PCRに基づく核酸分子合成方法
核酸分子を合成する方法が提供され、一局面において、当該方法は、第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程と、PCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸分子を合成するためのPCR法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
デノボ遺伝子合成は、遺伝子を作製および改変するための強力な分子ツールである。デノボ遺伝子合成は、タンパク質工学(1、2)、人工遺伝子ネットワークの開発(3)、および合成ゲノムの作製(4〜6)を含む、広範囲の適用を有する。遺伝子クローニングなどの分子生物学技術は、所望の遺伝子を作製するためにPCR工程をしばしば含み、従ってDNAテンプレートを必要とする(12)。しかし、天然のテンプレートDNAは、関連する供給源生物へのアクセスの不足、限られた環境的もしくは考古学的サンプル、およびDNAサンプルの分解、または天然の供給源生物に関連する危険を含む多数の理由のために、必ずしも入手可能ではない(4)。実験室においてデノボで遺伝子を合成する能力を用いれば、科学者は、天然のDNAの入手可能性およびアクセス可能性に頼る必要はもはやない。
【0003】
デノボ遺伝子合成はまた、正確な遺伝子操作を可能にする。ヌクレオチド配列を指定することによって、科学者は、突然変異を導入すること、クローニング目的のために制限部位を組み入れること、または宿主細胞系の既知のコドン優先に合うようにコドン利用を変えることが容易にできる(9、13)。このような操作は、天然の遺伝子配列を含有するテンプレートを使用することと比較して、遺伝子機能、構造および発現の研究を容易にし、タンパク質の発現、局在化、検出および精製を改善し得る(10、16)。
【0004】
遺伝子の化学合成は、多数のオリゴヌクレオチドのアセンブリによって達成され得る。より長いDNA分子は、デノボポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(6、7)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)(4、8)に基づく合成法を含む様々な方法を使用して、オリゴヌクレオチドのプールをより長いDNA分子へアセンブリすることによって、構築され得る。様々な方法の中でも、PCRベースの方法が、最も効率的でありかつ最も費用対効果が高いようである(16)。
【0005】
DNAの長い分子を合成するための最も報告される方法は、遺伝子を構築するために重複オリゴヌクレオチドの使用に頼るPCRベースの方法である。長いDNA配列についてPCRプロセスを最適化しアセンブリの精度を高めようとして、様々な方法が提案されてきた。これらの方法としては、サーモダイナミカリー・バランスド・インサイド−アウト(thermodynamically balanced inside-out)(TBIO)法(9)、サクセッシブPCR(successive PCR)(10)、デュアル・アシンメトリカルPCR(dual asymmetrical PCR)(DA-PCR)(11)、オーバーラップ・エクステンションPCR(overlap extension PCR)(OE-PCR)(12、13)、PCRベースのツーステップDNA合成(10、14、15)、およびワンステップ遺伝子合成(16)が挙げられる。
【0006】
公知のPCRベースの遺伝子合成法は、所望の遺伝子産物よりも大きな分子量の偽産物をしばしば形成し、このため、合成される産物の純度は低下する(9〜12、16〜19)。さらに、成功した遺伝子合成は、公知のPCRベースの方法を利用して正確に検出され得ず、従って、所望のPCR産物の生成の検証は、典型的にゲル電気泳動によって確認される。ゲル電気泳動は、蛍光イメージャーの助けを借りてゲル電気泳動によって全長PCR産物を手動で視覚化することを必要とする。この方法は、追加の装置を必要とし、これは、長時間を要し、自動遺伝子合成の開発に有用なラブオンチップ法とうまく統合されない。さらに、ゲル電気泳動は、DNA増幅のエンドポイント分析を単に提供し得、即ち、それは、PCR法の終了時に存在するDNA産物を視覚化するために単に使用され得る。DNA産物のPCR増幅は、最初は確率論的であり、次いで指数関数的となり、最後に不活発となる(28)。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、化学的方法によって実際的に合成され得ないより長いDNA分子を含む、二本鎖DNAの合成のための単一反応方法を提供する。方法は、PCRアセンブリおよび増幅プロセスについて異なるオリゴヌクレオチドおよびアニーリング温度を用いての単一PCR反応を使用するPCRによって、重複オリゴヌクレオチドをアセンブリしアセンブリされた産物を増幅することにより、遺伝子または核酸分子を合成することを含む。
【0008】
所望の遺伝子または核酸分子を増幅するために使用される外部増幅プライマーよりも高い平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットを使用することによって、本方法は、従来の遺伝子合成のワンステップPCRベースのアセンブリ法の間に生じ得るPCRアセンブリプロセスとPCR増幅プロセスとの間の競合を減らし、従って、長い二本鎖遺伝子を合成するためのより効率的かつ正確な方法を提供することができる。
【0009】
さらに、本発明は、リアルタイムPCR(RT-PCR)によって全長核酸分子をアセンブリする方法を提供し、これは、所望の遺伝子産物の効率的かつ正確な合成のための反応条件の最適化を容易にし得、自動遺伝子合成のシステムへ容易に統合されることができる遺伝子産物の自動検証およびキャラクタライゼーションを可能にし得る。
【0010】
一局面において、以下を含む、核酸分子を合成する方法が提供される:第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程と;PCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【0011】
一態様において、第2アニーリング温度は、第2平均融解温度よりも低いかまたはこれに等しい。
【0012】
種々の態様において、第1平均融解温度は、第2平均融解温度よりも約5℃以上高い場合があり、または第2平均融解温度よりも約5℃〜約25℃高い場合がある。
【0013】
種々の態様において、PCR反応混合物は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約5 nM〜約80 nMの濃度でまたは約10 nM〜約60 nMの濃度で含み得る。
【0014】
種々の態様において、PCR反応混合物は、外部増幅プライマーのセットを約120 nM〜約1μMまたは約200 nM〜約800 nMの濃度で含み得る。
【0015】
種々の態様において、アセンブリ工程は、第1アニーリング温度を使用して約5〜約30 PCRサイクルを行う工程を含み得;増幅工程は、第2アニーリング温度を使用して約10〜約35 PCRサイクルを行う工程を含み得る。
【0016】
ある態様において、全長テンプレートは約750塩基対であり得、アセンブリ工程は、アニーリング段階について第1アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み得、増幅工程は、第2アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み得る。PCR反応混合物は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nMの濃度で含み得、外部増幅プライマーのセットを約400 nMの濃度で含み得る。
【0017】
種々の態様において、PCRはリアルタイムであり得、PCR反応混合物は蛍光プローブを含み得、ここで、蛍光強度の増加は、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する。蛍光プローブはLCGreen Iであり得る。方法は、検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含み得る。例えば、最適化工程は、(i)変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;(ii)アセンブリオリゴヌクレオチドのセットまたは外部増幅プライマーのセットの濃度;および(iii)PCRサイクル数のうちの1つまたは複数を調節する工程を含み得る。その方法は自動化され得る。
【0018】
別の局面において、オリゴヌクレオチドの隣接した対の間にギャップを有する長い二本鎖DNAを形成するようにアニールするアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、外部増幅プライマーのセットとを含むキットであって、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットが、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高い平均融解温度を有するキットが提供される。
【0019】
別の局面において、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてリアルタイムPCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む、核酸分子を合成する方法が提供される。
【0020】
上記のように、PCR反応混合物は蛍光プローブを含み得、ここで、蛍光強度の増加は、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する。蛍光プローブはLCGreen Iであり得る。方法は、検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含み得る。例えば、最適化工程は、(i)変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;(ii)アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度;および(iii)PCRサイクル数のうちの1つまたは複数を調節する工程を含み得る。その方法は自動化され得る。
【0021】
本発明の他の局面および特徴は、添付の図と共に、以下の本発明の具体的な態様の説明を検討すると、当業者に明らかとなる。
【0022】
図は、単なる例示として、本発明の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】オリゴヌクレオチド融解温度バリエーションを使用するPCRベースの遺伝子合成法の略図(「トップダウン(Top Down)ワンステップ遺伝子合成」)。トップダウン(TD)ワンステップ遺伝子合成と呼ばれる、本方法の一態様の略図は、アセンブリおよび増幅について設計された異なるアニーリング温度を用いる単一反応へPCRアセンブリおよび増幅を組み合わせる。この態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーは、PCRの間の潜在的な干渉を最小化するために>15℃の融解温度差を有するように設計される。
【図2】ワンステップ(アセンブリ/増幅を一緒に30サイクル)、TDワンステップ(40サイクル、20アセンブリに続いて20増幅)、およびツーステップ(PCA:30サイクル;PCR:30サイクル)遺伝子合成のアガロースゲル電気泳動結果。TDワンステッププロセスは、全て単一の反応混合物内で、67℃のアニーリング温度を用いて行われるPCRアセンブリ20サイクル、続いての49℃のアニーリング温度を用いてのPCR増幅20サイクルを含む。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの濃度は、それぞれ、10 nMおよび400 nMである。
【図3】1x LCGreen Iを用いてのリアルタイムPCR遺伝子合成の連続的な蛍光モニタリング。最初の20サイクルを67℃のアニーリング温度で行い、次の20サイクルを49℃のアニーリング温度で行う。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの濃度は、それぞれ、10 nMおよび400 nMである。
【図4】アセンブリオリゴヌクレオチド濃度は、遺伝子合成の成功において重要である。S100A4(752 bp)を、5 nM〜80 nMの範囲の様々なアセンブリオリゴヌクレオチド濃度、ならびに最初の20サイクルについて67℃のおよび次の20サイクルについて49℃のアニーリング温度を用いて合成した。(a)5 nM(◇)、7 nM(□)、10 nM(△)、13 nM(+)、17 nM(x)、20 nM(○)、40 nM(●)、64 nM(▲)、および80 nM(◆)のオリゴヌクレオチド濃度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。初期サイクルおよびサイクル21〜約33における蛍光強度の傾きは、それぞれ、アセンブリおよび増幅プロセスの効率を示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。
【図5】S100A4(752 bp)は、60 nM〜1μMの範囲の様々な外部増幅プライマー濃度で首尾よく合成される。(a)60 nM(◇)、120 nM(□)、200 nM(△)、300 nM(x)、400 nM(+)、および1μM(○)の外部プライマー濃度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。挿入図は、最初の20サイクルの蛍光シグナルを示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。S100A4の合成の成功は、所望の鎖長の鋭く狭いゲルバンドによって示される。
【図6】様々なアセンブリサイクル(6〜20サイクル)、続いて増幅のための別の20サイクルで、S100A4を合成する。アガロースゲル電気泳動結果は、全長アセンブリが11サイクル以内に達成されることを示している。
【図7】最初の20サイクルについて58℃〜70℃の範囲の様々なアセンブリアニーリング温度、続いての次の20サイクルについて49℃のアニーリング温度を用いて合成されたS100A4(752 bp)。(a)58℃(◇)、60℃(□)、62℃(△)、65℃(x)、67℃(+)、および70℃(○)のアニーリング温度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。挿入図は、中間の15サイクル(13〜27)を示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。より高い合成収率が、ストリンジェントなアセンブリアニーリング温度(>67℃)で得られた。
【図8】S100A4のTDワンステップリアルタイム遺伝子合成についてのSYBR Green IおよびLCGreen Iの濃度効果。(a)0.25x〜5x SYBR Green I。1x LCGreen Iの蛍光強度もまた、比較のためにこのプロットに含まれている。SYBR Green Iの蛍光曲線は、PCRサイクル数に鈍感であり、遺伝子合成の間のDNA鎖長伸長を示さない。(b)0.25x〜5x LCGreen I。アセンブリおよび増幅についてのアニーリング温度は、それぞれ、58℃および49℃である。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部プライマーの濃度は、それぞれ、64 nMおよび400 nMである。
【図9】MgSO4濃度は、遺伝子合成の成功について重要である。(a)MgSO4の様々な濃度についてのPCRサイクル数の関数としての1x LCGreen Iの蛍光:1.5 mM(◇)、2.5 mM(□)、3.0 mM(△)、3.5 mM(x)、4.0 mM(●)、および5.0 mM(○)。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。アセンブリおよび増幅についてそれぞれ58℃および49℃のアニーリング温度、1 mMの各々のdNTP、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、ならびに400 nMの外部増幅プライマーを用いて、TDワンステップ遺伝子合成を行う。4 mMのMgSO4での遺伝子合成は、最高の収率の全長産物を提供する。
【図10】RT-PCRおよび融解ピーク分析を使用しての遺伝子合成の産物の分析。(a)ワンステップおよびツーステップ合成からのS100A4についてのアセンブリされた産物の融解ピーク分析;2つのレプリカを各オリゴヌクレオチドセットについて行った。アセンブリされた遺伝子の融解曲線分析を、72〜99℃について0.05℃/秒のランプでRocheのLightCycler 1.5リアルタイムサーマルサイクリング機を使用して得た。(b)アセンブリされた産物の対応のアガロースゲル電気泳動結果。
【図11】表1.アセンブリオリゴヌクレオチドのデータ/表2.ワンステップ、ツーステップ、およびTDワンステップ遺伝子合成についてのPCR条件/表3.いくつかの報告された最適な遺伝子合成条件。
【図12】表4.S100A4について設計されたオリゴヌクレオチドのセット。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
遺伝子合成のPCRベースのアセンブリ法において、短いオリゴヌクレオチドのプールが一緒に混合される。各オリゴヌクレオチドは、所望の核酸配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの配列の部分を含む。混合物中において、重複する相補配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールし、二本鎖のアニールされたセグメントと二本鎖セグメントの一方または両方の末端に一本鎖のオーバーラップセグメントとを有するセグメントを形成する。二本鎖セグメントでの鎖の末端は、伸長についてのプライマーとして作用し、一方、一本鎖セグメントは、ポリメラーゼ反応についてのテンプレートとして作用し、伸長された二本鎖DNA分子が作製される。次いで、伸長されたDNA分子は、融解され、再びアニールされ、新たな二本鎖/一本鎖DNA分子が形成され、これらは、次いで、新たなプライマー/テンプレートとして作用し、これらは、他の伸長された相補的テンプレートDNAとアニールし得、次のPCRサイクルにおいてより長いDNA分子を作製し得る。このプロセスを繰り返すことによって、DNA鎖長は、徐々に増加し、所望の配列の全長テンプレートが徐々に作製される。アセンブリされた全長テンプレートDNAの量が、次いで、PCR増幅工程によって増幅される。このような遺伝子アセンブリPCR法は、単一セットのPCRサイクルを使用して一つの反応混合物中においてPCRアセンブリおよびPCR増幅を組み合わせるワンステッププロセスとして、またはアセンブリおよび増幅段階について別個の反応およびPCRサイクリングを必要とするツーステッププロセスとして、行われ得る。ワンステップ遺伝子合成プロセスは、たった1つのPCR反応を必要とする点で単純かつ迅速であるが、同一のPCR反応に外部増幅オリゴヌクレオチドおよびアセンブリオリゴヌクレオチドを一緒に含めることは、しばしば低収率をもたらし、時には所望の産物を生成しない場合がある。ツーステッププロセスは、所望の産物のより十分な収率を提供するが、このようなプロセスは、介在試薬添加工程および単離工程を伴う、2つの異なるPCR反応を必要とする。
【0025】
上述したように、前述の遺伝子合成のワンステップPCRベースのアセンブリ法において、外部増幅プライマーは、アセンブリオリゴヌクレオチドと一緒に、同一のPCR反応混合物中において混合される。PCRが進行するにつれて反応混合物中において一緒に生じるPCRアセンブリおよび増幅プロセスのバランスを取るために、アセンブリオリゴヌクレオチドおよび増幅プライマーは、一致する融解温度で一般的に設計される。結果として、過剰に存在する外部増幅プライマーは、アセンブリプロセスによって伸長されたが全長テンプレートではないオリゴヌクレオチドと優先的にアニールする傾向があり、潜在的に大部分の外部増幅プライマーが最初の遺伝子アセンブリプロセスに関与し、いったんアセンブリされた後に全長テンプレートを増幅するために利用可能な外部プライマーの供給が激減する。同様に、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の供給が激減し得、PCR反応は時期尚早に停止され得る(17、21)。さらに、通常の5'-3'方向へ単に伸長され得る内部アセンブリオリゴヌクレオチドは、増幅PCRの間、全長遺伝子産物の増幅に対して阻害的であり得る(13)。アセンブリオリゴヌクレオチドと外部増幅プライマーとの間のこの競合的効果は、全長遺伝子産物の収率を減らし、偽産物を形成させる。この競合的効果は、高いGC含有量または鎖長を有するDNAにとってより重大であり(9、10)、ツーステップPCRプロセスにおいては排除され、それによって、増幅およびアセンブリは別々に行われるが、新たなPCR混合物の余分の費用および労力ならびに介在試薬添加工程および単離工程を伴う。
【0026】
本方法は、融解温度バリエーションが、単一反応PCRベースの遺伝子合成法においてオリゴヌクレオチドアセンブリおよび全長テンプレート増幅のプロセスの効率を制御するために使用され得るという知見に一部分において基づいている。少なくとも2つの異なるアニーリング温度を含むPCR法において異なる平均融解温度を有するように設計されたアセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーを使用することは、アセンブリおよび増幅のプロセスを一時的に分離し、従って、単一反応遺伝子合成においてPCRアセンブリおよび増幅プロセス間の干渉を減らす。従って、本発明は、公知のワンステッププロセスの容易さおよび費用対効果と、公知のツーステッププロセスにおけるような分離したアセンブリおよび増幅の有効性とを組み合わせる、PCRベースの単一反応遺伝子合成法を提供する。
【0027】
本方法は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットを含有する単一の反応混合物中においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う工程を含み、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、外部増幅プライマーのセットよりも高い平均融解温度を有する。PCR反応は少なくとも2つの段階で行われ、第1段階は、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高く、テンプレート核酸配列へのアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリを促進する、第1アニーリング温度を使用する。第2段階は、テンプレート核酸配列への外部増幅プライマーのアニーリングおよび全長テンプレート核酸配列の増幅を可能にする、第2アニーリング温度を使用する。
【0028】
アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの戦略的設計と、外部増幅プライマーと比較してのアセンブリオリゴヌクレオチドについての適切に異なる平均融解温度の選択とによって、本方法に記載されるような遺伝子合成のPCRベースのアセンブリ法を行うことが可能である。
【0029】
従って、以下を含む、核酸分子を合成する方法が提供される:第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程;およびPCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【0030】
図1は、本発明の単一反応アセンブリおよび増幅PCR法のある態様の略図である。
【0031】
PCR法、条件および試薬は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号を参照のこと)。一般的に、PCR増幅は、増幅させようとする配列をコードするテンプレート核酸分子と、テンプレート上の特定の相補的な標的部位へアニールするように設計されたプライマーと、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)と、DNAポリメラーゼとを含むPCR反応混合物中において行われ、全ては、テンプレートへのプライマーのアニーリングを可能にし、DNAポリメラーゼがプライマーを伸長し新たなDNA産物を生じさせるに必要な条件および補因子またはイオンを提供する、好適なバッファー中に組み合わされている。
【0032】
簡潔に記載すると、PCRは、変性、アニーリングおよび伸長段階を可能にする、変動温度および所定の時間の少なくとも1サイクルへPCR反応混合物を供することを含む。一般的に、PCRサイクルの変性、アニーリングおよび伸長段階は、各々、異なる特定の温度で生じ、PCRサイクルの各工程について必要とされる温度を達成するためにサーマルサイクラーにおいてPCRを行うことは、当技術分野において公知である。変性は、二本鎖DNA(テンプレートまたは前のサイクルで形成された増幅産物)を融解するために最も高い温度で、例えば、Taqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼが使用される場合は95℃で、典型的に行われる。アニーリング段階は、オリゴヌクレオチドが相補的DNA鎖へ特異的にアニールすることを可能にする温度で行われ、典型的に、特異的なアニーリングを促進すると同時に非特異的な塩基対形成を減らすように選択される。選択される正確なアニーリング温度は、PCR反応混合物中に含まれるオリゴヌクレオチドの配列に依存することが、認識される。伸長段階は、DNAポリメラーゼに増幅産物を合成させるために、使用される特定のDNAポリメラーゼ酵素について好適な温度で行われる。
【0033】
遺伝子アセンブリを含むPCRベースの遺伝子合成法において、テンプレート核酸分子は、PCRの開始前にPCR混合物中に一般的に提供されない。むしろ、テンプレートは、重複アセンブリヌクレオチドのプールのアニーリング、およびDNAポリメラーゼによるオーバーラップの伸長によって、PCRアセンブリ段階の間に形成され、所望のテンプレートのより長いフラグメントが徐々に合成され、最終的に、全長の中断していないテンプレートが多数のPCRサイクル後に生成され、この数は、全長テンプレートの鎖長、およびテンプレートをアセンブリするために使用される重複オリゴヌクレオチドの数に、少なくとも一部分において依存する。
【0034】
従って、本方法においては、下記に説明されるように、PCR反応混合物は、PCRを行うために必要な成分(dNTP、DNAポリメラーゼおよびバッファーを含む)を含むこと、ならびにテンプレートおよびプライマーが、それぞれ、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットとして、最初の反応混合物中に供給されることが、認識される。本明細書に説明されるようなPCRによるアセンブリおよび増幅の各々は、変性、アニーリングおよび伸長工程を含むことも、理解される。
【0035】
理解されるとおり、用語「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2つのヌクレオチドを含む一本鎖核酸分子を指す。PCRにおける使用についてのオリゴヌクレオチドの好適な鎖長は、公知であるか、または容易に決定され得る。種々の態様において、鎖長は、約10〜約100ヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、購入され得るか、または標準的な公知の手順によって化学的に合成され得ることが、当業者によって理解される。
【0036】
本発明のPCR法は、単一のPCR反応混合物中において2つのタイプのオリゴヌクレオチド:アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーを使用することを必要とする。
【0037】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、一緒にアニールされると所望の核酸配列または遺伝子の全長テンプレートを生成する重複オリゴヌクレオチドのグループであり、しかし、これは、テンプレートの交互の鎖上にテンプレートに沿って、あるオリゴヌクレオチドが停止する箇所と、同一の鎖についての配列をコードする次のオリゴヌクレオチドが開始する箇所との間に、中断またはギャップを有する。従って、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、二本鎖DNAテンプレートの両方の鎖の少なくとも鎖長をカバーするように一般的に設計され、その結果、アセンブリオリゴヌクレオチドの完全なセットの全てが一緒にアニールされると、アニールされた二本鎖の中断しているテンプレートが形成される。アセンブリオリゴヌクレオチドの各々は、所望の核酸配列または遺伝子の部分のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに対して相補的であり、各アセンブリオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの他のアセンブリオリゴヌクレオチドへ部分的にハイブリダイズし、その結果、重複アセンブリオリゴヌクレオチドがPCRのアセンブリ段階においてアセンブリされると、所望の核酸配列または遺伝子の全長テンプレートが作製される。
【0038】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、遺伝子の天然の配列を有するテンプレートを生成するように設計され得るか、または、最終テンプレート中へ突然変異もしくは制限部位を導入するように、またはテンプレートDNAが最終的に発現される生物のコドン利用に合うようにコドンを変化させるように設計され得る。同様に、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、新規のDNA配列、例えば、新規の融合タンパク質をコードするDNAを生成するように、またはテンプレートDNAへタグもしくはDNA標的配列またはタンパク質タグをコードする配列を挿入するように、設計され得る。
【0039】
外部増幅プライマーのセットは、いったんアセンブリオリゴヌクレオチドのセットからアセンブリされると全長のインタクトなテンプレートのいずれかの鎖へアニールするようにプライマーとして作用する、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドのグループである。外部増幅プライマーのセットは、本方法の増幅段階の間、全長テンプレートの全部または一部のPCR増幅を促進する。外部増幅プライマーのセットにおいて、少なくとも1つのプライマーは、二本鎖全長テンプレートのコード鎖(または上部鎖)の3'末端の領域に対して相補的であり、少なくとも1つの外部増幅プライマーは、二本鎖全長テンプレートの相補鎖(または下部鎖)の3'末端の領域に対して相補的である。PCRにおいて全長テンプレートへハイブリダイズされると、外部増幅プライマーは、所望の核酸配列または遺伝子の選択された部分または全部のPCR増幅を促進し得る。
【0040】
「平均融解温度」は、平均融解温度が適用される、オリゴヌクレオチドのセット内のオリゴヌクレオチド、アセンブリオリゴヌクレオチドまたは外部増幅プライマーのいずれか、の融解温度の相加平均を指す。従って、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度は、全てのアセンブリオリゴヌクレオチドの融解温度を平均することによって決定され、外部増幅プライマーの平均融解温度は、全ての外部増幅プライマーの融解温度を平均することによって決定される。当業者は、オリゴヌクレオチドの融解温度は、その同一のオリゴヌクレオチドの集団の50%が安定な二本鎖ヘリックスを形成し、残りの50%が一本鎖分子へ分離される温度であることを理解する。
【0041】
アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーは、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度が、外部増幅プライマーの平均融解温度よりも高くなるように、かつ、平均融解温度の差が、単一反応PCRベースの遺伝子合成の間のPCRアセンブリとPCR増幅との競合を減らすに十分となるように、設計される。オリゴヌクレオチドの融解温度は、オリゴヌクレオチドの鎖長およびオリゴヌクレオチドの特定の核酸配列を含む様々な因子に依存し、従って、アセンブリオリゴヌクレオチドの各々の融解温度は異なり得、外部増幅プライマーの各々の融解温度は異なり得る。しかし、オリゴヌクレオチドは、アセンブリオリゴヌクレオチドの融解温度の偏差および外部増幅プライマーの融解温度の偏差を最小化するように設計され得る。
【0042】
所定のオリゴヌクレオチドについての融解温度は、市販のソフトウェアを含む、公知の式および公知のプログラムを使用して計算され得る。オリゴヌクレオチドを設計するためのコンピューターソフトウェアの使用は、当技術分野において公知である(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号、19を参照のこと)。オリゴヌクレオチドは、遺伝子発現の増加、ヘアピン形成の最小化および均一な融解温度について最適化されるように設計され得る(9、19)。例えば、各オリゴヌクレオチドの融解温度間で最小化された偏差を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットを設計するために、コンピュータープログラムが使用され得、これは、先ず、マーカーによって所望の核酸配列をほぼ等しい鎖長のオリゴヌクレオチドへ分割し、塩およびオリゴヌクレオチド濃度で修正されたSanta Luciaの熱力学パラメータ(23)を用いて最近傍モデルを使用して重複領域間の融解温度の平均および偏差を計算する。次いで、融解温度の偏差を最小限にするために、マーカー位置をシフトさせることによって、オリゴヌクレオチド鎖長を調節し得る。
【0043】
特定の理論に限定されないが、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、外部増幅プライマーの平均融解温度よりも高いアニーリング温度が使用される場合、外部増幅プライマーおよびアセンブリオリゴヌクレオチド間でのミスペアリングを防止すると同時に、効率的なテンプレートアセンブリを促進するようである。平均融解温度の差は、異なる平均融解温度を有することにおける利益を排除するほどに小さすぎないべきであり、これと同時に、差が大きすぎる場合、アセンブリ効率は低下し得る。プライマーを設計する際に、特異性を高めるために約50℃よりも高くなるように外部増幅プライマーの平均融解温度を設計することが、有利であり得る。
【0044】
ある態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、約5℃以上、約6℃以上、約7℃以上、約8℃以上、約9℃以上、約10℃以上、約11℃以上、約12℃以上、約13℃以上、約14℃以上、約15℃以上、約16℃以上、約17℃以上、約18℃以上、約19℃以上、約20℃以上、約21℃以上、約22℃以上、約23℃以上、約24℃以上、または約25℃以上である。特定の態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、約5℃〜約25℃、約7℃〜約19℃である。
【0045】
当業者は、本方法を使用しての成功した遺伝子合成のために必要とされるアセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差の大きさは、アニーリング条件、例えば、PCR混合物のpHおよび塩濃度、ならびに特定のオリゴヌクレオチドに応じて変化することを認識する。例えば、非特異的オリゴヌクレオチドアニーリングの可能性を減らすストリンジェントなアニーリング条件は、融解温度のより小さな差を許容し得る。
【0046】
PCRは、上述のように、2段階で行われる。第1段階は、アセンブリ段階であり、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットのアセンブリを可能にするように、しかし存在し得る利用可能な相補的核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを減らすように設計されたアニーリング温度を使用する、変性、アニーリングおよび伸長の1つまたは複数のサイクルを含む。具体的には、アセンブリ段階において、アニーリング温度は、外部増幅プライマーの融解温度よりも高く、所望の核酸配列の全長テンプレートへのアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリを可能にすると同時に、この段階での外部増幅プライマーのアニーリングを減らす。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「アニーリング温度」は、オリゴヌクレオチドにDNAの相補鎖と特異的塩基対を形成させるためにPCRの間に使用される温度を指す。典型的に、オリゴヌクレオチドの特定のセットについてのアニーリング温度は、平均融解温度を僅かに下回る、例えば約1℃、約2℃、約3℃または約5℃下回るように選択されるが、それは、場合によっては、オリゴヌクレオチドの特定のセットについての平均融解温度に等しいかまたはこれを僅かに上回り得る。
【0048】
例えば、遺伝子合成のアセンブリ段階の間のアニーリング温度は、外部増幅プライマーセットの平均融解温度よりも、約5℃以上、約6℃以上、約7℃以上、約8℃以上、約9℃以上、約10℃以上、約11℃以上、約12℃以上、約13℃以上、約14℃以上、約15℃以上、約16℃以上、約17℃以上、約18℃以上、約19℃以上、約20℃以上、約21℃以上、約22℃以上、約23℃以上、約24℃以上、または約25℃以上高くなるように選択され得る。
【0049】
遺伝子合成のアセンブリ段階の間のアニーリング温度は、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度よりも僅かに高い場合がある。アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの平均融解温度よりも高くアセンブリアニーリング温度を設定することは、以下を含むいくつかの利点を提供し得る:(i)アセンブリ反応と増幅反応との潜在的な競合を減らすこと、(ii)切断されたオリゴヌクレオチドがアセンブリプロセスに関与する可能性および生じる誤差を減らすこと、(iii)二次構造を形成する可能性を減らすためにより選択的なアニーリング条件を提供すること、ならびに(iv)オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの特異化を増加させること;これらの全ては、特に高GC含有量を有する遺伝子についての、不完全な配列の発生を防止する。あるDNAポリメラーゼの伸長効率は72℃で最も高いこと、および本方法において72℃よりも高くアセンブリアニーリング温度を設定することは、使用されるDNAポリメラーゼに応じてアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリ効率を減らし得ることが認識される。
【0050】
PCRの増幅段階は、アセンブリされた全長テンプレートへの外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする増幅アニーリング温度を使用して行われ、外部増幅プライマーがテンプレートのどこへアニールするように設計されるかに応じて、全長テンプレートの一部または全部の増幅が可能にされる。一般的に、増幅アニーリング温度は、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度よりも、外部増幅プライマーの平均融解温度により近い。例えば、増幅アニーリング温度は、外部増幅プライマーセットの平均融解温度未満であるかまたはこれに等しい場合がある。
【0051】
上述したように、PCR条件は、当技術分野において一般的に公知である。成功したPCRに必要とされる、例えば、オリゴヌクレオチド濃度、dNTP濃度、サイクルの各工程についての時間、PCRサイクル数、DNAポリメラーゼのタイプ、PCR混合物のpHおよび塩濃度を含む反応条件は、反応において使用される特定のオリゴヌクレオチドおよびポリメラーゼに応じて異なることが認識される(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号を参照のこと)。従って、本方法を使用して成功した遺伝子合成を達成するために必要とされる条件は、使用される特定のアセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーに応じて変化し、特定の反応について最適化される必要があり得ることが認識される。
【0052】
PCRに好適であり得るDNAポリメラーゼは、当技術分野において公知であり(2、16、41〜43)、これらとしては、例えば、Taq DNAポリメラーゼ、PFU DNAポリメラーゼ、ホットスタートDNAポリメラーゼおよびProofStart(商標)DNAポリメラーゼが挙げられる。特定の態様において、KODホットスタートDNAポリメラーゼ(2、16、41)が、本方法のPCRにおいて使用される。
【0053】
ある態様において、成功した遺伝子合成に必要とされるPCR反応混合物中のアセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度は、約5 nM〜約80 nM、約5 nM、約7 nM、約10 nM、約13 nM、約15 nM、約17 nM、約20 nM、約30 nM、約40 nM、約50 nM、約60 nMまたは約80 nMである。
【0054】
ある態様において、PCR反応混合物中の外部増幅プライマーのセットの濃度は、約120 nM〜約1μM、約120 nM、約300 nM、約400 nM、約500 nM、約750 nMまたは約1μMである。
【0055】
PCRのアセンブリ段階に必要とされるサイクル数は、オリゴヌクレオチドの数、アセンブリされるテンプレートの鎖長、およびプール内のオリゴヌクレオチドの均一性に少なくとも一部分において依存する。均一のオリゴヌクレオチド鎖長(n)および重複サイズ(s)から鎖長(L)のdsDNA分子を構築するために必要とされる理論的な最小サイクル数(x)は、以下によって与えられる:
2xn−(2x−1)s>L
【0056】
ある態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリについてのPCRサイクル数は、約5〜約30サイクル、約5サイクル以上、約6サイクル以上、約10サイクル以上、約11サイクル以上、約15サイクル以上、約16サイクル以上、約20サイクル以上、約25サイクル以上、または約30サイクル以上である。
【0057】
ある態様において、全長テンプレートの増幅のための増幅段階についてのPCRサイクル数は、約10〜約35サイクル、約10サイクル以上、約15サイクル以上、約20サイクル以上、約25サイクル以上、約30サイクル以上、または約35サイクル以上である。
【0058】
必要に応じて、PCR法は、「ホットスタート」から始まり得、これは、ある試薬が反応混合物に与えられておらず、次いで、これは、短時間、高温、例えば95℃でインキュベートされ、その後、欠けている試薬が添加されることを意味する。ホットスタート法は、オリゴヌクレオチドサンプルがオリゴヌクレオチドの融解温度へまたはこれを超えて加熱された状態になる後まで、DNAポリメラーゼ活性を制限することによって、PCRの初期セットアップ段階の間の非特異的増幅を減らすために使用される。
【0059】
同様に、必要に応じて、PCR法は、72℃での最終伸長インキュベーションで終了し得る(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号を参照のこと)。
【0060】
本発明の一態様において、PCR法は、下記の温度設定を用いるPCR反応において、約65℃の平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチド10 nMおよび約50〜約55℃の平均融解温度を有する外部(outside)増幅プライマー400 nMを提供する工程を含む:95℃で最初の変性2分;続いて、95℃で5秒、67〜70℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;続いて、95℃で5秒、50〜55℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;および72℃で最終伸長10分。
【0061】
別の態様において、90秒アニーリング工程が、PCR反応のアセンブリ段階で提供され、その結果、PCR反応は以下を含む:95℃で最初の変性2分;続いて、95℃で5秒、67〜70℃で90秒、72℃で30秒を15サイクル;続いて、95℃で5秒、50〜55℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;および72℃で最終伸長10分。
【0062】
本方法は、長い遺伝子および短い遺伝子を含む所望の核酸分子または遺伝子ならびに遺伝子配列の部分をコードするヌクレオチド分子を合成するために使用され得る。本方法を使用して製造された核酸分子は、組み換えDNAの構築、特定の宿主における遺伝子発現増加のためのコドンの最適化、プロモーターまたは転写ターミネーターの突然変異、および細胞フリーまたはインビトロタンパク質合成のためのDNAの作製を含むがこれらに限定されない、様々な目的のために使用され得る。
【0063】
本方法によって合成された核酸分子は、合成された核酸分子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質を発現させるために使用され得る。例えば、本方法によって合成された核酸配列は、組み換えタンパク質発現、融合タンパク質の構築、およびインビトロ突然変異誘発のために使用され得る。タンパク質は、医学、医薬品、研究および産業を含む様々な分野において広範囲の価値のある適用を有する。インビトロタンパク質発現の標準方法は、当技術分野において公知である。タンパク質発現の一つの公知の方法は、例えば、組み換えタンパク質発現であり、これは、好適な宿主細胞中においてタンパク質発現を達成するための、合成された核酸配列を含有するプラスミドまたはウイルスベクターなどの発現ベクターの使用を含む。
【0064】
上述したように、遺伝子合成を達成するための最適条件は、異なるオリゴヌクレオチドについて異なる。アニーリング温度、オリゴヌクレオチドの濃度、およびPCRサイクル数などの因子は、PCR法の成功に影響し得、従って、条件を最適化するために、合成された産物を検出および定量化することが望ましい場合がある。特定のオリゴヌクレオチドセットを使用してのPCRベースの方法による遺伝子アセンブリの成功を促進する条件を正確に予測する手段は、現在までなかった。PCRベースの方法による遺伝子アセンブリの検証は、ゲル電気泳動を使用して最終PCR産物を視覚化することによって一般的に行われる。この方法を使用すると、遺伝子アセンブリの検証は、PCRの終了まで遅れ、各PCRサイクル後の遺伝子合成の効率は、定量的に測定され得ない。
【0065】
リアルタイムPCR(RT-PCR)は、公知の技術であり、これは、各PCRサイクル後にDNA増幅を定量化するための蛍光の使用を含み、従って、PCRの間のPCR産物の連続的なモニタリングを可能にする(28)。一般的に、RT-RCRについて、PCR反応は、PCR混合物への蛍光マーカーの添加を伴って行われる。各PCRサイクル後、混合物中の蛍光のレベルが測定され、生成された二本鎖DNA産物の量が定量化される。RT-PCRのために使用される蛍光マーカーは、当技術分野において公知であり、これらとしては、配列特異的RNAまたはDNA蛍光プローブおよび二本鎖DNA特異的色素が挙げられる(28)。RT-PCRは、例えば疾患診断において、テンプレートDNAからの遺伝子増幅をモニタリングするために一般的に使用される(7〜8)。しかし現在まで、RT-PCRは、遺伝子アセンブリにおいて使用されていなかった。
【0066】
本発明者らは、遺伝子アセンブリプロセスの間にRT-PCR法を使用することによって、アセンブリサイクルの数および長さを含む条件の最適化が可能となることを見出した。従って、遺伝子合成法においてリアルタイムPCR(RT-PCR)を使用することがさらに考えられる。
【0067】
従って、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてRT-PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む方法が、今回、提供される。蛍光プローブは、遺伝子アセンブリの間に検出される蛍光強度が、全長DNAテンプレート分子の鎖長、従って量に直線的に比例するように、選択され得る。
【0068】
この方法は、PCRベースの遺伝子合成法についての条件の最適化、所望の核酸分子の合成の検証、または合成された産物のキャラクタライゼーションを可能にする。さらに、RT-PCRの使用は、このような最適化、検証およびキャラクタライゼーションが、遺伝子合成の自動方法に組み込まれることを可能にする。
【0069】
従って、RT-PCR遺伝子アセンブリ反応の間に蛍光強度をモニタリングすることによって、各サイクル後のアセンブリされた全長DNAテンプレートの量を測定すること、ならびに変性、アニーリング、伸長の温度、反応サイクルの変性、アニーリング、伸長セグメントの長さ、および行われるサイクル数を調節する効果を見ることが、可能である。このようにして、アセンブリされるDNAテンプレートの最適量が決定され得る。
【0070】
RT-PCRは、特定の性質を有する蛍光マーカーを提供することによって、およびこのようなマーカーの濃度を最適化することによって、PCRベースの遺伝子アセンブリによって合成された産物を検出および定量化するために行われ得る。遺伝子合成におけるRT-PCRにおいて、短いおよび長い二本鎖DNA分子へ等しく結合する蛍光マーカーの使用は、全長のアセンブリされたDNAテンプレート分子の鎖長、従って量に直線的に比例する、遺伝子アセンブリの間に検出される蛍光強度を生じさせる。
【0071】
RT-PCRは、二本鎖DNA特異的色素SYBR Green Iを使用して一般的に行われる。しかし、この色素は、長いDNAフラグメントへ優先的に結合し(25、26)、短いDNA分子からより長いDNA分子へ再分布する傾向がある。PCRベースの遺伝子合成のアセンブリ工程の間、PCR混合物は、様々な鎖長の二本鎖DNA分子を含有する。従って、サーマルサイクリングの間、DNAのより短い断片へ結合されたSYBR Green I色素は、それらが合成されるにつれてより長いDNA分子へ移動し(27)、遺伝子アセンブリ法についての正確な結果を反映しない。従って、SYBR Green Iは、PCRベースの遺伝子合成法と組み合わせて使用される場合、RT-PCRについての適切な蛍光色素ではない。合成されるDNA分子の鎖長の増加にもかかわらず、SYBR Green Iを使用して検出される蛍光強度は、アセンブリ工程のPCRサイクルの間、比較的変化しないままである。従って、RT-PCRは、遺伝子アセンブリ技術と共には以前は使用されなかった。
【0072】
本発明者らは、RT-PCRについての好適な蛍光マーカーは、遺伝子アセンブリPCR法を最適化するためにRT-PCR定量化と遺伝子アセンブリ法とを合わせるように、有利には選択され得ることを見出した。遺伝子アセンブリの間にRT-PCRを行うために使用される蛍光マーカーは、二本鎖DNA次いで(then)一本鎖DNAについてより高い親和性を有するべきであり、サーマルサイクリングの間に短いDNA分子から長いDNA分子へ再分布しないべきである。
【0073】
遺伝子アセンブリにおいてRT-PCRを行うために使用される特定の蛍光色素としては、例えば、LCGreen I(24)が挙げられ得る。
【0074】
さらに、使用される蛍光マーカーの量は、従来のPCRと比較して、PCRベースの遺伝子合成法に存在する多い初期量のDNA分子を担うように最適化され得る。PCRベースの遺伝子合成に存在するDNA分子の初期量は、従来のPCR増幅法におけるものよりも、6桁を超えて、より多い場合がある。RT-PCRによって遺伝子合成を行うために使用される蛍光色素の量は、合成されたDNA分子の検出を可能にするように増やされ得る。例えば、遺伝子合成は、標準のPCR増幅法において通常提供される濃度の2倍で、LCGreen Iを含む、蛍光色素を提供することによって行われ得る。
【0075】
RT-PCRを使用して遺伝子合成のPCR遺伝子アセンブリ法を行うことによって、遺伝子合成を最適化するための方法が提供される。アセンブリおよび増幅工程の間のPCR産物の連続的なモニタリングは、特定のオリゴヌクレオチドセットについての遺伝子合成のための最適条件の決定を容易にする。例えば、RT-PCRを用いて行われる遺伝子アセンブリPCR法は、テンプレートアセンブリを完了するために必要とされる最適なサイクル数の決定を可能にし得、従って、偽産物(32)の生成を生じさせ得る不必要な追加のPCRサイクリングを減らようにPCR法を調整することを可能にし得る。別の例において、RT-PCRベースの遺伝子アセンブリ法は、アセンブリオリゴヌクレオチドの効率的なアセンブリについての最適なアニーリング温度を決定するために使用され得る。さらに、RT-PCR遺伝子アセンブリ法は、各PCRサイクル後の遺伝子合成産物の検証を容易にし、従って、PCRの完了後まで検証を遅らせる必要がない。
【0076】
さらに、RT-PCRを使用して遺伝子合成を行う場合、合成された産物は、DNA融解曲線分析によってキャラクタライズされ得る。DNA融解曲線分析は、RT-PCRおよびDNA融解シミュレーションソフトウェア(31、39)と組み合わせて、PCR産物の純度および量を評価するために使用され得る。DNA融解曲線分析を行う方法は、当技術分野において公知であり(25)、融解温度を測定するためにPCR産物を徐々に加熱しながら蛍光のレベルを検出することを一般的に含む。各二本鎖DNAはその独自の特有の融解温度を有するので、本方法を使用しての成功した遺伝子合成は、単一の鋭い融解ピークを有する産物を生じさせ、一方、不完全な合成は、ブロードな融解曲線をもたらすことが、当業者によって理解される。さらに、温度に関しての蛍光の負の導関数(negative derivative)における融解ピークの積分面積は、所望の全長産物の量を提供する(38)。
【0077】
RT-PCRは、遺伝子合成を検証し、合成された産物を定量化およびキャラクタライズするための、ゲル電気泳動を使用しての手動の視覚化の必要性を排除する。従って、遺伝子合成においてRT-PCRを使用することは、遺伝子合成を最適化し、合成された産物を定量化およびキャラクタライズするための、自動方法の使用を可能にする。例えば、遺伝子アセンブリ工程におけるサイクル数の最適化が自動化され得、その結果、所望の配列の完全な核酸分子のアセンブリを示す蛍光のレベルが検出されると、サーモサイクラーは、遺伝子合成の増幅工程へ自動的に切り替わる。特定の核酸分子の完全なアセンブリを示す蛍光のレベルは、RT-PCRを使用して予め測定され得る。別の例において、RT-PCRの使用によって容易にされた、融解曲線分析は、コンピュータープログラムなどの自動方法によって行われ得、従って、合成された産物の自動キャラクタライゼーションを可能にし、これは、例えばラブオンチップ法(米国仮出願第60/963,673号)を含む自動遺伝子合成のシステム中へ容易に組み込まれ得る。
【0078】
上述したように、RT-PCRは、本発明の単一反応混合物PCRベースの遺伝子合成法に適用され得る。さらに、本明細書に記載のRT-PCR法はまた、他のPCRベースの遺伝子合成法においても使用され得る。例えば、RT-PCRは、公知のワンステップおよびツーステップPCRベースの遺伝子合成法を最適化および自動化するために使用され得る。
【0079】
外部増幅プライマーがアセンブリオリゴヌクレオチドのセットの平均融解温度よりも低い平均融解温度を有する、上述のような増幅オリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットを組み合わせるキットおよびコマーシャルパッケージも考えられる。
【0080】
下記の非限定的な実施例によって、本方法をさらに例示する。
【実施例】
【0081】
材料および方法
遺伝子合成のためのオリゴヌクレオチドの設計
ヒトカルシウム結合タンパク質A4のプロモーターの遺伝子配列(S100A4、752 bp;chrl:1503312036-1503311284)(22)を、アセンブリPCRによる合成について選択した。アセンブリオリゴヌクレオチドを、カスタム開発されたプログラムによって導き、これは、先ず、マーカーによって所望の核酸配列をほぼ等しい鎖長のオリゴヌクレオチドへ分割し、塩およびオリゴヌクレオチド濃度で修正されたSanta Luciaの熱力学パラメータ(23)を用いて最近傍モデルを使用して重複領域間の融解温度の平均および偏差を計算した。次に、全部の重複する融解温度の偏差を最小限にするために、マーカー位置をシフトさせることによって、オリゴヌクレオチド鎖長を調節した。アセンブリオリゴヌクレオチドセットの概要を表1に示し、詳細な情報を表4に提供する。
【0082】
非競合的ワンステップリアルタイム遺伝子合成
20℃/sの温度変化を有するRocheのLightCycler 1.5リアルタイムサーマルサイクリング機を用いて行ったリアルタイムPCRを使用して、非競合的ワンステッププロセスを最適化した。1x PCRバッファー(Novagen)、1μlの0.25x〜5x SYBR Green I(1x=1/20,000希釈;Invitrogen)またはLCGreen I(Idaho Technology Inc.)、4 mMのMgSO4、1 mMの各々のdNTP(Stratagene)、500μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)、5〜80 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、60 nM〜1μMの外部増幅プライマー、および1 UのKOD Hot Start(Novagen)を含む反応混合物20μlを用いて、リアルタイム遺伝子合成を行った。PCRを以下の条件下で行った:95℃での最初の変性2分;95℃で5秒、58〜70℃で30秒、72℃で30秒を20サイクル;続いて、95℃で5秒、49℃で30秒、72℃で30秒を20サイクル;および72℃での最終伸長10分。脱塩されたオリゴヌクレオチドは、Research Biolabs(シンガポール)およびProligo(シンガポール)から購入し、さらなる精製は行わなかった。
【0083】
ワンステップおよびツーステップPCRベースの遺伝子合成
PCRによる従来の遺伝子合成を、PCRアセンブリおよび増幅を単一段階に組み合わせるワンステッププロセスとして、またはアセンブリおよび増幅について別個の段階を含むツーステッププロセスとして行った。全てのPCR反応を、アセンブリまたは増幅についてにかかわらず、非競合的ワンステップPCRにおけるのと同一のアセンブリオリゴヌクレオチドセットおよび外部増幅プライマーを使用して、市販のサーマルサイクラー(DNA Engine PTC-200、Bio-Rad)を用いて、標準の0.2-ml PCRチューブ中において実行した。1x PCRバッファー(Novagen)、4 mMのMgSO4、1 mMの各々のdNTP(Stratagene)、500μg/mlのBSA、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、400 nMの外部増幅プライマー、および1UのKOD Hot Start(Novagen)を含む反応混合物50μlを用いて、ワンステッププロセスを行った。ワンステップPCRを以下の条件下で行った:95℃での最初の変性2分;95℃で5秒、58℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル;および72℃での最終伸長10分。ツーステッププロセスのPCRプロトコルは、オリゴヌクレオチドの濃度およびアニーリング温度を除いては、ワンステッププロセスについてのものと本質的に同一であった。PCRアセンブリについては、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチドを使用し、外部増幅プライマーは使用しなかった。遺伝子増幅について、アセンブリされた産物2μlを、各々400 nMの濃度で外部増幅プライマーを含む増幅反応混合物25μl中に希釈し、49℃のアニーリング温度を使用した。3タイプの遺伝子合成のPCR条件を表2に要約する。いくつかの報告された最適な遺伝子合成条件を表3に示す。
【0084】
アガロースゲル電気泳動
合成された産物を、1.5%アガロースゲル(NuSieve(登録商標)GTG(登録商標)、Cambrex Corporation)によって分析し、臭化エチジウム(Bio-Rad Laboratories)またはSYBR Green(Invitrogen)で染色し、Typhoon 9410バリアブルイメージャー(Amersham Biosciences)を使用して視覚化した。ゲル電気泳動を、100 bpラダー(New England)およびDNAサンプル5μlを用いて、100 Vで45分間行った。
【0085】
結果
TDワンステップ遺伝子合成の性能
ゲル電気泳動(図2)によって示されるように、遺伝子合成の成功が、TDワンステッププロセスおよび従来のツーステッププロセスを使用して達成され、一方、明白な全長遺伝子産物は、従来のワンステップPCRプロセスにおいては得られなかった。最初の20サイクルについて67℃のアニーリング温度(Tah)(アセンブリオリゴヌクレオチドの平均Tm=66℃)、続いて別の20サイクルについて49℃のアニーリング温度(外部増幅プライマーの平均Tm=50.1℃)を用いて、TDワンステッププロセスを行った。連続的な蛍光モニタリングによって、遺伝子合成プロセスの効率が明らかとなった(図3)。PCR増幅の指数関数的性質と異なり、アセンブリ効率は、より恐らくは本質的に直線的であった。
【0086】
リアルタイム遺伝子合成を使用しての遺伝子合成の性能
2つの挿入蛍光色素(SYBR Green IおよびLCGreen I)を、リアルタイム遺伝子合成について調べた(図8)。LCGreen I(24)が、リアルタイム遺伝子合成の研究についてより適切であった。LCGreen Iは、リアルタイムPCRにおいて一般的に採用されているSYBR Green Iと同様の蛍光スペクトルを有し、大抵のリアルタイムサーマルサイクラーと適合性である。SYBR Green Iは、長いDNAフラグメントへ優先的に結合し(25、26)、サーマルサイクリングの間、短いDNA分子から長いDNA分子へ再分布する(27)。このことは、蛍光シグナルを分析することを困難にし、何故ならば、PCA混合物は、様々な鎖長のdsDNAを含有するためである。蛍光強度は、図8(a)に示されるように、PCR間、無変化のままである。対照的に、LCGreen Iの使用は、アセンブリ反応が進むにつれて、合成されたDNA分子の数の増加および鎖長の伸長を示す蛍光強度曲線を提供する(図8(b)を参照のこと)。
【0087】
PCA混合物中のDNA分子の初期量(約6 pmol;10 nM x 20μl x 30オリゴヌクレオチド)は、標準的なPCR増幅におけるそれ(<106コピーのテンプレートDNA)(28)よりも、>6桁、はるかに大きかった。リアルタイムPCR条件をこの因子について調節した。LCGreen Iの最適な濃度を研究し、標準PCRにおいて使用される濃度の2倍へ増やした(図8)。dNTP濃度を標準PCRについての各々0.2 mMから各々1 mMへ調節し、dNTPの枯渇を防止した。Mg2+とキレート化してポリメラーゼ活性に影響を与え得る(29、30)dNTPの濃度に基づいて、Mg2+イオン(MgSO4)濃度を経験的に最適化した(4 mM)(図9)。製造業者の推奨するMg2+イオン濃度は、各々0.2 mMのdNTPでの標準PCRについては1.5 mMであった。
【0088】
リアルタイム遺伝子合成の分析
機構的に、遺伝子合成は、PCRサイクル数での傾きの変化によって明らかにされたように、いくつかのフェーズで行われた(図4)。この現象は、10〜20 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド濃度で顕著であった。PCAの初期サイクルにおいて、対のオリゴヌクレオチド間の大抵のアニーリングは、伸長可能な二本鎖を形成し、これは、ポリメラーゼによる伸長を受け得た(フェーズ1;サイクル<7)。蛍光シグナルによって、各サイクルにつれてのDNA鎖長伸長の線形増加が明らかにされた。Wuら(16)およびLeeら(21)によって報告されたものとは対照的に、アセンブリ効率は、さらなるPCRサイクル(フェーズ2;サイクル7〜14)で増加した。本発明者らの仮説は、アセンブリプロセスは、全長フラグメントが現れるにつれて、全長テンプレート増幅の方向へ切り替わり、過剰な外部プライマーによって促進されるということであった。次いで、PCA反応は、第1プラトー(フェーズ3;サイクル15〜20)に達し、それによって、外部プライマープライミングが、上げられたアニーリング条件(Tah−Tm=15℃)によって制限された。サイクル番号21で、アニーリング温度を、プライマーのTmに一致するように49℃へ下げた(フェーズ4;サイクル21〜29)。指数関数的増幅が増加し、蛍光シグナルの急上昇を引き起こした。最後に、プロセスは、外部プライマーまたは非特異的産物アニーリングの枯渇に恐らく起因して、第2プラトーに達した(フェーズ5)。プラトー段階は、その低いアセンブリ効率に起因して低いオリゴヌクレオチド濃度(<7 nM)について遅延したかまたは全くなかった。
【0089】
>64 nMのアセンブリオリゴヌクレオチドでの遺伝子合成について、PCRプロセスは、15サイクル内にプラトーに達した。大抵の報告された遺伝子合成結果において観察されたように(9〜12、16〜19)、さらなるサイクルは、非特異的PCRを好み、ゲル電気泳動において偽バンドの発生および高分子量産物の形成をもたらす可能性が最も高い(図4b)。一貫したゲル結果およびリアルタイムPCR曲線は、最適なアセンブリオリゴヌクレオチド濃度は、TD遺伝子合成について10〜20 nMであることを示唆し、これは、ワンステップ(16、17)およびツーステップ(18)プロセスの両方のそれと一致した。
【0090】
アセンブリオリゴヌクレオチド濃度を10 nMに維持しながら、外部増幅プライマー濃度を60 nMから1μMまで変化させることによって、外部増幅プライマーの効果をさらに調べた。最も高い全長量が、400 nMの外部増幅プライマーで得られ(図5)、これは、ワンステップ(16)およびツーステップ(18)プロセスにおける観察と一致した。外部増幅プライマー濃度が16倍変化したとしても、蛍光増加の傾きによって示される、アセンブリ効率は、初期サイクル(<サイクル7)において無関係であった(図5a中の挿入図)。これは、TDプロセスの非干渉特徴を実証し、ここで、外部増幅プライマーは、アセンブリプロセスに介入しなかった。アセンブリ効率は、全長産物が現れるにつれて約サイクル8で、全長テンプレート増幅の方向へ逸脱し始めた。アセンブリ反応を支配しかつ遺伝子合成の成功に大きく影響を与えたアセンブリオリゴヌクレオチド濃度と異なり、外部増幅プライマー濃度は、あまり重要ではなかった。それは、後期増幅プロセスおよび所望のDNAの量を恐らく制御した。最適なPCRサイクルは、最初のアセンブリオリゴヌクレオチド濃度および標的遺伝子鎖長に依存した。これは、アセンブリオリゴヌクレオチド濃度についての実験によって、明確に実証された(図4)。アセンブリオリゴヌクレオチド濃度が20 nMから80 nMへ増加するにつれて、全長バンドは、徐々に消滅し、広がった。
【0091】
重複アセンブリは、並行プロセスであった。比較的少ないPCRサイクルが、アセンブリを完了するために必要であった。均一のオリゴヌクレオチド鎖長(n)および重複サイズ(s)から鎖長(L)のdsDNA分子を構築するために必要とされる理論的な最小サイクル数(x)は、以下によって与えられる:
2xn−(2x−1)s>L
【0092】
理論的には、6 PCAサイクルが、20ヌクレオチドのオーバーラップを有する40merオリゴヌクレオチドのプールからS100A4(752 bp)をアセンブリするために十分であった。過剰なサイクリングが遺伝子アセンブリのために必要であるかどうかを決定するために、前の実験で決定された最適条件を、6〜20の様々なPCAサイクル、続いての20増幅サイクルを用いて使用した。遺伝子合成はかなり効率的であった。実際に、全長アセンブリは、11 PCAサイクル以内で達成された(図6)。
【0093】
ゲル結果および蛍光シグナルの両方において視覚化されたように、遺伝子合成は、58℃〜70℃のアセンブリアニーリング温度(Tah)の変化に鈍感であった(図7)。蛍光強度曲線は、アセンブリフェーズ(最初の13サイクル)の間、アニーリング温度に無関係(indiscriminate)であり、最初のフェーズ後にのみ逸脱し始めた(図7a中の挿入図を参照のこと)。最初の13サイクルの間、蛍光強度が無関係であることは、外部増幅プライマーはアセンブリ反応に介入しなかったことを暗示した。外部増幅プライマーを50.9℃の平均Tmで設計し、これは、プライマーが、PCAプロセスの間、7.1〜19.9℃(Tah−Tm)のストリンジェントなアニーリングにあったことを意味した。これは、融解温度ウインドウ(プライマーおよびオリゴヌクレオチドのΔTm)が、7.1℃へ潜在的に下げられ得、TD遺伝子合成法の非競合的特徴を確実にし得ることを示唆した。興味深いことには、所望のDNAのより高い収率が、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均Tm(66℃)よりも高いストリンジェントなアニーリング温度(>67℃)で得られた。
【0094】
合成されたDNA分子の融解曲線分析
従来の遺伝子合成のワンステップおよびツーステップPCRベースのアセンブリ法においてRT-PCRを使用して合成された産物について、融解曲線分析を行った(図10)。成功した合成は、融解曲線において単一の鋭い融解ピークを生じさせ、これは、ツーステッププロセスについてのゲル電気泳動における明確なバンドに対応した。対照的に、ワンステッププロセスについて、融解曲線はブロードであり、このことは、不鮮明な(smeared)ゲル電気泳動において反映されるように、産物が中間の鎖長を有するDNA分子の混合物であったことを示している。ワンステップ産物の大部分は、約200〜300塩基対の鎖長を有する不完全な産物であった。
【0095】
本明細書において引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個々に示され参照によって組み入れられるかのように、参照によって本明細書に組み入れられる。刊行物の引用は、出願日前のその開示についてであり、本発明が先発明に基づいてこのような刊行物に先立つ権利が与えられないという承認として解釈されるべきではない。
【0096】
本明細書において与えられる濃度は、パーセンテージによって与えられる場合、重量/重量(w/w)、重量/体積(w/v)および体積/体積(v/v)パーセンテージを含む。
【0097】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ア(a)」、「アン(an)」および「ザ(the)」は、特に文脈において明確に規定されない限り、複数参照を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」およびこれらの用語の他の形態は、非限定的な包含的な意味で、即ち、他の要素または成分を除外せずに特定の記載の要素または成分を含むように意図される。特に規定されない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術における当業者に一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
【0098】
参考文献
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸分子を合成するためのPCR法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
デノボ遺伝子合成は、遺伝子を作製および改変するための強力な分子ツールである。デノボ遺伝子合成は、タンパク質工学(1、2)、人工遺伝子ネットワークの開発(3)、および合成ゲノムの作製(4〜6)を含む、広範囲の適用を有する。遺伝子クローニングなどの分子生物学技術は、所望の遺伝子を作製するためにPCR工程をしばしば含み、従ってDNAテンプレートを必要とする(12)。しかし、天然のテンプレートDNAは、関連する供給源生物へのアクセスの不足、限られた環境的もしくは考古学的サンプル、およびDNAサンプルの分解、または天然の供給源生物に関連する危険を含む多数の理由のために、必ずしも入手可能ではない(4)。実験室においてデノボで遺伝子を合成する能力を用いれば、科学者は、天然のDNAの入手可能性およびアクセス可能性に頼る必要はもはやない。
【0003】
デノボ遺伝子合成はまた、正確な遺伝子操作を可能にする。ヌクレオチド配列を指定することによって、科学者は、突然変異を導入すること、クローニング目的のために制限部位を組み入れること、または宿主細胞系の既知のコドン優先に合うようにコドン利用を変えることが容易にできる(9、13)。このような操作は、天然の遺伝子配列を含有するテンプレートを使用することと比較して、遺伝子機能、構造および発現の研究を容易にし、タンパク質の発現、局在化、検出および精製を改善し得る(10、16)。
【0004】
遺伝子の化学合成は、多数のオリゴヌクレオチドのアセンブリによって達成され得る。より長いDNA分子は、デノボポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(6、7)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)(4、8)に基づく合成法を含む様々な方法を使用して、オリゴヌクレオチドのプールをより長いDNA分子へアセンブリすることによって、構築され得る。様々な方法の中でも、PCRベースの方法が、最も効率的でありかつ最も費用対効果が高いようである(16)。
【0005】
DNAの長い分子を合成するための最も報告される方法は、遺伝子を構築するために重複オリゴヌクレオチドの使用に頼るPCRベースの方法である。長いDNA配列についてPCRプロセスを最適化しアセンブリの精度を高めようとして、様々な方法が提案されてきた。これらの方法としては、サーモダイナミカリー・バランスド・インサイド−アウト(thermodynamically balanced inside-out)(TBIO)法(9)、サクセッシブPCR(successive PCR)(10)、デュアル・アシンメトリカルPCR(dual asymmetrical PCR)(DA-PCR)(11)、オーバーラップ・エクステンションPCR(overlap extension PCR)(OE-PCR)(12、13)、PCRベースのツーステップDNA合成(10、14、15)、およびワンステップ遺伝子合成(16)が挙げられる。
【0006】
公知のPCRベースの遺伝子合成法は、所望の遺伝子産物よりも大きな分子量の偽産物をしばしば形成し、このため、合成される産物の純度は低下する(9〜12、16〜19)。さらに、成功した遺伝子合成は、公知のPCRベースの方法を利用して正確に検出され得ず、従って、所望のPCR産物の生成の検証は、典型的にゲル電気泳動によって確認される。ゲル電気泳動は、蛍光イメージャーの助けを借りてゲル電気泳動によって全長PCR産物を手動で視覚化することを必要とする。この方法は、追加の装置を必要とし、これは、長時間を要し、自動遺伝子合成の開発に有用なラブオンチップ法とうまく統合されない。さらに、ゲル電気泳動は、DNA増幅のエンドポイント分析を単に提供し得、即ち、それは、PCR法の終了時に存在するDNA産物を視覚化するために単に使用され得る。DNA産物のPCR増幅は、最初は確率論的であり、次いで指数関数的となり、最後に不活発となる(28)。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、化学的方法によって実際的に合成され得ないより長いDNA分子を含む、二本鎖DNAの合成のための単一反応方法を提供する。方法は、PCRアセンブリおよび増幅プロセスについて異なるオリゴヌクレオチドおよびアニーリング温度を用いての単一PCR反応を使用するPCRによって、重複オリゴヌクレオチドをアセンブリしアセンブリされた産物を増幅することにより、遺伝子または核酸分子を合成することを含む。
【0008】
所望の遺伝子または核酸分子を増幅するために使用される外部増幅プライマーよりも高い平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットを使用することによって、本方法は、従来の遺伝子合成のワンステップPCRベースのアセンブリ法の間に生じ得るPCRアセンブリプロセスとPCR増幅プロセスとの間の競合を減らし、従って、長い二本鎖遺伝子を合成するためのより効率的かつ正確な方法を提供することができる。
【0009】
さらに、本発明は、リアルタイムPCR(RT-PCR)によって全長核酸分子をアセンブリする方法を提供し、これは、所望の遺伝子産物の効率的かつ正確な合成のための反応条件の最適化を容易にし得、自動遺伝子合成のシステムへ容易に統合されることができる遺伝子産物の自動検証およびキャラクタライゼーションを可能にし得る。
【0010】
一局面において、以下を含む、核酸分子を合成する方法が提供される:第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程と;PCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【0011】
一態様において、第2アニーリング温度は、第2平均融解温度よりも低いかまたはこれに等しい。
【0012】
種々の態様において、第1平均融解温度は、第2平均融解温度よりも約5℃以上高い場合があり、または第2平均融解温度よりも約5℃〜約25℃高い場合がある。
【0013】
種々の態様において、PCR反応混合物は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約5 nM〜約80 nMの濃度でまたは約10 nM〜約60 nMの濃度で含み得る。
【0014】
種々の態様において、PCR反応混合物は、外部増幅プライマーのセットを約120 nM〜約1μMまたは約200 nM〜約800 nMの濃度で含み得る。
【0015】
種々の態様において、アセンブリ工程は、第1アニーリング温度を使用して約5〜約30 PCRサイクルを行う工程を含み得;増幅工程は、第2アニーリング温度を使用して約10〜約35 PCRサイクルを行う工程を含み得る。
【0016】
ある態様において、全長テンプレートは約750塩基対であり得、アセンブリ工程は、アニーリング段階について第1アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み得、増幅工程は、第2アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み得る。PCR反応混合物は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nMの濃度で含み得、外部増幅プライマーのセットを約400 nMの濃度で含み得る。
【0017】
種々の態様において、PCRはリアルタイムであり得、PCR反応混合物は蛍光プローブを含み得、ここで、蛍光強度の増加は、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する。蛍光プローブはLCGreen Iであり得る。方法は、検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含み得る。例えば、最適化工程は、(i)変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;(ii)アセンブリオリゴヌクレオチドのセットまたは外部増幅プライマーのセットの濃度;および(iii)PCRサイクル数のうちの1つまたは複数を調節する工程を含み得る。その方法は自動化され得る。
【0018】
別の局面において、オリゴヌクレオチドの隣接した対の間にギャップを有する長い二本鎖DNAを形成するようにアニールするアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、外部増幅プライマーのセットとを含むキットであって、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットが、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高い平均融解温度を有するキットが提供される。
【0019】
別の局面において、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてリアルタイムPCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む、核酸分子を合成する方法が提供される。
【0020】
上記のように、PCR反応混合物は蛍光プローブを含み得、ここで、蛍光強度の増加は、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する。蛍光プローブはLCGreen Iであり得る。方法は、検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含み得る。例えば、最適化工程は、(i)変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;(ii)アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度;および(iii)PCRサイクル数のうちの1つまたは複数を調節する工程を含み得る。その方法は自動化され得る。
【0021】
本発明の他の局面および特徴は、添付の図と共に、以下の本発明の具体的な態様の説明を検討すると、当業者に明らかとなる。
【0022】
図は、単なる例示として、本発明の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】オリゴヌクレオチド融解温度バリエーションを使用するPCRベースの遺伝子合成法の略図(「トップダウン(Top Down)ワンステップ遺伝子合成」)。トップダウン(TD)ワンステップ遺伝子合成と呼ばれる、本方法の一態様の略図は、アセンブリおよび増幅について設計された異なるアニーリング温度を用いる単一反応へPCRアセンブリおよび増幅を組み合わせる。この態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーは、PCRの間の潜在的な干渉を最小化するために>15℃の融解温度差を有するように設計される。
【図2】ワンステップ(アセンブリ/増幅を一緒に30サイクル)、TDワンステップ(40サイクル、20アセンブリに続いて20増幅)、およびツーステップ(PCA:30サイクル;PCR:30サイクル)遺伝子合成のアガロースゲル電気泳動結果。TDワンステッププロセスは、全て単一の反応混合物内で、67℃のアニーリング温度を用いて行われるPCRアセンブリ20サイクル、続いての49℃のアニーリング温度を用いてのPCR増幅20サイクルを含む。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの濃度は、それぞれ、10 nMおよび400 nMである。
【図3】1x LCGreen Iを用いてのリアルタイムPCR遺伝子合成の連続的な蛍光モニタリング。最初の20サイクルを67℃のアニーリング温度で行い、次の20サイクルを49℃のアニーリング温度で行う。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの濃度は、それぞれ、10 nMおよび400 nMである。
【図4】アセンブリオリゴヌクレオチド濃度は、遺伝子合成の成功において重要である。S100A4(752 bp)を、5 nM〜80 nMの範囲の様々なアセンブリオリゴヌクレオチド濃度、ならびに最初の20サイクルについて67℃のおよび次の20サイクルについて49℃のアニーリング温度を用いて合成した。(a)5 nM(◇)、7 nM(□)、10 nM(△)、13 nM(+)、17 nM(x)、20 nM(○)、40 nM(●)、64 nM(▲)、および80 nM(◆)のオリゴヌクレオチド濃度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。初期サイクルおよびサイクル21〜約33における蛍光強度の傾きは、それぞれ、アセンブリおよび増幅プロセスの効率を示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。
【図5】S100A4(752 bp)は、60 nM〜1μMの範囲の様々な外部増幅プライマー濃度で首尾よく合成される。(a)60 nM(◇)、120 nM(□)、200 nM(△)、300 nM(x)、400 nM(+)、および1μM(○)の外部プライマー濃度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。挿入図は、最初の20サイクルの蛍光シグナルを示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。S100A4の合成の成功は、所望の鎖長の鋭く狭いゲルバンドによって示される。
【図6】様々なアセンブリサイクル(6〜20サイクル)、続いて増幅のための別の20サイクルで、S100A4を合成する。アガロースゲル電気泳動結果は、全長アセンブリが11サイクル以内に達成されることを示している。
【図7】最初の20サイクルについて58℃〜70℃の範囲の様々なアセンブリアニーリング温度、続いての次の20サイクルについて49℃のアニーリング温度を用いて合成されたS100A4(752 bp)。(a)58℃(◇)、60℃(□)、62℃(△)、65℃(x)、67℃(+)、および70℃(○)のアニーリング温度についてのPCRサイクル数の関数としての蛍光。挿入図は、中間の15サイクル(13〜27)を示す。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。より高い合成収率が、ストリンジェントなアセンブリアニーリング温度(>67℃)で得られた。
【図8】S100A4のTDワンステップリアルタイム遺伝子合成についてのSYBR Green IおよびLCGreen Iの濃度効果。(a)0.25x〜5x SYBR Green I。1x LCGreen Iの蛍光強度もまた、比較のためにこのプロットに含まれている。SYBR Green Iの蛍光曲線は、PCRサイクル数に鈍感であり、遺伝子合成の間のDNA鎖長伸長を示さない。(b)0.25x〜5x LCGreen I。アセンブリおよび増幅についてのアニーリング温度は、それぞれ、58℃および49℃である。アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部プライマーの濃度は、それぞれ、64 nMおよび400 nMである。
【図9】MgSO4濃度は、遺伝子合成の成功について重要である。(a)MgSO4の様々な濃度についてのPCRサイクル数の関数としての1x LCGreen Iの蛍光:1.5 mM(◇)、2.5 mM(□)、3.0 mM(△)、3.5 mM(x)、4.0 mM(●)、および5.0 mM(○)。(b)対応のアガロースゲル電気泳動結果。アセンブリおよび増幅についてそれぞれ58℃および49℃のアニーリング温度、1 mMの各々のdNTP、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、ならびに400 nMの外部増幅プライマーを用いて、TDワンステップ遺伝子合成を行う。4 mMのMgSO4での遺伝子合成は、最高の収率の全長産物を提供する。
【図10】RT-PCRおよび融解ピーク分析を使用しての遺伝子合成の産物の分析。(a)ワンステップおよびツーステップ合成からのS100A4についてのアセンブリされた産物の融解ピーク分析;2つのレプリカを各オリゴヌクレオチドセットについて行った。アセンブリされた遺伝子の融解曲線分析を、72〜99℃について0.05℃/秒のランプでRocheのLightCycler 1.5リアルタイムサーマルサイクリング機を使用して得た。(b)アセンブリされた産物の対応のアガロースゲル電気泳動結果。
【図11】表1.アセンブリオリゴヌクレオチドのデータ/表2.ワンステップ、ツーステップ、およびTDワンステップ遺伝子合成についてのPCR条件/表3.いくつかの報告された最適な遺伝子合成条件。
【図12】表4.S100A4について設計されたオリゴヌクレオチドのセット。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
遺伝子合成のPCRベースのアセンブリ法において、短いオリゴヌクレオチドのプールが一緒に混合される。各オリゴヌクレオチドは、所望の核酸配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの配列の部分を含む。混合物中において、重複する相補配列を有するオリゴヌクレオチドがアニールし、二本鎖のアニールされたセグメントと二本鎖セグメントの一方または両方の末端に一本鎖のオーバーラップセグメントとを有するセグメントを形成する。二本鎖セグメントでの鎖の末端は、伸長についてのプライマーとして作用し、一方、一本鎖セグメントは、ポリメラーゼ反応についてのテンプレートとして作用し、伸長された二本鎖DNA分子が作製される。次いで、伸長されたDNA分子は、融解され、再びアニールされ、新たな二本鎖/一本鎖DNA分子が形成され、これらは、次いで、新たなプライマー/テンプレートとして作用し、これらは、他の伸長された相補的テンプレートDNAとアニールし得、次のPCRサイクルにおいてより長いDNA分子を作製し得る。このプロセスを繰り返すことによって、DNA鎖長は、徐々に増加し、所望の配列の全長テンプレートが徐々に作製される。アセンブリされた全長テンプレートDNAの量が、次いで、PCR増幅工程によって増幅される。このような遺伝子アセンブリPCR法は、単一セットのPCRサイクルを使用して一つの反応混合物中においてPCRアセンブリおよびPCR増幅を組み合わせるワンステッププロセスとして、またはアセンブリおよび増幅段階について別個の反応およびPCRサイクリングを必要とするツーステッププロセスとして、行われ得る。ワンステップ遺伝子合成プロセスは、たった1つのPCR反応を必要とする点で単純かつ迅速であるが、同一のPCR反応に外部増幅オリゴヌクレオチドおよびアセンブリオリゴヌクレオチドを一緒に含めることは、しばしば低収率をもたらし、時には所望の産物を生成しない場合がある。ツーステッププロセスは、所望の産物のより十分な収率を提供するが、このようなプロセスは、介在試薬添加工程および単離工程を伴う、2つの異なるPCR反応を必要とする。
【0025】
上述したように、前述の遺伝子合成のワンステップPCRベースのアセンブリ法において、外部増幅プライマーは、アセンブリオリゴヌクレオチドと一緒に、同一のPCR反応混合物中において混合される。PCRが進行するにつれて反応混合物中において一緒に生じるPCRアセンブリおよび増幅プロセスのバランスを取るために、アセンブリオリゴヌクレオチドおよび増幅プライマーは、一致する融解温度で一般的に設計される。結果として、過剰に存在する外部増幅プライマーは、アセンブリプロセスによって伸長されたが全長テンプレートではないオリゴヌクレオチドと優先的にアニールする傾向があり、潜在的に大部分の外部増幅プライマーが最初の遺伝子アセンブリプロセスに関与し、いったんアセンブリされた後に全長テンプレートを増幅するために利用可能な外部プライマーの供給が激減する。同様に、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の供給が激減し得、PCR反応は時期尚早に停止され得る(17、21)。さらに、通常の5'-3'方向へ単に伸長され得る内部アセンブリオリゴヌクレオチドは、増幅PCRの間、全長遺伝子産物の増幅に対して阻害的であり得る(13)。アセンブリオリゴヌクレオチドと外部増幅プライマーとの間のこの競合的効果は、全長遺伝子産物の収率を減らし、偽産物を形成させる。この競合的効果は、高いGC含有量または鎖長を有するDNAにとってより重大であり(9、10)、ツーステップPCRプロセスにおいては排除され、それによって、増幅およびアセンブリは別々に行われるが、新たなPCR混合物の余分の費用および労力ならびに介在試薬添加工程および単離工程を伴う。
【0026】
本方法は、融解温度バリエーションが、単一反応PCRベースの遺伝子合成法においてオリゴヌクレオチドアセンブリおよび全長テンプレート増幅のプロセスの効率を制御するために使用され得るという知見に一部分において基づいている。少なくとも2つの異なるアニーリング温度を含むPCR法において異なる平均融解温度を有するように設計されたアセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーを使用することは、アセンブリおよび増幅のプロセスを一時的に分離し、従って、単一反応遺伝子合成においてPCRアセンブリおよび増幅プロセス間の干渉を減らす。従って、本発明は、公知のワンステッププロセスの容易さおよび費用対効果と、公知のツーステッププロセスにおけるような分離したアセンブリおよび増幅の有効性とを組み合わせる、PCRベースの単一反応遺伝子合成法を提供する。
【0027】
本方法は、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットを含有する単一の反応混合物中においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う工程を含み、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、外部増幅プライマーのセットよりも高い平均融解温度を有する。PCR反応は少なくとも2つの段階で行われ、第1段階は、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高く、テンプレート核酸配列へのアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリを促進する、第1アニーリング温度を使用する。第2段階は、テンプレート核酸配列への外部増幅プライマーのアニーリングおよび全長テンプレート核酸配列の増幅を可能にする、第2アニーリング温度を使用する。
【0028】
アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーの戦略的設計と、外部増幅プライマーと比較してのアセンブリオリゴヌクレオチドについての適切に異なる平均融解温度の選択とによって、本方法に記載されるような遺伝子合成のPCRベースのアセンブリ法を行うことが可能である。
【0029】
従って、以下を含む、核酸分子を合成する方法が提供される:第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程;およびPCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【0030】
図1は、本発明の単一反応アセンブリおよび増幅PCR法のある態様の略図である。
【0031】
PCR法、条件および試薬は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号を参照のこと)。一般的に、PCR増幅は、増幅させようとする配列をコードするテンプレート核酸分子と、テンプレート上の特定の相補的な標的部位へアニールするように設計されたプライマーと、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)と、DNAポリメラーゼとを含むPCR反応混合物中において行われ、全ては、テンプレートへのプライマーのアニーリングを可能にし、DNAポリメラーゼがプライマーを伸長し新たなDNA産物を生じさせるに必要な条件および補因子またはイオンを提供する、好適なバッファー中に組み合わされている。
【0032】
簡潔に記載すると、PCRは、変性、アニーリングおよび伸長段階を可能にする、変動温度および所定の時間の少なくとも1サイクルへPCR反応混合物を供することを含む。一般的に、PCRサイクルの変性、アニーリングおよび伸長段階は、各々、異なる特定の温度で生じ、PCRサイクルの各工程について必要とされる温度を達成するためにサーマルサイクラーにおいてPCRを行うことは、当技術分野において公知である。変性は、二本鎖DNA(テンプレートまたは前のサイクルで形成された増幅産物)を融解するために最も高い温度で、例えば、Taqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼが使用される場合は95℃で、典型的に行われる。アニーリング段階は、オリゴヌクレオチドが相補的DNA鎖へ特異的にアニールすることを可能にする温度で行われ、典型的に、特異的なアニーリングを促進すると同時に非特異的な塩基対形成を減らすように選択される。選択される正確なアニーリング温度は、PCR反応混合物中に含まれるオリゴヌクレオチドの配列に依存することが、認識される。伸長段階は、DNAポリメラーゼに増幅産物を合成させるために、使用される特定のDNAポリメラーゼ酵素について好適な温度で行われる。
【0033】
遺伝子アセンブリを含むPCRベースの遺伝子合成法において、テンプレート核酸分子は、PCRの開始前にPCR混合物中に一般的に提供されない。むしろ、テンプレートは、重複アセンブリヌクレオチドのプールのアニーリング、およびDNAポリメラーゼによるオーバーラップの伸長によって、PCRアセンブリ段階の間に形成され、所望のテンプレートのより長いフラグメントが徐々に合成され、最終的に、全長の中断していないテンプレートが多数のPCRサイクル後に生成され、この数は、全長テンプレートの鎖長、およびテンプレートをアセンブリするために使用される重複オリゴヌクレオチドの数に、少なくとも一部分において依存する。
【0034】
従って、本方法においては、下記に説明されるように、PCR反応混合物は、PCRを行うために必要な成分(dNTP、DNAポリメラーゼおよびバッファーを含む)を含むこと、ならびにテンプレートおよびプライマーが、それぞれ、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットとして、最初の反応混合物中に供給されることが、認識される。本明細書に説明されるようなPCRによるアセンブリおよび増幅の各々は、変性、アニーリングおよび伸長工程を含むことも、理解される。
【0035】
理解されるとおり、用語「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも2つのヌクレオチドを含む一本鎖核酸分子を指す。PCRにおける使用についてのオリゴヌクレオチドの好適な鎖長は、公知であるか、または容易に決定され得る。種々の態様において、鎖長は、約10〜約100ヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、購入され得るか、または標準的な公知の手順によって化学的に合成され得ることが、当業者によって理解される。
【0036】
本発明のPCR法は、単一のPCR反応混合物中において2つのタイプのオリゴヌクレオチド:アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーを使用することを必要とする。
【0037】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、一緒にアニールされると所望の核酸配列または遺伝子の全長テンプレートを生成する重複オリゴヌクレオチドのグループであり、しかし、これは、テンプレートの交互の鎖上にテンプレートに沿って、あるオリゴヌクレオチドが停止する箇所と、同一の鎖についての配列をコードする次のオリゴヌクレオチドが開始する箇所との間に、中断またはギャップを有する。従って、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、二本鎖DNAテンプレートの両方の鎖の少なくとも鎖長をカバーするように一般的に設計され、その結果、アセンブリオリゴヌクレオチドの完全なセットの全てが一緒にアニールされると、アニールされた二本鎖の中断しているテンプレートが形成される。アセンブリオリゴヌクレオチドの各々は、所望の核酸配列または遺伝子の部分のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに対して相補的であり、各アセンブリオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの他のアセンブリオリゴヌクレオチドへ部分的にハイブリダイズし、その結果、重複アセンブリオリゴヌクレオチドがPCRのアセンブリ段階においてアセンブリされると、所望の核酸配列または遺伝子の全長テンプレートが作製される。
【0038】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、遺伝子の天然の配列を有するテンプレートを生成するように設計され得るか、または、最終テンプレート中へ突然変異もしくは制限部位を導入するように、またはテンプレートDNAが最終的に発現される生物のコドン利用に合うようにコドンを変化させるように設計され得る。同様に、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットは、新規のDNA配列、例えば、新規の融合タンパク質をコードするDNAを生成するように、またはテンプレートDNAへタグもしくはDNA標的配列またはタンパク質タグをコードする配列を挿入するように、設計され得る。
【0039】
外部増幅プライマーのセットは、いったんアセンブリオリゴヌクレオチドのセットからアセンブリされると全長のインタクトなテンプレートのいずれかの鎖へアニールするようにプライマーとして作用する、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドのグループである。外部増幅プライマーのセットは、本方法の増幅段階の間、全長テンプレートの全部または一部のPCR増幅を促進する。外部増幅プライマーのセットにおいて、少なくとも1つのプライマーは、二本鎖全長テンプレートのコード鎖(または上部鎖)の3'末端の領域に対して相補的であり、少なくとも1つの外部増幅プライマーは、二本鎖全長テンプレートの相補鎖(または下部鎖)の3'末端の領域に対して相補的である。PCRにおいて全長テンプレートへハイブリダイズされると、外部増幅プライマーは、所望の核酸配列または遺伝子の選択された部分または全部のPCR増幅を促進し得る。
【0040】
「平均融解温度」は、平均融解温度が適用される、オリゴヌクレオチドのセット内のオリゴヌクレオチド、アセンブリオリゴヌクレオチドまたは外部増幅プライマーのいずれか、の融解温度の相加平均を指す。従って、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度は、全てのアセンブリオリゴヌクレオチドの融解温度を平均することによって決定され、外部増幅プライマーの平均融解温度は、全ての外部増幅プライマーの融解温度を平均することによって決定される。当業者は、オリゴヌクレオチドの融解温度は、その同一のオリゴヌクレオチドの集団の50%が安定な二本鎖ヘリックスを形成し、残りの50%が一本鎖分子へ分離される温度であることを理解する。
【0041】
アセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーは、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度が、外部増幅プライマーの平均融解温度よりも高くなるように、かつ、平均融解温度の差が、単一反応PCRベースの遺伝子合成の間のPCRアセンブリとPCR増幅との競合を減らすに十分となるように、設計される。オリゴヌクレオチドの融解温度は、オリゴヌクレオチドの鎖長およびオリゴヌクレオチドの特定の核酸配列を含む様々な因子に依存し、従って、アセンブリオリゴヌクレオチドの各々の融解温度は異なり得、外部増幅プライマーの各々の融解温度は異なり得る。しかし、オリゴヌクレオチドは、アセンブリオリゴヌクレオチドの融解温度の偏差および外部増幅プライマーの融解温度の偏差を最小化するように設計され得る。
【0042】
所定のオリゴヌクレオチドについての融解温度は、市販のソフトウェアを含む、公知の式および公知のプログラムを使用して計算され得る。オリゴヌクレオチドを設計するためのコンピューターソフトウェアの使用は、当技術分野において公知である(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号、19を参照のこと)。オリゴヌクレオチドは、遺伝子発現の増加、ヘアピン形成の最小化および均一な融解温度について最適化されるように設計され得る(9、19)。例えば、各オリゴヌクレオチドの融解温度間で最小化された偏差を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットを設計するために、コンピュータープログラムが使用され得、これは、先ず、マーカーによって所望の核酸配列をほぼ等しい鎖長のオリゴヌクレオチドへ分割し、塩およびオリゴヌクレオチド濃度で修正されたSanta Luciaの熱力学パラメータ(23)を用いて最近傍モデルを使用して重複領域間の融解温度の平均および偏差を計算する。次いで、融解温度の偏差を最小限にするために、マーカー位置をシフトさせることによって、オリゴヌクレオチド鎖長を調節し得る。
【0043】
特定の理論に限定されないが、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、外部増幅プライマーの平均融解温度よりも高いアニーリング温度が使用される場合、外部増幅プライマーおよびアセンブリオリゴヌクレオチド間でのミスペアリングを防止すると同時に、効率的なテンプレートアセンブリを促進するようである。平均融解温度の差は、異なる平均融解温度を有することにおける利益を排除するほどに小さすぎないべきであり、これと同時に、差が大きすぎる場合、アセンブリ効率は低下し得る。プライマーを設計する際に、特異性を高めるために約50℃よりも高くなるように外部増幅プライマーの平均融解温度を設計することが、有利であり得る。
【0044】
ある態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、約5℃以上、約6℃以上、約7℃以上、約8℃以上、約9℃以上、約10℃以上、約11℃以上、約12℃以上、約13℃以上、約14℃以上、約15℃以上、約16℃以上、約17℃以上、約18℃以上、約19℃以上、約20℃以上、約21℃以上、約22℃以上、約23℃以上、約24℃以上、または約25℃以上である。特定の態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差は、約5℃〜約25℃、約7℃〜約19℃である。
【0045】
当業者は、本方法を使用しての成功した遺伝子合成のために必要とされるアセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度と外部増幅プライマーの平均融解温度との差の大きさは、アニーリング条件、例えば、PCR混合物のpHおよび塩濃度、ならびに特定のオリゴヌクレオチドに応じて変化することを認識する。例えば、非特異的オリゴヌクレオチドアニーリングの可能性を減らすストリンジェントなアニーリング条件は、融解温度のより小さな差を許容し得る。
【0046】
PCRは、上述のように、2段階で行われる。第1段階は、アセンブリ段階であり、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットのアセンブリを可能にするように、しかし存在し得る利用可能な相補的核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを減らすように設計されたアニーリング温度を使用する、変性、アニーリングおよび伸長の1つまたは複数のサイクルを含む。具体的には、アセンブリ段階において、アニーリング温度は、外部増幅プライマーの融解温度よりも高く、所望の核酸配列の全長テンプレートへのアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリを可能にすると同時に、この段階での外部増幅プライマーのアニーリングを減らす。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「アニーリング温度」は、オリゴヌクレオチドにDNAの相補鎖と特異的塩基対を形成させるためにPCRの間に使用される温度を指す。典型的に、オリゴヌクレオチドの特定のセットについてのアニーリング温度は、平均融解温度を僅かに下回る、例えば約1℃、約2℃、約3℃または約5℃下回るように選択されるが、それは、場合によっては、オリゴヌクレオチドの特定のセットについての平均融解温度に等しいかまたはこれを僅かに上回り得る。
【0048】
例えば、遺伝子合成のアセンブリ段階の間のアニーリング温度は、外部増幅プライマーセットの平均融解温度よりも、約5℃以上、約6℃以上、約7℃以上、約8℃以上、約9℃以上、約10℃以上、約11℃以上、約12℃以上、約13℃以上、約14℃以上、約15℃以上、約16℃以上、約17℃以上、約18℃以上、約19℃以上、約20℃以上、約21℃以上、約22℃以上、約23℃以上、約24℃以上、または約25℃以上高くなるように選択され得る。
【0049】
遺伝子合成のアセンブリ段階の間のアニーリング温度は、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度よりも僅かに高い場合がある。アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの平均融解温度よりも高くアセンブリアニーリング温度を設定することは、以下を含むいくつかの利点を提供し得る:(i)アセンブリ反応と増幅反応との潜在的な競合を減らすこと、(ii)切断されたオリゴヌクレオチドがアセンブリプロセスに関与する可能性および生じる誤差を減らすこと、(iii)二次構造を形成する可能性を減らすためにより選択的なアニーリング条件を提供すること、ならびに(iv)オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの特異化を増加させること;これらの全ては、特に高GC含有量を有する遺伝子についての、不完全な配列の発生を防止する。あるDNAポリメラーゼの伸長効率は72℃で最も高いこと、および本方法において72℃よりも高くアセンブリアニーリング温度を設定することは、使用されるDNAポリメラーゼに応じてアセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリ効率を減らし得ることが認識される。
【0050】
PCRの増幅段階は、アセンブリされた全長テンプレートへの外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする増幅アニーリング温度を使用して行われ、外部増幅プライマーがテンプレートのどこへアニールするように設計されるかに応じて、全長テンプレートの一部または全部の増幅が可能にされる。一般的に、増幅アニーリング温度は、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均融解温度よりも、外部増幅プライマーの平均融解温度により近い。例えば、増幅アニーリング温度は、外部増幅プライマーセットの平均融解温度未満であるかまたはこれに等しい場合がある。
【0051】
上述したように、PCR条件は、当技術分野において一般的に公知である。成功したPCRに必要とされる、例えば、オリゴヌクレオチド濃度、dNTP濃度、サイクルの各工程についての時間、PCRサイクル数、DNAポリメラーゼのタイプ、PCR混合物のpHおよび塩濃度を含む反応条件は、反応において使用される特定のオリゴヌクレオチドおよびポリメラーゼに応じて異なることが認識される(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号を参照のこと)。従って、本方法を使用して成功した遺伝子合成を達成するために必要とされる条件は、使用される特定のアセンブリオリゴヌクレオチドおよび外部増幅プライマーに応じて変化し、特定の反応について最適化される必要があり得ることが認識される。
【0052】
PCRに好適であり得るDNAポリメラーゼは、当技術分野において公知であり(2、16、41〜43)、これらとしては、例えば、Taq DNAポリメラーゼ、PFU DNAポリメラーゼ、ホットスタートDNAポリメラーゼおよびProofStart(商標)DNAポリメラーゼが挙げられる。特定の態様において、KODホットスタートDNAポリメラーゼ(2、16、41)が、本方法のPCRにおいて使用される。
【0053】
ある態様において、成功した遺伝子合成に必要とされるPCR反応混合物中のアセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度は、約5 nM〜約80 nM、約5 nM、約7 nM、約10 nM、約13 nM、約15 nM、約17 nM、約20 nM、約30 nM、約40 nM、約50 nM、約60 nMまたは約80 nMである。
【0054】
ある態様において、PCR反応混合物中の外部増幅プライマーのセットの濃度は、約120 nM〜約1μM、約120 nM、約300 nM、約400 nM、約500 nM、約750 nMまたは約1μMである。
【0055】
PCRのアセンブリ段階に必要とされるサイクル数は、オリゴヌクレオチドの数、アセンブリされるテンプレートの鎖長、およびプール内のオリゴヌクレオチドの均一性に少なくとも一部分において依存する。均一のオリゴヌクレオチド鎖長(n)および重複サイズ(s)から鎖長(L)のdsDNA分子を構築するために必要とされる理論的な最小サイクル数(x)は、以下によって与えられる:
2xn−(2x−1)s>L
【0056】
ある態様において、アセンブリオリゴヌクレオチドのアセンブリについてのPCRサイクル数は、約5〜約30サイクル、約5サイクル以上、約6サイクル以上、約10サイクル以上、約11サイクル以上、約15サイクル以上、約16サイクル以上、約20サイクル以上、約25サイクル以上、または約30サイクル以上である。
【0057】
ある態様において、全長テンプレートの増幅のための増幅段階についてのPCRサイクル数は、約10〜約35サイクル、約10サイクル以上、約15サイクル以上、約20サイクル以上、約25サイクル以上、約30サイクル以上、または約35サイクル以上である。
【0058】
必要に応じて、PCR法は、「ホットスタート」から始まり得、これは、ある試薬が反応混合物に与えられておらず、次いで、これは、短時間、高温、例えば95℃でインキュベートされ、その後、欠けている試薬が添加されることを意味する。ホットスタート法は、オリゴヌクレオチドサンプルがオリゴヌクレオチドの融解温度へまたはこれを超えて加熱された状態になる後まで、DNAポリメラーゼ活性を制限することによって、PCRの初期セットアップ段階の間の非特異的増幅を減らすために使用される。
【0059】
同様に、必要に応じて、PCR法は、72℃での最終伸長インキュベーションで終了し得る(例えば米国特許出願公開第2008/0182296号を参照のこと)。
【0060】
本発明の一態様において、PCR法は、下記の温度設定を用いるPCR反応において、約65℃の平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチド10 nMおよび約50〜約55℃の平均融解温度を有する外部(outside)増幅プライマー400 nMを提供する工程を含む:95℃で最初の変性2分;続いて、95℃で5秒、67〜70℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;続いて、95℃で5秒、50〜55℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;および72℃で最終伸長10分。
【0061】
別の態様において、90秒アニーリング工程が、PCR反応のアセンブリ段階で提供され、その結果、PCR反応は以下を含む:95℃で最初の変性2分;続いて、95℃で5秒、67〜70℃で90秒、72℃で30秒を15サイクル;続いて、95℃で5秒、50〜55℃で30秒、72℃で30秒を15サイクル;および72℃で最終伸長10分。
【0062】
本方法は、長い遺伝子および短い遺伝子を含む所望の核酸分子または遺伝子ならびに遺伝子配列の部分をコードするヌクレオチド分子を合成するために使用され得る。本方法を使用して製造された核酸分子は、組み換えDNAの構築、特定の宿主における遺伝子発現増加のためのコドンの最適化、プロモーターまたは転写ターミネーターの突然変異、および細胞フリーまたはインビトロタンパク質合成のためのDNAの作製を含むがこれらに限定されない、様々な目的のために使用され得る。
【0063】
本方法によって合成された核酸分子は、合成された核酸分子によってコードされるポリペプチドまたはタンパク質を発現させるために使用され得る。例えば、本方法によって合成された核酸配列は、組み換えタンパク質発現、融合タンパク質の構築、およびインビトロ突然変異誘発のために使用され得る。タンパク質は、医学、医薬品、研究および産業を含む様々な分野において広範囲の価値のある適用を有する。インビトロタンパク質発現の標準方法は、当技術分野において公知である。タンパク質発現の一つの公知の方法は、例えば、組み換えタンパク質発現であり、これは、好適な宿主細胞中においてタンパク質発現を達成するための、合成された核酸配列を含有するプラスミドまたはウイルスベクターなどの発現ベクターの使用を含む。
【0064】
上述したように、遺伝子合成を達成するための最適条件は、異なるオリゴヌクレオチドについて異なる。アニーリング温度、オリゴヌクレオチドの濃度、およびPCRサイクル数などの因子は、PCR法の成功に影響し得、従って、条件を最適化するために、合成された産物を検出および定量化することが望ましい場合がある。特定のオリゴヌクレオチドセットを使用してのPCRベースの方法による遺伝子アセンブリの成功を促進する条件を正確に予測する手段は、現在までなかった。PCRベースの方法による遺伝子アセンブリの検証は、ゲル電気泳動を使用して最終PCR産物を視覚化することによって一般的に行われる。この方法を使用すると、遺伝子アセンブリの検証は、PCRの終了まで遅れ、各PCRサイクル後の遺伝子合成の効率は、定量的に測定され得ない。
【0065】
リアルタイムPCR(RT-PCR)は、公知の技術であり、これは、各PCRサイクル後にDNA増幅を定量化するための蛍光の使用を含み、従って、PCRの間のPCR産物の連続的なモニタリングを可能にする(28)。一般的に、RT-RCRについて、PCR反応は、PCR混合物への蛍光マーカーの添加を伴って行われる。各PCRサイクル後、混合物中の蛍光のレベルが測定され、生成された二本鎖DNA産物の量が定量化される。RT-PCRのために使用される蛍光マーカーは、当技術分野において公知であり、これらとしては、配列特異的RNAまたはDNA蛍光プローブおよび二本鎖DNA特異的色素が挙げられる(28)。RT-PCRは、例えば疾患診断において、テンプレートDNAからの遺伝子増幅をモニタリングするために一般的に使用される(7〜8)。しかし現在まで、RT-PCRは、遺伝子アセンブリにおいて使用されていなかった。
【0066】
本発明者らは、遺伝子アセンブリプロセスの間にRT-PCR法を使用することによって、アセンブリサイクルの数および長さを含む条件の最適化が可能となることを見出した。従って、遺伝子合成法においてリアルタイムPCR(RT-PCR)を使用することがさらに考えられる。
【0067】
従って、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてRT-PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む方法が、今回、提供される。蛍光プローブは、遺伝子アセンブリの間に検出される蛍光強度が、全長DNAテンプレート分子の鎖長、従って量に直線的に比例するように、選択され得る。
【0068】
この方法は、PCRベースの遺伝子合成法についての条件の最適化、所望の核酸分子の合成の検証、または合成された産物のキャラクタライゼーションを可能にする。さらに、RT-PCRの使用は、このような最適化、検証およびキャラクタライゼーションが、遺伝子合成の自動方法に組み込まれることを可能にする。
【0069】
従って、RT-PCR遺伝子アセンブリ反応の間に蛍光強度をモニタリングすることによって、各サイクル後のアセンブリされた全長DNAテンプレートの量を測定すること、ならびに変性、アニーリング、伸長の温度、反応サイクルの変性、アニーリング、伸長セグメントの長さ、および行われるサイクル数を調節する効果を見ることが、可能である。このようにして、アセンブリされるDNAテンプレートの最適量が決定され得る。
【0070】
RT-PCRは、特定の性質を有する蛍光マーカーを提供することによって、およびこのようなマーカーの濃度を最適化することによって、PCRベースの遺伝子アセンブリによって合成された産物を検出および定量化するために行われ得る。遺伝子合成におけるRT-PCRにおいて、短いおよび長い二本鎖DNA分子へ等しく結合する蛍光マーカーの使用は、全長のアセンブリされたDNAテンプレート分子の鎖長、従って量に直線的に比例する、遺伝子アセンブリの間に検出される蛍光強度を生じさせる。
【0071】
RT-PCRは、二本鎖DNA特異的色素SYBR Green Iを使用して一般的に行われる。しかし、この色素は、長いDNAフラグメントへ優先的に結合し(25、26)、短いDNA分子からより長いDNA分子へ再分布する傾向がある。PCRベースの遺伝子合成のアセンブリ工程の間、PCR混合物は、様々な鎖長の二本鎖DNA分子を含有する。従って、サーマルサイクリングの間、DNAのより短い断片へ結合されたSYBR Green I色素は、それらが合成されるにつれてより長いDNA分子へ移動し(27)、遺伝子アセンブリ法についての正確な結果を反映しない。従って、SYBR Green Iは、PCRベースの遺伝子合成法と組み合わせて使用される場合、RT-PCRについての適切な蛍光色素ではない。合成されるDNA分子の鎖長の増加にもかかわらず、SYBR Green Iを使用して検出される蛍光強度は、アセンブリ工程のPCRサイクルの間、比較的変化しないままである。従って、RT-PCRは、遺伝子アセンブリ技術と共には以前は使用されなかった。
【0072】
本発明者らは、RT-PCRについての好適な蛍光マーカーは、遺伝子アセンブリPCR法を最適化するためにRT-PCR定量化と遺伝子アセンブリ法とを合わせるように、有利には選択され得ることを見出した。遺伝子アセンブリの間にRT-PCRを行うために使用される蛍光マーカーは、二本鎖DNA次いで(then)一本鎖DNAについてより高い親和性を有するべきであり、サーマルサイクリングの間に短いDNA分子から長いDNA分子へ再分布しないべきである。
【0073】
遺伝子アセンブリにおいてRT-PCRを行うために使用される特定の蛍光色素としては、例えば、LCGreen I(24)が挙げられ得る。
【0074】
さらに、使用される蛍光マーカーの量は、従来のPCRと比較して、PCRベースの遺伝子合成法に存在する多い初期量のDNA分子を担うように最適化され得る。PCRベースの遺伝子合成に存在するDNA分子の初期量は、従来のPCR増幅法におけるものよりも、6桁を超えて、より多い場合がある。RT-PCRによって遺伝子合成を行うために使用される蛍光色素の量は、合成されたDNA分子の検出を可能にするように増やされ得る。例えば、遺伝子合成は、標準のPCR増幅法において通常提供される濃度の2倍で、LCGreen Iを含む、蛍光色素を提供することによって行われ得る。
【0075】
RT-PCRを使用して遺伝子合成のPCR遺伝子アセンブリ法を行うことによって、遺伝子合成を最適化するための方法が提供される。アセンブリおよび増幅工程の間のPCR産物の連続的なモニタリングは、特定のオリゴヌクレオチドセットについての遺伝子合成のための最適条件の決定を容易にする。例えば、RT-PCRを用いて行われる遺伝子アセンブリPCR法は、テンプレートアセンブリを完了するために必要とされる最適なサイクル数の決定を可能にし得、従って、偽産物(32)の生成を生じさせ得る不必要な追加のPCRサイクリングを減らようにPCR法を調整することを可能にし得る。別の例において、RT-PCRベースの遺伝子アセンブリ法は、アセンブリオリゴヌクレオチドの効率的なアセンブリについての最適なアニーリング温度を決定するために使用され得る。さらに、RT-PCR遺伝子アセンブリ法は、各PCRサイクル後の遺伝子合成産物の検証を容易にし、従って、PCRの完了後まで検証を遅らせる必要がない。
【0076】
さらに、RT-PCRを使用して遺伝子合成を行う場合、合成された産物は、DNA融解曲線分析によってキャラクタライズされ得る。DNA融解曲線分析は、RT-PCRおよびDNA融解シミュレーションソフトウェア(31、39)と組み合わせて、PCR産物の純度および量を評価するために使用され得る。DNA融解曲線分析を行う方法は、当技術分野において公知であり(25)、融解温度を測定するためにPCR産物を徐々に加熱しながら蛍光のレベルを検出することを一般的に含む。各二本鎖DNAはその独自の特有の融解温度を有するので、本方法を使用しての成功した遺伝子合成は、単一の鋭い融解ピークを有する産物を生じさせ、一方、不完全な合成は、ブロードな融解曲線をもたらすことが、当業者によって理解される。さらに、温度に関しての蛍光の負の導関数(negative derivative)における融解ピークの積分面積は、所望の全長産物の量を提供する(38)。
【0077】
RT-PCRは、遺伝子合成を検証し、合成された産物を定量化およびキャラクタライズするための、ゲル電気泳動を使用しての手動の視覚化の必要性を排除する。従って、遺伝子合成においてRT-PCRを使用することは、遺伝子合成を最適化し、合成された産物を定量化およびキャラクタライズするための、自動方法の使用を可能にする。例えば、遺伝子アセンブリ工程におけるサイクル数の最適化が自動化され得、その結果、所望の配列の完全な核酸分子のアセンブリを示す蛍光のレベルが検出されると、サーモサイクラーは、遺伝子合成の増幅工程へ自動的に切り替わる。特定の核酸分子の完全なアセンブリを示す蛍光のレベルは、RT-PCRを使用して予め測定され得る。別の例において、RT-PCRの使用によって容易にされた、融解曲線分析は、コンピュータープログラムなどの自動方法によって行われ得、従って、合成された産物の自動キャラクタライゼーションを可能にし、これは、例えばラブオンチップ法(米国仮出願第60/963,673号)を含む自動遺伝子合成のシステム中へ容易に組み込まれ得る。
【0078】
上述したように、RT-PCRは、本発明の単一反応混合物PCRベースの遺伝子合成法に適用され得る。さらに、本明細書に記載のRT-PCR法はまた、他のPCRベースの遺伝子合成法においても使用され得る。例えば、RT-PCRは、公知のワンステップおよびツーステップPCRベースの遺伝子合成法を最適化および自動化するために使用され得る。
【0079】
外部増幅プライマーがアセンブリオリゴヌクレオチドのセットの平均融解温度よりも低い平均融解温度を有する、上述のような増幅オリゴヌクレオチドのセットおよび外部増幅プライマーのセットを組み合わせるキットおよびコマーシャルパッケージも考えられる。
【0080】
下記の非限定的な実施例によって、本方法をさらに例示する。
【実施例】
【0081】
材料および方法
遺伝子合成のためのオリゴヌクレオチドの設計
ヒトカルシウム結合タンパク質A4のプロモーターの遺伝子配列(S100A4、752 bp;chrl:1503312036-1503311284)(22)を、アセンブリPCRによる合成について選択した。アセンブリオリゴヌクレオチドを、カスタム開発されたプログラムによって導き、これは、先ず、マーカーによって所望の核酸配列をほぼ等しい鎖長のオリゴヌクレオチドへ分割し、塩およびオリゴヌクレオチド濃度で修正されたSanta Luciaの熱力学パラメータ(23)を用いて最近傍モデルを使用して重複領域間の融解温度の平均および偏差を計算した。次に、全部の重複する融解温度の偏差を最小限にするために、マーカー位置をシフトさせることによって、オリゴヌクレオチド鎖長を調節した。アセンブリオリゴヌクレオチドセットの概要を表1に示し、詳細な情報を表4に提供する。
【0082】
非競合的ワンステップリアルタイム遺伝子合成
20℃/sの温度変化を有するRocheのLightCycler 1.5リアルタイムサーマルサイクリング機を用いて行ったリアルタイムPCRを使用して、非競合的ワンステッププロセスを最適化した。1x PCRバッファー(Novagen)、1μlの0.25x〜5x SYBR Green I(1x=1/20,000希釈;Invitrogen)またはLCGreen I(Idaho Technology Inc.)、4 mMのMgSO4、1 mMの各々のdNTP(Stratagene)、500μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)、5〜80 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、60 nM〜1μMの外部増幅プライマー、および1 UのKOD Hot Start(Novagen)を含む反応混合物20μlを用いて、リアルタイム遺伝子合成を行った。PCRを以下の条件下で行った:95℃での最初の変性2分;95℃で5秒、58〜70℃で30秒、72℃で30秒を20サイクル;続いて、95℃で5秒、49℃で30秒、72℃で30秒を20サイクル;および72℃での最終伸長10分。脱塩されたオリゴヌクレオチドは、Research Biolabs(シンガポール)およびProligo(シンガポール)から購入し、さらなる精製は行わなかった。
【0083】
ワンステップおよびツーステップPCRベースの遺伝子合成
PCRによる従来の遺伝子合成を、PCRアセンブリおよび増幅を単一段階に組み合わせるワンステッププロセスとして、またはアセンブリおよび増幅について別個の段階を含むツーステッププロセスとして行った。全てのPCR反応を、アセンブリまたは増幅についてにかかわらず、非競合的ワンステップPCRにおけるのと同一のアセンブリオリゴヌクレオチドセットおよび外部増幅プライマーを使用して、市販のサーマルサイクラー(DNA Engine PTC-200、Bio-Rad)を用いて、標準の0.2-ml PCRチューブ中において実行した。1x PCRバッファー(Novagen)、4 mMのMgSO4、1 mMの各々のdNTP(Stratagene)、500μg/mlのBSA、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド、400 nMの外部増幅プライマー、および1UのKOD Hot Start(Novagen)を含む反応混合物50μlを用いて、ワンステッププロセスを行った。ワンステップPCRを以下の条件下で行った:95℃での最初の変性2分;95℃で5秒、58℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル;および72℃での最終伸長10分。ツーステッププロセスのPCRプロトコルは、オリゴヌクレオチドの濃度およびアニーリング温度を除いては、ワンステッププロセスについてのものと本質的に同一であった。PCRアセンブリについては、10 nMのアセンブリオリゴヌクレオチドを使用し、外部増幅プライマーは使用しなかった。遺伝子増幅について、アセンブリされた産物2μlを、各々400 nMの濃度で外部増幅プライマーを含む増幅反応混合物25μl中に希釈し、49℃のアニーリング温度を使用した。3タイプの遺伝子合成のPCR条件を表2に要約する。いくつかの報告された最適な遺伝子合成条件を表3に示す。
【0084】
アガロースゲル電気泳動
合成された産物を、1.5%アガロースゲル(NuSieve(登録商標)GTG(登録商標)、Cambrex Corporation)によって分析し、臭化エチジウム(Bio-Rad Laboratories)またはSYBR Green(Invitrogen)で染色し、Typhoon 9410バリアブルイメージャー(Amersham Biosciences)を使用して視覚化した。ゲル電気泳動を、100 bpラダー(New England)およびDNAサンプル5μlを用いて、100 Vで45分間行った。
【0085】
結果
TDワンステップ遺伝子合成の性能
ゲル電気泳動(図2)によって示されるように、遺伝子合成の成功が、TDワンステッププロセスおよび従来のツーステッププロセスを使用して達成され、一方、明白な全長遺伝子産物は、従来のワンステップPCRプロセスにおいては得られなかった。最初の20サイクルについて67℃のアニーリング温度(Tah)(アセンブリオリゴヌクレオチドの平均Tm=66℃)、続いて別の20サイクルについて49℃のアニーリング温度(外部増幅プライマーの平均Tm=50.1℃)を用いて、TDワンステッププロセスを行った。連続的な蛍光モニタリングによって、遺伝子合成プロセスの効率が明らかとなった(図3)。PCR増幅の指数関数的性質と異なり、アセンブリ効率は、より恐らくは本質的に直線的であった。
【0086】
リアルタイム遺伝子合成を使用しての遺伝子合成の性能
2つの挿入蛍光色素(SYBR Green IおよびLCGreen I)を、リアルタイム遺伝子合成について調べた(図8)。LCGreen I(24)が、リアルタイム遺伝子合成の研究についてより適切であった。LCGreen Iは、リアルタイムPCRにおいて一般的に採用されているSYBR Green Iと同様の蛍光スペクトルを有し、大抵のリアルタイムサーマルサイクラーと適合性である。SYBR Green Iは、長いDNAフラグメントへ優先的に結合し(25、26)、サーマルサイクリングの間、短いDNA分子から長いDNA分子へ再分布する(27)。このことは、蛍光シグナルを分析することを困難にし、何故ならば、PCA混合物は、様々な鎖長のdsDNAを含有するためである。蛍光強度は、図8(a)に示されるように、PCR間、無変化のままである。対照的に、LCGreen Iの使用は、アセンブリ反応が進むにつれて、合成されたDNA分子の数の増加および鎖長の伸長を示す蛍光強度曲線を提供する(図8(b)を参照のこと)。
【0087】
PCA混合物中のDNA分子の初期量(約6 pmol;10 nM x 20μl x 30オリゴヌクレオチド)は、標準的なPCR増幅におけるそれ(<106コピーのテンプレートDNA)(28)よりも、>6桁、はるかに大きかった。リアルタイムPCR条件をこの因子について調節した。LCGreen Iの最適な濃度を研究し、標準PCRにおいて使用される濃度の2倍へ増やした(図8)。dNTP濃度を標準PCRについての各々0.2 mMから各々1 mMへ調節し、dNTPの枯渇を防止した。Mg2+とキレート化してポリメラーゼ活性に影響を与え得る(29、30)dNTPの濃度に基づいて、Mg2+イオン(MgSO4)濃度を経験的に最適化した(4 mM)(図9)。製造業者の推奨するMg2+イオン濃度は、各々0.2 mMのdNTPでの標準PCRについては1.5 mMであった。
【0088】
リアルタイム遺伝子合成の分析
機構的に、遺伝子合成は、PCRサイクル数での傾きの変化によって明らかにされたように、いくつかのフェーズで行われた(図4)。この現象は、10〜20 nMのアセンブリオリゴヌクレオチド濃度で顕著であった。PCAの初期サイクルにおいて、対のオリゴヌクレオチド間の大抵のアニーリングは、伸長可能な二本鎖を形成し、これは、ポリメラーゼによる伸長を受け得た(フェーズ1;サイクル<7)。蛍光シグナルによって、各サイクルにつれてのDNA鎖長伸長の線形増加が明らかにされた。Wuら(16)およびLeeら(21)によって報告されたものとは対照的に、アセンブリ効率は、さらなるPCRサイクル(フェーズ2;サイクル7〜14)で増加した。本発明者らの仮説は、アセンブリプロセスは、全長フラグメントが現れるにつれて、全長テンプレート増幅の方向へ切り替わり、過剰な外部プライマーによって促進されるということであった。次いで、PCA反応は、第1プラトー(フェーズ3;サイクル15〜20)に達し、それによって、外部プライマープライミングが、上げられたアニーリング条件(Tah−Tm=15℃)によって制限された。サイクル番号21で、アニーリング温度を、プライマーのTmに一致するように49℃へ下げた(フェーズ4;サイクル21〜29)。指数関数的増幅が増加し、蛍光シグナルの急上昇を引き起こした。最後に、プロセスは、外部プライマーまたは非特異的産物アニーリングの枯渇に恐らく起因して、第2プラトーに達した(フェーズ5)。プラトー段階は、その低いアセンブリ効率に起因して低いオリゴヌクレオチド濃度(<7 nM)について遅延したかまたは全くなかった。
【0089】
>64 nMのアセンブリオリゴヌクレオチドでの遺伝子合成について、PCRプロセスは、15サイクル内にプラトーに達した。大抵の報告された遺伝子合成結果において観察されたように(9〜12、16〜19)、さらなるサイクルは、非特異的PCRを好み、ゲル電気泳動において偽バンドの発生および高分子量産物の形成をもたらす可能性が最も高い(図4b)。一貫したゲル結果およびリアルタイムPCR曲線は、最適なアセンブリオリゴヌクレオチド濃度は、TD遺伝子合成について10〜20 nMであることを示唆し、これは、ワンステップ(16、17)およびツーステップ(18)プロセスの両方のそれと一致した。
【0090】
アセンブリオリゴヌクレオチド濃度を10 nMに維持しながら、外部増幅プライマー濃度を60 nMから1μMまで変化させることによって、外部増幅プライマーの効果をさらに調べた。最も高い全長量が、400 nMの外部増幅プライマーで得られ(図5)、これは、ワンステップ(16)およびツーステップ(18)プロセスにおける観察と一致した。外部増幅プライマー濃度が16倍変化したとしても、蛍光増加の傾きによって示される、アセンブリ効率は、初期サイクル(<サイクル7)において無関係であった(図5a中の挿入図)。これは、TDプロセスの非干渉特徴を実証し、ここで、外部増幅プライマーは、アセンブリプロセスに介入しなかった。アセンブリ効率は、全長産物が現れるにつれて約サイクル8で、全長テンプレート増幅の方向へ逸脱し始めた。アセンブリ反応を支配しかつ遺伝子合成の成功に大きく影響を与えたアセンブリオリゴヌクレオチド濃度と異なり、外部増幅プライマー濃度は、あまり重要ではなかった。それは、後期増幅プロセスおよび所望のDNAの量を恐らく制御した。最適なPCRサイクルは、最初のアセンブリオリゴヌクレオチド濃度および標的遺伝子鎖長に依存した。これは、アセンブリオリゴヌクレオチド濃度についての実験によって、明確に実証された(図4)。アセンブリオリゴヌクレオチド濃度が20 nMから80 nMへ増加するにつれて、全長バンドは、徐々に消滅し、広がった。
【0091】
重複アセンブリは、並行プロセスであった。比較的少ないPCRサイクルが、アセンブリを完了するために必要であった。均一のオリゴヌクレオチド鎖長(n)および重複サイズ(s)から鎖長(L)のdsDNA分子を構築するために必要とされる理論的な最小サイクル数(x)は、以下によって与えられる:
2xn−(2x−1)s>L
【0092】
理論的には、6 PCAサイクルが、20ヌクレオチドのオーバーラップを有する40merオリゴヌクレオチドのプールからS100A4(752 bp)をアセンブリするために十分であった。過剰なサイクリングが遺伝子アセンブリのために必要であるかどうかを決定するために、前の実験で決定された最適条件を、6〜20の様々なPCAサイクル、続いての20増幅サイクルを用いて使用した。遺伝子合成はかなり効率的であった。実際に、全長アセンブリは、11 PCAサイクル以内で達成された(図6)。
【0093】
ゲル結果および蛍光シグナルの両方において視覚化されたように、遺伝子合成は、58℃〜70℃のアセンブリアニーリング温度(Tah)の変化に鈍感であった(図7)。蛍光強度曲線は、アセンブリフェーズ(最初の13サイクル)の間、アニーリング温度に無関係(indiscriminate)であり、最初のフェーズ後にのみ逸脱し始めた(図7a中の挿入図を参照のこと)。最初の13サイクルの間、蛍光強度が無関係であることは、外部増幅プライマーはアセンブリ反応に介入しなかったことを暗示した。外部増幅プライマーを50.9℃の平均Tmで設計し、これは、プライマーが、PCAプロセスの間、7.1〜19.9℃(Tah−Tm)のストリンジェントなアニーリングにあったことを意味した。これは、融解温度ウインドウ(プライマーおよびオリゴヌクレオチドのΔTm)が、7.1℃へ潜在的に下げられ得、TD遺伝子合成法の非競合的特徴を確実にし得ることを示唆した。興味深いことには、所望のDNAのより高い収率が、アセンブリオリゴヌクレオチドの平均Tm(66℃)よりも高いストリンジェントなアニーリング温度(>67℃)で得られた。
【0094】
合成されたDNA分子の融解曲線分析
従来の遺伝子合成のワンステップおよびツーステップPCRベースのアセンブリ法においてRT-PCRを使用して合成された産物について、融解曲線分析を行った(図10)。成功した合成は、融解曲線において単一の鋭い融解ピークを生じさせ、これは、ツーステッププロセスについてのゲル電気泳動における明確なバンドに対応した。対照的に、ワンステッププロセスについて、融解曲線はブロードであり、このことは、不鮮明な(smeared)ゲル電気泳動において反映されるように、産物が中間の鎖長を有するDNA分子の混合物であったことを示している。ワンステップ産物の大部分は、約200〜300塩基対の鎖長を有する不完全な産物であった。
【0095】
本明細書において引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個々に示され参照によって組み入れられるかのように、参照によって本明細書に組み入れられる。刊行物の引用は、出願日前のその開示についてであり、本発明が先発明に基づいてこのような刊行物に先立つ権利が与えられないという承認として解釈されるべきではない。
【0096】
本明細書において与えられる濃度は、パーセンテージによって与えられる場合、重量/重量(w/w)、重量/体積(w/v)および体積/体積(v/v)パーセンテージを含む。
【0097】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ア(a)」、「アン(an)」および「ザ(the)」は、特に文脈において明確に規定されない限り、複数参照を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」およびこれらの用語の他の形態は、非限定的な包含的な意味で、即ち、他の要素または成分を除外せずに特定の記載の要素または成分を含むように意図される。特に規定されない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術における当業者に一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
【0098】
参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、核酸分子を合成する方法:
第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程;および
PCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【請求項2】
第2アニーリング温度が、第2平均融解温度よりも低いかまたはこれに等しい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1平均融解温度が、第2平均融解温度よりも約5℃以上高い、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1平均融解温度が、第2平均融解温度よりも約5℃〜約25℃高い、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約5 nM〜約80 nMの濃度で含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nM〜約60 nMの濃度で含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約120 nM〜約1μMの濃度で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約200 nM〜約800 nMの濃度で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
アセンブリ工程が、第1アニーリング温度を使用して約5〜約30 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
増幅工程が、第2アニーリング温度を使用して約10〜約35 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
全長テンプレートが約750塩基対であり、アセンブリ工程が、アニーリング段階について第1アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み、増幅工程が、第2アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nMの濃度で含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約400 nMの濃度で含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
PCRがリアルタイムPCRである、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
PCR反応混合物が蛍光プローブを含み、蛍光強度の増加が、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
蛍光プローブがLCGreen Iである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
最適化工程が、
a.変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;
b.アセンブリオリゴヌクレオチドのセットまたは外部増幅プライマーのセットの濃度;および
c.PCRサイクル数
の1つまたは複数を調節する工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
その方法が自動化される、請求項14〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドの隣接した対の間にギャップを有する長い二本鎖DNAを形成するようにアニールするアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、外部増幅プライマーのセットとを含むキットであって、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットが、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高い平均融解温度を有する、前記キット。
【請求項21】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてリアルタイムPCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む、核酸分子を合成する方法。
【請求項22】
PCR反応混合物が蛍光プローブを含み、蛍光強度の増加が、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
蛍光プローブがLCGreen Iである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含む、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
最適化工程が、
a.変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;
b.アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度;および
c.PCRサイクル数
の1つまたは複数を調節する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
その方法が自動化される、請求項21〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
以下を含む、核酸分子を合成する方法:
第1平均融解温度を有するアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、第1平均融解温度よりも低い第2平均融解温度を有する外部増幅プライマーのセットとを含むPCR反応混合物中において、PCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程であって、第2平均融解温度よりも高い第1アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記アセンブリする工程;および
PCR反応混合物中においてPCRによって全長テンプレート核酸分子を増幅する工程であって、全長テンプレート核酸分子への外部増幅プライマーのアニーリングを可能にする第2アニーリング温度へPCR反応混合物を供する工程を含む、前記増幅する工程。
【請求項2】
第2アニーリング温度が、第2平均融解温度よりも低いかまたはこれに等しい、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1平均融解温度が、第2平均融解温度よりも約5℃以上高い、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第1平均融解温度が、第2平均融解温度よりも約5℃〜約25℃高い、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約5 nM〜約80 nMの濃度で含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nM〜約60 nMの濃度で含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約120 nM〜約1μMの濃度で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約200 nM〜約800 nMの濃度で含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
アセンブリ工程が、第1アニーリング温度を使用して約5〜約30 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
増幅工程が、第2アニーリング温度を使用して約10〜約35 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
全長テンプレートが約750塩基対であり、アセンブリ工程が、アニーリング段階について第1アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含み、増幅工程が、第2アニーリング温度を使用して約15 PCRサイクルを行う工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
PCR反応混合物が、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを約10 nMの濃度で含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
PCR反応混合物が、外部増幅プライマーのセットを約400 nMの濃度で含む、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
PCRがリアルタイムPCRである、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
PCR反応混合物が蛍光プローブを含み、蛍光強度の増加が、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
蛍光プローブがLCGreen Iである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
最適化工程が、
a.変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;
b.アセンブリオリゴヌクレオチドのセットまたは外部増幅プライマーのセットの濃度;および
c.PCRサイクル数
の1つまたは複数を調節する工程を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
その方法が自動化される、請求項14〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドの隣接した対の間にギャップを有する長い二本鎖DNAを形成するようにアニールするアセンブリオリゴヌクレオチドのセットと、外部増幅プライマーのセットとを含むキットであって、アセンブリオリゴヌクレオチドのセットが、外部増幅プライマーのセットの平均融解温度よりも高い平均融解温度を有する、前記キット。
【請求項21】
アセンブリオリゴヌクレオチドのセットを含むPCR反応混合物中においてリアルタイムPCRによって全長テンプレート核酸分子をアセンブリする工程を含む、核酸分子を合成する方法。
【請求項22】
PCR反応混合物が蛍光プローブを含み、蛍光強度の増加が、全長テンプレート核酸分子の量に直線的に比例する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
蛍光プローブがLCGreen Iである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
検出される蛍光強度に応じてアセンブリ工程を最適化する工程をさらに含む、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
最適化工程が、
a.変性、アニーリングまたは伸長の時間または温度;
b.アセンブリオリゴヌクレオチドのセットの濃度;および
c.PCRサイクル数
の1つまたは複数を調節する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
その方法が自動化される、請求項21〜25のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−512650(P2012−512650A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542080(P2011−542080)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000493
【国際公開番号】WO2010/071602
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000493
【国際公開番号】WO2010/071602
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
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