説明

PDE10の細胞に基づくアッセイおよび配列

【課題】 PDE10の細胞に基づくアッセイおよび配列
【解決手段】 本発明は、細胞内ホスホジエステラーゼ10A活性を阻害する剤をスクリーニングする方法であって、剤を線条体中型有棘ニューロンに投与し、そしてアデニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し、剤を線条体中型有棘ニューロンに投与し、そしてグアニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し、細胞におけるcAMP生成およびcGMP生成を測定し、そしてcAMP EC200およびcGMP EC200を計算することを含み、cAMP EC200/cGMP EC200の比が、同一のアッセイ条件下でのパパベリンの投与によって生じる比に匹敵する場合、該剤をPDE10A阻害剤と同定する、前記方法を特徴とする。やはり特徴とされるのは、ラットPDE10Aポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列である。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、PDE10A活性を調節する剤を同定する方法、並びにラットPDE10Aのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を提供する。
【従来の技術】
【0002】
環状ヌクレオチド・ホスホジエステラーゼ類(PDE類)は、二次メッセンジャー、cAMP(環状アデノシン3’5’−一リン酸)およびcGMP(環状グアニン3’5’−一リン酸)の加水分解を触媒し、そして非常に多様なシグナル伝達経路において、制御上、中枢の役割を果たす(Beavo, Physiol. Rev. 75:725−48, 1995)。例えば、PDE類は、視覚(McLaughlinら, Nat. Genet. 4:130−34, 1993)、嗅覚(Yanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9677−81, 1995)、血小板凝集(Dickinsonら, Biochem. J. 323:371−77, 1997)、アルドステロン合成(MacFarlandら, J. Biol. Chem. 266:136−42, 1991)、インスリン分泌(Zhaoら, J. Clin. Invest. 102:869−73, 1998)、T細胞活性化(Liら, Science 283:848−51, 1999)、および平滑筋弛緩(Boolellら, Int. J. Impot. Res. 8:47−52, 1996; Ballardら, J. Urol. 159:2164−71, 1998)に関与する過程を仲介する。
【0003】
PDE類は、11の主要なファミリーに細分される酵素のスーパーファミリーを形成する(Beavo, Physiol. Rev. 75:725−48, 1995; Beavoら, Mol. Pharmacol. 46:399−05, 1994; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8991−96, 1998; Fisherら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 246:570−77, 1998; Hayashiら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 250:751−56, 1998; Soderlingら, J. Biol. Chem. 273:15553−58, 1998; Fisherら, J. Biol. Chem. 273:15559−64, 1998; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071−76, 1999;およびFawcettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000)。
【0004】
各PDEファミリーは、ユニークな酵素的特性および薬理学的プロフィールによって、機能的に区別される。さらに、各ファミリーは、異なる組織、細胞、および細胞下発現パターンを示す(Beavoら, Mol. Pharmacol. 46:399−405, 1994; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8991−96, 1998; Fisherら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 246:507−77, 1998; Hayashiら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 250:751−56, 1998; Soderlingら, J. Biol. Chem. 273:15553−58, 1998; Fisherら, J. Biol. Chem. 273:15559−64, 1998; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071−76, 1999; Fawcettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000; Boolellら, Int. J. Impot. Res. 8:47−52, 1996; Ballardら, J. Urol. 159:2164−71, 1998; Houslay, Semin. Cell Dev. Biol. 9:161−67, 1998;およびTorphyら, Pulm. Pharmacol. Ther. 12:131−35, 1999)。したがって、PDE酵素の1つのファミリーまたはサブファミリーの活性を選択的に制御する化合物を投与することによって、細胞または組織特異的方式で、cAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路を制御することが可能である。
【0005】
PDE10は、一次アミノ酸配列および異なる酵素活性に基づいて、ユニークなPDEと同定される。ESTデータベースの相同性スクリーニングによって、PDE10Aがホスホジエステラーゼ、PDE10ファミリーの第一のメンバーであることが明らかになった(Fujishigeら, J. Biol. Chem. 274:18438−18445, 1999; Loughneyら, Gene 234:109−117, 1999)。ヒト、ラット、およびネズミ相同体がクローニングされており、そしてラットおよびヒト遺伝子両方に関して、N末端スプライシング変異体が同定されている(Koteraら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 261:551−557, 1999; Fujishigeら, Eur. J. Biochem. 266:1118−1127, 1999; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071−7076, 1999);種に渡り、高い度合いの相同性がある。PDE10Aは、cAMPおよびcGMPを、それぞれ、AMPおよびGMPに加水分解する。cAMPに対するPDE10Aの親和性(K=0.05μM)は、cGMPに対するもの(K=3μM)より高い。しかし、cGMPに対するVmaxは、cAMPに対するものよりおよそ5倍高く、このことから、PDE10Aが、cAMPに阻害される、ユニークなcGMPアーゼであることが示唆されている(Fujishigeら, J. Biol. Chem. 274:18438−18445, 1999)。
【0006】
PDE10Aは、哺乳動物において、他のPDEファミリーに比較し、ユニークに局在している。PDE10AのメッセンジャーRNAは、精巣および脳でのみ、高く発現される(LanfearおよびRobas、EP 0967284; Fujishigeら, Eur. J. Biochem. 266:1118−1127, 1999; Soderlingら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7071−7076, 1999; Loughneyら, Gene 234:109−117, 1999)。当初の研究は、脳内では、線条体(尾状核および被殻)、側坐核、および嗅結節で、発現が最高であることを示した(LanfearおよびRobas、上記)。したがって、PDE10A選択的調節を用いて、これらの脳領域において、環状ヌクレオチドのレベルを調節することが可能である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、PDE10A活性を選択的に調節する剤を同定する方法、並びにラットPDE10Aのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を提供する。
1つの側面において、本発明は、細胞内ホスホジエステラーゼ10A活性を阻害する剤をスクリーニングする方法であって、剤を線条体中型有棘ニューロン(striatal medium spiny neurons)に投与し、そしてアデニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し、剤を線条体中型有棘ニューロンに投与し、そしてグアニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し、それぞれ、cAMP生成およびcGMP生成を測定し、そしてそれぞれ、cAMP EC200およびcGMP EC200を計算することを含み、cAMP EC200/cGMP EC200の比が、同一のアッセイ条件下でのパパベリンの投与によって生じる比に匹敵する場合、該剤をPDE10A阻害剤と同定する、前記方法を特徴とする。
【0008】
好ましくは、線条体中型有棘ニューロンは、初代培養ニューロンとして調製され、アデニル酸シクラーゼはフォルスコリンによって活性化され、グアニル酸シクラーゼはニトロプルシド・ナトリウムによって活性化され、そしてcAMP EC200/cGMP EC200比は1.75−5.25の範囲、より好ましくは、3.0−4.0の範囲にある。好ましくは、cAMPおよびcGMPの濃度は、シンチレーション近接アッセイによって測定される。cAMPおよびcGMPを評価するのに用いるニューロンが、別個の試料中にあることが好ましい。さらに、剤がまず、in vitroで、PDE10A選択的阻害剤と同定されることが好ましい。あるいは、剤は、さらに、in vitroアッセイによって、PDE10A選択的阻害剤と同定される。
【0009】
別の側面において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含む、単離または精製ポリペプチドを特徴とする。
関連する側面において、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコードする核酸配列、および/または配列番号1のコード配列を含む、単離または精製ポリヌクレオチドを特徴とする。
【0010】
本発明はまた、配列番号1のコード配列を含むベクター、および配列番号1のコード配列を発現する宿主細胞も特徴とする。
さらに、本発明は、PDE10A活性を調節する剤を同定する方法であって、剤を、配列番号2を含むラットPDE10Aポリペプチドと接触させ、そして該PDE10Aポリペプチドの活性を測定することを含み、剤の存在下および剤の非存在下での該PDE10Aポリペプチド活性間の相違が、該剤がPDE10A活性を調節することを示す、前記方法を提供する。
【0011】
本発明にやはり特徴とされるのは、PDE10A活性を調節する剤を同定する方法であって、剤を、配列番号1のコード配列を発現する宿主細胞と接触させ、そして配列番号1に発現されるPDE10Aポリペプチドの活性を測定することを含み、剤の存在下および剤の非存在下での該PDE10Aポリペプチド活性間の相違が、該剤がPDE10A活性を調節することを示す、前記方法である。
【0012】
当業者は、本明細書において、本発明を記載する説明および付随する請求項で用いられる用語を、完全に理解するであろう。にもかかわらず、本明細書に別に提供されない限り、以下の用語は、直後に記載されるとおりである。
【0013】
「PDE10A活性を増加させる剤」は、PDE10Aポリペプチドの生物学的活性を増強するかまたは模倣する分子を指す。こうした剤(すなわちアゴニスト)は、細胞に存在するPDE10Aの量を増加させることによるか、またはPDE10Aポリペプチドの触媒活性を増加させることにより、PDE10Aの活性を増加させる、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子、あるいは他の化合物または組成物いずれかを含む可能性がある。
【0014】
「PDE10A活性を減少させる剤」は、PDE10Aポリペプチドの生物学的活性を阻害するかまたは減弱する分子を指す。こうした剤(すなわちアンタゴニスト)は、細胞に存在するPDE10Aポリペプチドの量を減少させることによるか、またはPDE10Aポリペプチドの触媒活性を減少させることにより、PDE10Aポリペプチドの活性を減少させる、抗PDE10A抗体などのタンパク質、核酸、炭水化物、小分子、あるいは他の化合物または組成物いずれかを含む可能性がある。
【0015】
「対立遺伝子変異体」は、PDE10Aポリペプチドをコードする遺伝子の代替型である。対立遺伝子変異体は、核酸配列中の少なくとも1つの突然変異から生じる可能性があり、そして改変mRNA、あるいは構造または機能が改変されているかまたは改変されていないポリペプチドを生じる可能性がある。遺伝子は、その天然存在型の対立遺伝子変異体をまったく持たないか、1つ、または多く持つ可能性がある。対立遺伝子変異体を生じさせる一般的な突然変異変化は、一般的に、ヌクレオチドの天然発生欠失、付加、または置換の結果であるとみなされる。これらの種類の変化は各々、単独で、または他と組み合わせて、既定の配列で、一回または多数回、生じる可能性がある。
【0016】
PDE10Aポリペプチドをコードする「改変」核酸配列は、欠失、挿入、または異なるヌクレオチドでの置換を持つ配列を含み、PDE10Aポリペプチドの少なくとも1つの機能上の特性を持つポリペプチドを生じる。この定義内に含まれるのは、PDE10Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチド・プローブを用いて、容易に検出可能である可能性も、または検出可能でない可能性もある多型である。コードされるタンパク質もまた、「改変されて」いる可能性があり、そしてサイレント変化を生じ、そして既知のPDE10Aポリペプチドに機能上、実質的に同等であるPDE10Aポリペプチドを生じる、1以上のアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を含む可能性がある。PDE10Aポリペプチドが、例えば触媒または免疫学的活性において、機能上、実質的に同等である限り、残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行ってもよい。
【0017】
「増幅」は、核酸配列のさらなるコピーの産生に関する。これは、一般的に、当該技術分野に公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
cAMP EC200/cGMP EC200値は、パパベリン値の50%以下で異なる場合、パパベリンによって産生されるものに「匹敵」する。
【0018】
既定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む「組成物」は、乾燥処方または水性溶液を含んでもよい。
「保存的アミノ酸置換」は、行われた場合、元来のタンパク質の特性に最も少なく干渉する、すなわちタンパク質の構造および特に機能が保存され、そしてこうした置換によって有意に変化しない置換である。保存的アミノ酸置換の例には、以下が含まれる:GlyまたはSerで置換されるAla;HisまたはLysで置換されるArg;Asp、GlnまたはHisで置換されるAsn;AsnまたはGluで置換されるAsp;AlaまたはSerで置換されるCys;Asn、Glu、またはHisで置換されるGln;Asp、Gln、またはHisで置換されるGlu;Alaで置換されるGly;Asn、Arg、Gln、またはGluで置換されるHis;LeuまたはValで置換されるIle;IleまたはValで置換されるLeu;Arg、Gln,またはGluで置換されるLys;LeuまたはIleで置換されるMet;His、Met、Leu、Trp、またはTyrで置換されるPhe;CysまたはThrで置換されるSer;SerまたはValで置換されるThr;PheまたはTyrで置換されるTrp;His、Phe、またはTrpで置換されるTyr;およびIle、Leu、またはThrで置換されるVal。保存的アミノ酸置換は、一般的に、(a)例えばベータシートまたはアルファらせんコンホメーションとしての、置換領域においてポリペプチド主鎖の同一のまたは本質的に同一の構造、(b)置換部位での、分子の同一のまたは本質的に同一の荷電または疎水性、および/または(c)側鎖の同一のまたは本質的に同一の大きさ(bulk)を維持する。
【0019】
用語「誘導体」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の化学的修飾を指す。ポリヌクレオチド配列の化学的修飾は、例えば、アルキル、アシル、ヒドロキシル、またはアミノ基による水素の置換を含む可能性がある。誘導体ポリヌクレオチドは、天然分子の少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導体ポリペプチドは、由来するポリペプチドの少なくとも1つの生物学的または免疫学的機能を保持する、グリコシル化、ペグ化、または他のいずれかの過程によって修飾されたものである。
【0020】
「断片」は、親配列と配列が同一であるが、親配列より長さが短い、PDE10AポリペプチドまたはPDE10Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのユニークな部分である。プローブ、プライマー、抗原、療法分子として、または他の目的のため用いる断片は、少なくとも長さ5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250、または少なくとも500の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸残基であってもよい。断片は、分子の特定の領域を優先的に選択しても、または欠いていてもよい。
【0021】
用語「同一性」は、相補性の度合いを指す。部分的類似性または完全同一性がある可能性がある。用語「同一性」を、用語「類似性」で代用することが可能である。同一配列が標的核酸にハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害する、部分的相補配列は、「実質的に類似」と称される。完全相補配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、減少したストリンジェンシーの条件下で、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザンまたはノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション、およびそれらに匹敵するもの)を用いて、調べることが可能である。実質的に類似の配列またはハイブリダイゼーションプローブは、減少したストリンジェンシーの条件下で、完全類似(同一)配列の標的配列への結合に競合し、そして該結合を阻害するであろう。これは、減少したストリンジェンシーの条件が、非特異的結合を許すということではない。むしろ、減少したストリンジェンシーの条件は、2つの配列の互いへの結合が、特異的な(すなわち選択的な)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は、部分的な度合いの相補性(例えば約30%未満の類似性または同一性)さえ欠く第二の標的配列の使用によって、試験することが可能である。非特異的結合の非存在下では、実質的に類似の配列またはプローブは、第二の非相補標的配列にハイブリダイズしないであろう。
【0022】
ポリヌクレオチド配列に適用されるような、句「同一性パーセント」および「同一性%」は、標準化アルゴリズムを用いて並列された、少なくとも2つのポリヌクレオチド配列間での残基マッチの割合を指す。2つの配列間の並列を最適化するため、こうしたアルゴリズムは、標準化され、そして再現可能な方式で、比較される配列中にギャップを挿入し、そしてそれによって2つの配列のより意義のある比較を達成することが可能である。ポリヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、MegAlign(登録商標)バージョン3.12e配列並列プログラムに取り込まれるような、CLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメーターを用いて、決定することが可能である。このプログラムは、分子生物学的解析プログラムの組である、LASERGENEソフトウェアパッケージ(DNASTAR、ウィスコンシン州マディソン)の一部である。CLUSTAL Vは、HigginsおよびSharp, CABIOS 5:151−153, 1989およびHigginsら, CABIOS 8:189−19, 1992に記載される。同一性パーセントは、並列ポリヌクレオチド配列対間の「類似性パーセント」としてCLUSTAL Vに報告される。あるいは、一般的に用いられ、そして無料で入手可能な配列比較アルゴリズムの組が、米国バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)基本的局所並列検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)(BLAST)(Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403−410, 1990)に提供され、これはNCBI、メリーランド州ベセスダ、およびhttp://www.ncbi.nim.nih.gov/blast/を含む、いくつかの供給源から入手可能である。BLSATソフトウェア組は、既知のポリヌクレオチド配列を、多様なデータベース由来の他のポリヌクレオチド配列と並列するのに用いられる「blastn」を含む、多様な配列解析プログラムを含む。やはり入手可能なのは、2つのヌクレオチド配列の直接対比較に用いられる、「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールである。「BLAST 2 Sequences」は、http:/www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlで評価し、そして対話式に用いることが可能である。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastnおよびblastp両方に用いることが可能である(以下に論じられる)。BLASTプログラムは、一般的に、ギャップおよび他のパラメーターをデフォルト設定にして用いられる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するため、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスいずれか、40、50、60、70、または80のギャップ加重、および1、2、3、4、5、または6の長さ加重を用いて、「BLAST 2 Sequences」ツール、バージョン2.0.9(1999年5月7日)と共にblastnを用いることが可能である。同一性パーセントは、例えば特定の配列番号によって定義されるような全定義配列の長さに渡って測定することが可能であるし、あるいは、より短い長さに渡って、例えばより長い定義される配列から取った断片、例えば、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、少なくとも100、または少なくとも200の連続するヌクレオチドの断片の長さに渡って測定することが可能である。こうした長さは例のみであり、そして本明細書に示される配列に開示されるいかなる断片長を用いて、同一性パーセントを測定することが可能な長さを説明することも可能である。高い度合いの同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず、遺伝暗号の縮重のため、類似のアミノ酸配列をコードする可能性がある。核酸配列の変化は、この縮重を用いて行い、すべて同一のまたは実質的に同一のPDE10Aポリペプチドをコードする、本発明に含まれる多数の核酸配列を産生することが可能であることが理解される。
【0023】
ポリペプチド配列に適用されるような、句「同一性パーセント」および「同一性%」は、標準化アルゴリズムを用いて並列された、少なくとも2つのポリペプチド配列間の残基マッチの割合を指す。ポリペプチド配列並列法は公知である。いくつかの並列法は、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる。上により詳細に説明される、こうした保存的置換は、一般的に置換部位での疎水性および酸性度を保持し、したがってポリペプチドの構造および機能を保持する。ポリペプチド配列間の同一性パーセントは、MegAlign(登録商標)配列並列プログラム(DNASTAR、ウィスコンシン州マディソン)に取り込まれるような、CLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトパラメーターを用いて、決定することが可能である。デフォルト残基加重表として、PAM250マトリックスを選択する。ポリヌクレオチド並列と同様に、同一性パーセントは、並列ポリペプチド配列対間の「パーセント類似性」として、CLUSTAL Vによって報告される。
【0024】
あるいは、NCBI BLASTソフトウェア組を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列の対比較のため、デフォルトパラメーターに設定されたblastpと共に、「BLAST 2 Sequences」ツール、バージョン2.0.9(1999年5月7日)を用いることが可能である。こうしたデフォルトパラメーターは、例えば、Blossum62マトリックス、スコア=50、およびワード長=3を用いる可能性がある。同一性パーセントは、例えば特定の配列番号によって定義されるような全定義ポリペプチド配列の長さに渡って測定することが可能であるし、あるいは、より短い長さに渡って、例えばより長い定義される配列から取った断片、例えば、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも70、または少なくとも100の連続する残基の断片の長さに渡って測定することが可能である。こうした長さは例のみであり、そして図および配列表を含む、本明細書に示される配列に支持されるいかなる断片長を用いて、同一性パーセントを測定することが可能な長さを記載することも可能である。
【0025】
「宿主」により、異種ポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、そして該ポリヌクレオチドを発現することが可能なトランスジェニック細胞(例えば哺乳動物、細菌、昆虫細胞)または動物(例えば非ヒト哺乳動物)を意味する。
【0026】
「異種」ポリヌクレオチドは、異質(foreign)であるか、または非天然存在であるか、あるいは宿主細胞のゲノムに非天然に配置されるものである。
「ハイブリダイゼーション」は、ポリヌクレオチド鎖が、定義されるハイブリダイゼーション条件下で、塩基対形成を通じて、相補鎖とアニーリングする過程を指す。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が、高い度合いの同一性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は、許容的アニーリング条件下で形成され、そして「洗浄」工程後もハイブリダイズしたままである。洗浄工程は、ハイブリダイゼーション過程のストリンジェンシーを決定するのに特に重要であり、よりストリンジェントな条件は、非特異的結合、すなわち完全にマッチしない核酸鎖の対間の結合を、より可能にしない。核酸配列のアニーリングの許容的条件は、当業者によって日常的に決定可能であり、そしてハイブリダイゼーション実験間で一定である可能性があるが、洗浄条件は、望ましいストリンジェンシー、そしてしたがってハイブリダイゼーション特異性を達成するため、実験間で異なる可能性がある。許容的アニーリング条件は、例えば、約6xSSC、約1%(w/v)SDS、および約100pg/ml変性サケ精子DNAの存在下で、68℃で生じる。
【0027】
一般的に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、部分的に、洗浄工程を行う温度に関連して表す。一般的に、こうした洗浄温度は、定義されるイオン強度およびpHでの特定の配列の熱融点(Tm)より、約5から20℃低く選択される。Tmは、標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度(定義されるイオン強度およびpH下)である。核酸ハイブリダイゼーションに関するTmおよび条件を計算する等式は公知であり、そしてSambrookら, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Vol.1−3, Cold Spring Harbor Press, ニューヨーク州プレーンビューに見出すことが可能であり;特にVol.2, 第9章を参照されたい。
【0028】
本発明のポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションの高ストリンジェンシー条件は、約0.2−1.0xSSCおよび約0.1% SDSの存在下、約1時間での約55−68℃の洗浄条件を含む。
【0029】
一般的に、ハイブリダイゼーション反応は、約65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行うことが可能である。SSC濃度は、約0.1から2xSSCまで多様であってもよく、SDSは約0.1%で存在する。典型的には、ブロッキング試薬を用いて、非特異的ハイブリダイゼーションをブロッキングする。こうしたブロッキング試薬には、例えば、約100−200pg/mlの変性サケ精子DNAが含まれる。約35−50% v/vの濃度のホルムアミドなどの有機溶媒もまた、RNA:DNAハイブリダイゼーションなどの特定の条件下で用いることが可能である。これらの洗浄条件の有用な変動は、一般の当業者に容易に明らかであろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェンシー条件下で、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し、ヌクレオチドおよびそのコードするポリペプチドが類似の役割を持つことを強く示す。
【0030】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補塩基間の水素結合の形成によって、2つの核酸配列間で形成される複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液に存在する配列間で形成されるか、または溶液に存在する1つの核酸配列および固体支持体(例えば紙、膜、フィルター、チップ、ピンまたはガラススライド)上に固定される別の核酸配列の間で形成される可能性がある。
【0031】
「単離または精製」により、「人の手によって」天然状態から変化したことを意味する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが天然に存在する場合、その元来の環境から変化したおよび/または除去されたとき、該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離または精製」されている。例えば、「単離または精製」ポリヌクレオチドは、天然に関連する他のポリヌクレオチドから分離されている。例えば、通常、コード配列と関連しているイントロン配列が除去されているcDNA配列は、「単離または精製」されている。「単離または精製」ポリヌクレオチド配列は、一過性または安定発現のため、培養中の宿主細胞または全生物に導入され、そしてそれでもなお「単離および精製」されていることが可能である。これは、ポリヌクレオチドがその天然存在型または環境にないであろうためである。しかし、cDNAライブラリーのメンバーとしてのポリヌクレオチド配列は、「単離または精製」に意味されるものから排除される。「単離または精製」ポリペプチドは、天然に関連する、少なくとも1つの細胞構成要素から分離されている。好ましくは、ポリペプチドは、他の構成要素を少なくとも60%含まず、より好ましくは、少なくとも75%含まず、そして最も好ましくは、少なくとも90%含まない。
【0032】
「調節」により、増加または減少(完全除去を含む)を意味する。
「機能可能であるように連結された」は、第一の核酸配列が、第二の核酸配列と機能する関連に置かれる状況を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の転写を制御するよう機能する場合、コード配列に機能可能であるように連結されている。一般的に、機能可能であるように連結されたDNA配列は、ごく近接してまたは連続して、そして2つのタンパク質コード領域を連結することが必要である場合、同一読み枠にある可能性がある。
【0033】
「ポリヌクレオチド」は、一般的に、制限なしに、一本鎖、二本鎖、および三本鎖配列、センスまたはアンチセンス鎖、ヌクレオチド類似体を用いて生成された配列、RNAおよびDNAを含むハイブリッド分子、並びに修飾塩基を含むRNAまたはDNAを含む、いかなるRNA(例えばmRNA)、RNA様、DNA(例えばcDNAまたはゲノム)、またはDNA様配列も指す。ポリヌクレオチドは、天然存在であってもまたは合成であってもよい。
【0034】
用語「ポリペプチド」は、アミノ酸配列、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列、あるいはこれらのいずれかの断片を指し、そして天然存在または合成分子を指す。該用語は、翻訳後プロセシングなどの天然過程によって、または当該技術分野に公知の化学的修飾によって、修飾されたアミノ酸配列を含む(例えば、Proteins−Structure and Molecular Properties, Creighton監修, W.H. Freeman and Co., ニューヨーク州ニューヨーク, 第2版, 1993; Posttranslational Covalent Modification of Proteins, Johnson監修, Academic Press, ニューヨーク州ニューヨーク, 1983; Seifterら, Meth. Enzymol., 182:626−46, 1990;およびRattanら, Ann. NY Acad. Sci. 663:48−62, 1992を参照されたい)。既知の修飾には、限定されるわけではないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体、脂質または脂質誘導体、あるいはホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、シスチンまたはピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン化などの、タンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA仲介付加が含まれる。
【0035】
「PDE10A活性」により、in vitro、in vivo、またはin situの、cAMPおよび/またはcGMPのPDE10A仲介加水分解を意味する。
「選択的」PDE10A阻害剤により、他のPDE類の阻害に関して観察されるより、少なくとも10倍低いIC50で、PDE10A活性を阻害する剤を意味する。
【0036】
「置換」は、それぞれ、1以上のアミノ酸またはヌクレオチドの、異なるアミノ酸またはヌクレオチドでの置換を指す。
アデニル酸シクラーゼまたはグアニル酸シクラーゼを「最大以下」に活性化することは、化合物の最大有効濃度によって生じる値の、約10−50%、好ましくは、約20−25%である、それぞれ、cAMPまたはcGMPの増加を達成する濃度の化合物を投与することを意味する。
【0037】
「形質転換」または「トランスフェクション」は、異種DNAがレシピエント細胞に進入し、そして該細胞が該異種DNAを発現することを可能にする、遺伝的修飾過程を説明する。形質転換は、当該技術分野に公知の多様な方法にしたがって、原核または真核宿主細胞で起こることが可能である。方法は、形質転換される宿主細胞の種類に基づいて選択され、そして限定されるわけではないが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、および粒子銃を含む。用語「形質転換細胞」または「トランスフェクション細胞」は、挿入されたDNAが自律複製プラスミドとして、または宿主染色体の一部として複製することが可能である安定形質転換細胞と共に、限定される期間、挿入されたDNAまたはRNAを発現する、一過性形質転換またはトランスフェクション細胞を含む。こうした形質転換またはトランスフェクション細胞はすべて、「トランスジェニック」と称される。
【0038】
特定の核酸配列の「変異体」は、デフォルトパラメーターに設定された「BLAST 2 Sequences」ツール、バージョン2.0.9と共にblastnを用いて、核酸配列の1つの特定の長さに渡って、特定の核酸配列に少なくとも40%の配列同一性を有する核酸配列と定義される。こうした配列は、特定の定義される長さに渡って、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%、またはそれ以上の配列同一性を示す可能性がある。変異体は、例えば、「対立遺伝子」(上に定義されるとおり)、「スプライシング」、「種」、または「多型」変異体と記載することが可能である。スプライシング変異体は、参照分子に有意な同一性を有する可能性があるが、一般的に、mRNAプロセシング中のエクソンの選択的スプライシングのため、より多いかまたはより少ない数のポリヌクレオチドを有するであろう。対応するポリペプチドは、さらなる機能ドメインを持つか、または参照分子に存在するドメインを欠く可能性がある。種変異体は、1つの種から別のもので異なるポリヌクレオチド配列である。生じるポリペプチドは、一般的に、互いに比較して、有意なアミノ酸同一性を有するであろう。多型変異体は、既定の種の個体間の特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列中の変異である。多型変異体はまた、ポリヌクレオチド配列が一ヌクレオチド塩基異なる、「一ヌクレオチド多型」(SNP)を含む可能性もある。SNPの存在は、例えば、特定の集団、疾患状態、または疾患状態の性向(propensity)を示す可能性がある。
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、続く詳細な説明および請求項から明らかであろう。本発明は、特定の態様と関連して記載されるが、実施することが可能である他の変化および修飾もまた、本発明の一部であり、そしてまた、付随する請求項の範囲内でもあることが理解されるであろう。本明細書は、一般的に、本発明の原理にしたがう、本発明のいかなる同等物、変形、使用、または適応も含むよう意図され、既知のまたは当該技術分野内で習慣的な実施の範囲内であり、そして過度の実験なしに確かめることが可能である、本開示からの逸脱を含む。核酸およびポリペプチドを作成し、そして使用することに関するさらなる手引きは、分子生物学、タンパク質科学、および免疫学の標準的教科書に見られる(例えばDavisら, Basic Methods in Molecular Biology, Elsevir Sciences Publishing, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク, 1986; Hamesら, Nucleic Acid Hybridization, IL Press, 1985; Molecular Cloning, Sambrookら, Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら監修, John Wiley and Sons; Current Protocols in Human Genetics, Dracopoliら監修, John Wiley and Sons; Current Protocols in Protein Science, John E. Coliganら監修, John Wiley and Sons;およびCurrent Protocols in Immunology, John E. Coliganら監修, John Wiley and Sonsを参照されたい)。本明細書に言及されるすべての刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【発明の実施の形態】
【0040】
本発明は、PDE10A活性を阻害する剤を細胞レベルで同定するため、線条体中型有棘ニューロンを用いた、細胞に基づくスクリーニングアッセイを提供する。線条体中型有棘ニューロンにおいて高レベルのPDE10Aが確認されたことを考慮すると(以下の実施例1にさらに記載されるとおり)、これらの細胞は、PDE10A活性の阻害剤を同定する、細胞に基づくアッセイで使用するための、優れた候補である。こうした阻害剤は、例えば、米国仮出願60/285,148にさらに記載されるように、運動または気分、不安、精神病、薬剤嗜癖、および症状欠損認知の障害を治療するのに有用である。本発明はまた、ラットPDE10Aポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も特徴とする。
PDE10A阻害剤を同定する、細胞に基づくアッセイ
本発明の細胞に基づくアッセイは、以下の実施例にさらに記載される、2つの発見に由来する。第一に、パパベリンは、PDE10A選択的阻害剤である。そして第二に、線条体中型有棘ニューロンへのパパベリンの投与は、cAMPおよびcGMPのレベルにユニークな変化プロフィールを生じる。このユニークなプロフィールは、線条体中型有棘ニューロンの環状ヌクレオチドに同一の組み合わせの変化を生じる他の剤もまた、PDE10A阻害剤と同定されることを示す。
【0041】
アッセイを行うため、哺乳動物線条体中型有棘ニューロンを用いる。この細胞は、初代培養として調製することが可能である(例えばVentimigliaら, Eur. J. Neurosci. 7:213−22, 1995を参照されたい)。あるいは、線条体中型有棘ニューロン不死化細胞株を用いることが可能である(Ehlichら, Exp. Neurol. 167:215−26, 2001; CattaneoおよびConti, J. Neuroscience Res. 53:223−34, 1998; Wainwrightら, J. Neuroscience 15:676−88, 1995)。
【0042】
初代細胞培養では、ニューロンは、哺乳動物胚(例えばE17ラットまたはマウス胚)から脳を切除し、該組織を単細胞懸濁物に解離させ、そしてマルチウェルプレートなどの適切な容器に、細胞を蒔くことによって、調製する。望ましい場合、調製中の線条体中型有棘ニューロンの存在は、GABA免疫反応性を試験することによって、決定することが可能であり(Ventimigliaら、上記)、そしてPDE10Aの発現は、例えば、ウェスタンブロットまたはRNアーゼ保護アッセイによって、確認することが可能である(以下の実施例3を参照されたい)。
【0043】
アッセイプロトコルの1つの例は以下のとおりである。in vitroで4−5日の線条体中型有棘ニューロン(例えばラット)の初代細胞培養を、Ca2+/Mg2+不含リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄し、そして30mM HEPES、pH7.4、1mM CaCl、1mg/mlデキストロース、および5mM MgClを含むリン酸緩衝生理食塩水中で、およそ1時間プレインキュベーションする。その後、同一緩衝液中で、試験剤を細胞と、37℃でおよそ20分間インキュベーションする。
【0044】
cAMPの変化に関して試験するため、ニューロン培養はまた、アデニル酸シクラーゼを刺激する化合物の最大以下の濃度(例えば1μMフォルスコリン)ともインキュベーションする。cGMPの変化に関して試験するため、ニューロン培養は、グアニル酸シクラーゼを刺激する化合物の最大以下の濃度(例えば100μMニトロプルシド・ナトリウム(SNP))とインキュベーションする。環状ヌクレオチドの生成を刺激する化合物の最大以下の濃度は、最大有効濃度の10−50%、好ましくは、20−25%を生成する濃度である。化合物は、試験剤インキュベーション中、または試験剤インキュベーションに続く期間(例えば1−5分間)、投与してもよい。
【0045】
細胞を溶解し、そして標準法を用いて、細胞溶解物中の適切なcAMPおよびcGMPレベルを測定する。例えば、cAMPおよびcGMPレベルは、シンチレーション近接アッセイ(SPA)キット(それぞれ、カタログ番号RPA 540およびRPA 559、Amersham、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて測定することが可能である。EC200値を決定することが可能であるように、多様な濃度で試験剤を研究する。EC200は、試験剤で処理されていない細胞由来の溶解物中で測定されるcAMPまたはcGMPのレベルに比較した際、cAMPまたはcGMPレベルを200%増加させる試験剤の濃度と定義される。理想的には、細胞の別個の試料を用いて、シクラーゼを刺激し、そして環状ヌクレオチドレベルを評価する。しかし、アデニル酸シクラーゼおよびグアニル酸シクラーゼの刺激は、単一試料の細胞中で行ってもよく、細胞溶解物を2つの試料に分割し、そしてその後、これらの2つの溶解物中で、cAMPおよびcGMPを別個に測定してもよい。
【0046】
線条体中型有棘ニューロンおよび上述の典型的なアッセイ条件を用いる際、試験剤が、cAMPおよびcGMPの増加を引き起こし、cAMP EC200/cGMP EC200の比が1.75−5.25、好ましくは2.5−4.5、より好ましくは3.0−4.0の範囲である場合に、試験剤はPDE10A阻害剤と同定される。特定の細胞またはアッセイ条件が上記と異なる場合、剤がPDE10A阻害剤であることを示すcAMP EC200/cGMP EC200の範囲は、適切な条件下で、パパベリンを陽性対照として試験することによって、決定することが可能である。剤は、パパベリンに関する値と匹敵する(すなわち相違が50%以下である)cAMP EC200/cGMP EC200の比を生じる場合、PDE10A阻害剤と同定される。
【0047】
本発明のアッセイ法は、別の標準的細胞調製プロトコル(MisgeldおよびDietzel, Brain Res. 492:149−57, 1989; ShiおよびRayport, J. Neurosci. 14:4548−60, 1994; MaoおよびWang, Mol. Brain. Res. 86:125−37, 2001; Snyderら, J. Neuroscience 20:4480−88, 2000)、環状ヌクレオチド形成を刺激する別の標準法(Svenningssonら, Neuroscience 84:223−28, 1998; GlassおよびFelder, J. Neurosci. 17:5327−33, 1997)、および/または環状ヌクレオチド検出の別の標準法(VillegasおよびBrunton, Analytical Biochem. 235:102−3, 1996; Corbinら, Methods Enzymol. 159:74−82, 1988)を用いることが可能である。
【0048】
本発明の細胞に基づくアッセイは、PDE10A阻害に関して、先行する情報がまったく知られていない試験剤に対して行ってもよいが、細胞に基づくアッセイは、PDE10A阻害剤と同定される剤が、細胞レベルでもやはりPDE10Aを阻害することを確認する二次アッセイとして用いることが好ましい。好ましくは、剤は、PDE10A選択的阻害剤と同定されている。in vitroプレスクリーニングの代替法として、剤はまた、細胞に基づくアッセイで同定された後、in vitro試験によって、PDE10A阻害剤と確認することも可能である。
【0049】
in vitro試験では、剤は、PDE10A以外のPDE類阻害のIC50が、PDE10A阻害のIC50より、少なくとも10倍大きい場合、PDE10A選択的阻害剤と同定されるであろう。匹敵するIC50値を達成するため、PDEアッセイはすべて、各酵素に関する環状ヌクレオチドのKmに同等に比例する環状ヌクレオチド基質濃度で行う。PDE10A選択的調節因子を同定するスクリーニングの1つの種類は、組織から単離された天然酵素、あるいはトランスフェクションされた宿主細胞、例えばSf9昆虫細胞(Fawcett, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000)、酵母細胞(Loughneyら、米国特許第5,932,465号)、またはCOS−7細胞(Yuasa, J. Biol. Chem. 275:31469−79, 2000)から単離された組換え酵素を用いる。好ましくは、PDE10A酵素は、ヒト(例えばLoughneyら、米国特許第5,932,465号、Lanfearら、EP 967284)、マウス(例えばLanfearら、EP 967294)、またはラット(例えば配列番号2)である。
【0050】
PDE10A活性は、例えば、適切な基質、[H]cAMPまたは[H]cGMPの加水分解速度として測定される。この活性は、例えば、SPAに基づく方法(Fawcett, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000; Phillipsら, WO 00/40733、およびThompsonら, Biochem. 18:5228, 1979(製品コードTRKQ7090/7100、Amersham Int’l Ltd., 英国バックハムシャーを用いて修飾されるようなもの))によって測定される。簡潔には、PDE10A酵素を含む試料を、一部(例えば1/4から1/2)がH標識(Amersham)されている、cAMPまたはcGMP基質(Sigma Chemical)と接触させる。反応は、例えば、マイクロタイタープレート(例えばMicrofluor(登録商標)プレート、Dynex Technologies、バージニア州シャンティリー)中で行い、そして過剰な非標識環状ヌクレオチドを含むケイ酸イットリウムSPAビーズ(Amersham)の添加によって終結させる。ビーズを暗所で安定させた後、マイクロタイタープレート読み取り装置(例えばTopCount(登録商標)、Packard、コネティカット州メリデン)によって読み取る。
【0051】
PDE10A活性はまた、32P−cAMPまたは32P−cGMPから放出される32P−リン酸の検出によって(例えばLoughneyら, J. Biol. Chem. 271:796−806, 1996、およびLoughney、米国特許第5,932,465号に記載されるとおり)、あるいはPDE基質、cGMPまたはcAMP、およびその加水分解産物間を区別する抗体を用いて(例えばFlashPlateTM技術、NEN(登録商標)Life Sciences Products、マサチューセッツ州ボストンを用いて)、アッセイすることも可能である。
【0052】
PDE10A触媒活性をアッセイする代替法として、剤が、例えば、翻訳後修飾(例えばリン酸化)、アロステリックリガンド結合の修飾(例えばGAFドメイン(Fawcett, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000)を介して)を介して、あるいはPDE10A自体に触媒またはアロステリック制御部位で結合することによって、PDE10A触媒活性を間接的に調節する場合、剤をPDE10A陽性調節因子または陰性調節因子(アンタゴニスト)と同定することが可能である。PDE10Aリン酸化およびアロステリックリガンド結合を決定する方法は、文献に記載されている(例えばMcAllister−Lucasら, J. Biol. Chem. 270:30671−79, 1995およびCorbinら, Eur. J. Biochem. 267:2760−67, 2000を参照されたい)。
【0053】
in vitroでのスクリーニングおよび細胞に基づく本発明のアッセイに用いられる試験剤は、個々に選択してもよいし、または化合物ライブラリーから得てもよい。こうした剤には、ペプチド、Dおよび/またはL配置アミノ酸で作成されるコンビナトリアルケミストリー由来分子ライブラリー、リンペプチド、抗体、並びに小有機および無機化合物が含まれる。ライブラリーには、生物学的ライブラリー、天然化合物ライブラリー、ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能を有するが、酵素分解に耐性であり、なお生理活性を保持する、新規の非ペプチド主鎖を持つ分子のライブラリー)(例えばZuckermann, J. Med. Chem. 37:2678−85, 1994を参照されたい)、空間的にアドレス呼び出し可能な平行固相または溶液相ライブラリー、デコンボルーションを必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリー法が含まれる。
【0054】
分子ライブラリーの合成法の例は、当該技術分野において、例えばDeWittら, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:6909, 1993; Erdら, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:11422, 1994; Zuckermannら, J. Med. Chem. 37:2678, 1994; Choら, Science, 261:1303, 1995; Carrellら, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061, 1994;およびGallopら, J. Med. Chem. 37:1233, 1994に見出すことが可能である。
【0055】
化合物ライブラリーは、溶液中に(例えばHoughten, Biotechniques, 13:412−421, 1992)、またはビーズ上に(Lam, Nature 354:82−841, 1991)、チップ上に(Fodor, Nature 364:555−556, 1993)、細菌または胞子上に(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド上に(Cullら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:1865−1869, 1992)、またはファージ上に(Scottら, Science 249:386−390, 1990; Devlin, Science 249:404−406, 1990; Cwirlaら, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)87:6378−6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222:301−310, 1991; Ladner、上記)、存在していてもよい。
ラットPDE10Aのヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列
本発明は、例えば図1B(配列番号2)に示されるような、単離または精製ラットPDE10A配列を含む。
【0056】
本発明はまた、例えば図1Aに示されるような、ラットPDE10Aをコードするヌクレオチドコード配列も含む。
ラットPDE10Aをコードする核酸配列は、部分的ヌクレオチド配列を利用し、そしてプロモーターおよび制御要素などの上流配列を検出するため、当該技術分野に知られるPCRに基づく多様な方法を使用して、伸長することが可能である。例えば、使用することが可能な1つの方法、制限部位PCRは、クローニングベクター内のゲノムDNAから、未知の配列を増幅するのに、普遍的および入れ子(nested)プライマーを用いる(例えばSarkar, PCR Methods Applic. 2:318−322, 1993を参照されたい)。別の方法、逆PCRは、環状化テンプレートから未知の配列を増幅するのに、異なる方向で伸長するプライマーを用いる。テンプレートは、既知の遺伝子座および周囲配列を含む制限断片に由来する(例えばTrigliaら, Nucleic Acids Res. 16:8186, 1988を参照されたい)。第三の方法、捕捉PCRは、ヒトおよび酵母人工染色体DNA中の既知の配列に隣接するDNA断片のPCR増幅を伴う(例えばLagerstromら, PCR Methods Applic. 1:111−119, 1991を参照されたい)。この方法では、PCRを行う前に、多数の制限酵素消化および連結を用いて、操作された二本鎖配列を、未知の配列の領域に挿入することが可能である。
【0057】
本発明の別の態様において、本発明のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞中で、ラットPDE10Aの発現を指示する組換えDNA分子にクローニングすることが可能である。本発明のヌクレオチド配列は、限定されるわけではないが、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、および/または発現の修飾を含む、多様な目的のため、PDE10Aコード配列を改変するために、当該技術分野に一般的に知られる方法を用いて、操作することが可能である。
【0058】
ランダム断片化、並びに遺伝子断片および合成オリゴヌクレオチドのPCR再組み立てによるDNAシャッフリングを用いて、ヌクレオチド配列を操作することが可能である。例えば、オリゴヌクレオチド仲介部位特異的突然変異誘発を用いて、新たな制限部位を生成し、グリコシル化パターンを改変し、コドン優先性を変化させ、スプライシング変異体を生じるなどの突然変異を導入することが可能である。別の態様において、ラットPDE10Aをコードする配列を、当該技術分野に公知の化学的方法を用いて、すべてまたは部分的に合成することが可能である(例えばCaruthersら, Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215−223, 1980;およびHornら, Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225−232, 1980を参照されたい)。あるいは、ラットPDE10A自体またはその断片を、化学的方法を用いて合成することが可能である。例えば、多様な固相技術を用いて、ペプチド合成を行うことが可能である(例えばRobergeら, Science 269:202−204, 1995を参照されたい)。自動化合成は、ABI 431Aペプチド合成装置(Perkin−Elmer、コネティカット州ノーウォーク)を用いて達成することが可能である。さらに、ラットPDE10Aのアミノ酸配列またはそのいずれかの部分は、直接合成中、改変して、そして/または他のタンパク質またはそのいずれかの部分由来の配列と組み合わせて、変異ポリペプチドを産生することが可能である。ペプチドは、分離用高性能液体クロマトグラフィーによって、実質的に精製することが可能である(例えばChiezおよびRegnier, Methods Enzymol. 182:392−421, 1990を参照されたい)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸解析によって、または配列決定によって、確認することが可能である(例えばCreighton, Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, ニューヨーク州ニューヨーク 1984を参照されたい)。
発現ベクターおよび宿主細胞
生物学的に活性があるラットPDE10Aを発現させるため、ラットPDE10Aをコードするヌクレオチド配列を、適切な発現ベクター、すなわち適切な宿主中での挿入コード配列の転写および翻訳調節に必要な要素を含むベクターに挿入することが可能である。これらの要素には、エンハンサー、恒常性および誘導性プロモーターなどの制御配列、並びにベクターおよび/またはラットPDE10Aをコードするポリヌクレオチド配列由来の5’および3’非翻訳領域が含まれる。こうした要素は、その強度および特異性が異なる可能性がある。特定の開始シグナルもまた用いて、PDE10Aポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を達成することが可能である。こうしたシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列、例えばコザック配列が含まれる。ラットPDE10Aをコードする配列、並びにその開始コドンおよび上流制御配列が、適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる転写または翻訳調節シグナルは必要とされない可能性がある。しかし、コード配列またはその断片のみが挿入される場合、インフレームのATG開始コドンを含む外因性翻訳調節シグナルが、ベクターに提供されるべきである。外因性翻訳要素および開始コドンは、天然および合成両方の多様な起源のものであってもよい。発現効率は、用いる特定の宿主細胞系に適したエンハンサーの包含によって、増進することが可能である(例えばScharfら, Results Probl. Cell Differ. 20:125−162, 1994を参照されたい)。当業者に公知の方法を用いて、本開示に照らし、PDE10Aポリペプチドをコードする配列、並びに適切な転写および翻訳調節要素を含む発現ベクターを構築することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えが含まれる(例えばSambrookら, Molecular Cloning, Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, ニューヨーク州プレーンビュー, 第4, 8,および16−17章, 1989; Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 第9, 13,および16章, 1995を参照されたい)。多様な発現ベクター/宿主系を利用して、ラットPDE10Aをコードする配列を含ませそして発現させることが可能である。これらには、限定されるわけではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクター(例えばエピソーム、染色体要素)で形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス(baculovirus)、パポナウイルス(paponavirus)、ワクシニア(Vaccinia)、アデノウイルス(adenovirus)、ポックスウイルス(pox virus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、およびレトロウイルス(retrovirus))に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)、CaMV、またはタバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)、TMV)、細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系、または動物細胞系が含まれる。本発明は、使用される宿主細胞によって制限されない。
【0059】
細菌系において、ラットPDE10Aをコードするポリヌクレオチド配列に意図される使用に応じて、いくつかのクローニングおよび発現ベクターを選択することが可能である。例えば、ラットPDE10Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、および増殖は、pBlueScript(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)またはpSport1プラスミド(Life Technologies、メリーランド州ガイザーズバーグ)などの多機能大腸菌(E. coli)ベクターを用いて、達成することが可能である。ラットPDE10Aポリペプチドをコードする配列を、ベクターのマルチクローニングサイトに連結すると、lacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能になる。さらに、これらのベクターは、in vitro転写、ジデオキシ配列決定、ヘルパーファージを用いた一本鎖レスキュー、およびクローニングされた配列における入れ子欠失の生成に有用である可能性がある(例えばVan HeekeおよびSchuster, J. Biol. Chem. 264:5503−5509, 1989を参照されたい)。例えば抗体産生のため、多量のPDE10Aポリペプチドが必要とされる場合、PDE10Aポリペプチドの高レベル発現を指示するベクターを用いてもよい。例えば、強い誘導性T5またはT7バクテリオファージプロモーターを含むベクターを用いてもよい。
【0060】
組換えタンパク質発現は、宿主細胞が、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれている遺伝的背景を提供することによって、宿主細菌中で最大にすることが可能である(Gottesmanら, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185:119−28, 1990)。あるいは、ポリヌクレオチド配列を改変して特定の宿主細胞、例えば大腸菌の優先的なコドン利用を提供することが可能である(Wadaら, Nucleic Acids Res. 20:2111−18, 1992)。
【0061】
酵母発現系において、アルファ因子、アルコール酸化酵素、またはPGHプロモーターなどの恒常性または誘導性プロモーターを含む、いくつかのベクターは、例えば、酵母、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)で用いることが可能である。さらに、こうしたベクターは、発現されたタンパク質の分泌または細胞内保持いずれかを指示し、そして安定した増殖のため、宿主ゲノムへの異質の配列の組込みを可能にする(例えばAusubel, 1995; Bitterら, Methods Enzymol. 153:516−544, 1987;およびScorerら, BioTechnology 12:181−184, 1994を参照されたい)。植物系もまた、ラットPDE10A発現に用いることが可能である。PDE10Aポリペプチドをコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば、単独で、またはTMV由来のオメガ・リーダー配列と組み合わせて用いられる、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターによって駆動することが可能である(Takamatsu, EMBO J. 6:307−311, 1987)。あるいは、RUBISCOの小サブユニットまたは熱ショックプロモーターなどの植物プロモーターを用いることが可能である(例えばCoruzziら, EMBO J. 3:1671−1680, 1984; Broglieら, Science 224:838−843, 1984;およびWinterら, Results Probl. Cell Differ. 17:85−105, 1991を参照されたい)。これらの構築物は、直接DNA形質転換または病原体仲介トランスフェクションによって、植物細胞に導入することが可能である(例えばThe McGraw Hill Yearbook of Science and Technology, McGraw Hill, ニューヨーク州ニューヨーク, pp.191−196, 1992を参照されたい)。
【0062】
哺乳動物細胞において、ウイルスに基づくいくつかの発現系を利用することが可能である。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、PDE10Aポリペプチドをコードする配列を、後期プロモーターおよび三分割(tripartite)リーダー配列からなる、アデノウイルス転写/翻訳複合体内に連結することが可能である。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入を用いて、感染した宿主細胞においてラットPDE10Aを発現する、感染性ウイルスを得ることが可能である(例えばLoganおよびShenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659, 1984を参照されたい)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus)(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることが可能である。SV40またはEBVに基づくベクターもまた、高レベルタンパク質発現に用いることが可能である。
【0063】
HAC、BAC、またはYACもまた、プラスミドに含まれそしてプラスミドから発現されることが可能なDNAの巨大断片を搬送するのに使用することが可能である。例えば、療法目的のため、約6kbから10MbのHACを構築し、そして慣用的な搬送法(リポソーム、ポリカチオン性アミノポリマー、または小胞)を介して搬送する(例えばHarringtonら, Nat. Genet. 15:345−355, 1997を参照されたい)。哺乳動物系における組換えタンパク質の長期間の産生には、細胞株中のラットPDE10Aの安定発現が好ましい。例えば、ラットPDE10Aをコードする配列は、同一または別個のベクター上に、ウイルス複製起点および/または内因性発現要素および選択可能マーカー遺伝子を含んでもよい発現ベクターを用いて、細胞株に形質転換することが可能である。ベクターの導入後、選択培地に移す前に、栄養強化培地中で、約1から2日間、増殖させてもよい。選択可能マーカーの目的は、選択剤への耐性を与えることであり、そしてこのマーカーの存在は、導入配列の発現に成功した細胞の増殖および回収を可能にする。安定形質転換細胞の耐性クローンは、細胞種に適した組織培養技術を用いて、増殖させることが可能である。
【0064】
本発明はまた、本明細書に記載される核酸配列が、逆方向でベクターにクローニングされるが、制御配列に機能可能であるように連結され、アンチセンスRNAの転写を可能にするベクターも含む。したがって、コード領域および非コード領域両方を含む、本明細書に記載される核酸分子配列のすべて、または一部に対して、アンチセンス転写物を産生することが可能である。このアンチセンスRNAの発現は、センスRNAの発現に関連して上に記載されるパラメーター各々にしたがう。
【0065】
いかなる数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収してもよい。これらには、限定されるわけではないが、それぞれ、TKおよびAPR細胞において使用するための、単純疱疹ウイルス(herpes simplex virus)チミジンキナーゼおよびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる(例えばWiglerら, Cell 11:223−232, 1997; Lowyら, Cell 22:817−823, 1980を参照されたい)。また、代謝拮抗剤、抗生物質、または除草剤耐性を、選択の基礎として用いることが可能である。例えば、Dhfrはメトトレキセートへの耐性を与え;Neoはアミノ配糖体、ネオマイシンおよびG−418への耐性を与え;そしてAlsおよびPatは、それぞれ、クロルスルフロンおよびホスフィノトリシン(phosphinotricin)アセチルトランスフェラーゼへの耐性を与える(例えばWiglerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567−3570, 1980; Colbere−Garapinら, J. Mol. Biol. 150:1−14, 1981を参照されたい)。代謝産物への細胞要求を改変する、さらなる選択可能遺伝子、例えばTrpBおよびHisDが記載されている(例えばHartmanおよびMulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047−8051, 1988を参照されたい)。視覚的マーカー、例えばアントシアニン類、緑色蛍光タンパク質類(GFP; Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、β−グルクロニダーゼおよびその基質β−グルクロニド、またはルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンを用いることが可能である。これらのマーカーは、形質転換体を同定するためだけでなく、特定のベクター系に起因しうる一過性または安定タンパク質発現の量を定量化するためにも用いることが可能である(例えばRhodes, Methods Mol. Biol. 55:121−131, 1995を参照されたい)。マーカー遺伝子発現の存在/非存在は、目的の遺伝子もまた存在することを示唆するが、遺伝子の存在および発現を確認する必要はない可能性がある。例えば、ラットPDE10Aをコードする配列が、マーカー遺伝子配列内に挿入される場合、PDE10Aポリペプチドをコードする配列を含む形質転換細胞は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定することが可能である。あるいは、マーカー遺伝子は、単一のプロモーターの調節下で、PDE10Aポリペプチドをコードする配列と共に、タンデムに置くことが可能である。誘導または選択に反応したマーカー遺伝子の発現は、通常、タンデムなPDE10A配列の発現もまた示す。
【0066】
一般的に、ラットPDE10Aをコードする核酸配列を含み、そしてラットPDE10Aを発現する宿主細胞は、当業者に知られる多様な方法によって、同定することが可能である。これらの方法には、限定されるわけではないが、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、PCR増幅、およびタンパク質バイオアッセイまたはイムノアッセイ技術が含まれ、これは、核酸またはタンパク質配列の検出および/または定量化のための、膜、溶液、またはチップに基づく技術を含む。
【0067】
特異的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体いずれかを用いて、PDE10Aの発現を検出し、そして測定するための免疫学的方法が、当該技術分野に知られる。こうした技術の例には、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、免疫蛍光、および蛍光活性化細胞分取(FACS)が含まれる。これらおよび他のアッセイは、当該技術分野に公知である(例えば、Hampton, Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, ミネソタ州セントポール、第IV項, 1990; Coliganら, Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience, ニューヨーク州ニューヨーク, 1997;およびPound, Immunochemical Protocols, Humana Press, ニュージャージー州トトワ, 1998を参照されたい)。非常に多様な標識およびコンジュゲート化技術が当業者に知られ、そしてこうした技術を、多様な核酸およびアミノ酸アッセイで用いることが可能である。
【0068】
ラットPDE10Aをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識化ハイブリダイゼーションまたはPCRプローブを産生する手段には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識化ヌクレオチドを用いたPCR増幅が含まれる。
【0069】
あるいは、ラットPDE10Aをコードする配列またはその断片いずれかを、mRNAプローブを産生するため、ベクターにクローニングすることが可能である。こうしたベクターは、当該技術分野に知られ、商業的に入手可能であり、そしてT7、T3、またはSP6などの適切なRNAポリメラーゼおよび標識化ヌクレオチドを添加することによって、in vitroでRNAプローブを合成するのに用いることが可能である。これらの方法は、多様な商業的に入手可能なキット(例えばAmersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ; Promega、ウィスコンシン州マディソン;およびUS Biochemical、オハイオ州クリーブランド)を用いて行うことが可能である。検出を容易にするために用いてもよい、適切なレポーター分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光物質、化学発光物質、または色素産生剤と共に、基質、補因子、阻害剤、磁気粒子、およびそれらに匹敵するものが含まれる。
【0070】
PDE10Aポリペプチドをコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を、細胞培養からのタンパク質の発現および回収に適した条件下で、培養することが可能である。形質転換細胞によって産生されたタンパク質は、用いた配列および/またはベクターに応じて、分泌される可能性もまたは細胞内に保持される可能性もある。当業者に理解されるであろうように、ラットPDE10Aをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核または真核細胞膜を通じて、ラットPDE10Aの分泌を指示するシグナル配列を含むよう、設計することが可能である。さらに、宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節する能力、または発現されたタンパク質を望ましい様式でプロセシングする能力に関して、選択することが可能である。ポリペプチドのこうした修飾には、限定されるわけではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれる。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」型を切断する翻訳後プロセシングもまた、タンパク質標的化、フォールディング、および/または活性を特定するのに用いることが可能である。
【0071】
翻訳後活性の特定の細胞機構および特徴的機構を有する、異なる宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、およびW138)が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC、バージニア州マナサス)から入手可能であり、そして異質のタンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするように選択することが可能である。本発明の別の態様において、PDE10Aポリペプチドをコードする、天然、修飾、または組換え核酸配列を、異種配列に連結し、前述の宿主系いずれかにおいて、融合タンパク質の翻訳を生じることが可能である。例えば、商業的に入手可能な抗体によって認識することが可能な異種部分を含む、キメラPDE10Aタンパク質は、PDE10Aポリペプチド活性の調節因子に関して、ペプチドライブラリーをスクリーニングするのを容易にすることが可能である。異種タンパク質およびペプチド部分はまた、商業的に入手可能なアフィニティーマトリックスを用いて、融合タンパク質の精製を容易にすることも可能である。こうした部分には、限定されるわけではないが、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、c−myc、および赤血球凝集素(HA)が含まれる。GST、MBP、Trx、CBP、および6−Hisは、それぞれ、固定化グルタチオン、マルトース、フェニルアルシンオキシド、カルモジュリン、および金属キレート樹脂上での同族(cognate)融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c−myc、および赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープタグを特異的に認識する、商業的に入手可能なモノクローナルおよびポリクローナル抗体を用いて、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。融合タンパク質はまた、PDE10Aポリペプチドコード配列および異種タンパク質配列の間に位置するタンパク質分解切断部位を含むよう設計して、精製後、PDE10Aポリペプチドを異種部分から切断することが可能であるようにすることも可能である。融合タンパク質発現および精製の方法は、Ausubel(1995、上記、第10章)に論じられる。多様な商業的に入手可能なキットもまた、融合タンパク質の発現および精製を容易にするのに用いることが可能である。
【0072】
本発明のさらなる態様において、放射標識ラットPDE10Aの合成は、TNTウサギ網状赤血球溶解物またはコムギ(wheat)胚芽抽出系(Promega)を用いて、in vitroで達成することが可能である。これらの系は、T7、T3、またはSP6プロモーターと、機能可能であるように関連しているタンパク質コード配列の、転写および翻訳をカップリングする。翻訳は、放射標識アミノ酸、例えば35S−メチオニンの存在下で行う。
【0073】
ラットPDE10Aの断片は、組換え手段によってのみでなく、固相技術を用いた直接ペプチド合成によっても、産生することが可能である(例えばCreighton、上記、pp.55−60を参照されたい)。タンパク質合成は、手動技術によって、または自動化によって、行うことが可能である。自動化合成は、例えば、ABI(登録商標)431Aペプチド合成装置(Perkin−Elmer)を用いて、達成することが可能である。ラットPDE10Aの多様な断片を別個に合成し、そしてその後、組み合わせて、全長分子を産生することが可能である。
核酸アレイ
本発明は、図1Aに提供される配列情報に基づく、核酸分子のアレイまたはマイクロアレイなどの核酸検出キットをさらに提供する。
【0074】
本明細書において、アレイまたはマイクロアレイは、紙、ナイロン、または他の種類の膜、フィルター、チップ、ガラススライド、あるいは他の適切な固体支持体いずれかの上で合成された、別個のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのアレイを指す。1つの態様において、Cheeら、米国特許第5,837,832号、Cheeら、WO 95/11995、Lockhartら, Nat. Biotech. 14:1675−80, 1996、Schenaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−19, 1996に記載される方法にしたがって、マイクロアレイを調製し、そして用いる。他のアレイは、Brownら、米国特許第5,807,522号、およびBaldeschwielerら、WO 95/25116に記載される方法によって産生する。
【実施例】
【0075】
実施例1:PDE10A発現パターン
PDE10A mRNAは、脳内で、線条体、側坐核、および嗅結節において、先に報告されている(LanfearおよびRobas、EP 0967284)。以下の実験は、これらの知見を確認し、そしてマウスおよびラットにおけるPDE10A発現をさらに性質決定する。
【0076】
脳切片作成
迅速な断頭後、マウスおよびラット脳を収集し、ドライアイス上、イソペンタン中で凍結し、そしてHacker−Brightクリオスタット(Hacker Instruments、ニュージャージー州フェアフィールド)上で20μmの切片に切断した。すべてのレベルのマウスおよびラット脳由来の切片を、あらかじめVectabondTM試薬(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム)で被覆したスライド上に融解マウントし、4%パラホルムアルデヒド溶液中で固定し、エタノール中で脱水し、そして使用するまで、気密容器中、4℃で、乾燥剤と共に保存した。
【0077】
メッセンジャーRNAプローブ生成
マウスPDE10A cDNAから単離した914塩基対断片(塩基対380−1294に対応する)を含むプラスミドDNAを大腸菌(DH5α)に挿入し、この菌を懸濁培養で増殖させた。プラスミドDNAをQiagen(登録商標)Maxi−prepキット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)で抽出し、そして使用するまで保存した。アンチセンスプローブ用に、プラスミドをXbaI制限エンドヌクレアーゼで直線化した。センスプローブ用に、プラスミドをEcoRI制限酵素で直線化した。その後、テンプレートDNAを、Qiaquick(登録商標)PCRキット(Qiagen)を用いて精製し、そして転写し、そしてMaxiscriptTMキット(Ambion、テキサス州オースティン)を用いて、33P−UTPで標識した。アンチセンスプローブはT7ポリメラーゼで生成し、そしてセンスプローブはSP6ポリメラーゼで生成した。G50 QuickSpinTMカラム(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)を用いて、最終標識化リボプローブを調製し、そして商業的なハイブリダイゼーション緩衝液(Novagen)中で希釈した。
【0078】
in situハイブリダイゼーション
スライドにマウントした脳切片を、プロテイナーゼK(1μg/ml)中で5分間インキュベーションし、RNアーゼ不含水中でリンスし、pH8.0の0.1Mトリエチルアミン(TEA)に懸濁し、そして0.25%無水酢酸を5分間添加することによって、アセチル化した。33Pを含む10−25μl/切片の体積で、スライドにマウントした切片にプローブを適用した(切片あたり0.5−1x10cpm)。対照として、少数のマウス脳切片を、ハイブリダイゼーション前に、RNアーゼA(20μg/ml)で前処理した。切片は、50℃で、湿気のある環境中、一晩インキュベーションし、そしてその後、2xSSC中でリンスし、RNアーゼAで処理して、一本鎖RNAを分解し、標準的な一連の洗浄で洗浄し、そして一連の段階のエタノール溶液中で脱水した。生じたスライドを、標準的X線カセット中で、β−マックスフィルム(Amersham、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に並置し、そして5−10日間曝露した。
【0079】
フィルム曝露後、安全光条件下、43℃で、水で1:1に希釈したKodak(登録商標)NTB−2乳剤(Eastman Kodak Co.、ニューヨーク州ロチェスター)に、スライドを浸した。スライドを空気乾燥させ、そして完全な暗所で、−20℃で保存しながら、2週間曝露した。スライドを、Kodak(登録商標)D−19現像液およびKodak(登録商標)固定液中で、19℃で現像した。1%トルイジンブルーで対比染色し、アルコール中で脱水し、そしてカバーグラスを置いた。
【0080】
PDE10A特異的抗体
免疫細胞化学研究のため、ラットPDE10Aポリペプチドに対して向けられる抗体を生成した。C末端Hisタグを含む、全長ラットPDE10A配列(図1B、配列番号2)は、先に報告される方法(Fawcettら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3702−07, 2000)にしたがって、Sf9昆虫細胞中で発現させた。Ni−NTAクロマトグラフィー、緩衝液交換、および陰イオン交換クロマトグラフィーを用いた3工程精製によって、95%純粋であり、質量分析によって決定されるように97Kdの予測される適切な分子量を有し、そしてcGMP加水分解活性を有する最終産物を得た。精製PDE10Aを用いて、マウスを免疫感作し、そして標準的プロトコルを用いて、クローン性ハイブリドーマを調製した。24F3.F11と称される抗体を使用のため選択した。
【0081】
ヒトおよびラットPDE10Aに対するモノクローナル24F3.F11抗体の親和性は、ヒトPDE10Aを発現するSf9細胞株およびラットPDE10Aを発現するSf9細胞株由来の細胞溶解物を用いて試験した。モノクローナル24F3.F11抗体は、ラットおよびヒト組換えPDE10Aを認識する。組換え細胞と共に、対照Sf9細胞由来の溶解物を、ゲル電気泳動に供した。その後、ゲルのブロットを24F3.F11抗体とインキュベーションし、そしてブロットへの24F3.F11抗体の結合を測定した。組換えタンパク質を発現しないSf9細胞由来の溶解物を含むレーンでは、PDE10A免疫反応性は観察されなかった。
【0082】
PDE10Aに対する24F3.F11抗体の特異性を、他の10のPDE遺伝子ファミリー由来のPDE類に比較した。24F3.F11抗体は、他のPDEいずれとも交差反応しなかった。
【0083】
免疫細胞化学およびウェスタンブロット
ラット脳の異なる領域におけるPDE10Aの発現は、24F3.F11抗体でのウェスタンブロッティングおよび免疫細胞化学によって決定した。ウェスタンブロット解析のため、ラットを断頭によって屠殺し、そして脳を迅速に取り出し、そして氷上で冷却した。異なる脳領域を同定し、そして標準的技術を用いて、顕微解剖した。脳切片を、ガラス/ガラス・ホモジナイザー中、10体積の緩衝液(250mM NaCl、50mM Tris HCl、pH7.5、5mM EDTA、0.1% NP−40)中でホモジナイズした。溶解物を4000rpm(Eppendorf、ドイツ・ハンブルグ、モデル5417R)で遠心分離し、そして標準的プロトコルを用いて、上清をウェスタンブロット解析に供した。
【0084】
免疫細胞化学のため、ラット脳を、10%緩衝化ホルマリン(pH7.0)中で、24時間、液浸固定し、そしてその後、パラフィンに包埋した。切片(6μm)は脱パラフィン処理し、そして蒸留水中で水和した。クエン酸緩衝液(pH6)を用いて、96℃で20分間加熱し、マスク化したエピトープを回収した。切片を、24F3.F11抗体(1.2μg/ml)と、室温で60分間インキュベーションした。対照として、IgG1アイソタイプ対照抗体および飽和濃度(ウェスタンブロットによって決定されるようなもの)のPDE10Aをあらかじめ吸収させた24F3.F11抗体を、複製切片上で平行してインキュベーションした。陽性染色は、アビジン−ビオチン−HRP複合体を用いて検出し、そしてジアミノベンジジン(DAB)を用いて視覚化した。IgG1およびあらかじめ吸収したF11対照では、反応産物は観察されなかった。
【0085】
PDE10A mRNA局在
PDE10Aアンチセンス標識化マウス脳切片のオートラジオグラフは、非常に特異的なハイブリダイゼーションシグナルを示した。濃い標識化が3つの領域:背側線条体(尾状核および被殻)、腹側線条体(側坐核)、および嗅結節のみで見られた。線条体および側坐核内では、PDE10A mRNAは、これらの構造に見られるすべてのニューロンの約95%に相当する、線条体中型有棘ニューロンで、高く発現されていた。歯状回および海馬のCA層で、そして小脳の顆粒細胞層で、より低い密度の標識化が見られた。マウスに比較し、ラット脳の標識化パターンに、有意な相違は見られなかった。
【0086】
PDE10Aのin situ標識化は特異的であった。ハイブリダイゼーション前にRNアーゼAで前処理したマウス脳切片は、標識のいかなる可視の取り込みも持たなかった。
【0087】
PDE10A mRNA局在領域および高ドーパミン受容体発現と古典的に関連付けられている領域の間には、非常に優れた一致があった。この類似性は、細胞下位置決定およびフィルムオートラジオグラフィーに比較して増加した分解能を提供する、乳剤オートラジオグラフによって、さらに支持された。銀粒子の濃い取り込みが、線条体、側坐核、および嗅結節全体で見られ、そしてこれら3つの領域のニューロン細胞体の大部分に被っているのが見られた。さらに、低いが測定可能なレベルのドーパミン受容体を発現する領域もまた、粒子沈着を示し、その相対DA受容体密度と大まかに一致していた。これらには、特に、正中前前頭皮質および前前頭皮質溝(medial and sulcal prefrontal cortex)と共に、歯状回および海馬のCA層が含まれた。しかし、濃いドーパミンD1受容体発現の領域である、黒質網様部には粒子集積は見られなかった。
【0088】
PDE10Aタンパク質局在
mRNAレベルと一致して、高ベルのPDE10Aタンパク質が、線条体(尾状核および被殻)、側坐核、および嗅結節で示された。PDE10Aタンパク質は、ニューロン細胞体で、そして神経網全体で観察された。さらに、内包、淡蒼球、脳脚内核(entopeduncular nucleus)、および黒質を含む、線条体中型有棘ニューロンが突出する脳領域に、高レベルのPDE10Aタンパク質が観察されたが、PDE10A mRNAは観察されなかった。これらの領域にPDE10A mRNAが存在しないことを考慮すると、高レベルのPDE10Aタンパク質は、線条体中型有棘ニューロンの軸索および終末から生じているにちがいない。
実施例2:PDE10A選択的調節因子に関するin vitroスクリーニング
パパベリンは、in vitro試験によって、PDE10A選択的阻害剤と同定された。他の遺伝子ファミリー由来のPDE類に比較して、PDE10Aを阻害する能力に関して、パパベリンを試験した。ヒトPDE2、3、および5は海綿体から単離し、ヒトPDE1は心室から単離し、そしてヒトPDE4は骨格筋から単離した(Boolellら, Int. J. Impotence Research 8:7−52, 1996)。ホスホジエステラーゼ7−11は、先に記載されるように、SF9細胞にトランスフェクションした全長組換えクローンから生成した(Fisherら, Biochem. Biophys. Res. Comm. 246:570−577, 1998; Fisherら, J. Biol. Chem. 273:15559−15564, 1998b; Soderlingら, PNAS 96:7071−7076, 1999; Fawcettら, PNAS 97:3702−3707, 2000)。酵素は、Boolellら、上記に記載されるように、細胞溶解物の可溶性分画からのFPLCによって精製した。
【0089】
PDE活性は、先に記載されるような、SPAに基づく方法を用いて測定した(Fawcettら、2000)。多様な阻害剤濃度の存在下で、固定量のPDE10A酵素を用いて、アッセイを行った。アッセイに用いた環状ヌクレオチド基質(非標識対[H]標識が3:1の比のcGMPまたはcAMP)は、Km濃度の1/3であり、異なるPDE類に関する阻害剤IC50値の比較を可能にした。最終アッセイ体積は、アッセイ緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.4、5mM MgCl、1mg/mlウシ血清アルブミン)で100μlに調整した。
【0090】
酵素の添加によって反応を開始した。試料を30℃で30−60分間インキュベーションして、<30%の基質代謝回転を与え、そして3mMの適切な非標識化環状ヌクレオチドを含む、50μlケイ酸イットリウムSPAビーズ(Amersham)で終結させた。プレートを再封印し、そして20分間震蘯し;その後、30分間、ビーズを暗所で安定させ、そしてその後、TopCountプレート読み取り装置(Packard、コネティカット州メリデン)上で計測した。放射能単位は、非阻害対照(100%)に比較して、活性パーセントに変換した。IC50値は、「Fit Curve」Microsoft Excel拡張(extension)を用いて得た。
【0091】
パパベリンは、PDE10Aの競合阻害剤と同定され、IC50値は17nMであった。パパベリンは、試験した他のPDE類すべてに対して、かなり効力が劣り(表1)、PDE10Aへの選択性が立証された。
【0092】
表1.多様なPDE遺伝子ファミリーのパパベリン阻害
【0093】
【表1】

【0094】
実施例3:初代線条体中型有棘ニューロン−パパベリンの影響
パパベリンがPDE10Aを阻害する特異性を考慮して、パパベリンを培養初代線条体中型有棘ニューロンに投与し、選択的PDE10A阻害が、これらの細胞における環状ヌクレオチド代謝に対するユニークな影響を有するかどうか決定した。パパベリンの影響を、他のPDE阻害剤、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)、ロリプラム、およびザプリナスト(zaprinast)(すべてSigma、ミズーリ州セントルイスから入手可能なPDE阻害剤)の投与から生じる影響と比較した。
【0095】
線条体培養は、先に記載されるように調製した(Ventimigliaら, Eur. J. Neurosci. 7:213−222, 1995)。簡潔には、E17ラットから線条体(尾状核および被殻)を切除し、解離させて単細胞懸濁物を生じ、そしてポリ−L−オルニチン/ラミニン(カタログ番号354657、BD Biosciences、マサチューセッツ州ベッドフォード)で被覆した96ウェルプレート中に、5x10ニューロン/ウェルの密度で蒔いた。細胞を、B27補足剤(カタログ番号17504−010、Gibco BRL)およびヒト組換え脳由来神経栄養因子(BDNF)(100ng/ml)(カタログ番号248−BD、R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を含むNeurobasal培地(カタログ番号21103−049、Gibco BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)中で蒔いた。線条体中型有棘ニューロンは、先に記載されるようなGABA免疫反応性プロトコルによって確認されるように、これらの培養中の細胞の50−60%を構成した(Ventimigliaら、1995、上記)。これらの培養中のPDE10A mRNAの発現は、以下にさらに記載されるように、RNアーゼ保護アッセイによって確認した。
【0096】
in vitroでおよそ4日置いた後、線条体細胞を、Ca2+/Mg2+不含リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で洗浄し、そしてCa2+/Mg2+不含リン酸緩衝生理食塩水、30mM HEPES(pH7.4)、1mM CaCl、1mg/mlデキストロース、および5mM MgClを含む緩衝液中で、1時間プレインキュベーションした。その後、線条体細胞をPDE阻害剤の1つに曝露し、そして37℃で20分間インキュベーションした。cGMPを測定する際、ニューロンは、PDE阻害剤と20分間インキュベーションした後、ニトロプルシド・ナトリウム(SNP)(100μM)で2分間刺激した。cAMPを測定する際、ニューロンは、20分間の阻害剤インキュベーションの間、フォルスコリン(1μM)で刺激した。これらのSNPおよびフォルスコリン濃度は、最大反応(1000μM SNPおよび10μMフォルスコリンは、それぞれ、cGMPおよびcAMPの最大増加を生じた)のおよそ20−25%を生じる、最大以下の濃度として選択した。
【0097】
cGMPおよびcAMP SPA系(それぞれ、AmershamコードRPA 540およびRPA 559)を用いて、細胞溶解物中のcGMPおよびcAMP濃度それぞれを検出した。SPA直接スクリーニングアッセイ緩衝液(0.01%アジ化ナトリウムを含む0.05M酢酸)および緩衝液A(133mg/mlドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)の9:1の組み合わせを用いて細胞を溶解し、そして溶解物をドライアイス上で凍結した。
【0098】
SNPまたはフォルスコリンによって刺激されていない細胞において、パパベリンは、線条体培養中のcAMPまたはcGMPレベルいずれにも影響を与えなかった。PDE阻害剤の非存在下で、フォルスコリン(1μM)およびSNP(100μM)の最大以下の濃度は、基底cAMPおよびcGMPより2−3倍の増加を引き起こした。パパベリンは、SNP誘導cGMP集積に、濃度依存増加を引き起こし、EC200(2倍増加を生じる阻害剤の濃度)値は、11.7μMであった(表2)。最大効果は、100μMパパベリンで観察され;cGMPレベルは、SNPのみで刺激された培養より5倍上昇した。パパベリンはまた、フォルスコリン刺激培養において、cAMP集積の増加も引き起こし、EC200は、38.3であった(表2)。したがって、パパベリンは、cGMP EC200/cAMP EC200の比によって決定されるように、cGMPよりcAMPの増加を促進する際、3.3倍、より有効でなかった(表2)。
【0099】
対照的に、非選択的PDE阻害剤、IBMXは、SNPまたはフォルスコリン刺激培養において、cGMPおよびcAMP集積両方で、濃度依存(3−100μMの範囲)増加を引き起こし、EC200値は、それぞれ、19および30μMであった。選択的PDE4阻害剤、ロリプラムは、2.5μMのEC200値でフォルスコリン刺激cAMP集積を増加させ、そしてcGMP集積速度を倍にするのに、10倍高い濃度を必要とした。cGMP優先PDE阻害剤、ザプリナストは、98μMの濃度で、これらのニューロンにおけるcAMPレベルを倍にした。しかし、この化合物100μMは、cGMPのレベルをまったく倍にしなかった。各PDE阻害剤のcGMP EC200/cAMP EC200の比の比較は表2に示され、そしてPDE10A選択的阻害剤(パパベリンに代表されるようなもの)が、線条体中型有棘ニューロンにおける環状ヌクレオチド制御にユニークな影響を有することを立証する。
【0100】
表2.PDE阻害剤の比較
【0101】
【表2】

【0102】
RNアーゼ保護アッセイ
RNAは、先に記載されるように、5.7M塩化セシウム勾配を通じて、20℃、150,000xgで21時間遠心分離することによって、ラット線条体中型有棘ニューロンの初代培養から調製した(Iredale PAら, Mol. Pharmacol. 50:1103−1110, 1996)。RNAペレットを0.3M酢酸ナトリウム、pH5.2に再懸濁し、そしてエタノール中で沈殿した。RNA濃度は、分光測定によって測定した。PDE10Aリボプローブは、マウスcDNAから単離した914bp(Genbank AF 110507の塩基対380−1294に対応する)のPCR増幅によって調製した。この断片をその後、pGEM3Zfにクローニングした。ベクターを直線化し、そしてT7 RNAポリメラーゼを用いて、[32P]標識化アンチセンスリボプローブを合成した。
【0103】
RNアーゼ保護アッセイは、RPAIIキット(Ambion)を用いて行った。簡潔には、5μgの総細胞RNAを[32P]標識化PDE10Aリボプローブ(およそ105cpm/試料)と、42℃で一晩、ハイブリダイズさせた。翌日、試料を、RNアーゼAおよびT1と、37℃で30分間インキュベーションし、そしてその後、保護された二本鎖RNA断片を沈殿させ、そして尿素を含む6%ポリアクリルアミドゲル上で泳動した。このアッセイの結果により、PDE10A mRNAが、線条体中型有棘ニューロンの初代培養中に、高レベルで存在することが確認された。
実施例4:ラットPDE10Aのクローニングおよび配列決定
ヒトPDE10Aのタンパク質コード配列(GenBank AB020593)を用いて、基本的局所並列検索ツール(BLAST)(Altshulら, J. Mol. Bio. 215, 403−410, 1990)を用い、非ヒトESTを含む米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)発現配列タグ(EST)データベースの選択されたサブセットを検索した。1つのラットEST(H32734)によって予測されるアミノ酸配列は、ヒトタンパク質の内部部分に相同であった。さらに、このESTの核酸配列は、マウスPDE10A(GenBank AF110507)のものに非常に相同であった。我々はこのEST情報に加え、5’および3’cDNA末端迅速増幅(RACE)技術を用いて、ラット脳RNAの真の5’および3’配列を同定し、これをその後、完全ラットPDE10A cDNAを単離するのに用いた。
【0104】
5’RACEは、製造者の推奨にしたがい、5’RACEキット(Gibco/BRL)を用いて行った。第一鎖cDNAは、遺伝子特異的3’プライマー1358(表3)、スプレーグ−ドーリー(Sprague−Dawley)ラット脳由来の1μgの総RNA、およびSuperscriptTMII逆転写酵素(Gibco/BRL)を用いて生成した。第一周期PCRは、入れ子3’遺伝子特異的プライマー1357(表3)およびキットの5’アダプタープライマー(短縮(abridged)アンカープライマー(AAP))を用いて行った。周期条件には、最初の94℃、2分間の変性、その後、94℃、45秒間の変性、54℃、30秒間のアニーリング、72℃、3分間の伸長の35周期に加え、最後の72℃、10分間の伸長が含まれた(Robocycler(登録商標)、Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)。
【0105】
上述の周期条件を用いて、入れ子遺伝子特異的プライマー1356(表3)およびキットの5’アダプタープライマー(短縮普遍的増幅プライマー(AUAP))と共に、第一周期のPCR産物(1μl)を第二周期のPCRのテンプレートとして用いた。6つの別個のPCR産物は、1.2%アガロースゲル上の電気泳動によって同定した。これらのバンドは、ゲル抽出キット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を用いて個々に単離し、pCR4 TOPO(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)にクローニングし、そしてTOP10細胞(Invitrogen)にトランスフェクションした。コロニーは、上述のように、ベクター特異的プライマー1369および1370(表3)を用いたPCRによってスクリーニングし、そして各バンド由来の多数の陽性クローンを配列決定した。
【0106】
すべての配列を並列し、ラットPDE10Aの5’端のコンセンサス配列を生じた。3’RACEは、製造者の指示にしたがい、3’RACEキット(Gibco/BRL)を用いて行った。第一鎖cDNAは、3’アダプタープライマー(AP)およびSuperscript(登録商標)II逆転写酵素を用いて、2μgラット脳総RNAから生成した。第一周期のPCRは、遺伝子特異的5’プライマー1375(表3)およびキットの3’APを用いて行った。周期条件は、上述のとおりであった。同一の周期条件を用いて、入れ子プライマー1376(表3)および3’AUAPと共に、第一周期PCR産物(1μl)を第二周期のPCRのテンプレートとして用いた。ほぼ期待される大きさである4つの別個のPCR産物を、1.2%アガロースゲル上での電気泳動によって同定した。上述のように、これらのバンドを単離し、そしてサブクローニングし、そしてコロニーをスクリーニングした。陽性クローンは、1つのPCR産物から同定された。これらのクローンのうち6つ由来の配列を並列し、ラットPDE10Aの3’端のコンセンサス配列を生じた。
【0107】
全長ラットPDE10A cDNAを単離するため、第一鎖cDNAは、Superscript(登録商標)系(Gibco/BRL)を用いて、総ラット脳RNAから、3つ組で生成した。5’プライマー1380および3’プライマー1407(表3)は、上述のように生成されたラット5’および3’配列情報から設計し、そしてクローニングを容易にするため、隣接するSalI制限部位を含むように操作した。PCRは、高忠実度PCR系(Boehringer Mannheim(Roche)、スイス・バーゼル)を用いて行った。周期条件は、最初の94℃、2分間の変性、その後、94℃、45秒間の変性、48℃、30秒間のアニーリング、72℃、3.5分間の伸長の4周期、その後、94℃、45秒間の変性、55℃、30秒間のアニーリング、72℃、3.5分間の伸長の35周期に加え、最後の72℃、10分間の伸長であった(Robocycler(登録商標)、Stratagene)。3つの第一鎖cDNAテンプレート各々に関して、別個のPCR反応を行った。
【0108】
各PCR反応由来のおよそ2.3kbのバンドを、ゲル抽出キット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を用いてゲル単離し、そしてPCR Blunt(Invitrogen)に連結し、そして上述のように形質転換した。正しいクローンは、ラットPDE10特異的プライマー1385および1386(表3)並びにSalI制限消化を用いたコロニーPCRによって、同定した。別個の逆転写PCR反応各々由来の多数のクローンを配列決定し、そしてすべての配列を並列し、コンセンサスを決定した。2つのエラー不含クローン(pNB1426およびpNB1427)を同定し、そして配列決定した。ラットPDE10Aのポリヌクレオチド配列(配列番号1)および予測されるアミノ酸配列(配列番号2)は、それぞれ、図1Aおよび図1Bに示される。
【0109】
表3.ラットPDE10Aをクローニングするためのプライマー配列
【0110】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1Aは、ラットPDE10A(配列番号1)をコードするポリヌクレオチド配列を示す。図1Bは、ラットPDE10Aポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内ホスホジエステラーゼ10A活性を阻害する剤をスクリーニングする方法であって:
i)剤を線条体中型有棘ニューロンに投与し、そしてアデニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し;
ii)剤を線条体中型有棘ニューロンに投与し、そしてグアニル酸シクラーゼを最大以下に活性化し;
iii)工程(i)の細胞においてcAMP生成を、そして工程(ii)の細胞においてcGMP生成を測定し;
iv)工程(i)に関してcAMP EC200を、そして工程(ii)に関してcGMP EC200を計算することを含み;
cAMP EC200/cGMP EC200の比が、同一のアッセイ条件下でのパパベリンの投与によって生じる比に匹敵する場合、該剤をPDE10A阻害剤と同定する
前記方法。
【請求項2】
前記線条体中型有棘ニューロンが、初代培養ニューロンとして調製される、請求項1の方法。
【請求項3】
アデニル酸シクラーゼがフォルスコリンによって活性化され、グアニル酸シクラーゼがニトロプルシド・ナトリウムによって活性化され、そしてcAMP EC200/cGMP EC200比が1.75−5.25の範囲にある、請求項2の方法。
【請求項4】
前記cAMP EC200/cGMP EC200比が3.0−4.0の範囲にある、請求項3の方法。
【請求項5】
cAMPおよびcGMPの濃度が、シンチレーション近接アッセイによって測定される、請求項1の方法。
【請求項6】
工程(i)および(ii)の前に、前記剤が、in vitroで、PDE10A選択的阻害剤と同定されている、請求項1の方法。
【請求項7】
前記剤が、さらに、in vitroアッセイによって、PDE10A選択的阻害剤と同定されている、請求項1の方法。
【請求項8】
工程(i)および(ii)のニューロンが、別個の試料中にある、請求項1の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−6337(P2006−6337A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217435(P2005−217435)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【分割の表示】特願2002−217718(P2002−217718)の分割
【原出願日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】