説明

PLCを用いた分析システム

【課題】複数の分析機器の一部に通信異常がある場合であっても、その他の分析機器との通信頻度を低下させない。
【解決手段】複数の分析機器と、複数の分析機器との間で順次データの送受信を半二重通信により行うPLC3と、を備え、PLC3が、コマンドを送信してから所定時間内にコマンドの応答が完了しない通信異常を所定回数発生した分析機器をコマンドの送信対象から除外して、その他の分析機器との間で順次データの送受信を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば煙道を流れる排ガス等の測定対象を連続測定又はそのデータの連続記録するためのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を用いた分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の連続排ガス分析システムとしては、例えば特許文献1に示すように、車両のエンジンから排出される排ガスを連続測定及びその測定データを連続記録するものがある。具体的にこの分析システムは、ダスト計と、流量計を構成する温度計及び圧力計等のセンサ類と、排ガス中の成分濃度を測定する排ガス分析装置と、それらセンサ類及び排ガス分析装置から測定データを取得するPLCとを備えている。そして、ダスト計、センサ類又は排ガス分析装置とPLCとは、Modbusプロトコル等の通信プロトコル(半二重通信)を用いたRS−485等の通信ケーブルにより接続されている。
【0003】
このように半二重通信を行うPLCを用いて各分析機器(ダスト計、センサ群、排ガス分析装置)から測定データを取得する場合には、予め登録されたコマンドを順次各分析機器に送信(発行)する。つまり、図4に示すように、予め登録された各機器毎のコマンド(コマンドリスト)のうち、1つのコマンドを所定の分析機器(機器1)に送信し、そのコマンドに対する応答が完了した後に、次のコマンドを他の分析機器(機器2)に送信する。このシーケンスにおいて、コマンドを発行した分析機器からの応答が完了するまでは、次のコマンドを他の分析機器に送信することができない。なお、各分析機器から取得したデータは、PLC内部のメモリ内に保存される。
【0004】
しかしながら、1つの分析機器からの応答が完了した後に、次の分析機器にコマンドを送信するので、コマンドを送信している分析機器から応答が得られない場合にはタイムアウトが発生するまでは次の分析機器と通信ができないという問題が生じる。その結果、複数の分析機器のうち1つでも通信異常があれば、その他の分析機器との通信頻度が低下してしまうという問題がある。これは連続して測定対象を測定する例えば排ガス分析などでは、連続測定が妨げられ特に問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−165816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、複数の分析機器の一部に通信異常がある場合であっても、その他の分析機器との通信頻度を低下させないことをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るPLCを用いた分析システムは、複数の分析機器と、前記複数の分析機器との間で順次データの送受信を半二重通信により行うプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)と、を備え、前記PLCが、コマンドを送信してから所定時間内にコマンドの応答が完了しない通信異常を所定回数発生した分析機器をコマンドの送信対象から除外して、その他の分析機器との間で順次データの送受信を行うことを特徴とする。
【0008】
つまり、PLCは、コマンドを送信してから所定時間内にコマンドの応答が完了しない分析機器を通信異常と判断して、次の分析機器にコマンドの送信を行うとともに、前記通信異常が連続して所定回数発生した分析機器をコマンドの送信対象から除外して、その他の分析機器との間で順次データの送受信を行う。
【0009】
具体的に本発明に係るPLCを用いた分析システムは、複数の分析機器と、前記複数の分析機器との間で順次データの送受信を半二重通信により行うプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)と、を備え、前記PLCが、前記複数の分析機器に順次コマンドを送信するコマンド送信部と、前記コマンドが送信された分析機器からコマンドに対する応答データを受け付ける応答データ受付部と、前記コマンドを送信してから所定時間内にコマンドに対する応答が完了したか否かを前記分析機器毎に判断する通信異常判断部と、を有し、前記コマンド送信部が、前記通信異常判断部により通信異常と判断された分析機器をコマンドの送信対象から除外して、その他の分析機器に順次コマンドを送信するものであることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、ある分析機器で通信異常がある場合であっても、その分析機器をコマンドの送信対象から除外することによって以後のデータの送受信において、通信異常のある分析機器が邪魔をすることが無いので、通信異常のない分析機器との通信頻度の低下を防止することができる。特に、連続測定及びそのデータの連続記録を行う必要がある連続分析システムにおいては、その連続性が妨げられることを防止することができる。
【0011】
除外した分析機器を除外したままでは、以後のデータ処理において、データ処理を行えない等の問題が生じるところ、他の分析機器との通信頻度を低下させることなく自動的にこの問題を解決するためには、前記コマンド送信部が、前記除外された分析機器に、その除外後一定時間経過にコマンドを送信するものであり、そのコマンドの送信において前記通信異常判断部が前記除外された分析機器を通信正常と判断した場合に、その他の分析機器と合わせて順次コマンドの送信を行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、複数の分析機器の一部に通信異常がある場合であっても、その他の分析機器との通信頻度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る分析システムの構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係るPLCの機能構成図である。
【図3】同実施形態のPLCの動作を示す模式図である。
【図4】従来のPLCと各分析機器との通信を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る分析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る分析システム100は、例えば車両のエンジンから排出される排ガスを連続測定及びその測定データを連続記録するものであり、具体的には、排ガスのダスト量、流量、流速、及び排ガス中に含まれるNO、SO、CO、CO、O等の含有成分の濃度を測定及び記録するものである。
【0016】
具体的にこのものは、図1に示すように、排ガスの各物理量及び/又は化学量を測定するための複数の分析機器2a〜2dと、それら複数の分析機器2a〜2dから測定データを順次取得するプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)3と、一部の分析機器2a〜2d及びPLC3の間に介在して設けられ、PLC3及びその一部の分析機器2a〜2d等との間でデータ通信を行うことにより、PLC3と一部の分析機器2a〜2d等との間で送受信されるデータを中継する1又は複数のリモートI/O4a、4bと、を備えている。
【0017】
本実施形態においては分析機器2として、排ガスのダスト量を測定するダスト計2aと、排ガスの流量及び流速を測定するための流量計を構成する差圧センサ2b及び温度センサ2c等のセンサ群と、排ガス中の含有成分濃度を測定する排ガス分析装置2dとを用いている。
【0018】
ダスト計2aは、例えばModbusプロトコル等の通信プロトコル(半二重通信)を用いたRS−485の通信ケーブルCAによりPLC3に接続されている。また、排ガス分析装置2dは、例えばModbusプロトコル等の通信プロトコルを用いたRS−232Cの通信ケーブルCAによりPLC3に接続されている。センサ群は、例えばModbusプロトコル等の通信プロトコルを用いたRS−422の通信ケーブルCAにより第1のリモートI/O4aに接続されている。この第1のリモートI/O4aは、例えばModbusプロトコル等の通信プロトコルを用いたRS−485の通信ケーブルCAによりPLC3に接続されている。また、第1のリモートI/O4aは第2のリモートI/O4bとRS−485通信により接続されている。この第2のリモートI/O4bには、スイッチ類5がRS−422通信により接続されている。スイッチ類5としては、例えば、メンテナンス用スイッチ、流量計パージ開始/停止用スイッチ、流量計校正用スイッチなどである。
【0019】
PLC3は、予めプログラムされたシーケンスロジックを実行するシーケンサであり、複数の分析機器2a〜2d等との間で順次データの送受信を半二重通信により行うものである。そして、PLC3は、排ガス分析装置2dからの測定データを取得して蓄積し、ダスト計2aからのダスト量データを取得して蓄積し、流量計(差圧センサ2b、温度センサ2c)から測定データを取得して流量及び流速を計算して蓄積し、その他の各種センサ及びスイッチ類5からのデータを取得して蓄積する。
【0020】
主な機能構成としては、PLC3は、前記複数の分析機器に順次コマンドを送信するコマンド送信部31と、コマンドが送信された分析機器2a〜2dからコマンドに対する応答データである測定データを受け付ける応答データ受付部32とコマンドを送信してから所定時間内にコマンドの応答が完了したか否かを、分析機器2a〜2d毎に判断する通信異常判断部33と、を有する。また、コマンド送信部31により送信されるコマンドは、コマンド格納部D1に格納され、応答データ受付部32により受けつけられた測定データは応答データ格納部D2内に格納される。なお、コマンド送信部31、応答データ受付部32、通信異常判断部33は、メモリに格納されたプログラムに基づいてCPUが作動することにより構成される。
【0021】
コマンド送信部31が、通信異常判断部33により通信異常と判断された分析機器(例えば差圧センサ2b)をコマンドの送信対象から除外して、通信異常の分析機器(差圧センサ2b)を除いたその他の分析機器2a、2c、2dに順次コマンドを送信するものである。また、コマンド送信部31は、除外された分析機器(差圧センサ2b)に、除外後一定時間経過毎にコマンドを送信するものであり、そのコマンドの送信において通信異常判断部33が除外された分析機器(差圧センサ2b)を通信正常と判断した場合に、その他の分析機器2a、2c、2dと合わせて順次コマンドの送信を行う。
【0022】
なおPLC3には、PLC3との間でデータ通信を行うと共に、システム全体の制御を行うコンピュータ(PC)6が例えばイーサネット(登録商標)により接続されている。また、PLC3には、液晶ディスプレイ(LCD)7が接続され、PLC3による演算結果、各分析機器2a〜2dからの測定値、及びコンピュータ6からの情報が表示されるように構成してある。
【0023】
詳細にPLC3のコマンド格納部D1には、所定時間(例えば毎秒)毎に各分析機器2a〜2dに送信(発行)するコマンド(Modbusコマンド)が予め登録されており、コマンド送信部31は、データ取得タイミング時に登録されたコマンドを各分析機器2a〜2dに順次送信する。そして、応答データ受付部32は、コマンドが送信された分析機器2a〜2dの応答により取得した測定データ(応答データ)を、PLC3内部に設けられた応答データ格納部D2内に記憶する。このようにして、各分析機器2a〜2dから所定間隔(例えば1秒毎)で測定データを取得すると共に、複数の分析機器2a〜2dから順番に測定データを取得する。
【0024】
そして、通信異常判断部33は、コマンドを送信してから所定時間(例えば1秒)内にコマンドの応答が完了しない場合(タイムアウト及びデータ取得遅延を含む。)は、当該分析機器を通信異常と判断して、その異常判断データをコマンド送信部31に出力する。異常判断データを取得したコマンド送信部31はデータ通信を中断し、次の分析機器に対してコマンドを送信する。その後、コマンド送信部31は、通常通りのデータの送受信を行う。そして、1つの分析機器に対して所定回数(例えば3回)連続してコマンドの応答が所定時間内に完了しない場合には、当該分析機器をコマンドの送信対象から除外する。
【0025】
また、コマンド送信部31は、除外した分析機器に、除外後一定時間経過毎にコマンドを送信して、通信異常判断部33は、通信異常が解消したか否かを判断する。つまり、コマンド送信部31は、除外された分析機器に、除外後一定時間経過毎にコマンドを送信するものであり、そのコマンドの送信において通信異常判断部33が除外された分析機器を通信正常と判断した場合に、その他の分析機器と合わせて順次コマンドの送信を行う。
【0026】
具体的に図3を参照して説明する。図3上段には、通常(各分析機器2a〜2dが正常)の場合のコマンドの送信及び分析機器2a〜2dからの応答の順番を示している。なお、図3において、例えば機器Aは分析機器2a、機器Bは分析機器2b、機器Cは分析機器2c、機器Dは分析機器2dに対応する。このように通常時においては、機器A→機器B→機器C→機器D→機器A→・・・、の順番で各機器A〜Dにコマンドを送信するとともに、その機器A〜Dからデータを取得する。
【0027】
一方、例えば機器Bのコマンドの応答がコマンドの送信後所定時間(例えば1秒)内に完了しない場合には、通信異常と判断するとともに、その通信異常が連続して所定回数(例えば3回)続いた場合には、PLC3は当該機器Bを通信対象から除外し、以後所定時間が経過するまでは、機器Bにコマンドの送信を行わない。その結果、PLC3は、図3下段に示すように、機器A→機器C→機器D→機器A→機器C→・・・、の順番で各機器A、C、Dにコマンドを送信するとともに、その機器A、C、Dからデータを取得する。そして、PLCは、機器Bを除外した後一定時間(例えば5分)経過毎に、機器Bにコマンドを送信して、機器Bの通信異常が解消されたか否か等の状態確認を行う。そして、その機器Bから正常にデータを取得できた場合(所定時間内に応答が完了した場合)には、機器Bを自動的に通信対象として、以後その他の機器A、C、Dと同様に通信を行う。なお、PLC3内部のメモリには、状態確認時に機器Bから得られた受信内容と取得日時が記録される。
【0028】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る分析システム100によれば、ある分析機器で通信異常がある場合であっても、その分析機器をコマンドの送信対象から除外することによって以後のコマンドの送受信において、通信異常のある分析機器が邪魔をすることが無いので、通信異常のない分析機器との通信頻度の低下を防止することができる。特に、連続測定及びそのデータの連続記録を行う分析システムにおいてその効果が顕著となる。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、PLC3が分析機器を通信対象から除外するためには、連続して3回以上通信異常が発生することが必要であったが、これに限られず、1回の通信異常で通信対象から除外するようにしても良い。これならば、その他の通信回数の欠落を可及的に低減することができる。
【0030】
また、前記実施形態では、一部の分析機器は、リモートI/Oを介してPLCに接続されているが、直接PLCに接続するように構成しても良いし、また、リモートI/Oを介してPLCに接続される分析機器及びPLCに直接接続される分析機器の組み合わせは前記実施形態に限られず、適宜設定可能である。
【0031】
さらに、前記実施形態では、1台のPLCを用いて複数の分析機器との間でデータを送受信するものであったが、複数台のPLCを用いて複数の分析機器との間でデータを送受信するように構成しても良い。
【0032】
その上、前記実施形態では、分析器として、ダスト計、流量計及び排ガス分析装置を用いたものであったが、これに限られず、測定対象に応じて適宜選択可能である。例えば、測定対象が液体の場合には水質分析装置を用いても良いし、測定対象が大気の場合には、大気中の浮遊粒子の濃度を測定する大気中粒子測定装置を用いても良い。
【0033】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
100 ・・・分析システム
2a〜2d・・・分析機器
3 ・・・PLC
CA ・・・通信ケーブル
4a、4b・・・リモートI/O
5 ・・・スイッチ類
6 ・・・コンピュータ(PC)
7 ・・・液晶ディスプレイ(LCD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分析機器と、前記複数の分析機器との間で順次データの送受信を半二重通信により行うプログラマブルロジックコントローラ(以下、PLC)と、を備え、
前記PLCが、前記複数の分析機器に順次コマンドを送信するコマンド送信部と、前記コマンドが送信された分析機器からコマンドに対する応答データを受け付ける応答データ受付部と、前記コマンドを送信してから所定時間内にコマンドに対する応答が完了したか否かを前記分析機器毎に判断する通信異常判断部と、を有し、
前記コマンド送信部が、前記通信異常判断部により通信異常と判断された分析機器をコマンドの送信対象から除外して、その他の分析機器に順次コマンドを送信するものである、PLCを用いた分析システム。
【請求項2】
前記コマンド送信部が、前記除外された分析機器に、その除外後一定時間経過後にコマンドを送信するものであり、そのコマンドの送信において前記通信異常判断部が前記除外された分析機器を通信正常と判断した場合に、その他の分析機器と合わせて順次コマンドの送信を行う請求項1記載のPLCを用いた分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38854(P2011−38854A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185122(P2009−185122)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】