説明

PET装置

【課題】 ポジトロン核種標識薬剤の減衰の影響をスキャン方法によって取り除くことで良質の画像を撮影できるPET装置を提供する。
【解決手段】 ポジトロン核種標識薬剤が投与された被検体を載置する寝台と、前記寝台との相対的な移動により前記被検体の各箇所に順次到達して、前記ポジトロン核種標識薬剤の時間経過による減衰に応じてその到達した箇所での放射線検出時間を増す検出器と、前記検出器での検出結果から前記被検体内の画像を再構成する再構成処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロン核種標識薬剤の減衰を加味してスキャンを行うPET装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(Positron Emission Tomography)装置は、放射能の存在位置を測定する装置である。ポジトロン放出核種で標識した薬剤を投与した被検体を体軸方向に全身スキャンして、その被検体内から放射されるγ線を検出し、検出結果から被検体内の画像を再構成する(例えば、「特許文献1」参照。)。
【0003】
特定の臓器や組織に選択的に集まる性質を有する薬剤をポジトロン放出核種で標識して被検体に投与することで、PET装置により特定の臓器や組織の状態や機能を画像として再構成することができる。ポジトロン放出核種は、18F(半減期:110分)や15O(半減期:2分)や11C(半減期:20分)や13N(半減期:10分)等である。このポジトロン放出核種で標識される薬剤は、水やブドウ糖やアミノ酸等である。
【0004】
被検体の全身をスキャンするには、被検体を載置する寝台と放射線を検出する検出器とを相対的に移動させる。検出器が位置した収集位置からの放射線のカウントを計数することができる。寝台と検出器との相対移動には、ステップ移動と連続移動とがある。ステップ移動は、順次収集位置に検出器を移動させ、各収集位置で共通する時間静止させる移動方法である。連続移動は、スキャン開始から終了まで一定の移動速度で静止することなく移動させる方法である。何れのスキャン方法においても、被検体のスキャン開始から全ての撮影範囲を終了するまでの間に一定の時間を要し、経過時間毎に放射線を収集している位置が異なる。
【0005】
ところで、ポジトロン放出核種標識薬剤は、核種が崩壊することにより放射線を放出するため、時間の経過に伴って放射線放出量が減衰する。そのため、同量のポジトロン放出核種標識薬剤から放出される放射線を検出しても、期間の始まりと終わりとでは時間当たりの放射線のカウントが異なる。
【0006】
従って、被検体の全身をスキャンするには一定の時間を要するため、たとえ始めにスキャンした収集位置と所定時間が経過した後にスキャンした収集位置とで集まっているポジトロン放出核種標識薬剤が同量となっていても、双方から得られる放射線のカウント数は異なり、画像上において異なった様相を呈してしまう。
【0007】
このポジトロン放出核種標識薬剤の減衰による影響を低減させるべく、従来よりPET装置では、ポジトロン放出核種標識薬剤の減衰による影響をソフトウェア的に画像処理して補正していた。即ち、実際に行ったスキャンでは、ポジトロン放出核種標識薬剤の減衰による影響を受けたままであるが、この後にデータを画像処理して擬似的にポジトロン放出核種標識薬剤の減衰による影響を低減させている。
【0008】
この画像処理による減衰補正は、その補正精度がアルゴリズムに左右されやすく、補正箇所によってはポジトロン放出核種標識薬剤の減衰以上に補正の影響を受けてしまったり、補正箇所によってはポジトロン放出核種標識薬剤の減衰による影響をうまく低減できていなかったりして、画像を劣化させてしまう。また、この画像処理による減衰補正のアルゴリズムを複雑化すればするほど、画像処理に負荷がかかり、画像処理に長時間を要してしまう。
【0009】
【特許文献1】特開2006−90752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポジトロン核種標識薬剤の減衰の影響をスキャン方法によって軽減することで良質の画像を撮影できるPET装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、ポジトロン放出核種で標識された薬剤が投与された被検体を載置する寝台と、前記ポジトロン放出核種から放出されたガンマ線を検出する検出器と、前記被検体と前記検出器とを相対的に移動させる移動機構と、前記検出器を前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じてその到達した収集位置での放射線検出時間を調整するスキャン制御部と、前記検出器での検出結果から前記被検体内の画像を再構成する再構成処理部と、を備えること、を特徴とする。
【0012】
前記スキャン制御部は、到達した収集位置での放射線検出時間を、前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて低下した放射線の検出カウント数を補う時間に調整するようにしてもよい。
【0013】
前記スキャン制御部は、前記被検体と前記検出器とを相対的なステップ移動により前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、各到達した収集位置での静止時間を前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて増すことで前記到達した収集位置での放射線検出時間を調整するようにしてもよい。
【0014】
前記スキャン制御部は、前記被検体と前記検出器との相対的な連続移動により前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、各到達した収集位置での移動速度を前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて低下させることで前記到達した収集位置での放射線検出時間を調整するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によっては、ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰の影響を画像処理によって補正するその処理負担を低減でき、画像処理による要する時間を省く若しくは短くすることができるとともに、画像処理によって画質を劣化させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るPET装置の好適な各実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態に係るPET装置1は、ガントリ2と寝台3とコンソール4とにより構成される。ガントリ2は、被検体内から放射される放射線を検出する。寝台3は、被検体が載置される。コンソール4は、撮影条件が設定され、この撮影条件に従ってガントリ2と寝台3とを制御する。また、コンソール4は、ガントリ2が検出した放射線から被検体内の画像を再構成する。
【0019】
ガントリ2は、寝台3に載置された被検体が挿入可能な開口を有する。ガントリ2には、検出器21が内包される。検出器21は、この開口を取り囲むように開口に沿って多数リング型に配置され、さらにこの多数リング型を開口の軸に沿って多層に配列されている。検出器21は、この開口軸に沿った配列幅の範囲内で放射線の入射を検出する。
【0020】
この多数リング型に配置された検出器21は、ポジトロン核種から放出された陽電子が近傍の自由電子と結合して消滅した際に放射される180°対向方向の2本のγ線を検出する。同時タイミングで検出器21に入射したγ線を180°対向方向の2本のγ線とみなすことでγ線の入射方向が決定され、その方向のγ線としてカウントされる。
【0021】
この検出器21は、所謂ガンマカメラであり、シンチレータと光電子像倍管(Photomultiplier tube:PMT)で構成される。BGO(ゲルマニウム酸ビスマス)で組成されたシンチレータは、γ線が衝突すると発光して420nmにピークを有する光を出力する。光電子増倍管は、シンチレータが出力した光が当たると光電変換により電気信号を出力する。
【0022】
ガントリ2と寝台3とは相対的に移動する。PET装置1には、ガントリ2又は寝台3の何れかを被検体軸方向に移動させる移動機構5が配置され、この移動機構5がガントリ2又は寝台3を被検体体軸方向に移動させることにより、ガントリ2と寝台3とが相対的に移動する。
【0023】
ガントリ2と寝台3とが相対的に移動することによって、即ち被検体と寝台3とが相対的に移動することによって、被検体に設定された各放射線検出箇所の周囲に検出器21が位置する。そして、検出器21の配列幅の範囲内にある放射線検出箇所から放射された放射線が検出器21に入射して検出される。
【0024】
コンソール4は、入力装置41と制御部42とデータ収集部43と再構成処理部44と表示装置45とを備える。入力装置41と表示装置45とは、制御部42との信号入出力が可能に直接又は間接的に電気的に接続されている。制御部42は、移動機構5と信号入出力が可能に直接又は間接的に電気的に接続されている。データ収集部43は、検出器21からの検出信号の入力が可能に直接又は間接的に電気的に接続されている。再構成処理部44は、データ収集部43が収集したデータの入力が可能に直接又は間接的に電気的に接続されている。表示装置45は、再構成処理部44で再構成された画像のデータが入力可能に直接又は電気的に接続されている。
【0025】
データ収集部43は、検出器21が検出したγ線をカウントして投影データを収集する。このデータ収集部43は、同一入射方向のγ線を同一のメモリにカウントし、入射方向とその方向からのγ線のカウント結果を投影データとして収集する。
【0026】
再構成処理部44は、投影データから被検体内の画像を再構成する。この再構成処理部44は、例えばコンボリュージョン・バックポロジェクション法を行う回路で構成される。
【0027】
制御部42は、被検体P各所に放射線を収集する収集位置を設定し、その収集位置から所望のカウント数のγ線が得られるように、ガントリ2と寝台3との相対移動を制御するスキャン制御手段である。即ち、検出器21と被検体との相対移動を制御する。所望のカウント数は、ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による放射線の減衰を無視する数である。
【0028】
この制御部42は、LCDディスプレイやCRTディスプレイ等の表示装置45に撮影条件を入力させる入力画面を表示させ、キーボードやマウス等の入力装置41から撮影条件を表す操作信号を受け取る。そして、受け取った撮影条件に従ってガントリ2と寝台3との相対移動の仕方を表すテーブルを生成し、このテーブルに従って移動機構5の駆動をコントロールする。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係る検出器21と寝台3との相対移動の動作を規定するテーブルTaを示す模式図である。本実施形態では、制御部42は、検出器21と寝台3とをステップ移動させる。ステップ移動は、被検体Pの全身を複数の収集位置に分割し、各収集位置に検出器21を所定時間静止させる移動である。
【0030】
制御部42では、被検体Pの各位置での静止時間を規定したテーブルTaを作成する。そして、被検体Pを各位置にステップ移動させて、テーブルTaに規定した静止時間だけその放射線検出箇所での放射線検出時間を当てる。
【0031】
テーブルTaには、収集位置を表す収集位置ナンバーNと静止時間STとが対応付けられて記憶されている。収集位置ナンバーNは、検出器21が放射線を検出する順番に各収集位置に付与される。静止時間STは、収集位置ナンバーNで表される収集位置で検出器21と寝台3とを静止させる時間を表す。
【0032】
例えば、収集位置ナンバー1に対応して静止時間STが記憶され、収集位置ナンバー2に対応して静止時間STが記憶されたテーブルTaを生成すると、制御部42は、収集位置ナンバー1で表される収集位置に検出器21がくるように移動機構5に検出器21と寝台3とを移動させて、その収集位置でSTだけ検出器21と寝台3とを静止させるように移動機構5をコントロールして放射線検出時間とする。静止時間STが経過すると、制御部42は、収集位置ナンバー2で表される収集位置に検出器21がくるように移動機構5に検出器21と寝台3とを移動させて、その収集位置でSTだけ検出器21と寝台3とを静止させるように移動機構5をコントロールして放射線検出時間とする。
【0033】
図3は、このテーブルTaに従ってスキャンするPET装置1の動作を示すフローチャートである。
【0034】
PET装置1は、スキャン開始が入力されると(S01)、スキャンを開始する。入力装置41に配列されたスキャン開始の動作が割り当てられたボタンが押下されると、そのボタンの押下信号が制御部42に入力される。制御部42は、スキャン開始の動作が割り当てられたボタンの押下信号が入力されるとスキャンのための制御を開始する。
【0035】
制御部42は、まず収集位置ナンバーNを「1」に初期化する(S02)。収集位置ナンバーNを初期下することで始めに放射線が検出される収集箇所が決定される。さらに、制御部42は、タイマーPTを「0」に初期化する(S03)。タイマーPTは、静止時間を計時するためのカウンタ値であり、検出器21と寝台3とが静止した状態で放射線が検出されている時間経過を示す。
【0036】
次に、制御部42は、収集位置ナンバーNに対応する静止時間STをテーブルTaから読み出す(S04)。最初は、収集位置ナンバーNが「1」に初期化されているため、収集位置ナンバー1に対応してテーブルTaに記憶されている静止時間STを読み出す。
【0037】
静止時間STを読み出すと、制御部42は、検出器21と寝台3とを収集位置ナンバーNに対応する収集位置へ相対移動させる(S05)。制御部42は、移動機構5に対して駆動信号を出力する。移動機構5は、駆動信号が出力されている間、駆動を行い、伴って検出器21と寝台3とが相対的に移動する。検出器21と寝台3との相対的な移動は移動機構5により検出されている。移動機構5は、モータの回転量を検出するエンコーダ等を備え、検出した値を制御部42に出力する。制御部42は、移動機構5から入力された値を検出器21と寝台3との相対的な移動の結果として用い、検出器21と寝台3との相対的な移動の結果、検出器21が収集位置ナンバーNで表される収集位置に達したか判断する。収集位置ナンバーNで表される収集位置に達したと判断すると、駆動信号の出力を停止する。即ち、静止させる。
【0038】
検出器21と寝台3とを収集位置ナンバーNに対応する収集位置へ相対移動させると、制御部42は、タイマーPTのカウントアップを開始する(S06)。即ち、収集位置ナンバーNに対応する収集位置から放射される放射線の検出時間を計時する。
【0039】
収集位置ナンバーNに対応する収集位置で静止させている間、検出器21はこの収集位置からの放射線を検出し、データ収集部43は投影データを収集し、再構成処理部44は画像の再構成処理を行う(S07)。尚、再構成処理部44による画像の再構成はリアルタイムでなくともよい。
【0040】
制御部42は、タイマーPTをカウントアップさせる毎に、タイマーPTが読み出した静止時間ST以上となっているか判断する(S08)。この判断により、収集位置ナンバーNで表される収集位置から放射される放射線の検出時間がSTを満たしたか否かが決定される。
【0041】
判断の結果、PT≧STでなければ(S08,NO)、タイマーPTのカウントアップを継続し(S06)、放射線の検出と投影データの収集と再構成処理とを継続する(S07)。一方、判断の結果、PT≧STであれば(S08,Yes)、収集位置ナンバーNで表される収集位置から放射される放射線の検出時間がSTを満たすように検出器21と寝台3とが静止されたこととなり、次の収集位置のスキャンを行う。
【0042】
次の収集位置のスキャンでは、制御部42は、まず収集位置ナンバーNをN+1とすることで(S09)、次にスキャンする収集位置を表す収集位置ナンバーNにカウントアップし、次の収集位置を規定する。そして、この新たな収集位置ナンバーNがテーブルTaに存在するか検索する(S10)。
【0043】
新たな収集位置ナンバーNがテーブルTaに存在すれば(S10,Yes)、新たな収集位置ナンバーN、例えば収集位置ナンバー1の次の収集位置ナンバー2に対応する収集位置のスキャンを行うべく、タイマーPTを0に初期化し(S03)、新たな収集位置ナンバーNに対応する静止時間(ST)を読み出し(S04)、新たな収集位置ナンバーNに対応する収集位置へ検出器21を移動させ(S05)、タイマーPTがST以上となるまで(S08,Yes)、タイマーPTのカウントアップと(S06)、放射線の検出(S07)を行う。即ち、新たな収集位置ナンバーNに対応する収集位置に検出器21が達してからSTを満たすまでの時間、新たな収集位置ナンバーNに対応する収集位置からの放射線を検出する。
【0044】
新たな収集位置ナンバーNがテーブルTaに存在しなければ(S10,No)、全ての収集位置をスキャンしたこととなり、PET装置1の動作を終了する。
【0045】
図4は、このテーブルTaを生成してテーブルTaに従って検出器21と寝台3との相対移動を制御する第1の実施形態に係る制御部42の詳細構成を示すブロック図である。
【0046】
この制御部42は、表示制御部421と静止時間テーブル記憶部422と減衰率算出手段423と半減期テーブル424と時間調整手段425と移動コントローラ426とにより構成される。表示制御部421は、撮影条件を設定するための構成であり、静止時間テーブル記憶部422と減衰率算出手段423と半減期テーブル424と時間調整手段425とは、テーブルTaを生成するための構成であり、移動コントローラ426は、テーブルTaに従って移動機構5をコントロールするための構成である。
【0047】
表示制御手段421は、表示装置45にテーブルTaを生成するための撮影条件入力画面を表示する。撮影条件入力画面のフォームは予め記憶しされている。
【0048】
図5は、撮影条件入力画面を示す模式図である。この撮影条件入力画面では、撮影条件として、使用するポジトロン放出核種標識薬剤の種類と、被検体Pを分割して撮影する数、即ち収集位置の数PNと、各収集位置での暫定の放射線検出時間DTが入力される。
【0049】
ポジトロン放出核種標識薬剤の種類は、プルダウンメニューによって選択可能に表示される。このプルダウンメニューに表示されるポジトロン放出核種標識薬剤は、半減期テーブル424に記憶されているものが表示される。
【0050】
半減期テーブル424には、各種のポジトロン放出核種標識薬剤の種類と、その種類で表されるポジトロン放出核種標識薬剤の半減期Hを表す値とが対になって予め記憶されている。
【0051】
また、プルダウンメニューに使用するポジトロン放出核種標識薬剤がない場合、使用するポジトロン核種放出核種標識薬剤の種類とその半減期Hとを入力可能としている。入力されたポジトロン核種放出核種標識薬剤の種類とその半減期Hとは、半減期テーブル424に記憶される。
【0052】
静止時間テーブル記憶部422は、生成されたテーブルTaを記憶する。収集位置ナンバーNのテーブルTaを作成する際には、収集位置ナンバーN−1,N−2・・・が参照される。従って、静止時間テーブル記憶部422には、まず撮影条件入力画面で入力された収集位置の数に応じて各収集位置につき割り振られた収集位置ナンバーNのみが格納され、順次収集位置ナンバーNの若い順に静止時間STが作成されて格納される。例えば、収集位置の数として「8」が入力されると、収集位置ナンバーN=1〜N=8までが格納される。
【0053】
減衰率算出手段423は、各収集位置に検出器21が到達した時点でのポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の時間経過による減衰率Rを算出する。減衰率Rは、始期を基準に放射線を放出するポジトロン放出核種の割合を表す。この減衰率Rは、経過時間Tと、使用するポジトロン放出核種標識薬剤の半減期Hによって算出される。経過時間Tの始期は、被検体Pのスキャン開始時であり、最初に放射線検出が行われる収集位置ナンバー1に対応する収集位置からの放射線検出が始まった時である。経過時間Tの終期は、収集位置ナンバーNに対応する収集位置に検出器21が到達する時である。
【0054】
経過時間Tは、その収集位置以前にスキャンする他の各収集位置での静止時間STの累積値である。収集位置ナンバーNに対応する収集位置での経過時間Tは、収集位置ナンバーN−1、N−2、・・・に対応する各収集位置での静止時間STN−1、STN−2、・・・の全てを加算した時間である。
【0055】
即ち、減衰率算出手段423は、以下の計算式によって経過時間Tを算出する。
【0056】
【数1】

【0057】
但し、STを「0」とし、最初にスキャンする収集位置ナンバー1に対応する収集位置に対する経過時間Tは「0」となる。
【0058】
半減期Hは、半減期テーブル424から読み出す。減衰率算出手段423は、撮影条件入力画面で入力されたポジトロン放出核種標識薬剤の種類に対応する半減期Hを半減期テーブル424から読み出す。
【0059】
減衰率算出手段423は、以下の計算式によってN番目の収集位置に到達した時点での減衰率Rを算出する。
【0060】
【数2】

【0061】
時間調整手段425は、N番目の収集位置での放射線検出時間、即ち収集位置ナンバーNに対応する収集位置で検出器21と寝台3との相対移動を静止させておく静止時間STを算出する。この静止時間STは、求めた減衰率Rと、撮影条件入力画面で入力された暫定の放射線検出時間DTとにより算出される。
【0062】
時間調整手段425は、以下の計算式によって静止時間STを算出する。
【0063】
【数3】

【0064】
この計算式によると、最初にスキャンが行われる収集位置ナンバー1に対応する収集位置では、減衰率R=1であり、静止時間ST=DTとなる。
【0065】
この計算式による静止時間STは、最初に放射線を検出した収集位置と収集位置ナンバーNに対応する収集位置とにおいて同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっており、かつポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の減衰がなかったとすれば、収集位置ナンバーNに対応する収集位置で検出器21に入射されるであろう放射線のカウントと同数のカウントを得るための時間である。
【0066】
ポジトロン放出核種標識薬剤から放出される単位時間当たりの放射線の量は、最初に放射線を検出した収集位置と収集位置ナンバーNに対応する収集位置とにおいて同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっていても、収集位置ナンバーNに対応する収集位置に検出器21が到達したときには減衰率Rの割合に減少している。時間調整手段425では、このポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の減衰によるカウントの減少を放射線検出時間によって補う静止時間STが算出される。
【0067】
例えば、収集位置ナンバー1に対応する収集位置では、減衰率Rは「1」であり、その収集位置での静止時間STは、入力された放射線検出時間DTである。入力された放射線検出時間DTが半減期Hと同時間であったとすると、収集位置ナンバー1に対応する収集位置で放射線検出時間DTだけ静止し、収集位置ナンバー2に対応する収集位置に検出器21が到達するときには経過時間TはDTとなっている。そのため、収集位置ナンバー2に対応する収集位置での同量のポジトロン放出核種標識薬剤の単位時間当たりの放射線放出は半減している。収集位置ナンバー1と収集位置ナンバー2に対応する収集位置に同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっていれば、その収集位置の状態や機能を表すカウントは同数であるべきなので、収集位置ナンバー2での放射線検出時間が2倍に増加するように静止時間STをSTの2倍とする。
【0068】
移動コントローラ426は、静止時間テーブル記憶部422に記憶されたテーブルTaを読み出して、テーブルTaに従って移動機構5をコントロールし、検出器21と寝台3とのステップ移動と各収集位置での静止時間STを制御する。この移動コントローラ426は、収集位置ナンバーNに対応する収集位置に検出器21を移動させると、テーブルTaを参照して、収集位置ナンバーNと対になって記憶されている静止時間STだけ検出器21と寝台3とを静止させる。そして、静止時間STが経過すると、収集位置ナンバーN+1に対応する収集位置に検出器21がくるように、検出器21と寝台3とを移動させる。すなわち、図3に示した動作を制御する。
【0069】
図6は、この第1の実施形態にかかるPET装置のテーブルTaの作成動作を示すフローチャートである。
【0070】
まず、表示制御部421は、撮影条件入力画面を表示する(S20)。PET装置1には、オペレータにより、入力装置41を用いてポジトロン放出各種標識薬剤の種類が入力され(S21)、また収集位置数PNと収集位置での暫定の放射線検出時間DTとが入力される(S22)。これら撮影条件が入力されると、静止時間テーブル記憶部422に記憶されているテーブルTaには、1から収集位置数PNの値までの各自然数が収集位置ナンバーNとして割り当てられて格納される。
【0071】
減衰率算出手段423は、収集位置ナンバーNをN=1に初期化し(S23)、また経過時間TをT=0に初期化し(S24)、入力されたポジトロン放出各種標識薬剤の種類と対になった半減期Hを半減期テーブル424から読み出す(S25)。初期化は、収集位置ナンバー1の減衰率Rを算出するためである。
【0072】
収集位置ナンバーNを初期化し、また経過時間Tを初期化し、半減期Hを読み出すと、これらパラメータを用いて経過時間Tを経過したときの減衰率Rを算出する(S26)。減衰率Rの算出では、減衰率R=exp(−(ln2/半減期H)*経過時間T)にこれらパラメータを当てはめて算出する。収集位置ナンバーNと経過時間Tとが初期化された後の最初の減衰率Rの算出、すなわち収集位置ナンバー1に対応する収集位置での減衰率Rの算出では、減衰率R=1となる。
【0073】
収集位置ナンバーNに対応する収集位置での減衰率Rが算出されると、時間調整手段425は、入力された暫定の放射線検出時間DTを減衰率Rで減じて静止時間STを算出する(S27)。収集位置ナンバー1に対応する減衰率Rは「1」であるので、静止時間STは入力された放射線検出時間DTとなる。
【0074】
静止時間STを算出すると、時間調整手段425は、静止時間テーブル記憶部422に、テーブルTaに格納されている収集位置ナンバーNと静止時間STとを対応付けて記憶させる(S28)。これにより、収集位置ナンバーNに対応する収集位置での静止時間STが設定される。
【0075】
次に、収集位置ナンバーNをN+1とし(S29)、収集位置ナンバーN>収集位置数PNであるか判断する(S30)。即ち、全ての収集位置に対して静止時間STが設定されたか判断する。
【0076】
収集位置ナンバーN>収集位置数PNであると(S30,Yes)、全ての収集位置に対して静止時間STが設定されたのでテーブルTaの作成動作を終了する。
【0077】
一方、収集位置ナンバーN>収集位置数PNでなければ(S30,No)、新たな収集位置ナンバーNに対応する収集位置についての静止時間STを算出する処理を行う。
【0078】
新たな収集位置ナンバーNに対応する収集位置についての静止時間STを算出する処理では、経過時間TをT=TN−2+STN−1とした上で(S31)、減衰率Rの算出(S26)から、暫定の放射線検出時間DTを新たな減衰率Rで減じた新たな収集位置ナンバーNに対応する静止時間STの算出を得て(S27)、収集位置ナンバーN>収集位置数PNであるかの判断(S30)までのS26〜S30を行う。
【0079】
収集位置数PNが例えば3であれば、収集位置ナンバー1に対応する収集位置についての静止時間STの算出後はN>PNとなっていない。従って、N=N+1によって収集位置ナンバーN=2とし、収集位置ナンバー2について静止時間STの算出を行う。このとき、T=TN−2+STN−1(N=2)によっては、T=0であり、ST=DTであるため、T=DTとして減衰率Rを算出した上で静止時間STを算出する。また、収集位置ナンバー3について静止時間STの算出では、T=TN−2+STN−1(N=3)によっては、T=DTであるため、T=DT+STとして減衰率Rを算出した上で静止時間STを算出する。
【0080】
図7は、この第1の実施形態に係るPET装置1によるスキャン態様を示すグラフである。縦軸は減衰率Rを示し、横軸は収集位置ナンバーNと経過時間Tを示す。
【0081】
図7に示すように、このPET装置1によると、各収集位置ナンバーNに対応する収集位置に到達した時点での減衰率Rとその収集位置での静止時間STとの積分値Lが、全て等しくなるように静止時間STが調整される。そうすると、減衰率Rの低下による影響が静止時間STを増加させることで相殺され、同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっている場合に、スキャンの時間的なズレに関係のないスキャン結果を得ることができる。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るPET装置1について説明する。このPET装置1は、検出器21と寝台3との相対移動を所定時間間隔IT毎に速度を変えながらも連続的に行い、途中停止はしない。また、所定時間間隔IT毎に減衰率Rを算出し、減衰率Rが減少する毎に各収集位置を通過する移動速度Vを遅くしていき、各収集位置を通過ために要する時間を増加させて放射線検出時間を増やしていく。尚、本実施形態にいう各収集位置は、所定時間間隔ITよりも少ない時間で通過する範囲をいう。
【0083】
図8は、この第2の実施形態に係るPET装置1の制御部42の詳細構成を示すブロック図である。この制御部42では、検出器21と寝台3との相対移動を速度変更によってコントロールする。この制御部42は、表示制御部421と速度テーブル記憶部427と減衰率算出手段423と半減期テーブル424と速度調整手段428と移動コントローラ426とにより構成される。速度テーブル記憶部427は、速度調整のシーケンスを記述したテーブルTbを記憶する。減衰率算出手段423と速度調整手段428は、この速度調整のシーケンスを記述したテーブルTbを作成する。
【0084】
図9は、第2の実施形態に係る検出器21と寝台3との相対移動の動作を規定するテーブルTbを示す模式図である。テーブルTbには、所定時間間隔ナンバーNと移動速度とが対応付けられて記憶されている。所定時間間隔ナンバーNは、速度が変更される時間間隔毎に付与される。移動速度は、所定時間間隔ナンバーNで表される順番の時間間隔での検出器21と寝台3との相対移動速度を表す。
【0085】
例えば、所定時間間隔ナンバー1に対応して移動速度Vが記憶され、所定時間間隔ナンバー2に対応して移動速度Vが記憶されたテーブルTbを生成すると、制御部42は、所定時間間隔ナンバー1で表される時間の間、移動速度Vで検出器21と寝台3とを相対移動させるように移動機構5をコントロールし、所定時間間隔ナンバー2で表される時間の間、移動速度Vで検出器21と寝台3とを相対移動させるように移動機構5をコントロールし、検出器21が通過する各収集位置での放射線検出時間を調整する。
【0086】
移動コントローラ426は、速度テーブル記憶部427に記憶されたテーブルTbを読み出して、テーブルTbに従って移動機構5をコントロールし、検出器21と寝台3との相対移動の速度を制御する。この移動コントローラ426は、所定時間間隔ナンバーNに対応する時間になると、テーブルTbを参照して、移動速度で検出器21と寝台3とを相対移動させるように減速させる。
【0087】
図10は、このテーブルTbに従ってスキャンするPET装置1の動作を示すフローチャートである。
【0088】
PET装置1は、スキャン開始が入力されると(S41)、スキャンを開始する。入力装置41に配列されたスキャン開始の動作が割り当てられたボタンが押下されると、そのボタンの押下信号が制御部42に入力される。移動コントローラ426は、スキャン開始の動作が割り当てられたボタンの押下信号が入力されるとスキャンのための制御を開始する。
【0089】
移動コントローラ426は、まず所定時間間隔ナンバーNを「1」に初期化する(S42)。さらに、移動コントローラ426は、タイマーPTを「0」に初期化する(S43)。タイマーPTは、所定時間間隔を計時するためのカウンタ値である。
【0090】
次に、移動コントローラ426は、所定時間間隔ナンバーNに対応する移動速度VをテーブルTbから読み出す(S44)。最初は、所定時間間隔ナンバーNが「1」に初期化されているため、所定時間間隔ナンバー1に対応してテーブルTbに記憶されている移動速度Vを読み出す。
【0091】
移動速度Vを読み出すと、タイマーPTのカウントアップを開始する(S45)。同時に、移動コントローラ426は、検出器21と寝台3とを移動速度Vで相対移動させる(S46)。所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔の間、検出器21はこの収集位置からの放射線を検出し、データ収集部43は投影データを収集し、再構成処理部44は画像の再構成処理を行う(S047)。
【0092】
移動コントローラ426は、タイマーPTをカウントアップさせる毎に、タイマーPTが所定時間間隔IT以上となっているか判断する(S48)。判断の結果、PT≧ITでなければ(S48,NO)、タイマーPTのカウントアップを継続し、移動速度Vを持続させる。即ち、S46〜S48を繰り返す。一方、判断の結果、PT≧ITであれば(S48,Yes)、所定時間間隔で通過する次の収集位置を次の移動速度VN+1でスキャンする。
【0093】
次の収集位置のスキャンでは、移動コントローラ426は、まず所定時間間隔ナンバーNをN+1とし(S49)、この新たな所定時間間隔ナンバーNがテーブルTbに存在するか検索する(S50)。
【0094】
新たな所定時間間隔ナンバーNがテーブルTbに存在すれば(S50,Yes)、タイマーPTを0に初期化し(S43)、新たな所定時間間隔ナンバーNに対応する移動速度Vを読み出し(S44)、タイマーPTがIT以上となるまで(S48,Yes)、移動速度Vで相対移動し(S47)、所定時間間隔で通過する新たな収集位置の放射線を検出する(S47)。
【0095】
新たな所定時間間隔ナンバーNがテーブルTbに存在しなければ(S50,No)、全ての収集位置をスキャンしたこととなり、PET装置1の動作を終了する。
【0096】
表示制御手段421は、表示装置45にテーブルTbを生成するための撮影条件入力画面を表示する。図11は、撮影条件入力画面を示す模式図である。この撮影条件入力画面では、撮影条件として、使用するポジトロン放出核種標識薬剤の種類と、移動速度Vを可変する所定時間間隔ITと、暫定の移動速度TVが入力される。
【0097】
減衰率算出手段423は、所定時間間隔ナンバーNで表される所定時間間隔に到達した時点でのポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の時間経過による減衰率Rを算出する。経過時間Tの始期は、被検体Pのスキャン開始時である。経過時間Tの終期は、所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔が始まったときである。減衰率Rの計算式は(数2)と同様である。
【0098】
速度調整手段428は、各収集位置での放射線検出時間、即ち所定時間間隔ナンバーNに対応する時間間隔で検出器21と寝台3とが相対移動する移動速度Vを算出する。この移動速度Vは、求めた減衰率Rと、撮影条件入力画面で入力された暫定の移動速度TVとにより算出される。
【0099】
速度調整手段428は、以下の計算式によって移動速度Vを算出する。
【0100】
【数4】

【0101】
この計算式によると、最初の所定時間間隔ITでは、減衰率R=1であり、移動速度V=TVとなる。
【0102】
この計算式による移動速度Vは、最初に放射線を検出した収集位置と所定時間間隔ナンバーNに対応する時間内に通過する収集位置とにおいて同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっており、かつポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の減衰がなかったとすれば、所定時間間隔ナンバーNに対応する時間内に通過する収集位置で検出器21に入射されるであろう放射線のカウントと同数のカウントを得るための時間である。
【0103】
速度調整手段428では、このポジトロン放出核種標識薬剤の放射線の減衰によるカウントの減少を収集位置を通過する移動速度Vを調整することで放射線検出時間によって補う、そのための移動速度Vが算出される。
【0104】
例えば、所定時間間隔ナンバー1に対応する所定時間間隔IT内に通過する収集位置では、減衰率Rは「1」であり、その収集位置での移動速度Vは、入力された移動速度TVである。所定時間間隔ITが半減期Hと同時間であったとすると、所定時間間隔ナンバー2に対応する所定時間間隔IT内に通過する収集位置に検出器21が到達するときには経過時間TとしてITが経過している。そのため、所定時間間隔ナンバー2に対応する所定時間間隔IT内で通過する収集位置での同量のポジトロン放出核種標識薬剤の単位時間当たりの放射線放出は半減している。所定時間間隔ナンバー1と所定時間間隔ナンバー2に対応する所定時間間隔IT内で通過する各収集位置に同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっていれば、その収集位置の状態や機能を表すカウントは同数であるべきなので、所定時間間隔ナンバー2に対応する所定時間間隔ITの間、所定時間間隔ナンバー2に対応する所定時間間隔IT内で通過する収集位置を2倍の時間で通過して放射線検出時間を2倍に増加させるように、移動速度VをTVの半分にする。
【0105】
図12は、この第2の実施形態にかかるPET装置のテーブルTbの作成動作を示すフローチャートである。
【0106】
まず、表示制御部421は、撮影条件入力画面を表示する(S60)。オペレータにより、入力装置41を用いてポジトロン放出各種標識薬剤の種類が入力され(S61)、また速度を可変させる時間間隔ITと暫定の移動速度TVとが入力される(S62)。
【0107】
減衰率算出手段423は、所定時間間隔ナンバーNをN=1に初期化し(S63)、また経過時間TをT=0に初期化し(S64)、入力されたポジトロン放出各種標識薬剤の種類と対になった半減期Hを半減期テーブル424から読み出す(S65)。
【0108】
所定時間間隔ナンバーNを初期化し、また経過時間Tを初期化し、半減期Hを読み出すと、これらパラメータを用いて経過時間Tを経過したときの減衰率Rを算出する(S66)。減衰率Rの算出では、減衰率R=exp(−(ln2/半減期H)*経過時間T)にこれらパラメータを当てはめて算出する。
【0109】
所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔ITでの減衰率Rが算出されると、速度調整手段428は、入力された暫定の移動速度TVを減衰率Rで乗じて移動速度Vを算出する(S67)。
【0110】
移動速度Vを算出すると、速度調整手段428は、速度テーブル記憶部427に、テーブルTbに格納されている所定時間間隔ナンバーNと移動速度Vとを対応付けて記憶させる(S68)。これにより、所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔ITの時間内で通過する収集位置での移動速度Vが設定される。
【0111】
次に、所定時間間隔ナンバーNをN+1とし(S69)、またスキャンが終了した範囲SをS=S+V×ITにより算出する(S70)。そして、S≧全撮影範囲ASであるか判断する(S71)。即ち、全ての収集位置に対して移動速度Vが設定されたか判断する。
【0112】
S≧全撮影範囲ASであると(S71,Yes)、全ての収集位置に対して移動速度Vが設定されたのでテーブルTbの作成動作を終了する。
【0113】
一方、S≧全撮影範囲ASでなければ(S71,No)、新たな所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔IT内で通過する収集位置についての移動速度Vを算出する処理を行う。
【0114】
新たな所定時間間隔ナンバーNに対応する収集位置についての移動速度Vを算出する処理では、経過時間TをT=(N−1)×ITとした上で(S71)、S66〜S71を行う。
【0115】
全撮影範囲ASが3つの所定時間間隔ITで通過するとすれば、所定時間間隔ナンバー1に対応する移動速度Vの算出後はS≧全撮影範囲ASとなっていない。従って、N=N+1によって所定時間間隔ナンバーN=2とし、所定時間間隔ナンバー2について移動速度Vの算出を行う。このとき、T=(N−1)×IT(N=2)によっては、T=ITとして減衰率Rを算出した上で移動速度Vを算出する。また、(所定時間間隔ナンバー3について移動速度Vの算出では、T=2×ITとして減衰率Rを算出した上で移動速度Vを算出する。
【0116】
図13は、この第2の実施形態に係るPET装置1によるスキャン態様を示すグラフである。縦軸は減衰率Rと移動速度Vを示し、横軸は所定時間間隔ナンバーNを示す。
【0117】
図13に示すように、このPET装置1によると、各所定時間間隔ナンバーNに対応する所定時間間隔ITに到達した時点での減衰率Rとその所定時間間隔ITでの移動速度Vとの積分値Lが、全て等しくなるように移動速度Vが調整される。そうすると、減衰率Rの低下による影響が移動速度Vを低下させて放射線検出時間を増加させることで相殺され、同量のポジトロン放出核種標識薬剤が集まっている場合に、スキャンの時間的なズレに関係のないスキャン結果を得ることができる。
【0118】
このように、各実施形態のPET装置1では、ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰に応じて各収集位置での検出器21の静止時間STや移動速度Vを算出し、算出結果に応じて検出器21と寝台3とを相対移動させるようにした。この結果として、検出器21は、ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰に応じて各収集位置での放射線検出時間を増す。従って、この減衰の影響で低下した放射線のカウントをスキャン方法によって相殺することとなり、ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰の影響を画像処理によって補正するその処理負担が軽減され、画像処理による要する時間を省く若しくは少なくすることができるとともに、画像処理によって画質を劣化させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】第1及び第2の実施形態に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る検出器と寝台との相対移動の動作を規定するテーブルを示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る検出器と寝台との相対移動の動作を規定するテーブルに従ってスキャンするPET装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態に係る撮影条件入力画面を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態にかかるPET装置の検出器と寝台との相対移動の動作を規定するテーブルの作成動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係るPET装置によるスキャン態様を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係るPET装置の制御部の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係る検出器と寝台との相対移動の動作を規定するテーブルを示す模式図である。
【図10】第2の実施形態に係る検出器と寝台との相対移動の動作を規定するテーブルに従ってスキャンするPET装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態に係る撮影条件入力画面を示す模式図である。
【図12】第2の実施形態にかかるPET装置のテーブルの作成動作を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態に係るPET装置によるスキャン態様を示すグラフである。
【符号の説明】
【0120】
1 PET装置
2 ガントリ
21 検出器
3 寝台
4 コンソール
41 入力装置
42 制御部
421 表示制御部
422 静止時間テーブル記憶部
423 減衰率算出手段
424 半減期テーブル
425 時間調整手段
426 移動コントローラ
427 速度テーブル記憶部
428 速度調整手段
43 データ収集部
44 再構成処理部
5 移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジトロン放出核種で標識された薬剤が投与された被検体を載置する寝台と、
ポジトロン放出核種から放出されたガンマ線を検出する検出器と、
前記被検体と前記検出器とを相対的に移動させる移動機構と、
前記検出器を前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じてその到達した収集位置での放射線検出時間を調整するスキャン制御部と、
前記検出器での検出結果から前記被検体内の画像を再構成する再構成処理部と、
を備えること、
を特徴とするPET装置。
【請求項2】
前記スキャン制御部は、
到達した収集位置での放射線検出時間を、前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて低下した放射線の検出カウント数を補う時間に調整すること、
を特徴とする請求項1記載のPET装置。
【請求項3】
前記スキャン制御部は、
前記被検体と前記検出器とを相対的なステップ移動により前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、各到達した収集位置での静止時間を前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて増すことで前記到達した収集位置での放射線検出時間を調整すること、
を特徴とする請求項1記載のPET装置。
【請求項4】
前記スキャン制御部は、
前記被検体と前記検出器との相対的な連続移動により前記被検体の各収集位置に順次到達させるように前記移動機構を制御すると共に、各到達した収集位置での移動速度を前記ポジトロン放出核種の時間経過による減衰に応じて低下させることで前記到達した収集位置での放射線検出時間を調整すること、
を特徴とする請求項1記載のPET装置。
【請求項5】
前記スキャン制御部は、
前記ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰に応じた前記静止時間を、前記各収集位置について算出する時間調整手段を含むこと、
を特徴とする請求項3記載のPET装置。
【請求項6】
前記ポジトロン放出核種標識薬剤の時間経過による減衰に応じた前記移動速度を、前記各収集位置について算出する速度調整手段を含むこと、
を特徴とする請求項4記載のPET装置。
【請求項7】
前記時間調整手段は、
暫定の放射線検出時間を記憶し、
最初に放射線を検出する収集位置に対する放射線検出の開始時から前記検出器が前記各収集位置に至るまでの各経過時間に基づく減衰率に応じて、前記暫定の放射線検出時間を増加させた時間を、各収集位置での前記静止時間として算出すること、
を特徴とする請求項5記載のPET装置。
【請求項8】
前記速度調整手段は、
暫定の移動速度を記憶し、
最初に放射線を検出する収集位置に対する放射線検出の開始時から前記検出器が前記各収集位置に至るまでの各経過時間に基づく減衰率に応じて、前記暫定の移動速度を低下させた速度を、各収集位置での前記移動速度として算出すること、
を特徴とする請求項6記載のPET装置。
【請求項9】
前記時間調整手段は、
前記暫定の放射線検出時間と最初に放射線を検出する収集位置に対する放射線検出の開始時点での前記減衰率との積分値と、各収集位置での静止時間と減衰率との積分値とが等しくなる静止時間を各収集位置について算出すること、
を特徴とする請求項7記載のPET装置。
【請求項10】
前記速度調整手段は、
前記暫定の移動速度と最初に放射線を検出する収集位置に対する放射線検出の開始時点での前記減衰率との積分値と、各収集位置での移動速度と減衰率との積分値とが等しくなる移動速度を各収集位置について算出すること、
を特徴とする請求項8記載のPET装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−196961(P2008−196961A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32120(P2007−32120)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】