説明

PM発生装置

【課題】排気ガス浄化装置へ供給する評価用の排気ガスを安定して安全に製造し供給するために好適な手段を提供するとともに、排気ガス浄化装置の性能や耐久性を正確に高い精度で評価する手段を提供すること。
【解決手段】液体及び/又は気体の燃料を燃焼室1において燃焼させて、ガスの中にPMを発生させるPM発生装置10である。このPM発生装置10は、燃焼室1と、その燃焼室1へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段4と、燃焼室1へ供給された燃焼用空気の中に燃料を間欠で噴射することが可能な燃料間欠噴射手段3と、を有するところに特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPFや触媒等を備えた排気ガス浄化装置を評価するために、ガス中にパティキュレートマター(PM)を発生させるPM発生装置、及びPM発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の内燃機関等から排出される排気ガス中の微粒子や有害物質は、人体、環境への影響が大きく、これらの大気への放出を防止する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(Particulate Matter、PM)やNO(窒素酸化物)等は影響が甚大であり、それらにかかる規制は世界的に強化されてい
る。そこで、PMを除去するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter、DPF)やNOを窒素と水に還元するため等に有用な触媒を備えた排気
ガス浄化装置の研究・開発が進められ、高性能な浄化装置が市場に提供されるようになった。
【0003】
ところが、その排気ガス浄化装置を試験し、その性能や耐久性を正確に高い精度で評価する手段は提案されていない、というのが現状である。関連する先行文献も多くはなく、評価ガス供給装置(特許文献1)、気化ガス供給装置(特許文献2)、及びガス分析試験装置(特許文献3)が知られるが、実際の排気ガスを十分に模擬したものとはいえなかったり(特許文献1を参照)、排気ガス発生のための具体的な手段が明らかとなっていない(特許文献2,3を参照)、という問題を有していた。
【0004】
以下、従来技術について説明する。排気ガス浄化装置の性能等を評価する手段としては、先ず、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法がある。又、カーボン粉末や実際の排気ガスから採取したPMを用い、これをガス中に混合して、実際の自動車エンジンからの排気ガスを模擬した排気ガスを製造し、それを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法が知られる(特許文献1を参照)。更には、軽油又は炭化水素を燃焼させてPMを含む排気ガスを発生させる方法や、黒鉛電極をスパークさせてPMを含む排気ガスを発生させる方法が知られ、これらにより得られた排気ガスを用いて、排気ガス浄化装置の性能等を評価することが可能である(特許文献1を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−214742号公報
【特許文献2】特開平10−318888号公報
【特許文献3】特開平10−319006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを利用する方法では、設備が大型化し高額になるという問題があった。又、自動車エンジンからの排気ガスを模擬した排気ガスを製造する方法(特許文献1を参照)では、実際に使用される燃料と異なっていたり、一旦採取されたPMを用いることから、既述の通り、実際の排気ガスを十分に模擬したものとはいえないという問題があった。更に、軽油又は炭化水素を燃焼させてPMを含む排気ガスを発生させる方法ではPMの発生量の制御が困難であり且つ失火し易く、黒鉛電極をスパークさせてPMを含む排気ガスを発生させる方法では、PM発生量が少なく、多量のPMを短時間に発生出来ないという問題があった(特許文献1を参照)。即ち、何れの場合も、排気ガス浄化装置へ供給する評価用の排気ガスを発生させる手段に問題があった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気ガス浄化装置へ供給する評価用の排気ガスを安定して安全に製造し供給するために好適な手段を提供するとともに、排気ガス浄化装置の性能や耐久性を正確に高い精度で評価する手段を提供することにある。又、短時間に多量のPMを発生させることにより、排気ガス浄化装置を短時間で評価する手段を提供することも目的の1つである。検討が重ねられた結果、以下に示す手段により、上記目的を達成出来ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、先ず、本発明によれば、液体及び/又は気体の燃料を燃焼室において燃焼させて、ガスの中にPMを発生させる装置であって、燃焼室と、その燃焼室へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、燃焼室へ供給された燃焼用空気の中に燃料を間欠で噴射することが可能な燃料間欠噴射手段と、を有するPM発生装置(Particulate Matter Generater)が提供される。本発明に係るPM発生装置は、ガスの中にPMを発生させる装置であり、換言すれば、本発明に係るPM発生装置は、PMを発生させたガス(PM含有ガス)を製造し供給する装置ということが出来る。
【0009】
本発明に係るPM発生装置においては、上記燃料間欠噴射手段が電動弁を備え、その電動弁の開弁時間及び/又は開弁間隔の制御によって、燃料を間欠で噴射することが好ましい。
【0010】
又、本発明に係るPM発生装置は、燃料の噴射圧力を変え得る燃料噴射圧力調節手段を備えるものであることも好ましい。そして、この場合において、その燃料噴射圧力調節手段が、燃料の噴射の途中段階で噴射圧力を1回又は2回以上変化させ得る手段であることが好ましい。
【0011】
本発明に係るPM発生装置においては、上記燃料の噴射圧力が、0.1MPa以上1.0MPa以下であることが好ましい。
【0012】
更に、本発明に係るPM発生装置は、液体燃料と気体燃料とを併用する場合に、それら液体燃料と気体燃料とを噴射前に予め混合し混合燃料を得る燃料混合手段を備えるものであることも好ましい。
【0013】
尚更に、本発明に係るPM発生装置は、燃料の噴射前に、その燃料に燃料以外の気体を予め混合し得る気体混合手段を備えるものであることが好ましい。そして、この場合において、その燃料以外の気体が、空気であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るPM発生装置において、燃料間欠噴射手段から噴射される燃料の噴射角度が、5°以上120°以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るPM発生装置においては、上記燃料のうち液体の燃料は、軽油又は重油であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るPM発生装置においては、上記燃料間欠噴射手段の開弁周期が、10〜300msec.であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るPM発生装置においては、上記燃料間欠噴射手段の開弁時間と開弁周期の比(デューティー比=開弁時間/開弁周期)が、0.05〜0.6であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るPM発生装置は、PMを発生させたガス(PM含有ガス)の供給先が排気ガス浄化装置であり、その排気ガス浄化装置の評価を行うために好適に使用される。尚、本明細書において、排気ガス浄化装置の評価とは、例えば排気ガス浄化装置の性能及び/又は耐久性の評価を意味する。又、本明細書において、評価対象である排気ガス浄化装置としては、例えば、排気ガス中の微粒子を除去するフィルタ及び/又は排気ガス中の有害物質を分解するための触媒を備えたものが挙げられる。
【0019】
次に、本発明によれば、上記した何れかのPM発生装置を、複数、具備するとともに、それら複数のPM発生装置を、同一の条件で作動させ、あるいは、少なくとも一のPM発生装置を他のPM発生装置と異なる条件で作動させ得る制御手段と、複数のPM発生装置
で得られたPMを発生させたガスを混合し混合PM含有ガスを得るPM含有ガス混合手段と、を具備し、混合PM含有ガスを排気ガス浄化装置へ供給することによって、その排気ガス浄化装置の評価を行う排気ガス浄化装置の評価装置が提供される。
【0020】
次に、本発明によれば、液体及び/又は気体の燃料を燃焼させて、ガス中にPMを発生させる方法であって、燃焼用空気の中に燃料を間欠で混合させ燃焼させる工程を有するPM発生方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るPM発生装置は、燃料間欠噴射手段を備え、燃焼用空気の中に燃料を間欠で噴射することが出来るので、ガス中に多量のPMを発生させ、その多量のPMを含むPM含有ガスを、安全に、安定に供給することが出来る。連続運転しても失火するような問題は生じ難い。燃焼用空気の中に燃料を連続して噴射すると、PM発生量が多くなると失火し易く連続運転が不能になるが、本発明によれば、そのような問題は回避出来る。
【0022】
本発明に係るPM発生装置は、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを利用していないので、設備をより小型化することが可能であり、コストを抑制出来る。又、一旦採取されたPMを用いておらず、燃料を任意に選定することが可能であるため、実際の自動車エンジンからの排気ガスを十分に模擬することが可能である。従って、排気ガス浄化装置へ供給する評価用の排気ガスを製造し供給する手段として好適なものである。
【0023】
本発明に係るPM発生装置は、その好ましい態様により、燃料間欠噴射手段が電動弁を備え、その電動弁の開弁時間及び/又は開弁間隔の制御によって、燃料を間欠で噴射するため、燃料を連続して噴射する時間、燃料を止める(噴射しない)時間、燃料を噴射する又は止める間隔、あるいはそのパターン等を、自由に設定することが可能である。従って、PMの発生量及び/又は性状を変化させることが容易である。
【0024】
本発明に係るPM発生装置は、その好ましい態様により、燃料噴射圧力調節手段を備えているため、燃料の噴射圧力を変えることにより、容易にPMの発生量及び/又は性状を変化させることが出来る。
【0025】
本発明に係るPM発生装置は、その好ましい態様により、液体燃料と気体燃料とを予め混合し混合燃料を得る燃料混合手段を備えているため、実際の使用状態に即した広範囲の燃料を選択可能である。又、液体燃料と気体燃料を組み合わせることにより任意の量及び/又は性状のPMを発生させることがより容易になる。
【0026】
本発明に係るPM発生装置は、その好ましい態様により、燃料に燃料以外の気体を予め混合し得る気体混合手段を備えているため、例えば重油のように粘性が大きく噴射し難い燃料であっても噴射が容易となり、使用燃料の選択肢を広げることが可能となるだけでなく、任意の燃料を選択することにより、より広い範囲の任意の性状のPMを発生させることが可能となる。
【0027】
本発明に係るPM発生装置は、その好ましい態様により、燃料の噴射角度が、5°以上120°以下であるため、燃料の拡散がよくなるため、燃焼が、より安定するとともに失火の発生を防止出来る。
【0028】
本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置は、本発明に係るPM発生装置を、複数、具備するとともに、それら複数のPM発生装置を、同一の条件で作動させ、あるいは、少なくとも一のPM発生装置を他のPM発生装置と異なる条件で作動させ得る制御手段と、複数のPM発生装置で得られたPM含有ガスを混合し混合PM含有ガスを得るPM含有ガス
混合手段と、を具備しているため、多量のPMを含むPM含有ガスを、短時間で、失火することなく安全に、安定に製造し、排気ガス浄化装置へ供給することが出来る。又、個々のPM発生装置において、使用する燃料、燃料を噴射する又は止める間隔、燃料の噴射圧力等を変えることにより、混合PM含有ガスの性状を、細かく調節することが可能になる。従って、排気ガス浄化装置の性能や耐久性を正確に高い精度で評価する手段として好適である。
【0029】
本発明に係るPM発生方法は、燃焼用空気の中に燃料を間欠で混合させ燃焼させる工程を有するので、ガス中に多量のPMを発生させ、その多量のPMを含むPM含有ガスを、失火することなく安全に、安定に製造することが出来る。燃焼用空気の中に燃料を連続して混合させて燃焼させると、失火し易く連続運転が不能になり、製造し得るPMの発生量が制限されるが、本発明によれば、そのような問題は回避出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明の要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0031】
先ず、本発明に係るPM発生装置について説明する。図1は、本発明に係るPM発生装置の一の実施形態を示す構成図であり、図5は、図1に示されるPM発生装置の内部を示す透視図(断面図)である。図1において、燃焼室1は、その側面が描かれており、図5では、その側面側から内部を透視した様子が表されている。図1及び図5に示されるPM発生装置10は、燃焼室1と、その燃焼室1に取り付けられた燃料間欠噴射手段3と、コンプレッサーで構成される燃焼用空気供給手段4と、を具備する装置である。
【0032】
PM発生装置10において、燃焼用空気132は、燃焼用空気供給手段4によって、流路14を経由して、燃焼室1の側面に設けられた燃焼用空気入口151から燃焼室1の中へ供給される。そして、燃焼室1の中へ供給された燃焼用空気132は、燃焼室1内の空気予熱室5で加熱される。一方、液体及び/又は気体の燃料131は、流路13を経由して、燃料間欠噴射手段3により、燃焼室1(空気予熱室5)内の加熱された燃焼用空気132の中へ、間欠で噴射される。ここで燃焼室1には、バッフルプレート6が設けられており、燃料131は、燃焼筒7に向けた方向に噴射される。
【0033】
燃料131は、燃焼室1内で、燃焼用空気132と混合して希薄になる。燃焼用空気132で希薄化された燃料131は、パイロットバーナ2で着火後、燃焼筒7内で燃焼し、PMが発生する。そのPMを含むガス(PM含有ガス133)は、燃焼室1のガス出口152から(図1中において左方向へ)送出され、評価のため、例えば、排気ガス浄化装置へ供給される。
【0034】
燃焼室1は、その内部空間が、円筒状空間と、ガスの流れ方向に徐々に狭くなるすり鉢状空間と、を有する箱体として構成される(図5を参照)。燃焼室1の、PM含有ガス133が送出されるガス出口152側の端面とは反対の端面(図1中において右端面)には、パイロットバーナ2、燃料間欠噴射手段3、及び火炎検知器11が取り付けられている。PM発生装置10は、燃料を間欠で噴射可能な装置であり、多量のPMを含むPM含有ガスを製造する場合でも、失火は生じ難いものであるが、安全に万全を期すため、火炎検知器11が設けられるのである。燃料の流路13、及び燃焼用空気132の流路14は、配管で構成されている。パイロットバーナ2は、使用開始時に、最初に着火するときに使用される。使用開始時の最初の着火のとき以外は、燃料及び空気は供給されず、燃焼室1の余熱により燃料間欠噴射手段3から噴射された燃料の燃焼が継続する。必要に応じ、パイロットバーナ2に燃料及び空気を供給しパイロットバーナ2の燃焼を継続させたままでもよいことは、いうまでもない。パイロットバーナ2に使用する燃料は、どのような種類のものでもよいが、プロパン等の気体燃料が取扱いの上で、好ましい。
【0035】
燃料間欠噴射手段3は、電動弁機能を併せ持つインジェクタで構成されている。従って、図1に示されないPM発生装置10の制御装置により、燃料間欠噴射手段3自体を制御することによって、噴射時間(開弁時間)、停止時間、それらの間隔(周期)、あるいは噴射・停止のパターン等を自由に設定出来る。勿論、本発明に係るPM発生装置においては、噴射ノズルと、燃料の流路(流路13相当)に独立して設けた電動弁と、で構成し、電動弁の開弁時間及び/又は開弁間隔(開弁周期)の制御によって、燃料間欠噴射手段を実現してもよい。
【0036】
燃料間欠噴射手段3(インジェクタ)は、更に燃料噴射圧力調節機能を併せ持っている。従って、制御装置で燃料間欠噴射手段3自体を制御することによって、燃料の噴射圧力を、噴射の途中段階でも、自在に変更出来る。勿論、本発明に係るPM発生装置においては、噴射ノズルと、燃料の流路(流路13相当)に設けた独立した(自動又は手動の)圧力調節機構と、で構成し、圧力調節機構の自動制御又は手動調整あるいは複数の圧力調整機構の切替によって、燃料の噴射圧力を変更してもよい。
【0037】
PM発生装置10には、図1に示さないが燃料混合手段が備わり、液体燃料と気体燃料とを併用する場合に、それら液体燃料と気体燃料とを別々に燃料間欠噴射手段3(インジェクタ)に供給し、燃料間欠噴射手段3(インジェクタ)の内部で混合することによって、噴射前に予め混合した混合燃料を得ることが出来る。同じく図1に示さないが、PM発生装置10には気体混合手段が備わり、燃料の噴射前に、その燃料に燃料以外の気体、例えば空気を、予め混合することも可能である。
【0038】
PM発生装置10においては、燃料間欠噴射手段3から噴射される燃料の噴射角度は、概ね60°である。図2は、図1に示されるPM発生装置10の燃焼室1の燃料間欠噴射手段3の取付部分を拡大して示す断面図である。図2には、燃焼室1へ差し込まれた燃料間欠噴射手段3の先端部分から燃焼室1の中へ(燃焼室1に供給された燃焼用空気の中へ)噴射された燃料の噴射角度θが、概ね60°であることが示されている。
【0039】
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置について説明する。図3は、本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置(単に評価装置ともいう)の一の実施形態を示す構成図である。図3に示される評価装置20は、4台の上記したPM発生装置10(No.1,2,3,4)を具備し、それらで製造されたPM含有ガスをPM含有ガス混合手段によって混合し、得られた混合PM含有ガスを、排気ガス浄化装置32へ供給することによって、その排気ガス浄化装置32の評価を行うことが可能な装置である。混合PM含有ガスは、切替弁22,23によって、排気ガス浄化装置32へ供給されるか否か選択される。又、切替弁22,23の下流には、例えば熱電対で構成される温度検出器33が取り付けられており、得られた混合PM含有ガスの温度を検出する。尚、図3において、各PM発生装置10の燃料間欠噴射手段等の詳細部分は省略され描かれていない。
【0040】
PM含有ガス混合手段は、No.1,2,3,4のPM発生装置10が製造したPM含有ガスの温度及び/又は流量等を調整する二次空気供給部31と、No.1〜4のPM発生装置10が製造したPM含有ガスを合流させ混合するメインヘッダ部21によって実現されている。即ち、評価装置20では、4台のPM発生装置10が並列に接続され、最終的にメインヘッダ部21に合流し混合された混合PM含有ガスが、排気ガス浄化装置32へ供給される。尚、本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置では、PM含有ガス混合手段は、4台に限らず複数であって同じものではなく異なる仕様のPM発生装置を、その一部又は全てを並列に接続する構成とメインヘッダ部とで、実現することが出来る。
【0041】
評価装置20では、各PM発生装置10において、PM含有ガスが送出されるガス出口152側に、二次空気供給部31が取り付けられている。それぞれの二次空気供給部31では、各PM発生装置10で製造されたPM含有ガスに、図示しないコンプレッサー等の二次空気供給手段によって流路15から供給された二次空気が合流し混合され、その二次空気の流量を調節することによって、各PM発生装置10毎に、PM含有ガスが、所定の温度及び流量になるように調製される。この二次空気の流量の調節は、流量計28と調節弁29とで行われる。即ち、各PM発生装置10毎に設けられた二次空気供給部31へ送られる二次空気の流路15には、各系統毎に、流量計28と調節弁29とが設けられており、それぞれの二次空気の流量を調節することが出来るようになっている。調節弁29は、流量計28から独立して手動調整出来るものであってもよいが、流量計28の検出流量に基づいて自動制御可能なものが特に好ましい。
【0042】
評価装置20では、又、4台のPM発生装置10を、同一の条件で作動させ、あるいは、少なくとも1台のPM発生装置10を他の3台のPM発生装置10と異なる条件で作動させ得る制御手段が備わっている。この制御手段は、4台のPM発生装置10にそれぞれ備わる、電動弁機能及び燃料噴射圧力調節機能を併せ持つ燃料間欠噴射手段(図3において省略)と、燃焼用空気流量調節手段と、で実現される。尚、電動弁は、電磁石を用いた電磁弁、モータの回転によって開閉するもの、圧電性セラミックスを用いたもの等、何れのものでも用いることが出来る。
【0043】
燃焼用空気流量調節手段は、燃焼用空気の流量を調節する手段であり、流量計24と調節弁25とで構成される。即ち、各PM発生装置10の燃焼室へ送られる燃焼用空気の流路14には、各系統毎に、流量計24と調節弁25とが設けられており、それぞれの燃焼用空気の流量を調節することが出来るようになっている。調節弁25は、流量計24から独立して手動調整出来るものであってもよいが、流量計24の検出流量に基づいて自動制御可能なことが好ましい。
【0044】
図3に示されない評価装置20の制御装置により、4台のPM発生装置10のそれぞれにおいて、燃料間欠噴射手段で燃料の噴射圧力、並びに噴射時間及び停止時間、若しくはそれらの間隔、あるいは噴射・停止のパターンを選択決定するとともに、燃焼用空気の流量を調節し、更には、上記した二次空気の流量を調節することによって、最終的にメインヘッダ部21で得られる混合PM含有ガスの流量、温度、PM含有量、含有されたPMの性状等を、自在に変更することが可能である。
【0045】
尚、図3において、排気ガス浄化装置32は、その側面が描かれており、性能及び/又は耐久性を評価する対象である排気ガス浄化装置32は、円筒状の空間と、両端において徐々に狭くなるすり鉢状空間と、を有する箱体として構成され、円筒状の空間の中に、例えばハニカム構造を呈するフィルタであって排気ガス中の微粒子を除去するフィルタや、例えばハニカム構造を呈する触媒(触媒体)であって排気ガス中の有害物質を分解するための酸化触媒、三元触媒等の触媒が収容されているものである。尚、図示しないが、排気ガス浄化装置32の下流側(排気ガスの出口側)に、ガス中のCO、HC、NO、SO等を分析する分析手段を備えることが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)図1に示されるPM発生装置10を使用し、燃料としては軽油を用い、PM発生装置10に備わる電動弁を用いた燃料間欠噴射手段による燃料の噴射圧力、開弁時間(燃料の噴射時間)、開弁周期(燃料の噴射周期)、デューティー比、PM発生装置10における空気過剰率λを表1に示すように変化させ、燃焼させて、PM含有ガスを製造した。又、失火発生までの時間を計測した。そして、そのPM含有ガスに、二次空気を混合し、評価対象となるPM含有ガス(評価ガス)を得た。そして、そのPM含有ガス(評価ガス)を吸引して、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料使用量とともに、表1に示す。
【0048】
[PM発生量]PM含有ガス(評価ガス)を吸引し、一定時間(30秒〜5分間)、濾紙(Millipore Corporation社製グラスファイバフィルタ、品番:AP2005500、55mm)に通す。そして、濾紙に付着したPMの質量をミクロ天秤(SARTORIUS社製ME−5F、0.001mg)で測定し、二次空気を混合した後のPM含有ガス(評価ガス)の流量、それから吸引されたガスの流量、及び吸引時間より、単位時間当りのPM発生量(g/Hr)を求めた。
【0049】
[空気過剰率λ]燃焼室に供給される燃料の量と燃焼用空気の一定時間(例えば1秒間又は1分間等)における流量(予め燃料に空気を混合した場合は、その混合した空気の量も含む。)から算出した。尚、一般には、燃料が濃い(λが小さい)とPM発生量は増加するが、燃料を濃くすると失火が起こり易い。
【0050】
[デューティー比]開弁時間と開弁周期との比であり、図4に示されるように、開弁時間Ton/開弁周期Ttotalで表される。尚、図4において、弁の開度100%で燃料が噴射され、弁の開度0%で燃料の噴射が停止される(噴射されない)。
【0051】
(実施例2〜18)燃料の噴射圧力、開弁時間及び開弁周期(デューティー比)、空気過剰率λを変更した他は、実施例1と同様にして、PM含有ガスを製造した。そして、失火発生までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。特に実施例17、18では、燃料の噴射圧力を2段階に変化させた。結果を、燃料使用量とともに、表1に示す。
【0052】
(比較例1〜5)間欠噴射が出来ない燃料噴射手段を備えたものである他は、実施例1で使用したものと同じ装置を使用し、所定の噴射圧力で、所定の空気過剰率λになるように、燃焼用空気の中に燃料を連続して噴射し混合させ、燃焼させて、PM含有ガスを製造した。それ以外は、実施例1と同様にして、失火発生までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表1に示す。尚、燃料を連続して噴射する場合には開弁時間と開弁周期が等しく、デューティー比は1になる。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例19,20)燃料として重油を用い、燃料の噴射圧力、開弁時間及び開弁周期(デューティー比)、空気過剰率λを所定の値とした他は、実施例1と同様にして、PM含有ガスを製造した。そして、失火発生までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表2に示す。
【0055】
(比較例6〜7)間欠噴射が出来ない燃料噴射手段を備えたものである他は、実施例1で使用したものと同じ装置を使用し、燃料としては重油を用い、所定の噴射圧力で、所定の空気過剰率λになるように、燃焼用空気の中に燃料を連続して噴射し混合させ、燃焼させて、PM含有ガスを製造した。それ以外は、実施例1と同様にして、失火発生までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例21)プロパン用の燃料噴射手段を備えたものである他は、実施例1で使用したものと同じ装置を使用した。そして、燃料としてプロパンを用い、燃料の噴射圧力、開弁時間及び開弁周期(デューティー比)、空気過剰率λを所定の値とした他は、実施例1と同様にして、PM含有ガスを製造した。そして、失火までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表3に示す。
【0058】
(比較例8)間欠噴射が出来ない燃料噴射手段を備えたものである他は、実施例1で使用したものと同じ装置を使用し、燃料としてはプロパンを用い、所定の噴射圧力で、所定の空気過剰率λになるように、燃焼用空気の中に燃料を連続して噴射し混合させ、燃焼させて、PM含有ガスを製造した。それ以外は、実施例1と同様にして、失火までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例22〜25)燃料として軽油に予め空気を混合したもの、軽油とプロパンとを予め混合したものをそれぞれ用い、燃料の噴射圧力、開弁時間及び開弁周期(デューティー比)、空気過剰率λを所定の値とした他は、実施例1と同様にして、PM含有ガスを製造した。そして、失火までの時間を計測し、単位時間あたりのPM発生量を測定した。結果を、燃料の噴射圧力、空気過剰率λ、及び燃料使用量とともに、表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
(実施例26)図1に示されるPM発生装置10を4台用いて、図3に示される評価装置20を構成した。その評価装置20において、4台のPM発生装置10を、それぞれ実施例1〜25に示した条件で運転し、各PM発生装置10で製造されたPM含有ガスに、二次空気を、その量を適宜変更して、混合した。その結果、任意の流量、温度、PM含有量、(含有された)PMの性状、の混合PM含有ガスが得られることが確認出来た。そして、所望の流量、温度、PM含有量、(含有された)PMの性状、である混合PM含有ガスを用いて、外径100mm〜380mmのDPFを排気ガス浄化装置、及び外径100mm〜380mmの触媒を備えた排気ガス浄化装置を評価したところ、良好に行うことが出来た。
【0063】
(考察)表1〜4の結果より、実施例1〜25で示されるように、燃焼用空気の中に燃料を間欠で噴射し混合させ燃焼させてPMを発生させると、使用する燃料によらず、PM発生量が10g/Hr以上である場合でも失火が発生せず、30時間以上の連続運転が可能である。又、最大のPM発生量が115g/Hrと多く、且つ安定して運転出来る。又、燃料間欠噴射手段の開弁周期が10〜300msec.、デューティー比が0.05〜0.6の広範な条件において安定した運転状態であった。
【0064】
一方、比較例1〜8で示されるように、燃料を連続で噴射してPMを発生させると、PM発生量が極めて少量の条件では安定して燃焼するが、それ以上にPM発生量を増加させようとすると、燃焼が不安定となる。PM発生量を10g/Hr以上とすると失火し易くなり、1時間以上の連続運転が出来ない。又、PM発生量は10g/Hrが限界である。以上の実施例によって、間欠で噴射することによる優れた効果が確認出来た。
【0065】
又、実施例26により、本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置により、混合PM含有ガスの性状を、細かく調節することが可能であることを確認出来た。所望の性状の混合PM含有ガスが得られるため、外径が380mmを超える大きさのDPFや触媒を備えた排気ガス浄化装置を評価することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のPM発生装置及び排気ガス浄化装置の評価装置、並びにPM発生方法は、排気ガス中の微粒子を除去するフィルタ及び/又は排気ガス中の有害物質を分解するための触媒を備えた排気ガス浄化装置の性能及び/又は耐久性の評価を行うために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るPM発生装置の一の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示されるPM発生装置の燃焼室の燃料間欠噴射手段の取付部分を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明に係る排気ガス浄化装置の評価装置の一の実施形態を示す構成図である。
【図4】開弁時間、開弁周期、及びデューティー比の説明図である。
【図5】図1に示されるPM発生装置の内部を示す透視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 燃焼室
2 パイロットバーナ
3 燃料間欠噴射手段
4 燃焼用空気供給手段
5 空気予熱室
6 バッフルプレート
7 燃焼筒
10 PM発生装置
11 火炎検知器
13 流路
14 流路
15 流路
20 排気ガス浄化装置の評価装置
21 メインヘッダ部
22,23 切替弁
24 流量計
25 調節弁
28 流量計
29 調節弁
31 二次空気供給部
32 排気ガス浄化装置
33 温度検出器
131 燃料
132 燃焼用空気
133 PM含有ガス
151 燃焼用空気入口
152 ガス出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及び/又は気体の燃料を燃焼室において燃焼させて、ガスの中にパティキュレートマター(PM)を発生させる装置であって、
前記燃焼室と、その燃焼室へ燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、前記燃焼室へ供給された前記燃焼用空気の中に前記燃料を間欠で噴射することが可能な燃料間欠噴射手段と、を有するPM発生装置。
【請求項2】
前記燃料間欠噴射手段が電動弁を備え、その電動弁の開弁時間及び/又は開弁間隔の制御によって、前記燃料を間欠で噴射する請求項1に記載のPM発生装置。
【請求項3】
前記燃料の噴射圧力を変え得る、燃料噴射圧力調節手段を備える請求項1又は2に記載のPM発生装置。
【請求項4】
前記燃料噴射圧力調節手段が、前記燃料の噴射の途中段階で噴射圧力を1回又は2回以上変化させ得る手段である請求項3に記載のPM発生装置。
【請求項5】
前記燃料の噴射圧力が、0.1MPa以上1.0MPa以下である請求項1〜4の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項6】
液体燃料と気体燃料とを併用する場合に、それら液体燃料と気体燃料とを噴射前に予め混合し混合燃料を得る燃料混合手段を備える請求項1〜5の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項7】
前記燃料の噴射前に、その燃料に燃料以外の気体を予め混合し得る気体混合手段を備える請求項1〜6の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項8】
前記燃料以外の気体が、空気である請求項7に記載のPM発生装置。
【請求項9】
前記燃料のうち液体の燃料は、軽油又は重油である請求項1〜8の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項10】
前記燃料間欠噴射手段の開弁周期が、10〜300msec.である請求項1〜9の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項11】
前記燃料間欠噴射手段の開弁時間と開弁周期の比(デューティー比=開弁時間/開弁周期)が、0.05〜0.6である請求項1〜10の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項12】
PMを発生させたガスの供給先が排気ガス浄化装置であり、その排気ガス浄化装置の評価を行うために使用される請求項1〜11の何れか一項に記載のPM発生装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載のPM発生装置を、複数、具備するとともに、
それら複数のPM発生装置を、同一の条件で作動させ、あるいは、少なくとも一のPM発生装置を、他のPM発生装置と異なる条件で作動させ得る制御手段と、
複数のPM発生装置で得られた、PMを発生させたガスを混合し、混合PM含有ガスを得るPM含有ガス混合手段と、を具備し、
前記混合PM含有ガスを排気ガス浄化装置へ供給することによって、その排気ガス浄化装置の評価を行う排気ガス浄化装置の評価装置。
【請求項14】
液体及び/又は気体の燃料を燃焼させて、ガス中にPMを発生させる方法であって、
燃焼用空気の中に前記燃料を間欠で混合させ燃焼させる工程を有するPM発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−155712(P2007−155712A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304697(P2006−304697)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】