説明

PEG−ポリアセタールジブロックコポリマーおよびPEG−ポリアセタールトリブロックコポリマーならびに医薬組成物

本発明は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールを含むブロックコポリマー送達媒体に関し、かつその送達媒体および活性剤を含む制御放出医薬組成物に関する。本発明のブロックコポリマーはサーモゲルブロックコポリマーであってよい。医薬組成物は活性剤の局所制御送達するための局所注射可能または注入可能な処方物の形態であってよい。また、本発明は、本発明の他の実施形態は、局所的に作用する活性剤、特に局所麻酔剤および制吐剤の制御送達のためのサーモゲルブロックコポリマーの注射可能または注入可能な組成物を提供する。本発明のコポリマーと一緒に用いることができる他の活性剤には、生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチドおよび血管新生阻害剤が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールを含むブロックコポリマー送達媒体、およびその送達媒体と活性剤を含む制御放出医薬組成物に関する。本発明のブロックコポリマーは、サーモゲルブロックコポリマーであってよい。医薬組成物は、活性剤を局所制御送達する局所、注射可能または注入可能な処方物の形態であってよい。
【背景技術】
【0002】
腫瘍ターゲティングのためのミセル系
癌治療における主要な問題の1つは、腫瘍において十分な抗癌剤の濃度を実現することが困難であることである。これは、使用できる量が厳密に制限されるそうした薬剤の毒性、時には極めて強い毒性に起因するものである。しかし、癌化学療法における重要な発見はいわゆるEPR(高い浸透性と保持力)効果である。EPR効果は、新たに形成された脈管構造である腫瘍脈管構造が、不完全に形成された上皮を有していて、大きな分子に対して本質的に不浸透性である既存の古い脈管構造より浸透性がずっと高いという観察に基づくものである。さらに、腫瘍におけるリンパ排液は非常に少なく、したがって腫瘍に送達された抗癌剤の保持を容易にする。
【0003】
EPR効果は、通常の脈管構造を浸透するのには大き過ぎるが、腫瘍脈管構造を浸透するのに十分小さい抗癌剤を含む送達系を用いる癌ターゲティングにおいて使用することができ、2つのアプローチが開発されている。1つのアプローチでは、加水分解に対して不安定な結合を介してポリマーと化学的に結合している抗癌剤を含む水溶性ポリマーが用いられる。そうした薬物−ポリマー構造体は静脈内に注入され、腫瘍内で蓄積される。そこにおいて、構造体は、エンドサイトーシスによって細胞により内在化し、かつ薬物をポリマーと結合させている不安定な結合の酵素的切断によって、細胞のリソソーム区画で放出される。このアプローチの2つの欠点は、第1に、非分解性の水溶性ポリマーが用いられており、これにより、ポリマーの分子量が確実に腎排せつ許容限界未満であるようにするために、面倒なポリマーの分別を必要とすることである。第2に、その薬物は、克服しなければならない規制上のハードルを有する新規な薬物実体を実際にもたらすポリマーと化学的に結合していなければならないことである。癌の診断および治療におけるポリマー複合体の使用は、R. Duncanらの「The role of polymer conjugates in the diagnosis and treatment of cancer」、 S.T.P. Pharma Sciences、6(4)、237〜263頁(1996年)に論じられており、アルギン酸生物活性剤複合体の例はAl−Shamkhaniらの特許文献1に記載されている。
【0004】
他のアプローチも記載されている。このアプローチでは、B−ブロックが疎水性であり、A−ブロックが親水性であるAB型またはABA型ブロックコポリマーが作製される。そうした材料を水に入れると、自己集合して疎水性コアとそのコアを囲繞する親水性シェルを有するミセルになる。そうしたミセルは約100nmの直径を有し、静脈内で注入された場合に、そのミセルは通常の脈管構造を通過できないほど大きいが、腫瘍内の脈管構造を通過するのには十分小さい。さらに、100nmという直径は、小さ過ぎて細網内皮系では認識されず、したがって血流内でのミセル寿命を向上させる。さらに、親水性ブロックがポリ(エチレングリコール)である場合、「ステルス」リポソームとして観察されているように、循環時間のさらなる向上が確認されている。ブロックコポリマーミセルの使用はG. S. Kwonらの「Block copolymer micelles as long−circulating drug delivery vehicles」、Adv. Drug Delivery Rev.、16、295〜309頁(1995年)に概説されている。
【0005】
Sakuraiらの特許文献2および特許文献3、ならびにYokoyamaらの特許文献4および特許文献5は、親水性ブロックがポリ(エチレングリコール)であり、疎水性ブロックがポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)およびポリリシンの誘導体である、ミセル送達系として有用なブロックコポリマーを記載している。特許文献2および特許文献3は、薬物が疎水性セグメントと化学的に結合しているアプローチを記載している。他方、特許文献4および特許文献5は、疎水性薬物がミセルの疎水性部分に物理的に取り込まれているアプローチを記載している。薬物を化学的に改変する必要がないので、後者のアプローチは明らかに好ましいものである。
サーモゲル
BASFから販売されているPLURONIC(登録商標)は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシエチレン)のトリブロックを形成するポリ(オキシエチレン)ブロックとポリ(オキシプロピレン)ブロックを含むコポリマーの部類である。トリブロックコポリマーは水を吸収して、ゲルまたは逆サーマルゲル化挙動を示すサーモゲルを形成する。逆サーマルゲル化挙動は、低温では溶液として存在し、生理学的相当温度で逆にゲルを形成するコポリマーの特徴を指す。しかし、PLURONIC(登録商標)系は非生分解性であり、水溶性のゲル特性や急速な薬物放出機構は、効果的なコポリマー薬物送達系としての使用にはふさわしくない。
【0006】
特許文献6は、A−ブロックとしてポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーまたはポリ(ラクチド)ポリマーからなる多量の疎水性ポリマーと、約2000〜4990の全重量平均分子量を有し、かつ逆サーマルゲル化特性を有する少量の親水性ポリエチレングリコールポリマーB−ブロックでできた水溶性の生分解性ABA型またはBAB型のトリブロックポリマーを開示している。トリブロックコポリマーは、親水性および疎水性の薬物、ペプチドおよびタンパク質薬物ならびにオリゴヌクレオチドを非経口投与するための薬物送達系を提供する。
【0007】
特許文献7は、多量の疎水性ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーA−ブロックと、約3100〜4500の全平均分子量を有し、かつ逆サーマルゲル化特性を有する少量の親水性ポリエチレングリコールポリマーB−ブロックでできた水溶性生分解性ABA型ブロックコポリマーを開示している。効果的濃度のブロックコポリマーと薬物を水相中に均一に含ませて、薬物送達組成物を形成させる。組成物は液体として、非経口、眼球内、局所、経皮、経膣、経尿道、経直腸、経鼻、経口または経耳の送達手段により温血動物に投与することができる。これは体温でゲルである。組成物はゲルとして投与することもでき、薬物は、生物分解して非毒性産物となるゲルから、制御された速度で放出される。薬物の放出速度は、ブロックコポリマーの疎水性/親水性成分含量、コポリマー濃度、分子量および多分散性などの種々のパラメータを変えることによって調節することができる。両親媒性であるので、コポリマーは組成物中の薬物の溶解性および/または安定性を増大させるように作用する。
【0008】
特許文献8は、生分解性ポリマーマトリックス中の薬物を、薬物を制御放出させるためのゲルデポーの生成をもたらす液体として、温血動物に非経口送達するための系と方法を開示している。その系は、逆サーマルゲル化特性を有する注入可能な生分解性ブロックコポリマーの薬物送達液体を含む。送達液体は、生分解性ブロックコポリマーマトリックス中に密に含まれた有効量の薬物がその中に溶解または分散した水溶液である。コポリマーは、投与される動物の体温より低い逆ゲル化温度を有し、(i)ポリ(α−ヒドロキシ酸)およびポリ(エチレンカーボネート)からなる群から選択されるメンバーを含む疎水性Aポリマーブロックと(ii)ポリエチレングリコールを含む親水性Bポリマーブロックでできている。
活性剤の送達
抗生物質、消毒剤、コルチコステロイド、抗新生物薬および局所麻酔剤などの多くの部類の活性剤は、局所施用かまたは注入によって皮膚または粘膜に投与することができる。活性剤は局所的にも全身的にも作用することができる。局所送達は、軟膏、クリーム、乳剤、液剤、懸濁剤などの組成物の使用によって実現することができる。活性剤の送達のための注入剤には、液剤、懸濁剤および乳剤が含まれる。これらのすべての製剤は長年、活性剤の送達用に広範に用いられている。しかし、これらの製剤は、それらが短時間作用型であり、したがって活性/治療を要する部位における血流での治療上有効な用量レベルを維持するために、1日に数回投与しなければならないことがよくあるという欠点がある。
【0009】
最近では、投与された後、長期的な治療的応答をもたらす剤形の開発に大きな進歩がなされている。これらの産物は、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、微小粒子などのマイクロカプセル化によって具現化することができる。この種の剤形のためには、活性剤を通常、マイクロカプセル、リポソームまたは微小粒子中に取り込むかまたはカプセル化し、次いでこれを注入によるかまたは埋め込みの形で体内に導入する。この種の剤形からの活性剤の放出速度は制御され、それによって頻繁な投薬の必要がなくなる。しかし、その製造は面倒であり、しばしば高コストになってしまう。さらに、多くの場合これらは再現性が低く、その結果放出パターンの信頼性に欠けるものがある。さらに、製造工程で有機溶媒を用いた場合、組成物中で非常に有毒な有機溶媒残留物となる可能性がある。有機溶媒の使用は、環境面および火災のリスクがあるという理由からも望ましくない。
【0010】
治療薬の送達のための合成生分解性ポリマーへの関心は、1970年代初期のYollesらのPolymer News、1、9〜15頁(1970年)のポリ(乳酸)を用いる研究から始まった。それ以来多くの他のポリマーが、活性剤の制御放出のための生体内分解性マトリックスとして作製され研究されてきた。特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15および特許文献16は、活性剤の制御送達に用いることができる様々な種類の生分解性または生体内分解性ポリマーを開示している。これらのポリマーの多くは半固体の形態の外観をしている。しかし、半固体ポリマー材料は粘着性が強過ぎることが多い。そのため、活性剤を、半固体ポリマー材料から容易かつ確実には放出できないことがよくある。
【0011】
ポリマー治療剤の開発に用いるポリマーは、ポリマーを材料として用いる必要がある他の生物医学的用途とは別個に開発することもできる。したがって、薬物放出マトリックス(微小粒子やナノ粒子を含む)、ヒドロゲル(注入可能なゲルおよび粘性溶液を含む)およびハイブリッドシステム(例えば、その外面上に接合されたポリ(エチレングリコール)を有するリポソーム)ならびにデバイス(ロッド、ペレット、カプセル、フィルム、ゲルを含む)を、組織または部位特異的な薬物送達用に加工することができる。ポリマーは、薬剤処方物において賦形剤として臨床的にも広く用いられている。これらの3つの広い応用分野、すなわち(1)生理学的に可溶性の分子、(2)材料および(3)賦形剤の中で、生物医学的ポリマーは、活性治療薬物の効力を最適化するための広い技術プラットホームを提供する。
ポリアセタールポリマー
アセタールは、弱酸性条件下で加水分解的に不安定であることはよく知られている。したがって、ポリマー主鎖中にアセタール結合を有する生物医学的ポリマーは、中性または塩基性のpHである生物学的環境に対して弱酸性である生物学的環境において早い速度の加水分解を受けることがある。例えば、エンドサイトーシスの際に酸性度が増大するので、生理活性分子と接合できる可溶性ポリアセタールは、細胞取り込みの際にアセタール官能基で早い速度で分解することが予想される。ポリアセタールは、胃腸管の酸性領域においても早い加水分解速度を示す。さらに、ポリアセタールは、弱酸性である病変組織(例えば、充実性腫瘍)の部位で早い速度で分解することが予想される。
【0012】
ポリアセタールの調製は、低分子量の副生成物(例えば、水またはアルコール)の生成をもたらすアセタール反応またはトランスアセタール化反応によって実施することができる。再現性のある重合のためにも、また保存してもポリアセタールが分解しないように確実にするためにも、そうした副生成物の完全な除去が必要である。高分子量ポリマーを得るためには、通常、厳しい条件を必要とする。生物医学的用途に対応した官能化モノマーを用いる場合、そうした条件は、しばしばモノマーの不特定の化学的変化をもたらす可能性がある。ポリアセタールは二環式アセタールを用いて、カチオン開環重合で除去する必要のある小分子の生成なしで、調製することができる(L. Torresらの「A new polymerization system for bicyclic acetals: Toward the controlled 「living」 cationic ring−opening polymerization of 6,8−dioxabicyclo [3.2.1] octane」、 Macromolecules、32、6958〜6962頁、1999年)。接合の用途に有用な広範囲の化学官能基を用いても調製が困難である二環式アセタールモノマーを必要とするので、これらの反応条件は多目的性に欠けている。
【0013】
ポリアセタールは、Hellerによって記述されているように(J. Hellerらの「Preparation of polyacetals by the reaction of divinyl ethers and polyols」、 J. Polym. Sci.: Polym. Lett. Ed.、18、293〜297頁、1980年; J. Hellerらの「Polyacetal hydrogels formed from divinyl ethers and polyols」、特許文献17、1987年)、酸触媒を用いたジオールとジビニルエーテルの反応によって、除去を必要とする小分子副生成物の生成なしで調製することもできる。そうしたポリアセタールは、A−B型を厳密に交互に配置したポリマーである均一な構造を有する。生物学的プロファイルの最適化のためにも、またポリマーを確実に規制要件に適合させるためにも、生物医学的ポリマーの開発において均一な構造は非常に重要である。穏やかな条件下では小分子を除去しなくても、ジオールとジビニルエーテルの重合は起こる。これは、排除しなければならない分子(例えば、水またはメタノール)が存在する重合より効果的である。
制御された薬物送達のための生体内分解性グラフトコポリマーマトリックス
親水性Aブロックと疎水性Bブロックを含むAB型、ABA型およびBAB型ブロックコポリマーにおいては、AブロックとBブロックは相溶性がなく、顕微鏡スケールで相分離する。この相分離は独特で有用な熱特性を材料に付与する。
【0014】
ポリ(エチレングリコール)とポリ(L−乳酸)、ポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)コポリマーおよびポリ(ε−カプロラクトン)などの生体内分解性疎水性セグメントを含むブロックコポリマーの開発にはかなりの従来技術があり、また薬物送達剤としてのその使用も論じられている。例えば、Wolthuisらの「Synthesis and characterization of poly(ethylene glycol) poly−L−lactide block copolymers」, Third Eur. Symp. Controlled Drug Delivery、271〜276頁(1994年)、Youxinらの「Synthesis and properties of biodegradable ABA triblock copolymers...」, J. Controlled Release、27、247〜257頁(1993年)および特許文献18を参照されたい。本出願において引用する上記および他の文献の開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【特許文献1】米国特許第5,622,718号明細書
【特許文献2】米国特許第5,412,072号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,751号明細書
【特許文献4】米国特許第5,449,513号明細書
【特許文献5】米国特許第5,510,103号明細書
【特許文献6】米国特許第6,117,949号明細書
【特許文献7】米国特許第6,004,573号明細書
【特許文献8】米国特許第5,702,717号明細書
【特許文献9】米国特許第4,079,038号明細書
【特許文献10】米国特許第4,093,709号明細書
【特許文献11】米国特許第4,131,648号明細書
【特許文献12】米国特許第4,138,344号明細書
【特許文献13】米国特許第4,180,646号明細書
【特許文献14】米国特許第4,304,767号明細書
【特許文献15】米国特許第4,946,931号明細書
【特許文献16】米国特許第5,968,543号明細書
【特許文献17】米国特許第4,713,441号明細書
【特許文献18】米国特許第5,133,739号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、疎水性の生体内分解性セグメントが本明細書で記載の単位を含むポリアセタールである場合、サーモゲルグラフトコポリマーを含むグラフトコポリマー系はまったく記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明の第1の実施形態は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールコポリマーを含むブロックコポリマー送達媒体を提供する。ブロックコポリマー送達媒体は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールジブロックコポリマー、およびポリエチレングリコール−ポリアセタール−ポリエチレングリコールまたはポリアセタール−ポリエチレングリコール−ポリアセタールのトリブロックコポリマーであってよい。本発明に適したポリエチレングリコール−ポリアセタールブロックコポリマーは以下の式I、式IIおよび式IIIによって表わされる。本明細書で言及するように、本発明のブロックコポリマーはサーモゲルブロックコポリマーであってよく、このブロックコポリマーは薬物送達系のためのミセルやマトリックスとして、また当業界で周知の組織工学用途に有用である。特定の実施形態では、ブロックコポリマーはサーモゲルブロックコポリマーである。
【0017】
本発明の他の実施形態は、活性剤を局所制御送達するための制御放出サーモゲルブロックコポリマー医薬組成物を提供する。その組成物は、活性剤とサーモゲルブロックコポリマーの送達媒体を含む。
【0018】
本発明の他の実施形態は、局所的に作用する活性剤、特に局所麻酔剤および制吐剤の制御送達のためのサーモゲルブロックコポリマーの注射可能または注入可能な組成物を提供する。本発明のコポリマーと一緒に用いることができる他の活性剤には、生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチドおよび血管新生阻害剤が含まれる。
【0019】
第1の態様では、本発明は、
(a)式Iまたは式IIのトリブロックコポリマー:
【0020】
【化51】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0021】
【化52】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【0022】
【化53】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0023】
【化54】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【0024】
【化55】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである]
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である}
を含むサーモゲルブロックコポリマー送達媒体を提供する。
【0025】
一変形形態では、RがHであるコポリマーを提供する。他の変形形態では、Rはメチルである。上記の他の変形形態では、mは50〜250の整数である。他の変形形態では、Rはメチルまたはエチルであり、RはHである。他の特定の一変形形態では、DはRであり、Rは1,4−シクロヘキサンジメチレンである。他の変形形態では、コポリマーはD’がRである少なくとも0.1モル%の単位を含む。一変形形態では、コポリマーはD’がRである約0.5〜50モル%の単位を含む。他の変形形態では、コポリマーはD’がRである約1〜30モル%の単位を含む。他の特定の一変形形態では、xは1〜2である。他の変形形態では、Rは水素またはメチルである。
【0026】
上記コポリマーの他の変形形態では、Rは−CHCHOCHCHOCHCH−である。上記の他の変形形態では、D’はRであり、Rは1,4−シクロヘキサンジメチレンまたは1,10−デカニレンであり、mは50〜250の整数である。
【0027】
他の態様では、式Iのコポリマーを調製するための方法であって、
【0028】
【化56】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0029】
【化57】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【0030】
【化58】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0031】
【化59】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【0032】
【化60】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式Iaのジビニルエーテル
【0033】
【化61−1】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHもしくはHO−R−OHと定義される式HO−D’−OHのジオールまたはその混合物と反応させて、式Ibの化合物
【0034】
【化61−2】

(式中、D、D’、Rおよびuは上記定義の通りである)
を形成させ、
式Ibの化合物を式Icの化合物
【0035】
【化62】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)
と反応させることを含む方法を提供する。
【0036】
一態様では、
(a)式Iaのジビニルエーテルと、
【0037】
【化63】

[式中、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0038】
【化64】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【0039】
【化65】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0040】
【化66】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【0041】
【化67】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
(b)式HO−D’−OHのポリオールまたはポリオールの混合物(D’は上記定義の通りである)と、(c)式Icの化合物
【0042】
【化68】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)と
の反応の生成物であるコポリマーを提供する。一変形形態では、ポリオールの少なくとも1つは、2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである。
【0043】
一態様では、上記コポリマーを含むマトリックス中に分散された活性剤を含む活性剤の持続放出のための組成物を提供する。他の態様では、式IIのコポリマーを調製するための方法であって、
【0044】
【化69】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
各Rは独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0045】
【化70】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【0046】
【化71】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0047】
【化72】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【0048】
【化73】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式IIaのジビニルエーテル
【0049】
【化74】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、式HO−(CH−CHR)−OH(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである)のジオールと反応させて式IIbの化合物
【0050】
【化75】

(式中、D、R、R、Rおよびmは上記定義の通りである)
を形成し、続いて式Iaのジビニルエーテル
【0051】
【化76】

(式中、RまたはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
および、式IIcの化合物
【0052】
【化77】

(式中、D’は上記定義の通りである)
と反応させることを含む方法を提供する。
【0053】
他の態様では、
式Iaのジビニルエーテルと、
【0054】
【化78】

[式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、上記ジビニルエーテルは、合計ポリオール含量の少なくとも0.1モル%が式HO−D−OHのジオールであるポリオールまたはポリオールの混合物から誘導され、
但し、
は、
【0055】
【化79】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【0056】
【化80】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0057】
【化81】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【0058】
【化82】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式HO−(CH−(CH−CHR)−OHのジオール(zは0、1、2、3または4であり、RはHまたはC〜Cアルキルである)と、式IIcの化合物
【0059】
【化83】

(式中、式IIcは合計ポリオール含量の少なくとも0.1モル%が式IIcのジオールであるジオール、ポリオールまたはポリオールの混合物でありD’は上記定義の通りである)と
の反応の生成物であるコポリマーを提供する。上記コポリマーの1つの変形形態では、ポリオールの少なくとも1つは2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである。
【0060】
他の態様では、式IIIのジブロックコポリマーを提供する。
【0061】
【化84】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0062】
【化85】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【0063】
【化86】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0064】
【化87】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【0065】
【化88】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
コポリマーの一変形形態では、RはHである。他の変形形態では、mは50〜250の整数である。他の変形形態では、Rはメチルまたはエチルであり、RはHである。他の変形形態では、Rはメチルである。さらに他の変形形態では、DはRであり、Rは1,4−シクロヘキサンジメチレンである。コポリマーの他の変形形態では、D’がRである少なくとも0.1モル%の単位である。さらに他の変形形態では、コポリマーはD’がRである約0.5〜50モル%の単位を含む。他の変形形態では、コポリマーはD’がRである約1〜30モル%の単位を含む。上記の一変形形態では、D’はRであり、xは1〜2である。他の変形形態では、Rは水素またはメチルである。他の変形形態では、Rは−CHCHOCHCHOCHCH−である。上記コポリマーの一変形形態では、D’はRであり、Rは1,4−シクロヘキサンジメチレンまたは1,10−デカニレンであり、mは50〜250の整数である。
【0066】
他の態様では、式IIIのコポリマーを調製するための方法であって、
【0067】
【化89】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0068】
【化90】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【0069】
【化91】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0070】
【化92】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【0071】
【化93】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式Iaのジビニルエーテル
【0072】
【化94】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHもしくはHO−R−OHと定義される式HO−D’−OHのジオールまたはその混合物と反応させて、式IIIbの化合物
【0073】
【化95】

(式中、D、D’、R、Rおよびuは上記定義の通りである)
を形成させ、式IIIbの化合物を式IIIcの化合物
【0074】
【化96】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)
と反応させる方法を提供する。
【0075】
さらに他の態様では、
(a)式Iaのジビニルエーテルと、
【0076】
【化97】

[式中、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0077】
【化98】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【0078】
【化99】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【0079】
【化100】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【0080】
【化101】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、Rは(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
(b)式HO−D’−OHのポリオールまたはポリオールの混合物(式中、D’は上記定義の通りである)と、(c)式IIIcの化合物
【0081】
【化102】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)と
の反応の生成物であるコポリマーを提供する。一変形形態では、ポリオールの少なくとも1つは2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである。
【0082】
他の態様では、上記コポリマーを含む整形外科的な修復または組織再生のためのデバイスを提供する。上記医薬組成物の他の変形形態では、活性剤は血管新生阻害剤である。他の変形形態では、活性剤は癌化学治療薬である。他の変形形態では、活性剤は抗生物質であるかまたは活性剤は抗炎症薬である。
【0083】
他の態様では、上記医薬組成物の形態の治療有効量の活性剤を局所的に投与することを含む、活性剤の制御放出局所投与によって治療可能な病状を治療する方法を提供する。さらに他の態様では、哺乳動物の部位において局所疼痛を防止または軽減する方法てあって、薬剤として許容される上記の組成物の形態の治療有効量の局所麻酔剤をその部位に投与することを含む方法を提供する。
【0084】
さらに他の態様では、上記コポリマーを含む薬物担体との共有結合によるものではなく、その担体中に物理的に取り込まれた活性剤を含む、疎水性または水不溶性の活性剤の送達のためのミセル医薬組成物を提供する。一変形形態では、活性剤は抗癌剤である。
【0085】
さらに他の態様では、上記コポリマーを含むマトリックス中に分散された活性剤を含む活性剤の持続放出のための組成物を提供する。さらに他の態様では、上記式のコポリマーを含む整形外科的な修復または組織再生のためのデバイスを提供する。上記のさらに他の変形形態では、活性剤は治療用ポリペプチドである。さらに他の変形形態では、活性剤は、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカインおよびテトラカインからなる群から選択される局所麻酔剤である。一変形形態では、医薬組成物はグルココルチコステロイドをさらに含む。他の変形形態では、活性剤は、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドンおよびスコポラミンからなる群から選択される制吐剤である。さらに他の変形形態では、活性剤は血管新生阻害剤である。一変形形態では、活性剤は癌化学治療薬である。さらに他の変形形態では、活性剤は抗生物質であるか、または活性剤は抗炎症薬である。
【0086】
他の態様では、上記医薬組成物の形態の治療有効量の活性剤を局所的に投与することを含む、活性剤の制御放出局所投与によって治療可能な病状の治療方法を提供する。他の態様では、哺乳動物の部位において局所疼痛を防止または軽減する方法であって、薬剤として許容される上記組成物の形態の治療有効量の局所麻酔剤をその部位に投与することを含む方法を提供する。
【0087】
一態様では、上記式IIのコポリマーを含む、薬物担体との共有結合によるものではなくその担体中に物理的に取り込まれた活性剤を含む、疎水性または水不溶性の活性剤の送達のためのミセル医薬組成物を提供する。一変形形態では、活性剤は抗癌剤である。他の態様では、式IIのコポリマーを含むマトリックス中に分散された活性剤を含む活性剤の持続放出のための組成物を提供する。他の態様では、(a)活性剤と(b)媒体としての式IIIのコポリマーを含む医薬組成物を提供する。
【0088】
他の態様では、本発明は、(a)活性剤と(b)送達媒体としての上記コポリマー送達媒体を含む制御放出コポリマー医薬組成物を提供する。上記組成物の一変形形態では、活性剤の画分は組成物の1%重量〜60重量%である。他の変形形態では、活性剤の画分は組成物の5%重量〜30重量%である。さらに他の変形形態では、活性剤は、抗感染薬、消毒剤、ステロイド、治療用ポリペプチド、抗炎症薬、癌化学療法薬、麻酔剤、制吐剤、局所麻酔剤、血管新生阻害剤、ワクチン、抗原、RNA、DNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドならびにこれらの組合せから選択される。1つの特定の態様では、活性剤は治療用途に用いられるRNAまたはDNAである。併用して用いることができるそうした活性剤の非排他的な例には、化学療法薬や制吐剤が含まれる。
【0089】
他の態様では、上記のそれぞれによる医薬組成物であって、その活性剤が1種または複数の栄養補給剤または健康補助食品を任意選択でさらに含む組成物を提供する。一変形形態では、活性剤は1種または複数の栄養補給剤または健康補助食品である、上記のそれぞれによる医薬組成物である。上記医薬組成物の他の変形形態では、栄養補給剤または健康補助食品はビタミンである。
【0090】
上記の栄養補給剤または健康補助食品組成物は、特定の眼球の疾患を有するヒトにおける視力喪失の防止、安定化、逆転および/または治療によって、網膜の健全性を強化または促進する、ヒトまたは他の動物への投与のために用いることができる。その組成物は、白内障の進行を防止、安定化、逆転および/または治療するために投与することもできる。上記したこの栄養補給剤または健康補助食品組成物は、視力喪失を低減させるのに有効な量の特異的抗酸化物質および高用量亜鉛を含むことができる。上記組成物の使用により、若年齢関連黄斑変性症を有するヒトの後期または高齢関連の黄斑変性症の進行のリスクを低減させることによって、視力喪失を低減させる。上記組成物はまた、白内障の進行に伴う視力喪失のリスクを低減させることができる。上記組成物のための用途は、米国特許第6,660,297号に開示されている。その開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0091】
定義
本明細書において別段の定義のない限り、すべての技術的および科学的用語は本明細書では、合成化学、薬理学、美容科学および医学の当業者によって一般に用いられ理解されている従来の定義に従って用いるものとする。
【0092】
「活性剤」は、有益または有用な結果をもたらす任意の化合物または化合物の混合物を含む。活性剤は、媒体、担体、希釈剤、滑剤、結合剤および他の処方助剤などの成分、ならびにカプセル化成分または保護成分と区別されるものである。活性剤およびその薬剤として許容される塩の例は、医薬品、農薬または化粧品用の薬剤である。適切な医薬品には、局所または病巣内施用(例えば、擦りむいた皮膚、裂傷、刺創等、ならびに外科的切開部への施用を含む)、あるいは皮下、皮内、筋肉内、眼球内または関節内注入などの注入によって、対象に投与することができる局所的または全身的に作用する薬剤用活性剤が含まれる。こうした薬剤の例には、これらに限定されないが、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス剤、殺菌剤、疥癬虫殺虫剤またはシラミ撲滅剤を含む)、消毒剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェナイド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルゾールなど)、ステロイド(例えば、エストロゲン、プロゲスティン、アンドロゲン、副腎皮質ステロイドなど)、治療用ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポエチン、骨の形態形成タンパク質などの形態形成タンパク質など)、鎮痛薬および抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラック、COX−1阻害剤、COX−2阻害剤など)、癌化学療法薬(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ストレプトゾシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェンなど)、麻酔剤(例えば、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、局所麻酔剤(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどのアミド型またはアニリド型の局所麻酔剤)、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミンなどの制吐剤、血管新生阻害剤(例えば、コンブレスタチン(combrestatin)、コントルトロスタチン(contortrostatin)、抗VEGFなど)、多糖類、ワクチン、抗原、RNA、DNAおよび他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。本発明は、収斂剤、発汗抑制剤、刺激剤、発赤剤、発疱剤、硬化薬、焼灼剤、腐食剤、角質溶解薬、日焼け止め剤、および色素沈着防止剤(hypopigmenting)や、かゆみ止め剤を含む様々な皮膚病薬などの他の局所作用性活性剤にも適用することができる。「活性剤」という用語はさらに、殺菌剤、殺虫剤および除草剤などの殺生物剤、植物成長の促進剤もしくは阻害剤、保存剤、消毒剤、空気清浄剤ならびに栄養物を含む。活性剤のプロドラッグも本発明の範囲に含まれる。
【0093】
「アルキル」は、1個から指定された数までの炭素原子を有する直鎖の飽和ヒドロカルビル、または3個から指定された数までの炭素原子を有する分鎖または環状飽和ヒドロカルビル(例えば、C1〜4アルキル)を表す。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、t−ブチル、シクロプロピルメチルなどが含まれる。
【0094】
「アルキレン」は、1個から指定された数までの炭素原子を有する直鎖もしくは分鎖の二価、三価または四価アルキレン基、あるいは3個から指定された数までの炭素原子を有する分鎖または環状飽和シクロアルキレニル(例えば、C1〜4アルキレニルまたはC3〜7シクロアルキレニル)を表し、それらには例えば、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、1,6−ヘキシレン、1,2,5−ヘキシレン、1,3,6−ヘキシレン、1,7−ヘプチレンなどが含まれる。
【0095】
「生体内分解性の」、「生分解性の」および「生体内分解性」は、最も顕著には生理学的pHおよび温度での生体の作用を含む生物学的環境の作用による、ポリアセタールの分解、解体または消化を指す。本発明のポリエチレングリコール−ポリアセタールの生体内分解についての主要な機序は、ポリアセタールの単位間および単位内の結合の加水分解である。コポリマーの生分解によって非毒性副生成物が生成する。
【0096】
「ブロックコポリマー」は、他のモノマー(例えば、「b」)のブロックと結合した1つのモノマー(例えば、「a」)のブロックを含み、−a−a−a−a−b−b−b−b−bなどのブロックコポリマーを形成するポリマーである。ブロックコポリマーは、a−b、a−b−a、b−a−bなどを含む様々な異なる組合せを含むことができる。本明細書で用いる語句のポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーには上記組合せのすべてが含まれる。
【0097】
「含む(Comprising)」は、その用語によって挙げられた要素を含有する(containing)、包含する(embracing)、カバーする(covering)または含む(including)ことを意味すると解釈される包括的な用語であるが、言及されていない他の要素も排除しない。
【0098】
「制御放出」、「持続放出」および類似の用語は、活性剤が、施用または注入によって直ちに分散するのではなく、ある期間にわたって確認できかつ制御できる速度で送達媒体から放出させる場合に行われる活性剤送達の方式を表すのに用いられる。制御放出または持続放出は、数時間、数日間または数か月間に及んでもよく、多くの因子の関数として変化させることができる。本発明の医薬組成物のためには、放出速度は、選択された賦形剤の種類および組成物中の賦形剤の濃度に依存することになる。放出速度の他の決定因子は、ポリアセタールの単位間または単位内の結合の加水分解速度である。加水分解速度は、ポリアセタールの組成、ならびにポリアセタールの加水分解可能な結合の数によって制御することができる。本医薬組成物からの活性剤の放出速度を決定する他の因子には、粒子サイズ、活性剤の溶解度、媒体の酸性度(マトリックスの内部かまたは外部のいずれかの)ならびにマトリックス中の活性剤の物理的および化学的特性が含まれる。
【0099】
「送達媒体」は、活性剤を当該部位へ輸送すること、封鎖または他の手段によって活性剤へのアクセス速度または活性剤の放出速度を制御すること、および、活性を必要とする領域への活性剤の施用を容易にすることを含む機能を有する組成物を指す。
【0100】
「ゲル」は、コポリマー溶液または薬物送達液体の温度をブロックコポリマーのゲル化温度までかまたはそれを超えて上昇させると発生する半固体相を指す。
【0101】
「ゲル化温度」は、生分解性ブロックコポリマーが逆サーマルゲル化を受ける温度、すなわち、その温度より下ではブロックコポリマーは水に可溶性であり、その温度を超えるとブロックコポリマーは相転移を受けて粘度が増大するかまたは半固体ゲルを形成する温度を指す。ゲル化温度は下限臨界溶液温度(LCST)としても知られている。
【0102】
「マトリックス」は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールが浸食されるかまたは分解するまで活性剤の放出を阻止する仕方で活性剤を本質的に保持する、ポリエチレングリコール−ポリアセタールまたは送達媒体の物理的構造体を指す。
【0103】
「ポリエチレングリコール−ポリアセタール相溶性」は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールと混合した場合、単相を形成し、ポリエチレングリコール−ポリアセタールに物理的または化学的変化を何らもたらさない賦形剤の特性を指す。
【0104】
「ポリマー溶液」、「水溶液」などは、そうした溶液中に含まれる生分解性ブロックコポリマーの関連で用いられる場合、その中に機能的濃度で溶解されたブロックコポリマーを有し、かつブロックコポリマーのゲル化温度より低い温度に保持された、水をベースとした溶液を意味するものとする。
【0105】
「プロドラッグ」は、所望の薬理学的効果を得るために、対象により投与後にインビボで、例えば生物学的流体または酵素によって薬理学的に活性かまたはより活性な形態の化合物に変化するか代謝されるはずである、薬理学的に不活性かまたは活性が小さい形態の化合物を指す。化合物のプロドラッグは、化合物中に存在する1つまたは複数の官能基を、その改変によって、インビボで親化合物が放出する形で切断されることによって調製することができる。プロドラッグには、化合物中のヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシまたはカルボニル基が、インビボで切断されて遊離したヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシまたはカルボニル基をそれぞれ再生できる任意の基と結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、エステル(例えば、酢酸エステル、ジアルキルアミノ酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステルおよび安息香酸エステル誘導体)およびヒドロキシ官能基のカーバメート(例えば、N,N−ジメチルカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、N−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基およびアミノ官能基のエナミノン、オキシム、アセタール、ケタール、化合物中のケトンおよびアルデヒド官能基のエノールエステルなどが含まれる。
【0106】
「逆サーマルゲル化」は、溶液の温度がコポリマーのゲル化温度を超えて上昇するのに従って、ブロックコポリマーの溶液の粘度が増大し、ある環境では、半固体ゲルに転換する現象である。粘度の増大は自然発生的であってよい。本発明のためには、「ゲル」という用語は、半固体ゲル状態およびゲル化温度超で存在する高粘度状態の両方を含む。ゲル化温度より低く冷却した場合、ゲルは逆転してより低い粘度の溶液を再形成する。より低い粘度の溶液へのこの逆転は自然発生的であってよい。ゾル/ゲル推移は何らポリマー系の化学組成の変化を伴わないので、溶液とゲルの間のこの循環は際限なく反復することができる。ゲルを形成するすべての相互作用は物理的相互作用であり、共有結合の生成や断裂を伴わない。
【0107】
「封鎖」は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールマトリックスの内部空間内に活性剤を閉じ込めるかまたは保持することである。マトリックス内への活性剤の封鎖は、薬剤の毒作用を制限し、制御した仕方で薬剤の作用時間を延長し、生物体内の正確に規定された位置に薬剤を放出できるようにするか、または、環境の作用に対して不安定な薬剤を保護することができる。
【0108】
本明細書で定義する「サーモゲル」は、約5〜25℃で水の中で溶液として存在するが、そのサーモゲルの温度がおよそ体温、ヒトの場合一般に約37℃まで上昇させると、コポリマーが水にほぼ不溶である材料を形成するブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーである。サーモゲルの組成に応じて、コポリマーの転換は自然発生的に起こり、それは約1秒未満、または約1分以内で起こる。サーモゲルの組成に応じて、サーモゲルは、ほぼ透明な溶液として存在することができる。
【0109】
サーモゲルの1つの具体的な利点は、水溶性の形態で、サーモゲルは、投与の際の不快さを著しく低減させる小口径の針を用いて投与することができる点である。さらに、小口径の針を用いてサーモゲルを投与できることは、サーモゲルを、大口径の針の使用、または固体デバイスの埋め込みがより複雑で面倒であり埋め込みまたは操作を困難なものにし、不必要な組織の損傷等をもたらす可能性のある、眼球への施用に特に有利なものとしている。
【0110】
「治療有効量」は、疾患を治療するために動物に投与した場合にその疾患を治療するのに十分な効果をもたらす量を意味する。
【0111】
疾患の「治療すること(Treating)」または「治療(treatment)」は、疾患にかかりやすいが、疾患の症状にまだかかっていないかまたは症状を示していない動物において疾患が発現するのを防止すること(予防的治療)、疾患を阻止すること(その進行を遅延させるかまたは停止させること)、疾患の症状または副作用に寛解をもたらすこと(待機的治療を含む)、および疾患を緩和すること(疾患の後退を引き起こす)を含む。本発明のためには、「疾患」は疼痛を含む。
【0112】
「単位」は、ポリエチレングリコール−ポリアセタールまたはポリアセタール−ポリエチレングリコールジブロック、ポリエチレングリコール−ポリアセタール−ポリエチレングリコールまたはポリアセタール−ポリエチレングリコール、ポリアセタールトリブロック鎖の個々のセグメントを指し、エチレングリコール分子またはその誘導体の残基、ジビニルエーテルの残基およびポリオールの残基を含む。
【0113】
「α−ヒドロキシ酸含有」単位は、DまたはD’がRである、すなわち、ポリオールがα−ヒドロキシ酸またはその環状ジエステルと式HO−R−OHのジオールから調製される単位を表す。α−ヒドロキシ酸含有単位であるポリアセタール−ポリエチレングリコールジブロックまたはトリブロックコポリマーの画分は、ポリアセタール−ポリエチレングリコールの加水分解(または生体内分解)速度、したがって活性剤の放出速度に影響を及ぼす。
【0114】
「アミン含有」単位は、ジオールが、その中に組み込まれた少なくとも1つのアミン官能基を含み、DまたはD’がRである2種類の単位のうちの1つである単位を指す。アミン含有単位であるポリアセタールの画分は、それを含むポリアセタールまたはグラフトコポリマーの加水分解(または生体内分解)速度のpH感受性、したがって活性剤の放出速度に影響を及ぼす。個々の「アミン含有」単位に関しては、式HO−R−OHのジオールは、1個もしくは2個のアミン基が介在する2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個の炭素原子の脂肪族ジオール、およびヒドロキシ基間に4〜20個、好ましくは4〜10個の炭素原子または窒素原子を有するジ(ヒドロキシ)−またはビス(ヒドロキシアルキル)−環状アミンを含む。そのアミン基は第二アミン基、または好ましくは第三アミン基である。
【0115】
「ハード」および「ソフト」単位は、全体としてのポリアセタールに対するその画分が、それを含むポリアセタールまたはブロックコポリマーの機械物理的状態を決定するポリアセタールの個別の単位を指す。「ハード」単位はDまたはD’がRである単位であり、「ソフト」単位はDまたはD’がRである単位である。
【0116】
「水素結合」単位は、ジオールがアミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含み、DまたはD’がRである2つの種類の単位のうちの1つである単位を指す。水素結合単位であるポリアセタールの画分は、それを含むポリアセタールまたはブロックコポリマーの機械物理的状態を決定する。
【0117】
「媒体」および「担体」は、治療または他の生物学的効果以外の理由のために、医薬品または化粧品用調製物などの組成物中に含まれる成分を指す。媒体および担体によって供される機能は、活性剤を当該部位へ輸送すること、封鎖または他の手段によって活性剤へのアクセス速度または活性剤の放出速度を制御すること、および活性を必要とする領域への活性剤の施用を容易にすることを含む。媒体および担体の例には、微小粒子、ミクロスフェア、ロッドおよびウェーハなどの固体;ならびに、注射器もしくは同様のものによるか、スパチュラなどの道具で薄く塗ることによって分注できる半固体が含まれる。
【0118】
温度、時間、サイズなどの提供範囲は、別段の指定のない限り、おおよそのものであると理解されたい。
ポリアセタール−ポリエチレングリコール
ポリアセタール−ポリエチレングリコールのジブロックおよびトリブロックコポリマーは、上記したような式I、式IIまたは式IIIを有する。一態様では、ジブロックおよびトリブロックコポリマーはサーモゲルジブロックおよびトリブロックコポリマーである。
【0119】
一態様では、式Iで示すような本発明で有用なポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーの構造は、ポリエチレングリコールのブロックとポリアセタールブロックを形成するジビニルエーテル残基を含むブロックのものであり、そのジビニルエーテル残基の各隣接ペアは1つのポリオール、好ましくはジオールの残基によって隔てられており、ジビニルエーテル残基ブロックはポリエチレングリコールのブロックに連結されている。他の態様では、式IIに示す本発明に有用なポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーの構造は、ポリエチレングリコールのブロックと連結しているジビニルエーテル残基のブロックとジビニルエーテル残基のブロックであり、そのジビニルエーテル残基の各隣接ペアは1つのポリオール、好ましくはジオールの残基によって隔てられている。他の態様では、式IIIに示す本発明に有用なポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーの構造は、ポリエチレングリコールのブロックとジビニルエーテル残基のブロックのものであり、そのジビニルエーテル残基の各隣接ペアは1つのポリオール、好ましくはジオールの残基によって隔てられている。
【0120】
水の存在下では、α−ヒドロキシ酸含有単位を含むポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは37℃の体温、生理学的pHで加水分解されて対応するヒドロキシ酸を生成する。次いで、これらのヒドロキシ酸は酸性触媒として作用して、外から酸を加えなくても、ポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーの加水分解速度を制御する。ポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーを、活性剤を捕捉する送達媒体またはマトリックスとして用いる場合、ポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーの加水分解によって、活性剤の放出が引き起こされる。
【0121】
より高いモル百分率の「α−ヒドロキシ酸含有」単位を有するポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは、より高い生体内分解性を有することになる。好ましいポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは、「α−ヒドロキシ酸含有」単位のモル百分率が少なくとも0.01モル%、約0.01〜約50モル%、より好ましくは約0.05〜約30モル%、例えば約0.1〜約25モル%、特に約1〜約20モル%の範囲のものである。所望の組成物を得るのに適した「α−ヒドロキシ酸含有」単位のモル百分率は処方に応じて変わる。
【0122】
本発明の化合物において示される式「−RCH−CH−O−」または「−OCH−CHR−」の置換エチレングリコール単位またはその非対称誘導体はどちらも本発明の範囲内である。本発明の化合物はR基の性質、反応物およびポリマー調製のための反応条件に応じて、種々の異なる割合の2つの単位を含むか、一方の単位を他方の単位より圧倒的に多く含むか、あるいはポリマー内で統計的に分布した単位を含むことができる。本発明の式中の上記2つの単位の一方または他方を示すことによって、本発明の目的のために、化合物またはポリマーが2つの単位のうちの1つだけを含むか、異なる割合の2つの単位を含むか、統計的に分布した2つの単位を含むか、あるいは、一方の単位を他方の単位より圧倒的に多く含むことができることが理解されることになる。
【0123】
好ましいポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは以下のものである。すなわち、
ポリアセタール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーは1,000〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,000〜8,000の分子量を有し、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHであり、
はメチルであり、
Rは水素であり、
はC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【0124】
【化103】

(式中、xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【0125】
【化104】

から選択され、但し、sは0〜10、特に1〜4の整数であり、tは2〜50、特に2〜10の整数である)
であり、
10およびR11はHであり、
は、1つまたは2つのアミン、アミド、イミド、尿素およびウレタン基を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは20〜10個の炭素原子のジオールの残基である。
【0126】
DおよびD’がRである単位の割合は、0.01〜50モル%、好ましくは0.05〜30モル%、より好ましくは0.1〜25モル%であり、DおよびD’がRである単位の割合は、20%未満、好ましくは10%未満、特に5%未満であり、DおよびD’がRである単位の割合は、20%未満、好ましくは10%未満、特に5%未満であることが好ましい。
【0127】
これらの好ましいものいずれかが存在すると、好ましいもの含まれていない同じポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーより好ましいポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーがもたらされるが、その好ましいものは一般に独立的なものであり、好ましいものがより数多く含まれているポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは、好ましいものがより少なく含まれているものより好ましいポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーを一般にもたらす。
ポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーの調製
ポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーは、当業界で周知の方法、例えばContemporary Polymer Chemistry, H. R. Allcock and F.W. Lampe, Prentice Hall, Inc. Englewood Cliffs, New Jersey 07632、1981年に記載されているような方法により調製することができる。
【0128】
式Iのポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーは、式Iaのジビニルエーテルと、
【0129】
【化105】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHもしくはHO−R−OHと定義される式HO−D’−OHのジオールまたはその混合物とを反応させて、式Ibの化合物
【0130】
【化106】

(式中、D、D’、Rおよびuは上記定義の通りである)
を形成させて調製することができる。次いで式Ibのジビニルエーテル化合物を式Icの化合物
【0131】
【化107】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは5〜500の整数である)
で処理して所望の生成物を得る。
【0132】
本発明の1つの特定の態様では、式Iaのジビニルエーテルの特定の化合物は市販されているか、また当業界で知られている適切な任意の手段で調製することができる。例えば、可変であるDの性質に応じて、市販のアミノビニルエーテルをメチルエステルと混合して式Iaのジビニルエーテルを提供することができる。Brocchiniらの米国特許出願第2002/0082362A1号を参照されたい。同様に、ヒドロキシビニルエーテル化合物は市販されており、その主鎖にエステル部分を有するポリアセタールポリマーの作製のために用いることができる。メチルエステルは、例えばマロン酸エステルなどのエステル、イミノ二酢酸エステルなどのイミンおよび当業界で知られている他の化合物を含むことができる。一変形形態では、対称性のアキラルメチルエステルを、合成前駆体として用いることができる。
【0133】
ジビニルエーテルと式HO−D’−OHの化合物および式Icの化合物との重合反応は無溶媒系で実施することができるが、反応は、脂肪族または芳香族炭化水素から選択される有機溶媒の存在下で実施することが好ましい。その溶媒は、任意選択でハロゲン化されていてよい、エーテル(環状エーテルを含む)、ジアルキルスルホキシドおよびアルコール(好ましくは立体的なヒンダードアルコール、例えば第二または第三アルコール)またはこの溶媒の混合物であってよい。好ましい溶媒にはテトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタンおよびトルエンが含まれる。特に好ましい溶媒はトルエンである。
【0134】
ジオールHO−D’−OHと式Iaの化合物の重合は通常、酸触媒反応用の触媒、例えば塩酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、n−酪酸、トリフルオロ酢酸またはシュウ酸などの適切な触媒の存在下で実施する。好ましい触媒はp−トルエンスルホン酸(p−TSA)である。同様に、式Ibのジビニルエーテルと式Icの化合物の重合も、上記の同様の条件下で実施して、所望の式Iのポリアセタール−ポリエチレングリコールブロックコポリマーを得ることができる。
【0135】
重合は、−10℃〜200℃、好ましくは20℃〜120℃、最も好ましくは約25℃〜60℃の温度で実施することができる。
【0136】
本発明の一態様では、ポリアセタール−ポリエチレングリコールサーモゲルブロックコポリマーは、式HO−D’−OHまたは式HO−D−OHの2つの種類のジオールの混合物を用いて調製することができる。その混合物は、ポリアセタール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーの所望の特徴に基づいて選択した割合で形成させる。DまたはD’がRであるジオールの使用量を増加させるとポリアセタール−ポリエチレングリコールの生体内分解性を増大させ、Rがポリエチレンオキシド部分またはアルカンであるジオールを用いるとポリマーの柔軟性を増大させ、DまたはD’がRであるジオールの使用量を増加させるとポリアセタール−ポリエチレングリコールの硬さを増大させ(したがって、一般に望ましくないが、特別な環境では有用なことがある)、DまたはD’がRであるジオールを用いると、特にこれらのジオールが低分子量ポリエチレングリコールまたは脂肪族ジオールである場合、ポリアセタール−ポリエチレングリコールの柔軟性を増大させる。ポリアセタール−ポリエチレングリコールの隣接する鎖間の水素結合のため、DまたはD’がRであるジオールを使用すると、やはり一般にポリアセタール−ポリエチレングリコールの硬さを増大させる。その使用は、用いる他のジオールによって、望ましい場合も望ましくない場合もある。
【0137】
式HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHおよびHO−R−OHのジオールは、例えば米国特許第4,549,010号および同第5,968,543号に記載されているような当業界で周知の方法によって調製される。これらのジオールのいくつかは市販されている。ポリアセタールまたはポリアセタール−ポリエチレングリコール部分を含む式HO−R−OHのジオールは、式HO−R−OHのジオールを、0.5〜10モル当量のラクチドまたはグリコリドなどのα−ヒドロキシ酸の環状ジエステルと反応させ、その反応を100〜200℃で約12時間〜約48時間進行させることによって調製することができる。この反応に特別の溶媒は必要としないが、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピロリドン、テトラヒドロフランおよびメチルブチルエーテルなどの有機溶媒を用いることができる。
【0138】
ジオール、特に式HO−R−OHのジオールの調製は概略HellerらのJ. Polymer Sci, Polymer Letters Ed. 18:293〜297頁(1980年)に開示されており、適切なジビニルエーテルと過剰の適切なジオールとの反応によって調製する。式HO−R−OHのジオールは、RがR’CONR’’R’(アミド)、R’CONR’’COR’(イミド)、R’NR’’CONR’’R’(尿素)、およびR’OCONR’’R’(ウレタン)であるジオールを含む(但し、各R’は独立に、脂肪族、芳香族または芳香族/脂肪族の直鎖もしくは分鎖ヒドロカルビル、特に2〜22個の炭素原子、特に2〜10個の炭素原子、特に2〜5個の炭素原子の直鎖もしくは分鎖アルキルであり、R’’は水素またはC1〜6アルキル、特に水素またはメチル、特に水素である)。
【0139】
式HO−R−OHのいくつかの代表的ジオールには、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−テレフタルアミド、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ピロメリット酸ジイミド、1,1−メチレンジ(p−フェニレン)ビス−[3−(2−ヒドロキシエチル)尿素]、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)オキサミド、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素、3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、4−ヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)ブチルアミドおよびビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジカルバメートが含まれる。これらのジオールは報告されている合成において当業界で周知であり、市販されている。式HO−(CH−NHCO−(CH−OH(nは2〜6の整数であり、mは2〜5の整数である)の代表的なジオールは、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノールまたは6−アミノヘキサノールとβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンまたはε−カプロラクトンとの反応によって作製される。式HO−(CH−NHCOO−(CH−OHの代表的なジオール(nおよびmはそれぞれ2〜6の整数である)は、すぐ上で述べた同じアミノアルコールと、エチレンカーボネートなどの次式の環状カーボネートとの反応によって作製される。
【0140】
【化108】

式HO−A−NHCO−B−CONH−A−OHのビス−アミドジオールは、任意選択で活性化された形態のジアシルジハライドなどの二塩基酸と2当量の−ヒドロキシ−アミン(またはアミノアルコール)の反応によって調製される。式HO−R−OHのジオールの他の調製方法は当業界で周知である。
【0141】
生成したら、式HO−R−OHのジオールと式HO−R−OH、HO−R−OHおよびHO−R−OHのジオールを所望の割合で、適切な溶媒中、周囲温度で、1:1未満(例えば、0.5:1〜0.9:1)より若干小さいジビニルエーテルの合計モル数とジオールの合計モル数との比で、式Iaのジビニルエーテルと混合する。ジビニルエーテルとジオールの縮合反応は、例えば米国特許第4,304,767号、同第4,549,010号および同第5,968,543号に記載されていて、当業者に周知であり、また反応物の構造自体からも容易に明らかな条件下で実施する。適切な溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ピロリドン、テトラヒドロフランおよびメチルブチルエーテルなどの非プロトン性溶媒である。この反応には触媒を必要とする。適切な触媒は、ピリジン中のヨウ素、p−トルエンスルホン酸;サリチル酸、ルイス酸(三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素エテレート、三フッ化ホウ素エテレート、オキシ塩化スズ(II)、オキシ塩化リン、塩化亜鉛、五塩化リン、五フッ化アンチモン、オクチル酸スズ、塩化第二スズ、ジエチル亜鉛およびその混合物など);およびブレンステッド酸触媒(ポリリン酸、架橋ポリスチレンスルホン酸、酸性シリカゲルおよびその混合物など)である。用いられる触媒の典型的な量はジビニルエーテルに対して約0.2重量%である。ジビニルエーテルに対して、より少ないかまたは多い量、例えば0.005重量%〜約2.0重量%で用いることができる。反応が完了したら、反応を仕上げ、生成物を当業界で周知の標準的な方法を用いて単離する。例えば、反応混合物を冷却し、真空下での回転式蒸発法によって濃縮する。濃縮混合物は真空下、高温でさらに乾燥することができる。
【0142】
ポリアセタール−ポリエチレングリコールは、「連鎖停止剤」(ポリアセタール鎖の生成を停止させる試薬)を存在させること以外は同様の反応条件下での、ジビニルエーテルと選択されたジオールの反応によって調製することもできる。適切な連鎖停止剤はC5〜20アルカノール、特にC10〜20アルカノールである。連鎖停止剤は好ましくはジケテンアセタールに対して1〜20モル%存在する。このように調製されたポリアセタール−ポリエチレングリコールは、ジビニルエーテルとジオールだけとの反応で調製されたものより小さい分子量分散を有する低分子量を有する。したがって、これは本発明に特に適している。
【0143】
出発材料の大部分は、例えば、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)やAbitec Corporation(Columbus,OH)、LIPO Chemicals Inc.(Paterson,NJ)およびJarchem Industries,Inc.(Newark,NJ)から市販されている。
【0144】
コポリマーの生成のために適した反応条件は、ポリアセタール(PA)の生成でよく知られているものである。反応は一般に、α−ヒドロキシ酸含有ジオールの調製について上記した溶媒およびエーテル、特にTHFなどの極性非プロトン性溶媒中で行う。望ましいかまたは必要であれば、触媒を使用することができ、それらはポリアセタールの生成について当業界で知られている触媒から選択することができる。そうした適切な触媒には、ヨウ素/ピリジン、p−トルエンスルホン酸などの強酸;三塩化ホウ素エテレート、三フッ化ホウ素エテレート、オキシ塩化スズ、オキシ塩化リン、塩化亜鉛、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、塩化第二スズなどのルイス酸;ならびにポリリン酸、ポリスチレンスルホン酸などのブレンステッド酸などが含まれる。特に適している触媒はPTSAである。典型的な触媒使用量はジビニルエーテルに対して約0.2重量%であるが、0.005重量%〜2重量%の量を用いることができる。
【0145】
本発明のブロックコポリマーの生体内分解性は2つの因子、すなわち、第1に、コポリマーがどの程度水性媒体中に密に溶解/懸濁されるか、すなわちコポリマーの溶解性と、第2に、コポリマー、より正確にはPAブロックが曝露される環境中でどの程度分解するかによって判定される。水性の環境におけるコポリマーのPAブロックの分解速度は、コポリマーの親水性と、存在すればそのブロック内のα−ヒドロキシ酸エステル基の割合によって決定される。より高い生体内分解性は、PAブロックを生成させるのに用いるジオール混合物中に式HO−R−OHのジオールをより多くの割合で含めることによって得られる。
本発明のブロックコポリマーの使用
本発明のブロックコポリマーは、活性剤などの持続放出のための媒体としての用途などを含む、生分解性ポリマーが有用であるどの用途において有用性が見出されることになるが、当業者は生分解性ポリマーの使用に習熟し、かつ、当分野の技術および本開示に関して、そうした使用に本発明のブロックコポリマーを適合させるのは困難ではないであろうから、疎水性と親水性ブロックの両方を有するブロックコポリマーとしてのその特性が特別の利益を提供する応用分野についても特に有用性が見出され、これらの使用についてこれまで以上に詳しく取り組まれることになろう。
腫瘍ターゲティングのためのミセル系
ミセルの送達系として有用なポリマーは、親水性ポリ(エチレングリコール)Aブロックと疎水性ポリアセタールBブロックを含むジブロック、AB、またはトリブロックABAもしくはBABを形成させて調製することができる。
【0146】
そうしたブロックコポリマーを、ポリ(エチレングリコール)ブロックが可溶性でポリアセタールブロックが不溶性である水に入れた場合、ブロックコポリマー鎖は自然発生的に自己凝集してミセル構造を形成する。動的光散乱などの方法で測定できるこのようなミセルの流体力学直径は約10〜30nmである。静的光散乱などの方法で測定できる、そうしたミセルは数百のポリマー鎖を含む。ミセルは二次的な可逆的会合を受けて、約100nmの平均直径の粒子が形成される。そのようなミセルは大き過ぎるため腎臓によって排せつされないが、個々のブロックコポリマーではそのようなことはない。さらに、生分解性であるようにポリアセタールセグメントを作製することができるので、腎排せつは容易に行われることになる。
【0147】
そうしたミセル系の主要な有用性は、疎水性コア中に疎水性薬物を取り込み、可溶化する能力にある。その取り込みはいくつかの方法で容易に実施される。すなわち、薬物を、ミセルを含む水溶液に加え、次いで簡単な攪拌、中程度の温度への加熱または超音波処理することによって取り込むことができる。ミセルは、様々な疎水性または不溶性の活性剤のための効果的な担体であり、エンドサイトーシスプロセスによって腫瘍中で蓄積する、抗癌剤の担体として特に適している。
【0148】
ミセル複合体を形成できる抗癌剤のどれもこの用途に適しているが、ミセルの腫瘍ターゲティングに特に適した抗癌剤は、アントラサイクリン抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびエピルビシン)、マイトマイシンC、パクリタキセルおよびその類似体(例えば、ドセタキソル)、白金類似体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)などの水への低い溶解度かまたは高い芳香族含量を有するものである。他の薬剤は、ネオカルチノスタチン、L−アスパラギナーゼなどの抗癌タンパク質や光線力学療法で用いられる光線感作物質を含むことができる。
眼球用/眼科用への適用:
上記した本発明のコポリマーの組成物は、対象者の網膜または視神経の損傷の治療に用いることができる。そうした網膜への損傷は黄斑変性症の結果であり、そうした視神経への損傷は緑内障の結果である可能性がある。
【0149】
本発明は、虚血性もしくは低酸素性のストレス、過剰な眼球内圧、または外傷によりもたらされる損傷を含む、網膜および視神経への損傷を防止し、かつ/または治療するための上記コポリマー組成物および方法を提供する。組成物は具体的には、血管閉塞または前部虚血性視神経症に付随する損傷を治療するために用いることができる。組成物は、グルタミン酸塩もしくは他の興奮性アミノ酸またはペプチド、過剰の細胞内カルシウムおよび遊離基などの細胞毒素または神経毒の存在によりもたらされる損傷を治療するためにも有用である。特にこの組成物は、分枝静脈/動脈閉塞および中心静脈/動脈閉塞、外傷性傷害、浮腫、閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障、加齢関連黄斑変性症、網膜色素変性症、網膜剥離、レーザー治療に付随する損傷、ならびに外科的光誘起による医原性網膜症を治療するのに有用である。
【0150】
本発明のコポリマー組成物は、眼球の損傷または疾患の治療のための眼球への送達または眼球の治療に用いることができる。組成物は、例えば、cAMP調節薬、ホルスコリン、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、cAMPを刺激するマクロファージ由来因子、マクロファージ活性化剤、カルシウムイオノフォア、膜の脱分極、ホスホジエステラーゼ阻害剤、特異的ホスホジエステラーゼIV阻害剤、β2−アドレナリン受容体阻害剤または血管活性腸管ペプチドを含む活性剤を含むことができ、また、オンコモジュリンを含む神経栄養素などの活性剤を含むことができる。
【0151】
一態様では、本発明の組成物は、局所的にまたは眼球内注入によって対象者の目に投与することができる。
制御薬物送達のための生体内分解性グラフトコポリマーマトリックス
持続放出媒体としてコポリマーを用いるために、活性剤は、コポリマーのマトリックス中に混ぜ込むか、またはコポリマーのカプセル(または「マイクロカプセル」もしくは「ナノカプセル」などの用語も用いられることがある)中にカプセル化しなければならない。生分解性ポリマーを用いた持続放出剤形の調製のための方法は、本出願の「背景技術」の部で引用した文献、および当業者によく知られている他の文献で論じられているように当業界で周知であり、したがって、当業者は、そうした技術および本開示に関して、本発明のコポリマーを用いた持続放出処方物を調製するのに何の困難もないであろう。適切な活性剤には、薬剤用または薬理学用活性剤、例えば薬物および医薬品などの治療薬、ならびに予防薬、診断用薬および疾患を防止または治療するのに有用な他の化学薬品または材料が含まれる。本発明の組成物は、ヒトおよび他の哺乳動物の治療処置に特に有用であるが、他の動物に用いることもできる。さらに、本発明の持続放出組成物は、活性剤の持続放出が望まれる環境への化粧品および農業用薬剤の放出、または殺菌剤または殺虫剤などの殺生物剤の放出のために用いることもできる。
【0152】
マトリックス処方物の場合、コポリマーをまず活性剤と混合する。熱的に軟化した状態のポリマーを活性剤と混合し、続いて温度を低下させて組成物を固めると高い均一度が得られる。あるいは、コポリマーをテトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルムまたは酢酸エチルなどの適切なキャスティング溶媒中に溶解し、次いで活性剤を、コポリマー溶液中に分散させるかまたは溶解させ、続いて溶媒を蒸発させて最終組成物を得ることができる。他の方法は、固体コポリマー材料を粉砕して粉末にし、次いでこれを粉末活性剤と混合するものである。重合条件下で安定であり、かつ重合反応を妨げない限り、重合の前に、活性剤をモノマーの混合物中に混ぜ込むこともできる。
【0153】
感受性の高い治療薬の取り込みおよび放出のための他の方法は、こうした取り込みのために調整された物理的特性を有する生体内分解性コポリマーを用いることである。ポリマー組成物は、薬剤として許容される注入用ベース中に懸濁された0.1μm〜1000μm、好ましくは0.5μm〜200μm、より好ましくは1μm〜150μmの粒子として、注射器で皮下または筋肉内に注入することもできる。注入のために薬物−コポリマー組成物を懸濁させるのに有用な液媒体には、等張性生理食塩水または油類(トウモロコシ油、綿実油、ラッカセイ油およびゴマ油など)が含まれる。望むなら、これらは他の補助剤を含むことができる。
【0154】
本発明のコポリマーと混合した活性剤から、他の注入可能な剤形を調製することができる。そうした剤形は、溶媒を用いるかまたは用いないで、注入によって投与することができる。
【0155】
注入かまたは埋め込みにより投与されたコポリマー組成物は、体内で生体内分解されて非毒性および非反応性の材料となる。ポリマー中の加水分解性結合の数を制御することにより、所望の速度で活性剤を放出させることができる。コポリマーが活性剤を含有するマトリックスを構成する本発明のコポリマーから調製された埋め込みは、コポリマーが生体内分解性であることにより、それを取り除く必要がないという利点も有している。
【0156】
いくつかの場合、本発明のコポリマーで種々の厚さにコーティングされた純粋な活性剤のコアを有する粒子は、活性剤の持続送達に好ましい。活性剤の離散粒子のコーティングまたはカプセル化は、当業者に周知の通常の方法で実施することができる。例えば、微細に分割された薬物粒子を、溶解したコポリマーおよび他の賦形剤を含む溶媒系(その中に薬物は溶解しない)中に懸濁し、続いて噴霧乾燥することができる。あるいは、薬物粒子を、回転式パンまたは流動床式乾燥機に入れ、粒子上に適切な被膜量で付着して所望の厚さが得られるまで、担体溶媒中に溶解したコポリマーを薬物粒子上に噴霧することができる。コーティングは、溶解したコポリマーを含む溶媒系中に薬物粒子を懸濁し、続いてその懸濁液に、コポリマーを沈澱させ薬物粒子上に被膜を形成させる非溶媒を加えることによって実施することもできる。
【0157】
活性剤は制御された期間にわたって放出されることになるので、持続放出組成物では、薬剤は一般に、従来の単一用量より多い量で存在する。活性剤とコポリマーの相対的割合は、治療薬や所望の効果に応じて、広い範囲で変えることができる(例えば、0.1重量%〜50重量%)。
【0158】
化粧品および農業用薬剤の持続型組成物も、本発明のコポリマーを用いて、上記方法にいずれか1つによって調製することができる。
【0159】
固体コポリマーは様々な整形外科的用途にも有用である。例えばこれらは、骨軟骨欠損の修復、靱帯や腱の再構築、ならびに骨の代用のための骨折固定デバイスとして用いることができる。さらに、本発明のコポリマーが、その機械物理的状態の所望のレベルと所望の生体内分解速度の両方を同時に選択できるようにすることは、また、組織を再生させるために埋め込む前に、インビトロで細胞をその上で培養できる移植片または足場としての魅力も付与する。このアプローチを用いて再生できる組織には、これらに限定されないが、骨、腱、軟骨、靱帯、肝臓、腸、尿管および皮膚組織が含まれる。例えば、コポリマーは、熱傷または皮膚潰瘍を有する患者の皮膚の再生のために用いることができる。軟骨は、患者(または供与者)からまず軟骨細胞を単離し、それらを本発明のコポリマーで作製した足場上に増殖させ、細胞を患者に再度埋め込むことによって修復することができる。
【0160】
コポリマーの足場または埋め込みは、足場または埋め込みの機械的特性を向上させるための強化用充てん材料(例えば、メタリン酸カルシウムナトリウム繊維)、抗生物質、ならびに整形外科的修復および組織再生を誘発しかつ/または促進する骨成長因子などの他の生物学的に活性な物質または合成無機材料をさらに含むことができる。
【0161】
必要というわけではないが、着色剤や保存剤などの他の薬剤として許容される不活性薬剤も組成物中に混ぜ込むことができることも理解されよう。
【0162】
その処方剤は、容易に注射可能または注入可能である、すなわち、局所または眼科用処方物のためによく知られた種類の通常のチューブから、無針注射器から、あるいは16ゲージまたはより小さい注射針(16〜25ゲージなど)を有する注射器から容易に分注でき、皮下、皮内または筋肉内に注入できることが好ましい。処方物は、注射器、注入可能な分注器またはチューブ分注器を含む当業界でよく知られた様々な方法で例えば、皮膚または創傷部に直接または間接に施用することができる。
【0163】
注入、あるいは開放創傷部への表面施用もしくは皮下施用を含む他の任意の投与経路による局所施用または投与の後、活性剤は、持続または制御した方式で組成物から放出される。放出速度は、所望の治療効果を提供するための様々な仕方で調節または制御することができる。その速度は、ポリアセタール−ポリエチレングリコール中のα−ヒドロキシ酸含有単位のモル百分率を変えることによって、増大させることも減少させることもできる。
【0164】
この組成物もやはり安定である。活性剤の放出速度は殺菌のための放射線によって影響を受けない。
具体的な組成物およびその使用
本発明の組成物およびその使用の例には:
(1)局所疼痛の持続的緩和または持続的神経遮断のための、組成物の外科的部位などに着けることを含む、任意選択でデキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、トリアムシノロンなどのグルココルチコステロイドと組み合わせて局所麻酔剤を含む組成物が含まれる。この使用を以下でさらに論じると、
(2)腫瘍の制御または治療、および/または腫瘍の切除後の残留腫瘍細胞からの腫瘍の再増殖の抑制のために、注射器または注入により腫瘍、またはそこから腫瘍を切除した手術部位へ着けるための「活性剤」として上記したものなどの癌化学療法薬を含む組成物、
(3)発情同期化または避妊のためのフルロジェストン(flurogestone)、メドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチンドロンなどのプロゲストゲンを含む組成物、
(4)内障フィルタリング外科処置の補助剤としての、フルオロウラシルなどの代謝拮抗物質を含む組成物;黄斑変性症や網膜血管新生の治療のためのコンブレスタチンなどの血管新生阻害剤を含む組成物;目への眼科用薬物の制御放出のための他の組成物、
(5)日々またはその他の頻繁な注入を回避する、ポリペプチドを制御送達するためのインスリン、LHRH拮抗薬などの治療用ポリペプチド(タンパク質)を含む組成物、
(6)関節内施用または注入のためのNSAID、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、COX−1またはCOX−2阻害剤などまたはグルココルチコステロイドなどの抗炎症薬を含む組成物、
(7)感染の防止または治療のため、特に外科的部位に着けて術後感染を抑制するため、あるいは、感染の抑制(例えば、創傷部における異物からの)のための創傷部内もしくはその上に着けるための抗生物質を含む組成物、
(8)骨形態形成タンパク質などの形態形成タンパク質を含む組成物、
(9)RNA、DNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの他のポリヌクレオチドを含む組成物、
(10)制吐剤を含む組成物、
(11)ワクチン中の抗原を含む組成物、ならびに、
(12)併用治療への応用のための上記活性剤の2つ以上の組合せを含む組成物
である。
制御放出制吐剤の送達
本発明はさらに、5−HT3拮抗薬を投与することを含む患者の催吐の治療または予防方法に関する。その5−HT3拮抗薬は、他の薬理作用物質に付随する吐き気および/または催吐の副作用を最小限にする。
【0165】
本発明の他の態様では、任意選択で少なくとも1種の薬剤として許容される担体と一緒に、HT3拮抗薬を含む催吐の治療または防止のための医薬組成物を提供する。
【0166】
本明細書で用いる「催吐」という用語は吐き気および嘔吐を含む。本発明の注入可能な形態のHT3拮抗薬は、化学療法、放射能、毒素、ウイルス性もしくは細菌性感染、妊娠、前庭障害(例えば、乗り物酔い、回転性めまい、眩暈およびメニエール病)、外科処置、片頭痛および頭蓋内圧の変動により誘発される催吐を含む急性、遅発性または予期催吐の治療において有益である。本発明で用いるHT3拮抗薬は、例えば癌または放射能疾患の治療の際の放射能によって誘発される催吐の治療、ならびに術後の吐き気および嘔吐の治療において特に有益である。本発明の注入可能な形態のHT3拮抗薬は、癌化学療法において通常用いられるものを含む抗新生物(細胞毒性)薬によって誘発される催吐、ならびに他の薬理作用物質、例えばヨヒンビン、MK−912およびMK−467などのα−2アドレナリン受容体拮抗薬ならびにRS14203、CT−2450およびロリプラムなどのIV型環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE4)阻害剤によって誘発される催吐の治療に有益である。
【0167】
化学療法薬の具体的な例は、例えば、D. J. Stewart in Nausea and Vomiting: Recent Research and Clinical Advances, ed. J. Kucharczykら、CRC Press Inc., Boca Raton, Fla., USA、1991年、177〜203頁(188頁を参照されたい)に記載されている。通常用いられる化学療法薬の例には、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(窒素マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシ)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシンおよびクロラムブシルが含まれる(R. J. Gralleらの Cancer Treatment Reports、1984年、68、163〜172頁を参照されたい)。
【0168】
水性注入媒体中への溶解性をもたらすので、制吐剤の多くはその酸付加塩の形態で用いられる。しかし、そうした局所的な制吐剤酸付加塩内に大量の酸が存在すると、組成物のより急速な分解と制吐剤の急速な放出がもたらされるので、一般に、フリーベースの形態の制吐剤を用いることが望ましい。あるいは、制吐剤を、酸付加塩がわずかな割合しか存在しないようにして用いることができる(望むなら、少量の酸付加塩を加えると高い放出がもたらしてもよい)。
【0169】
本発明の注入可能な形態の制吐剤は、上記したような仕方で送達媒体中に制吐剤を混ぜ込むことによって調製する。制吐剤の濃度は、約0.1重量%〜80重量%、好ましくは約0.2重量%〜60重量%、より好ましくは0.5重量%〜40重量%、最も好ましくは約1重量%〜5重量%、例えば約2重量%〜3重量%の範囲で変えることができる。次いで、組成物を16〜25ゲージの注射針を用いて注射器中に充てんし、最も効果的であると判断された部位に注入する。本発明の注入可能な組成物は、溶けにくい制吐剤と可溶性の制吐剤の両方の制御送達のために用いることができる。
【0170】
本発明で用いる制吐剤の適切な部類には、例えばオンダンセトロン、グラニセトロンまたはトロピセトロンなどの5−HT3拮抗薬;メトクロプラミドまたはドンペリドンなどのドーパミン拮抗薬;スコポラミンなどの抗コリン剤;バクロフェンなどのGABAB受容体作用薬;例えばWO97/49710に記載のNK1受容体拮抗薬;あるいは、WO99/67245に記載のGABAAα2および/またはα3受容体作用薬が含まれる。本発明で用いる5−HT3拮抗薬は、当業界で知られている他の制吐剤の使用と合わせて、催吐を治療または防止するのにも有用である。
【0171】
1つの特定の態様では、本発明と合わせて使用する他の適切な部類の制吐剤には、例えば、クロニジン、アプラクロニジン、パラ−アミノクロニジン、ブリモニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、デトミジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、B−HT920、B−HIT933、キシラジン、リルメニジン、グアナベンズ、グアンファシン、ラベタロール、フェニレフリン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミンおよびキシラジンなどを含むα−2アドレナリン受容体作用薬が含まれる。
【0172】
上記したように、本発明で用いる化合物または薬剤は、5−HT3拮抗薬、ドーパミン拮抗薬、抗コリン剤、GABAB受容体作用薬、NK1受容体拮抗薬およびGABAAα2および/またはα3受容体作用薬などの当業界で周知の他の制吐剤と併用した催吐の治療または防止のためにも有用である。
【0173】
本発明の他の態様では、単一薬剤または併用剤としての制吐剤は独立に、1種もしくは複数の塩、または薬剤と薬剤の塩の混合物の形態で用いることができる。本発明で用いる化合物の適切な薬剤として許容される塩には、例えば、化合物の溶液を、塩酸、ヨウ素酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、硫酸などの薬剤として許容される非毒性酸の溶液と混合することによって形成できる酸付加塩が含まれる。アミン基の塩は、アミノ窒素原子がアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル基を担持する第四アンモニウム塩も含むことができる。化合物が酸性基、例えばカルボン酸基を担持する場合、本発明はその塩、好ましくは非毒性薬剤として許容されるその塩、例えばそのナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩なども考慮する。
【0174】
本明細書は、そうした治療を必要とする患者のために眼球の治療を提供する方法であって、上記コポリマー組成物を投与することを含み、かつ、その組成物が眼球の治療のための治療量の活性剤を含む方法も提供する。cAMP調節薬、ホルスコリン、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、cAMPを刺激するマクロファージ由来因子、マクロファージ活性化剤、カルシウムイオノフォア、膜の脱分極、ホスホジエステラーゼ阻害剤、特異的ホスホジエステラーゼIV阻害剤、β2−アドレナリン受容体阻害剤または血管活性腸管ペプチドおよび神経栄養素を治療有効量でさらに含む上記コポリマー組成物を対象に投与することを含む、そうした治療を必要とする対象における網膜または視神経への損傷を治療する方法も提供する。上記方法の一態様では、網膜への損傷は黄斑変性症による結果である。
注入による制御放出局所麻酔剤の送達
局所麻酔剤は一過性神経伝導ブロックを誘発し、数分から数時間持続する疼痛の緩和を提供する。これらは、外科的処置、歯科処置または損傷における疼痛を防止するのにしばしば用いられる。
【0175】
合成局所麻酔剤は2つの群に分けられる。すなわち、溶けにくい化合物と可溶性の化合物である。通常、可溶性の局所麻酔剤は局所に、また注入により施用することができるが、溶けにくい局所麻酔剤は、表面への施用のためのみに用いられる。通常注入で投与される局所麻酔剤も、2つの群すなわち、エステル類と非エステル類に分けることができる。エステル類には、(1)安息香酸エステル(ピペロカイン、メプリルカインおよびイソブカイン);(2)パラ−アミノ安息香酸エステル(プロカイン、テトラカイン、ブテサミン、プロポキシカイン、クロロプロカイン);(3)メタ−アミノ安息香酸エステル(メタブテサミン、プリマカイン)、および(4)パラ−エトキシ安息香酸エステル(パレトキシカイン)が含まれる。非エステル類はブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピロカインおよびプリロカインを含むアニリド(アミドまたは非エステル)である。
【0176】
局所麻酔剤の多くは、それらが水性の注入媒体において溶解性を提供するので、その酸付加塩の形態で通常用いられている。しかし、そうした局所麻酔剤酸付加塩中に大量の酸が存在することにより、ポリアセタール−ポリエチレングリコールのより急速な分解と、局所麻酔剤の放出がもたらされることになるので、一般に、局所麻酔剤はフリーベースの形態で用いるか、または酸付加塩がわずかな割合しか存在しない形で用いるのに望ましい(望むなら、少量の酸付加塩の添加によって、より一層の放出がもたらされる)。
【0177】
局所麻酔剤の作用期間は、それが神経組織と実際に接触している期間と比例するので、本発明の注入可能な送達系は、神経での麻酔剤の局在性を保持することができ、それは麻酔剤の効果を著しく延ばすことになる。
【0178】
Berdeらを含む数人の著者による米国特許第6,046,187号および関連特許は、グルココルチコステロイドの同時投与が、局所麻酔剤、特に制御放出局所麻酔剤;局所麻酔剤およびグルココルチコステロイドを含む処方物の効果を延長させるかあるいは向上させることができること、ならびに制御放出局所麻酔のためにそれを使用することを提案しているが、これらは本発明の範囲内である。
PEG−ポリアセタールブロックコポリマーの調製のための概略スキーム:
【0179】
【化109】

【実施例】
【0180】
ポリアセタール−ポリエチレングリコールの調製
以下の合成は、代表的なポリアセタール−ポリエチレングリコールの調製法を示す。出発材料は市販されているか、または上記節での説明ならびに米国特許第4,549,010号および同第5,968,543号に記載のようにして調製することができる。
【0181】
本発明の分解性ブロックポリマーの調製は、ジビニルエーテルおよびジオールの供給源としてのポリ(エチレングリコール)(PEG)を用いて記載した概略手順で示すことができる。しかし、当業者は、より低いかまたは高い分子量のPEGを含む他のジオールも本発明の実施に適していることを理解されよう。
【0182】
ポリ(エチレングリコール)(3,400g/モルの分子量を有するPEGを用いた)と市販のトリエチレングリコールジビニルエーテルの反応。薬物の規制当局によって安全である(GRAS)と一般に確認されており、かつ製剤処方において広く用いられているので、PEGをジオールとして選択する。適切な分解プロファイル(リソソームの分解に必要)を確認し、インビトロで生体適合性を確認するために、予備実験において非官能化ジビニルエーテルおよびトリエチレングリコールジビニルエーテルの使用を実施した。本発明の分解性ポリアセタール−ポリエチレングリコールポリマーは、官能化出発材料からも調製できることを当業者は理解されよう。例えば、官能化ジビニルエーテルを、本発明の分解性ポリアセタール−ポリエチレングリコールポリマーの調製における出発材料として用いることができる。それぞれの場合、mは特定された分子量MnのPEG分子を表す整数である。
(実施例1)
PEO−ポリアセタールブロックコポリマーの調製
Fmoc保護2−アミノエタノールを以下のようにして合成する。1g(0.016モル)の2−アミノエタノールを25mlの10%NaCO溶液中に溶解した。5mlのジオキサンを加え、混合物を氷浴中で攪拌した。5.5g(0.021モル)の9−フルオレニルメチルクロロホーメート(Fmoc−Cl)を12mlのジオキサン中に溶解し、上記溶液に滴下した。反応混合物を室温で4時間攪拌した。100mlの水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を集めMgSOで乾燥した。ろ過し、溶媒を蒸発させた後、生成物を酢酸エチル/ヘキサンから再沈澱させ、真空下で乾燥した。
【0183】
PEO−ポリアセタール−PEOのABA型ブロックコポリマーの合成を以下のようにして実施した。
【0184】
第1ステップ:反応はドライボックス中で実施した。2g(0.010モル)の1,4−シクロヘキシルジメタノールジビニルエーテルおよび1.47(0.0102モル)の1,4−シクロヘキサンジメタノールを10mlのテトラヒドロフラン中に溶解した。0.31mlのp−トルエンスルホン酸溶液(テトラヒドロフラン中に2%)を加え、溶液を室温で4時間攪拌した。次いで、0.3g(0.0017モル)の1,4−シクロヘキシルジメタノールジビニルエーテルを加え、溶液をさらに30分間攪拌した。
【0185】
第2テップ:0.45g(0.0017モル)のFmoc保護2−アミノエタノールを加え、溶液をさらに1時間攪拌した。
【0186】
第3ステップ:フラスコをドライボックスから取り出し、数滴のジイソプロピルエチルアミンを加えて酸性触媒を中和した。溶液を30mlのテトラヒドロフランで希釈し、8mlのピペリジンを加えた。脱保護ステップを30分間実施し、続いてテトラヒドロフラン中で24時間透析した(1000のMWカットオフを有する膜)。溶媒の一部を蒸発させ、濃縮した溶液をメタノール中に沈澱させた。ポリアセタールは蜂蜜状の生成物であった。メタノールをデカンテーションした後、ポリマーを真空下で乾燥した。
【0187】
第4ステップ:2gポリマーを20mlのテトラヒドロフラン中に溶解した。PEG−N−スクシニミジルカーボネート(アミノ基含量に対して2倍過剰モル)を最少量のテトラヒドロフラン中に溶解し、上記溶液に加えた。数滴のN−メチルモルホリンを加え、溶液を終夜攪拌した。翌朝、溶液を水に滴下し、次いで水に対して24時間透析した(MWカットオフはPEG−SC−1000、2000または5000の分子量に依存する)。凍結乾燥により最終生成物を回収した。
【0188】
ABA型コポリマーの特性を表2に示す。
表2.PEO−ポリアセタール−PEOブロックコポリマーの特性
【0189】
【表2】

式I、IIおよびIIIの他のポリアセタール−ポリエチレングリコール、および/または式HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OH、およびHO−R−OHの他のジオールを含むものを同様の方法で調製する。
(実施例2)
実施例1のPEO−ポリアセタール−PEOトリブロックコポリマーの28重量%水溶液を調製する。オンダンセトロン、制吐剤を、トリブロックコポリマーのこの水溶液中に最終濃度が5mg/mlとなるまで懸濁させる。約2mlのこの組成物溶液を、37℃に保った観察用のガラス上に置く。組成物は直ちにゲル化し、観察用ガラスに付着する。次いでこれを10mMリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、37℃中に直接入れ、ゲルからのインスリンの放出速度を、UV検出器と勾配溶液(TFA/アセトニトリル/水の移動相)を用いた逆相HPLCで監視する。オンダンセトロンは、およそ1週間連続して放出された。タンパク質およびペプチドの制御送達におけるトリブロックコポリマーサーマルゲルの相当な期間での有用性は明らかに確立されており、それはこの実施例によって示されている。
(実施例3)
実施例1のトリブロックコポリマーの23重量%水溶液に、十分な量のパクリタキセルを加えて約2.0mg/mlの薬物を得る。この溶液の2mlの試料を観察用ガラス上に置き、37℃で平衡にする。コポリマーのゲル化温度より温度が高いので、観察用ガラス上にゲルが形成される。観察用ガラスを、37℃に保った2.4重量%Tween−80と4重量%Cremophor ELを含有する150mlのPBS(pH7.4)からなる放出媒体を含む200mlビーカー中に入れる。ビーカー中の溶液を攪拌した。蒸発防止のためビーカーの頂部を密封する。組み立て装置全体を37℃でインキュベーター中に置いた。放出試験を3通りについて実施する。異なる時間で5mlの分量の放出媒体をとり、オンダンセトロンを分析した。各分量を取り出した後、PBS溶液を新鮮なPBSで置き換えた。試料を1、2、4、8、18および24時間、それ以降は24時間間隔で集め、HPLCで分析した。ゲルからのオンダンセトロンの放出プロファイルを測定する。ゲル処方物は、約50日間のパクリタキセルの放出にわたって優れた制御性をもたらす。
【0190】
他のポリアセタール−ポリエチレングリコールおよび式HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHおよびHO−R−OHの他のジオールを含むもの、ならびに/または様々な活性剤を、様々な割合で含む他の組成物を、同様の仕方で調製する。
(実施例4)
医薬組成物の放出プロファイル
実施例2の組成物を、計量し、ねじぶたを備えた瓶の中に入れた。100mlの50mMPBS(pH7.4)を各瓶に加えた。試験瓶を37℃のインキュベーターに移し、回転式振とう器(36rpm)の上に置いた。種々の時点で、瓶をインキュベーターから取り出し、約5mLの試料を取り、HPLCを用いて263nmでブピバカイン含量を分析した。緩衝液の残る容積分を取り出し、100mLの新鮮な緩衝液で置き換えた。
【0191】
これらの試験結果は、本発明の医薬組成物が、組成物の放出速度を様々な仕方で調節し、制御できるという利点を有していることを実証している。放出速度は、米国特許第5,968,543号に開示のポリマー中のα−ヒドロキシ酸含有単位のモル百分率を変えることによって、所望の治療効果に適合するように調節することができる。
【0192】
相転移を、温度およびPBS緩衝液中での濃度の関数としての貯蔵(弾性)係数G’および損失(粘性)係数G’’の変化を測定するための振動技術を用いてレオロジー法により測定した。4cmの直径の平行板を備えたレオメータCSL2−500(TA Instruments)を30Hzの振動数、5〜20%のひずみ速度および15〜80℃の温度範囲で用いた。
【0193】
上記したものは主に説明のために提示したものである。本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、分子構造、送達媒体または医薬組成物中における様々な成分の割合、製造方法および本明細書で説明した本発明の他のパラメータを、様々な仕方でさらに改変または置換できることは当業者に容易に明らかであろう。例えば、本明細書で上記に示した特定の投与量以外の有効な投与量は、上記した本発明の化合物を用いた効能のいずれかについての、治療される哺乳動物の応答性の変動の結果によって、適用することができる。同様に、観察される具体的な薬理学的応答は、選択された特定の活性化合物によるかまたはそれに応じて、あるいは、薬剤用担体が存在するかどうか、また、用いられる処方物および投与の方式によって変えることができ、結果におけるそうした推定される変動または差異は、本発明の目的および実施に従って考慮されるものとする。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、かつ、そうした特許請求の範囲は合理的な限り、広く解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iまたは式IIのトリブロックコポリマー
【化1】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化2】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化3】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化4】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化5】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]。
【請求項2】
RがHである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
mが50〜250の整数である、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項4】
がメチルまたはエチルであり、RがHである、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項5】
DがRであり、Rが1,4−シクロヘキサンジメチレンである、請求項2に記載のコポリマー。
【請求項6】
D’がRである少なくとも0.1モル%の単位を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
D’がRである約0.5〜50モル%の単位を含む、請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
D’がRである約1〜30モル%の単位を含む、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
xが1〜2である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
が水素またはメチルである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
が−CHCHOCHCHOCHCH−である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
D’がRであり、Rが1,4−シクロヘキサンジメチレンまたは1,10−デカニレンであり、mが50〜250の整数である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
式Iのコポリマーの調製方法であって、
【化6】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化7】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化8】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化9】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化10−1】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式Iaのジビニルエーテル
【化10−2】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHもしくはHO−R−OHと定義される式HO−D’−OHのジオールまたはその混合物と反応させて式Ibの化合物
【化11】

(式中、D、D’、Rおよびuは上記定義の通りである)
を形成させ、
式Ibの化合物を式Icの化合物
【化12】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)
と反応させることを含む方法。
【請求項14】
(a)式Iaのジビニルエーテルと、
【化13】

[式中、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化14】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化15】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化16】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化17】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
(b)式HO−D’−OHのポリオールまたはポリオールの混合物(式中、D’は上記定義の通りである)と、
(c)式Icの化合物
【化18】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)と
の反応の生成物であるコポリマー。
【請求項15】
前記ポリオールの少なくとも1つが2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
請求項1に記載のコポリマーを含む整形外科的な修復または組織再生のためのデバイス。
【請求項17】
(a)活性剤と
(b)媒体としての請求項1に記載のコポリマーと
を含む医薬組成物。
【請求項18】
前記活性剤の画分が前記組成物の1重量%〜60重量%である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記活性剤の画分が前記組成物の5重量%〜30重量%である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記活性剤が、抗感染薬、消毒剤、ステロイド、治療用ポリペプチド、抗炎症薬、癌化学療法薬、麻酔剤、制吐剤、局所麻酔剤、血管新生阻害剤、ワクチン、抗原、RNA、DNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにそれらの組合せから選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記活性剤が治療用ポリペプチドである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記活性剤が、血管新生阻害剤、癌化学治療薬、抗生物質および抗炎症薬からなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項23】
哺乳動物のある部位の局所疼痛を防止または軽減する方法であって、請求項20に記載の薬剤として許容される組成物の形態で、治療有効量の局所麻酔剤を前記部位に投与することを含む方法。
【請求項24】
式IIのコポリマーの調製方法であって、
【化19】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
各Rは独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化20】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化21】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化22】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化23】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式IIaのジビニルエーテル
【化24−1】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、式HO−(CH−CHR)−OH(式中、RはHまたはC〜Cアルキルである)のジオールと反応させて式IIbの化合物
【化24−2】

(式中、D、R、R、Rおよびmは上記定義の通りである)
を形成し、続いて式Iaのジビニルエーテル
【化25】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
および式IIcの化合物
【化26】

(式中、D’は上記定義の通りである)
と反応させることを含む方法。
【請求項25】
式Iaのジビニルエーテルと、
【化27】

[式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、前記ジビニルエーテルは合計ポリオール含量の少なくとも0.1モル%が式HO−D−OHのジオールであるポリオールまたはポリオールの混合物から誘導され、
但し、
は、
【化28】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化29】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化30】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化31】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式HO−(CH−(CH−CHR)−OHのジオール(zは0、1、2、3または4であり、RはHまたはC〜Cアルキルである)と、
式IIcの化合物
【化32】

(式中、式IIcは、合計ポリオール含量の少なくとも0.1モル%が式IIcのジオールであるジオール、ポリオールまたはポリオールの混合物であり、D’は上記定義の通りである)と
の反応の生成物であるコポリマー。
【請求項26】
前記ポリオールの少なくとも1つは2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである、請求項25に記載のコポリマー。
【請求項27】
式IIIのジブロックコポリマー
【化33】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化34】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【化35】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化36】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【化37】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]。
【請求項28】
RがHである、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項29】
mが50〜250の整数である、請求項28に記載のコポリマー。
【請求項30】
がメチルまたはエチルであり、RがHである、請求項28に記載のコポリマー。
【請求項31】
DがRであり、Rが1,4−シクロヘキサンジメチレンである、請求項28に記載のコポリマー。
【請求項32】
D’がRである少なくとも0.1モル%の単位を含む、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項33】
D’がRである約0.5〜50モル%の単位を含む、請求項32に記載のコポリマー。
【請求項34】
D’がRである約1〜30モル%の単位を含む、請求項33に記載のコポリマー。
【請求項35】
D’がRであり、xが1〜2である、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項36】
が水素またはメチルである、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項37】
が−CHCHOCHCHOCHCH−である、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項38】
D’がRであり、Rが1,4−シクロヘキサンジメチレンまたは1,10−デカニレンであり、mが50〜250の整数である、請求項27に記載のコポリマー。
【請求項39】
式IIIのコポリマーの調製方法であって、
【化38】

[式中、
mは2〜500の整数であり、
uは3〜100の整数であり、
はC〜Cアルキルであり、
RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化39】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
は、
【化40】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化41】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、

【化42】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
式Iaのジビニルエーテル
【化43−1】

(式中、RはHまたはC〜Cアルキルであり、Dは上記定義の通りである)
を、HO−R−OH、HO−R−OH、HO−R−OHもしくはHO−R−OHと定義される式HO−D’−OHのジオールまたはその混合物と反応させて式IIIbの化合物
【化43−2】

(式中、D、D’、R、Rおよびuは上記定義の通りである)
を形成させ、式IIIbの化合物を式IIIcの化合物
【化44】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)
と反応させることを含む方法。
【請求項40】
(a)式Iaのジビニルエーテルと、
【化45】

[式中、
はHまたはC〜Cアルキルであり、
DおよびD’はそれぞれ独立にR、R、RおよびRから選択され、
但し、
は、
【化46】

(式中、
xは0〜10の整数であり、
はHまたはC〜Cアルキルであり、

【化47】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
sは0〜30の整数であり、
tは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルである)
であり、
は、
【化48】

から選択され、但し、m’は1〜6の整数であり、
は、
【化49】

(式中、
x’は0〜30の整数であり、
yは1〜200の整数であり、
10およびR11は独立にHまたはC〜Cアルキルであり、
12およびR13は独立にC〜C12アルキレンであり、
14はHもしくはC〜Cアルキルであり、R15はC〜Cアルキルであるか、またはR14とR15は一緒になってC〜C10アルキレンである)
から選択され、
は(i)その中に組み込まれた少なくとも1個のアミン官能基を含むジオールの残基であるか、または、
(ii)アミド、イミド、尿素およびウレタン基から独立に選択される少なくとも1個の官能基を含むジオールの残基である]
(b)式HO−D’−OHのポリオールまたはポリオールの混合物(式中、D’は上記定義の通りである)と、
(c)式IIIcの化合物
【化50】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはC〜Cアルキルであり、mは2〜500の整数である)と
の反応の生成物であるコポリマー。
【請求項41】
前記ポリオールの少なくとも1つが2個を超えるヒドロキシ官能基を有するポリオールである、請求項40に記載のコポリマー。
【請求項42】
請求項27に記載のコポリマーを含む整形外科的な修復または組織再生のためのデバイス。
【請求項43】
(a)活性剤と、
(b)媒体としての請求項27に記載のコポリマーと
を含む医薬組成物。
【請求項44】
請求項27に記載のコポリマーを含む薬物担体との共有結合によるものではなくその担体中に物理的に取り込まれた活性剤を含む、疎水性または水不溶性の活性剤の送達のためのミセル医薬組成物。
【請求項45】
前記活性剤が抗癌剤である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
請求項27に記載のコポリマーを含むマトリックス中に分散された活性剤を含む、活性剤を持続放出させるための組成物。
【請求項47】
請求項1に記載の式IIを有するコポリマーを含む整形外科的な修復または組織再生のためのデバイス。
【請求項48】
(a)活性剤と
(b)媒体としての請求項1に記載の式IIを有するコポリマーと
を含む医薬組成物。
【請求項49】
前記活性剤の画分が前記組成物の1重量%〜60重量%である、請求項43または48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記活性剤の画分が前記組成物の5重量%〜30重量%である、請求項43または49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記活性剤が、抗感染薬、消毒剤、ステロイド、治療用ポリペプチド、抗炎症薬、癌化学療法薬、麻酔剤、制吐剤、局所麻酔剤、血管新生阻害剤、ワクチン、抗原、RNA、DNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、請求項47または48に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記活性剤が血管新生阻害剤である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記活性剤が癌化学治療薬、抗生物質および抗炎症剤からなる群から選択される、請求項47または49に記載の医薬組成物。
【請求項54】
請求項17、43または48のいずれか一項に記載の医薬組成物の形態の治療有効量の活性剤を局所的に投与することを含む、活性剤の制御放出での局所投与によって治療可能な病状の治療方法。
【請求項55】
そうした治療を必要とする患者のための眼球の治療を提供する方法であって、眼球治療のための治療量の活性剤を含む、請求項17、43または48のいずれか一項に記載のいずれか1つのコポリマー組成物を投与することを含む方法。
【請求項56】
治療有効量のcAMP調節薬、ホルスコリン、アデニル酸シクラーゼ活性化剤、cAMPを刺激するマクロファージ由来因子、マクロファージ活性化剤、カルシウムイオノフォア、膜の脱分極、ホスホジエステラーゼ阻害剤、特異的ホスホジエステラーゼIV阻害剤、β2−アドレナリン受容体阻害剤または血管活性腸管ペプチドおよび神経栄養素を含む、請求項17、43または48のいずれか一項に記載のコポリマー組成物を対象に投与することを含む、そうした治療を必要とする対象の網膜または視神経への損傷を治療するための方法。
【請求項57】
前記網膜への損傷が黄斑変性症の結果である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1に記載のコポリマーを含む薬物担体との共有結合によるものではなく、その担体中に物理的に取り込まれた活性剤を含む、疎水性または水不溶性の活性剤の送達のためのミセル医薬組成物。
【請求項59】
前記活性剤が抗癌剤である、請求項25または58に記載の組成物。
【請求項60】
請求項1に記載のコポリマーを含むマトリックス中に分散された活性剤を含む、活性剤を持続放出させるための組成物。
【請求項61】
(a)活性剤と
(b)媒体としての請求項27に記載のコポリマーと
を含む医薬組成物。
【請求項62】
前記活性剤が1種または複数の栄養補給剤または健康補助食品を任意選択でさらに含む、請求項17、43、48または61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記活性剤が1種または複数の栄養補給剤または健康補助食品である、請求項17、43、48または61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記栄養補給剤または健康補助食品がビタミンである、請求項62または63に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2008−537969(P2008−537969A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504265(P2008−504265)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/011343
【国際公開番号】WO2006/105123
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501315821)エーピー ファーマ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】