして融合点が可変/定常境界にあるかは関係ない。
【0025】
「ヒト化」又は「実質的にヒトイムノグロブリン」は、実質的にヒトのフレームワーク領域と、ヒトイムノグロブリン定常領域に実質的に相当する定常領域とを含んで成る。それ故、ヒト化イムノグロブリンの大体の部分は、おそらくは CDRを除き、1又は数種の天然ヒトイムノグロブリン配列の対応の部分に実質的に相同性である。
【0026】
「ハイブリド抗体」とは、各鎖が、哺乳動物の抗体鎖に対して独立して相同性であるが、しかしその組合せが新規な集成体を表わしている抗体を意味し、これにより2種類の異なる抗原がその抗体によって認識される。ハイブリド抗体において、一組の重鎖及び軽鎖は、別のエピトープに対して発生した抗体の中で見い出せる組に相同性である。このことは、多価の特性、即ち、同時に少なくとも2種類の異なるエピトープに結合する能力をもたらし、ここではその少なくとも一方のエピトープはブロッキングP−セレクチン抗体が結合するエピトープである。かかるハイブリドもむろんキメラ抗体を用いて形成される。
【0027】
従って、一の観点において、本発明は、ブロッキングP−セレクチンイムノグロブリン遺伝子由来の重鎖及び/又は軽鎖可変又は超可変領域をエンコードする組換 DNAセグメントに向けられている。このような領域をエンコードする DNAは典型的には、適当な定常領域、例えばヒトガンマ重鎖領域又はヒトカッパ軽鎖領域をエンコードする DNA配列に結合しているであろう。当業者は、コドン縮重性及び非重要的アミノ酸置換に基づき、下記に詳細の通りこれらの配列にその他の DNA配列が容易にとって代わりうることを理解するであろう。
【0028】
これらの DNAセグメントは典型的には、天然結合型又は異種プロモーター領域を含むキメラの抗体コード配列に作動連結している発現コントロール DNA配列を更に含むであろう。好ましくは、この発現コントロール配列は真核宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトせしめることのできるベクターの中の真核プロモーター系であろう。このベクターがいったん適当な宿主の中に組込まれたなら、その宿主をヌクレオチド配列の高レベル発現にとって適当な条件のもとで維持し、そして、所望するならば、エンコードされたイムノグロブリンの収集及び精製を続ける。
【0029】
「成熟」イムノグロブリンの天然形態は、配列における1又は複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加によって長さの点で若干変えることができる。従って、可変及び定常領域の両者は実質的に天然の改質に委ねられるが、「実質的に同一」又は「実質的に相同性」であり続け、そしてその対応の活性を保持し続けることが可能である。発現及び分泌にとっての DNA配列及び宿主細胞の適当な起源細胞は数多くの起源、例えばアメリカン タイプ カルチャーコレクションより入手できうる(引用することで本明細書に組入れる、「Catalogue of Cell Lines and Hybridomas」第5版(1985)Rockville, Maryland, U.S.A) 。
【0030】
イムノグロブリン鎖のこのような天然の形態に加えて、実質的に同一の改質重鎖及び軽鎖が、当業者に公知の様々な組換 DNA技術によって容易デザインされて製造されうる。例えば、これらの鎖は複数個のアミノ酸の置換、末端及び中間付加、並びに欠失等により、その一次構造のレベルにおいて天然配列から変えてよい。他方、その一次構造の一部(通常は少なくとも60〜80%、典型的には90〜95%)しか含んで成らないポリペプチドフラグメントを作ることができ、このフラグメントは1又は複数のイムノグロブリン活性(例えば補体固定活性)を有するが、低めの免疫原性を示す。特に、数多くの遺伝子と同様に、このイムノグロブリン関連遺伝子は別々の機能性領域を含み、それぞれ1又は数種の異なる生物活性を有することに着目できる。これらは、新規の性質を有する融合タンパク質(例えば免疫毒素)を供するよう、別の遺伝子(例えば酵素の)に由来する機能性領域に融合させてよい。一般に、これらの遺伝子の改質は様々な公知の技術、例えば部位特異的突然変異誘発により容易に達しえる(GillmanとSmith, Gene, 8:81-97(1979) 及びRobertsら、 Nature, 328:731-734(1987) を参照のこと)。
【0031】
前述した通り、この DNA配列はそれらの配列を発現コントロール配列に作動連結させた後に宿主の中で発現させるものであろう。これらの発現ベクターは典型的には宿主生物の中で、エピソームとして、又はその宿主の染色体 DNAの組込み部として複製される。一般に、発現ベクターは、所望の DNA配列で形質転換されたこのような細胞の検出を可能とするよう、選択マーカー、例えばテトラサイクリン又はネオマイシンを含むであろう(例えば、引用することで本明細書に組入れる米国特許第 4,704,362号を参照のこと)。
【0032】
E.コリ(E. coli) は DNA配列をクローンし、そして本発明の様々なベクターを構築するのに極めて有用な一の原核宿主である。例えば、E.コリ K12株294 (ATCC No.31446)が特に有用である。その他の利用できうる微生物株にはE.コリ B及びE.コリX1776(ATCC No.31537) が含まれる。これらの例は限定ではなく、例示である。
【0033】
原核細胞を発現のためにも利用できうる。前述の株、並びにE.コリ W3110(F-λ-、原栄養株、ATCC No.27325)、バチルス属、例えばバチルス スブチリスBacillus subtilis )、及びその他の腸内細菌、例えばサルモネラ チフィミュリウムSarmonella typhimurium)又はセラッチア マルセスカンス(Serratiamarcescans)、及び種々のシュードモナス(Pseudomonas) 種が利用できうる。
【0034】
一般に、この宿主細胞に適合性の種に由来するプロモーター及びコントロール配列を含むプラスミドベクターをこれらの宿主と共に使用する。このベクターは通常複製起点、及び形質転換細胞の中での表現型選別を供することのできるマーカー配列を保有する。例えば、E.コリは典型的にはpBR322、即ち、E.コリ種由来のプラスミド(Bolivarら、 Gene , 95 (1977))を用いて形質転換させる。pBR322はアンピシリン及びテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含み、それ故形質転換細胞を同定するための容易な手段を供する。pBR322プラスミド、又はその他の微生物プラスミドは、プロモーター及び組換 DNA構築において一般的に用いられるその他のコントロール因子を含むか、又はそれらを含ませることができるように改変されていなければならない。
【0035】
原核宿主と共に用いるのに適当なプロモーターには、例示的に、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系(Changら、Nature,275 , 615 (1976);及び Goeddelら、Nature, 281 , 544(1979))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp) プロモーター系(Goeddel, Nucl.Acids Res. 8:4057 (1980))及びハイブリドプロモーター、例えば tacプロモーター(de Boer, Proc.Natl.Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983)) が含まれる。しかしながら、その他の機能性細菌プロモーターも適当である。これらのヌクレオチド配列は一般に知られており、それ故当業者はそれらを、任意の要求されている制限部位を供給するようリンカー又はアダプターを用いてシアリルトランスフェラーゼをエンコードするDNA(Siebenlistら、Cell 2: (1980))に作動連結することができる。細菌系の中で使用するためのプロモーターは、シアリルトランスフェラーゼをエンコードする DNAに作動連結したシャイン−ダルガルノ(Shine-Dalgarno)(S.D.) 配列をも含むであろう。
【0036】
原核細胞に加えて、真核微生物、例えば酵母培養物も利用できうる。サッカロマイセス セレビジエSaccharomyces cerevisiac)又は一般のパン酵母が最も一般的に利用されている真核微生物であるが、数多くのその他の株も一般に有用である。サッカロマイセスの中での発現にとっては、例えばプラスミドYRp7(Stinchombら、 Nature 282 , 39 (1979) ;Kingsmanら、 Gene , 141 (1979); Tschemperら、 Gene 10, 157 (1980)) が一般に利用される。このプラスミドは既に、トリプトファン中での増殖能力を欠く酵母の突然変異株、例えば ATCC No.44076又はPEP4-1についての選択マーカーを供する trp1遺伝子を含む(Jones, Genetics 85, 12 (1977))。従って、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としての trp1欠損の存在はトリプトファンの非存在下での増殖による形質転換を検出するための有効な環境を供する。
【0037】
酵母宿主と一緒に使用するのに適当なプロモート配列には、3−ホスホグリセラーテキナーゼ(Hitzemanら、 J.Biol.Chem. 255 ,2073 (1980))又はその他の解糖酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg., 149 (1968);及びHolland, Biochemistry 17, 4900 (1978))、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセラーテムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオセホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコキナーゼのためのプロモーターが含まれる。
【0038】
増殖条件によって調節される転写の追加の利点を有する誘発性プロモーターであるその他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝にかかわる分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトース利用にとって重要な酵素のためのプロモーター領域である。酵母の発現における使用にとって適当なベクター及びプロモーターはR.Hitzemanら、欧州特許公報第 76,657A号に更に記載されている。酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に利用するのに好都合である。
【0039】
微生物に加えて、哺乳動物組織細胞培養物も本発明のポリペプチドを製造するのに利用できうる(Kriegler, Gene Transfer andExpression:A Laboratory Manual, W.H.Freeman, N.Y. (1990))。真核細胞が、当業界において完全イムノグロブリンを分泌することのできる数多くの適切な宿主細胞系が開発されているために好適であり、そしてそれには CHO細胞系、様々な COS細胞系、HeLa細胞、ミエローマ細胞系、形質転換B−細胞及びハイブリドーマが含まれる。
【0040】
「コントロール領域」は、転写又は翻訳のいづれかのコントロールにかかわりうる真核遺伝子の5′及び3′末端にある特定の配列を意味する。事実上全ての真核遺伝子が、転写が開始する部位から約25〜30塩基上流に位置するATに富む領域を有する。数多くの遺伝子の転写の開始部から70〜80塩基上流に見い出せる別の配列はCXCAAT領域であり、ここでXは任意のヌクレオチドでありうる。ほとんどの真核遺伝子の3′末端はAATAAA配列であり、これは転写mRNAの3′末端へのポリAテールの付加のためのシグナルでありうる。
【0041】
哺乳宿主細胞におけるベクターからの転写をコントロールする好適なプロモーターは様々な起源、例えばポリオーマ、シミアンウィルス40(SV40)、アデノウィルス、レトロウィルス、肝炎βウィルス、そして最も好ましくはサイトメガロウィルスの如きのウィルスのゲノムから、又は異種哺乳動物プロモーター、例えばベータ−アクチンプロモーターから得られうる。SV40ウィルスの早期及び後期プロモーターはSV40制限フラグメントとして好適に獲得でき、これもSV40のウィルス複製起点を含む(Fiersら、Nature, 273 , 113(1978)) 。ヒトサイトメガロウィルスの即時早期プロモーターはHindIII 制限フラグメントとして好適に入手できる(Greenway, P.J.ら、 Gene 18 355-360 (1982))。むろん、宿主細胞又は近縁の種由来のプロモーターもここで有用である。
【0042】
高等真核細胞によるイムノグロブリン基礎タンパク質をエンコードする DNAの転写は、ベクターの中にエンハンサー配列を挿入することにより高まる。エンハンサーは DNAのシス作用因子であり、通常約10〜300bp であり、その転写を高めるようプロモーター上で作用する。エンハンサーは比較的に配向及び位置独立性であり、転写単位に対して5′(Laiminsら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 78, 993(1981)) 及び3′(Luskyら、Mol.Cell Bio. , 1108 (1983))、イントロン内(Banerjiら、 Cell 33, 729 (1983)) 、並びにコード配列自体の中(Osborneら、Mol.Cell Bio. , 1293 (1984))にあることが見い出されている。数多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子から現在知られている(グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが使用できるであろう。その例には、複製起点の後半側上のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウィルス早期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側上のポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。
【0043】
真核宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト又はその他の多細胞生物由来の有核細胞)において用いられる発現ベクターはmRNA発現に影響しうる転写の停止にとって必須の配列も含むであろう。これらの領域は、P−セレクチン抗体をエンコードするmRNAの非翻訳領域におけるポリアデニル化セグメントとして転写される。この3′非翻訳領域は転写停止部位も含む。
【0044】
発現ベクターは選択遺伝子、またの名は選択マーカーを含みうる。哺乳細胞にとって適当な選択マーカーの例はジヒドロホレートリダクターゼ(DHFR)、オルニチンデカルボキシラーゼ、多重薬剤耐性生化学マーカー、アデノシンデアミナーゼ、アスパラギンシンセターゼ、グルタミンシンセターゼ、チミジンキナーゼ又はネオマイシンである。かかる選択マーカーが哺乳宿主細胞の中に有効に転写されたら、この形質転換哺乳宿主細胞は淘汰圧のもとに置かれたときも生存しうる。2つの幅広く使用されている異なる選別手法カテゴリーがある。第一のカテゴリーは細胞の代謝、並びに補捉培地とは独立した増殖能力を欠く突然変異細胞系の利用を基礎とする。二つの例はCHO DHFR−細胞及びマウス LTK−細胞である。これらの細胞はチミジン又はヒポキサンチンの如きの栄養素の添加抜きで増殖する能力を欠いている。これらの細胞は完全なヌクレオチド合成経路にとって必須な一定の遺伝子を欠くため、それらは、失われているヌクレオチド合成経路が補捉培地により補われない限り生存できない。培地に補捉する他のことは、完全DHFR又はTK遺伝子を対応の遺伝子を欠く細胞の中に導入し、これによりその増殖条件を改えることにある。DHFR又はTK遺伝子で形質転換された個々の細胞は非補捉培地の中では生存できないであろう。
【0045】
第二のカテゴリーは優先選別であり、これは任意の細胞タイプに用いられている選択系に関連し、そして突然変異細胞系の利用を必要としない。これらの系は典型的には宿主細胞の増殖を阻止する薬剤を利用する。新規遺伝子を有する細胞は薬剤耐性を有するタンパク質を発現し、そして選択に残るであろう。かかる優先選択の例は薬剤のネオマイシン(SouthernとBerg, J.Molec.Appl.Genet, ,327 (1982)) 、ミコフェノール酸(MulliganとBerg, Science 209 ,1422 (1980))又はヒグロマイシン(Suddenら、 Mol.Cell Biol. ,410-413 (1985)) を使用する。上記の3例は、適当な薬剤G418もしくはネオマイシン(ゲンチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)、又はヒグロマイシンのそれぞれに対する耐性を授けるように、真核系コントロール下の細菌遺伝子を採用する。
【0046】
「増幅」とは、細胞の染色体 DNA内での単離領域の増加又は複製を意味する。増幅は、選択因子、例えばDHFRを不活性化するメトトレキセート(MTX) を用いて達せられる。DHFR遺伝子の多重コピーの増幅又は蓄積は、大量の MTXにもかかわらず、大量のDHFRが産生されることをもたらす。増幅圧は内因性DHFRの存在にもかかわらず、より大量の MTXを培地に加えることによって適用する。所望の遺伝子の増幅は哺乳宿主細胞を、所望のタンパク質をエンコードするDNAを有するプラスミドで同時移入することによって達しめることができ、そして同時組込みによるDHFR又は増幅遺伝子は同時増幅と呼ばれる。細胞がより多くのDHFRを必要とすること(この要件は、選択遺伝子の複製により適合する)は、より多大な MTX濃度の存在下で増殖できる細胞のみを選別することにより確実となる。所望の異種タンパク質をエンコードする遺伝子が選択遺伝子で同時組込みされている限り、この遺伝子の複製は所望のタンパク質をエンコードする遺伝子の複製を通常もたらす。その結果、所望の異種タンパク質をエンコードする遺伝子、即ち増幅遺伝子の増大したコピーは、より多くの所望の異種タンパク質を発現する。
【0047】
高等真核細胞においてイムノグロブリンを基礎とするタンパク質をエンコードする本発明のベクターを発現するのに好適な適当な宿主細胞には:SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胎芽腎臓系(293)(Grahamら、J.Gen.Virol.36, 59 (1977));赤ん坊ハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞DHFR(CHO, UrlaubとChasin, Proc. Natl.Acad.Sci. (USA) 77, 4216〔1980〕);マウスセルトリー細胞(TM4, Mather, Biol.Reprod. 23, 243-251 〔1980〕);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカングリーンモンキー腎細胞(VERO-76, ATCC CRL 1587);ヒト頸部癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34) ;バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442) ;ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75) ;ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065) ;マウス乳細胞(MMT 060562, ATCC CCL51);及び TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad.Sci. 383 , 44-46〔1982〕);バキュロウィルス細胞;が含まれる。
【0048】
「形質転換」は、 DNAを生物の中に導入し、その DNAが染色体外因子として、又は染色体組込によって複製されるようにすることを意味する。何らかのことわりのない限り、宿主細胞の形質転換のためにここで用いている方法はGrahamと Van der Eb, Virology 52,456-457 (1983)の方法である。しかしながら、 DNAを細胞に導入するその他の方法、例えば核摂取又はプロプラスト融合も利用できる。もし原核細胞又は実質的な細胞壁構造を有する細胞を使用するなら、トランスフェクションの好適な方法は Cohenら、Proc.Natl.Acad. Sci. USA 69, 2110 (1972) に記載の塩化カルシウムを用いるカルシウム処理である。
【0049】
構築したプラスミドの中の適当な配列を確認する分析のため、E.コリ K12株294(ATCC 31446) を形質転換するようにリゲーション混合物を使用し、そして有効な形質転換体をアンピシリン又はテトラサイクリンにより適宜選別する。形質転換体由来のプラスミドを調製し、分析し、そして/又は Messingら、Nucleic Acids Res., 309 (1981)又は Maxamら、Methods in Enzymology 65, 449 (1980) の方法により配列決定する。
【0050】
宿主細胞を本発明の発現ベクターで形質転換し、そしてプロモーターを誘発、形質転換体を選別又は遺伝子を増幅するのに適当となるように改良した慣用の栄養培地の中で培養する。培養条件、例えば温度、pH等は、発現のために選ばれた宿主細胞に以前から利用されているものとし、そして当業者にとって明らかであろう。
【0051】
「トランスフェクション」とは、任意のコード配列が実際に発現されるか否かに関係なく、宿主細胞によって発現ベクターを取込ませることをいう。トランスフェクションの莫大な数の方法、例えば CaPO4及びエレクトロポレーションが当業者に知られる。有効なトランスフェクションは一般に宿主細胞内でこのベクターの活動の任意の指標が起きたときに認められる。
【0052】
課題の DNAセグメント(例えば、重鎖及び軽鎖エンコード配列及び発現コントロール配列)を含むベクターは、宿主細胞の中に公知の方法によって移入することができ、これは細胞宿主のタイプに依存して変わるであろう。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般に原核細胞のために利用され、他方、リン酸カルシウム処理はその他の細胞宿主のために利用されうる。一般には、Sambrookら、 Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、ColdSpring Harbor Press, (1989) を参照のこと。
【0053】
発現したら、本発明の全キメラ抗体、その二量体、又は個々の軽鎖及び重鎖を、硫酸アンモニウム沈殿、分画カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む当業界の標準手順に従って精製してよい。
【0054】
本発明に関して、ブロッキングP−セレクチンイムノグロブリンは、そのイムノグロブリンが、標準の抗体−抗原アッセイ、例えば競合結合アッセイ、飽和アッセイ、又は標準のイムノアッセイ、例えば ELISAもしくは RIAによる測定又は決定に従い、本発明のブロッキングP−セレクチン抗体により規定されるP−セレクチン上の機能性エピトープに結合するなら、P−セレクチン分子上の機能性エピトープに対して特異的、又は反応性である。この機能性エピトープに対する結合はペプチドCQNRYTDLVAIQNKNEにより阻害されない。Ca++は結合にとって必要でない。特異性のこの規定は、一本の重及び/又は軽鎖、 CDR、重及び/又は軽鎖の融合タンパク質又はフラグメントであって、単独でP−セレクチンに結合するならばP−セレクチンに対して特異的なもの、又は相補性可変領域及び定常領域と適宜イムノグロブリンコンホメーションに適切に一体化するなら、P−セレクチンに結合できるものに適応する。
【0055】
本発明のイムノグロブリンは好ましくはP−セレクチンの機能性エピトープに結合することを確実にするのに十分な親和力を有する。結合親和力は典型的には会合及び解離形態の平衡濃度についての親和定数(Ka )、即ちKa =〔A−B〕/〔A〕〔B〕により表わされ、ここで〔A〕,〔B〕及び〔A−B〕は抗体(A)、抗原(B)及び抗原−抗体複合体(A−B)それぞれの平衡での濃度である。しかしながら、当業者は、2分子間の結合親和力は温度、pH、イオン強度等のような数多くの要因により影響されるであろうことを認識する。
【0056】
P−セレクチン及びELAM−1のアクチベーターを基礎とし、それらの発現は組織損傷に対する炎症性及び止血応答を示すことが仮定される。しかしながら、多重接着タンパク質及びそのリガンドが、内皮細胞に対する白血球接着及びその管外遊出にとって必要である。本発明まで、特異的接着レセプターP−セレクチンはインビボで組織損傷に対する応答に重要であるとは示されていなかった。本発明のブロッキングP−セレクチン抗体は、組織損傷及び炎症に対する応答にかかわる細胞上のP−セレクチン上の機能性エピトープに選択的に結合するイムノグロブリンを含んで成る。
【0057】
本発明により処置可能な炎症及び血栓症状には例えば、後虚血症白血球媒介型組織障害(再灌流損傷)、例えば外傷性ショック、発作、心筋梗塞、急性移植拒絶、凍−咬傷、仕切り症候群、及び心肺バイパスに関係する病理生理学症状、急性白血球媒介型肺障害(例えば成人呼吸困難症候群)、敗血ショック、ヘルペス単純ウィルスの如きのウィルス感染に二次的な創傷関連セプシス、 IgE媒介型アレルギー反応、例えば急性期ぜん息障害、及び慢性炎症症状、例えばリウマチ様関節炎、アトピー性皮膚炎及び乾癬が含まれる。更に、腫瘍転移が、循環する癌細胞の接着を阻害することにより防げうる。例には結腸及び黒色腫の癌腫が含まれる。
【0058】
ぜん息を含む急性アレルギー症状の一の主要成分は、対象者が特に感受性である抗原のその者への負荷に続くマスト細胞の脱顆粒である。マスト細胞の脱顆粒の結果は、気管支収縮応答、及び白血球蓄積をある程度特徴とする炎症応答である。マスト細胞の中にその他の炎症媒介体と一緒に含まれているヒスタミンは血管内皮細胞上でのP−セレクチン発現を誘発でき、マスト細胞の脱顆粒はP−セレクチンの発現及びその後の白血球蓄積をももたらしうることを示唆する。マスト細胞脱顆粒はアレルギー症状の病理における重要な要素であるため、P−セレクチンに対する抗体の投与はヒトのアレルギー症状の処置にとって有用であろう。
【0059】
本発明のブロッキングP−セレクチン抗体及び薬理組成物は非経口投与、即ち、皮下的、筋肉内的又は静脈内的投与にとって特に有用である。数多くの新たな薬剤導入手法が開発され、本発明の薬理組成物もこのような新たな方法を用いる投与にとって適当である。Langer, Science, 249:1527-1533 (1990)を参照のこと。
【0060】
ブロッキングP−セレクチン抗体は化学療法剤に直接又は間接的にカップルさせることができる。当業界に一般に知られる手段によって実施できうるカップリングは、レセプターに結合するイムノグロブリンの能力を実質的に阻害しないが、又は化学療法剤の活性を実質的に低下させてはならない。様々な化学療法剤が標的化のためにカップルされうる。例えば、カップルしてよい抗炎症剤には、免疫調節剤、血小板活性化性因子(PAF) 拮抗剤、シクロオキシゲナーゼインヒビター、リポキシゲナーゼインヒビター及びリューコトリエン拮抗剤が含まれる。いくつかの好適な成分には、シクロスポリンA、インドメタシン、ナプロキセン、FK-506、ミコフェノール酸等が含まれる。同様に、酸化防止剤、例えばスーパーオキサイドジスムターゼが再灌流障害を処置するうえで有用である。同様に、抗癌剤、例えばダウノマイシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ブレオマイシン等が標的のために使用できうる。
【0061】
P−セレクチン標的化は、両親媒性又は水性溶液の中で凝集体として存在する二重特性分子(極性:非極性)を介して達成することもできる。両親媒体には非極性脂質、極性脂質、モノ−及びジグリセリド、スルファチド、リソレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸及び塩が含まれる。これらの分子はエマルジョン及び泡、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散体及びラメラ層として存在しうる。これらは一般にここではリポソームと呼ぶ。このような調製品において、導入すべき薬剤を、抗−P−セレクチンイムノグロブリンが封入されているリポソームの一部として一体化せしめる。この態様において、このイムノグロブリンは、そのイムノグロブリンがP−セレクチン分子に対するリポソームの担いを効果的に定めさせる限り、P−セレクチン分子上の機能性エピトープに結合する必要はない。このリポソームが、影響化細胞の近くまできたら、それらは所定の治療組成物を導入する。
【0062】
例えば Szokaら、 Ann.Rev.Biophys.Bioeng. 9:467 (1980);米国特許第 4,235,871、 4,501,728及び 4,837,028号のような引用することで本明細書に組入れるものの中に記載の様々な方法がリポソームを調製するのに有用である。様々な標的化性因子(例えばリガンド、レセプター及びモノクローナル抗体)を用いるリポソームの処理が当業界に公知である。(例えば米国特許第 4,957,773及び 4,603,044号を参照のこと。共に引用することで本明細書に組入れる)。標的剤をリポソームにカップリングさせる標準の方法が利用できうる。抗体標的リポソームは例えばプロテインAを含むリポソームで構築できうる(例えば Renneisenら、 J.Biol.Chem., 265:16337-16342 (1990)及びLeonettiら、Proc.Natl.Acad.Sci. (USA)87:2448-2451 (1990)を参照のこと)。
【0063】
前述した通り、本薬理組成物(標的リポソーム又は遊離抗体を含んで成る)は非経口投与にとって特に適する。本組成物は一般に、許容担体、好ましくは水性担体の中に溶解された抗体又はそのカクテルの溶液を含んで成るであろう。様々な水性担体、例えば水、緩衝水、 0.4%の食塩水、 0.3%のグリシン等が使用されうる。これらの溶液は無菌とし、そして一般に粒状物質を含まないものとする。これらの組成物は慣用の周知の滅菌技術によって滅菌されうる。この組成物は生理学的条件に近づけるのに必要とされる薬理学的に許容される補助物質、例えばpH調節剤及び緩衝剤、等張性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含みうる。このような配合の中での抗体の濃度は幅広く変えてよく、即ち、約 0.5%未満、通常は約1%以上から、15又は20重量%に至ってよく、そして選んだ投与態様に従い、流体容積、粘度等を主に基礎として選ばれるであろう。非経口投与用組成物を調製するための実際の方法は当業者に知られているか又は明らかであり、そして例えばRemington's PharmaceuticalSciences、第17版、Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania (1985)(引用することで本明細書に組入れる)により詳しく記載されている。
【0064】
本発明の抗体は貯蔵のために凍結乾燥してよく、そして使用前に適当な担体の中で再構成してよい。この技術は慣用のイムノグロブリンに有効であることが示されており、そして業界に公知の凍結乾燥及び再構成技術が採用できうる。凍結乾燥及び再構成は抗体活性の様々な度合いの損失を招くことがあり(例えば慣用のイムノグロブリンでは、 IgM抗体は IgG抗体よりも高く活性を失いがちである)、そしてそのレベルは補完のために調節されうることが当業者に明らかであろう。
【0065】
本抗体又はそのカクテルを含む組成物は予防的及び/又は治療的処置のために投与されうる。治療的用途においては、組成物を患者に、その感染症及びその合併症を治癒又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で投与する。これを達しめるのに適当な量を「治療的に有効な用量」と定義する。この用途にとって有効な量は疾患の重度及び患者自身の免疫系の一般状態に依存するであろうが、しかし一般には約0.05mg/体重kg〜約5mg/体重kg、好ましくは約 0.2mg/体重kg〜約 1.5mg/体重kgに範囲する。
【0066】
本発明の物質は一般に重症な疾患状態、即ち、生命の脅やかされているか又は潜在的に生命の脅やかされている状況において採用できうることを念頭に置くべきである。かかるケースにおいて、本発明のヒトキメラ抗体により達せられる外生物質の最少限化及び「外来物質」の低めの確率の観点において、処置医師によってかなり多量のこのような抗体を投与することが可能であり、且つ所望されうる。
【0067】
予防的用途においては、本抗体及びそのカクテルを含む組成物を、まだ疾患状態にない患者に投与してその患者の耐久性を高める。かかる量は「予防的に有効な用量」と定義する。この用途において、ここでもその正確な量は患者の健康状態及び免疫性の一般レベルに依存するが、しかし一般には上記の範囲にある。
【0068】
単独又は数回の本組成物の投与を、処置医師により選択された用量レベル及びパターンで実施してよい。あらゆる状況において、この薬理製剤は患者を有効に処置せしめるのに十分な量の本発明のイムノグロブリンを供すべきである。
【0069】
本発明の抗体は診断目的のため、例えば炎症領域を同定するためにも利用されうる。診断目的に関し、この抗体はラベル化又はラベル化しない。ラベル化していない抗体はその抗体と反応性のその他のラベル化抗体(二次抗体)、例えば特定のイムノグロブリン定常領域に対して特異的な抗体と組合せて用いてよい。他方、これらの抗体は直接ラベル化してよい。広範囲にわたる様々なラベル、例えば放射性核種、蛍光物質、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド(特にハプテン)等を利用してよい。莫大な数のイムノアッセイが有用であり、そして当業者に知られる。
【0070】
診断用途においては、本イムノグロブリン又はそのカクテルを含む組成物を炎症疾患状態を有すると推定される患者に投与する。他方、特定の処置の効能をモニターすることができる。これを成し遂げるのに十分な量を「診断的有効用量」と定義する。この用途において、その正確な量は患者の健康状態等に依存するであろう。
【0071】
キットも対象の抗体と一緒に使用するために供給できうる。従って、本発明の対象の抗体組成物は通常容器の中で、単独で、又は所望の細胞タイプに対して特異的な別の抗体と一緒に凍結乾燥された状態にありうる。ラベルもしくは毒素とコンジュゲートされているか、又はコンジュゲートされていないこの抗体は、キットの中に、バッファー、例えばトリス、ホスフェート、カルボネート、等、安定剤、殺菌剤、不活性タンパク質、例えば血清アルブミン等、及び使用のための一組の仕様書と共に含まされている。一般に、これらの材料の活性抗体の量を基礎として約5重量%未満で存在しており、そして通常は抗体濃度を基礎として約 0.001重量%以上の総量で存在している。しばしば、この活性成分を希釈するために不活性増量剤又は賦形剤を含ませることが所望され、この場合その賦形剤は組成物全体の約1〜99重量%において存在しうる。キメラ抗体に結合可能な第二抗体をアッセイにおいて使用するとき、これは通常別のバイヤルの中に存在させておくであろう。この第二抗体は典型的にはラベルにコンジュゲートされており、そして前記の抗体配合物と似たように配合する。
【0072】
「機能性エピトープ」とは、ブロッキングP−セレクチン抗体により結合される抗原性部位であり、その結合は炎症及び/又は血栓症状にかかわる血管内皮に対する白血球の接着を効果的に阻止する。
【0073】
本明細書で用いている「実質的に阻害」とは、少なくとも約50%の阻害、好ましくは約60%〜約80%の阻害、そしてより通常には85%以上である(インビトロ競合結合アッセイで測定)。
【0074】
イムノグロブリンは抗原と相互作用するなら、抗原と「反応性である」又は「結合する」。典型的には、リガンド又はペプチドと、レセプター又は抗原との間の組合相互作用には可逆的な非共有結合、例えば静電引力、ファンデルワールス力及び水素結合が関与している。この相互作用は二つの反応体が一緒になって生成物を形成する化学反応に類似する。イムノグロブリン−抗原相互作用においては、この相互作用の生成物は抗原−イムノグロブリン複合体である。
【0075】
「競合結合アッセイ」は、P−セレクチン分子上の抗原決定基に対するブロッキングP−セレクチンイムノグロブリン(例えばATCC寄託 No.HB 11041により分泌されたもの)の結合を阻害するイムノグロブリンの能力を測定するものである。莫大な数の競合結合アッセイが知られ、それらは例えば下記の通りである:固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA) 、固相直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA) 、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods inEnzymology 9:242-253 〔1983〕を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol. 137:3614-3619 〔1986〕を参照のこと);固相直接ラベル化アッセイ、固相直接ラベル化サンドイッチアッセイ(HarlowとLane, "Antibodies, A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor〔1988〕を参照のこと); I-125ラベルを使用する固相直接ラベルRIA (Morelら、Molec.Immunol. 25 (1):7-15〔1988〕を参照のこと);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら、Virology 176:546-552 〔1990〕);及び直接ラベル化RIA (Moldenhauerら、 Scand.J.Immunol. 32:77-82〔1990〕)。典型的には、かかるアッセイは固相表層に結合した精製P−セレクチン又はP−セレクチン含有細胞及びP−セレクチンに反応性であることで知られるラベル化イムノグロブリンの使用を包括する。検査するイムノグロブリンを加え、そして競合阻害を、検査イムノグロブリンの存在下での、固相表層に対して結合したラベルの量を決定することにより測定する。モノクローナル抗体アッセイについての標準の手順、例えば ELISAが使用できうる。適当な競合結合アッセイの例を下記の例8に紹介する。
【0076】
以下の例は限定ではなく例示のために提供する。
【0077】
例 1
試薬の準備
本例は例2及び3における免疫、並びに例4における ELISAのために使用する試薬の調製又は単離を説明する。
【0078】
A.「古びた(outdated)血小板」
「古びた血小板」から精製した血小板調製品をSan Diego BloodBankより獲得した。使用した方法は、引用することで本明細書に組入れる Mooreら、J.Cell.Biol. 112:491-499 (1991)に記載の方法の改良法とした。簡単に述べると、25単位の古びた血小板に富む血漿を1200rpm (300×g)で10分、2回遠心し、夾雑非血小板血液細胞を除去した。精製血小板調製品を 0.1MのNaCl、20mMのトリス及び5mMのベンズアミドを含むバッファーで3回洗った。これは 3.8%のクエン酸ナトリウムも含んだ。そのpHを1Nの HClで 7.5に合わせた。精製血小板を70℃に保存し、そして注射前に PBSで1回洗った。
【0079】
B.精製P−セレクチン
血小板の分画:洗浄した古びた血小板を Mooreら、1991、前掲に本質的に従って分画した。25単位の洗った血小板をロイペプチン 100μM及び4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド(AEBSF) 1mMにし、ドライアイス/メタノールの中で3回凍結融解し、そしてDounceホモジナイザーで10ストロークで均質化した。この懸濁物を次にBeckman Ti 70 ローターで4℃で35,000rpmにて60分遠心した。この遠心由来の上清液を「可溶性」P−セレクチンの精製のための出発材料とした。このペレットを30mlの1mMの MnCl2、1mMの CaCl2、5mMのベンズアミジン−HCl 、 0.1MのNaCl、20mMのトリス、2%のトリトンX−100 、pH 7.5で再懸濁し、Dounceホモジナイザーで10ストロークで均質化し、そして4℃で1hrインキュベートした。次にその上清液をBeckman Ti 70 ローターで4℃で35,000rpm にて1hr遠心した。この遠心由来の上清液を「膜結合型」P−セレクチンの単離のための出発材料とした。
【0080】
分画血小板からのP−セレクチンの単離:「可溶性」及び「膜結合型」P−セレクチンを次に下記の手順の一部又は全てにより個別に更に精製した。非イオン性清浄剤Rennex 30 (Accurate Chemicaland Scientific Corp.) を、P−セレクチンの膜結合形態の単離のために全てのバッファーの中に 0.1%の濃度で含ませた。全てのバッファーは1mMの CaCl2及び1mMの MnCl2も含んだ。P−セレクチンを含む画分をモノクローナル抗体PNB1.6でウェスタンブロッティングにより検出した。
【0081】
レンチルレクチンクロマトグラフィー:25単位の血小板由来の「可溶性P−セレクチン」上清液又は「膜結合型P−セレクチン」清浄剤抽出物をSepharose 4B (Sigma Chemical Co., L-0511)にカップルさせたレンズマメ(Lens culinaris)(レンチルレクチン)のカラム(1.5×5.5cm)に通した。次にこのカラムを 150mlの20mMのトリス、 0.1MのNaCl、pH 7.5で洗った。結合糖タンパク質を次に10×3mlアリコートの20mMのトリス、 0.5MのNaCl、 0.5Mのアルファ−メチルD−マンノピラノシド、pH 7.5によりカラムから溶離させた。P−セレクチンを含む画分をAmicon Centriprep 30において 1.5〜2mlに濃縮した。
【0082】
ゲル濾過クロマトグラフィー:レンチルレクチンクロマトグラフィー由来の濃縮画分を20mMのトリス、 0.1MのNaCl、pH 7.5で平衡にした Toso Haas G3000 SW HPLCカラムに注入した。このカラムをそのバッファーで0.75ml/min の流速で溶離させ、画分を集め、そしてウェスタンブロッティングにより分析した。P−セレクチンを含む画分をプールし、そしてAmicon Centriprep 30で 1.5〜2mlに濃縮し、続いて20mMのトリス、pH 7.5で数回バッファー交換した。
【0083】
ヘパリン−アガロースクロマトグラフィー:20mMのトリス、pH7.5中のサンプルを1mlのヘパリン−アガロースカラムに適用し、このカラムを同一のバッファーで洗い、そして20mMのトリス、 1.5mMのNaCl、pH 7.5で溶離させた。
【0084】
陽イオン交換クロマトグラフィー:以上からプールした画分を20mMのトリス、pH 7.5に交換し、そして20mMのトリス、pH 7.5で平衡にした Toso Haas CM-5PW HPLCカラム(21.5mm×15cm)に注入し、そして1MのNaClに至る塩勾配で溶離させた。P−セレクチンを含む画分をプールし、そしてAmicon Centriprep 30で 0.5〜1mlに濃縮し、そして、−80℃で保存した。
【0085】
C.新鮮ヒト血小板の単離及び活性化
血小板単離手順全体にわたって使用した全くの化学品はSigmaChemical Company, St.Louis, MOより入手した。
【0086】
1.ヒトボランティア血液ドナーから42mlの血液を、7mlの酸性シトレートデキストロール抗凝血剤(ACD) を含むシリンジの中へと採取した。
【0087】
ACD抗凝血剤の調製
デキストロース 2.0 g
クエン酸ナトリウム 2.49g
クエン酸 1.25g
蒸留水で 100mlにする。
2.針を取外し、そして血液を2本の滅菌50mlチューブに移し入れた。
3.そのチューブを、 921ヘッド (半径=17.2cm) の付いた IECC-6000遠心機で800rpm (約90×g) で 15min、室温においてブレーキはオフにして遠心した。
4.その上清液をプラスチックピペットで取り出した。バッファー層から可能なだけ近くまでのその上清液を取り出した。
5.この上清液を1200rpm(約 300×g) で6min 遠心した。
6.その上清液を取り出した。
7.その上清液を2000rpm(約1200×g) で 10min遠心した。血小板はチューブの底に細胞ボタンとして出現した。その上清液を捨てた。
8.その血小板を下記の通りに洗った:プロスタグランジンE1 (PGE1)を 100nMの最終濃度において含む2mlのTryode-HepesバッファーpH 6.5を加え、そして血小板を緩やかに再懸濁させた。更に10mlの同一のバッファーを加え、そしてサンプルを 3000rpmで 10min遠心した。
【0088】
Tryode-Hepesバッファーの調製
NaCl 8.0g
KCl 0.2g
NaH2PO4H2O 0.057g
MgCl26H2O 0.184g
NaHCO3 0.1g
デキストロース 1.0g
HEPES 2.383g
蒸留水で1lにする。1NのNaOHでpHを 6.5に合わせる。
9.工程#8をもう一回繰り返し、次いで血小板をPGE1抜きの同一のバッファーで1回洗った。
10.血小板をCoulter カウンターで計測し、そして2×108 /mlに希釈した。
11.血小板懸濁物のpHを 7.2に合わせ、そして最大活性化にとって必要なトロンビン (ヒト トロンビン−Sigma)の量を決定した。一定の量の、ドナー間で変動があったが、最適活性化は0.25〜0.5 単位/mlの範囲で通常得られた。最大活性化、即ち、最大のトロンビン−誘発型凝集はP−セレクチンの最大発現性に対応するように現れた。
12. 必要な量のトロンビンをこの血小板調製品に加え、そしてその混合物を、凝集を防ぐように撹拌せずに 20min室温で放置した。
【0089】
例 2
ブロッキングP−セレクチン抗体の調製
本例は mAB PB1.3、即ち好中球に対するトロンビン−活性型血小板の結合を阻害するP−セレクチンに対するモノクローナル抗体の調製を述べる。
【0090】
Jackson Laboratoriesから入手した一匹の RBF/DnJ 雄マウスを抗体産生細胞の起源として使用し、そして下記のスケジュールに従って免疫した (全ての注射は腹腔内的に行った):
1.1ケ月目−約6×109 個の血小板を含む 200μlの充填「古びた血小板」
2.2ケ月目− 250μlの充填「古びた血小板」(8×109 個の血小板)
3.4ケ月目− 250μlの充填「古びた血小板」(8×109 個の血小板)
4.5ケ月目−レンチルレクチンで単離したP−セレクチンの「可溶性」画分
5.6ケ月目−レンチルレクチン、ゲル濾過、ヘパリン−アガロース及びイオン交換クロマトグラフィーにより精製した「可溶性」P−セレクチン
免疫のために使用した全ての試薬の調製の詳細は例1に紹介した。
【0091】
A.ミエローマ融合細胞系
アデノシンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT) 及びヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT) について欠陥のあるマウスミエローマ細胞系FOX-NYをアメリカンタイプカルチャーコレクション(CRL 1732) より入手し、そして10%の胎児牛血清(Hyclone) 及び1%のL−グルタミンを含む RPMI 1640に維持した。
【0092】
B.細胞融合手順
最終ブーストの4日後、脾臓を取り出し、そして 1.2×108 個の脾臓細胞を回収した。これらを下記のプロトコールを利用して、PEG1500 (BMB)を使用しながらFOX-NYミエローマ細胞と融合させた:単離した脾臓細胞を無血清培養培地で2回洗った。脾臓細胞とミエローマ細胞とを1:4.8(ミエローマ、対、脾臓細胞) の比で組合せた。この組合せた細胞ペレットを無血清培地で2回洗い、次いで乾くまでアスピレート吸引した。この細胞ペレットを緩やかにたたいて再懸濁し、そしてウォーターバスの中で37℃で1min 温めた。このペレットを50mlのコニカル遠沈管の側面及び底のまわりに広げた。37℃に予め温めておいた1mlのPEG 1500 (75mMの HEPES中で50%w/v;BMP Lot # 14702800) を、その管を回転させて細胞の薄層を維持しながら60秒かけて加えた。1mlの無血清培地を60秒かけてゆっくり加えた。更に1mlの培地を若干速く加えた。更に8mlの培地を加え、そしてその管を8min 放置し、そして 300×gで5min 遠心した。最終ペレットを10%の胎児牛血清(Hyclone) 、1%のL−グルタミン、1%のピルビン酸ナトリウム及び1×のAAT (Sigma) を含む RPMI 1640で再懸濁した。これらの細胞を10枚の平底96穴マイクロタイタープレート (COSTAR) の中に平板培養した。フィーダー細胞は使用しなかった。
【0093】
例 3
非ブロッキング抗−P−セレクチン抗体の調製
本例は、好中球に対するトロンビン−活性型血小板の結合を阻害しないP−セレクチンに対するモノクローナル抗体mAB PNB1.6の調製を説明する。
【0094】
Jackson Laboratoriesより入手した一匹の RBF/DnJ 雄マウスを抗体産生細胞の起源として用い、そして下記のスケジュールに従って免疫した (全ての注射は腹腔内的に行った) :
1.1ケ月目− 100μlのトロンビン−活性型新鮮単離血小板 (約3×109 個の血小板)
2.2ケ月目− 200μlのトロンビン活性型新鮮血小板 (6×109 個の血小板)
3.4ケ月目− 100μlのトロンビン活性型新鮮血小板 (3×109 個の血小板)
最終ブーストの4日後、脾臓を取り出し、そして脾臓細胞を回収した。それらはPEG 1500 (Sigma)を使用して、Oiら「Immunoglublin-Producing Hybrid Cell Lines 」Selected Methods in CellularImmunology編、 MishellとShiigi、頁351-372, 1980(引用することで本明細書に組入れる) に一般的に記載の通りにFOX-NYミエローマ細胞に融合させた。
【0095】
例 4
抗体についてのスクリーニング
本例は例2及び3において製造した融合細胞由来の上清培地のスクリーニングを述べる。例2由来の上清液を(a)トロンビン−活性型血小板、(b)精製P−セレクチン及び(c)組換P−セレクチンに対する ELISAアッセイにより検査した。例2由来の上清液をトロンビン−活性型血小板に対する ELISAアッセイによって検査した。各アッセイに用いた試薬の調製は例1に記載してある。
【0096】
A.トロンビン活性型血小板
1.96穴平底COSTARプレートに 0.1%のゼラチン (2%のゼラチン−Sigma)を 100μl/ウェルで加え、そして37℃で 15minインキュベートすることによりコートした。
2.ゼラチンを除去し、そして 100μlのトロンビン活性型血小板(108/ml)を各ウェルに加えた。
3.プレートを37℃で 15minインキュベートした。
4.プレートを800rpm (90×g) で2min 遠心した。
5.未結合の血小板を除去し、そしてそのプレートを PBSで2回洗った。
6.1%の BSAを含む PBS 100μlを各ウェルに加え、そしてそのプレートを室温で60分放置した。
7. 100μlの上清液を各ウェルに加えた。このプレートをシェーカー上に室温で 60min置いた。
8.このプレートを PBSで4回洗った。
9.1%の BSAを含む PBSで1/1000に希釈した 100μlのペルオキシダーゼ−コンジュゲート化ヤギ抗−マウス IgGを各ウェルに加えた。このプレートを室温で30分放置した。
10.このプレートを PBSで7回洗った。
11. 100μlのABTS基質系(Kirkegaard and Perry, Laboratories,Inc.) を各ウェルに加えた。
12. このプレートを室温で30分まで発色させた。
13. ODをTitertek Multiskan MCC/340 で 414nmにて測定した。
【0097】
B.精製P−セレクチン
1.レンチルレクチン、ゲル濾過及びDEAEカラムでのクロマトグラフィーにより単離した「可溶性」又は「腹結合型」P−セレクチンをDPBS (ダルベッコリン酸緩衝食塩水は、CaCl2(1mM)及びMgSO4 (0.5mM) を含むリン酸緩衝食塩水(PBS) である) で希釈し(1:50〜1:1000) 、そして Falcon 96穴マイクロタイタープレート上に4℃で一夜コートした。
2.次にプレートをDPBS+1%の BSAで1hr以上ブロックした。
3.アッセイすべき上清液を次にウェルに加え、そして室温で30〜60min インキュベートした。
4.プレートをDPBSで洗い、次いでこのウェルにヒツジ抗マウス IgG西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート (Sigma A-6782,DPBS+1%の BSA中で1:1000)を加え、そしてこのプレートを室温で1hrインキュベートした。
5.このプレートを次にDPBSで洗い、そして TMBマイクロウェル基質系(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc.) で発色させた。
【0098】
C.組換P−セレクチン
1.96穴平底プレートに、組換P−セレクチン遺伝子でトランスフェクトされた 293細胞クローンのプールの無血清培地の中に入れた 100μlのP−セレクチンで4℃で一夜コートした。この上清液は少なくとも8ng/mlのP−セレクチンを含み、そして未希釈で、又は培地で1:8に希釈してCOSTARプレート上にコートした。
2.このプレートをダルベッコPBS (DPBS)で1回洗い、そして1%の BSAを含む 200μlのDPBSで室温で30分ブロックした。
3.そのプレートを頁9、章Aの工程7〜13に従う ELISAアッセイのために処理した。
【0099】
D.P−セレクチンに対する mABのアイソタイプ化
mAb PB1.3及びPNB1.6のアイソタイプ分析は、両モノクローナル抗体がマウスイムノグロブリンサブクラスIgG1のそれであることを示唆した。アイソタイピングは Boehringer Mannheimマウス−ハイブリドーマ−サブタイピングキットの捕獲法を利用して実施した。
【0100】
例 5
P−セレクチンの検出
本例はウェスタンブロッティングによるP−セレクチンの検定を述べる。P−セレクチンを含むサンプルを等容量のSDS-PAGEサンプルバッファー(非還元)と混ぜ、 100℃に加熱し、Novex 8〜16%勾配ゲルに流し、そして電気泳動的にニトロセルロースに転写した。このニトロセルロース膜を次にリン酸緩衝食塩水(PBS) +1%の牛血清アルブミン(BSA) の中で少なくとも1hrブロックした。次にこの膜を室温で1hr以上、 PBS+1%の BSA中の適当なモノクローナル抗体又は精製抗体(5μg/ml)を発現するハイブリドーマ由来の組織培養上清液とインキュベートした。次にこの膜を PBS+1%の BSAで数回洗い、そして PBS+1%の BSA中の1〜1000倍希釈率のヒツジ抗−マウス IgG西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート (Sigma A-6782) と1hrインキュベートした。次にこの膜を洗い、そのバンドをテトラメチルベンジジン/膜エンハンサー(Kirkegaardand Perry Laboratories, Inc.) で識別化させた。
【0101】
PB1.3及びPNB1.6由来の組織培養上清液に関して、 140kdの分子量を有するタンパク質が検出された。これは、可溶化血小板膜の調製品及び精製P−セレクチンにおいて示された。
【0102】
例 6
ブロッキングP−セレクチン抗体による急性炎症障害のインビボ阻害
本例は急性肺障害を処置する本発明のブロッキングP−セレクチン抗体の能力を実証するデーターを提供する。本例においては、全身補体活性化をラットへのコブラ毒因子(CVF) の血管点滴により供した。このモデルにおける障害は急速に発症し、そして好中球から発生した毒性酸素産物に依存することで知られる。
【0103】
これらの研究に関し、例2及び3に記載の2種のモノクローナル抗体を使用した。この研究にとって特に重要なのは、このブロッキングP−セレクチン抗体 PB1.3がヒト好中球に対するトロンビン−活性型ラット血小板の接着をも阻害したことである(データーは示さず)。これらのデーターは、 PB1.3が保存化機能性P−セレクチンを認識し、そしてブロッキングP−セレクチン抗体がその他の炎症障害の処置において有用でありうることを示唆する。
【0104】
インビボ実験に関して、20単位の CVF/体重kgを 300gmの成雄Long-Evansラットに静脈内的に点滴した。このことは、迅速な肺内、血管内での血液好中球の壊死巣分離を、内皮細胞と好中球との物理的接触の時点での間隙性毛管内皮細胞の損傷を伴ってもたらす。PB1.3 及びPNB1.6は、採用しているとき、総量 0.5mlにおいて、CVFと共に表示の量で静脈内的に点滴した。陰性コントロール動物には 0.5mlのリン酸緩衝食塩水(PBS) の静脈内点滴を受容させた。全てのケースにおいて、点滴物質には微量の〔 125I〕−牛血清アルブミン及び同族の〔51Cr〕−赤血球(RBC) も含ませた。肺障害 (アルブミンの漏出及び RBCの管外遊出) のパラメターは 30min目において、Mulliganら、 J.Clin Invest. 88:1396 (1991) の確立された技術に従った。
【0105】
これらの実験の結果を図2A及び2Bに示す。 CVFと共に 200μgのPNB1.6 (非ブロッキング抗−P−セレクチン抗体)の同時点滴は、未処置の CVF陽性コントロールの値と比べたときに肺障害の任意の低下を起こすことができなかった。従って、 PBS中の CVFPNB1.6を受容した動物は対照の陽性コントロール値を担った。 100μgの PB1.3抗体を点滴したとき、 CVF浸透率は19.2% (p=0.002)下がり、そして出血は37.5% (p=0.001)下がった (データーは示さず) 。 200μgの PB1.3を加えたとき、浸透率は50.8%(p<0.001)下がり (図3)、そして出血はそれぞれ70.0%(p<0.001)及び70.1%(p<0.001)下がった(図4)。
【0106】
コンパニオンセットの動物由来の肺をホモジナイズし、音波処理し、そしてミエロペルオキシダーゼ活性(MPO) を測定して肺中の好中球含量の見込みを得た。 MPOをWarrenら、 J.Clin Invest. 84:1873 (1989) の標準手順に従い、O−ジアニシジンの存在下でのH2O2の分解により決定した。図4〜5に示す通り、100, 200又は 400μgの PB1.3による処置は MPO含量を、対照 (未処置) 陽性コントロールグループにおける値よりそれぞれ26% (p=0.24) 、41% (p<0.001)及び50%(p<0.001)下げた。 200μgのPNB1.6を注射した動物においては、 MPO含量における低下はなく(図4〜5)、この抗体の CVF誘発型肺障害に対する制御の能力のなさと一致した。従って、ブロッキング抗体 PB1.3の予防効果は、肺組織中での好中球蓄積を妨げるその能力に相関する。肺切片の透過型電子顕微鏡検査は、 PB1.3による処置が、肺間隙性毛細管内での好中球の蓄積の低下、内皮細胞に対する好中球の付着性の減少、及び損傷内皮細胞の事実の低下をもたらしめることを確証せしめた。
【0107】
CVFの静脈内注射後のP−セレクチンの肺発現を調査するため、別のグループのラットに CVFを点滴し、そして動物を0,5,10,15,20及び60分後に殺した。肺を 0.C.Tでふくらまし、スナップ凍結し、そして切片を得、次いで PB1.3を用いて免疫組織学技術によりP−セレクチンの存在について検査した。肺脈管構造内にわずかに検出できる反応が0時に認められ、一方、染色は5分で完全に明らかとなり、そして CVFの点滴の15及び20分に増大した。染色パターンは間隙性毛細管の染色に一致したパターンでの肺小静脈及び隔壁領域を含んだ。60分では、染色は大いに消失していた(データーは示さない)。P−セレクチンはおそらく CVF点滴前に細胞内貯蔵顆粒の中に存在しているが、P−セレクチンの内皮の表層への移動は PB1.3抗体とのその反応性を劇的に高めることが明らかである。
【0108】
例 7
競合結合アッセイ
ヒト血液からの血小板の単離、トロンビンによる単離血小板の活性化及びPMN(好中球) の単離の方法は上記の例1に記載してある。P−セレクチンに対するモノクローナル抗体とのトロンビン活性型血小板のインキュベーション
a.20μlのトロンビン−活性型血小板(2×108 /ml)を24本のエッペンドルフチューブ (1.5ml)それぞれに、デュプリケートで入れた。
b. これらのチューブのうちの8本に、PNB1.6より精製した IgG画分20μlを1mMの CaCl2を含むTyrode-Hepesバッファー、pH 7.2中で10μg/mlの濃度において加えた。第2列の8本のチューブには、1μg/mlの濃度において同一の IgG調製品20μlを加えた。第3列の8本のチューブには、20μlのバッファーのみを加えた。
c.混合し、そして室温で20分放置した。
d.各列の8本のチューブに、 PB1.3から精製した10μg/ml〜0.03μg/mlに範囲する濃度の IgG画分20μlを加えた。
e.混合して室温で20分放置した。
f.20μlの好中球を3×106 /mlで加えた。
g.混合して室温で20分放置した。
h.接着を顕微鏡的に下記の通りに評価した:各サンプル中の 100個の好中球をカウントする。細胞を、もしそれが2以上の血小板と結合しているなら陽性と評点し、そして2未満と結合しているなら陰性と評点した。計算は陽性細胞の%とした。
【0109】
図6に示す通り、PNB1.6によるトロンビン活性型血小板の予備処理は、 PB1.3の、好中球に対するそのP−セレクチン媒介型接着を阻止する能力に影響しない。
【0110】
例 8
ブロッキングP−セレクチン抗体の結合の特性化
I.(a) モノクローナル抗体の精製:モノクローナル抗体PNB1-6及び84/26を、プロテイン G Sepharose 4 Fast Flowカラム(Pharmacia) に通すことによって組織培養上清液から単離した。このカラムをリン酸緩衝食塩水(PBS) でよく洗い、そして結合抗体を 0.1Mのグリシン−HCl pH 2.7で、 0.2〜0.5 容量の1Mのトリス、pH 8.0を含むチューブに溶離させた。 PB1.3を単離するために用いた手順は同一であるが、ただしプロテインGに結合した抗体を 0.1Mの酢酸−HCl pH 2.5により、 0.3容量の2Mのトリス、 pH 10を含むチューブの中に溶離させた。画分を含む抗体をプールし、そして PBSに対して4℃で数回交換して透析した。
【0111】
(b) PB1.3アフィニティーカラムの調製:P−セレクチンの精製において使用するため、 PB1.3をトレシル活性型アガロースに、その製造者のアフィニティー仕様書(SchleicherとSchuell)に従ってカップルさせた。
【0112】
(c) P−セレクチンの精製:上記の通りに調製した、洗った古びたヒト血小板に1/100 の容量の5mg/mlのロイペプチン及び1/100 の容量の35mg/mlのAEBSF (Calbiochem)を加えた。混合後、その血小板をドライアイス/メタノールバス又は液体窒素のいづれかの中で凍結融解を3回行い、Dounceホモジナイザーで10ストロークで均質化し、そして 35,000rpmで1hr、4℃で、Beckman 70 TIローターで遠心した。このペレットをダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS, Whitlaker Bioproducts;これは約 0.9μMのCa++及び 0.5mMのMg++を含む) に再懸濁し、そして5mMのベンズアミジン−HCl 、 100μMのロイペプチン及び2%のトリトンX−100 とした。この懸濁物を再懸濁し、そしてDounceホモジナイザーで10ストロークで均質化した。4℃で1hrのインキュベーション後、その溶液を再度Beckman 70 TI ローターで1hr、4℃にて 35,000rpmで遠心した。その上清液を、DPBS+0.05%の Rennex 30(Accurate Chemical andScientific Corp.) で平衡にした PB1.3−アガロースカラムに通した。このカラムをDPBS+0.05%の Rennex 30でよく洗い、そして結合P−セレクチンを 0.1Mのトリエチルアミン−HCl 、0.05%の Rennex 30、pH11.5により、 0.1容量の1Mのホスフェート、pH6.8を含むチューブに溶離させた。P−セレクチンを含む画分をプールし、DPBS+0.05%の Rennex 30に対して透析し、Centricon 30又は Centriprep 30スピン濃縮器 (Amicon) のいづれかを用いて濃縮し、小分けし、そして−80℃に保存した。
【0113】
(d) ペプチドCQNRYTDLVAIQNKNE (Cys-Gln-Asn-Arg-Tyr-Thr-Asp-Leu-Val-Ala-Ile-Gln-Asn-Lys-Asn-Glu-NH2)の調製。このペプチドはFmoc保護アミノ酸と、アミノ酸活性化のための2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBATU) エステルを用いApplied Biosystems(Foster City, CA) 430Aペプチドシンセサイザーで合成した。各アミノ酸を毎日二重カップルさせた。Fmoc保護アミノ酸及びヒドロキシベンゾトリアゾールはApplied Biosystemsより購入した。全ての溶媒は Burdick and Jacksonより購入した。HBTUはRichelieu Biotechnologies (St-Hyacinthe, Canada)より購入した。ピペリジン及びトリフルオロ酢酸、無水酢酸、チオアニソール、フェノール及びエタンジオールはSigma Chemical Corporationより購入した。
【0114】
Fmoc−アミド樹脂(Bachem Biosciences) をペプチド合成反応槽の中に入れ、そしてN−メチルピロリドン(NMP) で1回洗った。下記の操作は連続的に行った。
【0115】
1.Fmoc保護基を、樹脂結合型アミノ酸の NMP中の25%のピペリジンによる処理によって除去した。
2.その樹脂を NMPで5回洗った。
3.N−α−Fmoc−L−グルタミン酸 γ−t−ブチルエステル、ジイソプロピルエチルアミン、HBTU及び NMPを含む混合物をこの反応槽に加え、そしてボルテックス撹拌のもとで30分反応させた。
4.溶媒を廃棄し、そしその樹脂を NMPで3回洗った。
5.工程(3)と(4)を更に2回繰り返した。
6.この樹脂を NMPで更に4回洗った。工程1−6をこのペプチドの各アミノ酸について繰り返した。最終カップリングサイクルの後、樹脂結合ペプチドを NMP中の25%のピペリジンとの反応により脱保護し、 NMPで7回洗い、そしてジクロロメタンで2回洗った。この樹脂を24時間真空で乾かした。このペプチドを樹脂より、 2.5%のエタンジチオール、5%のチオアニソール、 7.5%のフェノール及び5%の水による処理によって切断した。ポリスチレン樹脂を濾過によってこのトリフルオロ酢酸溶液から除去した。トリフルオロ酢酸を真空でのエバポレーションにより除去した。粗ペプチドをジエチルエーテルで粉砕し、そして水に溶かした。水を凍結乾燥により除去した。このペプチドをアセトニトリル、水の、それぞれ改質剤として 0.1%の TFAを含む勾配を用いてC8 カラム上での逆相HPLC (VYDAC)により精製した。
【0116】
(e) モノクローナル抗体のビオチニル化:抗体を 0.1Mの炭酸水素ナトリウムに対して透析した。NHS-LCビオチン (Pierce) を 0.3mg/mlとなるまで加えた。室温で2時間後、抗体を PBSを数回交換しながらそれに対して透析した。
【0117】
(f) ELISAのためのマイクロタイタープレートのコーティング:96穴マイクロタイタープレート(Falcon Microtest II) を4℃で一夜、DPBS中の2μg/mlのアフィニティー精製P−セレクチンにより50μl/ウェルでコートした。
【0118】
(b) ウェスタンブロッティング: PB1.3,PNB1.6及び84−26は全て、血小板をSDS-PAGE泳動バッファー(非還元型)に溶かし、SDS-PAGEにかけ、そしてニトロセルロースフィルターに転写したとき、 140kDの単一バンドに結合する (データーは示さず) 。 PB1.3及びPNB1.6はサンプルをβ−メルカプトエタノールで還元したときはウェスタンブロット上でP−セレクチンをもはや認識しなくなることも見い出した。
【0119】
II.P−セレクチンに対するモノクローナル抗体の結合に及ぼすキレート化性二価陽イオンの作用:2枚のマイクロタイタープレートを上記の通りにアフィニティー精製P−セレクチンでコートした。プレート1は 200μl/ウェル PBS+1%の BSAでブロックし、一方、プレート2は 200μl/ウェルDPBS+1%のBSA(DPBSはCa++とMg++を含む) でブロックした。1hr後、このプレートを洗った(洗浄は全て、プレート1に関しては PBS、プレート2に関してはDPBSとした)。 PBS+1%の BSA中の25μlの25mMのEDTAをプレート1のウェルに加え、そして25μlのDPBS+1%の BSAをプレート2に加えた。1hr後、25μlの適当な希釈抗体をいづれのプレートのウェルに加えた。プレート1に関する希釈は PBS+1%の BSAで行い、プレート2はDPBS+1%の BSAで行った。1hr後、これらのプレートを洗い、そして50μlの希釈率1〜1000のヒツジ抗−マウス IgG西洋ワサビペルオキシダーゼ(プレート1に関する希釈はPBS +1%の BSA、プレート2に関してはDPBS+1%の BSAで行った)を加えた。1hr後、このプレートを洗い、そして50μlのペルオキシダーゼ基質TMB(3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン)(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc.) を加えた。色が適度なレベルにまで発色した後、基質反応を25μlの1Mのリン酸の添加により止め、そして 450nmでの吸収を測定した。
【0120】
図6は、P−セレクチンに対する抗−P−セレクチンモノクローナル抗体の、Ca++及びMg++を含むバッファーDPBS、並びに PBS及び二価金属陽イオンのキレート剤である EDTA 25mM中での結合を示す。DPBS中に存在している二価陽イオンの濃度はP−セレクチンに対する好中球の接着を補助するのに十分なものより高く(Geneら、1991)、一方、キレート剤EDTAは25mMでは、P−セレクチンに対する好中球接着を阻止するのに十分なものより高い。P−セレクチンに対するモノクローナル抗体全ての結合はEDTAの存在にほとんど影響されず、Ca++は結合が起こるのに存在している必要がないことを示す。PB1.3はブロッキング抗体、即ち、それは例えば活性型血小板上のP−セレクチンに好中球が結合するのを阻止することができるものである。PNB1.6は非ブロッキング抗体である。84/26の、P−セレクチンに対する好中球の結合を阻止する能力は完全には特定されていない。反対に、Gengらにより述べられている抗−P−セレクチンモノクローナル抗体はCa++の非存在下で結合することのできる唯一の非ブロッキング抗体S12である。
【0121】
III .P−セレクチンに対する PB1.3の結合に及ぼすペプチドCQNRYTDLVAIQNKNEの作用:マイクロタイタープレートに、上記のアフィニティー精製P−セレクチンをコートし、 200μl/ウェルのDPBS+1%の BSAでブロックし、そして洗った。DPBS+1%の BSA中の PB1.3の希釈品を PBS中の0.35mg/mlのCQNRYTDLVAIQNKNEと、又はコントロールとしての PBS単独と混合した。1hr後、50μlの各抗体希釈品をこのマイクロタイタープレートに加え、そして1hrインキュベートした。このプレートをDPBSで洗い、そして1〜1000倍希釈率のDPBS+1%の BSA中のヒツジ抗−マウス IgG西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートを加えた。1hr後、このプレートを洗い、基質 TMBを加え、そして発色を止め、そしてプレートを上記の通りに測定した。
【0122】
図7は、P−セレクチンのレクチンドメインの残基19−34に相同性のペプチドCQNRYTDLVAIQNKNEが、そのペプチドが0.35mg/mlの濃度で存在しているときはP−セレクチンに対する PB1.3の結合に影響しないことを示す。これは、この特定のモノクローナル抗体を、P−セレクチンに対する結合がこのペプチドによって部分的に又は完全に阻止されるモノクローナル抗体G1,G2及びG3から区別する。
【0123】
IV.サイテル(Cytel) モノクローナル抗体 PB1.3, PNB1.6及び84/26の、P−セレクチンに対する互いの結合を阻止し合う能力:上記の通りにアフィニティー精製P−セレクチンでコートしたマイクロタイタープレートをDPBS+1%の BSAで1hrブロックし、そして洗った。DPBS+1%の BSA中の50μg/mlの PB1.3,PNB1.6又は84/26の溶液25μlを適宜のウェルに加え、そして1hrインキュベートした。次に、ビオチニル化抗体の希釈液(DPBS+1%の BSA中)25μlを加えた。次にこのプレートをプラットホームシェーカー上で1hrインキュベートした。洗浄後、1対1000の希釈率のストレプトアビジン西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート50μlを加え、そして1hrインキュベートした。DPBSで洗浄後、このプレートを上記の通り基質 TMBで発色させた。
【0124】
図8〜10はモノクローナル抗体 PB1.3,PNB1.6及び84/26のP−セレクチンに対する互いの結合を妨害し合う能力を示す。図8は、PNB1.6のみがP−セレクチンに対するビオチニル化PNB1.6の結合を阻止することができ、 PB1.3及び84/26はPNB1.6とは異なるエピトープを認識するにちがいないことを示す。同様に、図9において、PNB1.6又は84/26ではなく PB1.3が、セレクチンに対するビオチニル化 PB1.3の結合を阻止することができ、他の二つのモノクローナルは別のエピトープを認識するにちがいないことを示す。図10より、PNB1.6ではなく、84/26及び PB1.3の両者がP−セレクチンに対するビオチニル化84/26の結合を阻止することができる。
【0125】
V.ブロッキングP−セレクチン抗体はヒト血小板のトロンビン誘発型凝集を阻害しない。
本例はP−セレクチン抗体、 PB1.3及びPNB1.6が、血小板のトロンビン誘発型凝集を阻害しないことを示す。新鮮なヒト血小板を上記の通りに単離し、そしてTyrode-HepesバッファーpH 7.2の中に2×108 /mlの濃度で懸濁した。
【0126】
血小板凝集測定はLumiアグレゴメーター (Chrono-Log Corg.) で行った。このアッセイのため、0.45mlの血小板懸濁物を標準のシリコーン処理キュベットの中に入れた。これに10μlの抗体又はビヒクルコントロールを加えた。37℃で5分後、 0.1単位のトロンビン(ヒト、Sigma)を加え、そして凝集を記録した。
【0127】
血小板凝集を抗体の非存在下でコントロール条件下で測定したとき、71単位の凝集応答が得られた。同程度の凝集が、 PB1.3抗体産生細胞由来の10μlの未希釈培養上清液の存在下で得られた(図11)。様々な濃度のPB1.3(1〜 100μg/ml) を血小板懸濁物に加えた。どの PB1.3の濃度でも、血小板凝集は抗体の非存在下で決定された応答と異ならなかった(図11)。
【0128】
例 9
ネコ心筋虚血症及び再灌流におけるブロッキングP−セレクチン抗体のインビボ防御作用
ネコにおける心筋虚血症及び再灌流障害のモデルをTsaoらの方法に従って実証した (Circulation 82:1402-1412 (1990)) 。簡単に述べると、雄ネコ(2.5〜3.5kg)をペントバルビタールナトリウム (30mg/kg, i.v.) で麻酔した。中央線切開を開して気管内チューブを挿入し、そして全てのネコに Harvard小動物呼吸用マスクによって断続的に陽圧通気を付与した。外部頸静脈の中にポリエチレンカテーテルを挿入し、そして右方大腿静脈にカニューレを施し、そして動脈血圧の測定のために Statham P23Ac圧力変換器を接続した。中央線開胸術を施し、心膜を開き、そして心臓を露出させた。2−O絹縫台を左前方下行動脈(LAD) まわりに、その起源から10〜12mm離して慎重に施した。30分間の安定期間の後、心筋虚血を LADの完全な結紮により開始せしめ、 1.5時間の虚血、そして 4.5時間の再灌流が続いた。ブロッキング(PB1.3) 及び非ブロッキング (PNB1.6)抗−P−セレクチン抗体を再灌流が開始する10分前に1mg/kgの用量を静脈内投与した。
【0129】
虚血心筋層は、その組織部分がニトロブルーテトラゾリウムにより染まらないことで決定され、そして危険面積%として表わす。危険面積%は、左房への Evansブルー染料の注射が後に続く再灌流期間の終了期での LADの再閉塞により決定される。この危険面積は従ってネガティブ染色により決定される。
【0130】
冠状動脈環の内皮依存性し緩は、トロンボキサンA2凝症U46619で予め収縮させた環のアセチルコリン−誘発し緩率を測定することにより決定した。データーは%し緩率として表わす。
【0131】
心筋層中の好中球蓄積はポリトロン均質化心筋組織のミエロペルオキシダーゼ活性として測定される。
【0132】
これらの実験の結果を図12に示す。非ブロッキング抗体PNB1.6で処置したネコにおいては、心筋虚血の程度は33±5%の危険面積率であった。一方、 PB1.3処置動物における虚血の程度は有意に低く(P<0.01)、15±3%の危険面積率であった。アセチルコリンに対する内皮依存性し緩も、PNB1.6に比べ、 PB1.3で処置したネコから採取した虚血−再灌化冠状動脈において有意に保持されていた(67±6、対、11±3%;P<0.01)。これらの現象が白血球蓄積の低下に寄因しうることは、PNB1.6処置動物(136±12 PMN/mm2)に比しての、PB13処置動物 (64±7 PMN/mm2)由来の冠状動脈内皮に対して結合する PMNの数の有意な低下(P<0.1)により示唆される。
【0133】
例 10
ネズミモノクローナル抗体 PB1.3の重鎖及び軽鎖の可変領域をエンコードするcDNAをクローンし、そして配列決定により特性化した。 PB1.3の重鎖及び軽鎖の可変領域及びシグナルペプチドの配列を図11及び12に示す。 PB1.3重鎖及び軽鎖由来の CDRをヒト重鎖及び軽鎖の CDRと交換した。ヒト化 PB1.3の可変領域の異なるバージョンを作るため、ヒトフレームワーク領域を、Monoclonal Antibodies,2:Applications in Clinical Oncology (Editor A.Epenetos;Chapman & Hall, 1992;これは引用することで本明細書に組入れる;特にそれに含まれるBendig The Humanization of Mouse Monoclonal Antibodies by CDR-Grafting: Examples with Anti-Viral and Anti-Tumor Cell Antibodiesを参照のこと;これは引用することで本明細書に組入れる)の方法で改質した。ヒト可変領域を発現ベクターに挿入した。ヒト定常領域の配列を図13〜14及び15に示す。 PB1.3/ヒト型の様々なバージョンの重鎖及び軽鎖の可変領域及びシグナルペプチドの配列を図18,19,20,21及び22に示す。重鎖及び軽鎖の適当な組合せを同時発現させることにより、いくつかのヒト化抗体が発現されうる。pHCMV-1748RHA-γCi-dhfr 及びpHCMV-1748RLA-KR-neoの同時発現は PB1.3/ヒト化バージョンAを発生せしめる。pHCMV- 1747CH-γ1Ci-neo 及び pHCMV-1747CL-KR-neoの同時発現は PB1.3キメラを発生せしめる。
【0134】
例 11
COS細胞中での PB1.3及び PB1.3/ヒト型の発現
COS細胞のエレクトロポレーション
DNA構築体を COS細胞の中で、 PB1.3/ヒト型/キメラ及びPB1.3/ヒト型の一過性発現について試験した。 DNAを COS細胞の中に、 Gene Pulser装置 (Biorad) を用いるエレクトロポレーションにより導入した。 COS細胞をトリプシン処理し、そしてリン酸緩衝食塩水(PBS) で一回洗った。DNA(重鎖プラスミド及び適当な軽鎖プラスミド10μgづつ) 及び PBS中の 0.8mlの1×107 細胞/mlのアリコートを無菌 Gene Pulserキュベット(Biordad, 0.4cmギャップ) に入れた。パルスを 1,900ボルト、25マイクロファラデー容量で導入した。周囲温度で10分の回収時間の後、エレクトロポレートした細胞を10%の胎児牛血清を含む10mlのDMEM培地(GIBCO) に加えた。48時間後、この培地を集め、細胞塊を除去するために遠心し、そして4℃で無菌状態のもとで短期間保存した。
【0135】
II 酵素結合型免疫収着アッセイ(ELISA)
トランスフェクト COS細胞由来の培地を、まず産生されたヒト抗体の量を決定するため、そして次にP−セレクチンに特異的に結合した抗体の量を決定するためにアッセイした。 Falcon 96穴マイクロタイタープレート(Falcon 3912, Microtest III ) に50μlの組換P−セレクチンの溶液(1.2mg/ml) 又はダルベッコリン酸緩衝食塩水 (DPBS) 中のヤギ抗−ヒトIgG(完全分子、 Sigma, mg/ml) の溶液をコートした。プレートは4℃で一夜又は37℃で2時間コートした。これらのプレートを次に 200μl/ウェルでDPBS+1%の牛血清アルブミン(BSA) により1時間以上ブロックした。これらのプレートをDPBSで洗った。
【0136】
DPBS+1%の BSA中のモノクローナル抗体の系列希釈品をプレートに加え(50μl/ウェル)、そしてこれらのプレートを室温で1時間インキュベートした。これらのプレートをDPBSで3回洗った。
【0137】
DPBS+1%の BSAの中で1、対、1000に希釈した50μl/ウェルの第二抗体(ヤギ抗−ヒト IgGペルオキシダーゼコンジュゲート、Sigma A-8867) をこれらのプレートに加え、そしてこれらのプレートを室温で1時間インキュベートした。これらのプレートをDPBSで3回洗った。
【0138】
50μlのテトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ基質(TMB; Kirkegaard and Perry Laboratories由来) を各ウェルに加え、そして適当な時間発色させ(通常3〜5分)、そしてその反応を50μl/ウェルの1Mのリン酸の添加によって停止させた。そのプレートを 450nmで読み取った。
【0139】
全ての COS細胞上清液の中で産生された抗体の濃度を、標準品(Sigma)としての既知濃度のヒトポリクローナル抗体に対して IgG ELISA結果を比較することにより決定した。
【0140】
III データ分析
P−セレクチン結合を IgGの濃度に対する 450nmでの光学密度としてプロットした。
【0141】
IV PB1.3の精製
PB1.3を例8に記載の通りに精製した。
【0142】
例 12
ウサギの耳の再移植に続く虚血再灌流により生ずる組織障害に及ぼす PB1.3の作用
ニュージーランドシロウサギをケタミンとキシラジンとの組合せにより麻酔し、続いて耳の根元にリドカインを浸潤させた。左耳を、中央動脈、静脈及び軟骨橋を完全に残しながら部分切断した。全ての神経を、耳が全体的に麻酔されるように分裂させた。次にその耳を再付加させ、そして全虚血をもたらすよう動脈にわたって微小血管クリップを施した。ウサギを23.5℃に維持した室に6時間入れ、次いで微小血管クランプを取外し、そして耳を再灌流させた。処置物は、PB1.3(2mg/kg)、又は食塩水もしくはPNB1.6と呼ぶアイソタイプ (IgG1) 対合型ネズミモノクローナル抗体(2mg/kg)のいづれかにより再灌流直前に投与した。組織水腫を定量するため、7日間にわたり毎日耳の容積を、水押退けによって測定した。
【0143】
耳容積の有意な増加が耳の再灌流に続く食塩水又はPNB1.6のいづれかで投与したコントロール動物において決定された(図23)。2つのコントロールグループ間で相違がなかったため、それらのデーターを組合せた。水腫の増大も、 PB1.3で処置した動物で認められ、その増大の程度は測定した全時点において、コントロールグループにおいて観察されたものより有意に低かった。7日目に測定された壊死の程度も(図24)、コントロール動物に比べ PB1.3処置動物において有意に低下した。
【0144】
従って、再移植ウサギ耳の虚血、それに続く再灌流は、大いなる組織壊死が主に続く水腫性壊死をもたらす。これらの組織障害の出現は抗−P−セレクチン抗体 PB1.3で事前処置した動物において有意に低下した。
【0145】
例 13
イヌ骨格筋の虚血及び再灌流を経た血管開通性に及ぼす PB1.3の作用
本実験は孤立したイヌの薄筋の虚血及び再灌流のモデルを利用する。再灌流障害の一観点は、「再流なし」(no-reflow) 現象と呼ばれる現象であり、それにおいては、事前虚血組織の微小循環を介する血流がないか、又は再灌流によりそれがかなり低下している。
【0146】
孤立したイヌの薄筋調製品を既に述べられている通りに利用した(Carden, Smith & Korthuis(1990) Circ.Res. 66 1436-1444) 。簡単に述べると、雑種の成犬をペントバルビタールナトリウムで麻酔した。薄筋を覆う皮膚を切り裂き、そして筋肉をブラント切開によって接続組織から解放した。閉鎖神経を切った。近位の尾動脈及び静脈にカニューレを施し、そしてその他の全ての側副枝血管を結紮した。大腿動脈カニューレを定常流速灌流ポンプにつなぎ、そして大腿静脈からの流出物を再灌流リザーバーに排出させた。動脈及び静脈圧を側枝を介してモニターし、そして血流を調節して再灌流圧を 100mmHgに維持した。血管孤立は、動脈灌流圧が、灌流ポンプのスイッチをオフにしたときに20mmHgより低く下がるなら完全であると考えられる。
【0147】
微小血管開通は、この実験プロトコールの終了時でのコントラスト媒体(インディアインク)による孤立した薄筋の灌流により評価した。 4.5時間の連続灌流;4時間の虚血、それに続く 0.5時間の再灌流;又は灌流液中での40μg/mlの濃度での抗−P−セレクチン抗体の存在下での虚血再灌流に委ねられた孤立イヌ薄筋から獲得した組織切片における筋肉繊維当りのインク含有微小血管 (直径<10μm)の数を定量するためにコンピューター付きビデオイメージングを利用した。
【0148】
虚血及び再灌流プロトコールは患者の微小血管の数を、コントロール動物において決定された値の36±3%にまで下げた。 PB1.3を灌流の中に含ませると、虚血及び再灌流を経た患者の微小血管の数はコントロールの 119±18%であった。
【0149】
従って、抗−P−セレクチン抗体、 PB1.3は、虚血及び再灌流イヌ薄筋における患者の微小血管の数により決定される通り、「再流なし」現象の発生を完全に阻止した。
【0150】
例 14
組織マスト細胞の脱顆粒により誘発された白血球内皮細胞相互作用に及ぼす PB1.3の作用
I.方 法
a)内蔵内顕微鏡観察
雄Wistarラット(200〜 250g) を Harlar Sprague Dawley,Indianapolisより獲得し、そして外科手順前に12〜24hr断食させた。外科的麻酔をケタミン/ロンプン/アセプロマジンの筋肉内注射によって誘発した。カテーテルを左頸静脈に施し、そして自発呼吸を助長するために気管開口を施した。腹を剃り、そして洗い、そして長さ3/4インチの切開を腹膜腔に中央線を介して施し、その際、出血を避けるように注意した。このラットを内蔵内顕微鏡観察手順のために特別のデザインされた顕微鏡の台の上に載せた。回腸のよく血管化された後方ループを外面化し、そして37℃に熱した観察用台座の上に腸間膜を載せた。この実験中、その腸間膜は熱した炭酸水素緩衝食塩溶液(37℃、pH4℃)で2ml/min にて超融解(superfuse) させた。更に、サランラップの小片 (予めアルコールに浸し、そして食塩水ですすいだもの)を目視領域周辺の回腸及び腸間膜領域にかぶせてそれらの領域の湿り気を保った。微小循環層を、10×の接眼鏡及び20×の対物レンズ(水没;数値開口0.4)の付いた内蔵内顕微鏡により観察した。顕微鏡にクランプされたビデオカメラ(HitachiカラーCCD)、ビデオタイマー (American VideoEquipment)、VCR (Sony SVO-9500 MD)及びモニター(Sony Trinitron)より成る高解像ビデオシステムは顕微鏡像のビデオ記録を可能にした。各腸間膜調製品において、長さ約 180μmの3本の後方毛細小静脈セグメントを下記の基準に従い、反復選別のために選んだ:1)直径15〜30μmの融合毛細管から血液を受容している真の後方毛細小静脈であること;2)個々の赤血球が区別できないほど活発な血流があること;3)白血球の若干の基線回転 (baseline rolling)があるが(血管セグメントにおいて一定時間にて8未満の白血球が存在)、密着した白血球はないこと。白血球は血管壁に30秒以上定着しているなら密着していると規定する。
【0151】
b)実験プロトコール
所定の小静脈中での基線白血球相互作用の1分ビデオ記録を、外科的手順の20及び25分後に行った。全ての処置物は第二の基線記録の前に静脈内投与した。手術の30分後にて、超融解バッファーへの化合物48/80(Sigma, カタログ # C4257) の点滴を開始し、そして実験の残り全体にわたって続けた。このことは、腸間膜において10μg/mlの最終濃度をもたらし、そしてこれはマスト細胞脱顆粒を誘発するために行った。小静脈を、48/80適用の開始の20及び30min後に再び記録した。白血球−内皮細胞相互作用の程度は、記録したビデオテープを分析することにより実験の終了時に決定した。明瞭に見える白血球(即ち、血管壁に相互作用している細胞)の数はちょうど0,15,30,45及び60秒の記録順で凍結したフレームより決定し、そしてこれらの5つの決定値の平均を算定した。従って、計測した白血球は回転細胞及び密着したものを含む。
【0152】
c)統 計
各実験グループは5〜6匹の動物を含み、各動物由来の2〜3本の小静脈を伴う。平均及び標準誤差を得た。グループ間平均の有意差は、Tukey-Kramerの HSD検定に従う偏差分析を介して検定した。個々の小静脈中の処置前後での相違を対合t−検定により調べた。全ての検定は、Macintosh IIsiでランする JMPソフトウェアーを用いて行い、そして有意差はp<0.05で許容とした。
【0153】
II.結 果
ラットの腸間膜に対する化合物48/80の局所塗布はマスト細胞の90%より大の目に見える脱顆粒をもたらし、これは塗布の3分以内に起きた。その後、白血球回転の増大及び接着が認められた。48/80塗布後20〜30分の時点で白血球の蓄積に有意な差は認められず、従ってこれら2時点での平均を統計分析において用いた。このモデルにおける小静脈間変動はかなり高く、個々の小静脈において0〜4.8 に範囲する白血球の基線相互作用が伴い、そして 2.8〜25.6個に範囲する白血球のマスト細胞誘発相互作用が PBS処置グループにおいて存在していた(変動係数、CV、37%) 。一の動物の平均ははるかに低い変動を示す(CV、16%);従って、各個体の小静脈を統計の目的のために独立の実験内容として処理した。
【0154】
図25でわかる通り、 PB1.3による静脈内処置は、組成バッファーコントロールグループと比較して、マスト細胞誘発血管内白血球蓄積を90%阻害した。非反応性抗体 PB1.6はこのモデルにおいて何ら作用を有さなかった。
【0155】
従って、抗−P−セレクチン抗体 PB1.3のラットへの投与は、白血球と血管内皮との相互作用、並びにマスト細胞脱顆粒剤48/80の適用により誘発される組織への白血球のその後の移動を完全に阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】好中球に対するトロンビン活性化血小板の結合を阻害する本発明の抗炎症イムノグロブリンを示す。
【図2】本発明の抗炎症イムノグロブリンが、浸透性により測定した通り、コブラ毒因子の点滴により誘発させた肺障害を効果的に予防することを示す。
【図3】本発明の抗炎症イムノグロブリンが、出血により測定した通り、コブラ毒因子の点滴により誘発された肺障害を効果的に予防することを示す。
【図4】動物の肺の中のP−セレクチン発現含量が、 PB1.3の西洋ワサビペルオキシダーゼ染色により識別される通り、コブラ毒因子点滴に応答して上限調節されることを示す。パネル(a)−(d)は、 CVFの点滴後の様々な時間での肺小静脈の中でのP−セレクチンの発現を示す。(a)時間0;b,c及びdパネルはそれぞれ5,10及び15分。
【図5】200μgの非ブロッキング抗体(PNB1.6)(フレームa,c)又はP−セレクチンに対するブロッキングP−セレクチン抗体(PB1.3)(フレームb,d)で処理したラットにおける CVF誘発型急性肺障害の光学及び透過型電子顕微鏡写真である。PNB1.6で処理した動物においては、血管傷害は内皮細胞と近いコントラストにおける好中球の血管内凝集(フレームc.矢印)に関係する多量の胞内出血(フレームa)により示される。他方、 PB1.3で処置した動物においては胞内出血はなく(フレームb)、そして血管内好中球は内皮とほとんど接していることを示した(フレームd.矢印)。(フレームa及びb;トルイジンブルーで染めたプラスチック包埋切片;X160:フレームc及びd;ウラニルアセテート、クエン酸鉛染色;X2250)。
【図6】P−セレクチンに対するモノクローナル抗体 PB1.3の結合を示す:EDTAによる二価カチオンのキレートの結果。プロットにおいて、白抜き記号(下方のトレース)はCa++及びMg++の存在下での結合であり、一方、べた塗り記号(上方のトレース)はEDTAの存在下での結合である。抗体は 1.6mg/mlから希釈した。
【図7】P−セレクチンに対する PB1.3の結合に及ぼすペプチドCQNRYTDLVAIQNKNEの作用を示す。べた塗り記号は0.35mg/mlのこのペプチドの存在下、白抜き記号はこのペプチドの非存在下である。 PB1.3の表示の希釈は 1.6mg/mlの溶液からである。
【図8】P−セレクチンに対するモノクローナル抗体のクロス−ブロック結合の能力を示す。ブロッキング抗体は50μg/mlで存在する。示しているビオチニル化抗体の希釈は 1.6mg/mlの PB1.3、0.87mg/mlのPNB1.6及び0.59mg/mlの84/26からである。
【図9】P−セレクチンに対するモノクローナル抗体のクロス−ブロック結合の能力を示す。ブロッキング抗体は50μg/mlで存在する。示しているビオチニル化抗体の希釈は 1.6mg/mlの PB1.3、0.87mg/mlのPNB1.6及び0.59mg/mlの84/26からである。
【図10】P−セレクチンに対するモノクローナル抗体のクロス−ブロック結合の能力を示す。ブロッキング抗体は50μg/mlで存在する。示しているビオチニル化抗体の希釈は 1.6mg/mlの PB1.3、0.87mg/mlのPNB1.6及び0.59mg/mlの84/26からである。
【図11】トロンビンにより誘発された血小板凝集の程度が、抗体の非存在下と、濃度が上昇していく(1〜 100μg/ml)精製PB1.3抗体の存在下とで、コントロール条件で同等であることを示す。
【図12】危険率の面積で表わす心筋虚血症の程度が、非ブロッキング抗−P−セレクチン抗体で処置した動物においてよりも、ブロッキング抗−P−セレクチン抗体(PB1.3) で処置した動物においての方が有意に低いことを示している。更に、アセチルコリンに応答してし緩する冠状動脈環の能力は、PNB1.6処置動物と比べ、 PB1.3において有意に強かった。これらの現象が白血球蓄積の低下に原因することは、PNB1.6処置動物に比しての PB1.3処置動物由来の冠状動脈内皮に結合する PMNの数の減少により示唆される。
【図13】ヒトカッパ−イムノグロブリン軽鎖定常ドメインの DNA配列及びアミノ酸配列を示す。
【図14】図13の続き。
【図15】ヒトイムノグロブリン生殖細胞系G−E−A領域の DNA配列及び翻訳を示す。A:ガンマ−1定常領域cDNA。
【図16】PB1.3重鎖シグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図17】PB1.3軽鎖シグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図18】PB1.3/ヒト化重鎖−Aシグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図19】PB1.3ヒト化重鎖−Bシグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図20】PB1.3/ヒト化軽鎖−Aシグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図21】PB1.3軽鎖−Bシグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図22】PB1.3重鎖−Cシグナルペプチド及び可変領域の配列及び翻訳を示す。
【図23】PB1.3又はコントロールネズミモノクローナル抗体の投与後の、組織損傷を経た耳の容積における変化を示す。
【図24】PB1.3及びコントロールネズミモノクローナル抗体の投与後の、ウサギの耳の虚血及び再灌流を経た壊死の発症を示す。
【図25】PB1.3の投与後の、マスト細胞誘発型血管内白血球蓄積の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競合阻害アッセイにより測定される通り、P−セレクチンに対する、ATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌される抗体の結合を完全に阻害する、ブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項2】
Ca++の非存在下でP−セレクチンに対する好中球の結合を阻害する、請求項1記載のブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項3】
ペプチドCQNRYTDLVAIQNKNEの存在下でP−セレクチンに対する好中球の結合を阻害する、請求項1記載のブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項4】
IgGイムノグロブリンである、請求項1記載のブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項5】
ネズミ抗体である、請求項1記載のブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項6】
炎症又は血栓疾患を処置するための方法であって、競合阻害アッセイにより測定される通り、P−セレクチンに対する、ATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌される抗体の結合を実質的に阻害する、治療的に有効な用量のブロッキングP−セレクチン抗体を前記の疾患を有する患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項7】
前記ブロッキングP−セレクチン抗体がIgG1である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ブロッキングP−セレクチン抗体がネズミ抗体である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ブロッキングP−セレクチン抗体がATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌されたものである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記炎症疾患が急性肺障害である、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記炎症疾患が虚血再灌流障害である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
前記ブロッキングP−セレクチン抗体を静脈内的に投与する、請求項6記載の方法。
【請求項13】
薬理学的に許容される担体と、競合阻害アッセイにより測定される通り、P−セレクチンに対する、ATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌される抗体の結合を実質的に阻害するブロッキングP−セレクチン抗体とを含んで成る薬理組成物。
【請求項14】
前記ブロッキングP−セレクチン抗体がATCC寄託番号HB 11041の細胞系により分泌されたものである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記抗体がネズミ抗体である、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
前記抗体がIgG1である、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
ATCC寄託番号HB 11041の細胞系から分泌されたブロッキングP−セレクチン抗体。
【請求項18】
ATCC寄託番号HB 11041の細胞系を含んで成る組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−45234(P2006−45234A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226943(P2005−226943)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【分割の表示】特願平5−519623の分割
【原出願日】平成5年5月4日(1993.5.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(505258564)アエレス バイオメディカル リミティド (2)
【Fターム(参考)】