説明

PET/MRI一体型装置

【課題】コンパクトな構成で高品質な合成画像を得ることができる、PET/MRI一体型装置を提供する。
【解決手段】PET/MRI一体型装置10は、MRIユニット12およびPETユニット14を備える。MRIユニット12は、空隙Gを介して対向配置される一対の板状継鉄22a,22b、互いに対向するように板状継鉄22a,22bに設けられる一対の永久磁石24a,24b、および板状継鉄22a,22bを磁気的に結合する支持継鉄26を含む。PETユニット14は、シンチレータ44を有する放射線検出部36、光ガイド48を有する光ガイド部38、およびPSPMT50を有する光検出部40を含む。貫通孔30には支持継鉄26に接することのないように磁気シールド部材32が挿入される。PSPMT50は、貫通孔30内で磁気シールド部材32内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PET/MRI一体型装置に関し、より特定的には、生体の断層画像を撮像するためのPET/MRI一体型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、陽電子放出核種で標識した薬剤が投与された生体からの放射線を検出することによって、生体内における薬剤の濃度分布を表す断層画像を撮像するPET(Positron Emission Tomography)装置が知られている。また、一般に、水素原子核の核磁気共鳴現象を利用して、たとえば生体の内部器官の形状を詳細に表す断層画像を撮像するMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置が知られている。
【0003】
たとえば特許文献1には、PET装置で撮像した断層画像(PET画像)とMRI装置で撮像した断層画像(MRI画像)とを合成する(重ね合わせる)ことによって、生体のどの器官のどの位置に薬剤が集中しているのかを表す合成画像を得るシステムが開示されている。このようなシステムにおいて、生体のどの器官のどの位置に薬剤が集中しているのかを正確に表す合成画像を得るためには、互いにあらゆる方向にずれのないPET画像とMRI画像とを撮像することが望ましい。また、生体の状態は時間経過に伴って変化するので、同時に撮像したPET画像とMRI画像とを合成することが望ましい。
【0004】
特許文献1のシステムでは、PET装置に光センサとして用いられる光電子増倍管の出力は磁界の影響によって低下するので、生体を載せた受け台をPET装置とMRI装置との間で移動させ、PET画像とMRI画像とを撮像する。しかし、生体が全く動かないようにPET装置とMRI装置との間で受け台を移動させることは困難であるので、特許文献1のシステムでは、PET画像とMRI画像とにずれが生じてしまう。また、PET装置とMRI装置とで同時に撮像できないので、一方での撮像時と他方での撮像時とで生体の状態が変化している場合がある。これらの理由から、特許文献1のシステムでは、高品質な合成画像を得ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、生体を移動させることなくPET装置とMRI装置とで生体を同時に撮像するためのPET/MRI一体型装置が検討されており、その一例が特許文献2に開示されている。特許文献2のPET/MRI一体型装置では、光電子増倍管を磁界の影響が及びにくくなる程度にMRI装置から離し、磁界発生空間に配置されるシンチレータからの光を光ファイバによって光電子増倍管に案内している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−75596号公報
【特許文献2】特開2004−226256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シンチレータからの光は、光ファイバ1mあたり70%程度も減衰してしまう。このために、特許文献2のように光ファイバが長くなると高品質なPET画像ひいては合成画像が得られなくなるという問題があった。また、特許文献2のようにMRI装置から光電子増倍管を離すと装置全体が大きくなるという問題もあった。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、コンパクトな構成で高品質な合成画像を得ることができる、PET/MRI一体型装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載のPET/MRI一体型装置は、空隙を介して対向配置される一対の板状継鉄、互いに対向するように一方の前記板状継鉄の対向面に一方が設けられ他方の前記板状継鉄の対向面に他方が設けられる一対の磁石、前記一対の板状継鉄を磁気的に結合し、前記空隙側の一方主面から前記空隙とは反対側の他方主面に貫通する貫通孔を有する支持継鉄、磁性体からなり前記支持継鉄に接しないように前記貫通孔に挿入される磁気シールド部材、前記一対の磁石間に設けられるシンチレータ、前記貫通孔内で前記磁気シールド部材内に設けられる光センサ、および前記シンチレータと前記光センサとを接続する光ガイドを備える。
【0010】
請求項2に記載のPET/MRI一体型装置は、請求項1に記載のPET/MRI一体型装置において、非磁性体からなり前記磁気シールド部材を位置決めするために前記貫通孔と前記磁気シールド部材との間に挿入される筒状の位置決め部材をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のPET/MRI一体型装置は、請求項1に記載のPET/MRI一体型装置において、非磁性体からなり前記貫通孔と前記磁気シールド部材との間に隙間を形成しつつ前記磁気シールド部材を位置決めするために前記貫通孔に設けられる位置決め部材をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のPET/MRI一体型装置は、請求項1から3のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置において、前記光センサは光電子増倍管であることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載のPET/MRI一体型装置では、支持継鉄の貫通孔内に光センサを設けることによって、光センサから磁石間に配置されるシンチレータまでの距離を小さくでき、光ガイドを短くできる。これによって、光ガイドにおける光の減衰(損失)を小さくでき、シンチレータからの光を光センサに効率よく案内できる。また、支持継鉄において磁束の大部分は貫通孔以外の部分を通るので貫通孔内の磁界強度は小さくなる。さらに、貫通孔内かつ磁気シールド部材内では貫通孔の内表面から漏れた磁束が磁性体からなる磁気シールド部材によって捉えられるので磁界強度は一層小さくなる。したがって、光センサを貫通孔内で磁気シールド部材内に設けることによって、シンチレータからの光を光センサに効率よく案内できるとともに磁界の影響による光センサの出力低下も小さくできる。これによって、高品質なPET画像ひいては高品質な合成画像を得ることができる。さらに、光センサを支持継鉄の貫通孔内に設けることによって、装置全体をコンパクトに構成できる。つまり、コンパクトな構成で高品質な合成画像を得ることができる。
【0014】
請求項2に記載のPET/MRI一体型装置では、非磁性体からなる筒状の位置決め部材によって、磁気シールド部材内の光センサが磁界の影響を受けにくい状態を保ったまま簡単に磁気シールド部材を支持継鉄の貫通孔内で位置決めできる。ひいては、装置を簡単に組み立てることができ、装置のコストを抑えることができる。
【0015】
請求項3に記載のPET/MRI一体型装置では、非磁性体からなる位置決め部材が貫通孔の内表面と磁気シールド部材の外表面との間に隙間を形成するように設けられる。これによって、磁気シールド部材内の光センサが磁界の影響を受けにくい状態を保ったまま放熱性よく磁気シールド部材を貫通孔内で位置決めできる。このように光センサが磁界の影響を受けにくくかつ磁気シールド部材ひいては光センサの温度変化(温度上昇)を抑えることができるので、光センサの出力を安定させることができ、合成画像の品質を向上できる。
【0016】
光電子増倍管は、フォトダイオード等の半導体センサに比べて磁界の影響によってその出力が低下しやすい。したがって、請求項4に記載するように、この発明は、光センサとして光電子増倍管を用いるPET/MRI一体型装置において特に有効となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、コンパクトな構成で高品質な合成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】MRIユニットとPETユニットとの位置関係を示す図解図である。
【図3】シンチレータブロックと光ガイド束とPSPMTとの接続関係を示す側面図である。
【図4】支持継鉄の貫通孔内における光検出部の配置態様を示す断面図である。
【図5】磁界発生部における磁界強度の分布態様を説明するための図解図である。
【図6】磁気シールド部材がない状態の貫通孔内における磁界強度の分布態様を説明するための図解図である。
【図7】磁気シールド部材内における磁界強度の分布態様を説明するための図解図である。
【図8】位置決め部材としてボルトを用いる場合の支持継鉄の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態のPET/MRI一体型装置10は、それぞれ断層画像を撮像するためのPET(Positron Emission Tomography)装置とMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置とを一体的に設けた撮像装置であり、たとえば人間の体の一部分や小動物等の生体の断層画像を撮像するために用いられる。
【0020】
PET/MRI一体型装置10は、MRIユニット12、PETユニット14および制御ユニット16を備える。
MRIユニット12は、磁界発生部18および高周波コイル(RFコイル)20を含む。磁界発生部18は、空隙Gを介して対向配置される一対の板状継鉄22a,22b、互いに対向するように板状継鉄22a,22bに設けられる一対の永久磁石24a,24b、および板状継鉄22aと22bとを磁気的に結合する支持継鉄26を含む。この実施形態では、磁界発生部18の前後の寸法(奥行き)M1が1025mm程度に設定され、磁界発生部18の左右の寸法(幅)M2が700mm程度に設定され、磁界発生部18の上下の寸法(高さ)M3が739mm程度に設定される。
【0021】
永久磁石24a,24bはそれぞれ、たとえばNEOMAX−47(日立金属株式会社製)等のR−Fe−B系磁石(RはYを含む希土類元素)からなる複数の磁石単体を組み立てることによって円板状に形成される。永久磁石24aは、板状継鉄22aの空隙G側の面(板状継鉄22bとの対向面)に取り付けられる。同様に、永久磁石24bは、板状継鉄22bの空隙G側の面(板状継鉄22aとの対向面)に取り付けられる。永久磁石24a,24bは、互いの磁化方向が同方向になるように板状継鉄22a,22bに取り付けられ、互いの対向面に異極を有する。
【0022】
図2をも参照して、この実施形態では、永久磁石24a,24bの磁化方向はそれぞれ図2に白抜きの矢印で示すように上向きに設定される。したがって、永久磁石24aは、永久磁石24bとの対向面にN極を有しかつ板状継鉄22a側の面にS極を有する。また、永久磁石24bは、永久磁石24aとの対向面にS極を有しかつ板状継鉄22b側の面にN極を有する。
なお、MRIユニット12とPETユニット14との位置関係を明確にするために、図2のMRIユニット12において磁界発生部18は左半分のみが示されている。
【0023】
永久磁石24aには、永久磁石24bとの対向面に磁極片28aが取り付けられる。同様に、永久磁石24bには、永久磁石24aとの対向面に磁極片28bが取り付けられる。磁極片28a,28bは、それぞれ周縁部に環状突起を有する円板状に形成され、互いの環状突起が対向するように配置される。磁極片28a,28bの環状突起の内側にはそれぞれ図示しない傾斜磁界コイルが配置される。この実施形態では、磁極片28aの環状突起と磁極片28bの環状突起との直線距離C(図2参照)が200mm程度に設定される。
【0024】
板状継鉄22aと22bとは、1枚の板状の支持継鉄26によって磁気的に結合される。詳しくは、板状継鉄22aは支持継鉄26の一方主面(前面)26aにおいて下端部に接続され、板状継鉄22bは支持継鉄26の一方主面26aにおいて上端部に接続される。板状継鉄22aと支持継鉄26との接続部、および板状継鉄22bと支持継鉄26との接続部はそれぞれ略90°の角度を有する。これによって、磁界発生部18は、三方(ここでは前側および左右両側)に開放する側面視略コ字状のオープンタイプに構成される。
【0025】
また、支持継鉄26には貫通孔30が設けられる。貫通孔30は、空隙G側の一方主面26aおよび空隙Gとは反対側の他方主面26bの中央に円形の開口部を有し、一方主面26aから他方主面26bへと前後方向に直線的に延びる。この実施形態では、支持継鉄26の厚みT(貫通孔30の両開口部の直線距離:図2参照)が200mm程度に設定され、貫通孔30の直径が250mm程度に設定される。
【0026】
支持継鉄26の貫通孔30には、両端開口の円筒状に形成される磁気シールド部材32が挿入される。磁気シールド部材32は、たとえば、飽和磁束密度が1.7T程度である珪素鋼、飽和磁束密度が2.1T〜2.15T程度である純鉄、飽和磁束密度が0.75T程度であるパーマロイ、または飽和磁束密度が2.4T程度であるパーメンジュール等の飽和磁束密度が大きい軟磁性体からなる。この実施形態では、磁気シールド部材32の軸方向寸法が支持継鉄26の厚みT(ここでは200mm)と等しくなるように設定され、磁気シールド部材32の外径が230mm程度に設定され、磁気シールド部材32の内径が220mm程度に設定される。
【0027】
磁気シールド部材32は、位置決め部材34によって貫通孔30内で位置決めされる。位置決め部材34は、たとえばアルミニウムやステンレス鋼等の非磁性体からなり、磁気シールド部材32と軸方向寸法が等しい両端開口の円筒状に形成される。このような位置決め部材34を貫通孔30と磁気シールド部材32との間に挿入することによって、支持継鉄26に接しないようにかつ磁気シールド部材32の開口端の中心と貫通孔30の開口部の中心とが一致するように、磁気シールド部材32が貫通孔30内で位置決めされる。また、磁気シールド部材32と位置決め部材34とはそれぞれ、一方主面26a側および他方主面26b側のいずれからも突出しないように貫通孔30に挿入される。
【0028】
図2に一点鎖線の矢印で示すように、このような磁界発生部18では、永久磁石24a→磁極片28a→磁極片28b→永久磁石24b→板状継鉄22b→支持継鉄26→板状継鉄22a→永久磁石24aの順に磁束が通る。支持継鉄26においては、磁束は下向きになり、大部分の磁束が貫通孔30を避けるように貫通孔30以外の部分を通る。
【0029】
MRIユニット12の高周波コイル20は、両端開口の円筒状に形成されるいわゆるソレノイドコイルである。高周波コイル20の内表面には、銅箔等の図示しない導電体が螺旋状に貼り付けられる。この実施形態では、高周波コイル20の軸方向寸法が250mm程度に設定され、高周波コイル20の外径が85mm程度に設定され、高周波コイル20の内径が80mm程度に設定される。
【0030】
このような高周波コイル20は、磁極片28a,28bの中間で磁気シールド部材32と同軸上に配置され、図示しないインピーダンスマッチング回路を介して制御ユニット16に接続される。PET/MRI一体型装置10においては、高周波コイル20内が撮像空間となる。
【0031】
PETユニット14は、生体からの放射線を検出するための放射線検出部36、放射線検出部36に接続される光ガイド部38、および光ガイド部38に接続される光検出部40を含む。
【0032】
放射線検出部36は、複数(ここでは16個)のシンチレータブロック42を含む。複数のシンチレータブロック42は、一対の永久磁石24a,24b間で高周波コイル20の外表面を囲むように環状に配置される。
【0033】
図3を参照して、シンチレータブロック42は、直方体状に形成される複数のシンチレータ44をまとめることによって得られる。詳しくは、たとえば、前後方向(高周波コイル20の軸方向)に9個、図3の紙面に直交する方向に11個のシンチレータ44を並べ、合計9×11=99個のシンチレータ44をまとめることによって直方体状のシンチレータブロック42が得られる。シンチレータブロック42において、隣り合うシンチレータ44の間には光反射膜が設けられる。シンチレータ44は、たとえばLSO(Lu2SiO5)結晶等の非磁性体からなり、生体から放出された放射線が高周波コイル20(図2参照)側の入射面44aから入射することによって発光する。
なお、図3には、シンチレータ44および光ガイド48(後述)が実際よりも大きく示されており、その数も実際のものとは異なる。
【0034】
図2に示すように、光ガイド部38は、各シンチレータブロック42から後側の貫通孔30内に直線的に延びる光ガイド束46を含む。この実施形態では、放射線検出部36の16個のシンチレータブロック42に対応して、光ガイド部38に16個の光ガイド束46が含まれ、16個の光ガイド束46が環状に配置される。
【0035】
図3に示すように、光ガイド束46は、たとえばダブルクラッド光ファイバ等の光ファイバからなる複数の光ガイド48を含む。複数の光ガイド48はそれぞれ、シンチレータブロック42のシンチレータ44と一定の関係を有し、シンチレータ44の入射面44aとは反対側の面にシリコンゴム等を用いて光学的に接続される。この実施形態では、光ガイド束46にたとえば49本の光ガイド48が含まれる。光ガイド束46の各光ガイド48は、シンチレータ44の入射面44aとは反対側の面から略垂直に延びた後に略90°屈曲して後側に延びる。
【0036】
図2に示すように、光検出部40は、光センサである複数の位置有感型光電子増倍管(PSPMT:Position Sensitive Photomultiplier)50を含む。複数のPSPMT50は、環状に配置され、非磁性体からなる図示しない連結部材によって一体的に設けられる。この実施形態では、16個のシンチレータブロック42および光ガイド束46に対応して、16個のPSPMT50が光検出部40に含まれる。
【0037】
図4を参照して、このような光検出部40の各PSPMT50は、貫通孔30内で磁気シールド部材32内に設けられ、貫通孔30の前後方向(磁気シールド部材32の軸方向)中央から他方主面26b側に延びる。
【0038】
図3に示すように、各PSPMT50の受光面50aには、光ガイド束46の光ガイド48がシリコンゴム等を用いて光学的に接続される。つまり、シンチレータブロック42のシンチレータ44とPSPMT50とが、光ガイド束46の光ガイド48によって光学的に接続される。この実施形態では、光ガイド束46の前後方向の寸法が480mm程度に設定される。
【0039】
このようなPETユニット14は、たとえば磁気シールド部材32と光検出部40との間に図示しない筒状部材を挿入することによって、磁気シールド部材32および位置決め部材34を介して支持継鉄26に支持される。また、PETユニット14において放射線検出部36および光ガイド部38には、外部からの光が入射することを防止するための図示しないカバーが設けられる。
【0040】
制御ユニット16は、傾斜磁界コイルや高周波コイル20に電力を供給するための送信系、高周波コイル20やPSPMT50からの信号を受信するための受信系、ならびに送信系および受信系を制御するとともに高周波コイル20やPSPMT50からの信号に基づいて生体の断層画像を生成する中央処理装置(CPU)等を含む。
【0041】
このように構成されるPET/MRI一体型装置10では、高周波コイル20に挿入された生体の断層画像をMRIユニット12とPETユニット14とを用いて同時に撮像し、これらの合成画像を生成する。
【0042】
詳しくは、MRIユニット12の磁極片28aと28bとの間には、上向きの磁界が通り、たとえば0.4T程度の上向きの磁界が発生される。磁極片28a,28b間の撮像空間(高周波コイル20内の空間)に配置された生体には、傾斜磁界コイルによって傾斜磁界が印加されるとともに高周波コイル20によって高周波パルス信号が印加される。高周波コイル20は生体からの応答信号(核磁気共鳴信号)を受信し、高周波コイル20からの核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)信号は制御ユニット16に入力される。制御ユニット16は、高周波コイル20からのNMR信号に基づいて生体の内部器官の形状を表す断層画像(MRI画像)を生成する。つまり、MRIユニット12を用いて制御ユニット16でMRI画像が撮像される。生体のスライス面は、傾斜磁界コイルによる磁界の印加方向によって設定される。
【0043】
一方、PETユニット14では、陽電子放出核種で標識したFDG(2Fluoro 2Deoxy D-Glucose)等の薬剤が投与された生体からの放射線を受けることによって、シンチレータブロック42のシンチレータ44が発光する。シンチレータ44からの光は、光ガイド束46の光ガイド48を介してPSPMT50に与えられる。PSPMT50は、シンチレータ44からの光を光電子に変換した後にこれを増幅する。そして、PSPMT50は、シンチレータ44からの光の強弱に応じた電気信号を受光面50aにおける光の入射位置に関する情報とともに制御ユニット16に入力する。制御ユニット16は、PSPMT50からの当該電気信号の大小と当該光の入射位置に関する情報とに基づいて、生体内における薬剤の濃度分布を表す断層画像(PET画像)を生成する。つまり、PETユニット14を用いて制御ユニット16でPET画像が撮像される。
【0044】
その後、制御ユニット16は、生体の同一部位について同時に撮像したPET画像とMRI画像とを合成し(重ね合わせ)、合成画像を生成する。このように生成された合成画像は、制御ユニット16の指示に従って、たとえば図示しない表示部に表示される。
【0045】
ここでPET/MRI一体型装置10において注目すべきは、光検出部40(PSPMT50)が支持継鉄26の貫通孔30内で磁気シールド部材32内に設けられることである。
図5を参照して、MRIユニット12の磁界発生部18によって発生される磁界強度の分布態様について説明する。図5のグラフは、3次元磁界測定器のプローブを貫通孔30(磁気シールド部材32)の中央を通るように後側から前側に移動させつつ磁界強度を測定することによって得られたものである。図5の磁界発生部18において、符号Rが付された直線は、3次元磁界測定器のプローブの移動経路である。図5のグラフにおいて、横軸の原点(0mmの位置)は、移動経路R上において他方主面26bの後側25mmの位置である。また、図5のグラフにおいて、S1は移動経路R上における磁界強度の上向き成分を示し、S2は移動経路R上における磁界強度の前向き成分を示し、S3は移動経路R上における磁界強度の右向き成分を示す。
【0046】
S1から、移動経路R上において撮像空間(高周波コイル20内の空間:図2参照)を通る範囲では、磁界強度の上向き成分が0.4T近傍に保たれることがわかる。また、S1から、移動経路R上において永久磁石24a,24b側から支持継鉄26側にかけては、磁界強度の上向き成分が指数関数的に小さくなり、貫通孔30内では磁界強度の上向き成分が極めて小さくなっていることがわかる。
【0047】
また、S2およびS3から、移動経路R上において磁界発生部18を通る範囲では、磁界強度の前向き成分および右向き成分がいずれも略0Tになることがわかる。これは、磁界発生部18では上述のように磁束がループするために、移動経路R上では前後方向および左右方向に延びる磁束がほとんど存在しないためである。
【0048】
さらに、図6および図7を参照して、貫通孔30(磁気シールド部材32)内における磁界強度の分布態様について詳しく説明する。なお、上述のように移動経路R上では磁界強度の前向き成分および右向き成分が略0Tとなるので、ここでは磁界強度の上向き成分のみについて説明する。図6のグラフには、磁気シールド部材32がない状態の磁界強度がS1aで示されている。
【0049】
まず、図6を参照して、磁気シールド部材32がない状態の磁界強度の分布態様について説明する。
支持継鉄26において、磁束の大部分は上述のように貫通孔30を避けるように通るが、一部の磁束は貫通孔30の内表面から漏れて貫通孔30内を主に上から下に通る。貫通孔30内には、このように下向きの漏れ磁束が通るので、磁極片28aから28bへの上向きの漏れ磁束が至りにくくなる。このために貫通孔30内では、一方主面26a側から他方主面26b側に移るにつれて磁界強度の上向き成分が急激に小さくなった後に、磁界強度の上向き成分が0T以下の値(マイナスの値)で推移する。具体的に、磁界強度の上向き成分は、一方主面26a側から貫通孔30内に4分の1程度入った位置P1で0Tになった後にマイナスの値になる。そして、貫通孔30内において前後方向中央よりも他方主面26b側では、磁界強度の上向き成分が−6mT〜−7.5mT程度の範囲で推移する。言い換えれば、貫通孔30内において前後方向中央よりも他方主面26b側では、磁界強度の下向き成分が6mT〜7.5mT程度の範囲で推移する。貫通孔30内ではこのように磁界強度が分布し、位置P1近傍に小さな低強度範囲E1が形成される。
「低強度範囲」とは、PSPMT50の出力をさほど低下させない程度にまで磁界強度が小さくなっている範囲をいい、ここでは磁界強度の絶対値が2mT以下の範囲をいう。
【0050】
ついで、図7を参照して、磁気シールド部材32を設けた状態の磁界強度の分布態様について説明する。
図7に示すように、磁気シールド部材32を設けることによって、低強度範囲を大きくできる。具体的に、磁界強度の上向き成分は、磁気シールド部材32内において前後方向(軸方向)中央よりもやや他方主面26b側の位置P2で0Tになった後にマイナスの値になる。そして、位置P2よりも他方主面26b側では、磁界強度の上向き成分が−2mT以下になる。言い換えれば、磁気シールド部材32内において位置P2よりも他方主面26b側では、磁界強度の下向き成分が2mT以下になる。したがって、磁気シールド部材32内では、前後方向中央部よりもやや一方主面26a側から他方主面26b側端部に至る大きな低強度範囲E2が形成される。このように大きな低強度範囲E2が形成されるのは、貫通孔30の内表面からの漏れ磁束が磁気シールド部材32によって捉えられるためである。
【0051】
このような磁気シールド部材32内で前後方向中央部から他方主面26側にかけて光検出部40(PSPMT50)を設けることによって、磁界の影響によるPSPMT50の出力低下を小さくできる。
【0052】
このようなPET/MRI一体型装置10によれば、支持継鉄26の貫通孔30内に光検出部40を設けることによって、光センサであるPSPMT50から永久磁石24a,24b間に配置されるシンチレータ44までの距離を小さくでき、光ガイド48を短くできる。これによって、光ガイド48における光の減衰(損失)を小さくでき、シンチレータ44からの光をPSPMT50に効率よく案内できる。また、PSPMT50を貫通孔30内で磁気シールド部材32内に設けることによって、磁界の影響によるPSPMT50の出力低下も小さくできる。このようにシンチレータ44からの光をPSPMT50に効率よく案内できるとともに磁界の影響によるPSPMT50の出力低下も小さくできるので、高品質なPET画像ひいては高品質な合成画像を得ることができる。さらに、光検出部40(PSPMT50)を支持継鉄26の貫通孔30内に設けることによって、装置全体をコンパクトに構成できる。つまり、コンパクトな構成で高品質な合成画像を得ることができる。好ましくはPET/MRI一体型装置10のように磁気シールド部材32内で低強度範囲E2(図7参照)に収まるように光検出部40を設けることによって、PSPMT50の出力低下を小さくでき、高品質な合成画像を得ることができる。
【0053】
非磁性体からなる円筒状の位置決め部材34によって、磁気シールド部材32内のPSPMT50が磁界の影響を受けにくい状態を保ったまま簡単に磁気シールド部材32を貫通孔30内で位置決めできる。ひいては、装置を簡単に組み立てることができ、装置のコストを抑えることができる。
【0054】
PSPMT50は、フォトダイオード等に比べて磁界の影響によってその出力が低下しやすいので、この発明は、光センサとしてPSPMT50を用いるPET/MRI一体型装置10において特に有効となる。
【0055】
MRIユニット12の磁界発生部18が三方に開放するオープンタイプに構成されることによって、少なくとも高周波コイル20に挿入されるまでは生体に与える閉塞感を低減できる。
【0056】
なお、上述の実施形態では円筒状の位置決め部材34を用いる場合について説明したが位置決め部材はこれに限定されない。ついで、図8を参照して、位置決め部材として複数のボルト34aを用いる場合について説明する。
【0057】
複数のボルト34aはそれぞれ、たとえばアルミニウムやステンレス鋼等の非磁性体からなる。貫通孔30の内表面かつ上下左右の端部にはそれぞれ、ボルト孔30aが前後方向に2つずつ連ねて設けられる。複数(ここでは8個)のボルト孔30aにはそれぞれボルト34aが螺入される。なお、図8には、貫通孔30の内表面において右端部のボルト孔30aに螺入されるボルト34aが表されていない。
【0058】
磁気シールド部材32は、各ボルト孔30aに螺入されたボルト34aが緩められて各ボルト34aの頭の突出量が大きくなることによって、各ボルト34aの頭に上下左右から挟まれる。これによって、貫通孔30の内表面と磁気シールド部材32の外表面との間に隙間Oを形成しかつ支持継鉄26に接することのないように磁気シールド部材32が貫通孔30内で位置決めされる。
【0059】
位置決め部材として非磁性体からなる複数のボルト34aを用いることによって、磁気シールド部材32内のPSPMT50が磁界の影響を受けにくい状態を保ったまま放熱性よく磁気シールド部材32を貫通孔30内で位置決めできる。このようにPSPMT50が磁界の影響を受けにくくかつ磁気シールド部材32ひいてはPSPMT50の温度変化(温度上昇)を抑えることができるので、PSPMT50の出力を安定させることができ、合成画像の品質を向上できる。
【0060】
なお、ボルト34aの配置態様は、貫通孔30内で磁気シールド部材32を位置決めできれば任意に設定できる。また、PETユニット14を支持するための上述の筒状部材に代えて、PETユニット14を支持するためのボルトを磁気シールド部材32に螺入するようにしてもよい。これによって、さらにPSPMT50の温度変化を抑えることができる。
【0061】
上述の実施形態では、磁気シールド部材32の軸方向寸法が支持継鉄26の厚みと同様に設定される場合について説明したが、これに限定されない。支持継鉄26の厚みよりも大きい軸方向寸法を有する磁気シールド部材を用い、当該磁気シールド部材を貫通孔30から一方主面26a側に突出させるようにしてもよい。これによって、当該磁気シールド部材において貫通孔30から突出した部分に磁極片28aから28bへの漏れ磁束が捉えられ、貫通孔30内に磁極片28aから28bへの漏れ磁束がより至りにくくなる。
【0062】
上述の実施形態では、円形の両端開口部を有する貫通孔30を支持継鉄26に設ける場合について説明したが、支持継鉄の貫通孔はこれに限定されない。たとえば正方形の両端開口部を有する貫通孔を支持継鉄に設けるようにしてもよい。同様に、磁気シールド部材の形状についても光センサを収容できる限り任意に設定できる。たとえば、貫通孔の開口部が正方形である場合、角筒状の磁気シールド部材を用いればよい。また、磁気シールド部材は、たとえば支持継鉄の一方主面側に開口端を有しかつ支持継鉄の他方主面側に壁を有する筒状に形成されていてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、光検出部40を磁気シールド部材32内で前後方向中央から他方主面26b側にかけて配置する場合について説明したが、光検出部40の位置はこれに限定されない。光検出部40は、磁気シールド部材32内でたとえば低強度範囲の任意の位置に配置できる。
【0064】
上述の実施形態では、磁石として永久磁石24a,24bを用いる場合について説明したが、この発明に用いられる磁石は、永久磁石に限定されず、電磁石であってもよい。
【0065】
上述の実施形態では、LSO結晶からなるシンチレータ44を用いる場合について説明したが、シンチレータはこれに限定されず任意のものを用いることができる。
【0066】
上述の実施形態では、光センサとしてPSPMT50を用いる場合について説明したが、光センサはこれに限定されない。たとえば光センサとしてフラットパネルPMTを用いてもよいしフォトダイオード等の半導体センサを用いてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、別部材である一対の板状継鉄22a,22bおよび支持継鉄26を接続する場合について説明したが、この発明はこれに限定されない。一対の板状継鉄および支持継鉄は、予め一体的に形成されたものであってもよく、たとえば全体として側面視略C字状に形成されているものであってもよい。このように継鉄が一体的に形成されている場合、空隙を介して対向する主面を有する部分が一対の板状継鉄に相当し、それ以外の部分が支持継鉄に相当する。
【0068】
この発明のPET/MRI一体型装置によって断層画像を撮像すべき生体は、人間に限定されない。この発明のPET/MRI一体型装置によって、任意の生体の断層画像を撮像できる。
【符号の説明】
【0069】
10 PET/MRI一体型装置
12 MRIユニット
14 PETユニット
18 磁界発生部
22a,22b 板状継鉄
24a,24b 永久磁石
26 支持継鉄
26a 一方主面
26b 他方主面
30 貫通孔
32 磁気シールド部材
34 位置決め部材
34a ボルト
42 シンチレータブロック
44 シンチレータ
46 光ガイド束
48 光ガイド
50 PSPMT(位置有感型光電子増倍管)
G 空隙
O 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を介して対向配置される一対の板状継鉄、
互いに対向するように一方の前記板状継鉄の対向面に一方が設けられ他方の前記板状継鉄の対向面に他方が設けられる一対の磁石、
前記一対の板状継鉄を磁気的に結合し、前記空隙側の一方主面から前記空隙とは反対側の他方主面に貫通する貫通孔を有する支持継鉄、
磁性体からなり前記支持継鉄に接しないように前記貫通孔に挿入される磁気シールド部材、
前記一対の磁石間に設けられるシンチレータ、
前記貫通孔内で前記磁気シールド部材内に設けられる光センサ、および
前記シンチレータと前記光センサとを接続する光ガイドを備える、PET/MRI一体型装置。
【請求項2】
非磁性体からなり前記磁気シールド部材を位置決めするために前記貫通孔と前記磁気シールド部材との間に挿入される筒状の位置決め部材をさらに含む、請求項1に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項3】
非磁性体からなり前記貫通孔と前記磁気シールド部材との間に隙間を形成しつつ前記磁気シールド部材を位置決めするために前記貫通孔に設けられる位置決め部材をさらに含む、請求項1に記載のPET/MRI一体型装置。
【請求項4】
前記光センサは光電子増倍管である、請求項1から3のいずれかに記載のPET/MRI一体型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213840(P2010−213840A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62774(P2009−62774)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】