PCRのための熱サイクラの改良
【課題】アセンブリ、加熱されたカバー、および内部コンピュータを用いて、非常に高精度のPCRを行うための器具を提供すること。
【解決手段】アセンブリは、サンプルブロック(36)、多数のペルチエ熱電装置(39)、および熱シンク(34)からなり、これらは、一緒に締め付けられている。サンプルブロック(36)の温度は、コンピュータにより制御される熱電装置(39)によってのみ変えられる。サンプルブロック(36)は、低熱質量であり、銀からなる。ペルチエ装置は、幅広い範囲にわたって速い温度エクスカーションを提供するように設計される。熱シンク(34)は、縁部損失を最小にするために周囲溝(44)を有し、連続的に可変のファンに隣接する。周囲加熱器は、サンプルブロック(36)の熱の均一性を、約+/−0.2℃に向上するために使用される。
【解決手段】アセンブリは、サンプルブロック(36)、多数のペルチエ熱電装置(39)、および熱シンク(34)からなり、これらは、一緒に締め付けられている。サンプルブロック(36)の温度は、コンピュータにより制御される熱電装置(39)によってのみ変えられる。サンプルブロック(36)は、低熱質量であり、銀からなる。ペルチエ装置は、幅広い範囲にわたって速い温度エクスカーションを提供するように設計される。熱シンク(34)は、縁部損失を最小にするために周囲溝(44)を有し、連続的に可変のファンに隣接する。周囲加熱器は、サンプルブロック(36)の熱の均一性を、約+/−0.2℃に向上するために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うためのコンピュータ制御機器の分野に
関する。より詳細には、本発明は、熱サイクルを用いることによって多数のサンプル上で同時に反応を行い、非常に正確な結果を生じさせる自動化された機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明の背景は、実質的に、米国特許第5,475,610号に述べられおり、この米国特許は
本明細書で参考として援用される。
【0003】
PCR工程を用いてDNA(デオキシリボ核酸)を増幅するためには、いくつかの異なる温度インキュベーション期間(incubationperiod)を通じて特別に構成された液体反応混合物をサイクルさせることが必要である。反応混合物は、増幅されるDNAと、増幅されるDNAの伸長産物(extensionproducts)を生成可能なサンプルDNAに対して十分相補的な少なくとも二つのプライマーとを含む様々な成分からなる。PCRに対して重要であるのは、熱サイ
クリングの概念である。すなわち、DNAを溶融するステップ、結果として得られる一本鎖
に短いプライマーをアニールするステップ、およびこれらのプライマーを伸長して二本鎖DNAの新しい複製物を生成するステップを交互に行うことである。熱サイクリングにおい
て、PCR反応混合物は、DNAを溶融するための約90℃の高温からプライマーアニーリングおよび伸長のためのおよそ40℃から70℃のより低い温度までで繰り返しサイクルされる。概して、サイクル中では、できるだけ迅速にサンプル温度から次の温度に変えることが望ましい。化学反応は、それらの各段階について最適な温度を有する。従って、最適ではない温度で費やされる時間が短くなることは、より良好な化学的結果が達成されることを意味する。また、各上記インキュベーション温度で反応混合物を保持するための最小時間が、この各インキュベーション温度に達した後で必要とされる。これらの最小インキュベーション時間は、一サイクルを完了するためにかかる最小時間を確立する。サンプルインキュベーション温度の間の遷移におけるいかなる時間も、この最小サイクル時間に付加される時間である。サイクル数はかなり多いので、この付加的な時間は、増幅を完了するために必要となる総時間を不必要に長くする。
【0004】
いくつかの以前の自動化されたPCR機器において、サンプルチューブが、金属ブロック
上のサンプルウェル中に挿入される。PCR工程を行うために、金属ブロックの温度は、規
定された温度およびPCRプロトコルファイルにおいてユーザによって指定された時間に従
ってサイクルされる。サイクリングは、コンピュータおよび関連付けられた電子機器によって制御される。金属ブロックが温度を変化させるので、様々なチューブ中のサンプルは同様の温度変化を受ける。しかし、これらの以前の機器において、サンプル温度の差は、サンプル金属ブロック中の場所毎の温度のばらつきによって生じる。温度勾配がブロックの材料中に存在し、それにより、あるサンプルはサイクル中の特定の時間で他のサンプルとは異なる温度を有する。さらに、サンプルブロックからサンプルへの熱伝達において遅延が存在し、これらの遅延はサンプルブロックにわたって異なる。これらの温度差および熱伝達における遅延により、PCR工程の収量がサンプルバイアル毎に異なる。PCR工程を首尾良くかつ有効に行い、かつ、いわゆる定量PCRを可能にするためには、これらの時間遅
延および温度誤差は、最大限まで最小化されなければならない。サンプルブロック上の様々な場所での温度のばらつき、必要とされる時間、サンプルへおよびサンプルからの熱伝達における遅延を最小化するという問題は、サンプルを含む領域のサイズが標準の8×12マイクロタイタープレート中におけるほどに大きくなるときに、特に深刻になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の自動化されたPCR機器の別な問題は、温度サイクリングの間に反応混合物の実際
の温度を正確に予測することである。混合物の化学反応は、その各段階について最適温度を有するために、実際の温度を得ることは、良好な分析結果のために重要である。各バイアル中の混合物の温度の実際の測定は、各バイアルの容量が小さくバイアルの数が多いために、実施不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明によると、一連の温度エクスカーション(excursion)を通じてサンプルをサイ
クルし得るアセンブリと、加熱されたカバーと、工程を制御するためのコンピュータとを備えた、ポリメラーゼ連鎖反応を行うための装置が提供される。
【0007】
本発明は、迅速な温度エクスカーションのために低熱質量(thermal mass)を有するサンプルブロックもさらに包含する。サンプルブロックは、好ましくは、均一な全体の熱分散のために銀から製造され、均一な横方向熱分散のために底面プレートを有する。さらに、熱損失および結果として生じる中心から縁への温度勾配をさらに相殺するために、中心ピンが熱シンクへの導電路として用いられる。
【0008】
本発明は、ペルチエ熱電装置を用いて迅速な加熱および冷却を達成するための方法および装置も提供する。これらの装置は互いに綿密に整合される。これらの装置は、熱膨張および収縮を最小化するために一側面上で打抜きアルミナを用いて構成される。これらの装置は、一致した加熱レートおよび冷却レートを達成するために、特定の寸法を用いてテルル化ビスマス(bismuthtelluride)で構成される。これらの装置は、これらの熱負荷特
性をさらに低減させるために最小銅厚および最小セラミック厚を用いて設計され、指定された量の特定の高温はんだを用いて組み立てられる。
【0009】
本発明は、熱伝導および縁からの損失を制限するために外周溝を有して構成される熱シンクにも導かれる。さらに、熱シンクは、一定の温度の維持および冷却の両方の補助となるために、関連づけられた可変速度ファンを有する。
【0010】
本発明は、熱電装置の間に配置された熱シンクにサンプルブロックを保持するためのクランプ機構にも導かれる。この機構は、最小の熱負荷で均一に分散された圧力を提供するように設計される。この設計により、サンプルブロックと熱電装置との間および熱電装置と熱シンクとの間の界面として熱グリースを用いることが可能になる。
【0011】
サンプルブロックにわたって熱のばらつきを最小化するための外周加熱器も提供される。外周加熱器は、縁からの熱損失に対抗するためにサンプルブロックの周囲に配置される。サンプルブロックの温度に比例して電力が加熱器に付与され、サンプルブロックの温度が高い場合、より多くの電力が付与され、サンプルブロックの温度が低い場合、付与される電力がより少ない。
【0012】
凝縮を防止するために、サイクリングの間にサンプルチューブを閉状態に維持し、かつ、チューブの上部を加熱するように設計された加熱カバーも提供される。加熱カバーは、キャップの光学特性を歪めるのを回避するために、サンプルチューブキャップ外周に圧力を与える。カバーは、サンプルチューブトレイに嵌合するスカートを用いて自己位置合わせする。
【0013】
本発明は、サイクル時間を最小化するためにサンプルブロック温度オーバーシュート(overshoot)およびアンダーシュート(undershoot)を利用するように決定される理想的な
温度ランプレート(temperatureramp rate)を決定するための方法および装置にも導かれる。
【0014】
本発明は、線形温度制御ならびに線形および非線形温度ランプを達成するために熱電冷却装置からの熱出力を特徴付けるための方法および装置も含む。
【0015】
本発明はさらに、PCRプロトコルの間にいずれもの与えられた時間でサンプルバイアル
中で反応混合物の実際の温度を予測するための方法に導かれる。
【0016】
本発明は、全ての機器が同様に作動するように、熱電装置の性能のばらつきを補償する較正診断を用いるための方法および装置も含む。サンプルブロック、熱電装置および熱シンクからなるアセンブリの熱特性および性能は、基板上の(on-board)メモリ装置に格納され、それによってアセンブリが別の機器に向かって移動し、同様に振舞うことを可能にする。
【0017】
本発明は、装置故障の早期の指示を提供するために熱電装置のAC抵抗を測定するための方法および装置をさらに含む。
1.複数の液体反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応を行うための装置であって、該液体反応混合物を含む複数のバイアルを含み、該バイアルは、上部および下部を有し、該装置は、
一連の温度エクスカーション(excursions)通して該バイアルをサイクルさせるためのアセンブリと、
該バイアルに直接着座力を付与するため、および、該バイアルの該上部に一定の温度を付与するためのカバーと、
該アセンブリの該温度エクスカーションと、該カバーの該一定の温度とを制御するための計算装置と、を含む、装置。
2.上記アセンブリが、
上記バイアルを受けるためのサンプルブロックと、
複数の熱電装置と、
熱シンクと、
該サンプルブロックと該熱シンクとの間でペルチエ熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、
該サンプルブロックの外周の周りに緩く配置される加熱器と、
第1の端部および第2の端部を有するピンと、を含み、該第1の端部は、該サンプルブロックと密に接し、該第2の端部は、該熱シンクと密に接し、該サンプルブロックと該熱シンクとの間の熱経路を提供する、項目1に記載の装置。
3.上記サンプルブロックが、
サンプルバイアルを受けるための複数のサンプルウェルであって、各ウェルが頂部および底部を有する複数のサンプルウェルと、
該サンプルウェルの該頂部を接続する上部サポートプレートと、を含む、項目2に記載の装置。
4.上記上部サポートプレートおよび上記サンプルウェルが、単片として電気鋳造される、項目3に記載の装置。
5.上記サンプルブロックが銀からなる、項目3に記載の装置。
6.上記サンプルウェルが、8×12のアレイに配列される、項目3に記載の装置。
7.上記サンプルブロックが矩形である、項目3に記載の装置。
8.上記複数のペルチエ熱電装置が、所定の入力電流について0.2℃以内の温度を提供するように合わされる、項目2に記載の装置。
9.上記ペルチエ熱電装置が、
接合された銅トレース(copper traces)を有する第1のセラミック層と、
接合された銅トレースを有する第2のセラミック層であって、複数のセラミック素子を含む第2のセラミック層と、
該第1のセラミック層と該第2のセラミック層との間に配置され、該第1および第2のセラミック層上の該接合された銅トレースにはんだ付けされる、複数のテルル化ビスマスペレットと、を含む、項目2に記載の装置。
10.上記第1および第2の層のセラミックがアルミナである、項目9に記載の装置。
11.上記セラミック層が、0.508mmの厚さを有する、項目9に記載の装置。
12.上記テルル化ビスマスペレットが、高温のはんだを用いてはんだ付けされる、項目9に記載の装置。
13.上記熱電装置の抵抗率が、以下の方程式
R=nr(h/A)
から決定され、
ここで、Rは、該装置の抵抗率であり、nは、上記ペレットの数であり、rは、使用されるテルル化ビスマスの抵抗率であり、hは、該ペレットの高さであり、Aは、テルル化ビスマスの断面積である、項目9に記載の装置。
14.上記熱シンクが、
上側および下側を有するプレートと、
該下側から垂直に延びる複数のフィンと、
該上側の外周の周りに延び、該周囲からの熱損失を妨ぐ溝と、
該フィンに密に近接して配置され、該フィンを通る空気流を制御するファンと、
温度センサを受けるための、該プレート内の窪みと、を含む、項目2に記載の装置。
15.上記クランプ機構が、
脊柱部(spine)であって、該脊柱部内に、締め具を受けるための複数の開口部を有す
る脊柱部と、
該脊柱部から横方向に延びる複数の指部と、を含む、項目2に記載のアセンブリ。
16.上記脊柱部の形状が矩形である、項目15に記載の装置。
17.上記指部の形状が矩形である、項目15に記載の装置。
18.上記指部は、頂部および底部を有し、該底部よりも該頂部で、より小さい幅を有するようにテーパ状にされる、項目15に記載の装置。
19.上記指部が、上記脊柱部から横方向に突出する第1の端部と、該第1の端部から下方向に延びる突起と、を有する、項目15に記載の装置。
20.上記指部が、傾斜した前縁部を有する、項目15に記載の装置。
21.上記開口部の各々が、対応する指部に密に近接して配置される、項目15に記載の装置。
22.上記加熱器が、フレーム状膜キャリアに埋め込まれる電気抵抗性の経路を含む、項目2に記載の装置。
23.上記電気抵抗性の経路が、第1の電力密度を有する、上記フレーム状キャリアの反対側に配置される部分の第1の組と、第2の電力密度を有する、該フレーム状キャリアの反対側に配置される部分の第2の組と、を含む、項目22に記載の装置。
24.上記アセンブリに関するデータを格納することができる関連メモリ装置をさらに含む、項目2に記載の装置。
25.上記カバーが、
上記バイアルに関して垂直方向および水平方向に変位可能なプラテンを含み、該プラテンが、
該バイアルの場所に対応する開口部であって、該バイアルの外周に対応する外周を有する開口部のアレイと、
該プラテンの外周に下方向に延びるスカートであって、標準マイクロタイタートレイ(microtitertray)の周囲に対応する寸法を有し、該プラテンの垂直方向の変位中に該トレイの該周囲を係合するように構成され、それにより、該プラテンの該開口部に、該バイアルの該周囲を係合させ、該バイアルに着座力を付与し、該サンプルバイアルを受けるための、該サンプルバイアルおよび該アセンブリの壁の間のすべりばめを維持するスカートと、
該プラテンを強制的に降ろして該着座力を維持するための手段と、
該プラテンと密に接するように配置され、該プラテンを一定の温度に維持する加熱手段と、を含む、項目1に記載の装置。
26.上記装置の温度を変えるための少なくとも1つの装置からなる上記アセンブリが、上記熱電装置のAC抵抗を測定するためのシステムをさらに含む、項目1に記載の装置。27.少なくとも1つの装置が、第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面と、を有し、上記システムが、
該第1の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第1の温度センサと、
該第2の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第2の温度センサと、
上記熱電装置に電力を提供するためのバイポーラ増幅器回路と、
該熱電装置にわたってAC電圧を検知し、該AC電圧を表すDC電圧を生成するための回路と、
該熱電装置を介するAC電流を検知し、該AC電流を表すDC電圧を生成するための回路と、
該第1および第2の温度センサから該信号を受け取るようにプログラムされるマイクロコントローラと、を含み、
該マイクロコントローラはさらに、該第1および第2の温度センサの該信号が等しい温度を示すように、該バイポーラ増幅器に、該熱電装置に電力を提供させるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧が、該バイポーラ増幅器の電力に重ねられるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧を検知するための該回路により生成される該電圧と、AC電流を検知するための該回路からの該電圧とを受け取るようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該電圧から、該熱電装置のAC抵抗を計算するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、多項式計算を行うことにより、周囲温度誤差を補償するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該補償されたAC抵抗測定値を格納するようにプログラムされる、項目26に記載の装置。
28.第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面とを有する熱電装置のAC抵抗を測定する方法であって、
該第1の加熱および冷却表面の温度を測定する工程と、
該第2の加熱および冷却表面の温度を測定する工程と、
ペルチエ熱電装置に電力を付与して、該第1の加熱および冷却表面と、該第2の加熱および冷却表面に、同じ温度を達成させる工程と、
該熱電装置にわたってAC電圧を印加する工程と、
該熱電装置にわたって該AC電圧を測定する工程と、
該熱電装置を介するAC電流を測定する工程と、
該測定されたAC電圧および該測定されたAC電流から、該熱電装置のAC抵抗を計算する工程と、を包含する、方法。
29.周囲温度誤差を補償するための計算を行って、補償AC抵抗測定値を計算する工程と、
該補償AC抵抗測定値を格納する工程と、をさらに包含する、項目28に記載の方法。30.少なくとも第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面とを有し、該第1の表面を該第2の表面よりも高い温度にし且つ該第2の表面を該第1の表面よりも低い温度にする態様で動作する熱電装置を用いて、線形温度遷移を達成する方法であって、
該より低い温度の表面から、所望の熱の流れを決定する工程と、
該熱電装置の電気抵抗を、温度の関数として決定する工程と、
該熱電装置のゼーベック係数を、温度の関数として決定する工程と、
該熱電装置の伝導を、温度の関数として決定する工程と、
該より低い温度の表面の温度を測定する工程と、
該より高い温度の表面の温度を測定する工程と、
該より低い温度の表面および該より高い温度の表面の平均温度を計算する工程と、
温度の関数としての該熱電装置の該電気抵抗と、温度の関数としての該熱電装置の該ゼーベック係数と、温度の関数としての該熱電装置の該伝導と、該より低い温度の表面の温度と、該より高い温度の表面の温度と、該より低い温度の表面および該より高い温度の表面の平均温度と、の関数として該所望の熱の流れを達成するために必要とされる電流を計算する工程と、を包含する、方法。
31.サンプルバイアル中の混合物の温度を決定する方法であって、該バイアルは、上部および下部を有し、装置に含まれ、該装置が、
一連の温度エクスカーションを通して該バイアルをサイクルさせるためのアセンブリであって、該バイアルを受けるためのサンプルブロックをさらに含むアセンブリと、
該バイアルに着座力を付与するため、および、該バイアルの該上部に一定の温度を付与するためのカバーと、
該アセンブリの該温度エクスカーションと、該カバーの該一定の温度と、を制御するための計算装置と、を含み、該方法が、
該サンプルブロックの温度を測定する工程と、
該カバーにより付与される温度を測定する工程と、
該サンプルブロックと該混合物との間の該バイアルの熱抵抗を決定する工程と、
該混合物と該カバーとの間の該バイアルと並列な空気の熱抵抗を決定する工程と、
該混合物の熱キャパシタンスを決定する工程と、
該混合物と該カバーとの間の該バイアルの熱キャパシタンスを決定する工程と、
該サンプルブロックの該温度と、該カバーにより付与される該温度と、該サンプルブロックと該混合物との間の該バイアルの該熱抵抗と、該混合物と該カバーとの間の該バイアルと並列な空気の該熱抵抗と、該混合物の該熱キャパシタンスと、該混合物と該カバーとの間の該バイアルの該熱キャパシタンスと、の関数として該混合物の温度を計算する工程と、を包含する、方法。
32.一連の温度エクスカーションを通してサンプルをサイクルさせるためのアセンブリを較正する方法であって、該アセンブリは、バイアルを受けるためのサンプルブロックと、複数の熱電装置と、熱シンクと、該サンプルブロックと該熱シンクとの間にペルチエ熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、該アセンブリに関するデータを格納することができるメモリ装置と、を含み、該方法が、
該熱電装置に電力を付与し、該アセンブリを、所望の一連の温度エクスカーションを通してサイクルさせる工程と、
実際の温度エクスカーションを測定する工程と、
該実際の温度エクスカーションを、該所望の温度エクスカーションと比較する工程と、
該実際の温度エクスカーションが該所望の温度エクスカーションと一致するように、該熱電装置に付与される該温度を調節する工程と、
該調節された電力を該メモリ装置に記録して、所望の一連の該温度エクスカーションを得る際にさらに利用する工程と、を包含する、方法。
33.一連の温度エクスカーションを通して反応混合物のバイアルをサイクルさせるためのアセンブリであって、
該反応混合物のバイアルを受けるためのサンプルブロックと、
複数の熱電装置と、
熱シンクと、
該サンプルブロックと該熱シンクとの間に該熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、
該サンプルブロックの外周の周りに配置される加熱器と、
第1の端部および第2の端部を有するピンであって、該第1の端部が該サンプルブロックと密に接し、該第2の端部が該熱シンクと密に接して、該サンプルブロックと該熱シンクとの間に熱経路を提供するピンと、
該アセンブリおよび該加熱器の該温度エクスカーションを制御するための計算装置と、を含む、アセンブリ。
34.サンプルバイアルを保持するためのサンプルブロックであって、
サンプルバイアルを受けるための複数のサンプルウェルであって、各ウェルが頂部および底部を有する、複数のサンプルウェルと、
該サンプルウェルの該頂部を接続する上部サポートプレートと、
該サンプルウェルの該底部を接続する底部プレートと、を含む、サンプルブロック。
35.上記上部サポートプレートおよび上記サンプルウェルが、単片として電気鋳造される、項目34に記載のサンプルブロック。
36.上記サンプルブロックが銀からなる、項目34に記載のサンプルブロック。
37.上記サンプルウェルが、8×12のアレイに配列される、項目34に記載のサンプルブロック。
38.上記サンプルブロックが矩形である、項目34に記載のサンプルブロック。
39.上側および下側を有するプレートと、
該下側から垂直に延びる複数のフィンと、
該上側の外周の周りに延び、該周囲からの熱損失を妨ぐ溝と、
該フィンに密に近接して配置され、該フィンを通る空気流を制御するファンと、
温度センサを受けるための、該プレート内の窪みと、を含む、熱シンクアセンブリ。
40.第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面と、を有するペルチエ熱電装置のAC抵抗を測定するための装置であって、システムが、
該第1の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第1の温度センサと、
該第2の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第2の温度センサと、
該熱電装置に電力を提供するためのバイポーラ増幅器回路と、
該熱電装置にわたってAC電圧を検知し、該AC電圧を表すDC電圧を生成するための回路と、
該熱電装置を介するAC電流を検知し、該AC電流を表すDC電圧を生成するための回路と、
該第1および第2の温度センサから該信号を受け取るようにプログラムされるマイクロコントローラと、を含み、
該マイクロコントローラはさらに、該第1および第2の温度センサの該信号が等しくなるように、該バイポーラ増幅器に、該熱電装置に電力を提供させるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧が、該バイポーラ増幅器の電力に重ねられるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧を検知するための該回路により生成される該電圧と、AC電流を検知するための該回路からの該電圧とを受け取るようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該電圧から、該熱電装置のAC抵抗を計算するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、多項式計算を行うことにより、周囲温度誤差を補償するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該補償されたAC抵抗測定値を格納するようにプログラムされる、装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明によるサンプルブロックの一部の断面図である。
【図2】図2は、本発明に従って構成された熱電装置の拡大等角投影図である。
【図2A】図2Aは、本発明に従って構成された熱電装置の側面立面図である。
【図3】図3は、本発明による熱シンクの切欠き部分等角投影図である。
【図4】図4は、サンプルブロック、熱電装置および熱シンクを含むアセンブリの分解組立て図である。
【図5】図5は、本発明による加熱カバーの等角投影図である。
【図6】図6は、アップランプ(加熱レート)対電力を示すチャートである。
【図7】図7は、ダウンランプ(冷却レート)対電力を示すチャートである。
【図8】図8は、本発明による温度オーバーショットおよびアンダーショットを予測および補償するためのチャートである。
【図9】図9は、本発明のAC抵抗測定回路のブロック図である。
【図10】図10は、外周加熱器およびサンプルブロックを囲むその位置を示す。
【図11】図11は、図10の外周加熱器の詳細な図である。
【図12】図12は、サンプルブロックの温度の関数として外周加熱器に付与される電力を示す図である。
【図13】図13は、サンプルバイアル中のサンプルの熱モデルを示す。
【図14】図14は、図13の熱モデルの初期条件の図である。
【図15】図15は、サンプルブロック、および環境から熱電装置を保護するために設計されたシールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な記載
概して、PCRの場合には、いくつかの理由のために、サイクル中の要求される温度間で
サンプル温度をできるだけ迅速に変えることが望ましい。第一に、化学反応はその各段階について最適温度を有するので、最適ではない温度で費やされる時間が短くなるということは、より良好な化学結果が達成されることを意味する。第二に、各プロトコルについて最小のサイクル時間を設定するいずれもの与えられた設定点で最小時間が通常要求され、設定点間での遷移に費やされるいかなる時間もこの最小時間に付加される。サイクル数は通常かなり多いので、この遷移時間が、増幅を完了するために必要とされる総時間に大幅に付加され得る。
【0020】
プロトコルの各ステップの間に各反応チューブが達する絶対時間は、産物の収量に対して重要である。産物は頻繁に定量化を受けるので、チューブ毎の産物収量はできる限り均一でなければならず、従って、定常状態および動的熱均一性の両方がブロックを通じて優れていなければならない。
【0021】
サンプルへおよびサンプルからの熱ポンピング(pumping)は、ペルチエ熱電装置を用
いて達成される。これらの装置は、直列に交互に接続されたn型およびp型のテルル化ビスマスのペレットから構成される。ペレット間の相互接続は、通常はセラミック(代表的にはアルミナ)である基板に接合された銅を用いて形成される。
【0022】
必要とされる熱ポンピングの量は、熱負荷およびランプレート、すなわち、温度が変化することを必要とされるレートに依存する。遠心分離器などの多くの他のタイプの機器に整合する産業標準としてサンプルチューブが確立されているために、サンプルチューブの幾何学的形状およびサンプル容量は可変ではない。サンプル容量はユーザの必要性によって規定される。従って、設計変数は、主に、サンプルブロック、熱電装置、熱シンク、ファン、ならびに熱電装置間の熱界面媒体および熱シンクとサンプルブロックとの間の熱界面媒体の両方に影響を与える。
【0023】
ブロックの幾何学的形状は、横方向伝導に対する主要な要因であり、従って、熱電冷却器自体の熱均一性のいかなるばらつきも一様にするために、必要な熱均一性要件も満たさなければならない。迅速なランプレート(低熱質量を示す)および高い横方向伝導(大きい材料質量を示す)という矛盾する要件は、ベースプレートのブロック構造の容積(bulk)を集中させ、かつ、サンプルチューブを保持するブロックの上部の熱質量を最小化することによって満たされる。ブロック製造のための最適な材料は、相対的に低い熱質量および非常に良好な熱伝導を有する純銀である。また、銀は、電気鋳造にも非常に適している。実施においては、最適なブロックの幾何学的形状は、横方向伝導を提供する相対的に厚いベースプレートに固定されたサンプルチューブを保持するための軽い電気鋳造上部を有する。ブロックの熱質量は、材料が熱均一性に最も寄与するベースプレート中で集中される。ブロックの電気鋳造された部分は、二つのパラメータによって規定された最小厚を有する。すなわち、第一に、材料は、通常の取扱いについて扱いにくくなるように薄くされてはならない。第二に、壁の厚さは、サンプルチューブの上部から熱を伝導することが要求される。サンプル自体中でのサイクルはチューブの内部の対流(convection)によって達成され、サンプル温度はチューブの高さに沿って相対的に均一であるが、チューブ壁とベースプレートとの間の良好な熱伝導性によって、サンプルとベースプレートとの間の熱伝導のために利用可能な有効表面積が増加する。ベースプレート厚は、熱電冷却器の熱均一性と構造剛性との関数である横方向の伝導要件によって規定される最小値を有する。
【0024】
熱質量へ寄与するもう一つのものは、熱電冷却器自体の構造の一部を形成するアルミナセラミック層である。熱電冷却器の構造中には二つのアルミナ層があり、一つはサンプルブロック側面上に、もう一つは熱シンク側面上にある。層の厚さは、できる限り最小化されるべきであり、この場合は、アルミナ厚についての薄さの実施上の制限は、熱電冷却器製造の製造要件によって限定される。このセラミックの特別な層は、原則的には、熱質量をさらに減少させるカプトン(Kapton)の薄いシートなどの異なる層で全体が置き換えられ得るが、現時点では、冷却器はこの構造で利用可能であるが、信頼性が証明されていない。技術がさらに開発されれば、このような設計の冷却器が好ましくなり得ることが予測される。しかし、アルミナ薄層も、システム信頼性に寄与する。
【0025】
冷却器中の銅導電体は重要な熱負荷であり、システムの設計において見逃されない。銅トレースの厚さは、装置を通る運搬電流の要件によって規定される。電流が知られると、要求される銅の厚さが算出され得る。
【0026】
サンプルブロック
図1は、96個のウェル20を代表的に有するサンプルブロック36の一部の断面図を示し、各ウェルはサンプルバイアルを受容するためである。サンプルブロックは銀から構成され、上部支持板21およびベースプレート22に固定された一つの部品として電気鋳造されたサンプルウェル20を備える。ベースプレート22は、各個々の熱電装置の表面にわたる熱出力のいかなる差および一つの熱電装置から別の熱電装置への差を補償するための横方向伝導を提供する。
【0027】
いかなる熱システムにおいても常に境界損失は存在する。矩形構成においては、角部でより多くの熱損失が存在する。一つの解決法は、円形サンプルブロックを使用するものであるが、通常用いられているマイクロタイタートレイフォーマットは矩形であり、この形は存在する他の機器との適合性を保持するために用いられなければならない。絶縁などの全ての標準的な手段を用いて縁効果がなくされると、サンプルブロックの中心が角部よりも温かくなる傾向が残る。典型的には、サンプルブロックの熱均一性を規定するのはこの温度差である。本発明によると、中心温度は、サンプルブロックの中心から熱シンクまで小さい熱接続を提供することによって低下される。サンプルブロックの中心で「熱漏れ」として作用するピン24を用いることによって、サンプルブロックにわたる熱勾配は、許容されるレベルに低下され得る。要求される伝導の量はかなり小さく、1.5mm直径ステンレ
ス鋼ピンが十分であることが見出されている。さらに、GeneralElectricによって製造さ
れるポリマーULTEMからなるピンも用いられ得る。以下でより十分に記載されるように、
ピンは、図4に図示されるアセンブリの構成要素を配置し、所定位置に固定する補助を行うためにも役立つ。
【0028】
ペルチエ熱電装置(TED)
サンプルブロックの熱均一性は、PCR性能にとって重大である。均一性に影響を与える
最も重要な要因の一つは、装置間の熱電装置性能のばらつきである。良好な均一性を達成するために最も困難な時点は、周囲とは非常に異なる一定の温度サイクルの間である。実施上は、この温度サイクルは、およそ95℃の一定の温度サイクルである。与えられた入力電流について同一の温度を個々に生じさせる各熱シンクアセンブリのための一組の装置を製造するために、熱電装置はこれらの条件化で整合される。熱電装置は、いずれもの与えられたセット内で0.2℃以内に整合され、この値は、サンプルブロックベースプレートの
横方向伝導によって修正され得る最大の相違から導かれる。
【0029】
図2Aは、代表的なペルチエ熱電装置60の側面図を示す。装置は、二つのアルミナ層26の間に挟持されるテルル化ビスマスペレット30から構成される。ペレットは、アルミナ層上にめっきされた銅トレース29にはんだ接合28によって電気的に接続される。一つのアルミナ層は、電気接続を容易にするための延長部31を有する。延長された領域の厚さは、装置の熱負荷を低減させるために減少される。
【0030】
図2は、代表的なペルチエ熱電装置の等角投影図を示す。熱電装置の外側壁を形成するアルミナ層26は、サンプルブロック19とは異なるレートで温度サイクリングの間に膨張および収縮する。アルミナの運動は、内部テルル化ビスマスペレット30に接続するはんだ28に直接伝送される。膨張の範囲が小さくなるようにアルミナを切断してダイと称される小さい部品32にすることによって、この運動は飛躍的に低減され得る。ダイの最小サイズは、熱電装置を通って電流を運ぶために必要とされる銅トレースのサイズおよび取り扱いのために装置がある程度の強度を保持する要件によって規定される。
【0031】
熱電装置(0.508mmのオーダー)中で薄いアルミナ層を用いることによって熱負荷が低
減されるだけではなく、与えられた要求される熱ポンピングレートについて、熱伝導率kの増加によりペレットの端部が達する温度が低下することも意味する。はんだ接合にかかる熱応力を低減させることによって、信頼性が高くなる。
【0032】
概して、PCRにおいて、反応温度は周囲より高く、35℃から96℃の範囲である。最も重
要な場合において、伝導による熱の流れがブロックから熱シンクに向かう場合、上記の二つの周囲温度の間でブロックが加熱または冷却される。システムサイクル時間を最適化するために重要となるのは、最適化されたブロック構成が与えられたと仮定すると、抵抗加熱のジュール効果による熱ランプレートに与えられるブースト(boost)に対して、伝導
によって冷却が与えられたときのランプレートへのブーストの釣り合いをとることである。
【0033】
与えられた熱電装置中のテルル化ビスマスペレットの断面が一定であると考えられる場合は、熱ランプレートは、ペレットの高さを増加させることによって上昇する。これは、熱電装置を通る伝導経路がより長くされ、それによってkを低減させるためである。これは、定常状態で与えられたブロック温度を維持するために要求される電流を低減させる効果も有する。低下ランプ、すなわち、ブロックを冷却している間には、低減したkは、伝導に対する寄与が低減され、低下ランプレートが減少することを意味する。
【0034】
逆に、テルル化ビスマスペレットの高さが与えられた断面に対し減少される場合、kは増加する。これによって、定常状態に上昇した温度を維持するために必要とされる電流が増加し、冷却ランプレートが上昇する。ブロック中の熱の大部分が熱シンクに直接伝導されるので、加熱ランプレートは減少さする。また、テルル化ビスマスペレット高さを減少させることによって、熱電装置を介する損失のために与えられた温度について必要とされる保持力が増加し、熱負荷が低減されて、与えられた電力について最大の可能なランプレートを増加する。従って、最適化された熱電装置は、加熱レートが冷却レートと一致するまで、テルル化ビスマスペレットの高さを調節することによって導き出され得る。
【0035】
ペレットについての比1:Aは、装置の抵抗も規定する。すなわち、
R=nr(h/A)
であり、ここでnはペレット数、rは使用されるテルル化ビスマスの抵抗率、hはペレットの高さ、およびAは断面積である。
【0036】
ゼーベック効果があるために、抵抗はAC抵抗として測定されなければならない。幾何学的形状は装置の抵抗を規定するので、高すぎる電流要件は増幅器のコストを上昇させるために装置がコスト有効電流対電圧比を用いなければならないという点で、別の設計限界に当たる。上記の銀電気鋳造ブロックについての釣り合いのとれた解決法は、
ペレット高さ=1.27mm
ペレット断面積=5.95mm2
である。
【0037】
熱サイクラが別の機器の一部として使用される、例えば、検出技術と統合される場合、改変された熱電装置幾何学的形状となる異なる電流源を用いることがより好都合であり得る。本実施態様における電流源は、装置および接地と直列である電流送出し抵抗器を有するクラスDタイプ切換えモード電力増幅器からなる。
【0038】
熱電装置は互いにはんだ付けされているので、過剰なはんだはテルル化ビスマスペレットの側面に逃げ得る。これが生じる場合、kは増加し、この結果としてマイルド(mild)スポットとも称される局所的な冷却スポットが生じる。これらの冷却スポットは、熱電装置の組み立て工程の間に最小量のはんだを適用することによって、数およびシビアリティが低減する。同一の理由で、接続ワイヤを熱電装置に取り付けるために用いられるはんだをペレットに確実に接触させないことも必要である。
【0039】
高温はんだは、改善された高温性能を有するだけではなく、応力反転によって故障に対して概してより抵抗性があり、従って、この用途において非常に適切であることが示されている。本発明で用いられるはんだは、米国特許第5,441,576号に記載されているタイプ
のものであり得る。
【0040】
熱シンク
図3は、熱電装置39およびサンプルブロック36と共に組み立てらえた熱シンク34を示す。位置付けフレーム41は、サンプルブロックおよび熱シンクと位置合わせし、それによってサンプルブロックにわたる温度均一性を確実にするために、熱電装置の周りに配置される。フレームは、Ultemまたは他の適した材料から構成され、取り扱いを容易にするため
に角部にタブ43を有する。熱シンク34は、概して平坦なベース34、およびベース35から延びるフィン37を有する。熱シンクの熱質量は、サンプルブロックおよび組み合わされるサンプルの熱質量よりも大幅に大きい。サンプルブロックおよびサンプルは合わせて、およそ100ジュール/°Kの熱質量を有し、熱シンクの熱質量はおよそ900ジュール/°Kである。これは、サンプルブロックは、汲み出された与えられた熱量について熱シンクよりも大幅に速く温度を明瞭に変えることを意味する。さらに、熱シンク温度は、図9に示されるように可変速度ファンを用いて制御される。熱シンクの温度は、熱シンク内の窪み40に配置されるサーミスタ38によって測定され、安定した熱シンク温度の維持がシステム性能の反復性を改善する、通常のPCRサイクリング温度範囲内に十分に入るおよそ45℃に熱シ
ンクを保持するために、ファン速度が変化される。ブロック温度が周囲を下回る値に設定されるとき、熱シンクは、システム電力消費を低減させ、ブロック熱均一性を最適化するために達成され得る最も低い温度に設定される。これは、ただ単にファンを全速度で動作させることによって達成される。
【0041】
熱シンク温度測定は、熱電装置からの熱出力を線形化することにおいて以下に記載される熱電装置制御アルゴリスムによっても用いられる。
【0042】
熱シンク温度均一性は、ブロック温度の均一性に反映される。代表的には、熱シンクは、縁部よりも中心部の方が温かく、これによってブロックの角部を最も冷たくする他の効果を付加する。溝44は、熱伝達を制限するために熱電装置領域の外周の外で熱シンクに切りこまれ、溝によって境界を有する領域からの縁損失を低減させる。
【0043】
熱界面およびクランピング機構
熱電装置製造者は、耐用年数を改善するために熱電装置が圧力下で保持されることを推奨している(推奨される圧力は、選択される熱界面媒体(media)によって規定されるこ
とが多い)。推奨される圧力は製造者によって異なるが、サイクリング用途については30から100psiの範囲内である。
【0044】
熱電装置の各側面上でコンプライアンス層(compliant layer)として作用するために
用いられ得るシート形状で利用可能な多くの熱界面媒体があるが、熱グリースがこの用途について大幅に優れた熱性能を与えることが証明されている。最適な条件下でさえ30psi
またはより高い圧力を要求することが示されている他のコンプライアンス層とは異なり、熱グリースは、良好な熱接触が確実に形成されるために高い圧力を要求しない。また、熱グリースは、膨張および収縮銀ブロックと熱電装置表面との間で有効な潤滑剤として作用し、耐用年数を向上させる。Thermalloy,Inc.によって製造されたThemalcoteII熱グリー
スが用いられ得る。
【0045】
銀ブロックは相対的に可撓性かつ軟質であるので、横方向クランピング圧力を非常に有効には伝達し得ない。しかし、熱界面媒体が熱グリースであるので、必要とされるクランピング力は低い。
【0046】
図4は、クランピング機構の好ましい実施態様を用いるアセンブリの分解組み立て図を示す。各クランプ46は、突起部49から延びる一連のフィンガ48からなる。フィンガ48は、サンプルブロック36の壁20の間に嵌合するように、すなわち、サンプルブロック36のベースプレート22上の一連の対応する場所に圧力を与えるように、寸法、形状および空間が決められている。電気鋳造されたサンプル壁面のオープンハニカム構造によって、フィンガがある距離だけブロックに挿入されることが可能になり、それによってエッジクランピングスキームが行うよりもより均一に圧力が与えられる。これらのフィンガは、クランプが熱負荷に大きく加わらないように、クランプの質量とサンプルブロックとの間の接触領域を最小化するために一連の局所点で圧力を与える。クランプは、本用途について必要な剛性を有するガラス充填プラスチックから成形される。圧力は、分離したクランプ構造であり得る取付けポスト50に対してフィンガを変形させることによって与えられるが、好ましくは、クランプ46と一体に形成される。クランプ46は、クランプ46中の対応する穴53を通り、次いで熱シンク34のねじ穴55中に延びる一連のねじ52を用いて、熱シンクの表面と面一に保持される。クランプは標準トルク技術によって単に締められ得るので、このスキームによって、調整ねじを用いて圧力を設定する必要性がなくなる。
【0047】
結果として得られる均一な圧力分配によって、熱電装置の全領域がブロックと良好な熱接触にあることが保証され、熱シンクは、熱電装置への局所的熱応力を低減させる。
【0048】
図4は、本発明の他の重要な特徴を示す。プリント回路基板82およびデータを格納するメモリ装置96は熱電装置を囲み、電気接続を提供する。位置合わせピン84は熱シンクの穴86の中に配置され、位置合わせ穴88に貫入してプリント回路基板を熱シンクと位置合わせする。位置決めフレーム41は熱電装置の周りに配置され、スルー保持部92を有する横はり90を有する。ピン24(図1に図示)は、サンプルブロックの穴(図示せず)に嵌合し、位置決めフレーム中の保持部92を通って延び、熱シンクの穴94にさらに延びる。
【0049】
外周加熱器
サンプルブロックにわたっておよそ±0.2℃に温度均一性をもたらすためには、縁部か
らの熱損失を無くすために外周加熱器がサンプルブロックの周囲に配置される。好ましくは、加熱器は、サンプルブロックよりも内側寸法がわずかに大きい、低質量を有する膜タイプである。図10は外周加熱器74およびサンプルブロック36を囲むそのおおよその位置を示す。加熱器は所定位置に固定されず、すぐ近くに近接した空気を温めるためにサンプルブロックの外周の周りの空気中にただ単に配置される。
【0050】
図11は、外周加熱器74の詳細な図を示す。加熱器は、サンプルブロックの寸法によって決定されるように矩形であり、ブロックの外周の周囲の熱損失の様々に異なる量を反映するために、特定領域における別々の電力密度を有する。一致低電力密度領域76(0.73W/in2)は、矩形の短い側面の中心部分に配置され、一致高電力密度領域78(1.3W/in2)は、
長い方の側面に配置され、短い方の側面に延びる。
【0051】
図12に示されるように、外周加熱器に付与される電力は、サンプルブロックの温度に対応するように調節され、ブロック温度が高い場合、より多くの電力が加熱器に付与され、ブロック温度が低い場合、付与される電力がより少ない。
【0052】
加熱カバー
図5は、加熱されたカバー57を示す。加熱されたカバーは、サンプルが加熱されたときにサンプルバイアルキャップがしっかりと閉じたままであることを確実にするために、サンプルバイアルキャップに圧力を与える。
【0053】
さらに、バイアルに伝達された圧力は、サンプルブロックとの良好な熱接触を保証する。液体がチューブキャップ上で凝縮せずに、代わりに熱サイクリングが生じるチューブの底部にありつづけることを確実にするために、カバーがコンピュータ制御下でサンプルの温度よりも高い温度に加熱される。これは、上記した米国特許第5,475,610号に記載され
ている。本発明における加熱されたプラテン54は、キャップのドームを押圧せずに、キャップ外周を押圧する。プラテンは、加圧によって光学キャップが歪曲されないように、このように形状が決められた表面を有する。従って、サイクルされたチューブは、キャップを交換する必要なく、光学読取り器に直接伝達され得る。
【0054】
加熱されたプラテンは、キャップドームを外す(clear)ための窪み56を有するので、
チューブへの損害を回避するために圧力を与える前に、チューブ位置にプレートを位置合わせする必要がある。これは、プレートがチューブキャップに接触する前に、マイクロタイタートレイに位置合わせするプラテンの外周の周りに「スカート」58を用いることによって達成される。カバーは、サンプルブロック中にサンプルバイアルを挿入し、サンプルブロックを覆うために前に進め、バイアルを係合させるために下方に移動させることを可能にするためにカバーを後方に滑動させることを可能にする、PerkinElmerCorporation
によるPYRIS示差走査熱量計で用いられるものと類似の滑動機構を有する。
【0055】
理想的なランプレートの決定
最適化されたランプレートは、経験的に4℃/秒であると判断されている。これよりも高いブロックランプレートを有するいかなるシステムも、オーバーシュートの温度の利益を十分に利用することができず、従って、サイクル時間の有意でない低減を達成する。
【0056】
図6は、アップランプ(加熱レート)対電力を示す図であり、図7は、ダウンランプ(冷却レート)対電力を示す図である。
【0057】
ブロックを周囲よりも高い温度に加熱する場合、ジュール加熱およびゼーベック熱ポンピングの両方が、伝導に逆らってサンプルブロックを加熱するように作用する。ブロックを周囲よりも高い2つの温度の間に冷却する場合、ゼーベック熱ポンピングおよび伝導が、ジュール加熱に逆らって作用する。冷却中、伝導によるブロックからの熱の流れに逆らってブロック温度を定常に保持するために、かなりの電力が必要とされる。従って、ゼロの電力が付与されても、ブロックは、かなりのレートで冷却される。電流が増加するに従って、ゼーベック効果が、得られる冷却を増加させる。しかし、電流がさらに増加すると、電流の二乗に比例するジュール効果がそれに引き継いですぐに、ゼーベック冷却に逆らう作用を開始する。従って、追加の電力の付与が、必要とされる冷却効果に逆らって作用する点に達する。加熱モードでは、これらの2つの効果が一緒に伝導に逆らって作用し、上限には達しない。実際には、加熱電力対入力電流は、ほぼ線形である。この理由で、設計基準は、冷却レート要求を満たすことを中心としている。加熱レートは、より多くの電力の付与によりいつでも達成され得る。
【0058】
TEDの出力の特徴付け
以下の方程式は、熱電冷却器の低温側からの熱の流れの合計を示す。
【0059】
【数1】
ここで、
tc=冷却器の低温側温度
th=冷却器の高温側温度
tavg=tcおよびthの平均
R(t)=温度の関数としての冷却器の電気抵抗
S(t)=温度の関数としての冷却器のゼーベック係数
K(t)=温度の関数としての冷却器のコンダクタンス
I=冷却器に付与される電流
Qc=冷却器の低温側からの熱の流れの合計
である。
【0060】
所望の熱の流れQcと、高温側および低温側の温度tcおよびthとが与えられると、上記方程式は、I、即ち、Qcを生成するために必要とされる電流、について解かれる。この方程式の解は、以下の3つの目的のために使用される。
【0061】
1)線形温度遷移またはランプを達成するため。
【0062】
線形温度遷移のためには、一定の熱出力が必要とされる。温度tcおよびthが変化しているときに一定の熱出力を維持するためには、周期的に方程式1のIの解を求めることが必要である。その結果は、その後に冷却器に付与される電流である。誤差を補償するために、比例積分導関数(proportionalintegral derivative)(PID)制御ループが適用される。ここで、
PIDへの誤差入力=設定値でのレート−実際のレート
であり、PIDからの出力は、パーセントQとして解釈される。
【0063】
2)所望の温度範囲にわたって、線形PID温度設定値制御アルゴリズムを達成するため。
【0064】
PID制御への入力は、誤差信号tc−設定値である。
【0065】
PID制御からの出力は、Qmaxの%として解釈される。
【0066】
方程式1は、電流値Iを決定するために使用される。この電流値Iにより、電流温度条件下での、PID制御により出力されるQmaxの%が得られる。
【0067】
3)温度遷移が時間に関する温度の導関数dT/dtによりブロック温度の関数として規定される、非線形温度遷移またはランプを達成するため。
【0068】
この関数は、冷却については、5℃の増分のdT/dtデータ点である、ブロック温度Tを含む表により近似され、加熱については、一次方程式により近似される。サンプル質量がdT/dtプロファイルに及ぼすわずかな影響は、測定可能であるが、無視される。温度遷移の間に必要とされる合計熱質量MCp(ジュール/°K)が分かれば、所望のレートプロファイルdT/dt(°K/秒)を達成するために必要とされる熱出力量Q(ジュール/秒)は、いかなる温度であっても、以下の方程式により与えられる。
【0069】
【数2】
方程式1の解は、電流値Iを決定するために使用され、この電流値Iにより、現在の温度条件下での所望のQが得られる。このプロセスは、温度遷移中、周期的に繰り返される。
【0070】
オーバーシュートおよびアンダーシュートの制御
達成され得るランプレートと、その結果として得られるサイクル時間とには、現実的な限界がある。サンプルは、サンプルチューブとチューブの幾何学的形状との関数であるブロック温度に関する時定数を有する。チューブは工業規格であるため、チューブの幾何学的形状を低減することはできない。これは、サンプルチューブの壁温が、例えば水浴への浸漬などによりステップ関数として変化しても、サンプル温度が指数関数的に設定値に近づくため、サンプルは、有限のランプ時間を有することを意味する。これは、動的に、ブロックがプログラムされた温度を制御された態様でオーバーシュートするようにさせることにより補償され得る。これは、サンプルが設定値に達するのにかかる時間を最小にする手段として、ブロック温度が、設定値よりも高くされ再び設定値に戻されることを意味する。可能なランプレートが増加するに従って、サンプルが設定値に達する時間を最小にするために必要とされるオーバーシュートはより大きくなり、すぐに現実的な限界に達する。これは、平均サンプル温度は設定値をオーバーシュートしないが、チューブ内の境界液体層がある程度オーバーシュートするために起こる。プライミング温度に冷却する場合、オーバーシュートが大きすぎると、非特定的なプライミングが得られ得る。従って、最良の利点は、この最大ランプレートを、アップランプおよびダウンランプの両方で対称である最適化されたオーバーシュートと組み合わせて使用するシステムにおいて、得られるはずである。
【0071】
図8は、温度のオーバーシュートおよびアンダーシュートを予測および補償するための図である。制御された態様でブロック温度を設定値よりも高くし再び設定値に戻すために、システムはまず、ブロック温度Tbn+1を測定し、次いで、以下の方程式を解く。
【0072】
【数3】
ここで、Tbは、測定されたブロック温度であり、Tsは、計算されたサンプル温度であり、Tsfは、ブロックが時間tnで降温した場合の最終の計算されたサンプル温度であり、Rは、サンプルブロックとサンプルとの間の熱抵抗であり、Cは、サンプルの熱キャパシタンス(thermalcapacitance)であり、mは、点TbとTsfとの間により規定さ
れる線の傾きであり、trは、サンプルブロックが設定値から離れていったときと同じレートでシステムがサンプルブロックを設定値に近づける場合に、サンプルブロックが設定値に戻るのにかかる時間である。
【0073】
結果として得られたTsfnが、設定値付近の特定の誤差ウィンドウ内であれば、システムは、サンプルブロックが設定値から離れていったときと同じレートで、サンプルブロックを設定値に戻す。結果として得られたTsfnが特定の誤差ウィンドウの外側であれば、システムは、サンプルブロックを、同じレートで設定値から離れ続けさせる。設定値に向かって戻っている間、上記と同じ比例積分導関数(PID)制御ループが適用される。
【0074】
サンプル温度の決定
サンプルバイアル中のサンプルの温度は、図13に示されるモデルを用いることにより決定される。ここで、
TBlkは、測定されたベースプレート温度であり、
TSmpは、計算されたサンプル温度であり、
TPlasticは、計算されたプラスチック温度であり、
TCvrは、測定されたカバー温度であり、
R1は、ブロックとサンプル混合物との間のプラスチックバイアルの熱抵抗であり、
C1は、同じ混合物の熱キャパシタンスであり、
R2およびR3は、サンプル混合物とカバーとの間のプラスチックバイアルと並列な空気の熱抵抗を表し、
C2は、サンプル混合物とカバーとの間のプラスチックバイアルの熱キャパシタンスである。
【0075】
上記モデルは、TBlk=mt+TBlk0、TCvr=Kであり且つ初期条件がゼロでない場合、TSmp(t)およびTPlastic(t)について解かれる。図14に示されるように、初期条件およびTBlkの傾きを唯一の変数とすると、方程式は、要素に分解し直され(refactored)、TsmpおよびTPlasticについての方程式を与える。
【0076】
以下の関係が与えられると、
【0077】
【数4−1】
【0078】
【数4−2】
サンプル温度方程式の係数は、以下のようになり、
【0079】
【数5】
プラスチックバイアル温度方程式の係数は、以下のようになる。
【0080】
【数6】
ここで、Tはサンプリング周期0.174秒である。
図13のモデルを用いると、以下のようになる。
【0081】
【数7−1】
【0082】
【数7−2】
現在選択されているサンプル体積を示すために、これらの係数は各PCRプロトコルの始めに計算し直される。TSmpおよびTPlasticは、制御タスクの繰り返しのたびに計算し直される。
【0083】
一定温度サイクルの間にサンプルブロック設定値TBlkSPを決定するために、TSmpについての方程式を用いて、Tblkが決定される。
【0084】
【数8】
一定温度を維持する場合、傾き=0であり、TSmp=TSmp0=TSmpSP(サンプル温度設定値)であり、
【0085】
【数9】
である。
【0086】
プラスチックおよびカバーの温度変化を示すために、TBlkSPについての方程式は制御ループの通過のたびに解かれ、サンプルブロック設定値を更新する。
【0087】
較正診断
制御ソフトウェアは、較正診断を含む。較正診断は、すべての機器が同様に動作するように、機器によって異なる熱電冷却器の性能の変動が補償されることを可能にする。サンプルブロック、熱電装置、および熱シンクは、一緒に組み立てられ、上記のクランプ機構を用いて締め付けられる。次いで、アセンブリは、既知の一連の温度プロファイルを通してランプされ、その間に、アセンブリの実際の性能が、特定の性能と比較される。熱電装置に供給される電力が調節され、このプロセスは、実際の性能が仕様と一致するまで繰り返される。次いで、この特徴付けプロセスの間に得られる熱特性は、アセンブリ上にあるメモリ装置に格納される。これは、ブロックアセンブリが、機器から機器に動かされ、なおかつ、仕様の範囲内で動作することを可能にする。
【0088】
AC抵抗測定
熱電装置の典型的な故障モードは、はんだ接合における疲れ破壊により引き起こされる抵抗の増加である。その結果、その接合の温度が上昇し、これにより、接合にさらに圧力がかかり、すぐに破局故障につながる。約20,000〜約50,000温度サイクル後に約5%のAC抵抗の増加を示す装置はすぐに故障することが、経験的に判断されている。問題の装置が熱の均一性の問題を引き起こす前に差し迫った故障を検出するために、熱電装置のAC抵抗は、機器によりモニタされる。
【0089】
本実施形態は、フィードバック制御システムを用いて実際の測定を自動化し、熱電装置をユニットから取り出す必要を無くす。制御システムは、一方側に取り付けられる熱シンクと、他方側に取り付けられるサンプルブロックとにより引き起こされる、熱電装置の2つの表面間の温度差を補償する。制御システムは、熱電装置に、その2つの表面温度を等しくさせ、その後に、AC抵抗測定が行われる。マイクロコントローラは、AC測定値の基準時間に多項式計算を行い、周囲温度誤差を補償する。
【0090】
図9は、サンプルブロック36、熱電装置の層60、ならびに、システムマイクロコントローラ62およびバイポーラ電力増幅器64とインタフェースされる熱シンク34を示す。熱シンク38に既に存在する温度センサと、ピアノ線からなるクリップ(図示せず)でサンプルブロック36に取り付けられる追加の温度センサとは、熱電装置の表面の温度差を決定するために使用される。
【0091】
バイポーラ電力増幅器は、装置に2方向に電流を供給する。一方の方向の電流は、サンプルブロックを加熱し、もう一方の方向の電流は、サンプルブロックを冷却する。バイポーラ電力増幅器はまた、熱電装置に供給されるAC電圧およびAC電流を測定するために、信号処理能力を有する。AC測定信号を、熱電装置にわたる温度差についてゼロ状態を生成する定常状態信号から分離するために、信号処理には、バンドパスフィルタ68が組み込まれる。
【0092】
マイクロコントローラは、測定情報を処理し且つリアルタイムでフィードバックを行うために必要な能力を組み込む。マイクロコントローラはまた、AC抵抗の時間履歴と、熱電装置の温度サイクル数とを格納し、この情報を、ディスプレイ70上でオペレータに表示する。AC測定は通常、初期ターンオンの間に行われる。しかし、AC測定は、キーパッド72を用いてオペレータにより自己診断が呼び出されると、起動され得る。温度センサのための信号処理およびAC抵抗測定とともに、アナログ−デジタルおよびデジタル−アナログ変換器もまた、この変換器がデジタル信号処理を行うようにマイクロコントローラに組み込まれる。
【0093】
環境からの熱電装置領域のシール
熱電装置は、シールにより環境中の湿気から保護され、チャンバは、シリカゲルなどの乾燥剤の使用により、乾燥状態に維持される。シールは、銀の電気鋳造物から、周囲のサポートに接続し、それにより、ブロックからの縁部損失を増加する。これらの損失は、低熱伝導率の圧力シール98の使用、および、上記の周囲加熱器の使用により最小にされる。シール98は、ほぼ平行四辺形の断面を有し、図15に示されるようにシール98をサンプルブロックの縁部に保持するために、幾つかのタブ100が、シール98の下面の周囲に間隔をあけて配置される。
【0094】
シール98は、まずサンプルブロックの上部の周囲110にRTVゴム(図示せず)を付与することにより設置される。次いで、シール98は、RTVゴムの上に置かれる。シールの周囲120には、より多くのRTVゴムが付与され、次いで、RTVゴム−シールの組み合わせに接するカバー(図示せず)が設置される。より効果的なシールをもたらすために、カバーは、印刷回路板上のガスケット(図示せず)にも接するスカートを有する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うためのコンピュータ制御機器の分野に
関する。より詳細には、本発明は、熱サイクルを用いることによって多数のサンプル上で同時に反応を行い、非常に正確な結果を生じさせる自動化された機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明の背景は、実質的に、米国特許第5,475,610号に述べられおり、この米国特許は
本明細書で参考として援用される。
【0003】
PCR工程を用いてDNA(デオキシリボ核酸)を増幅するためには、いくつかの異なる温度インキュベーション期間(incubationperiod)を通じて特別に構成された液体反応混合物をサイクルさせることが必要である。反応混合物は、増幅されるDNAと、増幅されるDNAの伸長産物(extensionproducts)を生成可能なサンプルDNAに対して十分相補的な少なくとも二つのプライマーとを含む様々な成分からなる。PCRに対して重要であるのは、熱サイ
クリングの概念である。すなわち、DNAを溶融するステップ、結果として得られる一本鎖
に短いプライマーをアニールするステップ、およびこれらのプライマーを伸長して二本鎖DNAの新しい複製物を生成するステップを交互に行うことである。熱サイクリングにおい
て、PCR反応混合物は、DNAを溶融するための約90℃の高温からプライマーアニーリングおよび伸長のためのおよそ40℃から70℃のより低い温度までで繰り返しサイクルされる。概して、サイクル中では、できるだけ迅速にサンプル温度から次の温度に変えることが望ましい。化学反応は、それらの各段階について最適な温度を有する。従って、最適ではない温度で費やされる時間が短くなることは、より良好な化学的結果が達成されることを意味する。また、各上記インキュベーション温度で反応混合物を保持するための最小時間が、この各インキュベーション温度に達した後で必要とされる。これらの最小インキュベーション時間は、一サイクルを完了するためにかかる最小時間を確立する。サンプルインキュベーション温度の間の遷移におけるいかなる時間も、この最小サイクル時間に付加される時間である。サイクル数はかなり多いので、この付加的な時間は、増幅を完了するために必要となる総時間を不必要に長くする。
【0004】
いくつかの以前の自動化されたPCR機器において、サンプルチューブが、金属ブロック
上のサンプルウェル中に挿入される。PCR工程を行うために、金属ブロックの温度は、規
定された温度およびPCRプロトコルファイルにおいてユーザによって指定された時間に従
ってサイクルされる。サイクリングは、コンピュータおよび関連付けられた電子機器によって制御される。金属ブロックが温度を変化させるので、様々なチューブ中のサンプルは同様の温度変化を受ける。しかし、これらの以前の機器において、サンプル温度の差は、サンプル金属ブロック中の場所毎の温度のばらつきによって生じる。温度勾配がブロックの材料中に存在し、それにより、あるサンプルはサイクル中の特定の時間で他のサンプルとは異なる温度を有する。さらに、サンプルブロックからサンプルへの熱伝達において遅延が存在し、これらの遅延はサンプルブロックにわたって異なる。これらの温度差および熱伝達における遅延により、PCR工程の収量がサンプルバイアル毎に異なる。PCR工程を首尾良くかつ有効に行い、かつ、いわゆる定量PCRを可能にするためには、これらの時間遅
延および温度誤差は、最大限まで最小化されなければならない。サンプルブロック上の様々な場所での温度のばらつき、必要とされる時間、サンプルへおよびサンプルからの熱伝達における遅延を最小化するという問題は、サンプルを含む領域のサイズが標準の8×12マイクロタイタープレート中におけるほどに大きくなるときに、特に深刻になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の自動化されたPCR機器の別な問題は、温度サイクリングの間に反応混合物の実際
の温度を正確に予測することである。混合物の化学反応は、その各段階について最適温度を有するために、実際の温度を得ることは、良好な分析結果のために重要である。各バイアル中の混合物の温度の実際の測定は、各バイアルの容量が小さくバイアルの数が多いために、実施不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明によると、一連の温度エクスカーション(excursion)を通じてサンプルをサイ
クルし得るアセンブリと、加熱されたカバーと、工程を制御するためのコンピュータとを備えた、ポリメラーゼ連鎖反応を行うための装置が提供される。
【0007】
本発明は、迅速な温度エクスカーションのために低熱質量(thermal mass)を有するサンプルブロックもさらに包含する。サンプルブロックは、好ましくは、均一な全体の熱分散のために銀から製造され、均一な横方向熱分散のために底面プレートを有する。さらに、熱損失および結果として生じる中心から縁への温度勾配をさらに相殺するために、中心ピンが熱シンクへの導電路として用いられる。
【0008】
本発明は、ペルチエ熱電装置を用いて迅速な加熱および冷却を達成するための方法および装置も提供する。これらの装置は互いに綿密に整合される。これらの装置は、熱膨張および収縮を最小化するために一側面上で打抜きアルミナを用いて構成される。これらの装置は、一致した加熱レートおよび冷却レートを達成するために、特定の寸法を用いてテルル化ビスマス(bismuthtelluride)で構成される。これらの装置は、これらの熱負荷特
性をさらに低減させるために最小銅厚および最小セラミック厚を用いて設計され、指定された量の特定の高温はんだを用いて組み立てられる。
【0009】
本発明は、熱伝導および縁からの損失を制限するために外周溝を有して構成される熱シンクにも導かれる。さらに、熱シンクは、一定の温度の維持および冷却の両方の補助となるために、関連づけられた可変速度ファンを有する。
【0010】
本発明は、熱電装置の間に配置された熱シンクにサンプルブロックを保持するためのクランプ機構にも導かれる。この機構は、最小の熱負荷で均一に分散された圧力を提供するように設計される。この設計により、サンプルブロックと熱電装置との間および熱電装置と熱シンクとの間の界面として熱グリースを用いることが可能になる。
【0011】
サンプルブロックにわたって熱のばらつきを最小化するための外周加熱器も提供される。外周加熱器は、縁からの熱損失に対抗するためにサンプルブロックの周囲に配置される。サンプルブロックの温度に比例して電力が加熱器に付与され、サンプルブロックの温度が高い場合、より多くの電力が付与され、サンプルブロックの温度が低い場合、付与される電力がより少ない。
【0012】
凝縮を防止するために、サイクリングの間にサンプルチューブを閉状態に維持し、かつ、チューブの上部を加熱するように設計された加熱カバーも提供される。加熱カバーは、キャップの光学特性を歪めるのを回避するために、サンプルチューブキャップ外周に圧力を与える。カバーは、サンプルチューブトレイに嵌合するスカートを用いて自己位置合わせする。
【0013】
本発明は、サイクル時間を最小化するためにサンプルブロック温度オーバーシュート(overshoot)およびアンダーシュート(undershoot)を利用するように決定される理想的な
温度ランプレート(temperatureramp rate)を決定するための方法および装置にも導かれる。
【0014】
本発明は、線形温度制御ならびに線形および非線形温度ランプを達成するために熱電冷却装置からの熱出力を特徴付けるための方法および装置も含む。
【0015】
本発明はさらに、PCRプロトコルの間にいずれもの与えられた時間でサンプルバイアル
中で反応混合物の実際の温度を予測するための方法に導かれる。
【0016】
本発明は、全ての機器が同様に作動するように、熱電装置の性能のばらつきを補償する較正診断を用いるための方法および装置も含む。サンプルブロック、熱電装置および熱シンクからなるアセンブリの熱特性および性能は、基板上の(on-board)メモリ装置に格納され、それによってアセンブリが別の機器に向かって移動し、同様に振舞うことを可能にする。
【0017】
本発明は、装置故障の早期の指示を提供するために熱電装置のAC抵抗を測定するための方法および装置をさらに含む。
1.複数の液体反応混合物においてポリメラーゼ連鎖反応を行うための装置であって、該液体反応混合物を含む複数のバイアルを含み、該バイアルは、上部および下部を有し、該装置は、
一連の温度エクスカーション(excursions)通して該バイアルをサイクルさせるためのアセンブリと、
該バイアルに直接着座力を付与するため、および、該バイアルの該上部に一定の温度を付与するためのカバーと、
該アセンブリの該温度エクスカーションと、該カバーの該一定の温度とを制御するための計算装置と、を含む、装置。
2.上記アセンブリが、
上記バイアルを受けるためのサンプルブロックと、
複数の熱電装置と、
熱シンクと、
該サンプルブロックと該熱シンクとの間でペルチエ熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、
該サンプルブロックの外周の周りに緩く配置される加熱器と、
第1の端部および第2の端部を有するピンと、を含み、該第1の端部は、該サンプルブロックと密に接し、該第2の端部は、該熱シンクと密に接し、該サンプルブロックと該熱シンクとの間の熱経路を提供する、項目1に記載の装置。
3.上記サンプルブロックが、
サンプルバイアルを受けるための複数のサンプルウェルであって、各ウェルが頂部および底部を有する複数のサンプルウェルと、
該サンプルウェルの該頂部を接続する上部サポートプレートと、を含む、項目2に記載の装置。
4.上記上部サポートプレートおよび上記サンプルウェルが、単片として電気鋳造される、項目3に記載の装置。
5.上記サンプルブロックが銀からなる、項目3に記載の装置。
6.上記サンプルウェルが、8×12のアレイに配列される、項目3に記載の装置。
7.上記サンプルブロックが矩形である、項目3に記載の装置。
8.上記複数のペルチエ熱電装置が、所定の入力電流について0.2℃以内の温度を提供するように合わされる、項目2に記載の装置。
9.上記ペルチエ熱電装置が、
接合された銅トレース(copper traces)を有する第1のセラミック層と、
接合された銅トレースを有する第2のセラミック層であって、複数のセラミック素子を含む第2のセラミック層と、
該第1のセラミック層と該第2のセラミック層との間に配置され、該第1および第2のセラミック層上の該接合された銅トレースにはんだ付けされる、複数のテルル化ビスマスペレットと、を含む、項目2に記載の装置。
10.上記第1および第2の層のセラミックがアルミナである、項目9に記載の装置。
11.上記セラミック層が、0.508mmの厚さを有する、項目9に記載の装置。
12.上記テルル化ビスマスペレットが、高温のはんだを用いてはんだ付けされる、項目9に記載の装置。
13.上記熱電装置の抵抗率が、以下の方程式
R=nr(h/A)
から決定され、
ここで、Rは、該装置の抵抗率であり、nは、上記ペレットの数であり、rは、使用されるテルル化ビスマスの抵抗率であり、hは、該ペレットの高さであり、Aは、テルル化ビスマスの断面積である、項目9に記載の装置。
14.上記熱シンクが、
上側および下側を有するプレートと、
該下側から垂直に延びる複数のフィンと、
該上側の外周の周りに延び、該周囲からの熱損失を妨ぐ溝と、
該フィンに密に近接して配置され、該フィンを通る空気流を制御するファンと、
温度センサを受けるための、該プレート内の窪みと、を含む、項目2に記載の装置。
15.上記クランプ機構が、
脊柱部(spine)であって、該脊柱部内に、締め具を受けるための複数の開口部を有す
る脊柱部と、
該脊柱部から横方向に延びる複数の指部と、を含む、項目2に記載のアセンブリ。
16.上記脊柱部の形状が矩形である、項目15に記載の装置。
17.上記指部の形状が矩形である、項目15に記載の装置。
18.上記指部は、頂部および底部を有し、該底部よりも該頂部で、より小さい幅を有するようにテーパ状にされる、項目15に記載の装置。
19.上記指部が、上記脊柱部から横方向に突出する第1の端部と、該第1の端部から下方向に延びる突起と、を有する、項目15に記載の装置。
20.上記指部が、傾斜した前縁部を有する、項目15に記載の装置。
21.上記開口部の各々が、対応する指部に密に近接して配置される、項目15に記載の装置。
22.上記加熱器が、フレーム状膜キャリアに埋め込まれる電気抵抗性の経路を含む、項目2に記載の装置。
23.上記電気抵抗性の経路が、第1の電力密度を有する、上記フレーム状キャリアの反対側に配置される部分の第1の組と、第2の電力密度を有する、該フレーム状キャリアの反対側に配置される部分の第2の組と、を含む、項目22に記載の装置。
24.上記アセンブリに関するデータを格納することができる関連メモリ装置をさらに含む、項目2に記載の装置。
25.上記カバーが、
上記バイアルに関して垂直方向および水平方向に変位可能なプラテンを含み、該プラテンが、
該バイアルの場所に対応する開口部であって、該バイアルの外周に対応する外周を有する開口部のアレイと、
該プラテンの外周に下方向に延びるスカートであって、標準マイクロタイタートレイ(microtitertray)の周囲に対応する寸法を有し、該プラテンの垂直方向の変位中に該トレイの該周囲を係合するように構成され、それにより、該プラテンの該開口部に、該バイアルの該周囲を係合させ、該バイアルに着座力を付与し、該サンプルバイアルを受けるための、該サンプルバイアルおよび該アセンブリの壁の間のすべりばめを維持するスカートと、
該プラテンを強制的に降ろして該着座力を維持するための手段と、
該プラテンと密に接するように配置され、該プラテンを一定の温度に維持する加熱手段と、を含む、項目1に記載の装置。
26.上記装置の温度を変えるための少なくとも1つの装置からなる上記アセンブリが、上記熱電装置のAC抵抗を測定するためのシステムをさらに含む、項目1に記載の装置。27.少なくとも1つの装置が、第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面と、を有し、上記システムが、
該第1の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第1の温度センサと、
該第2の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第2の温度センサと、
上記熱電装置に電力を提供するためのバイポーラ増幅器回路と、
該熱電装置にわたってAC電圧を検知し、該AC電圧を表すDC電圧を生成するための回路と、
該熱電装置を介するAC電流を検知し、該AC電流を表すDC電圧を生成するための回路と、
該第1および第2の温度センサから該信号を受け取るようにプログラムされるマイクロコントローラと、を含み、
該マイクロコントローラはさらに、該第1および第2の温度センサの該信号が等しい温度を示すように、該バイポーラ増幅器に、該熱電装置に電力を提供させるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧が、該バイポーラ増幅器の電力に重ねられるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧を検知するための該回路により生成される該電圧と、AC電流を検知するための該回路からの該電圧とを受け取るようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該電圧から、該熱電装置のAC抵抗を計算するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、多項式計算を行うことにより、周囲温度誤差を補償するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該補償されたAC抵抗測定値を格納するようにプログラムされる、項目26に記載の装置。
28.第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面とを有する熱電装置のAC抵抗を測定する方法であって、
該第1の加熱および冷却表面の温度を測定する工程と、
該第2の加熱および冷却表面の温度を測定する工程と、
ペルチエ熱電装置に電力を付与して、該第1の加熱および冷却表面と、該第2の加熱および冷却表面に、同じ温度を達成させる工程と、
該熱電装置にわたってAC電圧を印加する工程と、
該熱電装置にわたって該AC電圧を測定する工程と、
該熱電装置を介するAC電流を測定する工程と、
該測定されたAC電圧および該測定されたAC電流から、該熱電装置のAC抵抗を計算する工程と、を包含する、方法。
29.周囲温度誤差を補償するための計算を行って、補償AC抵抗測定値を計算する工程と、
該補償AC抵抗測定値を格納する工程と、をさらに包含する、項目28に記載の方法。30.少なくとも第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面とを有し、該第1の表面を該第2の表面よりも高い温度にし且つ該第2の表面を該第1の表面よりも低い温度にする態様で動作する熱電装置を用いて、線形温度遷移を達成する方法であって、
該より低い温度の表面から、所望の熱の流れを決定する工程と、
該熱電装置の電気抵抗を、温度の関数として決定する工程と、
該熱電装置のゼーベック係数を、温度の関数として決定する工程と、
該熱電装置の伝導を、温度の関数として決定する工程と、
該より低い温度の表面の温度を測定する工程と、
該より高い温度の表面の温度を測定する工程と、
該より低い温度の表面および該より高い温度の表面の平均温度を計算する工程と、
温度の関数としての該熱電装置の該電気抵抗と、温度の関数としての該熱電装置の該ゼーベック係数と、温度の関数としての該熱電装置の該伝導と、該より低い温度の表面の温度と、該より高い温度の表面の温度と、該より低い温度の表面および該より高い温度の表面の平均温度と、の関数として該所望の熱の流れを達成するために必要とされる電流を計算する工程と、を包含する、方法。
31.サンプルバイアル中の混合物の温度を決定する方法であって、該バイアルは、上部および下部を有し、装置に含まれ、該装置が、
一連の温度エクスカーションを通して該バイアルをサイクルさせるためのアセンブリであって、該バイアルを受けるためのサンプルブロックをさらに含むアセンブリと、
該バイアルに着座力を付与するため、および、該バイアルの該上部に一定の温度を付与するためのカバーと、
該アセンブリの該温度エクスカーションと、該カバーの該一定の温度と、を制御するための計算装置と、を含み、該方法が、
該サンプルブロックの温度を測定する工程と、
該カバーにより付与される温度を測定する工程と、
該サンプルブロックと該混合物との間の該バイアルの熱抵抗を決定する工程と、
該混合物と該カバーとの間の該バイアルと並列な空気の熱抵抗を決定する工程と、
該混合物の熱キャパシタンスを決定する工程と、
該混合物と該カバーとの間の該バイアルの熱キャパシタンスを決定する工程と、
該サンプルブロックの該温度と、該カバーにより付与される該温度と、該サンプルブロックと該混合物との間の該バイアルの該熱抵抗と、該混合物と該カバーとの間の該バイアルと並列な空気の該熱抵抗と、該混合物の該熱キャパシタンスと、該混合物と該カバーとの間の該バイアルの該熱キャパシタンスと、の関数として該混合物の温度を計算する工程と、を包含する、方法。
32.一連の温度エクスカーションを通してサンプルをサイクルさせるためのアセンブリを較正する方法であって、該アセンブリは、バイアルを受けるためのサンプルブロックと、複数の熱電装置と、熱シンクと、該サンプルブロックと該熱シンクとの間にペルチエ熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、該アセンブリに関するデータを格納することができるメモリ装置と、を含み、該方法が、
該熱電装置に電力を付与し、該アセンブリを、所望の一連の温度エクスカーションを通してサイクルさせる工程と、
実際の温度エクスカーションを測定する工程と、
該実際の温度エクスカーションを、該所望の温度エクスカーションと比較する工程と、
該実際の温度エクスカーションが該所望の温度エクスカーションと一致するように、該熱電装置に付与される該温度を調節する工程と、
該調節された電力を該メモリ装置に記録して、所望の一連の該温度エクスカーションを得る際にさらに利用する工程と、を包含する、方法。
33.一連の温度エクスカーションを通して反応混合物のバイアルをサイクルさせるためのアセンブリであって、
該反応混合物のバイアルを受けるためのサンプルブロックと、
複数の熱電装置と、
熱シンクと、
該サンプルブロックと該熱シンクとの間に該熱電装置を締め付けるように配置されるクランプ機構と、
該サンプルブロックの外周の周りに配置される加熱器と、
第1の端部および第2の端部を有するピンであって、該第1の端部が該サンプルブロックと密に接し、該第2の端部が該熱シンクと密に接して、該サンプルブロックと該熱シンクとの間に熱経路を提供するピンと、
該アセンブリおよび該加熱器の該温度エクスカーションを制御するための計算装置と、を含む、アセンブリ。
34.サンプルバイアルを保持するためのサンプルブロックであって、
サンプルバイアルを受けるための複数のサンプルウェルであって、各ウェルが頂部および底部を有する、複数のサンプルウェルと、
該サンプルウェルの該頂部を接続する上部サポートプレートと、
該サンプルウェルの該底部を接続する底部プレートと、を含む、サンプルブロック。
35.上記上部サポートプレートおよび上記サンプルウェルが、単片として電気鋳造される、項目34に記載のサンプルブロック。
36.上記サンプルブロックが銀からなる、項目34に記載のサンプルブロック。
37.上記サンプルウェルが、8×12のアレイに配列される、項目34に記載のサンプルブロック。
38.上記サンプルブロックが矩形である、項目34に記載のサンプルブロック。
39.上側および下側を有するプレートと、
該下側から垂直に延びる複数のフィンと、
該上側の外周の周りに延び、該周囲からの熱損失を妨ぐ溝と、
該フィンに密に近接して配置され、該フィンを通る空気流を制御するファンと、
温度センサを受けるための、該プレート内の窪みと、を含む、熱シンクアセンブリ。
40.第1の加熱および冷却表面と、第2の加熱および冷却表面と、を有するペルチエ熱電装置のAC抵抗を測定するための装置であって、システムが、
該第1の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第1の温度センサと、
該第2の加熱および冷却表面と熱連通するように配置される第2の温度センサと、
該熱電装置に電力を提供するためのバイポーラ増幅器回路と、
該熱電装置にわたってAC電圧を検知し、該AC電圧を表すDC電圧を生成するための回路と、
該熱電装置を介するAC電流を検知し、該AC電流を表すDC電圧を生成するための回路と、
該第1および第2の温度センサから該信号を受け取るようにプログラムされるマイクロコントローラと、を含み、
該マイクロコントローラはさらに、該第1および第2の温度センサの該信号が等しくなるように、該バイポーラ増幅器に、該熱電装置に電力を提供させるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧が、該バイポーラ増幅器の電力に重ねられるようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、AC電圧を検知するための該回路により生成される該電圧と、AC電流を検知するための該回路からの該電圧とを受け取るようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該電圧から、該熱電装置のAC抵抗を計算するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、多項式計算を行うことにより、周囲温度誤差を補償するようにプログラムされ、
該マイクロコントローラはさらに、該補償されたAC抵抗測定値を格納するようにプログラムされる、装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明によるサンプルブロックの一部の断面図である。
【図2】図2は、本発明に従って構成された熱電装置の拡大等角投影図である。
【図2A】図2Aは、本発明に従って構成された熱電装置の側面立面図である。
【図3】図3は、本発明による熱シンクの切欠き部分等角投影図である。
【図4】図4は、サンプルブロック、熱電装置および熱シンクを含むアセンブリの分解組立て図である。
【図5】図5は、本発明による加熱カバーの等角投影図である。
【図6】図6は、アップランプ(加熱レート)対電力を示すチャートである。
【図7】図7は、ダウンランプ(冷却レート)対電力を示すチャートである。
【図8】図8は、本発明による温度オーバーショットおよびアンダーショットを予測および補償するためのチャートである。
【図9】図9は、本発明のAC抵抗測定回路のブロック図である。
【図10】図10は、外周加熱器およびサンプルブロックを囲むその位置を示す。
【図11】図11は、図10の外周加熱器の詳細な図である。
【図12】図12は、サンプルブロックの温度の関数として外周加熱器に付与される電力を示す図である。
【図13】図13は、サンプルバイアル中のサンプルの熱モデルを示す。
【図14】図14は、図13の熱モデルの初期条件の図である。
【図15】図15は、サンプルブロック、および環境から熱電装置を保護するために設計されたシールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な記載
概して、PCRの場合には、いくつかの理由のために、サイクル中の要求される温度間で
サンプル温度をできるだけ迅速に変えることが望ましい。第一に、化学反応はその各段階について最適温度を有するので、最適ではない温度で費やされる時間が短くなるということは、より良好な化学結果が達成されることを意味する。第二に、各プロトコルについて最小のサイクル時間を設定するいずれもの与えられた設定点で最小時間が通常要求され、設定点間での遷移に費やされるいかなる時間もこの最小時間に付加される。サイクル数は通常かなり多いので、この遷移時間が、増幅を完了するために必要とされる総時間に大幅に付加され得る。
【0020】
プロトコルの各ステップの間に各反応チューブが達する絶対時間は、産物の収量に対して重要である。産物は頻繁に定量化を受けるので、チューブ毎の産物収量はできる限り均一でなければならず、従って、定常状態および動的熱均一性の両方がブロックを通じて優れていなければならない。
【0021】
サンプルへおよびサンプルからの熱ポンピング(pumping)は、ペルチエ熱電装置を用
いて達成される。これらの装置は、直列に交互に接続されたn型およびp型のテルル化ビスマスのペレットから構成される。ペレット間の相互接続は、通常はセラミック(代表的にはアルミナ)である基板に接合された銅を用いて形成される。
【0022】
必要とされる熱ポンピングの量は、熱負荷およびランプレート、すなわち、温度が変化することを必要とされるレートに依存する。遠心分離器などの多くの他のタイプの機器に整合する産業標準としてサンプルチューブが確立されているために、サンプルチューブの幾何学的形状およびサンプル容量は可変ではない。サンプル容量はユーザの必要性によって規定される。従って、設計変数は、主に、サンプルブロック、熱電装置、熱シンク、ファン、ならびに熱電装置間の熱界面媒体および熱シンクとサンプルブロックとの間の熱界面媒体の両方に影響を与える。
【0023】
ブロックの幾何学的形状は、横方向伝導に対する主要な要因であり、従って、熱電冷却器自体の熱均一性のいかなるばらつきも一様にするために、必要な熱均一性要件も満たさなければならない。迅速なランプレート(低熱質量を示す)および高い横方向伝導(大きい材料質量を示す)という矛盾する要件は、ベースプレートのブロック構造の容積(bulk)を集中させ、かつ、サンプルチューブを保持するブロックの上部の熱質量を最小化することによって満たされる。ブロック製造のための最適な材料は、相対的に低い熱質量および非常に良好な熱伝導を有する純銀である。また、銀は、電気鋳造にも非常に適している。実施においては、最適なブロックの幾何学的形状は、横方向伝導を提供する相対的に厚いベースプレートに固定されたサンプルチューブを保持するための軽い電気鋳造上部を有する。ブロックの熱質量は、材料が熱均一性に最も寄与するベースプレート中で集中される。ブロックの電気鋳造された部分は、二つのパラメータによって規定された最小厚を有する。すなわち、第一に、材料は、通常の取扱いについて扱いにくくなるように薄くされてはならない。第二に、壁の厚さは、サンプルチューブの上部から熱を伝導することが要求される。サンプル自体中でのサイクルはチューブの内部の対流(convection)によって達成され、サンプル温度はチューブの高さに沿って相対的に均一であるが、チューブ壁とベースプレートとの間の良好な熱伝導性によって、サンプルとベースプレートとの間の熱伝導のために利用可能な有効表面積が増加する。ベースプレート厚は、熱電冷却器の熱均一性と構造剛性との関数である横方向の伝導要件によって規定される最小値を有する。
【0024】
熱質量へ寄与するもう一つのものは、熱電冷却器自体の構造の一部を形成するアルミナセラミック層である。熱電冷却器の構造中には二つのアルミナ層があり、一つはサンプルブロック側面上に、もう一つは熱シンク側面上にある。層の厚さは、できる限り最小化されるべきであり、この場合は、アルミナ厚についての薄さの実施上の制限は、熱電冷却器製造の製造要件によって限定される。このセラミックの特別な層は、原則的には、熱質量をさらに減少させるカプトン(Kapton)の薄いシートなどの異なる層で全体が置き換えられ得るが、現時点では、冷却器はこの構造で利用可能であるが、信頼性が証明されていない。技術がさらに開発されれば、このような設計の冷却器が好ましくなり得ることが予測される。しかし、アルミナ薄層も、システム信頼性に寄与する。
【0025】
冷却器中の銅導電体は重要な熱負荷であり、システムの設計において見逃されない。銅トレースの厚さは、装置を通る運搬電流の要件によって規定される。電流が知られると、要求される銅の厚さが算出され得る。
【0026】
サンプルブロック
図1は、96個のウェル20を代表的に有するサンプルブロック36の一部の断面図を示し、各ウェルはサンプルバイアルを受容するためである。サンプルブロックは銀から構成され、上部支持板21およびベースプレート22に固定された一つの部品として電気鋳造されたサンプルウェル20を備える。ベースプレート22は、各個々の熱電装置の表面にわたる熱出力のいかなる差および一つの熱電装置から別の熱電装置への差を補償するための横方向伝導を提供する。
【0027】
いかなる熱システムにおいても常に境界損失は存在する。矩形構成においては、角部でより多くの熱損失が存在する。一つの解決法は、円形サンプルブロックを使用するものであるが、通常用いられているマイクロタイタートレイフォーマットは矩形であり、この形は存在する他の機器との適合性を保持するために用いられなければならない。絶縁などの全ての標準的な手段を用いて縁効果がなくされると、サンプルブロックの中心が角部よりも温かくなる傾向が残る。典型的には、サンプルブロックの熱均一性を規定するのはこの温度差である。本発明によると、中心温度は、サンプルブロックの中心から熱シンクまで小さい熱接続を提供することによって低下される。サンプルブロックの中心で「熱漏れ」として作用するピン24を用いることによって、サンプルブロックにわたる熱勾配は、許容されるレベルに低下され得る。要求される伝導の量はかなり小さく、1.5mm直径ステンレ
ス鋼ピンが十分であることが見出されている。さらに、GeneralElectricによって製造さ
れるポリマーULTEMからなるピンも用いられ得る。以下でより十分に記載されるように、
ピンは、図4に図示されるアセンブリの構成要素を配置し、所定位置に固定する補助を行うためにも役立つ。
【0028】
ペルチエ熱電装置(TED)
サンプルブロックの熱均一性は、PCR性能にとって重大である。均一性に影響を与える
最も重要な要因の一つは、装置間の熱電装置性能のばらつきである。良好な均一性を達成するために最も困難な時点は、周囲とは非常に異なる一定の温度サイクルの間である。実施上は、この温度サイクルは、およそ95℃の一定の温度サイクルである。与えられた入力電流について同一の温度を個々に生じさせる各熱シンクアセンブリのための一組の装置を製造するために、熱電装置はこれらの条件化で整合される。熱電装置は、いずれもの与えられたセット内で0.2℃以内に整合され、この値は、サンプルブロックベースプレートの
横方向伝導によって修正され得る最大の相違から導かれる。
【0029】
図2Aは、代表的なペルチエ熱電装置60の側面図を示す。装置は、二つのアルミナ層26の間に挟持されるテルル化ビスマスペレット30から構成される。ペレットは、アルミナ層上にめっきされた銅トレース29にはんだ接合28によって電気的に接続される。一つのアルミナ層は、電気接続を容易にするための延長部31を有する。延長された領域の厚さは、装置の熱負荷を低減させるために減少される。
【0030】
図2は、代表的なペルチエ熱電装置の等角投影図を示す。熱電装置の外側壁を形成するアルミナ層26は、サンプルブロック19とは異なるレートで温度サイクリングの間に膨張および収縮する。アルミナの運動は、内部テルル化ビスマスペレット30に接続するはんだ28に直接伝送される。膨張の範囲が小さくなるようにアルミナを切断してダイと称される小さい部品32にすることによって、この運動は飛躍的に低減され得る。ダイの最小サイズは、熱電装置を通って電流を運ぶために必要とされる銅トレースのサイズおよび取り扱いのために装置がある程度の強度を保持する要件によって規定される。
【0031】
熱電装置(0.508mmのオーダー)中で薄いアルミナ層を用いることによって熱負荷が低
減されるだけではなく、与えられた要求される熱ポンピングレートについて、熱伝導率kの増加によりペレットの端部が達する温度が低下することも意味する。はんだ接合にかかる熱応力を低減させることによって、信頼性が高くなる。
【0032】
概して、PCRにおいて、反応温度は周囲より高く、35℃から96℃の範囲である。最も重
要な場合において、伝導による熱の流れがブロックから熱シンクに向かう場合、上記の二つの周囲温度の間でブロックが加熱または冷却される。システムサイクル時間を最適化するために重要となるのは、最適化されたブロック構成が与えられたと仮定すると、抵抗加熱のジュール効果による熱ランプレートに与えられるブースト(boost)に対して、伝導
によって冷却が与えられたときのランプレートへのブーストの釣り合いをとることである。
【0033】
与えられた熱電装置中のテルル化ビスマスペレットの断面が一定であると考えられる場合は、熱ランプレートは、ペレットの高さを増加させることによって上昇する。これは、熱電装置を通る伝導経路がより長くされ、それによってkを低減させるためである。これは、定常状態で与えられたブロック温度を維持するために要求される電流を低減させる効果も有する。低下ランプ、すなわち、ブロックを冷却している間には、低減したkは、伝導に対する寄与が低減され、低下ランプレートが減少することを意味する。
【0034】
逆に、テルル化ビスマスペレットの高さが与えられた断面に対し減少される場合、kは増加する。これによって、定常状態に上昇した温度を維持するために必要とされる電流が増加し、冷却ランプレートが上昇する。ブロック中の熱の大部分が熱シンクに直接伝導されるので、加熱ランプレートは減少さする。また、テルル化ビスマスペレット高さを減少させることによって、熱電装置を介する損失のために与えられた温度について必要とされる保持力が増加し、熱負荷が低減されて、与えられた電力について最大の可能なランプレートを増加する。従って、最適化された熱電装置は、加熱レートが冷却レートと一致するまで、テルル化ビスマスペレットの高さを調節することによって導き出され得る。
【0035】
ペレットについての比1:Aは、装置の抵抗も規定する。すなわち、
R=nr(h/A)
であり、ここでnはペレット数、rは使用されるテルル化ビスマスの抵抗率、hはペレットの高さ、およびAは断面積である。
【0036】
ゼーベック効果があるために、抵抗はAC抵抗として測定されなければならない。幾何学的形状は装置の抵抗を規定するので、高すぎる電流要件は増幅器のコストを上昇させるために装置がコスト有効電流対電圧比を用いなければならないという点で、別の設計限界に当たる。上記の銀電気鋳造ブロックについての釣り合いのとれた解決法は、
ペレット高さ=1.27mm
ペレット断面積=5.95mm2
である。
【0037】
熱サイクラが別の機器の一部として使用される、例えば、検出技術と統合される場合、改変された熱電装置幾何学的形状となる異なる電流源を用いることがより好都合であり得る。本実施態様における電流源は、装置および接地と直列である電流送出し抵抗器を有するクラスDタイプ切換えモード電力増幅器からなる。
【0038】
熱電装置は互いにはんだ付けされているので、過剰なはんだはテルル化ビスマスペレットの側面に逃げ得る。これが生じる場合、kは増加し、この結果としてマイルド(mild)スポットとも称される局所的な冷却スポットが生じる。これらの冷却スポットは、熱電装置の組み立て工程の間に最小量のはんだを適用することによって、数およびシビアリティが低減する。同一の理由で、接続ワイヤを熱電装置に取り付けるために用いられるはんだをペレットに確実に接触させないことも必要である。
【0039】
高温はんだは、改善された高温性能を有するだけではなく、応力反転によって故障に対して概してより抵抗性があり、従って、この用途において非常に適切であることが示されている。本発明で用いられるはんだは、米国特許第5,441,576号に記載されているタイプ
のものであり得る。
【0040】
熱シンク
図3は、熱電装置39およびサンプルブロック36と共に組み立てらえた熱シンク34を示す。位置付けフレーム41は、サンプルブロックおよび熱シンクと位置合わせし、それによってサンプルブロックにわたる温度均一性を確実にするために、熱電装置の周りに配置される。フレームは、Ultemまたは他の適した材料から構成され、取り扱いを容易にするため
に角部にタブ43を有する。熱シンク34は、概して平坦なベース34、およびベース35から延びるフィン37を有する。熱シンクの熱質量は、サンプルブロックおよび組み合わされるサンプルの熱質量よりも大幅に大きい。サンプルブロックおよびサンプルは合わせて、およそ100ジュール/°Kの熱質量を有し、熱シンクの熱質量はおよそ900ジュール/°Kである。これは、サンプルブロックは、汲み出された与えられた熱量について熱シンクよりも大幅に速く温度を明瞭に変えることを意味する。さらに、熱シンク温度は、図9に示されるように可変速度ファンを用いて制御される。熱シンクの温度は、熱シンク内の窪み40に配置されるサーミスタ38によって測定され、安定した熱シンク温度の維持がシステム性能の反復性を改善する、通常のPCRサイクリング温度範囲内に十分に入るおよそ45℃に熱シ
ンクを保持するために、ファン速度が変化される。ブロック温度が周囲を下回る値に設定されるとき、熱シンクは、システム電力消費を低減させ、ブロック熱均一性を最適化するために達成され得る最も低い温度に設定される。これは、ただ単にファンを全速度で動作させることによって達成される。
【0041】
熱シンク温度測定は、熱電装置からの熱出力を線形化することにおいて以下に記載される熱電装置制御アルゴリスムによっても用いられる。
【0042】
熱シンク温度均一性は、ブロック温度の均一性に反映される。代表的には、熱シンクは、縁部よりも中心部の方が温かく、これによってブロックの角部を最も冷たくする他の効果を付加する。溝44は、熱伝達を制限するために熱電装置領域の外周の外で熱シンクに切りこまれ、溝によって境界を有する領域からの縁損失を低減させる。
【0043】
熱界面およびクランピング機構
熱電装置製造者は、耐用年数を改善するために熱電装置が圧力下で保持されることを推奨している(推奨される圧力は、選択される熱界面媒体(media)によって規定されるこ
とが多い)。推奨される圧力は製造者によって異なるが、サイクリング用途については30から100psiの範囲内である。
【0044】
熱電装置の各側面上でコンプライアンス層(compliant layer)として作用するために
用いられ得るシート形状で利用可能な多くの熱界面媒体があるが、熱グリースがこの用途について大幅に優れた熱性能を与えることが証明されている。最適な条件下でさえ30psi
またはより高い圧力を要求することが示されている他のコンプライアンス層とは異なり、熱グリースは、良好な熱接触が確実に形成されるために高い圧力を要求しない。また、熱グリースは、膨張および収縮銀ブロックと熱電装置表面との間で有効な潤滑剤として作用し、耐用年数を向上させる。Thermalloy,Inc.によって製造されたThemalcoteII熱グリー
スが用いられ得る。
【0045】
銀ブロックは相対的に可撓性かつ軟質であるので、横方向クランピング圧力を非常に有効には伝達し得ない。しかし、熱界面媒体が熱グリースであるので、必要とされるクランピング力は低い。
【0046】
図4は、クランピング機構の好ましい実施態様を用いるアセンブリの分解組み立て図を示す。各クランプ46は、突起部49から延びる一連のフィンガ48からなる。フィンガ48は、サンプルブロック36の壁20の間に嵌合するように、すなわち、サンプルブロック36のベースプレート22上の一連の対応する場所に圧力を与えるように、寸法、形状および空間が決められている。電気鋳造されたサンプル壁面のオープンハニカム構造によって、フィンガがある距離だけブロックに挿入されることが可能になり、それによってエッジクランピングスキームが行うよりもより均一に圧力が与えられる。これらのフィンガは、クランプが熱負荷に大きく加わらないように、クランプの質量とサンプルブロックとの間の接触領域を最小化するために一連の局所点で圧力を与える。クランプは、本用途について必要な剛性を有するガラス充填プラスチックから成形される。圧力は、分離したクランプ構造であり得る取付けポスト50に対してフィンガを変形させることによって与えられるが、好ましくは、クランプ46と一体に形成される。クランプ46は、クランプ46中の対応する穴53を通り、次いで熱シンク34のねじ穴55中に延びる一連のねじ52を用いて、熱シンクの表面と面一に保持される。クランプは標準トルク技術によって単に締められ得るので、このスキームによって、調整ねじを用いて圧力を設定する必要性がなくなる。
【0047】
結果として得られる均一な圧力分配によって、熱電装置の全領域がブロックと良好な熱接触にあることが保証され、熱シンクは、熱電装置への局所的熱応力を低減させる。
【0048】
図4は、本発明の他の重要な特徴を示す。プリント回路基板82およびデータを格納するメモリ装置96は熱電装置を囲み、電気接続を提供する。位置合わせピン84は熱シンクの穴86の中に配置され、位置合わせ穴88に貫入してプリント回路基板を熱シンクと位置合わせする。位置決めフレーム41は熱電装置の周りに配置され、スルー保持部92を有する横はり90を有する。ピン24(図1に図示)は、サンプルブロックの穴(図示せず)に嵌合し、位置決めフレーム中の保持部92を通って延び、熱シンクの穴94にさらに延びる。
【0049】
外周加熱器
サンプルブロックにわたっておよそ±0.2℃に温度均一性をもたらすためには、縁部か
らの熱損失を無くすために外周加熱器がサンプルブロックの周囲に配置される。好ましくは、加熱器は、サンプルブロックよりも内側寸法がわずかに大きい、低質量を有する膜タイプである。図10は外周加熱器74およびサンプルブロック36を囲むそのおおよその位置を示す。加熱器は所定位置に固定されず、すぐ近くに近接した空気を温めるためにサンプルブロックの外周の周りの空気中にただ単に配置される。
【0050】
図11は、外周加熱器74の詳細な図を示す。加熱器は、サンプルブロックの寸法によって決定されるように矩形であり、ブロックの外周の周囲の熱損失の様々に異なる量を反映するために、特定領域における別々の電力密度を有する。一致低電力密度領域76(0.73W/in2)は、矩形の短い側面の中心部分に配置され、一致高電力密度領域78(1.3W/in2)は、
長い方の側面に配置され、短い方の側面に延びる。
【0051】
図12に示されるように、外周加熱器に付与される電力は、サンプルブロックの温度に対応するように調節され、ブロック温度が高い場合、より多くの電力が加熱器に付与され、ブロック温度が低い場合、付与される電力がより少ない。
【0052】
加熱カバー
図5は、加熱されたカバー57を示す。加熱されたカバーは、サンプルが加熱されたときにサンプルバイアルキャップがしっかりと閉じたままであることを確実にするために、サンプルバイアルキャップに圧力を与える。
【0053】
さらに、バイアルに伝達された圧力は、サンプルブロックとの良好な熱接触を保証する。液体がチューブキャップ上で凝縮せずに、代わりに熱サイクリングが生じるチューブの底部にありつづけることを確実にするために、カバーがコンピュータ制御下でサンプルの温度よりも高い温度に加熱される。これは、上記した米国特許第5,475,610号に記載され
ている。本発明における加熱されたプラテン54は、キャップのドームを押圧せずに、キャップ外周を押圧する。プラテンは、加圧によって光学キャップが歪曲されないように、このように形状が決められた表面を有する。従って、サイクルされたチューブは、キャップを交換する必要なく、光学読取り器に直接伝達され得る。
【0054】
加熱されたプラテンは、キャップドームを外す(clear)ための窪み56を有するので、
チューブへの損害を回避するために圧力を与える前に、チューブ位置にプレートを位置合わせする必要がある。これは、プレートがチューブキャップに接触する前に、マイクロタイタートレイに位置合わせするプラテンの外周の周りに「スカート」58を用いることによって達成される。カバーは、サンプルブロック中にサンプルバイアルを挿入し、サンプルブロックを覆うために前に進め、バイアルを係合させるために下方に移動させることを可能にするためにカバーを後方に滑動させることを可能にする、PerkinElmerCorporation
によるPYRIS示差走査熱量計で用いられるものと類似の滑動機構を有する。
【0055】
理想的なランプレートの決定
最適化されたランプレートは、経験的に4℃/秒であると判断されている。これよりも高いブロックランプレートを有するいかなるシステムも、オーバーシュートの温度の利益を十分に利用することができず、従って、サイクル時間の有意でない低減を達成する。
【0056】
図6は、アップランプ(加熱レート)対電力を示す図であり、図7は、ダウンランプ(冷却レート)対電力を示す図である。
【0057】
ブロックを周囲よりも高い温度に加熱する場合、ジュール加熱およびゼーベック熱ポンピングの両方が、伝導に逆らってサンプルブロックを加熱するように作用する。ブロックを周囲よりも高い2つの温度の間に冷却する場合、ゼーベック熱ポンピングおよび伝導が、ジュール加熱に逆らって作用する。冷却中、伝導によるブロックからの熱の流れに逆らってブロック温度を定常に保持するために、かなりの電力が必要とされる。従って、ゼロの電力が付与されても、ブロックは、かなりのレートで冷却される。電流が増加するに従って、ゼーベック効果が、得られる冷却を増加させる。しかし、電流がさらに増加すると、電流の二乗に比例するジュール効果がそれに引き継いですぐに、ゼーベック冷却に逆らう作用を開始する。従って、追加の電力の付与が、必要とされる冷却効果に逆らって作用する点に達する。加熱モードでは、これらの2つの効果が一緒に伝導に逆らって作用し、上限には達しない。実際には、加熱電力対入力電流は、ほぼ線形である。この理由で、設計基準は、冷却レート要求を満たすことを中心としている。加熱レートは、より多くの電力の付与によりいつでも達成され得る。
【0058】
TEDの出力の特徴付け
以下の方程式は、熱電冷却器の低温側からの熱の流れの合計を示す。
【0059】
【数1】
ここで、
tc=冷却器の低温側温度
th=冷却器の高温側温度
tavg=tcおよびthの平均
R(t)=温度の関数としての冷却器の電気抵抗
S(t)=温度の関数としての冷却器のゼーベック係数
K(t)=温度の関数としての冷却器のコンダクタンス
I=冷却器に付与される電流
Qc=冷却器の低温側からの熱の流れの合計
である。
【0060】
所望の熱の流れQcと、高温側および低温側の温度tcおよびthとが与えられると、上記方程式は、I、即ち、Qcを生成するために必要とされる電流、について解かれる。この方程式の解は、以下の3つの目的のために使用される。
【0061】
1)線形温度遷移またはランプを達成するため。
【0062】
線形温度遷移のためには、一定の熱出力が必要とされる。温度tcおよびthが変化しているときに一定の熱出力を維持するためには、周期的に方程式1のIの解を求めることが必要である。その結果は、その後に冷却器に付与される電流である。誤差を補償するために、比例積分導関数(proportionalintegral derivative)(PID)制御ループが適用される。ここで、
PIDへの誤差入力=設定値でのレート−実際のレート
であり、PIDからの出力は、パーセントQとして解釈される。
【0063】
2)所望の温度範囲にわたって、線形PID温度設定値制御アルゴリズムを達成するため。
【0064】
PID制御への入力は、誤差信号tc−設定値である。
【0065】
PID制御からの出力は、Qmaxの%として解釈される。
【0066】
方程式1は、電流値Iを決定するために使用される。この電流値Iにより、電流温度条件下での、PID制御により出力されるQmaxの%が得られる。
【0067】
3)温度遷移が時間に関する温度の導関数dT/dtによりブロック温度の関数として規定される、非線形温度遷移またはランプを達成するため。
【0068】
この関数は、冷却については、5℃の増分のdT/dtデータ点である、ブロック温度Tを含む表により近似され、加熱については、一次方程式により近似される。サンプル質量がdT/dtプロファイルに及ぼすわずかな影響は、測定可能であるが、無視される。温度遷移の間に必要とされる合計熱質量MCp(ジュール/°K)が分かれば、所望のレートプロファイルdT/dt(°K/秒)を達成するために必要とされる熱出力量Q(ジュール/秒)は、いかなる温度であっても、以下の方程式により与えられる。
【0069】
【数2】
方程式1の解は、電流値Iを決定するために使用され、この電流値Iにより、現在の温度条件下での所望のQが得られる。このプロセスは、温度遷移中、周期的に繰り返される。
【0070】
オーバーシュートおよびアンダーシュートの制御
達成され得るランプレートと、その結果として得られるサイクル時間とには、現実的な限界がある。サンプルは、サンプルチューブとチューブの幾何学的形状との関数であるブロック温度に関する時定数を有する。チューブは工業規格であるため、チューブの幾何学的形状を低減することはできない。これは、サンプルチューブの壁温が、例えば水浴への浸漬などによりステップ関数として変化しても、サンプル温度が指数関数的に設定値に近づくため、サンプルは、有限のランプ時間を有することを意味する。これは、動的に、ブロックがプログラムされた温度を制御された態様でオーバーシュートするようにさせることにより補償され得る。これは、サンプルが設定値に達するのにかかる時間を最小にする手段として、ブロック温度が、設定値よりも高くされ再び設定値に戻されることを意味する。可能なランプレートが増加するに従って、サンプルが設定値に達する時間を最小にするために必要とされるオーバーシュートはより大きくなり、すぐに現実的な限界に達する。これは、平均サンプル温度は設定値をオーバーシュートしないが、チューブ内の境界液体層がある程度オーバーシュートするために起こる。プライミング温度に冷却する場合、オーバーシュートが大きすぎると、非特定的なプライミングが得られ得る。従って、最良の利点は、この最大ランプレートを、アップランプおよびダウンランプの両方で対称である最適化されたオーバーシュートと組み合わせて使用するシステムにおいて、得られるはずである。
【0071】
図8は、温度のオーバーシュートおよびアンダーシュートを予測および補償するための図である。制御された態様でブロック温度を設定値よりも高くし再び設定値に戻すために、システムはまず、ブロック温度Tbn+1を測定し、次いで、以下の方程式を解く。
【0072】
【数3】
ここで、Tbは、測定されたブロック温度であり、Tsは、計算されたサンプル温度であり、Tsfは、ブロックが時間tnで降温した場合の最終の計算されたサンプル温度であり、Rは、サンプルブロックとサンプルとの間の熱抵抗であり、Cは、サンプルの熱キャパシタンス(thermalcapacitance)であり、mは、点TbとTsfとの間により規定さ
れる線の傾きであり、trは、サンプルブロックが設定値から離れていったときと同じレートでシステムがサンプルブロックを設定値に近づける場合に、サンプルブロックが設定値に戻るのにかかる時間である。
【0073】
結果として得られたTsfnが、設定値付近の特定の誤差ウィンドウ内であれば、システムは、サンプルブロックが設定値から離れていったときと同じレートで、サンプルブロックを設定値に戻す。結果として得られたTsfnが特定の誤差ウィンドウの外側であれば、システムは、サンプルブロックを、同じレートで設定値から離れ続けさせる。設定値に向かって戻っている間、上記と同じ比例積分導関数(PID)制御ループが適用される。
【0074】
サンプル温度の決定
サンプルバイアル中のサンプルの温度は、図13に示されるモデルを用いることにより決定される。ここで、
TBlkは、測定されたベースプレート温度であり、
TSmpは、計算されたサンプル温度であり、
TPlasticは、計算されたプラスチック温度であり、
TCvrは、測定されたカバー温度であり、
R1は、ブロックとサンプル混合物との間のプラスチックバイアルの熱抵抗であり、
C1は、同じ混合物の熱キャパシタンスであり、
R2およびR3は、サンプル混合物とカバーとの間のプラスチックバイアルと並列な空気の熱抵抗を表し、
C2は、サンプル混合物とカバーとの間のプラスチックバイアルの熱キャパシタンスである。
【0075】
上記モデルは、TBlk=mt+TBlk0、TCvr=Kであり且つ初期条件がゼロでない場合、TSmp(t)およびTPlastic(t)について解かれる。図14に示されるように、初期条件およびTBlkの傾きを唯一の変数とすると、方程式は、要素に分解し直され(refactored)、TsmpおよびTPlasticについての方程式を与える。
【0076】
以下の関係が与えられると、
【0077】
【数4−1】
【0078】
【数4−2】
サンプル温度方程式の係数は、以下のようになり、
【0079】
【数5】
プラスチックバイアル温度方程式の係数は、以下のようになる。
【0080】
【数6】
ここで、Tはサンプリング周期0.174秒である。
図13のモデルを用いると、以下のようになる。
【0081】
【数7−1】
【0082】
【数7−2】
現在選択されているサンプル体積を示すために、これらの係数は各PCRプロトコルの始めに計算し直される。TSmpおよびTPlasticは、制御タスクの繰り返しのたびに計算し直される。
【0083】
一定温度サイクルの間にサンプルブロック設定値TBlkSPを決定するために、TSmpについての方程式を用いて、Tblkが決定される。
【0084】
【数8】
一定温度を維持する場合、傾き=0であり、TSmp=TSmp0=TSmpSP(サンプル温度設定値)であり、
【0085】
【数9】
である。
【0086】
プラスチックおよびカバーの温度変化を示すために、TBlkSPについての方程式は制御ループの通過のたびに解かれ、サンプルブロック設定値を更新する。
【0087】
較正診断
制御ソフトウェアは、較正診断を含む。較正診断は、すべての機器が同様に動作するように、機器によって異なる熱電冷却器の性能の変動が補償されることを可能にする。サンプルブロック、熱電装置、および熱シンクは、一緒に組み立てられ、上記のクランプ機構を用いて締め付けられる。次いで、アセンブリは、既知の一連の温度プロファイルを通してランプされ、その間に、アセンブリの実際の性能が、特定の性能と比較される。熱電装置に供給される電力が調節され、このプロセスは、実際の性能が仕様と一致するまで繰り返される。次いで、この特徴付けプロセスの間に得られる熱特性は、アセンブリ上にあるメモリ装置に格納される。これは、ブロックアセンブリが、機器から機器に動かされ、なおかつ、仕様の範囲内で動作することを可能にする。
【0088】
AC抵抗測定
熱電装置の典型的な故障モードは、はんだ接合における疲れ破壊により引き起こされる抵抗の増加である。その結果、その接合の温度が上昇し、これにより、接合にさらに圧力がかかり、すぐに破局故障につながる。約20,000〜約50,000温度サイクル後に約5%のAC抵抗の増加を示す装置はすぐに故障することが、経験的に判断されている。問題の装置が熱の均一性の問題を引き起こす前に差し迫った故障を検出するために、熱電装置のAC抵抗は、機器によりモニタされる。
【0089】
本実施形態は、フィードバック制御システムを用いて実際の測定を自動化し、熱電装置をユニットから取り出す必要を無くす。制御システムは、一方側に取り付けられる熱シンクと、他方側に取り付けられるサンプルブロックとにより引き起こされる、熱電装置の2つの表面間の温度差を補償する。制御システムは、熱電装置に、その2つの表面温度を等しくさせ、その後に、AC抵抗測定が行われる。マイクロコントローラは、AC測定値の基準時間に多項式計算を行い、周囲温度誤差を補償する。
【0090】
図9は、サンプルブロック36、熱電装置の層60、ならびに、システムマイクロコントローラ62およびバイポーラ電力増幅器64とインタフェースされる熱シンク34を示す。熱シンク38に既に存在する温度センサと、ピアノ線からなるクリップ(図示せず)でサンプルブロック36に取り付けられる追加の温度センサとは、熱電装置の表面の温度差を決定するために使用される。
【0091】
バイポーラ電力増幅器は、装置に2方向に電流を供給する。一方の方向の電流は、サンプルブロックを加熱し、もう一方の方向の電流は、サンプルブロックを冷却する。バイポーラ電力増幅器はまた、熱電装置に供給されるAC電圧およびAC電流を測定するために、信号処理能力を有する。AC測定信号を、熱電装置にわたる温度差についてゼロ状態を生成する定常状態信号から分離するために、信号処理には、バンドパスフィルタ68が組み込まれる。
【0092】
マイクロコントローラは、測定情報を処理し且つリアルタイムでフィードバックを行うために必要な能力を組み込む。マイクロコントローラはまた、AC抵抗の時間履歴と、熱電装置の温度サイクル数とを格納し、この情報を、ディスプレイ70上でオペレータに表示する。AC測定は通常、初期ターンオンの間に行われる。しかし、AC測定は、キーパッド72を用いてオペレータにより自己診断が呼び出されると、起動され得る。温度センサのための信号処理およびAC抵抗測定とともに、アナログ−デジタルおよびデジタル−アナログ変換器もまた、この変換器がデジタル信号処理を行うようにマイクロコントローラに組み込まれる。
【0093】
環境からの熱電装置領域のシール
熱電装置は、シールにより環境中の湿気から保護され、チャンバは、シリカゲルなどの乾燥剤の使用により、乾燥状態に維持される。シールは、銀の電気鋳造物から、周囲のサポートに接続し、それにより、ブロックからの縁部損失を増加する。これらの損失は、低熱伝導率の圧力シール98の使用、および、上記の周囲加熱器の使用により最小にされる。シール98は、ほぼ平行四辺形の断面を有し、図15に示されるようにシール98をサンプルブロックの縁部に保持するために、幾つかのタブ100が、シール98の下面の周囲に間隔をあけて配置される。
【0094】
シール98は、まずサンプルブロックの上部の周囲110にRTVゴム(図示せず)を付与することにより設置される。次いで、シール98は、RTVゴムの上に置かれる。シールの周囲120には、より多くのRTVゴムが付与され、次いで、RTVゴム−シールの組み合わせに接するカバー(図示せず)が設置される。より効果的なシールをもたらすために、カバーは、印刷回路板上のガスケット(図示せず)にも接するスカートを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−187124(P2012−187124A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146977(P2012−146977)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【分割の表示】特願2010−30714(P2010−30714)の分割
【原出願日】平成10年3月30日(1998.3.30)
【出願人】(310009775)アプライド バイオシステムズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【分割の表示】特願2010−30714(P2010−30714)の分割
【原出願日】平成10年3月30日(1998.3.30)
【出願人】(310009775)アプライド バイオシステムズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】
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