説明

PMEAおよびそのアナログの新規ホスホン酸系プロドラッグ

式Iのプロドラッグ、それらの使用、中間体および製造方法を記載する:
式I:
【化1】


[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、抗ウィルス活性および抗癌活性を有する新規ホスホン酸プロドラッグ、それらの製造、合成中間体ならびに使用を目的とする。より詳細には、本発明は、PMEAまたは関連するアナログに基づくホスホン酸抗ウィルス薬の、置換されていることもある環状1,3−プロパニル−1−アリールエステル類の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の本発明の背景の記載は、本発明の理解を助けるために提供するものであるが、本発明の先行技術であると認めるものでも、またはそれを記載するものでもない。すべての刊行物は、引用によりそのまま包含される。
【0003】
9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン(PMEA)および関連するアナログ(U.S. 4,808,716; U.S. 5,142,051; De Clercqら, Antiviral Res. 8(5-6):261-72 (1987))は、抗ウィルス活性、例えばB型肝炎およびHIVに対する活性を示すホスホン酸である。PMEAのジピバロイルオキシメチレンエステル(「ビスPOM PMEA」)は、B型肝炎の処置のための臨床試験に供されている(Benhamouら, Lancet 358(9283):718-23 (2001))。PMEAは、HBVのDNAポリメラーゼをブロッキングすることにより作用すると考えられる。さらに、これらの化合物はまた、抗癌活性を示すことがいくつかの研究により示されている(Muronoら, Cancer Res., 61(21):7875-7 (2001))。生物学的に活性な化合物は、ジホスフェート、例えばPMEAppであると考えられ、これは特異的な哺乳動物細胞内キナーゼを受けてホスホン酸から産生される可能性が高い。
【0004】
ホスホン酸類を含む化合物およびそれらの塩は、生理学的pHにて帯電性が高く、それゆえ低い経口バイオアベイラビリティー、低い細胞透過性および制限された組織分布(例えばCNS)を示すことが多い。さらに、これらの酸はまた一般に、薬物としてのそれらの使用を妨害するいくつかの他の性質、例えば急速な腎クリアランスに起因する短い血漿半減期ならびに毒性(例えば、腎臓、胃腸など)を伴う(例えば、Antimicrob Agents Chemother. 42(5): 1146-50 (1998))。
【0005】
例えば、PMEAは極めて低い分布容積しか示さず、これはおそらくその高い負電荷に起因する。ヒトでは、PMEAの腎クリアランスの促進を助ける腎尿細管細胞の基底外側表面(basolateral surface)における有機アニオントランスポーターの存在の結果として、投与量の98%が腎臓から排泄される。PMEA治療は、PMEAおよび関連するホスホリル化された種の腎臓での暴露および蓄積に起因すると思われる重篤な腎毒性を伴う。従って、PMEAおよび関連するアナログの毒性を軽減する方法が必要である。
【0006】
環状ホスホネートエステルもまた、PMEAおよび関連するアナログとして記載されている。これらの環状エステルについての番号付けを以下に示す:
【化1】

PMEAの無置換環状1’,3’−プロパニルエステルが製造されたが、インビボ活性をまったく示さなかった。EP 0 481 214 B1は、PMEAの環状プロドラッグの例(ここに、1’および3’位は無置換である)を開示する。発明者(Starrettら, J. Med. Chem. 37:1857-1864 (1994))による出願およびその後の刊行物はさらに、化合物の研究成果、すなわちこれらの化合物が経口バイオアベイラビリティーおよび生物学的活性をまったく示さなかったことを開示する。それらの化合物は低いpHにて不安定であることが示され、例えば環状2’,2’−ジフルオロ−1’,3’−プロパンエステルは、加水分解に対し不安定であり、開環モノエステルが急速に生成されることが報告されている。
【0007】
1’位にアリール基を有する環状プロドラッグは、グルコース低下活性に特に有用であると知られ、それゆえ糖尿病の処置に有用であるホスホネートとして記載されている(US 5,658,889, WO 98/39344, WO 98/39343およびWO 98/39342)。さらに、US 6,312,662はこの戦略を使用し、肝臓疾患、例えばB型肝炎および肝細胞癌の患者の処置のために肝臓に種々の薬物および化合物クラスを肝臓特異的送達することを開示する。
【0008】
さらに、肝臓疾患、例えば肝炎および肝臓癌は、投与量を制限する肝外副作用または化学療法薬の標的組織への不適切な送達のために、今日の治療での処置は不十分なままである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、MとV基の間にてシスの相対的立体化学を有するPMEAおよび関連するアナログの新規環状1,3−プロパニル−1−アリールホスホネート環状エステル、それらの製造、合成中間体ならびに使用を目的とする。一つの態様において、シス環状エステルは、Vが結合している部分にてS立体化学を有する。
【0010】
一つの側面において、本発明は、ウィルス感染を処置するためのこれらの環状エステルの使用を目的とする。本発明の別の側面は、肝臓ならびに類似の組織および細胞への増強された薬物分布から利益を受ける疾患、例えばB型肝炎および肝臓癌の処置のための、PMEAおよびそのアナログのこれらの環状エステルの使用である。本発明の別の側面は、PMEAおよび関連するアナログの経口送達を増強しおよび/または薬力学的半減期を延長するためのこれらの化合物の使用である。
【0011】
さらに、本発明化合物は、PMEAおよび関連するアナログの持続的送達を達成しおよび/または薬物の治療指数を増大するために使用される。
【0012】
本発明の別の側面において、シスプロドラッグを製造する方法を記載する。別の側面において、Vが結合している部分にてS立体化学を有する、実質的に鏡像異性的に純粋なシス環状エステルを製造する方法を記載する。
【0013】
本発明の一つの側面は、インビトロまたはインビボにて対応するMPO2−、MP3−およびMP4−に変換され、式I:
【化2】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、ならびにその製薬的に許容される塩に関する。
【0014】
本発明に記載する化合物の製造方法を記載し、これはホスホン酸としてのまたは活性形態(例えばジクロリデート(dichloridate))にてのいずれかのPMEAまたはPMEAアナログと1,3−プロパンジオールとの、シス立体異性体を優先的に生成する反応に依る。さらに、所望の異性体の単離および精製を可能にする方法および塩形態を記載する。
【0015】
これらの化合物は不斉中心を有するため、本発明は、これらの化合物のラセミおよびジアステレオマー混合物だけでなく、個々の立体異性体をも目的とする。本発明はまた、製薬的に許容されおよび/または有用な、酸付加塩を含む式Iの化合物の塩を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
本発明に従い、本明細書にて用いる次の用語は、特に明記されなければ、次の意味を有するものと定義される。
【0017】
用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖および環状基などの飽和脂肪族基を意味する。適切なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびシクロプロピルが挙げられる。
【0018】
用語「アリール」は、5〜6つの環原子を有する芳香族基を意味する。適切なアリール基としては、フェニル、フラニル、ピリジルおよびチエニルが挙げられる。アリール基は置換されていてもよい。
【0019】
用語「製薬的に許容される塩」としては、本発明化合物と有機または無機の酸または塩基との組合せに由来する式Iの化合物の塩であって、動物に安全に投与することができる塩が挙げられる。適切な酸としては、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、(+)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−メタンスルホン酸、クエン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ドデシルスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonic acid)、グルコン酸、グルコロン酸(glucoronic acid)、馬尿酸、塩酸ヘミエタノール酸(hydrochloride hemiethanolic acid)、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、臭化メチル酸(methylbromide acid)、メチル硫酸、2−ナフタレンスルホン酸、硝酸、オレイン酸、4,4’−メチレンビス[3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸]、リン酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、スルホサリチル酸、タンニン酸、酒石酸、テレフタル酸およびp−トルエンスルホン酸が挙げられる。
【0020】
本明細書にて用いる用語「プロドラッグ」は、生体系に投与されると、自発的化学反応、酵素触媒化学反応および/または代謝化学反応あるいはそれぞれの組合せの結果として生物学的に活性な化合物を生成する任意のM化合物を意味する。標準的なプロドラッグは、薬物に関連する官能基、例えばHO−、HS−、HOOC−、RN−に結合するインビボにて開裂する基を用い、形成される。標準的なプロドラッグとしては、基がアルキル、アリール、アラルキル、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニルオキシアルキルであるカルボン酸エステル、ならびに結合している基がアシル基、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、ホスフェートまたは硫酸塩であるヒドロキシル、チオールおよびアミンのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。例示した基は、典型的なものであり、網羅したものではなく、当業者は、他の知られている種々のプロドラッグを製造することができる。そのような式Iの化合物のプロドラッグは、本発明の範囲に含まれる。プロドラッグは、ある形態の化学的変換を受けて、生物学的に活性である化合物、または生物学的に活性な化合物の前駆体である化合物を産生しなければならない。場合によって、プロドラッグは、通常、薬物自体より低いが生物学的に活性であり、薬物の有効性または安全性を、改善された経口バイオアベイラビリティー、薬力学的半減期などを通して改善するために提供する。生物学的に活性な化合物としては、例えば抗癌剤および抗ウィルス薬が挙げられる。
【0021】
用語「環状1’,3’−プロパンエステル」、「環状1,3−プロパンエステル」、「環状1’,3’−プロパニルエステル」および「環状1,3−プロパニルエステル」は、式:
【化3】

で示される基を意味する。
【0022】
用語「シス」立体化学は、6員環上のV基とM基の位置関係を意味する。以下の式IIは、シス立体化学を示す。
【化4】

【0023】
用語「N6−置換」は、プリン環系の6位に結合しているアミンにおける置換を意味する。N6−は、一般にジアルキルアミノメチレン基(ここに、R基としては、C1〜C4非環式アルキル、C5〜C6環状アルキル、ベンジル、フェネチルが挙げられるがこれらに限定されず、またはR基は一緒になってピペリジン、モルホリンおよびピロリジンを形成する)で置換されている。
【化5】

【0024】
用語「ジアルキルアミノメチレンイミン」は、次の構造:
【化6】

[式中、
基としては、C1〜C4非環式アルキル、C5〜C6環状アルキル、ベンジル、フェネチルが挙げられるがこれらに限定されず、またはR基は一緒になってピペリジン、モルホリンおよびピロリジンを形成する]
を意味する。
【0025】
用語「肝臓」は、CYP3A4アイソザイムまたは本発明の環状プロドラッグを酸化することが見出されているその他のP450アイソザイムを含む、肝臓ならびに類似の組織および細胞を意味する。実施例Dに基づき、我々は、式Iの化合物がシトクロムP450アイソザイムCYP3A4により選択的に酸化されることを見出している。DeWaziersら(J. Pharm. Exp. Ther. 253:387-394 (1990))によれば、CYP3A4はヒトの次の組織において見られる(免疫ブロット法および酵素測定により決定):
組織 肝臓活性%
肝臓 100
十二指腸 50
空腸 30
回腸 10
結腸 <5(P450アイソザイムのみ見られる)
胃 <5
食道 <5
腎臓 検出されず
従って「肝臓」は、より好ましくは、肝臓、十二指腸、空腸、回腸、結腸、胃および食道を意味する。最も好ましくは、肝臓は、肝臓器官を意味する。
【0026】
用語「増強する」は、特異的性質を増大または改善することを意味する。
用語「肝臓特異性」は、薬物またはプロドラッグで処置された動物において測定される割合:
[肝臓組織中の親ドラッグまたは薬物代謝体]/[血中、尿中または別の非肝臓組織中の親ドラッグまたは薬物代謝体]
を意味する。この割合は、親ドラッグ、または生物学的に活性な薬物代謝体を含む薬物代謝体、あるいはその両方の組織レベルを特定の時間に測定することにより決定することができ、または3つまたはそれより多くの時点にて測定される値に基づくAUC(曲線下領域)で表わすこともできる。
【0027】
用語「増大または増強された肝臓特異性」は、親ドラッグで処置された動物に対するプロドラッグで処置された動物における肝臓特異性の割合の増大を意味する。
【0028】
用語「増強された経口バイオアベイラビリティー」は、親ドラッグまたはプロドラッグ(本発明のものではない)の投与量の胃腸管からの吸収における少なくとも50%の増大を意味する。より好ましくは、少なくとも100%である。経口バイオアベイラビリティーの測定は、通常、プロドラッグ、薬物または薬物代謝体の、全身投与後の測定と比較した、経口投与後の血中、組織中または尿中の測定を意味する。
【0029】
用語「薬物代謝体」は、インビボまたはインビトロにて親ドラッグまたはそのプロドラッグから生成する任意の化合物を意味する。
【0030】
用語「薬力学的半減期」は、薬物またはプロドラッグの投与後、測定される薬理学的応答の二分の一の減少が観察される時間を意味する。薬力学的半減期は、半減期が好ましくは少なくとも50%増大するとき増強する。
【0031】
用語「薬物動態学的半減期」は、薬物またはプロドラッグの投与後、血漿中または組織中の薬物濃度の二分の一の減少が観察される時間を意味する。
【0032】
用語「治療指数」は、死亡、すなわち毒性の指標となるマーカーの上昇および/または薬理学的副作用のような望ましくない応答を生じる投与量に対する、治療的に有益な応答を生じる薬物またはプロドラッグの投与量の割合を意味する。
【0033】
用語「持続的送達」は、プロドラッグの存在により、治療的に有効な薬物レベルが持続する期間の増大を意味する。
【0034】
用語「バイパスする薬物耐性」とは、薬物の生物学的活性を産生および維持するために重要な生化学的経路および細胞活性における変化、ならびに代替経路の使用を通して耐性をバイパスする因子の能力における変化、または該因子が耐性に傾けられた変化を誘発できないことに起因する、薬物の治療的有効性の損失または部分的損失(薬物耐性)を意味する。
【0035】
用語「治療的に有効な量」は、疾患または状態の処置において何らかの有益な効果を与える量を意味する。
【0036】
用語「ホスホネート」は、炭素を介してPO2−に結合している化合物を意味する。
用語「親ドラッグ」は、MPOがPMEAまたはそのアナログであるとき、それぞれPMEAまたはそのアナログを意味する。
【0037】
用語「生物学的に活性な薬物または因子」は、生物学的効果を生じる化学物質を意味する。本発明において、生物学的に活性な因子は、Mが親ドラッグまたは代謝体におけるMと同じであることができるMPO2−、MP3−またはMP4−を意味する。
【0038】
用語「PMEAアナログ」は、原子の鎖を経由してリン酸に結合したヌクレオチド塩基を有する化合物を意味する。適切なPMEAアナログとしては、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンが挙げられる。
【0039】
用語「鏡像体過剰率(%ee)」は、光学純度を意味する。これは次式:
([R]−[S])/([R]+[S])x100=%R−%S=%eeR異性体
(式中、[R]はR異性体の量であり、[S]はS異性体の量である)
を用いることにより得られる。
この式は、Rが主要な異性体であるとき%eeを提供する。
用語「キラルアルコール」または「キラルジオール」は、%eeが≧50%である1,3−ジオールを意味する。
【0040】
用語「胃腸毒性の改善」は、ビスPOM PMEAであれば生じるであろう胃腸組織および器官への毒性に対して毒性がブロッキング、抑圧または軽減することを意味する。
用語「腎毒性の改善」は、ビスPOM PMEAであれば生じるであろう腎臓組織および器官への毒性に対して毒性がブロッキング、抑圧または軽減することを意味する。
用語「肝外毒性の改善」は、ビスPOM PMEAであれば生じるであろう肝臓外の組織および器官への毒性に対して毒性がブロッキング、抑圧または軽減することを意味する。
【0041】
用語「抗ウィルス治療に耐性」は、抗ウィルス治療処置に完全に応答せず、またはこれにより充分に影響を受けないことを意味する。
用語「同時に投与される」は、ある薬物を別の薬物が投与されるのと同時にまたはほぼ同時に投与することを意味する。好ましい投与は、互いの投与が30分以内である。
【0042】
用語「インターフェロン」は、広範なウィルス感染への非特異的耐性を与え、細胞増殖に影響しおよび免疫応答を調節する、種特異的脊椎動物タンパク質のファミリーを意味する。適切なインターフェロンとしては、インターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、オメガインターフェロン、オムインフェロン(Ominferon)、ロフェロン−A、アルブフェロン(Albuferon)、アルフェロン(Alferon)、インフェルゲン(Infergen)、イントロンA、ペグイントロン、ペガシス、インターフェロン融合体(interferon fusions)、インターフェロン誘導体および小分子インターフェロン誘導物質が挙げられる。
用語「ペグ化インターフェロン」は、インビボクリアランスを減少し、それによりその作用期間を増大することによりその半減期を増大するために、ポリエチレングリコール分子の結合により改変されているインターフェロンを意味する。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲では次のよく知られた薬物を記載している。略語および一般的名称も示す。
ara−A; 9−ベータ−D−アラビノフラノシルアデニン(ビダラビン)
AZT; 3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン(ジドブジン)
d4T; 2’,3’−デオキシ−2’,3’−ジデヒドロチミジン(スタブジン)
ddI; 2’,3’−ジデオキシイノシン(ジダノシン)
ddA; 2’,3’−ジデオキシアデノシン
ddC; 2’,3’−ジデオキシシチジン(ザルシタビン)
L−ddC; L−2’,3’−ジデオキシシチジン
L−FddC; L−2’,3’−ジデオキシ−5−フルオロシチジン
L−d4C; L−2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロシチジン
L−Fd4C; L−2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロ−5−フルオロシチジン(ACH126,443)
3TC; (−)−2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン;(−)−1−((2R,5S)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル)シストシン(ラミブジン)
1−ベータ−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド(リバビリン)(ビラゾール)
FIAU; 1−(2−デオキシ−2−フルオロ−b−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードウリジン
FIAC; 1−(2−デオキシ−2−フルオロ−b−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン
L−FMAU; 2’−フルオロ−5−メチル−β−L−アラビノ−フラノシルウラシル(クレブジン)
BvaraU; 1−ベータ−D−アラビノフラノシル−E−5−(2−ブロモビニル)ウラシル(ソリブジン)
E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン
TFT; トリフルオロチミジン(トリフルオロチミジン)
5−プロピニル−1−アラビノシルウラシル(ゾナビル)
CDG; 炭素環式2’−デオキシグアノシン
DAPD; ベータ−D−2−ヒドロキシメチル−5−(2,6−ジアミノプリン−9−イル)−1,3−ドキサラン(doxalane)
FDOC; (−)−ベータ−D−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキソラン]シトシン
d4C; 2’,3’−ジデオキシ−2’,3’−ジデヒドロシチジン
DXG; ジオキソラングアノシン
FEAU; 1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−1−β−D−アラビノフラノシル)−5−エチルウラシル
FLG; 2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオログアノシン
FLT; 2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロチミジン
FTC; (−)−シス−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(コヴィラシル)
5−イル−炭素環式2’−デオキシグアノシン(BMS−200475)(エンテカビル)
[1−(4’−ヒドロキシ−1’,2’−ブタジエニル)シトシン](シタレン)
オキセタノシンA; 9−((2R,3R,4S)−3,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2−オキセタニル)アデニンNK84−0218
オキセタノシンG; 9−((2R,3R,4S)−3,4−ビス(ヒドロキシメチル)−2−オキセタニル)グアニン
ddAPR; 2,6−ジアミノプリン−2’,3’−ジデオキシリボシド
シクロブタA; (+/−)−9−[(1−ベータ,2−アルファ,3−ベータ)−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−1−シクロブチル]アデニン
シクロブタG; (+/−)−9−[(1−ベータ,2−アルファ,3−ベータ)−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)−1−シクロブチル]グアニン(ロブカビル)
5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(フロキシウリジン)
dFdC; 2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)
araC; アラビノシルシトシン(シタラビン)
BUdR; 5−ブロモデオキシウリジン(ブロキシン(Broxine))
IDU; 5−ヨード−2’−デオキシウリジン(イドクスウリジン)
CdA; 2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(クラドリビン)
F−ara−A; 2−フルオロアラビノシルアデノシン(フルダラビン)
ACV; 9−(2−ヒドロキシエトキシルメチル)グアニン(アシクロビル)
GCV; 9−((1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシ)メチル)グアニン(ガンシクロビル)
9−(4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブタ−1−イル)グアニン(ペンシクロビル)
(R)−9−(3,4−ジヒドロキシブチル)グアニン(ブシクロビル)
ホスホノギ酸(ホスカルネット)
PPA; ホスホノ酢酸
PMEA; 9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン(アデフォビル)
PMEDAP; 9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン
HPMPC; (S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン(シドフォビル)
HPMPA; (S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン
FPMPA; 9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン
PMPA; (R)9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン
Ara−T; 9−ベータ−D−アラビノフラノシルチミジン
FMdC; (E)−2’−デオキシ−2’(フルオロメチレン)シチジン
AICAR; 5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド−1−リボフラノシル
AM365; 非環式グアノシンヌクレオシドアナログ
L−dT; ベータ−L−2’−デオキシチミジン(NV−02B)
L−dC; ベータ−L−2’−デオキシシトシン、ベータ−L−2’−デオキシシトシンのバリンプロドラッグ誘導体
MCC478; 2−アミノホスホノメトキシエチルプリンアナログ
インターフェロンアルファ
ペグ化インターフェロン
ファムシクロビル、2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9−イル)エチル]−1,3−プロパンジオールジアセテート
XTL001; モノクローナル抗体組合せ(HepeX−B)
セラダイム(Theradigm)
ザダシン、チモシンアルファ
HBV DNAワクチン
EHT899、ウィルスタンパク
ICN2001、ヌクレオシドアナログ
Fluor LおよびDヌクレオシド、ヌクレオシドアナログ
ラシビール
ロブスタフラボン(Robustaflavone)、天然に存在するビフラバノイド(biflavanoid)
【0044】
(発明の詳細な記載)
本発明は、PMEAまたは関連するアナログのシス立体化学の環状1,3−プロパニル−1−アリールエステル類が有効なプロドラッグであるという発見を目的とする。これらのPMEAおよびPMEAアナログの環状エステルプロドラッグは、P450酵素の作用を通した活性化を必要とし、生物学的に活性な薬物をインビボにて生成すると考えられる。高レベルのP450酵素、例えば肝臓中のCYP3A4により、化合物の活性化が肝臓中にて大きくなることができ、それゆえ生物学的に活性な薬物の肝臓レベルを増大しおよび/または肝臓外の生物学的に活性な薬物のレベルを減少することができる。肝臓特異性は、P450組織分布だけでなく、肝細胞の外および血流中または胆汁中にPMEAを輸送する経路に関連するプロドラッグ活性化速度およびその後のPMEAまたはそのアナログのリン酸化に依存する。低い活性化は、肝臓(ならびに肝外組織)中の低いPMEAレベルを引き起こすだろう。高い活性化、しかし下流キナーゼによるPMEAジホスフェート(「PMEApp」)への緩やかな変換は、PMEApp産生を制限するだろう。PMEAの血流中への急速な輸送は、肝臓特異性を減少し、治療指数の改善を制限するだろう(Mulatoら, J. Pharmacol. Exp. Ther. 295:10-15 (2001); Gilead Sciences, Inc. Press Release (6/22/01) Foster City, CA)。
【0045】
本発明化合物は、肝臓中にて代謝され、さらに生物学的に活性な薬物に代謝され得るホスホネートを産生する。減少した肝外毒性はまた、より高い投与量を可能にし、それゆえ生物学的に活性な因子の肝臓レベルを肝臓にて増大することができる。
【0046】
本発明の別の側面において、本発明の環状エステルは、水溶液中にて高い安定性を示し、高い経口バイオアベイラビリティーを示すことを見出した。高い安定性は、プロドラッグが高い経口吸収を確実にするために十分な時間、胃腸環境(pH1〜9)にて存在することを可能にできる。さらに、経口バイオアベイラビリティーは、酵素に対するGI安定性に依存する。薬物吸収のための主要な部位であり、比較的高レベルのCYP3A4(肝臓と比較して50%)を示す小腸で考えるならば、記載の型の化合物は、腸内のプロドラッグ活性化および対応するホスホン酸への変換に起因する低い経口バイオアベイラビリティーに関連し得る。しかし、本発明に記載するように、本発明化合物は高い経口バイオアベイラビリティーを示す。
【0047】
本発明の別の側面において、本発明の環状エステルはまた、親ドラッグまたはエステラーゼに敏感なプロドラッグエステル[エステラーゼ敏感]に関して薬力学的半減期を増強するために用いることもできる。本発明化合物は、PMEAおよび他のホスホン酸アナログと比較して、腎臓によりゆっくりと除去され、それゆえ時間をかけて放出される薬物貯蔵を提供する。従って本発明化合物は、持続した治療効果を生じることができる。一方、プロドラッグエステル、例えばビスPOMのようなアシルオキシアルキルエステルは、インビボにて急速に開裂し、それゆえホスホン酸の薬物動態学に依存する(Noble, S. and Goa, K.L., Drugs 58(3):479-487 (1999))。
【0048】
別の側面において、環状ホスホネート化合物の製造方法を記載する。
これらの側面は以下に、より詳細に記載する。
【0049】
ホスホン酸薬物の増大された治療指数
本発明化合物は、PMEAおよびPMEAアナログの治療指数(「TI」)を有意に増大することができる。多くの場合において、増大されたTIは、生物学的に活性な薬物のより高い肝臓レベルを生じ、それゆえより低い投与量により、同じ治療利益を達成することを可能にする、高い肝臓特異性の結果である。あるいは、増大されたTIは、薬物の肝外組織への減少した暴露から生じ得、それゆえ生物学的に活性な薬物の同等のまたはより高い肝臓レベルを達成する投与量における毒性の減少を生じることができる。
【0050】
腎毒性は、ホスホン酸に関連する一般的な毒性である。この毒性は、例えば腎臓の近位尿細管の側底膜に局在する有機アニオントランスポーターを経由し、負に荷電した薬物の、例えば、薬物の管腔輸送機序を経由した細胞からの同等に効率的な輸送(例えばアニオン交換または促進拡散)が存在しなければ、その後薬物を蓄積して高濃度にする尿細管細胞への輸送から生じる。多くの例が、腎毒性ホスホン酸の文献に報告されている。腎毒性は、動物とヒトの両方におけるビスPOM PMEAに関連する。毒性は、その後腎臓を経由して除去されるPMEAへのビスPOM PMEAの急速な変換に関連する。実際、PMEAの静脈内投与量の98%は、腎臓から除去される。
【0051】
腎毒性は、クレアチニン中での血清の増大およびホスフェート中での減少に関連し、究極的に減少した腎臓機能に関連する。ビスPOM PMEA治療に関連する低い治療指数は、望ましくない組織分布プロファイルの機能、より詳細には、PMEAの腎臓に対する肝臓への低い分布である。PMEAの望ましくない分布プロファイルは、そのエステラーゼ敏感(ビスPOM)プロドラッグに起因することができ、それはこれらのユビキタス酵素がPMEAの高い全身暴露を生じる血漿中および胃腸組織中にて高く発現されるためである。ビスPOM PMEAは、そのような毒性を避け、それによりその潜在的有効性を最小限にする低投与量(10mg/日)にてヒトに投与されなければならない(Gilead Sciences, Inc. Press Release (6/22/01) Foster City, CA)。
【0052】
ビスPOM PMEAと対照的に、本発明化合物は、肝臓への増強されたPMEA送達を引き起こすが、全身および腎臓PMEA暴露を最小限にする。化合物54は、経口投与後よく吸収され、受動拡散を経由した無傷のプロドラッグとしてほとんどの組織に容易に分布する。化合物54は、肝臓中にてシトクロムP450酵素、CYP3A4により活性化されるまで、血中およびほとんどの組織中にて安定のままであろう。このイソフォームは、すべてのP450活性の約30%を占める肝臓中にて豊富に発現される。肝臓特異性は、他の組織がCYP3A4を高レベルまで発現しないために得られる。化合物54は、有意に減少した末梢薬物暴露および結果として起こる毒性を伴い、標的器官中にて増大された有効性を生じる。あるいは、化合物54は、減少した全身PMEA暴露に起因してビスPOM PMEAよりも毒性が低く、ビスPOM PMEAと比較して改善された有効性を生じるより高い投与量で投与される。ある実験において、PMEAおよびPMEA関連代謝体のレベルを、化合物4またはビスPOM PMEAのいずれかを投与したラットにおいて測定した(実施例NおよびO)。これらの実験により、PMEAppの肝臓器官レベルは、化合物4で処置された動物においてより高いが、PMEAの腎臓レベルおよび尿レベルはより低いことが示された。
【0053】
ホスホン酸薬物に関連する別の一般的な毒性は、例えばホスホン酸またはその代謝体(例えばリン酸化されたホスホン酸)の内臓上皮細胞中の蓄積に起因する胃腸毒性である。内臓上皮細胞における薬物の蓄積は、多くの因子に依存する。疎水性および低分子量である化合物は、内蔵上皮細胞に急速に拡散し、血流に入る。内臓上皮細胞中の酵素により荷電し、高い極性をもった化合物に急速に代謝された化合物は、細胞内にトラップすることができ、細胞毒性のレベルまで蓄積され得る。薬物代謝は、基質および酵素特異的活性、ならびに滞留時間、すなわち薬物が内臓上皮細胞にさらされる時間を含む他の因子に依存する。滞留時間に影響する因子は、拡散時間を増大するため、薬物の分子量および極性を含む。さらに、他のタンパク質、例えばp−グリコプロテインは、薬物を胃腸管に戻すことによって薬物の内臓の横断を阻害することにより、滞留時間を増大することができる。
【0054】
ヒトにおけるビスPOM PMEA治療は、GI有害事象(Deeksら, J. Infect. Dis. 176:1517-1523 (1997))の有意な発生に関連する。
【0055】
胃腸管は、ビスPOM PMEAをPMEAに急速に開裂するエステラーゼを含む。従って、放射性標識PMEAおよびPMEA代謝体により、ビスPOM PMEAのラットへの投与後の小腸におけるトラップを見出した(実施例N)。CYP3A4はまた小腸中に発現される。ビスPOM PMEAと対照的に、低レベルのPMEAおよびPMEA代謝体のみが、化合物4の経口投与後の小腸と関連した(実施例N)。
【0056】
増大された経口バイオアベイラビリティー
ホスホン酸は、生理的pHにて負に高く帯電した分子である。従って、ほとんどのホスホン酸は低い経口バイオアベイラビリティーを示す。例えばPMEAは、ラットにおいて11%、サルにおいて<1%およびヒトにおいて<12%の経口バイオアベイラビリティーを有する(Cundy, K.C., Clin. Pharmacokinet. 36(2):127-143 (1999))。PMEAのあるプロドラッグは、経口バイオアベイラビリティーを増大することが示されている。例えば、エステラーゼ敏感プロドラッグ、ビスPOM PMEAは、ラット、サルおよびヒトのそれぞれにおいて、38%、25%および41%の経口バイオアベイラビリティーを有する(Shawら, Drug Metab. and Disp. 25(3):362-366 (1997))。2’および2’,2’二置換1,3−プロパニル環状プロドラッグを含むPMEAの他のプロドラッグは、PMEAへのインビボでの少ない変換または水溶液への不安定性のいずれかに起因し、低い経口バイオアベイラビリティーを示し、それゆえGI管において帯電した代謝体またはPMEAの産生を示している。
【0057】
P450基質の経口バイオアベイラビリティーは、内臓におけるP450の存在に起因して一般に低い。例えばシクロスポリン、ミダゾラムおよびフェロジピンのような薬物はすべて、P450代謝に起因して低い経口バイオアベイラビリティーを示す(Wacher, V.J.ら, Adv. Drug Deliv. Rev. 46:89-102 (2001))。
【0058】
本発明のプロドラッグは、PMEAの経口バイオアベイラビリティーを増強することが示され、CYP3A4のための良い基質であるにもかかわらず、高い経口バイオアベイラビリティーを示すことを見出した(実施例C)。経口バイオアベイラビリティーは、アリール基およびその置換基に依存し、プロドラッグおよび塩形態を製造するために使用されるジオール立体異性体に依存した。例えば、V=3−クロロフェニルは、V=フェニルと比較してより高い経口バイオアベイラビリティーを示したようだ(実施例C)。経口バイオアベイラビリティーはまた、S−ジオール(V=3−クロロフェニル)を用いたときにR−ジオールと比較して改善した(実施例I)。
【0059】
プロドラッグ活性化
本発明のプロドラッグは、P450、例えばヒトにおけるCYP3A4により活性化される。活性化は、プロドラッグ部分ならびに親ドラッグの構造的特徴に高く依存する。それぞれの基質についての触媒効率(Vmax/Km)は、肝臓ミクロソーム、スーパーソームまたは組み換え酵素を用い、ホスホン酸またはその副生成物の生成あるいはプロドラッグの消失のいずれかをモニターして決定する。実施例Pに示すように、触媒反応は、化合物9−{2−[2,4−トランス−(S)−(+)−4−(3−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニンのトランス異性体は弱い阻害物質として作用するが、シス異性体は容易に酸化され、PMEAに変換されるという環の立体化学に依存する。
【0060】
プロドラッグ活性化はまた、PMEAppの生成をモニターすることにより肝細胞においてモニターした。実施例Bに示すように、V=3−クロロフェニル、4−ピリジルおよびフェニルを、ラット肝細胞における最良の活性を有するプロドラッグ部分として同定した。
【0061】
プロドラッグ活性化はまた、プロドラッグ立体異性体に依存した。S−ジオールは、低濃度と高濃度のプロドラッグの両方にて、ヒト肝臓ミクロソームにおけるインビトロでの最も容易に活性化された鏡像体であった(実施例H)。
【0062】
プロドラッグ活性化は、期間および経口バイオアベイラビリティーならびに有効性、例えば生物学的に活性な薬物の肝臓レベルを含む薬物動態学において重要なパラメーターである。インビボにて効率的に活性化されるプロドラッグは、より高い肝臓レベルのPMEAppおよびプロドラッグの活性薬物へのより大きな変換を起こすことができる。後者は改善された経口バイオアベイラビリティーを生じ得る。インビボにおけるプロドラッグ活性化は、放射性標識親ドラッグにより容易にモニターされる。プロドラッグ、PMEAおよびPMEA代謝体を、化合物4のラットへの投与後にモニターした(実施例NおよびO)。未反応のプロドラッグを便中にて測定したが、肝臓器官または小腸中では検出されなかった。
【0063】
プロドラッグ安定性
プロドラッグ安定性は、バルクドラッグ(bulk drug)および製品の貯蔵寿命、経口バイオアベイラビリティー、肝臓分布、薬物毒性、ならびに薬物動態学的および薬力学的半減期に影響する重大な因子である。ホスホン酸プロドラッグは、水溶液、特に非中性pH溶液中にて不安定であることが多い。アシルオキシアルキルエステルは、他の一般的なホスホン酸プロドラッグがそうであるように、不安定性に関連する(Oliyaiら, Nucleosides, Nucleotides, Nucleic Acids 20(4-7):1295-8 (2001))。環状プロドラッグは、環ひずみから生じる不安定性に関連する。置換されている環状プロドラッグは、水溶液中にて低い安定性を示すことが報告されている(Starrettら, J. Med. Chem. 37(12):1857-64 (1994))。
【0064】
プロドラッグの不安定性は、その負電荷により吸収されにくいモノアニオン副生成物の生成を引き起こすことが多い。低いバイオアベイラビリティーは、ビスPOM PMEA(Benzariaら, J. Med. Chem. 39(25):4958-65 (1996); Serafinowskaら, J. Med. Chem. 38(8):1372-9 (1995))とPMEAの環状プロドラッグ(Starrettら, J. Med. Chem. 37(12):1857-64 (1994)))の両方を含むGI管におけるプロドラッグ不安定性に起因している。エステラーゼへの不安定性は、急速なプロドラッグ開裂を疾患に関連しない部位にて引き起こし得る。エステラーゼは、比較的広範に高レベルで分布していると考えられ、血液、腎臓、胃腸組織および肝臓にて観察されることが多い。それゆえエステラーゼによる急速な開裂は、荷電した中間体を内臓中で吸収の前に生成することにより、経口バイオアベイラビリティーを制限することができる。肝臓外エステラーゼ活性は、その後薬物が荷電される肝外組織(例えば腎臓)中または血中にて荷電された中間体を産生することにより、薬物の肝臓分布を制限することができ、肝細胞に入る薬物の能力に制限してもよくおよび/または腎臓におけるアニオン性トランスポーターを通して増大された薬物クリアランスを示してもよい。
【0065】
本発明のプロドラッグは、水溶液ならびにラットおよびヒト血漿中において優れた安定性を示した(実施例FおよびG)。化合物57および54の安定性を、ビスPOM PMEAの安定性とよく比較した(J. Med. Chem. 39:4958-4965 (1996))。
【0066】
持続的送達
インビボにて急速に取り除かれる薬物は、薬物の複数回投与を必要とすることが多く、治療的に有効な量の血中レベルを有意な期間にわたって達成する。他の方法はまた、徐放性の製剤およびデバイスを含むことが可能である。時間とともに崩壊するプロドラッグはまた、持続的な薬物レベルを達成するための方法を提供することができる。一般にこの性質は、既知のホスホン酸プロドラッグでは、インビボにおける急速な加水分解(例えばアシルオキシアルキルエステル)または非常に遅い変換(例えばジ−アリールプロドラッグ)のいずれかを受けるため不可能であった。
【0067】
本発明の環状ホスホン酸プロドラッグは、薬物の経時的な安定した放出を提供することにより、持続した薬物放出を提供することができる。ラットおよびイヌにおける実験(実施例RおよびS)は、化合物4が、ビスPOM PMEAと比較して、全身PMEA暴露は最小限である一方で無傷のプロドラッグとしてより長く循環することにより、好ましい薬物動態学的プロファイルを有することを示す。
【0068】
薬物の持続的送達は、治療的に有効な薬物レベルを時間の経過とともに維持することが可能な速度にてインビボにて加水分解される式Iのプロドラッグを選択することにより達成できる。従って本発明のプロドラッグはまた、薬物の薬物動態学的半減期を改善することができる。薬物の開裂速度は、P450酸化速度を含む、種々の因子に依存してよく、これはプロドラッグ部分の置換基、これらの置換基の立体化学および薬物自体の両者に依存する。さらに持続的な薬物産生は、酸化後生成する中間体の除去速度ならびに酸化の主要部位である肝臓に対するプロドラッグの速度およびアベイラビリティーに依存するだろう。所望の性質を有するプロドラッグの同定は、代謝に関わる主要P450酵素の存在下、肝臓ミクロソームまたは肝細胞の存在下にて薬物産生速度をモニターするアッセイにおいてプロドラッグをスクリーニングすることにより容易に達成される。標準的PKアッセイ(例えばミクロソーム代謝、血漿中のプロドラッグレベル)は、「持続的送達」を達成する能力を改善するだろうパラメーターに本発明化合物を選択することができることを示す。
【0069】
本発明の特異的プロドラッグ
生物学的に活性な因子は、式Iの薬物投与後の肝臓中にて検出される。この型のプロドラッグは、酸化され、ホスホン酸、例えばPMEAおよび以下に示すアリールビニルケトン副生成物を生成する:
【化7】

【0070】
本発明におけるエステルは、上記機序により限定されないが、一般に各エステルは、ミクロソーム酸化を受けやすい基または原子を含み、次いで水溶液中にてホスホネート二酸(phosphonate diacid)のβ脱離を経由し、親化合物に分解する中間体を生成する。Ar(アリール)基に対する水素ジェミナルは、ミクロソーム酸化を受けやすいと考えられる。
【0071】
肝臓癌の処置における使用
PMEAは、抗癌活性を示すことが示されている(Hatse, S., Verh K. Acad. Geneeskd Belg. 62(5):373-384 (2000))。本発明のプロドラッグは、腫瘍細胞がP450、特にCYP3A4を発現する癌の処置に有用であると期待される。例えば本発明のプロドラッグは、肝細胞癌腫または他の肝臓に関連する癌の処置に有用である。いくつかの場合において、プロドラッグは、活性および/または特異性を増強するためにP450、特にCYP3A4の発現を誘発する因子と組み合わされる。
【0072】
転移性癌の処置:
本発明のプロドラッグは、別の腫瘍退縮剤と組み合わせて使用してもよい。それらは他の腫瘍退縮剤と別々にまたは同時に投与してよい。この組合せは、肝細胞癌腫瘍のさらなる成長の阻害を助けることができ、および/または該組合せは、肝細胞癌腫瘍(主に本発明化合物による)と肝外転移、特に減少したCYP3A4発現を有する転移(他の腫瘍退縮剤による)の両方を助けることができる。
プロドラッグの投与は、他の腫瘍退縮剤が投与される時点またはほぼその時点あるいは異なる時点にて実行してもよい。
【0073】
ウィルス感染の処置:
PMEAはB型肝炎ウィルスに対する潜在的活性を有する既知の薬物である。PMEAの経口投与は、低い経口バイオアベイラビリティー(<10%)により特徴付けられるが、ビスアシルオキシアルキルプロドラッグ、ビスPOM PMEAは、高い経口バイオアベイラビリティーおよび高い抗ウィルス活性を種々の動物モデルならびにHBV感染したヒトにおいて示す。ヒトにおいて、肝臓組織学における最大のウィルス価の減少および最大の改善ならびに肝臓機能の他のパラメーターを達成するビスPOM PMEAの投与量(例えば30〜60mg/日)は、腎毒性に関連する一方、より低い投与量(例えば10mg/日)は、より低い抗ウィルス活性を示すが、治療後1年で腎毒性を示さないことが報告されている。
【0074】
本発明のプロドラッグは、PMEAの等モル投与量でのビスPOM PMEAで処置された動物と比較して、より高レベルのPMEAの生物学的に活性な形態、すなわちPMEAppを肝臓において達成する(実施例N)。これらの投与量にて、本発明のプロドラッグはまた、血漿中、腎臓中および尿中にて有意により低レベルのPMEAを生じる。従って本発明のプロドラッグは、より少ない腎毒性の危険性でより大きなウィルス価の減少を達成することが期待される。
【0075】
増大されたウィルス価の減少は、HBV感染した患者に、増大されたセロコンバージョンならびに肝臓ダメージおよび慢性的肝臓疾患(例えば肝硬変および肝細胞癌)の減少した危険性を通して有益であると期待される。さらに、増大されたウィルス価の減少は、薬物耐性に関連するウィルス突然変異体の減少した生成に関連する。
【0076】
本発明の別の好ましい側面は、ウィルス価および関連する治療利益のさらにより大きな減少を達成するための本発明のPMEAプロドラッグと他の抗ウィルス薬との組合せである。HBVウィルスのDNAは、腎臓を含む肝外組織にて検出されている。肝外HBVは、肝細胞に感染することができるウィルス粒子を提供してよい。本発明のプロドラッグは肝臓を標的とするため、これらのプロドラッグと他の抗HBV薬物を組み合わせる治療は、本発明の好ましい側面であり、これは薬物の組合せがウィルス複製を肝臓ならびに全身の他の部位において阻害するためである。さらに本発明の好ましい側面は、本発明のプロドラッグと、他のよく知られた、ウィルス価減少を引き起こす因子(例えばHBV抗体療法)およびウィルスへの改善された免疫応答を引き起こす因子、例えばインターフェロンまたはペグ化インターフェロンとの組合せである。その組合せはまた、有効な投与量の減少およびそれゆえ治療に関連する減少した副作用を通し、HBV感染した患者に有益であることができる。薬物の組合せは、HBV患者に同時にまたは異なる時点にて投与することができる。
【0077】
組合せに有用な抗ウィルス薬としては、ビダラビン;ジドブジン;スタブジン;ジダノシン;ddA;ザルシタビン;L−ddC;L−FddC;L−d4C;ラミブジン;リバビリン;FIAU;FIAC;BHCG;BvaraU;E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン;TFT;ゾナビル;CDG;DAPD;FDOC;d4C;d4T;DXG;FEAU;FLG;FLT;クレブジン;コヴィラシル;エンテカビル;シタレン;オキセタノシンA;オキセタノシンG;NK84−0218;ddAPR;シクロブタA;シクロブタG;フロキシウリジン;dFdC;araC;5−ブロモデオキシウリジン;IDU;CdA;F−ara−A;ACV;GCV;ペンシクロビル;ブシクロビル;ホスカルネット;PPA;PMEA;PMEDAP;HPMPC;HPMPA;FPMPA;PMPA;araT;FMdC;AICAR;AM365;L−dT;L−dC、ベータ−L−2’−デオキシシトシン、ベータ−L−2’−デオキシシトシンのバリンプロドラッグ誘導体;ACH126,443;ddI;ddA;ddC;MCC478;インターフェロンアルファ;ペグ化インターフェロン;ファムシクロビル;XTL001;HBV DNAワクチン;ICN2001;Fluor LおよびDヌクレオシド;ラシビール;ロブスタフラボン;9−(アラビノフラノシル)−2,6−ジアミノプリン;9−(2’−デオキシリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン;9−(2’−デオキシ−2’−フルオロリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン;9−(アラビノフラノシル)グアニン;9−(2’−デオキシリボフラノシル)グアニン;9−(2’−デオキシ2’−フルオロリボフラノシル)グアニン;インターフェロンのすべてのアナログ;ヒトモノクローナル抗体;ならびにセラダイム、チモシンアルファ−1およびEHT899のような非インターフェロンエンハンサーが挙げられる。
【0078】
本発明のプロドラッグは、別の抗ウィルス薬と組み合わせて使用してもよい。プロドラッグの投与は、他の抗ウィルス薬が投与される時点またはほぼ同時にあるいは異なる時点にて実行してよい。
本発明のプロドラッグは、抗ウィルス治療に耐性を示す動物における肝臓のウィルス感染を、その耐性がHBVポリメラーゼにおける突然変異の結果であるときに処置するために用いてもよい。
【0079】
毒性を軽減しおよび/または経口バイオアベイラビリティーを増大するためのプロドラッグのCYP阻害物質との使用
いくつかの場合において、増強されたCYP活性は、望ましくない薬物代謝を引き起こすことができる。例えば、プロドラッグ活性化が関与しない、増強されたCYPの活性は、薬物代謝の増大およびそれゆえ有効性の低下の原因となり得る。さらに、他の組織における増大されたCYP活性、例えば胃腸管中のCYP3A4は、プロドラッグ吸収および肝臓薬物レベルの低下を引き起こし得る。CYP活性の阻害物質は、望ましくない薬物代謝を最小限にするときに有用であろうと知られている。例えばグレープフルーツジュースは、胃腸のCYP3A4を不活性化し、CYP3A4により代謝される数多くの薬物の増強された吸収をもたらすことが知られている。薬物の経口バイオアベイラビリティーを増強すると知られているCYP3A4阻害物質としては、ケトコナゾールおよびエリスロマイシンが挙げられる(Wacher, V.J.ら, Adv. Drug Deliv. Rev. 46:89-102 (2001); US 5,665,386; US 5,716,928; US 5,962,522; US 6,004,927; US 6,028,054; US 6,121,234; US 6,180,666)。また、望ましくない薬物代謝を弱める一方で、プロドラッグの開裂に重要なCYP活性を維持するために有用であることができるCYP阻害物質が、多くのCYPサブファミリーについて知られている。例えばCYP3A4阻害物質TAOを用い、インビボでのシクロホスファミド代謝を、その抗腫瘍活性に寄与しない毒性代謝体の形成を減少することにより調節した。
【0080】
本発明化合物
本発明化合物は、式I:
【化8】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される、PMEAおよびアナログの置換されている6員環状1,3−プロパンジエステルプロドラッグ、ならびにその製薬的に許容される塩である。
【0081】
本発明の別の側面は、式II:
【化9】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩である。
【0082】
本発明の別の側面は、式III:
【化10】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニル−メトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択される、ホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩である。
【0083】
本発明の別の側面は、式IV:
【化11】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンである]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩である。
【0084】
別の側面において、本発明は、MPOが9−(2−ホスホニルメチルオキシエチル)アデニンおよび(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸である、式I、II、IIIまたはIVの化合物を目的とする。
別の側面において、本発明は、Vがフェニル、3−ピリジルおよび4−ピリジルであり、これらはすべてF、Br、Cl、CH、OCHおよびCFから選択される1〜2つの置換基で置換されていることもある化合物を目的とする。
別の側面において、本発明は、Vが4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルである化合物を目的とする。
別の側面において、本発明は、酢酸、臭化水素酸、塩酸、クエン酸、マレイン酸、硫酸および酒石酸で形成される塩である、式I、II、IIIまたはIVの化合物を目的とする。
【0085】
別の側面は、メタンスルホン酸またはコハク酸で形成される塩を目的とする。
別の側面は、メタンスルホン酸で形成される塩を目的とする。
【0086】
ある側面において、経口バイオアベイラビリティーは少なくとも5%である。別の側面において、経口バイオアベイラビリティーは少なくとも10%である。
【0087】
P450酸化は、芳香族基(V)を有するリンまたは炭素のいずれかにおける立体化学に敏感であり得る。本発明化合物は、リンのまわりに二つの異性体を有する。ある側面において、立体化学は酸化と脱離反応の両方を可能にする。
P450酸化はまた、Vが結合しているC1’における立体化学に敏感であり得る。ある側面において、本発明化合物はVが結合している部位にてS立体化学を有する。
【0088】
ある側面において、M基としては、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンが挙げられる。より好ましくは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンおよび(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンである。
【0089】
ある側面において、式Iの化合物との組合せ治療における使用のための抗ウィルス薬としては、ビダラビン、ジドブジン、スタブジン、ジダノシン、ddA、ザルシタビン、L−ddC、L−FddC、L−d4C、ラミブジン、リバビリン、FIAU、FIAC、BHCG、BvaraU、E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン、TFT、ゾナビル、CDG、DAPD、FDOC、d4C、d4T、DXG、FEAU、FLG、FLT、クレブジン、コヴィラシル、エンテカビル、シタレン、オキセタノシンA、オキセタノシンG、NK84−0218、ddAPR、シクロブタA、シクロブタG、フロキシウリジン、dFdC、araC、5−ブロモデオキシウリジン、IDU、CdA、F−ara−A、ACV、GCV、ペンシクロビル、ブシクロビル、ホスカルネット、PPA、PMEA、PMEDAP、HPMPC、HPMPA、FPMPA、PMPA、araT、FMdC、AICAR、AM365、L−dT、L−dC、ベータ−L−2’−デオキシシトシン、ベータ−L−2’−デオキシシトシンのバリンプロドラッグ誘導体、ACH126,443、ddI、ddA、ddC、MCC478、インターフェロンアルファ、ペグ化インターフェロン、ファムシクロビル、ベータ−L−2’−デオキシシトシンのバリンプロドラッグ誘導体、XTL001、HBV DNAワクチン、ICN2001、Fluor LおよびDヌクレオシド、ラシビール、ロブスタフラボン、9−(アラビノフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(2’−デオキシリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(2’−デオキシ−2’−フルオロリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(アラビノフラノシル)グアニン、9−(2’−デオキシリボフラノシル)グアニン、9−(2’−デオキシ2’−フルオロリボフラノシル)グアニン、インターフェロンのすべてのアナログ、ヒトモノクローナル抗体、ならびにセラダイム、チモシンアルファ−1およびEHT899のような非インターフェロンエンハンサーが挙げられる。
【0090】
別の側面において、抗ウィルス薬としては、ラミブジン、エンテカビル、コヴィラシル、DAPD、クレブジン、AM365、L−dT、L−dC、ACH126,443、MCC478、ロブカビル、ホスカルネット、PPA、インターフェロンアルファ、ペグ化インターフェロンアルファ、ファムシクロビル、ara−A、AZT、d4T、ddI、ddA、ddC、L−ddC、L−FddC、L−d4C、ラミブジン、リバビリン、FIAU、FIAC、BHCG、BvaraU、E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン、TFT、ゾナビル、CDG、FDOC、d4C、DXG、FEAU、FLG、FLT、FTC、5−イル−炭素環式2’デオキシグアノシン、オキセタノシンA、オキセタノシンG、ddAPR、シクロブタA、シクロブタG、dFdC、IDU、araT、ddAPR、ホスカルネット;PMEDAP、HPMPC、HPMPA、FPMPA、PMPA、ACV、GCV、ペンシクロビル、9−(アラビノフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(2’−デオキシリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(2’−デオキシ−2’−フルオロリボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、9−(アラビノフラノシル)グアニン、9−(2’−デオキシリボフラノシル)グアニンおよび9−(2’−デオキシ2’−フルオロリボフラノシル)グアニンが挙げられる。
【0091】
別の側面において、抗ウィルス薬としては、ラミブジン、エンテカビル、コヴィラシル、DAPD、クレブジン、AM365、L−dT、L−dC、ACH126,443、MCC478、ロブカビル、ホスカルネット、PPA、インターフェロンアルファおよびペグ化インターフェロンアルファが挙げられる。
別の側面において、抗ウィルス薬としては、インターフェロンのすべてのアナログ、ヒトモノクローナル抗体ならびにセラダイム、チモシンアルファ−1およびEHT899のような非インターフェロンエンハンサーが挙げられる。
【0092】
ある側面において、式Iの化合物との組合せ治療における使用のための腫瘍退縮剤としては、ブスルファン、カルボプラチン、テモゾロマイド、チオテパ、シスプラチン、ミリプラチンのようなアルキル化剤、ならびにメルファラン、イホスファミド、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびネクロルエタミン(nechlorethamine)のようなナイトロジェンマスタードを含むDNAをアルキル化する因子が挙げられる。
【0093】
腫瘍退縮剤の抗生物質クラス由来の因子としては、ドキソルビシン、デュアノルビシン(duanorubicin)、アクチノマイシンD、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、ペントスタチン、ミトキサントロン、バルルビシンおよびダクチノマイシンが挙げられる。
腫瘍退縮剤の代謝拮抗物質クラス由来の因子としては、シタラビン、フルダラビン、ゲムシタビン、フロキシウリジン、フルオロウラシル、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、メトトレキセートおよびマイトマイシンが挙げられる。
【0094】
他のよく知られた腫瘍退縮剤としては、ダカルバジン、ミトキサントロン、ピロキサントロン(piroxantrone)、ブレオマイシン、エトポシドおよびテニポシド(teniposide)のようなエピポドフィロトキシン類、ビンクリスチンおよびビンブラスチンのようなビンカアルカロイド類、タキソール、ドセタキセルのようなタキサン類、カンプトテシン、イリノテカン、9−アミノカンプトテシン、トポテカンおよびルロテカン(lurotecan)のようなテカン類が挙げられる。
【0095】
別の側面において、腫瘍退縮剤としては、ブスルファン、カルボプラチン、テモゾロマイド、チオテパ、シスプラチン、ミリプラチンのようなアルキル化剤、ならびにメルファラン、イホスファミド、シクロホスファミドおよびクロラムブシルのようなナイトロジェンマスタードを含むDNAをアルキル化する因子が挙げられる。
【0096】
腫瘍退縮剤の抗生物質クラス由来の因子としては、ドキソルビシン、デュアノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、バルルビシンおよびダクチノマイシンが挙げられる。
腫瘍退縮剤の代謝拮抗物質クラス由来の因子としては、ゲムシタビン、フロキシウリジン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、メトトレキセートおよびマイトマイシンが挙げられる。
他の腫瘍退縮剤としては、エトポシド、タキソール、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカンおよびルロテカンが挙げられる。
別の側面において、腫瘍退縮剤としては、ドキソルビシン、ゲムシタビン、イリノテカンおよびシスプラチンが挙げられる。
【0097】
式Iの化合物の合成
非環式ヌクレオシドホスホネート抗ウィルス薬、例えば(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニル−メトキシプロピル)シトシン(HPMPC,シドフォビル)、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン(PMEA,アデフォビル)、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン(PMPA,テノフォビル)およびそれらのアナログは、文献中によく記載されている(Naesens and De Clercq, Nucleosides Nucleotides 16:983 (1997); Naesensら, Antiviral Chem Chemother, 8:23, (1997); Bronsonら, Nucleotide Analogues as Antiviral Agents, ACS symposium series 401, Martin, J. C., Ed., American Chemical Society (1989))。
【0098】
本発明に包含される化合物の合成は、次の工程を含む:(I)非環式ヌクレオシドホスホネートのプロドラッグの合成、(II)1−(アリール)プロパン−1,3−ジオールの合成。
【0099】
1.非環式ヌクレオシドホスホネートのプロドラッグの合成:
プロドラッグは、非環式ヌクレオシドホスホネートの合成の異なる段階において導入することができる。ほとんどの場合、それらはその不安定性のために、より後の段階で実行される。有利なことに、化学的安定性がその後の反応条件中の問題点でないとき、プロドラッグは合成のより早い段階で導入することができる。非環式ヌクレオシドホスホネートのプロドラッグの合成は、さらに次のように組織化される:1)親ホスホン酸を経由するプロドラッグの合成、2)トランスエステル化による親ドラッグエステルを経由するプロドラッグの合成および3)環状ホスホネート部分から出発するプロドラッグの合成。
【0100】
1.1 親ホスホン酸を経由するプロドラッグの合成:
ホスホン酸プロドラッグは、系中にて生成したジクロロホスホネートとアルコールの反応により合成される。例えばMPO 1のジクロロホスホネートと置換されている1,3−ジオールとの塩基(例えばピリジン、トリエチルアミンなど)存在下での反応は、式I〜IIIの化合物を与える(Khamneiら, J. Med. Chem. 39:4109 (1996))。
【化12】

【0101】
そのような反応性の高いジクロロホスホネート中間体は、対応するホスホン酸および塩素化剤、例えば塩化チオニル(Starrettら, J. Med. Chem. 1857 (1994))、塩化オキサリル(Stowellら, Tetrahedron Lett. 31:3261 (1990))および五塩化リン(Quastら, Synthesis 490 (1974))から製造することができる。あるいは、これらのジクロロホスホネートはまた、ジシリルホスホネートエステル類(Bhongleら, Synth. Commun. 17: 1071 (1987))およびジアルキルホスホネートエステル類(Stillら, Tetrahedron Lett. 24: 4405 (1983); Patoisら, Bull. Soc. Chim. Fr. 130: 485 (1993))から生成することができる。
【0102】
あるいは、これらのプロドラッグは、ミツノブ反応条件(Mitsunobu, Synthesis 1 (1981); Campbell, J. Org. Chem. 52:6331 (1992))下、ジオールとのカップリングによりホスホン酸から製造され、ならびにカルボジイミド(Alexanderら, Collect. Czech. Chem. Commun. 59:1853 (1994); Casaraら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2:145 (1992); Ohashiら, Tetrahedron Lett. 29:1189 (1988))およびベンゾトリアゾリルオキシトリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム塩(Campagneら, Tetrahedron Lett. 34, 6743 (1993))を含むが、これらに限定されない他の酸カップリング試薬から製造される。
【0103】
ホスホン酸はまた、1−置換プロパン−1,3−ジオールの環状アセタールまたは環状オルトエステルとの環状プロドラッグ形成を受け、カルボン酸エステルの場合(Brechbuhlerら, Helv. Chim. Acta. 48:1746 (1965))のように、プロドラッグをもたらす。あるいは、より反応性の高い環状亜硫酸塩または硫酸塩はまた、ホスホン酸塩との反応の際のカップリング前駆体として適切である。これらの前駆体は、文献中に記載の対応するジオールから製造することができる。
【化13】

光学的に純粋なプロドラッグおよび対応する塩はまた、次のセクション2に記載のように合成される光学的に純粋なジオールから出発して製造する。これらのプロドラッグ合成は、親ホスホン酸から3工程で達成される。
【0104】
最初の工程において、PME、PMP、HPMPアナログの塩素化を、塩化オキサリルおよびN,N−ジエチルホルムアミドを用いて達成し、N−保護ジクロリデートを得る。他の種々の塩素化剤、例えば塩化チオニル、五塩化リンをまた、N,N−ジアルキルホルムアミドの存在下、目的のために使用する。塩素化の工程において使用されるN,N−ジアルキルホルムアミドは、ヴィルスマイヤー(Vilsmeyer)塩素化剤を形成するだけでなく、NH基を保護する。保護されたクロリデート(chloridate)中間体は、生成物の全収率およびジアステレオマー比を改善するために必要な好ましい溶解性を生じる。他の保護基、例えばアシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、Fmocなどの使用はまた、所望の生成物の回収およびジアステレオマー比を増強することができる。
【0105】
クロリデート中間体とキラルアルコールの塩基(例えばトリエチルアミン)存在下、ジクロロメタン中、より低温でのカップリングは、保護された中間体を生じる。保護された中間体の穏やかな酸性条件、エタノール−酢酸の存在下での脱保護、その後の酸性化(例えばメタンスルホン酸)は、高い化学純度を有する結晶塩としてプロドラッグを生じる。この物質をトランス異性体からさらに純粋にするための、エタノールのような溶媒中での第二の結晶化は、ジアステレオマー純度>96%でプロドラッグを与える。硫酸、硝酸、塩酸、リン酸のような鉱酸、アルキルおよびアリールスルホン酸のようなスルホン酸、ならびに酒石酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、シュウ酸などのようなカルボン酸を含むが、これらに限定されない、他の酸の使用は、生成物のより良い回収および異性体比をもたらすことができる。
【0106】
1.2 親ドラッグエステルを経由したトランスエステル化によるプロドラッグの合成:
5のようなホスホネートエステルをまた、1−置換プロパンジオールとの適切な条件下でのトランスエステル化反応によるプロドラッグの製造において利用する。適切な条件下、系中にて生成した親ホスホン酸の混合した無水物は、ジオールと反応し、カルボン酸エステルの場合(Inanagaら, Bull. Chem. Soc. Jpn. 52:1989 (1979))のようにプロドラッグを与える。得られた誘導体を脱マスキングし、必要とするプロドラッグを得る。ホスホネートのアリールエステルはまた、アルコキシ中間体によりトランスエステル化されることが知られている(Moriartyら, Tetrahedron Lett. 38:2597 (1997); Tawfikら, Synthesis 968 (1993))。プロドラッグのそのような穏やかな条件下での生成は、ジアステレオマー比を改善する点で有利であることができる。
【化14】

【0107】
1.3 環状ホスホネート部分から出発するプロドラッグの合成:
プロドラッグ部分はまた、合成のより早い段階で導入することができる。有利なことに、そのような合成は、合成のより早い段階で、プロドラッグの立体化学の定義付けがされる。脱離基Xを含むホスホネート中間体6は、ホスホノメチレンオキシエチル置換されている薬物8の場合(Chuら, J. Het. Chem. 23:289 (1986))において利用することができる。環状ホスホン酸プロドラッグ部分6は、先のセクションに記載のように、ジオールおよびホスホン酸部分を経由して、または環状ホスファイトのホルミル化、その後のヒドロキシル基の脱離基への変換(Phillionら, Tetrahedron Lett. 27:1477 (1986))により、合成することができる。そのような立体定義された(stereodefined)中間体は、穏やかな条件下カップリングして適切にマスキングされたヒドロキシエチル置換されている塩基7となり、穏やかな条件下PME、PMPまたはHPMP誘導体のプロドラッグを製造することができる。
【0108】
そのような収斂型合成はまた、中間体10を経由して達成することができ、適切にマスキングされた塩基9とのカップリングにより、必要とするプロドラッグ8を生じる。環状プロドラッグ部分を含む中間体10は、環状アルブゾフ(Arbuzov)クロロホスホネート(Holyら, Antiviral Res. 13:295 (1990))の対応するクロロメチルエーテル誘導体とのアルブゾフ反応を経由して合成してもよい。
【化15】

【0109】
プロドラッグの立体化学(シスおよびトランス)は、プロトンNMRスペクトルにおけるベンジル位のメチンプロトンのケミカルシフトにより定義される。シス異性体のベンジル位のメチンプロトンは、常に、対応するトランス異性体よりも非遮蔽であり、低磁場(0.2ppmの差)である。その差は、DMSO−d6のような極性NMR溶媒中で増強される。異性体はまた、リンNMRケミカルシフトにより区別することができる。
【0110】
2.1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成:
1,3−ジオールを製造する種々の合成方法が知られている。これらの適切な方法は、次の二つの型に分けられる:1)ラセミ1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成、2)キラル1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成。
【0111】
2.1.ラセミ1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成:
1,3−ジヒドロキシ化合物は、文献中のいくつかのよく知られた方法により合成することができる。置換されている芳香族アルデヒドを用い、酢酸アルキルのリチウムエノレートの付加後のエステル還元(経路A)を経由してラセミ1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールを合成する(Turner, J. Org. Chem. 55:4744 (1990))。あるいは、1−ヒドロキシプロパン−3−アールへのアリールグリニヤ(Grignard)付加はまた、1−アリール置換プロパン−1,3−ジオールを与える(経路B)。この方法は、種々の置換されているハロゲン化アリールの1−アリール置換−1,3−プロパンジオールへの変換を可能とするだろう(Coppiら, J. Org. Chem. 53:911 (1988))。ハロゲン化アリールをまた用い、1−置換プロパンジオールを、1,3−ジオキサ−4−エンのヘック(Heck)カップリング後の還元および加水分解により合成することができる(Sakamotoら, Tetrahedron Lett. 33:6845 (1992))。ピリジル、キノリン、イソキノリンプロパン−3−オール誘導体は、N−オキシド形成後の無水酢酸条件における転位(経路C)により、1−置換−1,3−ジオールに酸化することができる(Yamamotoら, Tetrahedron 37:1871 (1981))。種々の芳香族アルデヒドはまた、ビニルグリニヤ付加後のヒドロホウ素化反応(経路D)により1−置換−1,3−ジオールに変換することができる。
【化16】

【0112】
2.2.キラル1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成:
第二級アルコールの化学または酵素試薬を経由したキラル分割についての種々の知られた方法は、ジオール鏡像異性体の製造のために利用することができる(Haradaら, Tetrahedron Lett. 28:4843 (1987))。置換されている3−アリール−3−オキソプロピオン酸またはエステルの遷移金属触媒水素化は、光学的に純粋なベータヒドロキシ酸またはエステルのRまたはS異性体を製造する効率的な方法である(Comprehensive Asymmetric Catalysis, Jacobsen, E. N., Pfaltz, A., Yamamoto, H. (Eds), Springer, (1999); Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis, Noyori, R., John Wiley, (1994))。これらのベータヒドロキシ酸またはエステル生成物をさらに還元し、必要とするキラル1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールを得ることができる(経路A)。高圧水素化または水素転移反応のためのβ−ケト酸またはエステル基質は、種々の方法、例えば塩基存在下におけるアセトフェノンの炭酸ジメチルとの縮合により製造してもよく(Chuら, J. Het. Chem. 22:1033 (1985))、エステル縮合により製造してもよく(Turnerら, J. Org. Chem. 54:4229 (1989))、またはハロゲン化アリールから製造してもよい(Kobayashiら, Tetrahedron Lett. 27:4745 (1986))。あるいは、鏡像異性的に純粋な1,3−ジオールは、β−ヒドロキシエチルアリールケトン誘導体またはβ−ケト酸誘導体のキラルボラン還元(経路B)により得ることができる(Ramachandranら, Tetrahedron Lett. 38:761 (1997))。別の方法において、商業的に入手可能な桂皮アルコールは、触媒的不斉エポキシ化条件下、エポキシアルコールに変換してもよい。これらのエポキシアルコールは、Red−Alにより還元され、鏡像異性的に純粋な1,3−ジオールを生じる(経路C)(Gaoら, J. Org. Chem. 53:4081 (1980))。アルドール縮合は、芳香族アルデヒドから出発するキラル1,3−酸化されている官能基の合成(経路D)のための別によく記載されている方法である(Mukaiyama, Org. React. 28:203 (1982))。
【化17】

【0113】
製剤
本発明化合物は、約0.01mg/kg/用量から約30mg/kg/用量、好ましくは約0.05mg/kg/用量から10mg/kg/用量の総日用量において経口投与される。最も好ましい用量範囲は、0.1〜3mg/kgである。徐放性の調製物の活性成分の放出速度を制御する使用が、好ましいであろう。用量は、便利なように、複数回分割投与してもよい。
【0114】
本発明化合物は、他の抗ウィルス薬または腫瘍退縮剤と組み合わせて使用するとき、日用量または日用量の適切なフラクション(例えば1日2回)として投与してもよい。プロドラッグの投与は、他の抗ウィルス薬または腫瘍退縮剤が投与される時点またはほぼ同時にあるいは異なる時点にて実行してよい。
【0115】
本発明の目的のために、本化合物は、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与または直腸投与を含む種々の方法により、製薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含む製剤にて投与してもよい。本明細書にて使用する用語、非経口は、種々の注入技術を伴った皮下、静脈内、筋肉内および動脈内注入を含む。本明細書にて使用する動脈内および静脈内注入は、カテーテルを通した投与を含む。経口投与が一般に好ましい。
【0116】
製薬的に許容される塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、ベシレート、臭化物、カンシル酸塩、塩化物、クエン酸塩、エジシル酸塩、エストレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩(glucoranate)、馬尿酸塩、ヒクレート(hyclate)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、メシレート、臭化メチル塩、メチル硫酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩(sulfosalyicylate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テレフタル酸塩、トシレートおよびトリエチオダイドが挙げられる。
シュウ酸塩は、製薬的に許容されないが、中間体として使用することができる。中間体として、シュウ酸塩は、収率を改善することが多い。
【0117】
活性成分を含む医薬組成物は、意図する投与方法に適切な任意の形態であってよい。経口使用のために使用するとき、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性または油状懸濁剤、飛散性粉剤または顆粒剤、乳剤、硬または軟カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤を製造してもよい。経口使用のために意図する組成物は、医薬組成物の製造のための当業者に知られた任意の方法により製造してもよく、そのような組成物は、甘味剤、香料、着色剤および保存剤を含む一つ以上の因子を、快い調製物を提供するために含んでもよい。錠剤の製造のために適切な無毒の製薬的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含む錠剤が許容される。例えばこれらの賦形剤は、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;トウモロコシデンプンまたはアルギン酸のような顆粒化剤および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアカシアのような結合剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクのような滑沢剤であってよい。錠剤は、コーティングしなくてもよく、あるいは胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせ、それにより長期間にわたる持続した活性を提供するためのマイクロカプセル化を含む既知の技術によりコーティングしてもよい。例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を単独で、またはワックスとともに用いてもよい。
【0118】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固形希釈剤、例えばリン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤、あるいは活性成分が水または油状媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィンまたはオリーブオイルと混合されている軟ゼラチンカプセル剤として存在することもできる。
【0119】
本発明の水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適切な賦形剤との混合物中に活性物質を含む。そのような賦形剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムのような懸濁化剤、ならびに天然に存在するリン脂質(例えばレシチン)のような分散剤または湿潤剤、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分的エステルとの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁剤はまた、1つ以上の保存剤、例えばエチルp−ヒドロキシ−ベンゾエートまたはn−プロピルp−ヒドロキシ−ベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香料および1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含んでもよい。
【0120】
油状懸濁剤は、活性成分を落花生油、オリーブオイル、ゴマ油またはココナッツ油のような植物油、あるいは流動パラフィンのような鉱油中にて懸濁することにより製剤化することができる。経口懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含んでもよい。上記のような甘味剤および香料を加えて、快い経口調製物を提供することができる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を加えることにより保存してもよい。
【0121】
水の添加による水性懸濁剤の製造に適切な本発明の飛散性粉剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つ以上の保存剤との混合物中に活性成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、上記物質により例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味剤、香料および着色剤もまた、存在してもよい。
【0122】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型乳剤の形態であってもよい。油状相は、オリーブオイルまたは落花生油のような植物油、流動パラフィンのような鉱油、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤としては、アカシアゴムおよびトラガカントゴムのような天然に存在するゴム、大豆レシチンのような天然に存在するリン脂質、モノオレイン酸ソルビタンのような脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分的エステル、ならびにこれらの部分的エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyethylene sorbitan monooleate)が挙げられる。乳剤はまた、甘味剤および香料を含んでもよい。
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、ソルビトールまたはスクロースとともに製剤化してよい。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、香料または着色剤を含んでもよい。
【0123】
本発明の医薬組成物は、注射可能な滅菌調製物、例えば注射可能な滅菌水性懸濁剤または油性懸濁剤の形態であってよい。この懸濁剤は、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用い、既知の技術により製剤化してよい。注射可能な滅菌調製物はまた、1,3−ブタンジオール溶液のような無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液または懸濁液であってもよく、あるいは凍結乾燥粉剤として製造してもよい。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および生理食塩液がある。さらに、滅菌固定油は、慣習的に、溶媒または懸濁化媒体として用いてもよい。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いてもよい。さらに、脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射可能な物質の製造において同様に用いてよい。
【0124】
単一投与形態を生産するために担体物質と混合してもよい活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に依存して変化するだろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した徐放性製剤は、総組成物の約5〜約95%まで変動し得る適切な都合のよい量の担体物質と混合した20〜2000μmol(約10〜1000mg)の活性物質を含んでもよい。容易に測定することができる投与量を提供する医薬組成物を製造することが好ましい。例えば、静脈内注入用の水溶液は、約30mL/時の速度にて適切な容量を注入することができるように、溶液1mL当たり約0.05〜約50μmol(約0.025〜25mg)の活性成分を含むべきである。
【0125】
上記のように、経口投与に適切な本発明の製剤は、それぞれあらかじめ決められた量の活性成分を含む個々の単位、例えばカプセル剤、カシェ剤または錠剤として;粉剤または顆粒剤として;水性または非水性液体中の溶液剤または懸濁剤として;あるいは水中油型乳濁液または油中水型乳濁液(water-in-oil liquid emulsion)として存在してもよい。活性成分はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与してもよい。
【0126】
錠剤は、場合により1つ以上の付属成分とともに、圧縮または成形することにより製造することができる。圧縮錠は、場合により結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばグリコール酸デンプンナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤と混合した自由流動形態、例えば粉末または顆粒の活性成分を、適切な装置中にて圧縮することにより製造することができる。成形錠は、不活性液状希釈剤で湿らせた粉末化された化合物の混合物を適切な装置中にて成形することにより製造することができる。錠剤は場合により、コーティングするか、または錠剤に刻印をつけてよく、および例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の割合にて用いる活性成分の、持続放出または制御放出を提供するように製剤化し、所望の放出プロファイルを提供してもよい。錠剤は、場合により腸溶性コーティングして提供し、胃ではなく腸の部分における放出を提供してもよい。これは、式1の化合物が酸加水分解を受けやすいときに、該化合物に特に有利である。
【0127】
口腔における局所投与に適切な製剤としては、香料基剤(flavored base)、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含む芳香錠;ならびに適切な液状担体中に活性成分を含む口腔洗浄剤が挙げられる。
直腸投与用の製剤は、例えばココアバターまたはサリチル酸塩を含む適切な基剤を有する坐剤として存在してよい。
膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当業者に既知である担体を含むペッサリー、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡沫剤またはスプレー剤として存在してよい。
【0128】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を目的の患者の血液と等張にする溶質を含んでいてもよい、水性および非水性の等張滅菌注射用溶液剤;ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の滅菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単回投与または複数回投与密封容器、例えばアンプルおよびバイアル中に入れてもよく、使用直前に、注射用に滅菌液状担体、例えば水を加えることのみを必要とする凍結乾燥条件下に保存してもよい。注射用溶液および注射用懸濁液は、前記種類の滅菌粉剤、顆粒剤および錠剤から製造してもよい。
好ましい単位投与製剤は、薬物の日用量またはユニット、1日のサブ用量(sub-dose)、またはその適切なフラクションを含む製剤である。
【0129】
しかし、当業者にはよく理解されているように、いかなる特定の患者に対する具体的な投与量レベルも、用いる具体的な化合物の活性;処置される個人の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与時間および経路;排泄の頻度;以前投与されていた他の薬物;ならびに治療される具体的な疾患の重篤度を含む種々の要因に依存するだろうことが理解されるだろう。
【実施例】
【0130】
本発明にて使用する化合物およびそれらの製造は、これらの化合物を製造するいくつかの工程を例示する実施例によりさらに理解することができる。しかし、これらの実施例は、本発明を具体的に限定するものと解釈されるべきではなく、現在既知であるか、または後に開発される化合物のバリエーションは、本明細書中で特許請求されている本発明の範囲内であるものとする。
【0131】
式I〜IIIの化合物は、当業者によりよく理解されている改変および付加を伴い、文献の手順により製造される。与えられたTLC条件は、Analtech UNIPLATEのプレート、シリカゲルGHLF、スコア(scored)10x20cm,250ミクロンを用いる。
【0132】
ラセミ1−(アリール)プロパン−1,3−ジオールの合成:
実施例1:グリニヤ付加およびヒドロホウ素化を経由した1−(2’−フラニル)プロパン−1,3−ジオールの製造:
2−フルアルデヒド3g(31.2mmol)のTHF60mL溶液に、1M臭化ビニルマグネシウム/THF34mLを0℃にて加えた。1時間撹拌した後、1M BH THF錯体/THFを加えた。反応を3N水酸化ナトリウム20mLおよび30%過酸化水素10mLで0℃にてクエンチした。有機物のフラクションを分離し、濃縮した。粗生成物を5%メタノール−ジクロロメタンで溶出してクロマトグラフし、1−(2’−フリル)プロパン−1,3−ジオール1g(22%)を得た。
【0133】
実施例2:ベンジル酸化を経由した1−(2’−ピリジル)プロパン−1,3−ジオールの製造:
工程A:(J. Org. Chem. 22:589 (1957))
3−(2’−ピリジル)プロパン−1−オール10g(72.9mmol)の酢酸75mL溶液に、30%過酸化水素をゆっくり加えた。反応混合物を80℃まで16時間加熱した。反応物を減圧濃縮し、残渣を無水酢酸100mLに溶解し、110℃にて一晩加熱した。無水酢酸を反応完了後留去した。メタノール−ジクロロメタン(1:9)で溶出した混合物のクロマトグラフィーにより、純粋なジアセテート10.5g(60%)を得た。
【0134】
工程B:
ジアセテート5g(21.1mmol)のメタノール−水(3:1)40mL溶液に、炭酸カリウム14.6g(105.5mmol)を加えた。3時間室温にて撹拌した後、反応混合物を濃縮した。残渣をメタノール−ジクロロメタン(1:9)で溶出してクロマトグラフし、結晶性ジオール2.2g(68%)を得た。
【0135】
実施例3:プロパン−1,3−ジオールからのグリニヤ付加を経由した1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの製造:
工程A:(J. Org. Chem. 53:911 (1988))
塩化オキサリル5.7mL(97mmol)のジクロロメタン200mL溶液に、−78℃にてジメチルスルホキシド9.2mL(130mmol)を加えた。反応混合物を−78℃にて20分間撹拌した後、3−(ベンジルオキシ)プロパン−1−オール11g(65mmol)/ジクロロメタン25mLを加えた。−78℃にて1時間後、反応をトリエチルアミン19mL(260mmol)でクエンチし、室温まで昇温した。反応を停止させ、ジクロロメタンで溶出したカラムクロマトグラフィーにより、3−(ベンジルオキシ)プロパン−1−アール8g(75%)を得た。
【0136】
工程B:
3−(ベンジルオキシ)プロパン−1−アール1g(6.1mmol)のTHF溶液に、0℃にて1M臭化4−フルオロフェニルマグネシウム/THF6.7mL(6.7mmol)溶液を加えた。反応物を室温まで昇温し、1時間撹拌した。反応を停止させ、ジクロロメタンで溶出したカラムクロマトグラフィーにより、アルコール0.7g(44%)を得た。
【0137】
工程C:
ベンジルエーテル500mgの酢酸エチル10mL溶液に、10%Pd(OH)−カーボン100mgを加えた。反応物を水素ガス下16時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、濃縮した。残渣の酢酸エチル−ジクロロメタン1:1で溶出したクロマトグラフィーにより、生成物340mg(79%)を得た。
【0138】
実施例4:1−アリール置換プロパン−1,3−ジオールのアリールアルデヒドからの製造の一般的手順:
工程A:(J. Org. Chem. 55:4744 (1990))
ジイソプロピルアミン2mmolのTHF(0.7ml/mmolジイソプロピルアミン)−78℃溶液に、n−ブチルリチウム2mmol(ヘキサン中2.5M)をゆっくり加えた。次いで反応物を15分間−78℃にて撹拌した後、酢酸エチル2mmol/THF(0.14ml/mmol酢酸エチル)溶液をゆっくり加えた。さらに30分間−78℃にて撹拌した後、アリールアルデヒド1.0mmol/THF0.28ml溶液を加えた。次いで反応物を−78℃にて30分間撹拌し、室温まで昇温し、さらに2時間撹拌した。水性処理(0.5M塩酸)により反応を停止させた後、有機層を濃縮し、粗製の油状物(ベータ−ヒドロキシエステル)を得た。
【0139】
工程B:
粗製のヒドロキシエステルをエーテル2.8ml/mmol中に溶解し、氷浴温度まで冷却し、水素化リチウムアルミニウム3mmolを回分式(batch wise)に加えた。反応物を、冷却バスが溶け、反応物が室温まで昇温するまで撹拌した。室温にて一晩撹拌した後、反応物を氷浴温度まで冷却し、酢酸エチルでクエンチした。水性処理(0.5M塩酸)により反応を停止させ、粗製のジオールを得、これをクロマトグラフィーまたは蒸留のいずれかにより精製した。
【0140】
キラル1−(アリール)−プロパン−1,3−ジオールの合成:
実施例5:ラセミ1,3−ジオールの分割の一般的手順:
実施例1〜4のように合成されたラセミジオールを、次の手順に記載のように分割し、キラル形態を得ることができる。
工程A:
ジオール1.0mmoleのTHF1.0ml溶液に、ヘキサメチルジシラジド2.1mmoleを加え、次いで触媒量のトリメチルシリルトリフレート2〜3滴を加えた。室温にて1時間撹拌した後、反応物をヘキサン4mlで希釈し、氷冷水で反応を停止させた。得られたジシリルエーテルをクロマトグラフィーにより精製するか、または十分に純粋ならば、次の反応に粗生成物を用いた。
【0141】
工程B:
ジシリルエーテル1.0mmoleおよび(−)−メントン1.1mmoleのジクロロメタン2.0ml溶液に、−40℃にてトリメチルシリルトリフレート0.11mmoleをゆっくり加えた。次いで反応物を−50℃〜−60℃にて48時間維持し、ピリジンを加えて反応をクエンチした。室温まで昇温した後、粗製の混合物をヘキサン4.0mlで希釈し、水性処理により反応を停止させた。二種のケタールをクロマトグラフィーにより分離した。
【0142】
工程C:
分離したケタールを触媒量の濃塩酸をそれぞれのメタノール4.0ml/mmole溶液に加えることにより加水分解した。室温にて一晩撹拌した後、メタノールを減圧留去し、残渣を水性処理し、反応を停止させた。分割したジオールをクロマトグラフィーまたは蒸留のいずれかにより精製した。
【0143】
実施例6:シャープレス(Sharpless)不斉エポキシ化を経由したキラル3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパンの合成:
工程A:
m−クロロ−桂皮酸25g(137mmol)のエタノール275mLディスパージョンに、濃硫酸8mLを室温にて加えた。反応物を一晩還流し、濃縮した。氷冷水を粗製物に加え、沈殿した白色固体をろ過し、冷水で洗浄した。沈殿物を一晩減圧乾燥し、エステル25g(87%)を得た。
(シリカ上ジクロロメタン中Rf=0.50)
【0144】
工程B:
m−クロロ桂皮酸エチルエステル23g(109.5mmol)のジクロロメタン溶液に、−78℃にてジクロロメタン中1M DIBAL−H229mL(229mmol)を1時間にわたって滴加した。反応物を−78℃にてさらに3時間撹拌した。酢酸エチルを加えて過剰のDIBAL−Hをクエンチし、飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液を加え、反応物を室温にて3時間撹拌した。有機層を分離し、塩を酢酸エチルで洗浄した。集めた有機部分を濃縮し、120℃/0.1mmにて蒸留し、純粋なアリルアルコール14g(76%)を得た。
(シリカ上1:1酢酸エチル:ヘキサン中Rf=0.38)
【0145】
工程C:
m−クロロ桂皮アルコール5g(29.76mmol)のジクロロメタン220mL溶液に、活性化した4Aモレキュラーシーブス粉末2.5gを加え、混合物を−20℃まで冷却した。(+)−酒石酸ジエチル0.61mL(3.57mmol)を−20℃にて加え、15分間撹拌した後、チタニウムテトライソプロポキシド0.87(2.97mmol)を加えた。反応物をさらに30分間撹拌し、系中温度を−20〜−25℃に維持しながらヘプタン中5〜6Mt−ブチルヒドロペルオキシド10mL(60mmol)を滴加した。混合物をさらに3時間−20℃にて撹拌し、10%水酸化ナトリウム/飽和塩化ナトリウム水溶液7.5mL、次いでエーテル25mLを加えた。反応物を10℃まで昇温し、15分間撹拌した後、無水硫酸マグネシウム10gおよびセライト1.5gを加えた。混合物をさらに15分間撹拌し、25℃にて濃縮し、粗製のエポキシアルコールを得た。
(シリカ上1:1酢酸エチル:ヘキサン中Rf=0.40)
【0146】
工程D:
先の反応から得られた粗製のm−クロロエポキシ桂皮アルコールのジメトキシエタン300mL溶液に、Red−Alの65%トルエン18.63mL(60mmol)溶液を窒素雰囲気下0℃にて滴加した。室温にて3時間撹拌した後、得られた溶液を酢酸エチル400mLで希釈し、飽和硫酸ナトリウム水溶液50mLでクエンチした。室温にて30分間撹拌した後、得られた白色沈殿物をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を乾燥し、濃縮した。粗生成物を125〜130℃/0.1mmにて蒸留し、純粋な(R)−3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパン3.75g(67%)を得た。
(1:1酢酸エチル:ジクロロメタン中Rf=0.40)
光学純度は、HPLC(Regisから購入した(S,S) Whelko-0, 2.5cm X 4.0mm ID)によりジアセテート(ジオールのジクロロメタン中の無水酢酸、トリエチルアミン、触媒量のDMAPでの処理により製造)として定義した。
(R)−3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパン:91%ee
(+)酒石酸ジイソプロピルにより、>96%eeの(R)−3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパンを提供した。
(S)−3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパンはまた、同一条件下、(−)−酒石酸塩を用いた不斉エポキシ化および還元プロトコルにより同様の収率にて製造した。
(S)−3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパン:79%ee
【0147】
実施例7:水素転移反応を経由したキラル3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパンの合成:
工程A:3−(3’−クロロフェニル)−3−オキソ−プロピオン酸メチルの製造:
22L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、サーモウェル/サーモメーターおよび窒素注入口(インラインバブラー)を備え付けた。フラスコに窒素を流し、続けてTHF6L、カリウムt−ブトキシド1451gおよびTHF0.5Lを充填した。得られた混合物を常温にて15分間撹拌し、20℃水浴を適用した。3L丸底フラスコに、3’−クロロアセトフェノン1000gおよび炭酸ジエチル1165gを充填し、得られた黄色溶液を16〜31℃の温度を維持しながら、撹拌したカリウムt−ブトキシド溶液にゆっくり加えた。添加が完了(1時間10分)した後、冷却バスを取り除き、溶液を1時間30分間撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した。固定した分液漏斗5ガロンに、氷水4Lおよび濃塩酸1.3L(12M溶液)を充填した。暗赤色反応溶液を水性酸中にてクエンチし、混合物を15分間撹拌した。層を分離し、水相(より低い方)をトルエン4Lで再び抽出した。集めた有機抽出物を飽和ブライン(2x3L、それぞれ10分間撹拌)で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、減圧濃縮し、茶色油状物1480gを得た。油状物を高真空(10torr)下に一晩放置し、1427gを得た。得られた物質を減圧蒸留(ショートパスカラム、フラクションカッターレシーバー(fraction cutter receiver))し、108〜128℃/1〜0.5torrにおけるフラクションを集め、黄色油状物1273.9g(92.6%)を得た。
(20%酢酸エチル/ヘキサン中Rf=0.36)
【0148】
工程B:(S)−3−(3’−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロピオン酸メチルの製造:
12L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、サーモメーター、滴下漏斗500mLおよび窒素注入口(インラインバブラー)を備え付けた。フラスコに窒素を流し、ギ酸292mL(350g)を充填した。トリエチルアミン422mL(306g)を、滴下漏斗に充填した後、ゆっくり撹拌し、<45℃の温度を維持しながら加えた。添加が完了(1時間30分間)した後、氷浴を適用し、溶液を20分間撹拌し、次いで常温にてさらに1時間撹拌した。フラスコに、3−(3’−クロロフェニル)−3−オキソ−プロピオン酸メチル1260g、DMF2.77L(すすいだ容積を含む)および(S,S)−Ts−DPEN−Ru−Cl−(p−シメン)3.77gを続けて充填した。フラスコに加熱用マントル(heating mantle)を備え付け、滴下漏斗を冷却器とともに取り付けた(冷却器のために5℃の循環冷却液)。撹拌した反応溶液をゆっくり60℃まで加熱(60℃に達するまで90分)し、内容物を60℃にて4.25時間維持した。HPLCは、3%の出発物質が残存することを示した。溶液を60℃にてさらに8時間撹拌した後、徐々に常温まで一晩冷却した。HPLCは、0.5%の出発物質が残存することを示した。固定した分液漏斗5ガロンに、水10LおよびMTBE1Lを充填した。反応溶液を水性混合物に注ぎ、反応フラスコを、さらにMTBE1Lを加えて分液漏斗にすすいだ。内容物を数分間撹拌し、層を分離した。水相をさらにMTBE(2x1L)で抽出し、集めた有機抽出物をブライン1Lで洗浄し、減圧濃縮し、赤色油状物1334g(105%)を得た。油状物をさらに精製せずに次の工程に用いた。
【0149】
粗製のヒドロキシエステル10mg(0.046mmol)をジクロロメタン1mLに溶解した。無水酢酸22μL(0.23mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン22mg(0.18mmol)を加え、溶液を常温にて15分間撹拌した。溶液をジクロロメタン10mLで希釈し、1M塩酸(3x3mL)で洗浄した。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、ろ過し、減圧濃縮した。残った油状物をメタノールに溶解し、キラルHPLC(Zorbax Rx-C18, 250 X 4.6mm; 移動相: 65/35 (v/v) 水/アセトニトリル, アイソクラティック; 流速=1.5 mL/分; 注入容積=15μL; 220nmにおけるUV検出. 保持時間: 生成物=9.3分, 出発物質=17.2分)により分析した。ヒドロキシエステルは、キラルHPLCによる分析のためのアセテートに誘導体化し、91%eeを得たことを示した。
(HPLC条件: カラム: Pirkle covalent (S,S) Whelk-O 10/100 krom FEC, 250 X 4.6 mm; 移動相: 70/30 (v/v) メタノール/水, アイソクラティック; 流速: 1.5 mL/分; 注入容積=10μL; 220nmにおけるUV検出. 保持時間: S−ヒドロキシエステル(アセテート)=9.6分, R−ヒドロキシエステル(アセテート)=7.3分)
【0150】
工程C:(S)−3−(3’−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパン酸の製造:
10Lロータリーエバポレーターフラスコ中の粗製のヒドロキシエステルに、水酸化ナトリウム溶液2.5L(2M溶液)を加えた。得られた溶液をロータリーエバポレーター上、常圧、常温にて2時間撹拌した。HPLCは、5%の出発物質が残存していることを示した。
(HPLC条件: カラム: Zorbax Rx-C18, 250 X 4.6 mm; 移動相: 65/35 (v/v) 水/アセトニトリル, アイソクラティック; 流速=1.5mL/分; 注入容積=15μL; 220nmにおけるUV検出. 保持時間: 生成物=3.8分, 出発物質=18.9分)
溶液のpHは11(広範囲のpH紙)であった。さらに2M水酸化ナトリウム溶液を加え、pH14まで(約100mL)調節し、溶液をさらに30分間撹拌した。HPLCは、反応が完了したことを示した。溶液を固定した分液漏斗5ガロンに移し、MTBE2Lで抽出した。層を分離し、有機抽出物を廃棄した。水相を分液漏斗に戻し、12M塩酸溶液600mLで酸性化した。混合物をMTBE(1x2L、2x1L)で抽出した。集めた酸性有機抽出物を乾燥(硫酸マグネシウム)し、ろ過し、減圧濃縮し、茶色油状半固体物1262gを得た。残渣を酢酸エチル1Lでスラリー化し、メカニカルスターラー、加熱用マントル、冷却器およびサーモメーターを備えた12L三ツ口丸底フラスコに移し替えた。撹拌した混合物を加熱し、すべての固体を溶解(28℃)し、暗色溶液を10℃まで冷却(11℃にて沈殿物を形成)した。混合物をヘキサン(4Lを1時間にわたって)でゆっくりと希釈し、得られた混合物を<10℃にて2時間撹拌した。混合物をろ過し、集めた固体を冷4/1ヘキサン/酢酸エチル1Lで洗浄し、乾燥(-30 in. Hg, 50℃, 4時間)し、一定質量を得た。
回収量=ベージュ色固体837g(70.4%). mp=94.5-95.5℃
【0151】
ヒドロキシ酸のサンプル50mgをボラン−THF(工程D参照)によりジオールに還元した。得られた粗製のジオールをジアセチル化(工程Bに記載のとおり)し、キラルHPLCにより分析した。
保持時間:S−ジオール(ジアセテート)=12.4分, R−ジオール(ジアセテート)=8.8分) ee=98%
【0152】
ヒドロキシ酸の第二クロップを単離した。上記で得られたろ液を減圧濃縮し、茶色泥状物260gを得た。得られた物質を酢酸エチル250mLに溶解し、撹拌した暗色溶液をヘキサン1000mLでゆっくりと希釈し、得られた混合物を常温にて一晩撹拌した。混合物をろ過し、集めた固体を5/1ヘキサン/酢酸エチル200mLで洗浄し、乾燥(-30 in. Hg, 50℃, 16時間)し、一定質量を得た。
回収量=ベージュ色固体134g(11.2%). ee=97%
【0153】
工程D:(S)−(−)−1−(3’−クロロフェニル)−1,3−プロパンジオールの製造:
22L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、サーモウェル/サーモメーターおよび窒素注入口(バブラーに排気口)を備え付けた。フラスコに2Mボラン−THF3697g(4.2L)を充填し、撹拌した溶液を5℃まで冷却した。(S)−3−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパン酸830gのTHF1245mL溶液を撹拌しながら製造した(わずかに吸熱性)。反応フラスコに滴下漏斗1Lを備え付け、ヒドロキシ酸溶液を、温度<16℃を維持しながら、撹拌したボラン溶液にゆっくりと加えた。添加完了(3時間)後、混合物を氷浴温度にて1.5時間撹拌した。水2.5Lを注意して加えることにより反応をクエンチした。添加完了(30分)後、3M水酸化ナトリウム溶液3.3Lを加え(35℃まで温度上昇)、得られた混合物をさらに20分間撹拌(温度=30℃)した。反応混合物を固定した分液漏斗5ガロンに移し、層を分離した。水相をMTBE2.5Lで抽出し、集めた有機抽出物(THFおよびMTBE)を20重量%塩化ナトリウム溶液2Lで洗浄し、硫酸マグネシウム830gで30分間撹拌した。混合物をセライトに通してろ過し、減圧濃縮し、粘稠茶色油状物735gを得た。
【0154】
油状物を減圧蒸留により精製し、135-140℃/0.2mmHgにおけるフラクションを集め、無色油状物712.2g(92.2%)を得た。
ジオールをジアセチル化し、キラルHPLCにより分析(e.e.=98%、工程B参照)した。
保持時間:S−ジオール(ジアセテート)=12.4分, R−ジオール(ジアセテート)=8.9分. [α]D=-51.374(クロロホルム中5mg/mL)
【0155】
実施例8:(−)−β−クロロジイソピノカンフェニルボラン(DIPCl)還元を経由したキラル3−(3’−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロキシプロパンの合成
工程A:3−(3’−クロロフェニル)−3−オキソ−プロパン酸の製造:
12L三ツ口丸底フラスコにメカニカルスターラーおよび滴下漏斗2Lを備え付けた。フラスコに窒素を流し、ジイソプロピルアミン636mLおよびTHF1.80Lを充填した。熱電対プローブを反応溶液に浸し、撹拌した内容物を−20℃まで冷却した。n−ブチルリチウム1.81L(2.5Mヘキサン溶液)を滴下漏斗に充填し、−20〜−28℃の温度を維持しながら、ゆっくりと撹拌しながら加えた。添加完了(30分)後、滴下漏斗をヘキサン30mLですすぎ、撹拌した溶液を−62℃まで冷却した。酢酸トリメチルシリル300gを温度<−60℃を維持しながら、ゆっくりと撹拌しながら加えた。添加完了(30分)後、溶液を−60℃にて15分間撹拌した。塩化3−クロロベンゾイル295mLを温度<−60℃を維持しながら、ゆっくり撹拌しながら加えた。添加完了(65分)後、冷却バスを取り除き、反応溶液を1.25時間、徐々に0℃まで昇温しながら撹拌した。反応フラスコを氷浴で冷却した後、水1.8Lを撹拌した溶液に加えた。反応混合物を10分間撹拌した後、t−ブチルメチルエーテル1.0Lで希釈した。より低い水相を分離し、メカニカルスターラーを備えた12L三ツ口丸底フラスコに移した。t−ブチルメチルエーテルを加え(1.8L)、撹拌した混合物を<10℃(氷浴)まで冷却した。濃塩酸溶液300mL(12M溶液)を加え、混合物を激しく撹拌した。層を分離し、水相をさらに濃塩酸30mLで酸性化し、t−ブチルメチルエーテル1.0Lで再び抽出した。集めたMTBE抽出物をブライン1Lで洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム、70g)し、ろ過し、減圧濃縮し、黄色固体827gを得た。粗製の固体をヘキサン2.2L中にてスラリー化し、メカニカルスターラーを備えた5L三ツ口丸底フラスコに移した。混合物を<10℃(氷浴)にて1時間撹拌した後、ろ過し、ヘキサン(4x100mL)で洗浄し、乾燥(-30 in. Hg, 常温, 14時間)し、一定質量を得た。
回収量=薄黄色粉状物309g(68.6%)
【0156】
工程B:(S)−3−(3’−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパン酸の製造:
12L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラーおよび滴下漏斗1Lを備え付けた。フラスコに窒素を流し、3−(3’−クロロフェニル)−3−オキソ−プロパン酸275.5gおよびジクロロメタン2.2Lを充填した。熱電対プローブを反応スラリーに浸し、撹拌した内容物を−20℃まで冷却した。トリエチルアミン211mLを5分にわたって撹拌したスラリーに加え、すべての固体を溶解した。(−)−B−クロロジイソピノカンフェニルボラン1.04L(1.60M)のジクロロメタン溶液を滴下漏斗に充填した後、温度−20〜−25℃を維持しながら、ゆっくり撹拌しながら加えた。添加完了(35分)後、溶液を氷浴温度(2〜3℃)まで昇温し、4時間撹拌した。製造過程のNMR分析は、出発物質が<4%であることを示した。濁った橙色反応混合物に水1.2L、次いで3M水酸化ナトリウム溶液1.44Lを加えた。混合物を5分間激しく撹拌した後、分液漏斗に移した。層を分離し、塩基性の水相を酢酸エチル1.0Lで洗浄した。水相を濃塩酸300mLで酸性化し、酢酸エチル(2x1.3L)で抽出した。二つの酸性の酢酸エチル抽出物を集め、ブライン600mLで洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム、130g)し、ろ過し、減圧濃縮し、黄色油状物328gを得た(油状物は放置すると結晶化した)。固体を酢酸エチル180mL中にてスラリー化し、メカニカルスターラーを備えた2L三ツ口丸底フラスコに移した。撹拌した混合物を<10℃(氷浴)まで冷却した後、ヘキサン800mLで希釈した。得られた混合物を氷浴温度にて4時間撹拌した後、ろ過した。集めた固体を4:1ヘキサン:酢酸エチル(3x50mL)で洗浄し、乾燥(-30 in. Hg, 常温, 12時間)し、一定質量を得た。
回収量=白色粉状物207.5g(74.5%)
【0157】
工程C:(S)−(−)−1−(3’−クロロフェニル)−1,3−プロパンジオールの製造:
12L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、滴下漏斗2Lおよびサーモメーターを備え付けた。フラスコに窒素を流し、(S)−3−(3’−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパン酸206.7gおよびTHF850mLを充填し、撹拌した溶液を5℃(氷浴)まで冷却した。ボランの1MTHF溶液2.14Lを滴下漏斗に充填した後、温度<10℃を維持しながら、ゆっくり撹拌しながら加えた。添加完了(1時間)後、冷却バスを取り除き、溶液を常温にて1時間撹拌した。反応溶液を水600mL、次いで3M水酸化ナトリウム溶液850mLでゆっくりと注意深くクエンチした。混合物を10分間撹拌した後、分液漏斗に移した。層を分離し、水相を酢酸エチル600mLで逆抽出した。集めた有機相をブライン500mLで洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム、322g)し、ろ過し、減圧濃縮し、薄黄色油状物189.0g(101%)を得た。油状物を減圧蒸留により精製し、125-155℃/0.15mmHgにおけるフラクションを集め、無色油状物180.9g(94.0%)を得た。
【0158】
ジオール5.0mg(0.026mmol)をジクロロメタン2.0mLに溶解した。無水酢酸15μL(0.15mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン13mg(0.10mmol)を加え、溶液を常温にて15分間撹拌した。反応溶液を1M塩酸溶液3mLでクエンチし、より低い有機相を分離し、硫酸マグネシウムプラグに通し、窒素雰囲気下濃縮した。残渣をメタノール1mLに溶解し、キラルHPLCにより分析した(実施例7;工程B参照) ee>98%.
【0159】
実施例9:触媒的不斉水素化を経由した1,3−ジオールの製造:
工程A:
ベータ−ケトエステル出発物質を、実施例7、工程Aに記載のように合成した。
【0160】
工程B:
ベータ−ケトエステル1mmoleをメタノールまたはエタノール(5〜10ml/mmoleケトエステル)のいずれかにおいて含む溶液を、室温にてポンプ(pump/vent (N2))で数回脱気した。脱気した溶液をグローブバッグに移動し、窒素雰囲気下、撹拌棒および1.0モル%Ru−BINAP触媒を含むステンレス製ボンベ(stainless steel bomb)に注いだ。ボンベを密封し、グローブバッグから取り出し、水素を充填した後、18〜24時間室温、水素150psiにて撹拌した。水素圧を排気した後、ボンベを開封し、反応混合物を取り出し、濃縮した。粗製のベータ−ヒドロキシエステルを加水分解した。
【0161】
工程C:
粗製のベータ−ヒドロキシエステルを、実施例7、工程Cに記載のように加水分解した。
【0162】
工程D:
光学活性ベータ−ヒドロキシ酸を、実施例7、工程Dに記載のように還元した。
【0163】
ホスホン酸と1−(アリール)プロパン1,3−ジオールのカップリングを経由したプロドラッグの合成:
実施例10:塩化チオニル反応によるプロドラッグの合成の一般的手順:
ホスホン酸1mmolの塩化チオニル5mL懸濁液を還流温度にて4時間加熱した。反応混合物を冷却し、溶媒を留去し、乾燥した。得られた残渣に、ジオール1mmolおよびピリジン2.5mmolのジクロロメタン3mL溶液を加えた。25℃にて4時間撹拌した後、反応を停止させ、クロマトグラフィーを行った。
【0164】
実施例11:DCCカップリングを経由したプロドラッグの合成の一般的手順:
PMEA410mg(1.5mmol)のDMF15mLおよびピリジン3mL溶液に、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)925mg(4.5mmol)、次いで工程Bで得られた1(3−クロロフェニル)プロパン−1,3−ジオール295mg(1.57mmol)を加えた。反応混合物を一晩100℃にて加熱した。混合物を減圧濃縮し、トルエン(2x10mL)で共沸した。粗製の化合物をシリカゲルカラム(3:97〜10:90メタノール−ジクロロメタン)でクロマトグラフィーし、純粋な環状プロドラッグ310mgを得た。
【0165】
塩化オキサリル媒介カップリングを経由したプロドラッグの合成:
実施例12:メタンスルホン酸9−{2−[2,4−シス−(S)−(+)−4−(3’−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン(18)の製造
実施例12.1:ジクロリデート(11)の形成
【化18】

2L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、冷却器、滴下漏斗125mLおよび加熱用マントルを備え付けた。フラスコに窒素を流し、PMEA50.0g、ジクロロメタン650mLおよびN,N−ジエチルホルムアルデヒド22.5mLを充填した。塩化オキサリル58.0mLを滴下漏斗に充填し、撹拌した反応混合物にゆっくり加えた。添加完了(15分)後、滴下漏斗を取り除き、激しく撹拌した混合物還流温度にて2時間加熱した。溶液はこの工程中スラリーのままであった。反応混合物をわずかに冷却し、さらに塩化オキサリル1.0mLおよびN,N−ジエチルホルムアミド0.4mLを加えた。N,N−ジエチルホルムアルデヒドの添加により、激しい気体発生が起こった。得られた混合物を還流温度にて、すべての固体が溶解するまで(さらに2.5時間、全反応時間は約4.5時間)加熱した。反応溶液のHPLC分析は、83領域%にて生成物11を示した。反応は、ジクロリデートの形成によりモニターした。反応混合物のサンプル(約50μL)を取り出し、トリエチルアミン1滴を含む無水メタノール1Lでクエンチした。得られたメチルホスホネートをHPLCにより分析した。
HPLC条件:
YMC-Pack R&D, R-33-5 S-5 120A, 250 X 4.6 mm; 移動相: 溶媒A= 20 mM リン酸カリウム, pH 6.2; 溶媒B= アセトニトリル; 濃度勾配: 10-60%B/ 15分, 60-10%B/ 2分, 10%B/ 3分; 1.4 mL/分; 注入容積= 10μL; 270nmにおけるUV検出.
保持時間:
ジメチルホスホネート12= 8.5分, モノメチルホスホネート13= 5.8分
【化19】

【0166】
反応溶液をわずかに冷却し、冷却器をサーモメーター、冷却器およびコレクションフラスコ250mLを備えた蒸留ヘッド(distillation head)に置き換えた。反応溶液を加熱還流し、蒸留液250mLを集めた。ポット溶液(pot solution)をジクロロメタン250mLで希釈し、さらに蒸留液250mLを集めた。蒸留ヘッドを取り除き、反応フラスコを窒素雰囲気下に置いた。溶液をジクロロメタン100mLで希釈し、氷浴温度まで冷却した。反応溶液のHPLC分析は、89領域%にて生成物を示した。
HPLC条件:
YMC-Pack R&D, R-33-5 S-5 120A, 250 X 4.6 mm; 移動相: 溶媒A= 20 mM リン酸カリウム, pH 6.2; 溶媒B= アセトニトリル; 濃度勾配: 10-60%B/ 15分, 60-10%B/ 2分, 10%B/ 3分; 1.4 mL/分; 注入容積= 10μL; 270nmにおけるUV検出
保持時間:生成物11= 8.5分, 出発物質= 5.9分
【0167】
ピリジン18mLを撹拌した溶液にゆっくり加えた。添加完了(5分)後、得られた薄橙色溶液を氷浴温度にて使用するまで(30分)保存した。
【0168】
実施例12.2:カップリング反応
2L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラーおよび滴下漏斗1Lを備え付けた。フラスコに窒素を流し、(S)−(−)−(3’−クロロフェニル)−1,3−プロパンジオール34.1gを、ジクロロメタン500mLおよびトリエチルアミン125mlの溶液として充填した。熱電対プローブを反応溶液に浸し、撹拌した内容物を−71℃まで(ドライアイス/イソプロパノール)冷却した。ジクロリデート溶液11を滴下漏斗に充填した後、温度<−67℃を維持しながら、ゆっくり撹拌しながら加えた。添加完了(1.25時間)後、冷却バスを取り除き、撹拌した混合物を0℃まで30分にわたって昇温した。反応混合物を水550mLで洗浄し、層を分離した。ジクロロメタン相を酢酸エチル500mLで希釈し、5%塩化ナトリウム溶液600mLで洗浄した。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム、50g)し、珪藻土(セライト521)に通してろ過し、減圧濃縮し、暗赤色泥状物108gを得た。サンプルをメタノールに溶解した。
HPLC条件:
YMC-Pack R&D, R-33-5 S-5 120A, 250 X 4.6 mm; 移動相: 溶媒A= 20 mM リン酸カリウム, pH 6.2; 溶媒B= アセトニトリル; 濃度勾配: 10-60%B/ 15分, 60-10%B/ 2分, 10%B/ 3分; 1.4 mL/分; 注入容積= 10μL; 270nmにおけるUV検出
保持時間:シス14= 12.5分, トランス15= 13.0分
【化20】

【0169】
得られた物質をエタノール500mLに溶解し、マグネティックスターラー、冷却器および加熱用マントルを備えた2L丸底フラスコに移した。酢酸55mLを加え、赤色溶液を還流温度にて8時間加熱した。HPLCは、反応が完了したことを示した。サンプルをメタノールに溶解した。
HPLC条件:
YMC-Pack R&D, R-33-5 S-5 120A, 250 X 4.6 mm; 移動相: 溶媒A= 20 mM リン酸カリウム, pH 6.2; 溶媒B= アセトニトリル; 濃度勾配: 10-60%B/ 15分, 60-10%B/ 2分, 10%B/ 3分; 1.4 mL/分; 注入容積= 10μL; 270nmにおけるUV検出
保持時間:シス16 = 9.5分, トランス17 = 9.8分
【化21】

【0170】
実施例12.3:メタンスルホン酸9−{2−[2,4−シス−(S)−(+)−4−(3’−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン(18)の結晶化
メタンスルホン酸21.5mLを加え、15分後沈殿物を形成した。混合物をエタノール400mLで希釈し、すべての固体が溶解するまで加熱(ポット温度=70℃)した。溶液を撹拌しながら冷却し、沈殿物が46℃にて形成された。得られた混合物を2時間常温まで冷却しながら撹拌した後、氷浴温度にて2.5時間撹拌した。混合物をろ過し、集めた固体をエタノール(2x15mL)で洗浄し、乾燥(-30 in. Hg, 55℃, 14時間)し、一定質量を得た。
回収量=白色粉状物18(49.4g、51.9%)。固体は6.5領域%のトランスジアステレオマーを含む。
【0171】
キラルHPLC:Pirkle covalent (S,S) Whelk-O 1 10/100 krom FEC 250 X 4.6 mm; 移動相= 55:45, メタノール: 水中0.1%酢酸; アイソクラティック; 1.0 mL/分; 注入容積= 10μL; 260nmにおけるUV検出; サンプル調製= 水中2.0 mg/mL.
保持時間:シス−(R)−9−(2−ヒドロキシエチル)アデニン = 24.6分, トランス−(R)−9−(2−ジエチルホスホニルメトキシエチル)アデニン = 27.5分, シス−(S)−9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン = 18.0分
1H NMR (D2O) を用い、成分の構造を確認した。
【化22】

【0172】
実施例12.4:メタンスルホン酸9−{2−[2,4−シス−(S)−(+)−4−(3’−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン(18)の再結晶化
3L三ツ口丸底フラスコに、メカニカルスターラー、冷却器、加熱用マントルおよびサーモメーターを備え付けた。フラスコに粗製の2回分のメシレート塩18およびエタノール1.4Lを充填した。撹拌した混合物を還流温度にて、すべての固体が溶解するまで(約10分)加熱(ポット温度は78℃)した。撹拌した混合物を常温まで1.5時間にわたって徐々に冷却した(56℃にて沈殿物を形成した)。混合物を常温にてさらに2時間撹拌した後、ろ過した。集めた固体をエタノール(2x15mL)で洗浄し、乾燥(-30 in Hg, 65℃, 60時間)し、一定質量を得た。
色:灰白色粒状固体
純度 = 97% (HPLC)
光学純度 (キラルHPLC) >99.5%.
M.P.(℃):186.5-188
特異的反応 (メタノール, 25℃, 589nm):+16.429
組成:C, 41.58; H, 4.56; N, 13.37 [理論値として:C, 41.50; H, 4.53; N, 13.35]
1H NMR (D2O):δ=1.30-1.60 (m, 1H), 1.80-1.95 (m, 1H), 2.60 (s, 3H), 3.70-3.90 (m, 4H), 4.10-4.50 (m, 2H), 4.60 (s, 3H), 5.15-5.40 (m, 1H), 6.70-6.80 (m, 2H), 7.00-7.10 (m, 2H), 8.00 (s, 1H), 8.10 (s, 1H).
【0173】
本発明の好ましい化合物は、第I表に記載する。第I表は、好ましい化合物についてのV基の構造式、命名および物理的データを含む。
【0174】
本発明の方法の使用の例としては、次が挙げられる。これらの実施例は、例示であり、本発明の方法をこれらの実施例のみに限定するものでないと理解されるだろう。
【0175】
以下の生物学的実施例において、明瞭および簡潔の目的のために、化合物は化合物番号(上記表に記載)により呼称する。
【0176】
生物学的実施例
実施例A:PMEAプロドラッグアナログのラット肝臓ミクロソームによるインビトロ活性化
PMEAプロドラッグアナログは、ラット肝臓のミクロソームフラクションにより触媒された反応においてPMEAに対する活性化のために試験を行った。
【0177】
方法:
プロドラッグ(25および250μM)を、CYP3A4活性を増強するためのデキサメタゾンにより誘発されたラットから単離された肝臓ミクロソームによる活性化のために試験した(Human Biologics Inc., Phoenix AZ)。反応を、2mM NADPHおよび肝臓ミクロソーム1mg/mLの存在下0.1M KHPO中、pH7.4にて行った。反応混合物を5分間エッペンドルフサーモミキサー(Thermomixer)5436(37℃、スピード6)にてインキュベートした。1.5倍の容積のメタノールを加えることにより反応を終了させた。得られた抽出物は、14,000rpmにおける遠心分離によりエッペンドルフマイクロフュージ(20分間)中にて浄化した。上清200μLを減圧濃縮し、加熱乾燥し、PMEA分析のための緩衝液A(以下に示す)80μL中にて再懸濁させた。9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンのスパイクされた標準物質(spiked standard)(PMEAlot 980397, Metabasis Therapeutics)を同じ反応混合物中にて製造し、同様に処理した。再懸濁の後、サンプルを、10mMリン酸アンモニウム、2.5mMオクチルトリエチルリン酸アンモニウム、pH5.5からなるイオンペア(ion-pairing)緩衝液(緩衝液A)を用いた逆相HPLC(Altima C-18カラム)により分析した。サンプルを緩衝液A中に充填し、メタノールの濃度勾配40%〜80%で20分にわたり溶出した。検出は265nmにて行った。PMEAの保持時間は、約14.7分であった。
結果:
【表1】

【0178】
結論:
試験した大多数のプロドラッグは、活性化し、本化合物PMEAを形成した。活性化速度は、より低い薬物試験濃度25μMにおける<0.5〜6.2nmoles/分/mgミクロソームタンパク質の範囲であった。化合物4は、本系においてPMEAへの最も高い変換速度を有した。
【0179】
実施例B:PMEAプロドラッグアナログによるインキュベーション後の肝細胞におけるPMEApp蓄積
ラット肝臓ミクロソーム(実施例A)において十分に高レベルの活性化を示したPMEAプロドラッグを、既知のHBVポリメラーゼ阻害物質であるPMEAppを新たに単離されたラット肝細胞において生成するそれらの能力のために評価した。PMEAプロドラッグを試験した。
【0180】
方法:
肝細胞を、Groen(Groen, A.K.ら, Eur. J. Biochem 122:87-93 (1982))により改変されたBerryとFriendの手順(Berry, M.N. Friend, D.S., J. Cell Biol. 43:506-520 (1969))により、食物を与えたスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラット250〜300gから調製した。肝細胞60mg/ml湿重量(>85%トリパンブルーバイアビリティー)を、20mMグルコースおよびBSA1mg/mlを含むクレブス(krebs-)二炭酸塩緩衝液2ml中にて4時間PMEAプロドラッグ250μM(プロドラッグのメタノール中25mMストック溶液)の存在下インキュベートした。インキュベーション中の適切な時点(0、1、2、4時間)にて、細胞懸濁液のアリコート400μlを取り、シリコン/鉱油相に通して遠心分離し、10%過塩素酸に細胞内ヌクレオチドを抽出した。酸性細胞抽出物を、0.3倍容積の3M水酸化カリウム/3M KHCOで中性化した後、PMEAppレベルを、Whatman Partisphere SAX(5μm, 4.6 x 125 mm)カラムを用いたイオン交換HPLC(Hewlett Packard 1050)により評価した。サンプルを0.3Mリン酸アンモニウム緩衝液pH3.5中のカラム上に充填し、0.8Mリン酸アンモニウムpH3.5への濃度勾配によりカラムから溶出した。PMEAppの保持時間は、18.6分であった。
【0181】
結果:
PMEAプロドラッグの主要なラット肝細胞でのインキュベーション後、PMEApp形成が0〜4時間にわたって観察された。PMEAppレベルのためのAUC(曲線下の領域)値(0〜4時間)を以下に示す。化合物4、化合物2および化合物1が最も高レベルのPMEAppを生成した。
【表2】

【0182】
結論:
本発明化合物は、新たに単離したラット肝細胞中にてPMEAppを生成する能力を示す。
【0183】
実施例C:PMEAプロドラッグアナログの通常に絶食させたラットへの経口投与後の肝臓器官におけるPMEApp蓄積:
適切な経口バイオアベイラビリティーおよび好ましい肝内活性化速度を有するプロドラッグを同定するために、インビボにてPMEAプロドラッグを試験した。
【0184】
方法:
プロドラッグ30〜mg/kg(PMEA当量)を通常の絶食されたラットへ経口投与した後、肝臓器官サンプルを8時間にて凍結固定(freeze-clamped)した。PMEApp肝臓器官濃度を過塩素酸抽出後に決定し、Whatman Partisphere SAX(5μm, 4.6 x 125 mm)カラムを用いた逆相HPLC(Hewlett Packard 1050)により中性化した。サンプルを0.3Mリン酸アンモニウム緩衝液pH3.5中のカラム上に充填し、0.8Mリン酸アンモニウムpH3.5への濃度勾配によりカラムから溶出した。PMEAppの保持時間は、18.6分であった。
結果:
【表3】

【0185】
結論:
試験したPMEAプロドラッグの経口投与後、PMEAppを肝臓器官において容易に検出した。
【0186】
実施例D:化合物4のヒト肝臓ミクロソームによるインビトロ活性化;反応のCYP3A4選択性
ヒト肝臓のミクロソームフラクションによる化合物4の活性化速度を決定した。反応のP450イソフォーム特異性を、既知のCYP3A4−選択的阻害物質、ケトコナゾールの効果を評価することにより決定した。
【0187】
方法:
ヒト肝臓ミクロソームをIn Vitro Technologies(IVT)から購入した。Lot 1011を、実証されたCYP3A4活性(5.7nmol/mg/分のテストステロン6ベータ−ヒドロキシル化速度;IVT)を有する10のオスのドナーのプールから製造した。化合物4(lot 990301)をMetabasis Therapeuticsにて合成し、メタノール中にて溶媒和した。ケトコナゾールをResearch Biochemicals International(lot SJG-597A)から購入し、メタノール中にて溶媒和した。37℃における2分間のプレインキュベーション後、100mM KHPO、ヒト肝臓ミクロソーム2mg/mLおよび化合物4(0、30、60、100,200および400μM)を含む反応混合物を2mMまでNADPHを加えることにより開始させた。反応を10分間エッペンドルフサーモミキサー5436中、37℃、スピード6にて行った。インキュベーション実験を、化合物4(100μM)および0、0.01、0.1、1、10および100μMの濃度のケトコナゾールにおいて同様に行った。反応を、1.5倍容積のメタノールを加えることにより停止させ、抽出物を14,000rpmにてエッペンドルフマイクロフュージ中20分間ペレットした。上清200μlを減圧濃縮し、加熱乾燥した後、緩衝液A(以下参照)80μL中に再懸濁した。9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンのスパイクされた標準物質(PMEAlot 980397, Metabasis Therapeutics)を同じ反応混合物中にて製造し、同様にクエンチし、処理した。10mMリン酸アンモニウムおよび2.5mMオクチルトリエチルリン酸アンモニウム、pH5.5からなるイオンペア緩衝液(緩衝液A)。再懸濁の後、サンプルを、逆相HPLCによりPMEAについて分析した。サンプルをAltima C-18ヌクレオチドカラム上、緩衝液A中に充填し、メタノールの濃度勾配40%〜80%で20分にわたり溶出し、265nmにて検出した。この方法を用いたPMEAの保持時間は、約14.7分であった。
【0188】
結果:
化合物4は、時間およびタンパク質濃度に依存し、ヒト肝臓ミクロソームにおいてPMEAに活性化された。111μMのKおよび1.6nmol/分/mgのVmaxを、この系における化合物4の活性化について決定した。1μMの濃度にて、ケトコナゾールが化合物4のPMEAへの変換の97%を阻害することを見出した(図1)。
【0189】
結論:
従ってその結果は、ヒト肝臓ミクロソームにおける化合物4のターンオーバーが主にCYP3A4により触媒され、プロドラッグがこのアイソザイムのための良い基質であることを示す。
比較の実験を、化合物4の単一鏡像異性体(化合物57および化合物54)について、物理化学的性質、ヒト肝臓ミクロソームにおける活性化およびラットへの経口または静脈内投与後の肝臓PMEAppのインビボ蓄積を有する鏡像異性体を選択するために行った。
【0190】
実施例E:化合物4鏡像異性体の溶解性
鏡像異性体化合物57および化合物54の溶解性を水中にて分析した。
方法:
5mgの各鏡像異性体を、4回検量し、適切な容積の水を各サンプルに加え、最終濃度50mg/mLを達成した。サンプルを激しく撹拌し、室温にて15分間超音波に当てた。室温にて1時間放置した後、サンプルをテーブル・トップ(table-top)マイクロフュージ(エッペンドルフ)上、最高速度にて2分間室温にて遠心分離した。次いで上清を0.45μMフィルターに通し、ろ液を希釈し、既知の標準物質に対しHPLCにより分析し、薬物濃度を分析した。HPLC分析を、HP1090系上、Beckman Ultrasphereカラム(4.6 x 150 mm, 5μM)を用い、40℃にて行った。カラムを1.5mL/分にて20mMリン酸カリウム緩衝液pH6.2から80%アセトニトリルまでの直線的濃度勾配により15分にわたって溶出した。カラム流出物を260nmにてモニターした。
【0191】
結果:
化合物4のRおよびS鏡像異性体、すなわち化合物57および化合物54は、ほぼ等量で水にて高い溶解性を有する。
化合物57および化合物54の水における溶解性
化合物 溶解性(水)
57 14mg/ml
54 16mg/ml
結論:
結果は、溶解性が鏡像異性体により影響されないことを示す。
【0192】
実施例F:化合物4鏡像異性体のリン酸緩衝液中での安定性
鏡像異性体化合物57および化合物54の安定性を、リン酸緩衝液中pH3、7および9(室温)にて分析した。
方法:
鏡像異性体の安定性を、室温にて100mMリン酸カリウム緩衝液中pH3、7および9にて決定した。鏡像異性体の溶液200μg/mLを各pHにて調製し、プロドラッグ濃度をHPLCにより正規の間隔にて75時間モニターすることにより安定性を分析した。HPLC条件は、実施例Eに記載のものと同一にした。
【0193】
結果:
鏡像異性体の安定性は同一であった;それらは、酸性(3)および中性(7)pHにおける高い安定性を示した。プロドラッグ分解(加水分解)は、塩基性条件(pH9)下においてのみ起こった。
緩衝液中(pH3、7、9)の化合物57および化合物54の安定性
緩衝液(pH3) 緩衝液(pH7) 緩衝液(pH9)
化合物 安定性(室温) 安定性(室温) 安定性(室温)
57 T90%>75h T90%>75h T1/2=11.6h
54 T90%>75h T90%>75h T1/2=11.6h
結論:
結果は、安定性は鏡像異性体により影響されないことを示す。
【0194】
実施例G:ラットおよびヒト血漿における安定性
鏡像異性体化合物57および化合物54の安定性をラットおよびヒト血漿中37℃にて分析した。
方法:
鏡像異性体の安定性をヘパリン添加したラットおよびヒト血漿中37℃にて2つのサンプルで決定した。t=0にて、ブランク血漿サンプル(〜1mL)を各鏡像異性体に別々にスパイク(spiked)し、最終薬物濃度50μg/mLとし、37℃にてインキュベートした。予め選択した時点にて、血漿サンプルの100μLのアリコートを98%v/vアセトニトリルおよび2%v/v酢酸からなるクエンチカクテル150μLと混合した。抽出物を撹拌し、遠心分離し、沈殿物を除去した。実施例Eに記載のHPLC法により、薬物について上清を分析した。
【0195】
結果:
化合物4鏡像異性体のヘパリン添加したラットまたはヒト血漿中37℃における安定性は、同様であることを見出した。
化合物57および化合物54のラットおよびヒト血漿中における安定性
ヒト血漿 ラット血漿
化合物 安定性(37℃) 安定性(37℃)
57 T1/2=8.2h T1/2=4.9h
54 T1/2=8.6h T1/2=3.9h
結論:
これらの化合物の安定性は、急速にヒト血清において分解し、半減期が<5分であると知られているビスPOM PMEA(J. Med. Chem. 39:4958-4965 (1996))のものと良く匹敵する。
【0196】
実施例H:ヒト肝臓ミクロソームにおけるインビトロ活性化
二種の鏡像異性体をヒト肝臓ミクロソームにおける活性化について比較した。
方法:
ヒト肝臓ミクロソームをIn Vitro Technologies(IVT1032)から購入した。比較実験を、2mg/mLヒト肝臓ミクロソーム、100mM KHPO、10mMグルタチオン、25μMまたは250μM化合物および2mM NADPHにて0〜7.5分間エッペンドルフサーモミキサー5436中37℃スピード6にて行った。反応を2分間のプレインキュベーション後にNADPHを加えることにより開始した。反応を60%メタノールで0、2.5、5、7.5分にてクエンチした。L−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシン、プロドラッグ活性化の副生成物のグルタチオン付加物、3−Cl−フェニルビニルケトンを、反応物の1.5倍容積のメタノールで抽出した後、定量した。抽出したサンプルを14,000rpmにてエッペンドルフマイクロフュージ中、遠心分離し、上清をHPLCによりL−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシン内容量について分析した。スパイクされたL−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシン(lot 20000127)標準物質1〜30μMを、2mg/mlミクロソーム中反応条件下にて製造した後、未知のサンプルと同様の方法によりクエンチし、処理した。HPLC分析について、充填した移動相緩衝液(緩衝液A)は、20mMリン酸カリウム、pH6.2およびアセトニトリルの9:1比(v/v)からなる。抽出物100μLは、Beckman Ultrasphere ODSカラム(4.6 x 250 mM, part# 235329)上に注入した。カラムを60%アセトニトリルまでの濃度勾配で溶出した。L−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシンの溶出(保持時間10.4分)を245nmにてモニターした。
【0197】
結果:
ヒト肝臓ミクロソームにおける化合物4鏡像異性体の活性化:
活性化(25μM) 活性化(25μM)
化合物 (pmol/mg/分) (pmol/mg/分)
4(ラセミ) 38 283
57 16 159
54 62 383
結論:
生成物L−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシンの形成は、タンパク質濃度およびこれらの測定時間に関して直線的であった。S−鏡像異性体、化合物54は、ヒト肝臓ミクロソーム中インビトロにて低濃度25μMおよび高濃度250μMのプロドラッグの両方において最も容易に活性化される鏡像異性体であった。
【0198】
実施例I:ラット肝臓器官における化合物57および化合物54によるPMEApp蓄積の分析
化合物54(化合物4のS鏡像異性体)および化合物57(化合物4のR鏡像異性体)の静脈内および経口投与後の肝臓のPMEApp蓄積の比較を行い、最も高い経口バイオアベイラビリティーを有する鏡像異性体を同定した。
方法:
30mg/kg(PMEA当量において)のいずれかの鏡像異性体の通常の絶食されたラットへの静脈内または経口投与後、肝臓器官サンプルを投与後20分、1、3、5、8、12および24時間にて凍結固定した。過塩素酸抽出および中性化後、肝臓器官サンプルをWhatman Partisphere SAXカラム(5μm, 4.6 x 125 mm)を用いたアニオン交換HPLC(Hewlett Packard 1050)により分析した。カラムを0.3Mリン酸アンモニウム緩衝液pH3.5から0.8Mリン酸アンモニウムpH3.5までの濃度勾配で発展させた。
検出を254nmにて行った。PMEAppの保持時間は18.6分であった。
【0199】
結果:
ラット肝臓器官におけるPMEAppへの変換(30mg/kgPMEA当量)
化合物 経路 AUC PMEApp0〜24h OBAV
57 静脈内 435.1nmolh/g
57 経口 93.0nmolh/g 21%
54 静脈内 684.6nmolh/g
54 経口 213.2nmolh/g 31%
結論:
静脈内投与および経口投与後の肝臓器官において、化合物54は、PMEApp蓄積(AUC)が化合物57(図2aおよび2b)と比較してそれぞれ1.57倍および2.29倍高いことを示した。化合物54は、化合物57よりも肝臓器官PMEAppのAUCに基づき、より高い経口バイオアベイラビリティーを有した。
【0200】
実施例J:化合物54塩形態の選択
適切な化合物54の塩形態の選択は、プロドラッグカップリング後のシス−ジアステレオマーの選択的結晶化において助けるのに必要であった。
方法:
十種の化合物54塩形態(L−酒石酸、コハク酸、マレイン酸、L−リンゴ酸、D−リンゴ酸、クエン酸、塩酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸)を評価し、プロドラッグカップリング手順に従い、シス:トランス混合物から選択的に結晶化する最善の塩形態を同定した。化合物54のメシレートの溶解性および安定性を水中にて分析した。
【0201】
結果:
化合物56として指定されているメタンスルホン酸形態を、始め75(シス):25(トランス)混合物からシス−ジアステレオマーを選択的に結晶化する最善の塩形態として同定した。メシレート塩による単一の結晶化は、コハク酸塩について82(シス):18(トランス)または残りの塩形態については全く改善が見られないのと比較して、93(シス):7(トランス)混合物の比まで改善した。水中にて、化合物56は、高い溶解性(>300mg/ml)を有し、投与溶液30および300mg/mlは、室温にて5日にわたり安定(分解<10%)であることを見出した。
結論:
メタンスルホン酸塩が、シス−ジアステレオマーを選択的に結晶化する最善の塩であった。
【0202】
実施例K:種々の種からの肝臓ミクロソームにおける化合物56速度論的パラメーターの決定
化合物56、PMEAのプロドラッグの活性化の速度論的パラメーターを、オスおよびメスマウス(CD−1)、ラット(スプラーグ・ドーリー)、イヌ(ビーグル)、サル(カニクイザル)、ウッドチャックおよびヒトプールからの肝臓ミクロソームを比較した。
方法:
化合物56のP450に触媒されたPMEAへの活性化を、実施例Hに記載のグルタチオン副生成物捕捉HPLCアッセイによりモニターした。KおよびVmaxの速度論的パラメーターをSigmaPlot Enzyme Kinetics Module v.1.1を用いて計算した。固有のクリアランス(Vmax/K)、触媒的効率の測定もまた評価した。タンパク質濃度を商業的に入手可能なBradford法により決定した。
【0203】
結果:
速度論的実験は、マウス、ラット、イヌ、サル、ヒトおよびウッドチャックを含む種々の種における化合物56の活性化を示す。例えば、(Vmax/K)[μL/分/mg]値は、サルにおいて74.8+/−7.7(オス)および77.5+/−13.0(メス);ヒトにおいて10.8+/−1.2(オス)および23.2+/−1.0(メス);およびウッドチャックにおいて31.5+/−0.8(オス)であった。
結論:
ミクロソーム製造におけるプロドラッグ化合物56のその親化合物PMEAへの活性化の速度論的パラメーターは、種により変化する;それはサルにおいて最も高い。プロドラッグのサルミクロソームによる高い活性化は、毒物学的実験におけるこの種の使用を正当化する。ウッドチャックにおける速度論的パラメーターは、ヒトと類似し、臨床前効率実験のためのウッドチャックの潜在的使用を支持した。
【0204】
実施例L:通常のオスラットにおける化合物56の経口バイオアベイラビリティーの分析
化合物4のシス体のS鏡像異性体の高水溶性メシレート塩、すなわち化合物56の経口バイオアベイラビリティー(OBAV)を、通常のオスラットにおいて評価した。
方法:
化合物56を静脈内および経口投与のために水に可溶化した。30mg/kg(PMEA当量において)の化合物56の4ラットの群への経口および静脈内投与後のPMEAppjの肝臓器官濃度−時間プロファイルのAUC値の比を計算することにより、OBAVを分析した。肝臓器官サンプルを投与後20分および1、3、5、8、12および24時間にて取った。PMEAppの肝臓器官濃度を実施例Iに記載のように決定した。
【0205】
結果:
PMEAppの肝臓器官濃度−時間プロファイルを図3に示す。OBAVを上記定義あたり42%と見積もった。この値は、実施例Iにおける遊離塩基31%について決定されたOBAVより最小当量における。
結論:
化合物56は高いバイオアベイラビリティーを示した。
【0206】
実施例M:化合物56およびPMEAによるインキュベーション後の肝細胞におけるPMEApp蓄積
化合物56およびPMEA、親抗ウィルス薬を、既知のHBVポリメラーゼ阻害物質、PMEAppを新たに単離したラット肝細胞にて生成するそれらの能力について評価した。
方法:
肝細胞を、Groen(Groen, A.K.ら, Eur. J. Biochem 122:87-93 (1982))により改変されたBerryとFriendの手順(Berry, M.N. Friend, D.S., J. Cell Biol. 43:506-520 (1969))により、食物を与えたスプラーグ・ドーリーラット250〜300gから調製した。肝細胞20mg/ml湿重量(>85%トリパンブルーバイアビリティー)を、20mMグルコースおよびBSA1mg/mlを含むクレブス二炭酸塩緩衝液2ml中にて4時間PMEAプロドラッグ25μM(プロドラッグのメタノール中25mMストック溶液より)の存在下インキュベートした。インキュベーション中の適切な時点(0、1、2、4時間)にて、細胞懸濁液のアリコート1600〜μlを取り、遠心分離し、肝細胞をペレット状にした。肝細胞ペレットを氷冷アセトニトリル300μl中にてすぐに超音波を当てた後、水200μlを加えた。肝細胞抽出物を20分間エッペンドルフ遠心分離機中4℃にて遠心分離し、抽出物からの上清を新しいチューブに移した。肝細胞抽出上清を濃縮し、減圧乾燥した後、水200μl中にて再懸濁した。PMEApp濃度を、肝細胞抽出物中にスパイクされた真正PMEApp標準物質に基づくLC−MS/MS(負イオンモード)により定量化した。サンプル10μlをPhenomenex Luna 5μ C8 カラム(50x2 mm)上20mM N−N−ジメチルヘキシルアミン、10mMプロピオン酸中にて充填し、濃度勾配20〜64%のメタノールの濃度勾配で5.5分にわたり溶出した。空気圧補助エレクトロスプレーインターフェースにより適合したAPI2000三連四重極質量分析計を用い、マルチプル・リアクション・モニタリング(Multiple Reaction Monitoring, MRM)法を用いて負イオン(PO)を定量化した。
【0207】
結果:
PMEAppレベルについてのAUC0〜4時間(曲線下領域)値は、PMEAによるインキュベーション後の84nmolesh/gに対し、化合物56によるインキュベーション後756nmolesh/gであった(図4)。
結論:
これらの結果は、化合物56が、単離されたラット肝細胞においてPMEAppをPMEAよりも効率的に生成することを示唆する。
【0208】
実施例N:化合物4およびビスPOM PMEAの経口投与後のPMEAの組織分布
化合物4[アデニン−2,8−H]の肝臓特異性を、腎臓および小腸、すなわちPMEA毒性が報告されている器官中のビスPOM PMEA[アデニン−8−H]に関して比較した。
方法:
化合物4[アデニン−2,8−H]またはビスPOM PMEA[アデニン−8−H]を、30mg/kgPMEA当量にて絶食したラットに強制経口投与した。総トリチウム数を、24時間にわたる種々の時点にて得られた肝臓器官、腎臓、血漿、尿、赤血球、小腸、ならびに小腸内容物および便の可溶化したサンプルにて分析した。肝臓器官特異性を、腎臓、小腸、血漿および赤血球に対する肝臓器官における総トリチウムの時間的プロファイルの比較により分析した。肝臓器官、腎臓、小腸、便および尿の過塩素酸抽出物中の代謝体プロファイルを、HPLCにより分析した。
【0209】
結果:
化合物4は、ビスPOM PMEAと比較して肝臓器官におけるPMEA当量の3.1倍高いAUCを生成し、腎臓(3.8倍)および小腸(25倍)におけるPMEA当量の暴露を軽減した(図5a、5bおよび5c)。化合物4およびビスPOM PMEAは、試験した組織中において類似の割合のPMEA:PMEAモノホスフェート:PMEAジホスフェートを生成した;しかし、無傷のプロドラッグはこれらの組織中にて検出されなかった。化合物4投与量の大半(〜60%)は、無傷のプロドラッグとして24時間後便中にて見られた。一方、ビスPOM PMEAは、腸管中にて容易に代謝された;投与量の43%は、PMEAの形態にて便中に排泄された。
化合物4およびビスPOM PMEAの肝臓器官標的インデックス
【表4】

結論:
これらの結果は、ビスPOM PMEAと比較した化合物4についての肝臓器官標的インデックスにおける有意の改善(上表参照)を示す。従って化合物4は、ビスPOM PMEAよりも安全で効果的なプロファイルを有するようである。
【0210】
実施例O:化合物4およびビスPOM PMEAの経口投与後のPMEAの血漿および尿分布
類似の実験において、PMEAレベルを血漿および尿中にて、ビスPOM PMEAに対する化合物4の投与後、定量化した。
方法:
化合物4またはビスPOM PMEAを、30mg/kgPMEA当量にて、絶食したラットに強制経口投与した。PMEAレベル(0〜12時間)を、クロロアセトアルデヒド誘導体化後、蛍光HPLCにより血漿中にて定量化した。尿中のPMEAレベルを処置後48時間に定量化した。
【0211】
血漿薬物レベル:PMEAを文献記載の手順(Shaw JP, Louie MS, Krishnamurthy VV, Arimilli MN, Jones RJ, Bidgood AM, Lee WA, & Cundy KC, Drug Metabolism and Disposition, 25:362-366 (1997))の改変により血漿中にて決定した。血漿100μLサンプルを2倍容積の0.1%TFA/アセトニトリルで抽出した。遠心分離し、沈殿物を取り除いた後、上清を濃縮し、乾燥した。乾燥した血漿を、0.34%クロロアセトアルデヒド/100mM酢酸ナトリウムpH4.5からなる誘導体化カクテル200μLで再構成し、95℃にて40分間インキュベートした。サンプルを濃縮し、乾燥し、移動相でHPLC分析のために再構成した。誘導体化されたPMEAを0〜30%アセトニトリル/20mMリン酸カリウムpH6.2の20分の濃度勾配で展開させたBeckman Ultrasphere ODS 4.6 x 150 mm(5μm)カラムからなるHPLC系(Hewlett Packard 1090)により分析した。蛍光を励起および発光波長のそれぞれ240および420nmにてモニターした。カラム温度は40℃であり、流速は1.5mL/分であった。誘導体化したPMEAを検出し、血漿中にて製造した真正標準物質と比較して定量化し、約6分にて溶出した。PMEAの定量化の限界は0.25μg/mLであった。
【0212】
尿中排泄実験:PMEAの尿中のパーセント排出量を先に記載の手順(Russell JW, Marrero D, Whiterock VJ, & Klunk LJ, J Chromatog, 572:321-326 (1991))の改変により分析した。尿サンプルのアリコート(0.25〜0.5mL)およびスパイクされた標準物質を等容積の50%クロロアセトアルデヒド/100mM酢酸ナトリウムpH4.5の17%(v/v)で50℃にて4時間インキュベートした。遠心分離後、上清を先のセクションに記載のHPLC法により分析した。
【0213】
結果:
化合物4投与後の血漿中のPMEAのAUC0〜12時間は、ビスPOM PMEA投与後よりも6倍低かった(21.3nmolh/mLに対して3.5)。化合物4投与後の血漿中のPMEAのCmaxは、ビスPOM PMEA投与後よりも13倍低かった(4.1nmoles/mLに対して0.3)。軽減されたPMEAの腎臓レベルと一致して、化合物4投与後の尿中レベルは、ビスPOM PMEA投与後よりも5倍低かった(20.6%投与量に対して4.1%投与量)。
結論:
従って、化合物4による軽減された全身PMEA暴露は、PMEAの尿レベルにより分析されたように、腎臓における軽減されたPMEA暴露をもたらし、それゆえ軽減されたPMEA関連毒性をもたらすと期待される。
【0214】
実施例P:シス(化合物56)およびトランス(9−{2−[2,4−トランス−(S)−(+)−4−(3−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン)プロドラッグのヒト肝臓ミクロソームにおける活性化についての比較
シス(化合物56, lot #20010093)およびトランス(9−{2−[2,4−トランス−(S)−(+)−4−(3−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン(lot 20010195)PMEAプロドラッグの活性化速度を、いずれのプロドラッグジアステレオマーがヒト肝臓ミクロソームにおいて最も効率的に活性化されるかを確立するために比較した。
【0215】
方法:
ヒト肝臓ミクロソーム(混合したプール)をIn Vitro Technologies(Lot RQX)から購入した。比較実験を2mg/mLヒト肝臓ミクロソーム、100mM KHPO、10mMグルタチオン、100μMプロドラッグおよび2mM NADPH(反応の開始に用いた)にて5分間エッペンドルフサーモミキサー5436中37℃スピード6にて行った。反応を60%メタノールでクエンチした。L−グルタミル−L−(S−(3−オキソ−3−(3−クロロフェニル)プロピル)システイニルグリシン、副生成物のグルタチオン付加物、3−Cl−フェニルビニルケトンを、実施例8に概略されている手順(ヒト肝臓ミクロソームにおけるインビトロ活性化)により定量化した。
【0216】
結果:
シス(化合物56)およびトランス(9−{2−[2,4−トランス−(S)−(+)−4−(3−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン)プロドラッグコンフィギュレーションについての立体化学純度および活性化を以下の表に示す。結果は、シス(化合物56)プロドラッグ体がトランス体よりも効率的にヒト肝臓ミクロソームにおいて活性化されることを示す。トランス体(9−{2−[2,4−トランス−(S)−(+)−4−(3−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル]メトキシエチル}アデニン)の活性化は、以下のように測定可能な検出限界であった(.05nmol/mg/分)。
化合物 立体化学純度 活性化速度(nmol/mg/分)
シス 98.6%シス/1.4%トランス 0.45±0.01
トランス 1.6%シス/98.4%トランス ≦0.05
結論:
従って化合物56を、ヒト肝臓ミクロソームにおけるそのより高い生物活性化速度に基づき、優れたプロドラッグジアステレオマーとして選択した。
【0217】
実施例Q:単離したラット肝細胞における無毒のプロドラッグ副生成物
単離したラット肝細胞において実験を行い、化合物4およびその代謝体の、通常およびCYP3A4誘起の主要ラット肝細胞における肝毒性パラメーターへの効果を、アセトアミノフェン、すなわち肝臓におけるそのミクロソーム代謝の結果として急性損傷を引き起こすことが知られている薬物と比較して評価した。
【0218】
方法:
新たに単離した肝細胞を、通常のラットまたはデキサメタゾンで前処置したラットから製造(実施例13記載の方法による)した。オススプラーグ・ドーリーラットをデキサメタゾンで誘発し、CYP3A4酵素内容物を増大し、その結果化合物4代謝を最大化した。通常の食物を与えた重量280〜310gのスプラーグ・ドーリーラットに、デキサメタゾンを50mg/kgにて1日1回4日間、腹腔内投与した。デキサメタゾンをSigma(lot#119H1328)から購入し、トウモロコシ油(Sigma lot#107H1649)中の懸濁剤として50mg/mLにて製剤化した。5日目に、ラットを肝細胞単離のために使用した。新たに単離した肝細胞を化合物4(250μMおよび1mM)またはアセトアミノフェン(1〜10mM)で懸濁アッセイ中6時間まで処理した。グルタチオンレベルへの効果をDTNB(エルマン試薬)法により分析し、バイアビリティーをトリパンブルー排除アッセイおよび肝酵素漏出量アッセイ(LDH、AST)により決定した。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上清への漏出量を、Sigma(#500および#505)から購入した比色分析アッセイキットを用いて測定した。両方のアッセイは、試験チューブアッセイのためのプロトコルインサート(protocol insert)からマイクロタイタープレートアッセイへ適応させた。
【0219】
結果:
3mMまたは10mMアセトアミノフェンで処理した後、グルタチオン貯蔵を枯渇し、バイアビリティーをトリパンブルー排除基準により約5%まで軽減させ、酵素漏出量を通常およびデキサメタゾン誘起ラットの両方から単離した肝細胞において2倍増大させた。通常の肝細胞において、化合物4による処置(1mM)は、グルタチオンレベルにおける有意の減少およびバイアビリティーまたは肝酵素漏出量に関する有意の変化をまったく引き起こさなかった。デキサメタゾン前処置ラットから単離した肝細胞において、化合物4による処置(250μMおよび1mM)は、2時間のインキュベーション後、有意のグルタチオン減少(250μM=50%減少、1mM化合物4>95%減少)を引き起こしたが、グルタチオン枯渇後のバイアビリティーまたは肝酵素漏出量に関して有意の変化は観察されなかった。
【0220】
結論:
これらの実験は、極端に高い化合物4の投与後、化合物4副生成物は、CYP3A4誘起ラット肝細胞において細胞内グルタチオン内容物をインビトロにて軽減することができる。しかしアセトアミノフェンと違い、化合物4副生成物/代謝体は、グルタチオン枯渇肝細胞に直接的に細胞毒性ではない。
【0221】
実施例R:化合物4のラットにおける薬物動態学
化合物4の薬物動態学プロファイル、PMEAの環状プロドラッグをラットに経口投与後のビスPOM PMEAと比較した。
【0222】
方法:
ラット(時点あたりn=4)に、化合物4のプロドラッグおよびビスPOM PMEA30mg/kg(PMEA当量において)を強制経口投与した。無傷のプロドラッグおよび代謝体9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニン(PMEA)およびそれぞれのモノ酸を血漿中にて0(投与前)、投与後0.33、1、3、5、8および12時間にて蛍光検出を用いたHPLCにより測定した。薬物動態学的パラメーターを濃度−時間プロファイルの包括的な分析に基づき計算した。
【0223】
結果:
化合物4(30mg/kg)(PMEA当量において)のラットへの経口投与後、無傷のプロドラッグ、化合物4およびその崩壊生成物9−{2−[1−{(3−クロロフェニル)−1−プロピル−3−ヒドロキシ}ホスホノメトキシ]エチル}アデニンおよび9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニン(PMEA)は血漿中にて検出可能であった。化合物4、9−{2−[1−{(3−クロロフェニル)−1−プロピル−3−ヒドロキシ}ホスホノメトキシ]エチル}アデニンおよび9−[2−(ホスホノメトキシ)エチル]アデニンの血漿半減期は、それぞれ約3.2、2.1および5.5時間であった。PMEAのCmaxは、5時間のTmaxにて0.11μg/mLであった。12時間までのAUCは、0.94mghr/mLであった。ビスPOM PMEA30mg/kg(PMEA当量において)のラットへの経口投与後、PMEAのみが6.1時間の半減期で血漿中にて検出可能であった。PMEAのCmaxは、20分のTmaxにて1.11μg/mLであった。12時間までのAUCは、5.83mghr/mLであった。
【0224】
結論:
ビスPOM PMEAと比較して、血漿AUCおよびCmaxにより測定されるPMEAの全身暴露は、化合物4プロドラッグとして送達されたときのラットにおいてかなり減少した。無傷の化合物4が血漿中にて観察されたが、ビスPOM PMEAは、ビスPOM PMEAが急速に加水分解され、インビボにて検出されなかったと主張する文献の報告(Nobleら, Drugs 58:3 (1999))と一致し、検出されなかった。これらの結果は、化合物4がビスPOM PMEAと比較してより長く循環するが、全身PMEA暴露を最小化したことにより好ましい薬物動態学的プロファイルを有したことを示す。
【0225】
実施例S:イヌにおける化合物4の薬物動態学
化合物4の薬物動態学(PK)および経口バイオアベイラビリティー(OBAV)をビーグル犬において決定し、ビスPOM PMEAについての文献報告と比較した。
【0226】
方法:
PEG−400におけるオスビーグル犬(n=4)へのそれぞれ8および40mg/kg(プロドラッグ当量投与量)の化合物4の静脈内ボーラスおよび経口投与後、血液サンプルを次の時間にて集めた:各投与後5、15、30、45分および1、2、4、6、8、12および24時間。さらに、次の間隔にわたり尿を集めた:0〜12、12〜24、24〜48および48〜72時間。無傷の化合物4およびPMEAを血漿および尿サンプル中にて、LC−MS/MS法を用いて測定した。PKパラメーターを非コンパートメント(non-compartmental)分析により決定した。健康障害および死亡のサインについて動物を観察した。
【0227】
結果:
化合物4は、ビーグル犬により健康障害または死亡のサインをまったく示さずによく許容された。化合物4の静脈内投与後、無傷の化合物4の血漿濃度は、0.8時間の平均最終排除半減期t1/2で単指数関数的に(mono-exponentially)下降した。化合物4を1.77L/hr/kgにて血漿から除去し、1.70L/kgの分布容積(Vss)で広く分配した。平均居留時間(MRTiv)を1.0時間に見積もった。静脈投与量の約30%は無傷の化合物4として尿中に排泄されたが、2%だけはPMEAとして排泄された。経口投与後、化合物4は0.8時間(Tmax)後に達成された平均ピーク血漿濃度(Cmax)の10.2μg/mL(〜24μM)で急速に吸収された。経口投与後の最終t1/2は1.0時間であった。経口投与の40%は、無傷のプロドラッグとして尿中に排泄され、1.7%はPMEAとして排泄された。化合物4の経口投与後のPMEAの平均血漿Cmaxは、1.4時間のTmaxにおける0.24μg/mL(〜0.88μM)であった。プロドラッグの経口投与後のPMEAの半減期は5.4時間であった。化合物4のOBAVを、標準化された経口−静脈内投与量のAUC比および化合物4の尿中排泄量に基づき、それぞれ112%および82%となるように見積もった。
【0228】
結論:
化合物4は、急速に吸収され(Tmax=0.81時間)、ビーグル犬にて非常に経口的にバイオアベイラブル(%F=〜100%)であった。イヌにおけるビスPOM PMEAについての文献報告(Cundyら, J. Pharm Sci. 86:12 (1997))と比較して、標準化された投与量の血漿AUCにより測定したPMEAの全身暴露は、化合物4プロドラッグとして送達されたとき、18.8倍減少した(化合物についての0.58に対し、ビスPOM PMEAについてPMEA AUC=10.9)。無傷の化合物4は血漿中にて観察されたが、ビスPOM PMEAは報告的に検出されなかった。これらの結果は、化合物4がビスPOM PMEAと比較して、無傷のプロドラッグとしてより長く循環するが、全身PMEA暴露を最小化することにより、好ましい薬物動態学的プロファイルを有することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】ヒト肝臓ミクロソームにおける化合物4活性化のケトコナゾール依存阻害を示す。
【図2a】静脈投与後の肝臓PMEAppレベルを示す。
【図2b】経口投与後の肝臓PMEAppレベルを示す。
【図3】PMEAppの肝臓濃度−時間プロファイルの使用を通した化合物56の経口バイオアベイラビリティーを示す。
【図4】化合物56およびPMEAによるラット肝細胞におけるPMEApp蓄積を示す。
【図5a】化合物4およびビスPOM PMEAの肝臓組織分布を示す。
【図5b】化合物4およびビスPOM PMEAの腎臓組織分布を示す。
【図5c】化合物4およびビスPOM PMEAの小腸組織分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩。
【請求項2】
MPOが、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンおよび(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Vが、フェニル、3−ピリジルおよび4−ピリジルからなる群から選択され、これらはすべてF、Br、Cl、CH、OCHおよびCFからなる群から選択される1〜2つの置換基で置換されていることもある、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Vが、4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
式II:
【化2】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩。
【請求項6】
MPOが、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンおよび(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Vが、フェニル、3−ピリジルおよび4−ピリジルからなる群から選択され、これらはすべてF、Br、Cl、CH、OCHおよびCFからなる群から選択される1〜2つの置換基で置換されていることもある、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
Vが、4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項9】
式III:
【化3】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニル−メトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択される、ホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物、およびその製薬的に許容される塩。
【請求項10】
MPOが、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンおよび(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択される、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Vが、フェニル、3−ピリジルおよび4−ピリジルからなる群から選択され、これらはすべてF、Br、Cl、CH、OCHおよびCFからなる群から選択される1〜2つの置換基で置換されていることもある、請求項9記載の化合物。
【請求項12】
Vが、4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
式IV:
【化4】

[式中、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンである]
で示される、請求項12記載の化合物、およびその製薬的に許容される塩。
【請求項14】
酢酸、臭化水素酸、塩酸、クエン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、コハク酸、硫酸および酒石酸からなる群から選択される酸と形成される、製薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
メタンスルホン酸およびコハク酸からなる群から選択される酸と形成される、製薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
上記塩がメタンスルホン酸と形成される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
式I:
【化5】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容される塩を投与することにより、動物の肝臓疾患を処置する方法。
【請求項18】
式III:
【化6】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩を動物に投与する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
上記肝臓疾患が、ウィルス感染および肝臓癌からなる群から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
上記肝臓疾患がB型肝炎である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
MPOが9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンであり、Vが4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
上記肝臓疾患がC型肝炎である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
MPOが9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンであり、Vが4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
上記肝臓疾患が肝細胞癌である、請求項19記載の方法。
【請求項25】
MPOが9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンであり、Vが4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
上記肝臓疾患が大腸癌である、請求項18記載の方法。
【請求項27】
MPOが9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニンであり、Vが4−ピリジル、2−ブロモフェニルおよび3−クロロフェニルからなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
式I:
【化7】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニル−メトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容される塩を投与することにより、薬物の治療指数を増大する方法。
【請求項29】
上記化合物が式III:
【化8】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
式I:
【化9】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩、および別の抗ウィルス薬を投与することにより、肝臓のウィルス感染を処置する方法。
【請求項31】
上記抗ウィルス薬が、ラミブジン、エンテカビル、コヴィラシル、DAPD、クレブジン、AM365、L−dT、L−dC、ACH126,443、MCC478、ロブカビル、ホスカルネット、PPA、インターフェロンアルファおよびペグ化インターフェロンアルファからなる群から選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
上記ウィルス感染がB型肝炎である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
式IV:
【化10】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩、およびラミブジン、エンテカビル、コヴィラシル、DAPD、クレブジン、AM365、L−dT、L−dC、ACH126,443、MCC478、ロブカビル、ホスカルネット、PPA、インターフェロンアルファおよびペグ化インターフェロンアルファからなる群から選択される別の抗ウィルス薬を投与することにより、肝臓のウィルス感染を処置する方法。
【請求項34】
上記ウィルス感染がB型肝炎であり、抗ウィルス薬がラミブジン、エンテカビル、コヴィラシル、DAPD、クレブジン、AM365、L−dT、L−dCおよびACH126,443ならびにそれらの製薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
式IVで示される化合物が:
【化11】

であり、上記抗ウィルス薬がラミブジンまたはその製薬的に許容される塩である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
抗ウィルス薬がインターフェロンアルファおよびペグ化インターフェロンアルファからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項37】
式I:
【化12】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容される塩の製薬的に有効な量、製薬的に有効な量の抗ウィルス薬またはその塩、および製薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項38】
上記抗ウィルス薬および式IVで示される化合物が別々に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項39】
上記抗ウィルス薬および式IVで示される化合物が同時に投与される、請求項33記載の方法。
【請求項40】
式I:
【化13】

[式中、
MおよびVは、互いにシスにあり、
MPOは、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン、(R)−9−(2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)グアニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチルオキシ)アデニン、9−(2−ホスホニルメトキシエチル)−2,6−ジアミノプリン、(S)−1−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)シトシン、(S)−9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、9−(3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピル)グアニンおよび(S)−9−(3−フルオロ−2−ホスホニルメトキシプロピル)アデニンからなる群から選択されるホスホン酸であり、
Vは、フェニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニルおよび3−チエニルからなる群から選択され、これらはすべてF、Cl、Br、C1〜C3アルキル、CFおよびORからなる群から選択される1〜3つの置換基で置換されていることもあり、
は、C1〜C3アルキルおよびCFからなる群から選択される]
で示される化合物またはその製薬的に許容される塩の製薬的に有効な量、製薬的に有効な量の腫瘍退縮剤またはその塩、および製薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項41】
上記式Iの化合物が式IV:
【化14】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
式IV:
【化15】

で示される化合物またはその製薬的に許容される塩、および別の腫瘍退縮剤を投与することにより、肝臓癌を処置する方法。
【請求項43】
上記腫瘍退縮剤が、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ミリプラチン、テモゾロマイド、チオテパ、メルファラン、イホスファミド、シクロホスファミド、クロラムブシル、ドキソルビシン、デュアノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、バルルビシン、ダクチノマイシン、ゲムシタビン、フロキシウリジン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、チオグアニン、メトトレキセート、マイトマイシン、エトポシド、タキソール、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカンおよびルロテカンからなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
上記癌が肝細胞癌である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
上記腫瘍退縮剤が、ドキソルビシン、ゲムシタビン、イリノテカンおよびシスプラチンからなる群から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項46】
式IVで示される化合物が:
【化16】

およびその製薬的に許容される塩である、請求項42記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2006−511490(P2006−511490A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546667(P2004−546667)
【出願日】平成15年5月12日(2003.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/014821
【国際公開番号】WO2004/037161
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(399124174)メタバシス・セラピューティクス・インコーポレイテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】METABASIS THERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】