説明

PET−MRI統合システム

【課題】ケーブルを使って光センサー出力信号をMRIボアの外部に伝送することで、横軸及び縦軸視野が拡張され、機能的画像と解剖学的画像が統合された画像を得ることができるPET−MRI統合装置を提供する。
【解決手段】撮影口内に引き込まれる患者のMR画像を撮影するMRIボア;前記MRIボアの前記撮影口の内部に設置され、縦軸視野が拡張できるように多数のシンチレーション結晶が環状に配列されたシンチレーション結晶アレイが長手方向に多数配列されてなるPET検出器;前記MRIボアで発生する磁場の影響を受けないように前記MRIボアの外部に設置され、内部に信号増幅回路及び信号処理回路が備えられたPET回路部;及び前記PET検出器と前記PET回路部を連結するケーブルを含むもので、横軸視野が拡張され、多数配列されたシンチレーション結晶アレイによって縦軸視野が拡張され、全身撮影が可能であり、MRIによって解剖学的画像が撮影されると同時に、あるいは順次前記PET検出器によって機能的画像が撮影されて統合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPET−MRI統合システムに係り、より詳しくはPETとMRIを統合して患者のMR画像と機能的画像を統合した画像を得るとともに、構造的な改善によってPETの横軸及び縦軸の視野を拡張し、MRIから発生する強磁場の影響を受けないようにするPET−MRI統合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETは、1975年代中盤ミズーリ州、セントルイスに位置するワシントン大学のM.ターポゴシアン(Ter−Pogossian)及びM.フェルプス(Phelps)などによって、消滅放射線同時検出原理を用いて開発された。その後、PETはCPS−CTIを含むいくつかの商業会社によって発展され、最近にはPET−CT統合画像装置の形態として活用度が大幅増加している。
【0003】
一方、MRIは1973年にP.ローターバル(Lauterbur)によって開発された。これはCT(Computed Tomography)またはPETと多少類似しているが、物理学的原理の面で相違している。現在は全世界の病院で10,000台以上のMRIが使用されている。MRIは根本的に機能的画像空間というよりは、形態学的(morphological)または解剖学的(anatomical)画像空間であるから、分子的特異性(speciality)が不足である。しかし、MRIはPETよりは高い時間的かつ解剖学的解像度を持つ。また、1992年には、S.オガワ(Ogawa)によって機能的画像を得ることができる機能がMRIに付加されたfMRIが誕生した。このような機能的画像に関する機能が付け加わることによって、fMRIは神経科学(neuroscience)分野で最も優れた脳画像を提供することができる装置の一つになった。
【0004】
fMRIが開発されて世の中に出たとき、fMRIは脳画像面で非常に印象的なものなので、神経科学のすべての学界はこの新装置を熱情的に受け入れた。しかし、分子的特異性に対する要求が起こってこのような興奮は長く続かず、関心は根本的に、再度、PETに向けられた。本技術分野でよく知られたように、PETは二つの主能力、つまり葡萄糖及びガンシクロビル(ganciclovir)のような特異的な体内動態の代謝の親和性分布、及び神経伝達物質配位子(ligands)に対する特定神経−受容体(neuro−receptors)の親和性分布(affinity/distribution)を測定することができる能力がある。
【0005】
前述したように、PETとMRIにはそれぞれ固有の利点と欠点がある。より詳しくは、PETが人体組職の分子学的かつ機能的情報を非常に高いコントラスト(contrast)によって提供することができる。しかし、PETは本質的に低解像度であるため、解剖学的情報を提供するのには限界がある。MRIの場合、人体組職に対する詳細な解剖学的情報を提供することはできるが、PETに比べ、分子学的かつ機能的情報を提供するのには限界がある。
【0006】
前記のように、PETとMRIの利点と欠点のため、PETとMRIを統合して解剖学的情報と分子学的情報を共に得ることができるようにするために開発されたPET−MRIハイブリッドシステム(特許文献1)は、第1スキャナと第2スキャナが移送レールを介して連結されており、移送レール上には、検査対象を固定することができる支持台が備えられた構造になって、PET画像とMRI画像を同時に得ることができるようにした。
【0007】
しかし、前記特許文献1は、患者移送レールが占める容積が大きく、患者移送レールを介して第1スキャナから第2スキャナに患者が移動される時間がかかるので、同時画像を得ることができない問題点がある。
【0008】
これを解決するために、本技術分野では、光ファイバーを備えたPET閃光検出部及びこれを用いるMRI−PET統合システム(特許文献2)と、統合されたPET/MRIイメージングシステム及び同時PET/MRIイメージングに使用するためのAPDベースのPET検出器(特許文献3)が開発された。
【0009】
特許文献2の光ファイバーを備えたPET閃光検出部及びこれを用いるMRI−PET統合システムは、MRIの内部にPET装置の閃光検出部を装着することで、PET画像とMRI画像を同時に獲得するようにした。
【0010】
しかし、前記特許文献2は、シンチレーション結晶と光素子が光ファイバーで連結される構造になってPETの性能が低下する問題点がある。また、光ファイバーが設置される空間的な限界のため、シンチレーション結晶の縦軸視野の拡張が難しい問題点がある。
【0011】
特許文献3の統合されたPET/MRIイメージングシステム及び同時PET/MRIイメージングに使用するためのAPDベースのPET検出器は、APD基盤のPETモジュールが統合されたPET/MRIイメージングに使用するために提供されるものであり、それぞれの検出器は一連のAPDによってリードアウトされる一連の閃光器クリスタルを含み、このモジュールはMRスキャナのトンネル内に位置する。同時に、人為的影響のない(artifact−free)イメージは、高解像度及び費用効率的な統合されたPET/MRIシステムを引き起こすAPD基盤のPET及びMRIシステムによって獲得できる。
【0012】
しかし、前記特許文献3は、前置増幅器がMRIボアの内部に位置する構造になり、MRIボアの内部の空間的制約によって信号増幅回路を必ず集積化しなければならなく、MRI環境固有の高磁場及びRF影響に対する保護のための銅遮蔽体のような保護装置が必ず要求される問題点がある。また、信号増幅回路自体の発熱と傾斜コイルによる銅遮蔽体の発熱などは、時間が経つにつれて光センサーの増幅率減少及びPET性能の低下をきたし、信号増幅回路及び同遮蔽体の挿入は傾斜磁界強度の減少とMRI画像敏感度の低下などのMRI性能低下を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0842682号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−0618628号公報
【特許文献3】国際公開WO06/071922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は前記のような問題点に鑑みてされたものであって、本発明の目的は、PET画像とMRI画像を同時にあるいは順次獲得することができるようにし、横軸及び縦軸視野の拡張を可能にするPET−MRI統合装置を提供することにある。
また、本発明のさらに他の目的は、MRIボアで発生する磁場の影響によってPET装置で信号撹乱が発生することを防止し、光ファイバーの使用によって発生し得るPET性能の低下を低減するとともにPET回路及び銅遮蔽体の発熱によるPET性能の低下を低減し、MRIボア内にPETを位置させることにより発生するMRI性能の低下を低減することができるPET−MRI統合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような本発明の目的を達成するためのPET−MRI統合装置は、撮影口内に引き込まれる患者のMR画像を撮影するMRIボア;前記MRIボアの前記撮影口の内部に設置され、縦軸視野が拡張できるように多数のシンチレーション結晶が環状に配列されたシンチレーション結晶アレイが長手方向に多数配列されてなるPET検出器;前記MRIボアで発生する磁場の影響を受けないように前記MRIボアの外部に設置され、内部に信号増幅回路及び信号処理回路が備えられたPET回路部;及び前記PET検出器と前記PET回路部を連結するケーブルを含む。
前記PET検出器は、前記シンチレーション結晶で検出された閃光を電荷信号に変換する光センサーを含み、前記ケーブルは前記光センサーに連結され、前記PET回路部に前記電荷信号を伝送することができる。
前記光センサーは半導体方式の光センサーであってもよい。
前記PET−MRI統合装置は、前記撮影口内に前記患者が引き込まれるようにする移送可能ベッドが装着された支持台をさらに含み、前記PET回路部は前記支持台の内部に設置されることができる。
前記シンチレーション結晶は、ガドリニウム(Gadolinium)成分が排除されたBGO、LSO、LYSO、LuAP、LuYAP、LaBr及びLuIの1種でなるかあるいはそれ以上が多層状になることができる。
前記ケーブルは、前記MRIボアを外れる長さのものを使ってもPET画像性能に影響がない低静電容量(low−capacitance)のケーブルであってもよい。
前記ケーブルは、前記MRIボアを外れる長さのものを使ってもPET画像性能に影響がない低導体抵抗のケーブルであってもよい。
前記ケーブルは、前記MRIボアを外れる長さのものを使ってもPET画像性能に影響がない高特性インピーダンスのケーブルであってもよい。
前記ケーブルは、PET及びMRI画像性能の低下が発生しないように、5cm〜900cmの長さを有することができる。
前記ケーブルは、前記光センサーで変換された電荷信号の数に対応する数のチャネルを含み、前記チャネルを介してそれぞれの電荷信号を前記PET回路部に伝送する多チャネルケーブルであってもよい。
前記ケーブルは、前記光センサーで変換された電荷信号の数を超える数のチャネルを含む多チャネルケーブルであり、前記電荷信号の数に対応する数のチャネルはそれぞれの電荷信号を前記PET回路部に伝送し、前記電荷信号の伝送を担当しないチャネルはグラウンドされて前記電荷信号のクロストーク(inteference)を最小化することができる。
前記ケーブルは、遮蔽能力に優れた多チャネル微細同軸ケーブルであってもよい。
前記ケーブルは、クロストークが最小化する多チャネルツイストペア(twist pair)ケーブルであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によるPET−MRI統合装置は、解剖学的画像(MRI画像)と機能的画像(PET画像)を同時にあるいは順次得ることができるとともにMRIボアで発生する磁場の影響によってPET装置で信号撹乱が発生することを防止することができることになって、製品の信頼性の向上する効果がある。
また、本発明によるPET−MRI統合装置は、シンチレーション結晶アレイを長手方向に多数配列して縦軸視野を確張しやすい利点がある。
また、本発明によるPET−MRI統合装置は、シンチレーション結晶と光センサーをMRIボアの内部に設置し、信号増幅回路と信号処理回路でなるPET回路部はMRIボアの外部に設置することにより、PET検出器の設置空間を縮小させることができるので、全身撮影が可能な程度にPET検出器の口径拡大(横軸視野の拡張)が可能になる効果がある。
また、検出器が前置増幅器、整形増幅器などの信号増幅回路で発生する熱によるPET性能低下の要因を除去することができ、従来光ファイバーを使用することによって発生するPET性能の低下を低減することができることになる効果がある。
また、MRIボアの内部に導体的異物の挿入が減少して、MRI画像の均一度及び信号対雑音比の低下を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な第1実施例によるPET−MRI統合システムを示す断面図である。
【図2】MRIボアの内部に設置されたPET検出器を示す斜視図である。
【図3】PET−MRI統合システムの概略図である。
【図4】本発明の好適な第2実施例によるPET−MRI統合システムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施例によるPET−MRI統合装置を添付図面に基づいて詳細に説明すれば次のようである。
図1は本発明が好適な第1実施例によるPET−MRI統合装置を示す断面図、図2はMRIボアの内部に設置されたPET検出器を示す斜視図、及び図3はPET−MRI統合装置の概略図である。
【0019】
図示のように、本発明の好適な第1実施例によるPET−MRI統合装置は、患者のMR画像を撮影するMRIボア10と、MRIボア10の内部に装着されるPET検出器20と、PET検出器20に一側が連結されるケーブル30と、ケーブル30の他側に連結されるPET回路部40でなる。
【0020】
MRIボア10は、中央を貫く撮影口11が形成され、患者が横になった状態で撮影口11の内側に引き込まれるように患者を移送するベッド12が装着された構造でなる。ベッド12は支持台14上に移送可能に設置される。
【0021】
PET検出器20は、患者が通過できるように、所定の内径を持つ管状になり、撮影口11の内部に設置される。一側には多数のシンチレーション結晶21が環状に配列されてシンチレーション結晶アレイ22を成し、シンチレーション結晶アレイ22はPET検出器20の長手方向に沿って多数配列される。シンチレーション結晶21の他側部は光センサー23に連結されてPET検出器をなす。
【0022】
PET検出器の構成に使用されるシンチレーション結晶21は対消滅現象によって互いに反対方向に発生する511keVガンマ線を検出するために、いくつかの特徴を持たなければならない。第一、システム敏感度を向上させるためにシンチレーション結晶の密度が高くてガンマ線検出効率が高くなければならない。第二、システムエネルギー分解能の向上のために、ガンマ線を閃光に変換する効率が高くなければならない。第三、システム時間分解能の向上及び不応時間の最小化のために、入射したガンマ線がシンチレーション結晶21で短時間内に閃光に変換される時間、つまり減衰時間が短くなければならない。また、MR互換性を考慮したPETシステム設計のために、シンチレーション結晶は磁化率が低く、MRI画像歪曲を起こしてはいけない。よって、本発明において、シンチレーション結晶はガドリニウム(Gadolinium)成分を含まないBGO(Bismuth Germanate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LuAP(Lutetium Aluminum Perovskite)、LuYAP(Lutetium Yttrium Aluminum Perovskite)、LaBr(Lanthanum Bromide)及びLuI(Lutetium Iodide)のいずれか1種またそれ以上の多層状になることが好ましい。
【0023】
ケーブル30の一側は光センサー23に連結され、小型かつ多チャネルのケーブルでなることが好ましい。ケーブル30は、MRIボア10の幅方向端部から、MRIボアで発生する磁場の影響圏を外れる程度の距離に延長される。この際、ケーブル30の全長は30cm以上であるのが最適である。
【0024】
より詳細に説明すれば、PET装置の性能低下を発生させる重要な要因の一つは信号増幅回路41に到逹する入力ノイズである。これを定量的に表現すると、検出器から発生した電気的ノイズの大きさをENC(Equivalent Noise Charge)と表現する。ENC数式によって信号増幅回路41の入力ノイズを最小化する方法は光センサー23と信号増幅回路41間の静電容量を減らすものなので、一般に光センサー23と信号増幅回路41は最大限近く設置する。しかし、PET/MRI統合装置の場合、半導体信号増幅回路を近く設置したとき、信号増幅回路の発熱、強いMR信号によるPET性能の低下と導体物質挿入によるMRI性能の低下が発生し得る。
【0025】
光センサー23の出力電荷信号の伝送に用いるケーブル30は次の特性を持つことが好ましい。ケーブル30は、光センサー23のバイアス電圧供給及び出力信号伝送が可能な多チャネルケーブル、光センサーが一定の増幅率を持つようにケーブルの長さが増加しても供給電圧減衰が発生しないケーブル、静電容量が小さくて長さが増加してもENC値の増加に大きな影響を及ぼさないためPET性能の低下がないケーブル、MRIボアの内部に挿入されてもMR画像性能の低下がないケーブル、MR構造変更がない全身用PET/MRIの構成が可能な小型ケーブル、及びコネクターである。
【0026】
チャネル間のクロストークを最小化することができるフラットケーブル(flat cable)、ツイストペアケーブル(twist pair cable)、同軸ケーブル(co−axial cable)が使用可能である。
【0027】
光センサー出力電荷信号伝送方法を活用したPET/MRI装置は次の設計方法が好ましい。多チャネルケーブルにおいて、ケーブル30である信号伝送線(signal transmission line)の全チャネルの両側にグラウンドライン(ground line)を付け加えることで、多チャネル信号で発生し得るクロストーク(inteference)を最小化するように設計されたフラットケーブルまたは、個別信号伝送線が遮蔽された微細同軸ケーブルを使用する信号伝送システム設計、MRIボアを外れることができるしPET性能の低下を引き起こさないケーブル30の長さを使用したシステム設計である。このときのケーブルは、低静電容量、低い導体抵抗、高い特性インピーダンスの条件を満足すれば効果的な設計になるであろう。
【0028】
前述した設計条件を満足する5cm〜500cmの長さを有するケーブル30を使ってPET基本性能を実験した結果、出力信号の大きさ、エネルギー分解能、時間分解能の変動係数は5%以下に測定された。これは測定装備及びシステムの誤差範囲内であり、本実験で使用した500cmケーブルの外に、さらに実験した900cmケーブルを用いてPET装置を構成してもPET装置の性能低下がないことを検証した。また、本実験で使用したPET検出器とケーブルをMRIボアの内部に挿入してもMR画像性能の低下がないことを確認した。
【0029】
PET回路部40は、ケーブル30の他端に連結される信号増幅回路41と該信号増幅回路41に連結される信号処理回路42とからなる。
前記のように構成された本発明の好適な一実施例によるPET−MRI統合装置が作動する過程は次のようである。
【0030】
患者がベッド12に横になった状態で撮影口11の内部に引き込まれると、患者の患部がPET検出器20の内部を通過しているうち、MRIボア10ではMR画像を撮影すると同時に、PET検出器20では機能的画像を撮影することになる。また、必要によって、同時撮影でなく、それぞれ別に撮影することもできる。
【0031】
MRIボア10で撮影されて得られた画像信号はMRI画像処理器13に伝送され、それぞれの出力信号が画像に変換される。変換された画像は統合画像処理器50に伝送される。
【0032】
PET装置での信号処理過程は次のようである。まず、シンチレーション結晶アレイ22をなすシンチレーション結晶21は、生体内から放出されるガンマ線を検出し、これを閃光に変換する。この際、シンチレーション結晶アレイ22は、図示のように多数が長手方向に沿って配列される構造になって、縦軸視野が拡張される特徴がある。また、MRIボアの構造変更なしにも横軸視野及び縦軸視野の拡張が可能である。
【0033】
シンチレーション結晶21で検出された閃光は光センサー23に伝送されて電荷信号に変換される。既存の発明では、光センサーとして主にPMT(Photo−Multiplier Tube)を使って来た。しかし、PMTはMRIの内部で使用することができない問題点があるので、MRIボア10の内部で使用するためには半導体方式の光センサーを利用する。半導体方式の光センサー23で変換された電荷信号はケーブル30を通じてMRIボア10の外部に位置する信号増幅回路41に伝送される。信号増幅器41を通過しているうち、微細な電荷信号は電圧信号に変換/増幅され、増幅された電気信号は信号処理回路42によってアナログ及びデジタル信号に変換/分離される。変換された画像は統合画像処理器50に伝送されて一つの画像に統合される。すなわち、解剖学的画像と機能的画像が統合された画像を得ることになる。また、統合画像処理器50は、選択的にそれぞれの画像を一つの画像に統合するか、あるいは別途の画像に分離することができる。
【0034】
同様に、本発明の好適な第2実施例によるPET−MRI統合装置は、図4に示すように、ケーブル30が支持台14’側に伸び、ケーブル30に連結されるPET回路部40が支持台14’の内部に設置される構造であって、PET−MRI統合装置が占める設置面積を減少させる特徴がある。その外の構造及び動作は本発明の好適な第1実施例と同様である。
【0035】
このように、本発明によるPET−MRI統合装置は、構造的にシンチレーション結晶アレイ22を長手方向に沿って多数配列することが可能なので、MRIボア10の構造変更なしにも縦軸視野が容易に確張される利点がある。
また、光ファイバー使用によるPET性能の低下、及び信号増幅回路や銅遮蔽体の発熱によるPET性能の低下が低減される特徴がある。
また、限定されたMRIボア10の内部空間に設置されるPET検出器20の縦軸視野の拡張が可能であり、全身用システム設計が可能である。
【0036】
PET信号増幅回路及び信号処理回路がMRIボアの内部に位置する場合には、MRI magnet、gradient coil、RF pulseからPETシステムを保護するために必ず遮蔽装置が要求される。
しかし、本発明によれば、MRIの高磁場から信号増幅/処理回路保護のための銅遮蔽方法が容易になり、相対的に厚い銅を用いる磁場遮蔽が可能である。そして、銅遮蔽物質によるガンマ線減衰、散乱作用がなく、MR傾斜磁界によって銅遮蔽体で発生する渦電流(eddy current)によってPET検出器20の温度上昇がない。信号増幅回路集積化が必須でないので、装置の開発期間や費用を減らすことができ、PET回路部40で発生する熱によるPET検出器20の温度上昇がないので、PET性能の低下がなくて別途の冷却システムが不要である。
【0037】
また、MRI装置においては、PET導体物質の挿入によって、傾斜磁界勾配の減少効果がなく、敏感度の低下効果が低減される。特に、全身用PET/MRIで発生し得るMR画像の均一度及び信号対雑音比の低下を最小化することができる。
【0038】
本発明は以上に説明した特定の好適な実施例に限定されなく、請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなしに、発明が属する技術分野で通常の知識を持った者であれば誰でも多様な変形実施が可能であることはもちろんのこと、そのような変更は請求範囲に記載の範囲内に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、PETとMRIを統合して患者のMR画像と機能的画像を統合した画像を得るとともに、構造的な改善によってPETの横軸及び縦軸の視野を確張し、MRIから発生する強磁場の影響を受けないようにするPET−MRI統合システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 MRIボア
11 撮影口
12 ベッド
20 PET検出器
21 シンチレーション結晶
22 シンチレーション結晶アレイ
23 光センサー
30 ケーブル
40 PET回路部
41 信号増幅回路
42 信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET−MRI統合装置において、
撮影口内に引き込まれる患者のMR画像を撮影するMRIボア;
前記MRIボアの前記撮影口の内部に設置され、縦軸視野が拡張できるように多数のシンチレーション結晶が環状に配列されたシンチレーション結晶アレイが長手方向に多数配列されてなるPET検出器;
前記MRIボアで発生する磁場の影響を受けないように前記MRIボアの外部に設置され、内部に信号増幅回路及び信号処理回路が備えられたPET回路部;及び
前記PET検出器と前記PET回路部を連結するケーブル;を含むことを特徴とする、PET−MRI統合装置。
【請求項2】
前記PET検出器は、前記シンチレーション結晶で検出された閃光を電荷信号に変換する光センサーを含み、
前記ケーブルは前記光センサーに連結され、前記PET回路部に前記電荷信号を伝送することを特徴とする、請求項1に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項3】
前記光センサーは半導体光センサーであることを特徴とする、請求項2に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項4】
前記PET−MRI統合装置は、前記撮影口内に前記患者が引き込まれるようにする移送可能ベッドが装着された支持台をさらに含み、
前記PET回路部は前記支持台の内部に設置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項5】
前記シンチレーション結晶は、ガドリニウム(Gadolinium)成分が排除されたBGO、LSO、LYSO、LuAP、LuYAP、LaBr及びLuIのいずれか1種であるか、あるいはそれらの多層構造であることを特徴とする、請求項4に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記MRIボアの外に出るような長いケーブルであってもPET画像性能に影響がない低静電容量(low−capacitance)のケーブルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項7】
前記ケーブルは、前記MRIボアの外に出るような長いケーブルであってもPET画像性能に影響がない低導体抵抗のケーブルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項8】
前記ケーブルは、前記MRIボアの外に出るような長いケーブルであってもPET画像性能に影響がない高特性インピーダンスのケーブルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項9】
前記ケーブルは、PET及びMRI画像性能の低下が発生しないように、5cm〜900cmの長さを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項10】
前記シンチレーション結晶は、ガドリニウム(Gadolinium)成分が排除されたBGO、LSO、LYSO、LuAP、LuYAP、LaBr及びLuIの1種であるか、あるいはそれらの多層構造であることを特徴とする、請求項7に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項11】
前記ケーブルは、前記光センサーで変換された電荷信号の数に対応する数のチャネルを含み、前記チャネルを介してそれぞれの電荷信号を前記PET回路部に伝送する多チャネルケーブルであることを特徴とする、請求項2または3に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項12】
前記ケーブルは、前記光センサーで変換された電荷信号の数を超える数のチャネルを含む多チャネルケーブルであり、
前記電荷信号の数に対応する数のチャネルはそれぞれの電荷信号を前記PET回路部に伝送し、前記電荷信号の伝送を担当しないチャネルは接地されて前記電荷信号のクロストーク(interference)を最小化することを特徴とする、請求項2または3に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項13】
前記ケーブルは、遮蔽能力に優れた多チャネル微細同軸ケーブルであることを特徴とする、請求項2または3に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項14】
前記ケーブルは、クロストークが最小化する多チャネルツイストペア(twist pair)ケーブルであることを特徴とする、請求項2または3に記載のPET−MRI統合装置。
【請求項15】
前記シンチレーション結晶は、ガドリニウム(Gadolinium)成分が排除されたBGO、LSO、LYSO、LuAP、LuYAP、LaBr及びLuIの1種であるか、あるいはそれらの多層構造であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のPET−MRI統合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194295(P2010−194295A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223086(P2009−223086)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(509017594)成均館大学校 産学協力団 (10)
【氏名又は名称原語表記】SUNGKYUNKWAN UNIVERSITY Foundation for Corporate Collaboration
【住所又は居所原語表記】300 Cheoncheon−dong, Jangan−gu, Suwon−si, Gyeonggi−do 440−746, Republic of Korea
【Fターム(参考)】