説明

PCRのリアルタイムでの多重分析のためのシステムおよび方法

本発明は、多重化能力を備えたPCRのリアルタイム測定のための方法およびシステムを提供する。ある態様は、PCR過程における増幅産物の固定化のための蛍光的にコード化された超常磁性ミクロスフェア、およびPCR過程を補助するための制御可能な熱サイクリングをも行える測定デバイスの撮像チャンバーを用いる方法およびシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月13日に提出された米国仮特許出願第60/869,742号の優先権を主張し、その全開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.発明の分野
本発明は一般に、PCRなどのDNA増幅の測定を行うためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、多重化能力を備えたPCRの「リアルタイム」測定に関する。ある態様は、常磁性ミクロスフェアなどの粒子、およびPCR過程を補助するための制御可能な熱サイクリングをも行える測定デバイスの撮像チャンバーを用いるシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、生きた生物を用いることなしにDNAを酵素的に複製するための分子生物学の手法である。PCRは、医学および生物学の研究所で、遺伝性疾患の発見、遺伝子フィンガープリントの同定、感染症の診断、遺伝子のクローニング、実父確定検査およびDNAコンピューティングといったさまざまな作業のために一般的に用いられている。PCRは、その比類のない増幅および正確さの能力から、核酸検出のために選択すべき方法として分子生物学者に受け入れられている。DNA検出は典型的にはPCR反応のエンドポイントまたはプラトー相で行われるため、開始テンプレートを定量することは困難になる。リアルタイムPCRまたはキネティックPCRは、反応が進行するのに伴うアンプリコン濃度を記録することにより、エンドポイントPCR分析の能力を増進させる。アンプリコン濃度は、増幅された標的に付随する蛍光シグナルの変化を介して記録されることが最も多い。リアルタイムPCRはまた、閉鎖系の中で行われうるために混入が限定的である点でもエンドポイント検出より有利である。他の利点には、感度、ダイナミックレンジ、速度がより大きいこと、および必要とされる過程がより少ないことが含まれる。
【0004】
いくつかのアッセイ化学手法(assay chemistry)がリアルタイムPCR検出法に用いられている。これらのアッセイ化学手法には、二本鎖DNA結合色素、二重標識オリゴヌクレオチド、例えばヘアピンプライマーおよびヘアピンプローブなどの使用が含まれる。他の化学手法には、エキソヌクレアーゼを基にしたプローブ、例えば加水分解プローブが含まれる。さまざまなPCR法およびリアルタイムPCR法が、米国特許第5,656,493号(特許文献1);第5,994,056号(特許文献2);第6,174,670号(特許文献3);第5,716,784号(特許文献4);第6,030,787号(特許文献5);および第6,174,670号(特許文献6)に開示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0005】
現行のリアルタイムPCRの弱点は、その限られた多重化能力である。現行のリアルタイムPCR技術は、溶液中に遊離しているレポーター蛍光色素を用いる。この設計は、多重反応内の各アッセイについてスペクトル的に異なる蛍光色素の使用を必要とする。例えば、4つの標的配列を検出するように設計された多重反応は、対照を含めずに、スペクトル識別によって4種類の浮遊性蛍光色素を識別しうる装置を必要とすると考えられる。これらの要求条件は実際的な多重化能力を限定するだけでなく、そのような装置は典型的には複数のレーザーおよびフィルターを必要とするため、コストも高くなる。現行のリアルタイムPCR技術は、約1〜6 plexの多重化能力を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,656,493号
【特許文献2】米国特許第5,994,056号
【特許文献3】米国特許第6,174,670号
【特許文献4】米国特許第5,716,784号
【特許文献5】米国特許第6,030,787号
【特許文献6】米国特許第6,174,670号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、DNAの増幅および検出のためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、リアルタイムPCRの多重化能力を大きく高めるシステムおよび方法を提供する。1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、標識剤、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された粒子から分かるように、複数のコード化された粒子上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物を、コード化された粒子上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された粒子、およびコード化された粒子上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き付ける段階;(e)コード化された粒子からのシグナルを検出し、増幅産物からのシグナルを直接的(例えば、増幅産物中に組み込まれた標識)または間接的(例えば、増幅産物とハイブリダイズした、標識された相補的な核酸配列)に検出する段階;(f)コード化された粒子、およびコード化された粒子上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、さらなる増幅サイクルを行う前にチャンバーの表面から分散させる段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0008】
粒子は、磁気特性を有する粒子、および/またはそれらを溶液中で二次元表面上に留めることを可能にする密度を備えた粒子であってよい。粒子は、磁力、重力もしくはイオン力により、または化学結合により、または当業者に公知である任意の他の手段により、何らかの様式で二次元表面上に留まりうる。粒子は、ガラス、ポリスチレン、ラテックス、金属、量子ドット、ポリマー、シリカ、金属酸化物、セラミックス、または核酸と結合させるために適した任意の他の物質、または続いて核酸と結び付くことのできる化学物質もしくはタンパク質からなってよい。粒子は棒状もしくは球状もしくは円板状であってもよく、または任意の他の形状を含んでもよい。粒子はまた、それらの形状またはサイズまたは物理的位置によって識別可能であってもよい。粒子は、色素を含むこと、または1つもしくは複数の色素を複数の比もしくは濃度で含むためにスペクトル的に異なってよく、またはバーコードもしくはホログラフィック画像もしくは他の刻印形態の粒子コード化によって識別可能であってもよい。粒子が磁性粒子である場合には、磁場の印加によってそれらをチャンバーの表面に引き付けることができる。同様に、磁場の除去によって磁性粒子をチャンバーの表面から分散させることもできる。磁性粒子は好ましくは常磁性または超常磁性である。常磁性および超常磁性粒子は、磁場の非存在下では無視しうる磁性しか有しないが、磁場の印加によって粒子内の磁性ドメインの整列化が誘導され、場の発生源に対する粒子の誘引を結果的にもたらす。場が除去されると、磁性ドメインはランダムな配向に戻り、そのため粒子間の磁性誘引も反発もなくなる。超常磁性の場合には、ドメインのランダム配向へのこの復帰はほぼ即時的であるが、常磁性材料は磁場の除去からある程度の期間の後もドメインの整列化を保つと考えられる。粒子が十分な密度を有する場合には、それらを重力によってチャンバーの底面に結び付け、ボルテックス処理、超音波処理または流体運動などによるチャンバーの撹拌によってチャンバーの底面から分散させることができる。また、チャンバーの撹拌は、粒子が磁性、またはイオン力、または吸引力、または減圧濾過、または親和性または、親水性もしくは疎水性、またはそれらの任意の組み合わせといった他の力によってチャンバーの表面に引き付けられている方法およびシステムにおいて分子を分散させるのを補助するために用いることもできる。
【0009】
1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、標識剤、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて標識された増幅産物を形成させる段階;(c)標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物を検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0010】
標識剤は、レポーターと呼ぶこともでき、それと結び付いた分子(例えば、核酸配列)の検出を容易にする分子のことである。核酸を標識するために用いうる数多くのレポーター分子が公知である。直接的なレポーター分子には、フルオロフォア、発色団およびラジオフォア(radiophore)が含まれる。フルオロフォアの非限定的な例には、赤色蛍光スクアリン(squarine)色素、例えば2,4-ビス[1,3,3-トリメチル-2-インドリニデンメチル]シクロブテンジイリウム-1,3-ジオキサレートなど、赤外色素、例えば2,4ビス[3,3-ジメチル-2(1H-ベンズ[e]インドリニデンメチル)]シクロブテンジイリウム-1,3-ジオキサレートなど、または橙色蛍光スクアリン色素、例えば2,4-ビス[3,5-ジメチル-2-ピロリル]シクロブテンジイリウム-1,3-ジオロレート(diololate)が含まれる。フルオロフォアのそのほかの非限定的な例には、量子ドット、Alexa Fluor(登録商標)色素、AMCA、BODIPY(登録商標)630/650、BODIPY(登録商標)650/665、BODIPY(登録商標)-FL、BODIPY(登録商標)-R6G、BODIPY(登録商標)-TMR、BODIPY(登録商標)-TRX、Cascade Blue(登録商標)、Cy2(商標)、Cy3(商標)およびCy5(商標)を非限定的に含むCyDye(商標)、DNAインターカレート色素、6FAM(商標)、フルオレセイン、HEX(商標)、6-JOE、Oregon Green(登録商標)488、Oregon Green(登録商標)500、Oregon Green(登録商標)514、Pacific Blue(商標)、REG、フィコエリトリンおよびアロフィコシアニンを非限定的に含むフィコビリンタンパク質、Rhodamine Green(商標)、Rhodamine Red(商標)、ROX(商標)、TAMRA(商標)、TET(商標)、テトラメチルローダミンまたはTexas Red(登録商標)が含まれる。チラミド(PerkinElmer)などのシグナル増幅試薬を、蛍光シグナルを増強するために用いることもできる。間接的レポーター分子には、ストレプトアビジン-フィコエリトリンなどの別の分子を検出のために用いる必要のあるビオチンが含まれる。また、標識の対、例えば蛍光共鳴エネルギー転移対または色素クエンチャー対などを用いることもできる。
【0011】
標識された増幅産物は直接的または間接的に標識することができる。直接的な標識は、例えば、標識されたプライマーを用いて、標識されたdNTPを用いて、標識された核酸インターカレート剤、または上記のものの組み合わせを用いて達成することができる。間接的標識は、例えば、標識されたプローブを増幅産物とハイブリダイズさせることによって達成することができる。
【0012】
コード化された粒子、例えばコード化された磁性ビーズなどは、蛍光色素によってコード化することができる。蛍光色素によるコード化には、蛍光発光波長が異なるおよび/または蛍光強度が異なる蛍光色素を用いることができる。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための、各プライマー対の一方のプライマーが標識されている複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて標識された増幅産物を形成させる段階;(c)標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物を検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0014】
さらにもう1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数の分子ビーコンを混ぜ合わせる段階であって、分子ビーコンが、各分子ビーコンの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化された分子ビーコンとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化された分子ビーコンとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズからのシグナルおよび分子ビーコンからのシグナルを検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0015】
1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブセットを混ぜ合わせる段階であって、各プローブセットが、蛍光エネルギー転移対の第1のメンバーで標識されており、かつ、第1のプローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、コード化された磁性ビーズ上に固定化されている、第1のプローブと、蛍光エネルギー転移対の第2のメンバーを有する第2のプローブとを含む、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および増幅産物とハイブリダイズした蛍光エネルギー転移対からのシグナルを検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。ある局面において、蛍光エネルギー転移対からのシグナルは蛍光の増加である。他の局面において、蛍光エネルギー転移対からのシグナルは蛍光の減少である。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、試料中の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、核酸標的を含む試料、核酸標的の増幅の刺激のためのプライマー対、および核酸標的に対して相補的なプローブセットを混ぜ合わせる段階であって、プローブセットが、磁性ビーズ上に固定化されている第1のプローブと、標識を含む第2のプローブとを含む、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、プライマー対により増幅される核酸標的について増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせる段階;(d)磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)増幅産物とハイブリダイズした第2のプローブからのシグナルを検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。この方法はシングルプレックス(single-plex)またはマルチプレックス(multi-plex)として行うことができる。多重化は、第2のプローブ上に異なる標識を用いること、および/または第1のプローブが固定化されている粒子を標識もしくはコード化することによって達成することができる。
【0017】
もう1つの態様において、本発明は、試料中の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、核酸標的を含む試料、核酸標的の増幅の刺激のためのプライマー対、クエンチャー分子と連結されたdNTP、および核酸標的に対して相補的な蛍光標識されたプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、クエンチャー分子を含む増幅産物である、核酸標的の増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物を、磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)標識されたプローブからのシグナルを検出する段階であって、標識されたプローブからのシグナルの減少が、標識されたプローブとクエンチャー分子を含む増幅産物とのハイブリダイゼーションを意味する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。この方法はシングルプレックスまたはマルチプレックスで行うことができる。多重化は、プローブ上に異なる標識を用いること、および/またはプローブが固定化されている粒子を標識もしくはコード化することによって達成することができる。
【0018】
もう1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブセットを混ぜ合わせる段階であって、各プローブセットが、第1のプローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、コード化された磁性ビーズ上に固定化されている、第1のプローブと、標識を含む第2のプローブとを含む、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および増幅産物とハイブリダイズした第2のプローブからのシグナルを検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0019】
1つのさらなる態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、クエンチャー分子と連結されたdNTP、および複数の核酸標的に対して相補的な複数の蛍光標識されたプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてクエンチャー分子を含む増幅産物を形成させる段階;(c)増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および標識されたプローブからのシグナルを検出する段階であって、標識されたプローブからのシグナルの減少が、標識されたプローブとクエンチャー分子を含む増幅産物とのハイブリダイゼーションを意味する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0020】
もう1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料;複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対を混ぜ合わせる段階であって、各プライマー対が、標的特異的配列、標的特異的配列の5'側にあるタグ配列、および任意で標的特異的配列とタグ配列との間にあるブロッカーを含む第1のプライマー、ならびに標的特異的配列を含む第2のプライマー;標識剤;ならびに複数のプライマー対のタグ配列に対して相補的な複数のプローブを含み、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてタグ付加および標識された増幅産物を形成させる段階;(c)タグ付加および標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、ならびにコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズしたタグ付加および標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズ、ならびにタグ付加および標識された増幅産物を検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。ある局面において、標識剤は、プライマー対の第2のプライマーと結び付けられたレポーター分子である。他の局面において、標識剤は核酸インターカレート色素である。核酸インターカレート剤は、たとえ増幅が存在しなくても、ハイブリダイズした相補的タグを標識すると考えられることに注意すべきである。このことは、エンドポイント検出のみを行うPCRでは、増幅が成功したか否か、または検出されたシグナルが相補的タグを標識したインターカレート剤のみによるものか否かが明確でないため、問題になると考えられる。本明細書で開示する方法に従ってリアルタイムで行われるPCRを用いると、増幅の成功した増幅サイクル数が増加するのに伴って、インターカレート剤からのシグナルが増加するのが観察されるはずである。そのようにして、増幅の成功と相補的タグのみの標識との識別が可能になる。
【0021】
本明細書で開示する方法はさらに、試料中の核酸標的の初期量を定量する段階を含んでもよい。定量は例えば、対数目盛上で蛍光をサイクル数に対してプロットすることによって、リアルタイムPCRの指数期のあいだ存在するDNAの相対濃度を決定することを含みうる。続いて、その結果を、既知の量のDNAの系列希釈物のリアルタイムPCRによって作成された標準曲線と比較することによって、DNAの量を決定することができる。さらに、リアルタイムPCRを、存在量の少ないRNAを含め、試料中のRNAを定量するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせることもできる。
【0022】
本明細書で開示する方法は、複数のプライマー対が複数の標的核酸を単一のPCR反応で増幅しうるような多重化能力を提供する。ある態様においては、少なくとも6、7、8、9、10、11または12種類の異なるプライマー対が1つのPCR反応に存在する。いくつかの態様においては、8〜100、8〜80、8〜60、8〜40、8〜20、8〜18、8〜16、8〜12、10〜100、10〜80、10〜60、10〜40、10〜20、10〜18、10〜16、10〜12、12〜100、12〜80、12〜60、12〜40、12〜20、12〜18または12〜16種類の異なるプライマー対が1つのPCR反応に存在する。ある態様においては、少なくとも6、7、8、9、10、11または12種類の異なる標的核酸が1つのPCR反応に存在する。いくつかの態様においては、8〜100、8〜80、8〜60、8〜40、8〜20、8〜18、8〜16、8〜12、10〜100、10〜80、10〜60、10〜40、10〜20、10〜18、10〜16、10〜12、12〜100、12〜80、12〜60、12〜40、12〜20、12〜18または12〜16種類の異なる標的核酸が1つのPCR反応に存在する。PCR反応に存在するプローブは、ポリメラーゼによるプローブの伸長を防ぐために、ブロックされた3'ヒドロキシル基を含みうる。3'ヒドロキシル基は、例えば、リン酸基または3'逆方向dT(3' inverted dT)によってブロックすることができる。
【0023】
標的核酸配列は、関心対象の任意の配列であってよい。標的核酸配列を含む試料は、その核酸を含む任意の試料であってよい。本発明のある局面において、試料は、例えば、1つまたは複数の遺伝子突然変異または多型の有無に関してスクリーニングされようとする対象である。本発明のもう1つの局面において、試料は、ある病原体の有無に関して検査されようとする対象からのものである。試料を対象から入手する場合、それは、吸引、生検、拭き取り、静脈穿刺、脊椎穿刺、便試料または尿試料といった当業者に公知の方法によって入手しうる。本発明のいくつかの局面において、試料は水、土壌または大気試料といった環境試料である。本発明の他の局面において、試料は植物、細菌、ウイルス、真菌、原生動物または後生動物からのものである。
【0024】
各増幅サイクルは次の3つの段階を有する:変性段階、プライマーアニーリング段階およびプライマー伸長段階。増幅サイクルは、所望の量の増幅産物が生成されるまで反復することができる。典型的には、増幅サイクルは約10〜40回反復される。リアルタイムPCRのためには、増幅産物の検出は典型的には各増幅サイクルの後に行われると考えられる。しかし、本発明のある局面においては、増幅産物の検出を2回、3回、4回または5回の増幅サイクル毎に行うこともできる。また、わずか2回程度またはそれ以上の増幅サイクルで分析または検出が行われるように検出を行うこともできる。増幅サイクルを増幅の検出が行われるのと同じチャンバー内で行うこともでき、その場合にはこのチャンバーは、チャンバー内の温度を増幅サイクルの変性段階、プライマーアニーリング段階およびプライマー伸長段階のために調整しうるように発熱体を含むことが必要と考えられる。発熱体は典型的には、プロセッサの制御下に置かれると考えられる。しかし、増幅サイクルを、増幅の検出が行われるチャンバーとは異なるチャンバー内で行うこともでき、その場合には「増幅」チャンバーは発熱体を含むと考えられるが、「検出」または「撮像」チャンバーは発熱体を有する必要がないと考えられる。増幅および検出が別個のチャンバー内で行われる場合、増幅反応が行われる流体は、例えばポンプまたはピストンによってチャンバー間で移行させることができる。ポンプまたはピストンはプロセッサの制御下に置くことができる。または、流体を、例えばピペットを用いて手作業でチャンバー間で移行させることもできる。
【0025】
チャンバーは例えば、石英チャンバーであってよい。チャンバー内部の磁性粒子をチャンバーの表面に引き付けるために、永久磁石をチャンバーの表面に隣接させて配置することによって、またはチャンバーの表面に隣接させた電磁石の電源を入れることによって、磁場をチャンバーに印加することができる。磁石は、その磁場がチャンバー内部の磁性粒子をチャンバー表面に引き付けるのに十分なほど近接している限り、チャンバーと物理的に接触している必要はない。磁場は、永久磁石をチャンバーから離すように動かすことによって、または電磁石の電源を切ることによって、チャンバーから除去することができる。当然ながら、電源の入った電磁石を、永久磁石に関して上述したようにチャンバーに近づけるまたは遠ざけるように動かすことによって、チャンバーに適用すること、またはチャンバーから除去することもできる。増幅および検出が同じチャンバーで行われる態様において、磁場は、増幅サイクルのプライマーアニーリング段階中、増幅サイクルのプライマー伸長段階中、または増幅サイクル後に印加することができる。増幅および検出が異なるチャンバーで行われる態様において、磁場は典型的には、増幅サイクルの後に増幅反応液が検出チャンバーに移された時に印加されると考えられる。
【0026】
チャンバーの表面上のコード化された粒子および増幅産物は、本明細書に記載したもののような撮像システムを用いて検出することができる。例えば、コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物の検出は、コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物から発せられる蛍光波長および/または蛍光強度を撮像することを含みうる。撮像は、チャンバーの表面上のビーズを同定するためにデコーディング画像を撮影すること、およびチャンバーの表面上の増幅産物を検出するためにアッセイ画像を撮影することを含みうる。デコーディング画像とアッセイ画像の比較により、どの増幅産物が結合しているのがどのビーズであるかが示される。ビーズに結び付けられたプローブの独自性はビーズのコード化によって分かるため、プローブとハイブリダイズした増幅産物の独自性も決定することができる。本発明の方法はさらに、直接的または間接的に標識された増幅産物からのシグナルを、試料中のDNAまたはRNAの濃度と相関付けることができる段階を含んでもよい。この相関付けは、対数目盛上で蛍光をサイクル数に対してプロットすることによって、リアルタイムPCRの指数期のあいだ存在するDNAの相対濃度を決定する段階、およびその結果を既知の量のDNAまたはRNAの系列希釈物のリアルタイムPCRによって作成された標準曲線と比較する段階を含みうる。
【0027】
1つの態様において、本発明は、多重化されたリアルタイムPCRを行うためのシステムであって:サーマルサイクラー;サーマルサイクラーと連結された撮像システム;サーマルサイクラーに導入するために適合化された、コード化された磁性粒子;コード化された磁性粒子を固定化するためにサーマルサイクラーに選択的に導入される磁石、を含むシステムを提供する。
【0028】
本明細書に記載した任意の方法または組成物は、本明細書に記載した他の任意の方法または組成物に対して組み込むことができるものと想定している。
【0029】
特許請求の範囲における「または(or)」という用語の使用は、選択肢の択一のみを指すこと、または選択肢が互いに排他的であることが明示的に示されている場合を除き、「および/または」を意味して用いられるが、本開示は選択肢の択一のみおよび「および/または」を指すという定義も支持する。
【0030】
本出願の全体を通じて、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイスまたは方法に関する誤差の標準偏差を含むことを意味するために用いられる。
【0031】
長年にわたる特許法に従い、「1つの(a)」および「1つの(an)」という語は、特許請求の範囲または明細書において「含む(comprising)」という語とともに用いられた場合、別に明確に記述された場合を除き、1つまたは複数を表す。
【0032】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。しかし、これらの詳細な説明および具体的な例は、本発明の具体的な態様を示してはいるものの、本発明の精神および範囲内にあるさまざまな変化および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになると考えられるため、例示に過ぎないものとして与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下の図面は本明細書の一部をなしており、これらは本発明のある面をさらに示すために含められる。これらの図面の1つまたは複数を、本明細書中に提示した詳細な態様とともに参照することにより、本発明はさらに良く理解されると思われる。
【図1】ある撮像システムの概略図である。
【図2】図1に示されたシステムの機能的詳細を示しているブロック図である。
【図3】検出チャンバー内のミクロスフェアの関係を例示している概略図である。
【図4】検出チャンバー内のミクロスフェアの関係を例示している別の概略図である。
【図5】相補的核酸配列とハイブリダイズした時の、ヘアピンコンフォメーションおよびオープンコンフォメーションにある分子ビーコンプローブの説明図である。
【図6】相補的核酸配列とハイブリダイズした時の、オープンコンフォメーションにある分子ビーコンプローブの説明図である。磁石を撮像チャンバーに近接させて配置すると、分子ビーコンプローブの撮像チャンバーの表面上への固定化がもたらされるが、これはそれらが磁気応答性ミクロスフェアに結び付けられているためである。
【図7】FRET検出化学手法を例示している。
【図8】クエンチング分子が新たに合成されたDNA鎖に組み入れられ、相補的プローブがビーズの表面に結び付けられた蛍光色素により標識される検出化学手法を例示している。
【図9】撮像システムのブロック図である。
【図10】撮像システムとして用いられるフローサイトメーターのブロック図である。
【図11】プライマー対の一方のプライマーがその5'末端でレポーター分子により標識される、直接ハイブリダイゼーション検出化学手法を例示している。
【図12】2プローブ式の検出化学手法を例示している。
【図13】第V因子ライデンのゲノム遺伝子配列(SEQ ID NO:6および7)を示している。
【図14】PCR中の蛍光強度中央値(MFI)(y軸)およびサイクル数(x軸)を示している。
【図15】さまざまな嚢胞性線維症遺伝子配列(SEQ ID NO:8〜15)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
例示的な態様の説明
A.撮像システム
ここで図面に目を向けると、図が原寸通りに描かれてはいないことに留意されたい。詳細には、図の要素のうちいくつかの縮尺は、それらの要素の特性を強調するために非常に誇張されている。図が同じ縮尺で描かれていないことにも留意されたい。同様の構成をとりうる複数の図に示された要素は、同じ参照番号を用いて指し示されている。
【0035】
図1、2および9の撮像システムの態様は、2つの包括的な撮像方法を用いるいくつかの形状構成を含む。蛍光検出のためには、検出される波長毎に光電子増倍管(PMT)またはアバランシュフォトダイオード(APD)などの単一のセンサーを用いることができる。または、一次元または二次元の電荷結合素子(CCD)または別の適したアレイ検出器を蛍光検出のために用いることもできる。励起源は、発光ダイオード(LED)などの光源によって発せられる光を用いて、広範囲にわたる照射(すなわち、測定デバイスの撮像空間(imaging volume)の比較的大きな区域(測定デバイスの撮像空間全体など)にわたって与えられる照射)を与え、測定デバイスの撮像空間内の1つまたは複数の材料に直接または光ファイバーを介して送達するように構成することができる。または、励起源を、測定デバイスの撮像空間の比較的小さなスポットの照射を与えるように構成することもでき、システムが撮像空間のうち比較的小さなスポットをスキャンするように構成することもできる。このようにして、照射を、1つまたは複数のLED、1つまたは複数のレーザー、1つまたは複数の他の適した光源、またはそれらの何らかの組み合わせから生じた集束光の比較的「微細なフライングスポット」として構成することができる。
【0036】
図1および2は、測定デバイスの撮像空間内の1つまたは複数の材料を撮像するために構成されたシステムの1つの態様を例示している。このシステムの態様は、検出器34、36および38を含む。検出器34、36および38は、CCDカメラまたは任意の他の適した撮像デバイスであってよい。検出器のそれぞれは、同じ形状構成を有しても異なる形状構成を有してもよい。検出器のそれぞれは、光(例えば、撮像チャンバーまたは検出チャンバー42によって規定される撮像空間内の粒子40から蛍光発光される光)を異なる波長または波長帯で検出するように構成することができる。加えて、検出器のそれぞれは、撮像チャンバー42内の粒子40(例えば、撮像チャンバー42の底部にある粒子)の画像または「捕捉蛍光像」を生成するように構成することができる。
【0037】
図1および2では、ミクロスフェア40が、PCR反応中にミクロスフェアがPCR反応と同じ溶液中に含まれるように熱サイクリング素子(図示せず)と連結させることのできる、撮像チャンバー内に投入される。ミクロスフェア40は、磁石264により磁場を印加することによって、PCRサイクルの任意の相で撮像チャンバー42の表面に引き出すことができる。ミクロスフェア40は、磁場を除去することによって表面から解放することができる。次の検出中に、ミクロスフェアは撮像のために再び表面に引き出されると考えられる。図1および2において、ミクロスフェア40をサーマルサイクラー(図示せず)から撮像チャンバー42に直接投入することもできる。ミクロスフェア40を撮像チャンバー42に導入し、PCRサイクルの任意の相で表面に引き出すことができる。
【0038】
図1および2は、磁性ミクロスフェア40を表面に選択的に引き出すための磁石264を例示している。図1および2のシステムはまた、異なる波長または異なる波長帯を有する光を発するように構成された光源44および46も含む(例えば、光源の一方を赤色光を発するように構成することができ、もう一方の光源を緑色光を発するように構成することができる)。光源44および46によって発せられる光には、例えば、可視波長域のいずれかの部分にある光が含まれうる。光源44および46は、LEDまたは当技術分野で公知の任意の他の適した光源を含みうる。光源44および46は、撮像チャンバー42の周辺部の上に並べることができる。加えて、光源は、各光源が撮像チャンバー42内の粒子40に異なる向きで光を当てるように撮像チャンバーの上にも並べられる。本システムはまた、それぞれ光源44および46と連結されたフィルター48および50も含む。フィルター48および50は、バンドパスフィルターまたは当技術分野で公知の任意の他の適したスペクトルフィルターであってよい。このようにして、本システムは、光源44および46ならびにフィルター48および50を、粒子に異なる波長または異なる波長帯の光を逐次的に照射するために用いることができる。例えば、赤色光を粒子の内部に存在しうる分類用色素(図示せず)を励起するために用いてもよく、緑色光を粒子の表面に連結されたレポーター分子(図示せず)を励起するために用いてもよい。分類用照射はレポーター測定中は非照射(dark)であるため(すなわち、以上の例において、緑色光が粒子に当てられている間は赤色光は粒子に当てられない)、システムの分析物測定感度は帯域外光からのクロストークに起因しては低下しないと考えられる。
【0039】
本システムはまた、照射「リング」の中心(またはおよそ中心)に配置された単一のレンズ52も含みうる。レンズ52は、当技術分野で公知の任意の適した屈折性光学素子を含みうる。レンズ52は、粒子から散乱および/または蛍光発光された光を、1つまたは複数のダイクロイックフィルターおよび1つまたは複数の光バンドパスフィルターを含みうる1つまたは複数の光学素子を介して、1つまたは複数のモノクロームCCD検出器(例えば、検出器34、36および38)に撮像させるように構成されている。例えば、レンズ52から出た光はダイクロイックフィルター54に向かうが、それは当技術分野で公知の任意の適したダイクロイック光学素子を含みうる。ダイクロイックフィルター54は、1つの波長または波長帯の光を反射して、他の波長または波長帯の光は透過させるように構成されている。ダイクロイックフィルター54によって反射された光はフィルター56に向かうが、それはバンドパスフィルターまたは他の適したスペクトルフィルターであってよい。フィルター56を出た光は検出器34に向かう。ダイクロイックフィルター54によって透過された光はダイクロイックフィルター58に向かうが、それは当技術分野で公知の任意の適したダイクロイック光学素子を含みうる。ダイクロイックフィルター58は、1つの波長または波長帯を反射して、他の波長または波長帯の光は透過させるように構成することができる。ダイクロイックフィルター58によって透過された光はフィルター60に向かうが、それはバンドパスフィルターまたは他の適したスペクトルフィルターであってよい。フィルター60を出た光は検出器36に向かう。ダイクロイックフィルター58によって反射された光はフィルター62に向かうが、それはバンドパスフィルターまたは他の適したスペクトルフィルターであってよい。フィルター62を出た光は検出器38に向かう。
【0040】
さらに、図1および2に示されたシステムは2つの光源を含むものの、本システムは任意の適した数の光源を含みうることが理解される必要がある。例えば、本システムは、レンズ52の周辺部の周りに並べられた複数の光源を含んでもよい。このようにして、光源は、レンズ52を取り囲む照射「リング」を与えるように構成することができる。図1および2に示されたシステムは、異なる波長または波長帯で粒子から散乱および/または蛍光発光された光を撮像させるように構成された3つの検出器を含むが、本システムは2つまたはそれ以上の検出器を含んでもよいことが理解される必要がある。例えば、本システムは、分類チャンネルおよびレポーターチャンネルを同時に測定し、それによって、追加的なハードウェア費用を伴って、測定に関するより高いスループットを与えることのできる、2つまたはそれ以上のCCD検出器(および任意で、固定フィルター)を含んでもよい。
【0041】
撮像システムはさらに、流体(例えば、PCR反応物、洗浄バッファー)を、貯蔵ベッセルから、または検出チャンバーで熱サイクリングを行えない場合にはサーマルサイクラーもしくは他の加熱されたチャンバーから、検出チャンバー内に移すための、流体取扱いサブシステムを含んでもよい。貯蔵ベッセルは、遠心管、注射シリンジ、マイクロタイター、または当技術分野で公知の任意の他の適した試料容器として構成することができる。
【0042】
流体取扱いサブシステムはまた、流体を貯蔵ベッセル、サーマルサイクラーまたは他の加熱されたチャンバーから検出チャンバーに移動させるように構成されたポンプも含む。ポンプは、当技術分野で公知の任意の適した形状構成を有しうる。流体取扱いシステムはまた、システムを通しての流体の流れを制御するように構成された1つまたは複数の弁も含みうる。流体取扱いサブシステムはまた、ポンプによって検出チャンバーに移すことができる清水(または他の適した試薬)を貯蔵するための洗浄リザーバーを含んでもよい。ポンプはまた、検出チャンバー内の材料および任意の他の流体を廃棄物ベッセルに移すように構成することもできる。廃棄物ベッセルは、当技術分野で公知の任意の適した形状構成を有しうる。流体取扱いサブシステムのポンプおよび弁はプロセッサによって制御することもでき、または手作業で操作することもできる。
【0043】
図1および2に示されたシステムは、その結果、関心対象のいくつかの波長での粒子40からの蛍光発光を表す複数または一連の画像を生成するように構成されている。加えて、本システムは、粒子の蛍光発光を表す複数または一連のデジタル画像を、プロセッサ(すなわち、処理エンジン)に供給するように構成することができる。本システムはプロセッサを含んでも含まなくともよい(例えば、図9を参照)。プロセッサは、検出器34、36および38からの画像データデを収集する(例えば、受信する)ように構成することができる。例えば、プロセッサは、検出器34、36および38と、当技術分野で公知の任意の適した様式で連結させることができる(例えば、それぞれが検出器の1つとプロセッサを連結させる伝送媒体(図示せず)を介して、それぞれが検出器の1つとプロセッサの間に連結されているアナログ-デジタル変換器などの1つまたは複数の電子部品(図示せず)を介して、など)。好ましくは、プロセッサは、これらの画像を処理および分析して、粒子の分類および粒子の表面にある分析物に関する情報といった粒子40の1つまたは複数の特徴を決定するように構成されている。1つまたは複数の特徴は、各粒子に関する各波長についての蛍光の強さに関する項目を有するデータ配列などの任意の適した形式にある、プロセッサによる出力であってよい。具体的には、プロセッサは、画像の処理および分析のための方法の1つまたは複数の段階を遂行するように構成することができる。図1および2に示されたもののようなシステムによって生成される画像の処理および分析のための方法の例は、Rothによる、2006年9月21日に提出された「Methods and Systems for Image Data Processing」と題する米国特許第出願第11/534,166号に例示されており、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0044】
プロセッサは、典型的なパーソナルコンピュータ、汎用大型コンピュータシステム、ワークステーションなどに一般的に含まれるもののようなプロセッサであってよい。一般に、「コンピュータシステム」という用語は、メモリ媒体からの命令を実行する1つまたは複数のプロセッサを有する任意のデバイスを包含するものとして幅広く定義することができる。プロセッサは、任意の他の適切な機能的ハードウェアを用いて実装することができる。例えば、プロセッサには、ファームウェア内に固定プログラムを伴うデジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または超高速集積回路(VHSIC)ハードウェア記述言語(VHDL)などの高水準プログラミング言語で「記述された」シーケンシャルロジックを用いる他のプログラマブルロジックデバイス(PLD)が含まれうる。もう1つの例において、以上に参照した特許出願に記載されたコンピュータに実装される方法の1つまたは複数の段階を遂行するためにプロセッサ30上で実行可能なプログラム命令(図示せず)を、要望に応じて、適宜C++で記述されたセクションを伴うC#、ActiveXコントロール、JavaBeans、Microsoft Foundation Classes(「MFC」)などの高水準言語、または他の手法もしくは方法でコード化することができる。プログラム命令は、手続きベースの手法、コンポーネントベースの手法、および/またはオブジェクト指向の手法を特に含む、さまざまな様式のいずれかで実装することができる。プログラム命令は、搬送媒体(図示せず)を介して伝送するか、または搬送媒体に記録することができる。搬送媒体は、ワイヤー、ケーブル、または無線伝送リンクなどの伝送媒体であってよい。搬送媒体はまた、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスクもしくは光ディスク、または磁気テープなどの記憶媒体であってもよい。
【0045】
図1〜4の撮像システムの態様は、測定デバイスの撮像チャンバー42内に1つまたは複数の粒子40を実質的に固定化するように構成されている。好ましくは、このシステムは、撮像チャンバー42のシステムの光学部分とは反対の側に配置された磁性素子264を含む。磁性素子264には、適した磁場を生成するために用いうる永久磁石または電磁石などの当技術分野で公知の任意の適した磁性素子が含まれうる。このようにして、磁鉄鉱が埋め込まれた染色粒子を、チャンバー42の背面にある磁性素子264によって生成された磁場を用いて粒子が撮像チャンバー42内(例えば、チャンバーの底部)に実質的に固定化されるように、本明細書に記載した態様で用いることができる。磁性素子264はいくつかの図で撮像チャンバー42から間隔を空けて示されているが、磁性素子264を、撮像チャンバーのシステムの光学素子とは反対の側で撮像チャンバー42と接触(または連結)させてもよい。磁性素子264はさらに上記のように構成することができる。図3は、ビーズ40がチャンバーの表面に実質的に固定化されるように磁石264がチャンバーの表面に近接して配置されている撮像チャンバーの側面図を示している。図3は、フルオロフォアがビーズの表面に結び付けられている態様を例示している。図4も、ビーズ40がチャンバーの表面に実質的に固定化されるように磁石264がチャンバーの表面に近接して配置されている撮像チャンバーの側面図を示している。しかし、図4では、フルオロフォアは、ビーズ40と直接連結されるのではなくビーズと直接連結された配列とのハイブリダイゼーションを介してビーズ40と会合している核酸配列(例えば、PCRプライマー)と結び付けられている。これは、フルオロフォアが結び付けられている核酸配列とのハイブリダイゼーションを生じるビーズ上の相補的プローブ配列が得られない場合には、「浮遊性」フルオロフォアを結果的にもたらす。これらの浮遊性フルオロフォアからのシグナルは、チャンバーの表面に固定化されたビーズを撮像する時に背景ノイズを増加させる恐れがある;しかし、浮遊性フルオロフォアは一般に撮像システムの焦点面には存在しないため、ビーズの撮像がうまく達成される。加えて、さまざまな図が撮像チャンバーに近接して配置された1つの磁性素子を示しているものの、本システムは、撮像チャンバーのシステムの光学部分とは反対の側にそれぞれが近接して配置された複数の磁性素子を含んでもよいことが理解される必要がある。
【0046】
本システムは、磁石を撮像チャンバー42に対してさまざまな距離に動かせるように固定された磁石を含みうる。撮像システムによるシグナル収集の後に、磁場を除去して(例えば、ソレノイドを用いて永久磁石を動かすことにより、または電磁石のスイッチを入れたり消したりすることにより)、粒子40を撮像チャンバー外に出させ、次の試料からの新たな粒子40をチャンバー内に入れることができる。撮像チャンバー42内の粒子の除去、および撮像チャンバーへの粒子の導入は、本明細書に記載した態様のいずれかを用いて行うことができる。もう1つの態様においては、撮像チャンバー42内の粒子を表面から放出させてチャンバー内に残して、溶液中の他の要素と相互作用させた上で、撮像のために再び表面に引き出すことができる。
【0047】
1つの態様において、撮像チャンバーのデザインは、磁石264がビーズ40を表面に引き出した時にそれらがこの内面全体にランダムに分布するように、撮像チャンバーの磁性素子264に近接した側に相対的に平滑な内面を有する撮像チャンバーである。しかし、撮像チャンバー42を、磁場が印加された時にビーズを特定のスポット内に「保持する」ように設計することもできる。例えば、図1に示された撮像チャンバーの内面は、上記のような磁場が印加されるとビーズ40がエッチングされた凹部の1つの中に配されるように、エッチングされた凹部が内部に形成された四角形パターンを有しうる。そのようなエッチングされた凹部は、磁場が印加された時にビーズを分離させる助けとなる。「エッチングされた」凹部は、エッチング過程または当技術分野で公知の任意の他の適した過程によって形成することができる。さらに、エッチングされた凹部の形状構成および並べ方は、例えばビーズ40のサイズおよびビーズ間の選択された間隔に応じてさまざまであってよい。
【0048】
もう1つの例において、撮像チャンバー42の内面は、上記のような磁場が印加されるとビーズ40がエッチングされた凹部の1つの中に配されるように、エッチングされた凹部の三角形パターンを有しうる。このため、エッチングされた凹部は、磁場が印加された時にビーズを分離させる助けとなる。加えて、「エッチングされた」凹部は、エッチング過程または当技術分野で公知の任意の他の適した過程によって形成することができる。さらに、エッチングされた凹部の形状構成および並べ方は、例えばビーズのサイズおよびビーズ間の選択された間隔に応じてさまざまであってよい。エッチングされた凹部は、ビーズ40が凹部によって二次元に限局されるという意味で好ましくは二次元であるが、これらの凹部を、溝、またはビーズを一方向のみに限局するように構成されている任意の他の適した凹部によって置き換えることもできる。
【0049】
測定デバイスの撮像空間内に1つまたは複数の粒子40を実質的に固定化するための方法に関して、その他の態様も存在する。1つまたは複数の粒子の実質的な固定化は、磁気引力、減圧フィルター基板または当技術分野で公知の他の様式を用いて、本明細書に記載した通りに行うことができる。例えば、測定デバイスの撮像空間内に1つまたは複数の粒子を実質的に固定化することは、測定デバイスの撮像空間の境界を定める撮像チャンバーの一方の側に磁場を印加することを含みうる。加えて、この方法は本明細書に記載した任意の他の段階も含みうる。
【0050】
さらに、この方法は、本明細書に記載したシステムの任意のものによって行うことができる。撮像のためにミクロスフェアを配置するための方法およびシステムの例は、2005年11月9日に提出されたPempsellに対する米国特許第出願第11/270,786号に例示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。粒子の固定化方法にかかわらず、粒子は、複数秒の長さに及ぶことがある検出器積算期間中に実質的に固定化されることが好ましい。
【0051】
1つのさらなる態様は、1つもしくは複数の粒子を1つもしくは複数の貯蔵ベッセル(例えば、図10のシステムに導入されたアリコート)から測定デバイスの撮像空間に移すため、撮像空間内の1つもしくは複数の粒子を撮像するため、撮像空間内の1つもしくは複数の材料を実質的に固定化するため、またはそれらの何らかの組み合わせのために構成されたシステムに関する。本システムは、本明細書に記載したような1つもしくは複数の粒子を移すため、本明細書に記載したような1つもしくは複数の粒子を撮像するため、本明細書に記載したような1つもしくは複数の粒子を実質的に固定化するため、またはそれらの何らかの組み合わせのために構成することができる。
【0052】
本明細書に記載した測定は一般に、複数の検出波長での粒子の蛍光発光の強さを表す数値といった粒子の1つまたは複数の特徴を決定するために、粒子の1つまたは複数の画像を分析するための画像処理を含む。粒子が属する多重サブセットを表すトークンID、ならびに/または粒子の表面と結合した分析物の存在および/もしくは数量を表すレポーター値を決定するために数値の1つまたは複数を用いるといった、粒子の1つまたは複数の特徴のその後の処理は、Fultonに対する米国特許第5,736,330号、Chandlerらに対する第5,981,180号、Chandlerらに対する第6,449,562号、Chandlerらに対する第6,524,793号、Chandlerに対する第6,592,822号、およびChandlerらに対する第6,939,720号に記載された方法に従って行うことができ、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
1つの例においては、Chandlerらに対する米国特許第5,981,180号に記載された手法を、粒子が単一の試料中の複数の分析物の分析のためにサブセットに分類される多重化方式で、本明細書に記載した蛍光測定とともに用いることができる。本明細書に記載したように構成すること(例えば、本明細書に記載した照射サブシステムの態様を含めることによる)ができるシステムのもう1つの例は、Chandlerらに対する米国特許第5,981,180号、Chandlerに対する第6,046,807号、Chandlerに対する第6,139,800号、Chandlerに対する第6,366,354号、Chandlerに対する第6,411,904号、Chandlerらに対する第6,449,562号、およびChandlerらに対する第6,524,793号に例示されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。また、図10に示されたシステムを、これらの特許に記載されたようにさらに構成することもできる。図10に示されたシステムを、他のシステムおよび態様に関連して本明細書に記載したようにさらに構成することもできる。
【0054】
粒子の測定を行うように構成された図1および2の撮像システムのもう1つの態様が、図9に示されている。図9に示されたシステムは、試料中の複数分析物の測定などの用途に用いることができる。本システムのこの態様は、蛍光撮像システムとして構成されている。本システムは、測定中に粒子62の照射を与えるように構成された照射サブシステムを含む。図9において、照射サブシステムはLEDまたはLEDダイ108を含む。LEDまたはLEDダイ108には、当技術分野で公知の任意の適切なLEDまたはLEDダイが含まれうる。加えて、照射サブシステムは、それぞれが少なくとも1つの波長または少なくとも1つの波長帯の光を生成するように構成された複数の光源(図示せず)も含みうる。図9に示されたシステムに用いるための光源の適切な組み合わせの一例は、2つまたはそれ以上のLEDまたはLEDダイを含むが、それには限定されない。単一のLEDダイは、単一のダイ上に単一の発光区域(任意の形状の)または複数の発光区域のいずれかを含みうることが理解される必要がある。典型的には、これらの複数の発光区域が矩形であれば、それらは「バー」と呼ばれる。しかし、光源は、少なくとも1つのLEDダイを、上記のもののような1つまたは複数の他の非LED光源との組み合わせで含むこともできる。複数の光源によって生成された光を、光源からの光を粒子に同時に当てることができるように、ビームスプリッタ(図示せず)または当技術分野で公知の任意の他の適切な光学素子によって共通の照射経路にまとめることができる。
【0055】
または、照射サブシステムは、どの光源を粒子を照射するために用いるかに応じて光学素子を照明経路の中または外に動かすように構成された反射鏡およびデバイス(図示せず)などの光学素子(図示せず)を含んでもよい。このようにして、光源を用いて、異なる波長または波長帯の光によって粒子を逐次的に照射することができる。光源が、基板の下からではなく、基板を上から照射することもできる(図示せず)。
【0056】
光源は、粒子またはそれと連結されたもしくはその中に組み込まれた材料に蛍光を発せさせると考えられる波長または波長帯で光を与えるように選択することができる。例えば、波長または波長帯は、粒子中に組み込まれた、および/または粒子の表面に連結されたフルオロフォア、蛍光色素または他の蛍光材料を励起するように選択することができる。このようにして、粒子の分類のために用いられる粒子が蛍光を発するように波長または波長帯を選択することができる。加えて、波長または波長帯を、粒子の表面または粒子の内部にある試薬を介して粒子と連結されたフルオロフォア、蛍光色素、量子ドット、蛍光ナノ結晶または他の蛍光材料を励起するために選択することもできる。このため、波長または波長帯は、粒子の表面または粒子の内部で起こった反応を検出および/または定量するために用いられる粒子が蛍光を発するように選択することができる。または、波長または波長帯を、その後の検査を選択しうるように粒子の物理的サイズの特徴および/または粒子のあるタイプの存在を決定するために用いうる蛍光を粒子が発するように、粒子それ自体を励起するように選択することもできる。そのようなシステムに関する用途の一例は、粒子の蛍光および/または散乱に応答した出力を、最低限でも生物的または化学的病原体の存在の可能性を検出するために用いることができる生物兵器防御の用途である。
【0057】
検出のほかに、物理的および/または光学的特徴の特定のセットを、その出力を用いて分析することもできる。照射サブシステムはまた、実質的に楕円形であって、LEDまたはLEDダイ108によって生成された光の光学経路内に配される反射体110も含む。反射体110は、照射空間全体を通じて光の強度が実質的に均一となるように、直接的なLEDまたはLEDダイからの光を照射空間に向けるように構成されている。LEDまたはLEDダイ108、および反射体110はさらに、本明細書に記載したように構成することもできる。粒子40は測定中は照射空間内に配される。特に、反射体110は、LEDまたはLEDダイ108からの光を、粒子40が上に固定化されている基板114に向けるように構成されている。粒子40はさらに、上記の粒子の任意のものを含みうる。基板114には当技術分野で公知の任意の適切な基板が含まれうる。基板114上に固定化された粒子は、基板114およびその上に固定化された粒子40の位置を照射サブシステムに対して維持するために、撮像チャンバー(図示せず)または任意の他のデバイスの中に配することができる。基板114の位置を維持するためのデバイスは、撮像の前に基板の位置を変更するように(例えば、照射を基板上に集束させるために)構成することもできる。
【0058】
図9の基板114上への粒子40の固定化は、以上で考察したような磁気引力、減圧フィルタープレート、または以上で考察したような当技術分野で公知の任意の他の適切な方法を用いて行うことができる。しかし、粒子40は、複数秒に及ぶことがある検出器積算期間中には粒子が感知される程度には動かないように固定化することが好ましい。
【0059】
図9に示されたシステムはまた、撮像空間内の粒子からの(例えば、それから散乱した、および/またはそれによって発せられた)光に応答して出力を生成するように構成された検出サブシステムも含む。例えば、図9に示されているように、検出サブシステムは、光学素子116およびダイクロイックビームスプリッタ118を含んでもよい。光学素子116は、基板114およびその上に固定化された粒子40からの光を集めて平行にし、光をビームスプリッタ118に向けるように構成されている。光学素子116には、当技術分野で公知の任意の適切な光学素子が含まれうる。加えて、光学素子116は図9において単一の光学素子として示されているものの、光学素子116は複数の光学素子を含みうることが理解される必要がある。さらに、光学素子116は図9において屈折性光学素子として示されているものの、光学素子116は1つもしくは複数の反射性光学素子、1つもしくは複数の屈折性光学素子、1つもしくは複数の回折性光学素子、またはそれらの何らかの組み合わせを含みうることが理解される必要がある。
【0060】
ビームスプリッタ118には、当技術分野で公知の任意の適切なビームスプリッタが含まれうる。ビームスプリッタ118は、光学素子116からの光を、光の波長に基づいて異なる検出器に向けるように構成することができる。例えば、第1の波長または波長帯を有する光をビームスプリッタ118によって透過させ、第1のものとは異なる第2の波長または波長帯を有する光をビームスプリッタ118によって反射させることができる。検出サブシステムはまた、光学素子120および検出器122を含んでもよい。ビームスプリッタ118によって透過された光を、光学素子120に向けることができる。光学素子120は、ビームスプリッタによって透過された光を検出器122に集束させるように構成されている。検出サブシステムはさらに、光学素子124および検出器126を含んでもよい。ビームスプリッタ118によって反射された光を、光学素子124に向けることができる。光学素子124は、ビームスプリッタによって反射された光を検出器126に集束させるように構成されている。光学素子120および124は、光学素子116に対して上記のように構成することができる。
【0061】
検出器122および126は、例えば、電荷結合素子(CCD)検出器、またはCMOS検出器、感光素子の二次元アレイ、時間遅延積算(TDI)検出器といった当技術分野で公知の任意の他の適した撮像検出器を含みうる。いくつかの態様においては、二次元CCD撮像アレイなどの検出器を用いて、実質的に基板全体の画像または基板上に固定化されたすべての粒子の画像を同時に収集することができる。システムに含められる検出器の数は、各検出器が波長または波長帯のうち1つの画像を生成するように用いられるように、関心対象の波長または波長帯の数と等しくすることができる。検出器によって生成された画像のそれぞれを、ビームスプリッタから検出器までの光経路内に配された、光バンドパス素子(図示せず)または当技術分野で公知の任意の他の適した光学素子を用いて、スペクトル的にフィルタリングすることができる。異なるフィルター「帯域」を、各取り込み画像毎に用いることができる。画像が収集される各波長または波長帯に関する検出波長の中心および幅は、それが粒子分類またはレポーターシグナルのいずれのために用いられるかにかかわらず、関心対象の蛍光発光に一致させることができる。このようにして、図9に示されたシステムの検出サブシステムは、異なる波長または波長帯での複数の画像を同時に生成するようにように構成されている。
【0062】
図9に示されたシステムは2つの検出器を含むものの、本システムは2つを上回る検出器(例えば、3つの検出器、4つの検出器など)を含みうることが理解される必要がある。上記のように、検出器は、異なる波長または波長帯の光を異なる検出器に同時に向けるために1つまたは複数の光学素子を用いることによって、異なる波長または波長帯での画像を同時に生成するように構成することができる。加えて、本システムは図9において複数の検出器を含むように示されているものの、システムは単一の検出器を含んでもよいことが理解される必要がある。単一の検出器は、複数の波長または波長帯での複数の画像を逐次的に生成するために用いることができる。例えば、異なる波長または波長帯の光を基板に逐次的に向けて、異なる波長または波長帯のそれぞれを用いた基板の照射中に異なる画像を生成させることができる。
【0063】
もう1つの例では、単一の検出器に向けられる光の波長または波長帯を選択するための異なるフィルターを変更して(例えば、異なるフィルターを撮像経路の中または外に動かすことによって)、異なる波長または波長帯での画像を逐次的に生成することができる。このため、図9に示された検出サブシステムは、関心対象のいくつかの波長での粒子112の蛍光発光を表す多数または一連の画像を生成するように構成されている。加えて、システムを、粒子の蛍光発光を表す多数または一連のデジタル画像をプロセッサ(すなわち、処理エンジン)に供給するように構成することもできる。1つのそのような例において、システムはプロセッサ128を含みうる。プロセッサ128は、検出器122および126からの画像データを収集する(例えば、受信する)ように構成することができる。例えば、プロセッサ128を、検出器122および126と、当技術分野で公知の任意の適した様式で連結させることができる(例えば、それぞれが検出器の1つとプロセッサを連結させる伝送媒体(図示せず)を介して、それぞれが検出器の1つとプロセッサの間に連結されているアナログ-デジタル変換器などの1つまたは複数の電子部品(図示せず)を介して、など)。好ましくは、プロセッサ128は、これらの画像を処理および分析して、粒子の分類および粒子の表面にある分析物に関する情報といった粒子40の1つまたは複数の特徴を決定するように構成されている。1つまたは複数の特徴は、各粒子に関する各波長または波長帯についての蛍光の強さに関する項目を有するデータ配列などの任意の適した形式にある、プロセッサによる出力であってよい。プロセッサ128は、典型的なパーソナルコンピュータ、汎用大型コンピュータシステム、ワークステーションなどに一般的に含まれるもののようなプロセッサであってよい。一般に、「コンピュータシステム」という用語は、メモリ媒体からの命令を実行する1つまたは複数のプロセッサを有する任意のデバイスを包含するものとして幅広く定義することができる。プロセッサは、任意の他の適切な機能的ハードウェアを用いて実装することができる。例えば、プロセッサには、ファームウェア内に固定プログラムを伴うデジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または超高速集積回路(VHSIC)ハードウェア記述言語(VHDL)などの高水準プログラミング言語で「記述された」シーケンシャルロジックを用いる他のプログラマブルロジックデバイス(PLD)が含まれうる。
【0064】
もう1つの例において、プロセッサ128上で実行可能なプログラム命令(図示せず)を、要望に応じて、適宜C++で記述されたセクションを伴うC#、ActiveXコントロール、JavaBeans、Microsoft Foundation Classes(「MFC」)などの高水準言語、または他の手法もしくは方法でコード化することもできる。プログラム命令は、手続きベースの手法、コンポーネントベースの手法、および/またはオブジェクト指向の手法を特に含む、さまざまな様式のいずれかで実装することができる。
【0065】
図9に示されたシステムを、他のシステムおよび態様に関連して本明細書に記載したようにさらに構成することもできる。
【0066】
図10は、本発明のある態様に従って粒子の測定を行うように構成された、撮像システムのフローサイトメーター態様を例示している。図10に例示されたシステムは、本明細書に記載した態様に従って構成された照射サブシステムを含む。図10において、システムは、粒子74が中を流れるキュベット72の断面図を通る平面に沿って示されている。1つの例において、キュベットは、標準的なフローサイトメーターに用いられるもののような標準的な溶融シリカ製キュベットであってよい。しかし、適度に限局された試料気流ストリームのような任意の他の適したタイプの観察用または送達用の形状構成を、分析用の試料を送達するために用いることもできる。図10のシステムに対するリアルタイムPCRの適用は、PCR溶液のアリコートをサーマルサイクラーから図10の検出システムに移すことを伴う。アリコートをPCR過程の異なる区間で採取することにより、初期テンプレートまたはDNAの定量が容易になる。この方法はまた、追加的なバッファーもしくは試薬、または検出を改善しうる増幅方法を追加することによってアリコートを操作することもできる。他の方法は、サーマルサイクラーへのローディングの前にPCR試薬の事前アリコート採取(pre-aliquoting)を行うこと、およびPCR過程または任意の他のアッセイ過程における別々の区間でこれらの試料を取り出すことを含みうる。
【0067】
照射サブシステムは、粒子74を光で照射するように構成される。照射サブシステムは、LEDまたはLEDダイ76を含む。LEDまたはLEDダイは、当技術分野で公知の任意の適したLEDまたはLEDダイであってよい。加えて、照射サブシステムは、複数のLEDまたはLEDダイを含んでもよい(図示せず)。他の態様において、照射サブシステムは、LEDまたはLEDダイ76、およびLED、LEDダイ、レーザー、アーク灯、ファイバー照明器、電球、またはそれらの何らかの組み合わせといった1つまたは複数の他の光源(図示せず)を含む。他方の光源には、当技術分野で公知の任意の適したそのような光源が含まれうる。このように、照射サブシステムは複数の光源を含みうる。1つの態様において、光源は、異なる波長または波長帯を有する光(例えば、青色光および緑色光)で粒子を照射するように構成することができる。いくつかの態様において、光源は、異なる方向で粒子を照射するように構成することができる。
【0068】
照射サブシステムはまた、照射空間全体を通じて光の強度が実質的に均一となるように、または照射空間内で選択された照射機能を有するように、実質的に楕円形であって、LEDまたはLEDダイ76によって生成された光を照射空間に向けるように構成された反射体78も含む。LEDまたはLEDダイ76、および反射体78はさらに、本明細書に記載したように構成することもできる。粒子74は測定中は照射空間を通って流れる。このようにして、反射体78から出た光は、粒子を、それらがキュベットを通って流れる時に照射する。照射は、粒子それ自体、またはそれに結び付けられたもしくはその中に組み込まれたフルオロフォアに、1つまたは複数の波長または波長帯を有する蛍光を発せさせることができる。フルオロフォアには、当技術分野で公知の任意の適切なフルオロフォアが含まれうる。いくつかの態様において、粒子74それ自体は、適切な強度および波長の光で照射された時に蛍光を発するまたは自然に蛍光を発するように構成されている。1つのそのような態様において、反射体78を出た光は粒子に蛍光を発せさせる。
【0069】
図10に示されたシステムはまた、照射空間内の粒子からの(例えば、それから散乱した、および/またはそれによって発せられた)光に応答して出力を生成するように構成された検出サブシステムも含む。例えば、粒子から前方散乱した光を、折りたたみミラー、適した導光部品またはダイクロイック反射部品であってよい光学素子82によって、検出システム80に向けることができる。または、検出システム80を、前方散乱光の経路内に直接配置することもできる。このように、光学素子82をシステムに含めなくてもよい。1つの態様において、前方散乱光は、図10に示されているように、照射サブシステムによる照射の方向から約180゜の角度で粒子によって散乱した光であってよい。入射光が検出システムの感光面に当たらないように、前方散乱光の角度が照射の方向から正確に180゜でなくてもよい。例えば、前方散乱光は、照射の方向から180゜未満または180゜を超える角度で粒子によって散乱した光であってもよい(例えば、約170゜、約175゜、約185゜または約190゜の角度で散乱した光)。照射の方向から約90゜の角度で粒子によって散乱した光を、検出サブシステムによって集めることもできる。同じくまたは代替的に、粒子によって散乱した光を任意の角度または配向で検出サブシステムによって集めることもできる。
【0070】
1つの態様において、この散乱光を、1つまたは複数のビームスプリッタまたはダイクロイックミラーによって複数の光線に分けることができる。例えば、照射の方向に対して約90゜の角度で散乱した光を、ビームスプリッタ84によって2つの異なる光線に分けることができる。この2つの異なる光線をビームスプリッタ86および88によって再び分けて、4つの異なる光線を生じさせることもできる。光線のそれぞれは、1つまたは複数の検出器を含みうる異なる検出システムに向けることができる。例えば、4つの光線のうち1つを検出システム90に向けることができる。検出システム90は、粒子によって散乱された光を検出するように構成することができる。検出システム80および/または検出システム90によって検出された散乱光は、光源によって照射される粒子の体積に一般に比例する。したがって、検出システム80の出力および/または検出システム90の出力を用いて、照射空間内にある粒子の直径を決定することができる。
【0071】
加えて、検出システム80および/または検出システム90の出力を用いて、互いに付着しているか照射ゾーンをほぼ同時に通過する複数の粒子を同定することもできる。したがって、そのような粒子を他の試料粒子および検量用粒子と識別することができる。他の3つの光線は検出システム92、94および96に向けることができる。検出システム92、94および96は、フルオロフォアまたは粒子それ自体によって発せられた蛍光を検出するように構成することができる。検出システムのそれぞれは、異なる波長または異なる波長範囲の蛍光を検出するように構成することができる。例えば、検出システムの1つは緑色蛍光を検出するように構成することができる。検出システムの別のものは黄橙色蛍光を検出するように構成することができ、また別の検出システムは赤色蛍光を検出するように構成することができる。
【0072】
いくつかの態様において、スペクトルフィルター98、100および102は、それぞれ検出システム92、94および96と連結させることができる。スペクトルフィルターは、検出システムが検出するように構成されているもの以外の波長の蛍光を遮断するように構成することができる。加えて、1つまたは複数のレンズ(図示せず)を、検出システムのそれぞれと光学的に連結させることができる。レンズは、散乱光または発せられた蛍光を検出器の感光面に集束させるように構成することができる。検出器の出力はそれに当たる蛍光に比例し、電流パルスを結果的にもたらす。電流パルスは電圧パルスに変換され、ローパスフィルタリングされた上で、A/D変換器(図示せず)によってデジタル化される。デジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのプロセッサ104は、パルス下面積を積算して、蛍光の強さを表す数を提供する。図10に示されているように、プロセッサ104は、伝送媒体106を介して検出器90と連結させることができる。プロセッサ104を、伝送媒体106、およびA/D変換器などの1つまたは複数の他の部品(図示せず)を介して検出器90と間接的に連結させることもできる。プロセッサは、同様の様式でシステムの他の検出器と連結させることができる。プロセッサ104をさらに、本明細書に記載した通りに構成することもできる。
【0073】
いくつかの態様においては、フルオロフォアまたは粒子によって発せられた蛍光に応答した出力を用いて、粒子の独自性、および粒子の表面で起こったまたは起こっている反応に関する情報を決定することができる。例えば、検出システムのうち2つの出力を用いて粒子の独自性を決定することができ、他の検出システムの出力を用いて粒子の表面で起こったまたは起こっている反応に関する情報を決定することができる。このため、検出器およびスペクトルフィルターの選択は、粒子の中に組み込まれるかそれと結合した色素もしくはフルオロフォアのタイプおよび/または測定される反応(すなわち、反応にかかわる反応体の中に組み込まれたかそれと結合した色素)に応じて、または粒子それ自体の蛍光特徴に応じてさまざまでありうる。試料粒子の独自性を決定するために用いられる検出システム(例えば、検出システム92および94)は、アバランシュフォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)または別のタイプの光検出器であってよい。粒子の表面で起こったまたは起こっている反応を同定するために用いられる検出システム(例えば、検出システム96)は、PMT、APDまたは別のタイプの光検出器であってよい。測定システムをさらに、本明細書に記載した通りに構成することもできる。
【0074】
図10のシステムは異なる色素特徴を有する粒子を識別するための2つの検出システムを含むものの、本システムは、異なる色素特徴を有する粒子を識別するための2つを上回る検出器(例えば、3つの検出器、4つの検出器など)を含みうることが理解される必要がある。そのような態様において、本システムは、追加的なビームスプリッタおよび追加的な検出システムを含みうる。加えて、スペクトルフィルターおよび/またはレンズを、追加的な検出システムのそれぞれと連結させることもできる。
【0075】
ある態様において、本明細書に開示されたシステムは、撮像チャンバー42と連結された熱制御素子を含む。撮像チャンバー42と連結された熱制御素子を用いることで、撮像チャンバー内の温度をさまざまな生物反応を行うために必要なように調整することができる。したがって、撮像チャンバーと連結された熱制御素子と連結させることにより、PCRを撮像チャンバー42内で行うことができる。ある局面において、撮像チャンバーは、超音波処理またはボルテックス処理用のデバイスを含む、チャンバーの表面からのミクロスフェアの放出用のデバイスと連結させることができる。他の態様は、複数の検出チャンバーおよび/または使い捨て式の検出チャンバーを有するシステムを含む。
【0076】
B.PCR
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、インビトロでの酵素的複製によってDNA片を増幅するために分子生物学において広く用いられている手法である。典型的には、PCRの用途には、Taqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼが用いられる。このDNAポリメラーゼは、テンプレートとしての一本鎖DNA、およびDNA合成を開始させるためのDNAプライマーを用いて、ヌクレオチド(dNTP)から新たなDNA鎖を酵素的に組み立てる。基本的なPCR反応はいくつかの成分および試薬を必要とし、これには以下が含まれる:増幅しようとする標的配列を含むDNAテンプレート;標的配列の5'および3'末端にあるDNA領域に対して相補的な1つまたは複数のプライマー;最適な温度が好ましくは70℃前後であるDNAポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ);デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP);DNAポリメラーゼの最適な活性および安定性のための適した化学的環境を与えるバッファー溶液;二価陽イオン、典型的にはマグネシウムイオン(Mg2+);ならびに一価陽イオンカリウムイオン。
【0077】
大半のPCR方法では、PCR試料を規定の一連の温度段階に供するために熱サイクリングを用いる。各サイクルは典型的には、2つまたは3つの不連続的な温度段階を有する。多くの場合には、サイクリングに先立って高温(>90℃)での単一温度段階(「開始」)が行われ、その後には終了時に最終産物伸長(「最終伸長」)または短時間保管(「最終保持」)のために1つまたは2つの温度段階が行われる。用いられる温度およびそれらが各サイクルで適用される時間の長さは、種々のパラメーターに依存する。これらには、DNA合成のために用いられる酵素、反応物における二価イオンおよびdNTPの濃度、ならびにプライマーの融解温度(Tm)が含まれる。PCR方法におけるさまざまな段階のために一般的に用いられる温度には以下がある:開始段階‐94〜96℃;変性段階‐94〜98℃;アニーリング段階‐50〜65℃;伸長/伸長段階‐70〜74℃;最終伸長‐70〜74℃;最終保持‐4〜10℃。
【0078】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)またはキネティックポリメラーゼ連鎖反応とも呼ばれるリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、標的とされたDNA分子を増幅して同時に定量するために用いられる。これはDNA試料中の特定配列の検出および定量(コピーの絶対数として、またはDNA投入量もしくは追加的な標準化用遺伝子に対して標準化された相対量として)の両方を可能にする。リアルタイムPCRを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせることで、存在量の少ないRNAを定量することができる。リアルタイムPCRの指数期のあいだ存在するDNAの相対濃度は、対数目盛上で蛍光をサイクル数に対してプロットすることによって決定される。続いて、その結果を、既知の量のDNAの系列希釈物のリアルタイムPCRによって作成された標準曲線と比較することによって、DNAの量を決定することができる。
【0079】
多重PCRおよび多重リアルタイムPCRは、単一のPCR反応内で複数の一意的プライマーセットを用いて、異なるDNA配列のアンプリコンを生成させる。複数の遺伝子を一度に標的とすることにより、通常であれば行うために数倍の試薬およびより多くの時間を必要とするであろう単一の試行で、追加的な情報を得ることができる。プライマーセットのそれぞれに関するアニーリング温度は、単一の反応内で動作するように最適化すべきである。
【0080】
本明細書で開示する方法が、PCR過程中に非対称的な刺激手法を利用してもよく、それはレポータープローブと相補的標的配列との結合を強化する可能性がある。非対称PCRは、DNAテンプレートの一方の鎖をもう一方よりも選好的に増幅するために、選択した鎖に対するプライマーを過剰に用いて実施される。
【0081】
C.リアルタイムPCR検出の化学手法
リアルタイムPCRに現在用いられているいくつかの市販の核酸検出化学手法がある。これらの化学手法は、DNA結合剤、FRETに基づく核酸検出、ハイブリダイゼーションプローブ、分子ビーコン、加水分解プローブ、および色素-プライマーに基づくシステムを含む。これらの化学手法のそれぞれについて、以下にさらに詳細に考察する。
【0082】
1.DNA結合剤
キネティックPCRの最初の分析はHiguchiらによって行われ、彼らは二本鎖DNA産物と結合させるために臭化エチジウムを用いた(Higuchi et al., 1992;Higuchi et al., 1993;米国特許第5,994,056号;米国公開出願第2001/6171785号)。臭化エチジウムは、キネティックPCRに用いられる他のすべてのDNA結合剤と同じく、結合すると蛍光強度を高めることができる。その結果生じるシグナルの増加を、反応の経過を通じて記録して、サイクル数に対してプロットすることができる。データをこのように記録することで、エンドポイント分析と比較して、関心対象の試料の初期濃度がより指し示される。
【0083】
結合色素は、他の検出化学手法と比較して相対的に安価である。これらの結合色素を用いることの利点は、それらが低コストであること、および優れたシグナル-ノイズ比である。弱点には、プライマー二量体形成によって作り出されるアンプリコンを含む、PCR反応物中のあらゆる二本鎖DNAに対するそれらの非特異的結合特性が含まれる(Wittwer et al., 1997)。特定のアンプリコンの生成を確かめるためには、融解曲線分析を行うべきである(Ishiguro et al., 1995)。もう1つの欠点は、より長い産物の増幅の方が、より短いものよりも多くのシグナルを生じると考えられることである。増幅効率が異なるならば、定量はいっそう不正確になる恐れがある(Bustin and Nolan, 2004)。
【0084】
Invitrogen(商標)社(Carlsbad, CA)のSYBR(登録商標)Green Iは、普及しているインターカレート色素である(Bengtsson et al., 2003)。SYBR(登録商標)Green Iは、環置換された非対称シアニン色素である(Zipper et al., 2004;米国特許第5,436,134号;米国特許第5,658,751号)。BEBOとして知られる副溝結合性の非対称シアニン色素がリアルタイムPCRに用いられてきた。BEBOは、おそらくは緩徐な凝集過程のために時間経過に伴って非特異的な蛍光の増加を引き起こし、SYBR(登録商標)Green Iと比較すると感度が低い。BOXTOと呼ばれる類似の色素もqPCRにおける使用が報告されている(Bengtsson et al., 2003;米国公開出願第2006/0211028号)。BEBOと同じく、BOXTOもSYBR(登録商標)Green Iよりも感度が低い(米国公開出願第2006/0211028号)。
【0085】
他の一般的なレポーターには、インターカレート性非対称シアニン色素であるYO-PRO-1およびチアゾールオレンジ(TO)が含まれる(Nygren et al., 1998)。これらの色素は結合すると蛍光強度の大きな増加を呈するが、TOおよびオキサゾールイエロー(YO)はリアルタイムPCRにおける成績が不良であることが報告されている(Bengtsson et al., 2003)。用いられる可能性のある他の色素には、ピコグリーン、アクリジニウムオレンジおよびクロモマイシンA3が非限定的に含まれる(米国公開出願第2003/6569627号)。リアルタイムPCRと適合性のある可能性のある色素は、Invitrogen、Cambrex Bio Science(Walkersville, MD)、Rockland Inc.(Rockland, ME)、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)、Biotium(Hayward, CA)、TATAA Biocenter AB.(Goteborg, Sweden)およびIdaho Technology(Salt Lake City, UT)といったさまざまな製造供給元から入手可能である(米国公開出願第2007/0020672号)。
【0086】
EvaGreen(商標)(Biotium)として知られる色素は、PCRを阻害しないように設計されており、アルカリ条件でSYBR(登録商標)Green Iよりも安定である点で有望である(Dorak, 2006;米国公開出願第2006/0211028号)。他のより新しい色素には、LCGreen(登録商標)色素ファミリー(Idaho Technology)が含まれる。LCGreen(登録商標)IおよびLCGreen(登録商標)Plusは、これらの色素のうち最も商業的な競争力がある。LCGreen(登録商標)Plusは、LCGreen(登録商標)よりもかなり輝度が高い(米国公開出願第2007/0020672号;Dorak, 2006;米国公開出願第2005/0233335号;米国公開出願第2066/0019253号)。
【0087】
2.FRETに基づく核酸検出
多くのリアルタイム核酸検出方法は、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)によって相互作用する標識を利用する。この機序はドナーとアクセプターの対を要し、ドナー分子が特定波長で励起され、その後にそのエネルギーを非放射性にアクセプター分子に転移させる。これは典型的には、ドナー分子およびアクセプター分子が互いに近接していることを意味するシグナル変化を結果的にもたらす。
【0088】
この技術全般の基礎を築いたFRETに基づく核酸検出の初期の方法には、Hellerら(米国特許第4,996,143号;第5,532,129号;および第5,565,322号、これらは参照により組み入れられる)による研究が含まれる。これらの特許は、互いに非常に近接した標的配列とハイブリダイズする、2つの標識プローブを含めることによる、FRETに基づく核酸検出を紹介している。このハイブリダイゼーションイベントはエネルギーの転移を引き起こしてスペクトル応答に測定可能な変化を生じさせ、それが標的の存在を間接的に知らせる。
【0089】
Cardulloら(参照により組み入れられる)は、蛍光変調および非放射性蛍光共鳴エネルギー転移が、溶液中の核酸ハイブリダイゼーションを検出しうることを立証した(Cardullo et al., 1988)。この研究では、FRETに基づく核酸検出の3つの戦略が用いられた。第1のものは、互いに相補的な2つの5'標識プローブを含めて、ハイブリダイズした複合体の全長にわたってドナーおよびアクセプターフルオロフォアの間で転移が起こるようにした。第2の方法では、蛍光分子を2つの核酸と、一方は3'末端で、もう一方は5'末端で共有結合させた。フルオロフォアで標識された核酸は、より長い非標識核酸の、異なるものの接近した間隔の配列とハイブリダイズした。最後に、インターカレート色素が、プローブの5'末端と共有結合したアクセプターフルオロフォアに対するドナーとして用いられた。
【0090】
参照により組み入れられる、Morrisonら(1989)は、相補的に標識されたプローブを用いて、標的DNA濃度の上昇に伴って増加する蛍光シグナルを生じる競合ハイブリダイゼーションによって、非標識標的DNAを検出している。この場合には、互いに相補的であって、その5'および3'末端がそれぞれフルオレセインおよびフルオレセインクエンチャーで標識されている2つのプローブが用いられた。後の研究でも、蛍光融解曲線を用いてハイブリダイゼーションをモニターできたことが示されている(Morrison and Stols, 1993)。
【0091】
3.ハイブリダイゼーションプローブ
リアルタイムPCRに用いられるハイブリダイゼーションプローブは、主としてRoche LightCycler(登録商標)装置とともに用いるために開発された(米国公開出願第2001/6174670号;米国公開出願第2000/6140054号)。これらは時に、FRETプローブ、LightCycler(登録商標)プローブまたは二重FRETプローブと呼ばれる(Espy et al., 2006)。
【0092】
ハイブリダイゼーションプローブは、FRETが直接的に測定される方式で用いられる(Wilhelm and Pingoud, 2003)。2つのプローブのそれぞれが蛍光エネルギー転移対の各々のメンバーで標識され、標的DNA配列の隣接領域とのハイブリダイゼーションが起こると励起エネルギーがドナーからアクセプターに転移し、アクセプターによるその後の発光をレポーターシグナルとして記録することができる(Wittwer et al., 1997)。2つのプローブは標的配列とアニーリングし、そのため上流プローブはその3'末端で蛍光標識され、下流プローブはその5'末端で標識される。下流プローブの3'末端は典型的には、PCR中のプローブの伸長を防ぐためにリン酸化または何らかの他の手段によってブロックされる。上流プローブの3'末端と連結された色素は、このプローブの伸長を防ぐのに十分である。このレポーターシステムは、それが蛍光シグナルのクエンチングのためではなくそれを生成するためにFRETを用いるという点で、FRETに基づく他の検出方法(分子ビーコン、TaqMan(登録商標)など)とは異なる(Dorak, 2006)。
【0093】
典型的なアクセプターフルオロフォアには、シアニン色素(Cy3およびCy5)、6-カルボキシ-4,7,2',7'-テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシ-N,N,N',N'-テトラメチルローダミン(TAMRA)および6-カルボキシローダミンX(ROX)が含まれる。ドナーフルオロフォアは通常、6-カルボキシフルオロセイン(FAM)である(Wilhelm and Pingoud, 2003)。ハイブリダイゼーションプローブは、遺伝子型判定およびミスマッチ検出のために特に有利である。融解曲線分析を、PCR反応中に蛍光のサイクル毎のモニタリングに加えて行うことができる。プローブハイブリダイゼーション後の試料の緩徐な加熱により、関心対象の配列に関してさらなる質的情報を得ることができる(Lay and Wittwer, 1997;Bernard et al., 1998a;Bernard et al., 1998b)。塩基対ミスマッチは、ミスマッチのタイプおよび配列中の位置に応じて、二重鎖の安定性をさまざまな量で推移させると考えられる(Guo et al., 1997)。
【0094】
4.分子ビーコン
分子ビーコンは、ヘアピンプローブとしても知られ、相補的標的配列の存在下で開放されてそれとハイブリダイズし、典型的には蛍光の増加を引き起こすステムループ構造である(米国特許第5,925,517号);米国公開出願第2006/103476号)。分子ビーコンは典型的には、標的の存在しないアッセイ条件下では互いに相互作用してステム二重鎖を形成する親和性対に挟まれた、核酸標的相補的配列を有する。プローブとあらかじめ選択されたその標的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブのコンフォメーション変化を生じさせ、「アーム」を強制的に隔てさせてステム二重鎖を消失させ、それによってフルオロフォアとクエンチャーを分離させる。
【0095】
5.加水分解プローブ
TaqMan(登録商標)アッセイ(米国特許第5,210,015号)としても知られる加水分解プローブは、それらが標的配列毎に2つのプローブ(ハイブリダイゼーションプローブの場合のように)ではなく単一のプローブのみを要するという理由から普及している。このことは試料毎のコスト削減を結果的にもたらす。これらのプローブのデザインも分子ビーコンのそれよりは複雑でない。これらは典型的には、5'末端でレポーターにより、3'末端でクエンチャーにより標識される。レポーターおよびクエンチャーが同じプローブに固定されると、それらは非常に近接した状態に強制的に保たれる。この近接性は、プローブが標的配列とハイブリダイズした場合にもレポーターシグナルを有効にクエンチングする。PCR反応の伸長段階または延長段階中には、Taqポリメラーゼとして知られるポリメラーゼがその5'エキソヌクレアーゼ活性を理由として用いられる。このポリメラーゼは上流プライマーを結合部位として利用し、続いて伸長を行う。加水分解プローブはポリメラーゼ伸長中にその5'末端でTaqの5'-エキソヌクレアーゼ活性によって切断される。これが起こると、レポーターフルオロフォアがプローブから放出され、その後はもはやクエンチャーと近接しなくなる。これは、PCR反応のサイクリングを続けた場合に各伸長段階に伴うレポーターシグナルの絶え間ない増加を生じさせる。各サイクルに伴って最大限のシグナルを確実に得るために、加水分解プローブは反応物中のプライマーよりもおおよそ10℃高いTmを有するように設計される。
【0096】
しかし、プローブの5'末端を切断する過程は標的配列の増幅も伸長も必要としない(米国特許第5,487,972号)。これは、プローブを標的配列上でプライマーの上流に隣接させて配置することによって達成される。このようにして、アニーリングおよびそれに続くプローブ加水分解を繰り返し行わせ、重合の非存在下でも有意な量のシグナル生成を結果的にもたらすことができる。リアルタイム加水分解プローブ反応の使用は米国特許第5,538,848号および第7,205,105号にも記載されており、これはいずれも参照により組み入れられる。
【0097】
6.色素-プライマーに基づくシステム
リアルタイムPCRのために利用しうる色素-標識プライマーに基づくシステムは数多くある。これらは複雑さの点で、単純なヘアピンプライマーシステムから、ヘアピンプローブのステムループ部分が非増幅性リンカーを介して特異的PCRプライマーと結び付けられるより複雑なプライマー構造までの範囲にわたる。これらの方法は、プローブに基づくアッセイシステムには必須である追加的な介在性標識プローブを必要としない上に、DNA結合色素を用いたのでは不可能な多重化も可能にするという利点がある。しかし、これらの方法のそれぞれの成功の可否は、プライマー配列の慎重な設計にかかっている。
【0098】
ヘアピンプライマーは、標的DNAに対して相補的な配列によって隔てられた逆向き反復配列を含む(Nazarenko et al., 1997;Nazarenko et al., 2002;米国特許第5,866,336号)。これらの反復配列はアニーリングして、5'末端のフルオロフォアが3'末端のクエンチャーと非常に近接するようなヘアピン構造を形成し、蛍光シグナルをクエンチングする。ヘアピンプライマーは、ヘアピン構造を保持するよりは標的DNAと選好的に結合するように設計される。PCR反応が進行するのに伴い、プライマーは蓄積してきたPCR産物とアニーリングし、フルオロフォアとクエンチャーが物理的に隔てられるようになり、蛍光のレベルが増大する。
【0099】
InvitrogenのLUX(商標)(Light Upon eXtension)プライマーは、3'末端付近の内部配列に対して相補的であって3'末端付近に結び付けられたフルオロフォアの位置と重なり合う短い4〜6ヌクレオチド伸長部をプライマーの5'末端に含む、蛍光発生性ヘアピンプライマーである(Chen et al., 2004;Bustin, 2002)。相補的配列間の塩基対合により、プライマーの3'末端に非常に近接したレポーター色素をクエンチングする二本鎖ステムが形成される。PCR中に、LUX(商標)プライマーは新たなDNA鎖中に組み込まれ、続いて新たな第2の相補鎖が生成されると線状化される。この構造変化は、蛍光シグナルの最大で10倍の増大を結果的にもたらす。これらのプライマーは設計するのが難しく、プローブがPCR産物と選好的にアニーリングするのを確実にするために二次構造を慎重に分析しなければならない。カスタム生産によるLUX(商標)プライマーの設計および検証のサービスがInvitrogenで利用可能である。
【0100】
さらに最近では、ヘアピンプローブがPCRプライマーの一部となっている(Bustin, 2002)。このアプローチでは、ひとたびプライマーが伸長すると、ヘアピン内部の配列が新たに合成されたPCR産物とアニーリングして、ヘアピンを崩壊させ、フルオロフォアとクエンチャーを分離させる。
【0101】
Scorpion(登録商標)プライマーは、上流ヘアピンプローブ配列が下流プライマー配列と共有結合している二機能性分子である(米国公開出願第2001/6270967号;米国公開出願第2005/0164219号;Whitcombe et al., 1999)。このプローブは5'末端にフルオロフォアを、3'末端にクエンチャーを含む。標的の非存在下では、このプローブは6〜7塩基のステムを形成して、フルオロフォアとクエンチャーが非常に近接し、フルオロフォアによって発せられた蛍光をクエンチャーに吸収させる。scorpionプローブ片のループ部分は、プライマー配列の3'末端の下流側にある11塩基内部の標的配列の一部分に対して相補的な配列からなる。標的の存在下では、プローブは第1のPCRサイクルで合成された標的領域と結び付く。変性およびアニーリングの第2のサイクルの後に、プローブと標的がハイブリダイズする。ヘアピンループの変性は、生成された新たなDNA二重鎖よりも少ないエネルギーしか要しない。このため、scorpionプローブのループ配列は新たに生成されたPCR産物の一部分とハイブリダイズして、クエンチャーからのフルオロフォアの分離および発せられる蛍光の増加を結果的にもたらす。
【0102】
色素-プライマーに基づくすべての方法と同様に、Scorpionプライマーの設計は、二次反応が正しいプローブイベントと競合しないことを確実にするために、二次構造およびプライマー配列に関する厳密な設計上の考慮事項に沿って行われる。プライマー対は、およそ100〜200bpのアンプリコンが生じるように設計されるべきである。理想的には、プライマーはできるだけわずかな二次構造しか有するべきでなく、ヘアピン形成および二次構造に関して調べられるべきである。プライマーはそれがプローブ要素とハイブリダイズしないように設計されるべきであり、これはそのことが線状化および非特異的な蛍光発光の増加を招くと考えられるためである。2つのプライマーのTmは同程度であるべきであり、ステムTmはプローブTmよりも5〜10℃高くあるべきである。プローブ配列は17〜27塩基長であるべきであり、プローブ標的はscorpionの3'末端から11塩基またはそれ未満であるべきである。ステム配列は6〜7塩基長であるべきであり、主としてシトシンおよびグアニンを含むべきである。グアニンはフルオロフォアをクエンチングさせる可能性があるため、5'ステム配列はシトシンで始まるべきである。いくつかのオリゴヌクレオチド設計用ソフトウエアパッケージはScorpionプライマーの設計のためのアルゴリズムを含んでいるほか、カスタム設計サービスがいくつかのオリゴヌクレオチド製造供給元から利用可能である。
【0103】
Promega社のPlexor(商標)システムは、プローブを全く設計する必要がなく、ただ1つのPCRプライマーが標識されるという利点のあるリアルタイムPCR技術である(米国特許第5,432,272号;米国公開出願第2000/6140496号;米国公開出願第2003/6617106号)。この技術は、2つの修飾ヌクレオチドであるイソグアニン(イソ-dG)と5'-メチルイソシトシン(イソ-dC)との間の特異的相互作用を利用する(Sherrill et al., 2004;Johnson et al., 2004;Moser and Prudent, 2003)。この技術の主な特徴は、これらのイソ塩基が相補的イソ塩基のみと塩基対合すると考えられ、存在する配列中に対応する相補的イソ塩基が存在する場合にのみDNAポリメラーゼがイソ塩基を組み込むと考えられるという点である。1つのPCRプライマーは、蛍光標識されたイソ-dC残基を5'末端ヌクレオチドとして伴って合成される。増幅が進行するのに伴い、標識されたプライマーはアニーリングして伸長し、PCR産物中に組み込まれる。PCRマスターミックス中で遊離ヌクレオチドとして利用しうる、クエンチャーで標識されたイソ-dGTP(ダブシル-イソ-dGTP)は、イソ-dCと特異的に塩基対合し、相補的PCR鎖中に組み込まれて、蛍光シグナルをクエンチングする。Plexorシステムのためのプライマーの設計は他の色素-プライマーシステムと比べて比較的単純であり、通常は典型的な標的特異的プライマーの設計上の考慮事項に沿って行われる。Promega社から入手可能なウェブベースのPlexor Primer Design Softwareは、適切な色素とクエンチャーの組み合わせを選択する助けになるとともに、イソ塩基を含むプライマーを提供するライセンスを受けたオリゴヌクレオチド供給元へのリンクを張っている。
【0104】
D.例示的な化学手法
以上で考察したように、リアルタイムPCRに現在用いられている市販の核酸検出化学手法はいくつかある。しかし、現行のリアルタイムPCR技術はその多重化能力の点で約1〜6 plexの反応までに限定されている。本発明の方法およびシステムは、リアルタイムPCRのためにこれまで用いられていない検出化学手法を含む、市販の核酸検出化学手法を用いて、はるかに多くのリアルタイムPCR多重化を達成することができる。本発明の状況におけるこれらの検出化学手法のいくつかの使用法を説明する態様について以下に考察する。
【0105】
1.分子ビーコン
分子ビーコンは、ヘアピンプローブとしても知られ、相補的標的配列の存在下で開放されてそれとハイブリダイズして典型的には蛍光の増加を引き起こすが、その非存在下ではステムループ構造を形成して蛍光の減少をもたらすステムループ構造として記述することができる(米国特許第5,925,517号;米国公開出願第2006/103476号)。本発明の1つの態様によるプローブは、標的の存在しないアッセイ条件下では互いに相互作用してステム二重鎖を形成する親和性対またはアームのメンバーによって挟まれた、核酸標的相補的配列を有する標識プローブである。プローブとあらかじめ選択されたその標的配列とのハイブリダイゼーションは、プローブのコンフォメーション変化を生じさせ、「アーム」を強制的に隔てさせてステム二重鎖を消失させる。本発明によるプローブの態様は、コンフォメーション変化が検出可能である相互作用性標識を用いるか、または特に限定されたアレル識別性構造を用いるか、またはその両方を用いる。シグナルレベルの特徴的な変化は、プローブが閉鎖位置にあるために標識部分が近接しているか、またはプローブが開放位置にあるために分離しているかのいずれかに依存する。この態様によれば、分子ビーコンもスペクトル的にまたは別の様式で識別可能な粒子と結合しており、このことは、捕捉プローブと結び付けられた粒子の識別特性ではなく、ヘアピンプローブに結び付けられた色素について色素の色調を識別することによるという従来の方法を用いることによってこれまで可能であったよりも高レベルの多重化をもたらす。
【0106】
図5および6は、いかにして本発明の1つの態様がクエンチング分子から蛍光色素を分離させ、粒子の表面に検出可能な蛍光を生じさせるかを例示している。図5では、クエンチング分子および蛍光色素と連結されたヘアピンプローブが溶液中に均質にある。クエンチング分子200は、プローブがヘアピン形成下にある時は蛍光色素分子202によって発せられる蛍光の量を制限している。ヘアピン形成下にあるオリゴヌクレオチドプローブは図5では205として表示されている。ヘアピン分子の内部ループが標的アンプリコンとハイブリダイズすると、図5および6に例示されているように蛍光色素とクエンチング分子が分離して、ビーズ40の表面に検出可能な蛍光を生じさせる。この蛍光を撮像するためには、磁性素子264をアレイに近接させて動かすことによってビーズ40を平面アレイの方に引き出して、図1〜2および9に例示された撮像システムのような撮像システムによって蛍光を検出する。
【0107】
2.ハイブリダイゼーションプローブ
リアルタイムPCRに用いられるハイブリダイゼーションプローブは、時にFRETプローブ、LightCycler(登録商標)プローブまたは二重FRETプローブと呼ばれる(Espy et al., 2006)。ハイブリダイゼーションプローブは、FRETが直接的に測定される方式で用いられる(Wilhelm and Pingoud, 2003)。2つのプローブのそれぞれが蛍光エネルギー転移対の各々のメンバーで標識され、標的DNA配列の隣接領域とのハイブリダイゼーションが起こると励起エネルギーがドナーからアクセプターに転移し、アクセプターによるその後の発光をレポーターシグナルとして記録することができる(Wittwer et al., 1997)。2つのプローブは標的配列とアニーリングし、そのため上流プローブはその3'末端で蛍光標識され、下流プローブはその5'末端で標識される。下流プローブの3'末端は典型的には、PCR中のプローブの伸長を防ぐためにリン酸化または何らかの他の手段によってブロックされる。上流プローブの3'末端と連結された色素は、このプローブの伸長を防ぐのに十分である。
【0108】
この態様において、2つのハイブリダイゼーションプローブのうち一方を識別可能な粒子(例えば、コード化されたビーズ)と連結させることができる。この場合には、粒子と連結される捕捉プローブは関心対象の標的核酸配列に対して相補的であると考えられ、連結されていないプローブは標的配列に沿って隣接領域とハイブリダイズすると考えられる。リアルタイムPCR反応の状況において、標的配列はアンプリコンである。ドナーまたはアクセプターフルオロフォアのいずれかを、粒子と結び付けられたオリゴヌクレオチド配列に結び付けることができる。
【0109】
典型的なアクセプターフルオロフォアには、シアニン色素(Cy3およびCy5)、6-カルボキシ-4,7,2',7'-テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシ-N,N,N',N'-テトラメチルローダミン(TAMRA)および6-カルボキシローダミンX(ROX)が含まれる。ドナーフルオロフォアは通常、6-カルボキシフルオロセイン(FAM)(Wilhelm and Pingoud, 2003)である。標的配列の遺伝子型判定は、レポータープローブをその対応する配列に合致させることによって達成される。
【0110】
図7は、本発明の状況における改変FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)ハイブリダイゼーションプローブを例示している。ドナーフルオロフォア210は、常磁性ミクロスフェア40の表面上に固定化されたプローブと結び付けられている。各PCRサイクルの検出相に達すると、溶液の温度は、標的配列に対するドナーで標識されたプローブおよびアクセプターで標識されたプローブの両方のハイブリダイゼーションを導くようになると考えられる。ドナー210およびアクセプター212の対が非常に近接することで、蛍光共鳴エネルギー転移が可能になる。これは、アクセプター分子212がドナー210とは異なる波長の光を発することを可能にすることにより、ビーズ40の表面付近のみでの発光をもたらすと考えられる。
【0111】
したがって、FRETハイブリダイゼーションプローブを用いて、試料中の複数の核酸標的の多重化されたリアルタイム増幅および検出のための方法を行う1つの態様においては、チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブセットを混ぜ合わせ、ここで各プローブセットが、蛍光エネルギー転移対の第1のメンバーで標識されており、かつ、第1のプローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、コード化された磁性ビーズ上に固定化されている、第1のプローブと、蛍光エネルギー転移対の第2のメンバーを有する第2のプローブとを含むことが考えられる。続いて、増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させることが考えられる。その増幅産物を、プローブセットとハイブリダイズさせる。磁場をチャンバーの表面に印加することにより、コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物をチャンバーの表面に引き寄せ、そこで本明細書の別の箇所に記載したもののような撮像システムが、コード化された磁性ビーズからのシグナル、および増幅産物とハイブリダイズした蛍光エネルギー転移対からのシグナルを検出する。続いて、さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去することができる。増幅および検出を所望の回数にわたって反復することで、反応に関するリアルタイム定量データを入手することができる。用いるレポーター分子に応じて、蛍光エネルギー転移対からのシグナルは蛍光の増加であってもよく、または蛍光の減少であってもよいことに留意すべきである。
【0112】
この2プローブ式システムを、FRET対を伴わずに用いることもできる。この態様では、粒子と連結されていないプローブのみが標識され、そのため、標的配列に対する両方のプローブのハイブリダイゼーションを、2つのプローブの一方にある標識によって検出しうる。例えば、チャンバー内に、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブセットを混ぜ合わせ、ここで各プローブセットが、第1のプローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、コード化された磁性ビーズ上に固定化されている、第1のプローブと、標識を含む第2のプローブとを含むことが考えられる。増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる。増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせ、コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する。固定化されていない標識プローブも、それが増幅産物上の相補配列とハイブリダイズしているために、チャンバーの表面に引き出されると考えられる。続いて、本明細書の別の箇所に記載したもののような撮像システムを用いて、コード化された磁性ビーズからのシグナル、および増幅産物とハイブリダイズした第2のプローブからのシグナルを検出することができる。続いて、さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去することができる。増幅および検出を所望の回数にわたって反復することで、反応に関するリアルタイム定量データを入手することができる。
【0113】
ある態様においては、追加的な浮遊性FRET色素、またはプローブ(例えば、プローブセットの第3のプローブ、第4のプローブなど)と結び付けられた他のレポーター分子を含めることができ、この場合は、プローブセットの1つのプローブが粒子または磁性コード化粒子と連結されている限り、任意の時点でプローブの複数の対を標的核酸配列とハイブリダイズさせる。これらの追加的なプローブは、追加的な識別特質、または標的と結び付けられた追加的なレポーター分子を加えることによって、本方法の感度、特異性および多重化能力をさらに高めることができる。例えば、磁性コード化粒子と連結されたプローブを有することによって、そのプローブをプローブよりも長い標的とハイブリダイズさせ、他のレポーター分子によって修飾された他のプローブが、磁性コード化粒子と連結されたプローブの5'側または3'側にある標的配列の領域とハイブリダイズするようにさせることができる。
【0114】
本明細書に記載した態様の任意のものの効率を改善するために、追加的な試薬を用いることもできる。これらの試薬は、当業者に公知のPCR添加物を用いることによって本方法を改善することができる。BSA、またはブロッキング剤もしくは界面活性剤もしくは表面活性剤として作用する他の分子も、本明細書に記載した方法を改善することができる。BSA、または当業者に公知の他の同様の試薬は、反応チャンバーの表面へのDNAおよび他の試薬の引き付けを低下させることにより、ガラス製または石英製チャンバー内で行われるPCR反応を改善することができる。分子集積効果を呈する他の添加物を、ハイブリダイゼーションまでの時間を改善するために用いることもできる。ハイブリダイゼーションまでの時間を改善する、当業者に公知の他の分子、試薬、化学物質、溶液を用いることもできる。そのようなものの一例は、核酸結合タンパク質または副溝結合剤でありうる。
【0115】
当業者は、硫酸基を付加する周知の方法のようなレポーター色素に対する修飾が、色素分子の親水性を変化させると考えられ、それがコード化された磁性粒子に対する非特異的結合の減少を導きうることを認識しているであろう。
【0116】
3.2つのプローブの競合
また別の態様は、標的核酸配列毎に2つのプローブを使用することを伴う。1つのプローブをビーズに結び付け、それをフルオロフォアで標識することができる。FRETが起こるように、クエンチャーまたはフルオロフォアの対のいずれかを含む相補的「浮遊性」プローブも添加する。この場合には、ビーズ上のプローブが3'末端にフルオロフォアを含み、5'末端でビーズに結び付けられてもよい。浮遊性プローブは、それがフルオロフォアに非常に近接してそれ故にプローブとのハイブリダイゼーションが起こるとシグナルの低下を達成するように、その逆相補物として設計され、その5'末端にクエンチング部分を有することにより、ビーズ上のフルオロフォアに付随するシグナルをクエンチングすることができる。これらのプローブは、PCR増幅または何らかの他の増幅イベント中にも存在すると考えられる。PCRサイクルの標的検出相では、浮遊性プローブはプローブをビーズに結び付けたままで、標的配列とハイブリダイズすると考えられる。ビーズと結び付けられるプローブは、標的配列を伴った浮遊性プローブと比べて、それがより不都合な結合ならびに浮遊性プローブとのより低い融解温度を呈するように設計されると考えられる。PCR反応が続き、標的配列の濃度が増すのに伴って、ビーズに付随するシグナルの有意な増加が観察されると考えられる。シグナルの測定可能な増加という同じ効果を、浮遊性プローブを伴う標的配列の結合動態と比較して標的配列の方が好都合な結合を呈するようにビーズと結び付けられたプローブを設計する同様の方法によって得ることもできる。結合動態の違いを、互いに異なる長さとなるように浮遊性プローブおよび固定プローブを設計することによって、またはプローブの一方に、もう一方のプローブ上の配列に対してはミスマッチであるが標的配列に対してはそうでない1つもしくは複数の塩基を挿入することによって得ることもできる。
【0117】
4.組み込まれたクエンチング分子
図8は、クエンチング分子にヌクレオチドをあらかじめ連結させる(pre-couple)ことにより、新たに合成されたDNA鎖中にクエンチング分子が組み込まれる一例を例示している。このあらかじめ連結されたヌクレオチド/クエンチャーはPCR反応混合物中で利用可能と考えられ、増幅産物中に組み込まれると考えられる。ビーズ40の表面と結び付けられた蛍光色素によって標識された相補的プローブは、標的オリゴヌクレオチド配列がより多く生成されるほど蛍光シグナルが低下するシステムを結果的にもたらすと考えられる。例えば、チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、dNTPの一部分がクエンチャー分子と連結されているdNTPの混合物、および複数の核酸標的に対して相補的な複数の蛍光標識されたプローブを複数の蛍光標識されたプローブを混ぜ合わせ、ここでプローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されていることが考えられる。増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてクエンチャー分子を含む増幅産物を形成させる。増幅反応物中のdNTPの一部分はクエンチャー分子と連結されているため、増幅産物はこれらのクエンチャー分子を組み込んでいると考えられる。続いて、増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせ、コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する。続いて、コード化された磁性ビーズからのシグナル、および標識されたプローブからのシグナルを検出する。増幅産物はクエンチャー分子を組み込んでいるため、プローブからの蛍光シグナルは、増幅産物がより多く生成されるほど低下する。さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去することができる。増幅および検出を所望の回数にわたって反復することで、反応に関するリアルタイム定量データを入手することができる。
【0118】
5.直接ハイブリダイゼーション
増幅配列またはアンプリコンを形成させるために用いられるプライマーが、蛍光色素(例えば、Cy3)または検出を可能にする他の物質で標識されているようなPCRを行うことができる。標識は例えば、プライマーの5'末端にあってよい。標識されたプライマーを用いることで、標識されたアンプリコンの形成が可能になる。標識されている増幅された核酸配列は、識別可能な粒子と連結されたオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすること、およびそれによって捕捉することができる。現在の市販のリアルタイムPCR法のうち、直接ハイブリダイゼーション法を採用しているものはない。
【0119】
直接ハイブリダイゼーションアプローチを用いる1つの態様が図11に例示されている。図11に示されているように、プライマー対の一方のプライマーはその5'末端で、フルオロフォアCy3などのレポーター分子によって標識される。プライマー対はPCR物中に存在する試料DNAからの標的配列を増幅して、標識されたアンプリコンを形成する。同じくPCR物中に存在するのは、アンプリコンの標識鎖に対して相補的なプローブと連結された、磁性のコード化されたビーズである。固定化されたプローブの3'末端は、プローブのポリメラーゼ伸長を防ぐためにブロックされていてもよい(例えば、リン酸基または3'逆向きdTにより)。所望の数のPCRサイクルの後に、磁性のコード化されたビーズを検出のためにチャンバーの表面に引き出すために、磁場をチャンバーに印加する。この段階は、標識されたアンプリコンがその相補的プローブとハイブリダイズし、そのためチャンバーの表面にも引き出されると考えられるハイブリダイゼーション条件下で行われる。標識されたアンプリコンの存在は、チャンバーの表面での標識(例えば、Cy3標識からの蛍光シグナル)の検出によって検出される。図11はシングルプレックス反応を例示しているものの、この方法は多重PCR反応にも適用しうることが理解される必要がある。コード化されたビーズ、アンプリコン上の標識、およびそれらの組み合わせを用いて、同じ反応物中の数多くの異なるアンプリコンを識別することができる。
【0120】
6.タグ付加されたプライマー
もう1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料;複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対を混ぜ合わせる段階を含む方法であり、ここで各プライマー対が、標的特異的配列、標的特異的配列の5'側にあるタグ配列、および標的特異的配列とタグ配列との間にあるブロッカーを含む第1のプライマー、ならびに標的特異的配列を含む第2のプライマー;標識剤;ならびに複数のプライマー対のタグ配列に対して相補的な複数のプローブ(抗タグ)を含み、ここでプローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている方法を提供する。増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてタグ付加および標識された増幅産物を形成させる。タグ付加および標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせ、コード化された磁性ビーズ、ならびにコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズしたタグ付加および標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する。続いて、コード化された磁性ビーズからのシグナル、ならびにタグ付加および標識された増幅産物からのシグナルを、例えば、本明細書に記載したもののような撮像システムを用いて検出する。さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去することができる。増幅および検出を所望の回数にわたって反復することで、反応に関するリアルタイム定量データを入手することができる。ある局面において、標識剤は、プライマー対の第2のプライマーと結び付けられたレポーター分子であってよい。他の局面において、標識剤はインターカレート色素であってよい。
【0121】
上述したように、相補的タグ配列(すなわち、タグおよび抗タグ)をプライマーおよびプローブ中に用いることができる。プライマー、プローブ配列、標的配列などと連結されたタグ相補物と特異的にハイブリダイズさせるために用いうる固体支持体と結び付けられたオリゴヌクレオチドタグの使用を伴う、数多くのアプローチが開発されている。非ハイブリダイズ性のタグ配列および抗タグ配列の適正な選択は、アッセイ、特にストリンジェントな非クロスハイブリダイズ性の挙動を必要とする高度に並列的なハイブリダイゼーション環境におけるアッセイにおいて有用である。
【0122】
タグ配列および抗タグ配列の設計においては、核酸ハイブリッドが形成するある特定の熱力学特性が考慮される。Tm(核酸二重鎖の50%が解離する温度)として知られる、オリゴヌクレオチドがその相補的配列と二重鎖を形成する温度は、正規の対であるA-TおよびG-Cの水素結合エネルギー(GC組成または塩基組成に反映される)、スタッキングフリーエネルギー、そしてより程度は落ちるが、隣接相互作用を含む、数多くの配列依存的特性に従ってさまざまである。これらのエネルギーは、ハイブリダイゼーションアッセイで典型的に用いられるオリゴヌクレオチド間で大きく異なる。例えば、一方がGC含量40%でもう一方がGC含量60%である24ヌクレオチドで構成される2つのプローブ配列とその相補的標的との、標準的な条件下でのハイブリダイゼーションは、理論的には融解温度に10℃の違いがあると考えられる(Mueller et al., 1993)。ハイブリダイゼーションにおける問題は、あるセットのすべてのオリゴヌクレオチド配列の正しいハイブリダイゼーションにとって最適でない単一のハイブリダイゼーション温度を含むハイブリダイゼーション条件下でハイブリッド体を形成させた場合に起こる。非相補的プローブのミスマッチハイブリダイゼーションが起こり、測定可能なミスマッチ安定性を備えた二重鎖が形成される可能性がある(Santalucia et al., 1999)。特定セットのオリゴヌクレオチドにおける二重鎖のミスマッチ形成は、ミスマッチが二重鎖安定性の低下をもたらし、それがその特定セットの二重鎖の最も安定性の低い正しい二重鎖よりも高いTmを結果的に生じさせるようなハイブリダイゼーション条件下で起こる可能性がある。例えば、ハイブリダイゼーションがATリッチの完全マッチの二重鎖配列を有利にする条件下で行われた場合、正しく形成されたATリッチな二重鎖よりもさらに高い融解温度を有するミスマッチ塩基を含むGCリッチな二重鎖配列がハイブリダイズする可能性が存在する。このため、多重化ハイブリダイゼーション反応に用いうるオリゴヌクレオチド配列のファミリーの設計には、設計されたオリゴヌクレオチドセットの内部でのクロスハイブリダイゼーション挙動を減少または除去させると考えられるオリゴヌクレオチドおよび二重鎖形成の熱力学に関する検討を含めなければならない。
【0123】
多重化ハイブリダイゼーションアッセイに用いるためのタグ配列および抗タグ配列を選択するためのアプローチは数多くある。タグ配列および抗タグ配列指定可能アレイ内のジップコードまたはタグとして用いうる配列の選択は、特許文献中で、Brennerら(米国特許第5,654,413号、これは参照により本明細書に組み入れられる)によって採用されているアプローチにおいて記載されている。Chetverinら(WO 93/17126号、米国特許第6,103,463号および第6,322,971号、これらは参照により本明細書に組み入れられる)は、核酸の選別および調査のための区分化された二値オリゴヌクレオチドアレイを開示している。これらのアレイは隣接可変ヌクレオチド配列と結び付けられた一定のヌクレオチド配列を有し、これらは両方とも共有結合部分によって固体支持体と結合している。サブユニットに基づくタグの設計に用いられるパラメーターは、Baranyら(WO 9731256号、これは参照により本明細書に組み入れられる)で考察されている。ある多重シークエンシング方法が米国特許第4,942,124号に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。この方法は、タグ配列の箇所で互いに違いのある少なくとも2つのベクターを用いる。
【0124】
参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,226,737号は、210個の非クロスハイブリダイズ性タグおよび抗タグのセットを記載している。参照により本明細書に組み入れられる、米国公開出願第2005/0191625号は、その相補的配列と最小限のクロスハイブリダイゼーションで正しくハイブリダイズする能力が示されている1168個のタグ配列のファミリーを開示している。参照により本明細書に組み入れられる、米国出願第60/984,982号は、核酸配列の増幅におけるタグ、抗タグおよび捕捉複合体の使用を記載している。
【0125】
オリゴヌクレオチドタグ配列または抗タグ配列の集団を、直接化学合成、化学カップリング、連結、増幅などを非限定的に含むいくつかの異なるやり方で、プライマーまたは他のポリヌクレオチド配列の集団とコンジュゲートさせることもできる。配列タグが、例えばPCR増幅における標的上のプライマー酵素伸長のための標的特異的プライマー配列を伴って合成されている。オリゴヌクレオチドタグ配列または抗タグ配列の集団は、支持体の表面上での表面化学手法によって固体支持体とコンジュゲートさせることができる。
【0126】
以上で考察したように、増幅反応に用いられるプライマー対の一方のプライマーはタグ配列を含む。タグ配列を含むプライマーの初期伸長の後には、タグ付加された伸長産物を、プライマー対のもう一方のプライマーに対するテンプレートとして役立てることができる。しかし、そのようなテンプレート上での伸長がタグ領域を通り越して進行することは、タグ配列とプローブの抗タグ配列とのハイブリダイゼーションを妨げる恐れがあるために望ましくないと考えられる。このため、標的特異的配列とプライマーのタグ配列との間にブロッカーを配置することができる。ブロッカー部分はポリメラーゼがタグ配列領域内に伸長するのを防ぎ、そのことはタグ配列を増幅中に一本鎖のまま保たせ、それ故に捕捉複合体内のその相補的抗タグ配列と自由にハイブリダイズすることを可能にする。
【0127】
ブロッカー部分とは、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間に結合された(例えば、共有結合された)時に、第1および第2のヌクレオチド配列の両方ではなく、第1または第2のヌクレオチド配列のいずれかの伸長を抑制し、好ましくは防ぐのに有効な、任意の部分のことを指す。ブロッカー部分として用いうる分子は数多くある。ブロッカー部分の非限定的な例には、C6〜20直鎖アルキレンおよびiSp18(これは18原子ヘキサ-エチレングリコールである)が含まれる。ブロッカー部分には例えば、少なくとも1つのデオキシリボフラノシルナフタレンまたはリボフラノシルナフタレン部分が含まれ、それは3'-フラノシル結合を介して、または好ましくは2'-フラノシル結合を介して隣接ヌクレオチドと連結してよい。ブロッカー部分は、標的特異的配列とは逆向きにあるオリゴヌクレオチド配列であってよい。したがって、本発明のある態様において、プライマーのタグ配列はタグおよびブロッカーの両方であってよく、ここで標的特異的配列は5'→3'の向きにあるがタグ配列は3'→5'の向きにある。この向きでは、タグ配列はポリメラーゼ酵素による伸長が不能である。さまざまなブロッカー部分およびそれらの使用が米国特許第5,525,494号に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0128】
ブロッカー部分を用いない場合には、タグ配列と抗タグ配列とのハイブリダイゼーションを許容するための段階を取り入れてもよい。例えば、増幅において、タグ付加およびブロックされたプライマーの代わりに抗タグ付加されたプライマーを用いることができる。この場合には、ポリメラーゼを抗タグ配列領域内に伸長させて、相補的タグ配列を作り出させる。続いて、抗タグ/タグ領域を含む二本鎖増幅産物を変性させ、その後に固体基板に連結された抗タグとのハイブリダイゼーションを行う。
【0129】
7.粒子と結び付けられたプライマー
本発明のある態様においては、それ自体が磁性応答性粒子の表面に結び付けられたプライマーを用いることができる。そのような態様においては、アンプリコンがビーズ上に合成されると考えられるため、アンプリコンを捕捉するためにビーズに結び付けられたハイブリダイゼーションプローブは必要でないと考えられる。典型的には、各プライマー対の一方のみを粒子に結び付ける。プライマー対のもう一方のプライマーは「浮遊性」となる。そのようなプライマーはまた、分子ビーコンとしても作用するプライマーなどによる伸長に応じてそれらをスペクトル的に識別可能にするような特性を呈し、その結果、フルオロフォアとクエンチャーの近接性を変化させるプライマーの伸長に応じてシグナルの変化が観察される。浮遊性プライマーを標識する、標識されたdNTPをアンプリコン中に組み入れる、またはDNAインターカレート剤を用いるといったその他の検出化学手法を、これらの態様とともに用いることもできる。
【0130】
8.加水分解プローブ
標的核酸検出のもう1つの方法は、ある種のポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を利用する。この態様において、フルオロフォアとクエンチャーの対またはFRET対は、粒子(例えば、ビーズ)に結び付けられた単一のプローブの修飾物であってよい。両方の蛍光色素がお互いの密接な空間的近接性のために相互作用するように、これらの蛍光色素の一方を磁性ビーズの表面に結び付け、もう一方の他の蛍光色素を、粒子の表面に固定されたプローブに結び付けることもできる。標的配列とプローブのハイブリダイゼーションが起こると、別のプライマーがプローブの下流に位置し、そのためにプライマーの伸長が起こるとクエンチング部分(または蛍光部分)が切断されて、シグナルの測定可能な変化が生じる。
【0131】
9.SimpleProbes(登録商標)
他の態様は、データをリアルタイムで観察する目的でビーズと結び付けられた、SimpleProbes(登録商標)またはSimpleProbes(登録商標)と同等なプローブの使用を組み入れることができる。これらのプローブは米国特許第6,635,427号に記載されている。SimpleProbes(登録商標)を、アミノ修飾されたC12リンカーを用いて、または何らかの他のリンカーもしくは別の共有結合性相互作用によって超常磁性ミクロスフェアと結び付けることもできる。これらのプローブをビーズと結び付けることによって、意図した標的配列との結合によって二本鎖産物が形成され、核酸配列の検出および分析が高度に多重化されたリアルタイムPCR形式で可能になるように、ビーズをPCR反応中に存在させることができる。
【0132】
10.イムノ-PCR
イムノ-PCRを、抗体によって検出しうる関心対象の抗原、細胞、内生胞子または任意の他の分子もしくはタンパク質を検出するために用いてもよく、ここで前記抗体は核酸配列と連結されている。イムノ-PCRの既存の方法は、米国特許第5,665,539号;Sano, T. et al., Science, 258:120-122(1992);およびSims, PW et al,, Anal Biochem. 281:230-232(2000)に記載されており、これらのそれぞれは参照により組み入れられる。しかし、既存の方法は、イムノ-PCRをリアルタイムで検出する多重化能力に限界がある。1つの態様において、本発明は、捕捉抗体またはアプタマーを性質的に磁性(例えば、超常磁性)である粒子とまず連結させることによって、イムノ-PCRをリアルタイムで検出する多重化能力を大きく増大させることのできる方法であって、その粒子が関心対象の標的分子と反応して結合することのできる方法を提供する。この粒子はスペクトル的に識別可能なようにコード化される必要はない。反応が起こった後に、反応の最中、または反応の前に、ナノ粒子またはミクロ粒子でありうる磁性粒子を検出および増幅用のチャンバーに入れることができる。捕捉抗体またはアプタマーと連結されている粒子は、磁場を印加することによってチャンバーの表面に引き寄せることができる。これらの粒子、ならびにそれらに結合または他の様式で結び付けられた分子は洗浄手順を受け、それはある容積の水溶液を、磁力によって所定の位置に保たれた粒子上に流し、必要があれば過剰な標的分子を洗い流すことを含みうる。
【0133】
検出抗体または検出アプタマーを反応チャンバーに導入して標的分子と反応および結合させることができるが、その分子も捕捉抗体またはアプタマーと結合しており、それがさらに磁性粒子と連結されている。検出抗体または検出アプタマーは、増幅可能な核酸産物を形成することのできる核酸配列と連結されている。検出抗体は磁場の印加が可能な検出チャンバー内に必ずしも導入される必要はなく、別の反応ベッセル内に導入して、続いてその後に磁場の印加が可能な反応ベッセル内に導入することもできる。検出抗体を、洗浄手順の前に、標的分子または標的/捕捉/粒子複合体とともに導入する必要はない。ひとたび標的/捕捉/粒子複合体または標的/捕捉/粒子/検出複合体(捕捉サンドイッチ複合体)を、磁場の印加が可能な検出チャンバーに導入したならば、もし粒子が標的/捕捉/粒子複合体を形成もしくは洗浄する方法の任意のさまざまな派生物によってすでにチャンバーの表面に引き寄せられていなければ、この複合体、または完全には複合体化していないその任意の部分を、チャンバーの表面に引き寄せることができる。ひとたびチャンバーの表面に引き寄せられたならば、この複合体を、それを達成するための当技術分野で公知の任意のさまざまな試薬またはバッファーまたは水性溶液によって洗浄することができる。一般的に用いることのできるバッファーには、PBS、BSA、PBS/BSA、水、PCRバッファーなどを用いることによるものが非限定的に含まれうる。この場合における洗浄は、過剰な検出抗体またはアプタマーを除去することによってアッセイを改善することができ、それは特異性を高める可能性がある。捕捉抗体または捕捉アプタマーは、洗浄が望ましくなければ、表面に引き寄せることのできる粒子と結び付けられている必要はない。
【0134】
この捕捉サンドイッチ複合体は、コード化された磁性ビーズも存在するPCR反応またはリアルタイムPCR反応に用いることができる。この態様においては、捕捉サンドイッチ複合体または複数の捕捉サンドイッチ複合体が、熱サイクリングを行える検出チャンバーに導入されており、洗浄手順を行う目的で磁場によってチャンバーの表面に引き寄せて保たれていると考えられる。洗浄後に、核酸標的検出のために適した核酸プローブと連結されているコード化されたビーズを、ポリメラーゼ連鎖反応または他の核酸増幅の方法を行うために必要なすべての試薬および成分も含む媒質中にてそれに導入する。溶液は、本明細書に記載した他の態様におけるリアルタイムPCRの多重化検出のために必要な任意のさまざまな試薬も含むと考えられる。例えば、複数の検出抗体または検出アプタマーが、核酸配列の多重化検出を可能にするように配列の異なる組み合わせで構成される核酸配列と連結させて、そのような複数の配列の検出を、検出抗体または検出アプタマーとの会合によって標的分子の検出または定量へと遡って関連づけられるようにすることができる。
【0135】
例えば、ひとたび捕捉サンドイッチ複合体およびPCR試薬ならびにコード化された磁性ビーズが混ぜ合わされれば、その後の方法は、本明細書に記載した多重化増幅および検出のための任意のさまざまな態様を含むことができる。例えば、1つの態様において、本発明は、試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、標識剤、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれに関する標識された増幅産物を形成させる段階;(c)標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;(e)コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物を検出する段階;(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法を提供する。本発明のある局面においては、段階(b)から(f)までを10〜40回反復する。
【0136】
11.核酸類似体
本明細書で開示する方法において用いられる核酸には、「ロックド核酸(Locked Nucleic Acid)」またはその他などのヌクレオチド異性体または塩基類似体が含まれうる。核酸配列は、天然に存在するヌクレオチドの類似体を含んでもよく、またはすべてがそれから構成されてもよい。ヌクレオチド類似体は当技術分野において周知である。非限定的な一例は「ペプチド核酸」であり、これは「PNA」、「ペプチドに基づく核酸類似体」または「PENAM」としても知られ、米国特許第5,786,461号、第5,891,625号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,736,336号、第5,719,262号、第5,714,331号、第5,539,082号およびWO 92/20702号に記載されており、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられる。ペプチド核酸は一般に、DNAおよびRNAなどの分子と比較して、向上した配列特異性、結合特性および酵素分解に対する抵抗性を有する(Egholm et al., 1993;PCT/EP/01219号)。ペプチド核酸は一般に、核酸塩基部分、五炭糖でない核酸塩基リンカー部分、および/またはリン酸骨格部分でない骨格部分を含む、1つまたは複数のヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。PNA用に記載されている核酸塩基リンカー部分の例には、アザ窒素原子、アミドおよび/またはウレイドテザーが含まれる(例えば、米国特許第5,539,082号を参照)。PNA用に記載されている骨格部分の例には、アミノエチルグリシン、ポリアミド、ポリエチル、ポリチオアミド、ポリスルフィンアミドまたはポリスルホンアミド骨格部分が含まれる。
【0137】
もう1つの非限定的な例は、ロックド核酸(locked nucleic acid)すなわち「LNA」である。LNAモノマーは、RNAヌクレオシドと構造的に類似した二環式化合物である。LNAは、Koshkin et al., 1998aおよび1998bならびにWahlestedt et al., 2000に記載されているように、2'-O位置を4'-C位置と結び付けるメチレンリンカーによって制約されるフラノースコンフォメーションを有する。
【0138】
さらにもう1つの非限定的な例は、米国特許第5,908,845号に記載されている「ポリエーテル核酸」であり、これは参照により本明細書に組み入れられる。ポリエーテル核酸では、1つまたは複数の核酸塩基がポリエーテル骨格内のキラル炭素原子と連結されている。
【0139】
12.ハイブリダイゼーション
本明細書で用いる場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイズしうる」は、二本鎖もしくは三本鎖分子、または部分的に二本鎖もしくは三本鎖の性質を備えた分子を形成することを意味する。「アニールする」という用語は、本明細書で用いる場合、「ハイブリダイズする」と同義である。「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイズしうる」という用語は、「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー」という用語、および「低ストリンジェンシー」または「低ストリンジェンシー条件」という用語を包含する。
【0140】
本明細書で用いる場合、「ストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー」とは、相補的配列を含む1つまたは複数の核酸鎖の間または内部でのハイブリダイゼーションを可能にするが、非相補的配列のハイブリダイゼーションは不可能であるような条件のことである。そのような条件は当業者に周知であり、高度の選択性を必要とする用途にとっては好ましい。ストリンジェントな条件には、約0.02M〜約0.15M NaClで約50℃〜約70℃の温度によって与えられるような、低塩および/または高温の条件が含まれうる。所望のストリンジェンシーの温度およびイオン強度が、一部には、具体的な核酸の長さ、標的配列の長さおよび核酸塩基含量、核酸の電荷組成、ならびにハイブリダイゼーション混合物におけるホルムアミド、塩化テトラメチルアンモニウムまたは他の溶媒の存在または濃度によって決定されることは理解されている。
【0141】
また、ハイブリダイゼーションのためのこれらの範囲、組成および条件は、非制限的な例に過ぎないものとして記述されており、特定のハイブリダイゼーション反応のための所望のストリンジェンシーはしばしば、1つまたは複数の陽性または陰性対照との比較によって経験的に決定されることも理解されている。低ストリンジェンシーの非制限的な例には、約0.15M〜約0.9M NaClで約20℃〜約50℃の範囲の温度で行われるハイブリダイゼーションが含まれる。当然ながら、特定の用途に適合させるために低または高ストリンジェンシー条件をさらに変更することは、当業者の技能の範囲内にある。
【0142】
E.コード化された粒子
本明細書ではある特定の態様をコード化されたミクロスフェア(すなわち、ビーズ)に関して説明してきたが、照射サブシステム、システムおよび方法を、ミクロ粒子、金または他の金属ナノ粒子、量子ドットまたはナノドットといった他の粒子とともに用いてもよいことが理解される必要がある。粒子は超常磁性であることが好ましい。ミクロスフェア、ビーズおよび粒子の例は、Fultonに対する米国特許第5,736,330号、Chandlerらに対する第5,981,180号、Fultonに対する第6,057,107号、Chandlerらに対する第6,268,222号、Chandlerらに対する第6,449,562号、Chandlerらに対する第6,514,295号、Chandlerらに対する第6,524,793号、およびChandlerに対する第6,528,165号に例示されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0143】
コード化された粒子の内部または表面にある色素または蛍光色素の励起は、レーザー光、ダイオード光、アーク灯、熱、放射線、化学発光、電気蛍光発光、化学電気蛍光発光、または当業者に公知の任意の他の方法によって達成することができる。
【0144】
ある態様において、本発明は、Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)およびMagPlex(商標)技術とともに用いられる。Luminex xMAP技術は、蛍光的にコード化されたミクロスフェア上に固定化された核酸産物の検出を可能にする。ミクロスフェアを、2つのスペクトル的に異なる蛍光色素の各々の10種の異なる強度で染色することにより、ミクロスフェアの、100種の蛍光的に異なる集団が生成される。これらの個々の集団(セット)は個々の検出配列を表すことができ、各セットに対するハイブリダイゼーションの強さを個々に検出することができる。ハイブリダイゼーション反応の強さは第3のレポーターを用いて測定され、これは典型的には第3のスペクトル的に異なるフルオロフォアである。レポーター分子は、ミクロスフェア上の分子と結び付くことによって反応の程度を知らせる。ミクロスフェアおよびレポーター分子の両方が標識されているため、デジタルシグナル処理により、シグナルの各反応に関するリアルタイムの定量データへの変換が可能になる。Luminex技術は例えば、米国特許5,736,330号、第5,981,180号および第6,057,107号に記載されており、これらはすべて明確に参照により組み入れられる。Luminex(登録商標)MagPlex(商標)ミクロスフェアは、以上に考察したxMAP(登録商標)技術を用いて蛍光的にコード化された超常磁性ミクロスフェアである。このミクロスフェアは、リガンド(または生体分子)との共有結合のための表面カルボキシル基を含む。
【0145】
F.キット
本発明はまた、本明細書に開示した増幅および検出の方法とともに用いるための成分を含むキットも提供する。本明細書に開示した成分の任意のものをキットの中に組み合わせることができる。ある態様において、キットは、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブを含み、ここでプローブは、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている。ある態様において、キットは標識剤も含む。ある態様において、キットは、コード化された磁性ビーズと結び付けられていないプローブを含む。いくつかの態様において、キットは撮像チャンバーを含み、それは撮像システムで用いるための使い捨て式撮像チャンバーであってもよい。
【0146】
キットの成分は、水性媒質中または凍結乾燥形態にある状態でパッケージ化することができる。キットの容器手段には一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の容器手段が含まれ、その中に成分が配置されており、好ましくは適切に等分されている。キット内に複数の成分がある場合には、キットは一般に、追加の成分がその中に別々に配置される第2の、第3または他の追加の容器も一般に含む。しかし、成分のさまざまな組み合わせを1つのバイアル中に含めてもよい。本発明のキットはまた、典型的には、さまざまな容器を商業的販売のために密に閉じ込めた状態で含めるためのパッケージも含む。そのようなパッケージには、所望のバイアル、瓶などがその中に保持される、厚紙または射出もしくは吹込成形されたプラスチックパッケージが含まれうる。
【0147】
キットの成分が1つまたは複数の液体溶液として提供される場合には、液体溶液は水性溶液であってよく、無菌の水性溶液が特に好ましい。しかし、キットのある特定の成分を乾燥粉末として提供することもできる。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合には、粉末を適した溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒が別の容器手段の中に同じく提供されることが想定されている。
【0148】
キットがまた、キット成分を用いるための説明書を含んでもよい。説明書は、実施することができるさまざまな変法を含みうる。
【0149】
G.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含められる。以下の実施例において開示される手法が、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって見いだされた技術を代表しており、そのため、本発明の実践において十分に機能することが当業者には理解されるはずである。しかし、当業者は、本発明の開示に鑑みて、開示された具体的な態様に多くの変化を加えることができ、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を入手しうることも理解するはずである。
【0150】
1.実施例1:PCRサイクリング条件下での磁性ミクロスフェアの安定性
この試験は、PCRサイクリング条件下でのLuminex超常磁性ミクロスフェアの頑健な安定性を実証する。これはまた、アンプリコンを、PCR反応のさまざまな段階で、その濃度が高くなるのに伴って捕捉して検出することができることも実証する。この試験はまた、2プローブ式システムが、磁性ミクロスフェアを用いるリアルタイムPCR検出のための実行可能なデザインであることも示す。ハイブリダイゼーションプローブ(US 2001/6174670号)も2プローブ式システムを用いている。
【0151】
実験デザイン:
2プローブ式システムを用いて、標的特異的ヌクレオチドプローブと連結された磁性ミクロスフェアの存在下で、第V因子遺伝子アンプリコンの生成を検出した。標的特異的プローブ(FVプローブAno)をビーズセット22と結び付けた。このプローブは蛍光標識しなかった。ビーズセットとは結び付けられていないが標的特異的であり、3'末端でCy3フルオロフォアにより標識されている別のプローブを混合物中に含めた。標的に対して特異的でないオリゴヌクレオチド配列と連結されている第2のビーズ(ビーズセット27)も陰性対照として添加した。
【0152】
PCR混液は、以下の試薬および濃度を用いて調製した。

【0153】
プライマーは最適化された非対称濃度で用い、標的配列(FV Rev)を増幅するプライマーはPCR混液中で最終濃度400nMとし、一方、順方向プライマー(FV Fwd52)は最終濃度50nMとした。この反応物中の塩化マグネシウムの濃度は、当業者が通常考えているものよりも高い濃度に最適化した。加熱可能な検出チャンバーが入手不能であったため、ゲノムテンプレートを除外してPCR混液を作製するように概念実証実験を設定した。混液を各48μLの16個の等容積に等分した。ゲノムテンプレートをこれらのアリコートのそれぞれに添加し、それらをPerkin Elmer 9700サーマルサイクラーからPCR反応の種々のサイクル数の時点で取り出した。サーマルサイクラーからアリコートを取り出してすぐに、個々の反応物にそれ以上は試薬を添加せずに、アリコートを別々の加熱器に載せて95℃で30秒間、続いて52℃で3分間置いた。続いて、それ以上の変更を加えずにアリコートを直ちにLuminex 100装置で分析した。添加したLuminex Magplexミクロスフェアセットはいずれも、反応物当たりおよそ5000ミクロスフェアの濃度とした。
【0154】
この反応に関するサイクリング条件は以下の通りとした:
熱変性段階;95℃で5分間。
サイクリング段階(43サイクルにわたり):95℃で30秒間、45℃で45秒間、72℃で45秒間。
【0155】
この試験で用いたオリゴヌクレオチド配列はIDTに発注したものであり、以下の通りである。

【0156】
第V因子ライデンのゲノム遺伝子配列(gi:2769646およびgi:488109)は図13に示されている。
【0157】
表1におけるデータは、PCR反応のサイクル数の増加に伴うシグナルの増大を示している。このデータは、特異的ビーズセット(22)に関するシグナルの増大、および非特異的なビーズセット(27)に関する有意なシグナルの増大の欠如を示している。ここでのシグナルは、Luminex Analyzerからの蛍光強度中央値(MFI)として示されている。このMFIは、およそ100個の個別に連結された磁性ビーズからのレポーターシグナルを測定して、中央値を計算することによって得られた。
【0158】
(表1)

【0159】
表1におけるデータは、図14にグラフ表示されている。図14に見てとれるように、ビーズセット22からの曲線の形状は、典型的なリアルタイムPCR反応から予想されるような形状である。この曲線は、1つのPCR反応のベースライン相、指数相およびプラトー相を呈示している。
【0160】
ビーズは、以下のプロトコールを用いて捕捉プローブと連結させた:
1.-20℃の乾燥保存Pierce EDC粉末の新鮮なアリコートを室温に至らせる。
2.アミン置換オリゴヌクレオチド(「プローブ」または「捕捉」オリゴ)をdH2O中に1mM(1ナノモル/μL)で再懸濁させる。
3.連結されていないLuminexミクロスフェアの貯蔵物を、ミクロスフェアに付属の製品情報シートに記載された指示に従って再懸濁させる。
4.ミクロスフェア貯蔵物の5.0×106個を、USA Scientific微量遠心管に移す。
5.ミクロスフェア貯蔵物を、8000×g以上で1〜2分間の微量遠心によってペレット化する。
6.上清を除去し、ペレット化したミクロスフェアを、50μLの0.1M MES、pH 4.5中にボルテックス処理およびおよそ20秒間の超音波処理によって再懸濁させる。
7.1mM捕捉オリゴのdH2O中の1:10希釈物を調製する(0.1ナノモル/μL)。
8.2μL(0.2ナノモル)の1:10希釈捕捉オリゴを、再懸濁させミクロスフェアに添加して、ボルテックス処理によって混合する。
9.dH2O中にある10mg/mL EDCの新鮮な溶液を調製する(注:EDC粉末は2回目のEDC添加に再利用するために乾燥剤に戻す)。
10.各カップリング反応のたび毎に、2.5μLの新鮮な10mg/mL EDCをミクロスフェア(

)に添加して、ボルテックス処理によって混合する。
11.暗所にて室温で30分間インキュベートする。
12.dH2O中にある10mg/mL EDCの第2の新鮮な溶液を調製する(注:EDC粉末のアリコートはここで廃棄すべきである)。
13.各カップリング反応のたび毎に、2.5μLの新鮮な10mg/mL EDCをミクロスフェアに添加して、ボルテックス処理によって混合する。
14.暗所にて室温で30分間インキュベートする。
15.連結されたミクロスフェアに1.0mLの0.02% Tween-20を添加する。
16.連結されたミクロスフェアを、8000×g以上で1〜2分間の微量遠心によってペレット化する。
17.上清を除去し、連結されたミクロスフェアを1.0mLの0.1% SDS中にボルテックス処理によって再懸濁させる。
18.連結されたミクロスフェアを、8000×g以上で1〜2分間の微量遠心によってペレット化する。
19.上清を除去し、連結されたミクロスフェアを100μLのTE、pH 8.0中に、ボルテックス処理およびおよそ20秒間の超音波処理によって再懸濁させる。
20.連結されたミクロスフェアを血球計算器によって算定する:
a.再懸濁された、連結されたミクロスフェアをdH2O中に1:100で希釈する。
b.ボルテックス処理によって十分に混合する。
c.10μLを血球計算器に移す。
d.血球計算器グリッドの4つの大きな隅部の内部のミクロスフェアを計数する。
e.ミクロスフェア/μL=(4つの大きな隅部の中のミクロスフェアの合計)×2.5×100(希釈係数)。
f.注:最大値は50,000ミクロスフェア/Lとする。
21.連結されたミクロスフェアを暗所にて2〜8℃に冷蔵して保存する。
【0161】
2.実施例2:タグ付加されたプライマーを用いる増幅検出
以下の実施例は、核酸増幅シグナルを、タグ付加プライマー法を用いてリアルタイムで測定しうることを実証する。この実施例はまた、これらの測定を、石英撮像チャンバー、および超常磁性粒子を電荷結合素子(CCD)検出器の反対側の二次元チャンバーの表面に磁性で引き出すために石英撮像チャンバーに隣接させて動かすことのできる磁石を含む撮像システム(例えば、図1および2参照)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応溶液の存在下で、それに変更を加えることなしに行いうること、ならびにそれらの測定がLuminex 200システムと同等であることも実証する。石英チャンバーおよび磁石を含む撮像システムは、検出器が、粒子およびそれらに結合した任意の分子の画像を、それらが磁場によってチャンバーの表面に固定化されている時に記録することから、「静的」撮像システムとみなすことができる。これとは対照的に、Luminex 200システムは、粒子が検出中に固定化されていないため、「フロー」システムとみなすことができる。
【0162】
実験デザイン:
このデザインでは、プライマーの一方がその5'末端でCy3フルオロフォアによって修飾されている2つのプライマーを用いた。もう一方のプライマーは、標的特異的領域と、超常磁性ミクロスフェアに結び付けられた特異的プローブに対して相補的なタグ配列(抗タグ)配列との間に配置された炭素18個のスペーサーによって修飾させた。この場合、プライマーLUA-MEUは、C18スペーサーの5'側に、ビーズセット43に連結されたビーズME tfプローブ配列に対して相補的なタグ配列を有した(iSpl8-IDT)。この試験において、プライマーセットは、MTHFRエクソン7遺伝子配列のある領域を増幅するように設計した。2つのLuminex MagPlexミクロスフェアセット(ビーズセット)を、PCR反応中にPCR混液に含めた。ビーズセット43に結び付けられたプローブはプライマーLUA-MEU-TF上の5'タグ配列に対して相補的であり、一方、ビーズセット12に連結されたプローブはこの反応物におけるプライマーのタグ配列に対して相補的ではなく、それ故に陰性対照として利用した。添加したLuminex Magplexミクロスフェアセットはいずれも、反応物当たりおよそ5000ミクロスフェアの濃度とした。
【0163】
PCR混液は、以下の試薬および濃度を用いて調製した。

【0164】
この反応に関するサイクリング条件は以下の通りとした:
熱変性段階;95℃で5分間。
サイクリング段階(36サイクルにわたり):94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間。
【0165】
この実験に用いたオリゴヌクレオチド配列はIDTに発注したものであり、以下の通りであった。

【0166】
この実験では、プライマー濃度および塩化マグネシウム濃度は最適化する必要がなかった。これは、増幅産物がタグ配列に対応する一本鎖突出部を含むという増幅プライマーの設計の性質に起因する。C18スペーサーは、ビーズセット43上のプローブに対して相補的なタグ配列が第2鎖合成のためのテンプレートとしての役を果たしえないように、ポリメラーゼによる伸長を阻止する。このため、増幅産物の5'末端上の一本鎖タグ配列は、直接ハイブリダイゼーションモデルで起こるような逆相補鎖との競合を伴わずに、プローブとハイブリダイズすることができた。
【0167】
この試験では、PCR混液を、テンプレートを伴わずに、各50uLの容積で32個の別々のPCRチューブに等分するのに十分な容積を上回るように作製した。このPCR混液は、2つのセットのLuminex MagPlexミクロスフェアを含んだ。ひとたび混合して等分したところで、PCR反応物のうち16個をゲノムDNAと混合し、16本のチューブは陰性PCR対照として利用するためにテンプレート無し(nt)反応物のままに保った。8個の陽性試料および8個の陰性試料を、Luminex LX200装置を用いて分析した。さらに、8個の陽性試料および8個の陰性試料を上記の「静的」撮像装置を用いて分析した。8個の試料からなる1つのセットのそれぞれの場合に、各試料をサーマルサイクラーからPCR反応のさまざまな段階で取り出した。これらの試料はサーマルサイクラーから以下のサイクルで取り出した:0、5、10、15, 20、25、30、35。熱サイクリングが完了するまでは反応物を一時的に暗所にて室温で保存した。
【0168】
続いて試料を95℃の加熱器の上に1分間、続いて37℃で10分間置いた。
【0169】
これらの試料をまた、増幅特異性を確かめるためにReliant Gel System Gel Cat. No. 54929にも通過させた。
【0170】
「静的」撮像装置から得られたデータは表2に含められている。
【0171】
(表2)

【0172】
「静的」撮像装置については、各試料を石英撮像チャンバー内に分注し、コード化された磁性ビーズをチャンバーの背面に引き出して、分析中はその位置に保った。このデータは、レポーター波長からの代表的な中央値を呈示している。どちらのビーズセットも、何ら問題を伴うことなしに分類波長を用いて分類することができた。ビーズセット43からのサイクル30および35でのシグナルの増大に注目されたい。このシグナルの増大は、増幅サイズおよび強度の点でゲルデータと相関していた。
【0173】
「静的」撮像装置で分類した試料(表2)と同一の試料設定を用いてLuminex 200装置から得られたデータ(表3)。
【0174】
(表3)

【0175】
このデータは、増幅サイズおよび強度の点でゲルからのデータと相関した。シグナル増大の同様のパターンは、「静的」撮像システム形式を用いても示された。
【0176】
3.実施例3:多重度8
この例では、8種のプライマーセットおよび14種のビーズセットによる直接ハイブリダイゼーション方法を用いた。増幅産物が、関連のないプローブを含むビーズセットと非特異的にはハイブリダイズしないことを示すために、過剰なビーズセットを用いた。
【0177】
以下の試薬を含むPCR混液を作製した。

【0178】
プローブ配列が結び付けられたLuminex MagPlexミクロスフェアを含むこの混液を、40本のPCRチューブに50μLずつ等分した。続いて反応物のうち20個におよそ100ngのゲノムDNAを添加した。これらの反応物のサイクリングをBioRad iCyclerサーマルサイクラーで行った。プライマーは、嚢胞性線維症CFTR遺伝子の特定領域を増幅するように設計した。この反応のために用いた8種のプライマーセットのそれぞれに関するプライマー配列は、各50μL反応物における最終濃度を含めて、表5に含まれている。
【0179】
(表5)プライマー組成

【0180】
この反応に関するサイクリング条件は以下の通りとした:
熱変性段階:95℃で10分間。
サイクリング段階(36サイクルにわたり):94℃で30秒間、56℃で90秒間、72℃で90秒間。
【0181】
個々のPCR試料を、PCR反応中のさまざまなサイクルで取り出した。これらのチューブは、各々のサイクル数の56℃段階中に取り出した。「テンプレート無し」試料および「テンプレート陽性」試料の両方を、以下のサイクル数で同時に取り出した:5、8、12、16, 20、24、28、30、36および再び36。サーマルサイクラーから抜き取ったこれらの試料は、36サイクルすべてが完了するまでは一時的に暗所にて室温で保存した。試薬の添加に関して試料にそれ以上の変更は加えずに、これらの試料を95℃で1分間加熱し、続いて44℃で15分間加熱した後に、上記のようにLuminex 200装置および「静的」撮像システムで分析した。加熱可能な検出チャンバーはその時点で得られなかったが、この実験のデザインは、本明細書に記載した一般的な手順が、熱サイクリングを行える検出チャンバー内での分析に適合化されれば、この反応をリアルタイムで行うことが可能であることを示している。
【0182】
反応物中に用いたビーズセット、およびそれらと連結されたプローブは、表6に含まれている。
【0183】
(表6)

【0184】
この実験に用いた嚢胞性線維症遺伝子配列(SEQ ID NO:8〜15)は、図15に提示されている。反応による結果はゲル上での分析によって裏づけられた。
【0185】
データは、44℃の時にLuminex 200装置を用いて収集した。収集したデータは表7に表されている。その値がノイズと識別可能であったすべてのテンプレート陽性試料には、表7で斜線を付している。反応条件を変更し、シグナル-ノイズ比をさらに改善するために、当業者に公知のさらなる最適化手法を用いることもできる。そのMFI値がアンプリコンに対して標的特異的であると予想されるビーズセットは、反応が最後に向かうほどノイズを上回った。プローブが非特異的または陰性であると予想されるビーズセットはそうではなかった。
【0186】
(表7)

【0187】
データは、44℃の時に「静的」撮像システムを用いて収集した。「静的」撮像システムを用いて収集した正味のデータが表8に表されている。その値がノイズと識別可能であったすべてのテンプレート陽性試料は、表8で強調表示されている。表8を作るために用いた「静的」撮像システムからの生データは表9に表されている。表8は、テンプレート陰性試料を用いて全ビーズのデータポイントからの平均MFIを求めて、その平均を全データポイントから差し引くことによって算出した。結果として得られた算出値の合計が負である場合には、すべての負の数をゼロに変換した。比較的少ないサイクル数のいくつかは誤った結果を含むが、それらは外れ値とみなすことができる。
【0188】
(表8)

【0189】
表8を作るために用いた「静的」撮像システムからの生データは表9に表されている。
【0190】
(表9)

【0191】
本明細書で開示および請求された組成物および方法はすべて、本開示に鑑みて、必要以上の実験を行うことなしに作製および遂行することができる。本発明の組成物および方法をある特定の態様に関して説明してきたが、組成物および方法、ならびに本明細書に記載した段階、または段階の順序に対して、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなしに変化を適用しうることは当業者には明らかであると考えられる。より具体的には、化学的にも生理的にも類縁関係にある特定の作用物質を本明細書に記載した作用物質の代わりに用いても同一または類似の結果が得られることは明らかであると考えられる。当業者にとって明白なこのようなすべての類似した代替物および変更物は、添付する特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神、範囲および概念の範囲内にあると考えられる。
【0192】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書中に記載したものを補足する例示的な手順上またはその他の詳細を提供する範囲で、参照として明確に本明細書に組み入れられる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、標識剤、および複数の核酸標的に対して相補的な第1の複数のプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて標識された増幅産物を形成させる段階;
(c)標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;
(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および標識された増幅産物からのシグナルを検出する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法。
【請求項2】
標識された増幅産物からのシグナルを、試料中の核酸標的の濃度と相関付ける段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数のプライマー対が、8〜500種の異なるプライマー対としてさらに規定される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
標識剤がそれぞれのプライマー対の一方のプライマーと結び付けられている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
チャンバーが石英チャンバーである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
標識剤が蛍光色素である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
標識剤が蛍光共鳴エネルギー転移対である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
チャンバー内で、複数の核酸標的に対して相補的な第2の複数のプローブを混ぜ合わせる段階をさらに含む方法であって、第2の複数のプローブが複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されておらず、さらに、第2の複数のプローブが、第1の複数のプローブとは異なる、複数の核酸標的上の領域に対して相補的である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
蛍光共鳴エネルギー転移対の一方のメンバーが、コード化された磁性ビーズ上に固定化された第1の複数のプローブと結び付けられており、蛍光共鳴エネルギー転移対のもう一方のメンバーが、コード化された磁性ビーズ上に固定化されていない第2の複数のプローブと結び付けられている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
標識剤がフルオロフォアとクエンチャーの対である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
標識剤がDNAインターカレート剤である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
コード化された磁性ビーズが蛍光色素によりコード化されている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
コード化された磁性ビーズが、異なる蛍光強度によりコード化されている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
コード化された磁性ビーズが、異なる蛍光発光波長によりコード化されている、請求項12記載の方法。
【請求項15】
コード化された磁性ビーズが超常磁性である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
磁場の印加が、永久磁石をチャンバーの表面に隣接させて配置することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
磁場の印加が、チャンバーの表面に隣接させた電磁石の電源を入れることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
磁場が増幅サイクルのプライマーアニーリング段階中に印加される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
磁場が増幅サイクルのプライマー伸長段階中に印加される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
磁場が増幅サイクルの後に印加される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物を検出する段階が、コード化された磁性ビーズおよび標識された増幅産物から発せられた蛍光波長を撮像することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
磁場を除去する段階が、永久磁石をチャンバーの表面に隣接した位置から除去することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
磁場を除去する段階が、チャンバーの表面に隣接させた電磁石の電源を切ることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
段階(b)から(f)までを10〜40回反復する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
複数のプローブが、ブロックされた3'ヒドロキシル基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
3'ヒドロキシル基がリン酸基によってブロックされている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
3'ヒドロキシル基が3'逆方向dT(3' inverted dT)によってブロックされている、請求項25記載の方法。
【請求項28】
試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数の分子ビーコンを混ぜ合わせる段階であって、分子ビーコンが、各分子ビーコンの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;
(c)増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化された分子ビーコンとハイブリダイズさせる段階;
(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化された分子ビーコンとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および分子ビーコンからのシグナルを検出する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法。
【請求項29】
試料中の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、核酸標的を含む試料、核酸標的の増幅の刺激のためのプライマー対、および核酸標的に対して相補的なプローブセットを混ぜ合わせる段階であって、プローブセットが、磁性ビーズ上に固定化された第1のプローブ、および標識を含む第2のプローブを含む、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、プライマー対により増幅される核酸標的について増幅産物を形成させる段階;
(c)増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせる段階;
(d)磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)増幅産物とハイブリダイズした第2のプローブからのシグナルを検出する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の核酸標的が増幅されて検出される方法。
【請求項30】
磁性ビーズがコード化された磁性ビーズである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
複数の核酸標的を増幅して検出する方法としてさらに規定される方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、および複数の核酸標的に対して相補的な複数のプローブセットを混ぜ合わせる段階であって、各プローブセットが、第1のプローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、コード化された磁性ビーズ上に固定化されている、第1のプローブと、標識を含む第2のプローブとを含む、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについて増幅産物を形成させる段階;
(c)増幅産物をプローブセットとハイブリダイズさせる段階;
(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および増幅産物とハイブリダイズした第2のプローブからのシグナルを検出する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
試料中の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、核酸標的を含む試料、核酸標的の増幅の刺激のためのプライマー対、クエンチャー分子と連結されたdNTP、および核酸標的に対して相補的な蛍光標識されたプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、クエンチャー分子を含む増幅産物である、核酸標的の増幅産物を形成させる段階;
(c)増幅産物を、磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;
(d)磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)標識されたプローブからのシグナルを検出する段階であって、標識されたプローブからのシグナルの減少が、標識されたプローブとクエンチャー分子を含む増幅産物とのハイブリダイゼーションを意味する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の核酸標的が増幅されて検出される方法。
【請求項33】
磁性ビーズがコード化された磁性ビーズである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
複数の核酸標的を増幅して検出する方法としてさらに規定される方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料、複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対、クエンチャー分子と連結されたdNTP、および複数の核酸標的に対して相補的な複数の蛍光標識されたプローブを混ぜ合わせる段階であって、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてクエンチャー分子を含む増幅産物を形成させる段階;
(c)増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;
(d)コード化された磁性ビーズ、およびコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズした増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)コード化された磁性ビーズからのシグナル、および標識されたプローブからのシグナルを検出する段階であって、標識されたプローブからのシグナルの減少が、標識されたプローブとクエンチャー分子を含む増幅産物とのハイブリダイゼーションを意味する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
試料中の複数の核酸標的を増幅して検出する方法であって、以下の段階:
(a)チャンバー内で、複数の核酸標的を含む試料;複数の核酸標的の増幅の刺激のための複数のプライマー対を混ぜ合わせる段階であって、各プライマー対が、標的特異的配列、標的特異的配列の5'側にあるタグ配列、および標的特異的配列とタグ配列との間にあるブロッカーを含む第1のプライマー、ならびに標的特異的配列を含む第2のプライマー;標識剤;ならびに複数のプライマー対のタグ配列に対して相補的な複数のプローブを含み、プローブが、各プローブの独自性がそれが固定化されているコード化された磁性ビーズから分かるように、複数のコード化された磁性ビーズ上に固定化されている、前記段階;
(b)増幅サイクルを行って、複数のプライマー対により増幅される複数の核酸標的のそれぞれについてタグ付加および標識された増幅産物を形成させる段階;
(c)タグ付加および標識された増幅産物を、コード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズさせる段階;
(d)コード化された磁性ビーズ、ならびにコード化された磁性ビーズ上に固定化されたプローブとハイブリダイズしたタグ付加および標識された増幅産物を、チャンバーの表面に引き寄せるために、磁場をチャンバーの表面に印加する段階;
(e)コード化された磁性ビーズ、ならびにタグ付加および標識された増幅産物を検出する段階;
(f)さらなる増幅サイクルを行う前に、チャンバーの表面から磁場を除去する段階;ならびに
(g)段階(b)から(f)までを少なくとも1回反復する段階
を含む方法であり、試料中の複数の核酸標的が増幅されて検出される方法。
【請求項36】
標識剤が、プライマー対の第2のプライマーと結び付けられたレポーター分子である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
標識剤がインターカレート色素である、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−512752(P2010−512752A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541602(P2009−541602)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/087492
【国際公開番号】WO2008/074023
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(504187249)ルミネックス・コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】