説明

PCB汚染機器無害化設備の解体方法

【課題】PCB汚染機器無害化設備を効率良く解体処理する方法を提供する。
【解決手段】PCB含有絶縁油を含む機器を洗浄油で洗浄するための洗浄部10と、前記洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部20とを有し、前記PCB含有洗浄油を該PCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い留出液とPCB濃度の高い缶出液とに分離するための蒸留塔21、22が前記蒸留再生部に備えられているPCB汚染機器無害化設備の解体方法であって、前記洗浄部を構成している装置を洗浄油で洗浄し、該洗浄前において前記蒸留塔に導入されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を作製し、該低濃度PCB含有洗浄油を前記蒸留塔で分離させることによって該蒸留塔内部のPCB付着量を前記装置の洗浄前よりも減少させる蒸留塔浄化工程を前記蒸留塔の解体前に実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB含有絶縁油を含む機器を洗浄油で洗浄するための洗浄部と、前記洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部とを有するPCB汚染機器無害化設備を解体処理するためのPCB汚染機器無害化設備の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、安定性、不燃性、電気絶縁性に優れていることから、過去においてコンデンサやトランス等の電気機器の絶縁油に多用されていたが、後に、その難分解性と毒性とが明らかとなり新たな使用が禁じられている。
そして、その使用を規制するとともにPCBを含有する絶縁油が既に含まれているコンデンサやトランス等の機器(以下「PCB汚染機器」ともいう)については回収措置がとられて下記特許文献1に示されているように管理区域が設けられた特別な施設において無害化処理がなされている。
【0003】
一般にコンデンサやトランス等のPCB汚染機器を無害化処理するのに際しては、PCB含有絶縁油を抜油した機器内にノルマルパラフィンなどの洗浄油を入れて内部を洗浄する粗洗浄を実施した後に、前記機器を解体装置などで解体物の状態にして改めて洗浄処理するような方法が採用されている。
【0004】
PCBに汚染された機器をこのようにして洗浄して無害化する施設には、通常、下記特許文献2に示すように洗浄処理を行うための装置以外にも多数の装置類が設けられ、洗浄処理以外の機能を有する設備が設けられている。
例えば、従来の処理施設には、洗浄装置と、該洗浄装置に付随する抜油装置や解体装置などの装置類とで構成された洗浄部と、該洗浄部でトランスやコンデンサの洗浄に利用されてPCBを含有する状態になった洗浄油(PCB含有洗浄油)を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部と、抜油したPCB含有絶縁油を脱ハロゲン化処理するための装置で構成された脱ハロゲン化部とを有する設備が設けられたりしている。
【0005】
ところで、コンデンサやトランス等の電気機器の無害化処理が完了した後には、PCB汚染機器の無害化処理をどのように終結させるかが新たなる課題となる。
即ち、PCB汚染機器無害化処理施設に設置されているPCB汚染機器無害化設備を構成している装置類の内部にはコンデンサやトランス等の電気機器と同程度のPCBが付着している機器もあるため、最終的にはこれらを無害化処理して設備を解体処理する必要がある。
しかし、これらを無害化することについては殆ど検討されている事例がなく、有効な方法が確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−035044号公報
【特許文献2】特開2005−103388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑み、PCB含有絶縁油を含む機器を洗浄油で洗浄するための洗浄部と、前記洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部とを有するPCB汚染機器無害化設備を効率よく安全に解体する方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのPCB汚染機器無害化設備の解体方法に係る本発明は、PCB含有絶縁油を含む機器を洗浄油で洗浄するための洗浄部と、前記洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部とを有し、前記PCB含有洗浄油を該PCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い留出液とPCB濃度の高い缶出液とに分離するための蒸留塔が前記蒸留再生部に備えられているPCB汚染機器無害化設備を解体処理するためのPCB汚染機器無害化設備の解体方法であって、前記洗浄部を構成している装置を洗浄油で洗浄し、該洗浄前において前記蒸留塔に導入されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を作製し、該低濃度PCB含有洗浄油を前記蒸留塔で分離させることによって該蒸留塔内部のPCB付着量を前記装置の洗浄前よりも減少させる蒸留塔浄化工程を前記蒸留塔の解体前に実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
一般に無害化しようとする対象物に付着しているPCBを除去する方法としては、拭き取りやスプレー洗浄などの手段を採用することが考えられるが、例えば、毛細管現象が働くような極狭い隙間に入り込んでいるPCB、シール材などの樹脂製部材の内部に浸透しているPCB、あるいは、複雑形状金属部材の内部に入り込んでいるPCBを拭き取り等によって除去をすることは困難である。
PCB汚染機器無害化設備を構成する装置の中でも、特に、蒸留塔は、内部に複雑な形状を有する充填物が収容されている場合が多いため単純に拭き取るだけでは内部を十分に清浄化することは実質上不可能である。
一方でスプレー洗浄装置で洗浄油を吹き付けるような方法を採用すると、拭き取りに比べると細部にまで洗浄効果を発揮させることが容易ではあるものの単に表面を洗い流すだけでは前記のような隙間に入り込んだPCBや部材に浸透しているPCBあるいは多段に積層された充填物に付着しているPCBなどを除去することが難しく、可能であったとしても洗浄油の使用量が膨大なものとなるおそれを有する。
また、その場合には、洗浄油を大量に使用することでPCB含有洗浄油を大量に発生させるおそれも有する。
即ち、これらの方法では蒸留塔のPCB付着量を効率良く低減することが難しい。
さらには、スプレー洗浄や拭き取りにおいては蒸留塔を大きく開口させなければ作業を行い難いため、これらの作業効率を向上させようとすると内部のPCBを作業空間に飛散させるおそれを有する。
【0010】
一方で、本発明においては、PCB汚染機器無害化などにおいて導入されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を蒸留塔で分離することから当該蒸留塔内部のPCB付着量を効率良く減少させることができる。
このことについてより詳しく説明すると、PCB含有洗浄油の蒸留再生を行っている蒸留塔内の空間には、洗浄油蒸気及び凝縮液が、缶出液が貯留されている箇所(塔底)から留出液が貯留されている箇所(塔頂)にかけてPCB濃度を変化させながら存在しており、通常、留出液が貯留されている箇所に至っては、PCBが存在せず、存在したとしても極僅かである。
この蒸留塔に低濃度PCB含有洗浄油を導入することで、蒸留塔の内壁面や充填物はそれまでよりもPCB濃度の低い洗浄油蒸気および凝縮液に曝されることになる。
即ち、洗浄油蒸気による洗浄の効果が極狭い隙間に対しても良好に発揮されるとともに前記洗浄油蒸気および凝縮液が樹脂製部材等に浸透しているPCBの抽出にも有効に作用する。
このことから蒸留塔におけるPCB付着量を効率良く減少させることができる。
しかも、低濃度PCB含有洗浄油として他の装置類の洗浄に利用されたものを有効活用するため、より効率的に蒸留塔のPCB付着量を減少させることができる。
また、蒸留塔内のPCB付着量の低減を蒸留塔が閉じられた状態で実施可能となるためにPCBの飛散を抑制させ得る。
従って、蒸留塔を備えたPCB汚染機器無害化設備を効率良く安全に解体し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】PCB汚染機器無害化施設における設備構成を示す概略構成図。
【図2】蒸留塔の内部構造を示す概略図。
【図3】蒸留塔の解体前に実施する一部設備の無害化処理を示す図。
【図4】蒸留塔の解体前に実施する一部設備の無害化処理を示す図。
【図5】第二の蒸留塔浄化工程における配管の接続例を示す図。
【図6】第二の蒸留塔浄化工程における配管の接続例を示す図。
【図7】第二の蒸留塔浄化工程における配管の接続例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、PCB含有絶縁油を内部素子とともにケーシング内に収容しているトランスを前記PCB含有絶縁油よりも沸点の低いノルマルパラフィンなどの洗浄油で洗浄して無害化する施設を例にしてPCB汚染機器無害化設備の解体方法を説明する。
まず、図面を参照しつつ、 PCB汚染機器無害化施設における設備構成について説明する。
図1は、PCB含有絶縁油を含んだトランスを無害化するための施設における設備構成を示すものであり、第一処理室1と第二処理室2との2つの管理区域を有する建物におけるPCB汚染機器無害化設備の配置状況を模式的に示すものである。
また、図2は、蒸留塔の内部構造を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、第一処理室1と前記第二処理室2とは壁を隔てて隣接されており、前記第一処理室1には、PCB汚染機器無害化設備における一機能部分として、PCB含有絶縁油を含むトランスAを洗浄油で洗浄するための洗浄部10と、該洗浄部10での洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部20とが備えられている。
一方で、前記第二処理室2には、第一処理室1でトランスAから回収されたPCB含有絶縁油を脱ハロゲン化処理するための脱ハロゲン化部30が備えられている。
【0014】
この洗浄部10、蒸留再生部20、及び、脱ハロゲン化部30は、それぞれが独立しているものではなく、互いの間を、行き来する配管等によって接続されており、前記洗浄部10では、トランスから抜油されたPCB含有絶縁油そのものや、初期段階での洗浄によって生じるPCB濃度の高い洗浄油といった前記蒸留再生部20での再生に適さないものが排出されることから、該洗浄部10と前記脱ハロゲン化部30との間がこの高濃度にPCBを含む液体を搬送するための高濃度PCB含有液搬送配管L1によって接続されている。
また、洗浄部10と蒸留再生部20とは、洗浄部10での洗浄がある程度進行した際に排出されるPCB含有洗浄油を前記蒸留再生部20に搬送するためのPCB含有洗浄油配管L3と、該PCB含有洗浄油を蒸留再生部20で再生して得られる再生洗浄油を洗浄に再利用すべく前記洗浄部10に搬送するための洗浄油供給配管L2とで接続されている。
なお、前記第一処理室1には、再生洗浄油に代えて未使用の洗浄油(新油)を利用し得るように新油貯留槽51が備えられており、該新油を洗浄油供給配管L2を通じて前記洗浄部10に供給し得るように前記該新油貯留槽51と洗浄油供給配管L2とが新油供給配管L4によって接続されている。
【0015】
前記洗浄部10は、数多くの装置類によって構成されており、本実施形態においては、前記トランスAのケーシングに開けた孔からトランスAの内部のPCB含有絶縁油を抜取り、その後、PCBに対する溶解性が高くPCBよりも沸点の低いノルマルパラフィンなどの洗浄油をPCB含有絶縁油が抜き取られたケーシング内に供給し、該洗浄油でトランスの内部洗浄を行うための抜油装置11が前記洗浄部10に備えられている。
また、洗浄部10には、前記抜油装置11で内部洗浄されたトランスAをケーシングと内部素子などに大まかに解体する粗解体装置12、該粗解体装置12で解体物の状態にされたトランスAを改めて洗浄油で洗浄する一次洗浄装置13、該一次洗浄後のトランスを必要に応じて二次解体する二次解体装置14などがさらに備えられている。
また、洗浄部10には、前記一次洗浄後、又は、二次解体後のトランスを再び洗浄油で洗浄する二次洗浄装置15、該二次洗浄後のトランスをPCBの含有量が基準値以下となるように洗浄するための仕上げ洗浄装置16などが備えられている。
【0016】
また、本実施形態においては、前記一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、及び、仕上げ洗浄装置16での洗浄に利用されてPCB含有する状態となった洗浄油を前記蒸留再生部20に搬送する前に一次貯留するためのPCB含有洗浄油槽17が前記洗浄部10を構成する装置として前記第一処理室1に備えられている。
【0017】
なお、前記抜油装置11においては、前記抜油によるPCB含有絶縁油そのもの、及び、前記内部洗浄によってPCBを高濃度に含んだPCB含有洗浄油が排出され、前記粗解体装置12や、二次解体装置14でもある程度濃度の高いPCB含有洗浄油が排出されることになるため、前記高濃度PCB含有液搬送配管L1は、これらからPCB含有絶縁油そのものやPCBを高濃度に含んだPCB含有洗浄油を第二処理室2に備えられている脱ハロゲン化部30まで搬送し得るように接続されている。
【0018】
また、前記PCB含有洗浄油配管L3は、一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、及び、仕上げ洗浄装置16からPCB含有洗浄油槽17を経由して前記蒸留再生部20にPCB含有洗浄油を搬送し得るように接続されている。
【0019】
前記蒸留再生部20には、前記PCB含有洗浄油槽17に貯留されたPCB含有洗浄油を再生して洗浄に利用可能な清浄度を有する再生洗浄油を得るべく2台の蒸留塔21,22が備えられており、該蒸留塔21,22で再生された洗浄油を貯留するための再生洗浄油貯留槽29が備えられている。
前記2台の蒸留塔21,22の内、処理前段側に設けられた蒸留塔21(以下「第一蒸留塔21」ともいう)は、PCB含有洗浄油配管L3を通じてPCB含有洗浄油槽17からPCB含有洗浄油を導入させて、該PCB含有洗浄油よりもPCB濃度の高い缶出液とPCB濃度の低い留出液とに分離させるためのものであり、後段側の蒸留塔22(以下「第二蒸留塔22」ともいう)は、PCBを微量含んだ前記第一蒸留塔21の留出液を導入させて、該留出液を分離し、前記留出液からPCBをさらに除去してトランスAの洗浄に利用可能な再生洗浄油を得るためのものである。
【0020】
なお、前記第一蒸留塔21には、缶出液を塔外に排出するための缶出液排出配管L6(以下「第一缶出液排出配管L6」ともいう)と、留出液を蒸気の状態で塔外に排出するための留出液排出配管L7(以下「第一留出液排出配管L7」ともいう)とがそれぞれ接続されている。
前記第一留出液排出配管L7は、第一蒸留塔21と第二蒸留塔22とを接続する形で設けられており、その途中箇所に留出液蒸気を冷却して液体化させるための凝縮器23(以下「第一凝縮器23」ともいう)と、液体化された留出液を一次貯留するための留出液貯留槽25(以下「第一留出液貯留槽25」ともいう)が設けられている。
【0021】
また、本実施形態においては、蒸留再生部20を構成する装置類として、第一留出液貯留槽25から一部の留出液を第一蒸留塔内に戻して該第一蒸留塔21での分離精度の向上を図るための留出液還流配管L8がさらに備えられている。
【0022】
一方で前記第一缶出液排出配管L6は、前記第二処理室2の脱ハロゲン化部30に前記缶出液を搬送すべく第一処理室1と第二処理室2との間の壁を貫通する状態で設けられており、この第一缶出液排出配管L6の側にも、第一留出液排出配管L7と同様に第一蒸留塔21から排出直後の缶出液の一部を第一蒸留塔21に返送し得るように、第一缶出液排出配管L6から分岐した缶出液還流配管L9(以下「第一缶出液還流配管L9」ともいう)が備えられている。
また、該第一缶出液還流配管L9の途中箇所には缶出液を所定温度に加熱して第一蒸留塔21に返送するための熱交換器27が設けられている。
【0023】
この第一蒸留塔21に関してさらに詳細に説明すると、前記第一蒸留塔21は、図2に示されているように、竪型筒状の塔本体211の内部に充填物212,213が2つの層を形成する状態で備えられている。
この第一蒸留塔21は、前記塔本体211の内部空間が、2つの充填物212,213によって上下方向に仕切られた状態となっており、この2つの充填物212,213は、上下方向に離間した状態で塔本体211の中央部に収容されている。
このように2つの充填物211,212が塔本体内において上下に離間された状態で収容されていることによって上段側の充填物212(以下「上部充填物212」ともいう)と下段側の充填物213(以下「下部充填物」ともいう)との間に空間が形成されているとともに上部充填物212と塔本体211の頂部との間、並びに、下部充填物213と塔本体211の底部との間にも空間が形成されている。
【0024】
なお、充填物212,213は、塔本体211を完全に仕切るものではなく、例えば、有孔板等で構成され、該充填物212,213を通じて上下の空間を気体や液体が行き来できるように構成されている。
【0025】
前記空間の内、充填物212,213の間に形成されている空間は、前記PCB含有洗浄油配管L3を通じてPCB含有絶縁油が導入される空間214(以下、「導入空間214」ともいう)であり、上部充填物212と塔本体211の頂部との間の空間は、PCB含有絶縁油から蒸発した洗浄油を多く含む留出液C2が蒸気の状態で滞留する空間215(以下、「留出液滞留空間215」ともいう)となっている。
また、下部充填物213と塔本体211の底部との間の空間は、その底部において缶出液C1を滞留させるための空間216(以下、「缶出液滞留空間216」ともいう)となっている。
なお、この第一蒸留塔21には、塔頂内部の前記留出液滞留空間215に滞留している留出液蒸気の温度を測定するための上部温度計T1と、前記導入空間214の温度を測定するための中部温度計T2と、前記缶出液滞留空間216に滞留している缶出液C1の温度を測定するための下部温度計T3とが備えられている。
【0026】
さらに、前記第一留出液貯留槽25から第一留出液還流配管L8を通じて第一蒸留塔21に返送される留出液は、前記留出液滞留空間215に返送されるように構成されておりこの返送された留出液が、上部充填物212の表面を伝って導入空間214に滴下し、この上部充填物212の表面における気液接触面積を増大させ得るように構成されている。
一方で、缶出液還流配管L9を通じて第一蒸留塔21に返送される缶出液は、前記缶出液滞留空間216に返送されるようになっており、該缶出液滞留空間216と前記熱交換器27との間を循環することによって概ね一定の温度で缶出液が第一蒸留塔内に滞留され得るようになっている。
【0027】
この塔本体211の内部においては、底部において加熱された缶出液が一定量貯留されることにより、この缶出液に含まれている洗浄油成分や、導入空間214に導入されたPCB含有洗浄油に含有されている洗浄油成分等が蒸発して蒸気となって充填物211,212の隙間を通って留出液滞留空間215に到達することになる。
このとき、前記缶出液などから蒸発する蒸気には、洗浄油に加えて僅かにPCBが含まれており、留出液滞留空間215に到達する過程において前記充填物211,212表面を伝って滴下する洗浄油との接触によって精製がなされるものの第一蒸留塔21の頂部から排出される留出液蒸気には僅かにPCBが含有されることになる。
【0028】
なお、この第一蒸留塔21の留出液を導入させて再生洗浄油を作製するための前記第二蒸留塔22も第一蒸留塔21と同様の内部構造を有している。
即ち、2つの充填物が上下に離間して、その間に第一蒸留塔21の留出液を導入させる導入空間が形成されている点、該導入空間の温度を測定する温度計T5、缶出液滞留空間の缶出液の温度を測定する温度計T6、及び、塔頂における留出液滞留空間の気体温度を測定する温度計T4が備えられている点についても第二蒸留塔22は、第一蒸留塔21と共通している。
そして、前記第二蒸留塔22にも、第一蒸留塔側と同様の装置類が付帯されており、缶出液を塔外に排出するための缶出液排出配管L10(以下「第二缶出液排出配管L10」ともいう)、及び、留出液を塔外に排出するための留出液排出配管L11(以下「第二留出液排出配管L11」ともいう)とがそれぞれ接続されている点においては、第二蒸留塔22と第一蒸留塔21とは共通している。
さらに、留出液排出配管L11の途中において、順に、凝縮器24(以下「第二凝縮器24」ともいう)と留出液貯留槽26(以下「第二留出液貯留槽26」ともいう)とが備えられ、該第二留出液貯留槽26から第二蒸留塔内に一部の留出液を戻すための留出液還流配管L12(以下「第二留出液還流配管L12」ともいう)が備えられている点においても第二蒸留塔22と第一蒸留塔21とは共通している。
また、塔外に排出された缶出液の一部が第二缶出液排出配管L10から分岐した缶出液還流配管L13(第二缶出液還流配管L13)を通じて缶出液滞留空間に返送されるのに際して熱交換器28で加熱される点についても第一蒸留塔21と共通している。
【0029】
なお、第一蒸留塔21の留出液排出配管L7が、第一蒸留塔の留出液を第二蒸留塔22の導入空間に留出液を導入させるべく接続されているのに対し、第二留出液排出配管L11は、留出液を再生洗浄油貯留槽29に導入させ得るように接続されている。
【0030】
また、第一缶出液排出配管L6が脱ハロゲン化部30に前記缶出液を搬送すべく接続されているのに対して、前記第二缶出液排出配管L10は、前記PCB含有洗浄油槽17から、第一蒸留塔21にPCB含有洗浄油を導入させるためのPCB含有洗浄油配管L3に接続されており、第二蒸留塔22の缶出液をPCB含有洗浄油として改めて第一蒸留塔21で分離させ得るように接続されている。
【0031】
すなわち、前記第一蒸留塔21は、PCBを僅かに含有する留出液を第二蒸留塔22に向けて排出するとともに缶出液を脱ハロゲン化部30に向けて排出し得るように構成されてていたのに対して、この第二蒸留塔22は、前記第一蒸留塔21の留出液よりもPCB濃度の高い缶出液を前記第一蒸留塔21に返送するとともに洗浄油として利用可能な程度に清浄化された留出液(再生洗浄油)を再生洗浄油貯留槽29に向けて排出し得るように構成されている。
【0032】
なお、前記再生洗浄油貯留槽29には、当該再生洗浄油貯留槽29から前記洗浄部10を構成している抜油装置11、一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、仕上げ洗浄装置16等の装置に前記第二蒸留塔22で清浄な状態に再生された洗浄油を供給し得るように前記洗浄油供給配管L2が接続されており、該洗浄油供給配管L2は、前記洗浄部側に設けられた三方弁V1によって前記抜油装置11にのみ洗浄油を供給するモードと、一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、及び、仕上げ洗浄装置16の側にのみ洗浄油を供給するモードと、これら全てに洗浄油を供給するモード、及び、これらへの洗浄油の供給をシャットアウトするモードに流路の切り替えが可能な状態となって備えられている。
【0033】
また、この洗浄油供給配管L2は、前記三方弁V1よりもさらに一次洗浄装置13の側において、洗浄油の供給先を一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、及び、仕上げ洗浄装置16の内のいずれかに振り分け得るように四方弁V2が設けられており、PCB含有洗浄油配管L3の側にも同様に四方弁V3が設けられている。
【0034】
また、洗浄油供給配管L2には、再生洗浄油貯留槽29の近傍において洗浄油還流配管L5が接続されており、該洗浄油還流配管L5の他方は前記第一蒸留塔21の手前におけるPCB含有洗浄油配管L3に接続されている。
この洗浄油供給配管L2と洗浄油還流配管L5とが接続されている箇所には三方弁V5が設けられており、再生洗浄油を洗浄部10に供給するモードと前記PCB含有洗浄油配管L3を通じて第一蒸留塔21に供給するモードとを選択し得るようになっている。
【0035】
さらに、前記のように、新油供給配管L4によって洗浄油供給配管L2と新油貯留槽51とが接続されていることから、前記第一蒸留塔21には再生洗浄油に代えて新油を供給することができるようになっている。
【0036】
第一処理室1には、洗浄部10と蒸留再生部20とを構成する装置以外に、仕上げ洗浄装置16での洗浄が不十分な場合に用いる真空加熱装置52と、該真空加熱装置52から排出される排ガスからPCBを除去するためのオイルスクラバー53と、該オイルスクラバー53を通過した排ガスから、さらにPCBを除去して屋外に排出するための活性炭フィルター54と前記オイルスクラバー53に供給するスクラバー油を貯留するスクラバー油槽55とが備えられている。
また第一処理室1には、室内を僅かに負圧状態にして気化したPCBが室外に漏洩しないようにブロア56が設けられており、該ブロア56は、活性炭フィルター57を通じて室内の空気を屋外に排気し得るように設けられている。
【0037】
次いで、前記第二処理室2に備えられている設備について説明する。
前記のように第二処理室2にはPCBは、第一処理室1でトランスAから回収されたPCB含有絶縁油を脱ハロゲン化処理するための脱ハロゲン化部30が備えられている。
【0038】
本実施形態における脱ハロゲン化部30は、前記高濃度PCB含有液搬送配管L1によって抜油装置11などから供給されるPCB含有絶縁油やPCBを高濃度に含有する洗浄油を貯留するための第一貯留槽31と、前記第一蒸留塔21から前記第一缶出液排出配管L6を通じて供給される缶出液を貯留するための第二貯留槽32と、前記PCB含有スクラバー油搬送配管L14を通じて供給されるPCB含有スクラバー油を貯留するための第三貯留槽33と、これらに槽に貯留されているPCB含有洗浄油やPCB含有スクラバー油を脱ハロゲン化処理するためのナトリウム分散体を貯留するナトリウム分散体槽35とを備えている。
【0039】
さらに、脱ハロゲン化部30には、PCB含有洗浄油やPCB含有スクラバー油とナトリウム分散体とを反応させて脱ハロゲン化処理するための反応槽34と、該反応槽34で脱ハロゲン化処理され、未反応なナトリウム分散体や、塩化ナトリウムや、脱ハロゲン化済の油分とが混合された混合液を固液分離するための固液分離装置36、並びに、前記固液分離装置で分離された油分の内、前記スクラバー油として再利用するための油を貯留する再生スクラバー油槽37とが備えられている。
なお、この再生スクラバー油槽37には、当該再生スクラバー油槽37に貯留する再生スクラバー油を前記第一処理室1のオイルスクラバー53に利用し得るように再生スクラバー油搬送配管L15が接続されている。
【0040】
そして、この第二処理室2の側においても、処理室内を僅かに負圧状態にし得るように、ブロア58と活性炭フィルター59とが備えられており、前記ブロア58が前記活性炭フィルター59を通じて室内の空気を屋外に排気し得るよう備えられている。
【0041】
本実施形態においては、このように構成されているPCB汚染機器無害化設備が、その使命を終えて解体を行うのに際して前記蒸留塔を無害化して解体する方法を例に挙げつつPCB汚染機器無害化設備の解体方法を説明する。
【0042】
前記蒸留塔21,22には、例えば、充填物212,213の隙間や温度計T1,T2,T3と塔本体211との間に僅かなクリアランス部等にPCBが入り込んでいたり、シール材等の樹脂製部材にPCBが浸透していたり、あるいは複雑形状金属製部材内部にPCBが入り込んでいたりすることから、蒸留塔の無害化には、このようにして塔内に付着しているPCBをできるだけ効率良く除去することが重要となる。
【0043】
本実施形態のPCB汚染機器無害化設備の解体処理においては、蒸留塔21,22の解体前に洗浄部10を構成している装置類を洗浄してこれらのPCB付着量低減を図るとともに前記洗浄以前において前記第一蒸留塔21に供給されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を作製し、該低濃度PCB含有洗浄油を利用して蒸留塔内部のPCB付着量を低減させる蒸留塔浄化工程(以下「第一の蒸留塔浄化工程」ともいう)を実施することが、その後の蒸留塔21,22の解体に要する手間を削減する上で重要となる。
即ち、本実施形態においては、洗浄部10を構成している装置類の無害化を図りつつ、一般的な方法では無害化することが困難な蒸留塔の無害化を併せて図ることが重要である。
【0044】
また、本実施形態においては、前記第一の蒸留塔浄化工程を実施した後、前記低濃度PCB含有洗浄油に代えて清浄な洗浄油を前記第一蒸留塔21に導入させて該第一蒸留塔21と前記第二蒸留塔22とを運転させ、前記第二蒸留塔22から排出される再生洗浄油を再び前記第一蒸留塔21の導入空間に導入させることによりこれらの蒸留塔内部のPCB付着量を減少させる第二の蒸留塔浄化工程を該蒸留塔21,22の解体前にさらに実施することが好ましい。
【0045】
以下にこれらの蒸留塔浄化工程について説明する。
(第一の蒸留塔浄化工程)
トランスの無害化をこれ以上実施する必要がないのであれば、抜油装置11、粗解体装置12、二次解体装置14、及び、高濃度PCB含有液搬送配管L1は、もはやその必要性を大きく低下させているため、当該第一の蒸留塔浄化工程は、例えば図3に示すように、これらに対する解体、洗浄を行うことで実施することができる。
また、トランスの無害化をこれ以上実施する必要がないのであれば、脱ハロゲン化部30の第一貯留槽31もその必要性を大きく低下させることになるため、第一貯留槽31の洗浄を上記装置類の洗浄に併せて実施しても良い。
具体的には、これらの装置類(抜油装置、解体装置、ポンプなどの高濃度PCB含有液搬送配管途中に配される装置、各種計器や治具などの装置付帯部材、管、継ぎ手、弁、シール材などの高濃度PCB含有液搬送配管構成部材等)を解体し、これらを一次洗浄装置13に導入して、前記再生洗浄油貯留槽29から洗浄油供給配管L2を通じてこの一次洗浄装置13に再生洗浄油を供給しつつ一次洗浄を実施し、次いで、同様に、二次洗浄及び仕上げ洗浄を実施し第一の蒸留塔浄化工程に利用する低濃度PCB含有洗浄油を作製することができる。
【0046】
これらの装置類に付着しているPCBの量は、通常、トランスなどに比べて同等以下となるために、トランスの無害化を行っている時と同様の条件で洗浄することにより、この第一の蒸留塔浄化工程開始前にPCB含有洗浄油槽17に貯留されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を作製することができる。
そして、この低濃度PCB含有洗浄油を蒸留塔21,22に供給して再生洗浄油を作製することで蒸留塔内のPCB付着量を減少させることができる。
【0047】
このことについて説明すると、蒸留塔における蒸留分離性能は、その内部構造によってほぼ決定されているため、それまでにPCB含有洗浄油槽17から供給されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を、例えば、トランスの無害化処理に実稼動していた時と同様に定常状態で運転させると、塔本体内全体のPCB濃度が低下することになる。
そうすると塔内の狭小箇所に入り込んでいるPCBや部材に浸透しているPCBといった、なかば塔本体に固定されてしまっているPCBが、塔内全体のPCB濃度がそれまでに比べて低下することで塔内の液体や洗浄油蒸気によって抽出され缶出液として外部に除去されることになる。
【0048】
この狭小箇所に入り込んでいるPCBや部材に浸透しているPCBを常温の洗浄油で抽出するには時間を要するために、スプレー洗浄などによってこれらのPCBを除去しようとすると、多大な時間と洗浄油とを消費することになるが、本実施形態においては、洗浄部10を構成している装置類の洗浄に用いたPCB含有洗浄油を再生する過程において併せてこのPCBを除去させることから時間と洗浄油とを無駄に消費することを抑制させることができる。
【0049】
なお、抜油装置11、粗解体装置12、二次解体装置14、及び、高濃度PCB含有液搬送配管L1等を洗浄して無害化を図る時点において低濃度PCB含有洗浄油を作製する必要はなく、低濃度PCB含有絶縁油は、この第一の蒸留塔浄化工程中のいずれかの時点で作製すればよい。
【0050】
例えば、前記のような装置類を無害化させた後に、一次洗浄装置13とその付帯物などを解体して洗浄、無害化させる際には、通常、第一の蒸留塔浄化工程を開始する前に第一蒸留塔21に供給されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の遥かに低い低濃度PCB含有絶縁油を作製することができるため抜油装置11、粗解体装置12、二次解体装置14、及び、高濃度PCB含有液搬送配管L1を洗浄した後のPCB含有洗浄油を直接脱ハロゲン化部30で脱ハロゲン化処理させて蒸留塔21,22の浄化に利用しなくてもよい。
【0051】
また、一次洗浄装置13に次いで二次洗浄装置15を解体して仕上げ洗浄装置16で洗浄することで、PCB含有洗浄油槽17に貯留されるPCB含有洗浄油をさらにPCB濃度の低いものにすることができる。
このとき、二次洗浄装置15の洗浄を、仕上げ洗浄装置自身もが十分清浄な状態になるまで実施することが好ましく、このことによって二次洗浄装置15とともに仕上げ洗浄装置16も無害化処理させることができる。
このようにして、図4に示すように、蒸留塔21,22の解体に先立って洗浄部10を構成している殆どの装置類を無害化して解体処理することができる。
なお、洗浄後の抜油装置11、粗解体装置12、二次解体装置14、高濃度PCB含有液搬送配管L1、一次洗浄装置13、二次洗浄装置15、仕上げ洗浄装置16及びPCB含有洗浄油槽17は、十分にPCB除去がなされているようであればそのまま施設外に払い出して処分することができ、必要であれば前記真空加熱装置52で真空加熱して無害化させて施設外に払い出して処分すればよい。
【0052】
(第二の蒸留塔浄化工程)
本実施形態においては、この第一の蒸留塔浄化工程においてPCB付着量が減少された蒸留塔21,22に対してさらにPCB付着量を減少させて蒸留塔21,22を無害化する第二の蒸留塔浄化工程を実施する。
この第二の蒸留塔浄化工程は、第一の蒸留塔浄化工程が終了し、PCB含有洗浄油槽17に蓄えられた全てのPCB含有洗浄油を再生した後に、例えば図5に示すように、前記再生洗浄油貯留槽29からの洗浄油の供給先を、洗浄油還流配管L5を経由させて第一蒸留塔21とし、且つ、前記第二蒸留塔22の缶出液を第一蒸留塔21ではなく脱ハロゲン化部30に供給させて第一蒸留塔21及び第二蒸留塔22を運転させることで実施可能である。
【0053】
このとき、再生洗浄油貯留槽29から供給される清浄な洗浄油は、第一蒸留塔21の導入空間214に導入され、下部充填物213の表面を伝って缶出液滞留空間216に滴下されることになる。
この下部充填物213には、通常、前記第一の蒸留塔浄化工程において導入された低濃度PCB含有洗浄油と同等の低濃度なPCB含有洗浄油が付着しているが、この第二の蒸留塔浄化工程においては清浄な洗浄油が滴下されることからさらに清浄な状態に洗浄されることになる。
【0054】
また、缶出液滞留空間216において滞留する缶出液のPCB濃度もそれまでよりも低下することになる。
そうすると、熱交換器27や、缶出液還流配管L9の内部もPCB濃度の低い洗浄油が流通されることでPCB付着量を減少させることになる。
また、下部温度計T3の挿入部分に塔本体211との間に狭い隙間が形成されていたとしても、この隙間に侵入しているPCB含有絶縁油と缶出液との間で濃度の平衡を保つような作用が働き、この隙間内部にまで洗浄効果が発揮されることになる。
また、第一缶出液排出配管L6と缶出液還流配管L9との接続箇所や、缶出液還流配管L9と熱交換器27との接続箇所に用いられているシール材にPCB含有絶縁油が浸透しているような場合も同様にPCBが除去されることになる。
【0055】
そして、前記第一缶出液排出配管L6を通じて、一定の割合で缶出液を塔本体から外部に排出させることで第一蒸留塔内部のPCB付着量を減少させることができる。
また、この排出させた缶出液は、これまで通り第二処理室2の第二貯留槽32へ搬送し脱ハロゲン処理させることができる。
【0056】
一方で留出液は第二蒸留塔22に導入して、さらにPCB濃度の低い留出液と、缶出液とに分離させる。
この第二蒸留塔22から排出される留出液は、再生洗浄油貯留槽29に戻して再び蒸留塔内の洗浄に利用することができる。
【0057】
なお、通常、時間の経過とともに第二蒸留塔22から排出される缶出液のPCB濃度が低下することになるため、例えば、図6に示すように、第二蒸留塔22から排出される缶出液が再生洗浄油として利用可能な程度(PCB濃度が0.5ppm以下、より好ましくは0.01ppm以下)になった時点でこの留出液の流路を切り替えて、該留出液を第一蒸留塔21の導入空間214に戻すようにしてもよい。
ここで、第二の蒸留塔浄化工程の開始時点においては蒸留塔内の洗浄油の量を安定させようとすると、第一蒸留塔21の缶出液排出量(A)と第二蒸留塔の缶出液排出量(B)とをあわせた量(A+B)の再生絶縁油、又は、新油を再生洗浄油貯留槽29か新油貯留槽51から供給する必要が生じるが、第二蒸留塔22から排出される缶出液が再生洗浄油として利用可能な程度になった時点でこの留出液を第一蒸留塔21に戻すことにより、再生洗浄油貯留槽29又は新油貯留槽51からの洗浄油供給量を第一蒸留塔21の缶出液排出量に見合う量(A)に減量することができる。
【0058】
また、第二蒸留塔22から排出される缶出液が再生洗浄油として利用可能な程度になった時点でこの第二蒸留塔22におけるPCB付着量は十分低減されたと判断することができることから、例えば、図7に示すように、第二蒸留塔22を解体処理して第一蒸留塔21の側だけで第二の蒸留塔浄化工程を継続させることができる。
この解体処理した第二蒸留塔22は、そのまま施設外に払い出して処分することができ、必要であれば前記真空加熱装置52で真空加熱して無害化させて施設外に払い出して処分すればよい。
なお、この場合、第一留出液排出配管L7と洗浄油供給配管L2とを接続する新たなバイパス配管Laを設けて第一蒸留塔21の留出液が洗浄油供給配管L2及び洗浄油還流配管L5を経由して再び第一蒸留塔21に返送されるようにすればよい。
【0059】
ただし、前記第二蒸留塔22は、PCB汚染機器無害化設備においてPCBの付着量が少ない最も清浄な装置に類することから、不測の事態に備えて当該第二蒸留塔22を第一蒸留塔21が十分に清浄化されるまで運転可能な状態にしておくことも可能であり、第一蒸留塔21を無害化、解体した後に第二蒸留塔22を単独運転させることも可能である。
例えば、第一蒸留塔21から排出される缶出液のPCB濃度が十分に低下し、第一蒸留塔21が清浄化されたと判断された場合でも、第一蒸留塔21を解体した際に思わぬ箇所においてPCBの付着が発見されるおそれがある。
一方で、第二蒸留塔22は、普段から比較的清浄な条件下で運転されているために、このような不測の事態を招くおそれが低い。
従って、仕上げ洗浄装置16を解体せずにこの第二蒸留塔22とともに最後まで残しておくか、或いは、簡易型の洗浄装置を新たに導入させて第一蒸留塔21の内部にPCBが残存していた場合にこの簡易型の洗浄装置、又は、残存させた仕上げ洗浄装置16で洗浄し、この洗浄装置から排出されるPCB含有洗浄油を第二蒸留塔22で蒸留分離させるとともに第二蒸留塔22で得られる再生洗浄油を第一蒸留塔21の解体物の洗浄に再利用するようにしてもよい。
即ち、第一蒸留塔21などの他の装置類の無害化が完了するまで、内部にPCBが付着しているおそれの低い洗浄装置と第二蒸留塔22とを残存させておいて、この第二蒸留塔22を最後に解体処理するようにしてもよい。
【0060】
なお、必要であれば、図4に示したような第二蒸留塔22の缶出液を第一蒸留塔21に返送するような態様で第二の蒸留塔浄化工程を実施することもできる。
ただし、図4に示した態様において、新油や再生洗浄油といった清浄な洗浄油を第一蒸留塔21の缶出液排出量に見合う分だけ供給しつつ蒸留塔21,22を運転すると、運転開始後しばらくの間は第二蒸留塔22の缶出液にPCBが含まれているため、第一蒸留塔21に清浄な洗浄油を供給して第二の蒸留塔浄化工程を開始させるまでにある程度の時間を要する。
この図4に示した態様で第二の蒸留塔浄化工程を実施させると全体の浄化に時間を要するおそれがある一方で、缶出液の流路を切り替えたりせずに第一の蒸留塔浄化工程から第二の蒸留塔浄化工程へと移行することができるという利点を有する。
【0061】
なお、この第二の蒸留塔浄化工程を実施するのに際しては、第一蒸留塔21及び第二蒸留塔22の上部温度計T1,T4の値と下部温度計T3,T6の値との少なくとも一方、好ましくは両方を確認しつつ蒸留塔を運転させることが好ましい。
【0062】
即ち、蒸留塔の頂部と底部との間に温度差を有しているということは、蒸留塔内においてそれだけPCB濃度の勾配があることを意味するため、これらを測定しつつ蒸留塔21,22の内部洗浄を実施することで、どの程度の浄化がなされたのかを把握することができる。
例えば、第二蒸留塔22において、蒸留塔の上部から得られる留出液がPCBをほとんど含んでおらず、これに対して、缶出液がPCBを含んでいる場合は、そのPCB濃度に応じて蒸留塔内に温度勾配ができる。
これに対して、洗浄が進み、缶出液がほとんどPCBを含まなくなると蒸留塔内の温度勾配が小さくなっていく。このように蒸留塔内の温度勾配を測定することで、蒸留塔内がどの程度洗浄されたか把握することができる。
【0063】
なお、最終的には、蒸留塔から排出させた缶出液に含まれているPCBの含有量を測定する工程をさらに実施してこの蒸留塔の無害化が十分になされたかどうかの判定を行うことが好ましい。
この最終判定において、通常、缶出液のPCB濃度が0.5ppm程度以下であれば蒸留塔が十分浄化された状態であると判断することができる。
ただし、予期せぬ場所に、PCBが付着しているおそれがあることを勘案すると、缶出液のPCB濃度が0.1ppm以下となるまで第二の蒸留塔浄化工程を継続することが好ましく、検出限界以下となるまで第二の蒸留塔浄化工程を継続することがより好ましい。
この缶出液のPCB濃度の測定は、第一蒸留塔21と第二蒸留塔22との両方に対して実施する必要はなく、第一蒸留塔21において缶出液のPCB濃度が上記以下となっているようであれば、第二蒸留塔22においても缶出液のPCB濃度が上記以下となっていると判断することができるため第一蒸留塔側においてのみ実施すればよい。
【0064】
なお、蒸留塔21,22から十分にPCBが除去された時点においては、通常、凝縮器23,24、熱交換器27,28、缶出液排出配管L6,L10、缶出液還流配管L9,L13などもPCBが十分除去された状態となっていることから、蒸留塔21,22とともにこれらも安全に解体処理することができる。
【0065】
この第二の蒸留塔浄化工程においては、蒸留塔からの缶出液の排出量に見合う程度の量しか洗浄油を必要とせず、スプレー洗浄のように洗浄油をワンウェイ使用するような場合に比べて洗浄油の消費量を削減することができ、しかも、狭小箇所に入り込んでしまっていたり、部材に浸透していたりするPCBの除去性能に優れたものであるといえる。
【0066】
以上のように本発明によれば、コンデンサやトランスといったPCB含有絶縁油を含む機器の無害化に利用されているPCB汚染機器無害化設備を安全且つ効率よく解体処理することができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、2基の蒸留塔を備えたPCB汚染機器無害化設備を例にあげているが、1基の蒸留塔しか備えられていないPCB汚染機器無害化設備や、3基以上の蒸留塔を備えたPCB汚染機器無害化設備が備えられている場合も上記例示と同様にして本発明を実施することができる。
例えば、前記第一蒸留塔と第二蒸留塔との間に他の蒸留塔が備えられているような場合には、第一蒸留塔の留出液を他の蒸留塔に導入して留出液と缶出液とに分離し、該他の蒸留塔から排出される留出液を第二蒸留塔に導入させるとともに缶出液を第一蒸留塔に戻し、且つ、第二蒸留塔の缶出液を前記他の蒸留塔に戻すようにすればよい。
このように3基以上の蒸留塔を配置して、前記第一蒸留塔に対して低濃度PCB含有洗浄油を供給ししつつ蒸留塔浄化工程を実施すれば本実施形態に例示のPCB汚染機器無害化設備の解体方法と同様の効果を得ることができる。
即ち、第一蒸留塔の留出液を第二蒸留塔に直接導入させずに、他の蒸留塔を介して間接的に導入させた場合でも同様の効果を得ることができる。
例えば、第一蒸留塔と第二蒸留塔との間に第三蒸留塔を備えている場合も、本実施形態と同様に、第二蒸留塔、第三蒸留塔、第一蒸留塔の順に清浄化された蒸留塔から順に解体するようにすれば良い。
また、不測の事態に備えて第一蒸留塔、第三蒸留塔、第二蒸留塔の順で前段に設けられた蒸留塔から順に解体しても良い。
4基以上の蒸留塔を備える場合も同様である。
また、蒸留塔の構造についても本実施形態に記載の蒸留塔に限定されず充填物を2段以上有する蒸留塔にも適用できる。
また、缶出液の加熱方法も本実施形態に記載の方法に限定されず、蒸留塔の底部に循環ラインを設け、循環ライン中に缶出液を加熱するための熱交換器を設けても良く、缶出液貯留部にヒーターを設けて缶出液を加熱する構成としても良い。
【0068】
なお、本実施形態においては、洗浄部の装置類を解体し、解体物の状態で洗浄部の装置類を洗浄する方法を例示しているが、トランスの無害化に用いていた時と同じ状態で装置類を洗浄して低濃度PCB含有洗浄油を作製するようにしてもよい。
また、本実施形態においては、ノルマルパラフィンを洗浄油として利用する場合を例示しているが、PCBに対する溶解性が高く、PCBよりも沸点が低く蒸留塔での分離が可能なものであれば洗浄油を特にノルマルパラフィンに限定するものでもない。
また、本実施形態では抜油装置11,粗解体装置12,二次解体装置14からの汚染油を配管L1を通じて第二処理室に供給しているが、これらの配管接続については特に限定されない。
【0069】
その他にも上記例示の方法に各種変更を加えて本発明を実施することができる。
例えば、本明細書中に明記されていない事項で、従来、PCBに汚染された汚染物の無害化に利用されている技術事項については、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては、本発明に採用が可能なものである。
【符号の説明】
【0070】
1 第一処理室
2 第二処理室
10 洗浄部
11 抜油装置
12 粗解体装置
13 一次洗浄装置
14 二次解体装置
15 二次洗浄装置
16 仕上げ洗浄装置
17 PCB含有洗浄油槽
20 蒸留再生部
21 第一蒸留塔
22 第二蒸留塔
29 再生洗浄油貯留槽
30 脱ハロゲン化部
34 反応槽
35 ナトリウム分散体槽
51 新油貯留槽
211 塔本体
212 上部充填物
213 下部充填物
L1 高濃度PCB含有洗浄油配管
L2 洗浄油供給配管
L3 PCB含有洗浄油配管
L4 新油供給配管
L5 洗浄油還流配管
T1〜T6 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB含有絶縁油を含む機器を洗浄油で洗浄するための洗浄部と、前記洗浄によって生じたPCB含有洗浄油を蒸留して再生洗浄油を作製するための蒸留再生部とを有し、前記PCB含有洗浄油を該PCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い留出液とPCB濃度の高い缶出液とに分離するための蒸留塔が前記蒸留再生部に備えられているPCB汚染機器無害化設備を解体処理するためのPCB汚染機器無害化設備の解体方法であって、
前記洗浄部を構成している装置を洗浄油で洗浄し、該洗浄前において前記蒸留塔に導入されていたPCB含有洗浄油よりもPCB濃度の低い低濃度PCB含有洗浄油を作製し、該低濃度PCB含有洗浄油を前記蒸留塔で分離させることによって該蒸留塔内部のPCB付着量を前記装置の洗浄前よりも減少させる蒸留塔浄化工程を前記蒸留塔の解体前に実施することを特徴とするPCB汚染機器無害化設備の解体方法。
【請求項2】
解体処理するPCB汚染機器無害化設備には、前記低濃度PCB含有洗浄油が導入される第一蒸留塔と、留出液が前記再生洗浄油として利用される第二蒸留塔とを含む複数の蒸留塔が備えられており、前記第一蒸留塔の留出液を前記第二蒸留塔に導入させて複数の蒸留塔のPCB付着量を減少させる前記蒸留塔浄化工程を実施する請求項1記載のPCB汚染機器無害化設備の解体方法。
【請求項3】
前記蒸留塔浄化工程を実施した後、前記低濃度PCB含有洗浄油に代えて清浄な洗浄油を前記第一蒸留塔に導入させて該第一蒸留塔を含む前記複数の蒸留塔を運転させ、前記第二蒸留塔から排出される再生洗浄油を再び前記第一蒸留塔に導入させて複数の蒸留塔内部のPCB付着量を減少させる第二の蒸留塔浄化工程を前記複数の蒸留塔の解体前にさらに実施する請求項2記載のPCB汚染機器無害化設備の解体方法。
【請求項4】
前記第一蒸留塔と前記第二蒸留塔との内の少なくとも一方の頂部と底部とにおける温度測定を実施しつつ前記第二の蒸留塔浄化工程を実施する請求項3記載のPCB汚染機器無害化設備の解体方法。
【請求項5】
前記第一蒸留塔外に排出させた缶出液に含まれているPCBの含有量を前記第二の蒸留塔浄化工程中に一度以上測定する請求項3又は4に記載のPCB汚染機器無害化設備の解体方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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